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特表2022-524100低侵襲的処置のための操向自在な可撓性ロボット内視鏡器具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】低侵襲的処置のための操向自在な可撓性ロボット内視鏡器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/018 20060101AFI20220420BHJP
   A61B 17/29 20060101ALN20220420BHJP
【FI】
A61B1/018 515
A61B17/29
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553091
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(85)【翻訳文提出日】2021-11-03
(86)【国際出願番号】 US2020020942
(87)【国際公開番号】W WO2020180957
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】62/813,444
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521400408
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】521399825
【氏名又は名称】デサイ、ジェイデヴ
(71)【出願人】
【識別番号】521399836
【氏名又は名称】チタリア、ヤシュ
(71)【出願人】
【識別番号】521399847
【氏名又は名称】チョン、ソクワン
(71)【出願人】
【識別番号】521399858
【氏名又は名称】チャーン、ジョシュア
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】デサイ、ジェイデヴ
(72)【発明者】
【氏名】チタリア、ヤシュ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ソクワン
(72)【発明者】
【氏名】チャーン、ジョシュア
【テーマコード(参考)】
4C160
4C161
【Fターム(参考)】
4C160GG24
4C160GG32
4C161AA23
4C161DD01
4C161FF43
(57)【要約】
【要約】
【解決手段】 プローブ部品(100)は第1の孔部(112)を画成するベース部材(110)を含む。第1の細長い弾性部材(120)は、前記ベース部材(110)に固定された近位端部(126)を含み、当該近位端部から遠位端部(128)まで延長し、前記第1の孔部(112)と連通し、当該弾性部材の長さ方向に沿って延在するチャネル(125)を画成する。第1の腱部(130)は、第1の端部と、前記第1の細長い弾性部材(120)の前記遠位端部(128)に隣接した部分に固定された、反対側の第2の端部とを有する。前記第1の腱部(130)は、前記第1の細長い弾性部材の第1の側部(122)に隣接して前記第1のチャネル(125)内に延在し、前記第1の孔部を貫通(112)することで、前記第1の孔部の外側に延出する。前記第1の腱部(130)に張力を加えることにより、前記第1の細長い弾性部材(120)は前記第1の側部(122)の方向に屈曲される。
【選択図】 図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ部品であって、
(a)内部を貫通する第1の孔部を画成するベース部材と
(b)第1の側部と当該第1の側部の反対側の第2の側部とを有する第1の細長い弾性部材であって、
前記ベース部材に固定された近位端部を含み、当該近位端部から遠位端部まで延長するものであり、
前記第1の細長い弾性部材は、前記第1の孔部と連通し、当該弾性部材の長さ方向に沿って延在する第1のチャネルを画成するものである、
前記第1の細長い弾性部材と、
(c)第1の腱部であって、
前記第1の腱部の一部分は、前記第1の細長い弾性部材の前記第1の側部に隣接した前記第1のチャネル内に配置されているものであり、
前記第1の腱部は第1の端部と当該第1の端部の反対側の第2の端部とを有し、当該第2の端部は、前記第1の細長い弾性部材の前記遠位端部に隣接した部分に固定されるものであり、
前記第1の腱部は前記ベース部材の前記第1の孔部を貫通し、それにより前記第1の腱部の前記第1の端部は前記第1の孔部の外側に延出するものであり、
前記第1の腱部に張力を加えることにより、前記第1の細長い弾性部材は前記第1の側部の方向に屈曲されるものである、
前記第1の腱部と、
を有する、プローブ部品。
【請求項2】
請求項1記載のプローブ部品において、当該プローブ部品は剛性内視鏡の作業チャネルの直径よりも小さい直径を有するものである、プローブ部品。
【請求項3】
請求項1記載のプローブ部品において、前記第1の細長い弾性部材は、当該弾性部材の前記第1の側部に機械加工された複数の小円鋸歯状部を含む小円鋸歯形状管状部を有するものである、プローブ部品。
【請求項4】
請求項1記載のプローブ部品において、前記ベース部材はその内部を貫通する第2の孔部を画成するものであり、
当該プローブ部品は、さらに、第1の端部と当該第1の端部の反対側の第2の端部とを有する第2の腱部を有し、当該第2の端部は、前記第1の細長い弾性部材の前記遠位端部に隣接した部分に固定されるものであり、
