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特表2022-524046調節可能なラッシュを有する弁機構を備えた船舶用船外機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】調節可能なラッシュを有する弁機構を備えた船舶用船外機
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/20 20060101AFI20220420BHJP
   F01L 1/18 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
F01L1/20 Z
F01L1/18 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552874
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(85)【翻訳文提出日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 GB2020050515
(87)【国際公開番号】W WO2020178582
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】1903076.6
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519042375
【氏名又は名称】コックス パワートレイン リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】アダム レイコック
【テーマコード(参考)】
3G016
【Fターム(参考)】
3G016AA02
3G016AA06
3G016BA27
3G016BB11
3G016BB17
3G016DA12
3G016EA02
(57)【要約】
内燃機関100を有する船舶用船外機2が提供される。内燃機関100は、少なくとも1つのシリンダを有するエンジンブロック110と、カム170と、弁ばね192とを有する弁組立体190と、ローラフィンガフォロワ160と、ピボットポスト180とを備える弁機構150とを有する。ピボットポスト180は、エンジンブロック110の固定本体112から延び、使用中にカム170によって偏向させられる時にローラフィンガフォロワ160がそれの周りで回動する接触面183を画定する。ピボットポスト180は、弁ばね192の作用に抗して、固定本体112に対して第1長手方向Aに移動可能である。取り外し可能なシム188が固定本体112とピボットポスト180の一部分182との間に配置され、ピボットポスト180を固定本体122から第1長手方向Aに離間させ、それによって、カム170とローラフィンガフォロワ160との間のラッシュの量を低減する。取り外し可能なシムは、少なくとも部分的にピボットポストのシャフト部の周囲に嵌合するように寸法決めされる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を有する船舶用船外機において、
前記内燃機関は、
少なくとも1つのシリンダを有するエンジンブロックと、
弁機構であって、前記弁機構は、
カムと、
弁と、前記弁を閉位置に向かって付勢するように構成された弁ばねとを有する弁組立体と、
弁端部とピボット端部とを有するローラフィンガフォロワと、
前記ローラフィンガフォロワの前記ピボット端部において前記エンジンブロックの固定本体から延びるピボットポストであって、使用中に前記ローラフィンガフォロワが前記カムによって偏向されたときにそれの周りで回動する接触面を画定するピボットポストとを備え、
前記ピボットポストは、前記弁ばねの作用に抗して前記固定本体に対して第1長手方向に移動可能であり、
取り外し可能なシムが、前記固定本体の支持面と前記ピボットポストの一部分との間に配置されており、前記固定本体から前記第1長手方向に前記ピボットポストを離間させ、それによって、前記カムと前記ローラフィンガフォロワとの間のラッシュの量を低減し、前記取り外し可能なシムは、前記ピボットポストのシャフト部の周囲に少なくとも部分的に嵌合するように寸法決めされている、弁機構とを備える、船舶用船外機。
【請求項2】
前記取り外し可能なシムは、開いた形状を有する、請求項1に記載の船舶用船外機。
【請求項3】
前記開いた形状は、前記ピボットポストの前記シャフト部の直径以上の幅を有する開口を画定する、請求項2に記載の船舶用船外機。
【請求項4】
前記取り外し可能なシムは、前記固定本体の前記支持面と前記ピボットポストの肩部との間に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の船舶用船外機。
【請求項5】
前記肩部は、前記ピボットポストを手で持ち上げることができる、半径方向外側面上において凹部を備える、請求項4に記載の船舶用船外機。
【請求項6】
前記肩部は、前記シャフト部の周囲に延びる環状フランジを備え、前記凹部は、前記環状フランジの前記半径方向外側面上において環状溝を備える、請求項5に記載の船舶用船外機。
【請求項7】
前記固定本体の前記支持面は、前記取り外し可能なシムが少なくとも部分的に受け入れられるリベート部を備え、
