(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】IL-10バリアント分子ならびに炎症性疾患および腫瘍を処置する方法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20220420BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20220420BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20220420BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220420BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20220420BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220420BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20220420BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220420BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20220420BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/54
C07K16/24
C07K16/28
A61K38/20
A61P29/00
C12N15/62
C12N15/13
C12N15/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552750
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(85)【翻訳文提出日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 US2020021498
(87)【国際公開番号】W WO2020181235
(87)【国際公開日】2020-09-10
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521395827
【氏名又は名称】デカ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マム, ジョン
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA21
4C084BA22
4C084DA12
4C084NA14
4C084ZB11
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本出願は、がん、炎症性疾患または障害、および自己免疫疾患または障害の処置に有用な、バリアントIL-10分子、その融合タンパク質、およびキメラタンパク質を含む組成物または製剤に関する。本出願は、IL-10受容体結合領域および/またはIL-10分子に存在するドメイン間角度に関与するドメインに対する改変を含む、インターロイキン10(IL-10)のバリアント形態に関する。IL-10におけるこれらのドメインの一方または両方を改変することによって、結果として生じるIL-10受容体の生物学的機能を、特定の生物学的応答を誘起するように調整またはモジュレートすることができることを発見した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I~VII)
IL10-L
1-X
1-L
1-X
2-L
1-IL10(式I)、
(Z)
n-X
1-L
2-Y
2-L
1-IL10(式II)、
IL10-L
1-Y
1-L
2-X
2-(Z)
n(式III)、
X
1-L
2-X
2-L
1-IL10(式IV)、
IL10-L
1-X
1-L
2-X
2(式V)、
X
1-L
1-IL10(式VI)、
IL10-L
1-X2(式VII)、またはこれらの任意の組合せ
の融合タンパク質であって、
式中、
「IL-10」は、配列番号1、3、14、15、16、18、19、55、57、または59から選択される単量体配列であり、
「L
1」は、配列番号31または54のリンカーであり、
「L
2」は、配列番号30のリンカーであり、
「X
1」は、上皮成長因子受容体(EGFR);CD52;PD-L1、PD-1、TIM3、BTLA、LAG3、もしくはCTLA4などであるがこれらに限定されない様々な免疫チェックポイント標的;CD20;CD47;GD-2;HER2;EpCAM;ICAM(ICAM-1、-2、-3、-4、-5)、VCAM、FAPα;5T4;Trop2;EDB-FN;TGFβ Trap;MadCam、β7インテグリンサブユニット;α4β7インテグリン;α4インテグリンSR-A1;SR-A3;SR-A4;SR-A5;SR-A6;SR-B;dSR-C1;SR-D1;SR-E1;SR-F1;SR-F2;SR-G;SR-H1;SR-H2;SR-I1;SR-J1;HIV、またはエボラに特異的な第1の抗体から得られたVH領域であり、
「X
2」は、X
1と同じ抗体から得られたVL領域であり、
「Y
1」は、上皮成長因子受容体(EGFR);CD52;PD-L1、PD-1、TIM3、BTLA、LAG3、もしくはCTLA4などであるがこれらに限定されない様々な免疫チェックポイント標的;CD20;CD47;、GD-2;HER2;EpCAM;ICAM(ICAM-1、-2、-3、-4、-5)、VCAM、FAPα;5T4;Trop2;EDB-FN;TGFβ Trap;MadCam、β7インテグリンサブユニット;α4β7インテグリン、α4インテグリンSR-A1;SR-A3;SR-A4;SR-A5;SR-A6;SR-B;dSR-C1;SR-D1;SR-E1;SR-F1;SR-F2;SR-G;SR-H1;SR-H2;SR-I1;SR-J1;HIV、またはエボラに特異的な第2の抗体から得られたVH領域であり、
「Y
2」は、Y
1と同じ抗体から得られたVL領域であり、
XおよびYは、同じかまたは異なる抗体から得られ、
「Z」は、IL-6、IL-4、IL-1、IL-2、IL-3、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-15、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、GM-CSF、G-CSF、インターフェロン-α、-β、-γ、TGF-β、または腫瘍壊死因子-α、-β、塩基性FGF、EGF、PDGF、IL-4、IL-11、またはIL-13から選択されるサイトカインであり、
「n」は、0~2から選択される整数である、
融合タンパク質。
【請求項2】
式IIおよびIIIが、融合タンパク質複合体を形成することができ、式IIおよびIIIのそれぞれに由来するIL-10単量体が、機能性ホモ二量体IL-10またはそのバリアントを形成することができる、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
式IIが、配列番号24、26、28、41、48、または50である、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
式IIIが、配列番号25、27、29、42、49、または51である、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記融合タンパク質複合体が、配列番号24と25との間、26と27との間、28と29との間、41と42との間、48と49との間、または50と51との間で形成される、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
式IVおよびVが、融合タンパク質複合体を形成することができ、式IVおよびVのそれぞれに由来するIL-10単量体が、機能性ホモ二量体IL-10またはそのバリアントを形成することができる、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
式IVが、配列番号35、38、46、48、または50である、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
式Vが、配列番号36、39、47、49、または51である、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記融合タンパク質複合体が、配列番号35と36との間、38と39との間、46と47との間、48と49との間、または50と51との間で形成される、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
式VIおよびVIIが、融合タンパク質複合体を形成することができ、式VIおよびVIIのそれぞれに由来するIL-10単量体が、機能性ホモ二量体IL-10またはそのバリアントを形成することができる、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
式Iが、配列番号33~34、40、43~44、45、52、または53である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
「n」が1以上であり、Zが、IL-2、Il-7、IL-12、IL-15、またはこれらの任意の組合せである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
Zが、X
1、Y
1、または両方のN末端にコンジュゲートされている、請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
がんを処置する方法であって、それを必要とする患者に、請求項1に記載の融合タンパク質を含む組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項15】
前記融合タンパク質が、配列番号28~29、35~36、38~39、46~47、52、53、61、63、65、または67である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記融合タンパク質が、タンパク質複合体を形成し、前記タンパク質複合体が、配列番号28と29との間、35と36との間、38と39との間、または46と47との間で形成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記融合タンパク質が、配列番号59のDV07からなるIL-10を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
炎症性疾患を処置する方法であって、それを必要とする患者に、請求項1に記載の融合タンパク質を含む組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項19】
前記融合タンパク質が、配列番号26~27、41~42、48、または49である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記融合タンパク質が、タンパク質複合体を形成し、前記タンパク質複合体が、配列番号26と27との間、41と42との間、および48と49との間で形成される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が、配列番号37、40、または43の融合タンパク質を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記融合タンパク質が、配列番号57のDV06からなるIL-10を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
脂質に基づく疾患を処置する方法であって、それを必要とする患者に、請求項1に記載の融合タンパク質を含む組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項24】
前記融合タンパク質が、配列番号24~25、50、または51である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記融合タンパク質が、タンパク質複合体を形成し、前記タンパク質複合体が、配列番号24と25との間および50と51との間で形成される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、配列番号45の融合タンパク質を含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のへ相互参照
本出願は、2019年3月6日に出願された米国特許仮出願第62/814,669号、2019年9月12日に出願された米国特許仮出願第62/899,504号、および2020年1月17日に出願された米国特許仮出願第62/962,332号に基づく優先権を主張し、それぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
序論
本出願は、IL-10受容体結合領域および/またはIL-10分子に存在するドメイン間角度に関与するドメインに対する改変を含む、インターロイキン10(IL-10)のバリアント形態に関する。IL-10におけるこれらのドメインの一方または両方を改変することによって、本発明者らは、驚くべきことに、結果として生じるIL-10受容体の生物学的機能を、特定の生物学的応答を誘起するように調整またはモジュレートすることができることを発見した。本出願はまた、非タンパク質ベースの血清延長部分ならびにタンパク質ベースの延長モダリティを含む、半減期が延長されたIL-10またはIL-10バリアント分子に関する。本出願はまた、IL-10バリアント分子を含む融合タンパク質にも関する。
【背景技術】
【0003】
背景
IL-10は、(i)リポ多糖に応答した単球/マクロファージによる炎症促進性サイトカイン分泌、ならびに(ii)CD4+ T細胞のインターロイキン2(IL-2)分泌および増殖の両方を阻害するその能力に起因して、サイトカイン合成阻害性因子として説明されている。IL-10のウイルスアナログが発見され、ヒトIL-10と類似または同一な機能を共有することが報告されたとき、これらのIL-10のウイルスアナログは、ヒトゲノムにおいて見出される抑制性サイトカインの機能を採用することによって、ウイルスの毒性を増強したと推定された。
【0004】
IL-10の抑制作用のさらなる調査は、慢性全腸炎を発症するIL-10ノックアウトマウスの生成によって可能となった。これらのマウスにより得られたデータは、IL-10ノックアウトマウスが、主として単球/マクロファージおよびCD4+ T細胞による慢性炎症性サイトカイン分泌を通じて、消化管全体にわたって重度の炎症を発症することを明確に示し、これは、初期のin vitroでの観察と一貫性がある。
【0005】
まとめると、IL-10が炎症の抑制において主要な役割を果たしたことが、データにより示された。特に、機能性IL-10受容体またはIL-10を産生する能力が欠如した患者は、炎症関連の消化管疾患を発症する素因の増加を示した。
【0006】
複数の臨床試験を行って、乾癬、リウマチ性関節炎、およびクローン病の状況におけるIL-10の抗炎症機能を評価した。一般的に、組換えヒトIL-10(rHuIL-10)処置は、安全であるが有効性に欠けることが見出されている。特に、rHuIL-10でのクローン病患者の処置は、低用量が炎症を中等度に阻害し、高用量では抑制作用が失われる、逆用量応答をもたらす。最終的なクローン病研究の厳密な分析により、10および20μg/kgのrHuIL-10を投与した患者が、インターフェロンガンマ(IFNγ)およびネオプテリンの血清濃度の増加を示したことが判明している。IFNγは、炎症性腸疾患およびクローン病の病因を悪化させることが知られている。データは、高用量では、IL-10での処置によりIFNγが誘導され、これが、炎症性疾患を悪化させることを示唆する。
【0007】
健常なヒトにおけるIL-10の作用のさらなる分析により、炎症促進性因子リポ多糖(LPS)への曝露の前にIL-10を投与することで、炎症促進性サイトカインの産生が阻害されることが示唆される。しかしながら、LPSへの曝露の後にrHuIL-10を投与すると、炎症促進性サイトカインの分泌が増強された。LPSは、炎症性腸疾患(IBD)を有する患者の正常および外来の両方の腸内細菌の生成物であるため、これらの患者は、LPSが「なくなる」ことは決してなく、したがって、IL-10処置をLPSの前に適用することができる状態には決してならない。したがって、これらのデータは、クローン病および他の炎症性疾患を有する患者が、IL-10処置の治療的利点を得ることが決してないことを示唆している。
【0008】
IL-10が抗腫瘍応答を誘導するように免疫系を活性化することを示すデータの蓄積により、IL-10の役割にさらなる混乱が付加されている。初期のデータは、IL-10が、NK細胞を活性化したことを示唆していたが、さらなる調査により、IL-10処置が、CD8+ T細胞およびIFNγに依存する様式で、腫瘍成長を阻害することが判明した。継続的な調査により、IL-10処置が、FoxP3+CD4+制御性T細胞の増殖を阻害し、クッパー細胞の除去を増強したことが判明しており、これらはすべて、IL-10が抑制因子というよりはむしろ強力な免疫刺激因子であることを示唆する機能である。最後に、これらの刺激性活性は、確認されている場合、PEG化IL-10で処置した腫瘍患者の臨床研究におけるものである。
【0009】
まとめると、これらのデータは、自己免疫関連の炎症を患う患者のIL-10処置は、治療的利点を誘起することができないことを示し、IL-10が、汎免疫抑制物質ではないことを示唆する。これと一致して、(PEG)IL-10でのがん患者の処置は、IL-10で処置したクローン病患者と同様に、強力かつ治療的に有用な免疫活性化、特に、用量依存的な血清IFNγの誘導をもたらし、IL-10が、強力な免疫刺激因子であることを示す。
【0010】
ではなぜウイルスがIL-10配列を獲得するのかについては、不明である。エプスタインバーウイルス(EBV-IL10)およびサイトメガロウイルス(CMV-IL10)の両方のホモログのさらなる分析により、これらのウイルスが、2つの主要な様式で、天然のIL-10配列を変化させていることが示唆される。EBV-IL10は、ホモ二量体相互作用の類似する三次元角度を維持してリガンド受容体相互作用の特定の角度をもたらすが、IL-10受容体に対するその親和性が実質的に減少していると考えられる。CMV-IL10は、IL-10受容体に対する親和性の増加を示すが、IL-10受容体との相互作用の角度が実質的に変化している。EBV-IL10およびCMV-IL10配列は、それぞれ、天然のIL-10に対しておよそ80%および27%の相同性を維持するが、ウイルスホモログのそれぞれは、完全に異なるIL-10受容体親和性、異なる受容体結合角度を有し、それぞれのウイルスホモログが、天然のIL-10に高度に類似する抗炎症性機能を発揮するように思われる。したがって、IL-10受容体に対する親和性および/または受容体相互作用の角度が、どのようにしてその後のIL-10の下流シグナル伝達に影響を及ぼすかは不明である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
様々な好ましい実施形態の概要
本出願は、概して、IL-10受容体シグナル伝達をモジュレートする新規なIL-10バリアント分子に関する。したがって、本出願は、IL-10分子の構造に対する改変を組み込んだIL-10バリアント分子に関し、変更されたIL-10受容体結合親和性および/または変更されたIL-10ドメイン間角度を有する新規なIL-10バリアント分子をもたらす。本発明者は、驚くべきことに、IL-10受容体親和性および/またはIL-10ドメイン間角度に影響を及ぼす鍵となるドメインにおいてIL-10を改変することにより、免疫疾患、炎症性疾患または状態の処置、ならびにがんの処置において使用することができるIL-10受容体アゴニストが作製されることを発見した。さらに、IL-10バリアント分子は、IL-10またはIL-10バリアントの単量体がIL-10ホモ二量体を形成するのを妨害することなく、バリアントIL-10分子を融合タンパク質、例えば、様々な抗体ドメイン(Fcまたは可変ドメイン)の一部として組み込むことによって、増加した血清半減期も有することができる。
【0012】
ある特定の実施形態では、IL-10バリアント分子は、改変されたヒトIL-10である。他の実施形態では、IL-10バリアント分子は、改変されたマウスIL-10である。好ましい実施形態では、IL-10バリアント分子は、IL-10の改変されたウイルスホモログである。より好ましい実施形態では、ウイルスIL-10ホモログは、CMV-IL10である。もっとも好ましい実施形態では、ウイルスIL-10ホモログは、EBV-IL10である。
【0013】
さらなる実施形態では、IL-10バリアント分子は、受容体結合領域内に少なくとも1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、または置換を組み込む。なおも他の実施形態では、IL-10バリアント分子は、IL-10のドメイン間角度を形成することに関与する領域において、少なくとも1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、または置換を組み込む。好ましい実施形態では、IL-10バリアント分子は、受容体結合ドメインおよび/またはドメイン間角度に関与する領域に対する改変のうちの一方または両方を組み込む。もっとも好ましい実施形態では、IL-10バリアント分子は、EBV-IL10タンパク質分子における一方または両方の改変を組み込む。
【0014】
様々な実施形態では、IL-10バリアント分子は、野生型IL-10と比較すると、IL-10受容体または受容体複合体に対する親和性が増強されている。他の実施形態では、IL-10バリアント分子は、野生型IL-10と比較すると、IL-10受容体または受容体複合体に対する親和性が減弱されている。他の実施形態では、IL-10バリアント分子は、野生型IL-10、より好ましくはEBV-IL10と比較すると、狭いかまたは制限されたドメイン間角度を形成する。別の実施形態では、IL-10バリアント分子は、野生型IL-10、より好ましくはEBV IL-10と比較すると、広いかまたは弛緩したドメイン間角度を形成する。
【0015】
なおもさらなる実施形態では、EBV IL-10バリアント分子は、EBV IL-10のヘリックスA、ABループ、および/またはヘリックスF(「部位1」)に位置する受容体結合領域内に、少なくとも1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、または置換を組み込む。受容体結合ドメイン領域に対する改変は、ある特定の実施形態では、IL-10受容体または受容体複合体に対する親和性を増加または増強させ得る。ある特定の他の実施形態では、受容体結合領域に対する改変は、IL-10受容体または受容体複合体に対する親和性を減弱または減少させ得る。
【0016】
さらなる実施形態では、EBV IL-10バリアント分子は、ドメイン間角度形成に関与するEBV IL-10領域内に、少なくとも1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、または置換を組み込む。好ましい実施形態では、改変は、EBV IL-10のDEループにおいて生じ得る。DEループにおける改変は、制限されたドメイン間角度または弛緩したドメイン間角度を有するEBV IL-10バリアント分子をもたらす。
【0017】
他の態様では、IL-10バリアント分子は、キメラまたは融合分子である。一実施形態では、キメラまたは融合タンパク質は、単一のタンパク質内に、別のタンパク質の特徴を付与する異なるタンパク質または突然変異に由来する1つまたは複数のドメインを含むであろう。好ましい実施形態では、キメラまたは融合タンパク質は、アルブミン、酵素、グリコシルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、IgGヒンジ領域(例えば、Fc領域)、1つまたは複数の抗体の1つまたは複数の可変ドメイン(例えば、可変重鎖または可変軽鎖であるがこれらに限定されない)、サイトカイン(例えば、IL-6、IL-4、IL-1、IL-2、IL-3、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12、IL-15、GM-CSF、G-CSF、インターフェロン-α、-β、-γ、TGF-β、および腫瘍壊死因子-α、-β)、標識、薬剤、化学療法剤、放射性同位体、ならびに半減期延長剤(例えば、ヒドロキシエチルデンプン(HES化)、ポリシアル酸、ヘパロサン(heparosan)ポリマー、エラスチン様ポリペプチド、およびヒアルロン酸)を含むがこれらに限定されない別の分子に融合された、本明細書に記載されるIL-10バリアント分子を含む、第1の部分を含むであろう。さらに別の実施形態では、IL-10バリアント分子は、1つまたは複数の抗体重鎖または軽鎖可変領域に融合されている。融合タンパク質は、融合タンパク質の異なる部分に共有結合的に連結された1つまたは複数のリンカーを含み得る。融合タンパク質は、同じ種類の別の融合タンパク質との非共有結合的に結合した複合体を形成してもよい。そのような融合タンパク質は、IL-10の単量体、またはバリアントIL-10分子の単量体が、一緒に会合して、IL-10またはバリアントIL-10の機能性ホモ二量体となることを可能にするであろう。
【0018】
他の実施形態では、バリアントIL-10分子は、操作された融合タンパク質の一部である。融合タンパク質は、融合タンパク質の第1の末端において、リンカーまたはスペーサーにコンジュゲートされたIL-10またはIL-10バリアント分子の少なくとも1つの単量体を含み、ここで、1つまたは複数のスペーサーは、融合タンパク質の様々な部分を連結させるために使用されており、これが、次いで、他方の末端にコンジュゲートされた少なくとも1つの他の分子にコンジュゲートされ、ここで、この分子は、少なくとも1つのサイトカインまたはその単量体、治療剤、標識、血清半減期延長分子、またはタンパク質(例えば、受容体、リガンド、もしくは抗体の様々な部分であるがこれらに限定されない)から選択される。好ましい実施形態では、融合タンパク質は、リンカーまたはスペーサーを介して、少なくとも1つの重鎖および/または軽鎖可変領域にコンジュゲートされた、IL-10の単量体またはIL-10バリアント分子の単量体を含む。もっとも好ましい実施形態では、融合タンパク質は、リンカーまたはスペーサーを介して、少なくとも1つの重鎖および/または軽鎖領域にコンジュゲートされた、EBV IL-10の単量体またはEBV IL-10バリアント分子の単量体を含む。もっとも好ましい実施形態では、EBV IL-10またはそのEBV IL-10バリアント分子の単量体は、1つの重鎖可変領域および1つの軽鎖可変領域にコンジュゲートされており、単量体が一緒になって二量体複合体を形成している。EBV IL-10の単量体またはEBV IL-10バリアント分子の単量体は、重鎖または軽鎖可変領域のアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかにコンジュゲートされ得る。
【0019】
ある特定の実施形態では、治療量の本出願のIL-10バリアント分子、その融合タンパク質、またはキメラタンパク質は、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、および非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)などであるがこれらに限定されない、炎症性疾患または状態を患う対象に投与される。別の実施形態では、治療量の本出願のIL-10バリアント分子、その融合タンパク質、またはキメラタンパク質は、がんを患う対象に投与される。1つを上回る病状を有する対象の処置もまた、想定される。より好ましい実施形態では、IL-10バリアント分子は、EBV-IL10バリアント、その融合タンパク質、またはキメラタンパク質である。なおも別の実施形態では、IL-10バリアント分子、その融合タンパク質、またはキメラタンパク質は、組合せ治療において使用される。例えば、IL-10バリアント分子、その融合タンパク質、またはキメラタンパク質は、他の治療法または処置と併用して、対象に投与され得る。なおも他の実施形態では、治療量の本出願のIL-10バリアント分子、その融合タンパク質、またはキメラタンパク質は、コレステロールレベルの上昇などであるがこれに限定されない脂質に基づく疾患を患う対象に投与される。
【0020】
様々な実施形態では、本出願のIL-10バリアント分子またはその融合タンパク質は、単離され精製されたタンパク質として送達される。送達は、皮下ボーラス注射の形態であり得るか、または真皮および皮下組織への複数回の微量注射の形態であり得る。なおも別の実施形態では、IL-10バリアント分子は、IL-10バリアント、その融合タンパク質、またはキメラタンパク質をコードする配列を含む核酸ベクターとして、送達され得る。核酸ベクターは、プラスミドまたはウイルスベクターを保持するウイルス粒子であり得る。一実施形態では、IL-10バリアント分子は、当業者に一般的に公知の遺伝子医薬技法によって、対象に送達され得る。
【0021】
他の実施形態では、IL-10バリアント分子は、組合せ治療レジメンの一部として投与されてもよい。一実施形態では、IL-10バリアント分子は、例えば、がん、IBD、クローン病、NAFLD、NASH、および自己免疫疾患の処置に現在利用可能な免疫療法である、二重特異性T細胞結合因子(BITES)と組み合わせて投与することができる。
【0022】
別の実施形態では、核酸ベクターは、1つまたは複数のAAV末端逆位反復(ITR)配列エレメントおよび標的細胞においてIL-10バリアント分子をコードする配列の発現を誘導するための制御エレメントを有する、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり、AAVベクターは、プラスミド(「ネイキッド」DNA)としてまたはAAV粒子にパッケージングされたものとしてのいずれかで投与され得る。別の実施形態では、核酸ベクターは、ワクシニアウイルスベクターである。WR株(ATCC VR-119)、Wyeth株(ATCC VR-325)、Lederle-Chorioallantoic株(ATCC VR-325)、CL株(ATCC VR-117)、およびその他など、異なる株に由来する様々なワクシニアウイルスベクターを使用して、本出願のバリアントIL-10分子を導入することができ、これらの株のすべては、American Type Culture Collection(Manassas、Va.)から入手可能である。
【0023】
別の実施形態では、PEG化IL-10バリアント分子を含むがこれに限定されない本明細書に記載されるIL-10バリアント分子のいずれも、本明細書に記載されるかまたは当該技術分野において一般的に公知である任意の方法によって、対象に送達され得る。
【0024】
本出願のこれらおよび他の実施形態は、本明細書における開示を踏まえ、当業者には容易に想起されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、単量体IL-10分子のリボンダイアグラム(Josephson et al, Immunity, 15, p. 35-46)を示す。赤色で強調されている部分は、部位Iの受容体接触境界部を示し、緑色は、部位IIの受容体接触境界部を示す。
【0026】
【
図2】
図2A~2Cは、IL-1β(
図2A)およびTNFα(
図2B)サイトカイン産生を試験することによってIL-10およびEBV IL-10が単球/マクロファージ(Mθ)を活性化する能力、ならびにドナー1におけるIFNγ(
図2C)産生を試験することによってT細胞の刺激を比較する。
【0027】
【
図3】
図3A~3Cは、IL-1β(
図3A)およびTNFα(
図3B)サイトカイン産生を試験することによってIL-10およびEBV IL-10が単球/マクロファージ(Mθ)を活性化する能力、ならびにドナー1におけるIFNγ(
図3C)産生を試験することによってT細胞の刺激を比較する。
【0028】
【
図4】
図4A~Bは、IL-10またはEBV IL-10による刺激後のT細胞からのIFNγ誘導の量を示す。
【0029】
【
図5】
図5A~5Cは、MC/9細胞増殖(
図5A)、LPSに応答した単球/マクロファージ(Mθ)によるTNFα分泌(
図5B)、およびT細胞受容体刺激に応答したT細胞によるIFNγ分泌(
図5C)に対する、N末端の5kDaのモノおよびジ-PEG化EBV-IL-10の作用を示す。
【0030】
【
図6-1】
図6A~6Eは、EBV-IL-10を含む様々なIL-10バリアント分子および融合タンパク質の特定のアミノ酸配列を示す。
【
図6-2】
図6A~6Eは、EBV-IL-10を含む様々なIL-10バリアント分子および融合タンパク質の特定のアミノ酸配列を示す。