前記第2の腱部は、前記第1の細長い弾性部材の前記第2の側部に沿って前記第1のチャネルを貫通し、さらに前記ベース部材の前記第2の孔部を貫通することで、前記第2の腱部の前記第1の端部は前記第2の孔部の外側に延出するものであり、
前記第2の腱部に張力を加えることにより、前記第1の細長い弾性部材は前記第2の側部の方向に屈曲されるものである、
プローブ部品。
【請求項5】
請求項4記載のプローブ部品において、前記第1の細長い弾性部材は、当該弾性部材の前記第1の側部に機械加工された第1の複数の小円鋸歯状部と、当該弾性部材の前記第2の側部に機械加工された第2の複数の小円鋸歯状部とを含む小円鋸歯形状管状部を有するものである、プローブ部品。
【請求項6】
請求項5記載のプローブ部品において、前記第1の複数の小円鋸歯状部は前記第2の複数の小円鋸歯状部と対称形状を有するものである、プローブ部品。
【請求項7】
請求項5記載のプローブ部品において、前記第1の複数の小円鋸歯状部は前記第2の複数の小円鋸歯状部と非対称形状を有するものである、プローブ部品。
【請求項8】
請求項1記載のプローブ部品において、さらに、
前記第1の細長い弾性部材の前記遠位端部に取り付けられた器具を有するものである、プローブ部品。
【請求項9】
請求項1記載のプローブ部品において、さらに
(a)前記第1の細長い弾性部材の前記遠位端部に取り付けられた中間剛性部材と、
(b)前記中間剛性部材において、前記第1の細長い弾性部材が取り付けられた側と反対側に取り付けられた第2の細長い弾性部材であって、
第1の側部と当該第1の側部の反対側の第2の側部とを有し、
前記第2の細長い弾性部材は、当該弾性部材の長さ方向に沿って延在する第2のチャネルを画成するものである、
前記第2の細長い弾性部材と、
第1の端部と当該第1の端部の反対側の第2の端部とを有する第3の腱部であって、
前記第3の腱部の前記第2の端部は前記第2の細長い弾性部材の前記遠位端部に隣接した部分に固定されるものであり、
前記第3の腱部は、前記第2の細長い弾性部材によって画成された前記第2のチャネルに沿って延在し、前記ベース部材の第3の孔部を貫通することで、前記第3の腱部の前記第1の端部は前記第3の孔部の外側に延出するものであり、
前記第3の腱部に張力を加えることにより、前記第2の細長い弾性部材は前記第1の側部の方向に屈曲されるものである、
プローブ部品。
【請求項10】
請求項9記載のプローブ部品において、前記第2の細長い弾性部は、材当該弾性部材の前記第1の側部に機械加工された複数の小円鋸歯状部を含む小円鋸歯形状管状部を有するものである、プローブ部品。
【請求項11】
請求項9記載のプローブ部品において、さらに、
第1の端部と当該第1の端部の反対側の第2の端部とを有する第4の腱部を有し、
前記第4の腱部の前記第2の端部は前記第2の細長い弾性部材の前記遠位端部に隣接した部分に固定されるものであり、
前記第4の腱部は、前記第2の細長い弾性部材の前記第2の側部に沿って前記第2のチャネルを貫通し、さらに前記ベース部材の前記第4の孔部を貫通することで、前記第4の腱部の前記第1の端部は前記第4の孔部の外側に延出するものであり、
前記第4の腱部に張力を加えることにより、前記第2の細長い弾性部材は前記第2の側部の方向に屈曲されるものである、
プローブ部品。
【請求項12】
請求項9記載のプローブ部品において、前記第2の細長い弾性部材は、当該弾性部材の前記第1の側部に機械加工された第1の複数の小円鋸歯状部と、当該弾性部材の前記第2の側部に機械加工された第2の複数の小円鋸歯状部とを含む小円鋸歯形状管状部を有するものである、プローブ部品。
【請求項13】
請求項12記載のプローブ部品において、前記第1の複数の小円鋸歯状部は前記第2の複数の小円鋸歯状部と対称形状を有するものである、プローブ部品。
【請求項14】
請求項12記載のプローブ部品において、前記第1の複数の小円鋸歯状部は前記第2の複数の小円鋸歯状部と非対称形状を有するものである、プローブ部品。
【請求項15】
請求項9記載のプローブ部品において、さらに、
前記第2の細長い弾性部材の前記遠位端部に取り付けられた器具を有するものである、プローブ部品。
【請求項16】
複数の細長い弾性部材を有するプローブアセンブリであって、前記複数の細長い弾性部材の各々は請求項1記載の細長い弾性部材であり、複数の中間剛性部材によって互いに離間されて前記第1の細長い弾性部材に連続して連結されるものである、プローブアセンブリ。
【請求項17】
プローブアセンブリであって、
(a)内部を貫通する第1の孔部、第2の孔部、第3の孔部、および第4の孔部を画成するベース部材と
(b)第1の側部と当該第1の側部の反対側の第2の側部とを有する第1の細長い弾性部材であって、
前記ベース部材に固定された近位端部を含み、当該近位端部から遠位端部まで延長するものであり、
前記第1の細長い弾性部材は、前記第1の孔部と一直線上にあり、かつ当該弾性部材の長さ方向に沿って前記第1の側部に隣接して延在する第1の通路を画成するものであり、さらに、
前記第1の細長い弾性部材は、前記第2の孔部と一直線上にあり、かつ当該弾性部材の長さ方向に沿って前記第2の側部に隣接して延在する第2の通路を画成するものである、
前記第1の細長い弾性部材と、
(c)前記第1の細長い弾性部材の前記遠位端部に取り付けられた中間剛性部材と、
(d)前記中間剛性部材において、前記第1の細長い弾性部材が取り付けられた側と反対側に取り付けられた第2の細長い弾性部材であって、
第1の側部と当該第1の側部の反対側の第2の側部を有し、
前記第2の細長い弾性部材は、当該弾性部材の長さ方向に沿って前記第1の側部に隣接して延在する第3の通路を画成するものであり、さらに、
