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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】複数回投与の眼液送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20220420BHJP
【FI】
A61M11/00 300F
A61M11/00 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552645
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(85)【翻訳文提出日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 US2020021504
(87)【国際公開番号】W WO2020181238
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】62/814,773
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517208816
【氏名又は名称】ケダリオン セラピューティックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キンタナ、レイナルド
(72)【発明者】
【氏名】イブリ、エフダ
(57)【要約】
複数回投与の眼液送達装置が提供される。流体送達デバイスの態様には、流体パッケージとアクチュエータとが含まれる。流体パッケージは、眼科用製剤のリザーバ、開口、および流体が開口を通じて排出されていないときに開口を密封するためのバルブ部材を含む。アクチュエータは、リザーバ内に存在する眼科用製剤が防腐剤を必要としないように(例えば、防腐剤を含まない眼科用製剤がリザーバ内に存在する場合など)、リザーバ内への外部物質または汚染物質の侵入を防止しないまでも、少なくとも低減するように、バルブ部材を動作させるように構成されている。また、流体送達アプリケーションで装置を使用する方法、および装置の構成要素を含むキットも提供される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を患者の眼に送達するための装置であって、
前記流体を保持するように構成されたリザーバ、開口、および前記流体が前記開口を通じて排出されていないときに前記開口を密封するように構成されたバルブ部材を含む流体パッケージと、
前記バルブ部材および/または前記リザーバの壁に機械的振動を与えることにより、前記開口を通じて前記流体を排出するように構成されたアクチュエータとを含む装置。
【請求項2】
前記アクチュエータが、前記バルブ部材の先端を振動させて前記開口に係合させたり前記開口から離脱させたりすることにより、前記開口から前記流体を排出するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記バルブ部材を通過して前記開口から前記流体を排出するのに十分な圧力変動を前記流体内に生成するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記流体が、防腐剤を含まない点眼液である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記リザーバが複数回投与リザーバである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前バルブ部材が、前記開口と係合する円錐形の先端を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記バルブ部材が、前記開口と係合する前記丸みを帯びた先端を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記バルブ部材が、前記開口と係合する先端を有し、前記先端が抗菌材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記開口が抗菌材料を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記アクチュエータが、前記リザーバの外面に配置され、前記リザーバの壁の少なくとも一部の振動を誘発するように構成された電磁トランスデューサを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記アクチュエータは、振動により前記流体に圧力変動を起こすことによって、前記開口から前記流体を排出するように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記流体パッケージが、前記流体が前記開口を通って排出されていないときに、前記バルブ部材の先端を前記開口に係合して保持するように構成された弾性ダイヤフラムを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
1~15μLの投与量を送達するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
150mm/秒以下で投薬を送達するように構成される、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の眼への液体の送達に関する。
【背景技術】
【0002】
点眼薬が眼や他の部位の疾患の治療に使用される例は多くある。点眼薬は、治療される疾患に応じて、これらに限定されないが、ステロイド、抗ヒスタミン薬、交感神経刺激薬、ベータ受容体遮断薬、副交感神経刺激薬プロスタグランジン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗生物質、抗真菌薬、または局所麻酔薬などの様々な異なる活性剤を含むことがある。点眼薬には薬が入っていないこともあるが、これは潤滑剤や涙液の代替物質となるものである。
