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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-28
(54)【発明の名称】櫛型コポリマーを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 39/04 20060101AFI20220421BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220421BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220421BHJP
   C08L 35/06 20060101ALI20220421BHJP
   C09K 23/52 20220101ALI20220421BHJP
【FI】
C08L39/04
H01M4/62 Z
C08K3/04
C08L35/06
B01F17/52
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021549805
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(85)【翻訳文提出日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2020054586
(87)【国際公開番号】W WO2020173821
(87)【国際公開日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】19159412.6
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598067245
【氏名又は名称】ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォン ハーゲン ロビン
(72)【発明者】
【氏名】タカイ メグム
(72)【発明者】
【氏名】オケル アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヨネハラ ヒロシ
(72)【発明者】
【氏名】リンドナー ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】スギオカ ユウ
【テーマコード(参考)】
4D077
4J002
5H050
【Fターム(参考)】
4D077AA01
4D077AB01
4D077AC05
4D077BA01
4D077BA02
4D077BA07
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4D077DE04Y
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4D077DE22Y
4D077DE24X
4D077DE24Y
4J002BH01X
4J002BJ00W
4J002DA016
4J002GQ00
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050DA10
5H050DA18
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA10
5H050EA26
5H050EA28
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA11
(57)【要約】
本発明は、a)N-ビニルラクタムの重合単位を含むポリマーa)と、b)ビニル芳香族化合物およびエチレン性不飽和重合性カルボン酸無水物に基づくポリマー主鎖を有し、少なくとも2つのポリアルキレンオキシド側鎖を有する櫛型コポリマーb)と、c)炭素系材料とを含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)N-ビニルラクタムの重合単位を含むポリマーa)と、
b)ビニル芳香族化合物およびエチレン性不飽和重合性カルボン酸無水物に基づくポリマー主鎖を有し、少なくとも2つのポリアルキレンオキシド側鎖を有する櫛型コポリマーb)と、
c)炭素系材料と
を含む組成物。
【請求項2】
ポリマーa)が、N-ビニルピロリドンの重合単位を含むか、またはそれからなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリマーa)の重量平均分子量が、2000~500000g/mol、好ましくは5000~100000g/molの範囲である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
櫛型ポリマーb)のポリアルキレンオキシド側鎖が、アミド基またはイミド基を介してポリマー主鎖に結合している、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記櫛型コポリマーb)が、ヒドロキシル、カルボン酸、カルボン酸塩、第三級アミン、第三級アミンの塩、および第四級アンモニウムのうちの少なくとも1つを含む更なる官能基を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
櫛型ポリマーb)の重量平均分子量が、4000~100000g/molの範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ポリマーa)と櫛型コポリマーb)との重量比が10:90~90:10の範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が少なくとも1つの有機溶媒を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記有機溶媒がN-メチルピロリドンを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
