(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】シフト機構を備えた船舶用船外機
(51)【国際特許分類】
B63H 20/14 20060101AFI20220420BHJP
B63H 23/30 20060101ALI20220420BHJP
F16H 63/32 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
B63H20/14 100
B63H23/30
F16H63/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552950
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(85)【翻訳文提出日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 GB2020050519
(87)【国際公開番号】W WO2020178586
(87)【国際公開日】2020-09-10
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519042375
【氏名又は名称】コックス パワートレイン リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ バラット
【テーマコード(参考)】
3J067
【Fターム(参考)】
3J067AB23
3J067AC05
3J067DB32
3J067EA04
3J067EA52
3J067GA21
(57)【要約】
船舶用船外機2は、歯車ケーシング40と、プロペラシャフト軸線34を中心として歯車ケーシング内で回転可能なプロペラシャフト29と、駆動歯車35を有する駆動軸27と、駆動歯車をプロペラシャフトに選択的に係合させるためのクラッチ機構50と、クラッチ機構を作動させるように構成されたシフト機構60とを備えている。シフト機構は、歯車ケーシングに対して固定されておりかつプロペラシャフト軸線に沿って又は平行に延びる支持軸70と、支持軸に沿って摺動可能でありかつクラッチ機構のクラッチ部材53に接続されるシフトシャトル80と、支持軸に回動可能に取り付けられたシフトフィンガ90と、解放可能な連結具によりシフトフィンガに連結されたシフトロッド61とを備える。シフトフィンガは、シフトフィンガがシフトロッドによってシフトロッド軸線を中心にして回転させられる時にシフトシャトルを支持軸に沿って移動させてクラッチ部材を作動させるように構成されている。上記船舶用船外機を有する船舶も提供される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶用船外機において、前記船舶用船外機は、
歯車ケーシングと、
プロペラシャフト軸線を中心として前記歯車ケーシングの中で回転可能なプロペラシャフトと、
駆動歯車を有する駆動軸と、
前記駆動歯車を前記プロペラシャフトに選択的に係合させるクラッチ機構であって、前記駆動軸から前記プロペラシャフトに選択的に駆動力を伝達するように構成されたクラッチ部材を備えるクラッチ機構と、
前記歯車ケーシングに収容されておりかつ前記クラッチ機構を作動させるように構成されたシフト機構であって、前記シフト機構は、
前記歯車ケーシングに対して固定されておりかつ前記プロペラシャフト軸線に沿って又は平行に延びる支持軸と、
前記支持軸に沿って摺動可能でありかつ前記クラッチ部材に接続されているシフトシャトルと、
前記支持軸上に回動自在に取り付けられたシフトフィンガと、
前記歯車ケーシングの壁を通って延びているシフトロッドであって、前記シフトフィンガがシフトロッド軸線を中心として前記シフトロッドに対して回動可能に固定されるように、解放可能な連結具によって前記シフトフィンガに連結されるシフトロッドとを備え、
前記シフトフィンガが前記シフトロッドによって前記シフトロッド軸線の回りで前記シフトフィンガが回転させられたときに前記シフトシャトルが前記シフトフィンガによって前記支持軸に沿って移動させられて前記クラッチ部材を作動させるように、前記シフトフィンガが前記シフトシャトルと係合する、シフト機構とを備える、船舶用船外機。
【請求項2】
前記シフトフィンガは、前記シフトロッドを前記シフトフィンガに連結するために前記シフトロッドが取り外し可能に受け入れられる、キャビティを備える、請求項1に記載の船舶用船外機。
【請求項3】
前記解放可能な連結具は、前記シフトロッド及び前記シフトフィンガの一方における凹部と、前記シフトロッド及び前記シフトフィンガの他方における対応する突出部とを備え、
前記凹部は、前記シフトロッド軸線に沿った方向に開放しており、
前記凹部及び前記突出部は、前記突出部が前記凹部内に受け入れられたときに、前記シフトロッド軸線を中心とする前記シフトロッドと前記シフトフィンガとの間の相対的な回転を防止するように構成されている、請求項1に記載の船舶用船外機。
【請求項4】
前記シフトフィンガは、前記シフトロッドを前記シフトフィンガに連結するために前記シフトロッドが取り外し可能に受け入れられるキャビティを備え、前記解放可能な連結具の前記突出部は、前記キャビティを横断して延びるピンを備える、請求項3に記載の船舶用船外機。
【請求項5】
前記凹部は、前記シフトロッドの端面内にスロットを備え、前記シフトロッドは、前記シフトロッドが前記シフトフィンガの前記キャビティ内に受け入れられたときに前記ピンが前記スロット内に受け入れられる、請求項4に記載の船舶用船外機。
