(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】再使用可能な最小侵襲手術用器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20220420BHJP
A61B 17/3201 20060101ALI20220420BHJP
A61B 17/34 20060101ALI20220420BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B17/3201
A61B17/34
A61B18/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552252
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(85)【翻訳文提出日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 US2020021918
(87)【国際公開番号】W WO2020185798
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509195489
【氏名又は名称】マイクロライン・サージカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROLINE SURGICAL,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ブルゴー マーク
(72)【発明者】
【氏名】ニムカル シェカール
(72)【発明者】
【氏名】フォスター ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】アレジ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】グエン チャリティ
(72)【発明者】
【氏名】ラロッシュ ルス
(72)【発明者】
【氏名】ティアギ イシター
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF15
4C160FF19
4C160FF56
4C160GG22
4C160GG24
4C160KK03
4C160KK06
4C160KK15
4C160KK19
4C160KK20
4C160MM32
(57)【要約】
最小侵襲手術用器具のための再使用可能なチップは、エンドエフェクタ、2パーツハブおよびヨークを含むことができる。エンドエフェクタは、ハブ内のヨークの操作を介してエンドエフェクタが第一の(例えば開)位置と第二の(例えば閉)位置との間で動くことを可能にする1つまたは複数の可動部分を含むことができる。ハブは、互いに結合された近位ハブおよび遠位ハブを含むことができる。エンドエフェクタは、高い強度および確固な形状を遠位ハブに提供するために金属製であることができる遠位ハブに結合されることができる。近位ハブは、コントロールシャフトとの取り外し可能な結合を維持することができるオートクレーブ処理可能な絶縁材でできていることができる。近位ハブはポリエーテルエーテルケトン(PPEK)製であることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の位置から第二の位置へと移動可能なエンドエフェクタであって、組織と接触するための遠位領域と、近位領域とを有する、エンドエフェクタ;
該第一の位置と該第二の位置との間で該エンドエフェクタを操作するための、該エンドエフェクタの該近位領域に結合されたヨークであって、該ヨークがねじ付き近位端を含み、該ヨークおよび該エンドエフェクタが導電性材料でできており、該ヨークと該エンドエフェクタとが電気的に結合されている、ヨーク;ならびに
該ヨークの周囲に配置されたハブであって、該ハブが遠位ハブおよび近位ハブを含み、該エンドエフェクタがピボットにおいて該遠位ハブに結合され、該近位ハブが非導電性材料でできており、該近位ハブがねじ付き近位端を含む、ハブ
を含む手術用チップ。
【請求項2】
近位ハブがポリエーテルエーテルケトン製である、請求項1記載の手術用チップ。
【請求項3】
近位ハブがねじ接続によって遠位ハブに結合されている、請求項1記載の手術用チップ。
【請求項4】
近位ハブがエポキシによって遠位ハブにさらに結合されている、請求項3記載の手術用チップ。
【請求項5】
ヨークのねじ付き近位端と近位ハブのねじ付き近位端とが同軸にねじを切られている、請求項1記載の手術用チップ。
【請求項6】
近位ハブが遠位ハブの一部分を取り囲む、請求項1記載の手術用チップ。
【請求項7】
エンドエフェクタが、剪刀、把持鉗子、パンチおよび剥離鉗子からなる群より選択される、請求項1記載の手術用チップ。
【請求項8】
遠位ハブが、第一の位置と第二の位置との間のエンドエフェクタの移動中に該エンドエフェクタの近位領域を受けるための溝穴を含み、近位ハブが、該溝穴よりも近位方向に位置する該遠位ハブの一部分を取り囲む、請求項1記載の手術用チップ。
【請求項9】
近位ハブが、130KV/cm以上の絶縁破壊強さを有する材料でできている、請求項1記載の手術用チップ。
【請求項10】
近位ハブが6.0mm以下の外径を有する、請求項1記載の手術用チップ。
【請求項11】
近位ハブが、オートクレーブ処理可能かつ滅菌可能な材料でできている、請求項1記載の手術用チップ。
【請求項12】
近位ハブが、120℃以上のガラス転移温度を有する材料でできている、請求項1記載の手術用チップ。
【請求項13】
遠位ハブの遠位端とヨークの近位端との間の長さが5cm以下である、請求項1記載の手術用チップ。
【請求項14】
エンドエフェクタの遠位端とヨークの近位端との間の長さが9cm以下である、請求項1記載の手術用チップ。
【請求項15】
エンドエフェクタが固定部分および可動部分を含み、該固定部分がハブに対して固定されている、請求項1記載の手術用チップ。
【請求項16】
エンドエフェクタが第一の可動部分および第二の可動部分を含み、該第一の可動部分および該第二の可動部分が、第一の位置と第二の位置との間のエンドエフェクタの移動中にハブに対して動く、請求項1記載の手術用チップ。
【請求項17】
請求項1記載の手術用チップ;および
該手術用チップに結合可能なハンドピースであって、該ハンドピースが、外側シャフト内で軸方向に動くことができる内側シャフトを含み、該外側シャフトが近位ハブのねじ付き近位端によって該近位ハブに結合可能であり、該内側シャフトがヨークのねじ付き近位端によって該ヨークに結合可能である、ハンドピース
を含む手術用装置。
【請求項18】
外側シャフトが近位ハブと同じ材料でできている、請求項17記載の手術用装置。
【請求項19】
外側シャフトが、近位ハブの外径と同じサイズである外径を有する、請求項17記載の手術用装置。
【請求項20】
ハンドピースが、
該ハンドピースに手術用チップが結合されたとき電気信号を内側シャフトおよびヨークに通してエンドエフェクタに運ぶための、内側シャフトに電気的に結合された焼灼ピン
をさらに含む、請求項17記載の手術用装置。
【請求項21】
さらなる手術用チップをさらに含み、ハンドピースから手術用チップを切り離したのち、該ハンドピースが該さらなる手術用チップに結合可能であり、該さらなる手術用チップが、該手術用チップのエンドエフェクタとは異なるさらなるエンドエフェクタを含む、請求項17記載の手術用装置。
【請求項22】
請求項1記載の手術用チップを提供する工程;
該手術用チップをハンドピースに結合する工程であって、該ハンドピースが、外側シャフト内で軸方向に動くことができる内側シャフトを含み、該手術用チップを該ハンドピースに結合する工程が、該ハンドピースの該外側シャフトを近位ハブのねじ付き近位端によって該手術用チップの該近位ハブに結合し、該ハンドピースの該内側シャフトをヨークのねじ付き近位端によって該手術用チップの該ヨークに結合することを含む、工程;
該手術用チップを該ハンドピースから切り離す工程;および
該手術用チップをオートクレーブ処理する工程
を含む方法。
【請求項23】
オートクレーブ処理された手術用チップをハンドピースまたはさらなるハンドピースに結合する工程;および
外科的処置中に組織を該手術用チップのエンドエフェクタと接触させる工程
をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
ヨークおよびエンドエフェクタを通して電流を組織に印加する工程をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項25】
ヨークを通して運ばれる電流が、近位ハブを通して運ばれない、請求項24記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全体として参照により本明細書に組み入れられる、2019年3月11日に出願された米国特許出願第16/295,817号の恩典および優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、概して手術用器具に関し、より具体的には、腹腔鏡プローブなどの最小侵襲手術用器具のための再使用可能なチップに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
最小侵襲手術は、外科的介入を実施するために、既存の開口部または小さな切開部を通して器具を体腔に挿入することを含むことができる。このような技術において使用される手術用器具は、例えばロボット制御または人間による制御を介して遠隔操作される。例えば、内視鏡または腹腔鏡手術においては、個人が、患者の中へ入っているコントロールシャフトによって手術用器具に接続されたハンドルを使用して、患者内で手術用器具を操作し得る。したがって、外科的介入は、従来の外科手術に比べ、より少ない患者への損傷、より短い治癒時間およびより低い感染リスクで実施することができる。
