IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カプレット エーホーエフ.の特許一覧

<>
  • 特表-微生物除去 図1
  • 特表-微生物除去 図2
  • 特表-微生物除去 図3
  • 特表-微生物除去 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】微生物除去
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/77 20060101AFI20220420BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20220420BHJP
   A61L 101/34 20060101ALN20220420BHJP
【FI】
A61K31/77
A61P31/04
A61P17/02
A61K9/08
A61K9/12
A61K9/10
A61K9/06
A61K9/02
A61K9/20
A61K47/10
A61K45/00
A61P31/12
A61P31/10
A61P33/00
A61L2/18
A61L101:34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552617
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 IS2020050007
(87)【国際公開番号】W WO2020178865
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】050256
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IS
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519014501
【氏名又は名称】カプレット エーホーエフ.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】スベインビヨルン ギズラルソン
【テーマコード(参考)】
4C058
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058AA13
4C058AA28
4C058BB07
4C058JJ08
4C058JJ23
4C076AA01
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA24
4C076AA25
4C076AA49
4C076BB01
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB26
4C076BB29
4C076BB30
4C076CC18
4C076CC19
4C076CC31
4C076CC32
4C076CC34
4C076CC35
4C076DD37
4C076DD46
4C076EE23
4C084AA19
4C084AA23
4C084MA02
4C084MA12
4C084MA13
4C084MA31
4C084MA34
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZA90
4C084ZB31
4C084ZB32
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZB37
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA12
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA28
4C086MA31
4C086MA34
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZA90
4C086ZB31
4C086ZB32
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB37
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、既知の薬理学的効果を有さない不活性ポリマーであるメトキシポリエテレングリコールが微生物と表面との間に侵入し、微生物を除去するか、または微生物の表面への付着(attachment)または付着(adherence)を解除し、それによって創傷治癒を著しく改善し、微生物の感染およびコロニー形成を排除することができるという新規の発見に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品としての使用のためのメトキシポリエチレングリコール。
【請求項2】
液体または半液体製剤中に、約0.1~約99%の範囲の濃度で製剤化され、該製剤は生理学的に許容される溶媒をさらに含む、請求項1に記載の医薬品としての使用のためのメトキシポリエチレングリコール。
【請求項3】
前記メトキシポリエチレングリコールは、式I;
【化1】
で表され、ここでnは1~50の範囲の整数である、請求項1に記載の医薬品としての使用のためのメトキシポリエチレングリコール。
【請求項4】
液剤、軟膏、スプレー、エアロゾル、ミスト、ドロップ、クリーム、ゲル、坐剤、膣坐剤(vagitory)、舌下トローチ(sublingual lozenge)、トローチ剤、咽頭ドロップ(pharynx drop)、点耳薬、副鼻腔ドロップ(sinus drop)、点鼻薬からなる群から選択される形態の液体製剤である、請求項2に記載の医薬品としての使用のためのメトキシポリエチレングリコール。
【請求項5】
前記製剤は、エタノール、抗菌性脂質および/または抗ウイルス剤、抗生物質、または抗真菌剤をさらに含む、請求項2に記載の医薬品としての使用のためのメトキシポリエチレングリコール。
【請求項6】