前記第2の細長い弾性部材は、当該弾性部材の長さ方向に沿って前記第2の側部に隣接して延在する第4の通路を画成するものである、
前記第2の細長い弾性部材と、
(e)第1の端部と当該第1の端部の反対側の第2の端部とを有する第1の腱部であって、
前記第1の腱部の前記第2の端部は前記第1の細長い弾性部材の前記遠位端部に隣接した部分に固定されるものであり、
前記第1の腱部は、前記第1の細長い弾性部材の前記第1の通路を貫通して延在し、前記ベース部材の前記第1の孔部を貫通することで、前記第1の腱部の前記第1の端部は前記第1の孔部の外側に延出するものであり、
前記第1の腱部に張力を加えることにより、前記第1の細長い弾性部材は前記第1の側部の方向に屈曲されるものである、
前記第1の腱部と、
(f)第1の端部と当該第1の端部の反対側の第2の端部とを有する第2の腱部であって、
前記第2の腱部の前記第2の端部は前記第1の細長い弾性部材の前記遠位端部に隣接した部分に固定されるものであり、
前記第1の細長い弾性部材の前記遠位端部に隣接した部分に固定される。前記第2の腱部は、前記第1の細長い弾性部材の前記第2の通路を貫通して延在し、前記ベース部材の前記第2の孔部を貫通することで、前記第2の腱部の前記第1の端部は前記第2の孔部の外側に延出するものであり、
前記第2の腱部に張力を加えることにより、前記第1の細長い弾性部材は前記第2の側部の方向に屈曲されるものである、
前記第2の腱部と、
(g)第1の端部と当該第1の端部の反対側の第2の端部とを有する第3の腱部であって、
前記第3の腱部の前記第2の端部は前記第2の細長い弾性部材の前記遠位端部に隣接した部分に固定されるものであり、
前記第3の腱部は、前記第2の細長い弾性部材により画成された前記第3の通路および前記第1の細長い弾性部材により画成された第3の通路を貫通して延在し、前記ベース部材の前記第3の孔部を貫通することで、前記第3の腱部の前記第1の端部は前記第3の孔部の外側に延出するものであり、
前記第3の腱部に張力を加えることにより、前記第2の細長い弾性部材は前記第1の側部の方向に屈曲されるものである、
前記第3の腱部と、
(h)第1の端部と当該第1の端部の反対側の第2の端部とを有する第4の腱部であって、
前記第4の腱部の前記第2の端部は前記第2の細長い弾性部材の前記遠位端部に隣接した部分に固定されるものであり、
前記第4の腱部は、前記第2の細長い弾性部材の前記第4の通路および前記第1の細長い弾性部材により画成された第4の通路を貫通して延在し、前記ベース部材の前記第4の孔部を貫通することで、前記第4の腱部の前記第1の端部は前記第4の孔部の外側に延出するものであり、
前記第4の腱部に張力を加えることにより、前記第2の細長い弾性部材は前記第2の側部の方向に屈曲されるものである、
前記第4の腱部と、
を有する、プローブアセンブリ。
【請求項18】
請求項17記載のプローブアセンブリにおいて、前記プローブ部品は、剛性内視鏡の作業チャネルの直径よりも小さい直径を有するものである、プローブアセンブリ。
【請求項19】
請求項17記載のプローブアセンブリにおいて、前記第1の細長い弾性部材および前記第2の細長い弾性部材の各々は、前記第1の細長い弾性部材の前記第1の側部および前記第2の細長い弾性部材の前記第1の側部に機械加工された第1の複数の小円鋸歯状部と、前記第1の細長い弾性部材の前記第2の側部および前記第2の細長い弾性部材の前記第2の側部に機械加工された第2の複数の小円鋸歯状部とを含む小円鋸歯形状管状部をそれぞれ有するものである、プローブアセンブリ。
【請求項20】
請求項17記載のプローブアセンブリにおいて、さらに、
前記第2の細長い弾性部材の前記遠位端部に取り付けられた器具を有するものである、プローブアセンブリ
【請求項21】
プローブアセンブリを動作させる装置であって、
前記プローブアセンブリは、少なくとも1つの腱部に応力を加えることによって方向制御を行うものであり、前記装置は、内部を貫通する長さ方向の通路を画成する内視鏡とともに使用されるように構成されているものであり、この装置は、
(a)ハウジングであって、当該ハウジングの引き込み自在な部分を引き込むことにより露出される内部構造を有し、前記内視鏡に連結するように構成された一端部を有するものである、前記ハウジングと、
(b)前記ハウジングによって画成され、前記内視鏡の長さ方向と一直線上になるように構成された少なくとも1つの入力通路であって、前記プローブアセンブリの一部分を内部に受容するように構成され、それにより前記プローブアセンブリは前記内視鏡によって画成された前記長さ方向の通路に受容されるものである、前記少なくとも1つの入力通路と、
(c)前記ハウジングに取り付けられ、前記少なくとも1つ腱部に選択的に応力を加えることによって前記プローブアセンブリを操作するように構成されたアクチュエータアセンブリと、
を有する、装置。
【請求項22】
請求項21記載の装置において、さらに、
前記アクチュエータアセンブリに連結自在であり、前記プローブアセンブリに取り付けられた即時接続型アセンブリを有し、
前記少なくとも1つの腱部は、プローブ側腱部接続部に連結されており、
前記アクチュエータアセンブリは、前記腱部側腱部接続部を補完するアクチュエータ側腱部接続部を含み、前記即時接続型アセンブリが前記アクチュエータアセンブリに定位置でスナップ式に接続された際、前記アクチュエータ側腱部接続部は、前記腱部側腱部接続部と係合するものであり、これにより、前記アクチュエータ側腱部接続部に加えられる、前記アクチュエータアセンブリにより誘導される動きが前記腱部側腱部接続部における対応する動きとなり、その結果前記少なくとも1つの腱部の操作が行われるものである、
