(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】末梢神経障害の処置のための局所製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20220420BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220420BHJP
A61K 31/5513 20060101ALI20220420BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220420BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220420BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220420BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220420BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220420BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20220420BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20220420BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20220420BHJP
A61K 31/51 20060101ALI20220420BHJP
A61K 31/525 20060101ALI20220420BHJP
A61K 31/4415 20060101ALI20220420BHJP
A61K 31/714 20060101ALI20220420BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20220420BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220420BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220420BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220420BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20220420BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K47/10
A61K31/5513
A61K47/20
A61K47/14
A61K47/22
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/107
A61K45/06
A61K33/06
A61K31/51
A61K31/525
A61K31/4415
A61K31/714
A61P25/02
A61P3/10
A61P35/00
A61P31/00
A61P31/18
A61P43/00 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552760
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(85)【翻訳文提出日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 US2020024504
(87)【国際公開番号】W WO2020198252
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521395919
【氏名又は名称】ウィンサンター・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンジェラ・ハンセン
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・キサック
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エム・ニューサム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
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4C086ZC42
4C086ZC55
(57)【要約】
態様は、DMSO及びポリアルキレングリコールアルキルエーテルと組み合わせたムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニスト又は塩若しくは誘導体の局所製剤に関する。局所製剤は、ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニストとしてピレンゼピンを含み得る。加えて、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、ポリエチレングリコールアルキルエーテルであり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニスト又はその塩若しくは誘導体、(ii)低揮発性溶媒、及び(iii)ポリアルキレングリコールアルキルエーテルを含む局所製剤。
【請求項2】
ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニストが、ピレンゼピン、ピレンゼピン遊離塩基、及びピレンゼピン塩からなる群から選択される、請求項1に記載の局所製剤。
【請求項3】
前記低揮発性溶媒がDMSOである、請求項1又は2に記載の局所製剤。
【請求項4】
前記ポリエーテル界面活性剤がポリエチレングリコールアルキルエーテルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項5】
脂肪酸エステルを更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項6】
脂肪酸エステルが乳酸ラウリルである、請求項5に記載の局所製剤。
【請求項7】
カプリン酸トリグリセリドを更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項8】
ベンジルアルコールを更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項9】
ジメチルイソソルビドを更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項10】
ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニストがピレンゼピン塩であり、組成物が20%未満のピレンゼピン塩を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項11】
ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニストが遊離塩基であり、組成物が10%未満のピレンゼピン遊離塩基を含む、請求項2に記載の局所製剤。
【請求項12】
約1~5%の間のピレンゼピン遊離塩基を含む、請求項11に記載の局所製剤。
【請求項13】
ゲル、ローション、クリーム、軟膏、及び液体製剤から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項14】
筋弛緩薬又はけいれん緩和化合物を更に含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項15】
筋弛緩剤又はけいれん緩和化合物が、マグネシウムイオン、ビタミンB1、B2、B6及び/又はビタミンB12から選択される、請求項12に記載の局所製剤。
【請求項16】
ヒトの睡眠を助ける化合物を更に含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項17】
麻酔性又は鎮痛性化合物を更に含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項18】
前記鎮痛性化合物がアミノエステル又はアミドである、請求項17に記載の局所製剤。
【請求項19】
前記鎮痛性化合物がカンナビノイドである、請求項17に記載の局所製剤。
【請求項20】
製剤の乾燥時間が約30秒~約30分の範囲である、請求項1に記載の局所製剤。
【請求項21】
製剤の粘度が約300mPa.s~約15,000mPa.sの範囲である、請求項1に記載の局所製剤。
【請求項22】
約40μg/cm
2~約120μg/cm
2の用量のピレンゼピンを含む、請求項1に記載の局所製剤。
【請求項23】
表皮を介して送達されるように製剤化された、約40μg/cm
2~約120μg/cm
2の用量のピレンゼピンである、請求項22に記載の局所製剤。
【請求項24】
約18時間~約24時間以内に表皮に送達されるように構成される、請求項23に記載の局所製剤。
【請求項25】
約22時間以内に表皮を介して送達されるように構成される、請求項24に記載の局所製剤。
【請求項26】
対象における末梢神経障害の1つ又は複数の症状を抑制する、改善する、その重症度を軽減する、治療する、その発症を遅延させる、又は予防する方法であって、請求項1に記載の局所製剤を対象に局所投与する工程を含む、方法。
【請求項27】
末梢神経障害が、I型糖尿病性末梢神経障害、II型糖尿病性末梢神経障害、真性糖尿病インスリン依存性末梢神経障害、外科的誘発性末梢神経障害、化学療法誘発性末梢神経障害、感染症誘発性末梢神経障害、及び特発性末梢神経障害からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
感染症がHIVである、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の優先権及び相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2019年3月26日に出願した米国仮出願第62/824060号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、患者における末梢神経障害の処置のための治療に関する。より詳細には、本発明は、末梢神経障害の治療用組成物に関し、組成物は、有効量の局所ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニストを含む。
【背景技術】
【0003】
末梢神経障害は、末梢神経系への機能的及び/又は構造的損傷を伴う状態である。末梢神経障害は、一般に、運動神経、感覚神経、又は自律神経の1つ又は組み合わせに影響を与える障害を指す。しびれ、うずき、疼痛、脱力感、筋けいれん、けいれん、及び勃起不全が一般的な不定愁訴である。末梢神経障害によって示される多種多様な障害はそれぞれ、同様に多種多様な原因に独自に起因する可能性がある。例えば、末梢神経障害は、遺伝的に獲得される可能性があり、全身性疾患、感染症(例えば、ウイルス性又は細菌性)に起因する可能性があり、術後合併症として現れる可能性があり、又は毒性物質によって誘発される可能性がある。神経毒性を引き起こすいくつかの毒性物質は、治療薬、抗腫瘍剤、食品又は医薬品中の夾雑物、並びに環境及び産業汚染物質である。人口の3%以上が末梢神経障害の影響を受けている場合がある。
【0004】
末梢神経障害としては、以下のものが挙げられる:真性糖尿病に関連する神経障害(糖尿病性神経障害)、HIV関連神経障害;栄養不足に関連する神経障害;脳神経麻痺;薬物誘発性神経障害;産業神経障害;リンパ腫性神経障害;骨髄腫性神経障害;多巣性運動神経障害;免疫介在性障害、慢性特発性感覚神経障害;癌性神経障害;急性疼痛自律神経障害;アルコール性神経障害;圧迫性神経障害;血管炎性/虚血性神経障害;単神経障害及び多発神経障害。その他の末梢神経障害は、レイノー現象(クレスト症候群を含む)、ハンセン病、並びにエリテマトーデス及び関節リウマチ等の自己免疫疾患から発生する場合がある。
【0005】
神経障害には、毒性物質によって引き起こされるものがある。これらの毒性物質には、治療剤、特に腫瘍性疾患の処置に使用されるものが含まれる場合がある。場合によっては、末梢神経障害はがん処置の主要な合併症であり、患者に投与することができる化学療法剤の投与量を制限する主な要因である。末梢神経障害を有する患者の処置選択肢は現在限られており、ほとんどの方法は一般に、例えば、痛みの知覚を低減させる、痛みに対する反応を低減させる、又は痛みへの耐性を高めるといった、痛みを管理するための鎮痛薬で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO/2012/055018A1
【特許文献2】WO/2015/089664A1
【特許文献3】米国特許第6,488,916号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Martindale - The complete drug reference、第38版、Pharmaceutical Press 2014年
【非特許文献2】CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第2巻、第7版(1997)
【非特許文献3】Percutaneous Penetration Enhancers (Eric W. Smith & Howard I. Maibach eds. 1995年)
【非特許文献4】Ghosh, T. K.ら、17 Pharm. Tech. 72 (1993)
【非特許文献5】Ghosh, T. K.ら、17 Pharm. Tech. 62 (1993)
【非特許文献6】Ghosh, T. K.ら、17 Pharm. Tech. 68 (1993)
【非特許文献7】CTFA Cosmetic Ingredient Handbook、第7版、1997年及び第8版、2000年
【非特許文献8】TetraQ, Bioanalytical Sample Analysis Report、11月、2018年
【非特許文献9】Noisakran S, Onlamoon N, Songprakhon Pら、Cells in Dengue Virus Infection In Vivo. Advances in Virology、2010年(5)論文ID: 164878, researchgate.net/publication/221830194_Cells_in_Dengue_Virus_Infection_In_Vivo、2018年11月19日アクセス
【非特許文献10】pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/4848#section=MeSH-Entry-Terms8月27日アクセス
【非特許文献11】Groenendaal W, von Basum G, Schmidt Kら、Quantifying the composition of human skin for glucose sensor development. J. Diabetes and Technology、2010年4(5)、1032~1040頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、実施形態は、ピレンゼピン等のムスカリン性M1受容体アンタゴニストの局所製剤による末梢神経障害の処置に関する。いくつかの実施形態では、製剤は、ムスカリン受容体サブタイプ1アンタゴニスト、及び局所ビヒクルを含む。局所ビヒクルは、低揮発性溶媒及びポリエーテル界面活性剤を含んでもよい。
【0009】
いくつかの実施形態は、局所製剤に関する。いくつかの実施形態では、局所製剤は、(i)ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニスト若しくは塩若しくは誘導体、(ii)DMSO、及び/又は(iii)ポリアルキレングリコールアルキルエーテルを含む。いくつかの実施形態では、ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニストは、ピレンゼピン、ピレンゼピン遊離塩基、又はピレンゼピン塩である。いくつかの実施形態では、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、ポリエチレングリコールアルキルエーテルである。いくつかの実施形態は、脂肪酸エステルを含む。いくつかの実施形態では、脂肪酸エステルは、乳酸ラウリルである。いくつかの実施形態は、ベンジルアルコールを含む。いくつかの実施形態は、ジメチルイソソルビドを含む。いくつかの実施形態では、ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニストは、ピレンゼピン塩又はピレンゼピン遊離塩基であり、組成物は、10%未満のピレンゼピン塩又はピレンゼピン遊離塩基をそれぞれ含む。いくつかの実施形態は、約1%~5%のピレンゼピン塩又はピレンゼピン遊離塩基を含む。いくつかの実施形態では、局所製剤は、局所ゲル製剤である。
【0010】
いくつかの実施形態は、対象における末梢神経障害を処置する方法に関する。方法のいくつかの実施形態は、本明細書に記載の局所製剤を対象に局所投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、局所製剤を、1日1回投与する。いくつかの実施形態では、局所製剤を、最初の7日間は第1の1日用量で、少なくとも次の7日間は第2の1日用量で投与し、第2の1日用量は、第1の1日用量の2倍の製剤を含む。いくつかの実施形態では、第1の投与量は、2.5mLの局所製剤であり、第2の投与量は、5.0mLの局所製剤である。
【0011】
ここで、本出願の実施形態は、以下の添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】水系ビヒクルにおける様々な溶媒中のピレンゼピンの送達パーセントを示す棒グラフである。流束研究は、基質としてブタの皮膚を使用して行われた。送達パーセントは、24時間にわたって皮膚を通過したピレンゼピン二塩酸塩の適用用量のパーセントを示す。
【
図2】DMSO系ビヒクルにおける水中の様々な界面活性剤中におけるピレンゼピンの送達パーセントを示す棒グラフである。研究は、基質としてブタの皮膚を使用して行われた。送達パーセントは、24時間にわたって皮膚を通過したピレンゼピン二塩酸塩の適用用量のパーセントを示す。
【
図3】水/DMSO/ジメチルイソソルビド/Brij78系中にて種々の浸透促進剤を含むピレンゼピンの送達パーセントを示す棒グラフである。研究は、基質としてブタの皮膚を使用して行われた。送達パーセントは、24時間にわたって皮膚を通過したピレンゼピン二塩酸塩の適用用量のパーセントを示す。
【
図4】水系ビヒクルに加えられた様々な賦形剤におけるピレンゼピンの送達パーセントを示す棒グラフである。示されているように、皮膚を通過するピレンゼピン二塩酸塩の流束速度が段階的に増加した。流束研究は、基質としてブタの皮膚を使用して行われた。送達パーセントは、24時間にわたって皮膚を通過したピレンゼピン二塩酸塩の適用用量のパーセントを示す。
【
図5】ゲルフォーマットにおける異なる浸透促進剤の有効性を決定するために、対照ゲルと比較した様々な製剤の送達用量を示す棒グラフである。流束研究は、基質として死体の皮膚を使用して行われた。結果を、μg/cm
2単位の総送達用量として示す。表皮及び真皮の濃度を、実験の最後、およそ20時間後に測定した。
【
図6】異なる皮膚層にわたるゲルフォーマットにおける異なる浸透促進剤の有効性を決定するために、対照ゲルと比較した様々な製剤の送達用量を示す棒グラフである。WinF54はゲル化せず、液体として残った。流束研究は、基質として死体の皮膚を使用して行われた。結果を、μg/cm
2単位の総送達用量として示す。表皮及び真皮の濃度を、実験の最後、およそ20時間後に測定した。
【
図7】ピレンゼピン二塩酸塩ゲルに対して比較された様々なピレンゼピン遊離塩基製剤を示す棒グラフである。結果を、μg/cm
2単位の総送達用量として示す。表皮及び真皮の濃度を、実験の最後、およそ40時間後に測定した。
【
図8】経時的な血漿中のピレンゼピンの量を示す折れ線グラフである。コホートによる全体の(平均)ピレンゼピン血漿プロファイル、ここで:「1」は製剤WinFB34であり;「2」は製剤WinF90であり、「3」は製剤WinFB100である。
【
図9】製剤WinF90を使用した、コホート2の参加者におけるピレンゼピンの濃度を示す棒グラフである。生検を、上部又は下部の左側ふくらはぎの皮膚から採取した。
【
図10】製剤WinF90の投与を受けた後の経時的な血漿中のピレンゼピンの濃度を示す折れ線グラフである。この図のデータは、製剤WinF90で14日間処置した後、コホート2のメンバーから採取している。
【
図11】製剤WinFB100を使用した、コホート3の参加者におけるピレンゼピンの濃度を示す棒グラフである。生検を、上部又は下部の左側ふくらはぎの皮膚から採取した。
