(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-28
(54)【発明の名称】改変抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220421BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220421BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220421BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220421BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220421BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220421BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220421BHJP
C12N 15/56 20060101ALI20220421BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20220421BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/56
C07K16/00
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557655
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(85)【翻訳文提出日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 US2020025638
(87)【国際公開番号】W WO2020198731
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509240479
【氏名又は名称】ダニスコ・ユーエス・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジミー
(72)【発明者】
【氏名】エステル、デイビッド エー
(72)【発明者】
【氏名】ムノス、ジェフリー ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、マイケル シー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラエフ、イゴール
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA26X
4B065AA57X
4B065AA70X
4B065AA70Y
4B065AA72X
4B065AA79X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4H045AA11
4H045BA41
4H045CA15
4H045CA40
4H045DA76
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本明細書には、とりわけ、切断抵抗性の抗体及び抗体産生宿主細胞、並びにそれらの作製、使用、及び分泌改良のための方法が開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドのタンパク質分解を低減する1つ以上のアミノ酸修飾を含むヒンジ領域を含む、モノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチド。
【請求項2】
IgG1抗体軽鎖ポリペプチドをさらに含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記修飾が、アミノ酸位置216、217、222、226、及び/又は234のうちの1つ以上における修飾を含み、前記アミノ酸位置が、配列番号1における番号付けに従って番号付けされる、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記修飾が、216T若しくはV;217T若しくはS;222C、D、若しくはE;226N若しくはP;及び/又は234Rのうちの1つ以上を含む、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記修飾が227位における修飾をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記修飾が227Pを含む、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記修飾が、216位における修飾と、アミノ酸位置222、226、227、及び/又は234における1つ以上の修飾とを含む、請求項3又は4に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記修飾が、216Tと、222C、D、若しくはE;226N若しくはP;227P;及び/又は234Rのうちの1つ以上とを含む、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記修飾が、217位における修飾と、アミノ酸位置222、226、227、及び/又は234における1つ以上の修飾とを含む、請求項3又は4に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記修飾が、217Tと、222C、D、若しくはE;226N若しくはP;227P;及び/又は234Rのうちの1つ以上とを含む、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記修飾が、(a)R217S-T226N;(b)R217S-S222C;(c)T216V-R217S-T226N;(d)S222C-H227P;(e)R217S-S222E-H227P;(f)T216V-R217S-S222C-T226P;(g)T226P-H227P;(h)R217S-S222C-T226P;(i)T216V-S222D-T226P;(j)T216V-S222C-T226P-H227P;(k)T216V-S222E-T226N;(l)T216V-S222C-H227P;(m)R217S-S222C-T226N;(n)S222C-T226P-H227P;(o)T216V-S222C-T226N-H227P;(p)R217S-S222D-T226P-H227P;(q)T216V-H227P;(r)S222E-T226P-H227P;(s)R217S-S222D-T226N-H227P;(t)R217S-S222E-T226P-H227P;(u)T216V-S222C;(v)R217S-S222D;(w)S222E-T226P;(x)R217S-S222C-T226P-H227P;(y)T216V-T226P-H227P;(Z)T216V-S222D-H227P;(aa)T226N-H227P;(bb)S222D-T226N-H227P;(cc)R217S-S222E-T226N;(dd)R217S-T226N-H227P;(ee)R217S-S222E-T226N-H227P;(ff)T216V-R217S-H227P;(gg)T216V-S222E-T226P-H227P;(hh)T216V-S222C-T226N;(ii)R217S-T226P-H227P;(jj)T216V-T226P;(kk)S222E-T226N-H227P;(ll)S222E-H227P;(mm)R217S-S222E-T226P;(nn)R217S-T226P;(oo)T216V-S222D;(pp)R217S-S222C-H227P;(qq)T216V-S222E-T226N-H227P;(rr)S222C-T226N-H227P;(ss)T216V-R217S-S222C-T226N-H227P;(tt)R217S-S222D-T226P;及び(uu)S222D-T226N(vv)からなる群から選択される組み合わせの修飾である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、前記1つ以上のアミノ酸修飾を含まないモノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチドと比較して、少なくとも約50%少ないタンパク質分解を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、検出可能なタンパク質分解を示さない、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
シグナル配列をコードするポリペプチドをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
担体タンパク質をコードするポリペプチドをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記担体タンパク質をコードするポリペプチドが、シグナル配列をコードするポリペプチドに隣接する、請求項14又は15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記担体タンパク質が、CBH1又はその断片を含む、請求項14~16のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記抗体が、抗RSウイルス(RSV)抗体、抗エボラウイルス抗体、抗凝集βアミロイド(Aβ)抗体、抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体、抗単純ヘルペスウイルス(HSV)抗体、抗精子抗体(例えば、抗ヒト避妊抗原(HCA)抗体)、又は抗HER2/neu抗体である、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項19】
前記ポリペプチドが、前記1つ以上のアミノ酸修飾を含まないモノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチドと比較して、増大した安定性を示す、請求項1~18のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドをコードする核酸。
【請求項21】
請求項20に記載の核酸をコードするベクター。
【請求項22】
プロモーターをコードする核酸配列をさらに含む、請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
請求項1~19のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項20に記載の核酸、又は請求項21若しくは請求項22に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項24】
前記宿主細胞が、哺乳類宿主細胞、細菌宿主細胞、及び真菌宿主細胞からなる群から選択される、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項25】
前記哺乳類細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項24に記載の宿主細胞。
【請求項26】
前記細菌細胞が、大腸菌(E.coli)細胞である、請求項24に記載の宿主細胞。
【請求項27】
前記真菌細胞が、酵母細胞又は糸状菌細胞である、請求項24に記載の宿主細胞。
【請求項28】
前記酵母細胞が、サッカロミセス属(Saccharomyces)の種である、請求項27に記載の宿主細胞。
【請求項29】
前記真菌細胞が、トリコデルマ属(Trichoderma)の種、アオカビ属(Penicillium)の種、フミコラ属(Humicola)の種、クリソスポリウム属(Chrysosporium)の種、グリオクラジウム属(Gliocladium)の種、コウジカビ属(Aspergillus)の種、フザリウム属(Fusarium)の種、ケカビ属(Mucor)の種、アカパンカビ属(Neurospora)の種、ボタンタケ属(Hypocrea)の種、マイセリオフトラ(Myceliophthora)の種、及びエメリセラ属(Emericella)の種からなる群から選択される、請求項24又は請求項27に記載の宿主細胞。
【請求項30】
前記真菌細胞が、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ハルチアナム(Trichoderma harzianum)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・グリセア(Humicola grisea)、クリソスポリウム・ルクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、コウジカビ(Aspergillus oryzae)、クロカビ(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachi)、アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、ショウユコウジカビ(Aspergillus sojae)、マイセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、及びアワモリコウジカビ(Aspergillus awamori)からなる群から選択される、請求項29に記載の宿主細胞。
【請求項31】
請求項1~19のいずれか一項に記載のポリペプチドを産生するための方法であって、請求項23~30のいずれか一項に記載の宿主細胞を、前記ポリペプチドの産生に適した条件下で培養することを含む方法。
【請求項32】
前記ポリペプチドを単離することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリペプチドが、前記1つ以上のアミノ酸修飾を含まないモノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチドと比較して、少なくとも約50%少ないタンパク質分解を示す、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリペプチドが、検出可能なタンパク質分解を示さない、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
タンパク質分解に対するその抵抗性を増大させるためにモノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチドを修飾する方法であって、前記ポリペプチドのヒンジ領域内の1つ以上のアミノ酸残基を修飾することを含む方法。
【請求項36】
前記修飾が、アミノ酸位置216、217、222、226、及び/又は233のうちの1つ以上における修飾を含み、前記アミノ酸位置が、配列番号1における番号付けに従って番号付けされる、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記修飾が、216T若しくはV;217S;222C、D、若しくはE;226N若しくはP;及び/又は234Rのうちの1つ以上を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記修飾が227Pをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記修飾が、(a)R217S-T226N;(b)R217S-S222C;(c)T216V-R217S-T226N;(d)S222C-H227P;(e)R217S-S222E-H227P;(f)T216V-R217S-S222C-T226P;(g)T226P-H227P;(h)R217S-S222C-T226P;(i)T216V-S222D-T226P;(j)T216V-S222C-T226P-H227P;(k)T216V-S222E-T226N;(l)T216V-S222C-H227P;(m)R217S-S222C-T226N;(n)S222C-T226P-H227P;(o)T216V-S222C-T226N-H227P;(p)R217S-S222D-T226P-H227P;(q)T216V-H227P;(r)S222E-T226P-H227P;(s)R217S-S222D-T226N-H227P;(t)R217S-S222E-T226P-H227P;(u)T216V-S222C;(v)R217S-S222D;(w)S222E-T226P;(x)R217S-S222C-T226P-H227P;(y)T216V-T226P-H227P;(Z)T216V-S222D-H227P;(aa)T226N-H227P;(bb)S222D-T226N-H227P;(cc)R217S-S222E-T226N;(dd)R217S-T226N-H227P;(ee)R217S-S222E-T226N-H227P;(ff)T216V-R217S-H227P;(gg)T216V-S222E-T226P-H227P;(hh)T216V-S222C-T226N;(ii)R217S-T226P-H227P;(jj)T216V-T226P;(kk)S222E-T226N-H227P;(ll)S222E-H227P;(mm)R217S-S222E-T226P;(nn)R217S-T226P;(oo)T216V-S222D;(pp)R217S-S222C-H227P;(qq)T216V-S222E-T226N-H227P;(rr)S222C-T226N-H227P;(ss)T216V-R217S-S222C-T226N-H227P;(tt)R217S-S222D-T226P;及び(uu)S222D-T226N(vv)からなる群から選択される組み合わせの修飾である、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項40】
前記ポリペプチドが、前記1つ以上のアミノ酸修飾を含まないモノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチドと比較して、少なくとも約50%少ないタンパク質分解を示す、請求項35~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記ポリペプチドが、検出可能なタンパク質分解を示さない、請求項35~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ポリペプチドが、前記1つ以上のアミノ酸修飾を含まないモノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチドと比較して、増大した安定性を示す、請求項35~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
請求項35~42のいずれか一項に記載の方法によって産生された、モノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチド。
【請求項44】
a)請求項1~19のいずれか一項に記載のポリペプチドを産生するための書面の説明書と、b)1)請求項20に記載の核酸;2)請求項21又は22に記載のベクター;及び/又は3)請求項23~30のいずれか一項に記載の宿主細胞のうちの1つ以上とを含むキット。
【請求項45】
請求項1~19又は43のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む、シリンジ、カニューレ、又はカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれる2019年3月28日に出願された米国仮特許出願第62/825,448号の優先権を主張する。
【0002】
本明細書で提供されるのは、とりわけ、修飾されたヒンジ領域を有する抗体であり、本抗体は、修飾されていないヒンジ領域を有する同一の抗体と比べて、切断に対してより抵抗性であり、及び/又は増大した安定性を有する。
【背景技術】
【0003】
抗体は、特定の抗原に結合する免疫学的タンパク質である。ヒト及びマウスを含むほとんどの哺乳類において、抗体は、対を成す重及び軽ポリペプチド鎖から構成される。各鎖は、可変(Fv)及び定常(Fc)領域と称される2つの別個の領域からなる。軽鎖及び重鎖Fv領域は分子の抗原結合決定因子を含有し、標的抗原の結合に関与する。Fc領域は抗体のクラス(又はアイソタイプ)(例えば、IgG)を定義し、重要な生化学的事象を誘発するためにいくつかの天然タンパク質の結合に関与する。重鎖の定常領域はさらに、CH1、ヒンジ領域、CH2及びCH3と呼ばれる4つのより小さいドメインに分けることができる。定常領域の一部であるFc領域は、いくつかの重要な細胞機能に関わる。一般に、Fc領域はCH2及びCH3のみを含むと定義され、ヒンジ領域の一部も包含し得る。
【0004】
IgGアイソタイプの抗体は、極めて柔軟な分子である。実際、IgGの生物学的機能は、非常に特異的且つ制御された変形方法を必要とする。IgG分子の内部柔軟性に主として関与する構造は、定常領域の第1ドメイン(CH1)と第2ドメイン(CH2)との間に位置し、ヒンジ領域と呼ばれる。ヒンジは、それぞれ上部、中部及び下部ヒンジである3つのペプチド領域に分けることができる(Brekke et al.,1995,Immunol Today 16:85-90)。生化学的及び構造的研究によって、柔軟性を制御し、エフェクター機能を調節する重要な構造要素として、抗体のヒンジ領域が指摘されている。IgG1b12の結晶構造(Saphire et al.,2001,Science 293:1155-1159及びSaphire et al.,2002,Journal of Molecular Biology,319(1):9-18)は、抗体内の極端なドメイン間柔軟性を示す極度の非対称を明らかにした。b12の構造はヒンジの別の特徴であるその脆弱さを明らかにした;b12の構造は、抗体ヒンジ特性についての予備的知識と一致して、ヒンジ領域における広範な損傷を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、組換え抗体が宿主細胞において発現される際、多くの場合、抗体ヒンジ領域において著しいタンパク質分解的切断(すなわち、クリッピング)事象が観察されることは、意外なことではない。このような切断は抗体産生プロセスの効率を低下させ、機能性免疫グロブリンの力価の低下をもたらす。したがって、必要とされるのは、産生及び精製プロセス中に宿主細胞発現抗体のヒンジ領域におけるタンパク質分解的クリッピングの量を低減するための改良された組成物及び方法である。本明細書に開示される主題はこれらの必要性に対処し、付加的な利益も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で提供されるのは、とりわけ、産生及び精製中にプロテアーゼ媒介性の切断(すなわち、クリッピング)が低減されるか又は存在しない、抗体ヒンジ領域内のアミノ酸配列が変更された天然に存在しない改変モノクローナル抗体と、その産生方法とである。開示される方法、改変抗体、及び組換え宿主細胞は、開示される変更されたヒンジ領域アミノ酸配列を含有しない、及び/又は本明細書に開示される方法に従って使用されない抗体と比較して、増大された抗体の産生及び/又は精製をもたらす。
【0007】
したがって、いくつかの態様において、本明細書で提供されるのは、ポリペプチドのタンパク質分解を低減する1つ以上のアミノ酸修飾を含むヒンジ領域を含むモノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、IgG1抗体軽鎖ポリペプチドをさらに含む。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、修飾は、アミノ酸位置216、217、222、226、及び/又は234のうちの1つ以上における修飾を含み、アミノ酸位置は、配列番号1における番号付けに従って番号付けされる。いくつかの実施形態では、修飾は、216T若しくはV;217T若しくはS;222C、D、若しくはE;226N若しくはP;及び/又は234Rのうちの1つ以上を含む。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、修飾は、227位における修飾をさらに含む。いくつかの実施形態では、修飾は227Pを含む。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、修飾は、216位における修飾と、アミノ酸位置222、226、227、及び/又は234における1つ以上の修飾とを含む。いくつかの実施形態では、修飾は、216Tと、222C、D、若しくはE;226N若しくはP;227P;及び/又は234Rのうちの1つ以上とを含む。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、修飾は、217位における修飾と、アミノ酸位置222、226、227、及び/又は234における1つ以上の修飾とを含む。いくつかの実施形態では、修飾は、217Tと、222C、D、若しくはE;226N若しくはP;227P;及び/又は234Rのうちの1つ以上とを含む。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、修飾は、(a)R217S-T226N;(b)R217S-S222C;(c)T216V-R217S-T226N;(d)S222C-H227P;(e)R217S-S222E-H227P;(f)T216V-R217S-S222C-T226P;(g)T226P-H227P;(h)R217S-S222C-T226P;(i)T216V-S222D-T226P;(j)T216V-S222C-T226P-H227P;(k)T216V-S222E-T226N;(l)T216V-S222C-H227P;(m)R217S-S222C-T226N;(n)S222C-T226P-H227P;(o)T216V-S222C-T226N-H227P;(p)R217S-S222D-T226P-H227P;(q)T216V-H227P;(r)S222E-T226P-H227P;(s)R217S-S222D-T226N-H227P;(t)R217S-S222E-T226P-H227P;(u)T216V-S222C;(v)R217S-S222D;(w)S222E-T226P;(x)R217S-S222C-T226P-H227P;(y)T216V-T226P-H227P;(Z)T216V-S222D-H227P;(aa)T226N-H227P;(bb)S222D-T226N-H227P;(cc)R217S-S222E-T226N;(dd)R217S-T226N-H227P;(ee)R217S-S222E-T226N-H227P;(ff)T216V-R217S-H227P;(gg)T216V-S222E-T226P-H227P;(hh)T216V-S222C-T226N;(ii)R217S-T226P-H227P;(jj)T216V-T226P;(kk)S222E-T226N-H227P;(ll)S222E-H227P;(mm)R217S-S222E-T226P;(nn)R217S-T226P;(oo)T216V-S222D;(pp)R217S-S222C-H227P;(qq)T216V-S222E-T226N-H227P;(rr)S222C-T226N-H227P;(ss)T216V-R217S-S222C-T226N-H227P;(tt)R217S-S222D-T226P;及び(uu)S222D-T226N(vv)からなる群から選択される組み合わせの修飾である。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、前記ポリペプチドは、前記1つ以上のアミノ酸修飾を含まないモノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチドと比較して、少なくとも約50%少ないタンパク質分解を示す。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、前記ポリペプチドは、検出可能なタンパク質分解を示さない。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、ポリペプチドは、シグナル配列をコードするポリペプチドをさらに含む。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、ポリペプチドは、担体タンパク質をコードするポリペプチドをさらに含んだ。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、担体タンパク質をコードするポリペプチドは、シグナル配列をコードするポリペプチドに隣接する。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、担体タンパク質は、CBH1又はその断片を含む。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、抗体は、抗RSウイルス(RSV)抗体、抗エボラウイルス抗体、抗凝集βアミロイド(Aβ)抗体、抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体、抗単純ヘルペスウイルス(HSV)抗体、抗精子抗体(例えば、抗ヒト避妊抗原(anti-human contraceptive antigen)(HCA)抗体)、又は抗HER2/neu抗体である。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、ポリペプチドは、前記1つ以上のアミノ酸修飾を含まないモノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチドと比較して、増大した安定性を示す。