【0003】
一般的に、点眼器は点眼薬の送達に用いられる。現在の点眼器は、多くの場合、対象者の頭を後ろに傾けるか、対象者が横になるか、対象者の下瞼を下向きに引っ張るか、あるいは対象者の下瞼を引っ張ることと頭を傾けることを組み合わせて行う必要がある。これは、薬を使用するための送達機構が通常、重力に依存しているからである。点眼器の先端が眼に突き当たらないようにしつつ薬が眼に入るようにするのは容易でないだけでなく、対象者側が着実にぎこちなさをなくし、柔軟性を有し、身体をコントロールすることを必要とする。
【0004】
また、現在の点眼器ボトルは、ユーザの眼に突き当たってしまうと眼に物理的な損傷を与える可能性があり、さらに、眼に接触することで先端が細菌に汚染される危険性がある。そのため、対象者が点眼器ボトル内の薬を汚染させてしまい、その後眼に細菌が感染する危険性がある。
【0005】
一般的な医療用点眼器は、概ね約50μL程度の量の液滴を吐出する。しかし、人間の眼は通常、角膜表面に7μLの液体しか保持できないため、点眼量が多いと、眼の表面から薬が溢れ出てしまい、大部分が失われることになる。さらに、一回の液滴が30または50μLと多いと、送液された液体の大部分がまばたき反射により角膜から失われてしまうほか、不快感により服薬遵守不良を引き起こしてしまう。結果として、この投与方法も不正確で無駄が多くなる。さらに、この投与方法に関する技術は、吐出される薬の量を制御するための満足のいく方法を提供せず、また、吐出される薬が実際に眼に到達し、眼に留まることを保証する方法も提供しない。
【0006】
今日の眼科用製剤のほとんどの複数回投与用容器は、一般に、ボトル内の抗菌作用および製剤中の活性剤の分解抑制などの多くの機能を提供する防腐剤を含んでいる。眼科用製剤に含まれる防腐剤の例には、塩化ベンザルコニウム(BAR)、クロロブタノール、過ホウ酸ナトリウム、および安定化オキシクロロ錯体(SOC)などがある。しかしながら、利益を提供する一方で、防腐剤はまた、製剤が投与されている患者に著しい細胞毒性効果を及ぼすことがある。
【0007】
そのため、改良された眼科用製剤送達装置が引き続き必要とされている。本発明者らは、防腐剤を含まない少量の眼科用製剤を正確に眼に投与することができる複数回投与送装置の開発が特に重要であることを発見した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
複数回投与を行う眼液送達装置が提供される。流体送達装置の態様には、流体パッケージおよびアクチュエータが含まれる。流体パッケージは、眼科用製剤を保持するリザーバ、開口、および流体が開口を通って排出されていないときに開口を密封するためのバルブ部材を含む。アクチュエータは、リザーバ内に存在する眼科用製剤が防腐剤を必要とすることなく(例えば、防腐剤を含まない眼科用製剤がリザーバ内に存在する場合など)、リザーバ内への外部物質または汚染物質の侵入を防止しないまでも、少なくとも低減するように、バルブ部材を操作するように構成される。また、流体送達アプリケーションで装置を使用する方法、および装置の構成要素を含むキットも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の斜視図を示す図である。
図2図1の例の側面図、並びにその電子回路を示す図である。
図3図1および図2の例の分解図であり、アンプルと電磁トランスデューサを個別に示す図である。
図4】本発明の実施形態での使用に適した開口の構成を示す拡大断面図である。
図5A図4の開口の構成の動作原理を模式的に示す図である。
図5B図4の開口の構成の動作原理を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
複数回投与を行う眼液送達装置が提供される。流体送達装置の態様には、流体パッケージおよびアクチュエータが含まれる。流体パッケージは、眼科用製剤のリザーバ、開口、および流体が開口を通って排出されていないときに開口を密封するためのバルブ部材を含む。アクチュエータは、ベール部材および/またはリザーバの壁に機械的振動を与えることにより、開口を通じて眼科用製剤を排出するように構成される。
【0011】
このアプローチは、リザーバ内に存在する眼科用製剤が防腐剤を必要とすることなく(例えば、防腐剤を含まない眼科用製剤がリザーバ内に存在する場合)、リザーバ内への外部物質または汚染物質の侵入を防止しないまでも、少なくとも低減することができる。
【0012】
また、流体送達アプリケーションで装置を使用する方法、および装置の構成要素を含むキットも提供される。
【0013】
本発明の様々な実施形態をさらに説明するにあたり、まず流体送達装置についてより詳細に説明し、続いて装置を使用する様々な方法および装置またはその構成要素を含むキットついて説明する。
【0014】
流体送達装置
【0015】
上に要約したように、本発明の態様は、防腐剤を含まない眼科用製剤などの眼科用製剤を、対象者の眼の標的位置、すなわち標的とする眼の位置に排出するように構成された複数回投与の流体送達装置を含む。流体送達装置は、場合によっては、ユーザの標的位置、例えば、標的とする眼の位置に対してユーザ自らが投与できるように構成されている。したがって、そのような実施形態の装置は、医療従事者のような他人からのいかなる援助を受けることなく、ユーザが流体を自らの標的位置に投与することを可能にしている。
【0016】
流体送達装置の特徴は異なることがあるが、場合によっては、装置はハンドヘルド装置である。ハンドヘルド装置とは、装置が平均的な成人の手で快適に保持することができるような寸法と重量を備えた装置を意味する。ハンドヘルド装置の実施例によっては、装置は、10~500mm、例えば20~250mm、50~100mm、例えば70~85mmを含む最長寸法と、10~1000g例えば25~500g、例えば40~100gの重量を有する。