組成物の含水量が、組成物の総重量に基づいて計算して、0.0~5.0重量%の範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記炭素系材料が導電性であり、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、炭素繊維、グラフェン、およびフラーレンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
a)N-ビニルラクタムの重合単位を含むポリマーa)と、b)ビニル芳香族化合物およびエチレン性不飽和重合性カルボン酸無水物に基づくポリマー主鎖を有し、少なくとも2つのポリアルキレンオキシド側鎖を有する櫛型コポリマーb)とを含む組成物の、炭素系材料用分散剤としての使用。
【請求項13】
前記炭素系材料が、カーボンブラックおよびカーボンナノチューブのうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
炭素系材料分散液を調製する方法であって、
i)a)N-ビニルラクタムの重合単位を含むポリマーa)と、b)ビニル芳香族化合物およびエチレン性不飽和重合性カルボン酸無水物に基づくポリマー主鎖を有し、少なくとも2つのポリアルキレンオキシド側鎖を有する櫛型コポリマーb)とを含む組成物を提供する工程と、
ii)炭素系材料を提供する工程と、
iii)工程i)およびii)で提供された成分を混合し、剪断力を加えて炭素系材料分散液を調製する工程と
を含む、方法。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物を含む電極を有する再充電可能な電気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-ビニルラクタムの重合単位を含むポリマーと櫛型ポリマーとを含む組成物に関する。本発明はさらに、炭素系材料のための分散剤としての組成物の使用、炭素系材料分散液の調製方法、および再充電可能な電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電池、特にリチウム二次電池用の電極を製造するための組成物に関する。この文献は、炭素系材料の分散液の安定化および電池性能の向上に関する。この発明者らは、炭素系材料の分散剤として、有機色素誘導体、塩基性官能基を有するアントラキノン誘導体、およびトリアジン誘導体のうちの少なくとも1種を添加することを提案している。この実施例には、カーボンブラック分散液を調製するための添加剤としてのポリビニルピロリドンの使用が記載されている。
【0003】
特許文献2は、リチウムイオン電池の製造のための導電性材料の液体分散液に関する。この分散液は、導電性材料と、分散剤と、分散媒とを含む。この分散剤は、非イオン性ポリマーである。好ましいポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース樹脂、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアセタール、ポリビニルエーテル、キチン、キトサン、およびデンプンである。分散媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0004】
特許文献3には、カーボンブラック分散液およびそれを用いたリチウムイオン電池電極材料ペーストが記載されている。カーボンブラックの分散剤としてフタロシアニン金属錯体が提案されている。
【0005】
特許文献4には、金属基板上に配置された穿孔カバープレートが記載されている。カバープレートは、スチレン-無水マレイン酸コポリマーおよびポリビニルピロリドンに基づく櫛型コポリマーを含む樹脂組成物を使用して金属に接着される。櫛型コポリマーは、典型的には、スチレン-無水マレイン酸コポリマーを、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールのモノメチルエーテルでグラフト化することによって調製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2296208号明細書
【特許文献2】特開2011-070908号公報
【特許文献3】特開2015-227406号公報
【特許文献4】台湾特許出願公開第2013-47972号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
再充電可能な電池の製造において使用される場合、炭素系材料分散液の改善された安定化および改善された電池特性、例えば改善された充放電サイクル安定性を提供する炭素系材料のための改善された分散剤に対する継続的な必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、a)N-ビニルラクタムの重合単位を含むポリマーa)と、b)ビニル芳香族化合物およびエチレン性不飽和重合性カルボン酸無水物に基づくポリマー主鎖を有し、少なくとも2つのポリアルキレンオキシド側鎖を有する櫛型コポリマーb)と、c)炭素系材料とを含む組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ポリマーa)は、N-ビニルラクタムの重合単位を含む。重合単位とは、エチレン性不飽和ビニル基の重合を施したN-ビニルラクタムを指す。好適なN-ビニルラクタムの例は、ベータ、ガンマ、デルタまたはイプシロンラクタムとも呼ばれる4員、5員、6員または7員環を有し得る。好ましい例としては、N-ビニルピロリドンおよびN-ビニルカプロラクタムが挙げられる。
【0010】
一実施形態において、ポリマーa)は、N-ビニルラクタムとエチレン性不飽和重合性基を有する他のモノマーとのコポリマーである。他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル、ビニル芳香族化合物、およびビニルエステルが挙げられる。好ましい実施形態において、ポリマーa)は、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも80重量%のN-ビニルラクタムの重合単位からなる。
【0011】