前記リベート部は、少なくとも1つの横断方向における前記固定本体に対する前記取り外し可能なシムの移動を拘束するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の船舶用船外機。
【請求項8】
前記リベート部は、前記取り外し可能なシムの直径及び形状に対応する直径及び形状を有する、請求項7に記載の船舶用船外機。
【請求項9】
前記取り外し可能なシムは、硬化鋼材料を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の船舶用船外機。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の船舶用船外機と、
前記ピボットポストがリフティングツールと共に第1長手方向に移動できるように前記ピボットポストに嵌合するように構成された把持部を備える特別に適合されたリフティングツールとを備える、キット。
【請求項11】
前記ピボットポストは、その半径方向外側面上において凹部を備え、前記把持部は、前記凹部内に少なくとも部分的に受け入れられるように構成される、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
前記凹部は、前記ピボットポストの両側に設けられ、前記把持部は、各プロングが前記ピボットポストの両側の前記凹部内に受け入れられるように離間させられた少なくとも2つのプロングを備える、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の船舶用船外機を備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カムとローラフィンガフォロワとを備えかつ調節可能なラッシュ(lash)を有する弁機構を備えた内燃機関を有する船舶用船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、船舶用船外機の市場はガソリンエンジンが主流である。ガソリンエンジンは、通常、ディーゼルエンジンよりも軽量である。しかし、より低い揮発性によるディーゼル燃料の安全性が向上し、母船との燃料適合性のために、軍事オペレーターからスーパーヨットの所有者まで、様々な利用者がディーゼルの船外機を好み始めている。さらに、ディーゼルは、船舶用途のためのより容易にアクセス可能なインフラストラクチャを備えた、より経済的な燃料源である。
【0003】
現在の排出基準を満たすために、近代的な自動車用のディーゼルエンジンは、通常、自然吸気のディーゼルエンジンと比較して、出力及び効率を改善するために、直接シリンダ噴射及びターボ過給などの高度な充填システムを使用する。直接噴射では、加圧された燃料が燃焼室に直接的に噴射される。これにより、より完全な燃焼を達成することが可能となり、その結果、エンジンの経済性及び排出規制が良好となる。ターボ過給は、自然吸気式のディーゼルエンジンと比較して、より高い出力、より低い排出レベル及び改善された効率となることが一般的に知られている。ターボ過給されたエンジンでは、加圧された吸気が吸気マニホールドに導入され、余分な量の空気を燃焼室に強制的に流入させることにより、効率と出力を向上させる。ターボ過給されたディーゼルエンジンは、自然吸気式のディーゼルエンジンよりも広い空間を占めるのが一般的である。これは、一般に、機関室内にターボチャージャのための十分な空間がしばしば存在する自動車用途では問題ではないが、カウル部の下の利用可能な空間が極端に限定され得る船舶用船外機では、問題となり得る。ターボ過給されたエンジンでは特に深刻であるが、包装空間が限られているという問題は、燃料の種類にかかわらず、あらゆるタイプの船舶用船外機で問題となる可能性がある。
【0004】
1つ又は複数のカム及び1つ又は複数のローラフィンガフォロワを有する弁機構を有する内燃機関の場合、使用中に不必要な燃料消費及び排出を回避するために、弁機構内のラッシュが適切なレベルにあることを保証することが重要である。ラッシュは、それぞれの弁が閉じて着座しているときに、カム面とローラフィンガフォロワとの間の基本クリアランスとして特徴付けることができ、使用中の熱膨張又は摩耗による弁機構内の構成要素の長さの変化を補償するために必要である。このクリアランスが小さすぎると、弁が正確に装着されない場合がある。このクリアランスが大きすぎると、弁を緩やかに開閉するように設計されているカムプロファイルの傾斜部分をバイパスしてしまい、カムとローラフィンガフォロワがカムプロファイルのより急勾配部分で接触したときに、より急激な弁開閉をもたらしうる。これにより、ノイズが発生したり、弁機構の構成要素に過大に負荷されて磨耗したりすることがある。
【0005】
