(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】オリゴマーヘキサフルオロプロピレンオキシド誘導体
(51)【国際特許分類】
C07C 271/16 20060101AFI20220420BHJP
C08F 20/34 20060101ALI20220420BHJP
C07C 69/54 20060101ALN20220420BHJP
【FI】
C07C271/16 CSP
C08F20/34
C07C69/54 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021553855
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2020054739
(87)【国際公開番号】W WO2020182452
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】102019106081.8
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515055203
【氏名又は名称】ヨアノイム リサーチ フォルシュングスゲゼルシャフト エムベーハー
【氏名又は名称原語表記】JOANNEUM RESEARCH FORSCHUNGSGESELLSCHAFT MBH
【住所又は居所原語表記】Leonhardstrasse 59,A-8010 Graz,Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】ネ-ス, ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ルットロフ, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ, ヨハネス
【テーマコード(参考)】
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB46
4H006KC14
4H006RA10
4J100AL08P
4J100BA02P
4J100BA38P
4J100BB13P
4J100BB17P
4J100BB18P
4J100CA05
4J100EA01
4J100JA01
4J100JA32
4J100JA43
4J100JA67
(57)【要約】
式(I)
【化1】
式(I)中、nは、3~8から選択され、Rは、水素またはC
1~C
8アルキル基である
化合物、この化合物の調製のためのプロセスおよびこの化合物の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
式(I)中、nは、3~8から選択され、Rは、水素またはC
1~C
8アルキル基である
、化合物。
【請求項2】
nは、3または4であり、Rは、水素またはメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物と、重合性炭素-炭素二重結合と反応するポリマー出発物質と、を含む組成物。
【請求項4】
前記化合物を0.001~10重量パーセントの量で、前記ポリマー出発物質を50~99.999重量パーセントの量で含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記化合物を0.001~1.0重量パーセントの量で含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の組成物を重合反応に付すことにより取得可能なポリマー。
【請求項7】
請求項6に記載のポリマーを含有する層を表面に含む、被覆された基材。
【請求項8】
請求項6に記載のポリマーを含むエンボス加工されたコーティング層を上に配置した支持体、または請求項6に記載のポリマーを含む構造化された表面層を上に配置したナノインプリントリソグラフィー用スタンプである、請求項7に記載の被覆された基材。
【請求項9】
前記式(I)の化合物中のウレタン化合物を、対応するアルコールと対応するイソシアネートとから調製するステップを含む、請求項1または2に記載の化合物を調製するためのプロセス。
【請求項10】
請求項1または2に記載の化合物の存在下でポリマー出発物質を重合させるステップを含む、ポリマーを調製するためのプロセスであって、前記化合物の重合性炭素-炭素二重結合が、前記重合させる反応に関与するプロセス。
【請求項11】
スタンプを用いてワニス層にエンボス加工するステップを含むナノインプリントリソグラフィープロセスであって、前記ワニス層は、請求項3~5のいずれか1項に記載の組成物であり、前記スタンプは、請求項6に記載のポリマーを含む構造化された表面層を有するプロセス。
【請求項12】
コーティングの表面エネルギーを改変するための、請求項1または2に記載の化合物あるいは請求項3~5のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
前記コーティングは、反射防止コーティング、防塵コーティング、自己清浄化コーティングまたは流れ摩擦低下コーティングから選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
光電池、照明、光学または建物用ガラスの分野における物質の前記コーティングにおける、請求項12または13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)を基にする新規なオリゴマー化合物、これらの化合物を含有する組成物、これらの化合物で表面を修飾された基材、ならびにこれらの化合物の調製のためのプロセスおよび使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先端技術において、UV-NILエンボス加工された表面(NILとは、ナノインプリントリソグラフィー(Nano Imprinting Lithography)を意味する)で、1%未満の質量百分率で早くもハス効果を生じることができる粘着防止用添加剤が公知である(非特許文献1参照)。エンボス加工された表面の構造化または粗さに加えて、ハス効果は、-CF2基よりはるかに低い表面エネルギーを有する-CF3基の高い割合に基づく。
【0003】
高度に表面活性な生成物は、下式のアクリレート官能化粘着防止用添加剤オリゴ-HFPO-2-ヒドロキシエチルメタクリレートエステル(以後「HFPOメタクリレート」とも呼ばれる)である。