前記メトキシポリエチレングリコールは、追加の活性薬剤を含まない製剤で使用される、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬品としての使用のためのメトキシポリエチレングリコール。
【請求項7】
前記製剤は、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノラウレート、プロピレングリコールモノカプレート、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート、グリセリンジカプリン、グリセリンジカプリレート、グリセリンジラウレート、グリセリントリカプリン、グリセリントリカプリレート、グリセリントリラウレート、オクチルグリセロール、モノミリスチン、モノパルミトオレイン、モノオレイン、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される抗菌活性脂質をさらに含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の医薬品としての使用のためのメトキシポリエチレングリコール。
【請求項8】
前記メトキシポリエチレングリコールは、約0.1%~約99%の範囲の濃度、より好ましくは、約1%~約95%の範囲の濃度、より好ましくは、約3%~約90%の範囲の濃度である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬品としての使用のためのメトキシポリエチレングリコール。
【請求項9】
微生物感染の治療または予防のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬品としての使用のためのメトキシポリエチレングリコール。
【請求項10】
ウイルス、病原性細菌、真菌、または寄生虫による前記微生物感染の治療または予防のための、請求項9に記載の医薬品としての使用のためのメトキシポリエチレングリコール。
【請求項11】
粘膜、皮膚または創傷から微生物を除去または低減するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬品としての使用のためのメトキシポリエチレングリコール。
【請求項12】
哺乳動物の鼻粘膜、眼粘膜、口腔粘膜(otal mucosa)、咽頭、喉頭、副鼻腔、口腔、舌側面(gingual surface)、頬粘膜、膣表面、直腸表面、尿管表面(urether surface)、男性器、皮膚表面、または創傷への微生物付着を低減または除去するための、請求項10に記載の医薬品としての使用のためのメトキシポリエチレングリコール。
【請求項13】
創傷治癒治療において使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬品としての使用のためのメトキシポリエチレングリコール。
【請求項14】
皮膚治癒、創傷治癒、および/または微生物感染の治療にける使用のためのメトキシポリエチレングリコール。
【請求項15】
前記メトキシポリエチレングリコールは、哺乳動物の鼻粘膜、眼粘膜、口腔粘膜、咽頭、喉頭、副鼻腔、口腔、舌側面(gingual surface)、頬粘膜、膣表面、直腸表面、尿管表面(urether surface)、男性器、皮膚表面、または創傷から選択される表面に塗布される、請求項14に記載の使用のためのメトキシポリエチレングリコール。
【請求項16】
医療装置および/またはインプラントを処理して、前記装置またはインプラントの殺菌性汚染(microbicidal contamination)を低減または排除するための方法であって、前記装置またはインプラントの表面にメトキシポリエチレングリコールを含む液体製剤を塗布することを含む方法。
【請求項17】
留置ポート、ペースメーカー、植え込み型除細動器、歯科インプラント、義歯、子宮内避妊器具(IUD)、コンドーム、およびチタンまたは鋼製のプレートおよびネジを含む骨折の修復に使用されるインプラントから選択される装置またはインプラントを処理するための、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記液体製剤は、約0.1~約99%の範囲の濃度のメトキシポリエチレングリコールを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記液体製剤は、生理学的に許容される溶媒をさらに含み、任意選択で、エタノール、抗菌性脂質および/または抗ウイルス剤、抗生物質、または抗真菌剤をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記液体製剤は、殺菌剤(mirobicidal agent)、抗ウイルス剤、または抗真菌剤等の追加の活性薬剤を含まない、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面からの殺菌的除去(microbicidal removal)のための化合物の新規な医薬使用に関するものであり、感染、創傷治癒、および健康の改善の治療または予防を可能にする。
【背景技術】
【0002】
微生物の付着(adhesion)または付着(attachment)は、病原菌のコロニー形成の必要条件であり、粘膜表面、ならびに創傷への感染、または皮膚感染を引き起こす。微生物の中で、細菌は通常、表面(皮膚、粘膜、または創傷に付着(attached)または付着(adhered)していることが見出されるため、最も研究されている。この付着はアンカーとして説明することができ、微生物は、口腔内で噛んだり飲み込んだりする際の粘膜および唾液の流れ等、表面から微生物を除去する可能性のある様々な力に耐えることができる(Klemm P and Schembri MA. Bacterial adhesins: function and structure. Int. J. Med. Microbiol. 290(1):27-35,2000)。病原性細菌、ウイルス、真菌。または寄生虫の付着のメカニズムを説明する多くのメカニズムが研究されてきた。ここで、異なる種は、選択した表面に付着するための異なる解決策を有する。