【0008】
他の態様では、本明細書で提供されるのは、本明細書に開示されるポリペプチドのいずれかをコードする核酸である。またさらなる態様では、本明細書で提供されるのは、本明細書に開示される核酸のいずれかをコードするベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、プロモーターをコードする核酸配列をさらに含む。
【0009】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、本明細書に開示されるポリペプチドのいずれか、本明細書に開示される核酸のいずれか、又は本明細書に開示されるベクターのいずれかを含む宿主細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳類宿主細胞、細菌宿主細胞、及び真菌宿主細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、哺乳類細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。いくつかの実施形態では、細菌細胞は、大腸菌(E.coli)細胞である。いくつかの実施形態では、真菌細胞は、酵母細胞又は糸状菌細胞である。いくつかの実施形態では、酵母細胞は、サッカロミセス属(Saccharomyces)の種である。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、真菌細胞は、トリコデルマ属(Trichoderma)の種、アオカビ属(Penicillium)の種、フミコラ属(Humicola)の種、クリソスポリウム属(Chrysosporium)の種、グリオクラジウム属(Gliocladium)の種、コウジカビ属(Aspergillus)の種、フザリウム属(Fusarium)の種、ケカビ属(Mucor)の種、アカパンカビ属(Neurospora)の種、ボタンタケ属(Hypocrea)の種;マイセリオフトラ(Myceliophthora)の種、及びエメリセラ属(Emericella)の種からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、真菌細胞は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ハルチアナム(Trichoderma harzianum)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・グリセア(Humicola grisea)、クリソスポリウム・ルクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、コウジカビ(Aspergillus oryzae)、クロカビ(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachi)、アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、ショウユコウジカビ(Aspergillus sojae)、マイセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、及びアワモリコウジカビ(Aspergillus awamori)からなる群から選択される。
【0010】
さらなる態様では、本明細書で提供されるのは、本明細書に開示されるポリペプチドのいずれかを産生するための方法であって、本明細書に開示される宿主細胞のいずれかを、ポリペプチドの産生に適した条件下で培養することを含む方法である。いくつかの実施形態では、この方法は、ポリペプチドを単離することをさらに含む。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、前記ポリペプチドは、前記1つ以上のアミノ酸修飾を含まないモノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチドと比較して、少なくとも約50%少ないタンパク質分解を示す。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、前記ポリペプチドは、検出可能なタンパク質分解を示さない。
【0011】
いくつかの態様において、本明細書で提供されるのは、タンパク質分解に対するその抵抗性を増大させるためにモノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチドを修飾する方法であって、ポリペプチドのヒンジ領域内の1つ以上のアミノ酸残基を修飾することを含む方法である。いくつかの実施形態では、修飾は、アミノ酸位置216、217、222、226、及び/又は233のうちの1つ以上における修飾を含み、アミノ酸位置は、配列番号1における番号付けに従って番号付けされる。いくつかの実施形態では、修飾は、216T若しくはV;217S;222C、D、若しくはE;226N若しくはP;及び/又は234Rのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、修飾は、227Pをさらに含む。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、修飾は、(a)R217S-T226N;(b)R217S-S222C;(c)T216V-R217S-T226N;(d)S222C-H227P;(e)R217S-S222E-H227P;(f)T216V-R217S-S222C-T226P;(g)T226P-H227P;(h)R217S-S222C-T226P;(i)T216V-S222D-T226P;(j)T216V-S222C-T226P-H227P;(k)T216V-S222E-T226N;(l)T216V-S222C-H227P;(m)R217S-S222C-T226N;(n)S222C-T226P-H227P;(o)T216V-S222C-T226N-H227P;(p)R217S-S222D-T226P-H227P;(q)T216V-H227P;(r)S222E-T226P-H227P;(s)R217S-S222D-T226N-H227P;(t)R217S-S222E-T226P-H227P;(u)T216V-S222C;(v)R217S-S222D;(w)S222E-T226P;(x)R217S-S222C-T226P-H227P;(y)T216V-T226P-H227P;(Z)T216V-S222D-H227P;(aa)T226N-H227P;(bb)S222D-T226N-H227P;(cc)R217S-S222E-T226N;(dd)R217S-T226N-H227P;(ee)R217S-S222E-T226N-H227P;(ff)T216V-R217S-H227P;(gg)T216V-S222E-T226P-H227P;(hh)T216V-S222C-T226N;(ii)R217S-T226P-H227P;(jj)T216V-T226P;(kk)S222E-T226N-H227P;(ll)S222E-H227P;(mm)R217S-S222E-T226P;(nn)R217S-T226P;(oo)T216V-S222D;(pp)R217S-S222C-H227P;(qq)T216V-S222E-T226N-H227P;(rr)S222C-T226N-H227P;(ss)T216V-R217S-S222C-T226N-H227P;(tt)R217S-S222D-T226P;及び(uu)S222D-T226N(vv)からなる群から選択される組み合わせの修飾である。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、前記ポリペプチドは、前記1つ以上のアミノ酸修飾を含まないモノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチドと比較して、少なくとも約50%少ないタンパク質分解を示す。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、前記ポリペプチドは、検出可能なタンパク質分解を示さない。本明細書に開示される実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、前記ポリペプチドは、前記1つ以上のアミノ酸修飾を含まないモノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチドと比較して、増大した安定性を示す。
【0012】
さらなる態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に開示される方法のいずれかによって産生されたモノクローナルIgG1抗体重鎖ポリペプチドである。
【0013】
またさらなる態様において、本明細書で提供されるのは、a)本明細書に開示されるポリペプチドのいずれかを産生するための書面の説明書と、b)1)本明細書に開示される核酸のいずれか;2)本明細書に開示されるベクターのいずれか;及び/又は3)本明細書に開示される宿主細胞のいずれかのうちの1つ以上とを含むキットである。
【0014】
別の態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に開示されるポリペプチドのいずれかを含むシリンジ、カニューレ、又はカテーテルである。
【0015】
本明細書に記載した態様と実施形態はそれぞれ、その実施形態又は態様の文脈により明示的に又は明確に除外されない限り、共に使用することが可能である。
【0016】
本明細書全体を通して、様々な特許、特許出願、及び他の種類の刊行物(例えば、学術雑誌論文、電子データベースエントリなど)が引用されている。本明細書に引用されたすべての特許、特許出願、及び他の刊行物の開示の全体を、すべての目的のために、参照によって本明細書に組み込む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】Synagis HC重鎖SELライブラリー構築のために使用されるPエントリークローンを示す。
【0018】
【
図2】発現ベクターpTTTpyr2-ISceI-Synagis HC_Geneart_SEL重鎖を示す。
【0019】
【
図3】c2G4_HC3 SELライブラリー構築のために使用されるPエントリークローンを示す。
【0020】
【
図4】c2G4_HC3重鎖を産生するための発現ベクターを示す。
【0021】
【
図5】c2G4_LC2軽鎖の発現カセットを示す。
【0022】
【
図6】改変C2G4バリアント対野生型C2G4対照試料について、ヒンジクリッピングの減少を示すグラフを示す。x軸はバンドの最終合計を示し、これは、計算されたクリッピングの範囲が有意なバンドに基づき、ノイズには基づかないことを確認するために使用される。描かれた実線はWT試料の平均デルタクリッピングであり、破線は、平均WTのプラス及びマイナス1標準偏差である。
【0023】
【
図7】改変バリアント対野生型対照試料について、ヒンジクリッピングの減少を強調するグラフを示す。x軸はバンドの最終合計を示し、これは、計算されたクリッピングの範囲が有意なバンドに基づき、ノイズには基づかないことを確認するために使用される。四角形のデータ点は、プールされたWT-ヒンジ試料についてのものである。各データ点は、回収後にプールされたが、その後に独立して精製及びアッセイされた生物学的複製を表す。「+」のデータ点は、抗原とのより強力な結合相互作用を有する既知のバリアントであるHC:W105Fについてのものである。このバリアントは、野生型ヒンジ配列を有する。三角形のデータ点は、精製及びアッセイされる前にプールされなかった生物学的WT-ヒンジ複製である。円形のデータ点は、表4に記載される改変バリアントを表す。
【0024】
【
図8】改変バリアント対野生型ヒンジ対照試料について、ヒンジクリッピングの減少を示すグラフを示す。x軸はバンドの最終合計を示し、これは、計算されたクリッピングの範囲が有意なバンドに基づき、ノイズには基づかないことを確認するために使用される。
【0025】
【
図9】抗RSV及びC2G4のヒンジ領域のための配列アライメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書に開示される本発明は、1つには、野生型(すなわち、天然に存在する)抗体ヒンジ領域ドメインが1つ以上の代替の置換アミノ酸を含むように改変されると、望ましくない抗体切断が排除又は低減されるという本発明者らの知見に基づいている。
【0027】
したがって、本明細書で提供されるのは、DNA構築物、ベクター、抗体、DNA構築物及び/又は切断抵抗性の抗体を発現する宿主細胞、並びに分泌を増強するため、及び/又は不必要な抗体切断を防止若しくは低減するための方法である。より具体的には、そしていくつかの非限定的な態様では、宿主細胞の産生中に抗体の切断(すなわち、クリッピング)を防止又は低減するために、改変抗体ヒンジ配列が抗体中に含められている。本明細書に開示される抗体は、本明細書に開示される改変ヒンジ配列を含まない抗体と比較して、より良好な分泌、安定性、及び/又は精製を示す。したがって、本開示は、抗体産生、特に治療用タンパク質の産生のための代替の改良された方法を提供し、これは、不必要な切断産物による汚染のリスクが制限された高レベルの精製抗体をもたらす。
【0028】
I.定義
用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、その大きさにかかわらず、20種の天然のアミノ酸のいずれかを含有するあらゆるポリマーを指すものとする。用語「タンパク質」は、比較的に大きいタンパク質に関して使用されることが多く、「ペプチド」は、小さいポリペプチドに関して使用されることが多いが、この分野におけるこれらの用語の使用は、しばしば重複する。したがって、用語「ポリペプチド」は、他に注記のない限り、一般に、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。本明細書では、アミノ酸残基についての従来の1文字又は3文字略号が使用される。
【0029】
用語「核酸」又は「ポリヌクレオチド」は、DNA、RNA、一本鎖又は二本鎖及びその化学的改変物を包含する。用語「核酸」と「ポリヌクレオチド」は、本明細書では互換的に使用することができる。遺伝暗号は縮重しているので、ある特定のアミノ酸をコードするために2つ以上のコドンが使用されている可能性があり、本発明の対象物は、ある特定のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを包含する。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「抗体(単数)」及び「抗体(複数)」は、モノクローナル抗体、多特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化(camelised)抗体、キメラ抗体、単鎖Fv(scFv)、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、Fab断片、F(ab’)断片、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書に開示される改変抗体に対する抗Id抗体を含む)、並びに上記のいずれかのエピトープ結合断片を指す。特に、抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、すなわち抗原結合部位を含有する分子を含み、これらの断片は、限定はされないが、Fc領域又はその断片を含む別の免疫グロブリンドメインに融合されていても、されたいなくてもよい。本明細書に概説されるように、用語「抗体(単数)」及び「抗体(複数)」には、特に、本明細書に記載されるヒンジ領域バリアント、全長抗体、及び免疫グロブリンの免疫学的に活性な断片と又は他のタンパク質と融合された本明細書に記載される修飾ヒンジを含むヒンジバリアント-融合物が含まれる。このようなFcバリアント-融合物は、限定はされないが、scFv-Fc融合物、可変領域(例えば、VL及びVH)-Fc融合物、scFv-scFv-Fc融合物を含む。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであり得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「ヒンジ領域」は、一般に、ヒトIgG1の212~238(EU番号付け)又は222~251(Kabat番号付け)の区間と定義される。ヒンジはさらに、上部、中部及び下部ヒンジである3つの別個の領域に分けることができる。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、配列番号1に示される配列のアミノ酸216~238の区間と定義される。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、いくつもの公的に入手可能である配列アライメントプログラムを用いて、IgG1配列又は配列番号1に示される配列と整列され得る。
【0032】
抗体産生との関連で本明細書において互換的に使用される用語「タンパク質分解」、「タンパク質分解的な分解」、「切断」、及び「クリッピング」は、一般的に組換え宿主細胞(例えば、糸状菌宿主細胞)における抗体発現及び産生の望ましくない副産物であると考えられるより小さいポリペプチドへの、抗体ポリペプチド成分(例えば、抗体重鎖ポリペプチド)の不必要な分解を指す。いくつかの実施形態では、分解は、抗体重鎖ヒンジ領域に位置するペプチド結合の、酵素的又は化学的機構による切断によって起こり得る。代替の実施形態では、分解は、相同タンパク質又は異種タンパク質間の架橋の切断によって起こり得る。いくつかの実施形態では、タンパク質分解は、宿主細胞(例えば、真核生物、例えば、哺乳類又は真菌宿主細胞)における抗体発現の間に起こる。他の実施形態では、タンパク質分解は、抗体の単離及び/又は精製の間、或いはその後に起こる。
【0033】
「安定性」及び「安定した」は、所与の製造、調製、輸送及び貯蔵条件下における、凝集、分解又は断片化に対する製剤中の改変抗体の抵抗性を指す。改良された安定性を有する改変抗体は、所与の製造、調製、輸送及び貯蔵件下において生物活性を保持することとなる。改変抗体の安定性は、高速サイズ排除クロマトグラフィ(HPSEC)、静的光散乱(SLS)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、円二色性(CD)、尿素アンフォールディング技術、内因性トリプトファン蛍光、示差走査熱量測定、及び/又はANS結合技術により測定されるように、凝集、分解又は断片化の度合いによって評価することができる。改変抗体の安定性は、同一条件下で同等の分子と比較され得る。また改変抗体の全体的な安定性は、単離した抗原分子又はそれを発現する細胞を用いて、例えばELISA及びラジオイムノアッセイを含む種々の免疫学的アッセイによって評価することもできる。
【0034】
ポリペプチドに関する用語「野生型の」、「野生型」、「親の」、又は「参照基準の」は、1つ以上のアミノ酸位置での人為的な置換、挿入、又は欠失を含まない、天然に存在するポリペプチドを指す。同様に、ポリヌクレオチドに関する用語「野生型の」、「野生型」、「親の」、又は「参照基準の」は、人為的なヌクレオシド変化を含まない、天然に存在するポリヌクレオチドを指す。しかし、野生型の、親の、又は参照基準のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、天然に存在するポリヌクレオチドに限定されず、野生型の、親の、又は参照基準のポリペプチドをコードするあらゆるポリヌクレオチドを包含する。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「天然に存在しない」は、自然界には見られないあらゆるもの(例えば、研究室で産生された組換え型の核酸及びタンパク質配列)、例えば野生型の核酸及び/又はアミノ酸配列の改変物を指す。いくつかの実施形態では、天然に存在しないポリペプチドは、相当する野生型の又は天然に存在するアミノ酸配列には見られないアミノ酸置換(すなわち変異)を含有する。
【0036】
本明細書で使用する場合、ポリペプチドの「誘導体」又は「バリアント」は、1つ以上のアミノ酸の、C末端及びN末端の一方又は両方への付加、アミノ酸配列中の1つ又はいくつかの異なる部位での1つ以上のアミノ酸の置換、ポリペプチドの一方若しくは両方の末端での又はアミノ酸配列中の1つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の欠失、又はアミノ酸配列中の1つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の挿入によって、前駆ポリペプチド(例えば、天然のポリペプチド)から得られるポリペプチドを意味する。
【0037】
本明細書で使用する場合、「バリアントポリヌクレオチド」は、バリアントポリペプチドをコードする、又は親のポリヌクレオチドとの指定された度合いの相同性/同一性を有する、又はストリンジェントな条件下で親のポリヌクレオチド又はその相補体とハイブリッド形成する。適切には、バリアントポリヌクレオチドは、親のポリヌクレオチド又は親のポリヌクレオチドの相補体との少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、さらには少なくとも99%のヌクレオチド配列同一性を有する。同一性(パーセント)を決定するための方法は、当技術分野で公知である。
【0038】
用語「由来する」は、用語「に起因する」、「から得られる」、「から入手可能である」、「から単離される」、及び「から作製される」を包含し、一般に、ある指定された材料が、別の指定された材料に、その起源を見いだすか、又は別の指定された材料に関して説明することができる特徴を有することを示す。
【0039】
「制御配列」は、本明細書では、ポリヌクレオチド又は対象となるポリペプチドの発現にとって必要又は好都合であるすべての構成要素を含むと定義される。各制御配列は、ポリペプチドをコードする核酸配列に対して天然又は外来であり得る。こうした制御配列には、限定はされないが、リーダー配列、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、及び転写ターミネーターが含まれる。最低限、制御配列は、プロモーターと、転写及び翻訳停止シグナルを含む。制御配列は、制御配列とポリペプチドをコードする核酸配列のコード領域との連結を容易にする特定の制限部位を導入する目的で、リンカーを提供することができる。
【0040】
「作動可能に連結された」は、本明細書では、制御配列がポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの発現を誘導又は調節するように、制御配列がDNA配列中のコード配列などのポリヌクレオチド又は対象となるポリペプチドと機能的な関係で(すなわち、相対的な位置に)適切に置かれた配置と定義される。
【0041】
用語「DNA構築物」は、好適な宿主におけるタンパク質の発現を引き起こすことが可能な好適な制御配列に作動可能に連結されるDNA配列を意味する。こうした制御配列には、転写を引き起こすためのプロモーター、転写を制御するための任意のオペレーター配列、mRNA上の好適なリボソーム結合部位をコードする配列、エンハンサー、及び転写及び翻訳の停止を制御する配列が含まれ得る。
【0042】
用語「融合DNA構築物」又は「融合核酸」は、共に作動可能に連結され、且つ融合ポリペプチドをコードする、5’~3’のいくつかのポリヌクレオチド配列(例えば、限定はされないが、シグナル配列をコードするDNA分子、担体タンパク質をコードするDNA分子、KEX2部位をコードするDNA分子、及び対象となるポリペプチドをコードするDNA分子)を含む核酸を指す。
【0043】
「ベクター」は、核酸を1つ以上の細胞型に導入するように設計されたポリヌクレオチド配列を指す。ベクターには、クローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、ファージ粒子、カセットなどが含まれる。
【0044】
「発現ベクター」は、異種DNA断片を外来細胞に組み込み発現させる能力を有するベクターを指す。多くの原核生物及び真核生物発現ベクターが、市販品として入手可能なである。
【0045】
「プロモーター」又は「プロモーター配列」は、コード領域などの対象となるポリヌクレオチドの発現のための宿主細胞によって認識される核酸配列である。一般に、プロモーター配列は、対象となるポリヌクレオチドの発現を媒介する転写制御配列を含有する。プロモーターは、変異、切断型、及びハイブリッドプロモーターを含めて、選択される宿主細胞において転写活性を示すあらゆる核酸配列であり得、宿主細胞に対して相同の又は異種の細胞外又は細胞内のポリペプチドをコードする遺伝子から得ることができる。
【0046】