装置。
【請求項23】
請求項21記載の装置において、さらに、
直感的制御入力を前記プローブアセンブリに提供するように構成された少なくとも1つのジョイスティックを有するものである、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月4日付で出願した米国特許仮出願第62/813,444号に対して利益を主張するものであり、その内容の全体がこの参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、内視鏡器具に関し、具体的には操向自在なプローブ部品に関する。
【背景技術】
【0003】
水頭症は、先進国において1000人につき0.7件の割で発症する一般的な小児疾患である。発展途上国においてはその発症数はさらに高くなる。この疾患は、脳内に脳脊髄液(CSF)が貯留することによって脳室が拡大し、頭蓋内圧が上昇することによって起こる。脳脊髄液(CSF)は側脳室において産生されると考えられており、頭頸接合部の周囲の脳槽空間に流入する前に、第3脳室、中脳水道、および第4脳室を順に通過する。第3および第4脳室を結ぶ中脳水道の段階における脳脊髄液(CSF)の循環の妨害が水頭症の最も一般的な原因の1つである。水頭症の治療が遅れた場合、運動機能の喪失、てんかん、慢性的頭痛、感覚神経障害、および死亡をもたらす可能性がある。脳と腹部との間にシリコンチューブを埋め込み、脳脊髄液(CSF)を方向転換させる技法(脳脊髄液(CSF)シャント)が臨床医による水頭症の治療において最も一般的である。しかしながら、脳脊髄液(CSF)シャントに関する60年に値する知見から当該シャントは不完全な装置であることが分かっており、シャントの閉塞が疾病および死亡の最大の原因となっている。
【0004】
脳脊髄液(CSF)シャント設置の代替法は、脳内の閉塞物を除去またはバイパスを目的とする内視鏡手術であり、この場合、脳脊髄液(CSF)シャントの埋め込みを完全に回避できる。最も一般的な内視鏡手術の1つは内視鏡下第3脳室底開窓術(ETV)である。内視鏡下第3脳室底開窓(ETV)手術の間、外科医は、まず高解像度カメラおよび光源から構成された内視鏡によって脳室に挿入口を作る。次に直接可視化の下で、内視鏡の作業チャネルを通過する剛性器具を使用して第3脳室の床底壁に穿孔を形成する。この穿孔により、中脳水道の閉塞物をバイパスして脳脊髄液(CSF)を中脳水道の下方に位置する橋前槽に流出させることが可能となる。この処置は、幼児において80%以上の成功率が確認されているが、内視鏡下第3脳室底開窓術(ETV)の処置において、穿孔を形成するために第3脳室において適切な位置に到達することは困難である可能性がある。内視鏡は剛性特性を有するため、頭皮から脳実質を通過し、第3脳室床に至るまでの経路において直線経路が必要となる。出血を避けるためにこの直線経路は、重要な血管、機能領域、および脳神経を回避する必要がある。また、疾病の進行により多くの場合脳構造に変形が生じるため、この問題はさらに複雑化する。このような制約のため、最適な直線経路を見つけることは必ずしも可能ではない。
【0005】
したがって、障害物を回避することができる操向自在な内視鏡プローブアセンブリが必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来技術の欠点は、1つの観点において、内部を貫通する第1の孔部を画成するベース部材を含むプローブ部品である本発明によって克服される。第1の細長い弾性部材は、第1の側部と当該第1の側部の反対側の第2の側部とを有し、前記第1の細長い弾性部材は、前記ベース部材に固定された近位端部を含み、当該近位端部から遠位端部まで延長する。前記第1の細長い弾性部材は、前記第1の孔部と連通し、当該弾性部材の長さ方向に沿って延在する第1のチャネルを画成する。一部分が前記第1の細長い弾性部材の前記第1の側部に隣接した前記第1のチャネル内に配置された第1の腱部は、第1の端部と当該第1の端部の反対側の第2の端部とを有する。前記第2の端部は、前記第1の細長い弾性部材の前記遠位端部に隣接した部分に固定される。前記第1の腱部は前記ベース部材の前記第1の孔部を貫通し、それにより前記第1の腱部の前記第1の端部は前記第1の孔部の外側に延出する。前記第1の腱部に張力を加えることにより、前記第1の細長い弾性部材は前記第1の側部の方向に屈曲される。
【0007】
別の観点において、本発明は、内部を貫通する第1の孔部、第2の孔部、第3の孔部、および第4の孔部を画成するベース部材を含むプローブアセンブリである。第1の細長い弾性部材は、第1の側部と当該第1の側部の反対側の第2の側部とを有する。前記第1の細長い弾性部材は、前記ベース部材に固定された近位端部を含み、当該近位端部から遠位端部まで延長する。前記第1の細長い弾性部材は、前記第1の孔部と一直線上にあり、かつ当該弾性部材の長さ方向に沿って前記第1の側部に隣接して延在する第1の通路を画成する。前記第1の細長い弾性部材はまた、前記第2の孔部と一直線上にあり、かつ当該弾性部材の長さ方向に沿って前記第2の側部に隣接して延在する第2の通路を画成する。中間剛性部材は前記第1の細長い弾性部材の前記遠位端部に取り付けられる。第2の細長い弾性部材は、前記中間剛性部材において、前記第1の細長い弾性部材が取り付けられた側と反対側に取り付けられる。前記第2の細長い弾性部材は、第1の側部と当該第1の側部の反対側の第2の側部を有する。