それは、皮膚の特定の部分、創傷、呼吸器粘膜、口腔粘膜、胃腸粘膜、または他の表面である可能性がある。エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)は、研究されているこれらの病原性細菌の1つである。それは、3つの分子を使用して回腸遠位部に付着し、コロニーを形成して感染を誘発する。これらは、インベイシン、YadA、Ail等のアドヘシンと呼ばれ、インベイシンは回腸遠位部の小襞細胞上のβ1インテグリンに結合するため、腸内感染に必要である(Leo JC and Skurnik M, Adhesins of human pathogens from the genus Yersinia. In Bacterial Adhesion, Linke D and Goldman A (Eds),Springer pp.1-15)。微生物が非生物学的表面等の表面に付着する場合、それはバイオフィルムと呼ばれる(Hook et al. Combinatorial discovery of polymers resistant to bacterial attachment. Nature Biotechnology, 30, 868-875, 2012.)。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、先行技術において非活性賦形剤として使用され、細菌、ウイルス、真菌、または寄生虫等の微生物を殺すことができない化合物が、皮膚または創傷等の処理された表面上に薄膜を形成し、その結果、表面から微生物が放出または除去され、感染した粘膜または感染した皮膚または創傷が治癒させる、驚くべき実質的効果の発明者らの発見に基づく。本発明は、特に、ウイルス、病原性細菌、真菌、または寄生虫による、哺乳動物の鼻、眼、口(otal)、咽頭、喉頭、副鼻腔、口腔、舌(gingual)、頬、膣、尿管(urether)、男性器、皮膚表面または創傷への感染または微生物の付着を除去するための賦形剤としてこれまで使用されてきたこれらの化合物の使用に関する。
【0004】
本発明によれば、好ましくは約0.01%~約99.5%の範囲の濃度、より好ましくは、約0.2%~約98%の範囲の濃度、さらにより好ましくは、約0.5%~約95%の範囲の濃度で好適に製剤化されたメトキシポリエチレングリコールは、感染した粘膜、皮膚表面、または創傷に驚くべき効果を有し、微生物を除去して粘膜を治癒させる。
【0005】
したがって、一つの態様では、本発明は、特に微生物除去による、微生物感染の治療または予防のための、医薬品としての使用のためのメトキシポリエチレングリコールを提供する。
【0006】
別の態様では、本発明は、皮膚および/または創傷治癒に使用するための、および/または微生物感染、特に露出した皮膚または粘膜(たとえば、間擦疹)の感染、または感染した創傷の治療に使用するためのメトキシポリエチレングリコールを提供する。
【0007】
メトキシポリエチレングリコールを含む本発明の製剤は、表面から微生物の付着を除去し、創傷、感染した皮膚、または感染した粘膜表面を治癒させることによる、驚くほど強力な殺菌効果を有する。メトキシポリエチレングリコールは、ウイルス、病原性細菌、真菌、または寄生虫による、哺乳動物の鼻、眼、口(otal)、咽頭、喉頭、副鼻腔、口腔、舌(gingual)、頬、膣、男性器、様々な皮膚表面または創傷への感染を治療または予防するために使用することができるが、これらには限定されない。
【0008】
特定の製剤または組成物(本文脈において、これらの用語は同義語である)は、好ましくは、0.01~99.5%の範囲、好ましくは0.2~98%の範囲、より好ましくは0.5~95%の範囲の濃度のメトキシポリエチレングリコールを含む。製剤は、感染した粘膜および皮膚の表面に驚くべき効果をもたらし、微生物を除去して粘膜を治癒させた。本発明の一つの実施形態では、製剤は、抗菌化合物と共に上記のメトキシポリエチレングリコール化合物を含み、微生物がメトキシポリエチレングリコールによって感染表面から除去され、抗菌化合物によって殺されることを提供する。感染表面は、一般に、任意の様々な哺乳動物の表面、たとえばヒトまたは他の動物の鼻、眼、口(otal)、咽頭、喉頭、副鼻腔、舌(gingual)、頬、口腔、直腸、膣、男性器、様々な皮膚表面または創傷である。
【0009】
本発明のさらなる態様は、皮膚上、皮膚内、または粘膜におけるウイルス、細菌、真菌、または寄生虫によって引き起こされる感染症、特に鼻、眼、口(otal)、咽頭、副鼻腔、舌(gingual)、頬、および膣の粘膜、または口腔、男性器、様々な皮膚表面または創傷における感染症を予防または治療するための方法に関し、有効量のメトキシポリエチレングリコールを有効成分として含む製剤を投与することを含む。
【0010】
あるいは、本発明によれば、その生体接着特性のために、メトキシポリエチレングリコールは、必要な栄養素を吸収できないよう、微生物の表面を覆う薄膜を誘導するような方法で、微生物の死をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】皮膚の感染を示す間擦疹。
図1B図1Aと同じ患者および視点で、1週間の治療後、皮膚が治癒したことを示す。
図2A】つま先の爪の周りの感染。
図2B図2Aと同じ患者で、一週間後、本発明を使用した後、治癒が起こった。
図3A】抗生物質または抗真菌治療を試みた後、数ヶ月間治癒しなかった重傷。
図3B図3Aの患者で、本発明を使用して、わずか1週間後に有意な改善。
図4A】抗生物質または抗真菌治療を試みた後、数ヶ月間治癒しなかった重傷。
図4B図4Aと同じ患者で、本発明を使用して、わずか1週間後に有意な改善。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
用語「微生物除去」は、本明細書では、皮膚表面、創傷の表面、および様々な粘膜表面を含む生物学的表面への微生物の付着を破壊または低減する薄い生体接着性フィルムとして広がることができる化合物の作用を示すために使用される。