一実施形態において、ポリマーa)は、1つのタイプのN-ビニルラクタムの重合単位を含む。他の実施形態において、ポリマーa)は、2つ以上の異なるタイプのN-ビニルラクタムの重合単位を含む。ポリマーa)は、N-ビニルピロリドンの重合単位を含むか、またはそれからなることが好ましい。
【0012】
ポリマーa)の分子量は特に限定されない。いくつかの実施形態において、ポリマーa)の重量平均分子量は、2000~500000g/molの範囲、好ましくは5000~100000g/molの範囲である。ポリマーa)は15000~80000g/molの範囲の重量平均分子量を有することが特に好ましい。一般に、ポリマーa)は本質的に線状のポリマーである。
【0013】
ポリマーa)の重量平均分子量は、較正標準としてポリメチルメタクリレートおよび溶離液としてN,N-ジメチルアセトアミドを使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって適切に決定することができる。
【0014】
本発明の組成物における櫛型コポリマーb)は、ビニル芳香族化合物およびエチレン性不飽和重合性カルボン酸無水物に基づくポリマー主鎖を有し、少なくとも2つのポリアルキレンオキシド側鎖を有する櫛型ポリマーである。
【0015】
ポリマーb)のポリマー主鎖は、一般に、本質的に線状であり、すなわち、1つのエチレン性不飽和重合性結合を有するエチレン性不飽和重合性モノマーの重合によって調製される。所望であれば、例えば、2つ以上のエチレン性不飽和重合性結合を有するモノマーを含めることによって、ポリマーb)のポリマー主鎖中に少量の分岐が存在してもよい。
【0016】
櫛型ポリマーb)のポリマー主鎖は、ビニル芳香族化合物の重合単位を含む。好適なビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルエチルベンゼン、およびこれらの混合物が挙げられる。櫛型ポリマーb)のポリマー主鎖は、エチレン性不飽和重合性カルボン酸無水物またはエチレン性不飽和重合性ジカルボン酸の重合単位をさらに含む。好適なモノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、フマル酸、前述の化合物のエステル、およびこれらの混合物が挙げられる。ポリマーb)のポリマー主鎖は、上述の2種類のモノマーの共重合によって好適に調製することができる。所望であれば、ポリマーb)のポリマー主鎖中に他のモノマー、例えばアクリル酸またはメタクリル酸ならびにそれらのエステルを含めてもよい。好ましい実施形態において、櫛型ポリマーb)のポリマー主鎖は、スチレンと無水マレイン酸とのコポリマーである。
【0017】
ポリマーb)は櫛型コポリマーである。櫛型ポリマーは、ポリマー主鎖に結合した少なくとも2つのポリマー側鎖を有するコポリマーである。ポリマーb)は、ポリマー主鎖に結合した少なくとも2つのポリアルキレンオキシド側鎖を有する。櫛型コポリマーb)は、一般に2~100個、好ましくは2~50個、より好ましくは3~25個、最も好ましくは4~12個のポリアルキレンオキシド側鎖を有する。一般に、ポリアルキレンオキシド側鎖は、エポキシドまたはオキセタンの重合単位に基づくポリエーテルである。典型的には、ポリアルキレンオキシド側鎖は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、およびこれらの混合物の重合単位に基づく。アルキレンオキシドの混合物の場合、これらは、ポリアルキレンオキシド鎖中に2つ以上のブロックの形態で、またはランダムな順序で存在してもよい。エチレンオキシド、プロピレンオキシド、および特にそれらの混合物に基づくポリアルキレンオキシド側鎖が好ましい。
【0018】
櫛型コポリマーb)の重量平均分子量は、較正標準としてポリスチレンを使用し、溶離液としてTHFを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって適切に決定することができる。
【0019】
ポリアルキレンオキシド側鎖の重量平均分子量は、一般に200~6000g/mol、好ましくは300~4000g/molの範囲である。いくつかの実施形態において、ポリアルキレンオキシド側鎖は、エーテル末端基、例えば、エチルまたはメチルエーテル末端基などのアルキルエーテル末端基を有する。
【0020】
ポリアルキレンオキシド側鎖は、アミンまたはアルコール末端単官能性ポリオキシアルキレンオキシドと、ポリマー主鎖のカルボン酸無水物基との反応によってポリマー主鎖に結合することができる。第一級アミン基とカルボン酸無水物基との反応は、アミド結合またはイミド結合を生じ得る。櫛型コポリマーb)のポリオキシアルキレンオキシド側鎖は、例えばスチレンおよび無水マレイン酸のコポリマーとポリエーテルモノアミンとの反応によって、アミド基またはイミド基を介してポリマー主鎖に結合していることが好ましい。好適なポリエーテルアミンは、Huntsmanから商品名Jeffamine(登録商標)Mで入手可能である。あるいは、ポリアルキレンオキシド側鎖は、エステル結合を介してポリマー主鎖に結合していてもよい。これは、ポリマー主鎖のカルボン酸無水物基をヒドロキシル末端ポリアルキレンオキシドモノエーテルと反応させることによって達成することができる。
【0021】
好ましい実施形態では、櫛型コポリマーb)は、ヒドロキシル、カルボン酸、カルボン酸塩、第三級アミン、第三級アミンの塩、および第四級アンモニウムのうちの少なくとも1つを含む更なる官能基を含む。
【0022】
ヒドロキシル基は、ポリマー主鎖のカルボン酸無水物基を、エタノールアミンなどのアルカノールアミンと反応させることによって含まれ得る。
【0023】
カルボン酸基は、ポリマー主鎖のカルボン酸無水物基とアルコールまたはアミンとの開環反応によって含まれ得る。カルボン酸基は、塩基によって中和されて、カルボン酸の塩を形成し得る。
【0024】
櫛型コポリマーb)は、好適には0~300mgKOH/gの範囲の酸価を有する。好ましい実施形態では、櫛型コポリマーb)の酸価は、0~150mgKOH/g、より好ましくは0~100mgKOH/g、または0~70mgKOH/gの範囲である。
【0025】
