(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】駆動軸と冷却システムを備えた船舶用船外機
(51)【国際特許分類】
B63H 23/36 20060101AFI20220420BHJP
F01P 11/04 20060101ALI20220420BHJP
F01P 5/12 20060101ALI20220420BHJP
B63H 20/14 20060101ALI20220420BHJP
B63H 20/28 20060101ALI20220420BHJP
B63H 23/34 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
B63H23/36
F01P11/04 F
F01P5/12 A
B63H20/14 100
B63H20/28 100
B63H23/34 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552919
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(85)【翻訳文提出日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 GB2020050521
(87)【国際公開番号】W WO2020178588
(87)【国際公開日】2020-09-10
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519042375
【氏名又は名称】コックス パワートレイン リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ バラット
(57)【要約】
本発明の船舶用船外機は、室52、53と、室内に水を引き込むために船舶用船外機が作動する水域内に使用時に沈められるように配置された少なくとも1つの入口45、47とを備えるハウジング6と、内燃機関100を備えるエンジンアセンブリと、ハウジング内に配置された駆動軸27とを備えるエンジンアセンブリであって、駆動軸は、推進装置8を駆動するために内燃機関に連結されている、エンジンアセンブリと、内燃機関を冷却するための冷却システムであって、引き込まれた水を冷却材流路43に沿ってハウジングを通って搬送して内燃機関に送るように構成された冷却システムと、駆動軸がハウジング内に引き込まれた水から密封される、スリーブ59とを備え、駆動軸の少なくとも一部分がスリーブ内に収容されている、船舶用船外機。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶用船外機であって、前記船舶用船外機は、
室と、前記室に水を引き込むために、前記船舶用船外機が作動する水域に使用時に沈められるように配置された少なくとも1つの入口とを備えるハウジングと、
内燃機関を備えるエンジンアセンブリと、
前記ハウジング内に配置された駆動軸であって、推進装置を駆動するように前記内燃機関に連結されている、駆動軸と、
前記内燃機関を冷却するための冷却システムであって、引き込まれた水を前記ハウジングを通る冷却材流路に沿って搬送して前記引き込まれた水を前記内燃機関に送るように構成された、冷却システムと、
前記駆動軸がスリーブによって前記ハウジング内の引き込まれた水から密封される、スリーブであって、第1端部及び第2端部を有する、スリーブとを備え、
前記駆動軸の少なくとも一部分は前記スリーブ内に収容されている、船舶用船外機。
【請求項2】
前記スリーブは、前記駆動軸が前記スリーブに対して回転可能であるように前記ハウジング内に固定されている、請求項1に記載の船舶用船外機。
【請求項3】
前記スリーブは、複数のスリーブ部を備え、各スリーブ部は、前記駆動軸の異なる部分を収容する、請求項1又は2に記載の船舶用船外機。
【請求項4】
前記ハウジングは、アダプタプレートによって前記エンジンアセンブリに接続された排気システムを備え、前記スリーブの第1端部が前記アダプタプレートに密封して連結されている、請求項1~3のいずれかに記載の船舶用船外機。
【請求項5】
第1スリーブ部は、前記ハウジングを前記アダプタプレートに密封して連結する、請求項4に記載の船舶用船外機。
【請求項6】
前記第1スリーブ部は前記ハウジングと一体に形成されている、請求項5に記載の船舶用船外機。
【請求項7】
前記第1スリーブ部は前記ハウジングと一体的に鋳造されている、請求項6に記載の船舶用船外機。
【請求項8】