【0004】
多くの場合、最小侵襲手術は電気手術用器具の使用を含む。電気手術用器具は、電流の印加を使用して様々な外科的作業、例えば組織の切断、凝固、乾燥または高周波治療を実施する。電流は、コントロールシャフトを通り、手術用器具のエンドエフェクタの周囲の組織に入ることができる。
【0005】
多くの最小侵襲手術用器具は、1回限り使用される器具として作られている。したがって、各器具は、使用後に再滅菌することを予定しておらず、または再滅菌することができず、廃棄される、無菌器具であるように製造されている。
【0006】
多くの最小侵襲手術用器具は、様々なシャフトを取り付けることができる再使用可能なハンドルを有するように設計されている。各シャフトは、剪刀または把持鉗子などの異なるタイプのエンドエフェクタを有することができる。いくつかの例において、シャフト全体を取り外し、滅菌することもできる。しかし、様々な最小侵襲手術に使用されるシャフトの長さのせいで、これらのツールは、カスタムまたは特大の滅菌パウチを要する、または1セットの器具を複数のバッチとしてオートクレーブ処理しなければならないほど多大な容積をオートクレーブ中で占有するなど、滅菌することが負担になることがある。その結果、現在の滅菌可能な最小侵襲手術用器具は、滅菌するのに非常に長い時間を要することがあり、また、複数のバッチに値するエネルギーおよびリソースの消費を要することがある。
【0007】
ポリオレフィン熱収縮チューブの区画によって部分的に覆われている1ピースハブを含む、いくつかの使い捨てディスポーザブル手術用チップが使用されてきた。しかし、そのような手術用チップは、再使用に十分なほどに清浄化し、滅菌することはできないものであった。このようなチップを清浄化し、滅菌しようとすると、緩んだ熱収縮チューブを生じさせ、これは、使用中に剥離するリスクがあり、隣接組織への意図しない電気伝導、患者内でのチューブの紛失および緩んだチューブからの機械的干渉による手術用チップの誤動作を招くおそれがある。その結果、そのようなチップを使用する外科的介入は、使用後にチップを処分することを必要とし、大量の廃棄物を生み出すこと、医療機関が新品チップの大量の在庫を維持すること、ひいては極めて重大なスペースが占有され、コストが増すことを必要としていた。
【発明の概要】
【0008】
概要
語「態様」および類似の語は、本開示および添付の請求項の主題のすべてを広く指すことを意図したものである。これらの語を含む記述は、本明細書に記載される主題を限定する、または添付の請求項の意味もしくは範囲を限定するものと理解されるべきではない。本明細書に包含される開示の態様は、本概要によってではなく、添付の請求項によって画定される。本概要は、本開示の様々な局面の高次での概観であり、以下の「詳細な説明」部においてさらに説明される概念のいくつかを紹介する。本概要は、請求項に係る主題の主要または不可欠な特徴を識別することを意図したものでもないし、請求項に係る主題の範囲を決定するために別途に使用されることを意図したものでもない。主題は、本開示の明細書全体の適切な部分、任意またはすべての図面および各請求項の参照によって理解されるべきである。
【0009】
本開示の態様は、第一の位置から第二の位置へと移動可能なエンドエフェクタであって、組織と接触するための遠位領域と、近位領域とを有する、エンドエフェクタと;第一の位置と第二の位置との間でエンドエフェクタを操作するための、エンドエフェクタの近位領域に結合されたヨークであって、ヨークがねじ付き近位端を含み、ヨークおよびエンドエフェクタが導電性材料でできており、ヨークとエンドエフェクタとが電気的に結合されている、ヨークと;ヨークの周囲に配置されたハブであって、ハブが遠位ハブおよび近位ハブを含み、エンドエフェクタがピボットにおいて遠位ハブに結合され、近位ハブが非導電性材料でできており、近位ハブがねじ付き近位端を含む、ハブと、を含む手術用チップを含む。
【0010】
いくつかの例において、近位ハブはポリエーテルエーテルケトン製である。いくつかの例において、近位ハブはねじ接続によって遠位ハブに結合されている。いくつかの例において、近位ハブはエポキシによって遠位ハブに結合されている。いくつかの例において、ヨークのねじ付き近位端と近位ハブのねじ付き近位端とは同軸にねじを切られている。いくつかの例において、近位ハブは遠位ハブの一部分を取り囲む。いくつかの例において、エンドエフェクタは、剪刀、把持鉗子、パンチおよび剥離鉗子からなる群より選択される。いくつかの例において、遠位ハブは、第一の位置と第二の位置との間のエンドエフェクタの移動中にエンドエフェクタの近位領域を受けるための溝穴を含み、近位ハブは、溝穴よりも近位方向に位置する遠位ハブの一部分を取り囲む。いくつかの例において、近位ハブは、130KV/cm以上の絶縁破壊強さを有する材料でできている。いくつかの例において、近位ハブは6.0mm以下の外径を有する。いくつかの例において、近位ハブは、オートクレーブ処理可能かつ滅菌可能な材料でできている。いくつかの例において、近位ハブは、120℃以上のガラス転移温度を有する材料でできている。いくつかの例において、遠位ハブの遠位端とヨークの近位端との間の長さは5cm以下である。いくつかの例において、エンドエフェクタの遠位端とヨークの近位端との間の長さは9cm以下である。いくつかの例において、エンドエフェクタは固定部分および可動部分を含み、固定部分はハブに対して固定されている。いくつかの例において、エンドエフェクタは第一の可動部分および第二の可動部分を含み、第一の可動部分および第二の可動部分は、第一の位置と第二の位置との間のエンドエフェクタの移動中にハブに対して動く。
【0011】
本開示の態様は、上記手術用チップと;手術用チップに結合可能なハンドピースであって、ハンドピースが、外側シャフト内で軸方向に動くことができる内側シャフトを含み、外側シャフトが近位ハブのねじ付き近位端によって近位ハブに結合可能であり、内側シャフトがヨークのねじ付き近位端によってヨークに結合可能である、ハンドピースと、を含む手術用装置を含む。
【0012】
いくつかの例において、外側シャフトは近位ハブと同じ材料でできている。いくつかの例において、外側シャフトは、近位ハブの外径と同じサイズである外径を有する。いくつかの例において、ハンドピースは、手術用チップがハンドピースに結合されたとき電気信号を内側シャフトおよびヨークに通してエンドエフェクタに運ぶための、内側シャフトに電気的に結合された焼灼ピンをさらに含む。いくつかの例において、手術用装置は、さらなる手術用チップをさらに含み、ハンドピースは、ハンドピースから手術用チップを切り離したのち、そのさらなる手術用チップに結合可能であり、さらなる手術用チップは、手術用チップのエンドエフェクタとは異なるさらなるエンドエフェクタを含む。
【0013】
本開示の態様は、上記手術用チップを提供する工程;手術用チップをハンドピースに結合する工程であって、ハンドピースが、外側シャフト内で軸方向に動くことができる内側シャフトを含み、手術用チップをハンドピースに結合する工程が、ハンドピースの外側シャフトを近位ハブのねじ付き近位端によって手術用チップの近位ハブに結合し、ハンドピースの内側シャフトをヨークのねじ付き近位端によって手術用チップのヨークに結合することを含む、工程;手術用チップをハンドピースから切り離す工程;および手術用チップをオートクレーブ処理する工程、を含む方法を含む。
【0014】
いくつかの例において、方法は、オートクレーブ処理された手術用チップをハンドピースまたはさらなるハンドピースに結合する工程;および外科的処置中に組織を手術用チップのエンドエフェクタと接触させる工程、をさらに含む。いくつかの例において、方法は、ヨークおよびエンドエフェクタを通して電流を組織に印加する工程をさらに含む。いくつかの例において、ヨークを通して運ばれる電流は、近位ハブを通して運ばれない。
【0015】
本明細書は添付図面を参照する。図中、異なる図面における類似の符番の使用は、類似または同種の構成部品を示すことを意図したものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の特定の局面の手術用器具チップを閉位置および開位置で示す略側面図と、本開示の特定の局面のコントロールシャフトの遠位部分の部分切欠き略側面図とのセットである。
【
図2】本開示の特定の局面の、コントロールシャフトに結合された手術用器具チップを閉位置および開位置で示す略側面図のセットである。
【
図3】本開示の特定の局面の、ハンドルに結合されたコントロールシャフトに取り付けられた手術用器具チップを含む最小侵襲手術用器具を示す略側面図である。
【
図4】本開示の特定の局面の手術用器具チップを示す分解略側面図である。
【
図5】本開示の特定の局面の、互いに結合された近位ハブおよび遠位ハブを有する手術用器具チップのハブを示す水平断面図である。
【
図6】本開示の特定の局面の、別々にある近位ハブおよび遠位ハブを有する手術用器具チップのハブを示す水平断面図である。
【
図7】本開示の特定の局面にしたがって手術用器具チップを使用するプロセスを示すフローチャートである。
【
図8】本開示の特定の局面の、フレア状近位ハブを有する手術用器具チップを閉位置および開位置で示す略側面図のセットである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
