IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニヴェルシテ グルノーブル アルプの特許一覧 ▶ アンスティテュ・ポリテクニック・ドゥ・グルノーブルの特許一覧 ▶ センター ナショナル ド ラ ルシェルシュ サイエンティフィークの特許一覧 ▶ サントル・オスピタリエ・ウニヴェルシテール・ドゥ・グルノーブルの特許一覧

特表2022-524102治療遵守を測定するための組成物及びその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】治療遵守を測定するための組成物及びその方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/07 20060101AFI20220420BHJP
   C01B 6/04 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
A61B5/07 100
C01B6/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553097
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(85)【翻訳文提出日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2020055736
(87)【国際公開番号】W WO2020182581
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】1902393
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516065504
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルプ
(71)【出願人】
【識別番号】509265302
【氏名又は名称】アンスティテュ・ポリテクニック・ドゥ・グルノーブル
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】518263900
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ウニヴェルシテール・グルノーブル・アルプ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ピエール・アルカラス
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド・マルタン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・サンカン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038CC03
(57)【要約】
本発明は、服薬遵守の分野、より具体的には、
- 少なくとも1種の原薬(13)、
- 少なくとも1種の検出剤(11)
を含む、組成物(10)であって、原薬(13)が、検出剤(11)とは異なり、組成物が、検出剤(11)が原薬(13)の摂取を示すことが可能であるように構成されている、組成物(10)に関する。組成物は、本質的に、検出剤(11)が、ヒト又は動物の身体(2)中の水性媒体と接触すると溶解することが可能であり、意図されており、それにより水素を放出する、少なくとも1種の水素化物(110)を含むような組成物である。水素の放出は、リアルタイムでの組成物(10)の摂取の検出を可能にする。更に、組成物(10)の生産は、医薬産業で許容される生産コストを有する。ゆえに、組成物(10)は、非常に広範囲な運用に好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも1種の有効成分及びプラセボから選択される、少なくとも1種の原薬(13)、並びに
- 少なくとも1種の検出剤(11)
を含む組成物(10)であって、
- 原薬(13)は、検出剤(11)とは異なり、組成物は、検出剤(11)が、原薬(13)の摂取を示すことが可能であり、治療遵守を測定することが可能であるように構成されている、組成物において、
- 少なくとも1種の検出剤(11)が、ヒト又は動物の身体(2)中の水性媒体と接触すると溶解することが可能であり、意図されており、それにより水素を放出する、少なくとも1種の水素化物(110)を含むことを特徴とする組成物(10)。
【請求項2】
少なくとも1種の水素化物が、ヒト又は動物の身体(2)の特定部分、好ましくは胃(22)で水素を放出するように配合されている、請求項1に記載の組成物(10)。
【請求項3】
少なくとも1種の検出剤(11)が、ヒト又は動物の身体の特定部分で二酸化炭素を放出するように配合されているバイカーボネートを更に含む、請求項1又は2に記載の組成物(10)。
【請求項4】
少なくとも1種の検出剤(11)の配合剤(12)を更に含み、配合剤(12)が、ヒト又は動物の身体(2)の特定部分で分解されて、前記特定部分で少なくとも1種の検出剤(11)を放出するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物(10)。
【請求項5】
配合剤が、
- 配合するものをコーティングするように構成されている、コーティング剤、及び
- 配合するものの粒子同士を結合させる、結合剤
の少なくとも1つを含む、請求項4に記載の組成物(10)。
【請求項6】
少なくとも1種の原薬(13)が、少なくとも1種の検出剤(11)と混合又は並置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物(10)。
【請求項7】
少なくとも1種の検出剤(11)の配合剤(12)を含み、配合剤(12)が、検出剤(11)の放出及び原薬(13)の送達が時間的に遅延するように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物(10)。
【請求項8】
少なくとも1種の検出剤(11)の配合剤(12)を含み、少なくとも1種の検出剤(11)の配合剤(12)が、その分解が経時的に調節される水素の放出を起こすように構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物(10)。
【請求項9】
少なくとも1種の検出剤(11)の配合剤(12)を含み、組成物(10)中の少なくとも1種の検出剤(11)の分布が、配合剤(12)により不均一に構造化されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物(10)。
【請求項10】
少なくとも1種の検出剤(11)の複数の配合剤(12)を含み、前記複数の少なくとも2種の配合剤(12)が、
- 互いに混合されていること、
- 連続する同心円状層で構造化されていること、又は
- 積層した平坦層で構造化されていること
により、互いに対して構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物(10)。
【請求項11】
少なくとも1種の検出剤(11)が、多孔性である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物(10)。
【請求項12】
少なくとも1種の検出剤(11)が、粉末の形態であり、その粒子(111)の平均径が、好ましくは10nm~10μmである、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物(10)。
【請求項13】
少なくとも1種の水素化物(110)が、水素化ケイ素、水素化マグネシウム、及び水素化カルシウムの少なくとも1つに基づく、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物(10)。
【請求項14】
少なくとも1種の水素化物(110)が、多孔性シリコンに基づく、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物(10)。
【請求項15】
- ヒト又は動物の身体に配置されている水素センサー(30)、
- 前記少なくとも1つの水素センサーに動作可能に接続されている、ヒト又は動物の身体に配置されている無線送信デバイス(31)、
- 外部無線受信デバイス(33)
を含む少なくとも1つの測定及び通信システムを実行する、治療遵守を測定するための方法において、
請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物(10)の摂取(41)の後、