送水ポンプ駆動機構がポンプ駆動機構ハウジング内に配置されており、第2スリーブ部が前記第1スリーブ部と前記ポンプ駆動機構ハウジングとの間に密封して連結されている、請求項5又は6に記載の船舶用船外機。
【請求項9】
前記船舶用船外機は、前記推進装置のための駆動伝達装置を備え、前記駆動伝達装置は、駆動伝達装置ハウジング内に配置されており、前記スリーブの第2端部は、前記伝達装置ハウジングとの間にシールが形成されるように前記伝達装置ハウジングに取り付けられる、請求項1~6のいずれかに記載の船舶用船外機。
【請求項10】
送水ポンプ駆動機構がポンプ駆動機構ハウジング内に配置されており、第2スリーブ部が前記第1スリーブ部と前記ポンプ駆動機構ハウジングとの間に密封して連結されており、第3スリーブ部が前記伝達装置ハウジングと前記ポンプ駆動機構ハウジングとの間に密封して連結されている、請求項9に記載の船舶用船外機。
【請求項11】
前記冷却システムは、前記引き込まれた水を前記冷却材流路に沿って推進させるように構成された送水ポンプを備える、請求項1~7又は9のいずれかに記載の船舶用船外機。
【請求項12】
前記送水ポンプは、前記駆動軸とは別体であり、前記駆動軸によって駆動されるように構成されている、請求項11に記載の船舶用船外機。
【請求項13】
前記送水ポンプは、送水ポンプ駆動軸を有するポンプ駆動機構を備え、前記送水ポンプ駆動軸は、前記駆動軸とは別体であり、前記駆動軸によって駆動されるように構成されている、請求項12に記載の船舶用船外機。
【請求項14】
前記送水ポンプは、1:1より大きな歯車比を有するポンプ駆動機構によって前記駆動軸に連結されている、請求項12に記載の船舶用船外機。
【請求項15】
前記ポンプ駆動機構は、前記駆動軸に同心円状に取り付けられた駆動歯車と、前記送水ポンプ駆動軸に同心円状に取り付けられた従動歯車とを備え、前記駆動歯車と従動歯車は噛み合い係合している、請求項14に記載の船舶用船外機。
【請求項16】
前記駆動軸は垂直方向に延びている、請求項1~15のいずれか一項に記載の船舶用船外機。
【請求項17】
前記内燃機関はディーゼルエンジンである、請求項1~16のいずれか一項に記載の船舶用船外機。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の船舶用船外機を備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用船外機に関する。本願は船舶用船外機に関するが、本教示は他の任意の内燃機関にも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
船舶を推進するために、船外機が船尾部に取り付けられることが多い。船外機は、一般に、内燃機関を有する上側の発動機と、駆動軸を介して内燃機関に接続されたプロペラハブを有する下側部分と、排気ガスを上側部分から下側部分に輸送するための排気ガス流路を画定する中間部分との3つの部分で形成される。
【0003】
カウリング部内の利用可能な空間が限られているため、内燃機関の冷却の要求が増す可能性がある。これは、主に、カウリング部が密接しているために、内燃機関から発生する熱の周囲への放散が制限される可能性があるためである。内燃機関内の高い作動温度は、内燃機関の性能と耐久性を損なう可能性がある。したがって、内燃機関が十分に冷却されることを保証することが重要である。
【0004】
船舶用船外機のハウジングは、船舶用船外機が作動させられる水域に使用時に沈められることを意図した1つ又は複数の開口を有する。これにより、作動中においてハウジング内(すなわち、中間部分内)の室の中に水が引き込まれる。十分な冷却を確保するために、船舶用船外機は、通常、開回路の冷却システムを有する。送水ポンプは、内燃機関内の少なくとも1つの冷却材通路に流路に沿って船舶用船外機のハウジング内の室内に引き込まれた水の少なくとも一部分を搬送し、1つ又は複数の排水管を介して水域に戻る前に内燃機関から熱を取り出すように設けられている。
【0005】
公知のシステムでは、ハウジング内の室内に引き込まれた水は、駆動軸の表面上を流れ、その結果、例えば腐食による駆動軸の劣化が生じる。この劣化を最小限に抑えるために、駆動軸の異なる部分は、次いで共に溶接される異なる材料から形成されうる。水に曝される駆動軸の部分は、しばしば、比較的に高い強度の材料(例えば、高強度鋼)から形成される未露光部分を有する耐食材料(例えば、ステンレス鋼)から形成される。