用語「シグナル配列」は、タンパク質を細胞からの分泌のための分泌系に誘導する、タンパク質のアミノ末端のアミノ酸の配列を指す。シグナル配列は、タンパク質の分泌の前に、タンパク質から切断される。ある種の場合には、シグナル配列は、「シグナルペプチド」又は「リーダーペプチド」と称することができる。シグナル配列の定義は、機能的なものである。成熟形態の細胞外タンパク質は、シグナル配列を欠いている(これは、分泌プロセス中に切除される)。
【0047】
本明細書で使用される用語「担体タンパク質」は、宿主細胞からのポリペプチドの分泌に対して機能する又はフォールディング及び分泌を容易にするタンパク質を指す。例示的な担体タンパク質について、以下でより詳細に論じる。
【0048】
対象細胞、核酸、ポリペプチド/酵素、又はベクターに関して使用される場合、用語「組換え型の」は、対象が、その天然の状態から改変されていることを示す。したがって、例えば、組換え型の細胞は、天然の(非組換え型の)形態の細胞内には見られない遺伝子を発現するか、又は天然の遺伝子を、自然界に見られるのとは異なるレベルで若しくは異なる条件下で発現する。組換え型の核酸は、1つ以上のヌクレオチドが天然の配列と異なり得る、及び/又は発現ベクター中で異種配列、例えば異種プロモーター、分泌を可能にするシグナル配列などに作動可能に連結されている。組換え型のポリペプチド/酵素は、1つ以上のアミノ酸が天然の配列と異なり得る、及び/又は異種配列と融合されている。抗体重鎖をコードする核酸を含むベクターは、例えば、組換え型のベクターである。
【0049】
本明細書で使用する場合、「微生物」は、細菌、真菌、ウイルス、原生動物、及び他の微生物又は顕微鏡的微生物を指す。
【0050】
「宿主株」又は「宿主細胞」は、ポリペプチド、特に本開示によって包含される組換え型の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター又はDNA構築物のための好適な宿主を意味する。具体的実施形態では、宿主株は、糸状菌細胞又は哺乳類細胞であり得る。用語「宿主細胞」には、細胞とプロトプラストとの両方が含まれる。
【0051】
用語「糸状菌」は、すべての糸状形態の真菌亜門(subdivision Eumycotina)を指す(Alexopoulos,C.J.(1962),INTRODUCTORY MYCOLOGY,Wiley,New Yorkを参照のこと)。これらの真菌は、キチン、グルカン、及び他の複合多糖から構成される細胞壁を有する栄養菌糸体を特徴とする。本明細書に開示される糸状菌は、酵母とは形態学的に、生理学的に、且つ遺伝学的異なる。糸状菌による栄養増殖は、菌糸伸長によるものであり、炭素異化は、絶対的好気性である。
【0052】
用語「培養すること」は、微生物細胞の集団を、液体又は固体の培地中で、好適な条件下で増殖させることを指す。
【0053】
ポリヌクレオチド又はポリペプチドに関する用語「異種」は、宿主細胞中に天然には存在しないポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、タンパク質は、商業的に重要な工業用タンパク質であり、いくつかの実施形態では、異種タンパク質は、治療用タンパク質である。この用語は、天然に存在する遺伝子、変異した遺伝子、及び/又は合成遺伝子によってコードされるタンパク質を包含することが意図される。
【0054】
ポリヌクレオチド又はタンパク質に関する用語「相同の」は、宿主細胞中に天然に存在するポリヌクレオチド又はタンパク質を指す。
【0055】
本明細書で使用される用語「回収される」、「単離される」、及び「分離される」は、それが関連する少なくとも1種の構成成分から取り出されたタンパク質(例えば、対象となるポリペプチド)、細胞、核酸、又はアミノ酸を指す。
【0056】
本明細書で使用する場合、細胞に関して使用される用語「形質転換された」、「安定に形質転換された」、及び「トランスジェニック」は、細胞が、そのゲノムに組み込まれた非天然の(例えば異種)核酸配列又は天然の(例えば相同の)核酸配列の追加のコピーを有するか、又は複数世代を通してして維持されるエピソームプラスミドを有することを意味する。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「発現」は、遺伝子の核酸配列に基づいてポリペプチドが産生されるプロセスを指す。このプロセスには、転写と翻訳の両方が含まれる。
【0058】
用語「分泌されたタンパク質」は、タンパク質分泌中に細胞から放出されるポリペプチドの領域を指す。
【0059】
用語「分泌」は、宿主細胞中の膜を横断するタンパク質の、細胞外空間及び周囲の培地への選択的移動を指す。
【0060】
ある種の範囲は、本明細書では、用語「約」が前に付く数値を伴って提供される。用語「約」は、本明細書では、それが前に付く厳密な数、並びにこの用語が前に付く数に近い又はほぼ同じである数についての文字による補助を提供するために使用される。ある数が、具体的に列挙された数に近い又はほぼ同じである数かどうかの決定においては、列挙されていないその近い又はほぼ同じ数も、それが存在する文脈において、具体的に列挙された数の実質的等価物を提供する数であり得る。例えば、数値に関して、用語「約」は、この用語が文脈の中で他に具体的に定義されない限り、その数値-10%~+10%の範囲を指す。
【0061】
本明細書で使用する場合、文脈によって他に明確に指示されない限り、単数の用語「a」、「an」、及び「the」には、複数の指示内容が含まれる。
【0062】
特許請求の範囲を、何らかの任意要素を除外するために起草できることにさらに留意されたい。したがって、この記述は、請求項要素の記述、又は「消極的な」限定の使用に関連して、「唯一」、「~のみ」などのような排他的な用語法の使用のための先行詞としての役割を果たすものとする。
【0063】
用語「本質的に~からなる」は、本明細書で使用する場合、この用語の後の構成成分が、組成物全体の重量に対して30%未満であり、且つ構成成分の作用又は活性に寄与又は干渉しない総量の他の公知の構成成分の存在下である組成物を指すことにも留意されたい。
【0064】
用語「~を含む」が、本明細書で使用する場合、限定はされないが、用語「~を含む」の後の構成成分を含むことを意味することにさらに留意されたい。用語「~を含む」の後の構成成分は、必要とされる又は必須であるが、構成成分を含む組成物は、他の必須ではない又は任意の構成成分をさらに含むことができる。
【0065】
用語「~からなる」が、本明細書で使用する場合、用語「~からなる」の後の構成成分を含み、且つこれに限定されることを意味することにも留意されたい。したがって、用語「~からなる」の後の構成成分は、必要とされる又は必須であり、且つ他の構成成分は組成物中には存在しない。
【0066】
本明細書全体を通して与えられるあらゆる最大数値制限には、あらゆるより低い数値制限が、あたかもこうしたより低い数値制限が本明細書に明示的に書かれているかのように含まれるものとする。本明細書全体を通して与えられるあらゆる最小数値制限には、あらゆるより高い数値制限が、あたかもこうしたより高い数値制限が本明細書に明示的に書かれているかのように含まれることとなる。本明細書全体を通して与えられるあらゆる数値範囲には、こうしたより広い数値範囲の範囲内にあるあらゆるより狭い数値範囲が、あたかもこうしたより狭い数値範囲が本明細書にすべて明示的に書かれているかのように含まれることとなる。
【0067】
本明細書で他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の技術者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。
【0068】
用語の他の定義は、本明細書全体を通して明らかとなり得る。
【0069】
II.組成物
A.改変抗体
本明細書で提供されるのは、発現及び/又は切断特性が改良された修飾ヒンジ領域を有する天然に存在しない抗体、その断片、又はそのバリアントである。修飾ヒンジ領域は、野生型抗体ヒンジと比べて、限定はされないが、安定性、柔軟性、長さ、立体構造、電荷、切断(例えば、タンパク質分解的切断)に対する抵抗性、及び疎水性を含む、ヒンジの特徴の1つ以上における変更を示し得る。本明細書に開示される修飾ヒンジ領域は、例えば、野生型ヒンジへの修飾の導入などの当技術分野において周知の方法によって生成され得る。修飾ヒンジ領域を生成するために利用され得る修飾には、限定はされないが、アミノ酸の挿入、欠失、置換、及び再配列が含まれる。前記ヒンジの修飾及び開示される修飾されたヒンジ領域は一緒に、本明細書では「ヒンジ修飾」又は単に「修飾ヒンジ」と呼ばれる。本明細書に開示される修飾ヒンジ領域は、限定はされないが、抗体及びその断片を含む、選択される分子に組み込むことができる。
【0070】
本明細書で実証されるように、修飾ヒンジを含む分子は、修飾ヒンジを除いて同じアミノ酸配列を有する分子、例えば、野生型ヒンジを含む以外は同じアミノ酸配列を有する分子などと比較して、宿主細胞の産生及び/又は精製中にタンパク質分解の低減又は排除を示し得る。本明細書で実証されるように、修飾ヒンジを含む分子は、修飾ヒンジを除いて同じアミノ酸配列を有する分子、例えば、野生型ヒンジを含む以外は同じアミノ酸配列を有する分子などと比較して、改良された安定性及び/又は貯蔵(すなわち、増大された貯蔵期間)並びに切断に対する抵抗性を有し得る。
【0071】
一実施形態では、改変抗体は少なくとも修飾ヒンジ(例えば、1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失、置換、又は再配列を含むヒンジ領域)を有することができ、前記改変抗体は、同等の分子と比べて、改良された安定性及び/又は切断に対する抵抗性を有する。
【0072】
本明細書に開示される改変抗体はヒンジ修飾を含む抗体バリアントを包含し、前記修飾は、限定はされないが、安定性、切断(例えば、タンパク質分解的切断)に対する抵抗性、柔軟性、長さ、立体構造、電荷及び疎水性を含む、ヒンジの1つ以上の特徴を変更する。また本明細書に開示される改変抗体は修飾ヒンジを含むバリアントを包含し、前記修飾ヒンジは、野生型ヒンジと比べて、限定はされないが、安定性、柔軟性、長さ、立体構造、電荷及び疎水性を含む、1つ以上の変更された特徴を示す。開示される修飾ヒンジは、例えば、野生型ヒンジへの修飾の導入などの当技術分野において周知の方法によって生成され得る。修飾ヒンジの生成において利用され得るヒンジ修飾には、限定はされないが、1つ以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、反転及び置換が含まれる。挿入及び/又欠失及び/又は置換の組み合わせも修飾ヒンジを生成するために使用され得ることは、当業者により認識されるであろう。
【0073】
特定の実施形態では、改変抗体は、ヒンジ内の少なくとも1つのアミノ酸残基の置換であるヒンジ修飾を包含する。一実施形態では、少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つ、又は少なくとも10、又は少なくとも15のアミノ酸残基がヒンジ内で置換される。一実施形態では、置換は、上部ヒンジにおいて行われる。別の実施形態では、置換は、中部ヒンジにおいて行われる。別の実施形態では、置換は、下部ヒンジにおいて行われる。さらに別の実施形態では、置換は、限定はされないが、上部ヒンジ、中部ヒンジ及び下部ヒンジを含む、2つ以上の位置において行われる。
【0074】
さらに別の実施形態では、改変抗体はヒンジ領域内に少なくとも1つの置換を含み、置換は、216、217、222、226、227、及び/又は234からなる群から選択されるアミノ酸位置(ここで、アミノ酸位置は、配列番号1における番号付けに従って番号付けされる)、或いは213位、214位、221位、223位、224位、及び/又は231位(ここで、番号付けシステムは、Kabatに記載されるようなEUインデックスのものである)、或いは223位、224位、232位、236位、237位、及び/又は244位(ここで、番号付けシステムは、Kabatに記載されるようなKabatインデックスのものである)に位置する。ヒンジ修飾の任意の組み合わせは表1に記載されており、実施形態として特に企図される。
【表1】
【0075】
一実施形態では、本明細書に開示される改変抗体は、野生型ヒンジと比べてヒンジの柔軟性が変更(例えば、増大又は減少)された修飾ヒンジを含む。ヒンジの柔軟性が変更された修飾ヒンジは、野生型ヒンジへの特定の修飾の組込みによって生成され得る。ヒンジの柔軟性を増大させるヒンジ修飾には、限定はされないが、柔軟性を増大させる1つ以上のアミノ酸残基(例えば、グリシン)による1つ以上のアミノ酸残基の置換、ジスルフィド結合を形成することができないアミノ酸残基(例えば、セリン、アラニン、グリシン)による、ジスルフィド結合の形成に関与するシステインの置換、高度の局所柔軟性を可能にする1つ以上のアミノ酸残基(例えば、グリシン)の挿入、及びポリペプチドの剛性を増大させる1つ以上のアミノ酸残基(例えば、プロリン)の欠失が含まれる。ヒンジの柔軟性を減少させるヒンジ修飾には、限定はされないが、ポリペプチドの剛性を増大させる1つ以上のアミノ酸残基(例えば、プロリン)による1つ以上のアミノ酸残基の置換、ジスルフィド結合を形成することができるアミノ酸残基(例えば、システイン)による、ジスルフィド結合を形成することができないアミノ酸残基(例えば、セリン、アラニン、グリシン)の置換、ポリペプチドの剛性を増大させる1つ以上のアミノ酸残基(例えば、プロリン)の挿入、及び柔軟性を増大させる1つ以上のアミノ酸残基(例えば、グリシン)の欠失が含まれる。
【0076】
具体的な実施形態では、本明細書に開示される改変抗体は、野生型ヒンジと比べてヒンジの立体構造が変更された修飾ヒンジを含む。ヒンジの立体構造が変更された修飾ヒンジは、特定の修飾を野生型ヒンジに組み込むことによって生成することができる。ヒンジの立体構造を変更するヒンジ修飾には、限定はされないが、より大きくより嵩高の側鎖を有するアミノ酸残基(例えば、トリプトファン、プロリン)に対する、小さい側鎖を有する1つ以上のアミノ酸残基(例えば、アラニン、グリシン)の置換、小さい側鎖を有するアミノ酸残基(例えば、アラニン、グリシン)に対する、より大きくより嵩高の側鎖を有する1つ以上のアミノ酸残基(例えば、トリプトファン、プロリン)の置換、ヒンジ内での2つ以上のアミノ酸残基の反転、大きい又は嵩高の側鎖を有する1つ以上のアミノ酸残基(例えば、トリプトファン、プロリン)の挿入又は欠失が含まれる。加えて、ヒンジの長さ及び/又は柔軟性を変更するヒンジ修飾も、立体構造の変更をもたらし得る。
【0077】
具体的な実施形態では、本明細書に開示される改変抗体は、IgG2aラクダ様修飾を有する修飾ヒンジを含む。ラクダ様修飾を有する修飾ヒンジは、野生型ヒンジの一部をラクダIgG2aヒンジの一部で置換することによって生成され得る。代替的に、又は任意選択的に、ラクダ様修飾を有する修飾ヒンジは、ヒンジ内の1つ以上のアミノ酸残基を、ラクダIgG2aヒンジ内で見出される対応するアミノ酸残基で置換することによって生成することができる。ラクダ様修飾を有する修飾ヒンジは、付加的なアミノ酸置換及び/又は挿入及び/又は欠失を組み込むこともできる。加えて、ヒンジのラクダ様修飾は、限定はされないが、長さ、柔軟性、立体構造、電荷、及び疎水性を含む、ヒンジの特徴を変更することができる。
【0078】
別の実施形態では、本明細書に開示される改変抗体は、野生型ヒンジと比べて電荷が変更された修飾ヒンジを含む。電荷が変更された修飾ヒンジは、特定の修飾を野生型ヒンジに組み込むことによって生成することができる。ヒンジの電荷を変更するヒンジ修飾には、限定はされないが、電荷を有するアミノ酸残基(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン)に対する、中性電荷を有する1つ以上のアミノ酸残基(例えば、バリン、トレオニン)の置換、中性電荷(例えば、バリン、トレオニン)又は負電荷(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)を有するアミノ酸残基に対する、正電荷を有する1つ以上のアミノ酸残基(例えば、リジン、アルギニン)の置換、中性電荷(例えば、バリン、トレオニン)又は正電荷(例えば、リジン、アルギニン)を有するアミノ酸残基に対する、負電荷を有する1つ以上のアミノ酸残基(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)の置換、及び1つ以上の荷電アミノ酸残基(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン)の挿入又は欠失が含まれる。
【0079】
別の具体的な実施形態では、本明細書に開示される改変抗体は、野生型ヒンジと比べて、疎水性が変更(例えば、増大又は減少)された修飾ヒンジを含む。疎水性が変更された修飾ヒンジは、特定の修飾を野生型ヒンジに組み込むことによって生成することができる。ヒンジの疎水性を変更するヒンジ修飾には、限定はされないが、親水性アミノ酸残基(例えば、セリン、トレオニン、チロシン)に対する1つ以上の疎水性アミノ酸残基(例えば、バリン、ロイシン)の置換、疎水性アミノ酸残基(例えば、バリン、ロイシン)に対する1つ以上の親水性アミノ酸(例えば、セリン、トレオニン、チロシン)の置換、及び1つ以上の疎水性又は親水性アミノ酸残基(例えば、バリン、ロイシン、セリン、トレオニン、チロシン)の挿入又は欠失が含まれる。
【0080】
任意の所与のヒンジ修飾がヒンジの2つ以上の特徴を変更し得ることは、当業者により認識されるであろう。例えば、1つ以上のプロリン残基のヒンジへの付加は、ヒンジの長さを増大させ、それと同時に、潜在的に柔軟性を減少させるヒンジ修飾をもたらす。同様に、アスパラギン酸によるグリシン残基の置換は、ヒンジの電荷及び疎水性の両方を変更することができる。他の組み合わせは上記に記載されており、さらに他の組み合わせは、当業者に明らかであろう。
【0081】
特に、任意のヒンジ修飾を行う前に、ヒンジ内に存在するアミノ酸残基の性質を分析することを選択し得ることが企図される。当業者は、場合により、ヒンジの1つ以上の特徴(例えば、柔軟性、長さ、立体構造、電荷及び疎水性)が野生型ヒンジと比べて変更されるように、対象となる抗体がヒンジ内に適切なアミノ酸配列を既に有していることを認識するであろう。この状況では、付加的なヒンジ修飾は、さらなる修飾が望ましい場合にのみ導入されることとなる。上記及び表1に記載される特定のアミノ酸残基に加えて、ヒンジの特徴を変化させるために、いくつかの付加的なアミノ酸残基がヒンジにおいて挿入、欠失及び/又は置換され得ることは、当業者には明らかであろう。類似の特性を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野において定義されており、いくつかの例が表2に示される。
【表2】
【0082】
特に、上記のヒンジの前記修飾のために保存的アミノ酸置換が行われ得ることが企図される。「保存的アミノ酸置換」が、機能的に等価なアミノ酸を置換するアミノ酸置換を指すことは、当技術分野において周知である。保存的アミノ酸変化は、結果として得られるペプチドのアミノ酸配列にサイレントな変化をもたらす。例えば、同様の極性を有する1つ以上のアミノ酸は機能的等価物として作用し、ペプチドのアミノ酸配列内にサイレントな変更をもたらす。電荷中性であり、且つより小さい残基で残基を置き換える置換も、残基が異なる群のものであっても「保存的置換」と考えることができる(例えば、より小さいイソロイシンによるフェニルアラニンの置換)。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野において定義されている。保存的アミノ酸置換のいくつかのファミリーは、表2(上記)に示される。
【0083】
用語「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸類似体又はバリアントの使用も指す。表現型的にサイレントなアミノ酸置換を行う方法に関するガイダンスは、Bowie et al.,“Deciphering the Message in Protein Sequences:Tolerance to Amino Acid Substitutions,”(1990,Science 247:1306-1310)において提供される。
【0084】
本明細書に開示される改変抗体の安定性は、その生物学的機能及び/又は活性を変更することができるポリペプチドの様々な異なる特徴を測定することによって調べることができる。このような特徴の非限定的な例としては、凝集、断片化、タンパク質修飾(例えば、アセチル化、グリコシル化、メチル化、リン酸化)の有無、生物活性、及びマルチサブユニット複合体の解離が挙げられる。一般的に、これらの特徴の1つ以上は、一連の所定の条件下で、ある期間にわたってモニター(すなわち、測定)される。開示される改変抗体の安定性は、ポリペプチドの安定性を決定するために当技術分野において知られているインビトロ安定性アッセイを用いて特徴付けることができる。このようなアッセイには、限定はされないが、ポリペプチドのサイズ及び/又は活性をモニターするアッセイを用いてポリペプチドの完全性を経時的にモニターすることが含まれる。改変抗体の安定性は、溶液中において又は固体として調べることができる。加えて、安定性は、限定はされないが金属イオン及びプロテアーゼなどの、抗体の安定性に影響を与えることが知られている成分の存在下でモニターすることができる。
【0085】
一実施形態では、本明細書に開示される改変抗体は、修飾ヒンジを含む抗体又はFc融合タンパク質であり、前記修飾ヒンジは、修飾ヒンジを欠いている同等の分子と比べて、安定性を改良するか、又は切断に対して抵抗性であるか、又は切断する傾向が少ない。このような抗体には、修飾ヒンジを生成するように修飾され得るヒンジを含有するIgG分子が含まれる。したがって、本明細書に開示される改変抗体は、好ましくは特異的に抗原に結合する(すなわち、特異的な抗原-抗体結合をアッセイするために当技術分野において周知のイムノアッセイにより決定されるように、非特異的結合を競合排除する)、修飾ヒンジを組み込んだ任意の抗体分子を含むことができる。このような抗体には、限定はされないが、ポリクローナル、モノクローナル、二重特異性、多特異性、ヒト、ヒト化、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、ジスルフィド連結Fv、並びに、VL若しくはVHドメイン、又はさらに抗原に特異的に結合する相補性決定領域(CDR)のいずれかを含有する、特定の場合にはヒンジ領域含有ポリペプチドを含有するか又はそれに融合するように改変された断片が含まれる。
【0086】
また本明細書には、改良された安定性を有する改変抗体が開示される。特定の実施形態では、修飾ヒンジ領域を含む抗体は、同等の分子よりも切断に対して抵抗性である。具体的な実施形態では、改変抗体は、ヒンジにおける金属イオン媒介性の切断、特にカチオンイオン媒介性の切断に対してより抵抗性である。一実施形態では、改変抗体は、修飾ヒンジ領域を欠いている同等の分子よりも、切断に対して少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも100倍抵抗性である。別の実施形態では、本明細書に開示される改変抗体は、修飾ヒンジ領域を欠いている同等の分子よりも、切断に対して少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも150%、又は少なくとも200%抵抗性である。
【0087】
本明細書に開示される改変抗体は、同等の分子と比べて、哺乳類(特に、ヒト)におけるインビボ半減期(例えば、血清半減期)の増大、インビボ(例えば、血清半減期)及び/又はインビトロ(例えば、貯蔵寿命)での安定性の増大、及び/又は融解温度(Tm)の上昇を含む、他の変更された特徴を有し得ることが企図される。一実施形態では、本明細書に開示される改変抗体は、15日よりも長い、20日よりも長い、25日よりも長い、30日よりも長い、35日よりも長い、40日よりも長い、45日よりも長い、2か月よりも長い、3か月よりも長い、4か月よりも長い、又は5か月よりも長いインビボ半減期を有する。別の実施形態では、改変抗体は、15日よりも長い、30日よりも長い、2か月よりも長い、3か月よりも長い、6か月よりも長い、又は12か月よりも長い、又は24か月よりも長い、又は36か月よりも長い、又は60か月よりも長いインビトロ半減期を有する(例えば、液体又は粉末製剤)。さらに別の実施形態では、改変抗体は、約60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、又は95℃よりも高いTm値を有する。
【0088】
また特に、本明細書に開示される改変抗体は、とりわけ、限定はされないが、血清半減期の増大、結合親和性の増大、免疫原性の低下、産生の増大、ADCC又はCDC活性の増強又は低下、グリコシル化及び/又はジスルフィド結合の変更、並びに結合特異性の修飾を含む好ましい特徴を有する抗体をもたらす、1つ以上の付加的なアミノ酸残基の置換、変異及び/又は修飾を含有し得ることも企図される。
【0089】
本明細書に開示される改変抗体は、限定はされないが、エフェクター機能を変更する修飾を含む、他の修飾と組み合わせることができる。例えば、抗体又は融合物において相加的、相乗的、又は新規の特性を提供するために、本明細書に開示される改変抗体と、他の修飾とを組み合わせることである。このような修飾は、CH1、CH2、若しくはCH3ドメイン又はこれらの組み合わせにおけるものであり得る。改変抗体は、これらが組み合わせられる修飾の特性を増強することが企図される。例えば、改変抗体(例えば、本明細書に開示される修飾ヒンジ領域を有する改変抗体のいずれか)が、野生型Fc領域を含む同等の分子よりも高い親和性でFcγRIIIAに結合することが知られている変異体と組み合わせられると、変異体との組み合わせは、FcγRIIIA親和性におけるより大きい倍率の増強をもたらす。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される改変抗体は、1つ以上の改変グリコフォーム、すなわち、改変ヒンジ領域を含む分子に共有結合した炭水化物組成物を含む。改変グリコフォームは、限定はされないが、エフェクター機能の増強又は低減を含む、様々な目的のために有用であり得る。改変グリコフォームは、当業者に知られている任意の方法によって、例えば、改変された又はバリアント発現株を使用することによって、1つ以上の酵素、例えばβ(1,4)-N-アセチルグルコサミン転移酵素III(GnTI11)との同時発現によって、種々の生物又は種々の生物由来の細胞株において修飾ヒンジ領域を含む分子を発現させることによって、或いは修飾ヒンジ領域を含む分子が発現された後に炭水化物を修飾することによって生成され得る。改変グリコフォームを生成するための方法は当技術分野において知られており、限定はされないが、Umana et al,1999,Nat.Biotechnol 17:176-180;Davies et al.,20017 Biotechnol Bioeng 74:288-294;Shields et al,2002,J Biol Chem 277:26733-26740;Shinkawa et al.,2003,J Biol Chem 278:3466-3473)米国特許第6,602,684号明細書;米国特許出願第10/277,370号明細書;米国特許出願第10/113,929号明細書;PCT国際公開第00/61739A1号パンフレット;PCT国際公開第01/292246A1号パンフレット;PCT国際公開第02/311140A1号パンフレット;PCT国際公開第02/30954A1号パンフレット;PotillegentTMtechnology(Biowa,Inc.Princeton,N.J.);GlycoMAbTMglycosylation engineering technology(GLYCART biotechnology AG,Zurich,Switzerland)に記載されるものが含まれる。例えば、国際公開第00061739号パンフレット;EA01229125号明細書;米国特許出願公開第20030115614号明細書;Okazaki et al.,2004,JMB,336:1239-49を参照されたい。