【
図6-3】
図6A~6Eは、EBV-IL-10を含む様々なIL-10バリアント分子および融合タンパク質の特定のアミノ酸配列を示す。
【
図6-4】
図6A~6Eは、EBV-IL-10を含む様々なIL-10バリアント分子および融合タンパク質の特定のアミノ酸配列を示す。
【
図6-5】
図6A~6Eは、EBV-IL-10を含む様々なIL-10バリアント分子および融合タンパク質の特定のアミノ酸配列を示す。
【0031】
【
図7】
図7は、リンカーまたはスペーサーにコンジュゲートされたIL-10またはIL-10バリアント分子を含む、融合タンパク質の概略図を示す(この事例では、scFv)。この代表的な例は、N末端およびC末端の両方にコンジュゲートしたIL-10またはIL-10バリアント分子を示す。
【0032】
【
図8】
図8A~8Cは、EBV IL-10において作製されるバリアントなど、様々なIL-10バリアントの概略図である。
図8A(DV05)は、配列番号3のアミノ酸31位における単一の点突然変異(V31L V31L)を含むIL-10バリアントである。
図8B(DV06)は、配列番号3のアミノ酸75位における単一の点突然変異(A75I A75I)を含むIL-10バリアントである。
図8C(DV07)は、配列番号3のアミノ酸31位および75位における2つの点突然変異(V31LおよびA75I)を含むIL-10バリアントである。
【0033】
図8Dは、野生型ヒトIL-10、EBV-IL-10、DV05、DV06、およびDV07を含む、IL-10の様々な形態に対する単球/マクロファージの応答をアッセイする。IL-10バリアント-DV05、DV06、DV07を含め、すべての形態が、LPSに応答したTNFαの分泌を抑制する。
図8Eは、IL-10の様々な形態、野生型ヒトIL-10、EBV IL-10、DV05、DV06、およびDV07に対するT細胞応答をアッセイし、すべての形態がIFN-ガンマを誘導するわけではない。
【0034】
【
図9】
図9A~9Fは、IL-10融合タンパク質/イムノコンジュゲート/ダイアボディ構築物の様々な構成の概略図である。
図9(a)~(c)は、融合タンパク質複合体(すなわち、ダイアボディ)を表し、ここで、それぞれの融合タンパク質は、(a)例えば、アミノ酸31位における、IL-10受容体結合に影響を及ぼす単一の突然変異、(b)例えば、アミノ酸75位における、IL-10受容体結合に影響を及ぼす単一の突然変異、ならびに(c)例えば、アミノ酸31位および75位における、IL-10受容体結合に影響を及ぼす2つの突然変異を有する、カルボキシ末端リンカーまたはアミノ末端リンカーを介してIL-10(IL-10バリアント分子と置換されてもよい)の単量体に連結された2つの異なる抗体から得られたVHおよびVL領域を含む。
図9(d)~(f)は、融合タンパク質複合体(すなわち、ミニボディ)を表し、ここで、それぞれの融合タンパク質は、(d)例えば、アミノ酸31位における、IL-10受容体結合に影響を及ぼす単一の突然変異、(e)例えば、アミノ酸75位における、IL-10受容体結合に影響を及ぼす単一の突然変異、ならびに(f)例えば、アミノ酸31位および75位における、IL-10受容体結合に影響を及ぼす2つの突然変異を有する、カルボキシ末端リンカーまたはアミノ末端リンカーを介してIL-10(IL-10バリアント分子と置換されてもよい)の単量体に連結された1つの抗体から得られた単一のVHまたはVL領域を含む。
【0035】
【
図10】
図10(A)~10(F)は、IL-10融合タンパク質/イムノコンジュゲート/ダイアボディ構築物の様々な構成の概略図である。
図10(a)~(c)は、単一の融合タンパク質(すなわち、ミニボディ)を表し、ここで、IL-10(IL-10バリアント分子と置換されてもよい)の単量体は、それぞれ、カルボキシ末端リンカーまたはアミノ末端リンカーを介して、同じ抗体に由来するVHまたはVLのいずれかに連結されており、VHおよびVLは、一緒に連結されている。IL-10の単量体は、(a)IL-10受容体結合に影響を及ぼす、例えば、アミノ酸31位における単一の突然変異、(b)IL-10受容体結合に影響を及ぼす、例えば、アミノ酸75位における単一の突然変異、ならびに(c)IL-10受容体結合に影響を及ぼす、例えば、アミノ酸31位および75位における2つの突然変異を含む。
図10(d)~(f)は、単一の融合タンパク質を表し、ここで、IL-10(IL-10バリアント分子と置換され得る)の単量体は、一緒に連結されており、IL-10のそれぞれの単量体は、カルボキシ末端リンカーまたはアミノ末端リンカーを介して、1つの抗体から得られた単一のVHまたはVL領域にさらに連結されている。IL-10単量体は、(d)IL-10受容体結合に影響を及ぼす、例えば、アミノ酸31位における単一の突然変異、(e)IL-10受容体結合に影響を及ぼす、例えば、アミノ酸75位における単一の突然変異、ならびに(f)IL-10受容体結合に影響を及ぼす、例えば、アミノ酸31位および75位における2つの突然変異を含む。
【0036】
【
図11】
図11は、DV07突然変異を含むダイアボディを使用した、in vivoでの腫瘍体積の低減を示す。製剤緩衝液(1倍リン酸緩衝食塩水、「対照」)およびDV07ダイアボディ(成熟タンパク質のV31L V31LおよびA75I A75Iを有するEBV IL-10バリアント、ならびにVH/VL対のいずれもマウス標的に結合しない抗CD3αおよび抗EGFRに由来する可変ドメインを含む、融合タンパク質複合体)を、3日目に単回用量で投与した。1mg/kgおよび0.4mg/kgの用量濃度を、DV07ダイアボディに関して試験した。
【0037】
【
図12】
図12は、IL-10の公開されているバリアント(菱形)、野生型IL-10(円形)、およびDHivDEbo:DV07と称されるDV07ダイアボディの代替形態(菱形、V31LおよびA75I突然変異を有するEBV IL-10バリアント、ならびに抗HIVおよび抗エボラに由来する可変ドメイン(これらのVH/VL対のいずれも、マウスタンパク質に結合しない)を含む、融合タンパク質複合体、ここで、ダイアボディは、
図9(c)に概略的に示される構造を有する)に対するin vitroでのT細胞応答を示す。
【0038】
【
図13】
図13Aは、ダイアボディの形態で、V31LおよびA75I突然変異を有するEBV IL-10バリアント分子の様々な形態を使用した、単球/マクロファージに対するLPS曝露によって誘導されるTNFαの抑制を比較する。「wt」は、ヒトIL-10を表し、「EBV」は、EBV IL-10であり、「DCd3DEgfr:DV05」は、V31L突然変異を含むEBV IL-10バリアントに連結された抗CD3抗体および抗EGFR抗体に由来するVHおよびVL領域を含むダイアボディであり、「DCd3DEgfr:DV07」は、V31LおよびA75Iの両方の突然変異を含むEBV IL-10バリアントに連結された抗CD3抗体および抗EGFR抗体に由来するVHおよびVL領域を含むダイアボディであり、「DHivDEbo:DV07」は、V31LおよびA75Iの両方の突然変異を含むEBV IL-10バリアントに連結された抗HIV抗体および抗エボラ抗体に由来するVHおよびVL領域を含むダイアボディである。
【0039】
図13Bは、ヒトIL-10(「wt」)、EBV IL-10(「EBV」)を使用した、V31LおよびA75I突然変異を有するEBV IL-10バリアント分子ならびに異なる抗体に由来するVHおよびVL領域を含む様々なダイアボディ形態に対する応答アッセイにおいて、T細胞におけるIFNγの分泌を比較する。形態DHivDEgfr:DV07は、抗HIVおよび抗EGFRに由来する可変領域を含む、V31LおよびA75I置換を有するEBV IL-10バリアントダイアボディである。形態DHivDEbo:DV07は、抗HIVおよび抗エボラに由来する可変領域を含む、V31LおよびA75Iの両方の突然変異を有するEBV IL-10バリアントダイアボディである。
【0040】
【
図14】
図14A~14Bは、2人のドナーから単離された単球/マクロファージ(
図14A)およびT細胞(
図14B)において、EBV IL-10バリアントダイアボディの2つの形態、DH:DV07およびDHDE:DV07を比較する。形態DHDV07は、抗HIVおよび抗EGFRに由来する可変領域を含む、V31LおよびA75I置換を有するEBV IL-10バリアントダイアボディである。形態DHDE:DV07は、抗HIVおよび抗エボラに由来する可変領域を含む、V31LおよびA75I置換を有するEBV IL-10バリアントダイアボディである。
図14Aは、ヒトIL-10(「wt」)、DH:DV07、およびDHDE:DV07を使用した、単離された単球/マクロファージにおけるLPSによって誘導されるTNFαの抑制を比較する。
図14Bは、ヒトIL-10(「wt」)、EBV IL-10、DH:DV07、およびDHDE:DV07に応答した、単離されたT細胞におけるIFNγの分泌を比較する。
【0041】
【
図15】
図15は、MC/9マスト細胞におけるEBV-10バリアントダイアボディ形態の様々な形態の直接的な比較である。このアッセイは、ヒトIL-10、EBV IL-10、D:DV05(抗CD3αおよび抗EGFRに由来する可変領域を含む、V31L突然変異を有するEBV IL-10)、D:DV06(抗CD3αおよび抗EGFRに由来する可変領域を含む、A75I突然変異を有するEBV IL-10)、抗CD3αおよび抗EGFRに由来する可変領域を含む、V31LおよびA75I突然変異を有するD:DV07)、ならびにDhivDEbo:DV07(抗HIVおよび抗エボラに由来する可変領域を含む、V31LおよびA75I置換を有するEBV IL-10バリアントダイアボディ)を比較する。
【0042】
【
図16】
図16A~16Cは、D:DV07(抗CD3αおよび抗EGFRに由来する可変領域を含み、V31LおよびA75I突然変異を有する)を使用した、in vivo腫瘍研究により得られた結果である。In vivo腫瘍体積は、投薬製剤緩衝液(「対照」)、0.4mg/kgで1週間に3回(q3w)、0.2mg/kgで1週間に3回(q3w)、0.2mg/kgで2日間休薬(qd)、0.1mg/kgで2日間休薬(qd)の投与の後に評価した。
【0043】
【
図17】
図17A~17Bは、それぞれ、
図9Cおよび9Fの概略図に対応する、大きな分子量(大型)および小さな分子量(小型)の2つのIL-10バリアント融合タンパク質形式のin vivo研究により得られた結果である。IL-10バリアントは、V31LおよびA75I突然変異を含む。これらの結果は、標的化能力のないIL-10融合タンパク質の腫瘍サイズの低減に対する影響を試験した。融合タンパク質に由来するVHおよびVL領域は、抗HIVおよび抗エボラ(大型)または抗エボラ(小型)のいずれかに由来する非標的化配列である。
図17Aは、peg化IL-10(0.75mg/kg、1日ごと)と比較した、5日間の投薬、2日間の休薬で投薬した非標的化小型形式の投薬研究である。
図17Bは、peg化組換えヒトIL-10(0.75mg/kg、1日ごと)と比較した、1週間に3回の投薬を用いた非標的化小型(1mg/kg、0.5mg/kg、0.25mg/kg)および大型(0.2mg/kg)形式の投薬研究である。
【0044】
【
図18】
図18A~18Cは、それぞれ、
図9Cおよび9Fの概略図に対応する、大型および小型の2つのIL-10バリアント融合タンパク質形式のin vivo研究により得られた結果である。これらの結果は、標的化能力を有するIL-10融合タンパク質の腫瘍サイズの低減に対する影響を試験した。IL-10バリアントは、V31LおよびA75I突然変異を含む。大型形式では、融合タンパク質に由来する一方のセットのVHおよびVL領域は、抗EGFR抗体に由来し、他方のセットのVHおよびVLは、抗エボラ抗体に由来する。小型形式には、抗EGFR抗体だけに由来するVHおよびVLが含まれる。
図18Aは、peg化組換えヒトIL-10(0.75mg/kg)と比較した、標的化IL-10融合タンパク質の大型形式(0.25mg/kg)、小型形式(0.25mg/kg)、および非標的化IL-10融合タンパク質の小型形式(0.25mg/kg)の1日ごとの投薬研究により得られた結果である。
図18Bは、大型形式の非標的化IL-10融合タンパク質(DhDe:DV07、0.2mg/kg)およびpeg化IL-10(0.75mg/kg、1日ごと)と比較した、大型形式の標的化IL-10融合タンパク質(1mg/kg、0.25mg/kg、および0.25mg/kg、1日ごと)の1週間に3回の投薬研究により得られた結果である。
図18Cは、小型形式の非標的化IL-10融合タンパク質(Debo:DV07、1mg/kg)およびpeg化IL-10(0.75mg/kg、1日ごと)と比較した、小型形式の標的化IL-10融合タンパク質(1mg/kg、0.25mg/kg)の1週間に3回の投薬研究により得られた結果である。
【0045】
【
図19】
図19A~19Bは、抗CD3αおよび抗EGFRに由来する可変領域を含む、V31L突然変異を有するEBV IL-10バリアントを有するダイアボディを使用した、in vivoコレステロール研究により得られた結果である。
【0046】
【
図20】
図20A~20Bは、マクロファージおよびT細胞に対する2つのIL-10バリアント融合タンパク質におけるin vitro比較研究により得られた結果である。このアッセイは、ヒトIL-10と比較して、DV06融合タンパク質の2つの形態のin vitroでの有効性を試験する。
図20Aは、DhivDebo:DV06(配列番号26および27)ならびにDmadcamDEbo:DV06(配列番号41および42)を使用した単球/マクロファージアッセイである。
図20Bは、DhivDebo:DV06(配列番号26および27)ならびにDmadcamDEbo:DV06(配列番号41および42)を使用して、IFN-ガンマによって測定される、T細胞応答アッセイである。
【0047】
【
図21-1】
図21A~21Dは、EBV IL-10アミノ酸配列である。
図21Aは、EBV IL-10である。
図21Bは、V31L置換を含むDV05である。
図21Cは、A75I置換を含むDV06である。
図21Dは、V31LおよびA75Iの両方の置換を含むDV07である。
【
図21-2】
図21A~21Dは、EBV IL-10アミノ酸配列である。
図21Aは、EBV IL-10である。
図21Bは、V31L置換を含むDV05である。
図21Cは、A75I置換を含むDV06である。
図21Dは、V31LおよびA75Iの両方の置換を含むDV07である。
【
図21-3】
図21A~21Dは、EBV IL-10アミノ酸配列である。
図21Aは、EBV IL-10である。
図21Bは、V31L置換を含むDV05である。
図21Cは、A75I置換を含むDV06である。
図21Dは、V31LおよびA75Iの両方の置換を含むDV07である。
【
図21-4】
図21A~21Dは、EBV IL-10アミノ酸配列である。
図21Aは、EBV IL-10である。
図21Bは、V31L置換を含むDV05である。
図21Cは、A75I置換を含むDV06である。
図21Dは、V31LおよびA75Iの両方の置換を含むDV07である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
様々な好ましい実施形態の詳細な説明
様々な実施形態の適用を詳細に説明する前に、本出願が、特定の製剤またはプロセスパラメーターに制限されるものではなく、当然ながら、変動し得ることを理解されたい。本明細書において使用される用語は、様々な実施形態を説明する目的のものにすぎず、制限することを意図するものではないこともまた、理解されたい。
【0049】
本明細書に記載されるものに類似またはそれと同等のいくつかの方法および材料を、様々な記載される実施形態の実施において使用することができるが、好ましい材料および方法が、本明細書に記載されている。
【0050】
別途示されない限り、本明細書に記載される実施形態は、当業者には周知である分子生物学、生物化学、薬理学、化学、および免疫学の従来的な方法および技法を用いる。IL-10のヒト、CMV、および/またはEBV形態を含むがこれらに限定されない、IL-10バリアントを設計および製造するための一般的な技法、ならびにIL-10バリアントを試験するためのアッセイの多くは、当該技術分野において容易に入手可能であり、詳述されている、周知の方法である。例えば、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989)、Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.)、Handbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell eds., Blackwell Scientific Publications)、A. L. Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition)を参照されたい。N末端アルデヒドに基づくPEG化化学反応もまた、当該技術分野において周知である。
【0051】
以下の用語は、本明細書において考察される様々な実施形態を説明するために使用され、以下に示されるように定義されることが意図される。
【0052】
様々な実施形態を説明する際に本明細書で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈により別途明確に示されない限り、複数形の参照物を含む。
【0053】
「約」という用語は、示される数または数の範囲から0.0001~5%の偏差を指す。一実施形態では、「約」という用語は、示される数または数の範囲から1~10%の偏差を指す。一実施形態では、「約」という用語は、示される数または数の範囲から最大25%の偏差を指す。より具体的な実施形態では、「約」という用語は、野生型配列と比較した場合に、ヌクレオチド配列相同性またはアミノ酸配列相同性に関して、1~25%の差を指す。
【0054】
「インターロイキン-10」または「IL-10」という用語は、共有結合によらずに接合されてホモ二量体を形成する2つのサブユニットを含む、タンパク質を指し、ここで、IL-10は、2つの6ヘリックスバンドル(ヘリックスA~F)から構成される介在二量体である。本明細書で使用される場合、別途示されない限り、「インターロイキン-10」および「IL-10」は、ヒトIL-10(「hIL-10」、Genbank受託番号NP_000563、もしくは米国特許第6,217,857号)タンパク質(配列番号1)または核酸(配列番号2)、マウスIL-10(「mIL-10」、Genbank受託番号M37897、もしくは米国特許第6,217,857号)タンパク質(配列番号7)または核酸(配列番号8)、またはウイルスIL-10(「vIL-10」)を指し得る。ウイルスIL-10ホモログは、EBVまたはCMV(それぞれ、Genbank受託番号NC_007605およびDQ367962)に由来し得る。EBV-IL10という用語は、IL-10タンパク質(配列番号3)または核酸(配列番号4)のEBVホモログを指す。CMV-IL10という用語は、IL-10タンパク質(配列番号5)または核酸(配列番号6)のCMVホモログを指す。単量体IL-10という用語は、本明細書で使用される場合、共有結合によらずに接合されるとIL-10またはバリアントIL-10のホモ二量体を形成する、IL-10またはバリアントIL-10の個々のサブユニットを指す。「野生型」、「wt」、および「天然の」という用語は、問題となる特定のIL-10の起源である種において天然に一般的に見出されるタンパク質(例えば、IL-10、CMV-IL10、またはEBV-IL10)の配列を指して、本明細書において互換可能に使用される。例えば、「野生型」または「天然の」EBV-IL10という用語は、したがって、天然にもっとも一般的に見出されるアミノ酸配列に対応するであろう。
【0055】
「由来する(derive)」、「由来する(derived)」、「に由来する(derive from)」、または「に由来する(derived from)」という用語は、分子、例えば、IL-10分子のウイルス形態の起源を特定するために本明細書に使用されるものであり、分子が調製、製造、製作、または作製される方法を制限することを意味するものではない。これには、化学的手段または組換え手段などであるがこれらに限定されない方法が含まれるであろう。
【0056】
「誘導体」という用語は、参照分子またはバリアントの所望される生物学的活性(例えば、抗炎症、および/またはT細胞刺激がないこと)が保持される限り、目的の参照分子またはそのアナログの任意の好適な改変形態、例えば、硫酸化、アセチル化、グリコシル化、リン酸化、ポリマーコンジュゲーション(例えば、ポリエチレングリコールを用いた)、ヘシル化(hesylation)、またはその他の外来部分の付加を含むことが意図される。
【0057】
「バリアント」、「アナログ」、および「突然変異タンパク質」という用語は、所望される活性、例えば、例として、抗炎症活性を保持する、参照分子の生物学的に活性な誘導体を指す。一般的に、「バリアント(variant)」、「バリアント(variants)」、「アナログ」、および「突然変異タンパク質」という用語は、ポリペプチドに関連する場合、天然の分子と比べて、1つまたは複数のアミノ酸付加、置換(保存的な性質の)、および/または欠失を有する、天然のポリペプチド配列および構造を有する1つまたは複数の化合物を指す。そのため、「IL-10バリアント」、「バリアントIL-10」、「IL-10バリアント分子」という用語、ならびにこれらの文法上の変動形および複数形は、すべて、野生型IL-10とは、配列同一性または相同性が1~25%のいずれかで異なる、IL-10アミノ酸(または核酸)配列を指す同等の用語であることが意図される。したがって、例えば、EBV IL-10バリアント分子は、1つまたは複数のアミノ酸(またはアミノ酸をコードするヌクレオチド配列)の付加、置換、および/または欠失を有することが、野生型EBV IL-10とは異なるものである。したがって、一形態では、EBV IL-10バリアントは、配列相同性に約1%~25%の差を有することが、配列番号3の野生型配列とは異なるものであり、これは、約1~42個のアミノ酸の相違に相当する。
【0058】
「融合タンパク質」という用語は、通常は天然に存在しない新規なタンパク質配置をもたらす、2つまたはそれよりも多くのタンパク質またはポリペプチドの組合せまたはコンジュゲーションを指す。融合タンパク質は、2つまたはそれよりも多くのタンパク質またはポリペプチドの共有結合的連結の結果である。融合タンパク質を構成する2つまたはそれよりも多くのタンパク質は、アミノ末端からカルボキシ末端に任意の構成で配置され得る。したがって、例えば、1つのタンパク質のカルボキシ末端は、別のタンパク質のカルボキシ末端またはアミノ末端のいずれかに共有結合的に連結され得る。例示的な融合タンパク質は、単量体IL-10または単量体バリアントIL-10分子を、1つまたは複数の抗体可変ドメインと組み合わせることを含み得る。融合タンパク質はまた、二量体を形成し得るか、または同じ種類の他の融合タンパク質と会合してもよく、これにより、融合タンパク質複合体が生じる。融合タンパク質の複合体形成は、一部の事例では、複合体を形成していない融合タンパク質と比較した場合に、融合タンパク質の機能性を活性化または増加させ得る。例えば、1つまたは複数の抗体可変ドメインを有する単量体IL-10または単量体バリアントIL-10分子は、IL-10受容体に結合する能力が限定または減少されている場合があるが、しかしながら、融合タンパク質を複合体にすると、単量体形態のIL-10またはバリアントIL-10分子は、ホモ二量体となり、可変ドメインが会合して機能性抗体となる。
【0059】
「機能性バリアント」は、参照分子の生物学的活性を破壊しない改変(例えば、付加、置換、および/または欠失)を含む、IL-10バリアント分子である。これらのバリアントは、以下に定義される参照分子に「相同」であり得る。一般的に、そのようなアナログのアミノ酸配列は、2つの配列をアライメントしたときに、参照配列に対して高い度合いの配列相同性、例えば、50%を上回る、一般的には60%~70%を上回る、さらにより具体的には80%~85%またはそれを上回る、例えば、少なくとも90%~95%またはそれを上回るアミノ酸配列相同性を有するであろう。多くの場合、アナログは、同じ数のアミノ酸を含むが、置換を含むであろう。機能性バリアントは、天然の分子と比べて増強された、減弱された、または実質的に同じ、生物学的活性を保持するであろう。具体的には、「バリアント」IL-10分子という用語は、「操作された」IL-10分子またはIL-10バリアント分子またはIL-10バリアントという用語と互換可能であり、IL-10分子またはタンパク質におけるIL-10受容体結合ドメインおよび/またはドメイン間角度もしくはホモ二量体間角度の形成に関与する領域に対する一方または両方の改変を含む、IL-10分子またはタンパク質を指す。バリアントIL-10「融合タンパク質」または「ダイアボディ」または「融合体」は、概して、バリアントIL-10(単量体形態またはホモ二量体形態のいずれかで)および少なくとも1つの他のタンパク質を含む、融合タンパク質(または融合タンパク質複合体)の形成を指す。本明細書で使用される場合、バリアントIL-10「またはその融合タンパク質」は、そのようなバリアントIL-10融合タンパク質を説明するために、本明細書全体を通じて使用され得る。
【0060】
「アナログ(analog)」または「アナログ(analogs)」は、保存的な性質である置換を含み得る。例えば、保存的置換には、(1)アスパラギン酸とグルタミン酸との間の酸性置換、(2)リシン、アルギニン、またはヒスチジンのうちのいずれか1つの間の塩基性置換、(3)アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、またはトリプトファンのうちのいずれか1つの間の非極性置換、ならびに(4)グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、またはチロシンのうちのいずれか1つの間の非荷電極性置換などであるがこれらに限定されない種類の置換が含まれ得る。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、芳香族アミノ酸として分類されることもある。所望される特定の生物学的活性がインタクトである限り、ロイシンとイソロイシンまたはバリン、アスパラギン酸とグルタミン酸、スレオニンとセリンとの単独置換、または1つのアミノ酸と構造的に関連性のあるアミノ酸との同様の保存的置換が行われ得ることも可能である。例えば、目的のポリペプチドは、分子の所望される機能がインタクトなままである限り、最大で約1~10個の保存的もしくは非保存的アミノ酸置換、またはさらには最大で約15~25個もしくは1~50個のうちの任意の整数個の保存的もしくは非保存的アミノ酸置換を含み得る。当業者であれば、当該技術分野において周知の変更を寛容し得る目的の分子の領域を容易に判定することができる。
【0061】
「突然変異タンパク質」は、アミノおよび/またはイミノ分子のみを含む化合物、1つまたは複数のアミノ酸アナログ(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)を含むポリペプチド、置換された連結を有するポリペプチド、ならびに当該技術分野において公知の他の改変、天然に存在するおよび天然に存在しない(例えば、合成)の両方の環状化分岐分子などを含むがこれらに限定されない、1つまたは複数のアミノ酸様分子を有するポリペプチドをさらに含む。好ましくは、アナログまたは突然変異タンパク質は、天然の分子と比べて増強された、減弱された、または実質的に同じ、なんらかの生物学的活性を保持するであろう。ポリペプチドアナログおよび突然変異タンパク質を作製するための方法は、当該技術分野において周知である。
【0062】
「ホモログ」、「相同性」、「相同」、または「実質的に相同」という用語は、少なくとも2つのポリヌクレオチド配列間または少なくとも2つのポリペプチド配列間の同一性パーセントを指す。配列が、分子の所定の長さにわたって、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%~85%、好ましくは少なくとも約90%、もっとも好ましくは少なくとも約95%~98%の配列同一性を示す場合、これらの配列は、互いに相同である。
【0063】
「配列同一性」という用語は、ヌクレオチド間またはアミノ酸間での厳密な対応を指す。配列同一性は、100%の配列同一性から50%の配列同一性の範囲に及び得る。配列同一性パーセントは、配列をアライメントし、2つのアライメントした配列間での厳密な一致の数を計数し、参照配列の長さで除し、結果に100を乗じることによる、2つの分子(参照配列と、参照配列に対して未知の同一性%を有する配列と)の間の配列情報の直接的な比較を含むがこれに限定されない、様々な方法を使用して判定することができる。容易に入手可能なコンピュータプログラムを使用して、同一性パーセントの特定を補助することができる。
【0064】
「断片」という用語は、全長アミノ酸またはポリヌクレオチド配列および/または構造の一部分の分子を含むことが意図される。ポリペプチドの断片は、例えば、天然のポリペプチドのC末端欠失、N末端欠失、および/または内部欠失を含み得る。特定のタンパク質の活性なまたは機能性断片は、一般的に、全長分子の少なくとも約5~10個の連続的なアミノ酸残基、好ましくは全長分子の少なくとも約15~25個の連続的なアミノ酸残基、もっとも好ましくは全長分子の少なくとも約20~50個またはそれを上回る連続的なアミノ酸残基、または5個のアミノ酸から全長配列までの間の任意の整数個を含むが、ただし、問題の断片が、生物学的活性、例えば、抗炎症活性を保持することを条件とする。抗体に関連する場合、抗体断片は、インタクトな抗体の抗原結合性部位または可変領域(重鎖および/または軽鎖領域)を含むインタクトな抗体の一部分を指す。これらとしては、例えば、Fab、Fab’、Fab’-SH、(Fab’)2、Fv断片、ダイアボディ、一本鎖Fv(ScFv)、1つの軽鎖可変ドメインを有する一本鎖ポリペプチド、軽鎖可変ドメインまたは重鎖可変ドメインの3つのCDRを有する断片を挙げることができる。
【0065】
「実質的に精製された」という用語は、一般的に、物質が、それが存在する試料に対して大部分のパーセントを構成するような、物質の単離を指す。実質的に精製された成分は、試料のうちの50%、好ましくは80%~85%、より好ましくは90~95%を構成する。同様に、「単離された」という用語は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに言及している場合、示される分子が、その分子が天然に見出される生物全体から分離され別個であるか、または同じ種類の他の生物学的巨大分子が実質的に不在の状態で存在することを意味する。
【0066】
「対象」、「個体」、および「患者」という用語は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物を指して、本明細書において互換可能に使用される。哺乳動物には、マウス、げっ歯類、サル、ヒト、家畜、競技動物、およびある特定の愛玩動物が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
「投与すること」という用語は、本出願の活性成分がその意図される機能を発揮することを可能にする、投与経路を含む。
【0068】
「治療有効量」は、例えば、本明細書に記載されるEBV-IL-10バリアントまたはその融合タンパク質の投与に関連する場合、ある特定の生物学的活性を促進するのに十分であるEBV-IL-10バリアントまたはその融合タンパク質の量を指す。これらには、例えば、骨髄系細胞機能の抑制、クッパー細胞活性の増強、および/またはCD8+ T細胞に対する任意の作用の欠如もしくはCD8+ T細胞活性の増強、ならびにFc受容体のマスト細胞上方制御の遮断もしくは脱顆粒の防止を挙げることができる。したがって、「有効量」は、医学的状態の症状または兆候を軽減または予防する。有効量はまた、診断を可能にするかまたは容易にするのに十分な量も意味する。
【0069】
「処置する」または「処置」という用語は、疾患または状態の作用を低減させる方法を指す。処置はまた、症状だけではなく疾患または状態自体の根底にある原因を低減させる方法も指し得る。処置は、本来のレベルからの任意の低減であり得、疾患、状態、または疾患もしくは状態の症状の完全な排除であり得るが、これらに限定されない。
【0070】