この駆動軸の複合した溶接構造により、駆動軸の製造コストが増し、準最適な駆動軸の機械的物性となる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術に関連する1つ又は複数の課題を克服又は緩和する、改良された船舶用船外機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によれば、船舶用船外機において、船舶用船外機は、水を室内に取り込むために、船舶用船外機が作動する水域に使用時に沈められるように配置された、室と少なくとも1つの入口とを備えるハウジングと、内燃機関を備えるエンジンアセンブリと、ハウジング内に配置された駆動軸であって、推進装置を駆動するために内燃機関に連結されている駆動軸と、内燃機関を冷却するための冷却システムであって、冷却システムは、引き込まれた水を内燃機関に送るために、ハウジングを通って冷却材流路に沿って引き込まれた水を搬送するように構成された冷却システムと、駆動軸がスリーブによってハウジング内の引き込まれた水から密封される、スリーブとを備え、スリーブは、第1端部及び第2端部を有し、駆動軸の少なくとも一部分がスリーブ内に収容されている、船舶用船外機が提供される。
【0008】
従来、駆動軸は、冷却材流路に沿って設けられている。この構成では、駆動軸が冷却材流路から離れて密封され、ひいては、駆動軸と引き込まれた水との間の相互作用を減少させることを保証する。
【0009】
冷却材流路から離れて密封された駆動軸を設けることにより、船舶用船外機が使用中に作動する水域からの水と駆動軸との相互作用が防止され、これにより、引き込まれた水と駆動軸との相互作用によって生じる駆動軸の腐食が低減される。これにより、駆動軸を製造するために比較的に広範囲の材料を使用することが可能になり、これにより、比較的に安価な材料を使用することが可能になる。
【0010】
以前のシステムでは、船舶用船外機が使用中に作動している水域からの水が、例えば伝達装置に入る船舶用船外機の残りの部分に漏れないようにするために、駆動軸上に動的シールが必要であった。駆動軸を冷却材流路から密封することで、駆動軸に設けるべき動的シールの必要性をなくすことができる。
【0011】
スリーブは、駆動軸がスリーブに対して回転可能であるようにハウジング内に固定されうる。
【0012】
(内部で回転する駆動軸を有する)ハウジング内に固定スリーブを設けることにより、スリーブとハウジングとの間の動的シールの必要性が取り除かれ、動的シールよりも信頼性が高い。
【0013】
スリーブは、複数のスリーブ部を備えることができ、各スリーブ部は、駆動軸の異なる部分を収容する。
【0014】
この構成は、有利的に、スリーブの材料を駆動軸の異なる部分に沿って変化させることができる。これにより、スリーブのコストが低減され、製造が容易になる。
【0015】
ハウジングは、アダプタプレートによってエンジンアセンブリに接続された排気システムを備えうる。スリーブの第1端部は、アダプタプレートに密封して連結されうる。
【0016】
スリーブの第1端部(すなわち上側端部)をアダプタプレートに密封する構成によって、引き込まれた水がエンジンアセンブリ内に漏れるのを防止する。
【0017】
第1スリーブ部は、ハウジングをアダプタプレートに密封して連結することができる。
【0018】
第1スリーブ部は、ハウジングと一体的に、例えば一体的に鋳造しうる。
【0019】
ハウジングと一体に形成されたスリーブの一部分を設けることで、船舶用船外機の重量を低減する。
【0020】
送水ポンプ駆動機構は、ポンプ駆動機構ハウジング内に配置されうる。第2スリーブ部分は、第1スリーブ部分とポンプ駆動機構ハウジングとの間に密封して連結されうる。
【0021】
この構成により、有利的には、送水ポンプ(すなわち、インペラ)を駆動するための構成も、冷却材流路を流れる水から離れて密封されることを保証する。
【0022】
船舶用船外機は、推進装置のための駆動伝達装置を備えることができ、駆動伝達装置は、駆動伝達装置ハウジング内に配置される。スリーブの第2端部は、伝達装置ハウジングとの間にシールが形成されるように伝達装置ハウジングに取り付けることができる。
【0023】
スリーブの第2端部(すなわち、下側端部)を駆動伝達部に密封するこの構成は、引き込まれた水が駆動伝達部の中に漏れるのを防止する。
【0024】
送水ポンプ駆動機構は、ポンプ駆動機構ハウジング内に配置されうる。第3スリーブ部分は、伝達装置ハウジングとポンプ駆動機構ハウジングとの間に密封して連結されうる。
【0025】
冷却システムは、引き込まれた水を冷却材流路に沿って推進させるように構成された送水ポンプを備えうる。
【0026】
この構成により、内燃機関を冷却するのに十分な水の流れがあることを保証する。
【0027】
送水ポンプは、駆動軸とは別体とすることができ、駆動軸によって駆動されるように構成されている。