第三級アミン基は、ポリマー主鎖のカルボン酸無水物基を、第三級アミン基および第一級または第二級アミン基を有するジアミン(例えば、3-ジメチルアミノプロピルアミン)と反応させることによって導入され得る。第三級アミンは、酸で中和してその塩を形成することができる。あるいは、第三級アミンを四級化剤で四級化して、第四級アンモニウム基を形成してもよい。好適な四級化剤としては、例えば、ハロゲン化アルキルまたはハロゲン化ベンジル、ならびにカルボン酸と組み合わせたエポキシドが挙げられる。第三級アミン、第三級アミンの塩、および第四級アンモニウムのうちの少なくとも1つを含む櫛型コポリマーb)が好ましい。
【0026】
櫛型コポリマーb)は、好適には0~300mgKOH/gの範囲のアミン価を有する。好ましい実施形態では、櫛型コポリマーb)のアミン価は、0~150mgKOH/g、より好ましくは0~100mgKOH/g、または0~70mgKOH/gの範囲である。
【0027】
櫛型コポリマーb)の重量平均分子量は、好適には4000~100000g/molの範囲、好ましくは6000~60000g/molの範囲である。重量平均分子量は、 櫛型コポリマーb)について上述したように決定することができる。
【0028】
好適な櫛型ポリマーb)の例およびその調製については、欧州特許出願公開第2125910号明細書に詳細に記載されている。
【0029】
本発明の組成物において、ポリマーa)と櫛型コポリマーb)との重量比は、好ましくは10:90~90:10の範囲、より好ましくは25:75~75:25の範囲である。
【0030】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は液体組成物として提供される。したがって、本組成物は、好ましくは少なくとも1つの溶媒を含む。一般に、溶媒は有機溶媒である。溶媒の選択は特に重要ではない。好適な溶媒は、ポリマーa)および櫛型コポリマーb)を溶解することができる。溶媒の組み合わせを使用することも可能である。ポリマーa)の比較的極性の性質のために、溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、またはN-メチルピロリドンなどの非プロトン性双極性溶媒を含むことが一般に好ましい。
【0031】
組成物の含水量は特に重要ではないが、ポリマーa)の高い吸水性によって引き起こされる高い含水量は、いくつかの実施形態において、組成物の保存安定性および均質性を低下させ得ることが見出されている。したがって、組成物の含水量は、組成物の総重量に基づいて計算して、0.0~5.0重量%の範囲であることが好ましい。組成物の含水量が0.0~3.0重量%の範囲であり、さらにより好ましくは0.0~1.5重量%の範囲であることが特に好ましい。
【0032】
含水量は、カールフィッシャー滴定によって適切に決定することができる。
【0033】
ポリマーa)およびポリマーb)を含む組成物は、炭素系材料用の分散剤として非常に好適である。したがって、本発明の組成物は、炭素系材料を含む。炭素系材料は、90~100重量%の炭素からなる材料である。電池用の電極製造の分野で使用するために、導電性である炭素系材料が選択される。好適な導電性炭素系材料としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、炭素繊維、グラフェン、フラーレン、およびこれらの混合物が挙げられる。好ましい炭素系材料は、カーボンブラック、グラフェン、およびカーボンナノチューブである。好適なカーボンブラックの特定のタイプは、ファーネスブラックおよびアセチレンブラックである。
【0034】
本発明はさらに、炭素系材料分散液を調製する方法であって、i)N-ビニルラクタムの重合単位を含むポリマーa)と、ビニル芳香族化合物およびエチレン性不飽和重合性カルボン酸無水物に基づくポリマー主鎖を有し、少なくとも2つのポリアルキレンオキシド側鎖を有する櫛型ポリマーb)とを含む組成物を提供する工程と、ii)炭素系材料を提供する工程と、iii)工程i)およびii)で提供された成分を混合し、剪断力を加えて炭素系材料分散液を調製する工程とを含む、方法に関する。
【0035】
剪断力は、顔料を分散させるための周知の装置によって、例えばボールミルまたは高速攪拌機によって提供することができる。好適には、炭素系材料の重量に基づいて計算して、1~40重量%のポリマーa)およびポリマーb)を一緒に本方法で使用する。
【0036】
本発明の組成物が分散剤として使用される炭素系材料の分散液は、炭素系材料の低粘度および小粒径などの好ましい特性を示す。
【0037】
炭素系材料を含む本発明の組成物は、再充電可能な電池用の電極ペーストを調製するために非常に有利に使用することができる。したがって、本発明は、本発明の組成物を含む電極を有する再充電可能な電気電池にも関する。電池という表現は、電極、セパレータ、および電解質を含む単一の電気化学セル、ならびにセルまたはセルアセンブリの集合体を包含する。
【0038】
再充電可能な電池は、構成要素として、好ましくは正極として電極を使用して製造することができる。正極という用語は、放電サイクル中に還元が行われる電極を指す。
【0039】
電極用ペーストは、炭素系材料の分散液と、電極活物質と、バインダーとを含む。電極用ペーストは、混練により得ることができる。混練には、例えば、リボンミキサー、スクリュー型混練機、スパルタン造粒機、レーディゲミキサー、プラネタリーミキサー、ユニバーサルミキサー等の公知の装置を用いることができる。電極用ペーストは、シート状、ペレット状等に成形することができる。
【0040】
電極用ペーストに用いられるバインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム系バインダー等の公知のバインダーが挙げられる。
【0041】
バインダーの使用量は、ペーストの不揮発分100質量部に対して1~50質量部が適当であり、特に約1.5~20質量部が好ましい。
【0042】