【請求項6】
前記支持軸は、前記プロペラシャフトと同心である、請求項1~5のいずれか一項に記載の船舶用船外機。
【請求項7】
前記支持軸は、前記歯車ケーシングに直接的に固定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の船舶用船外機。
【請求項8】
前記支持軸は、前記歯車ケーシングを通って延びるねじ式コネクタによって前記歯車ケーシングに直接的に固定される、請求項7に記載の船舶用船外機。
【請求項9】
前記シフトフィンガは、前記シフトシャトルの開口を通って延びる、請求項1~8のいずれか一項に記載の船舶用船外機。
【請求項10】
前記クラッチ機構は、前記駆動歯車に係合させられておりかつ前記プロペラシャフトの周りを自由に回転するように構成されている、少なくとも1つの歯車をさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の船舶用船外機。
【請求項11】
前記クラッチ部材は、前記プロペラシャフトに回転可能に固定され、かつ、前記プロペラシャフトに対して前記プロペラシャフト軸線に沿って移動可能であり、
前記シフトシャトルは、前記駆動軸から前記プロペラシャフトに駆動力を伝達するために、前記クラッチ部材を前記少なくとも1つの歯車に選択的に係合させるように前記クラッチ部材を前記プロペラシャフト軸線に沿って移動させるように構成されている、請求項10に記載の船舶用船外機。
【請求項12】
前記少なくとも1つの歯車が、前記駆動歯車と係合して正方向に回転する前進歯車と、前記駆動歯車と係合して逆方向に回転する逆方向歯車とを備える、請求項10又は11に記載の船舶用船外機。
【請求項13】
前記クラッチ部材は、前記前進歯車と前記逆方向歯車との間に配置されており、かつ、前記クラッチ部材が前記前進歯車に係合させられた前方位置と、前記クラッチ部材が前記逆方向歯車に係合させられた反対位置との間で、前記プロペラシャフト軸線に沿って前記シフト機構によって移動可能である、請求項12に記載の船舶用船外機。
【請求項14】
前記クラッチ部材は、前記プロペラシャフトの周囲で延びている、請求項1~13のいずれか一項に記載の船舶用船外機。
【請求項15】
前記クラッチ部材はドッグリングを備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の船舶用船外機。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の船舶用船外機を備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動軸と、駆動軸をプロペラシャフトに選択的に係合させるためのクラッチ機構と、駆動軸からプロペラシャフトに選択的に駆動力を伝達するためにクラッチ機構を作動させるためのシフト機構とを備えた船舶用船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶を推進するために、船外機が船尾部に取り付けられることが多い。船外機は、一般に、内燃機関を有する上側の発動機と、駆動軸を介して内燃機関に接続されたプロペラシャフトを有する下側部分と、排気ガスを上側部分から下側部分に輸送するための排気ガス流路を画定する中間部分との3つの部分で形成される。従来の船外機では、駆動軸は垂直方向に延び、その下側端部には、シフト機構によって作動するクラッチ機構によってプロペラシャフトに選択的に係合させられる、かさ歯車などの駆動歯車を有する。プロペラシャフト、クラッチ機構、及び、シフト機構は、通常、船外機の下側部分の中でギアボックス又は伝達装置鋳造物の中に収容されている。
【0003】
典型的には、クラッチ機構は、しばしばドッグクラッチ又はドッグリングの形態の、前進歯車と逆方向歯車と可動クラッチ部材とを有する。前進歯車及び逆方向歯車は、典型的に、プロペラシャフトを中心として自由に回転可能であり、駆動軸の先端における駆動歯車の両側と常に噛み合っており、これにより、前進歯車と逆方向歯車は、駆動軸によって常に両方向に回転するように駆動させられる。クラッチ部材は、通常、プロペラシャフトの周囲に延び、シフト機構によってプロペラシャフト軸線方向に沿って摺動可能であるが、クラッチ部材とプロペラシャフトとが共に回転するように、プロペラシャフトに回転可能に固定されている。クラッチ部材がシフト機構によってプロペラシャフトに沿って軸線方向に前方位置まで移動させられると、クラッチ部材は前進歯車に係合し、プロペラシャフトは、かさ歯車、前進歯車及びクラッチ部材の噛み合いによって前方に駆動させられる。ドグクラッチを軸線方向に逆方向に反対位置へ移動させられると、クラッチ部材は逆方向歯車に噛み合い、プロペラシャフトは逆方向に駆動させられる。
【0004】