【0028】
この構成により、ポンプを駆動軸に直接的に取り付ける必要なく、ポンプインペラを駆動軸によって駆動することができる。
【0029】
送水ポンプは、送水ポンプ駆動軸を有するポンプ駆動機構を備えうる。送水ポンプ駆動軸は、駆動軸とは別体とし、駆動軸によって駆動されるように構成されうる。
【0030】
送水ポンプは、1:1より大きな歯車比を有するポンプ駆動機構によって駆動軸に連結されうる。
【0031】
「ステップアップ(step-up)」伝達装置を設けることにより、インペラの回転速度を駆動軸の回転速度よりも大きくすることができ、冷却システムを通して引き込まれた水の流量を増加させることができるので、内燃機関の冷却が向上することが証明される。
【0032】
ポンプ駆動機構は、駆動軸に同心円状に取り付けられた駆動歯車と、送水ポンプ駆動軸に同心円状に取り付けられた従動歯車とを備え、駆動歯車と従動歯車は噛み合い係合している。
【0033】
駆動軸に回転可能に固定された駆動歯車を設けることにより、駆動軸によって伝達される原動力を用いて冷却システムを駆動することができることを保証する。
【0034】
駆動軸は、垂直方向に延びていてもよい。
【0035】
内燃機関は、ディーゼルエンジンとしうる。
【0036】
エンジンブロックは、単一のシリンダを備えうる。好ましくは、エンジンブロックが複数のシリンダを備える。
【0037】
本明細書で使用される「エンジンブロック」は、エンジンの少なくとも1つのシリンダが設けられる中実構造を指す。この用語は、シリンダヘッドとクランクケースを備えたシリンダブロックの組み合わせ又はシリンダブロックのみを指す場合がある。エンジンブロックは、単一のエンジンブロック鋳造物から形成することができる。エンジンブロックは、例えばボルトを用いて互いに接続される複数の別々のエンジンブロック鋳造物から形成されうる。
【0038】
エンジンブロックは、単一のシリンダバンクを備えうる。
【0039】
エンジンブロックは、第1シリンダバンク及び第2シリンダバンクを備えうる。第1シリンダバンクと第2シリンダバンクは、V字構成で配置されうる。
【0040】
エンジンブロックは、3つのシリンダバンクを備えうる。3つのシリンダバンクは、扇形の構成で配置されうる。エンジンブロックは、4つのシリンダバンクを備えうる。これらの4つのシリンダバンクは、W字の構成又は2つのV字の構成で配置されうる。
【0041】
内燃機関は、任意の適切な向きで配置しうる。好ましくは、内燃機関は、垂直軸線内燃機関(vertical axis internal combustion engine)である。上記の内燃機関では、内燃機関は、機関内に垂直に取り付けられたクランク軸を備える。
【0042】
内燃機関は、ガソリンエンジンとしうる。好ましくは、内燃機関はディーゼルエンジンである。内燃機関は、ターボチャージャ付きのディーゼルエンジンとしうる。
【0043】
本発明の第2態様によれば、第1態様の船舶用船外機を備える船舶が提供される。
【0044】
本出願の範囲内において、特許請求の範囲及び/又は以下の説明及び図面における、先の段落に示された様々な態様、実施形態、実施例、及び、代替案、特にその個々の特徴は、独立に又は任意の組合せで理解されることが明確に意図されている。すなわち、全ての実施形態及び/又は任意の実施形態の特徴は、組み合わされる特徴が不適合でない限り、任意の方法及び/又は組み合わせで組み合わせることができる。本出願人は、最初に提出された請求項を変更又は新たな請求項を提出する権利を留保する。この権利には、最初に請求項されたものではないが、他の請求項の任意の特徴に依存するようにかつ/又は組み込むように、最初に提出された請求項を補正する権利が含まれる。
【0045】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下に、単なる例として、添付図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は船舶用船外機を備える小型船舶の概略側面図である。
【
図2a】
図2aは、傾斜位置における船舶用船外機の模式図を示す。
【
図2b】
図2bは、船舶用船外機の様々な位置調整された位置の一つ及び水域内の船舶の対応する方向を示す。
【
図2c】
図2cは、船舶用船外機の様々な位置調整された位置の一つ及び水域内の船舶の対応する方向を示す。
【
図2d】
図2dは、船舶用船外機の様々な位置調整された位置の一つ及び水域内の船舶の対応する方向を示す。
【
図3】
図3は一実施形態による船舶用船外機の概略断面図を示す。