【0013】
用語「表面」は、本明細書では、様々な粘膜領域および皮膚領域、たとえば唇、爪の周りの領域、ほとんど換気されない領域の皮膚、たとえば乳房の下、腹の下、尻の間、外耳、男性器、直腸、つま先と指の間等に限定されない皮膚、およびたとえば鼻粘膜、副鼻腔粘膜(上顎洞、篩骨洞、および蝶形骨洞)、膣粘膜、直腸粘膜、口腔粘膜、頬粘膜、舌(gingual)、咽頭、喉頭、ならびに眼に限定されない粘膜領域、鼻涙チャネルと呼ばれる鼻から眼へのチャネル、および耳管と呼ばれる鼻から耳へのチャネルを記載するために使用される。表面はインタクトであるか、創傷等に罹患していてもよい。
【0014】
メトキシポリエチレングリコールは、一般に式I: CH3-(O-CH2-CH2n-OHで表すことができ、ここでnは1~50、1~40、1~30、1~20、または1~10の範囲の整数である。
【0015】
メトキシポリエチレングリコールは、ウイルスおよび/または細菌および/または真菌および/または寄生虫を除去し、それによって代替的に殺すことができる本発明による。微生物を殺すことは、ウイルス、細菌、真菌、または寄生虫が本発明による生体接着性材料の薄膜で覆われ、必要な栄養素を得ることができなくなり、また本発明による表面に付着(attach)または付着(adhere)できなくなることを意味する。このようにして、ウイルスは、メトキシポリエチレングリコールに効果的に曝露されると、細胞に感染することができなくなる。すなわち、ウイルスは、遺伝物質を複製できる細胞内にその遺伝物質を導入することができなくなる。細菌、真菌、または寄生虫の場合、メトキシポリエチレングリコールに効果的に曝露されると、生命の基本的な機能を実行できなくなる;特に、細菌、真菌、または寄生虫は、細胞の物理的完全性を維持するために必要な栄養素を得ることができなくなる。本明細書で与えられる特許請求の範囲および説明から分かるように、メトキシポリエチレングリコールは、ヒト等であるがこれに限定されない哺乳動物の表面から微生物を排除および殺す(terminate)ことができると考えること、および仮定することは正当であると考えられる。
【0016】
本発明の製剤は、一般に、液体または半液体の製剤である。現在好ましい製剤は、液剤、乳剤、懸濁剤、粘性流体、ゲルまたはゲル様組成物に限定されない半固体、特にヒドロゲル、または坐剤または膣坐剤(vagitory)を含み、本明細書に定義される表面、たとえば特に哺乳動物の鼻、眼、口(otal)、咽頭、喉頭、副鼻腔、口腔、頬、舌(gingual)、直腸、膣、男性器、または皮膚表面に塗布し、接触したままとすることができる。多くの粘膜表面には、水溶液が有用である。
【0017】
液体製剤は、液剤、軟膏、スプレー、エアロゾル、ミスト、ドロップ、クリーム、ゲル、坐剤、膣坐剤(vagitory)、舌下トローチ(sublingual lozenge)、トローチ剤、咽頭ドロップ(pharynx drop)、点耳薬、副鼻腔ドロップ(sinus drop)、点鼻薬からなる群から選択される形態であってもよい。
【0018】
製剤中の水溶液は、好ましくは、製剤の成分、通常は主成分として水を有することによって提供されるが、水溶液はまた、特定の場合には、可溶化剤、追加の生体接着剤、および界面活性剤等を含むがこれらに限定されない様々な賦形剤によっても提供することができることが企図される。
【0019】
一部の実施形態では、製剤は、追加の活性薬剤を含まない。あるいは、製剤は、一つまたは複数の抗菌性脂質および/または一つまたは複数の抗ウイルス剤、一つまたは複数の抗生物質、または一つまたは複数の抗真菌剤を含んでもよい。
【0020】
エタノール(エチルアルコール)は、たとえば、抗菌性脂質またはグリセリドを含む場合に、製剤に添加することができる。医薬組成物は、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノラウレート、プロピレングリコールモノカプレート、プロピレングリコールモノカプリレート、グリセリンジカプリン、グリセリンジカプリレート、グリセリンジラウレート、グリセリントリカプリン、グリセリントリカプリレート、グリセリントリラウレート、オクチルグリセロール、モノミリスチン、モノパルミトオレイン、モノオレイン、プロピレングリコールモノラウレート、ココアバター、およびそれらの組み合わせからなるがこれらに限定されない群から選択される生物活性のある脂質をさらに含んでもよい。本文中で特に明記されていない限り、すべての重量パーセントは、「調製済み(ready to use)」または「使用されている」組成物の総重量に基づく重量/重量パーセントである。
【0021】
本発明による製剤は、0.01~99.5%の範囲、好ましくは0.2~98%の範囲、より好ましくは0.5~95%の範囲のメトキシポリエチレングリコールを含む。選択された濃度は、本明細書でさらに記載されるように、意図される送達形態(液剤、スプレー、ゲル等)、および意図される塗布場所または表面に依存し得る。一部の実施形態では、メトキシポリエチレングリコールは、約1~50%の範囲または約20~99%の範囲、または好ましくは約3~45%の範囲または約20~95%の範囲の濃度で存在する。一部の実施形態では、ポリエチレングリコールは、約0.1%からまたは約0.2%からまたは約0.5%から、または1%からまたは約2%からまたは約3%からまたは約4%からまたは約5%からまたは約8%からまたは約10%からまたは約12.5%からまたは約15%からまたは約20%からまたは約25%から、約50%まで、または約48%まで、または約45%までまたは約40%まで、または約35%まで、または約30%まで、または約25%までの範囲の濃度で存在する。一部の実施形態では、ポリエチレングリコールは、約25%から、または約30%から、または約32%から、または約35%から、または約40%から、または約45%から、または約50%から、約99%まで、または約98%まで、または約96%まで、または約95%まで、または約92%まで、または約90%まで、または約85%まで、または約80%まで、または約75%まで、または約70%まで、または約65%まで、または約60%までの範囲の濃度で存在する。