【0091】
本明細書に開示される改変抗体は、可変領域、Fc領域、及び修飾ヒンジ(例えば、本明細書に開示される修飾ヒンジ領域のいずれか)を含む抗体を含むことが企図される。改変抗体は、少なくとも1つの抗原に特異的に結合する可変ドメイン又はその断片を、修飾ヒンジを組み込んだFc領域と組み合わせることによって「新規に」産生され得る。或いは、改変抗体は、抗原に結合するFc領域含有抗体のヒンジを修飾することによって産生され得る。
【0092】
本明細書に開示される修飾ヒンジ領域と共に使用するために企図される抗体タイプは、限定はされないが、合成抗体、モノクローナル抗体、組換えで産生された抗体、細胞内抗体、多特異性抗体、二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、単鎖FvFc(scFvFc)、単鎖Fv(scFv)、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体を含むことができる。特に、本明細書に開示される方法において使用される抗体には、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分が含まれる。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスの免疫グロブリン分子であり得る。
【0093】
本明細書に開示される改変抗体は、トリ及び哺乳類(例えば、ヒト、マウス、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、又はニワトリ)を含む、あらゆる動物起源に由来することができる。具体的な実施形態では、抗体は、ヒト又はヒト化モノクローナル抗体である。本明細書で使用される場合、「ヒト」抗体はヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含むと共に、ヒト免疫グロブリンライブラリーから又はヒト遺伝子由来の抗体を発現するマウスから単離された抗体を含む。
【0094】
本明細書に開示される抗体は単一特異性、二重特異性、三重特異性であることができ、或いはより多い多特異性を有することもできる。多特異性抗体は所望の標的分子の異なるエピトープに特異的に結合してもよいし、或いは標的分子と、異種エピトープ、例えば、異種ポリペプチド又は固体支持材料との両方に特異的に結合してもよい。例えば、国際公開第94/04690号パンフレット;国際公開第93/17715号パンフレット;国際公開第92/08802号パンフレット;国際公開第91/00360号パンフレット;及び国際公開第92/05793号パンフレット;Tutt,et al.,1991,J.Immunol.147:60-69;米国特許第4,474,893号明細書、同第4,714,681号明細書、同第4,925,648号明細書、同第5,573,920号明細書、及び同第5,601,819号明細書;並びにKostelny et al.,1992,J.Immunol.148:1547)を参照されたい。本明細書に開示される修飾ヒンジを組み込んだ、3つ以上の結合価を有する抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体を作製することができる。例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)を参照されたい。
【0095】
本明細書で企図される改変抗体は、ラクダ化(camelized)単一ドメイン抗体を含む単一ドメイン抗体も包含する(例えば、Muyldermans et al.,2001,Trends Biochem.Sci.26:230;Nuttall et al.,2000,Cur.Pharm.Biotech.1:253;Reichmann and Muyldermans,1999,J.Immunol.Meth.231:25;国際公開第94/04678号パンフレット及び国際公開第94/25591号パンフレット;米国特許第6,005,079号明細書を参照のこと)。
【0096】
本明細書に開示される改変抗体はさらに、抗体様及び抗体-ドメイン融合タンパク質を包含することができる。抗体様分子は、所望の結合特性を備えて生成された任意の分子であり、例えば、PCT公開国際公開第04/044011号パンフレット;国際公開第04/058821号パンフレット;国際公開第04/003019号パンフレット及び国際公開第03/002609号パンフレットを参照されたい。抗体-ドメイン融合タンパク質は、Fcドメイン又は可変ドメインなどの1つ以上の抗体ドメインを組み込み得る。例えば、異種ポリペプチドは、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab)2断片、VHドメイン、VLドメイン、VH CDR、VL CDR、又はそれらの断片に融合又はコンジュゲートされ得る。多数の抗体-ドメイン分子が当技術分野において知られており、限定はされないが、ダイアボディ(diabody)(dsFv)2(Bera et al.,1998,J.Mol.Biol.281:475-83);ミニボディ(minibody)(scFv-CH3融合タンパク質のホモダイマー)(Pessi et al.,1993,Nature 362:367-9)、4価ジ-ダイアボディ(Lu et al.,2003 J.Immunol.Methods 279:219-32)、Bs(scFv)4-IgGと呼ばれる4価二重特異性抗体(Zuo et al.,2000,Protein Eng.13:361-367が含まれる。Fcドメイン融合物は、免疫グロブリンのFc領域、特に、修飾ヒンジを含むFc領域と、限定はされないが、リガンド、酵素、受容体のリガンド部分、接着タンパク質、又は他の何らかのタンパク質若しくはドメインを含む、一般にタンパク質であり得る融合パートナーとを組み合わせる。例えば、Chamow et al.,1996,Trends Biotechnol 14:52-60;Ashkenazi et al.,1997,Curr Opin Immunol 9:195-200;Heidaran et al.,1995,FASEB J.9:140-5を参照されたい。ポリペプチドを抗体部分に融合又はコンジュゲートさせるための方法は、当技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,336,603号明細書、同第5,622,929号明細書、同第5,359,046号明細書、同第5,349,053号明細書、同第5,447,851号明細書、及び同第5,112,946号明細書;欧州特許第307,434号明細書及び欧州特許第367,166号明細書;PCT公開国際公開第96/04388号パンフレット及び国際公開第91/06570号パンフレット;Ashkenazi et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10535-10539;Zheng et al.,1995,J.Immunol.154:5590-5600;並びにVil et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:11337-11341を参照されたい。
【0097】
特に企図される他の分子は、例えば、免疫ドメイン及び/又はモノマードメインなどの小さい改変タンパク質ドメインである(例えば、米国特許出願公開第2003082630号明細書及び同第2003157561号明細書を参照のこと)。免疫ドメインは、抗体の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含有し、モノマードメインは、既知の天然に存在する非抗体ドメインファミリー、特にタンパク質細胞外ドメインに基づき、これは、保存スキャフォールド及び可変結合部位を含有し、一例は、リガンド結合に関与するLDL受容体Aドメインである。このようなタンパク質ドメインは、例えば、シャペロニン又は金属イオンの存在とは関係なく又はその補助が限られていても、正確にフォールドすることができる。この能力は、新しいタンパク質環境に挿入されたときに、ドメインのミスフォールディングを回避し、それにより、特定の標的に対するタンパク質ドメインの結合親和性を保存する。タンパク質ドメインの可変結合部位は、例えば、ランダム変異誘発、部位特異的変異誘発などの種々の多様性生成方法を用いて、そして例えば、再帰的エラープローンPCR、再帰的組換えなどの定向進化方法によってランダム化される。種々の多様性生成方法の詳細については、米国特許第5,811,238号明細書;同第5,830,721号明細書;同第5,834,252号明細書;PCT公開国際公開第95/22625号パンフレット;国際公開第96/33207号パンフレット;国際公開第97/20078号パンフレット;国際公開第97/35966号パンフレット;国際公開第99/41368号パンフレット;国際公開第99/23107号パンフレット;国際公開第00/00632号パンフレット;国際公開第00/42561号パンフレット;及び国際公開第01/23401号パンフレットを参照されたい。変異誘発されたタンパク質ドメインは次に、例えば、少なくとも1010のバリアントのライブラリーを生成し、その後のパニング及びスクリーニングによる、意図される標的に対する改良された親和性及び効力を有するタンパク質ドメインの単離を容易にすることができる、ファージディスプレイなどのディスプレイシステムを用いて発現される。このような方法は、PCT公開国際公開第91/17271号パンフレット;国際公開第91/18980号パンフレット;国際公開第91/19818号パンフレット;国際公開第93/08278号パンフレットに記載されている。付加的なディスプレイシステムの例は、米国特許第6,281,344号明細書;同第6,194,550号明細書;同第6,207,446号明細書;同第6,214,553号明細書及び同第6,258,558号明細書に記載されている。これらの方法を利用して、サブnMの結合親和性(Kd)及びブロッキング機能(IC50)を有する高多様性の改変タンパク質ドメインを急速に生成することができる。同定されたら、約4~15アミノ酸長さの天然タンパク質リンカーを用いて、2~10個のこのような改変タンパク質ドメインを互いに連結させて、結合タンパク質を形成することができる。個々のドメインは、使用/疾患兆候に応じて、単一タイプのタンパク質又はいくつかを標的とすることができる。改変タンパク質ドメインは次に、修飾ヒンジ、例えば、本明細書に開示される修飾ヒンジ領域のいずれかを含有する抗体中のFc領域に連結され得る。
【0098】
修飾ヒンジ(例えば、本明細書に開示される修飾ヒンジのいずれか)を当技術分野において既に記載されている抗体に導入することも企図される。修飾ヒンジが導入された抗体は、例えば、限定はされないが、KS1/4汎癌(pan-carcinoma)抗原(Perez and Walker,1990,J.Immunol.142:3662-3667;Bumal,1988,Hybridoma 7(4):407-415)、卵巣癌抗原(CAl25)(Yu et al.,1991,Cancer Res.51(2):468-475)、前立腺性酸性ホスファート(prostatic acid phosphate)(Tailor et al.,1990,Nucl.Acids Res.18(16):4928)、前立腺特異的抗原(Henttu and Vihko,1989,Biochem.Biophys.Res.Comm.160(2):903-910;Israeli et al.,1993,Cancer Res.53:227-230)、メラノーマ関連抗原p97(Estin et al.,1989,J.Natl.Cancer Instil.81(6):445-446)、メラノーマ抗原gp75(Vijayasardahl et al.,1990,J.Exp.Med.171(4):1375-1380)、高分子量メラノーマ抗原(HMW-MAA)(Natali et al.,1987,Cancer 59:55-63;Mittelman et al.,1990,J.Clin.Invest.86:2136-2144)、前立腺特異的膜抗原、癌胎児性抗原(CEA)(Foon et al.,1994,Proc.Am.Soc.Clin.Oncol.13:294)、多形性上皮ムチン抗原、ヒト乳脂肪球抗原、結腸直腸腫瘍関連抗原、例えば、CEA、TAG-72(Yokata et al.,1992,Cancer Res.52:3402-3408)、CO17-1A(Ragnhammar et al.,1993,Int.J.Cancer 53:751-758);GICA 19-9(Herlyn et al.,1982,J.Clin.Immunol.2:135)、CTA-1及びLEA、バーキットリンパ腫抗原-38.13、CD19(Ghetie et al.,1994,Blood 83:1329-1336)、ヒトBリンパ腫抗原-CD20(Reff et al.,1994,Blood 83:435-445)、CD33(Sgouros et al.,1993,J.Nucl.Med.34:422-430)、メラノーマ特異的抗原、例えば、ガングリオシドGD2(Saleh et al.,1993,J.Immunol.,151,3390-3398)、ガングリオシドGD3(Shitara et al.,1993,Cancer Immunol.Immunother.36:373-380)、ガングリオシドGM2(Livingston et al.,1994,J.Clin.Oncol.12:1036-1044)、ガングリオシドGM3(Hoon et al.,1993,Cancer Res.53:5244-5250)、腫瘍特異的移植タイプの細胞表面抗原(TSTA)、例えば、ウイルスに誘発される腫瘍抗原(T抗原DNA腫瘍ウイルス及びRNA腫瘍ウイルスのエンベロープ抗原を含む)、癌胎児性抗原-アルファ-フェトプロテイン、例えば、結腸のCEA、膀胱腫瘍癌胎児性抗原(Hellstrom et al.,1985,Cancer.Res.45:2210-2188)、分化抗原、例えば、ヒト肺癌抗原L6、L20(Hellstrom et al.,1986,Cancer Res.46:3917-3923)、線維肉腫の抗原、ヒト白血病T細胞抗原-Gp37(Bhattacharya-Chatterjee et al.,1988,J.of Immun.141:1398-1403)、ネオ糖タンパク質、スフィンゴ脂質、乳癌抗原、例えば、EGFR(上皮増殖因子受容体)、HER2抗原(p185HER2)、多形性上皮ムチン(PEM)(Hilkens et al.,1992,Trends in Bio.Chem.Sci.17:359)、悪性ヒトリンパ球抗原-APO-1(Bernhard et al.,1989,Science 245:301-304)、分化抗原(Feizi,1985,Nature 314:53-57)、例えば、胎児赤血球において見出されるI抗原、成人赤血球において見出される初期内胚葉I抗原、着床前胚、胃腺癌において見出されるI(Ma)、乳房上皮において見出される M18、M39、骨髄細胞において見出されるSSEA-1、VEP8、VEP9、Myl、VIM-D5、結腸直腸癌において見出されるD156-22、TRA-1-85(血液型H)、結腸腺癌において見出されるC14、肺腺癌において見出されるF3、胃癌において見出されるAH6、Yハプテン、胚性癌細胞において見出されるLcy、TL5(血液型A)、A431細胞において見出されるEGF受容体、膵癌において見出されるE1シリーズ(血液型B)、胚性癌細胞において見出されるFC10.2、胃腺癌抗原、腺癌において見出されるCO-514(血液型Lea)、腺癌において見出されるNS-10、CO-43(血液型Leb)、A431細胞のEGF受容体において見出されるG49、結腸腺癌において見出されるMH2(血液型ALeb/Lev)、結腸癌において見出される19.9、胃癌ムチン、骨髄細胞において見出されるT5A7、メラノーマにおいて見出されるR24、胚性癌細胞において見出される4.2、GD3、D1.1、OFA-1、GM2、OFA-2、GD2、及びM1:22:25:8、並びに4~8細胞段階の胚において見出されるSSEA-3及びSSEA-4を含む、癌又は腫瘍抗原に特異的に結合し得る。一実施形態では、抗原は、皮膚T細胞性リンパ腫からのT細胞受容体由来ペプチドである(Edelson,1998,The Cancer Journal 4:62を参照のこと)。
【0099】
いくつかの実施形態では、修飾ヒンジは、抗フルオレセインモノクローナル抗体、4-4-20内に導入させることができる(Kranz et al.,1982 J.Biol.Chem.257(12):6987-6995)。他の実施形態では、修飾ヒンジは、B細胞上のCD20細胞表面リンタンパク質を認識するマウス-ヒトキメラ抗CD20モノクローナル抗体2H7内に導入される(Liu et al.,1987,Journal of Immunology,139:3521-6)。さらに他の実施形態では、修飾ヒンジは、Carterら(1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285-9)により記載されるような、ヒト上皮増殖因子受容体2(p185HER2)に対するヒト化抗体(Ab4D5)内に導入される。さらに他の実施形態では、修飾ヒンジは、ヒト化抗TAG72抗体(CC49)内に導入される(Sha et al.,1994 Cancer Biother.9(4):341-9)。他の実施形態では、修飾ヒンジは、リンパ腫の処置に使用されるリツキサン(Rituxan)内に導入される。
【0100】
いくつかの実施形態では、修飾ヒンジ(例えば、本明細書に開示されるタンパク質分解的切断に対する抵抗性を付与する修飾ヒンジのいずれか)は、限定はされないが、EGFRに対するキメラ化(chimerized)モノクローナル抗体であるErbituxTM(IMC-C225としても知られている)(ImClone Systems Inc.);転移性乳癌患者の処置のためのヒト化抗HER2モノクローナル抗体であるHERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)(Genentech,Calif.);血塊形成の予防のための血小板上の抗糖タンパク質IIb/IIIa受容体であるREOPRO(登録商標)(アブシキシマブ)(Centocor);急性腎臓同種移植拒絶の予防のための免疫抑制ヒト化抗CD25モノクローナル抗体であるZENAPAX(登録商標)(ダクリズマブ)(Roche Pharmaceuticals,Switzerland)を含む、癌抗原又は細胞表面受容体に特異的な治療用モノクローナル抗体内に導入することができる。他の例は、ヒト化抗CD18F(ab’)2(Genentech);ヒト化抗CD18F(ab’)2であるCDP860(Celltech,UK);CD4と融合した抗HIVgp120抗体であるPRO542(Progenics/Genzyme Transgenics);抗CD14抗体であるC14(ICOS Pharm);ヒト化抗VEGFIgG1抗体(Genentech);マウス抗CA125抗体であるOVAREXTM(Altarex);マウス抗17-IA細胞表面抗原IgG2a抗体であるPANOREXTM(Glaxo Wellcome/Centocor);キメラ抗EGFRIgG抗体であるIMC-C225(ImClone System);ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体であるVITAXINTM(Applied Molecular Evolution/MedImmune);ヒト化抗CD52IgG1抗体であるCampath 1H/LDP-03(Leukosite);ヒト化抗CD33IgG抗体であるSmart M195(Protein Design Lab/Kanebo);キメラ抗CD20IgG1抗体であるRITUXANTM(IDEC Pharm/Genentech,Roche/Zettyaku);ヒト化抗CD22IgG抗体であるLYMPHOCIDETM(Immunomedics);ヒト化抗HLA抗体であるSmart ID10(Protein Design Lab)であり;ONCOLYMTM(Lym-1)は、放射標識マウス抗HLA DR抗体であり(Techniclone);抗CD11aは、ヒト化IgG1抗体であり(Genetech/Xoma);ICM3は、ヒト化抗ICAM3抗体であり(ICOS Pharm);IDEC-114は、霊長類化(primatized)抗CD80抗体であり(IDEC Pharm/Mitsubishi);ZEVALINTMは、放射標識マウス抗CD20抗体であり(IDEC/Schering AG);IDEC-131は、ヒト化抗CD40L抗体であり(IDEC/Eisai);IDEC-151は、霊長類化抗CD4抗体であり(IDEC);IDEC-152は、霊長類化抗CD23抗体であり(IDEC/Seikagaku);SMART抗CD3は、ヒト化抗CD3IgGであり(Protein Design Lab);5G1.1は、ヒト化抗補体因子5(C5)抗体であり(Alexion Pharm);IDEC-151は、霊長類化抗CD4IgG1抗体であり(IDEC Pharm/SmithKline Beecham);MDX-CD4は、ヒト抗CD4IgG抗体であり(Medarex/Eisai/Genmab);CDP571は、ヒト化抗TNF-αIgG4抗体であり(Celltech);LDP-02は、ヒト化抗α4β7抗体であり(LeukoSite/Genentech);OrthoClone OKT4Aは、ヒト化抗CD4IgG抗体であり(Ortho Biotech);ANTOVATMは、ヒト化抗CD40LIgG抗体であり(Biogen);ANTEGRENTMは、ヒト化抗VLA-4IgG抗体であり(Elan);MDX-33は、ヒト抗CD64(FcγR)抗体であり(Medarex/Centeon);rhuMab-E25は、ヒト化抗IgEIgG1抗体であり(Genentech/Norvartis/Tanox Biosystems);IDEC-152は、霊長類化抗CD23抗体であり(IDEC Pharm);ABX-CBLは、マウス抗CD-147IgM抗体であり(Abgenix);BTI-322は、ラット抗CD2IgG抗体であり(Medimmune/Bio Transplant);Orthoclone/OKT3は、マウス抗CD3IgG2a抗体であり(ortho Biotech);SIMULECTTMは、キメラ抗CD25IgG1抗体であり(Novartis Pharm);LDP-01は、ヒト化抗β2-インテグリンIgG抗体であり(LeukoSite);抗LFA-1は、マウス抗CD18F(ab’)2であり(Pasteur-Merieux/Immunotech);CAT-152は、ヒト抗TGF-β2抗体であり(Cambridge Ab Tech);及びCorsevin Mは、キメラ抗第VII因子抗体である(Centocor)。
【0101】
いくつかの実施形態では、改変抗体又はその機能性断片は、抗RSウイルス(RSV)抗体、抗エボラウイルス抗体、抗凝集βアミロイド(Aβ)抗体、抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体、抗単純ヘルペスウイルス(HSV)抗体、抗精子抗体(例えば、抗ヒト避妊抗原(HCA)抗体)、及び抗HER2/neu抗体である。
【0102】
さらに別の実施形態では、本明細書に開示される改変抗体は、限定はされないが、上記に記載されるものを含む既知の治療用抗体と同じ抗原に特異的に結合することができるが、ただしいくつかの実施形態では、改変抗体の可変領域は、前記治療用抗体のものではない。他の実施形態では、改変抗体の可変領域は、治療用抗体のものと同一である。
【0103】
1.シグナル配列
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される改変抗体は、シグナル配列を含むことができる。シグナル配列は、宿主細胞(例えば、糸状菌宿主細胞)からのタンパク質分泌を容易にする、あらゆるシグナル配列であり得る。特定の実施形態では、改変抗体は、融合タンパク質が産生されることとなる宿主細胞から高度に分泌されることが公知であるタンパク質のためのシグナル配列を含むことができる。用いられるシグナル配列は、改変抗体が産生されることとなる宿主細胞に対して内在性又は非内在性であり得る。
【0104】
好適なシグナル配列は、当技術分野で公知である(例えば、Ward et al,Bio/Technology 1990 8:435-440;及びPaloheimo et al,Applied and Environmental Microbiology 2003 69:7073-7082を参照のこと)。好適なシグナル配列の非限定的な例としては、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、エンドグルカナーゼI、II、及びIII、α-アミラーゼ、アスパルチルプロテアーゼ、グルコアミラーゼ、フィターゼ、マンナナーゼ、α及びβグルコシダーゼ、ウシキモシン、ヒトインターフェロン及びヒト組織プラスミノーゲン活性化因子、及び合成のコンセンサス真核生物シグナル配列のもの、例えばGwynne et al.,(1987)Bio/Technology 5:713-719によって記載されたものが挙げられる。
【0105】
いくつかの実施形態では、宿主細胞としてトリコデルマ属(Trichoderma)(例えばT.リーゼイ(T.reesei))が用いられるならば、T.リーゼイ(T.reesei)マンナナーゼI(Man5A、若しくはMANI)、T.リーゼイ(T.reesei)セロビオヒドロラーゼII(Cel6A若しくはCBHII)、エンドグルカナーゼI(Cel7b若しくはEGI)、エンドグルカナーゼII(Cel5a若しくはEGII)、エンドグルカナーゼIII(Cel12A若しくはEGIII)、キシラナーゼI若しくはII(XynIIa若しくはXynIIb)、又はT.リーゼイ(T.reesei)セロビオヒドロラーゼI(Cel7a又はCBHI)のシグナル配列又は担体を、改変抗体中で用いることができる。
【0106】