【
図4】
図4は、
図3の船舶用船外機の中間部分及び下側部分の概略断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
最初に、
図1を参照すると、船舶用船外機2を備えた船舶1の概略側面図が示されている。船舶1は、連絡船やスキューバダイビングボートなどの、船舶用船外機と共に使用するのに適した任意の種類の船舶としうる。
図1に示す船舶用船外機2が船舶1の船尾部に取り付けられている。船舶用船外機2は、通常、船舶1の船体内に受け入れられている燃料タンク3に接続されている。リザーバ又は燃料タンク3からの燃料は、燃料ライン4を介して船舶用船外機2に供給される。燃料ライン4は、燃料タンク3と船舶用船外機2との間に配置された1つ又は複数のフィルタと低圧ポンプと(水が船舶用船外機2に入るのを防止するための)分離器タンクを集合的に配置したものとしうる。
【0048】
船舶用船外機2は、船舶用船外機2の様々な部品が収容されている、ハウジング6を備える。以下にさらに詳細に説明するように、船舶用船外機2は、概ね、上側部分21と中間部分22と下側部分23の3つの部分に分割される。中間部分22及び下側部分23は、しばしば、集合的に脚部として知られており、この脚部は、排気システムを収容する。プロペラ8を有する推進装置が設けられている。プロペラ8は、船舶用船外機2のギアボックスとも呼ばれる、下側部分23において、プロペラシャフト上に回転可能に配置されている。当然のことながら、作動中、プロペラ8は、少なくとも部分的には水中に沈められており、船舶1を推進するために、様々な回転速度で作動させることができる。
【0049】
典型的には、船舶用船外機2は、ピボットピンによって、船舶1の船尾部に回動可能に接続されている。ピボットピンの回りの回動により、操作者が公知の方法で水平軸線の回りで船舶用船外機2を傾斜させて位置調整することができる。更に、当技術分野でよく知られているように、船舶用船外機2は、船舶1の船尾部に回動可能に取り付けられており、これにより、略直立軸線を中心に回動して、船舶1を操縦することができる。
【0050】
傾斜とは、船舶用船外機2全体が完全に水中から出て上昇することができるように、船舶用船外機2を十分に上昇させる動きである。船舶用船外機2の傾斜動作は、船舶用船外機2の電源を切った状態又は中立状態で行うことができる。しかしながら、いくつかの例では、船舶用船外機2は、浅い海域での作動を可能にするように、傾斜範囲での船舶用船外機2の限定的な運転を可能にするように構成されうる。従って、船舶用エンジンアセンブリは、主に、脚部の長手軸線が実質的に垂直方向にある状態で作動させられる。船舶用船外機2の脚部の長手軸線と実質的に平行である船舶用船外機2のエンジンのクランク軸は、船舶用船外機2の通常作動中では概ね垂直方向に配向されるであろうが、特定の作動条件下、特に浅い水中で船舶で作動させられる場合には、非垂直方向に配向させることもできる。また、エンジンアセンブリの脚部の長手軸線に実質的に平行に配向されている船舶用船外機2のクランク軸は、垂直クランク軸配置と呼ぶこともできる。また、エンジンアセンブリの脚部の長手軸線に対して実質的に垂直に配向された船舶用船外機2のクランク軸は、水平クランク軸配置と呼ぶこともできる。
【0051】
前述したように、適切に作動するためには、船舶用船外機2の下側部分23が水中に延びる必要がある。しかし、極めて浅い海域では、又は、トレーラーから船舶を進水させる際、船舶用船外機2の下側部分23が下方に傾斜した位置にある場合に、海底で引きずられたり、ボートが傾斜したりすることがある。船舶用船外機2を傾斜させて
図2aに示す位置のように上方に傾斜した位置に傾けることによって、下側部分23及びプロペラ8の損傷を防止する。
【0052】
対照的に、位置調整は、
図2b~
図2dの3つの例に示すように、船舶用船外機2を完全に下降した位置から数度上方への比較的に小さな範囲にわたって移動させる機構である。位置調整は、船舶1の燃費と加速と高速作動の最良の組合せを提供する方向にプロペラ8の推力を方向付けるのに役立つ。
【0053】
船舶1が平面上にある場合(船舶1の重量が、静水揚力ではなく、流体力学的揚力によって主に支持される場合)、船首上げ構成は、抗力が比較的少なく、比較的大きな安定性及び効率をもたらす。これは、例えば
図2bに示すように、ボート又は船舶1の中心線が約3度~5度で上向きである場合に一般的に当てはまる。
【0054】
傾斜が大きすぎると、