前記第2の細長い弾性部材は、当該弾性部材の長さ方向に沿って前記第1の側部に隣接して延在する第3の通路を画成する。前記第2の細長い弾性部材はまた、当該弾性部材の長さ方向に沿って前記第2の側部に隣接して延在する第4の通路を画成する。第1の腱部は、第1の端部と当該第1の端部の反対側の第2の端部とを有する。前記第1の腱部の前記第2の端部は前記第1の細長い弾性部材の前記遠位端部に隣接した部分に固定される。前記第1の腱部は、前記第1の細長い弾性部材の前記第1の通路を貫通して延在し、前記ベース部材の前記第1の孔部を貫通することで、前記第1の腱部の前記第1の端部は前記第1の孔部の外側に延出する。前記第1の腱部に張力を加えることにより、前記第1の細長い弾性部材は前記第1の側部の方向に屈曲される。第2の腱部は第1の端部と当該第1の端部の反対側の第2の端部とを有する。前記第2の腱部の前記第2の端部は前記第1の細長い弾性部材の前記遠位端部に隣接した部分に固定される。前記第2の腱部は、前記第1の細長い弾性部材の前記第2の通路を貫通して延在し、前記ベース部材の前記第2の孔部を貫通することで、前記第2の腱部の前記第1の端部は前記第2の孔部の外側に延出する。前記第2の腱部に張力を加えることにより、前記第1の細長い弾性部材は前記第2の側部の方向に屈曲される。第3の腱部は、第1の端部と当該第1の端部の反対側の第2の端部とを有する。前記第3の腱部の前記第2の端部は前記第2の細長い弾性部材の前記遠位端部に隣接した部分に固定される。前記第3の腱部は、前記第2の細長い弾性部材により画成された前記第3の通路および前記第1の細長い弾性部材により画成された第3の通路を貫通して延在し、前記ベース部材の前記第3の孔部を貫通することで、前記第3の腱部の前記第1の端部は前記第3の孔部の外側に延出する。前記第3の腱部に張力を加えることにより、前記第2の細長い弾性部材は前記第1の側部の方向に屈曲される。第4の腱部は、第1の端部と当該第1の端部の反対側の第2の端部とを有する。前記第4の腱部の前記第2の端部は前記第2の細長い弾性部材の前記遠位端部に隣接した部分に固定される。前記第4の腱部は、前記第2の細長い弾性部材の前記第4の通路および前記第1の細長い弾性部材により画成された第4の通路を貫通して延在し、前記ベース部材の前記第4の孔部を貫通することで、前記第4の腱部の前記第1の端部は前記第4の孔部の外側に延出する。前記第4の腱部に張力を加えることにより、前記第2の細長い弾性部材は前記第2の側部の方向に屈曲される。
【0008】
さらに別の観点において、本発明はプローブアセンブリを動作させる器具であり、前記プローブアセンブリは、少なくとも1つの腱部に応力を加えることによって方向制御を行う少なくとも1つの弾性部材を含む。前記器具は、内部を貫通する長さ方向の通路を画成する内視鏡とともに使用されるように構成されている。ハウジングは、当該ハウジングの引き込み自在な部分を引き込むことにより露出される内部構造を有する。前記ハウジングは、前記内視鏡に連結するように構成された一端部を有する。少なくとも1つの入力通路は、前記ハウジングによって画成され、前記内視鏡の長さ方向と一直線上になるように構成される。前記少なくとも1つの入力通路は、前記少なくとも1つの腱部の一部分を内部に受容するように構成され、それにより前記少なくとも1つの弾性部材は前記内視鏡によって画成された前記長さ方向の通路に受容される。アクチュエータアセンブリは、前記ハウジングに取り付けられ、前記少なくとも1つ腱部に選択的に応力を加えることによって前記少なくとも1つ腱部を操作するように構成される。
【0009】
本発明の上記の観点およびその他の観点は、以下の図面とともに以下の好適な実施形態の記載から明らかになると考えられる。当業者であれば自明であるが、本開示の新規性を有する概念の要旨および範囲を逸脱することなく、本発明の様々な変形および変更が実施可能であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、以下の詳細な説明を添付の図面とともに一読することにより最も良く理解される。一般的な方法に従い、図面の種々の構成要素は原寸に比例したものではない。むしろ、種々の構成要素の寸法は、明確化のため、任意に拡張または縮小されている。
図1A図1Aおよび図1Bは、プローブ部品の1代表実施形態の概略図である。
図1B図1Aおよび図1Bは、プローブ部品の1代表実施形態の概略図である。
図2図2A~2Cは、プローブ部品の第2の実施形態の概略図である。
図3図3は、プローブの1実施形態の概略図である。
図4図4A~4Bは、小円鋸歯形状の管状弾性部材の概略図である。
図5図5A~5Cは、異なる小円鋸歯形状の概略図である。
図6図6は、小円鋸歯形状の管状弾性部材用いたプローブの概略図である。
図7図7A~7Cは、プローブに使用される器具の概略図である。
図8図8は、内視鏡とともに用いられるプローブの使用例の概略図である。
図9図9は、プローブ制御ハウジングの概略図である。
図10図10は、図9に示すハウジングの詳細であり、プローブ接続部を示す。
図11図11は、ハウジングに連結されたプローブの詳細を示す。
図12図12は、制御装置の模式図の分解組立図である。
図13図13は、内視鏡とともに使用されるプローブおよびハウジングの使用例の模式図である。
図14A-14B】図14A~14Dは、プローブアセンブリの異なる設計を示す模式図である。
図14C-14D】図14A~14Dは、プローブアセンブリの異なる設計を示す模式図である。
図15図15は、小円鋸歯形状ニッケルチタン合金管部の顕微鏡写真である。