正確なラッシュを保証するために、製造公差のばらつきや設定又は装着の工程起因したばらつきを補償するために、弁棒の先端部にシムを入れることが知られている。これは、内燃機関の寿命を通して定期的に点検する必要があり、通常、異なる厚さのシムを使用して試行と測定を繰り返す作業を伴う。これは、正確なラッシュを設定することができる有効な手段であるが、通常は弁棒及び弁ばね組立体にアクセスするためにカムシャフトを取り外す必要があり、点検修理中にばねコレットなどの構成要素の損失を招くことがある、時間のかかる作業である。内燃機関は、通常、搭載時には、弁機構を船の後部にわたって垂直に向けているので、構成要素の損失は、船舶用船外機では特に問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術に関連する1つ又は複数の課題を克服又は緩和する船舶用船外機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、内燃機関を有する船舶用船外機であって、内燃機関は、少なくとも1つのシリンダと、カムを有する弁機構とを備えるエンジンブロックと、弁と、弁を閉位置に付勢するように構成された弁ばねとを有する、弁組立体と、弁端部とピボット端部とを有するローラフィンガフォロワと、ローラフィンガフォロワのピボット端部におけるエンジンブロックの固定本体から延びるピボットポストとを有する、内燃機関を有する船舶用船外機において、ピボットポストは、使用中にカムによって偏向されたときにローラフィンガフォロワがそれの周りで回動する接触面を画定し、ピボットポストは、固定本体に対して弁ばねの作用に抗して第1長手方向に移動可能であり、取り外し可能なシムが、固定本体の支持面とピボットポストの一部分分との間に配置され、ピボットポストを固定本体から第1長手方向に離間させ、それによってカムとローラフィンガフォロワとの間のラッシュの量を低減する、船舶用船外機が提供される。
【0008】
この構成により、内燃機関に搭載される時にローラフィンガフォロワを持ち上げ、それによって弁ばねを無事に圧縮するために、ピボットポストを第1の方向に手で動かすだけで、ラッシュを調節することができる。次いで、異なる厚さの取り外し可能なシムをピボットポストと固定本体との間に挿入し、正確なラッシュの量を保証することができる。これは、弁組立体にアクセスするために、弁機構の部品を取り外す必要なく、容易にラッシュを調節できるということを意味する。これは、弁組立体への点検修理のためのアクセスがほとんど又は全くなく、内燃機関には特に有益である。ピボットポストを離すと、ピボットポストがシム上に着座し、所定の位置にロックされる。特許請求された構成では、内燃機関を再時間調節する必要がなく、ねじ式の調節器やロックナットを設ける必要もない。
【0009】
シムは、ピボットポストの任意の適切な部分と固定本体の支持面との間に配置することができる。例えば、取り外し可能なシムは、取り外し可能なシムの端面に対して配置されうる。好ましくは、取り外し可能なシムは、少なくとも部分的にピボットポストのシャフト部の周囲に嵌合するように寸法決めされる。取り外し可能なシムは、取り外し可能なシムとシャフト部との間にクリアランスが存在するように、少なくとも部分的にピボットポストのシャフト部の周囲に嵌合するように寸法決めすることができる。取り外し可能なシムは、ピボットポストのシャフト部の周囲に堅く嵌合するように寸法決めされうる。
【0010】
好ましくは、取り外し可能なシムは、開いた形状を有する。この開いた形状により、取り外し可能なシムが、横断方向からシャフト部の周囲に配置されうるように構成されうる。例えば、取り外し可能なシムは、c字形状の取り外し可能なシムとしうる。これにより、取り外し可能なシムの横断方向における挿入及び取り外しが容易になることが分かっている。すなわち、横断方向とは取り外し可能なシムの長手軸線に対して横断する方向である。他の例では、取り外し可能なシムは、例えば、中央開口を通してシャフト部の端面を挿入することによって、ピボットポストのシャフト部が受け入れられうる中央開口を画定する閉じた形状を有しうる。
【0011】
好ましくは、この開いた形状は、ピボットポストのシャフト部の直径以上の幅を有する開口を画定する。この構成により、シムは、弾性変形にせよ塑性変形にせよ、シムを変形させる必要なく、シャフト部の周囲に配置することができる。これにより、挿入中にシムの寸法が変更され、それによってシムによって提供されるラッシュの量が意図せず変更される危険が回避される。他の例では、開口は、シャフト部の直径よりも小さな幅を有しうる。上記の例では、シムは、シャフト部の周囲に挿入されるときに拡張されなければならない。
【0012】
ピボットポストは、シャフト部及び肩部を備えうる。好ましくは、取り外し可能なシムは、固定本体の支持面とピボットポストの肩部との間に配置される。この肩部は、シャフト部から横断方向に延びている。このようにして、取り外し可能なシムは、使用中に肩部と支持面との間に挟まれる。
【0013】
上記の実施形態のいずれにおいても、ピボットポストは、1つ又は複数の突出部、凹部、又は開口を備えることができ、これにより、ピボットポストは、例えば特別に適合されたツールを用いて手で持ち上げることができる、
【0014】
ピボットポストが肩部を有する場合、好ましくは、肩部は半径方向外側面上に凹部を有し、これにより、ピボットポストは、例えば特別に適合されたツールを用いて手で持ち上げることができる。これは、ピボットポストを把握することができる、特に便利な手段を提供することが分かった。
【0015】
好ましくは、肩部は、シャフト部の周囲に延びる環状フランジを備え、凹部は、環状フランジの半径方向外側面上に環状溝を備える。肩部は、シャフト部の外周の一部分のみの周囲に延びるフランジを備えうる。
【0016】
