(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C25D 11/12 20060101AFI20220420BHJP
C25D 11/04 20060101ALI20220420BHJP
C25D 11/06 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
C25D11/12 Z
C25D11/04 A
C25D11/06 C
C25D11/04 302
C25D11/04 101Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561590
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(85)【翻訳文提出日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 KR2019015150
(87)【国際公開番号】W WO2020141714
(87)【国際公開日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0173967
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 学会(平成30年11月14日に開催、2018年度韓国表面工学会秋季学術大会、開催場所:韓国慶北慶州市ドリームセンター) 論文集(平成30年11月14日、2018年度韓国表面工学会 秋季学術大会論文集)
(71)【出願人】
【識別番号】521288013
【氏名又は名称】ドン-ウィ ユニバーシティ インダストリアル-アカデミック コオペレーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,チャンヨン
(57)【要約】
本発明は、超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法及びこれを用いて製造された超疎水性表面を有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金に関するものであって、アルミニウム合金表面に形成される3次元形状の陽極酸化皮膜の構造がピラー-オン-ポアなど、様々な形態で制御されたアルミニウム合金を低コストで短い時間内に製造することができる経済的効果を有し、前記陽極酸化皮膜の構造が制御されたアルミニウム合金は、超疎水性、耐食性及び熱伝導率に優れているので、電子機器ハウジング、LEDなどの照明カバー、熱交換器、パイプ、道路構造物、自動車、航空機、船舶、発電機など様々な産業分野に利用されることができる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム(aluminum)合金を30~50Vで5~15時間1次陽極酸化処理し、次いでエッチングして1次陽極酸化皮膜を除去するプレパターニング(pre-patterning)段階(段階1);
前記段階1にてプレパターニングが完了したアルミニウム合金を二次陽極酸化処理する段階(段階2);
前記段階2にて2次陽極酸化処理されたアルミニウム合金を細孔拡大(pore widening)する段階(段階3);
前記段階3にて細孔拡大が完了したアルミニウム合金を3次陽極酸化処理する段階(段階4);を含み、
前記段階2の2次陽極酸化及び前記段階4の3次陽極酸化は、それぞれ20~50Vで10~50分間陽極酸化する軟質陽極酸化(mild anodizing)の条件;及び60~90Vで10~50秒間陽極酸化する硬質陽極酸化(hard anodizing)条件のうちのいずれかを用いて陽極酸化処理することを特徴とする、
超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法。
【請求項2】
前記段階3の細孔拡大は、前記段階2の2次陽極酸化処理を経たアルミニウム合金を0.01~10Mリン酸(H
3PO
4)溶液に20~70分間浸漬することを特徴とする請求項1に記載の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法。
【請求項3】
前記段階2の2次陽極酸化は、70~90Vで20~40秒間硬質陽極酸化処理し、前記段階3の細孔拡大は0.01~10Mリン酸(H
3PO
4)溶液に45~65分間浸漬し、前記段階4の3次陽極酸化は70~90Vで20~40秒間硬質陽極酸化処理することを特徴とする請求項1に記載の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法。
【請求項4】
前記段階2の2次陽極酸化は、70~90Vで20~40秒間硬質陽極酸化処理し、前記段階3の細孔拡大は0.01~5.0Mリン酸(H
3PO
4)溶液に55~65分間浸漬し、前記段階4の3次陽極酸化は70~90Vで20~40秒間硬質陽極酸化処理することを特徴とする請求項3に記載の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法。
【請求項5】
前記超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜は、表面がピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造を有することを特徴とする請求項4に記載の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法。
【請求項6】
前記アルミニウム合金表面に形成される3次元形状の陽極酸化アルミニウム(anodic aluminum oxide)層の細孔径(pore diameter)と細孔と細孔間の距離(interpore distance)のうちいずれか一つ以上を制御することにより、超疎水性が発現されることを特徴とする請求項1に記載の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウム合金の陽極酸化皮膜は、2次陽極酸化アルミニウム層の細孔径が3次陽極酸化アルミニウム層の細孔径よりも大きい階層構造を有することを特徴とする請求項1に記載の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法。