図2cに示す位置などのように、水中で船舶1の船首が高すぎる状態になる。この形態では、船舶1の船体が水を押しており、その結果、より多くの空気抵抗が生じるので、性能と経済性は減少する。上方への傾斜が大きすぎると、プロペラが通気し、性能がさらに低下することもある。さらに厳しい場合には、船舶1が水中を飛び跳ね、操作者と乗客がボード外に投げ出されてしまう可能性がある。
【0055】
下方に傾斜すると、船舶1の船首が下がり、立ち上がりからの加速に役立つ。
図2dに示すように、下方への傾斜が大きすぎると、船舶1が水中を「かきわけ(plough)」、燃費が落ちて速度が上がりにくくなる。高速では、下方への傾斜により船舶1が不安定になることさえある。
【0056】
図3を参照すると、本発明の一実施形態による船舶用船外機2の概略断面が示されている。船舶用船外機2は、前述した傾斜及び位置調整作動を行うための傾斜及び位置調整機構10を備えている。この実施形態では、傾斜及び位置調整機構10は、電気制御システムを介して船舶用船外機2を傾斜させ位置調整するように作動させることができる流体圧アクチュエータ11を有する。あるいは、操作者が油圧アクチュエータを使用するのではなく、手で船舶用船外機2を回動させる、手動の傾斜及び位置調整機構を提供することも実現可能である。
【0057】
以上のように、船舶用船外機2は、概ね3つの部分に分割されている。発動機としても知られる上側部分21は、船舶1に動力を供給するための内燃機関100を有するエンジンアセンブリを収容する。カウリング部25が内燃機関100の周囲に配置される。カウリング部25は、ハウジング6の一部分を形成しうる。カウリング部25は、ハウジング6に取り外し可能に接続される別個の構成要素として設けることができる。ハウジング6は、脚部の周囲にハウジングを形成し、カウリング部は、船舶用船外機2の上側部分21を収容する。
【0058】
上側部分21又は発動機に隣接して下方に延びている、中間部分22及び下側部分23が設けられている。下側部分23は、中間部分22に隣接して下方に延びており、中間部分22は、上側部分21を下側部分23に接続している。中間部分22は、内燃機関100とプロペラシャフト29との間に延びる駆動軸27を収容する。駆動軸27は、その上側端部で、フローティング・コネクタ33(例えば、スプライン接続部)を介して内燃機関のクランク軸31に接続されている。駆動軸27の下側端部には、駆動軸27の回転エネルギーを水平方向にプロペラ8に供給するギアボックス又は駆動伝達装置(変速機)が設けられている。ギアボックス又は駆動伝達装置は伝達装置ハウジング61を備える。より詳細には、駆動軸27の底端部は、プロペラ8のプロペラシャフト29に回転接続された一対のかさ歯車37、39に接続されたかさ歯車35を有しうる。
【0059】
中間部分22及び下側部分23は、排気システムを形成し、この排気システムは、内燃機関100からの排気ガス及び船舶用船外機2からの排出ガスを輸送するための排気ガス流路を画定する。排気システムは、内燃機関100が取り付けられているアダプタプレート41によってエンジンアセンブリに接続されている。
【0060】
図3に模式的に示すように、船舶用船外機2は、船舶用船外機が使用時に作動している水域から取り出された水を、ハウジング6を通って内燃機関100に延びる冷却材流路43に沿って搬送する冷却システムを備えている。水は、内燃機関100を冷却するために、少なくとも1つの送水ポンプ(
図4及び
図5参照)によって、冷却材流路43の周囲で推進される。
【0061】
船舶用船外機2のハウジング6は、船舶用船外機2が作動する水域に、使用時に沈められることを意図した1つ又は複数の開口を有する。換言すると、使用時には、船舶用船外機2が作動する水域からの水は、船舶1が静止している水域の水線の下に位置するハウジング6内の1つ又は複数の開口を介してハウジング6内に入る。後述するように、図示の構成では、1つ又は複数の開口が下側部分23に設けられている。
【0062】
示している実施形態では、ハウジング6は、下側部分23において、第1入口45と第2入口47とを有する。図示されていないが、ハウジング6は、ハウジング6の対向側に、第1入口45及び第2入口47と実質的に同じ位置に第3入口及び第4入口を備えている。代替の構成では、冷却材流路43は、任意の適切な数の入口(例えば、1つ、2つ、5つ等)を有することができ、かつ/又は、これらの入口の1つ又は複数が中間部分22に設けられうる。
【0063】
この水線の下方に配置された開口が配置されていることにより、使用時には、船舶用船外機2が作動している水が、ハウジング6内の室52、53内に引き込まれることとなる。このようにして、ハウジング6内の室52、53には、船舶用船外機2が作動する水域から引き込まれた水が連続的に提供される。より詳細に後述するように、駆動軸27の表面がハウジング6内に引き込まれた水に曝されないように、駆動軸27の表面はハウジング6内に密封される。