「化学療法」剤は、がんの処置において有用な化学的化合物である。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパ、シクロホスファミド(cyclosphosphamide)(CYTOXAN(商標))、スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン、アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパ、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスファオラミド(triethylenethiophosphaoramide)、およびトリメチロロメラミン(trimethylolomelamime)を含むエチレンイミンおよびメチラメラミン、ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル(chiorambucil)、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、抗生物質、例えば、アクラノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン(olivomycin)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、抗代謝剤、例えば、メトトレキセートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)、葉酸アナログ、例えば、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート、プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン、ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU、アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン、抗副腎薬(anti-adrenal)、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン、葉酸補液(folic acid replenisher)、例えば、フロリン酸(frolinic acid)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside)、アミノレブリン酸、アムサクリン、ベストラブシル(bestrabucil)、ビスアントレン、エダトレキセート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルチン、ジアジクオン、エルフォルニチン(elfornithine)、酢酸エリプチニウム、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダミン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ポドフィリン酸(podophyllinic acid)、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK(登録商標)、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジクオン、2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン(gacytosine)、アラビノシド(Ara-C)、シクロホスファミド、チオテパ、タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)およびドセタキセル(doxetaxel)(Taxotere(商標)、Rhone-Poulenc Rorer、Antony、France)、クロラムブシル、ゲムシタビン、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキセート、白金アナログ、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン、ビンブラスチン、白金、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ナベルビン、ノバントロン、テニポシド、ダウノマイシン、アミノプテリン、Xeloda(登録商標)Roche Switzerland、イバンドロネート、CPT11、トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、レチノイン酸、エスペラミシン、カペシタビン、ならびに上述のもののいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が挙げられる。腫瘍に対するホルモンの作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、例として、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(Fareston)を含む、抗エストロゲン剤、ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン剤、ならびに上述のもののいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体もまた、この定義に含まれる。
【0071】
「コンジュゲート」、「コンジュゲートされた」、「コンジュゲーション」、または「コンジュゲートする」という用語は、本出願において使用される場合、分子の2つまたはそれを上回る部分を一緒に連結させることを指す。連結は、共有結合(例えば、ペプチド結合)によって生じる。
IL-10バリアントタンパク質
【0072】
本出願のIL-10バリアント分子は、IL-10の任意の形態に対する改変を含む。IL-10分子に対するこれらの改変としては、IL-10受容体結合に関係する領域および/もしくはドメイン、ならびに/またはIL-10分子においてドメイン間もしくはホモ二量体間角度を付与することに関与するものにおける1つまたは複数のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換が挙げられる。本出願のバリアントIL-10分子を構築する際に有用であり得る例示的なIL-10配列としては、エプスタインバーウイルス(「EBV」、例えば、Moore et al., Science (1990) 248:1230-1234、Hsu et al., Science (1990) 250:830-832、Suzuki et al., J. Exp. Med. (1995) 182:477-486を参照されたい)、サイトメガロウイルス(「CMV」、例えば、Lockridge et al., Virol. (2000) 268:272-280、Kotenko et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2000) 97:1695-1700を参照されたい)、およびウマヘルペスウイルス(例えば、Rode et al., Virus Genes (1993) 7:111-116を参照されたい)、OrFウイルス(例えば、Imlach et al., J. Gen. Virol. (2002) 83:1049-1058およびFleming et al., Virus Genes (2000) 21:85-95を参照されたい)に由来するホモログが挙げられるが、これらに限定されない。他の代表的なIL-10配列としては、NCBI受託番号NM010548、AF307012、M37897、M84340(マウス配列)、U38200(ウマ)、U39569、AF060520(ネコ配列)、U00799(ウシ)、U11421、Z29362(ヒツジ配列)、L26031、L26029(マカク配列)、AF294758(サル)、U33843(イヌ)、AF088887、AF068058(ウサギ配列)、AF012909、AF120030(ウッドチャック配列)、AF026277(オポッサム)、AF097510(モルモット)、U11767(シカ)、L37781(アレチネズミ)、AB107649(ラマおよびラクダ)に記載される配列が挙げられる。
【0073】
一実施形態では、本明細書に記載されるIL-10バリアント分子は、ヒト(配列番号1)、CMV(配列番号5)、EBV(配列番号3)IL-10配列、またはマウス(配列番号7)の野生型タンパク質を改変することによって得られる。様々なIL-10バリアント分子の代表的な例は、配列番号9~23に提供されている。
【0074】
野生型IL-10に対する改変は、(i)IL-10受容体結合および/または(ii)IL-10分子のドメイン間もしくはホモ二量体間角度の形成に関与する領域における1つまたは複数のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換を含む。
バリアントIL-10分子:IL-10受容体結合領域
【0075】
受容体結合に関与する領域には、IL-10のIL-10受容体1(IL10R1)および/またはIL-10受容体2(IL10R2)への結合に直接的に関与するかまたはそれを担う領域内に位置する任意のアミノ酸部分が含まれる。これらの領域には、例えば、当該技術分野においてこれまでに考察されマッピングされている、IL-10分子の不連続部分が含まれ得る(例えば、Yoon 2005; Josephson 2001を参照されたい)。IL-10のIL-10受容体への結合と関連する接触点または切断点を形成することに関与する、例えば、ヘリックスA、ヘリックスF、およびABループなどであるがこれらに限定されない任意の領域に対する改変が、本出願において想定される。好ましい実施形態では、受容体結合ドメインに対する改変(例えば、付加、欠失、および/または置換)は、配列番号3のアミノ酸31および/または75を含む。特に好ましい実施形態では、改変は、配列番号3の31位におけるバリンのロイシンへの置換(V31L、本明細書において「DV05」と称される)、配列番号3の75位におけるアラニンのイソロイシンへの置換(A75I、本明細書において「DV06」と称される)、または配列番号3におけるV31LおよびA75Iの両方の置換(本明細書において「DV07」と称される)を含む。一態様では、DV05は、配列番号55であり、DV06は、配列番号57であり、DV07は、配列番号59である。
【0076】
一実施形態では、受容体結合ドメインに対する改変は、Josephson et al (Immunity, 2001, 15, p. 35-46, Figure 1)によって考察されている部位Iaおよび/または部位Ibの境界部接触点のうちのいずれか1つまたは複数を含む。本出願の一実施形態では、部位Ia境界部接触点は、ヘリックスFの曲がり部分およびABループに位置する1つまたは複数のアミノ酸を含む。別の実施形態では、部位Ib境界部接触点は、ヘリックスAのN末端およびヘリックスFのC末端に位置する1つまたは複数のアミノ酸を含む。別の実施形態では、受容体結合に関与するIL-10に位置するいずれか1つまたは複数のアミノ酸は、ヘリックスA内の1~10個のアミノ酸およびABループ内の1~7個のアミノ酸のうちのいずれか1つまたは複数を含む。別の実施形態では、受容体結合領域は、以下のアミノ酸またはそれを中心とした1~10個のアミノ酸の1つまたは複数の改変を含み得、ここで、アミノ酸は、Glu-142、Lys-138、Asp-144、Gln-38、Ser-141、Asp-44、Gln-42、Gln-38、Arg-27、Glu-151、Arg-24、Pro-20、Ile-158、またはこれらの任意の組合せである。
【0077】
一態様では、受容体結合ドメインに対する改変は、Josephson et al (Immunity, 2001, 15, p. 35-46, Figure 1)によって考察されている部位IIaおよび/または部位IIbの境界部接触点のうちのいずれか1つまたは複数を含む。本出願の一実施形態では、部位IIa境界部接触点は、DEループに位置する1つまたは複数のアミノ酸を含む。別の実施形態では、受容体結合領域は、以下のアミノ酸またはそれを中心とした1~10個のアミノ酸の1つまたは複数の改変を含み得、ここで、アミノ酸は、Ser-11、Thr-13、Asn-18、Arg-104、Arg-107、またはこれらの任意の組合せである。一実施形態では、バリアントIL-10分子は、受容体結合ドメインに影響を及ぼす1~100個(またはその中の任意の整数個)のアミノ酸付加、欠失、および/または置換を含み、そのような付加、欠失、および/または置換は、バリアントIL-10分子のIL-10受容体に対する結合親和性を増加させるか減少させるかのいずれかである。
バリアントIL-10分子:ドメイン間角度の改変
【0078】
IL-10分子のドメイン間(ホモ二量体間、これは互換可能に使用される)角度の形成に関与する領域は、IL-10ホモ二量体の特定のドメイン間角度の形成に直接的に関与するかまたはそれを担う領域内に位置する任意のアミノ酸部分を含む。野生型IL-10は、IL-10の2つの単量体単位が逆平行様式で相互接続すると、「L字型」二量体を形成する。結果として生じるヒトIL-10およびEBV-IL10のドメイン間角度は、それぞれ、およそ89度および97度であることが報告されている。IL-10受容体のシグナル伝達を調整するために、一実施形態では、本出願は、ドメイン間角度の形成に関与するそれぞれの単量体においてL字型二量体の形成に関与するヘリックスDまたはヘリックスEの部分であるDEループ内のアミノ酸を改変させることを探究する。別の実施形態では、ドメイン間角度に関与する領域は、IL-10タンパク質のヘリックスDとヘリックスEとの間に位置する約12個のアミノ酸のリンカー領域を含む。付加、欠失、または置換による改変は、ヒトIL-10またはEBV-IL10のいずれかと比較した場合に、制限されたまたは弛緩したIL-10ドメイン間角度をもたらす。単量体IL-10分子が改変されると、ホモ二量体化したときに制限された/緊密な/閉鎖された、または弛緩した/緩い/開放されたIL-10ドメイン間角度をもたらし、改変されたIL-10分子は、その同種受容体(IL-10受容体)に結合しそれをモジュレートする変更されたドメイン間角度を有するバリアントIL-10分子を産生する。別の実施形態では、置換は、EBV-IL10のDヘリックスとEヘリックスとの間および/またはCヘリックスとDヘリックスとの間に位置するアミノ酸セグメント内にプロリンを導入することを含む。
【0079】
したがって、ある実施形態では、バリアントIL-10分子は、野生型IL-10と比較した場合に、変更された分子間角度または変更されたドメイン間角度を呈する1つまたは複数の付加、欠失、および/または置換を含むであろう。変更された分子間角度または変更されたドメイン間角度は、同一または異なるバリアントIL-10分子と二量体化して、野生型IL-10分子と比較した場合に、異なる結合角度でIL-10受容体に結合するバリアントIL-10分子をもたらし得る。バリアントIL-10分子の異なる結合角度は、IL-10受容体のシグナル伝達を、炎症および/または免疫応答を活性化または抑制のいずれかを行うようにモジュレートまたは「調整」する能力をもたらす。好ましい実施形態では、バリアントIL-10分子は、EBV-IL10である。別の好ましい実施形態では、バリアントIL-10分子は、改変の基準として、EBV-IL10分子を使用する。なおも別の実施形態では、バリアントIL-10分子は、他のIL-10分子(ヒトIL-10、マウスIL-10、および/またはCMV-IL10などであるがこれらに限定されない)に由来する部分およびドメインを得たハイブリッド分子である。
【0080】
別の好ましい実施形態では、バリアントIL-10分子は、炎症性細胞(骨髄系統細胞)応答を抑制し、リンパ系細胞、例えば、T細胞の活性化を誘導しない、弛緩したドメイン間角度をもたらす。受容体結合ドメインに対する改変、好ましくは、低下したかまたは変化しない受容体親和性をもたらす改変と組み合わせた場合、弛緩したドメイン間角度を有するバリアントIL-10分子は、炎症促進性刺激に応答した骨髄系細胞(単球、マクロファージ、好中球、顆粒球、マスト細胞、クッパー細胞)サイトカイン分泌を抑制するのに有効であろう。バリアントIL-10分子のこの構成は、例えば、IBD、クローン病、乾癬、リウマチ性関節炎、NAFLD、およびNASHなどであるがこれらに限定されない炎症性疾患を処置するのに有用である。
【0081】
別の好ましい実施形態では、バリアントIL-10分子は、免疫細胞、例えば、T細胞の活性化を増強させる、制限されたドメイン間角度をもたらす。受容体結合ドメインに対する改変、好ましくは、高い受容体親和性をもたらす改変と組み合わせた場合、制限されたドメイン間角度を有するバリアントIL-10分子は、例えば、CD8+ T細胞、NK細胞、およびクッパー細胞の排除を増強するのに有効であろう。バリアントIL-10分子のこの構成は、例えば、転移性がんを含む、様々な固形および造血系のがんを処置するのに有用である。
【0082】
ドメイン間角度の形成に関与する領域は、IL-10分子内に位置する連続的または不連続的部分であり得る。一実施形態では、IL-10バリアント分子のドメイン間角度は、1~25度の角度変化を有し、別の好ましい実施形態では、角度変化は、1~10度であり、より好ましい実施形態では、角度変化は、1~5度であり、もっとも好ましい実施形態では、角度変化は、5度を下回る。一実施形態では、バリアントIL-10分子は、ドメイン間角度に影響を及ぼす1~100個(またはその中の任意の整数個)のアミノ酸付加、欠失、および/または置換を含むであろう。
【0083】
本出願の一実施形態では、バリアントIL-10分子は、コンピュータに基づくモデリングの補助により、IL-10受容体結合および/またはドメイン間角度にもっとも関与する1つまたは複数の領域を予測して、設計および作製されるであろう。コンピュータに基づくモデリングは、受容体結合ドメインおよび/またはドメイン間角度に対する改変によりもっとも利益が得られるであろう領域を予測する高速かつ効率性の高い手段を提供するのを補助するであろう。
【0084】
別の実施形態では、本出願の分子は、バリアントIL-10分子の誘導体を含む。これらは、バリアント分子のサイズ、半減期、およびバイオアベイラビリティを増加させる実体を含めるためのバリアント分子に対する改変を含み得る。
バリアントIL-10分子:PEG改変
【0085】
一実施形態では、バリアントIL-10分子は、ポリエチレングリコール(PEG)の付加を含み得る。PEG化IL-10バリアントは、少なくとも1つのPEG分子の付加を含み得る。いずれの特定の理論にも束縛されるものではないが、IL-10バリアントへのPEGの付加は、タンパク質分解から保護し、免疫原性を減少させ、骨髄系細胞に対するその抑制作用を維持するために、受容体上でのIL-10バリアントの不安定化を促進し、T細胞の活性化を防止することができる。
【0086】
そのもっとも一般的な形態において、PEGは、ヒドロキシル基が末端にある直鎖状または分岐状ポリエーテルであり、以下の一般構造を有する。
HO-(CH2CH2O)n-CH2CH2-OH
【0087】
PEGを本出願のバリアントIL-10分子に連結させる方法は、当該技術分野においてすでに確立されている技法/プロトコールに従う。例えば、PEGのコンジュゲーションまたは連結は、一方または両方の末端に官能基を有するPEGの誘導体を調製することによって、PEGを活性化することを必要とする。タンパク質のPEGコンジュゲーションのもっとも一般的な経路は、リシンとの反応に好適な官能基およびN末端アミノ酸基でPEGを活性化することである。特に、PEGをポリペプチドに連結させることに関与するもっとも一般的な反応基は、リシンのアルファまたはイプシロンアミノ基である。
【0088】
PEG化リンカーのバリアントIL-10分子との反応は、主として以下の部位へのPEG部分の結合をもたらす:タンパク質のN末端におけるアルファアミノ基、リシン残基の側鎖上のイプシロンアミノ基、およびヒスチジン残基の側鎖上のイミダゾール基。一部の実施形態では、バリアントIL-10分子は、単一のアルファアミノ基ならびにいくつかのイプシロンアミノ基およびイミダゾール基を有する組換えタンパク質であり、リンカーの化学的性質に応じて多数の位置異性体が生成され得る。
【0089】
2つの広く使用されている第1世代の活性化モノメトキシPEG(mPEG)は、スクシンイミジルカーボネートPEG(SC-PEG、例えば、Zalipsky, et al. (1992) Biotechnol. Appl. Biochem 15:100-114およびMiron and Wilcheck (1993) Bioconjug. Chem. 4:568-569を参照されたい)ならびにベンゾトリアゾールカーボネートPEG(BTC-PEG、例えば、Dolenceらの米国特許第5,650,234号を参照されたい)であり、これは、リシン残基と優先的に反応して、カルバメート連結を形成するが、ヒスチジンおよびチロシン残基と反応することも知られている。IFNα上のヒスチジン残基への連結は、加水分解的に不安定なイミダゾールカルバメート連結であることが知られている(例えば、Lee and McNemar、米国特許第5,985,263号を参照されたく、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0090】
第2世代のPEG化技術は、これらの不安定な連結、ならびに残基反応性における選択性の欠如を回避するように設計されている。PEG-アルデヒドリンカーの使用は、還元アミノ化を通じて、ポリペプチドおよび/またはタンパク質サブユニットのN末端上の単一の部位を標的とする。IL-10は、異なる種類のリンカーおよびpHを使用してPEG化して、様々な形態のPEG化分子を得てもよい(例えば、米国特許第5,252,714号、米国特許第5,643,575号、米国特許第5,919,455号、米国特許第5,932,462号、米国特許第5,985,263号、米国特許第7,052,686号を参照されたく、これらはすべて、参照によりその全体が組み込まれる)。
IL-10模倣体分子
【0091】
別の実施形態では、本出願は、IL-10バリアント分子の生物学的機能を反映する模倣体分子を含む。これらの模倣体としては、バリアントIL-10分子により産生されるものと同じかまたは実質的に同じである構造および/または機能を有するペプチド、小分子、改変されたホルモン、および抗体が挙げられるが、これらに限定されない。IL-10バリアント分子を複製または反映するための改変の基礎を形成し得るIL-10模倣体分子としては、米国公開第US20080139478号、同第US20120238505号、および/または同第US20150218222号に記載されているものが挙げられ、これらはすべて、参照によりその全体が組み込まれる。
IL-10ハイブリッド分子およびIL-10融合タンパク質
【0092】
別の実施形態では、本出願は、ヒトIL-10、EBV-IL10、および/またはCMV-IL10から得られた部分から構成されるハイブリッド分子である、IL-10バリアント分子を含む。例えば、ヒトIL-10、EBV-IL10、および/またはCMV-IL10のそれぞれ内の異なるドメインを、一緒に組み合わせて、ハイブリッド分子を作製することができ、その結果、この組合せは、受容体結合ドメインおよび/またはIL-10におけるドメイン間角度に関与するドメインのすべてまたは部分を利用する。
【0093】
1つの他の実施形態では、バリアントIL-10分子は、操作された融合タンパク質の一部である。リンカーまたはスペーサーは、ランダムなアミノ酸配列(例えば、SSGGGGS(配列番号30、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号31)、またはSSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号54))、抗体、scFv、もしくはダイアボディの定常領域であり得る。定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgD、またはIgEに由来し得るが、これらに限定されない。リンカーまたはスペーサーは、好ましくは、重鎖定常(CH)領域1、CH2、またはCH3であり得る。より好ましい実施形態では、スペーサーのリンカーは、配列番号30および/または31のランダムなアミノ酸配列である。別の態様では、リンカーまたはスペーサーは、少なくとも2つの鎖間ジスルフィド結合をさらに含み得る。
【0094】
融合タンパク質はまた、融合タンパク質のN末端、C末端、または両方にコンジュゲートされたIL-10またはIL-10バリアント分子の少なくとも1つの単量体も含み得る。別の実施形態では、IL-10またはIL-10バリアントを含む融合タンパク質はまた、IL-10またはバリアントIL-10とは反対側の末端にコンジュゲートされた少なくとも1つのサイトカインも含み得、これには、IL-2、IL-7、IL-15、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-10、IL-10バリアント分子、IFN-アルファ、TGF-ベータ、塩基性FGF、EGF、PDGF、IL-4、IL-11、もしくはIL-13、またはこれらの任意の組合せが含まれる。一部の好ましい実施形態では、融合タンパク質は、融合タンパク質のN末端にコンジュゲートされたIL-10またはIL-10バリアント分子の2つの単量体形態、および融合タンパク質のC末端にコンジュゲートされた2つのIL-10またはIL-10バリアント分子を含み、融合タンパク質は、融合タンパク質のN末端にコンジュゲートされたIL-10またはIL-10バリアント分子の2つの単量体形態、および融合タンパク質のC末端にコンジュゲートされた少なくとも1つのIL-2分子を含み、融合タンパク質は、融合タンパク質のN末端にコンジュゲートされた2つのIL-10またはIL-10バリアント分子、および融合タンパク質のC末端にコンジュゲートされた少なくとも1つのIL-15分子を含む。別の実施形態では、融合タンパク質のC末端は、IL-2、IL-7、IL-15、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-10、IL-10バリアント分子、IFN-アルファ、TGF-ベータ、塩基性FGF、EGF、PDGF、IL-4、IL-11、またはIL-13から選択される少なくとも2つの異なるサイトカインを有し得る。
【0095】
別の実施形態では、融合タンパク質は、一本鎖可変断片(scFv)、ダイアボディ、Fab、または任意の抗体断片を、IL-10の1つの単量体もしくは2つの単量体、IL-10バリアント分子の1つの単量体もしくは2つの単量体、IL-2、IL-7、IL-15、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IFN-アルファ、TGF-ベータ、塩基性FGF、EGF、PDGF、IL-4、IL-11、もしくはIL-13、またはこれらの組合せがコンジュゲートされる基礎スキャフォールドとして使用して、作製される。
【0096】
1つの特に好ましい実施形態では、融合タンパク質は、IL-10またはIL-10バリアント分子に連結された可変重鎖(VH)および/または可変軽鎖(VL)を有する少なくとも1つの可変領域を含む。この構成において、融合タンパク質は、抗体の少なくとも1つの可変領域に連結されたIL-10単量体またはバリアントIL-10単量体を含む。一態様では、この融合タンパク質は、IL-10単量体またはIL-10単量体バリアント分子がVHに連結され、これがVLに連結され、これがIL-10単量体に連結されたもの含む、直鎖状の連続配列である。抗体の可変領域は、重鎖可変(VH)領域、軽鎖可変(VL)領域、または両方であり得る。第1の融合タンパク質は、IL-10単量体またはバリアントIL-10単量体が、可変領域(VHまたはVLまたは両方)のカルボキシ末端にコンジュゲートされるような、直鎖状の連続的な構成を有するタンパク質配列を含む。第2の融合タンパク質は、IL-10単量体またはバリアントIL-10単量体が、可変領域(VHまたはVLまたは両方)のアミノ末端に連結されるような、直鎖状の連続的な構成を有するタンパク質配列を含み得る。上述の第1の融合タンパク質の代表的な例としては、以下の構成を挙げることができる。
a)NH2(Ab1VL)COOH-(リンカー)-NH2(monoIL10)COOH
【0097】
上述の第2の融合タンパク質の代表的な例としては、以下の構成を挙げることができる。
b)NH2(monoIL10)COOH-(リンカー)-NH2(Ab1VH)COOH
【0098】
合わせると、第1(a)および第2(b)の融合タンパク質は、逆平行様式で機能的なタンパク質複合体を形成し、それによって、末端に連結されるIL-10またはバリアントIL-10の単量体が機能性ホモ二量体を形成し、可変領域は、一緒に、機能的な抗原結合性部位(「ABS」)を形成することができる(例えば、
図9(a)~(f)を参照されたい)。
【0099】
代替的な実施形態では、IL-10単量体またはバリアントIL-10単量体は、同じ抗体または2つの異なる抗体に由来する、少なくとも2つの可変領域にコンジュゲートされ得る。この構成において、少なくとも2つの可変領域は、VHおよびVLである。そのような構成の例としては、第1の抗体のVH領域がそのカルボキシ末端において第2の抗体のVL領域のアミノ末端に連結され、これが、続いて、IL-10の単量体またはIL-10バリアント分子の単量体のアミノ末端に連結されたものから構成される直鎖状の連続的なタンパク質配列を有する第1の融合タンパク質が挙げられるであろう。代替的な構成としては、単量体IL-10またはIL-10バリアント分子の単量体がそのカルボキシ末端において第2の抗体のVH領域のアミノ末端に連結され、これが、続いて、第1の抗体のVL領域のアミノ末端に連結されたものから構成される直鎖状の連続的なタンパク質配列を有する第2の融合タンパク質が挙げられるであろう。上述の第1の融合タンパク質の代表的な例としては、以下の構成を挙げることができる。
a)NH2(Ab1-VH)COOH--(リンカー)-NH2(Ab2VL)COOH-(リンカー)-NH2(monoIL10)COOH
【0100】
上述の第2の融合タンパク質の代表的な例としては、以下の構成を挙げることができる。
b)NH2(monoIL10)COOH-(リンカー)-NH2(Ab2VH)COOH-(リンカー)-NH2(Ab1-VL)COOH
【0101】
合わせると、第1(a)および第2(b)の融合タンパク質は、逆平行様式で機能的なタンパク質複合体を形成し、それによって、末端に連結されるIL-10またはバリアントIL-10の単量体が機能性ホモ二量体を形成し、可変領域は、一緒に、ABSを形成することができる(例えば、
図9(a)~(c)を参照されたい)。
【0102】
なおも別の実施形態では、融合タンパク質は、一緒に融合されたIL-10の2つの単量体またはバリアントIL-10の2つの単量体、ならびに1つまたは複数のVHおよびVL領域を含む。それぞれの単量体は、抗体の1つまたは複数のVH領域および/またはVL領域に個別に連結される。1つを上回るVHおよび/またはVL領域が、この融合タンパク質構成において使用される場合、VHおよびVL領域は、同じ抗体に由来してもよく、または少なくとも2つの異なる抗体に由来してもよい。この融合タンパク質の1つの特定の構成において、VHまたはVL領域は、第1の単量体のアミノ末端に連結され、これが、次いで、そのカルボキシ末端によって、第2の単量体のアミノ末端に連結され、これが、次いで、VLまたはVHのアミノ末端に連結される。必要に応じて、追加のVHまたはVL領域が、アミノ末端またはカルボキシ末端に連結されてもよく、ここで、VHまたはVL領域は、同じ抗体に由来してもよく、または異なる抗体に由来してもよい。上述の融合タンパク質の代表的な例としては、以下の構成を挙げることができる(例えば、
図10(d)~(f)を参照されたい)。
NH2(Ab
1-VH)
COOH--(リンカー)-
NH2(monoIL10)
COOH-(リンカー)-
NH2(monoIL10)
COOH-(リンカー)
-NH2(Ab
1-VL)
COOH
【0103】
上述の融合タンパク質は、IL-10の単量体がホモ二量体を形成し、抗体の可変ドメイン(VHおよびVL)が機能性ABSを形成するのを可能にする様式で、フォールディングすることができるであろう。
【0104】
別の実施形態では、融合タンパク質は、融合タンパク質の反対側の末端に位置するIL-10の2つの単量体またはバリアントIL-10の2つの単量体、ならびに少なくとも1つのVHおよびVL領域を含み、ここで、VH領域およびVL領域は、一緒に連結されている。この構成では、VH領域およびVL領域は、一緒に融合され、それぞれの単量体は、第1の抗体のVL領域またはVH領域のいずれかに個別に連結される。この構成では、IL-10単量体またはバリアントIL-10の単量体は、それぞれ、第1の抗体のVHまたはVLのいずれかに個別に連結される。上述の融合タンパク質の代表的な例としては、以下の構成を挙げることができる(例えば、
図10(a)~(c)を参照されたい)。
a)
NH2(monoIL10)
COOH-(リンカー)
-NH2(Ab
1-VH)
COOH-(リンカー)-
NH2(Ab
1-VL)
COOH-(リンカー)
-NH2(monoIL10)
COOH
b)
NH2(monoIL10)
COOH-(リンカー)
-NH2(Ab
1-VL)
COOH-(リンカー)-
NH2(Ab
1-VH)
COOH-(リンカー)
-NH2(monoIL10)
COOH
【0105】