【
図12】製剤WinFB100の投与を受けた後の経時的な血漿中のピレンゼピンの濃度を示す折れ線グラフである。この図のデータは、製剤WinFB100で14日間処置した後、コホート3のメンバーから採取している。
【
図13】コホート2(WinF90を受けたコホート)における未処置の皮膚の皮膚生検結果を示す棒グラフである。
【
図14】コホート3(WinFB100を受けたコホート)における未処置の皮膚の皮膚生検結果を示す棒グラフである。
【
図15】本明細書に開示される製剤の実施形態を使用した、22時間での皮膚生検における総送達用量(μg/cm
2)を示す棒グラフである。
【
図16】本明細書に開示される製剤の実施形態を使用した、4時間及び20時間での皮膚生検における総送達用量(μg/cm
2)、及び皮膚の表皮層及び真皮層における保持の比較を示すグラフである。
【
図17】本明細書に開示される製剤の実施形態を使用した、3時間、6時間、及び24時間での皮膚生検における経皮経路を介したピレンゼピンの総送達用量(μg/cm
2)、及び皮膚の表皮層及び真皮層における保持の比較を示すグラフである。
【
図18】本明細書に開示される製剤の実施形態を使用した、3時間、6時間、及び24時間での皮膚生検における経皮経路を介したピレンゼピンの総送達用量(μg/cm
2)、及び皮膚の表皮層及び真皮層における保持の比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態は、末梢神経障害を処置するための、ムスカリン受容体サブタイプ1アンタゴニストを含む局所医薬組成物、及び局所ビヒクルに関する。いくつかの実施形態では、局所ビヒクルは、低揮発性溶媒及びポリエーテル界面活性剤を含む。
【0014】
組成物は、末梢神経障害の処置又は予防のための医薬の製造に使用することができる。
【0015】
本発明のさらなる実施形態は、末梢神経障害に罹患している対象を処置するための方法であって、前記対象の皮膚の患部に、上で定義された有効量の組成物を適用する工程を含む、方法に関する。
【0016】
一実施形態では、本発明の局所医薬組成物を使用する方法は、患部を完全に覆うようにそれを適用することによるものである。適用の頻度は、定期的又は繰り返し、例えば、毎日であり得るが、一部の患者に対する適切な維持療法は、より少ない頻度の適用で達成され得る。
【0017】
いくつかの実施形態は、皮膚を介して大量には血液及び/又は全身に浸透しない局所製剤又は医薬組成物に関する。例えば、いくつかの実施形態の局所医薬組成物の局所投与によって、局所医薬組成物の医薬(ピレンゼピン等であるがこれに限定されない)の、局所医薬組成物が局所的に適用される対象の血液への曝露は、わずかに、最小限に、又は全く生じない。本明細書で使用される場合、最小限又はわずかな曝露は、血液中又は全身で測定される場合、1mlあたり30ナノグラム未満の医薬の濃度、又は1mlあたり20ナノグラム未満の活性成分の濃度を指す。一実施形態では、最小限又はわずかな曝露は、血液中又は全身で測定される場合、1mlあたり15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1ナノグラムの活性成分の濃度を指す。いくつかのそのような実施形態は、局所医薬組成物の医薬を結果として全身投与することなく、局所医薬組成物を局所的に適用する方法に関する。いくつかの他の実施形態では、局所医薬組成物の局所投与によって、局所医薬組成物の医薬の全身投与がもたらされる。
【0018】
いくつかの実施形態では、局所医薬組成物の局所投与によって、局所医薬組成物の医薬の10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~95%、又は95~100%が、(例えば、血流に入ることなく)局所医薬組成物が局所的に適用される対象の皮膚に保持されるか、又は皮膚によって捕捉されることになる。いくつかの実施形態では、皮膚以外の領域への局所医薬組成物の局所投与によって、局所製剤の医薬のほとんど又はすべてが、局所製剤が適用される領域によって保持又は捕捉されることになる。したがって、いくつかの実施形態は、患者又は対象に安全に投与され、患者又は対象の血流を通って移動することなく局所医薬組成物が局所的に適用される部位に、又はその近くに保持される局所医薬組成物に更に関する。いくつかの実施形態では、局所医薬組成物の医薬は、対象への局所医薬組成物の局所投与時に、対象の間質を通って移動する。他の実施形態では、局所医薬組成物の医薬は、対象への局所医薬組成物の局所投与時に、対象の間質を通って移動しない。
【0019】
M1アンタゴニストを含有する培養培地中で、正常及び糖尿病ラットから切除された成体及び若年ニューロンを培養することによって、切除されたニューロンからの神経突起伸長が刺激されることが以前に発見された。更に、糖尿病マウスにおける種々の皮膚標的に対する及び皮膚標的へのピレンゼピンの局所適用によって:(i)運動神経伝導速度における異常を予防し、(ii)表皮内神経線維の喪失を予防しかつ反転させ、(iii)表皮下神経叢の喪失を予防し、(iv)触覚異痛症を予防し、(v)温痛覚障害の発症を予防しかつ反転させた。例えば、PCT出願番号WO/2012/055018A1、Therapeutic Compositions For Diabetic Symmetrical Polyneuropathy;及びWO/2015/089664A1、Methods And Compositions For Treatment Of Peripheral Neuropathiesを参照のこと。
【0020】
ムスカリン受容体サブタイプのうちのあるサブタイプ(例えば、M1R)を他のサブタイプと区別する1型ムスカリン受容体(M1R)に対する複数の選択的アンタゴニストは、同様の影響を有することが示された。より一般的には、ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニストは、表皮内神経線維の喪失及び温痛覚障害を反転させるように思われる。
【0021】
本明細書で使用される場合、ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニストは、ニューロン及び他の細胞の原形質膜に見られるムスカリン性アセチルコリン受容体の活性及び/又は機能を低下させる薬剤である。ムスカリン性アセチルコリン受容体は、感覚ニューロン、副交感神経系の節後線維、及び隣接領域における細胞内でシグナルカスケードを開始するシグナル伝達分子として機能するケラチノサイトを含むいくつかの細胞型から放出されるアセチルコリンによって刺激される。中枢神経系の機能不全、肺疾患、及び胃の病気等の病気の処置に有用な周知のムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニストは、とりわけ、アトロピン、スコポラミン、テレンゼピン、ヒヨスチン、ヒヨスチアミン、イプラトロピウム、トロピカミド、シクロペントレート、グリコピロレート、4-ジフェニルアセトキシ-1,1-ジメチルピペリジニウム、o-メトキシ-シラ-ヘキソシクリウム(o-mehoxy-sila-hexocyclium)、キニジン、オキシフェノニウム、オルフェナドリン、オキシブチニン、オキシフェノニウム、エメプロニウム、メチキセン、プロシクリジン、プロパンテリン、4-フルオロヘキサヒドロシラジフェニドール(4-fluorhexahydrosiladifenidol)、オクチロニウム、キヌクリジニルベンジレート、ブクリジン、クリジニウム、シプロヘプタジン、イミダフェナシン、クロルプロマジン、シクリミン、ドキセピン、トラジン、ドキシラミン、エスシタロプラム、フルペンチキソール、メタンテリン、メペンゾレート、ハロペリドール、トルテロジン、ベナクチジン、ベンズトロピン、フェソテロジン(フマレート)、エトプロパジン、トロスピウム、ソリフェナシン、ガラミン、ビペリデン、ジシクロミン、デキセチミド、ヘキサヒドロシラジフェニドール、VU0255035によって例示される。
【0022】
一実施形態では、本発明は、三環式ムスカリン性サブタイプ1(M1)アンタゴニスト、特に、ベンゼン環及び5若しくは6員芳香環、例として第2のベンゼン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、若しくはピリダジン環に縮合したアゼピン又はジアゼピン環を含有する複素環式化合物に関する。このような化合物としては、ジベンザゼピン(イミノスチルベン)又はジベンザジアゼピン(dibenzadiazepine)、テレンゼピン等のチエノベンゾジアゼピン、又はピレンゼピン等のピリジンベンゾジアゼピン、及び他のM1アンタゴニストが含まれる。一実施形態では、本発明は、ムスカリン性サブタイプ1受容体に対してより高い選択性を有するM1選択的アンタゴニストに関する。
【0023】
いくつかの選択的M1アンタゴニストは、神経突起伸長に対してピレンゼピン又はテレンゼピンによって示されるものと同様の有益な活性を呈することが見出された。これらの化合物のいくつかは、M1Rの選択性がより高くなっている。例えば、テレンゼピンは、三環式構造が変更されているが、ピペラジン側鎖が変更されていないピレンゼピンの類似体である。チアジアゾール誘導体であるVU0255035は、M2、M3、M4、及びM5受容体と比較してM1Rに対して75倍選択的である。新世代のM1Rアンタゴニストの中には、PD150714及びスピロトラミンを含むいくつかの有望な中枢活性M1Rアンタゴニストがある。
【0024】
典型的には、M1アンタゴニスト濃度は、組成物の総質量に対して、0.01wt.%~20.0wt.%の範囲に、又は例えば、0.5wt.%~15wt.%の範囲に、又は1.0wt.%~10wt.%の範囲にある。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、M1アンタゴニストは、ピレンゼピン又はその塩である。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、ピレンゼピン又はその塩は、ピレンゼピン遊離塩基の形態である。
【0027】
ピレンゼピン遊離塩基濃度は、組成物の総質量に対して、0.01wt.%~20.0wt.%の範囲に、又は例えば、0.5wt.%~15wt.%の範囲に、又は1.0wt.%~10wt.%の範囲にあり得る。ピレンゼピン遊離塩基濃度はまた、組成物の総質量に対して、0.1wt.%~5.0wt.%の範囲に、又は例えば、0.25wt.%~3wt.%の範囲に、又は1wt.%~2wt.%の範囲にあり得る。いくつかの実施形態では、ピレンゼピン遊離塩基濃度は、製剤のおよそ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20質量パーセントの最終濃度である。他の実施形態では、ピレンゼピン遊離塩基濃度は、製剤の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20質量パーセント以下の最終濃度であってもよい。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、ピレンゼピン又はその塩は、ピレンゼピン二塩酸塩の形態である。
【0029】
いくつかの実施形態では、ピレンゼピン二塩酸塩濃度は、組成物の総質量に対して、0.01wt.%~20.0wt.%の範囲に、又は例えば、0.5wt.%~15wt.%の範囲に、又は1.0wt.%~10wt.%の範囲にある。他の実施形態では、ピレンゼピン二塩酸塩濃度は、組成物の総質量に対して、0.1wt.%~5.0wt.%の範囲に、又は例えば、0.25wt.%~3wt.%の範囲に、又は1wt.%~2wt.%の範囲にある。いくつかの実施形態では、ピレンゼピン二塩酸塩濃度は、製剤のおよそ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20質量パーセントの最終濃度である。他の実施形態では、ピレンゼピン二塩酸塩濃度は、製剤の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20質量パーセント以下の最終濃度であってもよい。
【0030】
本明細書で使用される場合、「神経障害」という用語は、神経機能不全を引き起こす神経組織の任意の病状又は異常を含む。破壊された1つ又は複数の神経の機能は、神経を通る電流の流量を伴う場合があり、神経の異所性発火(刺激がない場合の発火)を伴う場合があり、又は刺激に応じて神経の不適当若しくは不適切な発火を伴う場合がある。本明細書で使用される末梢神経障害は、末梢神経への損傷に起因する障害として定義される。末梢神経障害は、神経の疾患によって、又は全身性の病気の結果として、獲得され、引き起こされる場合がある。
【0031】
末梢神経障害を引き起こし、誘発し、又は末梢神経障害に関連する複数の要因があり得、本発明の範囲内に含まれるのは、糖尿病、感染症、毒性物質、化学療法剤、アルコール依存症、栄養欠乏、全身性/代謝障害、麻痺、自己免疫障害、遺伝性又は遺伝的障害、がん及び腫瘍に関連する末梢神経障害、圧迫性神経障害;血管炎性/虚血性神経障害;単神経障害及び多発神経障害、である。末梢神経障害はまた、勃起不全に関連している。さらなる実施形態では、末梢神経障害は、術後合併症として現れる。
【0032】
神経障害/神経障害(複数)という用語の範囲内に含まれるのは、例として:尿毒症;小児胆汁うっ滞性肝疾患;慢性呼吸不全;アルコール;多臓器不全;敗血症;低アルブミン血症;好酸球増多筋肉痛症候群;低血糖;ビタミン又は栄養欠乏(例えば、B-12欠乏症、ビタミンA欠乏症、ビタミンE欠乏症、ビタミンB1欠乏症);原発性胆汁性肝硬変;高脂血症;感覚性神経周囲炎;アレルギー性肉芽腫性血管炎;過敏性血管炎;ベル麻痺、ウェゲナー肉芽腫症;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス;混合性結合組織病;強皮症;全身性血管炎;急性トンネル症候群;汎自律神経失調症;甲状腺機能低下症;慢性閉塞性肺疾患;先端巨大症;吸収不良(スプルー、セリアック病);癌腫(感覚、感覚運動、後期及び脱髄);リンパ腫(ホジキンリンパ腫を含む)、真性多血症;多発性骨髄腫(溶解性、骨硬化性、又は孤立性形質細胞腫);熱帯性ミエロニューロパチー;悪性貧血、チャーグ-ストラウス症候群;脳神経麻痺;薬物誘発性神経障害;産業神経障害;リンパ腫性神経障害;骨髄腫性神経障害、慢性特発性感覚神経障害;癌性神経障害;急性疼痛自律神経障害;圧迫性神経障害;単神経障害及び多発神経障害;又は糖尿病、のような疾患に関連する神経障害である。
【0033】
糖尿病性神経障害は、糖尿病性末梢神経障害の最も一般的な形態の1つである。したがって、一実施形態は、糖尿病性末梢神経障害又は糖尿病性神経障害である。糖尿病性神経障害は、1型(インスリン依存性)糖尿病、2型(インスリン非依存性)糖尿病、又はその両方に関連する糖尿病又は前糖尿病であり得ることが明確に理解される。
【0034】
他の実施形態では、末梢神経障害は、薬物、工業用化学物質又は環境毒素等の毒性物質によって誘発されるか、又はそれによる二次的影響である。例えば、末梢神経障害は、化学療法剤、例として、パクリタキセル(又は他のタキサン誘導体)、アルカロイド、例としてビンクリスチン又はビンブラスチン、白金化合物、例としてシスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチン、トポイソメラーゼ阻害剤、ブレオマイシン等のインターカレーター、又はクロラムフェニコール、コルヒチン、ダプソン、ジスルフィラム、アミオダロン、金、イソニアジド、ミソニダゾール、ニトロフラントイン、ペルヘキシリン、プロパフェノン、ピリドキシン、フェニトイン、シンバスタチン、タクロリムス、サリドマイド、シクロホスファミド若しくはザルシタビン、等の薬物、感染症の処置に使用される薬剤、例としてストレプトマイシン、ジダノシン、もしくザルシタビン、又は任意の他の化学毒性物質、例としてアクリルアミド、ヒ素、二硫化炭素、ヘキサカーボン、鉛、水銀、白金、有機リン酸塩、タリウム、若しくはアルコールによって引き起こされる可能性がある。末梢神経障害を引き起こす場合があるいくつかの他の薬物は:
・抗アルコール薬(ジスルフィラム)
・抗けいれん剤フェニトイン(Dilantin(登録商標))
・がん治療薬(シスプラチン)
・ビンクリスチン
・心臓又は血圧の薬(アミオダロン)
・ヒドララジン
・ペルヘキシリン
・感染対策薬(メトロニダゾール、Flagyl(登録商標)、フルオロキノロン:シプロフロキサシン(Cipro(登録商標))、ゲミフロキサシン(Factive(登録商標))、レボフロキサシン(Levaquin(登録商標))、モキシフロキサシン(Avelox(登録商標))、ノルフロキサシン(Noroxin(登録商標))、及びオフロキサシン(Floxin(登録商標))。)
・ニトロフラントイン
・サリドマイド
・TNF遮断剤(Humira(登録商標))
・INH(イソニアジド)
・皮膚病処置薬(ダプソン)
を含む。
【0035】
別の実施形態では、全身性又は代謝性疾患によって引き起こされる末梢神経障害は、糖尿病性又は前糖尿病性神経障害、後天性原発性脱髄性神経障害、遠位対称性感覚多発神経障害、遠位対称性感覚運動性多発神経障害、血管炎性神経障害、感染性神経障害、特発性神経障害;免疫性神経障害;栄養関連神経障害、腎不全又は肝不全、及び腫瘍随伴神経障害からなる群から選択される。
【0036】
他の実施形態では、末梢神経障害は、感染又は感染症、例として、らい病、ライム病、HIV若しくは後天性免疫不全症候群(AIDS)関連神経障害、ポリオ後症候群、単純ヘルペス及び帯状ヘルペス(別名 帯状疱疹(shingles));B型肝炎、C型肝炎、HIV、サイトメガロウイルス、又はジフテリアによって誘発される。
【0037】
一実施形態では、後天性原発性脱髄性神経障害等の免疫介在性には、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)、ギランバレー症候群/急性炎症性脱髄性多発神経障害(AIDP)、サルコイドーシス;血管炎性/虚血性神経障害(結節性多発動脈炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(ループス)、シェーグレン症候群等)、セリアック病(スプルー)、多巣性運動神経障害(MNN)、又はタンパク質異常(例として、単クローン性免疫グロブリン血症、アミロイドーシス、クリオグロブリン血症、マクログロブリン血症、POEMS等)に関連する末梢神経障害が含まれる。
【0038】
一実施形態では、末梢神経障害を引き起こす圧迫は、手根管症候群、肘又は手首の尺骨神経障害、膝の総腓骨神経、膝の脛骨神経、アミロイドーシス、及び坐骨神経からなる群から選択される。
【0039】
神経障害/神経障害(複数)という用語の範囲内には、遺伝性又は遺伝的後天性神経障害、例として腓骨筋萎縮(シャルコーマリートゥース病)遺伝性アミロイド神経障害、遺伝性感覚性神経障害(I型及びII型)、ポルフィリア又はポルフィリン神経障害、遺伝性圧脆弱性(神経障害)(HNPP)、ファブリー病、副腎脊髄神経障害、ライリーデイ症候群、デジュリーヌソッタス神経障害(遺伝性運動感覚神経障害-III)、レフサム病、クレスト症候群を含むレイノー病、クラッベ病、運動失調性毛細血管拡張性運動失調症、遺伝性チロシン血症、無アルファ(anapha)リポタンパク血症、無ベータリポタンパク血症、巨大軸索神経障害、異染性白質ジストロフィー、グロボイド細胞白質ジストロフィー、又はフリードライヒ運動失調症、も含まれる。
【0040】
本発明の組成物及び方法はまた、以下の疾患、外傷、若しくは状態に関連する、又はそれらによって誘発される神経障害を処置又は予防するために使用することができる:一般的な神経障害状態、例として末梢神経障害、幻肢痛、反射性交感神経性ジストロフィー、カウザルギー、脊髄空洞症、勃起不全、及び痛みを伴う瘢痕;身体の任意の場所での特定の神経痛;背中の痛み;糖尿病性神経障害;アルコール性神経障害;代謝性神経障害;炎症性神経障害;化学療法誘発性神経障害、ヘルペス性神経痛;外傷性歯痛;歯内歯痛;胸郭出口症候群;神経圧迫を伴う頸部、胸部、若しくは腰部神経根症;神経浸潤を伴うがん;外傷性剥離損傷;乳房切除術、外科的誘発開胸術疼痛;脊髄損傷;脳卒中;腹部-皮膚神経絞扼;神経組織の腫瘍;くも膜炎;断端痛;線維筋痛症;局所捻挫又は筋違い;筋膜性疼痛;乾癬性関節炎;結節性多発動脈炎;骨髄炎;神経損傷を伴う火傷;凍傷若しくは他の環境的誘発神経障害、エイズ関連疼痛症候群;結合組織障害、例として全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、多発性筋炎、及び皮膚筋炎;並びに炎症状態、例として急性炎症(例えば、外傷、手術、感染症)、又は慢性炎症(例えば関節炎及び痛風等)。
【0041】