好ましくは、固定本体の支持面は、取り外し可能なシムがその中に少なくとも部分的に受け入れられる、リベート部を備える。リベート部又は凹部は、少なくとも1つの横断方向における固定本体に対する取り外し可能なシムの移動を拘束するように構成されうる。これにより、取り外し可能なシムの保持が容易になる。
【0017】
好ましくは、リベート部は、取り外し可能なシムの直径及び形状に対応する直径及び形状を有する。このようにして、リベート部は、任意の横断方向における固定本体に対する取り外し可能なシムの移動を拘束することができる。これにより、取り外し可能なシムの保持がさらに容易になる。リベート部は、取り外し可能なシムの厚さよりも小さい、等しい又は大きい深さを有しうる。好ましくは、リベート部は、取り外し可能なシムが配置されるピボットポストの部分の最大直径よりも大きな直径、例えば、ピボットポストの肩部の最大直径よりも大きな直径を有する。これにより、弁機構がリベート部の深さよりも小さな厚さを有する取り外し可能なシムの使用を必要とする場合に、ピボットポストの一部分を少なくとも部分的にリベート部内に受け入れることができる。
【0018】
取り外し可能なシムは、好ましくは剛性である。取り外し可能なシムは、硬化金属材料を備えることが好ましい。取り外し可能なシムは、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、及び銅合金の内の1つ以上を備えうる。取り外し可能なシムは、好ましくは、硬化鋼材料を備える。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様の船舶用船外機と、ピボットポストがリフティングツールと共に第1長手方向に移動できるようにピボットポストに嵌合するように構成された把持部を備えた、特別に適合されたリフティングツールとを備える、キットが提供される。
【0020】
これにより、ピボットポストを持ち上げることができる便利な手段が提供される。特別に適合されたリフティングツールは、ラッシュ調節の前にツールの調節が不要である、固定された構成を有することができる。把持部は、ピボットポストの一方の側のみに嵌合するように構成されうる。把持部は、ピボットポストの2つの対向する側面のみに嵌合するように構成されうる。把持部は、少なくとも部分的にピボットポストの周囲に嵌合するように構成されうる。把持部は、ピボットポストを通って延びる開口によって画定される内面などの、ピボットポストの内面に嵌合するように構成されうる。
【0021】
特別に適合されたリフティングツールの把持部は、ピボットポストの外面から延びる突出部に嵌合するように構成されうる。把持部は、ピボットポストを通って延びる開口に嵌合するように構成されうる。
【0022】
好ましくは、ピボットポストは、その半径方向外側面上に凹部を備え、把持部は、少なくとも部分的に凹部内に受け入れられるように構成される。
【0023】
ピボットポストが肩部を備える場合、凹部は、肩部の半径方向外側面上に設けられうる。ピボットポストが、その半径方向外側面上に凹部を備える場合、該凹部は、ピボットポストの単一の側に設けられうる。好ましくは、凹部は、ピボットポストの両側に設けられる。好ましくは、この両側は、直径方向に対向している。凹部は、ピボットポストに外接しうる。凹部は、ピボットポストに外接する環状溝としうる。凹部は不連続としうる。把持部は、好ましくは、各プロングがピボットポストの両側の凹部内に同時に受け入れられうるように離間させられた、少なくとも2つのプロングを有する。例えば、把持部は、実質的に平行な2つのプロングを有しうる。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様の船舶用船外機を備える船舶が提供される。
【0025】
ピボットポストがそこから延びる固定本体は、エンジンブロックの任意の適切な部分を備えうる。好ましくは、固定本体は、エンジンブロックのシリンダヘッドの一部分を備える。
【0026】
エンジンブロックは、単一のシリンダを備えうる。好ましくは、エンジンブロックが複数のシリンダを備える。
【0027】
本明細書で使用される「エンジンブロック」は、エンジンの少なくとも1つのシリンダが設けられる中実構造を指す。この用語は、シリンダヘッドとクランクケースを備えたシリンダブロックの組み合わせ又はシリンダブロックのみを指す場合がある。エンジンブロックは、単一のエンジンブロック鋳造物から形成することができる。エンジンブロックは、例えばボルトを用いて互いに接続される複数の別々のエンジンブロック鋳造物から形成されうる。
【0028】
エンジンブロックは、単一のシリンダバンクを備えうる。
【0029】
エンジンブロックは、第1シリンダバンク及び第2シリンダバンクを備えうる。第1シリンダバンクと第2シリンダバンクは、V字構成で配置されうる。
【0030】
エンジンブロックは、3つのシリンダバンクを備えうる。3つのシリンダバンクは、扇形の構成で配置されうる。エンジンブロックは、4つのシリンダバンクを備えうる。これらの4つのシリンダバンクは、W字の構成又は2つのV字の構成で配置されうる。
【0031】
内燃機関は、任意の適切な向きで配置しうる。好ましくは、内燃機関は、垂直軸線内燃機関(vertical axis internal combustion engine)である。上記の内燃機関では、内燃機関は、機関内に垂直に取り付けられたクランク軸を備える。
【0032】