【請求項8】
前記段階1のアルミニウム合金は、5000系アルミニウム合金であることを特徴とする請求項1に記載の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法。
【請求項9】
前記5000系アルミニウム合金は、Al 5005、Al 5023、Al 5042、Al 5052、Al 5054、Al 5056、Al 5082、Al 5083、Al 5084、Al 5086、Al 5154、Al 5182、Al 5252、Al 5352、Al 5383、Al 5454、Al 5456、Al 5457、Al 5657、及びAl 5754からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項8に記載の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法により製造される超疎水性表面を有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金。
【請求項11】
前記アルミニウム合金は、表面に3次元形状の陽極酸化アルミニウム(anodic aluminum oxide)層が形成されることを特徴とする請求項10に記載の超疎水性表面を有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金。
【請求項12】
アルミニウム(aluminum)合金を30~50Vで5~15時間1次陽極酸化処理し、次いでエッチングして1次陽極酸化皮膜を除去するプレパターニング(pre-patterning)段階(段階1);
前記段階1にてプレパターニングが完了したアルミニウム合金を2次陽極酸化処理する段階(段階2);
前記段階2にて2次陽極酸化処理されたアルミニウム合金を0.01~10Mリン酸(H
3PO
4)溶液に45~65分間浸漬し、細孔拡大(pore widening)する段階(段階3);
前記段階3にて細孔拡大が完了したアルミニウム合金を3次陽極酸化処理する段階(段階4);
を含み、前記段階2の2次陽極酸化及び前記段階4の3次陽極酸化は、それぞれ70~90Vで20~40秒間陽極酸化する硬質陽極酸化(hard anodizing)の条件を用いて、陽極酸化処理することを特徴とする、
ピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法。
【請求項13】
前記段階2の2次陽極酸化及び前記段階4の3次陽極酸化は、それぞれ75k~85Vで25~35秒間陽極酸化する硬質陽極酸化(hard anodizing)条件を用いて、陽極酸化処理し、
前記段階3の細孔拡大は、前記段階2の2次陽極酸化処理を経たアルミニウム合金を0.05~1.0Mリン酸(H
3PO
4)溶液に55~65分間浸漬することを特徴とする請求項12に記載のピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法により製造されるピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法、並びにこれを用いて製造された超疎水性表面を有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金に関する。
【0002】
また、本研究は、科学技術情報通信部及び情報通信企画評価院の地域知能化革新人材育成(Grand ICT研究センター)事業の研究結果として行われたものである(IITP-2021-2020-0-01791)。
【背景技術】
【0003】
規則的な六角形構造に配列されたナノサイズの細孔を有するアルミニウム酸化皮膜は、1995年初めて研究され報告されて以来、近来では、応用範囲が拡大され、アルミ陽極酸化工程を用いてカーボンナノチューブ、ナノワイヤーなどのようなナノテクノロジーに用いられており、そのほかに多様なナノテクノロジーの研究が活発に進められている。
【0004】
アルミニウムの陽極酸化皮膜の細孔径(Pore diameter;DP)と細孔と細孔間の距離(Interpore distance;D int )は、太陽電池、LEDなどの光電素子と金属ナノワイヤーのようなナノテクノロジーに重要な要素であって、関連応用分野及び装置での性能に直接的な影響を与える。
【0005】
電気化学的陽極酸化処理工程は、70年以上金属材料の表面処理に用いられてきた。陽極酸化工程により作製されたナノ構造物は、高価な電子線リソグラフィやシリコンを用いた半導体エッチング工程に比べて少ない予算と時間で、ナノ構造物を具現することができる。しかしながら、このような陽極酸化皮膜の場合、側面寸法のみ制御可能な2次元多孔性の配列を有する。
【0006】
また、アルミニウム合金の酸電解質の種類及び濃度を調節した規則的に配列された陽極酸化アルミニウム皮膜の作製に関連し、シュウ酸法、硫酸法、リン酸法など多くの研究と技術が発展されてきたが、酸電解質の種類と濃度の変化による陽極酸化工程は、細孔径と細孔と細孔間の距離の増加に限界があり、このような技術も同様に2次元多孔性陽極酸化皮膜の作製のみが可能である。
【0007】
