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特表2022-524150熱可塑性デンプンおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】熱可塑性デンプンおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/18 20060101AFI20220420BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20220420BHJP
   B29C 48/285 20190101ALI20220420BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20220420BHJP
   B29C 48/345 20190101ALI20220420BHJP
   B29C 48/395 20190101ALI20220420BHJP
   B29B 7/48 20060101ALI20220420BHJP
   B29B 9/12 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
C08J3/18 CEP
C08J3/20 Z
B29C48/285
B29C48/305
B29C48/345
B29C48/395
B29B7/48
B29B9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553764
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(85)【翻訳文提出日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 US2020022549
(87)【国際公開番号】W WO2020190679
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】62/819,006
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521404668
【氏名又は名称】グリーン ドット バイオプラスティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】レマート, マーク
(72)【発明者】
【氏名】パーカー, マイク
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4F207
【Fターム(参考)】
4F070AA03
4F070AB22
4F070AC12
4F070AC36
4F070AC43
4F070AE02
4F070EA04
4F070FC05
4F070FC06
4F201AA01
4F201AB07
4F201AG01
4F201AR03
4F201AR06
4F201BA01
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC02
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK25
4F201BK26
4F201BK40
4F201BK46
4F201BK64
4F201BK73
4F201BK74
4F201BL08
4F201BL31
4F201BL43
4F207AA01
4F207AB07
4F207AG01
4F207AL18
4F207AR03
4F207AR06
4F207KA01
4F207KA17
4F207KF01
4F207KF12
4F207KK12
4F207KM15
(57)【要約】
熱可塑性デンプン材料およびその製造方法を提供する。この方法は、デンプン材料の実質的な糊化をもたらす条件下で、低せん断ミキサ内でデンプン材料、可塑剤および水を混合することを含む。ミキサ内で形成された溶融物は、最終加工のために押出機に排出される。この方法は、デンプン材料の劣化を防止し、それによって、少なくとも部分的に、デンプンの分子量特性の保存により、高い強度を有する熱可塑性デンプン材料の形成をもたらし、従来のプロセスよりも高い含水量を使用する能力により、弾性の改善をもたらす。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性デンプンの製造プロセスであって、
約50~約75重量%のデンプンと、約15~約30重量%の可塑剤と、約5~約20重量%の水とを含む組成物を連続式ミキサ内で混合する工程であって、前記デンプンを糊化して、溶融物を形成するように約150°F~約200°Fの温度で前記ミキサを操作することを含む工程と、
前記連続式ミキサから前記溶融物を排出し、前記溶融物を前記押出機に供給する工程と、
約150°F~約250°Fの温度で前記押出機を操作する工程と、