【0064】
次に、
図4及び
図5を参照すると、中間部分22及び下側部分23が図示されている。
【0065】
使用時には、船舶用船外機2が使用される水域からの水は、第1入口45及び第2入口47を介してハウジング6の室52、53に入る。送水ポンプ49は、ポンプハウジング77内でその中心軸線を中心として回転するように構成されたインペラ75を有する。送水ポンプ49には、ポンプ入口79を介して室52、53から引き込まれた水が供給される。
【0066】
回転しているインペラ75は、引き込まれた水がインペラ75を横断して移動するときに引き込まれた水を加速し、送水ポンプ49の前後の圧力差を生成する。これにより、引き込まれた水の加圧流が、送水ポンプ49を介して冷却材流路43に沿って内燃機関100に方向付けられる。内燃機関100からの熱を吸収するために、引き込まれた水は、1つ又は複数の排水管(図示せず)を介して水域に戻る前に、内燃機関100内の少なくとも1つの冷却材通路(図示せず)に沿って流れる。このようにして、冷却システムは、ハウジング6内に水を引き込み、引き込まれた水を冷却材流路43に沿って内燃機関100に推進させるように構成される。
【0067】
示している実施形態では、送水ポンプ49は、駆動軸27から離れて(すなわち、それに直接的に取り付けられていない)配置されておりかつ駆動軸27によって駆動されるように構成された、遠心式ポンプである。すなわち、送水ポンプ49のインペラ75は、駆動軸27の回転によって回転させられる。例えば可撓性インペラポンプなどの代替タイプの送水ポンプを船舶用船外機2に使用しうることは理解されるであろう。また、代替の構成では、より詳細に後述するように、送水ポンプ49は、駆動軸27に、又は、駆動軸27の周りのスリーブに直接的に取り付けられうることが理解されるであろう。
【0068】
送水ポンプ49を駆動するために、船舶用船外機2は、駆動軸27に接続されたポンプ駆動機構63を有している。ポンプ駆動機構63は、駆動軸27の回転エネルギーを送水ポンプ49に供給してインペラ75を駆動するように構成されている。ポンプ駆動機構63は、ポンプ駆動機構ハウジング73内に配置される。
【0069】
図示の構成では、送水ポンプ49は送水ポンプ駆動軸71を有する。送水ポンプ駆動軸71は、駆動軸27から離れており(すなわち、軸線方向に偏倚しており)、駆動軸27によって駆動されるように構成されている。
【0070】
この例では、送水ポンプ49は、駆動軸27から送水ポンプ49に駆動力を伝達するように構成された駆動歯車65の形態のポンプ駆動機構によって駆動軸27に連結されている。駆動歯車65は駆動軸27に同心円状に取り付けられている。ポンプ駆動機構63は、さらに、送水ポンプ駆動軸71に同心円状に取り付けられた従動歯車66を有する。駆動歯車65と従動歯車66は、駆動力が駆動軸27から送水ポンプ49に伝達されることができるように噛み合い係合している。
【0071】
いくつかの実施形態では、送水ポンプ49は、1:1より大きな歯車比を有するポンプ駆動機構63によって駆動軸27に連結される。上記の「ステップアップ駆動(step-up drive)」は、例えば、送水ポンプ49の直径が利用可能な空間によって制限されている場合などの、駆動軸27の典型的な回転速度が送水ポンプ49を通る十分な流量を提供することができない場合に有利となり得る。
【0072】
船舶用船外機2は、引き込まれた水(すなわち、室52、53内の引き込まれた水と冷却材流路43に沿って流れる引き込まれた水)と駆動軸27の表面との間の相互作用が防止されるか又は少なくとも最小限に抑えられるように構成及び配置される。これにより、駆動軸27の全体が、耐食性部分を有する必要なく、高強度材料(例えば、高強度鋼)から製造されることができる。
【0073】
図示の構成では、船舶用船外機2はスリーブ59を有し、このスリーブ59によって駆動軸27が冷却材流路43から密封される。駆動軸27をハウジング6内(すなわち、室52、53内及び冷却材流路43内)に引き込まれた水から密封するために、駆動軸27の少なくとも一部分はスリーブ59内に収容される。
【0074】
示している実施形態では、スリーブ59は、ハウジング6内に固定されるように配置されている。換言すると、スリーブ59がハウジング6内に取り付けられると、スリーブ59はハウジング6に対して回転せず、駆動軸27はスリーブ59内でスリーブ59に対して回転する。このようにして、スリーブ59とハウジング6との間に静的シールを設ける又は形成することができ、冷却材流路43から離れた駆動軸27の密封性の信頼性を向上させることができる。