【0004】
【0005】
この分子の格別な界面活性は、CF3側鎖基を有するペルフルオロポリエーテル鎖の枝分かれ構造に起因する。HFPOメタクリレートは、HFPOアルコールの-CH2-OHアルコール基のカルボン酸基への酸化と、それに続く2-ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化と、によって調製することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】西野孝、目黒将司、中前勝彦、松下モトノリおよび上田裕清著、“The Lowest Surface Free Energy Based on -CF3 Alignment”、Langmuir 1999年、15巻、4321~4323頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高度に有効な粘着防止用添加剤および同を含有する組成物(UV-NILエンボス加工用ワニス)を提供することである。
【0008】
さらなる目的は、非粘着性添加剤を作る簡単な方法およびその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題は、本発明による化合物、組成物、ポリマー、被覆された基材、方法および使用を提供することによって解決された。
【0010】
本発明によるこれらの目的は、請求項において定義される。
【発明の効果】
【0011】
本発明による化合物は、低い表面エネルギーを有し、粘着防止用添加剤として様々な方法(例えば(メタ)アクリレート系UV-NILエンボス加工用ワニス)で用いることができる。この方法において、本発明による化合物は、エンボス加工用ワニスからのエンボス加工用スタンプの分離時の粘着力または離型力を顕著に低下させることができ、UV-NILエンボス加工された表面に防塵性または自己清浄化性を付与し、適当な構造体上にハス効果を生じさせることもできる。
【0012】
本発明による化合物は、HFPOメタクリレートより簡単な方法で、かつより高い収率で調製することができる。
【0013】
対応するオリゴ-ウレタン(メタ)アクリレートを与える2-イソシアノエチル(メタ)アクリレートへのオリゴHFPOアルコールの直接付加は、HFPOメタクリレートの多段合成より簡単であり、かつより高い収率で行うことができる。
【0014】
本発明による化合物の合成のために用いることができる出発化合物は、調製するのが簡単かつ安価である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による化合物のウレタン基の間の水素結合の形成を概略的に示す。
【
図2】不活性ガス下でUV硬化された実施例1のエンボス加工用ワニス層上の水およびジヨードメタン接触角(KW)をPFPE-UA-3の濃度の関数として示す。
【
図3】不活性ガス下でUV硬化された実施例1のエンボス加工用ワニス層上の表面エネルギーをPFPE-UA-3濃度の関数として示す。γ:総表面エネルギー、d:分散分、p:極性分。
【
図4】実施例2のエンボス加工用ワニス層上の水およびジヨードメタン接触角をPPFE-US-3の濃度の関数として示す。
【
図5】実施例2のエンボス加工用ワニス層上の表面エネルギーをPFPE-US-3濃度の関数として示す。γ:総表面エネルギー、d:分散分、p:極性分。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、式(I)の化合物を提供する。
【0017】
【0018】
式(I)中、nは、3~8から選択され、Rは、水素またはC1~C8アルキル基である。好ましくは、Rは、水素またはメチル基である。
【0019】
重合性炭素-炭素二重結合は、好ましくは、光および/または熱の作用を受け、および/または化学的な手段により、有機法で重合することができる。それは、化学作用のある放射の作用を受けて光化学的に重合することができる基、特にUV重合性基である。
【0020】
重合反応は、通常、反応性二重結合または環が熱、光、イオン化放射の影響を受けて、または化学的に(レドックス反応により)ポリマーに変換されるポリ反応(付加重合)である。有機重合は、好ましくは、(メタ)アクリル基により起こる。
【0021】
C=C二重結合の重合反応(重付加)それ自体に加えてまたは代わって、これらの二重結合を含む化合物とジアミン以上の高次アミンまたはジチオール以上の高次チオールとの、マイケル付加(チオール-エン反応またはそれぞれ類似のアミンとの反応)による反応も可能である。
【0022】
本発明による化合物は、CF3基の高い度合いを有する。
【0023】
式(I)の構造において、すべてのCF3基は、それぞれの場合に-CF2-O-基が間に入るように配置されている。
【0024】
ウレタン基と隣接CF3基との間に-CF2-O基に似た-CH2-O基がある。
【0025】
この配置に起因して、本発明による化合物は、非常に規則的な構造を有し、そのことが、秩序があり、かつ非常に高密度に詰め込まれたフルオロ界面活性剤層構造を可能にする。この構造は、本発明による化合物のウレタン基の間で水素結合を形成する可能性によって強められる(
図1参照)。
【0026】
全体として、このことは、本発明による化合物が、例えばアクリレート系であるエンボス加工用ワニスにおいて表面エネルギー、ひいては粘着エネルギーを大いに低下させ、従って、目立ったハス効果を付与することができるという結果を生む。
【0027】
本発明による化合物は、アルコールとイソシアネートとの反応によって取得可能である。先行技術の化合物HFPOメタクリレートとの差異は、調製プロセスから生じる。
【0028】
HFPOメタクリレートは、HFPOアルコールの-CH2-OHアルコール基のカルボン酸基への酸化と、それに続く2-ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化と、によって調製することができる。
【0029】
例えば、本発明による化合物は、オリゴウレタンアクリレートであり、例えば、オリゴHFPOアルコールを、ウレタンアクリレートを形成する2-イソシアナトエチルアクリレート(AOI)への付加により反応させることによって調製することができる。
【0030】
このことは、本発明とHFPOメタクリレートとの間に以下の構造的差異を生む結果となる。
本発明の化合物: ...-CH2-O-CO-NH-CH2-...