本開示の特定の局面および特徴は、最小侵襲手術用器具のための再使用可能なチップに関する。再使用可能なチップは、エンドエフェクタ、ハブおよびヨークを含む。エンドエフェクタは、ハブ内のヨークの操作(例えば軸方向の操作)を介してエンドエフェクタが第一の(例えば開)位置と第二の(例えば閉)位置との間で動くことを可能にする1つまたは複数の可動部分を含むことができる。ハブは、例えばねじ結合および/またはエポキシを介して互いに結合されている近位ハブおよび遠位ハブを含むことができる。エンドエフェクタは遠位ハブに結合されることができ、遠位ハブは、高い強度および確固な形状を遠位ハブに提供するために金属製であることができる。近位ハブは、コントロールシャフトとの取り外し可能な結合を維持することができるオートクレーブ処理可能な絶縁材でできていることができる。近位ハブはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製であることができる。
【0018】
本開示の特定の局面は、最小侵襲手術用器具のための再使用可能なチップに関する。これらの手術用チップは、任意の適当なタイプの手術、例えばロボット実行もしくはロボット支援手術、内視鏡手術、腹腔鏡手術または任意の他の適当な最小侵襲手術のために構成されることができる。いくつかの例において、本開示の特定の局面は、腹腔鏡手術に使用される手術用器具のスタイルにより、腹腔鏡手術用器具にとって特に有益であることができる。
【0019】
最小侵襲手術用器具は、コントロールシャフトを介してハンドルに取り外し可能に取り付け可能な手術用チップを含むことができる。ハンドルは、コントロールシャフトに取り外し不可能に結合されることもできるが、必ずしもそうである必要はない。ハンドルとコントロールシャフトとの組み合わせは、コントロールシャフトが取り外し可能であるかどうかにかかわらず、ハンドピースとして知られることができる。手術用チップはコントロールシャフトに取り外し可能に結合可能であり、手術用チップがそれだけで清浄化され、消毒されることを可能にする。さらに、手術用器具の機能性を、臨機応変に、例えば手術中、1つの手術用チップを取り外し、異なる手術用チップを取り付けることにより、すばやく変更することができる。このようなやり方で、単一のハンドルおよびコントロールシャフトを外科的処置中に複数の手術用チップとともに使用することができ、その結果、複数の異なる手術用チップをその同一のハンドルおよびコントロールシャフトと使用したにもかかわらず、単一のハンドルおよびコントロールシャフトセットのみを清浄化し、滅菌するだけでよい。本明細書中で使用される「手術用器具」は、その近位端にハンドルを有し、その遠位端に手術用チップを有するものとみなすことができる。したがって、本明細書中で使用される語「遠位」および「近位」は、手術用器具のハンドル端から離れる方向およびハンドル端に向かう方向を指すことができる。
【0020】
ハンドルは、手術用チップのエンドエフェクタを作動させるための1つまたは複数のグリップを含むことができる。ハンドルは、所望の機能性に依存して異なるやり方で構成されることができる。一部のハンドルはラチェット式動作(例えばラチェット式グリップ)を有することができるが、他は有しない。いくつかの例において、ハンドルは、コントロールシャフトに電流を運ぶための1つまたは複数の電気ポスト(例えば焼灼ポスト)を含むことができる。一部のハンドルは短い電気ポストを有することができるが、他は長い電気ポストを有する。いくつかの例において、ハンドルは、ハンドルおよび/または取り付けられたコントロールシャフトの清浄化を容易にするためのフラッシュポートを含むことができる。いくつかの例において、電気ポストはフラッシュポートを兼ねることもできる。いくつかの例において、回転ノブがコントロールシャフトの回転を制御することができ、そしてまたコントロールシャフトが手術用チップのエンドエフェクタの回転を制御することができる。
【0021】
いくつかの例において、コントロールシャフトはハンドルに永久的に取り付けられることができるが、必ずしもそうである必要はない。コントロールシャフトは外側シャフトおよび内側シャフトでできていることができる。外側シャフトは、PEEKなどの電気絶縁材料でできていることができる。内側シャフトは、外側シャフトに対する内側シャフトの操作を介してエンドエフェクタの作動を可能にするために、外側シャフト内で移動可能、例えば軸方向に移動可能であることができる。内側シャフトは、金属などの導電性材料でできていることができる。いくつかの例において、内側シャフトは、手術用チップのヨーク、エンドエフェクタおよび/または遠位ハブと同じ材料でできていることができる。
【0022】
本明細書に開示される手術用チップは、任意の適当なスタイルのエンドエフェクタを利用することができる。エンドエフェクタの適当なスタイルは、剪刀、把持鉗子、パンチおよび剥離鉗子を含む。一例として、適当な剪刀構造は、反型剪刀、直型剪刀、メッツェンバウム剪刀、フック付き剪刀などを含むことができる。一例として、適当な把持鉗子構造は、非外傷性把持鉗子、有窓把持鉗子、クリンチ把持鉗子、バブコック把持鉗子、ハンター(Hunter)把持鉗子、アリス把持鉗子などを含むことができる。一例として、適当なパンチは、カップ状パンチ、生検パンチなどを含むことができる。一例として、適当な剥離鉗子は、ドルフィンノーズ剥離鉗子、メリーランド剥離鉗子、バーケット(Birkett)グラスパ型剥離鉗子などを含むことができる。
【0023】
エンドエフェクタは1つまたは複数の可動部分を含むことができる。いくつかの例において、エンドエフェクタは、例えば一般的な生検パンチにおいては、1つの可動部分を固定部分に対して動かすことにより、第一の位置と第二の位置との間で動くことができる。生検パンチの例においては、可動部分(例えば刃)を固定部分(例えば生検材料収集面)に押し当てて生検材料を収集することができる。1つの可動部分によるこのタイプの動作はシングルアクションとして知られることができ、このタイプの動作を使用するエンドエフェクタはシングルアクションエンドエフェクタとして知られることができる。いくつかの例において、エンドエフェクタは、例えば一般的な剪刀においては2つの可動部分(多くの場合、互いに対向する)を有することができる。剪刀の例においては、2つの可動部分(例えば剪刀の刃)を互いに向けて動かして切断動作を開始することができる。2つの可動部分によるこのタイプの動作はデュアルアクションとして知られることができ、このタイプの動作を使用するエンドエフェクタはデュアルアクションエンドエフェクタとして知られることができる。本開示の局面は、シングルアクションエンドエフェクタにて使用することもできるし、デュアルアクションエンドエフェクタにて使用することもできる。いくつかの例において、本開示の局面は、可動部分を有しないノーアクションエンドエフェクタ(例えば電気手術用電極)にて使用することもできる。
【0024】
各手術用チップは、ハブとヨークとに結合されたエンドエフェクタを含むことができる。エンドエフェクタは、ハブ内のヨークの動きがエンドエフェクタを第一の位置と第二の位置との間で動かすようにハブに結合されることができる。例えば、エンドエフェクタはリベットによってハブに固定されることができ、ヨークのシャフトがエンドエフェクタの1つまたは複数の溝穴と係合して、ヨークの軸方向運動がエンドエフェクタの1つまたは複数の部分をリベットを中心に枢動させるようになっている。いくつかの例において、他の構成を使用することもできる。エンドエフェクタは、ハブに対して軸方向に固定されるようにハブに結合されることができるが、エンドエフェクタの1つまたは複数の可動部分はハブに対して回転可能に動くことができる。
【0025】
ヨークは、ハブの中、その内径内に配置されることができる。ヨークは、ハブに対するヨークの動きがハブに対するエンドエフェクタの1つまたは複数の可動部分の動きを生じさせるような任意の適当なやり方でエンドエフェクタに結合されることができる。いくつかの例において、ヨークの軸方向運動が、ピボットを中心とするエンドエフェクタの1つまたは複数の可動部分の回転運動に変換されるが、必ずしもそうである必要はない。いくつかの例において、ヨークの軸方向運動は他の方法でエンドエフェクタに影響を及ぼすこともできる。いくつかの例において、ヨークの回転運動がエンドエフェクタに影響を及ぼすこともできる。ヨークは、例えばすべりリンク結合(例えばピン-溝穴リンク)を使用して、エンドエフェクタの1つまたは複数の可動部分に結合されることができる。ヨークは、すべりリンク結合またはヨークの軸方向運動をエンドエフェクタの可動部分の適切な動きへと変換するための任意の適当な機械的結合を使用してエンドエフェクタに結合することができる。例えば、ヨークは、エンドエフェクタの可動部分上の溝穴に嵌合するシャフトまたはピンを含むことができ、軸方向へのヨークの動きが可動部分を上または下方向に押しやって、可動部分をピボット軸を中心に枢動させるようになっている。ヨークは任意の適当な技術によってコントロールシャフト(例えば、コントロールシャフトの内側シャフト)に結合することができる。いくつかの例において、ヨークはねじ接続を介してコントロールシャフトに結合することもできる。
【0026】