【0017】
本明細書に記載の流体送達装置は、リザーバおよび開口を有する流体パッケージと、開口を通じて流体を排出するように構成されたアクチュエータ部材と、流体が開口を通じて排出されていないときに開口を密封するよう構成されているバルブ部材を含んでいてもよい。また、追加の部材が存在していてもよい。ここでは、各部材について詳細に説明する。
【0018】
流体パッケージ
【0019】
本発明の装置の流体パッケージの部材は、ある量の流体を保持するように構成された流体容器であり、例えば、以下でより詳細に説明するように、アクチュエータに動作可能に結合される。容器は、任意の便利な形状を有していてもよく、任意の便利な材料、例えばガラスやプラスチックから作られていてもよい。容器は、単回の送達投与量または複数回の送達投与量を保持するように構成されていてもよい。例えば、容器が複数回の送達投与量を提供するのに十分な量の液体製剤を含んでおり、リザーバが複数回投与リザーバである場合などがある。このように、容器が保持するように構成されている液体製剤の量は異なっていてもよく、場合によっては100μL~10mL、例えば120~800μLを含む、100~2000μLの範囲であってもよい。
【0020】
容器は、例えば、上述したような量の流体を保持するよう構成されたリザーバと、使用中に流体をリザーバ部材から排出するための1つ以上の開口とを含む。所与の流体パッケージが有する開口の数は様々であってもよく、場合によっては、開口の数は、1~5、例えば1~4、1~3、および1~2を含む1~10など、1~20の範囲である。実施例によっては、流体パッケージは1つの開口を含む。実施例によっては、流体パッケージは複数の開口を含む。所与の開口の寸法は、所望により様々であってもよい。実施例によっては、開口は10~500μm、例えば50~450μm、例えば75~350μmの範囲の長さの寸法、例えば直径を有し、実施例によっては、開口部は80~120μm(例えば80~100μm)、または150~350μm(例えば200~350μm、例えば250~300μm)の範囲の直径を有している。所望により、開口は、少なくともその一部に抗菌材料を含んでいてもよく、例えば、密封状態のとき、バルブ部材と嵌合するように構成された開口の内面の一部または全部に抗菌性材料を含んでいてもよい。これらに限定されないが、含まれる可能性がある抗菌材料の例には、抗菌金属、例えば、銀、銅などや、抗菌コーティング、例えば、パリレンポリマー、クロルヘキシジンおよびプロタミン硫酸塩組成物などによるものがある。
【0021】
容器は任意の便利な構成を有していてもよいが、実施例によっては、容器は、リザーバを含む拡張部分(例えば、バルブ)と、アクチュエータに動作可能に結合するように構成され、1つ以上の開口を含むネック部分とを含む。流体パッケージは、実施例によっては、使い捨てになるように構成されている。
【0022】
上で概要を述べたように、流体パッケージはまた、流体が開口を通って排出されていないときに、開口を密封するように構成されたバルブ部材を含む。したがって、バルブ部材は、流体が開口から排出されていないときに開口を密封するように構成されているが、流体が開口から排出されているときには開口を密封しないように構成されている。バルブ部材は、流体が開口を通じて排出されていないときに、外部の物質や汚染物質が開口を通じてリザーバ内に侵入するのを防ぐように構成されており、これにより、リザーバ内に防腐剤を含まない眼科用製剤を存在させることができる。
【0023】
実施例によっては、バルブ部材は、開口と嵌合して開口を密封するように構成された先端を含む。先端は任意の便利な形状を有していてもよい。実施例によっては、先端は円錐構造を有する。このような場合、円錐形の先端部は、高さが0.5~5.0mm、例えば0.75~1.5mm、底面の直径が0.4~4.0mm、例えば1.5~2.5mmの範囲であってもよい。他の実施形態では、先端は丸みを帯びたシール構造であってもよく、実施例によっては、底面の直径が0.4~4.0mm、例えば1.5~2.5mmの範囲である半球形構造を有していてもよい。
【0024】
実施例によっては、流体パッケージは、例えば、流体が流体パッケージから排出される際に、流体が均一に排出されるように、リザーバにガスを導入するための排出孔(vent)を含んでいてもよい。排出孔は、微生物を含まない空気をパッケージの外部からリザーバに流入させるように構成されていてもよい。任意の便利な排出孔の構成が採用されてもよい。そのような排出孔の例としては、ネック領域の孔から、ネック領域から最も遠い流体パッケージの端部周辺のリザーバ内の位置まで延在する管腔が含まれる。管腔の寸法は様々であってもよく、場合によっては、管腔の長さは5.0~20mm、例えば12~18mm、内径が0.5~2.0mm、例えば0.7~1.0mmである。ネック領域における管腔の孔は、例えば、微生物、例えば、細菌や他の望まない病原体が流体パッケージに侵入するのを防ぐためにカバーで覆われていてもよい。そのような例では、カバーは抗菌特性を有していてもよく、例えば、カバーが、微生物、例えば、細菌の通過を防ぐように構成された細孔径を有する多孔質膜である場合、細孔径は、0.22μm以下、例えば、0.2μm以下、例えば、0.15μm以下などである。あるいはまたはさらに、これらに限定されないが、カバーは1以上の抗菌剤を含んでいてもよく、これには抗菌金属、例えば銀、銅など、抗菌コーティング、例えばパリレンポリマー、クロルヘキシジンおよびプロタミン硫酸塩組成物などが含まれる。
【0025】
実施例によっては、流体パッケージの拡張領域は、ネック領域から分離可能であり、例えば、2つの構成要素が単一の一体的な構造として製造されていない場合である。そのような場合、拡張領域は、標準的な眼科用ボトルであってもよい。そのような場合、標準的な眼科用ボトルの長さは、25~45mm、例えば30~35mmの範囲であってもよい。標準的な眼科用ボトルの内径は、5.0~30mm、例えば13~20mmであってもよい。標準的な眼科用ボトルの内容積は、2.0~14.0mL、例えば2.0~5.0mLの範囲であってもよい。標準的な眼科用ボトルの孔の直径は様々であってもよく、4.0~13.0mm、例えば8.0~11.0mmなどの範囲であってもよい。ボトルはガラスやポリマーなどの便利な材料を含む任意の材料から製造されてもよい。