IL-10の単量体またはバリアントIL-10の単量体は、リンカー配列を通じてVHまたはVL配列に連結され得る。リンカーは、可変鎖領域(VHまたはVL)のカルボキシ末端を、IL-10の単量体または単量体IL-10バリアント分子のアミノ末端に連結させる、カルボキシ末端リンカーであってもよい。あるいは、リンカーは、単量体IL-10または単量体IL-10バリアント分子のカルボキシ末端を、可変鎖領域(VHまたはVL)のアミノ末端に連結させる、アミノ末端リンカーであってもよい。
【0106】
したがって、一形態では、融合タンパク質は、少なくとも2つの異なる抗体に由来する2つの可変領域に連結された単量体IL-10分子またはバリアントIL-10分子を含み、ここで、2つの可変領域は、第1の抗体に由来するVH領域が第2の抗体に由来するVL領域に連結されたもの、または第1の抗体に由来するVLが第2の抗体に由来するVHに連結されたものとして、構成される。この形態による融合タンパク質は、単量体IL-10分子またはIL-10受容体に対する親和性を増加もしくは減少させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含むそのバリアントを含み得る。IL-10受容体結合に影響を及ぼすアミノ酸置換は、ヒト、CMV、またはEBV IL-10において生じ得る。アミノ酸置換は、好ましくは、EBV IL-10におけるものであり得、31位、75位、または両方におけるアミノ酸置換が含まれ得る。アミノ酸置換は、V31LもしくはA75I置換、または両方のうちのいずれか1つまたは複数を含み得る。IL-10受容体親和性に影響を及ぼすアミノ酸置換に加えて、IL-10バリアントは、ドメイン間角度に影響を及ぼす改変も含み得る。別の実施形態では、融合タンパク質は、(a)第1の抗体のVH領域がそのカルボキシ末端において第2の抗体のVL領域のアミノ末端に連結され、続いて、IL-10もしくはそのバリアントの単量体のカルボキシ末端に連結されたもの、または(b)IL-10分子もしくはそのバリアントがそのカルボキシ末端において第2の抗体のVH領域のアミノ末端に連結され、続いて、第1の抗体のVL領域のアミノ末端に連結されたものから選択される構成を含む。これらの融合タンパク質の構成は、1つの好ましい実施形態では、配列番号24~28、29、および33~53の配列を含む。これらの融合タンパク質配列は、複合体を形成することができ、ここで、IL-10の単量体またはバリアントIL-10の単量体は、ホモ二量体を形成することができる。そのような複合体は、ダイアボディ複合体を含み得る、および/またはダイアボディ複合体として構成され得る。
【0107】
別の形態では、融合タンパク質は、第1の融合タンパク質であって、そのアミノ末端に、第1の抗体の重鎖可変領域(VH)が第2の抗体の軽鎖可変領域(VL)に連結され、それがさらにIL-10の単量体に連結されたものを含む、第1の融合タンパク質と、第2の融合タンパク質であって、そのアミノ末端に、IL-10の単量体が第2の抗体のVHに連結され、それがさらに第1の抗体のVLに連結されたものを含む、第2の融合タンパク質とを含む、イムノコンジュゲートとして形成され得、ここで、第1および第2の抗体のVHおよびVLは、会合してダイアボディとなり、IL-10の単量体は、機能性二量体IL-10分子を形成する。別の好ましい実施形態では、イムノコンジュゲート複合体は、第1の融合タンパク質であって、そのアミノ末端に、第1の抗体のVH領域およびそのアミノ末端によって連結された単量体IL-10分子を含む、第1の融合タンパク質と、第2の融合タンパク質であって、そのアミノ末端に、IL-10の単量体が第1の抗体のVLに連結したものを含む、第2の融合タンパク質とを含み、ここで、第1の抗体のVH領域は、第1の抗体のVL領域と会合し、それによって、それぞれのペプチド鎖上の単量体IL-10分子が、機能性IL-10二量体を形成することが可能となっている。IL-10の単量体またはバリアントIL-10の単量体は、上述のように、IL-10受容体結合および/またはドメイン間角度に影響を及ぼすアミノ酸改変を含み得る。別の好ましい実施形態では、イムノコンジュゲート複合体は、第1の融合タンパク質であって、そのアミノ末端に、第1の抗体のVH領域が単量体IL-10分子に連結したものを含む、第1の融合タンパク質と、第2の融合タンパク質であって、そのアミノ末端に、IL-10の単量体が第1の抗体のVLに連結したものを含む、第2の融合タンパク質とを含み、ここで、第1の抗体のVH領域は、第1の抗体のVL領域と会合し、それによって、それぞれのペプチド鎖上の単量体IL-10分子が機能性IL-10二量体を形成することが可能となっている。なおも別の実施形態では、イムノコンジュゲートは、そのアミノ末端に、第1のIL-10(またはIL-10バリアント分子)単量体の単量体が第1の抗体のVH領域に連結され、それが第1の抗体のVL領域に連結され、それが第2のIL-10(またはIL-10バリアント分子)の単量体に連結されたものを含み、ここで、2つのIL-10単量体は、一緒に会合して、IL-10の機能性二量体を形成することができる。記載されるVHおよびVL領域は、抗原(例えば、受容体、タンパク質、核酸など)を特異的に標的とする抗原結合性部位を形成することができる。したがって、一緒になって、機能性IL-10(またはIL-10バリアント分子)ホモ二量体を形成する融合タンパク質複合体となる、鎖1および鎖2の2つの鎖が存在する。代表的な融合タンパク質鎖(すなわち、鎖1および鎖2)としては、以下のものが挙げられる。
【表1】
【0108】
融合タンパク質は、少なくとも1つの抗体に由来するVHおよびVL対を含む。VHおよびVL対は、IL-10またはそのバリアントの単量体が、ホモ二量体化して機能性IL-10分子になることができるように結合し得る、スキャフォールディングとして機能する。したがって、当業者であれば、融合タンパク質において使用されるVHおよびVLのスキャフォールディングが、適切なIL-10またはIL-10バリアントタンパク質の二量体化に必要とされる所望される物理的属性ならびに/またはVHおよびVLの標的化能力の維持の要求に基づいて選択され得ることを理解するであろう。同様に、当業者であれば、VHおよびVL対内のCDR領域もまた、特異的に標的化される融合タンパク質を得るために、他のCDR領域と置換され得ることも理解するであろう。融合タンパク質が、いずれの特定の抗原も標的とするよう意図されない場合、VHおよびVL対は、抗HIVおよび/または抗エボラ抗体に由来するVHおよびVL対など、いずれの特定の抗原も標的としない(またはin vivoにおいて存在度の低い抗原である)スキャフォールディングとして選択することができることも、想定される。融合タンパク質は、1~4個の範囲の可変領域を含み得る。可変領域は、同じ抗体に由来してもよく、または少なくとも2つの異なる抗体に由来してもよい。抗体可変鎖は、複数の抗体(例えば、タンパク質、細胞受容体、および/または腫瘍関連抗原などを標的とするもの)から得ることができるか、またはそれに由来し得る。別の実施形態では、可変領域は、様々な疾患(例えば、がん)と関連する抗原または健常な対象の血清においては典型的に見出されないかもしくは見出されることがまれであるものを標的とする抗体から得られ、例えば、EGFR、PDGFR、VEGFR、Her2Neu、FGFR、GPC3、または他の腫瘍関連抗原、MadCam、ICAM、VCAM、または他の炎症関連細胞表面タンパク質、HIVおよび/またはエボラを対象とする抗体に由来する可変領域である。したがって、一実施形態では、可変領域は、例えば、抗EGFR抗体、抗MadCam抗体、抗HIV抗体(Chan et al, J. Virol, 2018, 92(18):e006411-19)、抗ICAM抗体、抗VCAM抗体、または抗エボラ抗体(米国出願公開第2018/0180614号、参照によりその全体が組み込まれる、特に、表2、3、および4に記載されるmAb)から得られるか、またはそれに由来する。別の実施形態では、可変領域は、IL-10がその生物学的作用を誘起することを可能にすることができるように、特定の標的領域に対して、サイトカイン、例えば、IL-10の濃度を濃縮することができる抗体から得られるか、またはそれに由来する。そのような抗体としては、ある特定の罹患領域において過剰発現されるかもしくは上方制御されている受容体または抗原を標的とするもの、またはある特定の影響を受ける領域において特異的に発現されるものを挙げることができる。例えば、可変領域は、いくつか列挙すると、上皮成長因子受容体(EGFR)、CD52、PD-L1、PD-1、TIM3、BTLA、LAG3、もしくはCTLA4などであるがこれらに限定されない様々な免疫チェックポイント標的、CD20、CD47、GD-2、HER2、EpCAM、ICAM(ICAM-1、-2、-3、-4、-5)、VCAM、FAPα、5T4、Trop2、EDB-FN、TGFβ Trap、MadCam、β7インテグリンサブユニット、α4β7インテグリン、α4インテグリン、SR-A1、SR-A3、SR-A4、SR-A5、SR-A6、SR-B、dSR-C1、SR-D1、SR-E1、SR-F1、SR-F2、SR-G、SR-H1、SR-H2、SR-I1、およびSR-J1に特異的な抗体から得ることができる。IL-10(例えば、ヒト、CMV、もしくはEBV)またはバリアントIL-10分子(本明細書に記載される)の単量体は、IL-10またはバリアントIL-10分子が、互いに二量体化することができるように、可変領域(VHまたはVL)のアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかにコンジュゲートされる。
【0109】
融合タンパク質または融合タンパク質複合体はまた、抗原標的化機能も有し得る。融合タンパク質または融合タンパク質複合体は、一緒に会合して抗原結合性部位またはABSを形成することができる、VHおよびVL領域を含むであろう。一部の構成において、IL-10またはIL-10バリアント分子またはその単量体は、抗原結合性部位を含む末端に共有結合的に連結されるであろう。これらの標的化融合タンパク質は、融合タンパク質が、抗原を標的とする能力を保持する、ならびにIL-10またはIL-10バリアント分子の機能性ホモ二量体を有するように、少なくとも1つの機能性可変領域または対合したVHおよびVLを、融合タンパク質の一方の末端に含み得る(
図9(a)~(f)および10(a)~(f)を参照されたい)。可変領域は、対象における抗原性を低減する1つまたは複数のアミノ酸を変更することによって(例えば、付加、欠失(subtraction)、または置換によって)さらに改変され得る。VHおよびVL対は、複数の抗体について得られたCDR領域をグラフトすることができるスキャフォールディングを形成する。そのような抗体CDR領域としては、公知および上述の抗体が挙げられる。例えば、任意の抗体に由来するCDR領域は、配列番号37、44、もしくは45に記載されるものなどのVHおよびVL対、または配列番号46および47、48および49、もしくは50および51に記載されるものなどの融合タンパク質複合体を形成することができる融合タンパク質に、グラフトされ得る。上述のVHおよびVLスキャフォールディングにおけるCDR領域としては、CDRグラフト/挿入に利用可能な以下のアミノ酸位置番号が挙げられる。
【表2】
【0110】
別の態様では、上述の融合タンパク質は、以下の一般式のうちの1つによって表すことができ、
1)IL10-L1-X1-L1-X2-L1-IL10(式I)、
2)(Z)n-X1-L2-Y2-L1-IL10(式II)、
3)IL10-L1-Y1-L2-X2-(Z)n(式III)、
4)X1-L2-X2-L1-IL10(式IV)、
5)IL10-L1-X1-L2-X2(式V)、
6)X1-L1-IL10(式VI)、および
7)IL10-L1-X2(式VII)
式中、
「IL-10」は、ヒトIl-10(配列番号1)、EBV IL-10(配列番号3)、DV05(配列番号14、18、もしくは55)、DV06(配列番号15、19、もしくは57)、またはDV07(配列番号16、20、もしくは59)であり、好ましい実施形態では、「IL-10」は、DV05、DV06、またはDV07からなり、より好ましくは、「IL-10」は、配列番号55、57、または59からなり、
「L1」は、配列番号31または54のリンカーであり、
「L2」は、配列番号30のリンカーであり、
「X1」は、上皮成長因子受容体(EGFR);CD52;PD-L1、PD-1、TIM3、BTLA、LAG3、もしくはCTLA4などであるがこれらに限定されない様々な免疫チェックポイント標的;CD20;CD47;GD-2;HER2;EpCAM;ICAM(ICAM-1、-2、-3、-4、-5)、VCAM、FAPα;5T4;Trop2;EDB-FN;TGFβ Trap;MadCam、β7インテグリンサブユニット;α4β7インテグリン;α4インテグリンSR-A1;SR-A3;SR-A4;SR-A5;SR-A6;SR-B;dSR-C1;SR-D1;SR-E1;SR-F1;SR-F2;SR-G;SR-H1;SR-H2;SR-I1;SR-J1;HIV、またはエボラに特異的な第1の抗体から得られたVH領域であり、
「X2」は、X1と同じ抗体から得られたVL領域であり、
「Y1」は、上皮成長因子受容体(EGFR);CD52;PD-L1、PD-1、TIM3、BTLA、LAG3、もしくはCTLA4などであるがこれらに限定されない様々な免疫チェックポイント標的;CD20;CD47;GD-2;HER2;EpCAM;ICAM(ICAM-1、-2、-3、-4、-5)、VCAM、FAPα;5T4;Trop2;EDB-FN;TGFβ Trap;MadCam、β7インテグリンサブユニット;α4β7インテグリン;α4インテグリンSR-A1;SR-A3;SR-A4;SR-A5;SR-A6;SR-B;dSR-C1;SR-D1;SR-E1;SR-F1;SR-F2;SR-G;SR-H1;SR-H2;SR-I1;SR-J1;HIV、またはエボラに特異的な第2の抗体から得られたVH領域であり、
「Y2」は、Y1と同じ抗体から得られたVL領域であり、
XおよびYは、同じかまたは異なる抗体から得られ、
「Z」は、IL-6、IL-4、IL-1、IL-2、IL-3、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL_15、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、GM-CSF、G-CSF、インターフェロン-α、-β、-γ、TGF-β、または腫瘍壊死因子-α、-β、塩基性FGF、EGF、PDGF、IL-4、IL-11、またはIL-13から選択されるサイトカインであり、
「n」は、0~2から選択される整数である。
【0111】
ある実施形態では、上記の式I~VIIの置換基は、好ましくは、以下から選択される:IL-10は、好ましくは、DV05、DV06、もしくはDV07からなるか、より好ましくは、IL-10は、DV05、DV06、もしくはDV07からなるか、またはもっとも好ましくは、IL-10は、配列番号55、57、もしくは59からなり、X1およびX2は、好ましくは、抗EGFR、抗PDGFR、抗FGFR、抗VEGF、抗Her2Neu、抗GPC3、抗MAdCAM、抗ICAM-1、-2、-3、-4、抗VCAM、抗HIV、または抗エボラであり、Y1およびY2は、好ましくは、抗EGFR、抗MAdCAM、抗ICAM-1、-2、-3、-4、抗VCAM、抗HIV、または抗エボラであり、Zは、IL-2、IL-7、またはIL-15から選択され、nは、1である。もっとも好ましい実施形態では、融合タンパク質は、配列番号33~53、61、63、65、または67のうちのいずれかである。当業者であれば、ヒスチジンタグの存在が、融合タンパク質の精製プロセスにおいて使用され、インタクトなまま残され得るかまたは最終産物から除去され得ることを理解するであろう。当業者であれば、上述の抗体のうちのいずれかのVHおよびVLフレームワーク領域が、他の相補性決定領域(CDR)領域と置換され得ることも理解するであろう。例えば、VHおよびVL領域が、抗エボラ抗体に由来する場合、6つのCDR領域(すなわち、VHおよびVLの両方のCDR1~3)は、抗EGFR抗体(例えば、セツキシマブ)の6つのCDR領域で置換されてもよい。したがって、1つの好ましい実施形態では、融合タンパク質は、配列番号33~34、52、または53である。別の好ましい実施形態では、融合タンパク質は、配列番号37、44、45、46~47、48~49、または50~51によって表されるスキャフォールディングを有するものであり、そこに、任意の抗体に由来する任意の6つのCDR領域が、グラフトされ得る。他の好ましい実施形態では、抗エボラ抗体のVHおよびVL領域に由来するCDR領域は、抗MAdCAM、抗VCAM、または抗ICAM-1、-2、-3、-4抗体に由来するCDR領域とともにグラフトされ得、ここで、好ましい実施形態では、CDR領域は、配列番号37の融合タンパク質にグラフトされ得る。上述の式IIおよびIII、式IVおよびV、ならびに式VIおよびVIIに記載される融合タンパク質は、一緒に会合してIL-10(またはそのバリアント)の生物学的に活性なホモ二量体を形成するように設計される。上述の融合タンパク質は、選択されるVHおよびVL領域の対、ならびに/またはVHおよびVLにグラフトされるCDR領域に応じて、非標的化または標的化のいずれかとなるように設計される。「非標的化」という用語は、抗原が存在しないか、または抗原結合性部位(ABS)が無効もしくは改変されてABS機能性が排除されているため、in vivoに位置する特定の抗原を標的とすることができないVHおよびVL領域を説明することを意味する。
【0112】
上述の融合タンパク質は、さらに、補助タンパク質/分子にコンジュゲートされていてもよい。本明細書で使用される補助タンパク質は、IL-10単量体またはバリアントIL-10単量体分子のものとは反対側に連結されるように、融合タンパク質または融合タンパク質複合体にコンジュゲートされる、タンパク質を指す。補助タンパク質の付加により、IL-10またはIL-10バリアント分子の機能性および補助タンパク質の機能性の両方を組み込む多機能性分子が効果的に作製される。補助タンパク質(例えば、サイトカインIL-2、IL-7、IL-12、IL-15など)の結合は、例えば、VH領域のN末端において、VHおよびVLスキャフォールディングを含む融合タンパク質に結合され得る。例えば、腫瘍を処置するための融合タンパク質または融合タンパク質複合体に適用される場合、補助タンパク質としては、IL-10、IL-10バリアント分子、IL-6、IL-4、IL-1、IL-2、IL-3、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-15、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、GM-CSF、G-CSF、インターフェロン-α、-β、-γ、TGF-β、もしくは腫瘍壊死因子-α、-β、塩基性FGF、EGF、PDGF、IL-4、IL-11、もしくはIL-13、またはこれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。炎症性疾患を処置するための融合タンパク質または融合タンパク質複合体に適用される場合、補助タンパク質としては、TGFβが挙げられるが、これに限定されない。自己免疫疾患(脂肪性肝臓疾患などであるがこれに限定されない)を処置するための融合タンパク質または融合タンパク質複合体に適用される場合、補助分子としては、オベチコール酸(obticholic acid)、アラムコール、エラフィブラノール、リラグルチド、セロンセルチブ、またはシムツズマブ(simtuzumab)が挙げられるが、これらに限定されない。上記に定義される補助タンパク質は、上述の式I~Vを使用して記述される場合、スキャフォールディングのVH部分のN末端側において、置換基X1またはY1に結合され得る。
【0113】
上述の融合タンパク質はまた、製造プロセス中の融合タンパク質の回収または精製を補助する追加のアミノ酸配列も含み得る。これらには、プロテインA、アルブミン結合性タンパク質、アルカリホスファターゼ、FLAGエピトープ、ガラクトース結合性タンパク質、ヒスチジンタグ、および当該技術分野において周知である任意の他のタグなどであるがこれらに限定されない、様々な配列改変または親和性タグが含まれてもよい。例えば、Kimple et al (Curr. Protoc. Protein Sci., 2013, 73:Unit 9.9, Table 9.91、参照によりその全体が組み込まれる)を参照されたい。一態様では、親和性タグは、HHHHHH(配列番号32)のアミノ酸配列を有するヒスチジンタグである。ヒスチジンタグは、最終産物から除去されてもよく、またはインタクトなまま残されてもよい。別の実施形態では、親和性タグは、配列番号34または44~53に記載されるものなど、融合タンパク質(例えば、本明細書に記載される融合タンパク質のVH領域)に組み込まれるプロテインA改変である。当業者であれば、本明細書に記載される任意の融合タンパク質配列が、当該技術分野において説明されている抗体フレームワーク領域内にアミノ酸点置換を挿入することによって、プロテインA改変を組み込むように改変することができることを理解するであろう。
【0114】
なおも別の実施形態では、上述の様々な融合タンパク質は、がんを処置する方法、IBDまたはクローン病、自己免疫疾患、NAFLD、またはNASHを処置または予防する方法において、使用することができる。
IL-10バリアントポリヌクレオチド
【0115】
上述のバリアントIL-10分子ならびに様々な融合タンパク質および/または免疫サイトカインをコードするポリヌクレオチド配列もまた、本出願の範囲内に含まれる。本出願のバリアントIL-10分子における鍵となるIL-10受容体結合領域および/またはドメイン間角度のための領域の局在化の際、アミノ酸配列への所望される改変を実行するために必要なDNA改変は、当業者の技能の範囲内である。そのような改変は、従来的な組換えDNA技法および方法を用いるであろう。例えば、特定のアミノ酸配列の付加または置換を、合成オリゴヌクレオチドを用いる部位指向性突然変異生成方法を使用して、核酸(DNA)レベルで、IL-10配列に導入することができ、その方法もまた、当該技術分野において周知である。
【0116】
別の実施形態では、バリアントIL-10配列をコードするポリヌクレオチドは、分子生物学の標準的な技法を使用して作製することができる。例えば、上述のバリアント分子をコードするポリヌクレオチド配列は、組換え方法を使用して、例えば、その遺伝子を発現する細胞から得られたcDNAおよびゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって、またはその遺伝子を、それを含むことが判明しているベクターから誘導することによって、得ることができる。目的の遺伝子はまた、公知の配列に基づいて、クローニングではなく合成により産生させることもできる。分子は、特定の配列に適したコドンを用いて設計され得る。次いで、完全な配列は、標準的な方法によって調製されるオーバーラップするオリゴヌクレオチドからアセンブルされ、完全なコーディング配列にアセンブルされる。例えば、Edge, Nature (1981) 292:756、Nambair et al., Science (1984) 223:1299、およびJay et al., J. Biol. Chem. (1984) 259:6311を参照されたい。
【0117】
一実施形態では、IL-10バリアント分子またはその融合タンパク質は、配列番号9~29、33~53、55、57、または59のうちのいずれかをコードする核酸分子である。別の実施形態では、IL-10バリアント分子は、それぞれ、配列番号56、58、または60のDV05、DV06、またはDV07である。DV05、DV06、またはDV07をコードする核酸分子は、IL-10バリアント分子の機能性を変化させない挿入、欠失、または置換(例えば、縮重コドン)を含み得る。本明細書に記載されるIL-10バリアントおよび融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、遺伝子コードの縮重に起因して、配列番号1、3、5、7、9~29、33~53、55、57、59、61、63、65、または67の配列とは異なり得、前述の配列に対して70~99%、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同であり得る。配列番号1、3、5、7、9~29、33~53、55、57、59、61、63、65、または67のIL-10バリアントおよび融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列はまた、少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、欠失、または置換に起因して、70%~99%、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同であり得る。少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、付加、欠失、または置換に起因して、配列番号2、4、6、8、56、58、60、62、64、66、および68に対して70~99%、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列相同性を有するヌクレオチド配列もまた、本出願において想定される。さらに、本明細書に記載されるIL-10バリアントおよび融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、例えば、タンパク質の発現、産生、または分泌を補助する周知の配列をさらに含み得る。そのような配列としては、例えば、リーダー配列、シグナルペプチド、および/または翻訳開始部位/配列(例えば、コザックコンセンサス配列)を挙げることができる。本明細書に記載されるヌクレオチド配列はまた、様々な発現系/ベクターへの挿入を可能にする多くの制限酵素部位のうちの1つも含み得る。
【0118】
別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、所望されるIL-10配列を含むベクターに保持されるか、または当該技術分野において公知のオリゴヌクレオチド合成技法、例えば、部位指向性突然変異生成およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法を使用して、人工的に合成される。例えば、Sambrook(上記)を参照されたい。別の実施形態では、バリアントIL-10分子をコードするヌクレオチド配列は、自動化されたポリヌクレオチド合成装置において産生される相補的なオーバーラップする合成オリゴヌクレオチドをアニーリングし、続いてPCRによりライゲーションおよびライゲーションされたヌクレオチド配列の増幅を行うプロセスを通じて、得られる。例えば、Jayaraman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1991) 88:4084-4088を参照されたい。加えて、オリゴヌクレオチド指向性合成(Jones et al., Nature (1986) 54:75-82)、既存のヌクレオチド領域のオリゴヌクレオチド指向性突然変異生成(Riechmann et al., Nature (1988) 332:323-327およびVerhoeyen et al., Science (1988) 239:1534-1536)、ならびにT4 DNAポリメラーゼを使用したギャップ付きオリゴヌクレオチドの酵素的充填(Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1989) 86:10029-10033)を使用して、主題の方法において使用するための分子を得ることができる。
【0119】
様々な好適な発現ベクターを使用することができ、これらは、当業者に周知であり、バリアントIL-10分子および融合タンパク質の発現および導入に使用することができる。これらのベクターとしては、例えば、pUC型ベクター、pBR型ベクター、pBI型ベクター、pGA型、pBinl9、pBI121、pGreenシリーズ、pCAMBRIAシリーズ、pPZPシリーズ、pPCV001、pGA482、pCLD04541、pBIBACシリーズ、pYLTACシリーズ、pSB11、pSB1、pGPTVシリーズ、およびウイルスベクターなどが挙げられこれらを使用することができる。
【0120】
IL-10バリアント分子を保持するベクターはまた、ベクター機能性に必要とされる他のベクター構成要素も含み得る。例えば、ベクターは、シグナル配列、タグ配列、プロテアーゼ特定配列、選択マーカー、ならびにバリアントIL-10分子の適正な複製および発現に必要とされる他の配列制御配列、例えば、プロモーターを含み得る。ベクターにおいて用いられる特定のプロモーターは、それらが、様々な宿主細胞型においてバリアントIL-10分子の発現を誘導することができる限り、特に制限されない。同様に、タグプロモーターの種類は、タグ配列が、発現されるバリアントIL-10分子のより単純または容易な精製を容易にするのに役立つ限り、制限されない。これらとしては、例えば、6-ヒスチジン、GST、MBP、HAT、HN、S、TF、Trx、Nus、ビオチン、FLAG、myc、RCFP、GFPなどを挙げることができ、これらを使用することができる。プロテアーゼ認識配列は、特に制限されず、例えば、第Xa因子、トロンビン、HRV、3Cプロテアーゼなどの認識配列を使用することができる。選択されるマーカーは、これらが、形質転換されたイネ細胞を検出することができる限り、特に制限されず、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子などを使用することができる。
【0121】
結果として得られる所望されるIL-10バリアントまたは融合タンパク質を有するDNA構築物は、次いで、遺伝子療法において直接的に使用することができるか、または組換えIL-10バリアントもしくは融合タンパク質を産生させるために使用することができる。一実施形態では、本出願のバリアントIL-10分子または融合タンパク質は、突然変異体IL-10タンパク質の直接的な投与、および突然変異体IL-10タンパク質をコードするベクターを用いた遺伝子療法を含む、当該技術分野において公知の任意の方法によって送達することができる。遺伝子療法は、プラスミドDNAまたはウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどを使用して達成することができる。一部の実施形態では、本出願のウイルスベクターは、ウイルス粒子として投与され、他の実施形態では、それらは、プラスミドとして(例えば、「ネイキッド」DNAとして)投与される。
【0122】
ヌクレオチド配列の送達のための他の方法としては、当該技術分野において既知であるものが挙げられる。これらは、細胞透過性ペプチド、疎水性部分、静電複合体、リポソーム、リガンド、リポソームナノ粒子、リポタンパク質(好ましくは、HDLもしくはLDL)、葉酸標的化リポソーム、抗体(例えば、葉酸受容体、トランスフェリン受容体)、標的化ペプチドによる、またはアプタマーによる、IL-10またはIL-10バリアント分子をコードする、DNA、RNA、siRNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、またはそれらのバリアントなどであるがこれらに限定されないヌクレオチド配列の送達を含むであろう。IL-10バリアント分子をコードするヌクレオチド配列は、直接的な注射、注入、パッチ、包帯、ミストもしくはエアロゾルによって、または薄膜送達によって、対象に送達され得る。ヌクレオチド(またはタンパク質)は、サイトカイン刺激の標的化送達に所望される任意の領域に指向され得る。これらとしては、例えば、肺、消化管、皮膚、肝臓、頭蓋内注射を介した脳、超音波よりガイドされる注射を介した深層に位置する転移腫瘍部位が挙げられるであろう。
IL-10バリアントの試験
【0123】
一実施形態では、バリアントIL-10分子またはその融合タンパク質は、マクロファージによる炎症性サイトカインの分泌を抑制するが、T細胞を活性化しない、IL-10ホモ二量体配列を使用してこれまでに生成されていなかった新規な機能に関して、スクリーニングされるであろう。好ましい実施形態のうちの1つにおいて、バリアントIL-10分子またはその融合タンパク質は、抗炎症応答を有するが、T細胞を刺激する能力が欠如した、EBV-IL10骨格に基づくであろう。これらのバリアントEBV-IL10分子またはその融合タンパク質は、受容体結合ドメイン、ならびにこれまでに探究されていなかった、IL-10ホモ二量体間の角度を制限するかまたは拡げる一次、二次、および三次構造を変更する連結領域に対する改変を含むであろう。別の実施形態では、連結領域またはドメイン間角度の形成に関与する領域に対する改変を含むIL-10バリアント分子は、増強されたCD8+ T細胞機能を有するであろう。別の実施形態では、連結領域またはドメイン間角度の形成に関与する領域に対する改変を含むIL-10バリアント分子またはその融合タンパク質は、抑制された骨髄系機能を有するが、増強されたクッパー細胞機能を有するであろう。