ハブは、それぞれ近位ハブおよび遠位ハブと呼ぶことができる近位部分および遠位部分を含むマルチパーツハブである。遠位ハブは、エンドエフェクタの部分を固定的または可動的に確保するために使用することができる。例えば、シングルアクションエンドエフェクタは、遠位ハブに対して固定されている固定部分と、遠位ハブに可動的に結合されている可動部分とを含むことができる。もう1つの例において、デュアルアクションエンドエフェクタは、遠位ハブに可動的に結合されている2つの可動部分を含むことができる。いくつかの例において、エンドエフェクタの1つまたは複数の可動部分は、回転可能な結合、例えばリベット、ねじまたはボルトを介して遠位ハブに可動的に結合されることができる。遠位端は、エンドエフェクタの1つまたは複数の可動部分のための支点として働くことができる。いくつかの例において、エンドエフェクタは、クラス1レバー(例えばシングルクラス1レバーまたはダブルクラス1レバー)として働くために遠位ハブに結合されることができる。いくつかの例において、エンドエフェクタは、クラス3レバーとして働くために遠位ハブに結合されることができる。
【0027】
遠位ハブは、エンドエフェクタの構成(例えば、リベットが使用される場合、リベットの適用)およびエンドエフェクタの度重なる作動に耐えるのに十分な強度および/または硬さを有する材料でできていることができる。いくつかの例において、遠位ハブは、手術用ツールに適した金属、例えば外科用ステンレス鋼などでできていることもできる。いくつかの例において、遠位ハブは導電性材料でできているが、必ずしもそうである必要はない。いくつかの例において、遠位ハブは、手術用チップの設計寿命にわたってエンドエフェクタの度重なる作動がエンドエフェクタと遠位ハブとの間の結合にマイナスの影響を及ぼさないことを保証するために金属製である。いくつかの例において、遠位ハブはエンドエフェクタと同じ材料から作られる。いくつかの例において、遠位ハブはエンドエフェクタの1つまたは複数の可動部分と同じ材料から作られる。
【0028】
近位ハブは遠位ハブに取り外し可能または永久的に取り付けられることができる。近位ハブは遠位ハブをコントロールシャフトに(例えば、コントロールシャフトの外側シャフトに)結合することができる。近位ハブは、遠位ハブに結合するように構成された遠位結合部分と、コントロールシャフトに結合するように構成された近位結合部分とを含むことができる。遠位結合部分はねじ接続であることができるが、必ずしもそうである必要はない。一例において、遠位ハブおよび近位ハブはねじ接続を介して互いに結合されることができる。いくつかの例において、遠位ハブおよび近位ハブは、エポキシなどの接着剤によって互いに結合されることもできる。いくつかの例において、遠位ハブおよび近位ハブは、複数の技術を使用して、例えばねじ接続およびエポキシによって互いに結合されることもできる。
【0029】
いくつかの例において、遠位ハブによって包囲されるエンドエフェクタのすべての部分は、第一の位置と第二の位置との間のエンドエフェクタの作動中ずっと、遠位ハブによって包囲されたままである(例えば、遠位ハブの周内にとどまる)ことができる。例えば、1丁の剪刀は、遠位ハブの周よりも大きく開くことができる刃を有し得るが、エンドエフェクタの可動部分の近位端は、作動中、遠位ハブの周内にとどまるように構成されることができる。しかし、いくつかの例において、第一の位置と第二の位置との間のエンドエフェクタの作動は、エンドエフェクタの1つまたは複数の近位端を、例えば遠位ハブの壁の溝穴に通して、遠位ハブの周の外へ延ばすことができる。一例において、クラス1レバーとして作動する特定の把持鉗子は、把持鉗子のあご部が全開するのを可能にするために、遠位ハブの周から溝穴を通って外へ延びる近位端を有し得る。
【0030】
近位ハブは、遠位ハブをコントロールシャフトに結合するように働くことができ、同時に絶縁体としても働く。近位ハブは絶縁材(例えば絶縁体)でできていることができる。近位ハブは、十分に高い絶縁破壊強さを有する材料でできていることができる。いくつかの例において、近位ハブの絶縁破壊強さは、約230KV/cm以上、例えば約130KV/cm、135KV/cm、140KV/cm、145KV/cm、150KV/cm、155KV/cm、160KV/cm、165KV/cm、170KV/cm、175KV/cm、180KV/cm、185KV/cm、190KV/cm、195KV/cm、200KV/cm、205KV/cm、210KV/cm、215KV/cm、220KV/cm、225KV/cm、230KV/cm、235KV/cm、240KV/cm、245KV/cmおよび/または250KV/cm以上であることができる。
【0031】
一般に、手術用チップは、近位ハブを除き、金属パーツでできている。例えば、ヨーク、エンドエフェクタおよび遠位ハブは、同じタイプの金属であることができる金属でできていることができる。これらの金属パーツは一般に導電性であるため、近位ハブは、使用中、手術用チップの周囲の非標的組織を保護するために、電気絶縁材料から作られることができる。近位ハブは、外科的処置中などにヨークおよび遠位ハブの少なくとも一部分を周囲組織から絶縁するように働くことができる。いくつかの外科的処置においてヨークは電気信号をエンドエフェクタに運ぶことができるため、周囲組織に対する保護は、非標的組織への意図しない損傷の危険を減らすために重要であることができる。非標的組織は、電流が送られることが望まれない、使用中に手術用チップの周囲にある任意の組織、例えばエンドエフェクタと接触しない組織を含むことができる。近位ハブは遠位ハブの一部分を取り囲むことができる。いくつかの例において、近位ハブは、遠位ハブの長さの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%および/または100%を取り囲むことができる。いくつかの例において、取り囲まれる遠位ハブのこの部分は遠位ハブの近位端から計測されることができる。遠位ハブが、例えばエンドエフェクタの作動中にエンドエフェクタの1つまたは複数の近位端を通すための溝穴または他の開口を含む場合、近位ハブは、遠位ハブの近位端から溝穴もしくは他の開口またはほぼ溝穴もしくは他の開口まで延びることができる。いくつかの例において、例えばエンドエフェクタの作動中にエンドエフェクタの近位端がすべて遠位ハブ内にとどまるならば、近位ハブは、遠位ハブの遠位端またはほぼ遠位ハブの遠位端まで延びることができる。
【0032】
いくつかの例において、近位ハブは、手術用ツールにおける使用に適した、滅菌可能である熱可塑性ポリマーから作られる。いくつかの例において、近位ハブはPEEKから作られる。いくつかの例において、PEEKの使用は、近位ハブが他のツールおよび面との意図しない接触からの損傷に耐えることを可能にすることができる。いくつかの例において、PEEK近位ハブは、シングルピースハブを取り囲む熱収縮絶縁体よりも良好に損傷に耐えることができる。近位ハブは、121℃または132℃以上(例えば140℃または143℃以上)であるガラス転移温度を有する材料から作られることができる。いくつかの例において、近位ハブは、300℃以上(例えば340℃または343℃以上)である融解温度を有する材料から作られることができる。十分に高いガラス転移温度および/または融解温度は、近位ハブが、121℃(例えば、重力ベースの滅菌装置の場合)または135℃(例えば、真空ベースの滅菌装置の場合)までの温度に達することができるオートクレーブ中の滅菌処置に付されたときでも形状および完全性を失わないことを保証することができる。いくつかの例において、近位ハブは、手術用チップを滅菌するための滅菌処置の最高温度よりも高いガラス転移温度を有する材料でできていることができる。そのような滅菌処置は、手術用チップとともに一般に使用される他の器具、例えば手術用チップを導入することができる切開部を形成するために使用される外科用メスと共用される滅菌処置であることができる。
【0033】
近位ハブは、任意の適当な技術によってコントロールシャフトに結合されることができる。いくつかの例において、近位ハブはねじ接続を介してコントロールシャフトに結合される。近位ハブとコントロールシャフトとの間の確実な接続を保証するために、近位ハブは、近位ハブをコントロールシャフトに結合するために使用される任意の結合機構、例えばねじを保持することができる材料でできていることができる。いくつかの例において、近位ハブは、コントロールシャフトの外側シャフトの一部分の外径上のねじと係合するねじをその内径上に含むことができるが、必ずしもそうである必要はない。いくつかの例において、近位ハブとコントロールシャフトとの間のねじ接続と、ヨークとコントロールシャフトとの間のねじ接続とは同軸である。
【0034】
手術用チップ全体は任意の適当な寸法であることができる。いくつかの例において、最小侵襲手術のための手術用チップは、エンドエフェクタの遠位端からヨークの近位端までの長さが9cm以下であることができる。いくつかの例において、手術用チップは、エンドエフェクタの遠位端からヨークの近位端までで9、8.5、8、7.5、7、6.5または6cm以下であることができる。いくつかの例において、最小侵襲手術のための手術用チップは、遠位ハブの遠位端からヨークの近位端までの長さが5cm以下であることができる。いくつかの例において、手術用チップは、遠位ハブの遠位端からヨークの近位端までで6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5または3mm以下であることができる。いくつかの例において、手術用チップは、手術用チップに結合されたコントロールシャフトの長さの約40%、38%、36%、34%、32%、30%、28%、26%、24%、22%、20%、18%、16%、14%、12%、10%、8%、6%および/または4%以下である長さを有することができる。いくつかの例において、手術用チップは、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6または5mm以下である直径を有することができる。いくつかの例において、ハブは、12、11、10、9、8、7、6または5mm以下である外径を有することができる。