一方、細孔上部に鋭い柱(pillar)が、単一(single)またはバンドル(bundle)状で形成された構造であるピラー-オン-ポア(pillar-on-pore、POP)構造は、従来の平面六角形の多孔性表面より高い接触角(contact angle)及び低い接触角ヒステリシス(contact angle hysteresis)を有し、よって優れた超疎水性特性を有する。また、ピラー-オン-ポア構造は、流体力学的抗力減少、防錆(anticorrosion)、防汚(antibiofouling)、 防氷(anti-icing)などの特性を有するので、スマートフォン、家電製品などの表面の具現に大いに役割立つことができる。しかし、このようなピラー-オン-ポア構造を、半導体または純度の高いアルミニウム基板上に形成する技術は研究されてきたが、合金上に形成することは非常に困難であるのが実情であり、まだ研究されたことがない。一般に、純度の高いアルミニウム基板から3次元形状の多孔性配列を有する構造物を製造する技術に関する研究がたくさん行われているが、実際の産業では、純度の高いアルミニウム基板より合金の形で用いられており、純度の高いアルミニウム基板を対象とした研究技術を実際、商用化に用いられるアルミニウム合金に適用した場合、形成制御が一様に再現されることが難しい問題点がある。
【0008】
そこで、本出願人は、前記のような従来の問題点を解決し、3次元形状の多孔性配列を有するアルミニウム皮膜の作製及び構造物の形成を制御する方法、並びに合金上にピラー-オン-ポア構造を形成する方法を開発するために、プレパターニング(pre-patterning)されたアルミニウム合金に陽極酸化電圧を調節し、2次及び3次陽極酸化工程を行うことにより、ピラー-オン-ポアなど、様々な構造の3次元形状の多孔性皮膜を作製し、発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法を提供するものである。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、前記方法により製造された超疎水性表面を有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金を提供するものである。
【0011】
本発明のもう一つ別の目的は、ピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法を提供するものである。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、前記方法により製造されるピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、アルミニウム(aluminum)合金を30~50Vで5~15時間1次陽極酸化処理し、次いでエッチングして1次陽極酸化皮膜を除去するプレパターニング(pre-patterning)段階(段階1);前記段階1にてプレパターニングが完了したアルミ合金を2次陽極酸化処理する段階(段階2);前記段階2にて2次陽極酸化処理されたアルミニウム合金を細孔拡大(pore widening)する段階(段階3);前記段階3にて細孔拡大が完了したアルミ合金を3次陽極酸化処理する段階(段階4);を含み、前記段階2の2次陽極酸化及び前記段階4の3次陽極酸化は、それぞれ20~50Vで10~50分間、陽極酸化する軟質陽極酸化(mild anodizing)条件; 及び60~90Vで10~50秒間、陽極酸化する硬質陽極酸化(hard anodizing)条件; のうちいずれかの条件を用いて、陽極酸化処理することを特徴とする、超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記方法により製造された超疎水性表面を有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、アルミニウム(aluminum)合金を30~50Vで5~15時間1次陽極酸化処理し、次いでエッチングして1次陽極酸化皮膜を除去するプレパターニング(pre-patterning)段階(段階1);前記段階1にてプレパターニングが完了したアルミ合金を2次陽極酸化処理する段階(段階2);前記段階2にて2次陽極酸化処理されたアルミニウム合金を0.01~10Mリン酸(H3PO4)溶液に55~65分間浸漬し、細孔拡大(pore widening)する段階(段階3);前記段階3にて細孔拡大が完了したアルミ合金を3次陽極酸化処理する段階(段階4);を含み、前記段階2の2次陽極酸化及び前記段階4の3次陽極酸化は、それぞれ70~90Vで20~40秒間陽極酸化する硬質陽極酸化(hard anodizing)条件を用いて、陽極酸化処理することを特徴とする、ピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法を提供する。
【0016】
さらに本発明は、前記方法により製造されるピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法であって、陽極酸化電圧及び時間調節によってアルミ合金の表面に形成される陽極酸化アルミニウム層の細孔形状、直径、及び密度をピラー-オン-ポアなど多様な形で具現することにより、3次元形状の陽極酸化皮膜の構造が制御されたアルミニウム合金を、低コストで短時間内に製造することができる経済的効果を有し、前記方法により製造された陽極酸化皮膜の構造が制御されたアルミニウム合金は、超疎水性、耐食性及び熱伝導率に優れているので、電子機器ハウジング、LEDなどの照明カバー、熱交換器、パイプ、道路構造物、自動車、航空機、船舶、発電機など、様々な産業分野に利用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による実施例1~4のプレパターン化されたアルミニウム合金表面に形成されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の表面(top view)及び横断面(cross view)の3次元構造を撮影した走査電子顕微鏡(SEM)画像である。この時、MAは40Vで30分、HAは80Vで30秒及びPWは30℃で30分間行い、表面及び横断面のスケールバー(scale bar)は、それぞれ200nm及び1μmである。
【
図2】本発明による実施例5~8のプレパターン化されたアルミニウム合金表面に形成されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の表面(top view)及び横断面(cross view)の3次元構造を撮影した走査電子顕微鏡(SEM)画像である。この時、MAは40Vで30分、HAは80Vで30秒及びPWは30℃で40分間行い、表面及び横断面のスケールバー(scale bar)は、それぞれ200nm及び1μmである。