【0124】
バリアントIL-10分子またはその融合タンパク質が構築され発現された後、当業者であれば、IL-10バリアント分子またはその融合タンパク質に対してスクリーニングアッセイを行って、分子が、IL-10受容体結合領域および/またはドメイン間角度に対する改変によって付与される所望される生物学的機能を有するかどうかを判定することができるであろう。所望される生物学的機能に関して試験するための複数のスクリーニングアッセイが、当業者に公知であり、入手可能である。一実施形態では、所望される生物学的機能としては、抗炎症性応答の低減、T細胞刺激の低減、T細胞機能の増強、クッパー細胞機能性の増強、およびマスト細胞脱顆粒化の低減が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
例えば、IL-10への曝露は、T細胞受容体刺激の際により多くのIFNγを生成し分泌するように、T細胞を刺激することが知られている。同時に、IL-10曝露は、LPSに応答して単球/マクロファージから分泌されるTNFα、IL-6、および他の炎症促進性サイトカインの分泌を予防する。IL-10はまた、FoxP3+CD4+ Tregの増殖を抑制する。一実施形態では、単球/マクロファージの抑制を最大化するが、刺激性および抑制性の両方の応答を含むT細胞作用が欠如しているIL-10バリアント分子またはその融合タンパク質が、陽性選択されるであろう。一実施形態では、増加した抗炎症性作用を有するIL-10バリアント分子またはその融合タンパク質に関するスクリーニングは、自己免疫疾患、抗炎症性疾患、または両方の処置のために陽性選択されるであろう。別の実施形態では、クッパー細胞の排除を増強し、Treg抑制が欠如した、IL-10バリアント分子またはその融合タンパク質もまた、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)および/または非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)の処置のための開発に選択されるであろう。なおも別の実施形態では、刺激性および抑制性の両方の応答を含む、T細胞生物学を最大化させ、増強されたクッパー細胞排除も有する、IL-10バリアントが、がんの処置のための開発に選択されるであろう。
【0126】
文献は、免疫系の細胞、例えば、T細胞、単球/マクロファージ、クッパー細胞、Treg細胞、およびマスト細胞などに対するサイトカインの作用をアッセイすることに関する記述で溢れている。本出願は、これらのアッセイ系を、本出願のバリアントIL-10分子またはその融合タンパク質を接触させることにより類似のアッセイを用いて生物学的応答を試験するために適用する。
【0127】
T細胞応答を誘起することの有効性をアッセイするための様々な方法が、先行技術分野において説明されている。これらの方法のうちのいずれか1つを、本明細書に記載されるバリアントIL-10分子を試験するのに適用することができる。例えば、Chan et al. (2015)は、バリアントIL-10分子に適用することができる1つのそのような方法について記載している。CD8+ T細胞を、抗CD8マイクロビーズを使用して末梢血単核細胞(PBMC)から単離する。単離されたCD8+ T細胞を、抗CD3および抗CD28抗体を使用して活性化する。例えば、活性化は、約3日間の期間にわたって、少なくとも約5~20マイクログラム/mLの抗CD3抗体および少なくとも約1~5マイクログラム/mLの抗CD28抗体でコーティングしたプレートを使用して生じ得る。活性化の後に、T細胞を回収し、播種し、約3~5日間の期間、EBV-IL10バリアントまたはその融合タンパク質で処置する。市販入手可能なPEG化組換えヒトIL-10またはEBV-IL10を、対照として使用することができる。EBV-IL10バリアントでの処置の後に、T細胞を、可溶性抗CD3で処置した。抗CD3での処置の後に、細胞培養培地を回収し、ELISAによって、インターフェロンガンマ(IFNγ)の分泌に関してアッセイする。
【0128】
サイトカインによる単球/マクロファージ刺激をアッセイするための様々な方法が、先行技術分野において説明されている。これらの方法のうちのいずれか1つを、本明細書に記載されるバリアントIL-10分子を試験するのに適用することができる。例えば、Conway et al. (2017)は、バリアントIL-10分子に適用することができる1つのそのような方法について記載している。ヒト単球を、Ficoll勾配を使用して、新しいドナーの血液のバフィーコートから単離した後、Percollにおける高浸透圧密度遠心分離を行う。5%ヒト血清および1% L-グルタミンを補充したRPMIにおける30分間の培養の後、単球は、接着性となり、これをSMEM Spinner培地で洗浄して、混入しているリンパ球を除去する。溶液および材料を試験して、LPSの不在を確認した。4日間の培養の後、単球/マクロファージを、10ng/ml LPSおよび異なる濃度のバリアントIL-10分子と接触させ、それとともに少なくとも24時間インキュベートする。培養上清を採取し、TNF-αおよびIL-1β濃度を、ELISAによって判定する。
【0129】
サイトカインに対するクッパー細胞応答をアッセイするための様々な方法が、先行技術分野において説明されている。これらの方法のうちのいずれか1つを、本明細書に記載されるバリアントIL-10分子を試験するのに適用することができる。例えば、Chan et al (2016)は、バリアントIL-10分子に適用することができる1つのそのような方法について記載している。クッパー細胞を、24ウェルまたは96ウェルのプレートに播種し、肝細胞インキュベーション培地(フェノールレッド不含RPMI、pen/strep、Cell Maintenance Supplement B(Invitrogen))において一晩インキュベートする。細胞を洗浄し、バリアントIL-10分子に24時間曝露した。細胞を1回洗浄し、15~20μlのDiI-LDL、DiI-VLDL、DiI-OxLDL、またはDiI-AcLDL、2μl DMSO、15μlサイトカラシンDに曝露し、取り込みを4時間後に測定する。すべての細胞を、1倍PBSで1回洗浄し、110μlの細胞溶解緩衝液で溶解させる。45μlの細胞ライセートを、透明底で黒色壁のプレートに移し、蛍光を575nmで読み取る。
【0130】
サイトカインを使用して制御性T細胞応答を刺激することの有効性をアッセイするための様々な方法が、先行技術分野において説明されている。これらの方法のうちのいずれか1つを、本明細書に記載されるバリアントIL-10分子を試験するのに適用することができる。例えば、Chan et al (2016)は、バリアントIL-10分子に適用することができる1つのそのような方法について記載している。CD4+ T細胞を、CD4+マイクロビーズで単離し、様々な濃度のバリアントIL-10分子、ならびに2マイクログラム/mLの固定化抗CD3および1mg/mLの抗CD28を含有するAIMV培地において、5~6日間培養する。細胞を、フローサイトメトリー分析によってFoxP3発現に関して分析して、TGF-βまたはIL-2が、FOX P3+ CD4+制御性T細胞において誘導されるかどうかを判定する。
【0131】
サイトカイン刺激に応答してマスト細胞を増殖させることの有効性をアッセイするための様々な方法が、先行技術分野において説明されている。マウスマスト細胞系MC/9は、IL-10分子の放出試験を作製するために使用される一般的な細胞系である。具体的には、IL-10およびIL-10バリアント分子は、マスト細胞の用量滴定可能な増殖を誘導する。対照的に、IL-10は、マスト細胞によるFc発現を阻害し、IL-10が、これらの細胞に対して刺激性および抑制性の両方の作用を発揮することを示唆する。これらの方法のうちのいずれか1つを、本明細書に記載されるバリアントIL-10分子を試験するのに適用することができる。例えば、Thompson-Snipes et al (1991)は、バリアントIL-10分子に適用することができる1つのそのような方法について記載している。MC/9マスト細胞を、1mlのRPMI 1640、10% FCS、50mM 2-ME、および様々な濃度のバリアントサイトカインを含有する平底24ウェルプレートに播種する。3日間培養した後、細胞計数器を使用して細胞を計数して、マスト細胞増殖に対するバリアントIL-10分子の影響を判定する。
【0132】
IL-10は、マスト細胞によるIgE受容体、FcεRIの発現、およびIgEに媒介されるサイトカイン産生の阻害において役割を果たすことが知られている。したがって、マスト細胞に対するIL-10の影響を試験するための方法は、先行技術分野において説明されている。これらの方法は、本明細書に記載されるIL-10バリアント分子を試験するのに適用することができる。例えば、Kennedy Norton et al (2008)は、1つのそのような方法について記載している。ヒトマスト細胞を、ドナーの皮膚試料から単離し、IL-10の存在下または不在下において、幹細胞因子(SCF)を含有する培地において培養した。FcεRI発現は、抗FcεRI特異的抗体、続いてFITC標識した抗マウスF(ab’)2を使用して、フローサイトメトリーによって判定した。
IL-10バリアント分子を含む組成物および製剤
【0133】
本出願のIL-10バリアント分子または融合タンパク質はまた、治療有効量のバリアントIL-10分子と、薬学的担体および/または薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物において製剤化することができる。医薬組成物は、広く使用されている緩衝剤、賦形剤、保存剤、安定化剤を用いて製剤化することができる。医薬組成物は、所望される治療結果を提供するのに十分な治療有効量で、患者に投与するために製剤化される。好ましくは、そのような量は、最小限の負の副作用を有する。一実施形態では、投与されるバリアントIL-10分子またはその融合タンパク質の量は、炎症性疾患または状態を処置するのに十分である。別の実施形態では、投与されるバリアントIL-10分子またはその融合タンパク質の量は、がんを処置するのに十分である。投与される量は、患者ごとに変動し得、対象または患者の疾患または状態、患者の全般的な健康状態、投与の方法、副作用の重症度などを考慮することによって判定することが必要であろう。好ましい実施形態では、医薬組成物は、受容体結合ドメインおよび/またはIL-10のドメイン間角度に対する一方または両方の改変を含む、バリアントIL-10分子またはその融合タンパク質を含むであろう。別の実施形態では、バリアントIL-10分子は、バリアントIL-10分子のPEG化形態である。なおもさらに好ましい実施形態では、医薬組成物は、融合タンパク質または免疫サイトカインとして組み込まれるバリアントIL-10分子と、薬学的賦形剤とを含む。
【0134】
特定の患者に対する有効量は、処置されている状態、患者の全般的な健康状態、投与の方法経路および用量、ならびに副作用の重症度などの因子に応じて変動し得る。患者に投与される適切な用量は、典型的には、処置に影響を及ぼすことが当該技術分野において公知であるかもしくは疑われるか、または処置に影響を及ぼすと予測される、パラメーターまたは因子を使用して、臨床医によって判定される。一般的に、用量は、最適な用量をいくらか下回る量で開始され、その後に、これを、任意の負の副作用に対して所望されるかまたは最適な作用が達成されるまで、少しの増分ずつ増加させる。重要な診断の尺度としては、例えば、炎症の症状、または産生される炎症性サイトカインのレベルが挙げられる。
【0135】
患者に投与される用量はまた、IL-10またはバリアントIL-10分子に対するある特定の血清半減期延長改変の付加に基づいて最適化することができる(以下を参照:例えば、米国特許第9,943,568号、同第10,010,588号、および同第10,143,726号に詳細に考察されているpeg化IL-10は、IL-10の循環半減期を改善することが知られている)。本明細書に開示されるIL-10またはバリアントIL-10を含む融合タンパク質、イムノコンジュゲート、融合タンパク質、ミニボディ、およびダイアボディもまた循環半減期を延長することができ、同時に、IL-10受容体への高い親和性の結合を保持する。したがって、一実施形態では、IL-10と関連する様々な疾患、障害、もしくは状態、またはIL-10もしくはバリアントIL-10を含む融合タンパク質、融合タンパク質の複合体、イムノコンジュゲート、もしくはダイアボディを投与することによって改善することができるものを、それを必要とする患者に投与することができる。1つの好ましい実施形態では、IL-10と関連する疾患、障害、または状態は、それを必要とする患者に、EBV IL-10またはそのバリアント(IL-10受容体結合親和性に影響を及ぼすバリアントを含む)を有する治療有効量のイムノコンジュゲート複合体、融合タンパク質、またはダイアボディを投与することによって、処置または予防することができ、ここで、イムノコンジュゲート複合体、融合タンパク質、またはダイアボディは、約60~155kDaの分子量を有し、治療有効量は、約0.5マイクログラム/キログラム~100マイクログラム/キログラムの範囲内である。本明細書に記載されるイムノコンジュゲート、融合タンパク質、またはダイアボディは、1日ごと、1週間に3回、1週間に2回、1週間ごと、1ヶ月に2回、または1ヶ月ごとに投与され得る。イムノコンジュゲート、融合タンパク質、またはダイアボディのEBV IL-10部分および可変領域は、本明細書に考察される構造の任意の構成または組合せであり得る。本明細書に記載される半減期が延長された分子は、がん、炎症性疾患、自己免疫疾患(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)または非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD))、およびコレステロール上昇を含むがこれらに限定されない、様々な疾患を処置するのに有効であろう。
【0136】
第2の治療剤、例えば、サイトカイン、ステロイド、化学療法剤、抗生物質、抗炎症剤、または放射線照射を用いた共投与または処置のための方法は、当該技術分野において周知である。これらは、1つまたは複数の以下の:インターフェロン-β、例えば、IFNβ-1αおよびIFN-β-1 β、ミエリン塩基性タンパク質を刺激するタンパク質、コルチコステロイド、IL-1阻害剤、TNF阻害剤、抗TNFα抗体、抗IL-6抗体、IL-1br-Ig融合体、抗IL-23抗体、CD40リガンドおよびCD80に対する抗体、IL-12およびIL-23のアンタゴニスト、例えば、IL-12およびIL-23のp40サブユニットのアンタゴニスト(例えば、p40サブユニットに対する阻害性抗体)、IL-22アンタゴニスト、小分子阻害剤、例えば、メトトレキセート、レフルノミド、シロリムス(ラパマイシン)およびそのアナログ、例えば、CCI-779、Cox-2およびcPLA2阻害剤、NSAID、p38阻害剤、TPL-2、Mk-2、NFkβ阻害剤、RAGEもしくは可溶性RAGE、P-セレクチンもしくはPSGL-1阻害剤(例えば、小分子阻害剤、それに対する抗体、例えば、P-セレクチンに対する抗体)、エストロゲン受容体ベータ(ERB)アゴニスト、またはERB-NFkβアンタゴニストなどであるがこれらに限定されない、他の治療剤との組合せ処置を含み得る。
【0137】
さらに、IL-10バリアント分子またはその融合タンパク質の投与に有用な組合せ処置は、TNF阻害剤を含み得、例えば、TNFに結合するキメラ、ヒト化、効果的にヒト、ヒト、またはin vitro生成された抗体、またはその抗原結合性断片、TNF受容体、例えば、p55またはp75ヒトTNF受容体またはその誘導体の可溶性断片、例えば、75 kdTNFR-IgG(75kD TNF受容体-IgG融合タンパク質、ENBREL(商標))、p55 kD TNF受容体-IgG融合タンパク質、ならびにTNF酵素アンタゴニスト、例えば、TNFα変換酵素(TACE)阻害剤を含み得る。標準的な非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)およびシクロ-オキシゲナーゼ-2阻害剤を含むがこれらに限定されない、抗炎症剤/薬を用いた他の組合せ処置。NSAIDとしては、アスピリン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダク、および/またはトルメチンを挙げることができる。本出願による組成物において用いられるシクロ-オキシゲナーゼ-2阻害剤は、例えば、セレコキシブまたはロフェコキシブであり得る。
【0138】
IL-10バリアント分子またはその融合タンパク質と共投与および/または共製剤化され得る追加の治療剤としては、インターフェロン-β、例えば、IFN β-1αおよびIFN β-1β、COPAXONE(登録商標)、コルチコステロイド、IL-1阻害剤、TNFアンタゴニスト(例えば、TNF受容体、例えば、p55もしくはp75ヒトTNF受容体またはその誘導体の可溶性断片、例えば、75kdTNFR-IgG、CD40リガンドおよびCD80に対する抗体、ならびにIL-12および/またはIL-23のアンタゴニスト、例えば、IL-12およびIL-23のp40サブユニットのアンタゴニスト(例えば、IL-12およびIL-23のp40サブユニットに結合する阻害性抗体)、メトトレキセート、レフルノミド、およびシロリムス(ラパマイシン)、またはこれらのアナログ、例えば、CCI-779のうちの1つまたは複数が挙げられる。他の治療剤としては、イミフィンジまたはアテゾリズマブを挙げることができる。
【0139】
NASHを処置する目的で、例えば、IL-10バリアント分子またはその融合タンパク質は、コレステロール低下剤、例えば、スタチンおよび非スタチン薬と組み合わせることができる。これらの薬剤としては、シンバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、ゲムフィブロジル、フルバスタチン、コレスチラミン、フェノフィブラート、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸結合樹脂もしくは捕捉剤、ならびに/またはマイクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
有効量の治療薬は、症状を緩和することによって炎症または疾患または状態のレベルに影響を及ぼすであろう。例えば、影響は、疾患または状態が、軽減または完全に処置されるように、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも約30%、少なくとも40%、少なくとも50%、またはそれを上回るレベルの影響を含み得る。
【0141】
バリアントIL-10分子またはその融合タンパク質を含む医薬組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤と混合される。様々な薬学的担体が、当該技術分野において公知であり、医薬組成物において使用され得る。例えば、担体は、本出願のバリアントIL-10分子組成物を患者に送達するのに好適な任意の適合性のある非毒性物質であり得る。好適な担体の例としては、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、およびハンクス溶液が挙げられる。担体としては、2900(L64)、3400(P65)、4200(P84)、4600(P85)、11,400(F88)、4950(P103)、5900(P104)、6500(P105)、14,600(F108)、5750(P123)、および12,600(F127)の分子量を有するものを含むがこれらに限定されない、当業者に一般的に知られている任意のポロキサマーも挙げることができる。担体としては、いくつか列挙すると、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、およびポリソルベート80を含むがこれらに限定されない乳化剤も挙げることができる。固定油およびオレイン酸エチルなどの非水性担体もまた、使用することができる。担体としては、等張性および化学的安定性を増強させる物質、例えば、緩衝剤および保存剤などの添加剤も挙げることができ、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences and U.S. Pharmacopeia: National Formulary, Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1984)を参照されたい。治療剤および診断剤の製剤は、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液、または懸濁液の形態で、生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤と混合することによって、調製することができる。
【0142】
本出願の組成物は、経口で投与することができるか、または身体に注射することができる。経口使用のための製剤は、消化管におけるプロテアーゼからバリアントIL-10分子をさらに保護するための化合物も含み得る。注射は、通常、筋肉内、皮下、皮内、または静脈内である。あるいは、関節内注射または他の経路を、適切な状況では使用することができる。非経口で投与されるバリアントIL-10分子は、好ましくは、薬学的担体および/または薬学的に許容される賦形剤と関連して、単位剤形の注射可能形態(溶液、懸濁液、エマルジョン)で製剤化される。他の実施形態では、本出願の組成物は、埋込み可能または注射可能な薬物送達系によって、患者の身体に導入され得る。
IL-10バリアントの治療的使用
【0143】
一実施形態では、本出願は、炎症、炎症性疾患、または自己免疫疾患と関連する症状を処置、緩和、または低減する方法を提供する。本出願はまた、炎症、炎症性疾患、または自己免疫疾患、がん、または腫瘍のための医薬品として使用するためのIL-10、IL-10バリアント分子、その融合タンパク質、またはそのキメラ分子も提供する。本出願はまた、炎症、または炎症性疾患、または自己免疫疾患、がん、または腫瘍の処置において使用するためのIL-10、IL-10バリアント分子、その融合タンパク質、またはそのキメラ分子の使用も企図する。これらとしては、いくつか列挙すると、例えば、IBD、クローン病、潰瘍性大腸炎、NASH、NAFLD、高コレステロール血症、またはがんが挙げられる。本方法は、治療有効量の、本明細書に記載されるバリアントIL-10分子またはその融合タンパク質のうちの1つまたは複数を投与することを企図する。一実施形態では、本出願は、炎症性疾患または自己免疫疾患を処置する方法であって、治療有効量の、受容体結合ドメインおよび/またはドメイン間角度の形成に関与する領域と関連する1つまたは複数の改変を含むバリアントIL-10分子を投与するステップを含む、方法を含む。1つの好ましい実施形態では、本方法は、バリアントEBV-IL10分子またはその融合タンパク質を投与するステップを含む。1つの好ましい実施形態では、炎症性疾患を処置するのに有用なバリアントIL-10分子またはその融合タンパク質は、野生型IL-10分子と比較して、制限されたドメイン間角度を有し、かつ/または低い受容体親和性も呈する、バリアント分子を含む。他の実施形態では、炎症性疾患を処置するのに有用なバリアントIL-10分子またはその融合タンパク質は、野生型IL-10分子と比較して、弛緩したドメイン間角度を有し、かつ/または低い受容体親和性も呈する、バリアント分子を含む。バリアントIL-10分子のPEG化形態もまた、炎症性疾患または炎症に関して本出願の一部として想定される。
【0144】
本出願の炎症性疾患または自己免疫疾患には、望ましくないまたは所望されない炎症および免疫反応と関連する任意の疾患または状態が含まれる。これらの疾患としては、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、乾癬、リウマチ性関節炎、非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、疾患または状態としては、神経変性障害、例えば、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(amyelotrophic lateral sclerosis、ALS)、致死性家族性不眠症、ラスムッセン脳炎、ダウン症、ハンチントン病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病、結節性硬化症、神経セロイドリポフスチン沈着症、亜急性硬化性全脳炎、ライム病、ツェツェ病(アフリカ睡眠病)、HIV認知症、牛海綿状脳症(「狂牛」病)、クロイツフェルトヤコブ病、単純ヘルペス脳炎、帯状疱疹小脳炎、進行性麻痺(梅毒)、結核性髄膜炎、結核性脳炎、視神経炎、肉芽腫性血管炎、側頭関節炎(temporal arthritis)、脳血管炎、スパッツリンドバーグ病(Spatz-Lindenberg’s disease)、メタンフェタミン関連血管炎、コカイン関連血管炎、外傷性脳損傷、卒中、ランスアダムス症候群、無酸素後脳障害、放射線壊死、辺縁系脳炎、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、線条体黒質変性症、大脳皮質基底核神経節変性症、原発性進行性失語症、第17染色体と関連する前頭側頭型認知症、脊髄性筋萎縮症、HIV関連ミエロパチー、HTLV-1関連ミエロパチー(熱帯性痙性不全対麻痺症)、脊髄癆(梅毒)、横断性脊髄炎、ポリオ後症候群、脊髄損傷、放射線ミエロパチー、シャルコーマリートゥース病、HIV関連多発ニューロパチー、カンピロバクター関連運動軸索障害、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、糖尿病性筋萎縮症 剥離、幻肢、複合性局所性疼痛症候群、糖尿病性ニューロパチー、傍腫瘍性ニューロパチー、筋強直性ジストロフィー、HTLV-1関連ミオパチー、旋毛虫症、炎症性ミオパチー(多発性筋炎、封入体筋炎、皮膚筋炎)、鎌状赤血球症、アルファ-1-抗トリプシン欠乏症、結核、亜急性細菌性心内膜炎、慢性ウイルス性肝炎、ウイルス性心筋症、シャーガス病、マラリア、コクサッキーB感染症、黄斑変性症、網膜色素変性症、血管炎、炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎、水疱性天疱瘡、チャーグストラウス症候群、心筋梗塞、中毒性表皮壊死、ショック(例えば、急性アナフィラキシーショック)、1型糖尿病、自己免疫性甲状腺炎、リンパ腫、卵巣がん、ループス(全身性エリテマトーデス)、喘息、早老症、サルコイドーシス、2型糖尿病、およびメタボリック症候群が挙げられるが、これらに限定されない。本出願の実施形態である、炎症と関連する他の疾患または状態としては、炎症性肺障害、例えば、気管支炎、酸化体に誘導される肺損傷および慢性閉塞性気道疾患、角膜ジストロフィー、高眼圧症、トラコーマ、オンコセルカ症、網膜炎、ブドウ膜炎、交感性眼炎、および眼内炎を含む眼の炎症性障害、歯周炎を含む歯肉の慢性炎症性障害、関節炎、敗血症性関節炎および骨関節炎、結核性関節炎、癩病性関節炎、サルコイド関節炎を含む関節の慢性炎症性障害、硬化性皮膚炎、日焼け、乾癬、および湿疹を含む皮膚の障害、脳脊髄炎およびウイルス性もしくは自己免疫性脳炎、免疫複合体型血管炎を含む自己免疫疾患、ならびに虚血性心疾患、心不全、および心筋症を含む心臓の疾患が挙げられる。バリアントIL-10分子またはその融合タンパク質から利益を得ることができる疾患の他の非限定的な例としては、副腎機能不全、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化、骨吸収の増加と関連する骨疾患、例えば、骨粗鬆症、子癇前症、子癇、尿毒性併発症、慢性肝不全、および炎症と関連する他の障害、例えば、嚢胞性線維症、結核、カヘキシー、虚血(ischeimia)/再灌流、血液透析関連の状態、糸球体腎炎、再狭窄、ウイルス感染症の炎症性続発症、低酸素症、高比重酸素性痙攣および毒性、認知症、シデナム舞踏病、ハンチントン病、癲癇、コルサコフ病、脳血管障害に関連する知的障害、NOに媒介される脳損傷および関連する続発症、虚血性脳浮腫(卒中)、偏頭痛、嘔吐、免疫複合体疾患、同種移植片拒絶、侵襲性微生物によって引き起こされる感染症、ならびに加齢が挙げられる。
【0145】
抗炎症性疾患または状態を処置するのにもっとも有効なIL-10バリアントまたはその融合タンパク質としては、T細胞を刺激する能力が低下しているものが挙げられる。したがって、75位におけるアミノ酸置換を通じた受容体結合ドメインの改変は、もっとも少ない量のT細胞刺激を誘導することが、本出願の発明者によって示されている。具体的には、配列番号3(または配列番号57)におけるA75I置換を有するEBV IL-10は、T細胞刺激を減少させることが示されている(例えば、
図8E、DV06と表記されているものを参照されたい)。したがって、1つの特に好ましい実施形態は、DV06に基づく突然変異(配列番号3または配列番号57のアミノ酸75位における置換)を有するIL-10バリアント分子を有するダイアボディおよびモノボディの使用を企図する。より好ましい実施形態では、炎症性疾患の方法は、配列番号26~27、37、40、41~42、43、48~49、またはこれらの組合せを含む融合タンパク質または融合タンパク質複合体を利用するであろう。
【0146】
本出願の別の実施形態では、処置の方法は、がんと関連する症状を処置または低減させるために、IL-10またはバリアントIL-10分子またはその融合タンパク質を投与するステップを含む。本方法は、治療有効量の、本明細書に記載されるIL-10分子またはバリアントIL-10分子またはその融合タンパク質のうちの1つまたは複数を投与することを企図する。一実施形態では、本出願は、がんと関連する症状を処置または低減させる方法であって、治療有効量の、受容体結合ドメインおよび/またはドメイン間角度の形成に関与する領域と関連する1つまたは複数の改変を含むバリアントIL-10分子を投与するステップを含む、方法を含む。1つの好ましい実施形態では、本方法は、バリアントEBV-IL10分子またはその融合タンパク質を投与するステップを含む。がんを処置するのに有用なバリアントIL-10分子またはその融合タンパク質は、野生型IL-10分子と比較して、制限されたドメイン間角度を有し、かつ/または高い受容体親和性も呈する、バリアント分子を含む。がんと関連する症状を処置または低減させるのに有用なバリアントIL-10分子またはその融合タンパク質は、野生型IL-10分子と比較して、弛緩したドメイン間角度を有し、かつ/または高い受容体親和性も呈する、バリアント分子を含む。バリアントIL-10分子のPEG化形態もまた、がんの処置に関して本出願の一部として想定される。in vivoにおいて腫瘍体積を低減させることができる融合タンパク質の1つの特定の例としては、配列番号3のアミノ酸31位および75位における2つの置換を有するIL-10バリアントが挙げられ、これは、DV07と称されるV31LおよびA75Iの特定の置換を含む(例えば、配列番号59)。
図16A~Cは、様々な用量において、D:DV07と称される、ダイアボディ構造体にコンジュゲートしたDV07 EBV IL-10分子を含む融合タンパク質が、7および10日間の時間過程にわたって、腫瘍体積を低減させたことを示す。したがって、1つの特に好ましい実施形態は、DV07に基づく突然変異(配列番号3または配列番号59のアミノ酸31位および75位における置換)を有するIL-10バリアント分子を有するダイアボディおよびモノボディの使用を企図する。より好ましい実施形態では、がんまたは腫瘍または腫瘍を処置する方法は、配列番号28~29、33、34、35~36、38~39、46~47、61、63、65、もしくは67、またはこれらの組合せを含む融合タンパク質または融合タンパク質複合体を利用する。
【0147】
本明細書に記載されるバリアントIL-10分子またはその融合タンパク質によって処置することができるがんまたは増殖性障害としては、子宮、子宮頸、乳房、前立腺、精巣、陰茎、消化管、例えば、食道、中咽頭、胃、小腸もしくは大腸、結腸、または直腸、腎臓、腎細胞、膀胱、骨、骨髄、皮膚、頭頸部、皮膚、肝臓、胆嚢、心臓、肺、膵臓、唾液腺、副腎、甲状腺、脳、例えば、神経膠腫、神経節、中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)、ならびに免疫系、例えば、脾臓または胸腺のがんが挙げられるがこれらに限定されない、様々な形態のがんが挙げられる。本出願は、例えば、免疫原性腫瘍、非免疫原性腫瘍、潜伏腫瘍、ウイルスに誘導されるがん、例えば、上皮細胞がん、内皮細胞がん、扁平上皮細胞癌、パピローマウイルス、腺癌、リンパ腫、癌腫、黒色腫、白血病、骨髄腫、肉腫、奇形癌、化学的に誘導されるがん、転移、および血管新生を処置する方法を提供する。本出願はまた、例えば、制御性T細胞(Treg)および/またはCD8+ T細胞の活性をモジュレートすることによって、腫瘍細胞またはがん細胞抗原に対する寛容性を低減させることを企図する。好ましい実施形態では、IL-10バリアント分子は、肝臓転移疾患を有する患者または対象を処置するのに特に有用である。