本明細書で使用される場合、「担体」又は「ビヒクル」という用語は、局所薬物投与に好適な担体材料を指し、当技術分野で知られている任意のそのような材料、例えば、組成物の他の成分と有害な方法で相互作用しない液体、ゲル、溶媒、液体希釈剤、可溶化剤等、を含む。いくつかの担体又はビヒクルは、水、石油炭化水素、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、脂肪アルコールエーテル、脂肪アルコールエステル、C2~C8直鎖状若しくは分岐鎖状、飽和若しくは不飽和アルコール、ポリオール、芳香族アルコール、アルキレングリコールエーテル、アルキレングリコールエステル、天然ワックス及びシリコーン、又はそれらの混合物から選択され得る。好適な担体の例は、Martindale - The complete drug reference、第38版、Pharmaceutical Press 2014年に見出すことができる。
【0042】
一実施形態では、組成物は、低揮発性溶媒及びポリエーテル界面活性剤を含むビヒクル又は担体を含む。一実施形態では、低揮発性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒である。一実施形態では、代替の、又は前の実施形態に加えて、ポリエーテル界面活性剤は、ポリエチレングリコールアルキルエーテルである。
【0043】
一実施形態では、担体又はビヒクルは、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、脂肪アルコールエーテル、脂肪アルコールエステル、C2~C8直鎖状若しくは分岐鎖状、飽和若しくは不飽和アルコール、ポリオール、芳香族アルコール、アルキレングリコールエーテル、アルキレングリコールエステル、及び天然、又はそれらの混合物から選択される。
【0044】
本発明による局所医薬組成物は、他の周知の薬学的に及び/又は化粧用に許容される添加剤、例として、抗刺激剤、抗酸化剤、緩衝剤(pH調整剤)、キレート剤、皮膚軟化剤、防腐剤、可溶化剤、増粘剤、湿潤剤等、又はそれらの混合物を、任意選択で更に含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、システムにおける活性成分の溶解度を改善するために、空気力学的質量中央径(MMAD)を増加させるために、低揮発性成分を使用することができる。いくつかの実施形態では、低揮発性成分は、典型的には、高沸点(例えば、150℃~250℃の範囲)、及び/又は低蒸気圧(例えば、25℃で0.1kPa未満、又は0.05kPa未満の蒸気圧)。低揮発性成分の例としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸アスコルビル、トコフェロールエステル等のエステル;プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等のグリコール;並びに表面活性剤、例として飽和有機カルボン酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸)及び不飽和カルボン酸(例えば、オレイン酸若しくはアスコルビン酸)が、挙げられるが、これらに限定されない。例としては、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)若しくはジメチルアセトアミド(DMAc)、又は1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホロトリアミド(HMPT)、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、キシレン、プロピレングリコール、ピロリドン、グリセロール、1,4-ジオキサン、トリエタノールアミン、又はそれらの混合物、ミリスチン酸イソプロピル、ミグリオール若しくはグリセロールが挙げられる。
【0046】
低揮発性溶媒は、質量で0.1~60%w/w、1~50%w/w、又は10~40%w/wで変化し得る。
【0047】
本発明の医薬組成物及び剤形を形成するために使用することができる界面活性剤としては、親水性界面活性剤、親油性界面活性剤、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。すなわち、親水性界面活性剤の混合物を使用することができ、親油性界面活性剤の混合物を使用することができ、又は少なくとも1つの親水性界面活性剤と少なくとも1つの親油性界面活性剤との混合物を使用することができる。
【0048】
1つの界面活性剤は、一ナトリウム塩形態を含み得る化合物のナトリウム塩形態であり得る。好適なナトリウム塩界面活性剤は、高速重合、送達に好適な得られる小粒径、良好な重合収率、凍結融解及び貯蔵寿命安定性を含む安定性、改善された表面張力特性、並びに潤滑特性を含む所望の特性に基づいて選択され得る。
【0049】
界面活性剤は、医薬と非反応性であり、医薬、賦形剤、及び投与部位との間の表面張力を実質的に低下させる、任意の好適な非毒性化合物であり得る。界面活性剤としては、Mednique 6322及びEmersol 6321の商品名で入手可能なオレイン酸(from Cognis Corp.社製、Cincinnati、Ohio);塩化セチルピリジニウム(Arrow Chemical, Inc.社製、Westwood、N.J.製);Epikuron 200の商品名で入手可能な大豆レシチン(Lucas Meyer社製、Decatur、Ill.);Tween 20の商品名で入手可能なポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(ICI Specialty Chemicals社製、Wilmington、Del.);Tween60の商品名で入手可能なポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(ICI社製);Tween80の商品名で入手可能なポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(ICI社製);Brij 76の商品名で入手可能なポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(ICI社製);Brij 92の商品名で入手可能なポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(ICI社製);Tetronic 150 R1の商品名で入手可能なポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-エチレンジアミンブロックコポリマー(BASF社製);Pluronic L-92、Pluronic L-121及びPluronic F 68の商品名で入手可能なポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックコポリマー(BASF社製);Alkasurf CO-40の商品名で入手可能なヒマシ油エトキシレート(Rhone-Poulenc Mississauga社製、Ontario、Canada);及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
好適な親水性界面活性剤は、一般に、親水性-親油性バランス(HLB)値が少なくとも10であり得、一方、好適な親油性界面活性剤は、一般に、HLB値が約10以下であり得る。非イオン性両親媒性化合物の相対的親水性及び疎水性を特徴付けるために使用される経験的パラメータは、親水性-親油性バランス(「HLB」値)である。HLB値が低い界面活性剤は、親油性又は疎水性が高く、油中での溶解度が高く、HLB値が高い界面活性剤は、親水性が高く、水溶液中での溶解度が高くなる。親水性界面活性剤は、一般に、HLB値が約10を超える化合物、及びHLBスケールが一般に適用できない陰イオン性、陽イオン性、又は双性イオン性化合物であると考えられる。同様に、親油性(すなわち、疎水性)界面活性剤は、HLB値が約10以下の化合物である。しかし、界面活性剤のHLB値は、工業用、製薬用、及び化粧品用のエマルジョンの配合が可能となるように一般的に使用される大まかな指針にすぎない。
【0051】
親水性界面活性剤は、イオン性又は非イオン性のいずれかであり得る。好適なイオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム塩;フシジン酸塩;アミノ酸の脂肪酸誘導体、オリゴペプチド、及びポリペプチド;アミノ酸、オリゴペプチド、及びポリペプチドのグリセリド誘導体;レシチン及び水素化レシチン;リゾレシチン及び水素化リゾレシチン;リン脂質及びその誘導体;リゾリン脂質及びその誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;アルキル硫酸塩;脂肪酸塩;ドキュセートナトリウム;アシル乳酸;モノ-及びジグリセリドのモノアセチル化及びジアセチル化酒石酸エステル;サクシニル化モノ-及びジグリセリド;モノ-及びジグリセリドのクエン酸エステル;並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
前述の群内で、イオン性界面活性剤には、例として、レシチン;リゾレシチン;リゾリン脂質及びその誘導体;カルニチン脂肪酸エステル塩;アルキル硫酸塩;脂肪酸塩;ドキュセートナトリウム;アシル乳酸;モノ-及びジグリセリドのモノアセチル化及びジアセチル化酒石酸エステル;サクシニル化モノ-及びジグリセリド;モノ-及びジグリセリドのクエン酸エステル;及びそれらの混合物が含まれる。
【0053】
イオン性界面活性剤は、レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルセリン、PEG-ホスファチジルエタノールアミン、PVP-ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸の乳酸エステル、ステアロイル-2-ラクチレート、ステアロイルラクチレート、スクシニル化モノグリセリド、モノ/ジグリセリドのモノ/ジアセチル化酒石酸エステル、モノ/ジグリセリドのクエン酸エステル、コリルサルコシン、カプロエート、カプリレート、カプレート、ラウレート、ミリステート、パルミテート、オレエート、リシノレエート、リノレート、リノレネート、ステアレート、ラウリルサルフェート、テラセシルサルフェート(teracecyl sulfate)、ドキュセート、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、並びにこれらの塩及び混合物、のイオン化形態であり得る。
【0054】
親水性非イオン性界面活性剤としては、アルキルグルコシド;アルキルマルトシド;アルキルチオグルコシド;ラウリルマクロゴルグリセリド;ポリエチレングリコールアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリエチレングリコールアルキルフェノール等のポリオキシアルキレンアルキルフェノール;ポリオキシアルキレンアルキルフェノール脂肪酸エステル、例として、ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステル及びポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリグリセロール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリド、植物油、硬化植物油、脂肪酸、及びステロールからなる群の少なくとも1つのメンバーを含むポリオールの親水性エステル交換反応生成物;ポリオキシエチレンステロール、誘導体、及びそれらの類似体;ポリオキシエチル化ビタミン及びその誘導体;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;及びそれらの混合物;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、及びトリグリセリド、植物油、及び硬化植物油からなる群の少なくとも1つのメンバーを含むポリオールの親水性エステル交換反応生成物;を挙げることができるが、これらに限定されない。ポリオールは、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、又は糖質であり得る。
【0055】
他の親水性-非イオン性界面活性剤としては、PEG-10ラウレート、PEG-12ラウレート、PEG-20ラウレート、PEG-32ラウレート、PEG-32ジラウレート、PEG-12オレエート、PEG-15オレエート、PEG-20オレエート、PEG-20ジオレエート、PEG-32オレエート、PEG-200オレエート、PEG-400オレエート、PEG-15ステアレート、PEG-32ジステアレート、PEG-40ステアレート、PEG-100ステアレート、PEG-20ジラウレート、PEG-25グリセリルトリオレエート、PEG-32ジオレエート、PEG-20グリセリルラウレート、PEG-30グリセリルラウレート、PEG-20グリセリルステアレート、PEG-20グリセリルオレエート、PEG-30グリセリルオレエート、PEG-30グリセリルラウレート、PEG-40グリセリルラウレート、PEG-40パーム核油、PEG-50硬化ヒマシ油、PEG-40ヒマシ油、PEG-35ヒマシ油、PEG-60ヒマシ油、PEG-40硬化ヒマシ油、PEG-60硬化ヒマシ油、PEG-60トウモロコシ油、PEG-6カプレート/カプリレートグリセリド、PEG-8カプレート/カプリレートグリセリド、ポリグリセリル-10ラウレート、PEG-30コレステロール、PEG-25フィトステロール、PEG-30大豆ステロール、PEG-20トリオレエート、PEG-40ソルビタンオレエート、PEG-80ソルビタンラウレート、ポリソルベート20、ポリソルベート80、POE-9ラウリルエーテル、POE-23ラウリルエーテル、POE-10オレイルエーテル、POE-20オレイルエーテル、POE-20ステアリルエーテル、トコフェリルPEG-100サクシネート、PEG-24コレステロール、ポリグリセリル-10オレエート、Tween 40、Tween 60、スクロースモノステアレート、Kolliphor(登録商標)HS15、スクロースモノラウレート、スクロースモノパルミテート、PEG10-100ノニルフェノールシリーズ、PEG15-100オクチルフェノールシリーズ、及びポロキサマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
好適な親油性界面活性剤には、ほんの一例として、脂肪アルコール;グリセロール脂肪酸エステル;アセチル化グリセロール脂肪酸エステル;低級アルコール脂肪酸エステル;プロピレングリコール脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル;ステロール及びステロール誘導体;ポリオキシエチル化ステロール及びステロール誘導体;ポリエチレングリコールアルキルエーテル;糖エステル;糖エーテル;モノ-及びジグリセリドの乳酸誘導体;グリセリド、植物油、硬化植物油、脂肪酸及びステロールからなる群の少なくとも1つのメンバーを有するポリオールの疎水性エステル交換反応生成物;油溶性ビタミン/ビタミン誘導体;並びにそれらの混合物が含まれる。この群内で、親油性界面活性剤は、グリセロール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びそれらの混合物を含むか、又は植物油、硬化植物油、及びトリグリセリドからなる群の少なくとも1つのメンバーとのポリオールの疎水性エステル交換反応生成物である。
【0057】
界面活性剤は、その使用が別段に矛盾しない場合、本発明の任意の製剤において使用することができる。本発明のいくつかの実施形態では、界面活性剤を使用しないか、又は限られたクラスの界面活性剤を使用することが望ましい。本発明による局所製剤は、界面活性剤を含有しない可能性があり、又は実質的に含有しない可能性があり、すなわち、約0.0001質量%未満の界面活性剤を含有する可能性がある。これは、上記のようにクロモンを使用する場合に特に当てはまる。しかし、必要に応じて、製剤は、局所製剤において従来使用されている界面活性剤、例としてオレイン酸、レシチン、ソルビタントリオレエート、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロックコポリマー、ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレン/エチレンジアミンブロックコポリマー、エトキシル化ヒマシ油等、を含むことができ、界面活性剤の割合は、存在する場合、総配合物に対して、約0.0001~1質量%、特に約0.001~0.1質量%であり得る。他の好適な界面活性剤/乳化剤が、当業者に知られており、CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第2巻、第7版(1997)に列挙されている。
【0058】
他の好適な水性ビヒクルとしては、リンゲル液及び等張塩化ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。水性懸濁液としては、懸濁化剤、例としてセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン及びトラガカントガム、並びにレシチン等の湿潤剤を挙げてもよい。水性懸濁液に好適な防腐剤としては、p-ヒドロキシ安息香酸エチル及びp-ヒドロキシ安息香酸n-プロピルが挙げられる。
【0059】
好適な石油炭化水素、すなわち本発明による石油由来の鉱物油、パラフィン及びワックスは:固形パラフィン、流動パラフィン(流動ワセリン又は鉱油(Paraffinum Liquidum))、軽流動パラフィン(軽流動ワセリン又は液体流動パラフィン(Paraffinum Perliquidium))、白色軟パラフィン(白色ワセリン)、黄色軟パラフィン(黄色ワセリン)、大結晶性(macrocrystalline)パラフィンワックス(主に飽和C18~C30炭化水素と、少量のイソアルカン及びシクロアルカンからなる混合物であり、分子量250~450g/molの間で、室温では固体であるが、通常40℃~60℃の間の低い融点を有する)、微結晶性パラフィンワックス(通常の炭化水素に加えて、大量の、長いアルキル側鎖を有するイソアルカン及びナフテンを含有するC40~C55化合物からなり、イソアルカンは微結晶を形成し、微結晶性パラフィンワックスは500~800g/molの間の平均分子量を有し、室温では固体であり、60℃~90℃の間の融点を有する)又はその混合物である。例示的な石油炭化水素は、固形パラフィン、流動パラフィン、軽流動パラフィン、白色軟パラフィン又はそれらの混合物であり、例えば、流動パラフィン、白色軟パラフィン又はそれらの混合物である。
【0060】
本発明による好適な脂肪酸は、植物又は動物の脂肪及び油由来の、飽和又は不飽和の、精製又は合成された、C8~C24カルボン酸、例として、2-エチルヘキサン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ヒマシ油酸、ココナッツ酸、トウモロコシ酸、綿実酸、エライジン酸、エルカ酸、ガドレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、リノール酸、リノレン酸、亜麻仁酸、ミリスチン酸、オレイン酸、オレイン、オリーブ酸、オリーブかす、パーム酸、パーム核酸、パルミチン酸(セチル酸)、パルミトレイン酸、ピーナッツ酸、ペラルゴン酸、ペトロセリン酸、ナタネ酸、米糠酸、リシノール酸、ベニバナ酸、大豆酸、ステアリン酸、ヒマワリ種子酸、トール油酸、牛脂脂肪酸、ウンデカン酸、ウンデシレン酸、コムギ胚芽酸又はその混合物である。
【0061】