混練時に溶媒を用いることができる。溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、イソプロパノール等の公知の溶媒、フッ素系ポリマーの場合はトルエンやN-メチルピロリドン、SBRの場合は水等が挙げられる。水を溶媒として使用するバインダーの場合には増ちょう剤を併用することが好ましい。溶媒の量は、ペーストが集電体に容易に塗布できる粘度が得られるように調整する。
【0043】
電極は、上述の電極用ペーストの成形物から形成することができる。電極は、例えば、電極用ペーストを集電体上に塗布し、続いて乾燥および加圧成形することにより得られる。
【0044】
集電体としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、ステンレス鋼等の箔やメッシュ等が挙げられる。ペーストの塗布厚は、通常40~200μmである。ペースト塗布方法としては特に限定されず、例えば、ドクターブレードやバーコーターで塗布した後、ロールプレス等で成形する方法が挙げられる。
【0045】
加圧成形としては、例えば、ロール加圧成形、圧縮成形等が挙げられる。加圧成形時の圧力は1~3t/cm程度が好ましい。電極の密度が増加するにつれて、体積当たりの電池容量は一般に増加する。しかし、電極密度を高くしすぎると、一般にサイクル特性が低下する。本発明の好ましい実施形態において電極用のペーストを使用する場合、電極密度を高くしてもサイクル特性の低下が少ない。一般に、電極密度は1.0~4.0g/cmの範囲である。いくつかの実施形態では、正極の電極密度は2.0~3.5g/cmの範囲であり、負極の密度は1.2~2.0g/cmの範囲である。
【0046】
本発明の好適な実施形態における再充電可能電池について、リチウムイオン再充電可能電池を具体例として説明する。リチウムイオン再充電可能電池は、負極と正極が電解液に浸漬された構造を有する。
【0047】
リチウムイオン再充電可能電池の正極では、正極活物質として、リチウムを含有する遷移金属酸化物やLiFePO等のリチウム金属リン酸塩が一般的に用いられており、好ましくは、リチウムと、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、MoおよびWからなる群より選択される少なくとも1種の遷移金属元素とを主に含有する酸化物であって、リチウムと遷移金属元素とのモル比が0.3~2.2である化合物が用いられる。より好ましくは、リチウムと遷移金属とのモル比が0.3~2.2である化合物であって、リチウムと、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiからなる群より選択される少なくとも1種の遷移金属元素とを主に含有する酸化物を用いる。なお、主に存在する遷移金属に対して、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、B等が30モル%未満の範囲で含まれていてもよい。上記活物質の中でも、一般式LiMO(MはCo、Ni、FeおよびMnのうちの少なくとも1種を表し、xは0~1.2である)またはLi(Nは少なくともMnを含み、yは0~2である)で表されるスピネル構造を有する材料を少なくとも1種用いることが好ましい。
【0048】
また、正極活物質としては、Li1-a(MはCo、Ni、Fe、およびMnのうちの少なくとも1種を表し、DはCo、Ni、Fe、Mn、Al、Zn、Cu、Mo、Ag、W、Ga、In、Sn、Pb、Sb、Sr、B、およびPのうちの少なくとも1種を表す、但し、Mに相当する元素を除く、y=0~1.2、およびa=0.5~1)を含む材料、およびLi(N1-b(NはMnを表し、EはCo、Ni、Fe、Mn、Al、Zn、Cu、Mo、Ag、W、Ga、In、Sn、Pb、Sb、Sr、B、およびPのうちの少なくとも1種を表し、b=1~0.2、およびz=0~2)で表されるスピネル構造を有する材料のうちの少なくとも1種を用いることが特に好ましい。
【0049】
具体的には、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1-a、LiCo1-b、LiCoFe1-b、LiMn、LiMnCo2-c、LiMnNi2-c、LiMn2-c、およびLiMnFe2-c(x=0.02~1.2、a=0.1~0.9、b=0.8~0.98、c=1.6~1.96、およびz=2.01~2.3)等が挙げられる。最も好ましいリチウムを含有する遷移金属酸化物としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1-a、LiMn、およびLiCo1-b(x=0.02~1.2、a=0.1~0.9、b=0.9~0.98、およびz=2.01~2.3)が挙げられる。なお、xの値は充放電に応じて増減してもよい。
【0050】
正極活物質の平均粒径は特に限定されないが、0.1~50μmであることが好ましい。0.5~30μmの粒子の体積は95%以上であることが好ましい。より好ましくは、粒径が3μm以下の粒子群が占める体積が全体積の18%以下であり、粒径が15μm以上25μm以下の粒子群が占める体積が全体積の18%以下である。
【0051】
比表面積は特に限定されないが、BET法で0.01~50m/gが好ましく、特に好ましくは0.2m/g~1m/gである。
【0052】
リチウムイオン再充電可能電池では、正極と負極との間にセパレータを設けることができる。セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主に含む不織布、布、微多孔膜、およびこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0053】
本発明の好ましい実施形態におけるリチウムイオン再充電可能電池を形成する電解質としては、公知の有機電解質、無機固体電解質、高分子固体電解質を用いることができるが、イオン伝導性の観点から有機電解質が好ましい。
【0054】