【0022】
一部の実施形態では、ポリエチレングリコールは、約0.01%からまたは約0.02%からまたは約0.05%から、または約0.1%からまたは約0.2%からまたは約0.3%からまたは約0.4%からまたは約0.5%からまたは約0.8%からまたは約1%からまたは約1.1%からまたは約1.2%からまたは約1.5%からまたは約2%から、または約2.5%からまたは約3%から、約10%まで、または約9%まで、または約8%までまたは約7%まで、または約6%まで、または約5%まで、または約4%までの範囲の濃度で存在する。
【0023】
本発明による製剤中のメトキシポリエチレングリコールは、ヘルペスウイルス1型およびヘルペスウイルス2型(HSV-2)、HIV、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザAウイルス、およびパラインフルエンザウイルス2型、アデノウイルス、コロナウイルス、ライノウイルス、エンテロウイルス、ヒトメタニューモウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ジカウイルス;また、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミス(Staphylococcus epidermis)、スタフィロコッカスA(Streptococci A)、スタフィロコッカス・ピオゲネス(Streptococci pyogenes)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、ストレプトコッカスD(Streptococcus D)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、コリネバクテリウム 菌種 ノカルジア・アステロイデス(Corynebacteria sp. Nococardia asteroides)、ミクロコッカス 菌種 シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ラクトバチルス・イェンセニー(Lactobacillus jensenii)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、ナイセリア・ゴノレエ(Neisseria gonorrhoeae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、ベイロネラ・パルブラ(Veillonella parvula)、クレブシエラ菌種、ボルデテラ・パータッシス(Bordetella pertussis)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、コリネバクテリウム・ジフテリアエ(Corynebacterium diphtheria)、バチルス・アンシラシス(Bacillus anthracis)から選択されるが、これらに限定されない細菌;カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、C.アルビカンス(C. albicans)、C.トロピカリス(C. tripicalis)、C.パラプシローシス(C. parapsilosis)、C.グラブラータ(C. glabrata)、C.パラクルセイ(C. parakrusei)、C.ギリエルモンディ(C. guillermondi)、C.ドゥブリニエンシス(C. dubliniensis)、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)、マラセチアから選択されるが、これらに限定されない真菌;および「狂牛」病から選択されるが、これに限定されないプリオン、アメーバ性肉芽腫性脳炎、アカントアメーバ角膜炎、バベシア症、バランチジウム症、ブラストシスチス(blastocystosis)、クリプトスポリジウム(cryptosporidiosis)、シクロスポラ(cyclosporiasis)、二核アメーバ症、アメーバ症、ジアルジア症、イソスポーラ症、リーシュマニア症、マラリア、リノスポリジウム症、ネグレリア・フォーレリ(Naegleria fowleri)、肉胞子虫症、トキソプラズマ症、トリコモナス症、睡眠病、シャーガス病、サナダムシ、膜様条虫症、ベルティリアシス(bertielliasis)、孤虫症、住血吸虫症(ビルハルジア)、肝吸虫症、肝蛭症、吸虫、住血線虫症、アニサキス、回虫、フィラリア症、ジオクトフィーマ・レナリス(dioctophyme renalis)、メジナ虫症、顎口虫症、ハリセファロブス感染症、河川盲目症、テラジア症、トキソカラ症から選択されるが、これらに限定されない寄生虫のうちの1つ以上の表面への付着物をカプセル化、コーティングまたは除去するために好適に使用される。
【0024】
すでに指摘したように、メトキシポリエチレングリコールは、特定の実施形態では、使用目的および投与部位または表面に応じて、100mL未満、好ましくは10mL未満、より好ましくは3000μL未満の総体積内に有効量で存在する。特定の表面では、総量が1000μL未満、または25~300μLの範囲が望ましい。したがって、本発明の製剤は、一部の実施形態では、上記の範囲および量内の単位用量を提供する単位用量で提供される。
【0025】