約1500psi~約2500psiのダイス圧力でダイスを通して前記溶融物を押し出す工程とを含む、熱可塑性デンプンの製造プロセス。
【請求項2】
前記可塑剤が、グリセリン、クエン酸系可塑剤、変性または未変性植物油、および脂肪酸からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記可塑剤が、グリセリンである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記デンプンが、天然または変性コムギデンプン、天然または変性トウモロコシデンプン、および天然または変性ジャガイモデンプンからなる群より選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記連続式ミキサが、細長い二軸ミキサを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ミキサスクリュのそれぞれが、標準的なスクリュフライトの上流に配置されるレーベンヘルツねじ山フライトを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記連続式ミキサが、約3:1の圧縮比を有する、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
混合時のせん断率が、約590s-1~約280s-1である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記溶融物が、ロープとして前記連続式ミキサから排出される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
1つ以上の追加の固体または液体成分が、デンプン、可塑剤、および水と共に前記連続式ミキサに加えられる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記1つ以上の追加の固体または液体成分が、モノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸金属、内部または外部潤滑剤、天然繊維、充填剤、強化材料、前記デンプンよりも高いまたは低い分子量を有する追加のデンプン、および糖からなる群から選択される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
1つ以上の潤滑剤および/または追加の可塑剤が、前記押出機内の前記溶融物に加えられる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記押出機のダイスを出る際に、前記押し出された溶融物をペレット化することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記押出機のダイスは、前記溶融物をシート状またはフィルム状に形成するように構成される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記混合および押出工程が、前記ミキサに加えられる前記デンプンの分子量を実質的に変化させない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
熱可塑性デンプンの製造プロセスであって、
約50重量%~約75重量%の予備糊化されていない天然または変性デンプンと、約15重量%~約30重量%のグリセリンと、約5重量%~約20重量%の水とを含む組成物を加熱された二軸連続式ミキサ内で混合する工程であって、前記デンプンを糊化して、溶融物を形成するように約150°F~約200°Fの温度で前記ミキサを操作する工程と、
ロープとして前記連続式ミキサから前記溶融物を排出し、前記溶融物を直接一軸押出機に供給する工程と、
約150°F~約250°Fの温度で前記一軸押出機を操作する工程と、
約1500psi~約2500psiのダイス圧力でダイスを通して前記溶融物を押し出す工程とを含み、
前記混合および押出工程は、前記ミキサに加えられる前記デンプンの分子量を実質的に変化させない、熱可塑性デンプンの製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年3月15日に出願された米国仮特許出願第62/819,006号の利益を主張するものであり、その全体を参照して本明細書に援用する。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、一般的に、材料が最終的に得られる押出装置の上流に配置される低せん断蒸解段階を含む熱可塑性デンプン材料およびその材料の製造方法に関する。本発明の方法は、低コストの出発材料から高品質の熱可塑性デンプン製品を効率的に製造することを可能にする。
【0003】
先行技術の説明