本明細書で使用される脂肪酸エステルは、上記の脂肪酸と任意の適切なアルコールとの間で形成される共有結合性化合物を表す。本発明による好適な脂肪酸エステルは、(i)脂肪及び油、(ii)アルキル脂肪エステル、(iii)アルコキシル化脂肪酸エステル、及び(iv)ソルビタン脂肪酸エステルから選択することができ-(i)脂肪及び油は、動物及び植物組織中に通常見られる脂肪酸のグリセリルエステル(トリグリセリド)であり、水素化されて不飽和が減少した又は除去されたものを含む。グリセリンと脂肪酸の合成的に製造されたエステル(モノ、ジ及びトリグリセリド)もまた含まれる。グリセリンの異なる位置をエステル化する脂肪酸は異なっていてもよく、位置的な組み合わせを含む、可能な組み合わせが大量に生じる。天然トリグリセリド中の異なる脂肪酸の位置は無秩序ではなく、脂肪の起源に依存する。より単純なトリグリセリドは、単独の脂肪酸により構成される。脂肪酸のグリセリルエステルは、例えば、合成、半合成、天然油、例えば、動物性脂肪及び油、例として牛脂、豚脂、骨油、水生動物の脂肪及び油(魚、例としてニシン、タラ又はイワシ;クジラ類等);及び植物性脂肪及び油、例としてアボカド油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ババスーパーム油、ボラージオイル、ピーナッツ油、キャノーラ油、ヘンプオイル、マリアアザミ油、ベニバナ油、ショクヨウガヤツリ油、ココナッツ油、ナタネ油、ブラッククミン油、コムギ胚芽油、ヒマワリ油、亜麻仁油、マカデミアアナッツ油、トウモロコシ油、クルミ油、オリーブ油及びその副生成物、例としてオリーブかす油、パーム油及びその一部分、例としてパームオレイン及びパームステアリン、メマツヨイグサ油、ローズヒップオイル、ヒマシ油、米糠油、アプリコット核油、綿実油、カボチャ種子油、パーム核油及びその一部分、例としてパーム核オレイン及びパーム核ステアリン、ブドウ種子油、ゴマ油、ココアバター、シアバター等からなる群から有利に選択し得る。グリセリルエステルの他の例としては、グリセリルモノベヘネート、グリセリルジベヘネート、グリセリルモノオレエート、グリセリルジオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルジステアレート、グリセリルモノパルミトステアレート及びグリセリルジパルミトステアレートが挙げられる。(ii)アルキル脂肪エステルは、上記の脂肪酸と、直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和のC1~C30アルコール、エチレングリコール又はプロピレングリコールとのエステルを表す。これらの脂肪酸エステルは、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピル、ステアリン酸n-ブチル、ラウリン酸n-ヘキシル、オレイン酸n-デシル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸イソノニル、イソノナン酸イソノニル、ラウリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、2-エチルヘキシルココエート、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、イソステアリン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイル、オレイン酸エルシル、エルカ酸エルシル、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールジカプリレート、プロピレングリコールモノパルミトステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールアルギネート、エチレングリコールモノパルミトステアレート、エチレングリコールモノステアレート、並びにそのようなエステルの合成、半合成及び天然混合物、例としてホホバ油(C18~C24鎖の一不飽和モノカルボン酸と、C10~C24長鎖の一不飽和モノアルコールのエステルの天然混合物)からなる群から有利に選択し得る。
【0062】
アルコキシル化脂肪酸エステルは、脂肪酸が、アルキレンオキシド又は予め形成されたポリマー性エーテルと反応した場合に形成される。得られた生成物は、反応条件によって、モノエステル又はジエステル又はこれら2つの混合物であってもよい。典型的な代表として、PEG-6イソステアレート、PEG-2ステアレート、PEG-4ステアレート、PEG-8ステアレート、PEG-12ステアレート、PEG-20ステアレート、PEG-40ステアレート、PEG-50ステアレート、PEG-100ステアレート、及びPPG-17ジオレエートが挙げられる。(iv)ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタンと1つ又は複数の上記の脂肪酸とのエステル化の反応生成物である。好適なソルビタン脂肪酸エステルの例としては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、及びソルビタントリステアレート、及びポリソルベート、例としてポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、又はポリソルベート85が挙げられる。
【0063】
本発明の好適な脂肪アルコールは、植物及び動物の脂肪及び油由来のC6~C24アルコール、例として2-オクチルドデカノール、2-エチルヘキサノイルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、カプリル酸アルコール、カプロイルアルコール、カプリン酸アルコール、ヒマシ油アルコール、セテアリルアルコール、パルミチル(セチル)アルコール、ココナッツアルコール、綿アルコール、デシルアルコール、エライジルアルコール、エルシルアルコール、ガドレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、リノレイルアルコール、亜麻仁アルコール、ミリスチルアルコール、オレインアルコール、オリーブかすアルコール、オレイルアルコール、オリーブアルコール、パームアルコール、パーム核アルコール、パルミトイルアルコール、ペトロセリンアルコール、ナタネアルコール、リシノレイルアルコール、ベニバナアルコール、大豆アルコール、ステアリルアルコール、ヒマワリアルコール、トール油アルコール、牛脂アルコール、トリデシルアルコール又はその技術的な等級の混合物、例としてセトステアリルアルコールである。
【0064】
本発明の好適な脂肪アルコールエーテルは、上記の脂肪アルコールとアルキレンオキシド、一般的にエチレンオキシド又はプロピレンオキシドとの反応から形成されるエーテルである。脂肪アルコールエーテルは、セテス-20、イソステアレス-10、ミレス-10、ラウレス-16、オレス-16、ポリオキシル6セトステアリルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ポリオキシル25セトステアリルエーテル、ポリオキシル2セチルエーテル、ポリオキシル10セチルエーテル、ポリオキシル20セチルエーテル、ポリオキシル4ラウリルエーテル、ポリオキシル9ラウリルエーテル、ポリオキシル23ラウリルエーテル、ポリオキシル2オレイルエーテル、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20オレイルエーテル、ポリオキシル2ステアリルエーテル、ポリオキシル10ステアリルエーテル、ポリオキシル21ステアリルエーテル、又はポリオキシル100ステアリルエーテルからなる群から有利に選択することができる。
【0065】
好適な脂肪アルコールエステルは、上で定義される脂肪アルコールと、直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和のC1~C5カルボン酸との反応の生成物である。脂肪アルコールエステルの例は、ラウリルアセテート、ミリスチルアセテート、セチルアセテート、ステアリルアセテート及びステアリルプロピオネートである。
【0066】
本発明の好適な芳香族アルコールは、好ましくは、(i)アリールアルカノール、(ii)アリールオキシアルカノール(グリコールモノアリールエーテル)、及び(iii)オリゴアルカノールアリールエーテルから選択される。(i)本発明により使用されるアリールアルカノールは、式Ar-(CHR)n-OHの式を有し、式中、Rは独立してH又はC1~C6アルキルを表し、nは整数、例えば1~10の間であり、又は、例えば1~6であり、又は1、2、3若しくは4である。Ar基は、置換又は非置換アリール基、例えばフェニル又はナフチルであり得る。アリールアルカノールの例は、ベンジルアルコール、3-フェニルプロパン-1-オール、フェネチルアルコール、ベラトリルアルコール(3,4-ジメトキシフェニルメチルアルコール)、及び2-メチル-1-フェニル-2-プロパノールである。(ii)本発明により使用されるアリールオキシアルカノールは、式Ar-O-(CHR)n-OHの式を有し、式中、Rは独立してH又はC1~C6アルキルを表し、nは整数、例えば2~10の間であり、又は2~6、又は2若しくは3である。Ar基は、置換又は非置換アリール基、例えばフェニル又はナフチルであり得る。本発明により使用されるアリールオキシアルカノールの例は、フェノキシエタノール、1-フェノキシプロパン-2-オール、2-フェノキシプロパン-1-オール、3-フェノキシプロパン-1-オール又はそれらの混合物である。(iii)オリゴアルカノールアリールエーテルとしては、例えば、フェノキシジエタノール、トリエタノール、及びオリゴエタノール、並びにフェノキシジプロパノール、トリプロパノール、及びオリゴプロパノールが挙げられる。
【0067】
本発明による好適なポリオールは、水溶性ポリオール、例として分子内に2つ以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールを含む。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、リボース、エリスロース、マルトース、マルチトース、マルトトリオース、スクロース、キシリトール、ソルビトール、トレイトール、エリスリトール、グリセロール、ポリグリセロール、及びデンプンアルコールが挙げられる。例示的ポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール、ポリグリセロール、及びそれらの混合物である。
【0068】
好適なアルキレングリコールエステルは、エチレングリコール又はプロピレングリコールと、上に定義されるC6~C24脂肪酸とのエステルである。アルキレングリコールエステルは、エチレングリコールモノパルミトステアレート、エチレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールジカプリレート、プロピレングリコールジカプリロカプレート、プロピレングリコールモノパルミトステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、又はプロピレングリコールアルギネートからなる群から有利に選択し得る。
【0069】
好適なアルキレングリコールエーテルは、エチレンオキシド(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル)、又はプロピレンオキシド(ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル)のポリマーである。アルキレングリコールエーテルは、PEG 200、PEG 400、PEG 540、PEG 600、PEG 900、PEG 1000、PEG 1450、PEG 1540、PEG 2000、PEG 3000、PEG 3350、PEG 4000、PEG 4600、PEG 8000、PPG-9、PPG-10、PPG-17、PPG-20、PPG-26、PPG-30、又はPPG-55からなる群から有利に選択し得る。
【0070】
本発明の好適な天然ワックスは、カンデリラワックス、カルナウバワックス、木蝋、エスパルトワックス、コルクワックス、グアルマワックス(guaruma wax)、ライスワックス、サトウキビワックス、オウリキュリーワックス(ouricury wax)、モンタンワックス、ミツロウ、セラックワックス、鯨蝋、羊毛ラノリン(ワックス)、尾脂ワックス、セレシンワックス、ピートワックス、オゾケライト並びに化学的に修飾されたワックス(硬ワックス)、例えばモンタンワックスエステル、フィッシャートロプシュ法により得られるワックス、水素化ホホバワックス及び合成ワックスである。
【0071】
本発明による好適なシリコーンは、環状及び/又は直鎖状シリコーンであり、以下のような構造要素によって一般的に特徴付けられるモノマーとして見出すことができ:ケイ素原子は、ここで一般的にR1~R4基で表される、等しい又は異なるアルキル又はアリール基で置換されていてもよい。
【0072】
本発明の、好適なシロキサンユニットを有する直鎖状シリコーンは、以下のような構造的要素によって一般的に特徴付けられ:ここで、ケイ素原子は一般的にR1~R4基で表される、等しい又は異なるアルキル又はアリール基(異なる基の数は必ずしも4に限らないことを意味する)で置換されていてもよく、mは2~200.000の値を取り得る。
【0073】
本発明の、好適な環状シリコーンは、以下のような構造的要素によって一般的に特徴付けられ:ここで、ケイ素原子は一般的にR1~R4基で表される、等しい又は異なるアルキル又はアリール基(異なる基の数は必ずしも4に限らないことを意味する)で置換されていてもよく、nは3/2~20の値を取り得る。nの分数値は、環中に存在するシロキサン基が奇数であり得ることを示す。具体例としては、式[(CH3)2SiO]x(式中、xは3~6である)を有する環状メチルシロキサン又は、式(CH3)2SiO[(CH3)2SiO]ySi(CH3)3(式中、yは0~5である)を有する、短い直鎖状のメチルシロキサンが挙げられる。
【0074】
いくつかの好適な環状メチルシロキサンは、固体で、沸点134℃で、式[(Me2)SiO]3で表されるヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3);沸点176℃で、2.3mm2/秒の粘度を有し、式[(Me2)SiO]4で表されるオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4);沸点210℃で、3.87mm2/秒の粘度を有し、式[(Me2)SiO]5で表される、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)(シクロメチコン)及び;沸点245℃で、6.62mm2/秒の粘度を有し、式[(Me2)SiO]6で表されるドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、である。
【0075】
いくつかの好適な短い直鎖状のメチルシロキサンは、沸点が100℃で、粘度が0~65mm2/秒であり、式Me3SiOMe3で表される、ヘキサメチルジシロキサン(MM);沸点が152℃で粘度が1.04mm2/秒であり、式Me3SiOMe2SiOSiMe3で表されるオクタメチルトリシロキサン(MDM);沸点が194℃で、粘度が1.53mm2/秒であり、Me3SiO(MeSiO)2SiMe3の式で表されるデカメチルテトラシロキサン(MD2M);沸点が229℃で、粘度が2.06mm2/秒であり、Me3SiO(Me2SiO)3SiMe3の式で表されるドデカメチルペンタシロキサン(MD3M);沸点が245℃で、粘度が2.63mm2/秒であり、Me3SiO(Me2SiO)4SiMe3の式で表される、テトラデカメチルヘキサシロキサン(MD4M);及び沸点が270℃、粘度が3.24mm2/秒で、Me3SiO(Me2SiO)5SiMe3の式で表される、ヘキサデカメチルヘプタシロキサン(MD5M)、である。
【0076】
更に、長鎖の直鎖状シロキサン、例としてフェニルトリメチコン、ビス(フェニルプロピル)ジメチコン、ジメチコン、ジメチコノール、シクロメチコン(オクタメチルシクロテトラシロキサン)、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ポリ(ジメチルシロキサン)、セチルジメチコン及びベヘノキシジメチコンもまた含まれる。
【0077】
加えて、シクロメチコン及びイソトリデシルイソノナノエート、並びにシクロメチコン及び2-エチルヘキシルイソステアレートの混合物もまた、本発明による好適なシリコーンである。
【0078】
極めて重要であるというわけではないが、生理学的に許容される局所ビヒクルにおける、本明細書に記載の組成物の活性成分の希釈及び/又は配合は、最終投与濃度を提供する上で重要かつ有用であり得る。組成物は、錠剤、カプセル、粉末、液体、及び懸濁液を含む、固体、半固体、又は液体の形態で供給することができる。したがって、本明細書に記載の組成物は、使用又は販売前にその後の希釈のための濃縮形態を包含することができる。組成物は、本明細書で更に詳述されるように、ゲル、ローション、クリーム、軟膏、及び液体を含むがこれらに限定されない、生理学的に許容される任意の局所賦形剤を含むことができる。本発明による局所医薬組成物は、クリーム、ゲル、オレオゲル、軟膏、ペースト、懸濁液、ローション、発泡体、スプレー、エアロゾル又は溶液の形態で製剤化することができる。一実施形態では、本発明は、クリーム、軟膏又はローション、シャンプー又は石鹸、他の局所的又は皮膚科学的ビヒクルの形態であり得る。
【0079】
米食品医薬品局(FDA)、医薬品評価研究センター(Drug Evaluation and Research)(CDER)データ標準マニュアル(Data Standards Manual)、剤形(バージョン08)は、軟膏を「通常、20%未満の水及び揮発性物質、並びにビヒクルとして50%を超える炭化水素、ワックス、又はポリオールを含有する半固体剤形であって、一般的に皮膚又は粘膜への外用である」、と定義している。
【0080】
米食品医薬品局(FDA)、医薬品評価研究センター(CDER)データ標準マニュアル、剤形(バージョン08)は、クリームを「通常、20%を超える水及び揮発性物質、及び/又はビヒクルとして50%未満の炭化水素、ワックス、又はポリオールを含有する半固体剤形であって、一般的に皮膚又は粘膜への外用である」、と定義している。
【0081】
本発明による局所医薬組成物は、他の周知の薬学的に及び/又は化粧品として許容される添加剤、例として、抗刺激剤、抗酸化剤、緩衝剤(pH調整剤)、キレート剤、皮膚軟化剤、浸透促進剤、防腐剤、可溶化剤、増粘剤、湿潤剤等、又はそれらの混合物等を、任意選択で更に含む。
【0082】
好適な抗刺激剤の例は、アロエベラ、カモミール、アルファ-ビサボロール、コラニチダ抽出物、緑茶抽出物、チャノキ油、甘草抽出物、バチルアルコール(α-オクタデセニルグリセリルエーテル)、セラキルアルコール(α-9-オクタデセニルグリセリルエーテル)、キミルアルコール(α-ヘキサデシルグリセリルエーテル)、パンテノール、アラントイン、カフェイン、又は他のキサンチン、グリチルリチン酸及びそれらの誘導体、並びにそれらの混合物である。
【0083】
使用される抗酸化剤は、化粧用及び/又は皮膚科学的な適用に好適であるか又は慣用される任意の抗酸化剤であり得る。好適な抗酸化剤は、アミノ酸(例えば、グリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)及びその誘導体、イミダゾール(例えば、ウロカニン酸)及びその誘導体、ペプチド、例としてD,L-カルノシン、D-カルノシン、L-カルノシン及びその誘導体(例えばアンセリン)、カルテノイド、カロテン(例えば、α-カロテン、β-カロテン、リコペン)及びその誘導体、リポ酸及びその誘導体(例えば、ジヒドロリポ酸)、オーロチオグルコース、プロピルチオウラシル及び他のチオール(例えば、チオレドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミン及びそのグリコシル、N-アセチル、メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチル、及びラウリル、パルミトイル、オレイル、γ-リノレイル、コレステリル、及びそれらのグリセリルエステル)及びそれらの塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、チオジプロピオン酸及びその誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシド及び塩)、及びごく少量の耐量(例えば、pmol~μmol/kg)のスルホキシイミン化合物(例えば、ブチオニンスルホキシイミン、ホモシステインスルホキシイミン、ブチオニンスルホン、ペンタ-、ヘキサ-ヘプタチオニンスルホキシイミン)、また、(金属)キレート剤(例えば、α-ヒドロキシ脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン)、α-ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸)、フミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリルビン、ビリベルジン、EDTA、EGTA及びその誘導体、不飽和脂肪酸及びその誘導体(例えば、γ-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸)、葉酸及びその誘導体、ユビキノン及びユビキノール並びにその誘導体、ビタミンC及び誘導体(例えば、パルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルMg、酢酸アスコルビル)、トコフェロール及び誘導体(例えば、酢酸ビタミンE)、及びベンゾインのコニフェリルベンゾエート、ルチン酸(rutinic acid)及びその誘導体、フェルラ酸及びその誘導体、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ノルジヒドログアイアック樹脂酸、ノルジヒドログアヤレチン酸、トリヒドロ
キシブチロフェノン、尿酸及びその誘導体、マンノース及びその誘導体、亜鉛及びその誘導体(例えばZnO、ZnSO4)、セレン及びその誘導体(例えばセレンメチオニン)、スチルベン及びその誘導体(例えばスチルベンオキシド、trans-スチルベンオキシド)、並びに本発明による好適な前記活性成分の誘導体(塩、エステル、エーテル、糖、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチド及び脂質)からなる群からのものを含み得る。
【0084】