【0026】
このような場合、ネック領域は、標準的な眼科用ボトルに嵌合してもよく、ネック領域は、例えば、上述したように、開口、バルブ部材および排出孔を含む。ネック領域は、任意の便利な構成、例えば、圧入、ねじ込みなどを利用してボトルに嵌合されてもよい。
【0027】
アクチュエータ
【0028】
流体パッケージに加えて、装置は、流体パッケージに操作可能に結合し、流体パッケージのリザーバから1つ以上の開口を介して流体を標的位置に排出するように構成されたアクチュエータ部材をさらに含む。実施例によっては、アクチュエータは、容器の内容物に振動を与えるように構成された部材であり、振動の振動周波数が変化してもよい。実施例によっては、周波数は可聴範囲にあり、例えば、20~20000Hz、例えば、500~1000Hzを含む50~10000Hzである。実施例によっては、振動周波数は超音波周波数であり、場合によっては、10~1000KHz、例えば20~800KHz、20~35KHzを含む範囲である。
【0029】
実施例によっては、アクチュエータは、流体パッケージ内の流体に圧力変動を生じさせることにより、流体をリザーバから開口を通して排出するように構成される。実施例によっては、アクチュエータは、流体パッケージの外面に引き起こされる変位によって流体に圧力変動を生じさせる。アクチュエータによって流体パッケージ、実施例によっては流体パッケージの外面に与えられる(上記を参照)可聴周波数または超音波周波数の振動は、流体パッケージによって保持される流体に音圧サイクルを生じさせ、結果として、1つ以上の開口から流体を排出させる。
【0030】
実施例によっては、流体は流体パッケージからアクチュエータによってストリームとして排出されるが、ストリームとは、液体の連続した流れ(すなわち、個々の液滴から構成されていない流れ)または液体の不連続な流れ、例えば、個々の液滴のコリメートされた流れであってもよい。不連続な流体のストリームは、比較的短時間で分離された一連の細長い流体の塊である場合がある。また、排出された流体と開口との間の距離が増加するにつれてストリームの構成が変化する可能性もある。ストリームが液体の連続した流れである場合、ストリームの直径は様々であってよく、0.05~0.3mm、例えば0.05~0.2mm、例えば0.05~0.15mm、例えば0.070~0.130mmの範囲である場合もある。ストリームが個々の液滴の不連続な流れである場合、個々の液滴の体積は様々であり、50~1500pL、例えば100~1000pLの範囲であってもよい。実施例によっては、ストリームの幅は、連続的、不連続的、または連続的な成分と不連続的な成分を有するが、ストリームの長さに沿って実質的に一定であり、1つ以上の開口部から標的位置までのストリームの幅の変動が5%以下、例えば2%以下になるようになっている。所与の投与中におけるストリームの送達の持続時間は様々であってもよく、所望の送達投与量を提供するよう選択される。実施例によっては、ストリームの送達の持続時間、すなわち投与の持続時間は、10~3000ミリ秒、例えば100~2000ミリ秒、400~600ミリ秒を含む、例えば250~1000ミリ秒の範囲である。他の実行可能な投与の持続時間は、300ミリ秒以下、より好ましくは150ミリ秒以下である。
【0031】
アクチュエータ部材の性質は様々であってもよく、場合によっては、アクチュエータ部材は電磁アクチュエータである。実施形態によっては、電磁アクチュエータは、場合により可聴範囲内(例えば、20~20,000Hz)の低周波の振動振幅を与える。場合によっては、電磁アクチュエータは可聴範囲の周波数で動作するが、30dB以下の低い可聴音を発生させる。同時に、装置は十分な大きさのノズルから十分な低速度で流体を排出することで、眼への局所的な流体の送達に伴う不快感を最小限にする。
【0032】
例示的な実施形態
【0033】
本発明の一実施形態は、図1図3に図示されている。本発明の電磁吐出装置(100)を示す図1を参照する。電磁吐出装置(100)は、吐出される流体を含むアンプル(103)を含む。電磁吐出装置(100)は、電磁トランスデューサ(113)をさらに含み、電磁トランスデューサ(113)は、アンプル(103)を振動させることで、アンプル(103)の下部にある開口(116)から流体を吐出するように構成される。
【0034】
電磁トランスデューサ(113)はベースプレート(101)と、電磁石(115)と、永久磁石(109)とを含む。電磁石(115)は強磁性コア(電磁石コアピン、コア)(110)と、強磁性コア(110)に巻き付けられたコイル(108)とを含む。永久磁石(109)は、電磁石コアピン(110)に近接して配置され、可撓性の片持ち梁(106)によって支持されている。コイル(108)によって発生する交換磁場により、永久磁石(109)とそれを支持する可撓性の片持ち梁(106)に磁力と機械的な振動が発生する。片持ち梁(106)は、片持ち梁(106)を支持し、かつ片持ち梁(106)の振動をアンプル(103)に伝達する固定部(107)を含む。この装置は、ベースプレート(101)から延在し、片持ち梁(106)を支持するスペーサー支持ピン(片持ち梁支持部)(102)をさらに含む。
【0035】