有機電解液(非水溶媒)の溶媒としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル等のエーテル類;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-エチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、ヘキサメチルホスホリルアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄化合物;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のジアルキルケトン;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、2-メトキシテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン等の環状エーテル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン;N-メチルピロリドン;アセトニトリル;ニトロメタン、1,2-ジメトキシエタン;等の有機溶媒の溶液が好ましい。また、好ましくは、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン等のエステル類;ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジエトキシエタン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;テトラヒドロフラン等が挙げられる。エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系非水溶媒は特に好ましく用いることができる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いてもよい。
【0055】
これらの各溶媒の溶質(電解質)には、リチウム塩が用いられる。一般的に知られているリチウム塩としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCl、LiCFSO、LiCFCO、LiN(CFSO等が挙げられる。
【0056】
高分子固体電解質としては、例えば、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリカーボネート誘導体等が挙げられる。
【実施例
【0057】
原料:
炭酸カリウム: (Sigma-Aldrich)。
(ダワノール)PMA: 1-メトキシ-2-プロピルアセテート(ダウ・ケミカル)。
SMA2000: スチレン-無水マレイン酸コポリマー(スチレン/無水マレイン酸のモル比=2/1)(クレイバレー)。
Jeffamine M2070: アミン末端EO/POポリエーテル(Huntsman)。
ルテンゾール AO11: 脂肪アルコール(炭素数:13~15)エトキシレート(ポリエチレングリコールの繰り返し単位=11)(BASF)。
DMAPA: N,N-ジメチルアミノプロピルアミン(Huntsman)。
Grilonit RV1814: アルキル(炭素数13~15)グリシジルエーテル(EMS-GRILTECH)。
安息香酸: (Sigma-Aldrich)。
AMP: 95%のアミノメチルプロパノールおよび5%の水(Sigma-Aldrich)。
NMP: N-メチルピロリドン(BASF)。
DISPERBYK-111: 酸性ポリマー、酸価=129mgKOH/g(BYK-Chemie)。
【0058】
[不揮発分(固形分)の測定]
試料(試験物質2.0±0.2g)を、予め乾燥させたアルミニウム皿に正確に秤量し、ワニス乾燥キャビネット内で150℃で20分間乾燥させ、デシケータ内で冷却し、次いで再秤量した。残留物は試料中の固体含有量に相当する(ISO 3251)。
【0059】
[アミン価の測定]
分散剤1.5~3.0gを80mLビーカーに精秤し、酢酸50mLで溶解した。この溶液を、pH電極を備えた自動滴定装置を用いて、0.1mol/L HClO酢酸溶液で中和滴定した。滴定pH曲線の屈曲点を滴定終点として使用し、下記式によりアミン価を求めた(DIN 16945)。
アミン価[mgKOH/g] = (561×0.1×f×V)/(W×S)
(式中、f:滴定剤のファクター、V:滴定終点における滴定量[mL]、W:分散剤試料の秤量[g]、S:分散剤試料の固形分濃度[wt%])
【0060】
[酸価の測定]
分散剤1.5~3.0gを80mLビーカーに精秤し、エタノール50mLで溶解した。この溶液を、pH電極を備えた自動滴定装置を用いて、0.1mol/LのKOHエタノール溶液で中和滴定した。滴定pH曲線の屈曲点を滴定終点として使用し、下記式によりアミン価を求めた(DIN EN ISO 2114)。
酸価[mgKOH/g] = (561×0.1×f×V)/(W×S)
(式中、f:滴定剤のファクター、V:滴定終点における滴定量[mL]、W:分散剤試料の秤量[g]、S:分散剤試料の固形分濃度[wt%])
【0061】
[ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)]
重量平均分子量Mwは、高圧液体クロマトグラフィーポンプ(WATERS600 HPLCポンプ)および屈折率検出器(Waters410)を使用して40℃でDIN 55672-1:2007-08に従って決定した。分離カラムとして、300mm×7.8mm ID/カラムのサイズ、5μmの粒径、ならびに孔径HR4、HR2およびHR1を有するWATERS製の3つのStyragelカラムの組合せを使用した。使用した溶離剤は、1容量%のジブチルアミンを含むテトラヒドロフランであり、溶離速度は1mL/分であった。ポリスチレン標準を用いて従来の較正を行った。
【0062】
<櫛型コポリマーC-1の合成>
85gのPMAを反応器に添加した。21gのSMA2000を撹拌しながら添加し、その間、混合物を70℃まで加熱した。次いで、64gのJeffamine M2070および4gのDMAPAを反応器に滴下して加えた。反応は170℃で4時間行った。反応中にPMAを留去した。ポリマーのMwは30210g/molであった。
次の工程において、反応器を120℃に冷却した。次いで、9gのGrilonit RV1814および4gの安息香酸を反応器に添加した。反応は120℃で4時間行った。その後、櫛型コポリマーC-1を得た。