船舶用船外機用のシフト機構は、通常、ギアボックスの上壁のアクセス穴を通って垂直に延びるシフトロッドによって操作される、シフトシャトル又は「スライダ」を有する。シフトシャトルは、通常、プロペラシャフトの先端に取り付けられ、クラッチ部材に接続されている。シフトロッドは、通常、シフトフィンガ又は「シフトクランク」を介してシフトシャトルに係合させられ、シフトフィンガ又は「シフトクランク」は、シフトロッドの下側端部に固定されており、シフトロッドが回転させられる時にシフトロッド軸線を中心に回転して円弧を描く。このようにして、シフトフィンガは、シフトシャトルをプロペラシャフトに対して軸線方向に移動させることができ、それによってクラッチ部材を前方位置、中立位置又は反対位置に移動させることができる。上記のシフト機構は作動中に良好に機能するが、シフトフィンガは、組立中にギアボックスの上壁のアクセス穴を通してシフトロッドを挿入する前にシフトロッドに固定されなければならず、そうでなければギアボックス内で緩んでしまう。したがって、ギアボックスの上壁にあるアクセス穴は、シフトロッドとシフトフィンガの合計の幅を収容する寸法にする必要がある。これにより、ギアボックス鋳造物の強度を損なう可能性のあるかなり大きな穴をもたらす。さらに、シフトシャトル及びシフトフィンガをこのような配置に位置合わせさせることは困難であり、組立の遅れを引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術に関連する1つ又は複数の課題を克服又は緩和する、改良された船舶用船外機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、歯車ケーシングと、歯車ケーシング内でプロペラシャフト軸線を中心に回転可能なプロペラシャフトと、駆動歯車を有する駆動軸と、駆動歯車をプロペラシャフトに選択的に係合させるためのクラッチ機構であって、駆動軸からプロペラシャフトに選択的に駆動力を伝達するように構成されたクラッチ部材を備えたクラッチ機構と、歯車ケーシング内に収容されておりかつクラッチ機構を作動させるように構成されたシフト機構であって、シフト機構は、歯車ケーシングに対して固定されておりかつプロペラシャフト軸線に沿って又は平行に延びる支持軸と、支持軸に沿って摺動可能でありかつクラッチ部材に接続されているシフトシャトルと、シフトフィンガがシフトロッド軸線を中心としてシフトロッドに対して回動可能に固定されるように、シフトフィンガの壁を貫通してシフトフィンガに連結されているシフトロッドとを備え、シフトフィンガはシフトシャトルと係合して、シフトフィンガがシフトロッドによってシフトロッド軸線を中心として回転させられたときにシフトシャトルがシフトフィンガによって支持軸に沿って移動してクラッチ部材を作動させる、シフト機構とを備える船舶用船外機が提供される。
【0007】
この構成により、シフトフィンガは、シフトロッドに固定されず、シフトシャトル及び支持軸を有するサブアセンブリの一部分として設けられ、支持軸によって歯車ケーシング内の所定位置で支持される。これは、シフトシャトルがハウジング内に延びており、シフトフィンガがシフトロッドに固定されている、既存のシステムとは異なる。支持軸を設けることにより、ハウジングを省略することができ、小径化及び軽量化したシフト機構となる。次いで、シフト機構は、伝達装置内の前側軸受の内輪を通って供給されるのに十分に小さな、プロペラシャフトのサブアセンブリの一部分として組み立てることができ、組立が大幅に簡素化される。更に、シフトフィンガとシフトシャトルの両方を支持軸上に配置することにより、シフトフィンガとシフトシャトルを歯車ケーシングの中に挿入する前に正しく位置合わせすることができる。これは、典型的には多くの既存の構成で必要とされる、組み合わせたシフトフィンガ及びシフトロッドの挿入中に、シフトフィンガをシフトシャトルに位置合わせして係合させる困難で時間のかかる組立工程を回避する。
【0008】
さらに、シフトフィンガは支持軸上に取り付けられかつシフトロッドに固定されていないので、組立中にシフトロッドが挿入される、歯車ケーシングの壁のアクセス穴は、既存の構成で必要とされるような、シフトロッドとシフトフィンガの合計の幅を収容するのに十分な幅ではなく、シフトロッド直径を収容するのに十分な幅しか必要としない。このようにアクセス穴の寸法が小さくなると、歯車ケーシングの強度と剛性を増すことができる。また、歯車ケーシングからの油漏れの量や、アクセス穴から歯車ケーシングに浸入する水の量を減らすことができる。
【0009】
シフトロッドは、シフトフィンガとシフトロッドとを解放可能に連結するために、シフトフィンガの一部分が受け入れられるキャビティを備えうる。好ましくは、シフトフィンガは、シフトロッドをシフトロッドに連結するためにシフトロッドが取り外し可能に受け入れられるキャビティを備える。キャビティは、貫通していないキャビティ(blind cavity)又は貫通穴としうる。
【0010】
シフトロッドとシフトフィンガは、解放可能な連結具によって解放可能に連結されている。シフトフィンガは、シフトフィンガとシフトロッドが共にシフトロッド軸線を中心として回転するように、解放可能な連結具によってシフトロッドに対して回動可能に固定されている。
【0011】
解放可能な連結具は、開口の内側壁上の1つ又は複数の非回転対称面と、開口の内側壁上の1つ又は複数の非回転対称面と係合して相対的な回転を防止しうる、シフトロッド上の1つ又は複数の対応する非回転対称面とを備える。例えば、シフトロッドの先端及び開口は、それぞれ、三角形又は他の多角形の断面を有しうる。
【0012】