【0148】
なおも他の実施形態では、炎症性疾患またはがんと関連する症状を処置または低減させる方法は、他の治療剤と組み合わせて、バリアントIL-10分子またはその融合タンパク質またはその誘導体化形態(例えば、PEG化)を投与するステップを含む。これらの治療剤としては、限定することなく、サイトカインまたはサイトカインアンタゴニスト、例えば、IL-12、IL-2、IL-15、インターフェロン-アルファ、または抗上皮成長因子受容体、ドキソルビシン、エピルビシン、抗葉酸剤、例えば、メトトレキセートもしくはフルオロウラシル、イリノテカン、シクロホスファミド、放射線療法、ホルモンもしくは抗ホルモン療法、例えば、アンドロゲン、エストロゲン、抗エストロゲン、フルタミド、もしくはジエチルスチルベストロール、外科手術、タモキシフェン、イホスファミド、ミトラクトール、アルキル化剤、例えば、メルファランもしくはシス-プラチン、エトポシド、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンデシン、グルココルチコイド、ヒスタミン受容体アンタゴニスト、血管新生阻害剤、放射線照射、放射線感作剤、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、タキサン、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル、細胞周期阻害剤、例えば、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、別の腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、モノクローナル抗体および毒素の複合体、T細胞アジュバント、骨髄移植、または抗原提示細胞、例えば、樹状細胞療法が挙げられる。
【0149】
他の実施形態では、本出願はまた、脂質関連障害、例えば、高コレステロール血症および高トリグリセリド血症を処置する、ならびに/または脂質パラメーター、例えば、総コレステロール、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール、超低密度リポタンパク質(VLDL)コレステロール、トリグリセリド、および非HDLコレステロールを改善させる、方法であって、バリアントIL-10分子またはその誘導体化形態(例えば、PEG化)を投与するステップを含む、方法を具現化する。
【0150】
脂質関連疾患または障害を処置するのにもっとも有効なIL-10バリアントまたはその融合タンパク質としては、マクロファージに対してもっとも低い抑制能力を有するものが挙げられる。したがって、31位におけるアミノ酸置換(ホモ二量体のドメイン間角度の増加と関連する)を通じた受容体結合ドメインの改変は、もっとも少ない量のマクロファージ応答を誘導することが、本出願の発明者によって示されている。具体的には、配列番号3におけるV31L置換を有するEBV IL-10は、マクロファージ応答を減少させることが示されている(例えば、
図8A、DV05と表記されるもの、または配列番号55を参照されたい)。したがって、1つの特に好ましい実施形態は、DV05に基づく突然変異(配列番号3または配列番号55のアミノ酸31位における置換)を有するIL-10バリアント分子を有するダイアボディおよびモノボディの使用を企図する。より好ましい実施形態では、脂質に基づく疾患または障害を処置する方法は、配列番号24~25、50~51、または45を含む融合タンパク質または融合タンパク質複合体を利用する。
【0151】
本出願のなおも別の実施形態では、いずれも必要に応じてPEG化またはHES化を含み得る、IL-10バリアント分子またはその融合タンパク質、ウイルスIL-10(EBVまたはCMV IL-10を含む)、または野生型IL-10は、マスト細胞脱顆粒化を低減させることによって、マスト細胞を標的化する方法において使用される。好ましい実施形態では、マスト細胞を標的化する方法は、季節性アレルギーまたは急性アナフィラキシー応答を処置するために、ウイルスIL-10またはIL-10バリアント分子と接触させるステップを含む。別の態様では、IL-10バリアント分子、ウイルスIL-10(EBVもしくはCMV IL-10を含む)、または野生型IL-10は、IgE応答性を低減させるための方法において使用される。
【0152】
なおも別の実施形態では、本出願のIL-10バリアント分子またはその融合タンパク質は、好ましくは、患者集団をスクリーニングするときに、記載される方法(例えば、抗炎症および/またはがん)において有用である。一実施形態では、上昇したまたは高いIFNγ応答が存在するプロファイルを呈する患者は、IL-10バリアント分子を使用してがんを処置するのにもっとも感受性であるかまたは理想的である。別の実施形態では、減少したまたは低いIFNγ応答が存在するプロファイルを呈する患者は、IL-10バリアント分子を使用して抗炎症を処置するのにもっとも感受性であるかまたは理想的である。
【0153】
本出願の広い範囲は、以下の実施例を参照するともっとも良好に理解され、それらの実施例は、本出願をいずれの特定の実施形態にも制限することを意図しない。本明細書におけるすべての引用物は、それぞれ個別の刊行物または特許出願が、具体的かつ個別に参照により組み込まれると示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0154】
当業者には理解されるように、本出願の多数の改変形および変化形が、その趣旨および範囲から逸脱することなく作製され得る。本明細書に記載される特定の実施形態は、例として提供されており、本出願は、添付の特許請求の範囲の条件、同様にそのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の完全な範囲によって制限されるものではなく、本出願は、例として本明細書に提示されている特定の実施形態によって制限されるものではない。さらに、前述の明細書において引用されているすべての参考文献、特許、および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0155】
以下の実施例は、単に本出願の様々な実施形態を例示するものであり、決して本出願の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
(実施例1)
【0156】
EBV-IL-10バリアントまたはその融合タンパク質を、標準的な分子生物学クローニング技法によって、一次配列の変更によって構築する。一次配列における変更は、受容体結合ドメインの親和性を変更するように、ならびにドメイン間角度を開放または閉鎖するように、設計する。受容体親和性は、成熟分泌配列における31位および/または75位およびその周囲のアミノ酸を変化させることによって、変更することができる。ドメイン間角度は、例えば、ヘリックスCおよびDの間、ならびにDおよびEの間の非アルファヘリックス配列にプロリンを導入して変更することができるが、これに限定されない。プロリンは、一次アミノ酸配列の直鎖方向にねじれを誘導し、続いて生じるDおよびEヘリックスの二次構造および三次構造によって誘導されるドメイン間角度を潜在的に変更する。同様に、嵩高い側鎖を有するアミノ酸、例えば、トリプトファンの導入は、一次アミノ酸骨格の線状構造にあまり重大でない変更を導入し、二次および三次構造にあまり顕著でない変化をもたらすことができる。
(実施例2)
【0157】
以下の実施例は、バリアントIL-10分子またはその融合タンパク質が、マクロファージにおいてどのように評価されるかについての説明を提供する。
【0158】
健常な患者集団または炎症性疾患(例えば、クローン病)を患う患者からヒト血液を採取し、新しく採取したバフィーコートを、標準的なFicoll密度勾配遠心分離手順を使用して処理し、PBMCを得る。PBMCを、次いで、EasySep(商標)ヒト単球濃縮キット(カタログ番号19059、Stem Cell Technologies)を使用し、製造業者の説明書に従って、CD14+単球細胞の濃縮に供する。濃縮効率を、標準的なフローサイトメトリーによって評価する。
【0159】
濃縮した単球を、5%ヒト血清およびPSGを補充したRPMI培地中、2×106個の細胞/mL/ウェルで、24ウェルプレートに播種する。細胞を、バリアントIL-10分子の連続希釈物(0、0.1、1、10、100、1000ng/mL)で処置し、37℃/5%CO2加湿インキュベーターにおいて1時間処置し、次いで、10ng/mL LPS(カタログ番号L4391、Sigma-Aldrich)に12~16時間曝露する。一晩インキュベートした後、上清を採取し、炎症性サイトカイン(IL-6、TNFα、IL-1β)を、標準的なELISAによってかまたはiQue Screener(Intellicyt)を使用してのいずれかで測定する。
【0160】
この研究において、上述の手順を使用して、マクロファージに対する免疫抑制能力に対する非PEG化EBV-IL10および非PEG化ヒトIL-10の影響を比較する。
図2A、2B、および3A、3Bは、EBV-IL10が、炎症性サイトカインIL-1βおよびTNFαを抑制する能力を保持したことを示し、これにより、ドメイン間角度の違いを有するとしても、EBV-IL10が、ヒトIL-10と同様の様式で、その炎症抑制能力を維持することができることが示される。
(実施例3)
【0161】
以下の実施例は、バリアントIL-10分子またはその融合タンパク質が、ヒトCD8+T細胞においてどのように評価されるかについての説明を提供する。
【0162】
健常な患者集団または炎症性疾患(例えば、クローン病)を患う患者からヒト血液を採取し、新しく採取したバフィーを、標準的なFicoll密度勾配遠心分離手順を使用して処理し、PBMCを得る。PBMCを、次いで、EasySep(商標)ヒトCD8+ T細胞濃縮キット(カタログ番号19053、Stem Cell Technologies)を製造業者の説明書に従って使用して、CD8+ T細胞の濃縮に供する。濃縮効率を、標準的なフローサイトメトリー法によって評価する。濃縮した細胞を、AIMV(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号12055083)培養培地に懸濁する。24ウェルプレートを、37℃/5%002加湿細胞培養インキュベーターにおいてインキュベートし、続いて、1倍PBSで1~2回洗浄することによって、10マイクログラム/mLの抗CD3(カタログ番号16-0039-85、Thermo Fisher Scientific)および2マイクログラム/mLの抗CD28(カタログ番号16-0289-85、Thermo Fisher Scientific)で2時間コーティングする。
【0163】
濃縮したCD8+ T細胞(3×106個/mL/ウェル)を、抗CD3/抗CD28をコーティングしたプレートに添加し、37℃/5%CO2加湿細胞培養インキュベーターにおいて72時間インキュベートする。
【0164】
72時間後に、細胞を採取し、計数して、バリアントIL-10分子の連続希釈物(0、0.1、1、10、100、1000ng/mL、100μL/ウェルで添加)または対照試料の存在下/不在下において、100μlを丸底96ウェルプレート(2×105個の細胞/ウェル)に再播種する。試験を、三連に行う。細胞を、バリアントIL-10分子またはその融合タンパク質とともに、37℃/5%CO2加湿インキュベーターにおいて72時間インキュベートする。72時間後に、細胞を回収し、洗浄し、37℃/5%CO2加湿インキュベーターにおいて4時間、可溶性抗CD3(カタログ番号16-0039-85、Thermo Fisher Scientific)の存在下で、新しい丸底96ウェルプレートに再播種する。
【0165】
この研究において、上述の手順を使用して、CD8
+T細胞の刺激に対する非PEG化EBV-IL10および非PEG化ヒトIL-10の影響を比較する。
図2Cおよび3Cは、EBV-IL10が、ヒトIL-10と比較して、IFNγ(T細胞刺激の尺度)のレベルの減弱を呈したことを示す。これは、ドメイン間角度を変更することによって、T細胞の刺激をモジュレートする能力が存在することを示す。
図4Aおよび4Bは、処置したドナーの半数が、所望される完全な抗炎症作用を呈し、半数は呈さなかったことを示す。開発に選択したバリアントは、ドナー1の応答、マクロファージ細胞によるLPSに応答した炎症性サイトカインの分泌の完全な抑制、および活性化CD8
+ T細胞からのIFNγ誘導の欠如を模倣するであろう。ドナー2は、ドナー1と同様に単球/マクロファージによる炎症性サイトカインの分泌の抑制を呈したが、曲線およびT細胞IFNγ分泌の最大活性化を右方向にシフトしただけであった。受容体親和性およびドメイン間角度を変更するIL-10バリアント分子は、さらに、ドナー2と同様に、患者におけるT細胞活性化を低減させるはずである。
(実施例4)
【0166】
ATCCから購入したヒト単球/マクロファージ、T細胞、およびマウスMC/9細胞を、前述のように培養し、モノまたはジ-N末端5kDa PEG化EBV-IL10に対する応答を評価した。EBV-IL10のPEG化は、LPSに対するマクロファージ応答の低減はわずかしかもたらさないが(
図5B)、刺激されたT細胞からのIFNγ誘導のほぼ完全な抑制をもたらす(
図5C)。同様に、EBV-IL10のPEG化は、MC/9細胞に対するその刺激性作用をほぼ消失させる(
図5A)。
【0167】
抗CD3αおよび抗EGFRのVHおよびVL領域を用いたEBV-IL-10バリアントダイアボディの様々な形態を、MC/9細胞増殖アッセイを使用して試験した。EBV-10バリアント部分には、D:DV05(V31L突然変異を有するEBV IL-10)、D:DV06(A75I突然変異を有するEBV IL-10)、およびV31LおよびA75I突然変異を有するD:DV07)が含まれた。加えて、抗HIVおよび抗エボラVHおよびVL領域を含むDV07ダイアボディもまた、試験した。様々なバリアントダイアボディ形態を、ヒトIL-10およびEBV IL-10と比較した。結果を、
図15に提供する。
【0168】
EBV-IL-10融合タンパク質の他の形態もまた、in vitroで試験した。特に、DhivDebo:DV06(配列番号26および27)ならびにDmadcamDebo:DV06(配列番号41および42)を、本明細書に記載されるマクロファージおよびT細胞応答アッセイにおいて、ヒトIL-10と比較した。結果を、
図20Aおよび20Bに提供する。
(実施例5)
【0169】
以下の実施例は、IL-10およびIL-10バリアント分子ならびにその融合タンパク質をin vivo腫瘍モデルにおいて試験するための代表的なプロトコールを提供する。すべてのin vivo研究は、標準的な操作手順およびInstitutional Animal Care and Use Committee(「IACUC」)によって承認されている確立されたガイドラインに従って行う。
【0170】
8週齢の雌性Balb/Cマウスを購入し、1週間隔離し、標準的な24時間の明/暗サイクルにおいて、1週間に1回の床敷き交換で通常の食餌および水で維持する。
【0171】
CT26腫瘍細胞(2×10
5個)を、ハンクス緩衝食塩水に懸濁させ、8週齢のマウスの皮下に埋め込み、成長させる。CT26腫瘍(平均50~150mm
3)を保持する野生型Balb/C Envigo)、またはB細胞ノックアウト(Jackson)マウスを、0.4および0.2mg/kgで1週間に3回(q3w)、0.2および0.1mg/kgで毎日(qd)を2日間の休薬で5日間、IL-10またはIL-10バリアント分子またはその融合タンパク質(例えば、2つの異なる抗体またはダイアボディに由来するVHおよびVLに共有結合的に連結された2つの受容体結合置換、DV07を有するEBV IL-10バリアント分子(
図8C))で、皮下(首筋)に10日間処置する。腫瘍の長さおよび幅を、電子キャリパーで3日間に1回測定し、腫瘍体積を計算する((L×W
2)/2))。野生型マウスにおいてB細胞を、200μg/マウスの抗マウスCD20の静脈内(i.v.)投与により、枯渇させる。1つのそのような研究の結果は、
図16に提供されており、これは、抗CD3αおよび抗EGFRに由来する可変領域を含む、V31LおよびA75I突然変異を有するIL-10バリアントである、D:DV07と称されるIL-10バリアント分子を使用していた。
【0172】
図17Aおよび17Bでは、
図9C(大型形式)および9f(小型形式)によって表される、IL-10バリアント融合タンパク質(すなわち、V31LおよびA75Iの両方の突然変異を含むIL-10バリアント、DV07)の2つの形式を、in vivo腫瘍モデルにおいて比較する。融合タンパク質は、非標的化融合タンパク質であり、抗HIV抗体および抗エボラ抗体(大型形式)に由来するVHおよびVL領域、ならびに抗エボラ抗体に由来するVHおよびVL領域を含む。投薬研究により、5日間の投薬、2日間の休薬(
図17A)で投与した小型形式の非標的化IL-10融合タンパク質の作用を、peg化組換えヒトIL-10(0.75mg/kg、毎日)と比較して、試験した。さらに、投薬研究により、1週間に3回投与した大型および小型形式の非標的化IL-10融合タンパク質(
図17B)の作用を、peg化IL-10(0.75mg/kg、毎日)と比較して試験した。
【0173】
腫瘍標的化能力を有する小型および大型形式のIL-10融合タンパク質(すなわち、V31LおよびA75Iの両方の突然変異を含むIL-10バリアント、DV07)を使用した研究もまた、in vivoで試験した。
図18Aは、様々な標的化IL-10バリアント融合タンパク質の毎日の投与により得られた結果であり、大型形式(DegfDebo:DV07)および小型形式(Degf:DV07)を、小型形式の非標的化(Debo:DV07)IL-10融合タンパク質およびpeg化IL-10と比較した。
図18Bは、様々な大型形式の標的化IL-10バリアント融合タンパク質の1週間に3回の投与により得られた結果であり、様々な用量(1mg/kgおよび0.25mg/kg)の大型形式(DegfDebo:DV07)を、小型形式の非標的化(DhDe:DV07)IL-10融合タンパク質およびpeg化IL-10と比較した。
図18Cは、様々な小型形式の標的化IL-10バリアント融合タンパク質の1週間に3回の投与により得られた結果であり、様々な用量(1mg/kgおよび0.25mg/kg)の小型形式(Degf:DV07)を、小型形式の非標的化(Debo:DV07)IL-10融合タンパク質およびpeg化IL-10と比較した。
(実施例6)
【0174】
以下の実施例は、IL-10およびIL-10バリアント分子ならびにその融合タンパク質をin vivoコレステロールモデルにおいて試験するための代表的なプロトコールを提供する。すべてのin vivo研究は、標準的な操作手順およびIACUCによって承認されている確立されたガイドラインに従って行った。
【0175】
8週齢の雌性C57BL/6Jマウスを適切な供給業者から購入し、1週間隔離し、標準的な24時間の明/暗サイクルにおいて、1回/1週間の床敷き交換で通常の食餌および水で維持する。
【0176】
Jackson Laboratoriesの8週齢の雌性C57BL/6Jマウスに、高脂肪食(Envigo)を3週間与える。IL-10またはIL-10バリアントまたはその融合タンパク質(例えば、ダイアボディに連結された、配列番号3のアミノ酸31位における単一の置換(V31L)を含むEBV IL-10バリアント(D:DV05 EBV IL-10バリアント))での処置の前に、血漿試料を、それぞれのマウスの後眼窩採血によって得る。マウスを、0.4および0.2mg/kgで1週間に3回(q3w)、ならびに0.2および0.1mg/kgで1週間(qd)に5日間の処置2日間の休薬で、2週間、皮下処置する。動物を2週間処置し、最後の採血を行い、その後に、投薬前および投薬後の血漿コレステロール濃度を定量する。処置開始前の日に、200μg/マウスの抗マウスCD20の静脈内(i.v.)投与により、B細胞を枯渇させる。1つのそのような研究の結果は、
図19Aおよび19Bに提供されている。
(実施例7)
【0177】
以下の実施例は、IL-10およびIL-10バリアント分子ならびにその融合タンパク質をin vivo硫酸デキストランナトリウム(「DSS」)炎症モデルにおいて試験するための代表的なプロトコールを提供する。すべてのin vivo研究は、標準的な操作手順およびIACUCによって承認されている確立されたガイドラインに従って行う。
【0178】
8週齢の雌性Balb/Cマウスを適切な供給業者から購入し、1週間隔離し、標準的な24時間の明/暗サイクルにおいて、1回/1週間の床敷き交換で通常の食餌および水で維持する。B細胞ノックアウト(Jackson)マウスに、水中4% DSSを、6日間自由に摂取させ、その後、それらに、通常の水を与える。5日目に、マウスを、0.4および0.2mg/kgで1週間に3回(q3w)、0.2および0.1mg/kgで毎日(qd)、5日間の投薬2日間の休薬で、IL-10またはIL-10バリアントまたはその融合タンパク質(例えば、ダイアボディに連結された、配列番号3のアミノ酸75位における単一の置換(A75I)を含むEBV IL-10バリアント(D:DV06 EBV IL-10バリアント))で、10日間、皮下(首筋)処置する。マウスを、以下について毎日評価する:
1.)体重
2.)便潜血
3.)肉眼で見える出血
4.)便の硬さ
【0179】
疾患活動性インデックスを、以下のスコアを合わせることによって判定する。
1.体重減少
2.便の硬さ
3.出血(3で除す)
【0180】
それぞれのスコアは、以下のように判定する:体重の変化(0:1%を下回る、1:1~5%、2:5~10%、3:10~15%、4:15%を上回る、血便(0:陰性、2:陽性)、肉眼で見える出血(4)、および便の硬さ(0:正常、2:緩い便、4:下痢)。
好ましい実施形態の一覧
【0181】
1.野生型エプスタインバーウイルスIL-10(EBV-IL10)と比較したときに、変更されたドメイン間角度および/または変更された同種受容体に対する親和性を呈する1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、および/または置換を含む、EBV-IL10バリアントタンパク質であって、変更されたドメイン間角度により、二量体化したときに、同種受容体との結合の角度がモジュレートされる、EBV-IL10バリアントタンパク質。
【0182】
2.1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、および/または置換が、IL-10受容体結合ドメインに位置する、先行する実施形態に記載のEBV-IL10タンパク質。
【0183】
3.1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、および/または置換が、アルファヘリックスAおよび/またはヘリックスD内に位置する、先行する実施形態のいずれかに記載のEBV-IL10タンパク質。
【0184】
4.1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、および/または置換が、EBV-IL10の連結ドメインに存在する、先行する実施形態のいずれかに記載のEBV-IL10タンパク質。
【0185】
5.1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、および/または置換が、EBV-IL10のDEループ内に位置する、先行する実施形態のいずれかに記載のEBV-IL10タンパク質。
【0186】
6.1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、および/または置換が、アルファヘリックスDとアルファヘリックスEとの間、またはアルファヘリックスCとアルファヘリックスDとの間に見出される12個のアミノ酸のリンカー領域内に位置し、好ましくは、12個のアミノ酸のリンカー領域内のプロリンの付加または置換である、先行する実施形態のいずれかに記載のEBV-IL10タンパク質。
【0187】
7.同種受容体に対する変更された親和性が、IL-10受容体結合ドメインにおける1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、および/または置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のEBV-IL10タンパク質。
【0188】
8.アルファヘリックスAおよび/またはアルファヘリックスD内に位置する1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、および/または置換をさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載のEBV-IL10タンパク質。
【0189】
9.IL-10受容体結合ドメインにおける1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、および/または置換をさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載のEBV-IL10タンパク質。
【0190】
10.アルファヘリックスAおよび/またはアルファヘリックスD内に位置する1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、および/または置換をさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載のEBV-IL10タンパク質。
【0191】
11.1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失、および/または置換が、配列番号3のアミノ酸31位および/または75位にある、先行する実施形態のいずれかに記載のEBV-IL10タンパク質。
【0192】
12.同一の単量体タンパク質とホモ二量体を形成することができる、A~Fと番号付けされた6つのアルファヘリックスを含む単量体組換えタンパク質であって、アルファヘリックスDおよびEが、鎖間アミノ酸リンカーによって連結され、このリンカーが、ホモ二量体化されたときのタンパク質の分子間角度を変更する少なくとも1つのアミノ酸の付加、欠失、または置換により改変されている、単量体組換えタンパク質。
【0193】
13.タンパク質が、ウイルス由来のタンパク質である、先行する実施形態に記載の組換えタンパク質。
【0194】
14.ウイルスが、エプスタインバーウイルス(EBV)である、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0195】
15.2つの同一な単量体タンパク質間で形成されるホモ二量体が、その同種受容体との相互作用の特定の角度を形成する、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0196】
16.相互作用の角度が、天然の野生型タンパク質を上回る、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0197】
17.ホモ二量体化したときに形成される相互作用の角度が、同種受容体に対する高い親和性を有するタンパク質をもたらす、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0198】
18.ホモ二量体化したときに形成される相互作用の角度が、同種受容体に対する低い親和性を有するタンパク質をもたらす、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0199】
19.相互作用の角度が、天然の野生型タンパク質を下回る、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0200】
20.相互作用の角度が、同種受容体に対する高い親和性を有するタンパク質をもたらす、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0201】
21.相互作用の角度が、同種受容体に対する低い親和性を有するタンパク質をもたらす、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0202】
22.単量体タンパク質が、インターロイキン10である、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0203】
23.単量体タンパク質が、EBV-IL10である、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0204】
24.タンパク質の角度が、同種受容体との相互作用の角度をもたらすリンカーに対する改変によって付与される、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0205】
25.エプスタインバーウイルスIL-10(EBV-IL10)タンパク質であって、EBV-IL10のアルファヘリックスDとEとの間のリンカー領域および/またはEBV-IL10の受容体結合領域に対する少なくとも1つのアミノ酸付加、欠失、または置換を含む、組換えバリアントEBV-IL10タンパク質。
【0206】
26.バリアントEBV-IL10タンパク質が、同一のタンパク質と相互作用して、変更されたその同種受容体との相互作用の角度および/または変更されたホモ二量体間角度を有するホモ二量体をもたらす、先行する実施形態に記載の組換えタンパク質。
【0207】
27.バリアントEBV-IL10タンパク質が、野生型EBV-IL10タンパク質を上回る、相互作用の角度および/または変更されたホモ二量体間角度を形成する、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0208】
28.バリアントEBV-IL10タンパク質が、野生型EBV-IL10タンパク質を下回る、相互作用の角度および/または変更されたホモ二量体間角度を形成する、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0209】
29.ホモ二量体の形成時に形成される相互作用の角度が、その同種受容体に対する増加した親和性を有するバリアントEBV-IL10タンパク質をもたらす、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0210】
30.ホモ二量体の形成時に形成される相互作用の角度が、その同種受容体に対する減弱した親和性を有するバリアントEBV-IL10タンパク質をもたらす、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0211】
31.相互作用の角度が、その同種受容体に対する親和性の増加をもたらす、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0212】
32.相互作用の角度が、その同種受容体に対する親和性の減少をもたらす、先行する実施形態のいずれかに記載の組換えタンパク質。
【0213】
33.先行する実施形態のいずれかに記載のタンパク質をコードする、単離された組換えポリヌクレオチド。
【0214】
34.先行する実施形態のいずれかに記載のタンパク質をコードする、単離された組換えポリヌクレオチド。
【0215】
35.先行する実施形態のいずれかに記載のタンパク質をコードする核酸を含む、ベクター。
【0216】
36.先行する実施形態のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
【0217】
37.対象において炎症を処置または予防する方法であって、対象に、治療有効量の先行する実施形態のいずれかに記載のバリアントタンパク質を投与するステップを含む、方法。
【0218】
38.変更されたバリアントタンパク質の角度が、野生型EBV-IL10を下回る、先行する実施形態に記載の方法。
【0219】
39.バリアントタンパク質が、野生型EBV-IL10と比較したときに、中等度の親和性でIL10受容体に結合する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0220】
40.炎症が、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)、乾癬、リウマチ性関節炎、急性アナフィラキシーショック、および/または季節性アレルギーである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0221】
41.対象において自己免疫疾患を処置または予防する方法であって、対象に、治療有効量の先行する実施形態のいずれかに記載のバリアントタンパク質を投与するステップを含む、方法。
【0222】
42.変更されたバリアントタンパク質の角度が、野生型EBV-IL10を下回る、先行する実施形態に記載の方法。
【0223】