櫛型コポリマーC-1は、100%固形分、18mgKOH/gのアミン価および8mgKOH/gの酸価を有する。
【0063】
<櫛型コポリマーC-2の合成>
85gのPMAを反応器に添加した。21gのSMA2000を撹拌しながら添加し、その間、混合物を70℃まで加熱した。次いで、79gのJeffamine M2070を反応器に滴下して加えた。反応は170℃で4時間行った。減圧下で溶媒を除去した後、櫛型コポリマーC-2を得た。
櫛型コポリマーC-2は、100%固形分および27mgKOH/gの酸価を有する。櫛型コポリマーC-2のMwは31220g/molであった。
【0064】
<櫛型コポリマーC-3の合成>
85gのPMAを反応器に添加する。21gのSMA2000を撹拌しながら添加し、その間、混合物を70℃まで加熱した。0.4gの炭酸カリウムを添加した後、43gのルテンゾール AO11を滴下して加え、反応器を140℃まで4時間加熱した。
次の工程で、PMAを減圧下150℃で留去した。80℃に冷却した後、30gのNMPを反応器に加えた。6gのAMPを添加して均一化した後、櫛型コポリマーC-3を得た。
櫛型コポリマーC-3は、70%理論固形分(溶媒:NMP)、37mgKOH/gのアミン価および27mgKOH/gの酸価を有する。櫛型コポリマーC-3のMwは9600g/molであった。
【0065】
<櫛型コポリマーC-4の合成>
50gのPMAを反応器に添加した。13gのSMA2000を撹拌しながら添加し、その間、混合物を70℃まで加熱した。次に、24gのJeffamin M2070を反応器に滴下して加え、反応を170℃で4時間行った。反応中にPMAを留去した。櫛型コポリマーのMwは23590g/molであった。
次の工程で、50gのNMPを反応器に加え、続いて11gのDISPERBYK-111を加えた。塩化反応を80℃で1時間行い、櫛型コポリマーC-4を得た。
櫛型コポリマーC-4は、50%固形分(溶媒:NMP)、15mgKOH/gのアミン価、および18mgKOH/gの酸価を有する。
【0066】
(カーボンブラック分散液の製造)
カーボンブラック: デンカブラック(粒状)(デンカ)。
PVP K30: ポリビニルピロリドン Sokalan K30P(BASF)、Mw40000g/mol。
分散液は、ペイントシェーカーDisperser DAS200(LAU GmbH)および150gの2mmジルコニアビーズを使用して調製した。分散時間は30℃で3時間であった。
【0067】
<カーボンブラック分散液D-1~D-8を調製するための一般的手順>
密封ボックス中に保存した櫛型コポリマー(C-1、C-3およびC-4)およびPVP K30を、140mLのガラス瓶中でNMPに溶解した。その後、カーボンブラックを添加し、混合物を30℃で3時間分散させ、それぞれカーボンブラック分散液D-1~D-8を得た(詳細は表1に記載)。
【0068】
<比較カーボンブラック分散液CD-1~CD-3を調製するための一般的手順>
PVP K30を含まないこと以外は、カーボンブラック分散液D-1~D-8と同様にして、カーボンブラック分散液CD-1~CD-3を調製した。(詳細は表1に記載)。
【0069】
<比較カーボンブラック分散液CD-4の調製手順>
櫛型コポリマーを含まないこと以外は、カーボンブラック分散液D-1~D-8と同様にして、カーボンブラック分散液CD-4を調製した。(詳細は表1に記載)。
【0070】
【表1】
【0071】
(カーボンナノチューブ(CNT)分散液の調製)
CNT: FT7320(C-nano)
分散液は、ペイントシェーカーDisperser DAS200(LAU GmbH)および50gの1mmガラスビーズを使用して調製した。分散時間は30℃で12時間であった。
【0072】
<CNT分散液D-9~D-11を調製するための一般的手順>
密封ボックスに保存した櫛型コポリマーC-1~C-3およびPVP K30を100mLのガラス瓶中でNMPに溶解した。その後、CNTを添加し、混合物を30℃で12時間分散させ、それぞれCNT分散液D-9~D-11を得た(詳細は表2に記載)。
【0073】
<比較CNT分散液CD-5~CD-7を調製するための一般的手順>
PVP K30を含まないこと以外は、CNT分散液D-9~D-11と同様にして、CNT分散液CD-5~CD-7を調製した。(詳細は表2に記載)。
【0074】
<CNT分散液CD-8を調製するための一般的手順>
櫛型コポリマーを含まないこと以外は、CNT分散液D-9~D-11と同様にして、CNT分散液CD-8を調製した。(詳細は表2に記載)。
【0075】
【表2】
【0076】
[応用試験結果]
(カーボンブラック分散液およびCNT分散液の粘度)
カーボンブラック分散液の粘度は、BROOKFIELD VISCOMETER DV-II+(BROOKFIELD、粘度上限:1000mPa・s)を用いて測定した。
【0077】
(カーボンブラック分散液の粒子径)
カーボンブラック分散液の粒子径(メジアン径:D50)は、パーティクルサイズアナライザーELSZ-1000(大塚電子)を用いて測定した。
【0078】
<実施例1~6:カーボンブラック分散液D-2、D-3、D-5~D-8の粘度および粒子径>
カーボンブラック分散液D-2、D-3、およびD-5~D-8の粘度(20℃、回転数:60rpm)および粒子径(D50)を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
<比較例1~4:カーボンブラック分散液CD-1~CD-4の粘度および粒子径>
カーボンブラック分散液CD-1~CD-4の粘度(20℃、回転数:60rpm)および粒子径(D50)を表4に記載する。
【0081】
【表4】
【0082】
表3および表4の結果によれば、櫛型コポリマーとPVPとの混合物を含むカーボンブラック分散液(実施例1~6)は、櫛型コポリマーのみまたはPVPのみを含むカーボンブラック分散液(比較例1~4)に比べて粘度が低く、粒子径(D50)が小さいことを示した。
【0083】
<実施例7~9:CNT分散液D-9~D-11の粘度>