好ましくは、解放可能な連結具は、シフトロッド及びシフトフィンガの一方の凹部と、シフトロッド及びシフトフィンガの他方の対応する突出部とを備え、凹部及び突出部は、突出部が凹部内に受け入れられたときに、シフトロッド軸線を中心とするシフトロッドとシフトフィンガとの間の相対的な回転が防止されるように構成される。例えば、シフトロッドは、シフトロッド軸線を中心とするシフトロッドとシフトフィンガとの間の相対的な回転を防止するために、その端面内に、シフトフィンガ上の対応する突出部と係合する凹部を備えうる。シフトフィンガが、シフトロッドが取り外し可能に受け入れられるキャビティを備える場合、シフトフィンガの突出部は、キャビティ内に設けられうる。凹部は、シフトロッド軸線に沿った方向に開放している。これにより、シフトフィンガが歯車ケーシング内に組み付けられた後、シフトロッドが歯車ケーシングに挿入されるときに、突出部を凹部内に挿入することができる。
【0013】
好ましくは、シフトフィンガは、シフトロッドをシフトフィンガに連結するためにシフトロッドが取り外し可能に受け入れられるキャビティを備え、解放可能な連結具の突出部は、キャビティを横断して延びるピンを備える。ピンは、シフトフィンガの開口の全幅にわたって延びていてもよい。
【0014】
解放可能な連結具の突出部が、キャビティを横断して延びるピンを備える場合、凹部は、好ましくは、シフトロッドの端面内のスロットを備え、シフトロッドがシフトフィンガのキャビティ内に受け入れられたときにピンがこのスロット内に受け入れられる。これにより、製造が簡単で組立が容易である、シフトロッドとシフトフィンガを回転連結する極めて有効な手段を提供することができる。
【0015】
好ましくは、支持軸は、プロペラシャフトと同心である。当該実施形態において、支持軸は、プロペラシャフト軸線に沿って延びる。これは、シフトアセンブリ及び歯車ケーシングの重量及び寸法を最小限に抑えるのに役立ちうる。他の例では、支持軸は、プロペラシャフト軸線から偏倚した軸線に沿って延びていてもよい。これには、歯車ケーシングの容積を大きくする必要がある場合がある。
【0016】
好ましくは、支持軸は、歯車ケーシングに直接的に固定される。例えば、支持軸を歯車ケーシングにボルト留めすることができる。
【0017】
好ましくは、支持軸は、歯車ケーシングを貫通して延びるボルトなどのねじ式コネクタによって歯車ケーシングに直接的に固定される。これにより、支持軸を歯車ケーシングの外部から容易に固定できるようにすることによって、歯車ケーシング内のシフト機構の組立を容易にすることができる。支持軸は、さらに、サークリップによって保持されうる。
【0018】
好ましくは、シフトフィンガは、シフトシャトル内の開口を通って延びる。開口は、シフトシャトルを通した交差ドリル加工(cross drilling)から形成されうる。シフトフィンガは、開口を介してシフトシャトルと係合することができる。これにより、簡単な接続を提供する。
【0019】
好ましくは、クラッチ機構は、駆動歯車に係合させられかつプロペラシャフトの周囲で自由に回転するように構成された、少なくとも1つの歯車をさらに備える。
【0020】
好ましくは、クラッチ部材は、プロペラシャフトに回転可能に固定され、プロペラシャフトに対してプロペラシャフト軸線に沿って移動可能であり、シフトシャトルは、クラッチ部材をプロペラシャフト軸線に沿って移動させて、クラッチ部材を少なくとも1つの歯車に選択的に係合させて、駆動軸からプロペラシャフトに駆動力を伝達するように構成される。
【0021】
少なくとも1つの歯車は、駆動歯車と係合して前方に回転する前進歯車を備えうる。クラッチ部材が前進歯車に係合すると、駆動力が駆動軸から前方にプロペラシャフトに伝達される。少なくとも1つの歯車は、逆方向に回転するように駆動歯車に係合させられる逆方向歯車を備えうる。クラッチ部材が逆方向歯車に係合させられると、駆動力が駆動軸からプロペラシャフトに逆方向に伝達される。
【0022】
好ましくは、少なくとも1つの歯車は、駆動歯車と係合して前方に回転する前進歯車と、駆動歯車と係合して逆方向に回転する逆方向歯車とを有する。
【0023】
好ましくは、クラッチ部材は、前進歯車と逆方向歯車との間に配置され、かつ、クラッチ部材が前進歯車に係合させられる前方位置と、クラッチ部材が逆方向歯車に係合させられる反対位置との間で、プロペラシャフト軸線に沿ってシフト機構によって移動可能である。クラッチ部材は、前進歯車又は逆方向歯車のいずれにも係合させられず、従って、駆動力が駆動軸からプロペラシャフトに伝達されない、中立位置にも移動可能としうる。
【0024】
クラッチ部材は、プロペラシャフトの一方の側に取り付けることができる。好ましくは、クラッチ部材は、プロペラシャフトの周囲に延びる。
【0025】
クラッチ部材は、好ましくは、ドッグリングを備える。ドッグリングは、ドッグリングが少なくとも1つの歯車に選択的に係合させられる場合に、少なくとも1つの歯車上の対応する係合突出部及び/又は係合凹部に適合する複数の係合凹部及び/又は係合突出部を備えうる。
【0026】
船舶用船外機は、駆動軸を駆動するように構成された内燃機関を備えうる。内燃機関は、エンジンブロックと少なくとも1つのシリンダとを備えうる。エンジンブロックは、単一のシリンダを備えうる。好ましくは、エンジンブロックが複数のシリンダを備える。
【0027】
本明細書で使用される「エンジンブロック」という用語は、エンジンの少なくとも1つのシリンダが設けられる中実構造を指す。この用語は、シリンダヘッドとクランクケースを備えたシリンダブロックの組み合わせ又はシリンダブロックのみを指す場合がある。エンジンブロックは、単一のエンジンブロック鋳造物から形成することができる。エンジンブロックは、例えばボルトを用いて互いに接続される複数の別々のエンジンブロック鋳造物から形成されうる。
【0028】
エンジンブロックは、単一のシリンダバンクを備えうる。