図示した実施形態では、永久磁石(109)は片持ち梁支持部(102)から距離(d2)分離れた片持ち梁(106)の自由端に配置され、一方で、アンプルを支持する固定部(107)は、片持ち梁支持部(102)から距離(d1)分離れた位置に配置されている。このようにして、てこの原理による利益が得られ、アンプル(103)に加えられる力は、永久磁石(109)に加えられる力に対する距離d2/d1の比率で増幅される。図示した実施形態では、アンプル(103)は1mLの水溶液を含み、約1gm(グラム)の質量を有する。したがって、アンプル(103)を約20~60mmの振幅で振動させるのに必要な力は、約0.2N~1Nである。図示した実施形態では、距離d2は13.5mmであり、距離d1は1.35mmである。d2/dlの比率は約10で、振動振幅は入力電圧に応じて20μm~60μmである。図示した実施形態では、吐出用の開口の直径は200~350μmの範囲であり、そのような大きな開口は、大きな振動振幅でのみ流体を吐出する。
【0036】
図示の実施形態では、強磁性コア(110)、ベースプレート(101)、およびスペーサー支持ピン(102)は、4750合金などの軟磁性材料で作られているが、補正力が小さく、磁気ヒステリシスが小さい他の合金が使用されてもよい。
【0037】
アンプル(103)は、吐出ノズル(116)が片持ち梁(106)の振動振幅の方向と整列するように配向されている。この振動によりアンプル(103)内に圧力変動を発生させ、矢印(105)で示すように、流体がノズル(116)から排出される。
【0038】
永久磁石(109)は、ネオジムN35、N38、N42、サマリウムコバルトなどの希土類磁性材料で作られていているとよい。鉄、ニッケル、コバルトなどの非希土類合金が使用されていてもよい。
【0039】
図2を参照すると、この図は磁気変換器(100)を示しており、さらに電池セルなどのDC源から交互の電気信号を生成する電気回路の図も含む。
【0040】
電磁トランスデューサ(100)はコイル(108)に供給される交流電流を生成する回路(100A)を含み、永久磁石(109)を振動させる磁力を発生させる。コイル(108)は2つの別個の磁気コイルを定義しており、第1のコイルは一次コイル(108A)であり、第2のコイルは検出コイル(108B)である。一次コイル(108A)と検出コイル(108B)の両方は鉄心(110)の周りに巻き付けられている。DC電圧が一次コイル(108A)に接続されると、電流が流れ、発生する電磁力によって永久磁石(109)がコア(110)に向かって引っ張られる。一次コイル(108A)に電流が流れるのと同時に、一時的な時間依存の電磁誘導が発生することにより起電力(EMF)と電流が検出コイル(108B)に誘導され、この電流がバイポーラトランジスタ(Tr)に供給されることで、一次コイル(108A)からの電流をグランド(130)に引き込んでスイッチオフする。その結果、磁力はゼロに戻り、永久磁石(109)は通常の位置に戻る。その後、一次コイル(108A)が再びオンになり、磁石を引き戻す。このように、DCバッテリーからのDC入力電圧を利用して交流磁場を発生させる。この例において、トランジスタ(Tr)は、フェアチャイルドモデル2N3904などのNPN汎用アンプである。この回路はさらに、電圧を調整するツェナーダイオード(D1)を含む。磁気コイル(108A)および(108B)は、1~10mHの範囲のインダクタンスを有し、永久磁石(109)を振動させるための磁場を生成するように構成されている。一般に、慣性負荷を低減し、振動振幅を増大させるために、永久磁石(109)の質量は小さくなっている。ある実施形態では、永久磁石(109)の質量は0.075gm(グラム)である。片持ち梁(106)は、厚さ0.2mm、幅5mm、自由長13.5mmのステンレス鋼合金304でできている。図示した実施形態では、片持ち梁(106)は、約523Hzの固有振動数を有し、一方で磁気発振器の駆動周波数は約1100Hzである。
【0041】
図3は、電磁吐出装置(100)の分解斜視図を示しており、アンプル(103)および電磁トランスデューサ(113)を個別に示している。図から、アンプル(103)は、緊密な締まりばめにより固定部(107)に挿入されるピン部材(301)を含んでいることが分かる。このように、電磁トランスデューサ(113)により生成された振動がアンプル(103)に伝達される。
【0042】
図1~3では、流体が吐出されていないときに開口を密封するバルブ部材は小さすぎて見えない縮尺になっている。したがって、図4は、上記の原理にしたがって動作する流体吐出装置(400)の拡大断面図であり、バルブ部材を示すものである。図4の例は上記と同様の動作原理を有するが、その構成の詳細のいくつかが異なる。
【0043】
ここで、(402)は開口、(404)はバルブ部材、吐出される液体はリザーバ(406)(ここでは部分的にのみ示す)に存在し、(408)はバルブ部材(404)が取り付けられている柔軟なダイヤフラムであり、(410)は電磁アクチュエータ用のソレノイドであり、(412)は円錐形の端部を備える金属シリンダーである。金属シリンダー(412)は、電磁鉄合金で構成されているため、ソレノイド(410)によって生成される磁束によって引き付けられる。部材(414)は、(412)をバルブ部材(404)/ダイヤフラム(408)に接続する。ソレノイド(410)と(412)の組み合わせは、上記の動作原理を有する電磁アクチュエータを提供する。図4に示すように、このアクチュエータによって流体吐出装置に生じる動きは、バルブ部材(404)が開口(402)と係合したり外れたりするときの振動と、ダイヤフラム(408)の振動であることが明らかである。より一般的には、バルブ部材の機械的振動および/またはリザーバの壁の一部の機械的振動であるみなすことができる。上で一般的に説明したように、バルブ部材および/または開口は、抗菌材料を含んでいてもよい。
【0044】
ダイヤフラム(408)は、バルブ部材(404)を開口(402)と係合させ、流体が排出されているときを除いて開口(402)が密封されるようにする。詳細設計では、ダイヤフラム(408)の機械的剛性を選択して、この係合に適切な程度の機械的力が提供されてもよい。
【0045】