【
図3】本発明による実施例9~12のプレパターン化されたアルミニウム合金表面に形成されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の表面(top view)及び横断面(cross view)の3次元構造を撮影した走査電子顕微鏡(SEM)画像である。この時、MAは40Vで30分、HAは80Vで30秒及びPWは30℃で50分間行い、表面及び横断面のスケールバー(scale bar)は、それぞれ200nm及び1μmである。
【
図4】本発明による実施例13~16のプレパターン化されたアルミニウム合金表面に形成されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の表面(top view)及び横断面(cross view)の3次元構造を撮影した走査電子顕微鏡(SEM)画像である。この時、MAは40Vで30分、HAは80Vで30秒、及びPWは30℃で60分間行い、表面及び横断面のスケールバー(scale bar)は、それぞれ200nm及び1μmである。
【
図5】本発明による実施例1~4のプレパターン化されたアルミニウム合金表面に形成されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜にFDTSコーティングした後、水滴に対する接触角を測定した結果を示した画像である。
【
図6】本発明による実施例5~8のプレパターン化されたアルミニウム合金表面に形成されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜にFDTSコーティングした後、水滴に対する接触角を測定した結果を示した画像である。
【
図7】本発明による実施例9~12のプレパターン化されたアルミニウム合金表面に形成されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜にFDTSコーティングした後、水滴に対する接触角を測定した結果を示した画像である。
【
図8】本発明による実施例13~16のプレパターン化されたアルミニウム合金表面に形成されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜にFDTSコーティングした後、水滴に対する接触角を測定した結果を示した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
<超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法>
本発明は、アルミニウム(aluminum)合金を30~50Vで5~15時間1次陽極酸化処理し、次いでエッチングして1次陽極酸化皮膜を除去するプレパターニング(pre-patterning)段階(段階1);
前記段階1にてプレパターニングが完了したアルミ合金を2次陽極酸化処理する段階(段階2);
前記段階2にて2次陽極酸化処理されたアルミニウム合金を細孔拡大(pore widening)する段階(段階3);
及び前記段階3にて細孔拡大が完了したアルミ合金を3次陽極酸化処理する段階(段階4);
を含み、前記段階2の2次陽極酸化及び前記段階4の3次陽極酸化は、それぞれ20~50Vで10~50分間陽極酸化する軟質陽極酸化(mild anodizing)条件;及び60~90Vで10~50秒間陽極酸化する硬質陽極酸化(hard anodizing)条件;のうちいずれかの条件を用いて、陽極酸化処理することを特徴とする、超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法を提供する。
【0021】
一般に、固体表面に水滴が接触した際、水滴の接触角が120~150°の範囲に該当する場合、疎水性(hydrophobic)として定義され、接触角が150°以上である場合には超疎水性(super hydrophobic)、170°以上である場合には、超超疎水性(ultra super hydrophobic)と定義される。
【0022】
本発明による超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法において、前記段階3における細孔拡大は、前記段階2の2次陽極酸化処理を経たアルミニウム合金を0.01~10Mリン酸(H3PO4)溶液に20~70分間浸漬するものであってもよい。好ましくは0.01~1.0Mリン酸溶液に45~65分間浸漬するものであることができ、より好ましくは0.05~0.5Mリン酸溶液に55~65分間浸漬するものであることでき、さらに好ましくは0.08~0.2Mリン酸溶液に58~62分間浸漬するものであることができる。
【0023】
本発明による超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法において、前記2次陽極酸化によって2次陽極酸化アルミニウム層が形成され、前記3次陽極酸化によって3次陽極酸化アルミニウム層が形成されることができる。この時、2次陽極酸化による二次陽極酸化アルミニウム層の領域は、アルミニウム合金表面と距離が離れた外側に形成され、3次陽極酸化による3次陽極酸化アルミニウム層の領域は、アルミニウム合金表面に近い内側に形成されることができる。
【0024】