43.バリアントタンパク質が、野生型EBV-IL10と比較したときに、中等度の親和性でIL10受容体に結合する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0224】
44.対象においてIBDまたはクローン病を処置または予防する方法であって、対象に、治療有効量の先行する実施形態のいずれかに記載のバリアントタンパク質を投与するステップを含む、方法。
【0225】
45.変更されたバリアントタンパク質の角度が、野生型EBV-IL10を下回る、先行する実施形態に記載の方法。
【0226】
46.バリアントタンパク質が、野生型EBV-IL10と比較したときに、中等度の親和性でIL10受容体に結合する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0227】
47.対象において非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置または予防する方法であって、対象に、治療有効量の請求項1に記載のバリアントタンパク質を投与するステップを含む、方法。
【0228】
48.変更されたバリアントタンパク質の角度が、野生型EBV-IL10を下回る、先行する実施形態に記載の方法。
【0229】
49.バリアントタンパク質が、野生型EBV-IL10と比較したときに、中等度の親和性でIL10受容体に結合する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0230】
50.対象においてがんを処置または予防する方法であって、対象に、治療有効量の先行する実施形態のいずれかに記載のバリアントタンパク質を投与するステップを含む、方法。
【0231】
51.変更されたバリアントタンパク質の角度が、野生型EBV-IL10を上回る、先行する実施形態に記載の方法。
【0232】
52.バリアントタンパク質が、野生型EBV-IL10と比較したときに、増加した親和性でIL10受容体に結合する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0233】
53.操作された融合タンパク質であって、融合タンパク質の第1の末端にコンジュゲートされた少なくとも1つのIL-10またはIL-10バリアント分子の単量体と、融合タンパク質の第2の末端にコンジュゲートされた少なくとも1つのサイトカインまたはその単量体と、リンカーまたはスペーサーとを含み、
リンカーまたはスペーサーが、第1および第2の末端を接続する、
操作された融合タンパク質。
【0234】
54.リンカーまたはスペーサーが、抗体の定常領域である、先行する実施形態に記載の融合タンパク質。
【0235】
55.定常領域が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgD、またはIgEに由来する、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0236】
56.リンカーまたはスペーサーが、少なくとも2つの鎖間ジスルフィド結合をさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0237】
57.リンカーまたはスペーサーが、scFv、ダイアボディ、またはその断片である、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0238】
58.定常領域が、重鎖定常(CH)領域1、CH2、CH3、またはこれらの任意の組合せである、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0239】
59.少なくとも1つのIL-10またはIL-10バリアント分子が、融合タンパク質のN末端、C末端、または両方にコンジュゲートされている、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0240】
60.もう一方の末端にコンジュゲートされる少なくとも1つのサイトカインが、IL-10、IL-10バリアント分子、IL-6、IL-4、IL-1、IL-2、IL-3、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-15、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、GM-CSF、G-CSF、インターフェロン-α、-β、-γ、TGF-β、もしくは腫瘍壊死因子-α、-β、塩基性FGF、EGF、PDGF、IL-4、IL-11、もしくはIL-13、またはこれらの任意の組合せを含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0241】
61.融合タンパク質が、融合タンパク質のN末端にコンジュゲートされた2つのIL-10またはIL-10バリアント分子、ならびに融合タンパク質のC末端にコンジュゲートされた2つのIL-10またはIL-10バリアント分子を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0242】
62.融合タンパク質が、融合タンパク質のN末端にコンジュゲートされた2つのIL-10またはIL-10バリアント分子、ならびに融合タンパク質のC末端にコンジュゲートされた少なくとも1つのIL-2分子を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0243】
63.C末端が、IL-6、IL-4、IL-1、IL-2、IL-3、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-15、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、GM-CSF、G-CSF、インターフェロン-α、-β、-γ、TGF-β、または腫瘍壊死因子-α、-β、塩基性FGF、EGF、PDGF、IL-4、IL-11、またはIL-13をさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0244】
64.融合タンパク質が、融合タンパク質のN末端にコンジュゲートされた2つのIL-10またはIL-10バリアント分子、ならびに融合タンパク質のC末端にコンジュゲートされた少なくとも1つのIL-15分子を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0245】
65.C末端が、IL-6、IL-4、IL-1、IL-2、IL-3、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-15、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、GM-CSF、G-CSF、インターフェロン-α、-β、-γ、TGF-β、または腫瘍壊死因子-α、-β、塩基性FGF、EGF、PDGF、IL-4、IL-11、またはIL-13をさらに含む、融合タンパク質v。
【0246】
66.融合タンパク質が、融合タンパク質のN末端にコンジュゲートされた2つのIL-10またはIL-10バリアント分子、ならびに融合タンパク質のC末端にコンジュゲートされた少なくとも1つのIL-2分子を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0247】
67.C末端が、IL-10、IL-10バリアント分子、IL-6、IL-4、IL-1、IL-2、IL-3、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-15、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、GM-CSF、G-CSF、インターフェロン-α、-β、-γ、TGF-β、または腫瘍壊死因子-α、-β、塩基性FGF、EGF、PDGF、IL-4、IL-11、またはIL-13をさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0248】
68.融合タンパク質が、一本鎖可変断片(scFv)スキャフォールド上に作製される、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0249】
69.融合タンパク質が、ダイアボディスキャフォールド上に作製される、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0250】
70.融合タンパク質が、Fabスキャフォールド上に作製される、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0251】
71.融合タンパク質が、融合タンパク質の第1の末端にコンジュゲートされた少なくとも1つのIL-10またはIL-10バリアント分子の単量体と、融合タンパク質の第2の末端にコンジュゲートされた少なくとも1つのサイトカインまたはその単量体と、リンカーまたはスペーサーとを有する別の融合タンパク質と複合体を形成し、
リンカーまたはスペーサーが、第1および第2の末端を接続する、
先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0252】
72.がんの処置を、それを必要とする対象において行う方法であって、対象に、先行する実施形態のいずれかに記載の操作された融合タンパク質を投与するステップを含む、方法。
【0253】
73.IBDまたはクローン病を処置または予防する方法であって、対象に、先行する実施形態のいずれかに記載の操作された融合タンパク質を投与するステップを含む、方法。
【0254】
74.対象において非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置または予防する方法であって、対象に、先行する実施形態のいずれかに記載の操作された融合タンパク質を投与するステップを含む、方法。
【0255】
75.CD8陽性T細胞を活性化する方法であって、先行する実施形態のいずれかに記載の操作された融合タンパク質を投与するステップを含む、方法。
【0256】
76.投与が、in vitro投与である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0257】
77.投与が、それを必要とする対象へのin vivo投与であり、対象が、がん、IBD、もしくはクローン病、またはNAFLDもしくはNASHと診断されている、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0258】
78.融合タンパク質が、融合タンパク質の第1の末端におけるIL-10またはIL-10バリアント分子、ならびに融合タンパク質の第2の末端におけるIL-2および/またはIL-15を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0259】
79.がんの処置を、それを必要とする対象において行う方法であって、対象に、二重特異性T細胞結合因子(BITE)、ならびにIL-10、IL-10バリアント分子、またはIL-10もしくはIL-10バリアント分子を含む操作された融合タンパク質を投与するステップを含む、方法。
【0260】
80.操作された融合タンパク質が、融合タンパク質の第1の末端にコンジュゲートされた少なくとも1つのIL-10またはIL-10バリアント分子と、融合タンパク質の第2の末端にコンジュゲートされた少なくとも1つのサイトカインと、リンカーまたはスペーサーとを含み、リンカーまたはスペーサーが、第1および第2の末端を接続する、先行する実施形態に記載の方法。
【0261】
81.IL-10、IL-10バリアント分子、またはIL-10もしくはIL-10バリアント分子を含む操作された融合タンパク質が、T細胞受容体複合体(CD3)シグナル伝達を増加および持続させる、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0262】
82.対象において炎症を処置または予防する方法であって、対象に、治療有効量のバリアントIL-10分子をコードするヌクレオチド配列を投与するステップを含む、方法。
【0263】
83.ヌクレオチド配列が、DNA、RNA、またはその改変されたバリアントである、先行する実施形態に記載の方法。
【0264】
84.ヌクレオチド配列が、ヌクレオシドに連結されたmRNAまたは改変されたmRNAである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0265】
85.ヌクレオチド配列が、細胞、組織、または生物内においてバリアントIL-10分子をin vivo発現させることができる、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0266】
86.ヌクレオチド配列が、細胞透過性ペプチド、疎水性部分、静電複合体、リポソーム、リガンド、リポソームナノ粒子、リポタンパク質(好ましくは、HDLもしくはLDL)、葉酸標的化リポソーム、抗体(例えば、葉酸受容体、トランスフェリン受容体)、標的化ペプチドによって、またはアプタマーによって、細胞、組織、または生物に送達される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0267】
87.対象において自己免疫疾患を処置または予防する方法であって、対象に、治療有効量のバリアントIL-10分子をコードするヌクレオチド配列を投与するステップを含む、方法。
【0268】
88.ヌクレオチド配列が、DNA、RNA、またはその改変されたバリアントである、先行する実施形態に記載の方法。
【0269】
89.ヌクレオチド配列が、ヌクレオシドに連結されたmRNAまたは改変されたmRNAである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0270】
90.ヌクレオチド配列が、細胞、組織、または生物内においてバリアントIL-10分子をin vivo発現させることができる、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0271】
91.ヌクレオチド配列が、細胞透過性ペプチド、疎水性部分、静電複合体、リポソーム、リガンド、リポソームナノ粒子、リポタンパク質(好ましくは、HDLもしくはLDL)、葉酸標的化リポソーム、抗体(例えば、葉酸受容体、トランスフェリン受容体)、標的化ペプチドによって、またはアプタマーによって、細胞、組織、または生物に送達される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0272】
92.対象においてIBDまたはクローン病を処置または予防する方法であって、対象に、治療有効量のバリアントIL-10分子をコードするヌクレオチド配列を投与するステップを含む、方法。
【0273】
93.ヌクレオチド配列が、DNA、RNA、またはその改変されたバリアントである、先行する実施形態に記載の方法。
【0274】
94.ヌクレオチド配列が、ヌクレオシドに連結されたmRNAまたは改変されたmRNAである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0275】
95.ヌクレオチド配列が、細胞、組織、または生物内においてバリアントIL-10分子をin vivo発現させることができる、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0276】
96.ヌクレオチド配列が、細胞透過性ペプチド、疎水性部分、静電複合体、リポソーム、リガンド、リポソームナノ粒子、リポタンパク質(好ましくは、HDLもしくはLDL)、葉酸標的化リポソーム、抗体(例えば、葉酸受容体、トランスフェリン受容体)、標的化ペプチドによって、またはアプタマーによって、細胞、組織、または生物に送達される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0277】
97.対象において非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置または予防する方法であって、対象に、治療有効量のバリアントIL-10分子をコードするヌクレオチド配列を投与するステップを含む、方法。
【0278】
98.ヌクレオチド配列が、DNA、RNA、またはその改変されたバリアントである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0279】
99.ヌクレオチド配列が、ヌクレオシドに連結されたmRNAまたは改変されたmRNAである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0280】
100.ヌクレオチド配列が、細胞、組織、または生物内においてバリアントIL-10分子をin vivo発現させることができる、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0281】
101.ヌクレオチド配列が、細胞透過性ペプチド、疎水性部分、静電複合体、リポソーム、リガンド、リポソームナノ粒子、リポタンパク質(好ましくは、HDLもしくはLDL)、葉酸標的化リポソーム、抗体(例えば、葉酸受容体、トランスフェリン受容体)、標的化ペプチドによって、またはアプタマーによって、細胞、組織、または生物に送達される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0282】
102.少なくとも2つの異なる抗体に由来する2つの可変領域に連結された単量体IL-10分子またはそのバリアントを含む、融合タンパク質であって、2つの可変領域が、第1の抗体に由来する重鎖可変(VH)領域が第2の抗体に由来する軽鎖可変(VL)領域に連結されたもの、または第1の抗体に由来するVLが第2の抗体に由来するVHに連結されたものとして構成される、融合タンパク質。
【0283】
103.単量体IL-10分子またはそのバリアントが、IL-10受容体に対する親和性を増加または減少させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0284】
104.単量体IL-10分子またはそのバリアントが、IL-10受容体に対する親和性を増加させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0285】
105.単量体IL-10分子またはそのバリアントが、配列番号3のエプスタインバーウイルス(EBV)IL-10ホモログである、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0286】
106.EBV IL-10ホモログが、31位、75位、または両方におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0287】
107.EBV-IL-10ホモログが、31位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0288】
108.EBV-IL-10ホモログが、75位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0289】
109.EBV-IL-10ホモログが、31位および75位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0290】
110.EBV-IL-10ホモログが、V31Lアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0291】
111.EBV-IL-10ホモログが、A75Iアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0292】
112.EBV-IL-10ホモログが、V31LおよびA75Iアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0293】
113.第1の抗体のVH領域が、抗HIVモノクローナル抗体に由来し、第2の抗体のVL領域が、抗エボラモノクローナル抗体に由来する、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0294】
114.第1の抗体のVH領域が、抗エボラモノクローナル抗体に由来し、第2の抗体のVL領域が、抗HIVモノクローナル抗体に由来する、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0295】
115.融合タンパク質が、配列番号24~28、29、33~51、61、63、65、または67から選択されるアミノ酸配列である、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0296】
116.融合タンパク質が、ダイアボディである、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0297】
117.融合タンパク質が、(a)第1の抗体のVH領域がそのカルボキシ末端において第2の抗体のVL領域のアミノ末端に連結され、これが、続いてIL-10もしくはそのバリアントの単量体のアミノ末端に連結されたもの、または
(b)IL-10分子もしくはそのバリアントがそのカルボキシ末端において第2の抗体のVH領域のアミノ末端に連結され、これが、続いて第1の抗体のVL領域のアミノ末端に連結されたもの
から選択される構成を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0298】
118.構成(a)および(b)が、一緒に、ダイアボディ複合体を形成する、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0299】
119.VH領域とVL領域との間にリンカーをさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0300】
120.アミノ酸配列が、配列番号24~28、29、33~53、61、63、65、67から選択される、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0301】
121.第1および第2の抗体が、対象における抗原性を低減させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0302】
122.イムノコンジュゲート複合体であって、i)第1の融合タンパク質であって、そのアミノ末端に第1の抗体の重鎖可変領域(VH)が第2の抗体の軽鎖可変領域(VL)に連結され、それがさらにIL-10またはそのバリアントの単量体に連結されたものを含む、第1の融合タンパク質と、ii)第2の融合タンパク質であって、そのアミノ末端にIL-10またはそのバリアントの単量体が第2の抗体のVHに連結され、それがさらに第1の抗体のVLに連結されたものを含む、第2の融合タンパク質とを含み、第1および第2の抗体のVHおよびVLが、会合して、ダイアボディとなり、IL-10の単量体が、機能性二量体IL-10分子を形成する、イムノコンジュゲート複合体。
【0303】
123.IL-10の単量体が、IL-10受容体に対する親和性を増加または減少させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0304】
124.IL-10分子が、IL-10受容体に対する親和性を増加させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0305】
125.IL-10の単量体が、配列番号3のエプスタインバーウイルス(EBV)IL-10ホモログである、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0306】
126.EBV IL-10ホモログが、31位、75位、または両方におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0307】
127.EBV-IL-10ホモログが、31位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0308】
128.EBV-IL-10ホモログが、75位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0309】
129.EBV-IL-10ホモログが、31位および75位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0310】
130.EBV-IL-10ホモログが、V31Lアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0311】
131.EBV-IL-10ホモログが、A75Iアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0312】
132.EBV-IL-10ホモログが、V31LおよびA75Iアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0313】
133.第1の抗体が、抗HIVモノクローナル抗体に由来し、第2の抗体が、抗エボラモノクローナル抗体に由来する、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0314】
134.第1の融合タンパク質が、配列番号24、26、28、35、38、41、46、48、または50から選択されるアミノ酸配列である、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0315】
135.第2の融合タンパク質が、配列番号25、27、29、36、39、42、47、49、または51から選択されるアミノ酸配列である、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0316】
136.VH領域とVL領域との間にリンカーをさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0317】
137.第1の融合タンパク質におけるIL-10の単量体が、そのアミノ末端によって、VL領域に連結されている、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0318】
138.第2の融合タンパク質におけるIL-10の単量体が、そのカルボキシ末端によって、VH領域に連結されている、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0319】
139.第1および第2の抗体が、対象における抗原性を低減させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0320】
140.第1の抗体に由来する重鎖可変領域(VH)、第2の抗体に由来する軽鎖可変領域(VL)、および単量体IL-10を含む第1のペプチド鎖と、第2の抗体に由来するVHおよびVLならびに単量体IL-10分子を含む第2のペプチド鎖とを含む、ダイアボディであって、第1の抗体のVH領域が、第1の抗体のVL領域と会合し、第2の抗体のVH領域が、第2の抗体のVL領域と会合し、それによって、それぞれのペプチド鎖の単量体IL-10分子が、機能性IL-10二量体を形成することが可能となる、ダイアボディ。
【0321】
141.単量体IL-10が、IL-10受容体に対する親和性を増加または減少させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0322】
142.単量体IL-10分子が、IL-10受容体に対する親和性を増加させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0323】
143.単量体IL-10分子が、配列番号3のエプスタインバーウイルス(EBV)IL-10ホモログである、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0324】
144.EBV IL-10ホモログが、31位、75位、または両方におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0325】
145.EBV-IL-10ホモログが、31位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0326】
146.EBV-IL-10ホモログが、75位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0327】
147.EBV-IL-10ホモログが、31位および75位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0328】
148.EBV-IL-10ホモログが、V31Lアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0329】
149.EBV-IL-10ホモログが、A75Iアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0330】
150.EBV-IL-10ホモログが、V31LおよびA75Iアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0331】
151.第1の抗体が、抗HIVモノクローナル抗体に由来し、第2の抗体が、抗エボラモノクローナル抗体に由来する、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0332】
152.第1のペプチド鎖が、配列番号24、26、28、35、38、41、46、48、または50から選択されるアミノ酸配列である、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0333】
153.第2のペプチド鎖が、配列番号25、27、29、36、39、42、47、49、または51から選択されるアミノ酸配列である、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0334】
154.VH領域とVL領域との間にリンカーをさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0335】
155.第1および第2の抗体が、対象における抗原性を低減させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0336】
156.IL-10の単量体が、そのカルボキシ末端によって、第1および第2のペプチド鎖に連結されている、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0337】
157.第1および第2の抗体が、対象における抗原性を低減させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のダイアボディ。
【0338】
158.i)第1の融合タンパク質であって、そのアミノ末端に、第1の抗体の重鎖可変(VH)領域およびそのアミノ末端によって連結された単量体IL-10分子を含む、第1の融合タンパク質と、ii)第2の融合タンパク質であって、そのアミノ末端に、第1の抗体の軽鎖可変領域(VL)に連結されたIL-10の単量体を含む、第2の融合タンパク質とを含む、イムノコンジュゲート複合体であって、第1の抗体のVH領域が、第1の抗体のVL領域と会合し、それによって、それぞれのペプチド鎖の単量体IL-10分子が、機能性IL-10二量体を形成することが可能となる、イムノコンジュゲート複合体。
【0339】
159.IL-10の単量体が、IL-10受容体に対する親和性を増加または減少させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0340】
160.IL-10分子が、IL-10受容体に対する親和性を増加させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0341】
161.IL-10の単量体が、配列番号3のエプスタインバーウイルス(EBV)IL-10ホモログである、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0342】
162.EBV IL-10ホモログが、31位、75位、または両方におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0343】
163.EBV-IL-10ホモログが、31位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0344】
164.EBV-IL-10ホモログが、75位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0345】
165.EBV-IL-10ホモログが、31位および75位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0346】