【0029】
エンジンブロックは、第1シリンダバンク及び第2シリンダバンクを備えうる。第1シリンダバンクと第2シリンダバンクは、V字構成で配置されうる。
【0030】
エンジンブロックは、3つのシリンダバンクを備えうる。3つのシリンダバンクは、扇形の構成で配置されうる。エンジンブロックは、4つのシリンダバンクを備えうる。これらの4つのシリンダバンクは、W字の構成又は2つのV字の構成で配置されうる。
【0031】
内燃機関は、任意の適切な向きで配置しうる。好ましくは、内燃機関は、垂直軸線内燃機関(vertical axis internal combustion engine)である。上記の内燃機関では、内燃機関は、機関内に垂直に取り付けられたクランク軸を備える。クランク軸は、1つ又は複数の中間構成要素を介して直接的に又は間接的に駆動軸に接続することができる。
【0032】
内燃機関はガソリンエンジンとしうる。好ましくは、内燃機関はディーゼルエンジンである。内燃機関は、ターボチャージャ付きのディーゼルエンジンとしうる。
【0033】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様の船舶用船外機を備える船舶が提供される。
【0034】
本出願の範囲内において、特許請求の範囲及び/又は以下の説明及び図面における、先の段落に示された様々な態様、実施形態、実施例、及び、代替案、特にその個々の特徴は、独立に又は任意の組合せで理解されることが明確に意図されている。すなわち、全ての実施形態及び/又は任意の実施形態の特徴は、組み合わされる特徴が不適合でない限り、任意の方法及び/又は組み合わせで組み合わせることができる。本出願人は、最初に提出された請求項を変更又は新たな請求項を提出する権利を留保する。この権利には、最初に請求項されたものではないが、他の請求項の任意の特徴に依存するようにかつ/又は組み込むように、最初に提出された請求項を補正する権利が含まれる。
【0035】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下に、単なる例として、添付図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、船舶用船外機を備える小型船舶の概略側面図である。
【
図2a】
図2aは、傾斜位置における船舶用船外機の模式図を示す。
【
図2b】
図2bは、船舶用船外機の様々な位置調整された位置の一つ及び水域内の船舶の対応する方向を示す。
【
図2c】
図2cは、船舶用船外機の様々な位置調整された位置の一つ及び水域内の船舶の対応する方向を示す。
【
図2d】
図2dは、船舶用船外機の様々な位置調整された位置の一つ及び水域内の船舶の対応する方向を示す。
【
図3】
図3は、本発明による船舶用船外機の概略断面図を示す。
【
図4】
図4は
図3の船舶用船外機の歯車ケーシングの拡大断面図を示す。
【
図5】
図5は、シフト機構及びクラッチ機構を示す、
図4の歯車ケーシングの前部の斜視断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、船舶用船外機2を備えた船舶1の概略側面図を示す。船舶1は、連絡船やスキューバダイビングボートなどの、船舶用船外機と共に使用するのに適した任意の種類の船舶としうる。
図1に示す船舶用船外機2が船舶1の船尾部に取り付けられている。船舶用船外機2は、通常、船舶1の船体内に受け入れられている燃料タンク3に接続されている。リザーバ又は燃料タンク3からの燃料は、燃料ライン4を介して船舶用船外機2に供給される。燃料ライン4は、燃料タンク3と船舶用船外機2との間に配置された1つ又は複数のフィルタと低圧ポンプと(水が船舶用船外機2に入るのを防止するための)分離器タンクを集合的に配置したものとしうる。
【0038】
以下にさらに詳細に説明するように、船舶用船外機2は、概ね、上側部分21と中間部分22と下側部分23の3つの部分に分割される。中間部分22及び下側部分23は、しばしば、集合的に脚部として知られており、この脚部は、排気システムを収容する。プロペラ8は、船舶用船外機2のギアボックスとも呼ばれる、下側部分23において、プロペラシャフト29上に回転可能に配置されている。当然のことながら、作動中、プロペラ8は、少なくとも部分的には水中に沈められており、船舶1を推進するために、様々な回転速度で作動させることができる。
【0039】
典型的には、船舶用船外機2は、ピボットピンによって、船舶1の船尾部に回動可能に接続されている。ピボットピンの回りの回動により、操作者が公知の方法で水平軸線の回りで船舶用船外機2を傾斜させて位置調整することができる。更に、当技術分野でよく知られているように、船舶用船外機2は、船舶1の船尾部に回動可能に取り付けられており、これにより、略直立軸線を中心に回動して、船舶1を操縦することができる。
【0040】