本発明の一実施例によれば、前記段階2の2次陽極酸化は、70~90Vで20~40秒間硬質陽極酸化処理し、前記段階3の細孔拡大は、0.01~10Mリン酸(H3PO4)溶液に45~65分間浸漬し、前記段階4の3次陽極酸化は、70~90Vで20~40秒間硬質陽極酸化処理するものであることができ、好ましくは、前記段階2の2次陽極酸化は、70~90Vで20~40秒間硬質陽極酸化処理し、前記段階3の細孔拡大は、0.01~10Mリン酸(H3PO4)溶液に55~65分間浸漬し、前記段階4の3次陽極酸化は70~90Vで20~40秒間硬質陽極酸化処理するものであることができ、より好ましくは、前記段階2の2次陽極酸化は、75~85Vで25~35秒間硬質陽極酸化処理し、前記段階3の細孔拡大は、0.05~1.0Mリン酸(H3PO4)溶液に55~65分間浸漬し、前記段階4の3次陽極酸化は、75~85Vで25~35秒間硬質陽極酸化処理するものであることができ、さらにより好ましくは、前記段階2の2次陽極酸化は、78~82Vで28~32秒間硬質陽極酸化処理し、前記段階3の細孔拡大は0.05~0.5Mリン酸(H3PO4)溶液に28~32分間浸漬し、前記段階4の3次陽極酸化は、78~82Vで28~32秒間硬質陽極酸化処理するものであることができる。
【0025】
本発明による前記超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜は、表面がピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造を有するものであることができる。
【0026】
本発明による超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法において、前記アルミニウム合金表面に形成される3次元形状の陽極酸化アルミニウム(anodic aluminum oxide)層の細孔径(pore diameter)及び細孔と細孔間の距離(interpore distance)のうちいずれか一つ以上を制御することにより、超疎水性が発現されるものであることができる。
【0027】
本発明による超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法において、前記アルミニウム合金表面の陽極酸化皮膜の構造制御は、2次陽極酸化アルミニウム層の細孔径が3次陽極酸化アルミニウム層の細孔径よりも大きな階層(hierarchical)構造となるように制御するものであることができる。
【0028】
本発明による超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法において、前記段階1の1次陽極酸化、段階2の2次陽極酸化及び段階3の3次陽極酸化がなされる電解液は、それぞれ硫酸(sulfuric acid、H2SO4)、リン酸(phosphoric acid、H3PO4)、シュウ酸(oxalic acid、C2H2O4)、クロム酸(chromic acid)、フッ酸(hydrofluoric acid)、リン酸水素カリウム(dipotassiμm phosphate、K2HPO4 )のうちいずれかを用いたり、これらの混合液のうちいずれかを用いることができ、前記電解液が入った酸化処理反応槽に陽極酸化したい金属が形成された材料を作用電極として陽極にかけた後、白金(Pt)またはカーボン(carbon)電極を対極(counter)電極として陰極にかけて酸化させてなるものであることができる。好ましくは、前記電解液は、0.1~0.5Mシュウ酸を電解液として用い、-5~10℃の温度からなるものであることができ、より好ましくは0.2~0.4Mシュウ酸電解液及び-2~2℃の温度からなるものであることができる。
【0029】
本発明において用いることができる前記アルミニウム合金は、Al-Mg系などの5000系アルミニウム合金であることが好ましい。前記5000系アルミニウム合金は、Al 5005、Al 5023、Al 5042、Al 5052、Al 5054、Al 5056、Al 5082、Al 5083、Al 5084、Al 5086、Al 5154、Al 5182、Al 5252、Al 5352、Al 5383、Al 5454、Al 5456、Al 5457、Al 5657、及びAl 5754からなる群から選択される1種以上のものであることができる。
【0030】
<超疎水性表面を有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金>
また、本発明は、前記超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法により製造される超疎水性表面を有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金を提供する。
【0031】
本発明による前記アルミ合金は、表面に3次元形状の陽極酸化アルミニウム(anodic aluminum oxide)層が形成されているものであることができる。
【0032】
<ピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法>
また、本発明は、アルミニウム(aluminum)合金を30~50Vで5~15時間1次陽極酸化処理し、次いでエッチングして1次陽極酸化皮膜を除去するプレパターニング(pre-patterning)段階(段階1);
前記段階1にてプレパターニングが完了したアルミ合金を2次陽極酸化処理する段階(段階2);
前記段階2にて2次陽極酸化処理されたアルミニウム合金を0.01~10Mリン酸(H3PO4)溶液に45~65分間浸漬し、細孔拡大(pore widening)する段階(段階3);
前記段階3にて細孔拡大が完了したアルミ合金を3次陽極酸化処理する段階(段階4);
を含み、前記段階2の2次陽極酸化及び前記段階4の3次陽極酸化は、それぞれ70~90Vで20~40秒間陽極酸化する硬質陽極酸化(hard anodizing)条件を用いて、陽極酸化処理することを特徴とする、ピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法を提供する。
【0033】