- 水素センサー(30)による水素の検出(44)、
- センサー(30)による水素の検出を示す無線周波数信号の無線送信デバイス(31)からの送信(45)、
- 外部無線受信デバイス(32)による、治療遵守の測定としての無線周波数信号の受信(46)
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
水素センサーを、ヒト又は動物の身体の特定部分、好ましくは胃(22)に設置する、請求項15に記載の治療遵守を測定するための方法。
【請求項17】
水素センサー(30)が、ヒト又は動物の身体の前記特定部分で水素の存在を検出するだけでなく、ヒト若しくは動物の身体(2)の前記特定部分に存在する水素の量も測定する、又はこの量の経時的な進展さえも測定するように構成されている、請求項15又は16に記載の遵守を測定するための方法。
【請求項18】
前記患者に、請求項1から14のいずれか一項に記載の少なくとも1種の組成物(10)を接取するようにリマインドする工程を含み、前記リマインドする工程が、組成物(10)の摂取を要求するリマインダ信号の外部デバイス(32)による発出を含み、リマインダ信号の発出が、好ましくは前記組成物の前回の摂取に対して一時的に定められ、その治療遵守が、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法を実行することにより測定される、請求項15から17のいずれか一項に記載の遵守を測定するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の処置遵守の分野に関する。慢性疾患の処置に対する遵守を測定するのに特に有利な適用を見出す。
【背景技術】
【0002】
治療的処置は、とりわけ慢性疾患に関連して、多くの薬物の制御された規則的な取込みを必要としうる。この必要性は、とりわけ認知障害の患者に対し、処置を遂行するのを難しくしうる。
【0003】
治療遵守の欠如は、患者にとって、多くの健康的な問題の根幹である。例えば、抗凝固処置剤に対する不十分な遵守は、患者が数回処置剤を摂取する場合の過剰性、又は患者が処置剤を摂取することを忘れる場合の不十分さのいずれかにより、処置剤を不正確に摂取することから死をもたらす可能性がある、非常に多くの血管障害の原因である。
【0004】
治療遵守を管理するツールは存在する。特に、1日1回、週1回、又は一定間隔で、手動又は電子的なピルオーガナイザーを使用することができる。しかし、これらのピルオーガナイザーシステムは、患者による処置剤の実際の摂取を示さないので、血液又は尿のサンプルのようなサンプル採取を追加で必要とせずに実際の治療遵守を測定することは制限される。
【0005】
既存の溶液剤の中で、1つは、少なくとも1種の有効成分及びプラセボから選択される、少なくとも1種の原薬、並びに少なくとも1種の検出剤を含む、組成物を提供することで構成され、原薬は、検出剤とは異なり、組成物は、検出剤が、原薬の摂取を示すことが可能で、治療遵守を測定することが可能であるように構成されている。
【0006】
このような組成物は、文献米国特許出願公開第2008/0213904号で公知である。この文献では、マーカー、例えば蛍光色素分子によって、有効成分の送達の光学的な検出が記載されている。マーカー及び有効成分を含む組成物の摂取の後、前記マーカーは、患者の外部にある光学撮像デバイスにより検出することができる。有利には、マーカーの組合せは、少なくとも1種の有効成分に特異的な光学的標識を作製するために使用することができるので、どの成分又はどの有効成分が摂取されているかを決定することが可能である。しかし、可視波長での身体を通る光の貫通は制限されるので、光学撮像デバイスは、優先的な部位、例えば網膜、又は皮膚の厚さが薄い身体の領域に配置しなければならない。
【0007】
1セットの光学的標識を分析することには、広波長ドメインを精査する複雑な機器を必要としうる。更に、十分な量で前記優先部位に拡散させるのにマーカー又はマーカーの組合せを必要とし、これは、組成物の摂取の検出を遅延する可能性がある。しかし、リアルタイムでの検出は、見落としの可能性を避けるだけでなく、時間薬理学に感受性がある薬の取込みを適応させることができる利点を有する。
【0008】
更に、少なくとも1種の有効成分、及びイオン放射モジュールで構成される少なくとも1種の摂取事象マーカーを含む摂取可能なデバイスが、文献米国特許第8 597 186号で公知である。モジュールは、導電性流体、例えば胃液又は腸液に接すると活性化して、患者の身体の表面に埋め込まれた又は配置したデバイスにより検出可能な信号を発出する。無線周波数の前記信号は、磁気的又は音響的性質であるが、あらゆる種類の任意の組成物の摂取を検出するために汎用でありうる、又は所与の発出モジュールに特異的でありえ、これは、例えば摂取された有効成分を決定することを可能にする。
【0009】
各モジュールは、デバイスの摂取により投与される各有効成分に潜在的に特異的な小型化した電子機器を必要とする。このようなデバイスが、生産の追加コストをもたらすことは理解できる。
【0010】
したがって、現在の組成物及び方法は、限界を示す。特に、リアルタイムであり、医薬産業での生産コストの低い遵守測定を可能にするものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0213904号
【特許文献2】米国特許第8 597 186号
【特許文献3】WO 2018/032032 A1
【特許文献4】米国特許出願公開第2017/0058282号
【特許文献5】FR 3059558 A1
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】A human pilot trial of ingestible electronic capsules capable of sensing different gases in the gut, Nature Electronics、第1巻、79~87頁、2018年、doi: 10.1038/s41928-017-0004-x
【非特許文献2】Mimee等、An ingestible bacterial-electronic system to monitor gastrointestinal health、Science、第360巻(6391)、915~918頁、2018年、doi: 10.1126/science.aas9315)
【非特許文献3】DIMOVA-MALINOVSKA D.、SENDO VA-VASSILEVA M.、TZENOV N.、KAMENOVA M.、表題「Preparation of thin porous silicon layers by stain etching」、Thin Solid Films出版、1997年、297、9~12頁
【非特許文献4】HUMMEL R.E.、MORRONE A.、LUDWIG M.、CHANG S.-S.、表題「On the origin of photoluminescence in the spark-eroded silicon」、J. Appl. Phys.出版、1993年、63、2771~2773頁
【非特許文献5】SMITH R.L., COLLINS S.D.、表題「Porous silicon formation mechanisms」、J. Appl. Phys.出版、1992年、71、8、R1~R7頁
【非特許文献6】LEHMANN V.、GOSELE U.、表題「Porous silicon formation: a quantum wire effect」、Appl. Phys. Lett.出版、1991年、58、856~858頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これに関して、本発明は、第1の態様による、前述の欠点の少なくとも1つを克服することが可能な組成物を提案する。
【0014】
より具体的には、本発明の第1の態様による組成物は、組成物が非常に大規模な運用に好適であるように、医薬産業で許容される生産コストを有しながら、リアルタイムでの原薬の摂取の検出を可能にすることを目的とする。また、このような組成物が、あるクラスの原薬、特定の原薬、又は前記原薬の特定の配合に対してさえ特異的な標識を得ることを可能とすることも有利であろう。