【0035】
いくつかの例において、近位ハブは、コントロールシャフトの外径(例えば、コントロールシャフトの外側シャフトの外径)と同じである外径を有することができる。いくつかの例において、近位ハブは、その長さにわたって一定である外径を有することができる。しかし、いくつかの例において、近位ハブの外径は、近位ハブの近位端から遠位方向へ移動するにつれより大きくなることができ、任意選択で、より小さくなることもできる。いくつかの例において、フレア状の直径を有する近位ハブは、近位ハブとコントロールシャフトとの間の結合部において、つながった外面を提供することができ、同時に、例えばより強い絶縁効果を提供するために、遠位ハブの一部分上により太い近位ハブを提供する。
【0036】
本明細書に開示される手術用チップ全体は清浄化可能かつ滅菌可能であることができる。いくつかの例において、手術用チップ全体は、オートクレーブの使用によって滅菌可能(例えばオートクレーブ処理可能)であることができる。手術用チップの構成部品の材料および構造は、標準的な手術室清浄化・滅菌処置に適したものであることができる。
【0037】
比較的小さい手術用チップをコントロールシャフトおよびハンドルから取り外すことが可能であることにより、任意の初期清浄化工程中に比較的小さい手術用チップが容易に取り扱われること、そしてその後、他の器具とともにまとめて容易に滅菌されることを可能にする。本明細書に開示される1つの手術用チップは、比較的小さい滅菌パウチ内に収まることができ、数多くの手術用チップを一度に滅菌することを可能にする。対照的に、チップと取り外し不可能なコントロールシャフト(例えば全長9または10cmを超える)とを含む滅菌可能な腹腔鏡器具は、大きな滅菌パウチおよび/または特注の滅菌パウチの使用を要し得、一度に1個または数個しか滅菌することができないほどにオートクレーブ中の空間を大きく占有し得る。
【0038】
さらに、本明細書に開示される手術用チップの比較的小さいサイズは、少なくとも、チップと取り外し不可能なコントロールシャフトとを含む滅菌可能な腹腔鏡器具の場合に比べ、複数の異なるスタイルの手術用チップが比較的小さい容積の中に保管されるのを可能にすることができる。例えば、本明細書に開示される数多くの手術用チップは、チップごとにコントロールシャフトを保管する必要なく、1つの容積中(例えば1つの容器中)に保管することができる。それどころか、任意の所望の手術用チップを取り付けることができる単一のハンドルおよびコントロールシャフトを保管することができる。
【0039】
加えて、本開示の特定の局面のモジュール性のおかげで、任意の数のチップを任意の数のハンドルおよび/またはコントロールシャフトと組み合わせて、特定の手術のための所望の手術用器具を達成することができる。例えば、様々なハンドルオプションは、ラチェット式グリップを有する、または有しないハンドル、様々なサイズの電気ポストを有するハンドルおよび様々なスタイルの回転ノブを有するハンドルを含むことができる。さらに、様々なコントロールシャフトオプションは、様々な長さのコントロールシャフト(例えば25cm、34cm、42cmまたは他の長さ)を含むことができる。したがって、多様な手術用器具を提供するために、本開示の局面は、手術用チップのセットならびにハンドルおよび/またはコントロールシャフトのセットを提供することができ、必要ならばこれらを組み合わせて所望の器具を達成することができる。対照的に、コントロールシャフトに取り外し不可能に取り付けられた手術用チップを有する標準的な腹腔鏡器具は、あり得るタイプの器具ごとのあり得る長さごとに新たなチップを必要とし、したがって、より多くの物品の保管を必要とし、それにより、本開示の特定の局面の手術用チップよりも大きな容積を占有する。
【0040】
本開示の局面および特徴は、容易かつ効率的に保管することができ、使いやすく、十分に絶縁された手術用チップを有し、容易かつ効率的に滅菌することができ、高度にカスタマイズ可能である最小侵襲手術用器具を可能にする。
【実施例】
【0041】
これらの実例は、本明細書に記載される一般的な主題に読者を導くために記されたものであり、開示される概念の範囲を限定することを意図したものではない。以下の部分は、図面を参照しながら様々な追加的特徴および例を記載する。図中、類似の符番は類似の要素を示し、方向の記述は、例示的態様を説明するために使用されるが、例示的態様と同様に、本開示を限定するために使用されるべきではない。本明細書の図面に含まれる要素は一定の縮小(拡大)率で描かれていない場合がある。
【0042】
図1は、本開示の特定の局面の手術用器具チップ100、102を閉位置および開位置で示す略側面図と、本開示の特定の局面のコントロールシャフト104の遠位部分の部分切欠き略側面図とのセットである。手術用チップ100は、エンドエフェクタ106、マルチパーツハブ108およびヨーク110を含むことができる。ヨーク110は、ハブ108内に配置され、ハブ108に対して軸方向に動いてエンドエフェクタ106を作動させることができる。手術用チップ100は、第一の(閉)位置にあるエンドエフェクタ106を有することができる。手術用チップ102は、第二の(例えば開)位置にあるエンドエフェクタ106を有する手術用チップ100であることができる。
【0043】
エンドエフェクタ106は1つまたは複数の可動部分を含むことができる。
図1に示すように、エンドエフェクタ106は第一の可動部分116および第二の可動部分118を含む。第一および第二の可動部分116、118は、ハブ108に固定されたピボット120を中心に回転可能である。ピボット120は、マルチパーツハブ108の遠位ハブ112に固定されることができる。したがって、エンドエフェクタ106は、マルチパーツハブ108の遠位ハブ112に結合されることができる。第一および第二の可動部分116、118は、ヨーク110に対して可動的に結合されて、ヨーク110がハブ108に対して軸方向に動かされるとき、第一および第二の可動部分116、118が、手術用チップ100に関して示す第一の位置と、手術用チップ102に関して示す第二の位置との間で動くことを可能にすることができる。例えば、方向140へのヨーク110の移動は、第一および第二の可動部分116、118を内方向134に移動させて、第一および第二の可動部分116、118を互いに対して閉じさせることができ、方向142へのヨーク110の移動は、第一および第二の可動部分116、118を外方向136に移動させて、第一および第二の可動部分116、118を互いから開かせ、離れさせる。距離144の範囲のヨーク110の移動は、第一の位置と第二の位置との間のエンドエフェクタ106の作動を表すことができる。
図1に示すように、第一および第二の可動部分116、118は把持鉗子のあご部であるが、他の可動部分を使用することもできる。
【0044】
いくつかの例において、エンドエフェクタ106の可動部分は、第一または第二の位置にあるとき、遠位ハブ112の周を超えて突き出る近位端を有することができる。
図1に示すように、手術用チップ102の第一および第二の可動部分116、118は、エンドエフェクタ106の作動中に経路に沿って動く近位端138を有し、その経路は近位端138を遠位ハブ112の周の外に出す。遠位ハブ112は、近位端138がそれを通過し得る1つまたは複数の溝穴を含むことができる。近位ハブ114は、そのような溝穴まで、またはほぼそのような溝穴まで、遠位ハブ112の一部分と重なることができる。いくつかの例において、例えば作動中にエンドエフェクタの近位端が遠位ハブの周内にとどまり、それゆえに溝穴が存在しないならば、近位ハブは、ピボット120もしくはほぼピボット120または遠位ハブの遠位端もしくはほぼ遠位ハブの遠位端まで延びる遠位ハブの一部分と重なることもできる。
【0045】
マルチパーツハブ108は、近位ハブ114に結合された遠位ハブ112を含むことができる。遠位ハブ112は、金属、例えばエンドエフェクタ106および/またはヨーク110に使用されるものと同じ金属でできていることができるが、近位ハブ114は、PEEKなどの絶縁体でできていることができる。近位ハブ114は、遠位ハブ112の一部分と重なり、それを取り囲むことができるが、必ずしもそうである必要はない。
【0046】
手術用チップ100は、コントロールシャフト104に取り外し可能に結合することができる。コントロールシャフト104は内側シャフト128および外側シャフト126を含むことができる。例示を目的として、外側シャフト126は部分切欠き図で示され、内側シャフト128は切欠き側面図で示されている。
【0047】
内側シャフト128は、ヨーク110を軸方向に動かすことによって外側シャフト126内で軸方向に動かされて、エンドエフェクタ106の作動を容易にすることができる。内側シャフト128ならびにヨーク110およびエンドエフェクタ106は、導電性材料、例えば導電性金属でできていることができる。外側シャフト126は、PEEKなどの電気絶縁材料でできていることができる。外側シャフト126は近位ハブ114と同じ材料でできていることができる。
【0048】
近位ハブ114は、コントロールシャフト104の外側シャフト126に取り外し可能に結合することができ、ヨーク110は、コントロールシャフト104の内側シャフト128に取り外し可能に結合することができる。近位ハブ114は、外側シャフト126のねじ130(例えば雄ねじ)と係合するねじ122(例えば雌ねじ)を含むことができる。ヨーク110は、内側シャフト128のねじ132(例えば雌ねじ)と係合するねじ124(例えば雄ねじ)を含むことができる。例示を目的として、手術用チップ100に関して、ねじ122は点線で示されている。いくつかの例において、ねじ122と124とは同軸である。同様に、ねじ130と132とは同軸であることができる。