傾斜とは、船舶用船外機2全体が完全に水中から出て上昇することができるように、船舶用船外機2を十分に上昇させる動きである。船舶用船外機2の傾斜動作は、船舶用船外機2の電源を切った状態又は中立状態で行うことができる。しかしながら、いくつかの例では、船舶用船外機2は、浅い海域での作動を可能にするように、傾斜範囲での船舶用船外機2の限定的な運転を可能にするように構成されうる。従って、船舶用エンジンアセンブリは、主に、脚部の長手軸線が実質的に垂直方向にある状態で作動させられる。船舶用船外機2の脚部の長手軸線と実質的に平行である船舶用船外機2のエンジンのクランク軸は、船舶用船外機2の通常作動中では概ね垂直方向に配向されるであろうが、特定の作動条件下、特に浅い水中で船舶で作動させられる場合には、非垂直方向に配向させることもできる。また、エンジンアセンブリの脚部の長手軸線に実質的に平行に配向されている船舶用船外機2のクランク軸は、垂直クランク軸配置と呼ぶこともできる。また、エンジンアセンブリの脚部の長手軸線に対して実質的に垂直に配向された船舶用船外機2のクランク軸は、水平クランク軸配置と呼ぶこともできる。
【0041】
前述したように、適切に作動するためには、船舶用船外機2の下側部分23が水中に延びる必要がある。しかし、極めて浅い海域では、又は、トレーラーから船舶を進水させる際、船舶用船外機2の下側部分23が下方に傾斜した位置にある場合に、海底で引きずられたり、ボートが傾斜したりすることがある。船舶用船外機2を傾斜させて
図2aに示す位置のように上方に傾斜した位置に傾けることによって、下側部分23及びプロペラ8の損傷を防止する。
【0042】
対照的に、位置調整は、
図2b~
図2dの3つの例に示すように、船舶用船外機2を完全に下降した位置から数度上方への比較的に小さな範囲にわたって移動させる機構である。位置調整は、船舶1の燃費と加速と高速作動の最良の組合せを提供する方向にプロペラ8の推力を方向付けるのに役立つ。
【0043】
船舶1が平面上にある場合(船舶1の重量が、静水揚力ではなく、流体力学的揚力によって主に支持される場合)、船首上げ構成は、抗力が比較的少なく、比較的大きな安定性及び効率をもたらす。これは、例えば
図2bに示すように、ボート又は船舶1の中心線が約3度~5度で上向きである場合に一般的に当てはまる。
【0044】
傾斜が大きすぎると、
図2cに示す位置などのように、水中で船舶1の船首が高すぎる状態になる。この形態では、船舶1の船体が水を押しており、その結果、より多くの空気抵抗が生じるので、性能と経済性は減少する。上方への傾斜が大きすぎると、プロペラが通気し、性能がさらに低下することもある。さらに厳しい場合には、船舶1が水中を飛び跳ね、操作者と乗客がボード外に投げ出されてしまう可能性がある。
【0045】
下方に傾斜すると、船舶1の船首が下がり、立ち上がりからの加速に役立つ。
図2dに示すように、下方への傾斜が大きすぎると、船舶1が水中を「かきわけ(plough)」、燃費が落ちて速度が上がりにくくなる。高速では、下方への傾斜により船舶1が不安定になることさえある。
【0046】
図3を参照すると、本発明の一実施形態による船舶用船外機2の概略断面が示されている。船舶用船外機2は、前述した傾斜及び位置調整作動を行うための傾斜及び位置調整機構10を備えている。この実施形態では、傾斜及び位置調整機構10は、電気制御システムを介して船舶用船外機2を傾斜させ位置調整するように作動させることができる流体圧アクチュエータ11を有する。あるいは、操作者が油圧アクチュエータを使用するのではなく、手で船舶用船外機2を回動させる、手動の傾斜及び位置調整機構を提供することも実現可能である。
【0047】
以上のように、船舶用船外機2は、概ね3つの部分に分割されている。発動機としても知られる上側部分21は、船舶1に動力を供給するための内燃機関100を有する。カウリング部25が内燃機関100の周囲に配置される。上側部分21又は発動機に隣接して下方に延びている、中間部分22及び下側部分23が設けられている。下側部分23は、中間部分22に隣接して下方に延びており、中間部分22は、上側部分21を下側部分23に接続している。中間部分22は、内燃機関100とプロペラシャフト29との間に延びる駆動軸27を収容し、フローティング・コネクタ33(例えばスプライン接続部)を介して内燃機関のクランク軸31に接続されている。プロペラシャフト29は、概ね水平方向のプロペラシャフト軸線34を中心として回転するように支持されている。駆動軸27の下側端部には、駆動軸27の回転エネルギーを水平方向にプロペラ8に供給するギアボックス又は伝達装置(変速機)が設けられている。より詳細には、駆動軸27の底端部は、
図4~
図6に関連して後述するように、シフト機構60によって作動させられるクラッチ機構50によって、プロペラ8のプロペラシャフト29に回転接続可能である。クラッチ機構50及びシフト機構60は、下側部分23の下側端部において歯車ケーシング40内に収容されている。この例では、歯車ケーシングは魚雷形状を有している。シフト機構60は、船舶用船外機2を貫通して歯車ケーシング40の上壁42のアクセス穴41を貫通して垂直に延びる、シフトロッド61を有する。シフトロッド61は、クラッチ機構50を作動させるために、発動機内に配置されたシフトアクチュエータ(図示せず)によって回転させられる。中間部分22及び下側部分23は、排気システムを形成し、この排気システムは、内燃機関100の排気ガス出口170からの排気ガス及び船舶用船外機2からの排気ガスを輸送するための排気ガス流路を画定する。
【0048】