他の実施形態では、宿主細胞としてコウジカビ属(Aspergillus)(例えばクロカビ(A.niger))が用いられるならば、クロカビ(A.niger)グルコアミラーゼ(GlaA)又はアルファアミラーゼのシグナル配列又は担体を、融合ポリペプチド中で用いることができる。クロカビ(Aspergillus niger)とアワモリコウジカビ(Aspergillus awamori)のグルコアミラーゼは、同一のアミノ酸配列を有する。2つの形態の酵素が、一般に、培養上清中で認識される。GAIは、全長形態(アミノ酸残基1~616)であり、GAIIは、アミノ酸残基1~512を含む天然のタンパク分解性断片である。GAIは、伸長されたリンカー領域によって連結された2つの別のドメインとして折り畳まれることが公知である。これらの2つのドメインは、471残基の触媒ドメイン(アミノ酸1~471)及び108残基のデンプン結合ドメイン(アミノ酸509~616)であり、2つのドメインの間のリンカー領域は、36残基(アミノ酸472~508)である。GAIIは、デンプン結合ドメインを欠いている。Libby et al.,(1994)Protein Engineering 7:1109-1114を参照されたい。いくつかの実施形態では、担体タンパク質として使用され、シグナル配列を含むグルコアミラーゼは、コウジカビ属(Aspergillus)又はトリコデルマ属(Trichoderma)グルコアミラーゼの触媒ドメインとの95%、96%、97%、98%、及び99%よりも大きい配列同一性を有することとなる。用語「触媒ドメイン」は、タンパク質の触媒活性を有する、タンパク質のアミノ酸配列の構造的部分又は領域を指す。
【0107】
2.担体
特定の実施形態では、シグナル配列は、そのN末端にシグナル配列を含有する「担体」を含むことができ、ここで、担体は、少なくとも、細胞に対して内在性であり、且つ細胞により効率的に分泌されるタンパク質のN末端部分である。特定の実施形態では、シグナル配列及び担体タンパク質は、同じ遺伝子から得られる。いくつかの実施形態では、シグナル配列及び担体タンパク質は、異なる遺伝子から得られる。
【0108】
担体タンパク質は、分泌されるポリペプチドの成熟配列のすべて又は一部を含むことができる。いくつかの実施形態では、全長の分泌されたポリペプチドが使用される。しかし、分泌されるポリペプチドの機能性部分を用いることもできる。本明細書で使用する場合、分泌されるポリペプチドの「部分」又は文法的等価物は、切断されていても正常な立体配置に折り畳まれるその能力を保持する、切断された分泌されたポリペプチドを意味する。
【0109】
場合により、分泌ポリペプチドのトランケーションは、機能性タンパク質が生物学的機能を保持することを意味する。いくつかの実施形態では、分泌ポリペプチドの触媒ドメインが使用されるが、他の機能性ドメイン、例えば基質結合ドメインも使用され得る。一実施形態では、担体タンパク質としてグルコアミラーゼ(例えば、クロカビ(Aspergillus niger)由来のグルコアミラーゼ)が使用される場合、機能性部分は酵素の触媒ドメインを保持し、アミノ酸1~471を含む(参照によってその開示が本明細書に組み込まれる国際公開第03089614号パンフレット、例えば実施例10を参照のこと)。別の実施形態では、担体タンパク質としてCBH I(すなわち、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のCBH I)が使用される場合、機能性部分は酵素の触媒ドメインを保持する。参照によってその開示が本明細書に組み込まれる国際公開第05093073号パンフレットの図の配列番号1が参照され、そこでは、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)CBH1シグナル配列、T.リーゼイ(T.reesei)CBH1触媒ドメイン(触媒コア又はコアドメインとも呼ばれる)及びT.リーゼイ(T.reesei)CBH1リンカーをコードする配列が開示される。いくつかの実施形態では、シグナル配列を含むCBH1担体タンパク質は、参照によってその開示が本明細書に組み込まれる国際公開第05093073号パンフレットの
図2の配列番号1と95%、96%、97%、98%及び99%よりも大きい配列同一性を有することとなる。
【0110】
一般に、担体タンパク質が、切断されたタンパク質であるならば、これは、C末端が切断されている(すなわち、損なわれていないN末端を含有する)。或いは、担体タンパク質は、N末端が切断されている、又は、場合によっては、機能性部分を残すようにして両端が切断されている可能性がある。一般に、担体タンパク質を含む分泌されたタンパク質のこうした部分は、分泌されたタンパク質、いくつかの実施形態では、分泌されたタンパク質のN末端部分の、50%超、70%超、80%超、及び90%超を含む。いくつかの実施形態では、担体タンパク質は、触媒ドメインに加えて、リンカー領域を含むこととなる。いくつかの実施形態では、CBHIタンパク質のリンカー領域の部分を、担体タンパク質に使用することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、分泌配列として機能性のシグナル配列を含む第1のアミノ酸配列が、第1のDNA分子によってコードされる。担体タンパク質を含む第2のアミノ酸配列は、第2のDNA配列によってコードされる。しかし、上に記載した通り、シグナル配列と担体タンパク質は、同じ遺伝子から得ることができる。
【0112】
3.抗体コンジュゲート及び誘導体
本明細書に開示される改変抗体はどれも、修飾された(すなわち、共有結合のように(such that covalent attachment)、任意のタイプの分子の抗体への共有結合による)誘導体を含むことができる。限定としてではないが例えば、抗体誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への連結などによって修飾された抗体が含まれる。多数の化学修飾はどれも、限定はされないが、特異的な化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む、既知の技術によって実行され得る。
【0113】
インビボ半減期が増大された抗体又はその断片は、前記抗体又は抗体断片に、高分子量ポリエチレングリコール(PEG)などのポリマー分子を結合させることによって生成され得る。PEGは、多機能性リンカーの有無にかかわらず、前記抗体又は抗体断片のN又はC末端へのPEGの部位特異的コンジュゲーションによって、或いはリジン残基上に存在するイプシロン-アミノ基を用いて、前記抗体又は抗体断片に結合させることができる。生物活性の最小限の損失をもたらす線状又は分枝状ポリマーの誘導体化が使用されるであろう。コンジュゲーションの度合いは、PEG分子の抗体への適正なコンジュケーションを保証するために、SDS-PAGE及び質量分析によって密接にモニターされ得る。未反応PEGは、例えば、サイズ排除又はイオン交換クロマトグラフィによって、抗体-PEGコンジュゲートから分離され得る。
【0114】
さらに、抗体又は抗体断片をインビボでより安定にするため、又はインビボでより長い半減期を持たせるために、抗体はアルブミンにコンジュゲートされ得る。その技術は当技術分野において周知であり、例えば、国際公開第93/15199号パンフレット、国際公開第93/15200号パンフレット、及び国際公開第01/77137号パンフレット;並びに欧州特許第413,622号明細書を参照されたい。本発明は、限定はされないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、核酸分子、小分子、模倣薬剤、合成薬物、無機分子、及び有機分子を含む1つ以上の部分にコンジュゲート又は融合された抗体又はその断片の使用を包含する。
【0115】
本発明は、融合タンパク質を生成するために異種タンパク質又はポリペプチド(又はその断片、例えば、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90又は少なくとも100のアミノ酸のポリペプチド)に組換えで融合又は化学的にコンジュゲートされた(共有結合及び非共有結合を含む)抗体又はその断片の使用を包含する。融合は、必ずしも直接的でなくてもよく、リンカー配列を介して行われてもよい。例えば、抗体は、特定の細胞表面受容体に特異的な抗体に、その抗体を融合又はコンジュゲートさせることによって、インビトロ又はインビボのいずれかで異種ポリペプチドを特定の細胞型に向けるために使用され得る。また異種ポリペプチドに融合又はコンジュゲートされた抗体は、当技術分野において既知の方法を用いて、インビトロイムノアッセイ及び精製方法においても使用され得る。例えば、国際公開第93/21232号パンフレット;欧州特許第439,095号明細書;Naramura et al.,1994,Immunol.Lett.39:91-99;米国特許第5,474,981号明細書;Gillies et al.,1992,PNAS 89:1428-1432;及びFell et al.,1991,J.Immunol.146:2446-2452を参照されたい。
【0116】
本発明はさらに、抗体断片に融合又はコンジュゲートされた異種タンパク質、ペプチド又はポリペプチドを含む組成物を含む。例えば、異種ポリペプチドは、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab)2断片、VHドメイン、VLドメイン、VHCDR、VLCDR、又はそれらの断片に融合又はコンジュゲートされ得る。ポリペプチドを抗体部分に融合又はコンジュゲートさせるための方法は、当技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,336,603号明細書、同第5,622,929号明細書、同第5,359,046号明細書、同第5,349,053号明細書、同第5,447,851号明細書、及び同第5,112,946号明細書;欧州特許第307,434号明細書及び欧州特許第367,166号明細書;国際公開第96/04388号パンフレット及び国際公開第91/06570号パンフレット;Ashkenazi et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10535-10539;Zheng et al.,1995,J.Immunol.154:5590-5600;並びにVil et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:11337-11341を参照されたい。
【0117】
例えば、抗原(例えば、上記)に特的に結合する抗体の付加的な融合タンパク質は、遺伝子シャフリング、モチーフシャフリング、エクソンシャフリング、及び/又はコドンシャフリング(集合的に「DNAシャフリング」と称される)の技術によって生成され得る。DNAシャフリングは、本明細書に開示される改変抗体又はその断片(例えば、より高い親和性及びより低い解離速度を有する抗体又はその断片)の活性を変更するために使用され得る。一般的に、米国特許第5,605,793号明細書;同第5,811,238号明細書;同第5,830,721号明細書;同第5,834,252号明細書;及び同第5,837,458号明細書、並びにPatten et al.,1997,Curr.Opinion Biotechnol.8:724-33;Harayama,1998,Trends Biotechnol.16(2):76-82;Hansson,et al.,1999,J.Mol.Biol.287:265-76;並びにLorenzo and Blasco,1998,Biotechniques 24(2):308-313を参照されたい。抗体若しくはその断片、又はコードされた抗体若しくはその断片は、組換えの前に、エラープローンPCR、ランダムヌクレオチド挿入又は他の方法によるランダム変異誘発を受けることによって変更され得る。抗体又は抗体断片をコードするポリヌクレオチドの1つ以上の部分(この部分は、抗原に特異的に結合する)は、1つ以上の異種分子の1つ以上の成分、モチーフ、セクション、パート、ドメイン、断片などを用いて組み換えることができる。
【0118】
さらに、抗体又はその断片は、精製を容易にするために、マーカー配列、例えばペプチドに融合され得る。特定の実施形態では、マーカーアミノ酸配列は、ヘキサ-ヒスチジンペプチド、例えば、特にpQEベクター(QIAGEN,Inc.,9259 Eton Avenue,Chatsworth,Calif.,91311)において提供されるタグであり、その多くは市販品として入手可能である。Gentz et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821-824に記載されるように、例えば、ヘキサ-ヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製を提供する。精製に有用な他のペプチドタグには、限定はされないが、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応する赤血球凝集素「HA」タグ(Wilson et al.,1984,Cell 37:767)及び「フラグ」タグが含まれる。
【0119】
他の実施形態では、本明細書に開示される改変抗体又はその類似体若しくは誘導体は、診断用又は検出可能な薬剤にコンジュゲートされる。このような抗体は、特定の治療の効力を決定するなどの臨床検査手順の一部として、癌の発症又は進行をモニター又は予知するために有用であり得る。このような診断及び検出は、限定はされないが、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼなど(限定はされない)の種々の酵素;ストレプトアビジン/ビオチン(streptavidinlbiotin)及びアビジン/ビオチンなど(限定はされない)の補欠分子族;ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocynate)、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド又はフィコエリトリンなど(限定はされない)の蛍光材料;ルミノールなど(限定はされない)の発光材料;ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンなど(限定はされない)の生物発光材料;ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム115In、113In、112In、111In)、及び及びテクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、及び117スズなど(限定はされない)の放射性材料;種々の陽電子放出断層撮影を用いる陽電子放出金属、非放射性(noradioactive)常磁性金属イオン、並びに放射標識されるか又は特定の放射性同位体にコンジュゲートされた分子を含む、検出可能な物質に抗体をカップリングさせることによって達成することができる。
【0120】
治療薬にコンジュゲートされた本明細書に開示される改変抗体又はその断片の使用も企図される。抗体又はその断片は、細胞毒(例えば、細胞分裂阻害剤又は細胞破壊剤)、治療薬又は放射性金属イオン(例えば、アルファ-放射体)などの治療的部分にコンジュゲートされ得る。細胞毒又は細胞毒性薬は、細胞にとって有害な任意の薬剤を含む。例としては、リボヌクレアーゼ、モノメチルオーリスタチンE及びF、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン(dehydrotestosterone)、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、エピルビシン、及びシクロホスファミド、並びにそれらの類似体又は相同体が挙げられる。治療薬には、限定はされないが、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン(fluorouracil decarbazine))、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BCNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスフアミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、並びにシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前は、ダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前は、アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、及び抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)が含まれる。治療的部分のより広範なリストは、参照によって本明細書に組み込まれるPCT公開国際公開第03/075957号パンフレットにおいて見出すことができる。
【0121】
さらに、抗体又はその断片は、所与の生物学的応答を修飾する治療薬又は薬物部分にコンジュゲートされ得る。治療薬又は薬物部分は、古典的な化学的治療薬に限定されると解釈されてはならない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質又はポリペプチであり得る。このようなタンパク質は、例えば、アブリン、リシンA、オンコナーゼ(Onconase)(又は別の細胞傷害性RNase)、シュードモナス属(Pseudomonas)外毒素、コレラ毒素、若しくはジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、アポトーシス剤、例えば、TNF-α、TNF-β、AIM I(国際公開第97/33899号パンフレットを参照のこと)、AIM II(国際公開第97/34911号パンフレットを参照のこと)、Fasリガンド(Takahashi et al.,1994,J.Immunol.,6:1567)、及びVEGI(国際公開第99/23105号パンフレットを参照のこと)、血栓剤若しくは抗血管新生薬、例えば、アンジオスタチン若しくはエンドスタチンなどのタンパク質;又は、例えば、リンホカイン(例えば、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、及び顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」))、若しくは成長因子(例えば、成長ホルモン(「GH」))などの生物学的応答調節物質を含み得る。
【0122】
さらに、抗体は、放射性金属イオン(例えば、上記の放射性材料を参照のこと)をコンジュゲートするのに有用な放射性材料又は大環状キレート剤などの治療的部分にコンジュゲートさせることができる。特定の実施形態では、大環状キレート剤は1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N”,N”-四酢酸(DOTA)であり、これは、リンカー分子を介して抗体に接続され得る。このようなリンカー分子は当技術分野において一般的に知られており、Denardo et al.,1998,Clin Cancer Res.4:2483;Peterson et al.,1999,Bioconjug.Chem.10:553;及びZimmerman et al.,1999,Nucl.Med.Biol.26:943に記載されている。
【0123】
治療的部分を抗体及び関連分子にコンジュゲートさせるための技術は周知である。この部分は、限定はされないが、アルデヒド/シッフ連結、スルフィドリル(sulphydryl)連結、酸に不安定な連結、cis-アコチニル連結、ヒドラゾン連結、酵素分解可能な連結を含む、当技術分野において既知の任意の方法によって、抗体にコンジュゲートされ得る(一般的に、Garnett,2002,Adv Drug Deliv Rev 53:171を参照のこと)。治療的部分を抗体にコンジュゲートさせるための技術はよく知らており、例えば、Arnon et al.,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243-56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstrom et al.,“Antibodies For Drug Delivery”,in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),pp.623-53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”,in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475-506(1985);“Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),pp.303-16(Academic Press 1985)、及びThorpe et al.,1982,Immunol.Rev.62:119を参照されたい。
【0124】
抗体及び関連分子をポリペプチド部分に融合又はコンジュゲートさせるための方法は、当技術分野において知られている。例えば、米国特許第5,336,603号明細書;同第5,622,929号明細書;同第5,359,046号明細書;同第5,349,053号明細書;同第5,447,851号明細書、及び同第5,112,946号明細書;EP307,434号明細書;EP367,166号明細書;PCT公開国際公開第96/04388号パンフレット及び国際公開第91/06570号パンフレット;Ashkenazi et al.,1991,PNAS USA 88:10535;Zheng et al.,1995,J lmmunol 154:5590;並びにVil et al.,1992,PNAS USA 89:11337を参照されたい。部分への抗体の融合は、必ずしも直接的でなくてもよく、リンカー配列を介して行われてもよい。このようなリンカー分子は当技術分野において一般的に知られており、Denardo et al.,1998,Clin Cancer Res 4:2483;Peterson et al.,1999,Bioconjug Chem 10:553;Zimmerman et al.,1999,Nucl Med Biol 26:943;Garnett,2002,Adv Drug Deliv Rev 53:171に記載されている。
【0125】
また抗体は、固体支持体に結合されていてもよく、これは、標的抗原のイムノアッセイ又は精製のために特に有用である。このような固体支持体は、限定はされないが、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンを含む。
【0126】
改変抗体(例えば、本明細書に開示されるもののいずれか)にコンジュゲートされる治療的部分又は薬物は、対象における特定の障害に対して所望の予防又は治療効果を達成するように選択されるべきである。臨床医又は他の医療関係者は、どの治療的部分又は薬物を改変抗体にコンジュゲートさせるかを決定する際に、以下の:疾患の性質、疾患の重症度、及び対象の状態を考慮するべきである。
【0127】
B.ポリヌクレオチド
本明細書に開示される組成物及び方法の別の態様は、本明細書に開示される改変抗体のいずれかなどの改変抗体をコードするポリヌクレオチド又は核酸配列である。
【0128】
プロモーター;シグナル配列をコードする第1のDNA分子;担体タンパク質をコードする第2のDNA分子;抗体(例えば、重鎖及び/又は軽鎖)又はその機能性断片をコードする第3のDNA分子を作動可能な連結状態で含む、上記で開示される改変抗体をコードする融合DNA構築物が、本明細書で提供される。融合DNA構築物の構成要素は、あらゆる順序で存在することができる。遺伝暗号は、公知であるので、これらの核酸の設計及び産生は、本明細書に開示される改変抗体の説明を前提とすると、十分に当技術分野の範囲内である。ある種の実施形態では、核酸は、特定の宿主細胞中での改変抗体の発現のためにコドン最適化することができる。例えば哺乳類細胞及び糸状菌の多くの種について、コドン使用表が利用可能であるので、対象改変抗体をコードするコドン最適化された核酸の設計及び産生は、十分に当技術分野の範囲内であろう。
【0129】
C.プロモーター
宿主細胞(例えば、糸状菌宿主細胞)における核酸の転写を誘導するのに適したプロモーターの例は、コウジカビ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、クロカビ(Aspergillus niger)中性アルファ-アミラーゼ、クロカビ(Aspergillus niger)酸安定性アルファ-アミラーゼ(Korman et al(1990)Curr.Genet 17:203-212;Gines et al.,(1989)Gene 79:107-117)、クロカビ(Aspergillus niger)又はアワモリコウジカビ(Aspergillus awamori)グルコアミラーゼ(glaA)(Nunberg et al.,(1984)Mol.Cell Biol.4:2306-2315;Boel E.et al.,(1984)EMBO J.3:1581-1585)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、コウジカビ(Aspergillus oryzae)アルカリ性プロテアーゼ、コウジカビ(Aspergillus oryzae)トリオースリン酸イソメラーゼ、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)アセトアミダーゼ(Hyner et al.,(1983)Mol.Cell.Biol.3:1430-1439)、フザリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)アミログルコシダーゼ、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼ(国際公開第96/00787号パンフレット)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドロラーゼI(Shoemaker et al.(1984)EPA EPO 0137280)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドロラーゼII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼI、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼIII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼIV、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼV、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)キシラナーゼI、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)キシラナーゼII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)ベータ-キシロシダーゼに対する遺伝子から得られるプロモーター、並びにNA2-tpiプロモーター(クロカビ(Aspergillus niger)中性アルファ-アミラーゼとコウジカビ(Aspergillus oryzae)トリオースリン酸イソメラーゼに対する遺伝子由来のプロモーターのハイブリッド);並びにその変異、切断型、及びハイブリッドプロモーターである。Yelton et al.,(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1470-1474;Mullaney et al.,(1985)Mol.Gen.Genet.199:37-45;Lockington et al.,(1986)Gene 33:137-149;Macknight et al.,(1986)Cell 46:143-147;Hynes et al.,(1983)Mol.Cell Biol.3:1430-1439も参照されたい。より高等な真核生物プロモーター、例えばSV40初期プロモーター(Barclay et al(1983)Molecular and Cellular Biology 3:2117-2130)も有用であり得る。プロモーターは、恒常的又は誘導性プロモーターであり得る。例示的なプロモーターとしては、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドロラーゼI又はII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼI、II又はIII、及びトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)キシラナーゼIIが挙げられる。