本発明による局所用医薬組成物のpHを、局所投与に許容される範囲内にあるように、例えば3.0~6.0の範囲にあるように、若しくは3.5~5.0の範囲にあるように調整する任意の薬学的に許容される緩衝剤を、使用することができる。例えば、組成物中に、薬学的に許容される酸、例として酢酸、クエン酸、フマル酸、リン酸、塩酸、乳酸若しくは硝酸等又はその混合物を含む。本発明のある特定の組成物は、特にその目的のためのpH調整剤を含まずに、所望の範囲のpHを有することができることも理解されよう。しかし、典型的には、所望のpHを達成するために、組成物中に酸性緩衝系が存在する。酸性緩衝系は、酸味料及び緩衝剤を含む。好適な酸味料は当業者に知られており、例としては、酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、リン酸、乳酸及び硝酸等、並びにその混合物が挙げられる。好適な緩衝化剤もまた同様に当業者に知られており、例としては、メタリン酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0085】
本発明の組成物で使用し得る好適な皮膚軟化剤としては、例えば、ドデカン、スクアラン、コレステロール、イソヘキサデカン、イソノナン酸イソノニル、PPGエーテル、ワセリン、ラノリン、ベニバナ油、ヒマシ油、ココナッツ油、綿実油、パーム核油、パーム油、ピーナッツ油、大豆油、ポリオールカルボン酸エステル、その誘導体等、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0086】
一態様では、ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニストの局所投与又は経皮投与用の医薬組成物は、経皮又は局所送達用の1つ又は複数の浸透促進剤又は共溶媒を含み得る。浸透促進剤は、角質層を介した活性物質の拡散を助ける賦形剤である。多くの浸透促進剤はまた、組成物中のムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニストの熱力学的活性又は溶解度を増加させると考えられている共溶媒として機能する。浸透促進剤は、促進剤、補助剤、又は収着促進剤としても公知である。好適な浸透促進剤の例としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)、アラントイン、ウラゾール、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、デシルメチルスルホキシド、ポリエチレングリコールモノラウレート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノラウレート、グリセロールモノラウレート、レシチン、1-置換アザシクロヘプタン-2-オン、特に1-n-ドデシルシクラザシクロヘプタン-2-オン、アルコール、グリセリン、ヒアルロン酸、トランスクトール等、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ある特定の油性組成物(例えば、ある特定の植物油、例としてベニバナ油、綿実油及びトウモロコシ油)もまた、浸透促進性を呈し得る。
【0087】
別のクラスの浸透促進剤は、アルカノン、例としてN-ヘプタン、N-オクタン、N-ノナン、N-デカン、N-ウンデカン、N-ドデカン、N-トリデカン、N-テトラデカン、及びN-ヘキサデカンである。アルカノンは、角質層を変化させることにより、活性剤の浸透を促進すると考えられている。浸透促進剤のさらなるクラスは、アルカノールアルコール、例としてエタノール、プロパノール、ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、2-ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール及びベンジルアルコールである。低分子量アルカノールアルコール、すなわち炭素数が6以下のアルコールは、可溶化剤として作用することで、ある程度浸透を促進する可能性があり、一方、疎水性の高いアルコールは角質層から脂質を抽出することで拡散を促進する可能性がある。浸透促進剤のさらなるクラスは、脂肪アルコール、例としてオレイルアルコール、カプリルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、2-ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、及びリノレニルアルコールである。プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサントリオール、プロピレングリコールモノラウレート及びジエチレングリコールモノメチルエーテル(トランスクトール)を含むポリオールも、浸透を促進することができる。プロピレングリコール等の一部のポリオールは、アルファ-ケルチンを溶媒和し、水素結合部位を占有することによって浸透促進剤として機能し、それによって活性組織結合の量を減少させる可能性がある。
【0088】
別のクラスの浸透促進剤は、尿素、ジメチルアセトアミド、ジエチルトルアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルオクタミド、ジメチルデカミド、及び生分解性環状尿素(例えば、1-アルキル-4-イミダゾリン-2-オン)を含むアミドである。アミドは、浸透を促進する種々のメカニズムを有する。例えば、尿素等の一部のアミドは、角質層の水和を増加させ、角質溶解剤として作用し、親水性の拡散チャネルを作製する。対照的に、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミド等の他のアミドは、低濃度で、ケラチンへの分配を増加させる一方で、高濃度で、脂質の流動性を増加させ、脂質のパッケージングを破壊する。別のクラスの浸透促進剤は、ピロリドン誘導体、例として、1-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1-ラウリル-2-ピロリドン、1-メチル-4-カルボキシ-2-ピロリドン、1-ヘキシル-4-カルボキシ-2-ピロリドン、1-ラウリル-4-カルボキシ-2-ピロリドン、1-メチル-4-メトキシカルボニル-2-ピロリドン、1-ヘキシル-4-メトキシカルボニル-2-ピロリドン、1-ラウリル-4-メトキシカルボニル-2-ピロリドン、N-メチル-ピロリドン、N-シクロヘキシルピロリドン、N-ジメチルアミノプロピル-ピロリドン、N-ココアルキピロリドン、及びN-タロウアルキピロリドン、並びにN-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンの脂肪酸エステルを含む生分解性ピロリドン誘導体、である。部分的に、ピロリドン誘導体は、角質層のケラチンと皮膚構造の脂質との相互作用を通じて浸透を促進する。追加のクラスの浸透促進剤は、環状アミドであって、Azone(登録商標)としても公知である1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン(AzoneはEcho Therapuetics Inc.社、Franklin、MA、USAの登録商標である)、1-ゲラニルアザシクロヘプタン-2-オン、1-ファルネシルアザシクロヘプタン-2-オン、1-ゲラニルゲラニルアザシクロヘプタン-2-オン、1-(3,7-ジメチルオクチル)-アザシクロヘプタン-2-オン、1-(3,7,11-トリメチルドデシル)アザシクロヘプタン-2-オン、1-ゲラニルアザシクロヘキサン-2-オン、1-ゲラニルアザシクロペンタン-2,5-ジオン、及び1-ファルネシルアザシクロペンタン-2-オン、を含む。Azone(登録商標)等の環状アミドは、角質層の脂質構造に影響を与え、分配を増加させ、膜流動性を増加させることにより、活性剤の浸透を部分的に促進する。浸透促進剤の追加のクラスには、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンラウラミド及びその誘導体が含まれる。
【0089】
追加の浸透促進剤には、直鎖状脂肪酸、例としてオクタン酸、リノール酸、吉草酸、ヘプタン酸、ペラゴン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びカプリル酸が含まれる。直鎖状脂肪酸は、細胞間脂質二重層の選択的摂動を介して、部分的に浸透を促進する。加えて、オレイン酸等の一部の直鎖状脂肪酸は、脂質の相転移温度を低下させることによって浸透を促進し、それにより脂質の運動の自由度又は流動性を高める。イソ吉草酸、ネオペンタン酸、ネオヘプタン酸、ノナン酸、トリメチルヘキサン酸、ネオデカン酸、及びイソステアリン酸を含む分岐鎖状脂肪酸は、浸透促進剤のさらなるクラスである。追加のクラスの浸透促進剤は、脂肪族脂肪酸エステル、例としてオレイン酸エチル、n-酪酸イソプロピル、n-ヘキサノ酸イソプロピル、n-デカン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル(「IPM」)、パルミチン酸イソプロピル、及びミリスチン酸オクチルドデシルである。脂肪族脂肪酸エステルは、角質層の拡散係数及び/又は分配係数を増加させることにより、浸透を促進する。加えて、IPM等の特定の脂肪族脂肪酸エステルは、角質層上に直接作用し、リポソーム二重層に浸透して流動性を高めることにより、浸透を促進する。アルキル脂肪酸エステル、例として酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メチル、吉草酸メチル、プロピオン酸メチル、セバシン酸ジエチル、オレイン酸エチル、ステアリン酸ブチル、及びラウリン酸メチルは、浸透促進剤として作用することができる。アルキル脂肪酸エステルは、脂質の流動性を高めることにより、浸透を部分的に促進する。
【0090】
他の浸透促進剤は、胆汁酸塩、例として、コール酸ナトリウム、タウロコール酸のナトリウム塩、グリコール酸及びデオキシコール酸である。レシチンはまた、浸透を高める特性を有することがわかっている。追加のクラスの浸透促進剤はテルペンであり、これには、炭化水素、例としてd-リモネン、アルファ-ピネン及びベータ-カレン;アルコール、例としてアルファ-テルピネオール、テルピネン-4-オール、カルボル;ケトン、例としてアスカルボン、プレゴン、ピペリトン、及びメントン;オキシド、例としてシクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、アルファ-ピネンオキシド、シクロペンテンオキシド、及び1,8-シネオール;並びに油、例としてイランイラン、アニス、アカザ、及びユーカリが含まれる。テルペンは、細胞間脂質二重層を破壊して、角質層内の及び角質層にわたる活性及び開口極性経路の拡散性を高めることによって、浸透を部分的に促進する。有機酸、例としてサリチル酸及びサリチレート(そのメチル、エチル、プロピルグリコール誘導体を含む)、クエン酸、及びコハク酸は、浸透促進剤である。別のクラスの浸透促進剤は、2-ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン、及び2,6-ジメチル-ベータ-シクロデキストリンを含むシクロデキストリンである。シクロデキストリンは、親油性活性物質と包接複合体を形成し、水溶液中での溶解度を高めることにより、活性剤の浸透を促進する。
【0091】
局所製剤における浸透促進剤の使用の考察については、一般的に、Percutaneous Penetration Enhancers (Eric W. Smith & Howard I. Maibach eds. 1995年);Ghosh, T. K.ら、17 Pharm. Tech. 72 (1993);Ghosh, T. K.ら、17 Pharm. Tech. 62 (1993);Ghosh, T.K.ら、17 Pharm. Tech. 68 (1993)、を参照のこと、これらの引用はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。浸透促進剤は、薬理学的に不活性で、非毒性、非アレルギー性であり、迅速かつ可逆的な作用の開始を有し、本発明の組成物と適合しなければならない。
【0092】
微生物汚染を防止するための好適な防腐剤の例は、アルキルパラベン、特にメチルパラベン、プロピルパラベン、及びブチルパラベン;安息香酸ナトリウム;ブチル化ヒドロキシトルエン;ブチル化ヒドロキシアニソール;エチレンジアミン四酢酸;クロロブタノール;ベンジルアルコール;フェニルエチルアルコール;デヒドロ酢酸;ソルビン酸;ソルビン酸カリウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;及びそれらの混合物、である。一般的に利用される防腐剤の量は、選択された防腐剤によって異なる。
【0093】
可溶化剤の例は、例えば、以下の群のうちの少なくとも1つからの非イオン性界面活性剤である:直鎖状C8~C22脂肪アルコール、C12~C22脂肪酸及びアルキル基中に8~15個の炭素を含有するアルキルフェノールに、1~30モルのエチレンオキシド及び/又は0~5モルのプロピレンオキシドを付加した生成物;アルキル基中に8~22個の炭素を含有するアルキル及び/又はアルケニルオリゴグリコシド及びそのエトキシル化類似体;ヒマシ油及び/又は硬化ヒマシ油による1~15モルのエチレンオキシドの付加生成物;ヒマシ油及び/又は硬化ヒマシ油による15~60モルのエチレンオキシドの付加生成物;グリセロール及び/又はソルビタンと、12~22個の炭素を含有する不飽和又は飽和の直鎖状又は分岐鎖状脂肪酸及び/又は3~18個の炭素原子を含有するヒドロキシカルボン酸との部分エステル及び1~30モルのエチレンオキシドによるその付加生成物;アルコキシル化グリセリド及びアルコキシル化グリセリンの混合物、ポリグリセロール(平均自己縮合度2~8)、ポリエチレングリコール(質量平均分子量400~5000)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、糖アルコール(例えば、ソルビトール)、アルキルグルコシド(例えば、メチルグルコシド、ブチルグルコシド、ラウリルグルコシド)、及びポリグルコシド(例えば、セルロース)と、12~22個の炭素を含有する飽和及び/又は不飽和の直鎖状又は分岐鎖状脂肪酸及び/又は3~18個の炭素を含有するヒドロキシカルボン酸との部分エステル、及び1~30モルのエチレンオキシドによるそれらの付加生成物;ペンタエリスリトール、脂肪酸、クエン酸及び脂肪アルコールの混合エステル、及び/又は6~22個の炭素を含む脂肪酸、メチルグルコース及びポリオール、例えば、グリセロール又はポリグリセロールの混合エステル;モノ-、ジ-及びトリアルキルホスフェート及びモノ-、ジ-及び/又はトリ-PEG-アルキルホスフェート、並びにそれらの塩;ブロックコポリマー、例えばポリエチレングリコール-30ジポリヒドロキシステアレート;ポリマー乳化剤;ポリアルキレングリコール及びアルキルグリセリルエーテル。例示的な可溶化剤は、直鎖状C6~C22脂肪アルコール、例としてラウリル、ミリスチル、セチル(パルミチル)、ステアリル、オレイル、及び
リシノレイルアルコール、又はそれらの技術グレードの混合物、例としてセトステアリルアルコール若しくはパルミトレイルアルコールに1~30モルのエチレンオキシド及び/又は0~5モルのプロピレンオキシドを付加した生成物である。
【0094】
増粘剤又は粘度促進剤は、一般的に、液体医薬組成物を増粘するものが含まれ得る。本発明の組成物は任意の好適な増粘剤を含んでいてもよいが、使用する場合、例えば、増粘剤としては、1つ又は複数のアカシア、アルギン酸ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウム若しくはナトリウム、セトステアリルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、グリセリン、ゼラチングアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、炭酸プロピレン、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプントラガカント、及びキサンタンガム、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。1つの特定の実施形態では、増粘剤は、グリセリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びキサンタンガム、並びにそれらの任意の組み合わせである。
【0095】
湿潤剤(表面張力を低下させることによって、液体の拡散及び浸透性を上昇させる化学物質)の例としては、1つ又は複数のカチオン性界面活性剤、例として塩化ベンザルコニウム;非イオン性界面活性剤、例としてポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンブロックコポリマー;ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド及び油(例としてポリオキシエチレン(6)カプリル/カプリン酸モノ-及びジグリセリド)、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンソルビタンエステル、例としてポリソルベート20及びポリソルベート80;プロピレングリコール脂肪酸エステル、例としてラウリン酸プロピレングリコール;グリセリル脂肪酸エステル、例としてグリセリルモノステアレート;ソルビタンエステル、例としてソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、及びソルビタンモノステアレート;グリセリル脂肪酸エステル、例としてグリセリルモノステアレート;アニオン性界面活性剤、例としてラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム;又はそれらの脂肪酸及び塩、例としてオレイン酸、オレイン酸ナトリウム及びオレイン酸トリエタノールアミンが挙げられる。
【0096】
本発明の局所医薬組成物の粘度は、組成物の形態に依存するであろう。クリーム剤の場合、粘度は典型的には、DIN-Rotations Rheometer(Paar Physica社)を使用して20℃にて測定して、2,000~15,000mPa.sの範囲に、又は、例えば2,500~10,000mPa.sの範囲に、又は3,000~7,000 mPa.sの範囲にある;測定システム Z3 DIN; D=57 1/s。
【0097】
ゲル剤の場合、粘度は典型的には、DIN-Rotations Rheometer(Paar Physica社)を使用して20℃にて測定して、300~1,500mPa.sの範囲に、又は、例えば500 ~1,200mPa.sの範囲に、又は600~900mPa.sの範囲にある;測定システム Z3 DIN; D=57.2/s。
【0098】
医薬組成物は、医薬組成物は、1つ又は複数の不活性賦形剤を更に含んでもよく、不活性賦形剤としては、水、緩衝水溶液、界面活性剤、揮発性液体、デンプン、ポリオール、造粒剤、微結晶性セルロース、希釈剤、潤滑剤、酸、塩基、塩、油/水エマルジョン等のエマルジョン、鉱物油及び植物油等の油、湿潤剤、キレート剤、抗酸化剤、滅菌溶液、錯化剤、崩壊剤等が挙げられる。CTFA化粧品成分ハンドブック(CTFA Cosmetic Ingredient Handbook)、第7版、1997年及び第8版、2000年は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、スキンケア組成物において一般に使用される多種多様な化粧品及び医薬品成分を記載しており、これらは、本発明の組成物における使用に適している。この参考文献に開示されているこれらの機能クラスの例としては、吸収剤、研磨剤、固化防止剤、消泡剤、抗菌剤、抗酸化剤、結合剤、生物学的添加剤、緩衝剤、増量剤、キレート剤、化学添加物、着色剤、化粧用収斂剤、化粧用殺生物剤、変性剤、薬物収斂剤、外用鎮痛剤、フィルム形成剤、香料成分、ヒューメクタント、乳白剤、pH調整剤、可塑剤、防腐剤、還元剤、美白剤、皮膚コンディショニング剤(皮膚軟化剤、ヒューメクタント(humectant)、その他、及び閉塞剤)、皮膚保護剤、溶剤、起泡増進剤、ハイドロトロープ、可溶化剤、ステロイド性抗炎症剤、界面活性剤/乳化剤、懸濁化剤(非界面活性剤)、日焼け止め剤、局所鎮痛剤、紫外線吸収剤、SPF増進剤、増粘剤、防水剤、及び粘度増加剤(水性及び非水性)が挙げられる。
【0099】
本発明の医薬組成物及び剤形を形成するために使用することができるキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTA二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、EDTA三ナトリウム、アルブミン、トランスフェリン、デスフェロキサミン、デスフェラル、デスフェロキサミンメシレート、EDTA四ナトリウム及びEDTA二カリウム、メタケイ酸ナトリウム、又はこれらのいずれかの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、EDTA又はその塩等の最大約0.1%W/Vのキレート剤を、本発明の製剤に加える。