【0015】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の説明及び添付の図面を調べることで明らかになろう。他の利点を組み込むことができることは理解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述の目的の少なくとも1つを達成するために、第1の態様によると、本発明は、更に上記プリアンブルで得られる一般的な定義に従う、組成物であって、前記少なくとも1種の検出剤が、ヒト又は動物の身体中の水性媒体と接触すると溶解することが可能であり、それにより水素を放出する、少なくとも1種の水素化物を含む、組成物を提供する。
【0017】
本発明の第1の態様の一実施形態によると、組成物は、前述した通り、少なくとも1種の原薬及び少なくとも1種の検出剤からなる、又は単一の原薬及び単一の検出剤さえからもなる。
【0018】
放出された水素が、溶解した形態、及び/又は気体の形態であることも、留意すべきである。更に、検出剤は、前記少なくとも1種の水素化物のみからなる、又は、追加の要素、例えば添加物質若しくは添加剤を含むことができる。
【0019】
ヒト又は動物の身体中の水性媒体との接触時の前記少なくとも1種の水素化物の溶解の間の水素の放出は、リアルタイムでの組成物の摂取の検出を可能にする。更に、前述した組成物の特徴及び以下の特徴による前記少なくとも1種の検出剤の生産は、医薬産業で許容される生産コストを有する。ゆえに、本発明による組成物は、非常に広範囲な運用に好適である。
【0020】
任意で、本発明は、以下の特徴の少なくともいずれか1つを更に有しうる:
- 前記少なくとも1種の水素化物は、ヒト又は動物の身体の特定部分、好ましくは胃で水素を放出するように配合されている。この後者の特徴による組成物は、本発明の好ましい実施形態を構成する。上述される利点を有し、組成物の以下の特徴と適合性がある;
- 前記少なくとも1種の検出剤は、ヒト又は動物の身体の特定部分、好ましくは胃で二酸化炭素を放出するように配合されているバイカーボネートを更に含んでよい。ゆえに、処置遵守は、水素化物及びバイカーボネートにより放出される気体を検出することにより測定することができるので、測定の信頼性が向上する;
- 組成物は、前記少なくとも1種の検出剤の少なくとも1種の配合剤を含んでよく、各配合剤は、ヒト又は動物の身体の特定部分、好ましくは胃で分解されて、前記特定部分で少なくとも1種の検出剤を放出するように構成されている。
- 組成物は、前記少なくとも1種の原薬の配合剤を更に含むことができ、配合剤は、ヒト又は動物の身体の特定部分、好ましくは胃の後方の消化管の部分で分解されて、前記特定部分で前記少なくとも1種の原薬を放出するように構成されている。原薬に対する配合剤は、同じ構成のものであってよい。
- 各配合剤は、配合する検出剤及び/又は原薬を構造化するように構成されていてもよい。各配合剤は、より具体的には、
○ 配合する検出剤及び/又は原薬をコーティングするように構成されている、コーティング剤、及び
○ 配合する検出剤及び/又は原薬の粒子同士を結合させる、結合剤。
の少なくとも1つを含み得る。次いで、各配合剤はまた、組成物の構造化剤の役割も担う。ゆえに、組成物は、連続する同心円状層、又は積層した平坦層での構造を有しうる。原薬の配合剤は、検出剤の配合剤と同じ構造化機能を有してよく、一方が、他方と少なくとも部分的に混同することさえ可能である。一方で、原薬の配合剤は、異なる構成でありうる、又は検出剤の配合剤の構成と異なる構造化機能を有することさえある。例えば、原薬の配合剤は、結合剤でありえ、原薬は混合し、検出剤の配合剤は、少なくとも検出剤を含有するコーティング剤でありうる;
- 各検出剤及びその溶解により生成した生成物、並びに適切な場合、各配合剤及びその分解により生成した生成物は、好ましくは、薬学的に許容される。当然、原薬及びその溶解により場合により生成した生成物は、薬学的に許容される。実際、検出剤の溶解から、又は更には原薬から、又は配合剤の分解から得られた生成物は、完全に生物適合性があり、糞便又は体液により除去可能であるものを形成することができる。原薬、検出剤、及び配合剤、並びにその由来物のいずれか1つの薬学的な許容性又は無毒性は、処置される疾患及びその実際の又は潜在的な結果に関して、特に限界用量の点で評価すべきである。検出剤の薬学的な許容性又は無毒性は、ヒト又は動物対象が、本発明による組成物のお陰で治療遵守の測定から有しうるという利点で、評価すべきである。
- 原薬は、前記少なくとも1種の検出剤と直接的又は間接的に混合又は並置されていてよく、例えば、前記少なくとも1種の原薬は、前記少なくとも1種の検出剤により少なくとも部分的に形成されるコーティング剤に含有される。
- 前記少なくとも1種の配合剤は、水素化物の放出及び原薬の送達が同時に又は時間的に遅延し、好ましくは有効成分の送達が、水素化物の放出に続いて行われるように構成されている。この追加の特徴によると、原薬は、例えば口若しくは食道での水素の放出の前に、胃で好ましくは起こる水素の放出と同時に、又は例えば腸のような胃の後方の消化管の部分での水素の放出の後に送達することができる;
- 前記少なくとも1種の水素化物の前記少なくとも1種の配合剤は、その分解が経時的に均一又は可変である水素の放出を起こすように構成されている。適切な場合、前記バイカーボネートの前記少なくとも1種の配合剤は、その分解が、二酸化炭素の経時的に均一又は可変の放出を起こすように構成されている。これらの2つの追加の特徴の一方及び/又は他方による組成物は、前記少なくとも1種の検出剤の配合剤の分解時に、水素及び/若しくは二酸化炭素の放出の量及び期間を制御する、又はこの量の経時的な進展さえも制御することを可能にする。ゆえに、少なくとも1種の原薬を含む組成物の摂取を検出することが可能なことに加えて、水素及び/又は二酸化炭素の放出は、前記少なくとも1種の原薬に潜在的に特異的な標識を構成し、摂取される薬物の用量を知ることも可能にする;
- 組成物が、前記少なくとも1種の検出剤及び/又は前記少なくとも1種の原薬の複数の配合剤を含む場合、この複数の配合剤は、相互的に構成されていてもよい。前記複数の少なくとも2種の配合剤は、より具体的には、互いに混合されていてもよく、連続する同心円状層で構造化されていてもよく、又は積層した平坦層で構造化されていてもよい。この追加の特徴による組成物は、前記複数の配合剤の分解の間、水素及び/若しくは二酸化炭素の放出の量及び期間を制御する、又はこの量の経時的な進展さえも制御することを可能にする。ゆえに、あるクラスの原薬、特定の原薬、又は原薬の特定の配合さえも潜在的に特異的な多くの標識を得ることが可能であることは理解されたい;
- 各配合剤は、
○ 決められた水素指数(pH)の媒体と接触すると可溶な材料、
○ 乳酸ポリマーのような、生物分解性ポリマーに基づく材料、
○ 水性媒体と接触すると可溶な材料、及び
○ ゲル剤
の少なくとも1つに基づきうる;
- 前記少なくとも1種の検出剤は、好ましくは多孔性である。ゆえに、水素化物は、水素のより効果的な放出のために水性媒体との接触面を増やす。同じ利点で、バイカーボネートも多孔性である;
- 前記少なくとも1種の検出剤、特に前記少なくとも1種の水素化物は、粉末の形態であってよく、その粒子の平均径は、好ましくは10nm~10μmである。ゆえに、各検出剤は、水素及び/又は二酸化炭素のより効果的な放出のために水性媒体との接触面を増やす。更に、ゆえに形成された検出剤は、含有及び/又は結合が容易である;
- 前記少なくとも1種の水素化物は、水素化ケイ素、水素化マグネシウム、及び水素化カルシウムの少なくとも1つに基づきうる;
- 前記少なくとも1種の水素化物は、好ましくは多孔性シリコンに基づく。多孔性は、メゾスコピック及び/又はナノスコピックなサイズでありうる。この後者の特徴による組成物が、本発明の高度に好ましい実施形態を構成する。これは、前述した利点と合わせることが可能である。
【0021】
組成物が、組成物の多くの配合及び構造化に相当する多くの形態を、有利には取りうるとする上述から明らかである。
【0022】
本発明の別の態様は、治療遵守を測定するための方法であって、少なくとも1つの測定及び通信システムを実行する、方法に関する。
【0023】
前記システムは、水素センサー、無線送信デバイス、及び外部無線受信デバイスを含む。システムは、二酸化炭素センターを更に含みうる。各センサー及び前記送信デバイスは、ヒト又は動物の身体に配置され、各センサーは、送信デバイスに動作可能に接続されている。
【0024】
本方法によると、前述した組成物の摂取の後、放出された水素及び場合により二酸化炭素は、水素のセンサー、及び適切な場合、二酸化炭素のセンサーで検出される。この検出を示す無線周波数信号は、無線送信デバイスにより発出される。前記信号は、外部無線受信デバイスにより、治療遵守の測定として受信される。
【0025】