流体は、バルブ部材(404)を振動させることによって、および/または開口の密封状態を打破するのに十分な流体内の圧力変動を設定することによって、排出されてもよい。この例のように、1つの振動アクチュエータでいずれの物理的効果も得ることができる。
【0046】
図5A~Bは、これらの2つの物理的効果を概略的に示している。図5Aの例では、開口(502)から流体を排出する第1のプロセス(左向きのブロック矢印)は、バルブ部材(504)の先端を振動させて開口(502)に係合したり外れたりすることで生じる。バルブ部材(504)のこの振動を、白抜きの両矢印で模式的に示している。開口(502)から流体を排出する第2のプロセスは、流体がバルブ部材(504)を乗り越えて排出するのに十分な、流体の圧力変動の結果として及ぼされる力によるものである。このような流体の圧力変動から生じる力について、黒い実線の両矢印で模式的に示している。図4の例では、このような圧力変動は、ダイヤフラム(408)の振動および/またはバルブ部材(404)の動きに起因するものである。図5Bの例は、バルブ部材(508)が、流体の吐出時以外は開口(506)と係合して開口(506)を密封する丸みを帯びた先端部を有する点を除いて、同様である。バルブ部材の振動や流体の圧力変動は、単独または任意の組み合わせで流体の排出に寄与することが予想される。
【0047】
方法
【0048】
上に要約したように、本開示の態様は、活性剤を対象者の眼の位置などの標的位置に投与する方法を含む。眼の標的位置とは、角膜の領域、結膜の領域、角膜と結膜の両方の成分を含む領域などの、眼球表面の領域(すなわち、領域またはドメイン)を意味する。実施例によっては、眼の標的位置とは、眼の光軸に対してずれた位置または領域である。実施例によっては、眼の標的位置は、眼球または瞼板の結膜、あるいは結膜前庭のいずれかにある。言い換えれば、標的とする局所的な眼の位置は、瞳孔の中心または虹彩の中心からずれている位置である。ずれ/変位の距離の大きさは変化してもよいが、実施例によっては、その大きさは、1~20mm、例えば2~20mm、例えば5~10mmを含む5~15mmの範囲である。標的とする局所的な眼の位置の大きさは様々であってもよいが、実施例によっては、標的とする局所的な眼の大きさは15mm以下であり、1~15mm、例えば、3~9mmを含む2.5~12mmの範囲である。
【0049】
本方法の実施形態の態様は、活性剤の液体製剤の投与量を標的位置に送達することを含む。実施例によっては、送達される投与量は、標的とする局所的な眼の位置の涙膜によって完全に収容することができる体積の投与量である。標的とする局所的な眼の位置の涙膜は、標的とする局所的な眼の位置に付属している膜である。このように、涙膜は、例えば、上記のような標的とする局所的な眼の位置にある眼球表面に存在する涙液の膜または層である。送達される投与量は、標的とする局所的な眼の位置の涙膜によって完全に収容され得る量であるため、標的とする局所的な眼の位置を含む眼球表面に完全に収容可能な量でもあってもよい。「眼球表面に完全に収容される」とは、送達時に、送達された投与量が、眼の表面から過剰な液体が流れ出て瞼の上を通過することなく、投与された眼の表面上に、例えば涙の形で保持されることが可能な量であることを意味する。投与量は様々であってもよく、実施例によっては1~15μL、例えば5~10μLの範囲である。
【0050】
実施例によっては、送達される投与量は、標的とする局所的な眼の位置の涙膜に収容される量を超える量である基準投与量に匹敵する効果を有するものである。そのような場合の基準投与量は、量を除いて、他の点では送達される投与量と同じである。したがって、基準投与量中の活性剤の濃度は、送達される投与量中の活性剤の濃度と同じである。基準投与量の量は、送達される投与量の量を、例えば、2倍以上、例えば、3倍以上上回る。実施例によっては、基準投与量は、30~50μLなど、25~60μLの範囲の量である。実施例によっては、基準投与量は、標準的な点眼装置によって送達される投与量である。
【0051】
活性剤の液体製剤の送達される投与量は、ストリームとして標的とする局所的な眼の位置に投与されてもよく、ストリームは、液体の連続的な流れ(すなわち、個々の液滴から構成されていない流れ)であってもよく、または液体の不連続な流れ、例えば、個々の液滴のコリメートされた流れ、或いは、連続的な成分と不連続的な成分の両方を含んでいてもよい。ストリームが液体の連続した流れである場合、ストリームの直径は様々であってもよく、実施例によっては、0.05~0.15mm、例えば0.070~0.130mmの範囲である場合がある。ストリームが個々の液滴の不連続な流れである場合、個々の液滴の量は様々であってよく、50~1500pL、例えば100~1000pLの範囲である場合もある。ストリームの速度は様々であってもよく、実施形態によっては、開口からの流体の最小出口速度を概ね上回る値に至ることもある。最小出口速度は、N.R.LindbladとJ.MScheiderの「Production of uniform-size liquid droplets」と題された科学論文で定義されている(方程式2)。この論文は、参照により本明細書に組み込まれる。実施例によっては、出口速度が最小出口速度より20%以上早く、実施例によっては、最小出口速度より300%以下だけ早いこともある。例えば、開口のサイズが125ミクロンの場合、最小速度は194cm/秒であるが、選択された速度は少なくとも30%高く、すなわち252cm/秒となる。所与の投与時のストリーム送達の持続時間は様々であり、例えば、上述のように、所望の投与量が得られるように選択される。理想的には、ストリームの持続時間はまばたきの応答時間未満、つまり150ミリ秒未満である必要がある。必要に応じて、投与の持続時間は250ミリ秒または最大1000ミリ秒まで延長されてもよい。実施例によっては、持続時間は100ミリ秒以上である。
【0052】