HFPOメタクリレート: ...-CO-O-CH2-...
【0031】
出発化合物として用いられるオリゴマーは、プロピレンオキシドさえあれば導かれる単位を有し、そのため簡単な方法で調製することができる。
【0032】
本発明による化合物中に頭基として存在するウレタン基は、追加のN原子に起因して極性であり、さらにN原子にあるH原子に起因してH-橋かけ結合を形成することができる。このことは、ポリマー表面におけるより高度に秩序化され、かつより高密度に詰め込まれたフルオロ界面活性剤単分子層、ひいてはより低い表面エネルギーを生じる(
図1参照)。
【0033】
本発明による実施例において、種々のHFPO-UA-3含有量を有するUV硬化されたエンボス加工用ワニス層が作り出され、次に、これらの層上の水およびジヨードメタン小液滴の接触角が測定され、これから表面エネルギーが決定された。このプロセスにおいて測定され、計算された値は、少なくともHFPOメタクリレートのものと等しい並外れた界面活性を証明した。その表面活性は、M.Leitgeb、D.Neesら、ACS Nano、10巻、5号、4926頁(2016年)中に記載された(その報告中ではPFPE-A1と表示)。
【0034】
本発明による組成物は、本発明による化合物およびポリマー出発物質を含む。ポリマー出発物質は、重合時に本発明による化合物中の炭素-炭素二重結合と反応することができる少なくとも1個の反応基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーを含む。最も簡単な場合、これは、炭素-炭素二重結合を有する基でもある。二重結合を含む基の例は、マイケル付加に利用可能な二重結合を有するもの、例えばスチリル、ノルボルネニルまたは(メタ)アクリル酸誘導体である。しかし、それらは、ビニルまたはアリル基のこともある。(メタ)アクリル誘導体または(メタ)アクリル酸誘導体によって、特に、(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミドが意味される。さらにまたはあるいは、ポリマー出発物質は、ジアミン以上の高次アミンまたはジチオール以上の高次チオールを含む、マイケル付加(チオール-エン反応またはアミンでのそれぞれ類似の反応)によって反応することがある残基を含むこともある。いずれの場合にも、ポリマー出発物質の重合性基は、本発明の化合物をポリマー中に取り込む重合を可能にするように選択されなければならない。
【0035】
本発明による組成物は、本発明による化合物を0.001~10%、好ましくは0.001~1.0%の量で、ポリマー出発物質を50~99.999%の量で含有する。残余の成分は、例えば、5~40%の好ましい量の反応性希釈剤および光開始剤のことがある。本発明における百分率は、特に断らない限り、重量基準である。好ましい組成物は、0.01~3%の本発明の化合物、50~80%のポリマー出発物質、5~30%の反応性希釈剤、および0.1~3%光開始剤を含有し、これらの部分の総量は、本発明の組成物の総量の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%である。
【0036】
本発明による組成物の重合後には、本発明によるポリマーが形成される。本ポリマーは、いかなる形、例えば、フィルムとして固体形または建物正面用塗料もしくはスプレー中の液体形であってもよい。
【0037】
本発明による化合物は、基材を被覆するために本発明による組成物の形で用いられてよい。基材は、表面に所望の粘着防止特性が提供されるべきいずれの物体のこともある。従って、基材は、例えば、エンボス加工用ワニスを提供された微細構造中の基材もしくは支持体またはそのようなワニスをエンボス加工するためのスタンプである。しかし、基材は、表面が防塵または自己清浄性にされるいかなる表面、例えばガラス表面であってもよい。基材のさらなる例は、光電池、照明または光学だけでなく、自己清浄性または防塵性にされる布地、天幕、防水シートおよび帆の分野における表面でもある。
【0038】
このコーティングは、所望の表面特性、特に粘着防止特性および改変された表面エネルギーを有する、本発明による被覆された基材を生じる結果となる。
【0039】