例えば、消化器系に、より具体的には消化管に導入することができるカプセル剤は、文献WO 2018/032032 A1で公知である。前記カプセル剤は、特に、消化管、より具体的には胃で自然生成される水素を検出することが可能な少なくとも1種の気体センサーを含む(A human pilot trial of ingestible electronic capsules capable of sensing different gases in the gut, Nature Electronics、第1巻、79~87頁、2018年、doi: 10.1038/s41928-017-0004-x)。このようなセンサーは、前述した測定及び通信システムで使用することができるように見える。特に、その低い検出限界又はその感受性は、組成物が、放出することが可能な気体の量が好ましくは、又は更には必然的には、検出の位置で自然生成されるこの気体の量より高い組成物であるという意味で、本発明の第2の態様による方法の実行に適応する。
【0026】
更に、文献米国特許出願公開第2017/0058282号、及びMimee等、An ingestible bacterial-electronic system to monitor gastrointestinal health、Science、第360巻(6391)、915~918頁、2018年、doi: 10.1126/science.aas9315)による文献で、消化器系に、より具体的には消化管に導入することができるカプセル剤は公知である。前記カプセル剤は、特に、消化管内で出血性滲出を検出し、前記カプセル剤に含まれる電子機器により探知される信号を生成するように修正された細菌を含む、少なくとも1種のセンサーを含む。その第1の態様による発明の点で、このセンサーが、消化管、より具体的には胃で水素及び/又は二酸化炭素の検出に適応させることができるとみなすことは合理的に見える。
【0027】
本発明の第2の態様による方法を実行するために適応させた水素センサー及び二酸化炭素センターが存在する。これらのセンサーは、考えられている気体を検出する、又はこの気体の量の経時的な変動さえも測定することが可能である。これらの既存のセンサーからの水素センサー及び/又は二酸化炭素センサーの選択は、低く、場合により高いその検出限界、並びに、本発明の第1の態様による組成物の機能として設定される可能な検出閾値を考慮に入れ、適切な場合、放出される気体の量での経時的な変化を測定する能力も考慮に入れる、当業者の当技術分野内である。
【0028】
本発明で前述した方法の追加の特徴によると、水素センサー及び任意で二酸化炭素センサーは、好ましくは、ヒト又は動物の身体の特定部分、好ましくは胃に設置する。センサー及び無線送信デバイスが、動作可能に接続されるので、これらは、優先的には、アンカーにより胃の壁に取り付けたモジュールを形成する。センサー及び前記送信デバイスはまた、文献WO 2018/032032 A1に記載した、及びMimee等が以前記載したカプセル剤に統合されるので移動可能である。
【0029】
本発明の第2の態様による方法は、多くの種類のセンサー及び多くの種類の無線送信デバイスを使用することができ、これらは、先行技術で公知である、又は今後得られる。
【0030】
アンカーにより患者の胃の壁に固定することができ、患者の身体の外部に置かれたデバイスでの無線周波数通信を可能にする、小型化した埋込可能なシステムは、特に、文献FR 3059558 A1から公知である。
【0031】
外部無線受信デバイスは、患者が装着し、例えば、前記外部デバイスは、スマートフォン、デジタルタブレット、コネクテッドウォッチ、専用装置、又は携帯電話若しくはデジタルタブレットに統合若しくは接続したモジュールである。加えて、例えば患者の自宅又は医務室に置かれた少なくとも1種の第2の外部デバイスは、測定及び通信システムに含まれ、本発明の第2の態様による方法により実行することができる。
- 本発明に記載の方法は、有利には、いくつかのやり方で治療遵守の測定するために使用することができる。
- 水素センサー又は二酸化炭素センサーは、ヒト又は動物の身体の前記特定部分でそれぞれ水素又は二酸化炭素の存在を検出するようにだけでなく、ヒト若しくは動物の身体の前記特定部分に存在するそれぞれの水素若しくは二酸化炭素の量を測定する、又はこの量の経時的な進展さえも測定するように構成されていてもよい。ゆえに、多くの多様な異なる標識は、測定及び通信システムにより検出可能であり、前記標識は、あるクラスの原薬、特定の原薬、又は原薬の特定の配合さえも潜在的に特異的である。この配置によると、治療遵守の測定は、連続して、又は同心円状でさえある、互いに同一又は異なる、多くの原薬又は組成物に対して行うことができる;
- 無線送信デバイスにより外部無線受信デバイスに発出された信号は、少なくとも1つの処置に対する治療遵守の履歴を構成するために、前記外部デバイスのメモリ、好ましくは不揮発性メモリで記録することができる。前記履歴は、続いて、必要に応じて、第2の外部デバイスに中継することができ、例えば医療スタッフが参照することができる。治療遵守の履歴は、患者及び/又は医療スタッフが薬物処置を事後に追跡することを可能にする。ゆえに、医療スタッフは、有利には、処置を適応し、パーソナライズした医薬のフレームワークでの患者を追跡する;
- 方法は、必要とする前記患者を、前述した少なくとも1種の組成物を摂取するようにリマインドする工程を更に含むことができる。より具体的には、リマインダ信号は、患者から、所定の時間で少なくとも1種の組成物の摂取を要求するように外部デバイスにより発出することができる。次いで、摂取は、上述した通り、チェックすることができる。リマインダ信号は、音、光信号、振動、又は例えばSMSタイプのメッセージの書込みでありうる。リマインダ信号の発出は、前記少なくとも1種の組成物の最初若しくは前回の摂取に関して、方法を実行することにより測定されている治療遵守を一時的に定められ、又は、特定時間で薬の取込みを必要とするように一時的に予め決められうる。更に、これらの2つ場合のいずれでも、組成物の摂取が最後のリマインダの後の所与の時間内で検出しない場合、少なくとも第2のリマインダ信号が発出されうる。この追加の特徴による方法は、可能な省略を避けるだけでなく、時間薬理学に感受性がある薬の取込みを好適なものとする利点を有する。
【0032】
したがって、前記方法は、有利には、前記少なくとも1種の組成物を摂取することを忘れるリスクをもはや冒さない患者に対して、より容易で穏やかな遵守を提供する。ゆえに、遵守及び治療的なアドヒアランスは、処置及びその効果に対する前記方法の患者の行動への影響により促進される。
【0033】
本発明の用途、目的、並びに特徴及び利点は、以下の添付の図面に図示される、後の特定の実施形態の詳述からより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A】組成物の異なる実施形態を図示する図である。
図1B】組成物の異なる実施形態を図示する図である。
図1C】組成物の異なる実施形態を図示する図である。
図1D】組成物の異なる実施形態を図示する図である。
図1E】組成物の異なる実施形態を図示する図である。
図2A】前記少なくとも1つの検出剤の配合/構造化の異なる様式を図示する図である。
図2B】前記少なくとも1つの検出剤の配合/構造化の異なる様式を図示する図である。
図2C】前記少なくとも1つの検出剤の配合/構造化の異なる様式を図示する図である。
図2D】前記少なくとも1つの検出剤の配合/構造化の異なる様式を図示する図である。
図2E】前記少なくとも1つの検出剤の配合/構造化の異なる様式を図示する図である。
図3A】時間tの関数として水素の放出の様式を図示するグラフであり、各様式は、図2A図2Eから対応する図に図示する配合/構造化に関する。
図3B】時間tの関数として水素の放出の様式を図示するグラフであり、各様式は、図2A図2Eから対応する図に図示する配合/構造化に関する。
図3C】時間tの関数として水素の放出の様式を図示するグラフであり、各様式は、図2A図2Eから対応する図に図示する配合/構造化に関する。
図3D】時間tの関数として水素の放出の様式を図示するグラフであり、各様式は、図2A図2Eから対応する図に図示する配合/構造化に関する。
図3E】時間tの関数として水素の放出の様式を図示するグラフであり、各様式は、図2A図2Eから対応する図に図示する配合/構造化に関する。
図4】ヒトの身体のいくつかの部分、並びに、本発明の第2の態様による方法の実行を可能にする測定及び通信システムのいくつかのデバイスの相対的配置の透視図を図示する図である。
図5】水性媒体での水素化物の溶解反応を概略的に図示する図である。