166.EBV-IL-10ホモログが、V31Lアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0347】
167.EBV-IL-10ホモログが、A75Iアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0348】
168.EBV-IL-10ホモログが、V31LおよびA75Iアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0349】
169.第1の抗体のVHおよびVL領域が、抗上皮成長因子受容体(EGFR)モノクローナル抗体に由来する、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0350】
170.第1の融合タンパク質が、第1の抗体のVH領域を単量体IL-10に連結させる第2の抗体に由来するVL領域をさらに含み、第2の融合タンパク質が、単量体IL-10をVL領域に連結させる第2の抗体に由来するVH領域をさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0351】
171.第2の抗体のVHおよびVL領域が、抗エボラモノクローナル抗体に由来する、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0352】
172.可変領域が、リンカーを通じてIL-10の単量体に連結されている、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0353】
173.第1および第2の抗体が、対象における抗原性を低減させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0354】
174.第1および第2の抗体が、対象における抗原性を低減させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載のイムノコンジュゲート複合体。
【0355】
175.IL-10の単量体に融合された第1の抗体の軽鎖可変(VL)および重鎖可変(VH)領域を含む、融合タンパク質であって、IL-10単量体が、互いに直接的に連結されている、融合タンパク質。
【0356】
176.IL-10単量体が、第1のIL-10単量体のカルボキシ末端から、第2のIL-10単量体のアミノ末端まで連結されている、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0357】
177.融合タンパク質が、アミノ末端からカルボキシ末端への様式で以下の:第1の抗体のVL領域が第1のIL-10単量体に連結され、これが第2のIL-10単量体に連結され、これが第1の抗体のVH領域に連結された構成を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0358】
178.第2の抗体のVH領域が第1の抗体のVL領域のアミノ末端に連結され、第2の抗体のVL領域が第1の抗体のVH領域のカルボキシ末端に連結されたものをさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0359】
179.IL-10単量体が、それぞれ、IL-10受容体に対する親和性を増加または減少させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0360】
180.IL-10単量体が、それぞれ、IL-10受容体に対する親和性を増加させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0361】
181.IL-10単量体が、配列番号3のエプスタインバーウイルス(EBV)IL-10ホモログである、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0362】
182.EBV IL-10ホモログが、31位、75位、または両方におけるアミノ酸置換を含む、請求項181に記載の融合タンパク質。
【0363】
183.EBV-IL-10ホモログが、31位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0364】
184.EBV-IL-10ホモログが、75位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0365】
185.EBV-IL-10ホモログが、V31Lアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0366】
186.EBV-IL-10ホモログが、A75Iアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0367】
187.第1の抗体が、抗エボラモノクローナル抗体である、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0368】
188.第1の抗体が、抗上皮成長因子受容体(EGFR)モノクローナル抗体である、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0369】
189.第1の抗体が、抗エボラモノクローナル抗体であり、第2の抗体が、抗EGFRモノクローナル抗体である、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0370】
190.疾患、障害、または状態の処置を、それを必要とする患者において行う方法であって、患者に、治療有効量のエプスタインバーウイルス(EBV)IL-10イムノコンジュゲート複合体を投与するステップを含み、イムノコンジュゲート複合体が、約60~155kDaの分子量を有し、治療有効量が、約0.5マイクログラム/キログラム~100マイクログラム/キログラムの範囲内であり、イムノコンジュゲートのEBV IL-10部分が、配列番号3に由来する、方法。
【0371】
191.イムノコンジュゲート複合体が、1ヶ月に1回、1ヶ月に2回、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、または1日1回投与される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0372】
192.バリアントEBV IL-10が、IL-10受容体への結合を増加または減少させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含むバリアントである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0373】
193.バリアントEBV IL-10が、配列番号3の31位、75位、または両方におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0374】
194.バリアントEBV IL-10が、V31Lアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0375】
195.EBV IL-10が、A75Iアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0376】
196.EBV IL-10が、V31LおよびA75Iアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0377】
197.イムノコンジュゲート複合体が、2つの融合タンパク質の複合体である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0378】
198.イムノコンジュゲート複合体が、i.第1の融合タンパク質であって、そのアミノ末端に、第1の抗体の重鎖可変領域(VH)が第2の抗体の軽鎖可変領域(VL)に連結され、それがさらにEBV IL-10の単量体のカルボキシ末端に連結されたものを含む、第1の融合タンパク質と、ii.第2の融合タンパク質であって、そのアミノ末端に、EBV IL-10の単量体が第2の抗体のVHに連結され、それがさらに第1の抗体のVLに連結されたものを含む、第2の融合タンパク質とを含み、第1および第2の抗体のVHおよびVLが、会合してダイアボディとなり、EBV IL-10の単量体が、機能性二量体EBV IL-10分子を形成する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0379】
199.第1の抗体および第2の抗体が、異なる抗体である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0380】
200.第1の抗体が、抗HIVモノクローナル抗体であり、第2の抗体が、抗エボラモノクローナル抗体である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0381】
201.融合タンパク質が、配列番号24~51から選択されるアミノ酸配列である、請求項202に記載の方法。
【0382】
202.第1の融合タンパク質が、配列番号24、26、28、35、38、41、46、48、または50から選択されるアミノ酸配列である、請求項202に記載の方法。
【0383】
203.第2の融合タンパク質が、配列番号25、27、29、36、39、42、47、49、または51から選択されるアミノ酸配列である、請求項202に記載の方法。
【0384】
204.イムノコンジュゲート複合体が、いずれかの末端に融合されたEBV IL-10単量体を含むダイアボディであり、EBV IL-10単量体が、会合して機能性EBV IL-10二量体となることができる、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0385】
205.疾患、障害、または状態が、がん、炎症性疾患、自己免疫疾患、またはコレステロールから選択される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0386】
206.EBV IL-10イムノコンジュゲート複合体が、少なくとも2~3日ごとの投与に基づいて、安定なIL-10血清濃度を維持するのに十分な量で投与される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0387】
207.イムノコンジュゲートが、TNFα分泌を抑制し、野生型IL-10と類似の濃度でIFNγ産生を誘導することができる、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0388】
208.EBV IL-10イムノコンジュゲート複合体が、野生型IL-10と類似の活性を有する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0389】
209.イムノコンジュゲート複合体が、
(a)第1の抗体のVH領域がN末端において第2の抗体のVL領域に連結され、それがIL-10分子のカルボキシ末端に連結されたものと、
(b)IL-10分子が第2の抗体のVH領域に連結され、それが第1の抗体のVL領域に連結されたもの
を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0390】
210.がんの処置を、それを必要とする患者において行う方法であって、患者に、第1の抗体に由来する重鎖可変領域(VH)、第2の抗体に由来する軽鎖可変領域(VL)、および単量体IL-10分子を有する第1のペプチド鎖と、第2の抗体に由来するVHおよびVLならびに単量体IL-10分子を有する第2のペプチド鎖とを含む、ダイアボディを投与するステップを含み、第1の抗体のVH領域が、第1の抗体のVL領域と会合し、第2の抗体のVH領域が、第2の抗体のVL領域と会合し、それによって、それぞれのペプチド鎖の単量体IL-10分子が、機能性IL-10二量体を形成することが可能となる、方法。
【0391】
211.単量体IL-10が、配列番号3のエプスタインバーウイルス(EBV)IL-10ホモログである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0392】
212.EBV IL-10が、配列番号3の31位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0393】
213.EBV IL-10が、V31Lアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0394】
214.第1の抗体のVH領域が、抗HIVモノクローナル抗体に由来し、第2の抗体のVL領域が、抗エボラモノクローナル抗体に由来する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0395】
215.第1のペプチド鎖が、配列番号28、35、38、46から選択されるアミノ酸配列である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0396】
216.第2のペプチド鎖が、配列番号29、36、39、47から選択されるアミノ酸配列である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0397】
217.VH領域とVL領域との間にリンカーをさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0398】
218.VHおよびVLが、それぞれ、患者における抗原性を低減させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0399】
219.第1の抗体が、抗HIVモノクローナル抗体に由来し、第2の抗体が、抗エボラモノクローナル抗体に由来する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0400】
220.ダイアボディが、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の:(a)第1のペプチドが、第1の抗体のVH領域が第2の抗体のVL領域に連結され、それがIL-10単量体またはそのバリアントのアミノ末端に連結されたものを含み、
(b)第2のペプチドが、IL-10単量体が第2の抗体のVH領域に連結され、それが第1の抗体のVL領域に連結されたものを含む、
構成を有する、2つのペプチド鎖により形成される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0401】
221.コレステロールの処置を、それを必要とする患者において行う方法であって、患者に、第1の抗体に由来する重鎖可変領域(VH)、第2の抗体に由来する軽鎖可変領域(VL)、および単量体IL-10を有する第1のペプチド鎖と、第2の抗体に由来するVHおよびVLならびに単量体IL-10分子を有する第2のペプチド鎖とを含む、コレステロールを低減させる量のダイアボディを投与するステップを含み、第1の抗体のVH領域が、第1の抗体のVL領域と会合し、第2の抗体のVH領域が、第2の抗体のVL領域と会合し、それによって、それぞれのペプチド鎖の単量体IL-10分子が、機能性IL-10二量体を形成することが可能となる、方法。
【0402】
222.単量体IL-10が、配列番号3のエプスタインバーウイルス(EBV)IL-10ホモログである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0403】
223.EBV IL-10が、配列番号3の31位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0404】
224.EBV IL-10が、V31Lアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0405】
225.第1の抗体のVH領域が、抗HIVモノクローナル抗体に由来し、第2の抗体のVL領域が、抗エボラモノクローナル抗体に由来する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0406】
226.第1のペプチド鎖が、配列番号24または50から選択されるアミノ酸配列である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0407】
227.第2のペプチド鎖が、配列番号25または51から選択されるアミノ酸配列である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0408】
228.VH領域とVL領域との間にリンカーをさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0409】
229.VHおよびVLが、それぞれ、患者における抗原性を低減させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0410】
230.第1の抗体が、抗HIVモノクローナル抗体に由来し、第2の抗体が、抗エボラモノクローナル抗体に由来する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0411】
231.ダイアボディが、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の:
(a)第1のペプチド鎖が、第1の抗体のVH領域が第2の抗体のVL領域に連結され、これが、IL-10単量体またはそのバリアントのアミノ末端に連結されたものを含み、
(b)第2のペプチドが、IL-10単量体またはそのバリアントが第2の抗体のVH領域に連結され、それが第1の抗体のVL領域に連結されたものを含む、
構成を有する、2つのペプチド鎖によって形成される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0412】
232.非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)または非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)の処置を、それを必要とする患者において行う方法であって、患者に、第1の抗体に由来する重鎖可変領域(VH)、第2の抗体に由来する軽鎖可変領域(VL)、および単量体IL-10を有する第1のペプチド鎖と、第2の抗体に由来するVHおよびVLならびに単量体IL-10分子を有する第2のペプチド鎖とを含む、NASHまたはNAFLD量のダイアボディを投与するステップを含み、第1の抗体のVH領域が、第1の抗体のVL領域と会合し、第2の抗体のVH領域が、第2の抗体のVL領域と会合し、それによって、それぞれのペプチド鎖の単量体IL-10分子が機能性IL-10二量体を形成することが可能となる、方法。
【0413】
233.単量体IL-10が、配列番号3のエプスタインバーウイルス(EBV)IL-10ホモログである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0414】
234.EBV IL-10が、配列番号3の31位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0415】
235.EBV IL-10が、V31Lアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0416】
236.第1の抗体のVH領域が、抗HIVモノクローナル抗体に由来し、第2の抗体のVL領域が、抗エボラモノクローナル抗体に由来する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0417】
237.第1のペプチド鎖が、配列番号24または50から選択されるアミノ酸配列である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0418】
238.第2のペプチド鎖が、配列番号25または51から選択されるアミノ酸配列である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0419】
239.VH領域とVL領域との間にリンカーをさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0420】
240.VHおよびVLが、それぞれ、患者における抗原性を低減させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0421】
241.第1の抗体が、抗HIVモノクローナル抗体に由来し、第2の抗体が、抗エボラモノクローナル抗体に由来する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0422】
242.炎症の処置を、それを必要とする患者において行う方法であって、患者に、第1の抗体に由来する重鎖可変領域(VH)、第2の抗体に由来する軽鎖可変領域(VL)、および単量体IL-10を有する第1のペプチド鎖と、第2の抗体に由来するVHおよびVLならびに単量体IL-10分子を有する第2のペプチド鎖とを含む、抗炎症量のダイアボディを投与するステップを含み、第1の抗体のVH領域が、第1の抗体のVL領域と会合し、第2の抗体のVH領域が、第2の抗体のVL領域と会合し、それによって、それぞれのペプチド鎖の単量体IL-10分子が、機能性IL-10二量体を形成することが可能となる、方法。
【0423】
243.単量体IL-10が、配列番号3のエプスタインバーウイルス(EBV)IL-10ホモログである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0424】
244.EBV IL-10が、配列番号3の75位におけるアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0425】
245.EBV IL-10が、V31Lアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0426】
246.第1の抗体のVH領域が、抗HIVモノクローナル抗体に由来し、第2の抗体のVL領域が、抗エボラモノクローナル抗体に由来する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0427】
247.第1のペプチド鎖が、配列番号26、41、または48から選択されるアミノ酸配列である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0428】
248.第2のペプチド鎖が、配列番号27、42、49から選択されるアミノ酸配列である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0429】
249.VH領域とVL領域との間にリンカーをさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0430】
250.VHおよびVLが、それぞれ、患者における抗原性を低減させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0431】
251.第1の抗体が、抗HIVモノクローナル抗体に由来し、第2の抗体が、抗エボラモノクローナル抗体に由来する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0432】
252.式(I~VII)
IL10-L1-X1-L1-X2-L1-IL10(式I)、(Z)n-X1-L2-Y2-L1-IL10(式II)、IL10-L1-Y1-L2-X2-(Z)n(式III)、X1-L2-X2-L1-IL10(式IV)、IL10-L1-X1-L2-X2(式V)、X1-L1-IL10(式VI)、IL10-L1-X2(式VII)、またはこれらの任意の組合せ
の融合タンパク質であって、
式中、
「IL-10」は、配列番号1、3、14、18、15、19、16、20、55、57、または59から選択される単量体配列であり、より好ましくは、「IL-10」は、配列番号55、57、または59からなり、
「L1」は、配列番号31または54のリンカーであり、
「L2」は、配列番号30のリンカーであり、
「X1」は、上皮成長因子受容体(EGFR);CD52;PD-L1、PD-1、TIM3、BTLA、LAG3、もしくはCTLA4などであるがこれらに限定されない様々な免疫チェックポイント標的;CD20;CD47;GD-2;HER2;EpCAM;ICAM(ICAM-1、-2、-3、-4、-5)、VCAM、FAPα;5T4;Trop2;EDB-FN;TGFβ Trap;MadCam、β7インテグリンサブユニット;α4β7インテグリン;α4インテグリンSR-A1;SR-A3;SR-A4;SR-A5;SR-A6;SR-B;dSR-C1;SR-D1;SR-E1;SR-F1;SR-F2;SR-G;SR-H1;SR-H2;SR-I1;SR-J1;HIV、またはエボラに特異的な第1の抗体から得られたVH領域であり、
「X2」は、X1と同じ抗体から得られたVL領域であり、
「Y1」は、上皮成長因子受容体(EGFR);CD52;PD-L1、PD-1、TIM3、BTLA、LAG3、もしくはCTLA4などであるがこれらに限定されない様々な免疫チェックポイント標的;CD20;CD47;GD-2;HER2;EpCAM;ICAM(ICAM-1、-2、-3、-4、-5)、VCAM、FAPα;5T4;Trop2;EDB-FN;TGFβ Trap;MadCam、β7インテグリンサブユニット;α4β7インテグリン;α4インテグリンSR-A1;SR-A3;SR-A4;SR-A5;SR-A6;SR-B;dSR-C1;SR-D1;SR-E1;SR-F1;SR-F2;SR-G;SR-H1;SR-H2;SR-I1;SR-J1;HIV、またはエボラに特異的な第2の抗体から得られたVH領域であり、
「Y2」は、Y1と同じ抗体から得られたVL領域であり、
XおよびYは、同じかまたは異なる抗体から得られ、
「Z」は、IL-10、IL-10バリアント分子、IL-6、IL-4、IL-1、IL-2、IL-3、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-15、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、GM-CSF、G-CSF、インターフェロン-α、-β、-γ、TGF-β、または腫瘍壊死因子-α、-β、塩基性FGF、EGF、PDGF、IL-4、IL-11、またはIL-13から選択されるサイトカインであり、
「n」は、0~2から選択される整数である、
融合タンパク質。
【0433】
253.式IIおよびIIIが、融合タンパク質複合体を形成することができ、式IIおよびIIIのそれぞれに由来するIL-10単量体が、機能性ホモ二量体IL-10またはそのバリアントを形成することができる、先行する実施形態に記載の融合タンパク質。
【0434】
254.式IIが、配列番号24、26、28、41、48、または50である、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0435】
255.式IIIが、配列番号25、27、29、42、49、または51である、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0436】
256.融合タンパク質複合体が、配列番号24と25との間、26と27との間、28と29との間、41と42との間、48と49との間、または50と51との間で形成される、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0437】
257.式IVおよびVが、融合タンパク質複合体を形成することができ、式IVおよびVのそれぞれに由来するIL-10単量体が、機能性ホモ二量体IL-10またはそのバリアントを形成することができる、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0438】
258.式IVが、配列番号35、38、46、48、または50である、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0439】
259.式Vが、配列番号36、39、47、49、または51である、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0440】
260.融合タンパク質複合体が、配列番号35と36との間、38と39との間、46と47との間、48と49との間、または50と51との間で形成される、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0441】
261.式VIおよびVIIが、融合タンパク質複合体を形成することができ、式VIおよびVIIのそれぞれに由来するIL-10単量体が、機能性ホモ二量体IL-10またはそのバリアントを形成することができる、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0442】
262.式Iが、配列番号33~34、40、43~44、45、52、53、61、63、65、または67である、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0443】
263.「n」が1以上であり、Zが、IL-2、Il-7、IL-12、IL-15、またはこれらの任意の組合せである、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0444】
264.Zが、X1、Y1、または両方のN末端にコンジュゲートされている、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質。
【0445】
265.がんを処置する方法であって、それを必要とする患者に、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質を含む組成物を投与するステップを含む、方法。
【0446】
266.融合タンパク質が、配列番号28~29、35~36、38~39、46~47、52、53、61、63、65、または67である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0447】
267.融合タンパク質が、タンパク質複合体を形成し、タンパク質複合体が、配列番号28と29との間、35と36との間、38と39との間、または46と47との間で形成される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0448】
268.組成物が、配列番号33、34、44、52、または53、61、63、65、または67の融合タンパク質を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0449】
269.融合タンパク質が、配列番号59のDV07からなるIL-10を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0450】
270.炎症性疾患を処置する方法であって、それを必要とする患者に、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質を含む組成物を投与するステップを含む、方法。
【0451】
271.融合タンパク質が、配列番号26~27、41~42、48、または49である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0452】
272.融合タンパク質が、タンパク質複合体を形成し、タンパク質複合体が、配列番号26と27との間、41と42との間、48と49との間で形成される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0453】
273.組成物が、配列番号37、40、または43の融合タンパク質を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0454】
274.融合タンパク質が、配列番号57のDV06からなるIL-10を含む、請求項18に記載の方法。
【0455】
275.脂質に基づく疾患を処置する方法であって、それを必要とする患者に、先行する実施形態のいずれかに記載の融合タンパク質を含む組成物を投与するステップを含む、方法。
【0456】
276.融合タンパク質が、配列番号24~25、50、または51である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0457】
277.融合タンパク質が、タンパク質複合体を形成し、タンパク質複合体が、配列番号24と25との間、50と51との間で形成される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0458】
278.組成物が、配列番号45の融合タンパク質を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0459】
【配列表】
【国際調査報告】