送達される投与量は、任意の好都合なプロトコルを使用して、標的とする局所的な眼の位置に投与されてもよい。実施例によっては、送達される投与量は、対象以外の個人によって標的とする局所的な眼の位置に投与され、例えば、送達される投与量が医師や看護などの医療専門家によって投与される場合もある。他の実施形態では、送達される投与量は、例えば、対象が自身の眼の一方の標的とする局所的な眼の位置に投与量を投与する場合、対象によって自己投与される。
【0053】
流体パッケージに存在する流体は、所望に応じて様々であってもよい。実施形態によっては、流体送達パッケージに存在する流体は、活性剤の液体製剤である。本明細書では「薬剤」、「化合物」、および「薬物」という用語を互換的に使用し、対象者の局所的な標的位置への投与を通じて対象者と接触することで生理学的効果を発揮する分子または分子の組み合わせを指す。液体製剤中に存在し得る活性剤の例には、これらに限定されないが、以下のものが挙げられる。抗感染薬(これらに限定されないが、抗生物質、抗ウイルス薬などを含む)、抗炎症剤(これらに限定されないが、ステロイドおよび非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)などを含む)、抗アレルギー剤(これらに限定されないが、抗ヒスタミン剤および肥満細胞安定剤などを含む)、抗真菌剤、コリン作動剤、長時間作用および短時間作用の両方を含む抗コリン作動剤(例えば、アトロピン、トロピカミドなど)、血管収縮剤、生物学的製剤(例えば、タンパク質、人工タンパク質など)、低分子、麻酔薬、鎮痛剤、眼圧降下剤(これらに限定されないが、プロスタグランジンアナログ、ROK阻害剤、ベータブロッカー、炭酸脱水酵素阻害剤、アルファアゴニストなどを含む)、滑沢剤(これらに限定されないが、生理食塩水、ポリマー溶液、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、炭水化物などを含む)、散瞳剤(瞳孔拡張剤)、ミオチン剤(瞳孔収縮剤)、ヨウ素誘導体など、および/または様々なそれらの組み合わせなど。微量用量の所定の液体製剤中のコリン作動薬の濃度は様々であってもよい。実施形態によっては、微量用量の液体製剤中のコリン作動薬の濃度は、50ng/mL~100mg/mLの範囲である。
【0054】
活性剤に加えて、液体製剤は、水性送達ビヒクル、例えば、薬学的に許容される水性ビヒクルを含んでいてもよい。水に加えて、水性送達ビヒクルは、これらに限定されないが、塩、緩衝剤、防腐剤、溶解度向上剤、粘度調整剤、着色剤などの複数の追加成分を含んでいてもよい。適切な水性ビヒクルとしては、滅菌蒸留水または精製水、等張塩化ナトリウムまたはホウ酸溶液などの等張溶液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、プロピレングリコールおよびブチレングリコールなどが挙げられる。他の適切なビヒクル成分としては、硝酸フェニル水銀、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸‐ナトリウムなどが挙げられる。その他の適切なビヒクル成分の追加例としては、アルコール類、油脂、ポリマー、界面活性剤、脂肪酸、シリコーンオイル、加湿剤、保湿剤、粘度調整剤、乳化剤および安定剤が挙げられる。また、水酸化ナトリウム、塩酸、硫酸などのpH調整剤や、メチルセルロースなどの粘度増加剤などの補助物質を含んでいてもよい。上に要約したように、リザーバに存在する眼科用製剤は、防腐剤を含んでいなくてもよい。「防腐剤を含まない」とは、これらに限定されないが、製剤が、塩化ベンザルコニウム(BAK)、クロロブタノール、過ホウ酸ナトリウム、安定化オキシクロル錯体(SOC)などの抗菌剤、パラバン、有機水銀化合物などの防腐剤を配合していないことを意味する。
【0055】
例示的な最終組成物は、無菌で、防腐剤を含まず、本質的に異物を含まず、患者の快適性と受容性を与えるpHと、最適な薬物の安定性に望ましいpHとのバランスがとれている。例示的な「薬学的に許容されるビヒクル」は、本明細書で使用される「眼科的に許容されるビヒクル」であり、化合物と非反応性であり、患者への投与に適した任意の物質または物質の組み合わせを指す。例示的な実施形態では、ビヒクルは、患者の眼への局所的な適用に適した水性ビヒクルである。様々な実施形態において、ビヒクルは、本発明の眼科用組成物に使用することが望ましいと思われる他の成分をさらに含み、抗菌剤、防腐剤、共溶媒、界面活性剤、粘度形成剤を含む。
【0056】
本明細書で使用される場合、「宿主」、「対象(者)」、「個体」および「患者」という用語は互換的に使用され、開示された方法にしたがってそのような治療を必要とする任意の哺乳動物を指す。そのような哺乳動物には、例えば、ヒト、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、非ヒト霊長類、マウス、およびラットが含まれる。特定の実施形態では、対象は非ヒト哺乳動物である。実施形態によっては、対象は家畜である。他の実施形態では、対象はペットである。実施形態によっては、対象は哺乳動物である。特定の実施例では、対象は人間である。その他の対象としては、家庭で飼われているペット(イヌ、ネコなど)、家畜(ウシ、ブタ、ヤギ、ウマなど)、げっ歯類(マウス、モルモット、ラットなど、病気の動物モデルなど)、さらには人間以外の霊長類(チンパンジー、サルなど)が挙げられる。
【0057】
主題の方法の態様によっては、本方法は、所定の状態、例えば、対象の疾患状態の有効性を測定するステップをさらに含む。そのような実施例では、測定結果について、より早い時期、例えば、2週間前、1か月前、2か月前、3か月前、6か月前、1年前、2年前、5年前、または10年前、あるいはそれ以上の時期に同じ個体に対して行われた結果と比較することで、判定を行う。評価は、治療される状態の性質に応じて様々であってもよい。実施形態によっては、対象となる方法は、個体が所定の状態を有すると診断することをさらに含む。
【0058】