本発明によるピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法において、前記段階2の2次陽極酸化及び前記段階4の3次陽極酸化は、それぞれ75~85Vで25~35秒間陽極酸化する硬質陽極酸化(hard anodizing)条件を用いて、陽極酸化処理し、前記段階3の細孔拡大は、前記段階2の2次陽極酸化処理を経たアルミニウム合金を0.05~1.0Mリン酸(H3PO4)溶液に55~65分間浸漬することができ、好ましくは、前記段階2の2次陽極酸化及び前記段階4の3次陽極酸化は、それぞれ78~82Vで28~32秒間陽極酸化する硬質陽極酸化(hard anodizing)条件を用いて陽極酸化処理し、前記段階3の細孔拡大は、前記段階2の2次陽極酸化処理を経たアルミニウム合金を0.05~0.5Mリン酸(H3PO4)溶液に58~62分間浸漬するものであることができる。
【0034】
本発明によるピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法において、前記2次陽極酸化によって2次陽極酸化アルミニウム層が形成され、前記3次陽極酸化によって3次陽極酸化アルミニウム層が形成されることができる。この時、2次陽極酸化による二次陽極酸化アルミニウム層の領域は、アルミニウム合金表面と距離が離れた外側に形成され、3次陽極酸化による3次陽極酸化アルミニウム層の領域は、アルミニウム合金表面に近い内側に形成されるものであることができる。
【0035】
本発明によるピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法において、前記アルミニウム合金表面にピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の陽極酸化アルミニウム(anodic aluminum oxide)層が形成されることにより優れた超疎水性が発現されるものであることができる。
【0036】
本発明によるピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法において、前記段階1の1次陽極酸化、段階2の2次陽極酸化及び段階3の3次陽極酸化がなされる電解液は、それぞれ硫酸(sulfuric acid、H2SO4)、リン酸(phosphoric acid、H3PO4)、シュウ酸(oxalic acid、C2H2O4)、クロム酸(chromic acid)、フッ酸(hydrofluoric acid)、リン酸水素カリウム(dipotassium phosphate、K2HPO4)のうちいずれかを用いたり、これらの混合液のうちいずれかを用いることができ、前記電解液が入った酸化処理処理槽に陽極酸化したい金属が形成された材料を作用電極として陽極にかけた後、白金(Pt)またはカーボン(carbon)電極を対極(counter)電極として陰極にかけて酸化させてなることができるものである。好ましくは、前記電解液は、0.1~0.5Mシュウ酸を電解液として用い、-5~10℃の温度からなるものであることができ、より好ましくは0.2~0.4Mシュウ酸電解液及び-2~2℃の温度からなるものであることができる。
【0037】
本発明によるピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法において、前記アルミニウム合金は、Al-Mg系などの5000系アルミニウム合金であることが好ましい。前記5000系アルミニウム合金は、Al 5005、Al 5023、Al 5042、Al 5052、Al 5054、Al 5056、Al 5082、Al 5083、Al 5084、Al 5086、Al 5154、Al 5182、Al 5252、Al 5352、Al 5383、Al 5454、Al 5456、Al 5457、Al 5657及びAl 5754からなる群から選択される1種以上のものであることができる。
【0038】
本発明のピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法は、アルミニウム合金表面上にPOP形態の陽極酸化皮膜を低コストで短時間内に製造することができる経済効果を有する。
【0039】
<ピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金>
また、本発明は、前記ピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有するアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造方法により製造されるピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性の表面を有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金を提供する。
【0040】
本発明では、本発明による前記ピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)構造の超疎水性表面を有する陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金の水濡れ性が非常に低く、超疎水性(超撥水性)に優れていることが確認された(実験例2参照)。
【0041】
以下、本発明を次の実施例に基づいてより詳しく説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が以下の実施例により限定されるものではない。
【0042】
<実施例:アルミニウム合金の陽極酸化皮膜の製造>
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜を製造するため、アルミニウム5052合金を用いてプレパターニング(pre-patterning)、細孔拡大(pore widening;PW)、及び電圧変調(voltage modulation)を行った。前記アルミニウム5052合金(Al 5052、サイズ20×30mm)の成分情報は、次の通りである。Mg2.2~2.8%、Si0.25%、Fe0.40%、Cu0.10%、Mn0.10%、Zn1.0%、Cr0.15~0.35%、及びAl Balance。
【0043】