【0130】
D.ベクター
本明細書に開示される改変抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチドは、ベクター、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス、又はレトロウイルスベクター中に存在することができる。ある種の実施形態では、ベクターは、糸状菌細胞において対象融合ポリペプチドを発現させるための発現ベクターであり得る。
【0131】
組換え型のタンパク質の発現のためのベクターは、当技術分野で周知である(Ausubel,et al,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley&Sons,1995;Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,(1989)Cold Spring Harbor,N.Y.)。
【0132】
融合DNA構築物は、例えばその開示が参照によって本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第0215594号明細書に概ね記載されているのと同様に、周知の技術を使用して構築することができる。
【0133】
対象となるポリペプチド(例えば免疫グロブリン)をコードする天然又は合成のポリヌクレオチド断片を、宿主細胞(例えば、糸状菌宿主細胞)への導入及び宿主細胞中での複製を可能にする異種の核酸構築物又はベクターに組み込むことができる。
【0134】
DNA構築物、より具体的には融合DNA構築物が作製されたら、これを、当技術分野で公知であるような、あらゆる数のベクターに組み込むことができる。DNA構築物は、いくつかの実施形態では、プロモーター配列を含むこととなるが、他の実施形態では、ベクターが、形質転換されることとなる宿主において機能性の他の調節配列、例えば、リボソーム結合部位、転写開始及び停止配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化シグナル、エンハンサー、及び/又はアクチベーターを含むこととなる。いくつかの実施形態では、改変抗体をコードするポリヌクレオチドは、プロモーター、シグナル配列、及び担体タンパク質を含むベクターの適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に、標準の手順によって挿入される。こうした手順及び関連のサブクローニング手順は、当業者の知識の範囲内であるとみなされる。
【0135】
転写を終結させるための、発現宿主によって認識されるターミネーター配列は、発現されることとなる改変抗体をコードする融合DNA構築物の3’末端に作動可能に連結させることができる。当業者は、糸状菌などの宿主細胞と共に使用することができる様々なターミネーター配列をよく知っている。非限定的な例としては、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)trpC遺伝子(Yelton M.et al.,(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1470-1474)由来のターミネーター、又はクロカビ(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ遺伝子(Nunberg et al.(1984)Mol.Cell.Biol.4:2306-2353)由来のターミネーター、又はトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドロラーゼI遺伝子由来のターミネーターが挙げられる。
【0136】
ポリアデニル化配列は、転写されたものが発現宿主によって認識された場合に、転写されたmRNAにポリアデノシン残基を付加するDNA配列である。例としては、A.ニデュランス(A.nidulans)trpC遺伝子(Yelton et al(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81;1470-1474);クロカビ(A.niger)グルコアミラーゼ遺伝子(Nunberg et al.(1984)Mol.Cell.Biol.4:2306-2315);コウジカビ(A.oryzae)又はクロカビ(A.niger)アルファアミラーゼ遺伝子、及びリゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)カルボキシルプロテアーゼ遺伝子由来のポリアデニル化配列が挙げられる。
【0137】
さらなる実施形態では、融合DNA構築物、又は融合DNA構築物を含むベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にする選択可能マーカー遺伝子を含有することとなる。選択マーカー遺伝子は、当技術分野で周知であり、使用される宿主細胞と共に変化することとなる。選択可能マーカーの例としては、限定はされないが、抗菌薬耐性を与えるもの(例えば、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、及びフレオマイシン)が挙げられる。栄養選択マーカーなどの代謝的優位性を与える遺伝子も使用することができる。これらのマーカーのある種のものとして、amdSが挙げられる。また、栄養要求性の欠陥を補完する遺伝子をコードする配列も、選択マーカーとして使用することができる(例えばpyr4欠損A.ニデュランス(A.nidulans)、アワモリコウジカビ(A.awamori)、又はトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)のpyr4補完、及びargB欠損株のargB補完)。Kelley et al.(1985)EMBO J.4:475-479;Penttila et al.,(1987)Gene 61:155-164、及びKinghorn et al(1992)Applied Molecular Genetics of Filamentous Fungi,Blackie Academic and Professional,Chapman and Hall,London(そのそれぞれの開示が参照によって本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0138】
E.宿主細胞
発現カセット又はベクターは、改変抗体をコードする対応するポリヌクレオチドをその後発現する好適な発現宿主細胞に導入することができる。
【0139】
好適な宿主細胞としては、あらゆる微生物の細胞(例えば、細菌、原生生物、藻類、真菌(例えば、酵母若しくは糸状菌)、又は他の微生物の細胞)が挙げられ、また、好適な宿主細胞は、細菌、酵母、又は糸状菌の細胞であり得る。真菌の発現宿主は、例えば、エタノール源(ethanologen)としての役割を果たすこともできる酵母であり得る。適したものはまた、マウス(例えば、NS0)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、又はベビーハムスター腎臓(BHK)細胞株などの、哺乳類の発現宿主である。昆虫細胞又はウイルス発現系(例えば、M13、T7ファージ、又はラムダなどのバクテリオファージ、又はバキュロウイルスなどのウイルス)などの他の真核生物宿主も、ポリペプチドを産生するために適している。
【0140】
好適な細菌の属の宿主細胞には、限定はされないが、大腸菌属(Escherichia)、プロテウス属(Proteus)、バチルス属(Bacillus)、ラルストニア属(Ralstonia)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、及びストレプトマイセス属(Streptomyces)の細胞が含まれる。好適な細菌の種の細胞には、限定はされないが、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzerei)、スタフィロコッカス・カルノーサス(Staphylococcus carnosus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、及びストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)の細胞が含まれる。
【0141】
好適な酵母の属の宿主細胞には、限定はされないが、サッカロミケス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、ピキア属(Pichia)、クリベロミセス属(Kluyveromyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、及びファフィア属(Phaffia)の細胞が含まれる。好適な酵母の種の細胞には、限定はされないが、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、P.カナデンシス(P.canadensis)、クリベロミセス・マルキシアナス(Kluyveromyces marxianus)、及びファフィア・ロドジマ(Phaffia rhodozyma)の細胞が含まれる。
【0142】
好適な糸状菌の宿主細胞には、すべての糸状形態の真菌亜門(subdivision Eumycotina)が含まれる。好適な糸状菌属の細胞には、限定はされないが、アクレモニウム属(Acremonium)、コウジカビ属(Aspergillus)、オーレオバシディウム属(Aureobasidium)、ブエルカンデラ属(Bjerkandera)、セリポリオプシス属(Ceriporiopsis)、クリソスポリウム属(Chrysoporium)、ヒトヨタケ属(Coprinus)、カワラタケ属(Coriolus)、コリナスクス属(Corynascus)、ケトミウム属(Chaertomium)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、フィロバシディウム属(Filobasidium)、フザリウム属(Fusarium)、ジベレラ属(Gibberella)、フミコラ属(Humicola)、マグナポルテ属(Magnaporthe)、ケカビ属(Mucor)、マイセリオフトラ属(Myceliophthora)、ケカビ属(Mucor)、ネオカリマスティクス属(Neocallimastix)、アカパンカビ属(Neurospora)、ペシロマイセス属(Paecilomyces)、アオカビ属(Penicillium)、ファネロカエテ属(Phanerochaete)、フレビア属(Phlebia)、ピロミセス属(Piromyces)、ヒラタケ属(Pleurotus)、スキタリジウム属(Scytaldium)、スエヒロタケ属(Schizophyllum)、スポロトリクム属(Sporotrichum)、タラロミセス属(Talaromyces)、タラロミセス属(Thermoascus)、ティエラビア属(Thielavia)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、ホウロクタケ属(Trametes)、及びトリコデルマ属(Trichoderma)の細胞が含まれる。
【0143】
好適な糸状菌種の細胞には、限定はされないが、アワモリコウジカビ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、クロカビ(Aspergillus niger)、コウジカビ(Aspergillus oryzae)、クリソスポリウム・ルクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クルックウェレンセ(Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミヌム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・レチクラタム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フザリウム・サンブシヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコセキオイデス(Fusarium trichothecioides)、フザリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)、ブエルカンデラ・アズスタ(Bjerkandera adusta)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・カレギエア(Ceriporiopsis caregiea)、セリポリオプシス・ギルベセンス(Ceriporiopsis gilvescens)、セリポリオプシス・パノシンタ(Ceriporiopsis pannocinta)、セリポリオプシス・リブロサ(Ceriporiopsis rivulosa)、セリポリオプシス・スブルファ(Ceriporiopsis subrufa)、セリポリオプシス・サブバーミスポラ(Ceriporiopsis-subvermispora)、ネナガヒトヨタケ(Coprinus cinereus)、アラゲカワラタケ(Coriolus hirsutus)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)、マイセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、ニューロスポラ・インターメディア(Neurospora intermedia)、ペニシリウム・プルプロゲナム(Penicillium・purpurogenum)、ペニシリウム・カネセンス(Penicillium canescens)、ペニシリウム・ソリタム(Penicillium solitum)、ペニシリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum)、白色腐朽菌(Phanerochaete chrysosporium)、フレビア・ラジエート(Phlebia radiate)、エリンギ(Pleurotus eryngii)、タラロミセス・フラバス(Talaromyces-flavus)、ティエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、フルイカワラタケ(Trametes villosa)、カワラタケ(Trametes versicolor)、トリコデルマ・ハルチアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トトリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、及びトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)の細胞が含まれる。
【0144】
対象となるある特定の宿主における分泌されるタンパク質に関連するプロモーター及び/又はシグナル配列は、その宿主又は他の宿主における改変抗体の異種産生及び分泌に使用するための候補である。非限定的な例として、糸状菌系では、セロビオヒドロラーゼI(cbh1)、グルコアミラーゼA(glaA)、TAKA-アミラーゼ(amyA)、キシラナーゼ(exlA)、gpdA-プロモーターcbh1、cbhll、エンドグルカナーゼ遺伝子eg1-eg5、Cel61B、Cel74A、gpdプロモーター、Pgk1、pki1、EF-1アルファ、tef1、cDNA1、及びhex1に対する遺伝子を駆動するプロモーターが適しており、たくさんの様々な微生物(例えば、クロカビ(A.niger)、T.リーゼイ(T.reesei)、コウジカビ(A.oryzae)、アワモリコウジカビ(A.awamori)、A.ニデュランス(A.nidulans))から得ることができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、改変抗体をコードするポリヌクレオチドは、細胞外(又はペリプラズム)空間への組換え型ポリペプチドの分泌をもたらす好適な相同又は異種シグナル配列をコードするポリヌクレオチドと組換えによって結合され、それによって、細胞上清(又はペリプラズム空間若しくはライセート)における直接的な検出が可能になる。大腸菌(Escherichia coli)、他のグラム陰性細菌、及び当技術分野で公知の他の微生物に適したシグナル配列には、HlyA、DsbA、Pbp、PhoA、PelB、OmpA、OmpT、又はM13ファージGill遺伝子の発現を駆動するものが含まれる。枯草菌(Bacillus subtilis)、グラム陽性微生物、及び当技術分野で公知の他の微生物については、好適なシグナル配列には、さらに、AprE、NprB、Mpr、AmyA、AmyE、Blac、SacBの発現を駆動するものが含まれ、出芽酵母(S.cerevisiae)又は他の酵母については、キラー毒素、Bar1、Suc2、接合因子アルファ、Inu1A、又はGgplpシグナル配列が含まれる。シグナル配列は、いくつかのシグナルペプチダーゼによって切断する、したがって、発現されたタンパク質のその他の部分から除去することができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、改変抗体は、単独で、又はN又はC末端に位置する追加のペプチド、タグ、又はタンパク質(例えば、6XHis、HA、又はFLAGタグ)との融合体として発現される。好適な融合体は、アフィニティ精製又は検出を容易にするタグ、ペプチド、又はタンパク質(例えば、6XHis、HA、キチン結合タンパク質、チオレドキシン、又はFLAGタグ)、並びに標的ベータ-グルコシダーゼの発現、分泌、又はプロセシングを容易にするものを含む。KEX2に加えて、さらなる好適なプロセシング部位には、エンテロキナーゼ、STE13、又はインビボ又はインビトロでの切断のための当技術分野で公知の他のプロテアーゼ切断部位が含まれる。
【0147】
改変抗体をコードするポリヌクレオチドは、限定はされないが、電気穿孔法、脂質媒介性の形質転換又は遺伝子導入(「リポフェクション」)、化学的に媒介される遺伝子導入(例えば、CaCl及び/又はCaP)、酢酸リチウム媒介性の(例えば、宿主-細胞プロトプラストの)形質転換、微粒子銃「遺伝子銃」形質転換、PEG媒介性の(例えば、宿主-細胞プロトプラストの)形質転換、プロトプラスト融合(例えば、細菌又は真核生物のプロトプラストを使用する)、リポソーム媒介性形質転換、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、アデノウイルス若しくは他のウイルス、又はファージ形質転換又は形質導入を含めた、いくつかの形質転換方法によって、発現宿主細胞に導入することができる。
【0148】
III.方法
A.抗体を生成するための方法
本明細書に開示される改変抗体(すなわち、上記のような修飾ヒンジを組み込んだ抗体)は、抗体の合成のために当技術分野において既知の任意の方法、特に、化学合成又は組換え発現技術によって産生され得る。
【0149】
特定の抗原を認識するポリクローナル抗体は、当技術分野において周知の種々の手順によって産生され得る。例えば、限定はされないが、ウサギ、マウス、ラットなどを含む種々の宿主動物に、抗原又はその免疫原性断片が投与されて、抗原に特異的なポリクローナル抗体を含有する血清の産生を誘発することができる。宿主種に応じて免疫学的応答を増大させるために、種々のアジュバントが使用されてもよく、限定はされないが、フロイント(完全及び不完全)、ミネラルゲル、例えば、水酸化アルミニウム、界面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニック(登録商標)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルション、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、並びに潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)が含まれる。このようなアジュバントも当技術分野において周知である。
【0150】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え体、及びファージディスプレイ技術、又はこれらの組み合わせの使用を含む、当技術分野において既知の様々な種類の技術を用いて作製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野において既知のものを含むハイブリドーマ技術を用いて産生され、例えば、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling、et al.,in:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981)において教示され得る。本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術を介して産生される抗体に限定されない。用語「モノクローナル抗体」は、それが産生される方法ではなく、あらゆる真核生物、原核生物、又はファージクローンを含む単一クローンに由来する抗体を指す。
【0151】
ハイブリドーマ技術を用いた特異的抗体の産生及びスクリーニングのための方法はルーチン的であり、当技術分野において周知である。簡単には、マウスを抗原又はその免疫原性断片により免疫化することができ、免疫応答が検出されたら、例えば、投与された抗原に特異的な抗体がマウス血清中で検出されたら、マウス脾臓が摘出され、脾細胞が単離される。次に、脾細胞は、周知の技術によって、任意の適切な骨髄腫細胞、例えば、ATCCから入手可能な細胞株SP20からの細胞に融合される。さらに、RIMMS(反復免疫化、複数部位)技術を使用して、動物を免疫化することができる(Kilpatrick et al.,1997,Hybridoma 16:381-9)。ハイブリドーマが選択され、限定希釈によってクローニングされる。次に、ハイブリドーマクローンは、当技術分野において既知の方法によって、本発明のポリペプチドに結合することができる抗体を分泌する細胞についてアッセイされる。陽性ハイブリドーマクローンによりマウスを免疫化することによって、高レベルの抗体を通常含有する腹水を生成することができる。
【0152】
したがって、モノクローナル抗体は、抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養することによって生成することができ、ここで、ハイブリドーマは、抗原又はその免疫原性断片で免疫化したマウスから単離された脾細胞を骨髄腫細胞と融合させてから、投与された抗原に結合することができる抗体を分泌するハイブリドーマクローンについて、融合物から得られるハイブリドーマをスクリーニングすることによって生成され得る。
【0153】
本明細書に開示される改変抗体は、さらに、そのヒンジ領域に新規のアミノ酸残基を含有することができる。改変抗体は、当業者に周知の多数の方法によって生成され得る。非限定的な例としては、抗体コード領域(例えば、ハイブリドーマ由来)を単離し、単離した抗体コード領域に本発明の1つ以上のヒンジ修飾を導入することが挙げられる。或いは、可変領域は、修飾ヒンジ領域(例えば、本明細書に開示されるもののいずれか)をコードするベクターにサブクローニングされ得る。付加的な方法及び詳細は以下に提供される。
【0154】
特異的抗原を認識する抗体断片は、当業者に知られている任意の技術によって生成され得る。例えば、本発明のFab及びF(ab’)2断片は、パパイン(Fab断片をもたらす)又はペプシン(F(ab’)2断片をもたらす)などの酵素を用いて、免疫グロブリン分子のタンパク質分解的切断によって産生され得る。F(ab’)2断片は、可変領域、軽鎖定常領域及び重鎖のCH1ドメインを含有する。さらに、本明細書に開示される改変抗体は、当技術分野において既知の種々のファージディスプレイ法を用いて生成することもできる。
【0155】
ファージディスプレイ法において、機能性抗体ドメインは、それをコードするポリヌクレオチド配列を保有するファージ粒子の表面に提示される。特に、VH及びVLドメインをコードするDNA配列は、動物cDNAライブラリー(例えば、リンパ系組織のヒト又はマウスcDNAライブラリー)から増幅される。VH及びVLドメインをコードするDNAは、PCRによって、scFvリンカーと共に組み換えられ、ファージミドベクター(例えば、pCANTAB6又はpComb3HSS)にクローニングされる。ベクターは大腸菌(E.coli)に電気穿孔され、大腸菌(E.coli)はヘルパーファージに感染される。これらの方法で使用されるファージは、通常、fd及びM13を含む繊維状ファージであり、VH及びVLドメインは、一般に、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIのいずれかに組換えで融合される。対象となる抗原エピトープに結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、例えば、標識抗原、又は固体表面若しくはビーズに結合若しくは捕獲された抗原を用いて、抗原により選択又は同定され得る。本明細書に開示される改変抗体を作るために使用可能なファージディスプレイ法の例としては、Brinkman et al.,1995,J.Immunol.Methods 182:41-50;Ames et al.,1995,J.Immunol.Methods 184:177-186;Kettleborough et al.,1994,Eur.J.Immunol.24:952-958;Persic et al.,1997,Gene 187:9-18;Burton et al.,1994,Advances in Immunology 57:191-280;PCT公開国際公開第90/02809号パンフレット、国際公開第91/10737号パンフレット、国際公開第92/01047号パンフレット、国際公開第92/18619号パンフレット、国際公開第93/11236号パンフレット、国際公開第95/15982号パンフレット、国際公開第95/20401号パンフレット、及び国際公開第97/13844号パンフレット;並びに米国特許第5,698,426号明細書、同第5,223,409号明細書、同第5,403,484号明細書、同第5,580,717号明細書、同第5,427,908号明細書、同第5,750,753号明細書、同第5,821,047号明細書、同第5,571,698号明細書、同第5,427,908号明細書、同第5,516,637号明細書、同第5,780,225号明細書、同第5,658,727号明細書、同第5,733,743号明細書、及び同第5,969,108号明細書に開示されるものが挙げられる。