歴史的に、熱可塑性デンプン(TPS)を製造する最も一般的な方法は、従来の二軸押出機(TTSE)を使用することであった。デンプン、水、および可塑剤をTTSEに加え、バレル内の加熱素子によって発生する熱およびスクリュ内の摩擦によってデンプンの糊化が引き起こされ、それによって熱可塑性材料が作製された。このプロセスは、最終的にデンプン分子量の損失をもたらす、押出機内での高圧および高せん断条件の生成を伴い、これは、熱可塑性デンプン材料の物理的強度に悪影響を及ぼした。この不都合な効果は、溶融物の含水量を増やすことによって軽減され得ることが発見された。しかしながら、使用可能な水量や、押出機を出る際に材料をペレット状に切断することができる水の量には実用的な限界がある。含水量が高すぎると、ポリマーが柔らかくなりすぎる。同時に、使用される材料および条件は、機械にかなりの摩耗を引き起こす可能性があり、しばしば、押出機を構築するためにより高価な材料を使用する結果となる。このために、TTSE機器の既に高い資本コストがまた増加する。
【0004】
これらの問題のために、TPSを製造するための他のプロセスが開発されてきた。そのようなプロセスの1つは、米国特許第6,136,097号に記載されている。これらの解決策は、必要とされる多くの工程および多くの下流設備を伴う複雑なプロセスを含むことが多い。それらは全て、プロセスの蒸解段階において、後に除去される大量の水をデンプンに添加することを必要とする。この水が除去されると、TPSを使用可能な形態にするために、さらなる処理を行わなければならない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の特定の実施形態は、連続式ミキサを使用して、従来の押出プロセスよりも高品質で低コストの熱可塑性デンプン製品を製造するための単純で効率的な低コストの方法を提供することによって、上記の問題を克服する。
【0006】
本発明の1つの実施形態によれば、熱可塑性デンプンの製造プロセスが提供される。このプロセスは、約50重量%~約75重量%のデンプンと、約15重量%~約30重量%の可塑剤と、約5重量%~約20重量%の水とを含む組成物を連続式ミキサ内で混合する工程を含む。この混合工程は、デンプンを糊化して、溶融物を形成するように、約150°F~約200°Fの温度でミキサを操作することを含む。次いで、溶融物を連続式ミキサから排出し、単軸押出機に供給する。押出機は、約150°F~約250°Fの温度で操作される。次に、溶融物を、約1500psi~約2500psiのダイス圧力でダイスを通して押し出す。
【0007】
本発明のさらに別の実施形態によれば、熱可塑性デンプンの製造プロセスが提供される。このプロセスは、約50重量%~約75重量%の予備糊化されていない天然または変性デンプンと、約15重量%~約30重量%のグリセリンと、約5重量%~約20重量%の水とを含む組成物を加熱された二軸連続式ミキサ内で混合する工程を含む。この混合工程は、デンプンを糊化して、溶融物を形成するように、約150°F~約200°Fの温度でミキサを操作することを含む。溶融物は、連続式ミキサからロープとして排出され、単軸押出機に直接供給される。単軸押出機は、約150°F~約250°Fの温度で操作される。次に、溶融物を、約1500psi~約2500psiのダイス圧力でダイスを通して押し出す。混合および押出工程は、ミキサに加えられるデンプンの分子量を実質的に変化させない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明の実施形態は、一般的に、熱可塑性デンプン(TPS)の製造プロセスに関する。TPSは、物品を製造するためにペレット、シート、またはフィルムに形成することができ、あるいは、TPSには、最終製品に形成される前に、生分解性プラスチックなどの他のプラスチック材料を配合することができる。特定の実施形態では、本発明によるプロセスが、2つの工程を含むか、2つの工程からなるか、または本質的に2つの工程からなる。第1の工程では、デンプンと、1種以上の可塑剤と、水とを含む成分を、加熱下で連続式ミキサ内で混合する。第2の工程では、ミキサから排出される溶融物を押し出して、TPSを形成する。
【0009】
以下により詳細に説明するように、本発明は、有利には、安価な未蒸解の天然または変性デンプンを可塑剤と組み合わせて、押し出される前に蒸解することができるプロセスを提供する。押出機の上流でのデンプンの蒸解または糊化は、TPSの強度の低下をもたらすようなデンプンの分子量特性に実質的に影響を与えることなく、向上した伸び特性などの好ましい特性をTPSに付与することが発見された。本明細書中で用いられる用語「糊化された」は、水分子がデンプン中に浸透することを可能にするようにデンプン分子が開放されるデンプンの蒸解をいう。糊化のプロセスは、デンプン分子を、それらの天然または結晶形態から非晶質状態に変質する。
【0010】
特定の実施形態では、連続式ミキサは、細長い二軸ミキサを含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,350,690号に示され、記載されている種類のものであることが好ましい。特に好ましい実施形態では、ミキサスクリュの各々が、標準的なスクリュフライトの上流に配置されたレーベンヘルツねじ山フライトを含む。また、特定の実施形態では、連続式ミキサは、約3:1の圧縮比を有する。特定の実施形態では、ミキサのL/D比(混合スクリュの長さ対直径の比)は、約10:1以下である。