図3に模式的に示すように、内燃機関100は、エンジンブロック110と、エンジンブロック内のシリンダに空気の流れを送るための吸気マニホールド120と、シリンダからの排気ガスの流れを方向付けるように構成された排気マニホールド130とを有する。この例では、内燃機関100は、排気マニホールド130から吸気マニホールド120への排気ガスの流れの一部分を再循環させるように構成された任意選択の排気再循環(EGR)システム140を更に有する。EGRシステムは、再循環された排気ガスを冷却するための熱交換器150又は「EGR冷却器」を有する。内燃機関100は、過給され、そのため、排気マニホールド130及び吸気マニホールド120に接続されたターボチャージャ160をさらに有する。使用時には、排気ガスはエンジンブロック110内の各シリンダから排出され、排気マニホールド130によってエンジンブロック110から離れる方向に方向付けられる。内燃機関がEGRシステム140を有する場合、排気ガスの一部分は熱交換器150に分流される。残りの排気ガスは、排気マニホールド130からターボチャージャ160のタービンハウジング161に送られ、ターボチャージャ160及び内燃機関の排気ガス出口170を介した内燃機関100を出る前にタービンを通して方向付けられる。回転するタービンによって駆動させられるターボチャージャの圧縮機ハウジング164は、吸気口171を通して外気を吸い込み、加圧された吸気の流れを吸気マニホールド120に送る。内燃機関100は、また、エンジンブロック内の可動部品を潤滑するためのエンジン潤滑流体回路と、ターボチャージャ潤滑システム(
図3には示されていない)とを有する。
【0049】
図4~
図6に示すように、歯車ケーシング40は、クラッチ機構50及びシフト機構60を収容しており、これらによって、駆動軸27がプロペラシャフト29に接続可能となっている。クラッチ機構50は、前進歯車51と、逆方向歯車52と、ドッグクラッチ又はドッグリングの形態の可動のクラッチ部材53とを有する。前進歯車51及び逆方向歯車52は、それぞれの外面と歯車ケーシング40の上壁42の内面との間に位置決めされた軸受54上に支持され、前進歯車51及び逆方向歯車52が歯車ケーシング40内で自由に回転できるようになっている。前進歯車51と逆方向歯車52は、駆動軸27の下側端部に固定された駆動歯車35の両側と常に噛み合い、前進歯車51と逆方向歯車52が駆動軸27によって常に両方向に回転するように駆動させられる。クラッチ部材53は、プロペラシャフト29の周囲に延び、プロペラシャフト軸線34に沿ってプロペラシャフト29の表面上で摺動可能であるが、クラッチ部材53とプロペラシャフト29が共にプロペラシャフト軸線34を中心として回転するように、プロペラシャフト29に回転可能に固定されている。この例では、クラッチ部材53は、プロペラシャフト上の複数のスプライン部38を介してプロペラシャフト29に接続されている。プロペラシャフト29は、歯車ケーシング40内で、プロペラシャフト29の外面と前進歯車51及び逆方向歯車52の内面との間に配置された軸受43上で回転可能に支持されている。こうして、前進歯車51及び逆方向歯車52は、プロペラシャフト29を中心として自由に回転する。クラッチ機構50は、クラッチ部材53及びプロペラシャフト29内でプロペラシャフト軸線34に沿って延びるクラッチ作動軸55を更に有する。クラッチ作動軸55は、プロペラシャフト29内の除去された部分を通ってクラッチ作動軸55を通ってクラッチ部材53内に延びるクラッチピン56によってクラッチ部材53と回転するようにロックされている。したがって、クラッチ作動軸55は、プロペラシャフト29及びクラッチ部材53と共に、プロペラシャフト軸線34を中心に回転する。
【0050】
シフト機構60は、歯車ケーシング40内に収容され、クラッチ機構50を作動させるように構成されている。シフト機構60は、シフトロッド61と、支持軸70と、シフトシャトル80と、シフトフィンガ又は「シフトクランク」90とを有する。
【0051】
シフトロッド61は中空の円形ロッド62を備え、このロッドは、シフトロッド軸線65に沿ってかつ歯車ケーシング40の上壁42のアクセス穴41を貫通して垂直に延び、その下側端部において固定された連結プラグ63を有する。連結プラグ63は、その端面にスロット64を有する。
【0052】
支持軸70は、プロペラシャフト29と同心であり、その前側端部で歯車ケーシング40のノーズを通って延びる穴44内で支持される。支持軸70は、歯車ケーシング40の外側から穴44内に延びるボルト71と、歯車ケーシング40の内壁に対向するサークリップ72とによって、歯車ケーシング40のノーズに直接的に固定される。
【0053】
シフトシャトル80は、前側端部81と後側端部82とを有し、これらは、それぞれ支持軸70の周囲に延び、支持軸70がそれを通して延びる開口83を有する。いくつかの開口83によって、シフトシャトル80を支持軸70上に位置決めし、シフトシャトル80がプロペラシャフト軸線34に沿って支持軸に沿って摺動することができる。シフトシャトル80の前側端部81と後側端部82とは、支持軸70に対して平行でありかつ横方向に偏倚して延びる延長中央部分84によって接合されている。シフトシャトル80の後側端部82は、クラッチ作動軸55の前側端部のフランジ57にわたって延びるフック部88を有する。フック部88によって、シフトシャトル80がプロペラシャフト軸線34に沿ってクラッチ作動軸55を押し引きすることを可能にしつつ、クラッチ作動軸55が回転的に静止したシフトシャトル80に対して回転することを可能にする。クラッチ作動軸55の前側端部は、フランジ57の後方に配置された、バネ付勢された一対の玉軸受58を備える。これら玉軸受58は、プロペラシャフト29の内面上の一連の戻り止め291~293の1つに位置するように外方に付勢され、プロペラシャフト軸線34に沿ったクラッチ作動軸55の正しい位置決めを補助する。これら戻り止めは、前進戻り止め291と、中立戻り止め292と、逆方向戻り止め293とを有する。