【0100】
本発明の医薬組成物及び剤形を形成するために使用することができる防腐剤としては、Purite、過酸化物、過ホウ酸塩、イミダゾリジニル尿素、ジアゾリジニル尿素、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウムを含む塩化アルコニウム、メチルパラベン、エチルパラベン、及びプロピルパラベンが含まれるが、これらに限定されない。他の実施形態では、本発明の組成物に好適な防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、Purite、過酸化物、過ホウ酸塩、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、Onamer M、又は当業者に公知である他の薬剤が含まれる。本発明のいくつかの実施形態では、そのような防腐剤は、0.004%~0.02%W/Vのレベルで使用され得る。本出願のいくつかの組成物において、防腐剤、例えば、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン、及び/又はプロピルパラベンは、約0.001%~約0.01%未満、例えば約0.001%~約0.008%、又は約0.005%W/Vのレベルで使用され得る。本発明の組成物を微生物の攻撃から保護するには、約0.005%の塩化ベンザルコニウムの濃度で十分であり得ることが見出された。当業者は、好適な局所製剤を生成するための成分の適切な濃度並びに種々の成分の組み合わせを決定することができる。例えば、点眼薬又は皮膚に適用するための製剤には、それぞれ約0.02%W/V及び約0.04%W/Vのメチルパラベン及びプロピルパラベンの混合物を使用してもよい。いくつかの実施形態では、これらの製剤は、メチルパラベン及び/又はプロピルパラベンを、それぞれ最大約0.02%W/V及び最大約0.04%W/Vの量で使用し、これはメチルパラベン又はプロピルパラベンを使用しない実施形態を包含する。
【0101】
本発明の医薬組成物及び剤形を形成するために使用することができる潤滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、軽質鉱物油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、その他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
本発明の医薬組成物及び剤形を形成するために使用することができる増粘剤としては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ネオペンタン酸イソデシル、スクアラン、鉱物油、C12~C15ベンゾエート、及び水素化ポリイソブテンが含まれるが、これらに限定されない。非イオン性増粘剤等、最終製品の他の化合物を破壊しない薬剤が望ましい場合がある。追加の増粘剤の選択は、十分に当業者の技術の範囲内である。
【0103】
皮膚コンディショニング剤は、皮膚軟化剤、ヒューメクタント、及び保湿剤であり得る。ヒューメクタントは、吸湿性があるため水分の保持を促進する保湿剤である。好適な皮膚コンディショニング剤としては、尿素;グアニジン;アロエベラ;グリコール酸及びグリコール酸塩、例としてアンモニウム及び第四級アルキルアンモニウム;乳酸及び乳酸塩、例として乳酸ナトリウム、乳酸アンモニウム、第四級アルキルアンモニウムラクテート。ポリヒドロキシアルコール、例としてソルビトール、グリセロール、マンニトール、キシリトール、ヘキサントリオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、高分子グリコール、例としてポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール;炭水化物、例としてアルコキシル化グルコース;デンプン、デンプン誘導体;グリセリン;ピロリドンカルボン酸(PCA);ラクトアミドモノエタノールアミン;アセトアミドモノエタノールアミン;揮発性シリコーン油;不揮発性シリコーン油;並びにそれらの混合物が挙げられる。好適なシリコーン油は、3~9個のケイ素原子を有するポリジアルキルシロキサン、ポリジアリールシロキサン、ポリアルカリルシロキサン、及びシクロメチコンであり得る。
【0104】
皮膚軟化剤は、皮膚を滑らかにし、柔らかくするのを助ける油質又は油性の物質であり、また、皮膚の粗さ、ひび割れ、又は刺激を軽減し得る。典型的な好適な皮膚軟化剤としては、粘度が50~500センチポアズ(cps)の範囲の鉱物油、ラノリン油、ココナッツ油、カカオバター、オリーブ油、アーモンド油、マカデミアナッツ油、アロエベラリポキノン等のアロエ抽出物、合成ホホバ油、天然ソノラホホバ油、ベニバナ油、トウモロコシ油、液体ラノリン、綿実油及びピーナッツ油が挙げられる。いくつかの実施形態では、皮膚軟化剤は、カカオ油のモノ、ジ、及びトリグリセリドの混合物であり、Henkel KGaA社からMyritol331の商品名で販売されているココグリセリド、又はHenkel KGaA社からCetiol OEの商品名で入手可能なジカプリリルエーテル、又はFinetex社からFinsolv TNの商品名で販売されているC12~C15アルキルベンゾエート、である。別の好適な皮膚軟化剤は、Dow Corning Corp.社から入手可能なシリコーン流体であるDC200流体350である。
【0105】
他の好適な皮膚軟化剤としては、スクアラン、ヒマシ油、ポリブテン、スイートアーモンド油、アボカド油、カロフィラム油、リシン油、ビタミンE酢酸エステル、オリーブ油、シリコーン油、例としてジメチルポリシロキサン(dimethylopolysiloxane)及びシクロメチコン、リノレンアルコール、オレイルアルコール、コムギ胚芽の油等の穀物胚芽の油、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル、アセチルグリセリド、(C12~C15)アルコールのオクタン酸エステル及び安息香酸エステル、アルコール及びポリアルコールのオクタン酸エステル及びデカン酸エステル、例としてグリコール及びグリセロールのオクタン酸エステル及びデカン酸エステル、リシノール酸エステル、例としてアジピン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル及びドデカン酸オクチル、マレイン酸ジカプリリル、硬化植物油、フェニルトリメチコン、ホホバ油、並びにアロエベラ抽出物が挙げられる。
【0106】
周囲温度で固体又は半固体である他の好適な皮膚軟化剤を使用することもできる。このような固体又は半固体の化粧品用皮膚軟化剤としては、ジラウリル酸グリセリル、水素化ラノリン、水酸化ラノリン、アセチル化ラノリン、ペトロラタム、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、乳酸ミリスチル、セチルアルコール、イソステアリルアルコール、及びラノリン脂肪酸イソセチルが挙げられる。1つ又は複数の皮膚軟化剤を製剤中に任意選択で含めることもできる。
【0107】
本発明の医薬組成物及び剤形を形成するために使用することができる抗酸化剤としては、没食子酸のプロピル、オクチル及びドデシルエステル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA、通常、オルト異性体とメタ異性体との混合物として購入される)、緑茶抽出物、没食子酸、システイン、ピルベート、ノルジヒドログアイアレチン酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩、例としてパルミチン酸アスコルビル及びアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビルグルコサミン、ビタミンE(すなわち、α-トコフェロール等のトコフェロール)、ビタミンEの誘導体(例:酢酸トコフェリル)、レチノイド、例としてレチノイン酸、レチノール、トランスレチノール、シスレチノール、トランスレチノールとシスレチノールとの混合物、3-デヒドロレチノール、及びビタミンAの誘導体(例えば、酢酸レチニル、パルミチン酸レチノール(retinal)及びパルミチン酸レチニル、パルミチン酸レチノール(tetinyl palmitate)としても知られている)の混合物、クエン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リコペン、アントシアニド、バイオフラビノイド(例えば、ヘスペレチン、ナリンゲン、ルチン、及びケルセチン)、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、インドール-3-カルビノール、ピクノジェノール、メラトニン、スルフォラファン、プレグネノロン、リポ酸及び4-ヒドロキシ-5-メチル-3[2H]-フラノンが含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
皮膚保護剤は、化学的刺激物及び/又は物理的刺激物、例えばUV光から皮膚を保護する薬剤であって、日焼け止め剤、抗ニキビ添加剤、抗しわ及び抗皮膚萎縮剤を含む。好適な日焼け止め剤としては、2-エチルヘキシルp-メトキシシンナメート、2-エチルヘキシルN,N-ジメチル-p-アミノベンゾエート、p-アミノ安息香酸、2-フェニルベンズイミダゾール-5-スルホン酸、オクトクリレン、オキシベンゾン、サリチル酸ホモメチル、サリチル酸オクチル、4,4'-メトキシ-t-ブチルジベンゾイルメタン、4-イソプロピルジベンゾイルメタン、3-ベンジリデンカンファー、3-(4-メチルベンジリデン)カンファー、アントラニレート(anthanilate)、超微細二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、シリカ、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンの4-N,N-(2-エチルヘキシル)メチルアミノ安息香酸エステル、4-ヒドロキシジベンゾイルメタンとの4-N,N-(2-エチルヘキシル)-メチルアミノ安息香酸エステル、2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノンの4-N,N-(2-エチルヘキシル)-メチルアミノ安息香酸エステル、及び4-(2-ヒドロキシエトキシ)ジベンゾイルメタンの4-N,N(2-エチルヘキシル)-メチルアミノ安息香酸エステルが挙げられる。好適な抗ニキビ剤としては、サリチル酸;5-オクタノイルサリチル酸;レゾルシノール;レチノイド、例としてレチノイン酸及びその誘導体;システイン以外の硫黄含有D及びLアミノ酸;リポ酸;抗生物質及び抗菌剤、例として過酸化ベンゾイル、オクトピロックス、テトラサイクリン、の、2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4'-トリクロロバニリド、アゼライン酸、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェノキシソプロパノール、酢酸エチル、クリンダマイシン及びメルクロサイクリン;フラボノイド;並びに胆汁酸塩、例として硫酸シムノール、デオキシコレート、コレートが挙げられる。抗しわ及び抗皮膚萎縮剤の例は、レチノイン酸及びその誘導体、レチノール、レチニルエステル、サリチル酸及びその誘導体、システインを除く硫黄含有D及びLアミノ酸、アルファヒドロキシ酸(例えば、グリコール酸及び乳酸)、フィチン酸、リポ酸及びリゾホスファチジン酸、である。
【0109】
製剤はまた、浸透促進系又は組成物の他の成分に起因する皮膚刺激若しくは皮膚損傷の可能性を最小化又は排除するための刺激緩和添加剤を含み得る。好適な刺激緩和添加剤としては、例えば、α-トコフェロール;モノアミンオキシダーゼ阻害剤、特に2-フェニル-1-エタノール等のフェニルアルコール;グリセリン;サリチル酸及びサリチレート;アスコルビン酸及びアスコルベート;モネンシン等のイオノフォア;両親媒性アミン;塩化アンモニウム;N-アセチルシステイン;cis-ウロカニン酸;カプサイシン;及びクロロキンが挙げられる。刺激物緩和添加剤が存在する場合、刺激又は皮膚損傷を軽減するのに有効な濃度で本製剤に組み込むことができ、典型的には組成物の約20wt.%以下、より典型的には約5wt.%以下で存在する。
【0110】
乾燥感調節剤は、エマルジョンに加えられたときに、エマルジョンが乾燥すると皮膚に「乾燥感(dry feel)」を与える薬剤である。乾燥感調節剤としては、デンプン、タルク、カオリン、チョーク、酸化亜鉛、シリコーン流体、硫酸バリウム等の無機塩、表面処理シリカ、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、例としてNew York, N.Y.U.S.A.のDegussa Inc.社より入手可能なAerosil(登録商標)、を挙げることができる。別の乾燥感調節剤は、米国特許第6,488,916号に開示されているタイプのエピクロロヒドリン架橋グリセリルデンプンである。
【0111】
保存時の腐敗を防ぐために、すなわち酵母及びカビ等の微生物の増殖を阻害するために、抗菌剤等の他の薬剤もまた、加えてもよい。好適な抗菌剤は、典型的には、p-ヒドロキシ安息香酸のメチル及びプロピルエステル(すなわち、メチル及びプロピルパラベン)、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、イミド尿素、purite、過酸化物、過ホウ酸塩及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0112】
本発明の組成物は、追加の薬剤又はそれらの薬学的に許容される塩を含むことができる。当業者は、適応症及び所望の効果に応じて、本発明の組成物及びその適切な濃度に組み込むための薬剤を、容易に選択することができる。医薬品としては、これらに限定されないが、α2アドレナリン受容体アゴニスト、及び任意選択で、コールタール、ジスラノール(アントラリン)、デスオキシメタゾン(Topicort)等のコルチコステロイド、フルオシノニド、ビタミンD類似体(例えば、カルシポトリオール)、レチノイド、アルガンオイル、ソラレン、メトトレキサート、シクロスポリン、レチノイド、又はその他の合成形態のビタミンA、Amevive(登録商標)、Enbrel(登録商標)、Humira(登録商標)、及びRemicade(登録商標)を含むがこれらに限定されない、1つ又は複数の他の薬学的に活性な成分が挙げられる。
【0113】
本発明の実施形態による局所投与可能な組成物は、更に、麻酔薬及び鎮痛薬、例としてカンファー、メントール、プラモキシン、バクロフェン、アミトリプチリン、ドキセピン、α2アドレナリン作動剤(例えば、クロニジン)、ケタミン、三硝酸グリセリル、ピメクロリムス、フェニトイン、ベンジルアルコール、ジクロフェナク、サリチレート、ジクロニン、塩化エチル、ヘキシルレゾルシノール、及びトロラミン、局所オピオイド、カプサイシン、及びガバペンチン又はプレガバリン、エステル等の麻酔薬、例えば、ベンゾカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン、ラロカイン、プロポキシカイン、プロカイン、ノボカイン、プロパラカイン、テトラカイン、及びアメトカインアミド、例えば、アルチカイン、ブピバカイン、カルチカイン、シンコカイン、ジブカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン、リグノカイン、メピバカイン、ピペロカイン、プリロカイン、ロピバカイン、トリメカイン;及びサキシトキシン、テトロドトキシン、キシロカイン、ジクロニン、ピクリン酸ブタメン、塩酸ジメチソキン、硫酸シクロメチルカイン等を含む天然に存在する麻酔薬、及びNSAID等の抗炎症剤(例えば、ジクロフェナク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、ピロキシカム)ブプレノルフィン、酒石酸ブトファノール、アセトアミノフェン、フェンタニル、メフェナム酸、フルフェナム酸、オキシフェンブタゾン、フェニブタゾン、メントール、サリチル酸メチル、フェノール、サリチル酸、ベンジルアルコール、カンファーメタクレゾール、ジュニパータール、レゾルシノール、アリルイソチオシアネート、カプサイシン等;コルチコステロイド、例としてジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド(amcinocide)、ヒドロコルチゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、デスオキシメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、フルドロキシコルチド、ハルシノニド、ハロベタゾール、エストラジオール、テストステロン、プロゲステロン、フルチカゾン、クロベタゾール、デキサメタゾン、デソニド(dexonide)、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、メドロキシプロゲステロン、フロ酸モメタゾン、トリアムシノロン等;ホルモン(例として、エストロゲン、エストラジオール、プロゲステロール、プロゲステロン、テストステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ペプチド、及びバソプレッシン視床下部放出因子等)、カンナビノイド、例としてテトラヒドロカンナビノール(THC)及びカンナビジオール(CBD)、又は他の鎮痛薬;抗真菌剤、例としてシクロピロックス、クロロキシレノール、トリアセチン、スルコナゾール、ナイスタチン、ウンデシレン酸、トルナフテート、ミコニゾール、クロトリマゾール、オキシコナゾール、グリセオフルビン、エコナゾール、ケトコナゾール、及びアンホテリシンB;抗生物質及び抗感染薬、例としてムピロシン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、ポリミキシン、バシトラシン、スルファジアジン銀;並びに防腐剤、例としてヨウ素、ポビドンヨード、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、クロルヘキシジン、ニトロフラジン、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、ヘキサクロロフェン、フェノール、レゾルシノール、及び塩化セチルピリジニウム、を含むことができる。
【0114】
他の化合物には、筋弛緩薬又はけいれん緩和化合物等の添加剤、例えば、バクロフェン、マグネシウムイオン(例えば、酸化マグネシウム若しくは他のマグネシウム調製物から)、ビタミンB1、B2、B6及び/又はビタミンB12(別々に若しくは複合体中)、又はヒトの睡眠を助ける化合物、例として、抗ヒスタミン作動薬/炎症薬(例えば、H1受容体アンタゴニスト、ジクロフェン)、GABA-A受容体アゴニスト及びアンタゴニスト(例えば、ベンゾジアゼピン(BZ)、ゾルピデム(AMBIEN(登録商標))、ザレプロン(SONATA(登録商標))、及びエゾピクロン(LUNESTA(登録商標))、メラトニン受容体(例えば、メラトニン)のアゴニスト、抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン及びドキセピン)、及びアンギオテンシンIIタイプ1(AT1)受容体アンタゴニスト)が含まれる。当業者は、本明細書に記載の組成物中に混合することができる追加の成分を、容易に認識するであろう。
【0115】
製剤はまた、審美剤を含み得る。審美剤の例としては、香料、顔料、着色剤、精油、皮膚感覚剤、及び収斂剤が挙げられる。好適な審美剤としては、クローブ油、メントール、カンファー、ユーカリ油、オイゲノール、乳酸メチル、ビサボロール、マンサク蒸留物、及び緑茶抽出物が挙げられる。
【0116】
香料は、審美的に心地よい香りを与えることができる芳香物質である。典型的な香料としては、植物源(すなわち、バラの花びら、クチナシの花、ジャスミンの花等)から抽出された芳香物質が挙げられ、これらを精油を作製するために単独又は任意の組み合わせで使用することができる。或いは、香料を配合するためにアルコール抽出物を調製することができる。しかし、天然物質から香料を入手するコストが比較的高いため、特に大量生産品において、合成的に調製された香料を使用するのが現代の傾向である。1つ又は複数の香料を、約0.001~約5質量パーセント、又は約0.01~約0.5質量パーセントの範囲の量で日焼け止め組成物に任意選択で含めることができる。必要に応じて追加の防腐剤を使用することもでき、追加の防腐剤には、とりわけ、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール及び安息香酸、ジアゾリジニル、尿素、クロルフェネシン、ヨードプロピニル、及びカルバミン酸ブチル等の周知の防腐剤組成物が含まれる。
【0117】
以下の実施例は、当業者に本発明の十分に明確かつ完全な説明を提供するために提供されるが、本発明に記載されるように、この説明の先行する部分に記載されたその主題の本質的な態様を限定するものと考えるべきではない。