図6】本発明の第2の態様の実施形態による遵守を測定するための方法のいくつかの工程を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図は、例として示し、本発明を限定しない。これらは、本発明の理解を促進することを意図した概略的な原理表現を構成し、必ずしも実際の適用の規模ではない。特に、図1A図1E及び図2A図2Eに示す異なる実施形態のそれぞれのサイズは、互いを比較することを意図していない。
【0036】
「等しい、より低い、より高い」のような表現は、比較する値及び測定の不確実性の大きさに特に依存して、いくつかの許容範囲に適用することができる比較を意味することを理解されたい。実質的に等しい、より低い、又はより高い値は、本発明の解釈の範囲内である。
【0037】
「検出剤」とは、本明細書では、少なくとも1種の水素化物を含む化合物又は配合を意味し、水性媒体でのその溶解により、水素の放出をもたらす。
【0038】
「配合」とは、組成物に含まれる様々な要素の相対量の決定、又は互いに対するこれらの様々な要素の相対的な配置の決定を意味する。配合剤は、少なくとも組成物の一部として、又は組成物の構造化要素として、この決定に積極的に関わる。後者の場合、配合剤は、より具体的には構造化剤である。
【0039】
本発明に関連して、用語「連続する」若しくは「並置している」又はこれらの等価物とは、必ずしも「接触する」ことを意味しないことは特定されている。ゆえに、2つの「連続する」又は「積層している」層は、必ずしも接していない。
【0040】
「水素センサー」とは、より具体的には前記少なくとも1種の水素化物を溶解することにより生成される水素の量を測定するため、又は量の変化さえも測定するために、水素を検出することが可能なデバイスを意味し、前記デバイスは、ヒト又は動物の身体の特定部分、好ましくは胃に配置される。
【0041】
「二酸化炭素センサー」とは、より具体的には本発明の第1の態様による組成物に任意で含まれるバイカーボネートを溶解することにより生成される二酸化炭素の量を測定するため、又は量の変化さえも測定するために、二酸化炭素を検出することが可能なデバイスを意味し、前記デバイスは、ヒト又は動物の身体の特定部分、好ましくは胃に配置される。
【0042】
「無線送信デバイス」とは、有線接続せずに、検出を、より具体的には水素センサー及び場合により二酸化炭素センサーにより行われる水素の量、又は更には量の進展の測定を示す無線周波数信号を送信することが可能なデバイスを意味する。
【0043】
「外部無線受信デバイス」とは、ヒト又は動物の身体の外部に置かれ、有線接続せずに、無線送信デバイスより送信される無線周波数信号を受信することが可能なデバイスを意味する。
【0044】
以下、特定の実施形態では、原薬が少なくとも1種の有効成分であることが記載される。以下の特徴及び利点が、原薬がプラセボである場合でも適用されることは留意されたい。ゆえに、原薬は、治療効果を有さない。実際に、原薬が治療効果を有さない場合でさえ、本発明の第1の態様による組成物を使用し、本発明の第2の態様による方法により実行することは有利であるが、それは、医学的観点ではない場合、少なくとも処置をモニタリングする患者の能力の点で、医療スタッフ及び患者の両方が、それゆえに行われる遵守測定に基づいて評価すること、治療的処置自体を次いで進めることの妥当性を判断すること、又は、最も適切な治療的処置を選ぶことが可能であるからである。
【0045】
図1A図1Eを参照して、本発明は、第一に、水素化物110を含む少なくとも1種の検出剤11を含む、組成物10に関する。
【0046】
水素化物110は、特に、水性媒体と接触すると溶解することが可能であり、意図されており、したがって水素を放出する。
【0047】
検出剤11は、前記少なくとも1種の水素化物110の配合剤12を更に含みうる。
【0048】
分解されていない、又は分解前の配合剤12は、組成物10の環境から水素化物110を単離するように構成されていてもよい。ゆえに、配合剤12は、分解の場合を除いて、環境とのあらゆる接触から、特に水素の放出を起こすことが可能な環境、特に任意の周囲の水性媒体又は更には湿性媒体とのあらゆる接触から、組成物10に含有される水素化物110を保護することを可能にする。
【0049】
本発明による配合剤12は、水素化物110又は水素化物の粒子111をコーティングするコーティング剤121と理解することができる。或いは、又は加えて、本発明による配合剤12は、水素化物の粒子111同士を結合させる結合剤122と理解することができる。
【0050】
配合剤12の組成及び厚さの選択により、配合剤12が分解されるヒト又は動物の身体2の特定部分、特に消化管の部分を制御することが可能になる。ゆえに、水素の標的とする放出は、特に消化管の少なくとも一部、好ましくは胃22で得られる。
【0051】
配合剤12の結合剤122の組成及び厚さの選択により、消化管の少なくとも一部、好ましくは胃22で、放出される水素の量、及び水素の放出の期間を制御することも可能である。
【0052】
配合剤12は、より具体的には、ヒト又は動物の身体2の部分、より具体的には消化管の少なくとも一部、好ましくは胃22に特異的な、少なくとも1つの観察可能な生理学的条件下で分解するように構成されていてもよい。更により具体的には、配合剤12は、組成物10が、少なくとも1つの特異的な生理学的条件下である場合のみ、水素化物110を放出するように構成されていてもよい。配合剤12は、実際に、水の存在又は量、温度、pH、無機塩の濃度等のうちの生理学的パラメーター又は生理学的パラメーターの組合せ、ヒト又は動物の身体2の少なくとも1つの位置、又は消化管の少なくとも一部、好ましくは胃22で観察可能であるこのような生理学的パラメーター又はこのような生理学的パラメーターの組合せにより定義される特異的な環境条件で設置する場合に分解するように選択することができる。
【0053】
ゆえに、配合剤12の分解により、水素化物110は、適用可能な場合、前記の特異的な生理学的条件が優勢であるヒト又は動物の身体2の部分を構成する水性媒体と接触することが可能になる。実際に、続く処置に依存して、特に組成物10の摂取による投与の様式について、ヒト又は動物の身体2の口21又は食道23よりむしろ少なくとも胃22を定義する前記生理学的条件又は前記の生理学的条件の組合せであることが好ましい、又はこれらさえも必要としうる。その結果、本発明による組成物10のお陰で、好ましくはヒト又は動物の身体2の胃22で水素の放出を行うことができる。
【0054】
組成物10の摂取の後に、前記放出が行われる少なくとも1つの位置、好ましくは胃22、並びに水素の放出の量及び期間の少なくとも1つを制御することが可能である配合剤12により提供される配合である。
【0055】
図1A図1Eについて、組成物10は、少なくとも1種の有効成分13を更に含む。組成物は、前記少なくとも1種の有効成分13の配合剤12を更に含みうる。
【0056】
前記少なくとも1種の有効成分13の配合剤12は、分解されない場合、又は分解の前に、組成物10の環境から有効成分13を特に単離するように構成されていてもよい。ゆえに、配合剤12は、分解の事象を除いて、組成物10に含まれる有効成分13を、組成物の環境に送達しないことが可能になる。
【0057】
本発明による配合剤12は、有効成分13をコーティングするためのコーティング剤121と理解することができる。或いは、又は加えて、本発明による配合剤12は、有効成分13が粉末の形態である場合、有効成分13の粒子同士を結合させる結合剤122と理解することができる。
【0058】
配合剤12の組成及び厚さの選択により、配合剤12が分解されるヒト又は動物の身体2の特定部分、特に消化管の部分を制御することが可能になる。ゆえに、有効成分13の標的とする送達は、腸24のような好ましくは胃の後方の消化管の部分で得られる。
【0059】
配合剤12は、より具体的には、ヒト又は動物の身体2の部分、好ましくは腸24のような胃の後方の消化管の部分に特異的な、少なくとも1つの観察可能な生理学的条件下で分解するように構成されていてもよい。更により具体的には、配合剤12は、組成物10が、少なくとも1つの特異的な生理学的条件下である場合のみ、有効成分13を放出するように構成されていてもよい。配合剤12は、実際に、上述の生理学的パラメーター又は生理学的パラメーターの組合せ、ヒト又は動物の身体2の少なくとも1つの位置、好ましくは腸24のような胃の後方の消化管の部分で観察可能である前記パラメーター又は前記組合せにより定義される特異的な環境条件で設置する場合に分解するように選択することができる。
【0060】
ゆえに、組成物10は、前記少なくとも1種の検出剤11の配合剤12の分解、及び水素化物110の溶解により、ヒト若しくは動物の身体2の少なくとも1つの位置、又は消化管の少なくとも一部、より具体的には胃22で水素を放出することが可能であり、この部分は、1つ又は複数の生理学的条件により定義される。