【0156】
上記の参考文献に記載されるように、ファージ選択の後、ファージからの抗体コード領域を単離し、ヒト抗体を含む全抗体又は任意の他の所望の抗原結合断片を生成するために使用し、例えば以下に記載されるように、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及び細菌を含む任意の所望の宿主において発現させることが可能である。また、国際公開第92/22324号パンフレット;Mullinax et al.,1992,BioTechniques 12(6):864-869;Sawai et al.,1995,AJRI 34:26-34;及びBetter et al.,1988,Science 240:1041-1043に開示されるものなど、当技術分野において既知の方法を用いて、Fab、Fab’及びF(ab’)2断片を組換えで産生させるための技術も使用することができる。
【0157】
全抗体を生成するために、VH又はVLヌクレオチド配列、制限部位、及び制限部位を保護するためのフランキング配列を含むPCRプライマーを使用して、scFvクローンにおいてVH又はVL配列を増幅させることができる。当業者に知られているクローニング技術を利用して、PCR増幅VHドメインをVH定常領域、例えば、ヒトガンマ定常領域を発現するベクターにクローニングすることができ、PCR増幅VLドメインをVL定常領域、例えば、ヒトカッパ又はラムダ定常領域を発現するベクターにクローニングすることができる。定常領域は、修飾ヒンジ(例えば、本明細書に開示される修飾ヒンジのいずれか)を含むことが企図される。特定の実施形態では、VH又はVLドメインを発現させるためのベクターは、プロモーター、分泌シグナル、可変及び定常ドメインの両方のためのクローニング部位、並びにネオマイシンなどの選択マーカーを含む。またVH及びVLドメインは、所望の定常領域を発現する1つのベクターにクローニングされてもよい。次に、重鎖転換ベクター及び軽鎖転換ベクターは、当業者に知られている技術を用いて、全長抗体、例えばIgGを発現する安定な又は一過性の細胞株を生成するために、細胞株に同時導入される。
【0158】
キメラ抗体は、抗体の異なる部分が異なる免疫グロブリン分子に由来する分子である。キメラ抗体を産生するための方法は、当技術分野において知られている。例えば、Morrison,1985,Science 229:1202;Oi et al.,1986,BioTechniques 4:214;Gillies et al.,1989,J.Immunol.Methods 125:191-202;並びに米国特許第5,807,715号明細書、同第4,816,567号明細書、同第4,816397号明細書、及び同第6,311,415号明細書を参照されたい。
【0159】
ヒトにおける抗体のインビボ使用及びインビトロ検出アッセイを含むいくつかの使用については、ヒト又はキメラ抗体を使用することが好ましいことがある。完全ヒト抗体は、ヒト対象の治療的処置のために特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを用いる上記のファージディスプレイ法を含む、当技術分野において既知の様々な方法によって作製され得る。米国特許第4,444,887号明細書及び同第4,716,111号明細書;並びにPCT公開国際公開第98/46645号パンフレット、国際公開第98/50433号パンフレット、国際公開第98/24893号パンフレット、国際公開第98/16654号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレット、国際公開第96/33735号パンフレット、及び国際公開第91/10741号パンフレットも参照されたい。
【0160】
ヒト化抗体は、所定の抗原に結合することができ、且つ実質的にヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有するフレームワーク領域と、実質的に非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有するCDRとを含む、抗体若しくはそのバリアント又はそれらの断片である。ヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のものに相当し、且つフレームワーク領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、通常は2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fabc、Fv)の実質的に全てを含む。具体的な実施形態では、ヒト化抗体は、通常はヒト免疫グロブリンのものである免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含む。通常、抗体は、軽鎖と、重鎖の少なくとも可変ドメインとの両方を含有することとなる。また抗体は、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、及びCH4領域を含み得る。ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含むあらゆるクラスの免疫グロブリン、並びにIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含むあらゆるアイソタイプから選択することができる。通常、定常ドメインは、ヒト化抗体が細胞毒活性を示すことが望ましい場合には補体固定定常ドメインであり、そのクラスは通常IgG.sub.1である。このような細胞毒活性が望ましくない場合、定常ドメインはIgG.sub.2クラスであり得る。ヒト化抗体は2つ以上のクラス又はアイソタイプからの配列を含むことができ、所望のエフェクター機能を最適化するために特定の定常ドメインを選択することは、当技術分野における通常の技能の範囲内である。親配列に正確に対応しなくてもよいヒト化抗体のフレームワーク及びCDR領域、例えば、ドナーCDR又はコンセンサスフレームワークは、少なくとも1つの残基の置換、挿入又は欠失によって、その部位のCDR又はフレームワーク残基がコンセンサス又はインポート抗体のいずれにも対応しないように変異誘発され得る。しかしながら、このような変異は広範囲には及ばないであろう。通常、ヒト化抗体残基の少なくとも75%、より多くの場合90%、又は95%超は、親フレームワーク領域(FR)及びCDR配列のものに対応することとなる。ヒト化抗体は、限定はされないが、CDRグラフティング(欧州特許第239,400号明細書;国際公開第91/09967号パンフレット;並びに米国特許第5,225,539号明細書、同第5,530,101号明細書、及び同第5,585,089号明細書)、ベニヤリング(veneering)又はリサーフェイシング(resurfacing)(欧州特許第592,106号明細書及び欧州特許第519,596号明細書;Padlan,1991,Molecular Immunology 28(4/5):489-498;Studnicka et al.,1994,Protein Engineering 7(6):805-814;並びにRoguska et al.,1994,PNAS 91:969-973)、チェーンシャフリング(chain shuffling)(米国特許第5,565,332号明細書)、並びに、例えば、米国特許第6,407,213号明細書、米国特許第5,766,886号明細書、国際公開第9317105号パンフレット、Tan et al.,J.Immunol.169:1119-25(2002)、Caldas et al.,Protein Eng.13(5):353-60(2000)、Morea et al.,Methods 20(3):267-79(2000)、Baca et al.,J.Biol.Chem.272(16):10678-84(1997)、Roguska et al.,Protein Eng.9(10):895-904(1996)、Couto et al.,Cancer Res.55(23 Supp):5973s-5977s(1995),Couto et al.,Cancer Res.55(8):1717-22(1995)、Sandhu JS,Gene 150(2):409-10(1994)、及びPedersen et al.,J.Mol.Biol.235(3):959-73(1994)に開示される技術を含む、当技術分野において既知の様々な技術を用いて産生され得る。多くの場合、フレームワーク領域内のフレームワーク残基は、CDRドナー抗体からの対応する残基によって置換されて、抗原結合を変更、好ましくは改良することとなる。これらのフレームワーク置換は、当技術分野において周知の方法、例えば、CDR及びフレームワーク残基の相互作用をモデリングして、抗原結合及び配列比較のために重要なフレームワーク残基を同定し、特定の位置において普通でないフレームワーク残基を同定することによって同定される(例えば、Queen et al.,米国特許第5,585,089号明細書;及びRiechmann et al.,1988,Nature 332:323を参照のこと)。
【0161】
またヒト抗体は、機能性内在性免疫グロブリンを発現することはできないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを用いて産生され得る。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体は、ランダムに又は相同組換えによって、マウス胚幹細胞に導入され得る。或いは、ヒト可変領域、定常領域、及び多様性領域も、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子に加えて、マウス胚幹細胞に導入され得る。マウス重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン座位の導入によって、別々に又は同時に非機能性にされ得る。特に、JH領域のホモ接合型欠失は、内在性抗体産生を防止する。修飾された胚幹細胞は増殖され、胚盤胞にマイクロインジェクトされて、キメラマウスが作製される。次に、キメラマウスは繁殖され、ヒト抗体を発現するホモ接合子孫を生じさせる。トランスジェニックマウスは、通常の方法で、選択された抗原又はその免疫原性断片により免疫化される。抗原に対するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて、免疫化されたトランスジェニックマウスから得ることができる。トランスジェニックマウスが保持するヒト免疫グロブリン導入遺伝子はB細胞分化中に再配列し、続いてクラススイッチ及び体細胞変異を受ける。したがって、このような技術を用いて、治療的に有用なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を産生させることが可能である。ヒト抗体を産生するためのこの技術の概要については、Lonberg and Huszar(1995,Int.Rev.Immunol.13:65-93)を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を産生するためのこの技術及びこのような抗体を産生するためのプロトコルの詳細な議論については、例えば、国際公開第98/24893号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレット、及び国際公開第96/33735号パンフレット;並びに米国特許第5,413,923号明細書、同第5,625,126号明細書、同第5,633,425号明細書、同第5,569,825号明細書、同第5,661,016号明細書、同第5,545,806号明細書、同第5,814,318号明細書、及び同第5,939,598号明細書を参照されたい。
【0162】
さらに、本明細書に開示される改変抗体は、次に、当業者に周知の技術を用いて、受容体を「模倣する」抗イディオタイプ抗体を生成するために利用することができる(例えば、Greenspan & Bona,1989,FASEB J.7(5):437-444;及びNissinoff,1991,J.Immunol.147(8):2429-2438を参照のこと)。例えば、そのリガンドに結合して、受容体の結合を競合的に阻害する(当技術分野において周知であり、以下に議論されるアッセイにより決定される)本発明の抗体は、リガンドを「模倣し」、結果として受容体及び/又はそのリガンドに結合して中和する抗イディオタイプを生成するために使用することができる。このような中和抗イディオタイプ又はこのような抗イディオタイプのFab断片は、リガンド及び/又はその受容体を中和するために、治療レジメンにおいて使用することができる。改変抗体又はその断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの使用を用いる方法が本明細書において提供される。
【0163】
一実施形態では、抗原に特異的に結合する抗体をコードするヌクレオチド配列が得られ、本明細書に開示される改変抗体を生成するために使用される。ヌクレオチド配列は、ハイブリドーマクローンDNAの配列決定から得ることができる。特定の抗体又はそのエピトープ結合断片をコードする核酸を含有するクローンは入手できないが、抗体分子又はそのエピトープ結合断片の配列が分かっていれば、免疫グロブリンをコードする核酸は、化学的に合成することもできるし、或いは、適切な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリー、又は抗体を発現するように選択されたハイブリドーマ細胞などの抗体を発現する任意の組織若しくは細胞から作製されたcDNAライブラリー、又はその組織若しくは細胞から単離された核酸、好ましくはポリA+RNA)から、配列の3’及び5’末端にハイブリッド形成する合成プライマーを用いるPCR増幅によって、又は特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いてクローニングして、例えば、抗体をコードするcDNAライブラリーからのcDNAクローンを同定することによって得ることもできる。PCRにより生成された増幅核酸は次に、当技術分野において周知の任意の方法を用いて、複製可能なクローニングベクターにクローニングされ得る。
【0164】
抗体のヌクレオチド配列が決定されたら、抗体のヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の操作のために当技術分野において周知の方法、例えば、組換えDNA技術、部位特異的変異誘発、PCRなど(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,ed.,John Wiley & Sons(Chichester,England,1998);Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3nd Edition,J.Sambrook et al.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(Cold Spring Harbor,N.Y.,2001);Antibodies:A Laboratory Manual,E.Harlow and D.Lane,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(Cold Spring Harbor,N.Y.,1988);及びUsing Antibodies:A Laboratory Manual,E.Harlow and D.Lane,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(Cold Spring Harbor,N.Y.,1999)に記載される技術を参照のこと)を用いて、例えば、抗体の所望の領域に欠失、及び/又は挿入を導入することによって、異なるアミノ酸配列を有する抗体を生成するように操作され得る。
【0165】
具体的な実施形態では、ルーチン的な組換えDNA技術を用いて、CDRの1つ以上がフレームワーク領域内に挿入される。フレームワーク領域は、限定はされないが、ヒトフレームワーク領域(例えば、ヒトフレームワーク領域のリストについては、Chothia et al.,1998,J.Mol.Biol.278:457-479を参照のこと)を含む、天然に存在する又はコンセンサスフレームワーク領域であり得る。フレームワーク領域及びCDRの組み合わせにより生成されるポリヌクレオチドは、抗原に特異的に結合する抗体をコードすることが企図される。一実施形態では、上記で議論されるように、フレームワーク領域において1つ以上のアミノ酸置換を行うことができ、特定の実施形態では、アミノ酸置換は、抗体のその抗原への結合を改良する。さらに、このような方法を使用して、1つ以上の鎖内ジスルフィド結合を欠いた抗体分子を生成するために、鎖内ジスルフィド結合に関与する1つ以上の可変領域システイン残基のアミノ酸置換又は欠失を行うことができる。ポリヌクレオチドに対する他の変更は本発明によって包含され、当技術分野の技能の範囲内である。
【0166】
このようなスクリーニング法から同定される抗体のヒンジを上記のように修飾して、修飾ヒンジ、例えば、上記で開示されたもののいずれかを組み込んだ抗体を生成することができる。さらに、本明細書に開示される改変抗体は、限定はされないが、炎症性疾患、自己免疫疾患、骨代謝関連障害、血管新生関連障害、感染、及び癌を含む、疾患、障害、感染の予防、管理及び処置に有用であることが企図される。このような抗体は、本明細書に開示される方法及び組成物において使用することができる。
【0167】
B.組換え発現
本明細書に開示される改変抗体、並びに誘導体、類似体又はその断片(例えば、本発明の抗体又は融合タンパク質)のいずれかの組換え発現は、改変抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を必要とする。改変抗体をコードするポリヌクレオチドが得られたら、当技術分野において周知の技術を用いる組換えDNA技術によって、改変抗体の産生のためのベクターを作製することができる。したがって、改変抗体をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドを発現させることによりタンパク質を作製するための方法が本明細書に記載される。当業者によく知られている方法を使用して、改変抗体コード配列並びに適切な転写及び翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、及びインビボ遺伝子組換えが含まれる。
【0168】
発現ベクターは従来の技術によって宿主細胞に導入され、次に、遺伝子導入された細胞は従来の技術によって培養され、改変抗体(例えば、本明細書に開示されるもののいずれか)が産生される。二本鎖抗体を含む改変抗体の発現のための特定の実施形態では、重鎖及び軽鎖の両方をコードするベクターは、免疫グロブリン分子全体の発現のために宿主細胞において同時発現され得る。
【0169】
C.医薬組成物の投与
また本明細書で提供されるのは、本明細書に開示される改変抗体(例えば、本明細書に開示される修飾ヒンジ領域を含む任意の抗体)のいずれかを含む方法及び医薬組成物である。さらに、本明細書で提供されるのは、有効量の少なくとも1つの本明細書に開示される改変抗体、又は少なくとも1つの本明細書に開示される改変抗体を含む医薬組成物を対象に投与することによって、疾患、障害又は感染に関連する1つ以上の症状の処置、予防、及び改善の方法である。一態様において、改変抗体は、実質的に精製される(すなわち、その効果を限定するか、又は望ましくない副作用をもたらす物質を実質的に含まない)。具体的な実施形態では、対象は、非霊長類(例えば、雌ウシ、ブタ、ニワトリ又は他の家禽、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)及び霊長類(例えば、カニクイザルなどのサル、及びヒト)を含む哺乳類などの動物である。具体的な実施形態では、対象はヒトである。さらに別の特定の実施形態では、本発明の抗体は、対象と同じ種に由来する。
【0170】
組成物の投与経路は、処置される状態によって決まる。例えば、全身性障害、例えば、転移したリンパ性癌又は腫瘍の処置のために静脈注射が好ましいことがある。投与される組成物の薬用量は、標準的な用量応答研究と共に、過度の実験を行わなくても当業者によって決定され得る。これらの決定を行う際に考慮すべき関連状況には、処置される状態(単数又は複数)、投与される組成物の選択、個々の患者の年齢、体重、及び応答、並びに患者の症状の重症度が含まれる。状態に応じて、組成物は、経口的、非経口的、鼻腔内、経膣的、経直腸的、舌側、舌下、頬側、口腔内(intrabuccally)及び/又は経皮的に、患者に投与することができる。
【0171】
したがって、経口、舌側、舌下、頬側及び口腔内投与用に設計された組成物は、過度の実験を行わなくても、例えば、不活性希釈剤又は食用担体を用いて、当技術分野において周知の手段によって作製することができる。組成物はゼラチンカプセル内に封入されるか、又は錠剤に圧縮され得る。治療的経口投与のために、本発明の医薬組成物は賦形剤と合わせられ、錠剤、ペレット、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハ、チューインガムなどの形態で使用され得る。さらなる実施形態では、組成物は、動物飼料中に包含され得る。
【0172】
錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、結合剤、レシピエント、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、及び/又は香味剤も含有し得る。結合剤のいくつかの例としては、微結晶性セルロース、トラガカントガム及びゼラチンが挙げられる。賦形剤の非限定的な例としては、デンプン及びラクトースが挙げられる。崩壊剤のいくつかの例としては、アルギン酸、コーンスターチなどが挙げられる。潤滑剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カリウムが挙げられる。流動化剤の一例は、コロイド状二酸化ケイ素である。甘味剤のいくつかの非限定的な例としては、スクロース、サッカリンなどが挙げられる。香味剤の例としては、ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジフレーバーなどが挙げられる。これらの種々の組成物の調製において使用される材料は、薬学的に純粋であり、且つ使用される量において無毒性でなければならない。
【0173】
本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内及び/又は皮下注射などによって非経口的に投与することができる。非経口投与は、本明細書に開示される組成物を溶液又は懸濁液中に包含させることによって達成することができる。このような溶液又は懸濁液は、無菌希釈剤、例えば、注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール及び/又は他の合成溶媒も含み得る。非経口製剤は、例えばベンジルアルコール及び/又はメチルパラベンなどの抗菌剤、例えばアスコルビン酸及び/又は重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤、並びにEDTAなどのキレート剤も含み得る。酢酸、クエン酸及びリン酸などの緩衝液、並びに塩化ナトリウム及びデキストロースなどのなどの浸透圧調整剤も添加され得る。非経口調製物は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ及び/又は複数回投与バイアル内に封入することができる。直腸投与は、組成物を直腸及び/又は大腸内に投与することを含む。これは、坐薬及び/又は浣腸を用いて達成することができる。坐薬製剤は、当技術分野において既知の方法によって作製することができる。経皮投与は、皮膚を通しての組成物の経皮吸収を含む。経皮製剤は、パッチ、軟膏、クリーム、ゲル、膏薬などを含む。本明細書に開示される改変抗体含有組成物は、患者に鼻腔投与することができる。本明細書で使用される場合、鼻腔内に投与すること又は鼻腔投与は、組成物を患者の鼻道及び/又は鼻腔の粘膜に投与することを含む。
【0174】
本明細書に開示される改変抗体含有組成物は、疾患、障害、又は感染に関連する1つ以上の症状を予防、処置、又は改善するための本発明の方法に従って使用することができる。本発明の医薬組成物は無菌であり、対象への投与に適した形態であることが企図される。
【0175】
一実施形態では、本明細書に開示される改変抗体含有組成物は、内毒素及び/又は関連の発熱物質を実質的に含まない、パイロジェンフリーの製剤である。内毒素は、微生物内に局在し、微生物が分解又は死滅したときに放出される毒素を含む。また発熱物質は、細菌及び他の微生物の外膜に由来する発熱性の熱安定性物質(糖タンパク質)も含む。これらの物質はいずれも、ヒトに投与されると発熱、低血圧及びショックを引き起こし得る。潜在的な悪影響のために、少量の内毒素でも、静脈投与される医薬品溶液から除去することが有利である。食品医薬品局(「FDA」)は、静脈内薬物投与について、1時間の単一期間に体重1キログラムにつき1用量当たり5内毒素単位(EU)の上限を設定している(The United States Pharmacopeial Convention,Pharmacopeial Forum 26(1):223(2000))。治療用タンパク質が体重1キログラム当たり数百又は数千ミリグラムの量で投与される場合、モノクローナル抗体と同様であるように、微量でも内毒素を除去することが有利である。具体的な実施形態では、組成物中の内毒素及び発熱物質レベルは、10EU/mg未満、又は5EU/mg未満、又は1EU/mg未満、又は0.1EU/mg未満、又は0.01EU/mg未満、又は0.001EU/mg未満である。
【0176】
さらに、本明細書で提供されるのは、疾患、障害、又は感染に関連する1つ以上の症状を予防、処置、又は改善するための方法であり、前記方法は、(a)本明細書に開示される改変抗体の1つ以上を含む、1回分の予防的又は治療的に有効な量の組成物を、それを必要としている対象に投与することと、(b)1つ以上の次の用量の前記改変抗体を投与して、継続的に抗原に結合する望ましいレベル(例えば、約0.1~約100μg/ml)の改変抗体の血漿濃度を維持することとを含む。具体的な実施形態では、改変抗体の血漿濃度は、10μg/ml、15μg/ml、20μg/ml、25μg/ml、30μg/ml、35μg/ml、40μg/ml、45μg/ml又は50μg/mlに維持される。具体的な実施形態では、投与すべき改変抗体の前記有効量は、1用量当たり少なくとも1mg/kg~8mg/kgである。別の具体的な実施形態では、投与すべき改変抗体の前記有効量は、1用量当たり少なくとも4mg/kg~8mg/kgである。さらに別の特定の実施形態では、投与すべき改変抗体の前記有効量は、1用量当たり50mg~250mgである。さらに別の特定の実施形態では、投与すべき改変抗体の前記有効量は、1用量当たり100mg~200mgである。