[段階1:1次陽極酸化及び化学エッチングによるプレパターニング工程]
陽極酸化皮膜を製造するための5000系アルミニウム(Al)合金板としてアルミニウム5052合金(Alcoa INC、USA)を用い、前記アルミニウム5052合金の表面にある不純物を除去するためにアセトンとエタノールのうち、10分間超音波処理して洗浄した。表面粗さを得るために超音波洗浄されたアルミニウム5052合金をエタノールと過塩素酸の混合溶液(Junsei 、C2 H5OH:HClO4=4:1(v/v))に入れ、常温(20℃)で20Vの電圧を印加し、1分間電解研磨した。電解研磨が完了したアルミニウム合金表面は、うまく反射されて表面が平坦になることを確認した。
【0044】
前記電解研磨されたアルミニウム5052合金(厚み1mm、サイズ20×30mm)を作用電極とし、陰極としては白金(Pt)電極を用い、前記2つの電極は、5cm間隔で極間の距離を一定に維持し、1次陽極酸化を行った。前記1次陽極酸化は、0.3Mシュウ酸を電解液として用い、二重ビーカーを用いて電解液の温度を0℃に一定に維持しながら行った。局部的な温度上昇による安定した酸化物成長の妨げを抑制するために、一定速度で撹拌し、定電圧方式を使って40Vの電圧を印加し、6時間1次陽極酸化工程を行い、アルミナ層を成長させた。
【0045】
前記1次陽極酸化処理により成長されたアルミナ層は、65℃でクロム酸(1.8wt%)とリン酸(6wt%)を混合した溶液に10時間浸漬させ、エッチング(etching)することにより成長されたアルミナ層を除去するプレパターニング(pre-patterning)工程を行った。
【0046】
[段階2-4:2次及び3次陽極酸化と細孔拡大工程]
具体的には、アルミニウム5052合金表面に所望の皮膜構造を得るために、前記プレパターニング(pre-pattering)が完了した後、2次陽極酸化、細孔拡大及び3次陽極酸化を行った。
【0047】
具体的には、実施例における2次及び3次陽極酸化工程は、前記段階1の1次陽極酸化工程と同様の酸電解質の条件で行われ、40Vの比較的低い電圧を用いた軟質陽極酸化(mild anodization;MA)または80Vの高電圧を用いた硬質陽極酸化(hard anodization;HA)の2つの技術を用いて、2次及び3次陽極酸化時、印加される電圧の大きさ及び順序を選択調節し、陽極酸化を行った。このとき、軟質陽極酸化は40Vで30分間、硬質陽極酸化は80Vで30秒間行った。なお、比較例の2次及び3次陽極酸化工程は、以下の表1のような電圧及び時間の超硬質陽極酸化(super hard anodization;SA)条件を用いて陽極酸化を行った。
【0048】
また、2次陽極酸化を通じて成長したアルミナ層は、3次陽極酸化を行う前に、30℃の0.1Mリン酸溶液に30~60分間浸漬させる細孔拡大(pore widening;PW)工程を行った後、3次陽極酸化を行い、アルミニウムの陽極酸化皮膜を成長させた。
【0049】
2次陽極酸化(段階2)、細孔拡大(段階3)及び3次陽極酸化(段階4)の工程を次の表1のような条件で行い、アルミニウム5052合金表面の構造の形状が制御された実施例1~4のアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を得た。
【0050】
【0051】
<実験例1:2次及び3次陽極酸化条件(電圧及び時間)と細孔拡大時間によるアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の構造特性の解析>
前記表1に示すようにMA → PW → MA、MA → PW → HA、HA → PW → HA、及びHA → PW → MAの様々なモードの実行及び細孔拡大時間を異にして製造された実施例1~16の多孔性アルミニウム合金の陽極酸化皮膜の表面及び断面形状は、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)システム(AURIGA small dual-bean FIB-SEM、Zeiss)を用いて観察した。
【0052】
各アルミニウム合金の陽極酸化皮膜試験片を小片に切断した後、カーボンテープでステージ上に固定し、スパッタリングで15秒間、金(Au)でコーティングした後、走査電子顕微鏡(SEM)でイメージングした。このとき、皮膜試験片を90°に曲げ、平行亀裂を生成させ、アルミニウム合金の陽極酸化皮膜の表面及び横断面構造を観察し、
図1~4に示した。
【0053】
図1~4は、それぞれ本発明による実施例1~4、5~8、9~12、及び13~16のプレパターン化されたアルミニウム合金表面に形成されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の表面(top view)及び横断面(cross view)の3次元構造を撮影した走査電子顕微鏡(SEM)画像である。この時、MAは40Vで30分、HAは80Vで30秒及びPWは30℃で30~60分間行い、表面及び横断面のスケールバー(scale bar)は、それぞれ200nmと1μmである。
【0054】
図1~4に示すように、ほとんどの場合、PW工程によってアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の二次陽極酸化領域での細孔径が増加する結果が示されたが、3次陽極酸化領域の構造には影響を及ぼさなかった。従って、実施例1~16は全部2次陽極酸化領域と3次陽極酸化領域の細孔の大きさが異なるので、2次及び3次陽極酸化領域の基準は、細孔の大きさの変化により区別することができる。
【0055】
また、電圧の種類がHAが含まれた陽極酸化皮膜は、電圧の種類がMAが含まれた陽極酸化皮膜よりも細孔径及び細孔と細孔間の距離が大きいことが分かった。このような結果から、陽極酸化電圧の大きさが細孔の大きさに影響を及ぼす可能性があることを確認した。
【0056】
なお、
図3及び