【0061】
更に、組成物10は、前記少なくとも1種の有効成分13の配合剤12の分解により、ヒト又は動物の身体2の特定部分、好ましくは腸24のような胃の後方の消化管の部分で有効成分を放出することが可能であり、この部分は、1つ又は複数の生理学的条件により定義される。
【0062】
次いで、前記少なくとも1種の検出剤(11)の少なくとも1種の配合剤12及び前記少なくとも1種の有効成分13の少なくとも1種の配合剤12を含む組成物10は、同時に又は時間的に遅延して、水素化物110の放出及び有効成分13の送達を可能にすることは理解されたい。前記少なくとも1種の検出剤11の配合剤12及び前記少なくとも1種の有効成分13の配合剤12は、前記放出及び前記送達が同時であるように混合する、又は単一の配合剤を形成することができる。前記少なくとも1種の検出剤11の配合剤12及び前記少なくとも1種の有効成分13の配合剤12は、前記放出及び前記送達が時間的に遅延するように並置されていてもよい。好ましくは、前記有効成分13の配合剤12は、有効成分13の送達が、水素化物110の放出に続いて行われるように、前記少なくとも1種の検出剤11の少なくとも一部を含むコーティング剤に含有される。検出剤11の放出及び有効成分の送達は、例えば、少なくとも5分間、又は少なくとも20分間でさえ、又は少なくとも30分間でさえ、又は少なくとも1時間でさえ遅延することができる。この遅延は、特に、検出剤を放出するのに望ましい消化管の組成物の位置、例えば胃、及び有効成分13を送達するのに望ましい消化管の組成物の位置、例えば口又は腸によって選ぶことができる。
【0063】
配合剤12は、
- 決められた水素指数(pH)の媒体と接触すると可溶な材料、
- ポリ乳酸のような、生物分解性ポリマーに基づく材料、
- 水性媒体と接触すると可溶な材料、及び
- ゲル剤
の少なくとも1つに基づくことができる。
【0064】
これらの異なる材料は、場合により同等の環境条件下で、異なる分解速度を有しうる。例えば、配合剤12の異なる配合物が、決められた分解速度を有するように選ばれ、ヒト又は動物の身体2の特定部分を定義する生理学的条件で又は生理学的条件下での材料に基づき、前記分解速度が、好ましくはヒト又は動物の身体2の前記特定部分で組成物の滞留期間と適合性があることは有利である。
【0065】
更に、組成物10が、優先的に胃22を定義する同じ生理学的条件下で別々に分解するように共に構成されている、前記少なくとも1種の検出剤の複数の配合剤12を含むと考えられている。例えば、前記少なくとも1種の検出剤のいくつかの配合剤12は、連続する同心円状層における配置に配置することができる。より具体的には、第1の量の第1の水素化物110を含む第1の配合剤12は、第1の配合剤12とは異なり、任意で第2の量の第2の水素化物110を含む、第2の配合剤12でコーティングしうる。この場合、第1及び第2の水素化物は、互いに異なりうる、並びに/又は、水素化物の第1及び第2の量は、互いに異なりうる。連続する同心円状層における配置の代替の配置の例は、実質的に互いに平坦である層を積層又は並置することで構成されうる。例えば、第1の量の第1の水素化物110を含む第1の配合剤12の包含物が、水素化物を含まない第2の配合剤12と結合すると更に考えられている。
【0066】
図2A図2Eを参照して後でより詳細に記載する通り、配合剤12の前述の組成物の点で、配合剤12、又は前記少なくとも1種の検出剤11の1セットの配合剤12の量又は相対的配置を変動させて、検出剤11の分解時に水素の量及び水素の放出の期間を変動させるのに十分であることは理解されたい。
【0067】
ゆえに、組成物10は、前記少なくとも1種の検出剤11の配合剤12の分解及び水素化物110の溶解により、調節した手段で、経時的に、又は消化管に沿ってさえ水素を放出することが可能になる。前記放出は、制御された期間にわたって決められた量で、又は制御された期間にわたっていくつかの決められた潜在的に可変の量で行われ、前記1つ又は複数の期間は、好ましくは、ヒト又は動物の身体2の特定部分で、この部分及びこの部分のみを標的とする場合、組成物10の滞留期間と適合性がある。「調節した放出」とは、本明細書では、放出された水素の量が、1つ又は複数の水素化物の溶解を誘発する1つ又は複数の配合剤の分解と同時に経時的に変動することを意味する。この用途のために、組成物中の検出剤11の分布は、配合剤12により不均一に構造化されていてもよい。配合剤12は、その分解及び化合物の溶解が、30秒~1時間、又は30秒~30分でさえ、好ましくは30秒~10分を含む期間にわたって行うように構成されていてもよい。複数の配合剤が使用される場合、その分解は、各々制御された期間にわたってでありえ、その期間は、例えば、身体、特に消化管での組成物10の滞留期間と適合性がある全期間にわたった範囲である。
【0068】
したがって、放出された水素分子は、水素センサー30により検出することができ、前記センサーは、無線送信デバイス31によりヒト又は動物の身体2の外部にあるデバイス33に送信される信号を生成する。水素センサー30及び、無線送信デバイス31は、好ましくは、図4に概略的に図示する通り、アンカー32によりヒト又は動物の身体2の胃22の壁に接続する。水素は、ヒト又は動物の身体2により構成された媒体中に非常に迅速に拡散し、組成物10の摂取は、リアルタイムで検出される。更に、水素の迅速な拡散は、その放出の部位での低い持続性を意味するので、放出された水素の量での潜在的な変動を見極めることが可能になる。
【0069】
したがって、本発明は、水と接触すると溶解することが可能な水素化物110で水素を保存するために提供する。保存され、放出することができる水素の量は、意図した適用に適合性がある。存在率、低いコスト、著しい質量の水素(生成物の質量に対して1~7.6%の放出される水素)の放出する能力、及び無毒性により、これらを第1の候補とする。金属水素化物は、金属面又は格子の欠陥のような、格子間に捕捉された二水素原子に対して、ホスト格子を構成する金属原子からなる。図5に図示する通り、水と接触すると溶解することが可能な水素化物110は、特に周囲の水性媒体との潜在的なその接触面で、分子状水素を放出し、水素化物の表面に不動態化酸素層を形成することによりH2O分子と自然に再結合することが可能な、著しい数の末端又は官能基「-H」を好ましくは有する。水素化ケイ素、水素化マグネシウム、及び水素化カルシウムは、特に官能化されていないが、このような再結合を得ることが可能である。
【0070】
更に、水素化物110は、異なる形態であってよい。
【0071】
第一に、水素化物110は、周囲の水性媒体との水素化物の接触面を特に増やすので、水素の放出の速度又は同じく割合を増加させるために多孔性でありうる。
【0072】
また、粉末の水素化物を使用する水素の放出の速度及び割合が高いことを達成すると考えられている。次いで、水素化物の粉末は、好ましくは、10nm~10μmである平均径の粒子111を有する。加えて、いくつかの水素化物、例えば水素化カルシウム及び/若しくは水素化チタン及び/若しくは水素化マグネシウムの組合せ、並びに/又は1つ若しくは複数のドーパントの組合せを考えることができる。例えば、20%の水素化カルシウムを含む水素化マグネシウムを10時間、機械的に粉砕することで、水素化物粒子111の表面に欠陥を作製することが可能であり、6による加水分解の速度を促進する。
【0073】
本発明の好ましい実施形態は、水素化物110として多孔性シリコンを使用することである。
【0074】
特に粉末状に小さくできる多孔性シリコンを生成するための方法は、以下の名称で公知である:
- 化学溶解(又は「ステインエッチング」)、特に、DIMOVA-MALINOVSKA D.、SENDO VA-VASSILEVA M.、TZENOV N.、KAMENOVA M.、表題「Preparation of thin porous silicon layers by stain etching」、Thin Solid Films出版、1997年、297、9~12頁の記事に記載される;
- プラズマエッチング(又は「スパークエッチング」)、特に、HUMMEL R.E.、MORRONE A.、LUDWIG M.、CHANG S.-S.、表題「On the origin of photoluminescence in the spark-eroded silicon」、J. Appl. Phys.出版、1993年、63、2771~2773頁の記事に記載される;並びに