図16図16は、プローブアセンブリの実験的な1実施形態の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適実施形態を詳細に説明する。本図面について、同様の参照番号は図面全体において同様の部品を示す。以下の開示で明示されていない限り、原寸に比例したものではない。本開示は、本図面および以下の説明で示す例示的な実施形態および技術にいかなる点においても限定されるものではない。本明細書の記載および特許請求の範囲で使用される以下の用語は、その文脈において明らかに異なる意味でない限り、本明細書において明確に関連した意味を有する。すなわち、「a」、「an」、および「the」は複数形の意味を含み、「in」は「in(内に)」および「on(上に)」の意味を含む。
【0012】
本発明のロボットより動作可能な操向自在プローブアセンブリは、従来使用されている内視鏡の作業チャネルの小口径に適合するように設計されている(例えば、Acsculap Inc社から入手可能な2.2mmの作業チャネルを有するMINOP内視鏡、およびKarl Storz SE & Co. KG社から入手可能な1.3mmの作業チャネルを有するHandyPro内視鏡など)。また、前記プローブアセンブリは、その作業空間において高度な機動性を有するように設計されているため、障害物を回避する確率が高まる。手術室では、内視鏡手術に2人の外科医が携わることが望ましいことが多く、一方の外科医は内視鏡本体の挿入および引き込み操作を行い、もう一方の外科医は、内視鏡の作業チャネル内で器具の挿入、引き込み、および回転を含む器具自体の操作を行う。したがって、ロボットによる解決手段には、小型の携帯パッケージ内で動作可能なアクチュエータを含む必要がある。
【0013】
本発明のロボットプローブシステムは、1)横力に対し高抵抗性および可撓性を有する細長い弾性部材からなる近位関節部、2)遠位腱部(distal tendons)の経路変更を可能とすることで関節部間の連結を最小限とする腱部移相ユニット、および3)高可撓性を有する細長い弾性部材からなる遠位関節部の3つの主要なコンポーネントを含む。
【0014】
図1に示すように、プローブ部品100の1実施形態は、内部を貫通する第1の孔部112を有するベース部材110を含む。第1の細長い弾性部材120(本明細書において「関節部」とも言う。)はベース部材110から延長し、第1の側部122と、反対側の第2の側部124と、近位端部126と、遠位端部128とを有する。第1の細長い弾性部材120は、第1の側部122に沿って延長し、かつ孔部112と一直線上にあるチャネル125を画成する。第1の腱部130は、孔部112およびチャネル125を通過し遠位端部128の近傍で第1の細長い弾性部材120に固定される。図1Bに示すように、第1の腱部130に対して図示する方向に応力を加えることにより、第1の細長い弾性部材120は内側に第1の側部122の方向に向かって屈曲する。
【0015】
図2A~2Cに示すように、第1の細長い弾性部材220には、第1の通路127、および第2の側部に沿った第2の通路129を画成することができ、またベース部材には第2の腱部132が通過する第2の孔部113を画成することができる。本実施形態では、第1の細長い弾性部材120は、腱部を引っ張ることにより第1の側部122の方向および第2の側部124の方向の両方向に屈曲することが可能となる。1実施形態において、(ニチノールなどの)ニッケルチタン合金ワイヤ(https://shop.confluentmedical.com/から入手可能な部品番号WSE000450000DGなど)を腱部に含むことができる。また、本発明の範囲から逸脱することなく、特定の用途に応じて、その他のタイプの導線、ワイヤ、およびコードを含む、その他の材料を腱部に含むことができることを理解されたい。
【0016】
図3に示すように、プローブアセンブリ300は、(腱部330、332によって制御される)第1の細長い弾性部材120aと、(腱部334、336によって制御される)第2の細長い弾性部材120bとを含むことができ、当該弾性部材120aおよび120bは、移相ユニットとして構成された中間剛性部材310によって離間されている。第1の細長い弾性部材120aはチャネル125aを画成し、第2の細長い弾性部材120bはチャネル125bを画成する。本プローブアセンブリ300は、図示するよに「S字」曲線などの形態を成すことができる。さらに、プローブアセンブリ300の適用時の使用のために器具330を当該プローブアセンブリの端部に固定してもよい(プローブアセンブリ300は、器具330を制御するために用いられる導線の通路を含んでもよい)。特定の実施形態において、複数の細長い弾性部材を、対応する複数の中間剛性部材によって互いに離間するように連続して連結することで、プローブアセンブリのより複雑な運動パターンを達成することができる。図示する細長い弾性部材は実質的に管状形状を有するが、特定の用途応じてその長さに沿って先細りにする、若しくはその直径を可変とすることもできる。さらに別の実施形態において、細長い部材は矩形梁など、非管状形状を有することができる。
【0017】