上記の方法は、様々な用途で使用されている。一部の用途については、以下の「ユーティリティ」の項で詳しく説明する。
【0059】
ユーティリティ
【0060】
対象の装置と方法は、治療および診断/検査の両方の用途を含む、様々な用途で使用されている。本明細書で使用される「治療する(treating)」または「治療(treatment)」という用語は、哺乳動物(ヒトなど)などの対象または患者の疾患または病状の発症の治療または治療することを意味し、(a)対象の予防的治療など、疾患または病状の発症を予防するステップ(b)患者の疾患や病状をなくす、または退行させることなどにより、疾患や病状を改善するステップ(c)例えば、患者の疾患または病状の進行を遅らせる、または停止することにより、疾患または病状を抑制するステップ、および、(d)患者の疾患または病状の疾患を緩和するステップを含む。
【0061】
本発明の方法/装置を使用して治療することができる疾患の例は、緑内障である。緑内障は、視神経の損傷による進行性の視野喪失を特徴とする障害の集まりである。これは米国における失明の主な原因であり、60歳以上の個人の1~2%に影響を及ぼしている。緑内障の発症には多くの危険因子(年齢、人種、近視、家族歴、および外傷)があるが、眼圧亢進症としても知られる眼圧の上昇は、緑内障性視神経症の疾患の軽減に関連した唯一の危険因子である。眼圧の上昇を伴う緑内障では、流出に対する抵抗源は小柱網にある。小柱網の組織により、「水(aqueous)」がシュレム管に入り、シュレム管後壁の集水チャネルに入り、さらに房水静脈へと流れていく。水すなわち房水は、目の前面にある角膜と水晶体の間の領域を満たす透明な液体である。房水は水晶体の周りにある毛様体から常に分泌されているため、毛様体から眼球の前房への房水の流れは絶え間なく続いている。眼圧は、水(房水)の産生と小柱網を介した出口(主要経路)、またはぶどう膜強膜流出を介した出口(副経路)のバランスによって決定される。小柱網は、虹彩の外縁と角膜の内周の間に位置している。シュレム管に隣接する小柱網の一部は、水(房水)の流出に対する抵抗の大部分を引き起こす(傍シュレム管小柱網)。
【0062】
本方法および装置が緑内障の治療に使用される実施形態では、送達される投与量は、眼圧調節剤を含んでもよい。「眼圧調節剤」は、薬物を含んでいてもよく、以下のいずれかまたはそれらの同等物、誘導体または類似物であってもよい。例えば、抗緑内障薬を含む(例:アドレナリン作動薬、アドレナリン拮抗薬(β遮断剤))、炭酸脱水酵素阻害剤(CAI、全身および局所)、プロスタグランジン、プロスタグランジン前駆体などの治療薬、チモロール、ベタキソロール、レボブノロール、アテノロールなどのβ遮断剤を含む抗緑内障薬(例えば、米国特許第4,952,581号明細書に記載)、アプラクロニジンまたはブリモニジンなどのクロニジン誘導体を含むアドレナリン作動薬(例えば、米国特許第5,811,443号明細書に記載されている)、およびビマトプロスト、トラボプロスト、タフルプロスト、ラタノプロストなどのプロスタグランジン類似体などである。実施例によっては、治療剤は緑内障のために既に市販されており、その市販の製剤が使用されてもよい。さらなる治療剤として、アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、メタゾラミド、ジクロルフェナミド、ジアモックスなどの炭酸脱水酵素阻害剤が使用されてもよい。
【0063】
診断・検査用途としては、これらに限定されないが、網膜や他の眼の深部構造を検査するための瞳孔を拡張する散瞳用途などが挙げられる。このような用途で使用することができる散瞳剤には、これらに限定されないが、以下のようなものが含まれる。例えば、アトロピン、アトロピン硫酸塩、アトロピン塩酸塩、アトロピン臭化メチル、アトロピンメチル硝酸メチル、アトロピンハイパーデュリック(atropine hyperduric)、アトロピンN-オキシド、フェニルフリン、フェニルフリン塩酸塩、ヒドロキシアンフェタミン、ヒドロキシアンフェタミン臭化メチル、ヒドロキシアンフェタミン塩酸塩、ヒドロキシアンフェタミンヨウ化物、シクロペントレート、シクロペントラート塩酸塩、ホマトロピン、ホマトロピン臭化水素酸塩、ホマトロピン塩酸塩、ホマトロピン臭化メチル、スコポラミン、スコポラミン臭化水素酸塩、スコポラミン塩酸塩、スコポラミンメチル臭化水素酸塩、スコポラミンメチル硝酸塩、スコポラミンN-オキシド、トロピカミド、トロピカミド臭化水素酸塩、トロピカミド塩酸塩などである。
【0064】
キット
【0065】
また、上述したような方法の実施で使用されるキットも提供される。「キット」という用語は、パッケージ化された送達装置またはその構成要素、例えば、上記のようなアンプルを指す。上記の構成要素に加えて、キットは、キットの構成要素を使用するための、例えば、対象となる方法を実施するための説明書をさらに含んでいてもよい。説明書は通常、適切な記録媒体に記録されている。例えば、説明書は、紙やプラスチックなどの基材に印刷されているとよい。このように、説明書は、パッケージの内容物としてキットに入っていてもよいし、キットの容器またはその構成要素(すなわち、パッケージまたはサブパッケージに付属するもの)のラベルに記載されてもよい。他の実施形態では、説明書は、CD-ROM、フロッピーディスク、ハードディスクドライブ(HDD)、ポータブルフラッシュドライブなどの適切なコンピュータ可読記憶媒体上に電子記憶データファイルとして存在している。さらに他の実施形態では、説明書の実物はキットに添付されていないが、インターネットなどで遠隔地から説明書を入手する手段が提供されている。この実施形態の例には、説明書を閲覧できるWebアドレスや、説明書をダウンロードできるWebアドレスを含むキットが挙げられる。説明書と同様に、この説明書を得るための手段が適切な基材に記録される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
【国際調査報告】