【0011】
一般的に、連続式ミキサは、乾燥成分と液体成分との両方を受けて、加熱下でこれらの成分を配合または混合し、次いで、混合された成分を調節可能な開口出口を通して排出するように構成される。ミキサ出口のサイズを大きくすることにより、ミキサ内の材料は、より自由に出て行き、それによって、受ける熱、背圧、および混合せん断を少なくする。しかしながら、より多くの熱および混合が必要とされる場合、開口をより小さく調節することができる。さらに、バレル内のスクリュの設計により、混合およびせん断誘起熱の量を調整することもできる。
【0012】
ミキサに供給されるデンプン成分は、穀類植物(例えば、トウモロコシ、コムギ、イネ、オオムギ、ライコムギおよびモロコシ)、塊茎(例えば、ジャガイモおよびキャッサバ)、マメ科植物(例えば、エンドウマメ、ダイズおよび豆)などの植物源から得られるデンプン、または他の非食品セルロース材料およびバイオマスに由来するデンプンを含む。最も好ましくは、デンプンは、天然コムギ、トウモロコシまたはジャガイモデンプンである。しかしながら、デンプンに対する変性が、ミキサ内で糊化される能力を妨げない限り、変性デンプン(例えば、予備糊化デンプンまたは高アミロースデンプン)が使用されることは、本発明の範囲内である。
【0013】
本発明の特定の実施形態によれば、可塑剤成分は、ポリマー樹脂材料の柔軟性を改善することが知られている任意の適切な材料であってもよい。例示的な可塑剤としては、種々の変性または未変性植物油、脂肪酸、ポリオール、エーテル、チオエーテル、無機および有機エステル、アセタール、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。特に好ましい可塑剤としては、有機酸由来可塑剤、特に有機酸エステル可塑剤(例えば、クエン酸由来可塑剤)、アジピン酸トリデシルアジペートなどのアジピン酸誘導体、イソデシルベンゾエートなどの安息香酸誘導体、およびグリセリンが挙げられる。
【0014】
ミキサ内で配合される成分はまた、モノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸金属、内部または外部潤滑剤、天然繊維、充填剤、強化材料、一次デンプン成分よりも高いまたは低い分子量を有する追加のデンプン、および糖からなる群より選択されるものなどの1つ以上の任意の固体または液体成分を含むことができる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、成分は、表1に記載されるおおよそのレベルでミキサ内に加えられ、配合されてもよい。
【0016】
【表1】
【0017】
特定の実施形態では、デンプンを糊化して、溶融物を形成するために、成分は、約150°F~約200°Fの温度および140~250rpm、好ましくは150~200rpmのミキサスクリュ速度でミキサ内で混合される。ミキサ内の圧力は、大気圧またはそれに近い状態である。特定の実施形態では、ミキサ内の圧力は、5バール未満、3バール未満、2バール未満、約1バール、あるいは約1バール~約2バールである。ミキサは、デンプンを過剰蒸解しないように、またはデンプンの分子量に実質的に影響を与えないように、溶融物に比較的低いせん断を与える。特定の実施形態では、混合中のせん断速度は、約590s-1~約280-1である。また、特定の実施形態では、ミキサ内の成分に入力される機械的エネルギーの量は、約75~約150Wh/kg、約85~約145Wh/kg、あるいは約90~約130Wh/kgである。しかしながら、他の実施形態では、ミキサ内の成分に加えられる機械的エネルギーの量は、100J/g未満、または90J/g未満、あるいは80J/g未満である。上述したように、ミキサの主な機能は、デンプンを蒸解または糊化することであり、製造プロセスで行われるデンプン糊化の大部分は、ミキサ内で行われる。ミキサ内でデンプンを少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%蒸解することが好ましい。特定の実施形態において、デンプンは、ミキサ内で完全に糊化される(可能な限り最大の糊化が達成可能である)。
【0018】
溶融物は、厚いストランドまたはロープとして、調整可能な開口を通ってミキサのバレルから出る。次いで、均質で溶融した材料のロープは、押出機の供給スロート内に向かって短い距離を進む。ミキサから排出されるロープの溶融温度は、好ましくは約190°F~約200°Fである。ロープは、好ましくは、押出機の入口内に向かって比較的短い距離(例えば、36インチ未満)を進む。この短時間の間に、溶融物内の過剰な水分の少なくとも一部は、もしあれば、フラッシュオフする。
【0019】