本発明の医薬調製物は、この文脈において、本発明によって、驚くべきことに、各送達経路または部位に適切であり、微生物を除去および/または殺すことができる薬学的に許容される賦形剤を含む。ここで、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)は、好ましくは約0.1%から、たとえば約1%から、たとえば約3%から、約99%まで、たとえば約95%まで、たとえば約90%まで、たとえば約80%まで、たとえば約75%まで、たとえば約70%まで、たとえば約60%まで、たとえば約50%まで、たとえば約40%まで、たとえば約20%まで、たとえば約15%まで、たとえば約10%まで、たとえば約5%まで、たとえば約4%まで、またはたとえば約3%まで、またはたとえば約2%までの範囲内の濃度である、mPEG 350、mPEG 400、mPEG 550、mPEG 2000、mPEG 5000、mPEG 10,000、または分子量が200~10,000の範囲であってもよいがこれらに限定されない。たとえば、mPEGの濃度は、mPEGの濃度は、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、または約3.5%と同じくらい高くてもよいが、これらに限定されない。
【0026】
一部の実施形態では、医薬製剤は、mPEGに加えて追加の有効成分を含まない。一部の実施形態では、医薬製剤は、たとえば抗生物質等、mPEGに加えて抗菌活性を有する追加の有効成分を含まない。
【0027】
一部の実施形態では、医薬製剤は、吸収促進剤、吸水性ポリマー、ミクロスフェア、油、乳剤、リポソーム、酵素分解を阻害する物質、アルコール、有機溶媒、水、界面活性剤、疎水性剤、pH制御剤、保存剤および浸透圧制御剤、シクロデキストリンおよび噴霧剤またはそれらの混合物からなる群から選択される一つまたは複数の物質の少量をさらに含む。本明細書で使用される少量は、典型的には、2%未満、たとえば1%未満、たとえば0.5%未満、たとえば0.1%未満の濃度を指す。
【0028】
本明細書で使用されるメトキシポリエチレングリコールは、一般に、末端メチル基を有するポリエチレングリコールポリマーを指す。この用語はmPEGと省略することができる。式(I)に示されるように、本発明で使用されるメトキシポリエチレングリコール物質は、nは、1~50または1~25の範囲の整数、たとえば約2から、または約3から、または約4から、約50まで、たとえば約25まで、たとえば約22まで、または約20まで、または約15まで、または約12まで、または約10までの範囲の整数であるポリマー鎖長を有する。mPEGは、所与の範囲内で、比較的均一なポリマー長または様々なポリマー長の鎖の分布を有し得る。一部の実施形態では、分布は、それぞれ約7.2、約9.5、約11.7、および約14の平均であるnに対応する、約350、約450、約550、または約650の好ましい平均分子量を有する。一つの実施形態では、式Iで表される一つまたは複数の物質を含む製剤で使用される組み合わせ製品は、メトキシポリエチレングリコール350(Carbovax(商標)(DOW Chemical Company)等のmPEG 350)であり、別の実施形態では、使用される組み合わせは、メトキシポリエチレングリコール550550(mPEG 550、たとえば、Carbovax(商標))である。数値350および550は、それぞれ、それぞれの物質の平均分子量を指す。
【0029】
本発明による溶媒組成物での使用に特に好ましいのは、上記の式Iのポリマーの市販の溶媒を指すCarbovax(商標)Sentry(商標)(mPEG 350およびmPEG 550)であり、ここで、nは、主に、それぞれ、xおよびyであり、Dow Chemical Companyによって製造される。mPEG 350およびmPEG 550は、水、メタノール、エタノール、n-プロイパノール、グリセロール等のアルコール、および様々な油とあらゆる比率で混和性のある無色の液体であり、約155℃の沸点を有する。Dow Chemicalsが述べているように、mPEG 350およびmPEG 550の両方が、非希釈形態の非経口投与用の組成物に使用された場合、刺激性がないと報告されている。
【0030】
本発明に従って使用されるメトキシポリエチレングリコールは、たとえば、メトキシジエチレングリコール(m2EG)、メトキシトリエチレングリコール(m3EG)、メトキシテトラエチレングリコール(m4EG)、メトキシペンタエチレングリコール(m5EG)、メトキシヘキサエチレングリコール(m6EG)、メトキシヘプタエチレングリコール(m7EG)、メトキシオクタエチレングリコール(m8EG)、メトキシノナエチレングリコール(m9EG)、メトキシデカエチレングリコール(m10EG)、メトキシウンデカエチレングリコール(m11EG)、メトキシドデカエチレングリコール(m12EG)、メトキシトリデカエチレングリコール(m13EG)、およびメトキシテトラデカエチレングリコール(m14EG)であってもよい。エチレングリコールは、単一の化合物または2つ以上のメトキシ-n-エチレングリコール、たとえばCarbovax(商標)Sentry(商標)(mPEG 350またはmPEG 550)等の市販製品の混合物の形態で使用することができる。
【0031】
メトキシポリエチレングリコールは様々な品質で入手することができる。特に好ましいのは、The Dow Chemical CompanyのCarbovax(商標)Sentry(商標) mPEG 350等の高度に精製された品質である。
【0032】
好ましくは、ポリマーは、平均分子量が200~500の範囲のメトキシポリエチレングリコール(mPEG)および/またはポリエチレングリコール(PEG)、またはプロピレングリコール(PG)またはそれらの混合物、またはテトラエチレングリコール(4EG)およびペンタエチレングリコール(5EG)等の単一エチレングリコールである。
【0033】
膣送達または直腸送達等であるがこれらに限定されない本発明の好ましい態様によれば、組成物は、200~7500の範囲の平均分子量を有する99%(w/w)未満のポリエチレングリコールを含む。
【0034】
本発明はまた、たとえばイヌ、ネコ、ウサギ、モルモットであるが、これらに限定されないペット等、たとえばウマ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ニワトリであるが、これらに限定されない家畜等、または捕獲された野生動物である動物の表面に塗布するための方法にも関し、有効量のメトキシポリエチレングリコールは、本発明による製剤によって、治療される動物の表面に塗布される。各動物、投与部位に投与される量は、好ましくは、曝露される必要がある相対的なヒト/動物表面積に基づいて計算されるべきである。