- 電気化学アノード処理、特に、SMITH R.L., COLLINS S.D.、表題「Porous silicon formation mechanisms」、J. Appl. Phys.出版、1992年、71、8、R1~R7頁の記事、及び、LEHMANN V.、GOSELE U.、表題「Porous silicon formation: a quantum wire effect」、Appl. Phys. Lett.出版、1991年、58、856~858頁の記事に記載される。
最初の2つの方法は、厚さ数ミクロン程度の多孔性シリコン層を生成することを可能にする。電気化学アノード処理は、同様に、より薄い層の生成を可能にする。
【0075】
水素化物110が、多孔性シリコンであろうとその他であろうと、粉末の形態である場合、その粒子111の径は、各々又は平均で、10nm~10μmである。粒径が小さければ、より多くの水素が搭載される。例えば、1分子の水素化ケイ素、例として配合剤SiH4は、単独で、2分子の水素を放出する。
【0076】
水素の放出のより小さく速度及び割合を有し、特に、より長期の決められた期間、水素の放出を調節することが望ましい可能性がある。この場合、非多孔性水素化物110を使用することが好ましく、溶解することを意図する水性媒体とのその形状で限定された接触面を提供する体積の形態である。
【0077】
したがって、組成物又は水素化物110の形態に関わらず、保存する水素は、優先的に胃22内部で、ヒト又は動物の身体2に存在する水を使用して正確な量で分配するように配合されている。実際に、上述したもののような組成物10において、組成物10に存在する水素化物110の量を細かく制御することは容易に可能である。水素化物110の前記量は、当然、放出される水素の量に比例する。特に、胃内部で検出することができる多孔性シリコン、例えば配合剤SiH4の最小量を計算することは可能である。ヒトの身体の胃の体積が4Lに達することができると分かっていることで、4μgの水素、即ち、2μmolの水素を検出することが可能である。図5に記載の溶解反応によると、これは、配合剤SiH4の多孔性シリコン2μmol、即ち64μgに相当する。水素化物の生産効率に対する10の因子、及び水素センサー30の検出限界に対する10の別の因子を考慮に入れると、組成物10で6.4mgの水素化物110の量を有することで十分である。これと同じ計算は、放出される水素の所望の量によって組成物10中の多孔性シリコンの量を調節するのに適用することができる。この計算はまた、例えば配合剤CaH2又はMgH2の水素化カルシウム又は水素化マグネシウムに対しても行うことができることに留意されたい。
【0078】
したがって、組成物10中の水素化物110の量を制御することで、放出される水素の量を細かく制御することが可能になる。
【0079】
治療遵守の技術と比較すると、本発明は、有効成分の摂取の検出だけでなく、あるクラスの有効成分、特定の有効成分、又は有効成分の特定の配合に潜在的に特異的な多くの標識を得るために放出される水素の量の調節も可能にする。
【0080】
前記調節が異なる配合及び化学特性の数多くのマーカーの合成を抑制することを可能にする、組成物10の実施形態。本発明によると、少なくとも1種の水素化物の配合は、多くの標識を得ることを可能にする。更に、水素化物の検出が可能な最小量は、比較的小さい。これらの実施形態は、低い生産コストでの広範囲な運用のためのガレノス技術により工業用生産に適合性がある。
【0081】
組成物10の別の利点は、得ることができる標識が、少なくとも1つの共通の検出可能な効果である水素の放出に基づくことである。ゆえに、好ましくは胃内部の単一の水素センサーは、多くの有効成分の摂取に対して治療遵守を測定する必要がある。これは、有利には、機器を限定し、実際に遵守を測定するための方法のコストを制限することが可能である。
【0082】
加えて、遵守測定法は、それゆえに、同じ患者に対する異なる有効成分でのいくつかの処置の蓄積に適合性がある。したがって、前記方法は、有利には、薬を摂取することを忘れるリスクをもはや冒さない患者に対して、より容易で穏やかな遵守を提供する。
【0083】
ゆえに、遵守及び療法に対するアドヒアランスは、処置及びその効果に対する前記方法の患者の行動への影響により促進される。
【0084】
他の利点は、組成物10、並びに、遵守を測定するための方法で使用することができる要素の異なる実施形態の以下の記載から明らかである。
【0085】
図1A図1Eは、組成物10の異なる実施形態を概略的に図示する。
【0086】
図1Aは、組成物10の実施形態を図示し、水素化物110又は水素化物粒子111及び有効成分13は、配合剤121により更に封入することができる水溶性錠剤において、配合剤122と潜在的に混合する。図示した例では、好ましくは胃22での錠剤の溶解により、水素及び有効成分13の同時放出をもたらす。
【0087】
図1Bは、組成物10の代替的な実施形態を図示し、水素化物110又は水素化物粒子111を含む検出剤11は、有効成分13をコーティングする。本実施形態による組成物10の各層は、配合剤121による封入を更に含みうる。図示した例では、検出剤の分解により、好ましくは胃22での水素化物110の溶解、及び水素の放出をもたらす。有効成分13の配合剤12の性質に依存して、有効成分13の送達は、腸溶性コーティング剤121を使用し、腸24に特徴的なpHで溶解することができる場合、ヒト又は動物の身体2の別の部分、例えば腸24を標的とすることができる。
【0088】
図1Cは、図1Bに記載の実施形態の変形例を図示し、有効成分13を含む要素は、カプセル剤15である。
【0089】
図1Dは、組成物10の代替的な実施形態を図示し、断面4に沿ったその断面図は、図1Eに示す。本実施形態によると、水素化物110又は水素化物粒子111を含む検出剤11は、有効成分13を含む層でコーティングする。本実施形態による組成物10の各層は、配合剤121による封入を含む。図示した例では、有効成分13の配合剤12の分解は、有効成分13の口21又は食道23への送達のために口21で実施することができる。第二に、検出剤の分解により、好ましくは胃22での水素化物110の溶解、及び水素の放出をもたらす。
【0090】
図2A図2Eは、組成物10の異なる実施形態、より具体的には、前記少なくとも1種の検出剤11の1種又は複数種の配合剤12の異なる配置を図示する。図3A図3Eは、時間tの関数として水素の放出の異なる様式、及び、それゆえの図2A図2Eで図示した実施形態に対応しうる様々な検出可能な標識を図示する。これらの実施形態は、異なる配置が、有効成分13を含む錠剤又はカプセル剤の周囲に配置される場合について記載する。これらの実施形態がまた、検出剤及び有効成分13を、水溶性錠剤に混合する場合、並びに、検出剤を有効成分13でコーティングする場合に適切でありうることは留意すべきである。
【0091】
図2Aは、組成物10の一実施形態を図示し、配合剤12及び検出剤11は、結合剤122中の水素化物110又は水素化物粒子111の分布が均一であるように構成されている。ゆえに、水素の放出は、図3Aに図示する通り、検出剤11の分解の間に連続して均一に起こる。
【0092】
図2Bは、組成物10の本実施形態の変形例を図示し、配合剤12及び検出剤11は、水素化物110又は水素化物粒子111の分布が、例えば組成物の層の拡張の主な方向に垂直な方向で、濃度勾配に従うように構成されている。例えば、結合剤122中の水素化物110又は水素化物粒子111の分布は増加している。ゆえに、水素の放出は、図3Bに図示する通り、検出剤11の配合剤の分解の間に連続して次第に起こる。結合剤122中の水素化物110又は水素化物粒子111の分布が減少している場合もまた可能であることは留意すべきである。
【0093】
図2Cは、組成物10の一実施形態を図示し、前記少なくとも1種の検出剤11の複数の配合剤12は、水素化物を含まない少なくとも1種の配合剤12を並置された複数の層を形成するように構成されている。ゆえに、検出剤11の分解の間、水素の放出は、図3Cに図示する通り、経時的に不連続で実施する。
【0094】
図2Dは、組成物10の一実施形態を図示し、前記少なくとも1種の検出剤11の複数の配合剤12は、水素化物110の濃度及び/又は水素化物110の多孔性が層により変動できる、複数の並置された層を形成するように構成されている。ゆえに、検出剤11の分解の間、放出する水素の量は、図3Dに図示する通り、経時的に変動する。
【0095】
実施形態は、上述の場合に限定されないが、水素の放出の多くの様式を得るために互いを更に組み合わせることができる。特に、複数の有効成分13及び検出剤11は、共に構成されていてもよい。図2Eに記載の通り、第1の有効成分130は、ヒト又は動物の身体2の第1の特定部分、例えば口21又は食道23に送達されることを意図する。配合する検出剤11の配合剤12は、ヒト又は動物の身体2の第2の特定部分、例えば胃22で分解されることを意図する。例えば腸溶性カプセル剤に含有される第2の有効成分131は、ヒト又は動物の身体2の第3の特定部分、例えば腸24に送達されることを意図する。