好ましい実施形態では、プロセスのこの第2の工程で使用される押出機は、ミキサの出力を供給するような大きさとした一般的な単軸押出機であるが、他の種類の押出機およびスクリュ構成を使用することも本発明の範囲内である。押出機は、ミキサ中で開始したデンプンの糊化を完了するのに必要な追加の熱および時間を提供し、過剰な水分の除去および溶融物の圧縮を確実にするために材料を排気するように設定することができる。押出機の作用はまた、TPS材料が正しい製品構造を有することを確実にする。過剰な水分の損失は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,136,097号に開示されるように、必要とされるさらなる下流処理または加工なしに、ダイスにおいてペレット状に切断され得るか、または任意の押出可能な形状(プロファイル、シート、フィルムなど)を容易に生成し得る、完全に糊化されたデンプンのストランドを生成することができることを意味する。
【0020】
特定の実施形態では、押出機のバレル温度は、約130°F~約170°F、または約140°F~約160°F、あるいは約150°Fに設定されるが、約150°F~約250°F、好ましくは約180°F~約220°Fなどのはるかに広い範囲にわたって操作することができる。溶融物は、約1500psi~約2500psi、好ましくは約1800psi~約2200psiの圧力でダイスを通して押し出される。特定の実施形態では、押出物のダイス温度は、約175°F~約220°F、約185°F~約205°F、あるいは約190°Fである。押出機のダイスは、押し出された溶融物をシートまたはフィルムに形成するように、または押し出された溶融物がペレタイザを通過する準備をし、それによって押し出された溶融物がペレット状に形成されるように構成されてもよい。特定の実施形態では、一部の水は、ダイスを通過する間に溶融物から追い出され得るが、最も一般的には、放出された蒸気は、視覚的に観察されない。特定の実施形態では、押出機のL/D比(押出機のスクリュの長さ対直径の比)は、約10:1以下である。
【0021】
ミキサに最初に加えられたデンプン成分の分子量を実質的に変化させないことが、混合および押出工程に関する本発明の特定の実施形態の利点である。好ましい実施形態において、デンプンの数平均分子量、重量平均分子量、ピーク分子量、および多分散性(Mw/Mn)の変化は、5%未満、3%未満、あるいは1%未満である。特定の実施形態では、TPS内に存在するデンプンは、ミキサに最初に加えられるデンプンの分子量の少なくとも90%、少なくとも95%、あるいは少なくとも98%である分子量(Mw、Mn、またはMp)を有する。特定の実施形態では、押出機を出て完成したTPS製品は、透明または半透明である。しかしながら、所望により、混合中または押出前に着色剤を溶融物に添加することは、本発明の範囲内である。また、混合され押し出される材料内からの水分の排出(例えば、真空引き)および蒸発を必要としないことも、本発明の特定の実施形態の利点である。
【0022】
本発明に従って製造されたTPSは、単独で物品を製造するために使用することができ、または他のプラスチックおよびポリマー、特に生分解性ポリマーと配合し、次いで、射出成形などの当業者に公知の様々な手段を使用して物品に成形することができる。TPSを配合することができるさらなる変性または錯化ポリマーは、ポリオールおよびポリオール誘導体などの可塑剤、エステル、エステル変性熱可塑性セルロースポリマー、ウレタンプレポリマー、二酸、またはデンプン成分に所望の特性を付与することができる他の化合物を含む。他の実施形態では、変性または錯化ポリマーは、ポリカプロラクトン(PCL)、芳香族コポリエステル(PBAT)、脂肪族ポリエステル(PBS)、ポリビニルアルコール(PVOH)などの水溶性ポリマー、またはポリラクテート(PLA)、微生物ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、またはセルロース誘導体などの再生可能起源のポリエステルを含むことができる。
【0023】
上記に加えて、特定の実施形態では、ミキサおよび/または押出機内で加工される材料に繊維または繊維材料を添加しないことが好ましい。特定の実施形態では、ミキサおよび/または押出機内で加工される材料が木材繊維、木粉、または任意の他の種類のセルロース系材料を含まないことが好ましい。特定の実施形態では、ミキサおよび/または押出機内で加工される材料が無機鉱物充填剤を含まないことが好ましい。
【0024】
実施例
以下の実施例は、本発明による好ましい熱可塑性デンプン材料および前記材料の製造方法を説明する。しかしながら、これらの実施例は実例として示されており、その中のどれも本発明の全範囲の限定として捉えられるべきではないことは理解されるべきである。
【0025】
実施例1