【実施例】
【0118】
(実施例1)
ピレンゼピン二塩酸塩製剤の調製
本出願の典型的なピレンゼピン二塩酸塩組成物について、ピレンゼピン二塩酸塩を、最初に好適な容器に量り入れ、適切な量の水を容器に定量的に移した。クエン酸、クエン酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを秤量し、この水相に加えた。得られた混合物を、溶解が完了するまで撹拌した。次に、ジメチルスルホキシド(「DMSO」)、エタノール、又はプロピレングリコール等の、以下でより詳細に論じられるような追加の溶媒を加え、混合物を手短に混合した。次に、界面活性剤、脂肪酸、防腐剤、及び増粘剤以外のその他の成分を加えた。次に、得られた混合物を、すべての成分の溶解が完了するまで撹拌した。最後に、任意の増粘剤(例として、セルロース増粘剤、ポリビニルアルコール、Carbopols等)を加えた。最終混合物を一晩撹拌して、増粘剤を完全に膨潤させた。
【0119】
(実施例2)
ピレンゼピン二塩酸塩の代表的な製剤
ピレンゼピン二塩酸塩の代表的な製剤(WinF54)を調製した(成分の特定の量についてはTable 6(表6)を参照のこと)。
1.好適な容器にピレンゼピン二塩酸塩を量り入れる。
2.水を容器に定量的に移す。
3.クエン酸、無水クエン酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウムを定量的に加える。完全に溶解するまで混合する。
4.ジメチルスルホキシド、ベンジルアルコール、及びグリセリンを定量的に加える。手短に混合する。
5.Brij S20(ステアレス-20)、乳酸ラウリル、エデト酸二ナトリウムを定量的に加える。完全に溶解するまで混合する。
【0120】
(実施例3)
ピレンゼピン遊離塩基製剤の調製のための典型的な手順
本出願の典型的なピレンゼピン遊離塩基組成物について、ピレンゼピン遊離塩基を、最初に好適な容器に量り入れた。次に、溶媒(例として、ジメチルスルホキシド、エタノール、プロピレングリコール、水等)を加え、溶解が完了するまで混合物を混合した。最後に、界面活性剤、脂肪酸、防腐剤、その他の成分を加えた。次に、すべての成分の溶解が完了するまで、最終混合物を撹拌した。
【0121】
(実施例4)
ピレンゼピン遊離塩基の代表的な製剤
ピレンゼピン遊離塩基の代表的な製剤(WinFB20)を、以下のように調製した。各成分の量については、以下のTable 7(表7)を参照のこと。
1.好適な容器にピレンゼピン遊離塩基を量り入れる。
2.ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール、エタノール、及び水を、容器に定量的に移す。好適なミキサーを使用して、完全に溶解するまで混合する。
3.Brij S20(ステアレス-20)、Brij 30(ラウレス-4)、及び乳酸ラウリルを定量的に加える。
4.完全に溶解するまで定量的に混合する。
【0122】
(実施例5)
ピレンゼピン二塩酸塩及びピレンゼピン遊離塩基の他の製剤
ピレンゼピン二塩酸塩及びピレンゼピン遊離塩基の両方の他の製剤を、上記の混合プロトコルに従って作製した。これらの製剤の概要をTable 7(表7)に示す。
【0123】
(実施例6)
皮膚透過測定
様々な製剤からのピレンゼピン二塩酸塩及びピレンゼピンの透過を、フランツ拡散セル(「FDC」)を使用して測定した。ブタの皮膚と死体の皮膚の両方の試料を、多数の流束研究の基質として使用した。
【0124】
基質としてブタの皮膚を使用する研究のために、ブタの皮膚片を、Lampire Biological Laboratories、Inc.社(Pipersville、PA)から入手した。動物を屠殺した直後にブタの皮膚を収集し、クリッパーで毛をトリミングした。次に、皮膚を約2mmの設定された厚さにトリミングし、研究の日まで-20℃で保存した。使用前に、ブタの皮膚片を空気中で室温まで解凍し、次に皮膚片を1mmの厚さに切断し、適切なサイズの円形片に切断した後、FDCに取り付けた。
【0125】
死体皮膚を基質として使用する研究のために、死体皮膚片を、New York Firefighters Tissue Bank(New York、NY)から入手した。死体皮膚片を、30~70歳の白人男性又は女性の胴体後部から収集した。組織バンクが死体皮膚片を収集し、約400μmの厚さに皮膚を切断した。皮膚片を凍結させ、研究の日まで-20℃で保存した。使用前に、死体皮膚片を空気中で室温まで解凍し、適切なサイズの円形片に切断した後、FDCに取り付けた。
【0126】
FDCは、0.55cm2の表面積、並びに0.01%アジ化ナトリウム及び2質量%ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン(「HPBCD」)でドープされた等張リン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)で満たされた3.3mlのレセプターウェル体積を有していた。次に、角質層側を上に向けて、皮膚片をレセプターウェルに取り付けた。次に、ドナーウェルをレセプターウェルの上に位置合わせし、ウェルのフランジを、ピンチクランプ(SS #18 VWR 80073-350 VWR Scientific社、West Chester Pa.製)を使用して均一な圧力でクランプした。FDCを組み立てた後、皮膚片を20分間水和させた。死体皮膚を基質として使用した場合、皮膚のトリチウム水事前試験を実施し、この試験は、1時間にわたって皮膚を通過するトリチウム水の流束を測定することと、試験されるべき各製剤に、ほぼ同等の平均水流束値を有するFDCを割り当てることで構成される。異常に高い水流束値を有するFDCを、研究から除外した。
【0127】
細胞を組み立て、トリチウム水流束値が完了した後、細胞に5mlの製剤を投与し、製剤を皮膚表面全体に広げた。レセプターウェルを、撹拌乾燥ブロックヒーターで研究全体を通して32℃に維持しながら、撹拌棒を介して継続的に撹拌した。研究全体にわたって、シリンジを使用してレセプターチャンバーから300μlの試料アリコートを収集し、レセプターチャンバー内で未使用緩衝液に交換した。研究が完了したら、50vol%の水/50vol%のエタノールに浸したキムワイプで皮膚の表面を拭き、残留製剤を除去した。次に、皮膚を軽くたたいて乾かし、テープを3回剥がした(これは、セロハンテープストリップを皮膚に貼り付けることと、それらを剥離して角質層の層を連続的に除去することで構成される)。テープストリップを廃棄し、残りの皮膚片を表皮片と真皮片とに熱分離した。次に、皮膚片をガラスバイアルに収集し、2mlの抽出溶媒(80vol%水/20vol%エタノール)をバイアルに加えた。次に、皮膚片を絶えず撹拌しながら40℃で24時間インキュベートして、皮膚から活性物質を抽出できるようにした。24時間後、試料を収集し、ろ過した。
【0128】
レセプター及び皮膚試料の両方を、移動相として0.1% 10mMolのNH4HCO3を含むアセトニトリル及び水を用いたC18カラムを使用するHPLC分析によって、又は液体シンチレーション計数(C14標識ピレンゼピン二塩酸塩を製剤中で使用)のいずれかによって、ピレンゼピン濃度について分析した。すべてのデータを収集した後、流束速度を計算し、各製剤について試験された複数の複製にわたって平均化した。
【0129】
(実施例7)
水系ビヒクルに加えられた溶媒効果の比較
いくつかのピレンゼピン製剤(Win25T~Win32T)を調製して、皮膚を通過するピレンゼピンの流束に対する様々な溶媒の効果を比較した。製剤は、以下に示すように、72wt%の水、8wt%のピレンゼピン二塩酸塩、及び20wt%の様々な溶媒を含んでいた。配合成分を以下のTable 1(表1)に示す。試験されたすべての溶媒は、水と完全に混和していた。この流束研究の結果を
図1に示す。
図1からわかるように、ジメチルスルホキシド(Win25T)及びジエチレングリコールモノエチルエーテル(Win29T)(TRANSCUTOL(登録商標))は、皮膚を通過するピレンゼピンの流束を増加させるのに最大の効果を有していた。Win25Tではピレンゼピンの2.04%が皮膚全体に送達され、Win29Tでは1.8%のピレンゼピンが皮膚全体に送達された。
【0130】
【0131】
(実施例8)
水プラスDMSOビヒクル中の界面活性剤の比較
いくつかのピレンゼピン製剤(Win36T~Win49T)を調製して、皮膚を通過するピレンゼピンの流束に対する様々な界面活性剤及び溶媒の効果を比較した。製剤を、90wt%の水及び10wt%のピレンゼピン二塩酸塩からなる対照製剤と比較した。試験製剤は、水系/DMSO/ピレンゼピン二塩酸塩ビヒクルを有し、試験製剤を追加の界面活性剤及び溶媒に加えた。
【0132】
この実施例で使用される配合成分を、以下のTable 2(表2)に示す。この流束研究の結果を
図2に示す。
図2を見ると、いくつかの結論を導き出すことができる:(1)Brij(商標)30を加えることにより、ピレンゼピンの経皮流束が増加した(Win38TとWin36Tとを比較)、(2)この効果は、10wt%のDMSO及び10wt%の別の溶媒との組み合わせに対し、20%DMSOとの組み合わせで最も顕著である(Win41Tを、Win38T、Win42T、及びWin43Tと比較して)、(3)他の界面活性剤を加えても、皮膚を通過するピレンゼピンの流束は増加しなかった(Win44TとWin36Tとを比較)。Brij(商標)30は、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルである。
【0133】
【0134】
(実施例9)
DMSO、ジメチルイソソルビド及びBrijと組み合わせた促進剤スクリーニング
いくつかのピレンゼピン製剤(Win77T~Win85T)を調製して、皮膚を通過するピレンゼピンの流束に対する様々な浸透促進剤の効果を比較した。製剤を、90wt%の水及び10wt%のピレンゼピン二塩酸塩からなる対照製剤と比較した。試験製剤は、水系/DMSO/ジメチルイソソルビド/Brij78/ピレンゼピン二塩酸塩ビヒクルを有し、試験製剤を追加の浸透促進剤に加えた。配合成分を以下のTable 3(表3)に示す。この流束研究の結果を
図3に示す。
図3を見ると、いくつかの結論を導き出すことができる。(1)Brij(商標)78を加えることにより、ピレンゼピンの経皮流束が増加して(Win78TとWin77Tとを比較)おり、以前のBrij効果が確認される。(2)乳酸ラウリル、ベンジルアルコール又はモノオレイン酸グリセリルを加えると、ピレンゼピンの流束が更に増加する。(3)他の界面活性剤を加えても、皮膚を通過するピレンゼピンの流束は増加しなかった(Win44TとWin36Tとを比較)。
【0135】
【0136】
(実施例10)
DMSOと組み合わせた促進剤スクリーニング
いくつかのピレンゼピン製剤(Win135T、137T、及び139T)を調製して、皮膚を通過するピレンゼピンの流束に対する様々な浸透促進剤の効果を比較した。製剤を、90wt%の水及び10wt%のピレンゼピン二塩酸塩からなる対照製剤と比較した。配合成分を、Table 4(表4)に示す。この流束研究の結果を
図4に示す。この研究の結果により、以前に観察された結果が確認される:(1)DMSOを加えると、水系ビヒクル上の流束が増加する(Win135TとWinConTとを比較)。(2)DMSOと組み合わせてBrij界面活性剤を加えると、流束が増加する(Win137TとWin135Tとを比較)、(3)乳酸ラウリルを加えると、流束が更に増加する(Win139TとWin137Tとを比較)。
【0137】
【0138】
(実施例11)
ゲル製剤における促進剤スクリーニング
ピレンゼピン製剤(WinF8~WinF11)を調製して、以前に同定された賦形剤の浸透促進効果がゲル形式において機能することを検証した。ゲル製剤を、対照ピレンゼピン二塩酸塩ゲルと比較した。配合成分をTable 5(表5)に示す。この流束研究の結果を
図5に示す。この研究の結果により、Brij及び乳酸ラウリルを含むDMSOを加えると、皮膚を通過するピレンゼピンの流束が増加するという以前に観察された結果が確認される。乳酸ラウリルの代わりにカプリン酸トリグリセリドを加える場合も、流束速度を増加させるのに同様に良好に機能した。
【0139】
【0140】
(実施例12)
ゲル製剤における促進剤の追加のスクリーニング
ピレンゼピン製剤(WinF54、WinF80、WinF83、及びWinF84)を調製して、対照ピレンゼピン二塩酸塩ゲルと比較した場合の、ゲル製剤中の以前に同定された賦形剤の浸透促進効果を検証した。配合成分をTable 6(表6)に示す。この流束研究の結果を
図6に示す。
【0141】
【0142】
(実施例13)
ピレンゼピン遊離塩基製剤対ピレンゼピン二塩酸塩製剤のスクリーニング
ピレンゼピン遊離塩基製剤(WinFB20、WinFB21、及びWinFB22)を調製し、以前に調製したピレンゼピン二塩酸塩ゲル(WinF84)と比較した。配合成分を以下のTable 7(表7)に示す。この流束研究の結果を
図7に示す。この研究の結果は、以前に示された賦形剤が、ピレンゼピン二塩酸塩の流束を増加させることによってピレンゼピン遊離塩基と連動して機能することを示している。
【0143】
【0144】
(実施例14)
薬物動態の報告:健康なボランティアにおける局所ピレンゼピンのランダム化、二重盲検、プラセボ対照、複数回投与、安全性、忍容性及び薬物動態研究
14.1 - 実施例14の略語
Table 8(表8)には、実施例14で使用されている略語が含まれる。
【0145】
【0146】
14.2 - 実施例14の目的
健康な対象における14日間の1日局所用量投与後の3つの異なるピレンゼピン製剤(WinFB34、WinF90及びWinFB100)の薬物動態(PK)プロファイルを評価及び比較すること。
【0147】
この研究の探索的目的は、14日目に収集された皮膚生検から(コホート2及び3から)取得された薬物濃度データを特徴付け、相対吸収(処置済み皮膚からの生検)及び相対分布(未処置皮膚からの生検)に関連する潜在的な関係を調査することであった。
【0148】
14.3 - 実施例14の研究設計
14.3.1 - 試験概要
この単一施設における、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照、複数回投与研究;合計24人の健康な対象で構成されている:8人の対象からなる3つのコホート(各コホートにおいて6人の対象がピレンゼピンに割り当てられた:2人がプラセボに割り当てられた);各コホートには、ピレンゼピンの異なる局所製剤:WinFB34、WinF90、及びWinFB100を投与した。
【0149】
以下のピレンゼピン局所製剤又は対応するプラセボを、以下のように、下肢(各脚の約750cm2の領域のふくらはぎ、足首、及び足の甲)に適用した。
・コホート1:4.0%ピレンゼピン局所溶液WinFB34又は対応するプラセボ - 2.5mLを、1~7日目に1日1回適用し、5.0mLを、8~14日目に1日1回適用した。
・コホート2:6.5%ピレンゼピン局所溶液WinF90又は対応するプラセボ - 2.5mLを、1~7日目に1日1回適用し、5.0mLを、8~14日目に1日1回適用した。
・コホート3:4.0%ピレンゼピン局所溶液WinF100又は対応するプラセボ - 2.5mLを、1~7日目に1日1回適用し、5.0mLを、8~14日目に1日1回適用した。
【0150】
5mLの投与量は、制御された方法で適用することができる最大量と考えられたが、いくつかの実施形態では、5mLを超える使用が想定されている。
【0151】
14.3.2 - サンプリング時間
PK:以下の公称時間でのピレンゼピン濃度の決定のために血液試料を収集した:
【0152】
【0153】
1、7、及び14日目の血液試料を、(治験責任医師の裁量で)直接静脈穿刺の頻度を減らすために、留置静脈内(IV)カニューレのいずれかを介して収集した。
【0154】
皮膚生検:14日目に2つの標準的5mm皮膚生検(コホート2及び3のみ)、1つは下腿遠位部又はふくらはぎの処置領域からのもの;くるぶし上およそ10cm、及び後部まで3cm;並びに1つは外側太腿の未処置領域からのもの、腸骨棘下およそ25cm、恥骨位置下およそ5cm、及び後部まで8cm、を収集した。
【0155】
14.4 - 実施例14のバイオアナリシス
検証された液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LLOQ:0.1ng/mL及びULOQ:200ng/mL)を使用して、血漿中のピレンゼピンの濃度を決定した。TetraQ, Bioanalytical Sample Analysis Report、11月、2018年を参照のこと。生検試料中のピレンゼピン濃度分析には、定性的方法(LLOQ 1.00mg/mL)を使用した。
【0156】
14.5 - 実施例14の薬物動態分析方法及び手順
血漿及び皮膚生検におけるピレンゼピン濃度を、Phoenix(商標)WinNonlin(登録商標)バージョン8.0(Pharsight Corporation社、USA)及びMicrosoft(登録商標)Excel(登録商標)2010年(Microsoft Corporation社、USA)を使用して評価した。
【0157】
薬物動態集団:統計分析計画によれば、PK集団は、ピレンゼピンの評価可能な血漿濃度を有するすべてのランダム化された対象(すなわち、[薬物動態学者の裁量で]十分かつ解釈可能であると考えられる血漿濃度を有する対象)を含む。プラセボを受けた対象を、PK集団から除外した。PK集団からの除外は、データベースロック後、研究の非盲検化の前に、盲検化されたデータについて薬物動態学者によって決定された。非盲検化後にファイルへの注記(Note-to-File)を作成して、すべてのプラセボ試料を考慮し、それらのプラセボ対象をPK集団から除外した。PK集団は、対象がランダム化された処置と異なる場合、実際に受けた処置に基づいていた。この集団を、すべてのPKデータの要約及び分析に使用した。
【0158】
14.5.1 - PKパラメータ
コホート1の後に、ピレンゼピンのデスメチル代謝物について定量可能な薬物レベルがないことが明らかであり、そのため、親化合物についてPKパラメータを計算した(Table 9(表10)及びTable 10(表11)に概説する)。
【0159】
【0160】
【0161】
14.5.2 - 分析手順
血漿:
・実際の時間をPK決定に使用し、投与時間に対して計算した。
・BLOQであったCmaxより前の時点を、PKパラメータ決定のためにゼロに設定した。
・最終血漿濃度がBLOQの場合、この値より前の時点での濃度が、kelの計算で最後に測定可能な濃度であると見なされた。
・%AUCexpが>20%の場合、正確な特性評価に依存するPKパラメータ(すなわち)、kel、t1/2、AUCINFは計算されなかった。
・kelは、少なくとも最後の3つの定量可能な濃度で得られた対数線形回帰によって決定され、Cmaxは含まれていなかった。使用したデータの範囲を、濃度対時間の片対数プロットの目視検査によって決定した。回帰の適合度を、相関係数の調整済み二乗(R2調整済み)を使用して評価した。kel値が信頼できると考えられるには、データポイントを通る回帰直線の調整済みR2が少なくとも0.8500である必要があった。
【0162】
生検:凍結された5mmの皮膚生検を半分に二分し、生検ごとに2つの切片、すなわち上半分及び下半分にした。
【0163】
生検試料の2つの切片は、皮膚層厚さの教科書の説明に基づくゾーンに大まかに分割することができる(Noisakran S, Onlamoon N, Songprakhon Pら、Cells in Dengue Virus Infection In Vivo. Advances in Virology、2010年(5)論文ID: 164878, researchgate.net/publication/221830194_Cells_in_Dengue_Virus_Infection_In_Vivo、2018年11月19日アクセスを参照のこと):
・上半分:表皮及び真皮を含む
・下半分:真皮及び脂肪を含む。
【0164】
次に、各生検の両方の半分を均質化し、処理して、処置済み皮膚対未処置皮膚のピレンゼピンの濃度を測定した。
【0165】
処置済み皮膚生検の上半分対下半分を分析することにより、WinF90及びWinFB100の局所投与によって生じる上部から下部へのピレンゼピンの分布の勾配について、一般的な評価を行うことができる。局所処置領域から離れたピレンゼピンの分布の基本的な理解は、処置済み皮膚対未処置皮膚生検にて回収されたピレンゼピンの濃度を比較することによって得ることができる。
【0166】
皮膚生検におけるピレンゼピンの濃度(ng/mL)を、生検の収集時点に最も近い収集時点(投与後8時間)での対象の血漿濃度レベルと比較した。
【0167】
14.6 - 実施例14の結果
14.6.1 - 血漿薬物動態