図4A~4Bに示すように、細長い弾性部材は弾性管状部420を含むことができ、当該弾性管状部の一方の側面には第1の小円鋸歯状部のセットが機械加工されており、またもう一方の側面には第2の小円鋸歯状部のセットが機械加工されている。1実施形態において、弾性管状部420はニッケルチタン合金を含む(弾性管状部420は、本発明の範囲から逸脱することなく、特定の用途に応じて、弾性特性を呈するその他の材料を含むことができることを理解されたい)。図4Bに示すように、腱部130のうちの1つが外側に引っ張られると、圧縮により互いに隣接する小円鋸歯状部が屈曲されて、張力が加えられた腱部130の側に向かって細長い弾性部材は屈曲される。細長い弾性部材は、張力から解放されると、ニッケルチタン合金の超弾性特性により原形に復元する。但し、この運動能力は他の材料においても観察することができ、したがって必ずしもニッケルチタン合金に限定されるものではない。さらに、コンポーネントのコストを低減するために、微細溶接により弾性部材を非弾性部材に接合してもよい。
【0018】
図5Aは片面のみに施された小円鋸歯形状パターンを示し、このパターンでは1方向のみに屈曲が可能となる。図5Bは非対称的な小円鋸歯形状パターンを示し、図5Cは対称的な小円鋸歯形状パターンを示すものであり、双方のパターンにおいて2方向の屈曲が可能となる。図6は、小円鋸歯形状の弾性部材120、220を備えるプローブアセンブリ200を示す(図14A~14Dにいくつかの別の形態を示す)。図6を参照すると、腱部334、336の移相経路を示すために、関節部間を連結する中間部材310の部分が開放されて示されている。
【0019】
双極式電気焼灼器232、把持器具234,およびはさみ器具236を含む、異なる器具を図7A~7Cに示す。また、例えば、切除器具、バスケット型器具、ループ器具、およびメス器具を含むその他のタイプの器具も使用可能であることを理解されたい。
【0020】
図8は、患者10の脳11の手術の際に使用されるプローブアセンブリ300を示し、当該プローブアセンブリは剛性内視鏡810とともに用いられている。本図の詳細部分から分かるように、プローブアセンブリ300は、障害物12の周囲に沿って移動させて、標的領域に到達するように操作可能であり、また、例えば、腫瘍を回避するようにさらに操作することが可能である。
【0021】
図9に示すように、制御装置800は、腱部に張力を加え(腱部から張力を解放する)ために使用されるギアアセンブリ824を駆動する2(若しくはそれ以上の)モータ820を使用可能である。利用者によって操作されるジョイスティック822はモータ820の運動を制御する。回路826は、ジョイスティック822および遠隔コンピュータからの制御コマンドをモータ820に送信するために使用される。これにより、利用者によるプローブアセンブリの直感的制御が提供される。図10に示す即時接続型アセンブリ(quick connect assembly)は、プローブアセンブリ300の腱部(130、132、134、136)が内部に配置された入力通路830を露出する引き込み式ハウジング部804を含む。(1実施形態では、内部に2若しくはそれ以上のプローブアセンブリを配置可能な2若しくはそれ以上の通路を含み、それにより2若しくはそれ以上の器具が内視鏡を通過することが可能となる。)プローブ側腱部接続部834はアクチュエータ側の接続部832と係合し、これらの接続部はプーリおよびギアアセンブリ824により操作される。1実施形態において、即時接続型アセンブリ802は、挿入および捩り運動により定位置にスナップ式に接続される。別の実施形態では、磁力によりスナップ式接続が行われる場合もある。この即時接続型アセンブリ802により、手術中に異なる器具を備えるプローブの内視鏡内での取り外しおよび事前配置が可能となる。ロボット器具先端部を動作させる制御装置800のサイズは、市販の内視鏡とともに使用される既存の装置の範囲内である必要がある。したがって、実験的な実施形態においては、制御装置モジュールは直径32mmおよび長さ178.85mmを有するものとし、既存の製品のサイズに対応させた。本実施形態の制御装置は、MINOP(低侵襲的処置用)神経内視鏡と連結する接続モジュールに容易に結合させることができる。この接続部は内視鏡上をスライド移動する雌型ソケットを有し、これにより器具先端部位置の微調整が可能となるとともに、ハンズフリー操作用に止めねじによって内視鏡に固定することができる。制御装置の外側シースは、臨床医がモータおよびロボットアセンブリの全体を制御装置の中心軸に沿って回転させることを可能にする窓部を有する。図12は、制御装置のさらなる別の実施形態の分解組立図を示す。本設計においては関節部全体が腱部によって駆動される。全ての腱部は親ねじを有するDCモータによって実現される直動作動によって制御される。各腱部は、プーリを配置することによって単一のDCモータにルーティングされるため、各関節部につき2つのモータが使用される。2つ乃至4つのモータを使用する設計では、制御装置には、長さ50mm、ピッチ0.5mmの親ねじを有する直径8mmのDCモータ(米国、マサチューセッツ州、Maxon Precision Motors社)を最高4つまで収容できる空間的余裕が設けられている。腱部を保持するナットが4つの親ねじに取り付けられており、これらのナットは単一の中央ロッド上に載置されている。この中央ロッドによりナットの回転が阻止され、ナットは当該ロッドの長さに沿ってスライド移動するため、直動運動が実現される。このモータおよび親ねじアセンブリの全体は、制御装置のいずれかの端部にある2つの軸受に載置されており、また内側ハウジング内に配置されている。したがって、これらの軸受により当該ハウジングは、円筒状アセンブリの中心軸に沿って回転することが可能となり、これにより上述した回転運動が可能となる。図11はこのタイプのプローブシステムを示す。図13は手術中に当該システムが使用されている図を示す。
【0022】