粘度(20℃、回転数:1rpmおよび100rpm)を表5に記載する。
【0084】
【表5】
【0085】
<比較例5~8:CNT分散液CD-5~CD-8の粘度>
粘度(20℃、回転数:1rpmおよび100rpm)を表6に記載する。
【0086】
【表6】
【0087】
表5および表6の結果によれば、櫛型コポリマーとPVPの混合物を含むCNT分散液(実施例7~9)は、櫛型コポリマーのみまたはPVPのみを含むCNT分散液(比較例5~8)と比較して、異なるせん断速度で低い粘度を示した。
【0088】
[体積抵抗率の評価]
(体積抵抗率)
電極材料Li1+x(Ni0.5Co0.2Mn0.31-x(NCM)と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、導電助剤としてのカーボンブラック(CB)分散液とをN-メチル-2-ピロリドンに加えた。電極材料のペーストにおける不揮発分基準の質量比は、NCM:CB:PVDF=93:5:2であり、これらを混合して電極材料のペーストを調製した。
この電極材料のペーストを、厚さ180μmのPETシートの表面に塗布してコーティングを形成し、コーティングを乾燥させることにより、PETシートの表面に正極層を形成した。その後、この正極層付きPETシートを3cm幅に切断して、正極層の体積抵抗率を測定した。
また、電極コーティングの体積抵抗率は、低抵抗率計(三菱化学株式会社製、型番:Loresta-AX)を用いた4点測定により25℃で測定した。
【0089】
<実施例10~12:カーボンブラック分散液D-4~D-6を用いて調製した電極コーティングの体積抵抗率>
カーボンブラック分散液D-4~D-6を用いて調製した電極コーティングの体積抵抗率を表7に記載する。
【0090】
【表7】
【0091】
<比較例9:カーボンブラック分散液CD-4を用いて調製した電極コーティングの体積抵抗率>
カーボンブラック分散液CD-4を用いて調製した電極コーティングの体積抵抗率を表8に示す。
【0092】
【表8】
【0093】
表7および表8の結果によれば、櫛型コポリマーとPVPとの混合物を含むカーボンブラック分散液を用いて調製した電極コーティング(実施例10~12)は、PVPのみを含むカーボンブラック分散液(比較例9)に比べて低い体積抵抗率を示した。
【0094】
(電池アセンブリ)
正極活物質としてLi1+x(Ni0.5Co0.2Mn0.31-x(NCM)90重量%と、分散液として供給されたカーボンブラック(CB)5.5重量%と、PVDF4.5重量%とを混合機Dispermat CV(VMA Getzmann GmbH)で混合して正極合剤を調製した。続いて、この正極合剤を厚さ21μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥した後、圧延した。正極合剤の塗布量は15.4mg/cmとした。
電極活物質として黒鉛96重量%、カルボキシメチルセルロース(CMC)2.0重量%、スチレン-ブタジエン-ゴム(SBR)2.0重量%を混合機で混合して負極合剤を調製した。続いて、この負極合剤を厚さ17μmの銅箔に塗布して乾燥させたのち、圧延した。負極合剤の塗布量は8.4mg/cmとした。
セパレータとしては、厚さ16μmのポリプロピレン製微多孔膜を用いた。電池構造は以下の構成を有していた:正極/セパレータ/負極。LiPFを1モル溶解させた炭酸塩電解液であって、エチレンカーボネート(EC):プロピレンカーボネート(PC)の体積比が1:1である炭酸塩電解液を電解液として含浸させた積層型セルを組み立てて電池を作製した。
【0095】
(Cレート放電性能)
22mAhの最大容量Qを有するバッテリーの場合、「1C」電流は22mAとなり、ここで、単位CまたはCレートは、アンペア単位の電流を得るためにQが乗算される1/h単位の電流で表される容量である。
Cレート放電を0.2Cから2Cに増加させた。その後、Cレート放電容量を、4.3Vから3.0Vまでの放電容量として測定した。
これら全ての試験において、充電は0.067Cの定電流で4.3Vの電圧限界まで、および定電圧で0.03Cの電流限界まで行い、放電速度を徐々に増加させた。Cレート性能試験は25℃の温度条件で行った。
【0096】
<実施例13~15:カーボンブラック分散液D-4~D-6を含む電池のCレート放電性能>
カーボンブラック分散液D-4~D-6を含む電池のCレート放電性能を表9に記載する。
【0097】
【表9】
【0098】
<比較例10:カーボンブラック分散液CD-4を含む電池のCレート放電性能>
カーボンブラック分散液CD-4を含むバッテリーのCレート放電性能を表10に記載する。
【0099】
【表10】
【0100】
表9および10の結果によれば、櫛型コポリマーとPVPとの混合物を含有するカーボンブラック分散液を含む電池(実施例13~15)は、PVPのみを含むカーボンブラック分散液を含む電池(比較例10)に比べてより良好なCレート放電性能を示した。
【0101】
(サイクルテスト)
セルのサイクル寿命評価のために、25℃の温度条件下で0回、50回、100回、200回、400回、500回の充放電を繰り返した。
充電は、0.067Cの定電流下で4.3Vの電圧限界まで、定電圧下で0.03Cの電流限界まで行った。放電は、1Cの定電流下で3.0Vの電圧限界まで行った。
1サイクル目の放電容量を100%とした。
【0102】
<実施例16~17:カーボンブラック分散液D-5~D-6を含む電池のサイクルテスト>
カーボンブラック分散液D-5~D-6を含む電池のサイクルテストを表11に記載する。
【0103】
【表11】
【0104】
<比較例11:カーボンブラック分散液CD-4を含むバッテリーのサイクルテスト>
カーボンブラック分散液CD-4を含む電池のサイクルテストを表12に記載する。
【0105】
【表12】
【0106】
表11および12の結果によれば、櫛型コポリマーとPVPとの混合物を含有するカーボンブラック分散液を含む電池(実施例16~17)は、PVPのみを含有するカーボンブラック分散液を含む電池(比較例11)に比べてより良好なサイクルテスト性能を示したことが明らかである。
【国際調査報告】