全体プロファイル:すべてのピレンゼピン製剤(WinFB34、WinF90及びWinFB100)の血漿PKプロファイルによって、1.7ng/mL未満のピレンゼピン血漿レベルが生じた。各親化合物の相対曝露が低かったため、したがって、一次代謝物であるデスメチルピレンゼピンは、どの対象についても、どの時点でも、どの日でも定量化できず、したがって、これをその後のPK分析には含めなかった。14日目までに、すべてのコホートの活性用量群のすべての対象は、定量化可能な薬物レベルを有していた。しかし、各コホート内の対象間の高度な変動性により、それぞれのPK測定値の統計的有意性を決定することはできなかった。3つのピレンゼピン製剤間の比較は、相対的生物学的利用能の基準を満たしていなかった。すべての場合において、各対照間の集団の幾何平均比率の90%CIは、80%~125%の同等の制限内に含まれていなかった。加えて、変動性が高レベルであるため、性別及び個体群統計に関して結論を出すことはできなかった。
【0168】
平均プロファイルの比較によって、C
max,D14,AUC
0-tau,D14及びAUC
inf,D14の観点からの順位が、WinFB34>WinFB100>WinF90であることが明らかになった(
図8、Table 11(表12))。
【0169】
Tmax,D1は、WinFB34、WinF90及びWinFB100についてそれぞれ2~8時間、4時間、1~12時間の間に発生したが、Tmax,D14は、WinFB34、WinF90及びWinFB100についてそれぞれ、1.5~6時間、2~24、1~12時間であった。1日目、7日目、又は14日目におけるTmaxについてコホート間に統計的差異は観察されなかった。同様に、Cmax又は曝露パラメータ(AUC)について、統計的に有意な処置の差異は観察されなかった。
【0170】
t1/2は、27~48時間の間の範囲の平均値で、すべてのコホートにわたって比較的一定であった(Table 12(表13))。Cavg,D7はすべての製剤について類似していた(Table 10(表11))。計画された用量の増加(8日目から毎日5mL)に続いて、WinF90とWinFB100の両方で、AUC0-tau,D14は7日目のおよそ2倍であり、7日目以降の投与量の2倍に比例していた(Table 9(表10))。
【0171】
7日目までに、ピレンゼピン血漿レベルにおける2倍の蓄積の傾向が観察された(WinFB100、n=3)が、これは、WinFB34(n=2)及びWinF90(n=1)については限定された試料に基づいていた(Table 10(表11)、
図8)。平均(SD)累積係数は、コホートWinFB34、WinF90、及びWinFB100でそれぞれ2.211(1.1208)、2.204(0.4837)、及び3.452(2.3159)であった。
【0172】
コホート/製剤による:コホート1(WinFB34):集中的PKサンプリング日(1、7及び14)を別々に考慮して、より低い開始用量(7日目1日あたり2.5mL)を考慮すると、1日目及び7日目の血漿ピレンゼピンレベルは14日目よりも低かった。1日目に、コホート1(WinFB34)(対象001-0002、001-0005、001-0013)の血漿ピレンゼピンレベルは0.25ng/mL未満であり、7日目までに、コホート内の6人の対象すべてが検出可能なピレンゼピンレベルを有し、対象0007について投与後4時間でピレンゼピンレベルが1.53ng/mLに急上昇した。14日目までに、対象001-0005のレベルが最も高く(およそ5ng/mL)、次に対象001-0001(およそ2ng/mL)が続いた。コホート1内の他のすべては1.2ng/mL未満であった。
【0173】
1日目のコホート2(WinF90)について、1人の対象(対象001-0026)について1つの単一点が検出され(投与後4時間で0.692ng/mL)、コホート内の他のすべての対象はBLOQであった。7日目までに、6人の対象すべてが検出可能なピレンゼピンレベルを有し、対象001-0028について最高レベルが報告され(投与後1時間で0.688ng/mL)、対象001-0019(投与後3時間で0.671ng/mL)、対象001-0034(投与後2時間で0.403ng/mL)、残りの対象は0.3ng/mL未満であった。14日目までに、5人の対象が検出可能なレベル(対象001-0026はBLOQであった)を有し、対象001-0030は投与後6時間で最高0.987ng/mL、その他は0.5ng/mL以下であった。注目すべきことに、対象001-0036は投与後48時間で1.66ng/mLに急上昇したが、この結果が分析成果物なのか、試料汚染の結果なのか、それとも実際の結果なのかは不明である。
【0174】
コホート3(WinFB100)の場合、1日目に、対象001-0040、001-0044、001-0049は、ピレンゼピン血漿レベルが0.542ng/mL未満であった。7日目までに、5人の対象はピレンゼピンレベルが0.45ng/mL未満であった。14日目までに、6人の対象すべてが検出可能なピレンゼピンレベルを有し、投与後1時間で最高レベルが2.87ng/mLであった(対象001-0042)。
【0175】
局所投与の14日後、平均ピレンゼピンレベルは、以下の順位によるものであった:コホート1>コホート3>コホート2。すべての製剤について、およそ2の蓄積係数が認められた。これは、コホート1、2、及び3について、それぞれ24.391(19.0681)時間、27.453(8.2823)時間、及び48.232(39.1123)時間の平均(SD)の範囲にあるt1/2に基づいていた。
【0176】
【0177】
【0178】
14.6.2 - 皮膚生検
皮膚生検結果は、WinF90(コホート2)及びWinFB100(コホート3)についてのみ利用可能であった。両方の製剤について、ピレンゼピンは、下層(真皮及び脂肪)と比較した場合、処置済み皮膚(ふくらはぎ)生検試料(表皮及び真皮が優勢)の上層においてより高いレベルで検出された。血漿データセットと同様に、両方のコホートにおける皮膚生検濃度データに、対象間の大きな変動が認められた。
【0179】
WinF90/コホート2については、おそらく局所送達システムからのピレンゼピンの流束よって推進された、処置済み皮膚の上部から下部へ6倍高い濃度勾配があり、未処置(太腿)皮膚の上部から下部へ2倍高い濃度勾配があった。未処置皮膚におけるピレンゼピンの出現は、薬物製剤ではなく原薬の物理化学的特性の機能である可能性がある。ピレンゼピンは比較的親水性であり(LogP=0.6、溶解度:0.0682mg/mL)(pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/4848#section=MeSH-Entry-Terms8月27日アクセスを参照のこと)、したがって、いくつかの実施形態によれば、皮膚生検の下層の脂肪層に蓄積するのではなく、むしろ真皮の間質液中に優先的に蓄積することが予想される。Groenendaal W, von Basum G, Schmidt Kら、Quantifying the composition of human skin for glucose sensor development. J. Diabetes and Technology、2010年4(5)、1032~1040頁を参照のこと。これと同じ理由で、血流から未処置皮膚への分布も、いくつかの実施形態では高くないと予想される(Table 13(表14)、
図13及び
図14)。
【0180】
WinFB100/コホート3については、処置済み皮膚の上部から下部へ14倍高い濃度勾配があり、未処置皮膚の上部から下部へ9倍高い濃度勾配があった。興味深いことに、対象の血漿曝露は、どちらの製剤でも皮膚における相対的ピレンゼピン濃度と相関していなかった。例えば、コホート2で使用される製剤であるWinF90は、生検皮膚試料中の下層にある大量のピレンゼピンによって示されるように、皮膚にピレンゼピンを保持する可能性が高い場合がある。しかし、このことは、コホート3に投与されたWinFB100については観察されず、コホート3では、より少ないピレンゼピンが低レベルで保持される。
【0181】
【0182】
3つの異なるピレンゼピン製剤(WinFB34、WinF90及びWinFB100)の14日間の局所適用後の処置済み及び未処置皮膚生検試料中のピレンゼピンの血漿プロファイル及び濃度を、プロトコルWST-PZP-001に従って決定した。
【0183】
皮膚への1日投与後、ピレンゼピンは、すべてではないが一部の対象において、1日目から血漿中に検出可能であった(コホート1:001-0002、001-0005、001-0013;コホート2:001-0026;コホート3:001-0040、001-0044、001-0049)。7日目までに、AUC0-tau,D7はすべてのコホートについて同様であったが、対象数が少なく変動性が高いため、相対的生物学的利用能基準を満たすことができなかった。8日目で用量を2倍にした後、AUC0-tau,D14は2倍になった。14日目までに、すべてのコホートは、定量化可能な薬物レベルを有していた。しかし、各コホートのTmax,D1、Tmax,D7及びTmax,D14のノンパラメトリック分析では、製剤間に有意差は見らなかった。3つのコホート及び製剤にわたる平均t1/2はおよそ27~48時間の範囲であり、蓄積係数はおよそ2であった。濃度データの変動量及び対象数が少ないことを考えると、性別及び個体群統計に関してPKの一般化を行うことはできなかった。
【0184】
コホート2及び3からの皮膚生検結果は、ピレンゼピンが、皮膚の表皮/真皮領域(生検試料の上層)に優先的に保持され、生検試料の下層(真皮及び脂肪組織)において、より少ない用量が保持されることを示していた。しかし、処置済み及び未処置の両方の皮膚のすべての層は、血漿濃度と比較した場合、より高濃度のピレンゼピンを維持していた。
【0185】
(実施例15)
技術移転及びスケールアップを可能にするためのピレンゼピン遊離塩基製剤の単純化
技術移転及びスケールアップを可能にするために、製剤最適化を実施してリード製剤(WinF84及びWinFB20)を単純化した。以前に採用された製剤開発へのアドオン階層化アプローチにより、スケールアップ活動を支持するため、リード製剤の成分をある程度単純化できると仮定した。ビヒクル成分のこの単純化は、製剤の流束に影響を及ぼさないことが示された。配合成分を、Table 14(表15)及びTable 15(表16)に示す。この流束研究の結果を
図15及び
図16に示す。
【0186】
皮膚生検を、局所投与の22時間後に収集し、総送達用量を決定した(
図15)。
【0187】
皮膚生検結果は、本明細書に開示される製剤の実施形態が、皮膚の表皮/真皮領域(生検試料の上層)に優先的に保持され、一方生検試料の下層(真皮及び脂肪組織)において、より少ない用量が保持されることを示していた(
図16)。製剤の投与後4時間及び20時間での総送達用量も示されている。
【0188】
【0189】
【0190】
(実施例16)
乾燥時間を改善し、粘度を高めるためのピレンゼピン遊離塩基製剤のスクリーニング
より長期の臨床試験使用を支持するため、製剤の最適化を実施して、製剤の乾燥速度を改善し、製剤の粘度を増加させて、適用しやすさを改善した。Winfb34プラセボ製剤を、乾燥時間の延長の原因であると考えられているプロピレングリコール濃度の低下に特に焦点を当てて、winfb34ビヒクルの様々な変更を包含するように調製した。試験対象のパネルからのフィードバック(化粧品の触感及び乾燥時間を含む)に基づいて、winfb34ビヒクルを、それに応じて変更した。次に、ピレンゼピン系を含有する一連の4つの製剤を、ゲル化バージョンのwinfb34とともにwinfb34製剤に対して試験した。配合成分を以下のTable 16(表17)に示す。この流束研究の結果を
図17に示す。
【0191】
皮膚生検結果は、本明細書に開示される製剤の実施形態が、皮膚の表皮/真皮領域(生検試料の上層)に優先的に保持され、一方生検試料の下層(真皮及び脂肪組織)において、より少ない用量が保持されることを示していた(
図17)。製剤の投与後3時間、6時間、及び24時間での総送達用量も示されている。
【0192】
【0193】
(実施例17)
シクロメチコンを加えずに乾燥時間を改善し、粘度を高めるためのピレンゼピン遊離塩基製剤のスクリーニング
製剤の最適化を実施して、エンドユーザーへのアピールを改善し(すなわち、乾燥時間を改善し、粘度をわずかに増加させ)、WinFB53に特異的なシクロメチコンを除去した。次に、ピレンゼピン系を含有する一連の5つの製剤を、WinFB34リード製剤(単純化のためにBHTなし)に対して試験した。配合成分を以下のTable 17(表18)に示す。この流束研究の結果を
図18に示す。
【0194】
皮膚生検結果は、本明細書に開示される製剤の実施形態が、皮膚の表皮/真皮領域(生検試料の上層)に優先的に保持され、一方生検試料の下層(真皮及び脂肪組織)において、より少ない用量が保持されることを示していた(
図18)。製剤の投与後3時間、6時間、及び24時間での総送達用量も示されている。
【0195】
【0196】
(実施例18)
ヒト結果
実施例18.糖尿病性末梢神経障害を有する対象の処置
末梢神経障害を有する男性及び女性を、糖尿病(1型若しくは2型)、化学療法、HIV、外科手術、又は他の損傷若しくは傷害によって誘発される末梢神経障害に基づいてスクリーニングする。患者をスクリーニングして、皮膚の外観及び弾力性、末梢付属器官の強度及び柔軟性、歩行、足首反射、及び潰瘍の存在を評価することができ、Semmes Weinsteinフィラメント検査を実施する。場合によっては、筋電図検査、超音波療法、及び/又は血液検査も、研究の開始前に実施することができる。症状は、処置される末梢神経障害のタイプによって異なるが、典型的には、疼痛、しびれ、うずき、不均衡、線維束性収縮、筋けいれん、又は感覚の喪失を含む。対象の多くは、以前にCymbalta(登録商標)、Lyrica(登録商標)、又はNucynta(登録商標)により処置を受けていた場合がある。皮膚パンチ生検は、以下の標準的手順を使用して、各対象の脚のふくらはぎ及び/又は足首から得られる。
【0197】
この研究は、ふくらはぎで収集されたパンチ生検に存在するIENFDを増加させるための、WST-057の有効性を評価することであった。表皮内神経線維密度を、これらのパンチ生検において計数し、密度の変化を、スクリーニングと各訪問の終了との間に測定する。より多くの神経又はより高い神経密度は、より良好な感覚と相関している。
【0198】
ノーフォーク生活の質(Norfolk Quality of Life)(QOL)測定患者質問票
QOL測定に対するWST-057の1日1回の局所投与の影響を決定するために、これを実施する。スクリーニングから24週目の訪問までの間に、この尺度を使用して生活の質の改善を測定できるかどうかを判断するために、QOL質問票のスコアを各訪問から集計する。すべての症状(1~7)を、症状の有無を示す1又は0のいずれかとしてスコア付けする。質問31と32とを除いて、他の項目は5ポイントのLikert尺度(0~4、「問題なし」~「重度の問題」)に従ってスコア付けされる。質問31では、真ん中の項目である「良好」が0としてスコア付けされる。「非常に良好」は-1としてスコア付けされ、「極めて良好」は-2としてスコア付けされる。「普通」は1としてスコア付けされ、「不良」は2としてスコア付けされる。質問32では、真ん中の項目である「ほぼ同じ」が0としてスコア付けされる。「やや改善」は-1としてスコア付けされ、「大いに改善」は-2としてスコア付けされる。「やや悪化」は1としてスコア付けされ、「大いに悪化」は2としてスコア付けされる。スコアが高いほど、神経障害に関連する生活の質のスコアが低い数値よりも不良であることを示す。
【0199】
他の結果の測定:
定量的熱閾値(QST)定量的振動閾値(QVT)
QST及びQVTに対するWST-057の1日1回投与の影響を決定する。応答を測定する機器に取り付けられた感覚及び振動プローブを患者の足に適用し、スクリーニング訪問から投与後24週目まで改善があるかどうかを判断する。熱感覚及び振動感覚の閾値が低いほど、感覚が良好であり、神経障害が少ないことを示す。
【0200】
対象は、通常は就寝前に、ふくらはぎへの重症度に応じて、本発明の局所用溶液を1日1回足に同時に適用するように指示された。
【0201】
処置の1か月又は2か月後、ほとんどの対象において症候性の軽減が達成される。より重度の症状を伴う一部の対象は、症状の緩和を達成する前に、より多くの週の処置を必要とする。3mmの皮膚パンチ生検は、ベースライン時、及び対象の反応に応じて処置から3~6か月以内に得られる。対照生検及び処置後生検を分析して表皮神経線維密度を決定し、比較して処置の有効性を決定する。
【0202】
実施例18.1~18.6は、末梢神経障害の処置における本発明の溶液中の4%ピレンゼピンを含む局所組成物の成功した使用の例示である。実施例のそれぞれにおいて使用された局所用組成物では、低揮発性溶媒としてDMSOを使用し、ポリエーテル界面活性剤としてポリエチレングリコールアルキルエーテルを使用し、使用された局所用組成物中のピレンゼピンの濃度は、局所用組成物の総質量に対して4質量%であった。
【0203】
実施例18.1
糖尿病性末梢神経障害-1型
20歳から1型糖尿病を有する59歳の白人男性は、2年間、ふくらはぎにおける不随意筋肉運動を患い始めた。次の6か月間にわたって、対象は、足の鋭い痛み、ふくらはぎの筋肉のけいれん、足及び脚の痛み、バランスの問題、脚の運動を行う能力の喪失を含む、いくつかの健康上の問題を有していた。彼はEMG検査によって糖尿病性末梢神経障害と診断された。患者はまた、正常な睡眠を妨げるふくらはぎの線維束性収縮を患っていた。患者は就寝前に足及び脚に4%のピレンゼピン溶液を適用し始めた。3週間以内に、対象は、線維束性収縮がそれほど重度ではなく、眠ることができたことに気づいた。最終的に、他の症状は、次の数か月の使用にわたって軽減された。
【0204】
実施例18.2
真性糖尿病インスリン依存性末梢神経障害
52歳の黒人男性対象は、インスリン依存性糖尿病に続発する末梢神経障害による両足の痛み及びしびれを数年間患っていた。痛みが重度であるため、慢性疼痛で睡眠が妨げられた。従来の鎮痛剤でも役に立たなかった。ピレンゼピン4%溶液を、患者が、痛みを伴う領域付近の皮膚に毎日適用した。3か月以内に、対象は両足の痛み及びしびれの軽減を経験した。その後、対象は安らかな睡眠を達成した。対象は、溶液を緩和のために引き続き使用することに成功した。
【0205】
実施例18.3
外科的に誘発された末梢神経障害(HNP)
72歳の白人女性は、頸動脈手術を受け、首に6インチの瘢痕が残り、18か月間左頬(check)における神経が麻痺して、感覚を喪失した。4%ピレンゼピン溶液を、3週間毎日自分の顔に適用した。実質的感覚(senasation)(約90%)感(温度及び軽い接触)が顔領域に戻り、局所薬の中止(6か月)にもかかわらず残っている。
【0206】
実施例18.4
化学療法誘発性末梢神経障害の予防
ステージ3の子宮内膜癌を有する54歳のアジア人女性を、放射線化学療法(シスプラチン、次いで4ラウンドのカルボプラチン-タキソールの組み合わせ)により処置し、彼女は化学療法処置の数日前にピレンゼピン局所溶液の適用を受け、適用を続けた。患者は、カルボプラチンの第1のラウンドの後に神経障害が影響を与えると感じた。彼女は最初の数日間、化学療法による末梢神経障害によって引き起こされた足及び手の痛み及びしびれを発症した。彼女の末梢神経障害は治まった。彼女は、ピレンゼピンの局所用溶液を足及び手の皮膚に適用し続けた。痛み及びしびれは自分の手及び足に戻らなかった。
【0207】
実施例18.5
化学療法誘発性末梢神経障害
74歳の白人男性は、大基底細胞(Large Basal Cell)非ホジキンリンパ腫と診断された。彼は、ビンクリスチン及び高用量のプレドニゾンを含むR-CHOP療法により処置を受け、3週間間隔で6回の処置が投与された。化学療法サイクル全体の約半分で、彼は、座位から立ち上がることができなくなるまでに足が極端に衰弱した。化学療法過程の後、彼の足はしびれ、彼のバランスは影響を受けた。足の運動を行うと、足の制御は回復したが、感覚は回復しなかった。靴下のラインまでの足の皮膚及び指先は完全にしびれていた。対象は、シャワーを浴びた後、4%ピレンゼピン溶液を適用し始めた。数か月後、軽度の痛みを含む感覚及びうずきが戻った。バランスも改善した。更に数か月後、痛みは治まり、感覚及びバランスが改善した。
【0208】
実施例18.6
特発性末梢神経障害
76歳の白人女性は、未知の特発性の理由のために、自分の足及び手にしびれ及びうずきを感じ始め、彼女は自分の足で物体を避ける感覚を有することができず、アンバランスが増大した。彼女は、毎日4%のピレンゼピン溶液を適用し始めた。1か月の使用後、彼女の感覚は高まり始めた。彼女はまた、最初の月の後に理学療法に行き、そこでは電気刺激が適用された。セラピストは、彼女は、レベル8で刺激を感じることができたが、溶液を適用する前は、レベル25になるまで刺激を感じることができなかったと述べた。対象はまた、処置中に自分に適用されたゲルパックが加熱されていたことに初めて気づいた。数か月後、彼女にはもはやアンバランスはなく、彼女は足で物体にぶつかったりもしなかった。彼女は重大な更なる変化に気づかなかったが、1週間使用しないと状態が著しく悪化するであろうと述べた。
【国際調査報告】