【0049】
図1および他の適当な図に関して本明細書中で使用される、内側シャフト128の移動またはヨーク110の移動とは、それぞれ、外側シャフト126に対する内側シャフト128の移動またはハブ108に対するヨーク110の移動をいう。ハブ108は、外側シャフト126と近位ハブ114との間の結合(例えばねじ結合)を介して外側シャフト126に対して軸方向に固定されており、また、内側シャフト128は結合(例えばねじ結合)を介してヨーク110に軸方向に固定されているため、外側シャフト126に対する内側シャフト128の軸方向移動は、ヨーク110をハブ108に対して軸方向に移動させ、ひいてはエンドエフェクタを第一の位置と第二の位置との間で作動させる。
【0050】
図2は、本開示の特定の局面の、コントロールシャフト204に結合された手術用器具チップ200、202を閉位置および開位置で示す略側面図のセットである。手術用チップ200は、エンドエフェクタ206、マルチパーツハブ208およびヨークを含むことができる。ヨークは、ハブ208内に配置され、ハブ208に対して軸方向に動いてエンドエフェクタ206を作動させることができる。手術用チップ200は、第一の(例えば閉)位置にあるエンドエフェクタ206を有することができる。手術用チップ202は、第二の(例えば開)位置にあるエンドエフェクタ206を有する手術用チップ200であることができる。手術用チップ200およびコントロールシャフト204は、
図1の手術用チップ100およびコントロールシャフト104であることができる。
【0051】
図2に示すように、手術用チップ200、202はコントロールシャフト204に結合されている。マルチパーツハブ208の近位ハブ214はコントロールシャフト204の外側シャフト226に結合(例えばねじ結合)されている。ヨークはコントロールシャフト204の内側シャフト228に結合(例えばねじ結合)されている。したがって、方向240への内側シャフト228の移動は、第一および第二の可動部分216、218を内方向234に移動させて、第一および第二の可動部分216、218を互いに対して閉じさせることができ、方向242へのヨーク210の移動は、第一および第二の可動部分216、218を外方向236に移動させて、第一および第二の可動部分216、218を互いから開かせ、離れさせる。内側シャフト228は、第一の位置と第二の位置との間のエンドエフェクタ206の作動を表すことができる距離244の範囲で動くことができる。
図2に示すように、第一および第二の可動部分216、218は把持鉗子のあご部であるが、他の可動部分を使用することもできる。
【0052】
図3は、本開示の特定の局面の、ハンドル346に結合されたコントロールシャフト304に取り付けられた手術用器具チップ302を含む最小侵襲手術用器具300を示す略側面図である。手術用器具300は、手術用チップ302(例えば、
図1の手術用チップ102)、コントロールシャフト304(例えば、
図1のコントロールシャフト104)およびハンドル346を含むことができる。手術用チップ302はコントロールシャフト304に取り外し可能に結合されている。いくつかの例において、コントロールシャフト304はハンドル346に取り外し可能に結合されることもできるが、そうである必要はない。いくつかの例において、コントロールシャフト304はハンドル346に永久的に結合される。
【0053】
手術用チップ302は、遠位ハブ312および近位ハブ314を含むマルチパーツハブを含むことができる。外科用チップ302は、近位ハブ314を介してコントロールシャフト304に取り外し可能に結合されることができ、そしてまた近位ハブは遠位ハブ312に永久的に結合され、その遠位ハブ312はエンドエフェクタ306に可動的に固定されている。
【0054】
ハンドル346は、手術用チップ302のエンドエフェクタ306を操作するための1つまたは複数のグリップ352を含むことができる。1つまたは複数のグリップ352の動き(例えば、互いに向かう、または互いから離れるなど、互いに対する動き)が、コントロールシャフト304の内側シャフトを外側シャフトに対して軸方向に動かし、ひいては手術用チップ302のヨークをハブに対して軸方向に動かし、それがエンドエフェクタを作動させる(例えば、第一の位置と第二の位置との間で動かす)。いくつかの例において、グリップ352の操作はさらに、ラチェット機構によって制御されることもできるが、常にそうである必要はない。いくつかの例において、ハンドル346は回転ノブ350を含むことができる。回転ノブ350は、コントロールシャフト304の回転を制御し、ひいては手術用チップ302の回転を制御するために操作することができる。
【0055】
いくつかの例において、ハンドル346はポート348を含むことができる。ポート348は、電気ポートおよびフラッシュポートの一方または両方として働くことができる。電気ポートとして使用されるとき、ポート348は、電流をコントロールシャフト304の内側シャフトに運ぶことができ、そしてまた内側シャフトがヨークを介してその電流を手術用チップ302のエンドエフェクタ306に通すことができる。この電流は、焼灼をはじめとする様々な電気外科的技術に使用することができる。フラッシュポートとして使用されるとき、ポート348は、例えばコントロールシャフト304の清浄化および/または滅菌を容易にするために、流体をコントロールシャフト304に通して流すのを可能にすることができる。いくつかの例において、例えばコントロールシャフト304がハンドル346に永久的に結合されているとき、フラッシュポートの使用は特に有用であることができる。いくつかの例において、ハンドル346は、それぞれが電気ポートおよび/またはフラッシュポートの1つまたは複数として働くことができる任意の数のポート348を含むことができる。
【0056】
図4は、本開示の特定の局面の手術用器具チップ400を示す分解略側面図である。手術用チップ400は、エンドエフェクタ406、マルチパーツハブ408およびヨーク410を含むことができる。マルチパーツハブ408は、互いに結合された遠位ハブ412および近位ハブ414でできていることができる。手術用チップ400は、
図1の手術用チップ100であることができる。
【0057】
エンドエフェクタ406は第一および第二の可動部分416、418を含むことができる。第一の可動部分416はピボット穴454および溝穴460を含むことができる。第二の可動部分418はピボット穴456および溝穴462を含むことができる。完全に組み立てられると、エンドエフェクタ406のピボット穴454、456は、互いおよび遠位ハブ412のピボット420と同軸に整列することができる。ピボット420は、ピボット穴454、456に嵌合してエンドエフェクタ406を遠位ハブ412に固定しながらも、第一および第二の可動部分416、418をピボット420を中心に自由に回転させる、棒状の物体、例えばリベット、ねじまたはボルトであることができる。
【0058】
ヨーク410はハブ408の内径に挿入することができる。ヨーク410は、手術用チップ400が完全に組み立てられると、第一および第二の可動部分416、418の両溝穴460、462に嵌合するピン458を含むことができる。ピン458がハブ408内で軸方向に動くとき、ピン458は、遠位ハブ412内で軸方向に固定されているピボット420に対して軸方向に動く。したがって、溝穴460、462の形状により、ピン458の軸方向移動は、第一および第二の可動部分416、418を第一の(例えば開)位置と第二の(例えば閉)位置との間で動かす。
【0059】
図5は、本開示の特定の局面の、互いに結合された近位ハブ514および遠位ハブ512を有する手術用器具チップのハブ508を示す水平断面図である。
図5の断面は、
図4のハブ408の5:5線から見たものであることができる。ハブ508は、
図4のハブ408または
図1のハブ108であることができる。
【0060】
遠位ハブ512は、任意の適当なやり方で、例えばねじ結合および接着(例えばエポキシ接着剤による)の1つまたは複数を使用して、近位ハブ514に結合することができる。いくつかの例において、近位ハブ514は遠位ハブ512の一部分564と重なることができる。遠位ハブ512は導電性材料でできていることができるため、遠位ハブ512上の近位ハブ514の重なり部分564は、遠位ハブ512の少なくともその部分564を周囲組織から絶縁し、ひいては非標的組織に対する望まれない電気外科的作用の危険性を減らすように働くことができる。
【0061】
遠位ハブ512は、リベットなどの任意の適当な物体であることができるピボット520を含むことができる。ピボット520は、エンドエフェクタを遠位ハブ508に固定するために使用されることができる。近位ハブは、例えばねじ522の使用を通して、コントロールシャフトに結合することができる。
【0062】
図6は、本開示の特定の局面の、別々にある近位ハブ614および遠位ハブ612を有する手術用器具チップのハブ608を示す水平断面図である。
図5の断面は、
図4のハブ408の5:5線から見たものであることができる。遠位ハブ612は、
図5の遠位ハブ512、
図4の遠位ハブ412または
図1の遠位ハブ112であることができる。近位ハブ614は、
図5の遠位ハブ514、
図4の遠位ハブ414または
図1の遠位ハブ114であることができる。
【0063】
いくつかの例において、遠位ハブ612は、近位ハブ614のねじ668と係合することができるねじ666を含むことができる。近位ハブ614のねじ668は、近位ハブ614をコントロールシャフトに結合するために使用されるねじ(例えば、