この実施例では、TPS材料は、コムギデンプン(エムジーピー・イングリーディエンツからのMIDSOL 50)、グリセリン(KICグループからの産業的/技術的グレード99.7%)、および水から作製された。これらの成分を、連続式ミキサおよび単軸押出機、Technical Process and Engineering,Inc.製のModel 2FRを用いて混合し、押し出した。ミキサの構成は、一般的に、米国特許第7,350,960号に記載されている。ブラベンダーからのロスインウェイト式粉末供給装置を用いて、乾燥成分を連続式ミキサに加えた。水は、液体用の蠕動ポンプを用いて加えた。
【0026】
連続式ミキサの温度は、供給部で188°F、排出部で190°Fに設定した。ミキサスクリュ速度は、240rpmに設定した。ミキサに用いたロータは、低せん断TPEI#17ロータであった。グリセリンと水を、67重量%のグリセリン、33重量%の水の比で混合して溶液を形成した。デンプンを30lbs/hrでミキサに供給し、液体溶液を25lbs/hrで供給した。得られた混合物は、54.5重量%のデンプンと、30.5重量%のグリセリンと、15重量%の水とを含んでいた。
【0027】
この混合物は、上記の条件で連続式ミキサを通過し、連続溶融ロープとして出た。溶融ロープの温度を数回測定したところ、190°F~200°Fであった。この溶融ロープを、3:1圧縮スクリュを用いた単軸押出機に向けた。単軸押出機の温度は、バレルで220°F、ダイスで230°Fに設定した。スクリュ速度は、10rpmであり、熱可塑性デンプンをストランド状に押し出し、次いで水浴を使用せずにストランドペレット化した。
【0028】
実施例2
この実施例では、TPS材料は、コムギデンプン(エムジーピー・イングリーディエンツからのMIDSOL 50)、グリセリン(KICグループからの産業的/技術的グレード99.7%)、および水から作製された。これらの成分を、連続式ミキサおよび単軸押出機、Technical Process and Engineering,Inc.製のModel 2FRを用いて混合し、押し出した。ミキサの構成は、一般的に、米国特許第7,350,960号に記載されている。ブラベンダーからのロスインウェイト式粉末供給装置を用いて、乾燥成分を連続式ミキサに加えた。水は、液体用の蠕動ポンプを用いて加えた。
【0029】
連続式ミキサの温度は、供給部で155°F、排出部で180°Fに設定した。スクリュ速度は、145rpmに設定した。ミキサに用いたロータは、低せん断TPEI#17ロータであった。グリセリンと水を、67重量%のグリセリン、33重量%の水の比で混合して溶液を形成した。デンプンを35lbs/hrでミキサに供給し、液体溶液を15lbs/hrで供給した。得られた混合物は、70重量%のデンプンと、20.1重量%のグリセリンと、9.9重量%の水とを含んでいた。
【0030】
この混合物は、上記の条件で連続式ミキサを通過し、連続溶融ロープとして出た。溶融ロープの温度を数回測定したところ、200°F~210°Fであった。この溶融ロープを、3:1圧縮スクリュを用いた単軸押出機に向けた。単軸押出機の温度は、バレルで150°F、ダイスで200°Fに設定した。スクリュ速度は、8rpmであった。直径0.125インチの穴が3つあるダイスを用いて、2100psiのダイス圧力が得られた。熱面ペレタイザをダイスの面に取り付け、押出物をペレット化した。
【0031】
実施例3
この実施例では、TPS材料は、予備糊化されたコムギデンプン(エムジーピー・イングリーディエンツからのPREGEL 10)、グリセリン(KICグループからの産業的/技術的グレード99.7%)、および水から作製された。これらの成分を、連続式ミキサおよび単軸押出機、Technical Process and Engineering,Inc.製のModel 2FRを用いて混合し、押し出した。ミキサの構成は、一般的に、米国特許第7,350,960号に記載されている。ブラベンダーからのロスインウェイト式粉末供給装置を用いて、乾燥成分を連続式ミキサに加えた。水は、液体用の蠕動ポンプを用いて加えた。
【0032】
連続式ミキサの温度は、供給部で150°F、排出部で185°Fに設定した。スクリュ速度は、117rpmに設定した。ミキサに用いたロータは、低せん断TPEI#17ロータであった。グリセリンと水を、67重量%のグリセリン、33重量%の水の比で混合して溶液を形成した。デンプンを35lbs/hrでミキサに供給し、液体溶液を15lbs/hrで供給した。得られた混合物は、70重量%のデンプンと、20.1重量%のグリセリンと、9.9重量%の水とを含んでいた。
【0033】
この混合物は、上記の条件で連続式ミキサを通過し、連続溶融ロープとして出た。溶融ロープの温度を数回測定したところ、約190°Fで安定していることが分かった。この溶融ロープを、3:1圧縮スクリュを用いた単軸押出機に向けた。単軸押出機の温度は、バレルで180°F、ダイスで200°Fに設定した。スクリュ速度は、12rpmであった。直径0.125インチの3つの孔を有するダイスを用いて、1,900~2,100PSIのダイス圧力を得た。熱面ペレタイザをダイスの面に取り付け、押出物をペレット化した。
【0034】