図4に示すように、HA → PW → HAモードでPWを50分または60分行って製造された実施例12及び16の場合、横断面(cross-view)の画像で下部分の3次陽極酸化領域では、ソートされた直線構造の細孔が形成されており、直線状細孔上の2次陽極酸化領域では、チップ(tip)-類似構造が形成されていることを確認した。表面(top view)の画像には、黒色で示された細孔の横に白色(ライトグレー)の陽極酸化物が形成されていることが明らかに示され、当該部分は前記2次陽極酸化領域に形成されたチップ-類似構造部分であることを確認した。
【0057】
したがって、実施例12及び16は、他の実施例とは異なって細孔構造上にバンドル(bundle)状の柱(pillars)が形成されたピラー-オン-ポア(pillar-on-pore)の形態を有する構造の陽極酸化皮膜が製造されたことが確認され、特に、実施例16の条件で製造した場合、はるかに明確なピラー-オン-ポア形態を示すことが確認された。
【0058】
結果として、媒介変数である2次及び3次陽極酸化の電圧の大きさは、細孔の大きさに直接影響を及ぼし、細孔径と細孔と細孔間の距離を制御するだけでなく、3次元形状のアルミニウム陽極酸化皮膜の成長を制御することができることが確認されており、特に、実施例16のHA(80V、30sec)→ PW(60min)→ HA(80V、30sec)の条件が最も明確なPOP構造の陽極酸化皮膜を製造することができる条件であることを確認した。
【0059】
<実験例2:2次及び3次陽極酸化条件(電圧及び時間)と細孔拡大時間によるアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の撥水特性の分析>
アルミニウム合金の陽極酸化皮膜の構造形態が撥水特性に及ぼす影響を確認するために、実施例1~16の多孔性アルミニウム合金の陽極酸化皮膜をそれぞれ真空チャンバー内で24時間、表面エネルギーが低いコーティング物質である1H、1H、2H、2H-perfluorodecyltrichlorosilane(FDTS)でSAM(Self-Assembled Monolayer)コーティングし、疎水性を有する表面を具現した後、水濡れ性を評価した。
【0060】
FDTSで表面がコーティングされた実施例1~4の多孔性アルミニウム合金の陽極酸化皮膜の構造物表面の濡れ性を評価するために接触角測定方法を用いて、常温で脱イオン水の水滴3ulの接触角を測定して分析した。また、陽極酸化処理していないアルミニウム合金表面にFDTSをコーティングしたものを対照群(control)とし、同様の方法で接触角を測定した。各試験片別に互いに異なる箇所の接触角を少なくとも5回以上測定して平均値を計算し、その結果を下記表2及び
図5~8に示した。
【0061】
図5~8は、それぞれ本発明による実施例1~4、5~8、9~12及び13~16のプレパターン化されたアルミニウム合金表面に形成されたアルミニウム合金の陽極酸化皮膜にFDTSコーティングした後、水滴に対する接触角を測定した結果を示した画像である。
【0062】
【0063】
前記表2及び
図5~8に示すように、2次及び3次陽極酸化工程におけるMA、HAモード制御と細孔拡大工程により製造された実施例1~16の多孔性アルミニウム合金の陽極酸化皮膜に低い表面エネルギーを有する物質であるFDTSをコーティングした場合、陽極酸化を行っていないアルミニウム合金母材(control)にFDTSをコーティングした場合よりも、水濡れ性が低いことを確認した。
【0064】
なお、より高い電圧で2次及び3次陽極酸化を行って製造された比較例1~4の多孔性アルミニウム合金の陽極酸化皮膜の場合、陽極酸化を行っていない場合よりは濡れ性が低く示されたが、本発明の一部の実施例を除いては、おおむね本発明による実施例1~16の多孔性アルミニウム合金の陽極酸化皮膜よりもむしろ高いことが分かった。
【0065】
また、実施例4、11、12、13、15、及び16の多孔性アルミニウム合金の陽極酸化皮膜にFTDSをコーティングした表面は、接触角が150°以上であることが示され、他の比較例及び実施例に比べ、水濡れ性が低いことが示され、この中でも実施例12及び16において優れた超疎水性(超撥水性)を示すことを確認した。特に、HA → PW(60min)→ HAの順で製造された実施例16の多孔性アルミニウム合金の陽極酸化皮膜にFTDSをコーティングした表面は、最も優れた超疎水性を示し、170°以上の接触角を示し、超超疎水性(ultra super hydrophobic)が具現されたことを確認した。
【0066】
このような結果は、2次及び3次陽極酸化工程におけるHA(80V)モード及びMA(40V)モードの調節による細孔径と細孔と細孔間の距離の制御が水濡れ性に影響することを意味し、本発明のピラー-オン-ポア構造を有する実施例16の多孔性アルミニウム合金の陽極酸化皮膜を製造するのに用いられた2次及び3次陽極酸化条件(HA)が超疎水性を具現するための最適の条件であることを確認した。
【0067】
これまで本発明についてその好ましい実施例を中心に説明した。本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明が本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で変形された形で具現されることを理解することができるであろう。したがって、開示された実施例は、限定的な観点ではなく、説明的な観点から考慮されるべきである。本発明の範囲は、前述した説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等の範囲内にあるすべての相違点は、本発明に含まれるものと解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明による方法により製造された陽極酸化皮膜の構造が制御されたアルミニウム合金は、超疎水性、耐食性及び熱伝導率に優れているので、電子機器ハウジング、LEDなどの照明カバー、熱交換器、パイプ、道路構造物、自動車、航空機、船舶、発電機などの様々な産業分野に利用されることができる。
【国際調査報告】