内燃機関は、ガソリンエンジンとしうる。好ましくは、内燃機関はディーゼルエンジンである。内燃機関は、ターボチャージャ付きのディーゼルエンジンとしうる。
【0033】
本出願の範囲内において、特許請求の範囲及び/又は以下の説明及び図面における、先の段落に示された様々な態様、実施形態、実施例、及び、代替案、特にその個々の特徴は、独立に又は任意の組合せで理解されることが明確に意図されている。すなわち、全ての実施形態及び/又は任意の実施形態の特徴は、組み合わされる特徴が不適合でない限り、任意の方法及び/又は組み合わせで組み合わせることができる。特に、本発明の第1の態様の特徴は、本発明の第2の態様のキットや本発明の第3の態様の船舶に等しく適用可能であり、逆に、本発明の第2の態様の特徴や本発明の第3の態様の特徴は、本発明の第1の態様に適用可能である。本出願人は、最初に提出された請求項を変更又は新たな請求項を提出する権利を留保する。この権利には、最初に請求項されたものではないが、他の請求項の任意の特徴に依存するようにかつ/又は組み込むように、最初に提出された請求項を補正する権利が含まれる。
【0034】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下に、単なる例として、添付図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は船舶用船外機を備える小型船舶の概略側面図である。
図2a図2aは傾斜位置における船舶用船外機の模式図を示す。
図2b図2bは、船舶用船外機の様々な位置調節された位置の一つ及び水域内の船舶の対応する方向を示す。
図2c図2cは、船舶用船外機の様々な位置調節された位置の一つ及び水域内の船舶の対応する方向を示す。
図2d図2dは、船舶用船外機の様々な位置調節された位置の一つ及び水域内の船舶の対応する方向を示す。
図3図3は本発明の一実施形態による船舶用船外機の概略断面を示す。
図4図4は、図3の船舶用船外機の内燃機関の弁機構の一部分の拡大断面図を示す。
図5図5は、図4の弁機構のピボットポストと共に、図4の弁機構と共に使用するために特別に適合されたリフティングツールの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
最初に、図1を参照すると、船舶用船外機2を備えた船舶1の概略側面図が示されている。船舶1は、連絡船やスキューバダイビングボートなどの、船舶用船外機と共に使用するのに適した任意の種類の船舶としうる。図1に示す船舶用船外機2が船舶1の船尾部に取り付けられている。船舶用船外機2は、通常、船舶1の船体内に受け入れられている燃料タンク3に接続されている。リザーバ又は燃料タンク3からの燃料は、燃料ライン4を介して船舶用船外機2に供給される。燃料ライン4は、燃料タンク3と船舶用船外機2との間に配置された1つ又は複数のフィルタと低圧ポンプと(水が船舶用船外機2に入るのを防止するための)分離器タンクを集合的に配置したものとしうる。
【0037】
以下にさらに詳細に説明するように、船舶用船外機2は、概ね、上側部分21と中間部分22と下側部分23の3つの部分に分割される。中間部分22及び下側部分23は、しばしば、集合的に脚部として知られており、この脚部は、排気システムを収容する。プロペラ8は、船舶用船外機2のギアボックスとも呼ばれる、下側部分23において、プロペラシャフト上に回転可能に配置されている。当然のことながら、作動中、プロペラ8は、少なくとも部分的には水中に沈められており、船舶1を推進するために、様々な回転速度で作動させることができる。
【0038】
典型的には、船舶用船外機2は、ピボットピンによって、船舶1の船尾部に回動可能に接続されている。ピボットピンの回りの回動により、操作者が公知の方法で水平軸線の回りで船舶用船外機2を傾斜させて位置調整することができる。更に、当技術分野でよく知られているように、船舶用船外機2は、船舶1の船尾部に回動可能に取り付けられており、これにより、略直立軸線を中心に回動して、船舶1を操縦することができる。
【0039】
傾斜とは、船舶用船外機2全体が完全に水中から出て上昇することができるように、船舶用船外機2を十分に上昇させる動きである。船舶用船外機2の傾斜動作は、船舶用船外機2の電源を切った状態又は中立状態で行うことができる。しかしながら、いくつかの例では、船舶用船外機2は、浅い海域での作動を可能にするように、傾斜範囲での船舶用船外機2の限定的な運転を可能にするように構成されうる。従って、船舶用エンジンアセンブリは、主に、脚部の長手軸線が実質的に垂直方向にある状態で作動させられる。船舶用船外機2の脚部の長手軸線と実質的に平行である船舶用船外機2のエンジンのクランク軸は、船舶用船外機2の通常作動中では概ね垂直方向に配向されるであろうが、特定の作動条件下、特に浅い水中で船舶で作動させられる場合には、非垂直方向に配向させることもできる。また、エンジンアセンブリの脚部の長手軸線に実質的に平行に配向されている船舶用船外機2のクランク軸は、垂直クランク軸配置と呼ぶこともできる。また、エンジンアセンブリの脚部の長手軸線に対して実質的に垂直に配向された船舶用船外機2のクランク軸は、水平クランク軸配置と呼ぶこともできる。
【0040】