【0035】
本発明はまた、機器またはインプラントの挿入前に排除されるべき細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、またはプリオン等の微生物で汚染される可能性のあるインプラントの外側または医療機器の外側(すなわち、インプラントまたは医療機器の外面または露出面)を本明細書に記載の製剤等のメトキシポリエチレングリコールを含む液体製剤を、インプラントまたは医療機器の外面または露出面に塗布することにより、処理する方法に関する。したがって、この方法は、留置ポート、ペースメーカー、ICD(植え込み型除細動器)、歯科インプラント、義歯、子宮内避妊器具(IUD)、コンドーム、および骨折の修復に使用されるインプラント(たとえば、鋼またはチタン製のプレートおよびネジ)等の機器およびインプラントの処理に好適であるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、メトキシポリエチレングリコールは、約0.1~約99%の範囲の濃度で、または本明細書に記載の範囲の好適な濃度で製剤中に含まれる。この方法の一部の実施形態では、液体製剤は、生理学的に許容される溶媒をさらに含み、一部の実施形態では、エタノール、抗菌脂質および/または抗ウイルス剤、抗生物質、または抗真菌剤等の追加の抗菌剤を任意選択でさらに含んでもよい。この方法のいくつかの実施形態では、製剤は、追加の有効成分を含まない(すなわち、追加の抗菌剤、抗ウイルス剤、または抗真菌剤等の追加の薬剤を含まない)。
【0036】
本発明の医薬製剤が投与される表面は、鼻、副鼻腔、膣、眼、耳、口、口腔、咽頭、生殖器、肺、胃腸管、または直腸等であるがこれらに限定されない微生物が定着する可能性がある哺乳動物の任意の粘膜であってもよく、好ましくは鼻、副鼻腔、耳、眼、口(頬、舌(gingual)、舌下、または硬口蓋)、咽頭、喉頭、膣、子宮、および直腸の空気の粘膜である。医薬製剤はまた、皮膚、男性器、つま先と指の間、爪の周りおよび爪の上に塗布することができる。
【0037】
本発明の医薬組成物は、舌下トローチ(sublingual lozenge)またはトローチ剤または頬、咽頭、耳、副鼻腔、または点耳薬のスプレーの形態で、または溶液、ミセル、ナノエマルジョンの形態で、任意選択で水に溶かしておよび/またはポリエチレングリコールまたはプロピレングリコールなどのポリマーを、任意選択でわずかに粘稠な溶液の形態で、または半固体またはゲルとして、または坐剤または膣坐剤(vagitory)の形態で一緒に投与することができる。
【0038】
一部の実施形態では、本発明の製剤は、ポリオキシエチレングリセリドをさらに含む。本明細書で使用される場合、それは、モノグリセリドまたはジグリセリドである、すなわち、グリセロール骨格に接続された1つまたは2つの脂肪酸部分、およびグリセリドのグリセロール骨格上の残りの1つまたは2つの部位の一方または両方に接続された1つまたは2つのポリオキシエチレングリコール基を有するグリセリドを指す。このような化合物の1つのタイプは、Cremer GmbH(ドイツ)のSoftigen 767と呼ばれる化合物、またはGattefosse(フランス)のラブラソル等のカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドの混合物、およびポリエチレングリコールのモノ脂肪酸およびジ脂肪酸エステルである。
【0039】
必要に応じて、本発明の医薬組成物は、任意選択で、治療薬の溶解度を高めるための追加の化合物を含んでもよい。そのような化合物の例は、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、およびそれらの異性体、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、トランスクトール(transcutol)、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および他のセルロース誘導体、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体等のアルコールおよびポリオール;平均分子量が約200~約6000のポリエチレングリコールのエーテルまたはテトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール、BASFから商品名テトラグリコールとして市販されている);2-ピロリドン、2-ピペリドン、ε-カプロラクタム、N-アルキルピロリドン、N-ヒドロキシアルキルピロリドン、N-アルキルピペリドン、N-アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、およびポリビニルピロリドン等のアミド;プロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、酢酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、モノ酢酸プロピレングリコール、ジ酢酸プロピレングリコール、ε-カプロラクトンおよびその異性体、δ-バレロラクトンおよびその異性体、β-ブチロラクトンおよびその異性体等のエステル;ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド(Arlasolve DMI(ICI))、N-メチルピロリドン(Pharmasolve(ISP))、モノオクタノイン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Gattefosseから商品名Transcutolで入手可能)等の当技術分野で知られている他の可溶化剤、および水を含む。
【0040】