分子量評価
TPS製造プロセスに起因してデンプンの分子量に何らかの大きな変化が生じたかどうかを決定するために、2つのサンプルを試験のために独立した研究所に送った。第1のサンプルは、実施例1および2で使用した原料小麦デンプン(MIDSOL 50)であった。第2のサンプルは、実施例2で作製したTPSであった。研究所は、2つの材料中のデンプンの分子量を分析する方法を開発した。
【0035】
サンプルを含む溶液を、希釈剤として移動相DMSO+DMAC(4:1)+0.1%LiBrを使用して、約0.8mg/ml濃度で調製した。サンプル溶液を50℃のオーブンに2時間入れて溶出を助け、次いでオーブンから取り出し、周囲温度に16時間順応させた。目視検査では、サンプルは、希釈剤に完全に溶解しているように見え、室温では沈殿していなかった。全てのサンプルを0.45μmナイロンフィルタで濾過した。サンプルは、抵抗なく簡単に濾過された。全てのサンプルは、ウォーターズ社製の2695アライアンス分離モジュールシステムを用いて分析した。このシステムは、屈折率検出を備えたポリエステルコポリマーカラムセットを備えていた。較正には一連の狭いプルラン標準を用いた。較正標準は、180~1.22Mダルトンであった。分子量試験の結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
Mn=数平均分子量;Mw=重量平均分子量;Mp=最高点の分子量;PDI=多分散性指数
【0037】
これから分かるように、処理前後の分子量の変化は最小であった。TPS材料中に含まれるデンプンは、3%のMnのわずかな増加を示した。TPS材料中に含まれるデンプンのMwは、0.5%の低下を示した。TPS材料内に含まれるデンプンのMpは、PDIと同様に、天然デンプンのMpとほぼ同一であった。これらの結果は、TPSを調製するプロセスが、デンプンの分子量にいかなる有意な損傷も引き起こさなかったことを実証している。
【0038】
物性評価
実施例2で調製した熱可塑性デンプンの物性を、従来の二軸押出機(CTPS)を用いて、すなわち、押出機の上流に細長いミキサを用いずに作製した熱可塑性デンプンのサンプルの物性と比較した。熱可塑性デンプンは両方とも、同じ成分を含んでいた。次いで、熱可塑性デンプンを、生分解性ポリエステル、BASFから得られ、ECOFLEXの商品名で知られているポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)と配合した。
【0039】
配合は、35mm二軸押出機で行った。バレルの供給領域を380°Fに加熱し、バレル領域の残りは360°Fであった。スクリュ速度は、220rpmであり、成分の全供給速度は、60lbs/hrであった。両方の配合材料の処方は、70% PBATおよび30% TPSであった。
【0040】
得られた化合物を標準引張棒に射出成形し、次いで引張特性について試験した。試験の結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
上記のデータが示すように、2つの材料に有意差がある。実施例2からのTPSは、従来製造されたCTPSよりも高い弾性率、伸び、破断応力および降伏応力を示し、実施例2からのTPSは、より強いが、より弾性の材料を製造することができることを示している。
【0043】
実施例1および実施例3からのサンプルについても引張試験を行った。前述のように、上記のプロセス条件を使用して、TPSサンプルを、30% TPS対70% PBAT比でPBAT中に配合した。
【0044】
上記の実施例を参照すると、実施例1~3のTPS間の主な違いは、以下の通りである。実施例1からのTPSは、天然コムギデンプンを用いて作製され、30%のグリセリンおよび15%の水を含有した。実施例2からのTPSも、天然コムギデンプンを用いて作製したが、20%のグリセリンおよび10%の水を含有した。実施例3からのTPSもまた、20%グリセリンおよび10%水を用いて作製したが、天然デンプンの代わりに予め予備蒸解されたコムギデンプンを含んでいた。よって、実施例1と実施例2とを比較することにより、TPS材料に対するより高い液体レベルの効果を観察することができる。また、混合工程において達成される糊化レベルは、実施例3における予備糊化されたデンプンとの比較によって決定することができる。より低い強度および弾性は、より低い糊化度を示すはずである。結果を表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
このデータは、液体がTPS中で可塑剤として作用するので、実施例1からのTPSのより高い液体レベルが、実施例2および実施例3からのTPSのものよりもはるかに硬くなく、より弾性のある複合体を作り出したことを示している。また、実施例2および3からのTPSのほぼ同一の結果は、ミキサ内の天然デンプンの糊化レベルが、予備糊化されたデンプンの100%に近かったことを示している。
【0047】
実施例4