前述したように、適切に作動するためには、船舶用船外機2の下側部分23が水中に延びる必要がある。しかし、極めて浅い海域では、又は、トレーラーから船舶を進水させる際、船舶用船外機2の下側部分23が下方に傾斜した位置にある場合に、海底で引きずられたり、ボートが傾斜したりすることがある。船舶用船外機2を傾斜させて図2aに示す位置のように上方に傾斜した位置に傾けることによって、下側部分23及びプロペラ8の損傷を防止する。
【0041】
対照的に、位置調整は、図2b~図2dの3つの例に示すように、船舶用船外機2を完全に下降した位置から数度上方への比較的に小さな範囲にわたって移動させる機構である。位置調整は、船舶1の燃費と加速と高速作動の最良の組合せを提供する方向にプロペラ8の推力を方向付けるのに役立つ。
【0042】
船舶1が平面上にある場合(船舶1の重量が、静水揚力ではなく、流体力学的揚力によって主に支持される場合)、船首上げ構成は、抗力が比較的少なく、比較的大きな安定性及び効率をもたらす。これは、例えば図2bに示すように、ボート又は船舶1の中心線が約3度~5度で上向きである場合に一般的に当てはまる。
【0043】
傾斜が大きすぎると、図2cに示す位置などのように、水中で船舶1の船首が高すぎる状態になる。この形態では、船舶1の船体が水を押しており、その結果、より多くの空気抵抗が生じるので、性能と経済性は減少する。上方への傾斜が大きすぎると、プロペラが通気し、性能がさらに低下することもある。さらに厳しい場合には、船舶1が水中を飛び跳ね、操作者と乗客がボード外に投げ出されてしまう可能性がある。
【0044】
下方に傾斜すると、船舶1の船首が下がり、立ち上がりからの加速に役立つ。図2dに示すように、下方への傾斜が大きすぎると、船舶1が水中を「かきわけ(plough)」、燃費が落ちて速度が上がりにくくなる。高速では、下方への傾斜により船舶1が不安定になることさえある。
【0045】
図3を参照すると、本発明の一実施形態による船舶用船外機2の概略断面が示されている。船舶用船外機2は、前述した傾斜及び位置調整作動を行うための傾斜及び位置調整機構10を備えている。この実施形態では、傾斜及び位置調整機構10は、電気制御システムを介して船舶用船外機2を傾斜させ位置調整するように作動させることができる流体圧アクチュエータ11を有する。あるいは、操作者が油圧アクチュエータを使用するのではなく、手で船舶用船外機2を回動させる、手動傾の斜及び位置調整機構を提供することも実現可能である。
【0046】
以上のように、船舶用船外機2は、概ね3つの部分に分割されている。発動機としても知られる上側部分21は、船舶1に動力を供給するための内燃機関100を有する。カウリング部25が内燃機関100の周囲に配置される。
【0047】
上側部分21又は発動機に隣接して下方に延びている、中間部分22及び下側部分23が設けられている。下側部分23は、中間部分22に隣接して下方に延びており、中間部分22は、上側部分21を下側部分23に接続している。中間部分22と下側部分23は、共に、船舶用船外機2の脚部を形成する。中間部分22は、内燃機関100とプロペラシャフト29との間に垂直方向に延びる駆動軸27を収容し、駆動軸27は、フローティング・コネクタ33(例えば、スプライン接続部)を介して内燃機関のクランク軸31に接続されている。駆動軸27の下側端部には、駆動軸27の回転エネルギーを水平方向にプロペラ8に供給するギアボックス又は伝達装置(変速機)が設けられている。より詳細には、駆動軸27の底端部は、プロペラ8のプロペラシャフト29に回転接続された一対のかさ歯車37、39に接続されたかさ歯車35を有しうる。プロペラシャフト29及びかさ歯車37、39は、下側部分23の下側端部において魚雷状の歯車ケーシング41内に収容される。
【0048】
中間部分22及び下側部分23は、排気システムを形成し、この排気システムは、内燃機関100の排気ガス出口170からの排気ガス及び船舶用船外機2からの排気ガスを輸送するための排気ガス流路を画定する。
【0049】
図3に概略的に示すように、内燃機関100は、燃焼室がそれぞれで画定された複数のシリンダ115を有するエンジンブロック110と、エンジンブロック内のシリンダ115に空気の流れを送るための吸気マニホールド120と、シリンダ115からの排気ガスの流れを方向付けるように構成された排気マニホールド125とを有する。内燃機関100は、さらに、弁機構150を有し、この弁機構150によって、吸気及び排気ガスの燃焼室への流入及び燃焼室からの排出を可能にするように燃焼室の開閉が制御される。弁機構150は、図4との関連でより詳細に論じられる。この例では、内燃機関100は、排気マニホールド125から吸気マニホールド120への排気ガスの流れの一部分を再循環させるように構成された任意選択の排気再循環(EGR)システム130を更に有する。EGRシステムは、再循環された排気ガスを冷却するための熱交換器135又は「EGR冷却器」を有する。内燃機関100は、過給され、そのため、排気マニホールド125及び吸気マニホールド120に接続されたターボチャージャ140をさらに有する。使用時には、排気ガスはエンジンブロック110内の各シリンダから排出され、排気マニホールド125によってエンジンブロック110から離れる方向に方向付けられる。内燃機関がEGRシステム130を有する場合、排気ガスの一部分は、排気再循環が必要とされるときに、熱交換器135に分流されうる。残りの排気ガスは、排気マニホールド125からターボチャージャ140のタービンハウジング141に送られ、ターボチャージャ140及び内燃機関の排気出口145を介した内燃機関100を出る前にタービンを通して方向付けられる。回転するタービンによって駆動させられるターボチャージャの圧縮機ハウジング142は、吸気口146を通して外気を吸い込み、加圧された吸気の流れを吸気マニホールド120に送る。内燃機関100は、また、エンジンブロック内の可動部品を潤滑するためのエンジン潤滑流体回路と、ターボチャージャ潤滑システム(図3には示されていない)とを有する。