図5のねじ522)とは別であることもできるし、その一部であることもできる。
【0064】
いくつかの例において、遠位ハブ612および/または近位ハブ614は、遠位ハブ612と近位ハブ614との結合を容易にするために使用される他の結合機構を含むこともできる。例えば、遠位ハブ612および近位ハブ614は粗面(例えばクロスハッチ模様面)を含むことができ、その粗面にエポキシを塗布して、遠位ハブ612および近位ハブ614が互いに結合されたとき、それらの間により確固な結合を提供することができる。
【0065】
いくつかの例において、遠位ハブ612および近位ハブ614は、ねじ666、668およびエポキシを使用して互いに結合されることができる。一例においては、エポキシを、遠位ハブ612および近位ハブ614の一方または両方に、例えばねじ666、668または他の箇所で塗布したのち、遠位ハブ612と近位ハブ614とを螺合することができる。ねじ666、668は、エポキシが硬化する間、遠位ハブ612および近位ハブ614を所定の位置に維持するのに役立つことができる。
【0066】
遠位ハブ612を近位ハブ614に固定するための他の技術を使用することもできる。いくつかの例において、遠位ハブ612は近位ハブ614に取り外し可能に結合されることができる。いくつかの例において、遠位ハブ612と近位ハブ614との間の取り外し可能な結合は、近位ハブ614が、手術用チップの残り部分よりも先にすり減るならば、新たな近位ハブと交換されるのを可能にすることができる。
【0067】
図7は、本開示の特定の局面にしたがって手術用器具チップを使用するプロセス700を示すフローチャートである。ブロック702で、手術用チップを提供することができる。手術用チップは、
図1の手術用チップ100などの任意の適当な手術用チップであることができる。いくつかの例において、手術用チップは、それぞれが異なるエンドエフェクタを有する複数の手術用チップのキットから提供することもできる。いくつかの例において、手術用チップを提供する工程は、滅菌パウチ中で滅菌された手術用チップを提供することを含むことができる。
【0068】
ブロック704で、手術用チップをハンドピースに結合することができる。ハンドピースは、ハンドルに(例えば永久的または取り外し可能に)結合されたコントロールシャフトを含むことができる。手術用チップはハンドピースに取り外し可能に結合されることができる。いくつかの例において、手術用チップをハンドピースに結合する工程は、手術用チップのヨークをハンドピースの内側シャフトに螺合することを含むことができる。いくつかの例において、手術用チップをハンドピースに結合する工程は、手術用チップの近位ハブをハンドピースの外側シャフトに螺合することを含むことができる。いくつかの例において、手術用チップをハンドピースに結合する工程は、手術用チップのヨークをハンドピースの内側シャフトに螺合し、手術用チップの近位ハブをハンドピースの外側シャフトに螺合することを含むことができる。
【0069】
ブロック706で、手術用チップを使用して外科的処置を実施することができる。いくつかの例において、外科的処置を実施する工程は、手術用チップを使用して、手術用チップに隣接する組織に電流を通すことを含むことができる。いくつかの例において、手術用チップに隣接する組織に電流を通すことは、手術用チップのエンドエフェクタに隣接する標的組織に電流を通し、かつ、手術用チップの近位ハブに隣接する非標的組織に電流を印加しないことを含むことができる。いくつかの例において、外科的処置を実施する工程は、患者内で手術用チップのエンドエフェクタを作動させることを含むことができる。いくつかの例において、外科的処置を実施する工程は、手術用チップのエンドエフェクタを作動させて、エンドエフェクタの1つまたは複数の可動部分を組織の周囲で閉じることを含むことができる。
【0070】
ブロック708で、手術用チップをハンドピースから取り外すことができる。手術用チップをハンドピースから取り外す工程は、ブロック704の手術用チップをハンドピースに結合する工程の反対、例えば手術用チップをハンドピースからねじ戻すことであることができる。
【0071】
ブロック710で、手術用チップを滅菌することができる。いくつかの例において、手術用チップを滅菌する工程は、手術用チップを清浄化し、滅菌することを含むことができる。いくつかの例において、手術用チップを滅菌する工程は、手術用チップをオートクレーブ処理することを含むことができる。いくつかの例において、手術用チップを滅菌する工程は、手術用チップを121℃または135℃以上の温度に付すことを含むことができる。いくつかの例において、手術用チップを滅菌する工程は、手術用チップを滅菌パウチに入れることを含むことができる。
【0072】
ブロック712で、手術用チップを、滅菌したのち、ハンドピース、例えばブロック704で使用されたハンドピースまたは別のハンドピースに結合することができる。ブロック712で滅菌された手術用チップをハンドピースに結合する工程は、ブロック706の外科的処置と関連する外科手術とは別のさらなる外科手術の一部として実施されることもできる。例えば、ブロック706の外科的処置は第一の患者に対して実施されることができ、ブロック712で滅菌された手術用チップをハンドピースに結合する工程は、第二の患者に対して実施される外科的処置と関連する(例えば、それに備えて実施される)ことができる。ブロック714で、ブロック712からの滅菌された手術用チップを使用して外科的処置を実施することができる。
【0073】
いくつかの例において、プロセス700は、ブロック712、714へ進む代わりに、後続の外科的処置に備えてブロック710からブロック702へと逆戻りすることもできる。いくつかの例において、ブロック708ののち、手術用チップが、もはや使用に耐えないと思われるほど多く回数の使用・滅菌サイクル(例えばブロック702、704、706、708、710)を受けているならば、それを処分または一新することができる。
【0074】
図8は、本開示の特定の局面の、フレア状近位ハブ814を有する手術用器具チップ800、802を閉位置および開位置で示す略側面図のセットである。手術用チップ800は、エンドエフェクタ806、マルチパーツハブ808およびヨーク810を含むことができる。ヨーク810は、ハブ808内に配置され、ハブ808に対して軸方向に動いてエンドエフェクタ806を作動させることができる。手術用チップ800は、第一の(例えば閉)位置にあるエンドエフェクタ806を有することができる。手術用チップ802は、第二の(例えば開)位置にあるエンドエフェクタ806を有する手術用チップ800であることができる。手術用チップ800は
図1の手術用チップ100であることができる。
【0075】
エンドエフェクタ806は1つまたは複数の可動部分を含むことができる。
図8に示すように、エンドエフェクタ806は第一の可動部分816および第二の可動部分818を含む。第一および第二の可動部分816、818は、ハブ808に固定されたピボット820を中心に回転可能である。ピボット820は、マルチパーツハブ808の遠位ハブ812に固定されることができる。したがって、エンドエフェクタ806は、マルチパーツハブ808の遠位ハブ812に結合されることができる。第一および第二の可動部分816、818は、ヨーク810に対して可動的に結合されて、ヨーク810がハブ808に対して軸方向に動かされるとき、第一および第二の可動部分816、818が、手術用チップ800に関して示す第一の位置と、手術用チップ802に関して示す第二の位置との間で動くのを可能にすることができる。例えば、方向840へのヨーク810の移動は、第一および第二の可動部分816、818を内方向834に移動させて、第一および第二の可動部分816、818を互いに対して閉じさせることができ、方向842へのヨーク810の移動は、第一および第二の可動部分816、818を外方向836に移動させて、第一および第二の可動部分816、818を互いから開かせ、離れさせる。距離844の範囲のヨーク810の移動は、第一の位置と第二の位置との間のエンドエフェクタ806の作動を表すことができる。
図8に示すように、第一および第二の可動部分816、818は把持鉗子のあご部であるが、他の可動部分を使用することもできる。
【0076】
いくつかの例において、エンドエフェクタ806の可動部分は、第一または第二の位置にあるとき、遠位ハブ812の周を超えて突き出る近位端を有することができる。
図8に示すように、手術用チップ802の第一および第二の可動部分816、818は、エンドエフェクタ806の作動中に経路に沿って動く近位端838を有し、その経路は近位端838を遠位ハブ812の周の外に出す。遠位ハブ812は、近位端838がそれを通過し得る1つまたは複数の溝穴を含むことができる。近位ハブ814は、そのような溝穴まで、またはほぼそのような溝穴まで、遠位ハブ812の一部分と重なることができる。いくつかの例において、例えば作動中にエンドエフェクタの近位端が遠位ハブの周内にとどまり、それゆえに溝穴が存在しないならば、近位ハブは、ピボット820もしくはほぼピボット820または遠位ハブの遠位端もしくはほぼ遠位ハブの遠位端まで延びる遠位ハブの一部分と重なることもできる。
【0077】
マルチパーツハブ808は、近位ハブ814に結合された遠位ハブ812を含むことができる。遠位ハブ812は、金属、例えばエンドエフェクタ806および/またはヨーク810に使用されるものと同じ金属でできていることができるが、近位ハブ814は、PEEKなどの絶縁体でできていることができる。近位ハブ814は、遠位ハブ812の一部分と重なり、それを取り囲むことができるが、必ずしもそうである必要はない。