図5に示す位置では、バネ付勢された玉軸受58は中立戻り止め292内に位置し、クラッチ部材53は前進歯車51及び逆方向歯車52の間の中立位置にある。
【0054】
シフトフィンガ90は、シフトロッド61と同心である本体91と、本体91から横方向に延びるクランク部92を有する。本体91は、支持軸70の上面に載置され、支持軸70の垂直孔73内に回転可能に受け入れられた狭い下側部分93を有する。このようにして、本体91は、支持軸70に対して自由に回転可能であるが、そうでなければ支持軸70及び歯車ケーシング40に対して所定位置に保持される。本体91は、シフトロッド軸線に沿ってシフトロッドに向かって開放しているキャビティ94と、キャビティ94の幅にわたって延びるピン95とを備える。連結プラグ63の下側端部がキャビティ94内に受け入れられると、ピン95はシフトロッド61の端面に画定されたスロット64内に受け入れられる。ピン95とスロット64は、共に、シフトロッド61とシフトフィンガ90との間の解放可能な連結具を形成する。このようにして、シフトロッド61は、シフトフィンガ90がシフトロッド軸線65を中心としてシフトロッド61に対して回動可能に固定されるように、シフトフィンガ90に解放可能に連結されている。クランク部92は、シフトシャトル80の延長中央部分84の開口87を通って延び、シフトフィンガ90をシフトシャトル80と係合させる。
【0055】
ボルト71を省略した
図6に大まかに示すように、シフト機構60の組立中に、支持軸70とシフトシャトル80とシフトフィンガ90は、サブアセンブリとして歯車ケーシング40に挿入される。このサブアセンブリのコンパクトな特徴により、これらの構成要素は、伝達装置内の前側の軸受43の内輪を通して供給することができる。次いで、支持軸70は、歯車ケーシング40のノーズのアクセス穴41に挿入され、歯車ケーシング40のノーズの前方にボルト71を固定することによって所定の位置に固定される。ボルト71により、支持軸70の後方への軸線方向の動きを防止し、サークリップ72により、支持軸70の前方への軸線方向の動きを防止する。一旦、支持軸70が所定の位置に固定されると、キャビティ94は、歯車ケーシング40の屋根のアクセス穴41の下に位置し、シフトロッド軸線65に大まかに位置合わせされるべきである。シフトロッド61は、アクセス穴41を通して挿入され、連結プラグ63をキャビティ94内で取り外し可能に位置決めし、ピン95をシフトロッド61の下側端部のスロット64内で位置決めする。シフトフィンガ90は支持軸70に取り付けられておりかつシフトロッド61に固定されていないので、歯車ケーシング40の壁のアクセス穴41は、シフトロッド61の直径を収容するのに十分な幅しか必要としない。これにより、シフトフィンガ90がシフトロッド61に固定されて挿入される既存の構成に対してアクセス穴41の必要な寸法を低減する。これにより、歯車ケーシング40の強度及び剛性を増しうる。
【0056】
作動中、クラッチ部材53は、前方位置と中立位置と反対位置の間のシフト機構によって移動可能である。中立位置では、
図5に示すように、クラッチ部材53は、前進歯車51及び逆方向歯車52の両方から離間しており、従って、駆動軸27からプロペラシャフト29に回転が伝達されることはない。シフトロッド61が時計回りに回転させられると、シフトシャトル80は、シフトフィンガ90によって支持軸70に沿って前方に移動させられ、クラッチ作動軸55及びクラッチ部材53をプロペラシャフト軸線34に沿って前進歯車51に向かって引張り、それによって、クラッチ部材53上の突出部(図示せず)と前進歯車51の対向面とが相補的に噛み合い係合し、前進歯車51との回転のためにクラッチ部材53を固定する。クラッチ部材53がプロペラシャフト29と回転するように固定されかつ前進歯車51が前方に回転するために駆動歯車35と噛み合っているので、クラッチ部材53と前進歯車51との噛み合いによって、プロペラシャフト29が前方に駆動させられる。クラッチ部材53の前方位置へのシフトは、クラッチ部材53が前方位置にあるときに前方戻り止め291内に位置する玉軸受58によって補助される。クラッチ部材53は、シフトロッド61の反対方向への回転によって中立位置に戻すことができる。シフトロッド61が
図5に示す中立位置から時計回り方向に回転させられると、シフトシャトル80は、シフトフィンガ90によって支持軸70に沿って後方に移動させられ、クラッチ部材53をプロペラシャフト軸線34に沿って逆方向歯車52に向かって付勢されている玉軸受58の作用に抗して押し、クラッチ部材53上の突出部(図示せず)と逆方向歯車52の対向面とを相補的に噛み合い係合し、逆方向歯車52との回転のためにクラッチ部材53を固定する。クラッチ部材53がプロペラシャフト29と回転のために固定されかつ逆方向に回転するために逆方向歯車52が駆動歯車35と噛み合っているので、クラッチ部材53と逆方向歯車52との噛み合いにより、プロペラシャフト29が逆方向に駆動させられる。
【0057】
本発明は、1つ以上の好ましい実施形態を参照して上述したが、添付の特許請求の範囲に規定されているように、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更又は修正を行いうることが理解されよう。
【国際調査報告】