この実施例では、TPS材料は、コムギデンプン(エムジーピー・イングリーディエンツからのMIDSOL 50)、グリセリン(KICグループからの産業的/技術的グレード99.7%)、および水から作製された。これらの成分を、連続式ミキサおよび単軸押出機、Technical Process and Engineering,Inc.製のModel 2FRを用いて混合し、押し出した。ミキサの構成は、一般的に、米国特許第7,350,960号に記載されている。乾燥成分を、Ktronからのロスインウェイト式粉末供給装置を用いて連続式ミキサに加えた。水は、液体用の蠕動ポンプを用いて加えた。
【0048】
連続式ミキサの温度は、供給部で180°F、排出部で190°Fに設定した。スクリュ速度は、300RPMに設定した。ミキサに用いたロータは、低せん断TPEI#7ロータであった。グリセリンと水とを、67%グリセリン、33%水の比で混合して溶液を形成した。デンプンを30lbs/hrでミキサに供給し、液体溶液を20lbs/hrで供給した。得られた混合物は、60重量%のデンプンと、26.8重量%のグリセリンと、13.2重量%の水とを含んでいた。
【0049】
この混合物は、上記の条件で連続式ミキサを通過し、連続溶融ロープとして出た。ミキサの特定エネルギーは、これらの条件でキログラム当たり約64ワット×時間であると計算された。溶融ロープの温度は、165°Fであった。溶融ロープを、3:1圧縮比スクリュで単軸押出機に向けた。単軸押出機を、バレル上で180°F~190°F、ダイスで200°Fに設定した。スクリュ速度は、10RPMであった。熱可塑性デンプンをストランド状に押し出し、次いで水浴を使用せずにストランドペレット化した。
【0050】
分子量評価
TPS製造プロセスに起因して分子量に大きな変化が生じたかどうかを決定するために、2つのサンプルを試験のために独立した研究所に送った。第1のサンプルは、この実施例で使用した原料コムギデンプンであった。第2のサンプルは、この実施例で作製したTPSであった。2つの材料中のデンプンの分子量を分析するために研究所によって使用される方法は、上記の実施例3に記載されている。分子量試験の結果を表5に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
この実施例の結果は、ミキサ内のTPS材料への全エネルギー入力が、先の実施例と比較して、(ミキサを出るロープ温度が示すように)減少され得るが、類似の分子量プロファイルを達成することを示している。
【0053】
実施例5
この実施例では、TPS材料は、コムギデンプン(エムジーピー・イングリーディエンツからのMIDSOL 50)、グリセリン(KICグループからの産業的/技術的グレード99.7%)、および水から作製された。これらの成分を、連続式ミキサおよび単軸押出機、Technical Process and Engineering,Inc.製のModel 2FRを用いて混合し、押し出した。ミキサの構成は、一般的に、米国特許第7,350,960号に記載されている。乾燥成分を、Ktronからのロスインウェイト式粉末供給装置を用いて連続式ミキサに加えた。水は、液体用の蠕動ポンプを用いて加えた。
【0054】
連続式ミキサの温度は、供給部で140°F、排出部で195°Fに設定した。スクリュ速度は、950RPMに設定した。使用したロータは、低せん断TPEI#7ロータであった。グリセリンと水とを、67%グリセリン、33%水の比で混合して溶液を形成した。デンプンを120lbs/hrでミキサに供給し、液体溶液を80lbs/hrで供給した。得られた混合物は、60重量%のデンプンと、26.8重量%のグリセリンと、13.2重量%の水とを含んでいた。
【0055】
この混合物は、上記の条件で連続式ミキサを通過し、連続溶融ロープとして出た。ミキサの特定エネルギーは、これらの条件でキログラム当たり約64ワット×時間であると計算された。次いで、溶融ロープは、3:1圧縮比スクリュで単軸押出機に入った。単軸押出機の温度は、バレル上で200°F~220°F、ダイスで220°Fに設定した。スクリュ速度は、35RPMであった。熱可塑性デンプンをストランド状に押し出し、次いで水浴を使用せずにストランドペレット化した。
【0056】
分子量評価
TPS製造プロセスに起因して分子量に大きな変化が生じたかどうかを決定するために、2つのサンプルを試験のために独立した研究所に送った。第1のサンプルは、この実施例で使用した原料コムギデンプンであった。第2のサンプルは、この実施例で作製したTPSであった。2つの材料中のデンプンの分子量を分析するために研究所によって使用される方法は、上記の実施例3に記載されている。分子量試験の結果を表6に示す。
【0057】
【表6】
【0058】
この実施例の結果は、材料の分子量プロファイルに影響を及ぼすことなく、プロセスをスケールアップすることができる(処理量を実施例4のように50lbs/hrからこの実施例では200lbs/hrに増加させる)ことを実証している。
【国際調査報告】