【0075】
スリーブ59は、その下側端部又は「第2」端部において、スリーブ59と伝達装置ハウジング61との間にシールが形成されるように、伝達装置ハウジング61に取り付けられる。示している実施形態では、スリーブ59は、その下側端部において、ねじ山を介して伝達装置ハウジング61に取り付けられているが、スリーブ59と伝達装置ハウジング61との間にシールを設けるために、任意の適切な取付け構成を利用しうることは理解されよう。
【0076】
スリーブ59は、その上側端部又は「第1」端部において、スリーブ59とアダプタプレート41との間にシールが形成されるように、アダプタプレート41に取り付けられている。図示の構成では、スリーブ59は、その上側端部において、圧入(締り嵌めとしても知られる)を介してアダプタプレート41に取り付けられ、スリーブ59とアダプタプレート41との間にシールを提供するために2つのOリング81を利用する。スリーブ59とアダプタプレート41との間、例えばねじ式篏合にシールを設けるために、任意の適切な取付け構成を利用することができることは理解されるであろう。
【0077】
図示の例では、スリーブ59は、一連の別個の部分として設けられている。スリーブ59は、第1スリーブ又は上側スリーブ83と、第2スリーブ又は中間スリーブ85と、第3スリーブ又は下側スリーブ87の形態で設けられている。
【0078】
第1スリーブ83は、その上側端部で、アダプタプレート41との間にシールが形成されるように、アダプタプレート41に取り付けられる。第1スリーブ83は、中間部分22のハウジング6に一体化されている。すなわち、第1スリーブ83は中間部分22と同じ鋳造物から形成される。示している実施形態では、中間部分22及び第1スリーブ83はアルミニウムから形成されているが、材料は用途に応じて変えられることが理解されるであろう。
【0079】
第2スリーブ85は、第1スリーブ83に接続されている。図示の構成では、第2スリーブ85は、締り嵌めを介して第1スリーブ83に接続されている。すなわち、第2スリーブ85の上側端部は、締り嵌めを介して第1スリーブの下側端部に接続されている。図示されていないが、第2スリーブ85と第1スリーブ83との間の接続を更に密封するために、Oリングが設けられうることは理解されるであろう。さらに、第2スリーブ85と第1スリーブ83との間、例えばねじ式の取り付け構成にシールを設けるために、任意の適切な取り付け構成を利用しうることが理解されるであろう。
【0080】
第2スリーブ85及び第3スリーブ87は、ポンプ駆動機構ハウジング73が第2スリーブ85と第3スリーブ87の間に介在するように、ポンプ駆動機構ハウジング73に接続されている。このようにして、駆動軸27及びポンプ駆動機構63は、冷却材流路43から密封される。
【0081】
示している実施形態では、第2スリーブ85は、ポンプ駆動機構ハウジング73と第2スリーブ85との間にシールが形成されるように、締まり嵌めを介してポンプ駆動機構ハウジング73に接続されている。図示されていないが、第2スリーブ85とポンプ駆動機構ハウジング73との間の接続をさらに密封するためにOリングが設けられうることが理解されよう。さらに、第2スリーブ85とポンプ駆動機構ハウジング73との間、例えばねじ式取り付け構成にシールを設けるために、任意の適切な取り付け構成を利用しうることが理解されるであろう。示している実施形態では、第2スリーブ85はプラスチック材料から形成されているが、銅基合金(例えば青銅)又は鋼合金などの任意の適切な材料を使用することができることは理解されよう。
【0082】
示している実施形態では、第3スリーブ87は、ギアボックス又は駆動伝達装置に一体化されている。第3スリーブ87は、ポンプ駆動機構ハウジング73と第3スリーブ87との間にシールが形成されるように、ねじ山を介してポンプ駆動機構ハウジング73に接続される。締り嵌めなどの異なる接続構成を使用しうることが理解されよう。示している実施形態では、第2スリーブ85はアルミニウムから形成されているが、銅基合金(例えば青銅)又は鋼合金などの任意の適切な材料を使用することができることは理解されよう。
【0083】
本発明は、1つ以上の好ましい実施形態を参照して上述したが、添付の特許請求の範囲に規定されているように、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更又は修正を行いうることが理解されよう。
【国際調査報告】