本発明による被覆された基材とは、例えば、エンボス加工用ワニスとしての本発明によるポリマーで被覆された基材、あるいは粘着防止用コーティングとしての本発明によるポリマーで被覆されているか、またはエンボス加工用構造もしくはエンボス加工用レリーフが本発明による前記ポリマーを含む、ナノインプリントリソグラフィーのための作業用スタンプのことがある。そのようなスタンプは、少なくとも表面に本発明によるポリマーを含む構造化された表面層を有するポリマー基材フィルム(例えばPET)を含むことがある。構造化表面層は、アクリレートを本発明による化合物と共に紫外線硬化することによって取得可能なポリマーのことがある。
【0040】
ナノインプリントリソグラフィープロセスを実行するためにスタンプ用ワニスとスタンプ用表面との両方が本発明による化合物を含むと特に有利なことがある。
【0041】
本発明による被覆された基材において、本発明による基材とポリマーとの間の結合は、原則として共有結合または非共有結合に基づくものであってよい。
【0042】
例えば、本発明のポリマーの層を除去可能にしておくことが望ましい場合、非共有結合が好ましいことがある。このことは、この層が置き換えられる場合にあてはまることがある。そのような本発明によるポリマーの例は、熱可塑性プラスチックである。
【0043】
しかし、共有結合が好ましいこともある。これらは、本発明のポリマーを基材に結合するのに適切な接着剤を用いることによって形成されることがある。しかし、それらは、本発明による化合物の重合時に本発明による化合物の反応基と反応し、従ってポリマー中に組み込まれるか、または本発明による組成物の重合時に本発明による化合物および/またはその他の重合性成分の反応基と反応し、従ってポリマー中に組み込まれる残基との結合を有する基材によって形成されてもよい。この場合、本発明による被覆された基材は、被覆されていない基材に本発明による組成物を塗布し、次に重合することによって調製されることがある。
【0044】
本発明による化合物は、UV-NILエンボス加工用ワニス中の粘着防止用添加剤として用いられ、エンボス加工プロセスにおいて作業用スタンプ(例えばニッケル、石英またはポリマーで製作される)への粘着力を低下させることができ、および/またはUVナノインプリントリソグラフィーのための作業用スタンプ中の粘着防止用添加剤として用いられ、エンボス加工プロセスにおいてエンボス加工用ワニスへの粘着力を低下させることができる。
【0045】
粘着防止用添加剤は、UV-NILエンボス加工されたワニス表面の表面エネルギーを永続的に低下させ、ひいては適当な微細構造およびナノ構造上の撥水性および防塵性、ならびに必要な場合はハス効果、すなわち自己清浄化機能を生じさせることができる。ハス効果は、汚れた表面を例えばアルコールで清浄化することによって可逆的に再生される。
【0046】
本発明による化合物は、とりわけ、すべてのUVエンボス加工用ワニス調製物、例えば多くの異なる構造(シャークスキン、モスアイ、回折格子)を有するUV-NILエンボス加工された表面に適している。
【0047】
具体的な用途は、反射防止コーティング(モスアイ効果)ならびに光電池用の防塵または自己清浄化コーティング、流れ摩擦を低下させるコーティング(シャークスキン効果)、照明、光学、建物用ガラスおよび類似物などの機能性表面である。
【0048】
[本発明による化合物の調製]
以下において、好ましい実施形態を参照して本発明による化合物の調製が記載される。
【0049】
本発明による化合物は、アルコールとイソシアネートとの反応によって取得可能である。
【0050】
枝分かれしたCF3側鎖基を有するトリ~ヘキサ-HFPO(オリゴマー)アルコールが市販されている。その例は、
1H,1H-ペルフルオロ-2,5,8-トリメチル-3,6,9-トリオキサドデカン-1-オール:
2-{1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-[1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(ヘプタフルオロプロポキシ)プロポキシ]プロポキシ}-2,3,3,3-テトラフルオロプロパン-1-オール(CAS 14620-81-6)
【0051】
【0052】
1H,1H-ペルフルオロ(2,5,8,11-テトラメチル-3,6,9,12-テトラオキサペンタデカン-1-オール):