【0096】
加えて、図2Eに記載の通り、前記少なくとも1種の検出剤11及び前記少なくとも1種の有効成分13の配合剤12の厚さは調節可能である。ゆえに、本実施形態による組成物10は、図3Eに図示する通り、様々な時間にわたって決められた量で水素の放出を可能にする。配合剤12の配合はまた、その分解速度を調節するために適応可能である。例えば、異なる多孔性の水素化物1110及び1111を含む配合剤12の分解は、図3Eでの時間の関数として放出した水素の量を図示した曲線の傾きの差として示す通り、水素のある程度迅速な放出を誘発する。
【0097】
図6を参照して、本発明は、第2の態様では、測定及び通信システムを実行する、治療遵守を測定するための方法に関する。方法は、図6に図示する工程に限定されず、前記工程並びに追加の工程の異なる配置を含みうる。
【0098】
上述の組成物10の摂取41の後、有効成分13を送達する少なくとも1つの工程42、並びに気体及び/又は溶解した水素を放出する少なくとも1つの工程43は、水素化物110の溶解及び任意で配合剤12の分解に起因するが、行われる。
【0099】
図1Aに図示する組成物10の実施形態によると、有効成分13の送達は、水素の放出と同時でありうる。ゆえに、治療遵守は、有効成分13が患者の胃22に送達される処置の場合、治療標的が、胃22、又は送達に続いて有効成分13により達成可能なヒト若しくは動物の身体2の任意の他の部分であるかを本発明の方法に従って測定することができる。
【0100】
図1B及び図1Cに図示する組成物10の実施形態によると、有効成分13の送達は、水素の放出に続いてでありうる。ゆえに、治療遵守は、例えば有効成分13の腸24への送達を必要とする処置の場合、本発明の方法に従って測定することができる。
【0101】
図1D及び図1Eに図示する組成物10の実施形態によると、有効成分13の送達は、水素の放出の前でありうる。ゆえに、治療遵守は、例えば有効成分13の口21又は食道23への送達を必要とする処置の場合、本発明の方法に従って測定することができる。
【0102】
治療遵守を測定するための方法は、上述の方法による水素の放出を検出する工程44を含む。放出した水素を検出する、又は、水素の量、より具体的にはこの量の経時的な変化を、水素センサー30により測定し、前記センサーは、好ましくは胃に存在する。
【0103】
方法は、放出した水素の量の検出又は測定を示す無線周波数信号を送信する工程45を含む。この送信は、例えば、文献FR 3059558 A1での無線送信デバイスの例であるブルートゥース(登録商標)ローエナジー(Bluetooth Low Energy)プロトコルによって、無線送信デバイス31により少なくとも1つの外部デバイス33に実施される。
【0104】
方法は、受信46を含む、又は、第1の外部デバイス33、例えばスマートフォン、デジタルタブレット、コネクテッドウォッチ、専用装置、又は携帯電話若しくはデジタルタブレットに統合若しくは接続したモジュールによる信号の記録さえも、少なくとも1つの処置剤の治療遵守の履歴を構成47することを可能にする。多くの標識が、測定及び通信システムにより検出することができるので、上述の実施形態に従って、平行した多くの処置に対する遵守の測定も可能である。ゆえに、患者は、前記履歴を参照することができる。
【0105】
少なくとも1つの第2の外部デバイス34、例えばサーバー、又は患者の自宅又は医務室に置かれたコンピューターを、方法に加えることができる。次いで、方法は、治療遵守の測定を、例えばインターネット又は移動接続を介して第1の外部デバイス33から第2の外部デバイス34に送信する工程48を含んでよい。次いで、前記測定は、第2の外部デバイス34により記録することができる。このようにして、1つ又は複数の処置に対する遵守の履歴は、医療スタッフも利用可能である。医療スタッフは、有利には、処置を適応49する、例えば、投与量を適応し、パーソナライズした医薬のフレームワーク内で患者を追跡することが可能である。
【0106】
方法は、組成物の摂取41をリマインダする工程50を更に含みうる。次いで、リマインダ信号は、組成物10の摂取に対して、外部デバイス33、例えば患者の電話により正確な瞬間に発出する。リマインダ信号は、好ましくは、音、光信号、振動、又はメッセージの書込みである。信号発出は、組成物10の最初若しくは前回の摂取に関して一時的に定められ、又は特定の時間で定める。組成物10の摂取が、リマインダ後の所与の時間内に検出されない場合、少なくとも1つの第2の信号は、外部デバイス33により発出することができる。
【0107】
医療スタッフが、治療遵守の測定に従って処置を好適なものとすることができるので、医療スタッフは、有利には、処置剤の投与量を修正49することができる。この用途のために、医療スタッフは、例えば、組成物の摂取41を呼び出す工程50のパラメーターを修正するために、新規の指示を、例えば医務室に置かれた外部デバイス34により、患者が参照することができる外部デバイス33又は34に、インターネット又は移動接続を介して送信することができる。
【0108】
本発明は、特に慢性疾患の処置を含む任意の処置に対する治療遵守の測定における特に有利な適用を見出す。特に、抗ヒスタミン又はビタミンKアンタゴニスト又は時間薬理学に感受性がある処置剤を含む、心臓不整脈に対する抗凝固処置剤に関し少なくとも遵守するためのその使用が考えられている。
【0109】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲で網羅される全ての実施形態に拡張する。
【0110】
特に、組成物10が、少なくとも1つの水素化物110を含むものと異なる、追加の検出剤を更に含むことが可能である。この追加の検出剤は、少なくとも1つの水素化物110を含むものと同様に、治療遵守を測定するが、水素化物から区別する化学的性質を有することが可能なやり方で、原薬13の摂取を示すことが可能である。より具体的には、それは、バイカーボネートでありうる。少なくともヒト又は動物の身体2中の水性媒体と接触すると、二酸化炭素(CO2)の放出をもたらすバイカーボネートの溶解を誘発する。ゆえに、二酸化炭素は、二酸化炭素センサーにより検出可能である。後者は、適切な場合、上述の測定及び通信システムに含まれ、水素センサーと同じやり方で、このシステムの通信する成分と相互作用することができる。二酸化炭素センターは、更に、ヒト又は動物の身体においてアドホックな手段で、例えば水素センサーを配置するのと同じやり方で、配置することができる。
【0111】
この最後の特徴による組成物10は、経時的に互いと非相関である検出を可能にする検出剤としていくつかの水素化物の構造化を含む、上述の構造のいずれかを有することができる。例えば、組成物10は、嚥下した薬物に関連するバーコードを提供する、オニオン構造のコーティングを含みうる。このコーティングは、薬物の取込みの検出を可能にする特定の溶解配列を生成するようにデザインすることができる。
【0112】
ゆえに、水素及び二酸化炭素の混合物を含む配列、並びに/又はこれらの異なる気体を含む特定の配列とみなすことができる。
【0113】
オニオン構造は、例えば、連続して同心円状に積層した以下を含むことができる:
- 第1の濃度で水素化物を含む、第1の層、
- 第1の濃度でバイカーボネートを含む、第2の層、
- 第2の濃度で水素化物を含む、第3の層、及び
- 第2の濃度でバイカーボネートを含む、第4の層
【0114】
ゆえに、複雑なバーコード標識は、薬物の取込みに対応して得られる。
【符号の説明】
【0115】
2 ヒト又は動物の身体
4 断面
10 組成物
11 検出剤
12 配合剤
13 有効成分、原薬
15 カプセル剤
21 口
22 胃
23 食道
24 腸
30 水素センサー
31 無線送信デバイス
32 アンカー
33 デバイス、外部デバイス、第1の外部デバイス、外部無線受信デバイス
34 外部デバイス、第2の外部デバイス
41 摂取
42 工程
43 工程
44 工程、検出
45 工程、送信
46 受信
47 構成
48 工程
49 適応、修正
50 工程
110 水素化物
111 粒子、水素化物粒子
121 コーティング剤、配合剤
122 結合剤、配合剤
130 第1の有効成分
131 第2の有効成分
1110 水素化物粒子
1111 水素化物粒子
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
【国際調査報告】