実験的な1実施形態において、ロボットの直径の大きさの制約のため、機械加工により管状部から材料を除去して特定のパターンを形成することにより屈曲関節部(細長い弾性部材)を作製した。1実施形態において、非対称的な態様で管状部から材料を除去して一方向非対称切り欠き関節部を作製した。しかしながら、全ての切り欠き部が管状部の中心軸の一方の側のみに存在する場合、関節部の中立軸が遠端の方向に移動される結果となることが分かった。これにより関節部は横力およびその他の外力の影響を受けやすくなった。双方向対称関節部ではこのような問題は起こらなかったが、モーメントアームの制約により、当該関節部では高度の可撓性が欠如していることが分かった。屈曲平面における可撓性を高度に保つ一方で、外力を低く抑えるために、図15に示すように、双方向非対称切り欠き関節部として知られる屈曲関節部を採用した。この設計においては、非対称切り欠き部を中心軸の両側に作製することで切り欠き部の間に可撓性屈曲セグメントを作製した。このタイプの関節部は、軸力および屈曲平面を横断する平面にかかる力に対して高度な耐性能力を有する。上記切り欠き関節部の横力に対するこの耐性能力により、関節間の連結を最小限とする腱部のルーティング方式が可能となる。
【0023】
前記実験的な実施形態に使用される関節部を製造するために、外径(OD)2mm、内径(ID)1.43mmのニッケルチタン合金製管状部を、直径500ミクロンの4フルートエンドミル(米国、マサチューセッツ州、Richards Micro Tool社から入手可能な875-TJ -.020)を有する3軸CNCフライス盤(米国、ノースカロライナ州、Okuma America Corporationから入手可能なOkuma Millac)で機械加工した。定格切削速度は19m/分であり、供給速度は4.2mm/秒であった。ロボットの別の実施形態において、ロボット関節部は、外径(OD)1.93mm、内径(ID)1.49mmのニッケルチタン合金製管状部から機械加工された。小円鋸歯状部のマイクロマシニングはフェムト秒レーザ(ベルギー王国、フラムリー、Optec社から入手可能なWS-Flex Ultra-Short Pulse Laser Workstation)で施された。ロボットプローブアセンブリ自体は2つの関節部を含み、双方の関節部は同一平面で平行軸に沿って2つの腱部の駆動により屈曲するように構成された。各関節部は、2つの腱部により屈曲平面においてそれぞれの方向に屈折させることが可能であった。但し、遠位関節部を駆動する2つの腱部は近位関節部を駆動する腱部とともにルーティングされた。遠位関節用の腱部は近位関節部の屈曲平面を横断する平面上にルーティングされた。近位関節部は屈曲平面において高可撓性を有するが、横断面においては低可撓性を有するため、遠位腱部を作動させることによって近位関節部の顕著な屈折が生じることなく、計画的に連結解除(decoupling)を実現した。腱部移相ブロックは、その内部に0.2mmのチャネルが螺旋状に形成された3D印刷の管状部であり、これにより遠位腱部は位相を90°シフトすることが可能となるため、横断面から当該遠位腱部の屈曲面に移動することができる。このような構成により、図16に示すように、方向に依存して可撓性を有するばね様の関節部によって連結解除を実現するとともに、連続した関節間の腱部のルーティング方式を実現する、腱部駆動式の多自由度(DoF)系を達成した。
【0024】
上記で特定の利点を列挙したが、様々な実施形態は、列挙した利点の一部を含む場合、当該利点を含まない場合、若しくは当該利点の全てを含む場合がある。当業者であれば、本図面および説明を考察することにより他の技術的利点が自明となると考えられる。本図面および説明では例示的な実施形態を示したが、本開示の原理は、現在周知のまたは周知ではない任意数の技術を用いて実現することができる。本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で記載したシステム、装置、および方法に変更、追加、または省略を行うことができる。システムおよび装置のコンポーネントは一体化、または分離することができる。本明細書で開示したシステムおよび装置の操作は、より多くの、またはより少ない、若しくはその他のコンポーネントで実現することができ、また本明細書に記載した方法は、より多くの、またはより少ない、若しくはその他の工程を含んでもよい。さらに、工程は任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で使用する「each(各)」は、1つのセットの各部材、1つのセットのサブセットの各部材を指す。以下に記載する特許請求の範囲およびその要素は、特定の請求項において「~のための手段」または「~のための工程」という用語が明示的に用いられていない限り、合衆国法典第35巻第112条(f)を行使することを意図していない。上述した実施形態は、出願時に本発明にとって既知であった好適実施形態、および本発明の最良の形態を含むが、例示的な態様としてのみ提供されている。本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された特定の実施形態に様々な変更を行うことができることが容易に理解される。したがって、本発明の範囲は、上記の特定の実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲によって決定される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A-14B】
図14C-14D】
図15
図16
【国際調査報告】