【0078】
手術用チップ800は、コントロールシャフト804に取り外し可能に結合することができる。コントロールシャフト804は内側シャフト828および外側シャフト826を含むことができる。例示を目的として、外側シャフト826は部分切欠き図で示され、内側シャフト828は切欠き側面図で示されている。
【0079】
内側シャフト828は、ヨーク810を軸方向に動かすことによって外側シャフト826内で軸方向に動かされて、エンドエフェクタ806の作動を容易にすることができる。内側シャフト828ならびにヨーク810およびエンドエフェクタ806は、導電性材料、例えば導電性金属でできていることができる。外側シャフト826は、PEEKなどの電気絶縁材料でできていることができる。外側シャフト826は近位ハブ814と同じ材料でできていることができる。
【0080】
近位ハブ814は、コントロールシャフト804の外側シャフト826に取り外し可能に結合することができ、ヨーク810は、コントロールシャフト804の内側シャフト828に取り外し可能に結合することができる。近位ハブ814は、外側シャフト826のねじ830(例えば雄ねじ)と係合するねじ822(例えば雌ねじ)を含むことができる。ヨーク810は、内側シャフト828のねじ832(例えば雌ねじ)と係合するねじ824(例えば雄ねじ)を含むことができる。例示を目的として、手術用チップ800に関して、ねじ822は点線で示されている。いくつかの例において、ねじ822と824とは同軸である。同様に、ねじ830と832とは同軸であることができる。
【0081】
図8および他の適当な図に関して本明細書中で使用される、内側シャフト828の移動またはヨーク810の移動とは、それぞれ、外側シャフト826に対する内側シャフト828の移動またはハブ808に対するヨーク810の移動をいう。ハブ808は、外側シャフト826と近位ハブ814との間の結合(例えばねじ結合)を介して外側シャフト826に対して軸方向に固定されており、また、内側シャフト828は結合(例えばねじ結合)を介してヨーク810に軸方向に固定されているため、外側シャフト826に対する内側シャフト828の軸方向移動は、ヨーク810をハブ808に対して軸方向に移動させ、ひいてはエンドエフェクタを第一の位置と第二の位置との間で作動させる。
【0082】
近位ハブ814は、近位ハブ814の外径がその長さにかけて変化するフレア状のプロファイルを有することができる。いくつかの例において、近位ハブ814の近位端は、コントロールシャフトの外側シャフトの直径に一致する直径を有することができる。いくつかの例において、近位ハブ814の外径は、近位ハブ814の近位端から遠位方向へ移動するにつれ増大することができる。いくつかの例において、近位ハブ814の外径は、近位ハブ814の近位端から遠位方向へ移動するにつれ最大直径まで増大したのち、近位ハブ814の遠位端に向けて遠位方向に移動するにつれ減少することができる。近位ハブ814のプロファイルは、任意の適当な輪郭(例えば凸形または凹形)または輪郭の組み合わせを有することができる。いくつかの例において、近位ハブ814の最大外径は、エンドエフェクタ806の近位端838の最大半径方向範囲に等しい、またはほぼ等しい、ハブ808の中心線からの半径方向範囲を有することができる。例えば、
図8の手術用チップ802を参照しながら示すように、近位端838は、ハブ808の中心線から、近位ハブ814の最大外径と同じ量またはほぼ同じ量だけ半径方向に延びることができる。
【0083】
前記態様の詳細な説明は、例示された態様を含め、例示および説明のみを目的として提示されたものであり、網羅的であること、または開示されたとおりの形態へ限定されることを意図したものではない。当業者には、その数多くの変形、適応および使用が明らかであろう。
【0084】
以下に使用されるように、一続きの例への参照は、そのような例それぞれを離接的に参照するものと理解されなければならない(例えば、「例1~4」は「例1、2、3または4」と理解されなければならない)。
【0085】
例1は、
第一の位置から第二の位置へと移動可能なエンドエフェクタであって、組織と接触するための遠位領域と、近位領域とを有する、エンドエフェクタ;
該第一の位置と該第二の位置との間で該エンドエフェクタを操作するための、該エンドエフェクタの該近位領域に結合されたヨークであって、該ヨークがねじ付き近位端を含み、該ヨークおよび該エンドエフェクタが導電性材料でできており、該ヨークと該エンドエフェクタとが電気的に結合されている、ヨーク;ならびに
該ヨークの周囲に配置されたハブであって、該ハブが遠位ハブおよび近位ハブを含み、該エンドエフェクタがピボットにおいて該遠位ハブに結合され、該近位ハブが非導電性材料でできており、該近位ハブがねじ付き近位端を含む、ハブ
を含む手術用チップである。
【0086】
例2は、近位ハブがポリエーテルエーテルケトン製である、例1の手術用チップである。
【0087】
例3は、近位ハブがねじ接続によって遠位ハブに結合されている、例1または2の手術用チップである。
【0088】
例4は、近位ハブがエポキシによって遠位ハブにさらに結合されている、例1~3の手術用チップである。
【0089】
例5は、ヨークのねじ付き近位端と近位ハブのねじ付き近位端とが同軸にねじを切られている、例1~4の手術用チップである。
【0090】
例6は、近位ハブが遠位ハブの一部分を取り囲む、例1~5の手術用チップである。
【0091】
例7は、エンドエフェクタが、剪刀、把持鉗子、パンチおよび剥離鉗子からなる群より選択される、例1~6の手術用チップである。
【0092】
例8は、遠位ハブが、第一の位置と第二の位置との間のエンドエフェクタの移動中に該エンドエフェクタの近位領域を受けるための溝穴を含み、近位ハブが、該溝穴よりも近位方向に位置する該遠位ハブの一部分を取り囲む、例1~7の手術用チップである。
【0093】
例9は、近位ハブが、130KV/cm以上の絶縁破壊強さを有する材料でできている、例1~8の手術用チップである。
【0094】
例10は、近位ハブが6.0mm以下の外径を有する、例1~9の手術用チップである。
【0095】
例11は、近位ハブが、オートクレーブ処理可能かつ滅菌可能な材料でできている、例1~10の手術用チップである。
【0096】
例12は、近位ハブが、120℃以上のガラス転移温度を有する材料でできている、例1~11の手術用チップである。
【0097】
例13は、遠位ハブの遠位端とヨークの近位端との間の長さが5cm以下である、例1~12の手術用チップである。
【0098】
例14は、エンドエフェクタの遠位端とヨークの近位端との間の長さが9cm以下である、例1~13の手術用チップである。
【0099】
例15は、エンドエフェクタが固定部分および可動部分を含み、該固定部分がハブに対して固定されている、例1~14の手術用チップである。
【0100】
例16は、エンドエフェクタが第一の可動部分および第二の可動部分を含み、該第一の可動部分および該第二の可動部分が、第一の位置と第二の位置との間のエンドエフェクタの移動中にハブに対して動く、例1~15の手術用チップである。
【0101】
例17は、
例1~16の手術用チップ;および
該手術用チップに結合可能なハンドピースであって、該ハンドピースが、外側シャフト内で軸方向に動くことができる内側シャフトを含み、該外側シャフトが近位ハブのねじ付き近位端によって該近位ハブに結合可能であり、該内側シャフトがヨークのねじ付き近位端によって該ヨークに結合可能である、ハンドピース
を含む手術用装置である。
【0102】
例18は、外側シャフトが近位ハブと同じ材料でできている、例17の手術用装置である。
【0103】
例19は、外側シャフトが、近位ハブの外径と同じサイズである外径を有する、例17または18の手術用装置である。
【0104】
例20は、ハンドピースが、
該ハンドピースに手術用チップが結合されたとき電気信号を内側シャフトおよびヨークに通してエンドエフェクタに運ぶための、内側シャフトに電気的に結合された焼灼ピン
をさらに含む、例17~19の手術用装置である。
【0105】
例21は、さらなる手術用チップをさらに含み、ハンドピースから手術用チップを切り離したのち、該ハンドピースが該さらなる手術用チップに結合可能であり、該さらなる手術用チップが、該手術用チップのエンドエフェクタとは異なるさらなるエンドエフェクタを含む、例17~20の手術用装置である。
【0106】
例22は、
例1~16の手術用チップを提供する工程;
該手術用チップをハンドピースに結合する工程であって、該ハンドピースが、外側シャフト内で軸方向に動くことができる内側シャフトを含み、該手術用チップを該ハンドピースに結合する工程が、該ハンドピースの該外側シャフトを近位ハブのねじ付き近位端によって該手術用チップの該近位ハブに結合し、該ハンドピースの該内側シャフトをヨークのねじ付き近位端によって該手術用チップの該ヨークに結合することを含む、工程;
該手術用チップを該ハンドピースから切り離す工程;および
該手術用チップをオートクレーブ処理する工程
を含む方法である。
【0107】
例23は、オートクレーブ処理された手術用チップをハンドピースまたはさらなるハンドピースに結合する工程;および外科的処置中に組織を該手術用チップのエンドエフェクタと接触させる工程をさらに含む、例22の方法である。
【0108】
例24は、ヨークおよびエンドエフェクタを通して電流を組織に印加する工程をさらに含む、例22または23の方法である。
【0109】
例25は、ヨークを通して運ばれる電流が、近位ハブを通して運ばれない、例24の方法である。
【国際調査報告】