【0177】
また本明細書で提供されるのは、疾患、障害、又は感染に関連する1つ以上の症状を予防、処置、又は改善するためのプロトコルであり、本明細書に開示される改変抗体のいずれかは、治療法(例えば、予防又は治療薬)と組み合わせて使用される。本明細書に開示される改変抗体は、現在標準の及び実験的な化学療法を含む他の癌療法を増強及び相乗化する、その有効性を強化する、その耐性を向上させる、及び/又はそれによって引き起こされる副作用を低減することができる。本発明の併用療法は、相加的効力、相加的治療効果又は相乗効果を有する。本発明の併用療法は、疾患、障害、又は感染に関連する1つ以上の症状を予防、処置、又は改善するために本明細書に開示される改変抗体と共に利用される治療法(例えば、予防又は治療薬)のより低い薬用量を可能にし、及び/又は、疾患、障害、若しくは感染を有する対象のクオリティオブライフを向上させ、及び/又は予防若しくは治療効果を達成するために前記対象にこのような予防又は治療薬を投与する頻度の低下を可能にする。さらに、本発明の併用療法は、現在の単剤療法及び/又は現存の併用療法の実施に関連する不必要な又は有害な副作用を低減又は回避し、これは次に、治療プロトコルに関する患者のコンプライアンスを向上させる。本明細書に開示される改変抗体と組み合わせて利用することができる多数の分子は、当技術分野において周知である。例えば、PCT公開国際公開第02/070007号パンフレット;国際公開第03/075957号パンフレット及び米国特許出願公開第2005/064514号明細書を参照されたい。
【0178】
IV.キット
さらに、本明細書で提供されるのは、疾患、障害、又は感染に関連する1つ以上の症状をモニター、診断、予防、処置、又は改善するのに使用するために、1つ以上の容器内に、検出可能な薬剤、治療薬又は薬物にコンジュゲート又は融合された抗原に特異的に結合する、変更(例えば、改良)された安定性、及び/又は低下されたタンパク質分解的切断の可能性を有する本明細書に開示される改変抗体の1つ以上を含むキットである。
【0179】
本発明は、実例の目的で提供され且つ限定する目的ではない、以下の実施例を参照することによって、さらに理解することができる。
【実施例】
【0180】
実施例1:部位評価ライブラリーの産生及び評価
A.抗RSV HC重鎖のためのプラスミド及び部位評価構築
RSウイルス(パリビズマブ又はSynagis)に対するモノクローナル抗体の重鎖のための配列は、コドン最適化され、GeneArt GmH(Germany)によって合成された。真菌細胞内での発現中のKex2フーリン様プロテアーゼによる分解の可能性を防止するために、重鎖内の第216位のリジンを、トレオニン(K216T)に変異させた。最初に、c2G4及び抗RSV HCの合成配列を、そのリンカー領域(1-479 aa)と共に、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)天然セロビオヒドロラーゼI(CBH1)の触媒コアの後ろにそれぞれクローニングした。担体パートナーから成熟抗体鎖を放出させるために、リンカーとHCとの間にKex2切断部位を導入した。
【0181】
次いで、cbhI-HC_Synagisの融合構築物を、pDonor221ベクター(Invitrogen,USA)へのGateway(登録商標)BP組換えクローニングを可能にするためにattB1及びattB2部位で伸長させた遺伝子特異的プライマーを用いるPCRによって増幅した。
図1に示す通り、プラスミドpEntry-SynagisHC_Geneart_SELを、466-725 aa位置(CbhI Metからカウントしている)での部位評価(SEL)ライブラリーの構築のための鋳型として、供給業者BaseClear(Netherlands)によって使用した。aa位置ごとの変異バリアントの平均数は、およそ17であった。変異した配列を、Gateway(登録商標)LR組換え技術を介して、pTTTpyr2-ISceIデスティネーションベクターにさらにクローニングし、最終の発現プラスミドpTTTpyr2-ISceI-SynagisHC_Geneart_SEL(
図1)をもたらした。
【0182】
この発現ベクターは、対象となる遺伝子の強力な誘導性発現を可能にするT.リーゼイ(T.reesei)cbhIプロモーター及びターミネーター領域と、ウリジンを添加しない最少培地での形質転換体の増殖を与えるT.リーゼイ(T.reesei)pyr2選択マーカーを含有する。このプラスミドは、T.リーゼイ(T.reesei)由来のテロメア領域により、真菌細胞内で自律的に維持される。プラスミドを、市販品として入手可能な大腸菌(Escherichia coli)TOP10細胞(Invitrogen,US)内で増殖させ、精製し、配列確認し、96ウェルMTPにそれぞれ配列させ、下に記載する通りの真菌の形質転換のために使用した。
【0183】
pEntry-Synagis_LC_Geneartプラスミドを、Gateway(登録商標)BP組換えクローニングを介して構築し、上に記載したのと同様の方式で、pTrex6gデスティネーションベクターを用いてさらに組換え、発現ベクターpTrex6g-Synagis_LCをもたらした。このベクターは、軽鎖を発現するPCR断片を産生するための鋳型としての役割を果たした(
図4)。
【0184】
国際特許出願第PCT/US2020/021685号(その開示は、参照によってその全体が本明細書中に組み込まれる)に記載されるように、抗RSV抗体を作製した。抗単純ヘルペスウイルス抗体(HSV08)、抗HIV抗体(VRC01)、及び抗HER2/neu抗体(トラスツズマブ)を同様の方法で作製した。
【0185】
B.真菌宿主株構築及び形質転換
発現カセットは、CBH1プロモーター、CBH1コア、CBH1リンカーによって連結される抗体HC及びLC、及びCBH1のプロセシングのためのkex2配列、CBH1ターミネーター、並びに真菌細胞にクロリムロンエチルへの抵抗性を与えるalSマーカーからなる。SELバリアントのためにpyr2マーカーが利用可能になるように、スクリーニング株を作成するためにalSマーカーを使用した。この完全発現カセットを、PCRによって増幅した。PCR産物を、精製し、500~1000ng/μLに濃縮した。以下に記載されるように、この発現カセットを、多重コピーで、宿主T.リーゼイ(T.reesei)ゲノムにランダムに組み込んだ。
【0186】
形質転換のために使用された宿主T.リーゼイ(T.reesei)株は、主なセルラーゼ及びキシラナーゼについて欠失させた。この株を、標準のPEG-プロトプラスト形質転換方法を使用して形質転換させた。250μlの総体積中におよそ10μgのDNAと5×106個のプロトプラストを含有する形質転換混合物を、2mLの25% PEG溶液で処理し、2体積の1.2Mソルビトール/10mM Tris、pH7.5/10mM CaCl2溶液で希釈し、1Mソルビトール、1g/Lウリジン、75mg/Lクロリムロンエチル(最少培地中)を含有する26mLの2%低融点アガロースと混合し、あらかじめ注がれた1.5%アガロース、1Mソルビトール(最少培地中)を含有する4枚の10cmペトリ皿に分配した。十分な増殖後、各皿の形質転換体を観察し、それぞれのコロニーを、1.5%寒天、1g/Lウリジン、75mg/Lクロリムロンエチルを含有する新たな10cmペトリ皿に、安定性を評価する余地を与えるために皿あたり4つ選び取った。安定なコロニーの表現型は、平滑縁を伴う同心円状の増殖である。安定な形質転換体が観察され、十分に胞子形成されたら、Sigma-Aldrich(USA)からの軽鎖特異的抗体ペルオキシダーゼコンジュゲートを用いるウエスタンブロット分析によってLCの発現レベルを評価するために、胞子を回収し、液体培養物の植菌のために使用した。LCの高発現レベルを有する1つの形質転換体#LC6は、重鎖SELライブラリーのさらなる発現のためのスクリーニング宿主としての役割を果たした。
【0187】
Synagis HCバリアントを用いるすべてのハイスループット形質転換は、Biomekロボット(Beckman Coulter,USA)を使用する24ウェルMTPフォーマットで、ロボット制御によって実施した。バリアントを有するプラスミドは、あらかじめ決定された配置に従って配列された96ウェルフォーマットで、供給業者から受け取った。50μlの総体積中におよそ1μgのDNAと5x106個のスクリーニング宿主#LC6のプロトプラストとを含有する形質転換混合物を、200μlの25% PEG溶液で処理し、1体積の1.2Mソルビトール/10mM Tris、pH7.5/10mM CaCl2溶液で希釈し、ロボット制御によって24ウェルMTPに再配列し、1Mソルビトール(最少培地中)を含有する1mlの3%低融点アガロース中に注いだ。十分な増殖後、各ウェルからの形質転換体を一緒にプールし、最少培地を有する新たな24ウェル寒天皿に乗せた。胞子形成されたら、胞子を回収し、液体培養物の植菌のために使用した。
【0188】
国際特許出願第PCT/US2020/021685号(その開示は、参照によってその全体が本明細書中に組み込まれる)に記載されるように、抗RSV抗体のための真菌宿主株の構築及び形質転換を行った。抗単純ヘルペスウイルス抗体(HSV08)、抗HIV抗体(VRC01)、及び抗HER2/neu抗体(トラスツズマブ)のための宿主株の構築及び形質転換を同様の方法で実施した。
【0189】
C.徐放性の24ウェルMTPにおける真菌発酵
十分に高い抗体力価をもたらすために、105~106個のT.リーゼイ(T.reesei)胞子を、連続的産生を確実にするために発酵中に培地中でゆっくりと放出されるラクトースとあらかじめ混合されたSylgard 170エラストマー(Dow Corning,USAより)から構成されるカスタムメイドの(customer made)24ウェルMTPに植菌した。培養株を、16g/Lグルコース、9g/Lカザミノ酸、10g/L(NH4)2SO4、4.5g/L KH2PO4、1g/L MgSO4*7H2O、1g/L CaCl2*2H2O、33g/L PIPPS緩衝液[pH 5.5]、0.25% T.リーゼイ(T.reesei)微量元素(100%:175g/Lクエン酸(無水)、200g/L FeSO4*7H2O、16g/L ZnSO4*7H2O、3.2g/L CuSO4*5H2O、1.4g/L MnSO4*H2O、0.8g/L H3BO3)を含有する1.25mlの培地中で増殖させた。
【0190】
プレートを、200rpm及び28Cで、80%湿度で、50mmの振盪幅を用いて、Inforsシェーカー中でインキュベートした。5~6日の増殖の後、培養物を、96ウェルディープウェルMTPにフォーマットし直し、96ウェルマイクロタイターフィルタープレート(0.2μm親水性PVDF膜、Corning,Tewksbury MA)を使用して濾過した。プレートを、Axygenハーフディープウェルプレート(P-DW-11-C)で凍結した。
【0191】
D.miniSELスクリーン
プラスミド及びライブラリー構築:エボラウイルスに対するZmap c2G4モノクローナル抗体のヒト化バージョンの配列は、コドン最適化され、GeneArt GmH(Germany)によって合成された。真菌細胞内での発現中のKex2フーリン様プロテアーゼによる分解の可能性を防止するために、重鎖(HC)及び軽鎖(LC)の両方から全てのKR部位を除去した。最初に、c2G4 HC及びLCの合成配列を、そのリンカー領域(1-479aa)と共に、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)天然セロビオヒドロラーゼIの触媒不活性コアの後ろにそれぞれクローニングした。担体パートナーから成熟抗体鎖を放出させるために、リンカーとHC又はLCのいずれかとの間にKex2切断部位SVAVEKRを導入した。
【0192】
次いで、cbhI-c2G4_HC3及びcbhI-c2G4_LC2の融合構築物を、pDonor221ベクター(Invitrogen,USA)へのGateway(登録商標)BP組換えクローニングを可能にするためにattB1及びattB2部位で伸長させた遺伝子特異的プライマーを用いるPCRによって増幅した。
図3に示す通り、プラスミドpEntry-CbhIx-c2G4_HC3を、217-236aa位置(成熟HCにおけるカウント)での部位評価(SEL)ライブラリーの構築のための鋳型として、供給業者BaseClear(Netherlands)によって使用した。各aa位置当たりの変異バリアントの数は13~19の間で異なり、平均数は16を上回った。変異バリアントを、Gateway(登録商標)LR組換え技術を介して、pTTTpyr2デスティネーションベクターにさらにクローニングし、最終の発現プラスミドpTTTpyr2-CBHI-c2G4_HC3(
図3)をもたらした。
【0193】
この発現ベクターは、対象となる遺伝子の強力な誘導性発現を可能にするT.リーゼイ(T.reesei)cbhIプロモーター及びターミネーター領域と、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)amdSと、ウリジンの非存在下でアセトアミドを含む最少培地での形質転換体の増殖を与えるT.リーゼイ(T.reesei)pyr2選択マーカーとを含有する。このプラスミドは、T.リーゼイ(T.reesei)由来のテロメア領域により、真菌細胞内で自律的に維持される。複製プラスミドの使用は形質転換の頻度増大をもたらし、組込み真菌形質転換で観察される遺伝子座依存性発現という問題を回避する。プラスミドを、市販品として入手可能な大腸菌(Escherichia coli)TOP10細胞(Invitrogen,US)内で増殖させ、精製し、配列確認し、96ウェルMTPにそれぞれ配列させ、下に記載する通りの真菌の形質転換のために使用した。
【0194】
pEntry-CbhIx-c2G4_LC2プラスミドを、上に記載したのと同様の方式で、pTrex6gデスティネーションベクターを用いて組み換え、発現ベクターpTrex6g-CbhIx-c2G4_LC2をもたらした。このベクターは、cbhIプロモーターによって駆動され、真菌細胞にクロリムロンエチルへの抵抗性を与えるalSマーカーに連結される、c2G4_LC2を発現するPCR断片を産生するための鋳型としての役割を果たした(
図4)。
【0195】
真菌株及び形質転換:T.リーゼイ(T.reesei)におけるc2G4_HC3重鎖SELライブラリーのスクリーニングの前に、十分なレベルのc2G4_LC2軽鎖を発現する中間株#C1を構築した。この目的で、標準のPEG-プロトプラスト形質転換方法を用いて、主なセルラーゼ及びキシラナーゼについて欠失させたT.リーゼイ(T.reesei)株に軽鎖発現断片をランダムに組み込んだ。c2G4_LC2に結合されたalSマーカーの存在のために50~80mg/Lのクロリムロンエチルに対して抵抗性の形質転換体を、Sigma-Aldrich(USA)からの軽鎖特異的抗体ペルオキシダーゼコンジュゲートを用いてELISA及びウエスタンブロットアッセイの組み合わせにより、LC発現についてスクリーニングした。ウエスタンブロットにおいてLCの強力なシグナルを有する、#C1と呼ばれる1つの形質転換体は、c2G4_HC3SELライブラリーのさらなる発現のための宿主としての役割を果たした。
【0196】
c2G4_HC3バリアントを用いるすべてのハイスループット形質転換は、Biomekロボット(Beckman Coulter,USA)を使用する24ウェルMTPフォーマットで、ロボット制御によって実施した。バリアントを有するプラスミドは、あらかじめ決定された配置に従って配列された96ウェルフォーマットで、供給業者から受け取った。50μlの総体積中におよそ1μgのDNAと5x106個のスクリーニング株#C1のプロトプラストとを含有する形質転換混合物を、200μlの25% PEG溶液で処理し、1体積の1.2Mソルビトール/10mM Tris、pH7.5/10mM CaCl2溶液で希釈し、ロボット制御によって24ウェルMTPに再配列し、1Mソルビトール(最少培地中)を含有する1mlの3%低融点アガロース中に注いだ。十分な増殖後、各ウェルからの形質転換体を一緒にプールし、唯一の窒素源として10mMアセトアミドを含有する最少培地を有する新たな24ウェル寒天皿に乗せた。胞子形成されたら、胞子を回収し、液体培養物の植菌のために使用した。
【0197】
徐放性の24ウェルMTPにおける真菌発酵:十分に高い抗体力価をもたらすために、105~106個のT.リーゼイ(T.reesei)胞子を、連続的産生を確実にするために発酵中に培地中でゆっくりと放出されるラクトースとあらかじめ混合されたSylgard 170エラストマー(Dow Corning,USAより)から構成されるカスタムメイドの(customer made)24ウェルMTPに植菌した。培養物を、16g/Lグルコース、9g/Lカザミノ酸、10g/L(NH4)2SO4、4.5g/L KH2PO4、1g/L MgSO4*7H2O、1g/L CaCl2*2H2O、33g/L PIPPS緩衝液[pH 5.5]、0.25% T.リーゼイ(T.reesei)微量元素(100%:175g/Lクエン酸(無水)、200g/L FeSO4*7H2O、16g/L ZnSO4*7H2O、3.2g/L CuSO4*5H2O、1.4g/L MnSO4*H2O、0.8g/L H3BO3)を含有する1.25mlの培地中で増殖させた。
【0198】
プレートを、200rpm及び28Cで、80%湿度で、50mmの振盪幅を用いて、Inforsシェーカー中でインキュベートした。5~6日の増殖の後、培養物を、96ウェルディープウェルMTPにフォーマットし直し、96ウェルマイクロタイターフィルタープレート(0.2μm親水性PVDF膜、Corning,Tewksbury MA)を使用して濾過した。清澄化された試料を、抗体の発現について分析した。
【0199】
実施例2:切断に対する抵抗性についての抗体ヒンジバリアントの評価
クリッピングアッセイ:この方法は、宿主細胞からの発現及び精製の後の抗体タンパク質分解の量を測定する。実施例1で産生された精製抗体バリアントの濃度を、総タンパク質のためのBCAアッセイ(C2G4試料)、又はFRETアッセイ(抗RSV、HSV08、VRC01、及びトラスツズマブ試料)のいずれかによって決定した。BCAアッセイは、製造業者(Thermo Fisher Scientific 23225)によって記載されるように実施した。次に、C2G4抗体を60ppmに基準化し、FRET定量化抗体を120ppmに基準化した。抗体のいくつかは、その精製濃度が他の抗体を基準化した濃度よりも低かったことから、基準化しなかった。基準化のために使用した希釈緩衝液は、精製後の抗体の溶液と同じpH及び濃度のグリシン-Tris緩衝液であった。
【0200】
ヒンジクリッピングが観察される同じ条件下で、空のCellulighter宿主株をDasgipに流し込んだ。上清を単離し、およそ10倍に濃縮した。
【0201】
C2G4抗体については、100μLの60ppmのタンパク質基準化試料をCorning 3605プレートに添加した。FRET定量化抗体については、抗体試料をCorning 3605プレートに添加する前に、Mili-Q水で4倍に希釈した。次に、10μLの濃縮cellulighterブロスを各ウェル添加して、ヒンジクリッピング反応を開始させた。プレートをBioRad Microseal Bで密封し、25℃でEppendorfサーモミキサー内に入れた。振盪させながらプレートを100分間インキュベートした。3605プレート内で50μLの反応混合物及び50μLのプロテアーゼ阻害剤カクテルを混合することにより、反応をクエンチした。プロテアーゼ阻害剤カクテルは、10X推奨希釈率である最終濃度のEDTAが添加されたHaltTMプロテアーゼ阻害剤カクテル(Fisher 78430)であった。次に、これらのストレス負荷試料を、ウエスタン分析により処理されるまで氷上で貯蔵した。反応の場合と同じ希釈率であるが濃縮ブロスを含まない抗体試料のアリコートを、ストレス負荷試料と同じ比率でプロテアーゼ阻害剤カクテルと混合して、T0時点(ストレス無負荷)を生成した。
【0202】
ストレス無負荷及びストレス負荷試料をウエスタンブロットによりヒンジクリッピングについて分析した。試料をInvitrogen E-PAGE 48ウェル8%ゲルに流し、Invitrogen iBlot 2によりニトロセルロース膜へ移動させ、Invitrogen iBind Flexを用いて探査した。より正確な比較のために、所与のバリアントのためのストレス無負荷及びストレス負荷試料を、48ウェルゲルの同じ列に互いに隣り合わせに流した。SuperSignalTMWest(Thermo 34076)と共に、抗ヒトFc-HRP(Sigma A0170)を使用して試料を探査した。BioRad ChemiDoc MP及びそのソフトウェアにより、ブロットを可視化し、定量化した。クリップされた割合は、一番下のバンド(クリップされたHCからのFc断片)の体積を3つの断片(CBH1-HC、成熟HC、Fc断片)の合計で割ることによって計算した。報告されたヒンジクリッピングのデルタは、試料を濃縮Cellulighterブロスと共にインキュベートする前とインキュベートした後のヒンジクリッピングパーセントの差である。
【0203】
D.精製:プレートを、冷凍庫から冷蔵室に移動して、試料を4℃で一晩、徐々に解凍した。精製前に、増殖したWT試料をプレートから取り除き、これらの試料をプールした。ウェルあたり1mLのプールされたWT、プールされた低結合対照、プールされた高結合対照、及びプールされたベクターのみ(同じ株においてCBH1を発現するベクター)試料を、指定されたウェルに添加した。これらのライブラリープレート物は、2連で増殖させ、これらの対照は、両方のプレートに添加した。これらのプレートを、2分間、やさしくゆすって、ウェル内の流体を均質化させ、続いて、1分間遠心分離を行って、あらゆる沈殿をペレット化させた。
【0204】
ロボットは、4つのライブラリープレートを一度に処理した。ロボットは、プロテインA樹脂への抗体結合を向上させるために、50μLの1M KPi(pH7)を添加して、上清のpHを上昇させた。次いで、ロボットは、未精製材料(最大880μL/ウェル)を、4つのプレートから、220μLのプロテインA樹脂(PBS中)であらかじめ満たした2mLフィルタープレート(Pall 8275)に移した。次いで、これらのフィルタープレートを、5分間、シェーカーでゆすった。次いで、プレート物を、1000gでの2分間の遠心分離によって濾過し、フロースルーを、試料がそこから移された空の回収プレートに収集した。この材料は、定量化後まで保管した。フィルタープレートを、ロボットの台に戻し、2連の増殖プレート物を、同じフィルタープレートに添加した。これらのプレート物を、前回と同様にインキュベート及び遠心分離した。次いで、樹脂を、880μLのPBS緩衝液で洗浄した。これらのプレートを、1分間ゆすり、次いで、1000gで2分間遠心分離した。フロースルーを捨て、プレートを、第2のPBS洗浄のために、ロボットに戻した。第2の洗浄後、プレートを、溶離プログラムを実行するロボットに移動した。
【0205】
溶離プログラムは、4つのプレートを一度に処理した。このプログラムは、試料が溶離されることとなる清浄なハーフディープウェルプレートに、11μLの中和緩衝液(1M Tris pH9)を添加した。次いで、このプログラムは、フィルタープレートに、440μLの溶離緩衝液(100mMグリシン pH2.7)を添加した。次いで、プレートを、設定7で1分間ゆすり、次いで、遠心分離(1000g、2分間)によって、新たに準備した回収プレートへと濾過した。遠心分離後、中和緩衝液の適切な混合を確実にするために、試料プレートを1分間ゆすった。
【0206】
結果:C2G4抗体については、
図6に示されるように、ヒンジ領域において修飾されていない成熟抗体と比較して著しく少ない抗体クリッピングをもたらす、いくつかのヒンジ配列バリアントを同定した。これらのバリアントと、アッセイされたヒンジクリッピングの減少との完全なリストは表3に示される。
【表3】
【0207】
表3に示されるC2G4抗体においてクリッピングを低減することが見出された置換を、
図7及び
図8に示されるように抗RSV抗体のヒンジに導入すると、これらの変異も、ヒンジ領域において修飾されていない成熟抗体と比較して著しく少ない抗体クリッピングをもたらし、これらのヒンジ置換が複数の抗体にわたってクリッピングを低減することが実証された。これらのC2G4バリアントと、アッセイされたヒンジクリッピングの減少との完全なリストは、表4に示される。
【表4-1】
【表4-2】
【0208】
C2G4抗体においてクリッピングを低減することが見出された選り抜きの置換を、抗単純ヘルペスウイルス抗体(HSV08)、抗HIV抗体(VRC01)、及び抗HER2/neu抗体(トラスツズマブ)のヒンジに導入すると、これらの変異も、ヒンジ領域において修飾されていない成熟抗体と比較して著しく少ない抗体クリッピングをもたらし、これらのヒンジ置換が複数の抗体にわたってクリッピングを低減することがさらに実証された(表5)。
【表5】
【0209】
実施例3:切断に対する抵抗性についてのCHO発現抗体ヒンジバリアントの評価
CHO産生抗RSVバリアント:チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞発現バリアントは、Bionova Scientific(Fremont,CA)から得た。このバリアントは精製されて、PBS緩衝液中で届けられた。Synagisを用いるFRETアッセイによって濃度を測定し、バリアントを前と同じTris-Glyで120ppmに希釈した。
【0210】
FRET定量化アッセイ及び基準化:Alexa Fluor 546 NHSエステル(Thermo Fisher Scientific A20102)により、タンパク質A(Thermo Fisher Scientific 77674)を標識化した。Alexa Fluor 488 NHSエステル(Thermo Fisher Scientific A20100)により、タンパク質L(Thermo Fisher Scientific 77680)を標識化した。標識タンパク質A及びタンパク質Lを、107mM KPi pH7により、適切なダイナミックレンジを有する本発明者らの標準曲線のためのFRETシグナルをもたらす比率で希釈した。標準曲線は、AbbVieからの市販のSynagisであった。Corning 3605プレートにおいて、40μLのタンパク質A及びL溶液を10μLの精製抗体試料と混合した。プレート上のFRETシグナルを読み取り(ex:485nm em:590nm カットオフ:590nm)、未知のものの濃度は、Synagis標準曲線から決定した。試料を2連で流した。
【0211】
データを分析した後、プレートを120ppmに基準化した。希釈緩衝液は同じpHのTris-Gly緩衝液であり、濃度は精製試料におけるものである。120ppm未満のウェルについては、希釈せずにそのまま使用した。結果は表6に示される。示されるように、CHO発現抗RSVバリアントは、野生型抗体ヒンジと比較して著しく少ないクリッピングを示した。
【表6】
配列
【化1】
Synagis HCのヌクレオチド配列:
【化2】
Synagis HCのアミノ酸配列:
【化3】
Synagis LCのヌクレオチド配列:
【化4】
Synagis LCのアミノ酸配列:
【化5】
c2G4_HC3のヌクレオチド配列:
【化6】
c2G4_LC2のアミノ酸配列:
【化7】
c2G4_LC2のヌクレオチド配列:
【化8】
c2G4_HC3 LCのアミノ酸配列:
【化9】
【配列表】