2,4,4,5,7,7,8,10,10,11,13,13,14,14,15,15,15-ヘプタデカフルオロ-2,5,8,11-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,6,9,12-テトラオキサペンタデカン-1-オール(CAS 141977-66-4)
【0053】
【0054】
1H,1H-ペルフルオロ(2,5,8,11,14-ペンタメチル-3,6,9,12,15-オキサオクタデカン-1-オール)(CAS 27617-34-1)
を含む。
【0055】
CAS 14620-81-6およびCAS 141977-66-4として指定されるポリオールが好ましい。
【0056】
これらの化合物は、2-イソシアナトエチルアクリレート(H2C=CH-CO-O-CH2-CH2-N=C=O;CAS 13641-96-8)を用いて結合されて対応するオリゴ-HFPOウレタンアクリレートを優れた収率で与える。
【0057】
本発明によるそのような化合物の好ましい例は、式(I)のオリゴ-HFPOウレタンアクリレートであり、式(I)中、Rは、Hのことがあり、nは、3または4のことがあ
る。
【実施例】
【0058】
以下の実施例を参照して本発明をさらに例示する。
【0059】
[実施例1]
エンボス加工されたワニス層(75%E8402、23%nOA、2%TPO-L)をN2不活性ガス下で硬化した。様々な濃度のPFPE-UA-3を粘着防止用添加剤として用いた。化合物PFPE-UA-3は、本発明による式(I)の化合物であり、式(I
)中、nは3、RはHである。E8402(Ebecry 8402)は、エンボス用ワニス基材として用いられるAllnexからの脂肪族ウレタンアクリレートである。用いた反応性シンナーは、n-オクチルアクリレート(nOA)である。TPO-Lは、光開始剤エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートである。
【0060】
図2は、1%未満のPFPE-UA-3という非常に低い濃度において水およびジヨードメタンの接触角が顕著に増加することを示す。
【0061】
図3は、PFPE-UA-3の低い濃度においても表面エネルギーが顕著に減少し、このことは、主として表面エネルギーの分散部分の減少に起因することを示す。
【0062】
本発明において、表面エネルギーは、Owens、Wendt、RabelおよびKaelble(OWRK)の方法(D.H.Kaelble、Dispersion-Polar Surface Tension Properties of Organic Solids.In:J.Adhesion 2(1970)、66~81頁;D.Owens;R. Wendt(Estimation of the Surface Free Energy of Polymers).In:J.Appl.Polym.Sci 13(1969)、1741~1747頁;W.Rabel(Einige Aspekte der Benetzungstheorie und ihre Anwendung auf Untersuchung und Ver)nderung der Oberfl Polymeren cheneigenschaften.In:Farbe und Lack 77,10(1971)、997~1005)によって決定される。OWRK法は、いくつかの液体との接触角から固体の表面自由エネルギーを計算するための標準的な方法である。表面自由エネルギーは、極性部分と分散部分とに分割される。
【0063】
[実施例2]
FPSで被覆されたニッケル薄板に対してエンボス加工されたワニス層(75%E8402、23%nOA、2%TPO-L)を硬化した。粘着防止用添加剤として様々な濃度のPFPE-UA-3を用いた。
【0064】
FPSは、1H,1H,2H,2Hペルフルオロオクチルホスホン酸である。
【0065】
【0066】
この化合物は、ニッケル上に自己集合単分子層(SAM)(FPS-SAM-ニッケル)を形成し、ニッケルスタンプの粘着防止用コーティングのために用いられる。
【0067】
図4は、1%未満のPFPE-UA-3の非常に低い濃度において接触角が顕著に増加することを示す。
【0068】
図5は、PFPE-UA-3の低い濃度においても表面エネルギーが顕著に減少したことを示す。
【国際調査報告】