【0050】
図4は、図3の内燃機関100の弁機構150の一部分の拡大断面図を示す。弁機構150は、ローラフィンガフォロワ160と、カム170と、ピボットポスト180と、弁組立体190とを有する。弁機構150の構成要素は、エンジンブロックのシリンダヘッド112に取り付けられたカムカバー155内に封入されている。ローラフィンガフォロワ160は、弁端部162及びピボット端部163を有する延長本体161を有する。ローラ164は、弁端部162とピボット端部163との間の孔166内に位置するシャフト165によって、延長本体161上に回転可能に取り付けられている。延長本体161のピボット端部163は、その下側において湾曲した凹部167を有する。延長本体161の弁端部162は、その下側において、外向きに湾曲した弁棒接触面168を有する。カム170は、カムローブ171及びヒール部178を有する。ヒール部178は、カム170の基礎円を形成する。カムローブ171は、カム面上で凸状の突出部を形成し、開放ランプ部172と、開放フランク部173と、ノーズ174と、閉鎖フランク部175と、閉鎖ランプ部(図示せず)とによって画定される。カムローブ171は、ローラ164に接触して延長本体161を変位させ、それによって弁組立体190を作動させるように構成される。カム170は、回転可能なカムシャフト177に固定される。
【0051】
ピボットポスト180は、シャフト部181と、シャフト部181から横断方向に延びるシャフト部181の上側端部における肩部182とを備えている。ピボットポスト180の上側端部は、ローラフィンガフォロワが作動中にカムによって偏向されたときにローラフィンガフォロワがその周りを回動する接触面を画定する湾曲したヘッド部183を備えている。ピボットポスト180の湾曲したヘッド部183は、ローラフィンガフォロワ160の湾曲した凹部167内に受け入れられている。湾曲した凹部167及び湾曲したヘッド部183は、それぞれ、球形としうる。ピボットポスト内において、油流路185が、油孔186から湾曲したヘッド部183に延びており、作動中に湾曲したヘッド部183及び湾曲した凹部167を潤滑するための油の流れを提供する。肩部182は、その半径方向外側面上に環状溝184の形態の凹部を有する。シャフト部181は、エンジンブロックのシリンダヘッド112の孔111から延びている。シリンダヘッド112は、エンジンブロックに対して所定位置に固定されている点で、エンジンブロックの固定本体である。シャフト部181は、矢印Aで示すように、シャフト部181の長手軸線187に沿ってシリンダヘッド112から離れるように第1長手方向にピボットポストがシリンダヘッド112に対して移動可能なように、孔111内に摺動可能に受けられている。シリンダヘッド112は、その上面においてリベート部113を有している。リベート部113は、ピボットポストの肩部182の下側に面する支持面114を画定する。開いた形状を有する取り外し可能なシム188が、シャフト部181の上側端部の周囲に配置され、肩部182と支持面114との間に挟まれている。このようにして、肩部182は、取り外し可能なシム188の厚さに等しいクリアランスだけ、第1長手方向にシリンダヘッド112から離間させられる。好ましくは、取り外し可能なシム188の開いた形状は、ピボットポスト180のシャフト部181の直径以上の幅を有する開口(図示せず)を画定する。このようにして、取り外し可能なシム118は、偏向や変形を必要とせずに、シャフト部181の周囲に配置することができる。取り外し可能なシム188は、リベート部113の直径に対応する外径を有することができ、その結果、取り外し可能なシム188は、シリンダヘッド112に対して横断方向に拘束される。
【0052】
弁組立体190は、ポペット弁191と、ポペット弁191を閉位置に向かって付勢するように構成された弁ばね192とを有する。従来の弁組立体と同様に、ポペット弁は、弁棒193と、閉位置にあるときにシリンダヘッド112内のポートの弁座(図示せず)に嵌合するように構成された弁ヘッド(図示せず)とで形成される。弁棒193は、硬化された先端部194を有し、弁ばね192の上側端部においてかつ弁棒の先端部194に隣接して、コレット195及びリテーナ196によって弁ばね192に接続される。弁棒193は、シリンダヘッド112内の弁ガイド197内で摺動可能に支持される。弁棒シール198が弁ばね192の基部に設けられかつ弁棒193及び弁ガイド197の周囲に延びており、油が燃焼室に入るのを防止する。また、弁棒シール198は、弁棒193及び弁ガイド197に油を潤滑し、弁棒193と弁ガイド197の相対的な移動を容易にするのに役立つ。
【0053】