坐剤または膣坐剤(vagitory)の製造のため、または追加の脂質が必要な場合、製剤は、カカオバター、高分子量ポリエチレングリコール、ヒマシ油、パラフィン油、およびアデプスソリダス(adeps solidus)からの一つまたは複数の物質を追加で含んでもよい。
【0041】
可溶化剤の混合物も本発明の範囲内である。示されている場合を除き、これらの化合物は標準的な商業的供給源から容易に入手可能である。
【0042】
好ましい可溶化剤は、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、メトキシポリエチレングリコール350-1500、ポリエチレングリコール200-1000、グリコフロール、トランスクトール、プロピレングリコール、およびジメチルイソソルビドを含む。特に好ましい可溶化剤は、ソルビトール、グリセロール、トリアセチン、エチルアルコール、PEG-300-400、グリコフロールおよびプロピレングリコールを含む。
【0043】
本発明の組成物に含めることができる可溶化剤の量は、特に限定されない。もちろん、そのような組成物が最終的に患者に投与されるとき、所与の可溶化剤の量は、当業者によって容易に決定される生体に許容される(bioacceptable)量に制限される。状況によっては、たとえば、蒸留または蒸発等の従来技術を使用して患者に組成物を提供する前に過剰な可溶化剤を除去して、治療薬の濃度を最大化するために、生体に許容される量をはるかに超える量の可溶化剤を含めることが有利な場合がある。典型的には、可溶化剤は、約1重量%~約100重量%、より典型的には約5重量%~約75重量%、または約5重量%~約25重量%の量で存在するであろう。
【0044】
製剤に必要および/または有用である可能性がある他の賦形剤は、以下のとおりである: 硝酸、リン酸、または酢酸、クエン酸塩等のpH制御剤;グリセリン、塩化ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、または安息香酸等の防腐剤および浸透圧制御剤;α-、β-、およびγ-シクロデキストリン、セルロースおよび誘導体等の粉末組成物;ミクロスフェア、ナノスフェア、ビロソーム、プロテオソーム、リポソーム、および乳濁液組成物、たとえば、デンプン、アルブミン、ゼラチン、またはレシチンまたはリゾレシチン;マイクロカプセル化された製剤;ブタン等の噴霧剤;水。
【0045】
製剤はまた、ノノキシノール-9等の界面活性剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤、グラミシジン等のチャネル形成イオノフォア、および塩化ベンザルコニウム、ドキュセートナトリウム、cholatc acidおよびその塩等の他の殺精子剤を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0046】
本発明による製剤および方法によって治療または予防することができる感染症の例は、細菌、ウイルス、寄生虫、または真菌によって引き起こされる皮膚または粘膜の任意の感染症であってもよく、本明細書に記載のメトキシポリエチレングリコールが有効である。粘膜(Mucosa)または粘膜(mucosal membrane)または表面は、口腔、耳、鼻、肺、胃腸、膣、または直腸の粘膜(およびその周辺)であってもよく、皮膚はインタクトな皮膚、創傷、または何らかの方法で損傷した皮膚であってもよい。皮膚または粘膜の感染を引き起こす可能性のあるそのような真菌、細菌、およびウイルスの例は、たとえば、例として皮膚糸状菌、黒色砂毛症、白色砂毛症、黒癬(Tines nigra)、癜風(Tines versicolor)等の真菌;たとえば、例として大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aerginosa)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylooccus aureus)等の細菌;たとえば、例としてインフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、牛疫ウイルス、イヌジステンパーウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、狂犬病ウイルス、単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、性器ヘルペス、水痘帯状疱疹、サイトメガロウイルス、およびエプスタイン・バーウイルス等のウイルスである。
【0047】
本発明による製剤は、レトロウイルス、たとえばヒト免疫不全ウイルス(HIV)、肉腫ウイルス、白血病ウイルス、およびヒトリンパ球向性ウイルス1型および2型による感染の予防または治療、および/または後天性免疫不全症候群(AIDS)の予防または治療に有用であることも企図される。
【実施例
【0048】
実施例1
本発明による製剤は、創傷または皮膚の感染症の鼻、咽頭、喉頭および副鼻腔のスプレー、点耳薬として使用され、鼻、咽頭、喉頭、副鼻腔、外耳道、外耳、創傷、または皮膚等のさらなる感染を除去およびそれにより予防するように調製され、以下の処方を含んでもよい:
【0049】
【表1】
【0050】
図1A、2A、3A、および4Aに示すように、製剤Iを使用する前の感染を示す。製剤を1週間使用した後、驚くべきことに、図1B、2B、3B、および4Bに見られるように有意な創傷治癒が見られた。すべての状況で、患者は抗生物質または抗真菌治療を長期間にわたって使用しようと試みた、成功しなかった。
【0051】
モノカプリンおよびモノラウリン(製剤II)の添加は、有意な創傷治癒および皮膚治癒に加えて、微生物が殺されたことを示した。
【0052】
実施例2
本発明による、鼻、副鼻腔、外耳道、外耳等の感染を予防および/または戦うための点鼻薬または点耳薬として使用するために調製された製剤は、以下の処方を含んでもよい:
【0053】
【表2】
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】