作動中、ポペット弁191を開くために、カムシャフト177の回転により、カムローブ171は、まず、開放ランプ部172で、次いで、開放フランク部173及びノーズ174で、ローラ164を押し下げる。ローラ164がカムローブ171によって押し下げられると、延長本体161は、湾曲した凹部167とピボットポスト180の湾曲したヘッド部183との接触面の周りでシリンダヘッド112に向かって回動させられる。これにより、ローラフィンガローラ160の弁端部162における弁棒接触面168が、弁棒193の先端部194を弁ばね192の作用に抗して下方に押し、弁を開くようになる。ポペット弁191は、カムローブ171のノーズ174がローラ164に接触しているときに全開である。弁を閉じるために、カムシャフト177の連続的な回転により、閉鎖フランク部175、次いで、閉鎖ランプ部をローラ164に接触させる。これにより、ローラフィンガフォロワ160は、弁棒の先端部194及び弁棒接触面168を介して、弁ばね192によってシリンダヘッド112から離れるように回動させられる。理解されるように、ポペット弁191の最大変位又は「リフト(lift)」は、ノーズ174の幾何学的形状によって決定され、一方、ポペット弁191の加速度は、ランプ部及びフランク部の幾何学的形状と、カムシャフト177の回転速度とによって決定される。
【0054】
内燃機関が冷えているとき、使用中の熱膨張及び摩耗による弁機構の構成要素の長さの変化を補償するために、設計クリアランス又は「ラッシュ」が、ローラ164とカム170のヒール部178との間に存在する。ラッシュが小さすぎると、内燃機関が高温のときに弁ヘッドが閉位置に正確に着座しない場合がある。ラッシュが大きすぎると、ローラ164と開放ランプ部及び閉鎖ランプ部との間にクリアランスが存在し、過大な弁加速につながる可能性がある。これにより、ノイズや耐久性の問題が発生する可能性がある。また、ラッシュの量は、摩耗に起因して内燃機関の寿命にわたって変化する可能性がある。そのため、弁機構に正確な量のラッシュがあることを定期的に保証することが重要である。
【0055】
図4の構成では、ラッシュは以下のように調節できる。まず、ローラをカムの基礎円部に載せて、ローラ164とカム170との間に存在するラッシュを、例えば、隙間ゲージを用いて測定する。ラッシュの調節が必要な場合、ピボットポスト180は、シリンダヘッド112から離れるように第1長手方向Aにおいて持ち上げられ、ローラフィンガフォロワ160の延長本体161で弁ばね192を圧縮する。これは、取り外し可能なシム188とピボットポスト180の肩部182との間にクリアランスを一時的に導入して、取り外し可能なシム188をシャフト部181の周囲から取り除くことを可能にする。次いで、交換用の取り外し可能なシムが、その厚さ及び必要なラッシュに基づいて選択され、肩部182の下のシャフト部181の周囲に挿入される。交換用シムが所定の位置に収まると、ピボットポスト180は、解放され、弁ばね192の膨張によって反対方向に移動させられ、弁ばね192の作用の下で、交換用シムを肩部182と支持面114との間の所定の位置にロックする。取り外し可能なシム同士の間の厚さの差は、カム170に対するローラフィンガフォロワ160の位置を変更するために、ピボットポスト180がわずかに異なる位置に戻ることを意味する。次いで、ローラ164とカム170との間のクリアランスを測定して、正確なラッシュが存在するかどうかを確認することができる。正確なラッシュが存在していないことを確認した場合は、正確な量のラッシュを提供する交換用シムが挿入されるまで、このプロセスを容易に繰り返すことができる。これは、弁機構又は弁組立体の構成要素を取り外す必要なく、また、弁コレットなどの弁機構の構成要素を紛失するリスクなく、ラッシュを容易に調節することができる、ということを意味する。理解されるように、ラッシュは、より薄い取り外し可能なシムを挿入することによって増加させることができ、より厚い取り外し可能なシムを挿入することによって減少させることができる。
【0056】
図5は、弁機構150のピボットポスト180を持ち上げるための特別に適合されたリフティングツール200を示す。リフティングツール200は、ハンドル部分210と把持部220とを有する。この例では、把持部220は、クリアランス222によって離間させられた、平行な2つのプロング221を有する。クリアランス222は、肩部182の外径ODよりも小さいが、肩部182の半径方向外側面に画定された環状溝184の最小直径IDよりも大きくなければならない。このようにして、各プロングは、リフティングツール200のいかなる調節も必要とせずに、ピボットポスト180の両側の環状溝184内に同時に受け入れることができる。次いで、ピボットポスト180は、取り外し可能なシムを取り外して交換できるようにするために、リフティングツール200を第1長手方向に動かすことによって、手でシリンダヘッドから離れるように便利に持ち上げることができる。
【0057】
本発明は、1つ以上の好ましい実施形態を参照して上述したが、添付の特許請求の範囲に規定されているように、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更又は修正を行いうることが理解されよう。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
【国際調査報告】