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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(54)【発明の名称】XVI型コラーゲンアッセイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20220422BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20220422BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220422BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220422BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220422BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220422BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/543 545A
G01N33/543 541B
C07K16/18 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020521929
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(85)【翻訳文提出日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 EP2018078697
(87)【国際公開番号】W WO2019077102
(87)【国際公開日】2019-04-25
(31)【優先権主張番号】1717301.4
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503259129
【氏名又は名称】ノルディック・ビオサイエンス・エー/エス
【氏名又は名称原語表記】NORDIC BIOSCIENCE A/S
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】モーテンセン,ヨアキム,ホグ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルムセン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】カルスダル,モルテン,アッサー
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA46
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA72
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、XVI型コラーゲンアッセイと、XVI型コラーゲンに関連する疾患、特に、結腸直腸癌および潰瘍性大腸炎の評価における該XVI型コラーゲンアッセイの使用、ならびに線維性狭窄を有する(または発症する可能性がある)クローン病に罹患した患者のサブグループを同定するための、該XVI型コラーゲンアッセイの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト生体液試料中のXVI型コラーゲンまたはその断片を検出する方法であって、
a)ヒト患者から生体液試料を得ることと、
b)前記生体液試料を、C末端アミノ酸配列PMKTMKGPFG(配列番号1)を有するC末端バイオマーカーに特異的に反応性を示すモノクローナル抗体と接触させて、前記バイオマーカーと前記抗体との結合を検出することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記検出は定量的である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モノクローナル抗体は、前記アミノ酸配列PMKTMKGPFG(配列番号1)を有する合成ペプチドに対して産生される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記モノクローナル抗体は、前記C末端アミノ酸配列のC末端が延長された伸長型または前記C末端アミノ酸配列のC末端が切断された短縮型を特異的に認識しないまたはそれに結合しない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記モノクローナル抗体と前記C末端バイオマーカーとの1.0ng/mL以上の測定結合量は、前記ヒト患者が潰瘍性大腸炎または結腸直腸癌を有することまたは発症する可能性があることを示唆する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒト患者は、結腸直腸癌または潰瘍性大腸炎を示唆する医学的徴候または症状を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒト患者は、クローン病に罹患した患者であり、前記モノクローナル抗体と前記C末端バイオマーカーとの1.7ng/mL以上の測定結合量は、前記患者が線維性狭窄を有することまたは発症する可能性があることを示唆する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
アッセイキットであって、前記アミノ酸配列PMKTMKGPFG(配列番号1)を有するC末端バイオマーカーに特異的に反応性を示すモノクローナル抗体と、
-ストレプトアビジン被覆ウェルプレート
-ビオチン化ペプチドであるビオチン-L-PMKTMKGPFG(配列番号4)(式中、Lは任意選択的なリンカーである)
-サンドイッチイムノアッセイに使用するための二次抗体
-前記配列PMKTMKGPFGを含む較正物質ペプチド
-抗体ビオチン化キット
-抗体HRP標識キット
-抗体放射性標識キット
-アッセイ可視化キット、のうちの少なくとも1つと、を含む、アッセイキット。
【請求項9】
前記モノクローナル抗体は、前記アミノ酸配列PMKTMKGPFG(配列番号1)を有する合成ペプチドに対して産生される、請求項8に記載のアッセイキット。
【請求項10】
前記キットは、潰瘍性大腸炎もしくは結腸直腸癌を診断するため、または線維性狭窄を有する、もしくは発症する可能性がある、クローン病に罹患した患者を同定するためのものである、請求項8または9に記載のアッセイキット
【請求項11】
患者において結腸直腸癌または潰瘍性大腸炎の可能性を診断および/または監視および/または評価するためのイムノアッセイ法であって、前記患者から得られた生体液試料を、XVI型コラーゲンまたはその断片に反応性を示す抗体と接触させることと、前記抗体とXVI型コラーゲンまたはその断片との結合量を決定することと、前記結合量を、正常な健常対象に関連する値および/または既知の疾患重症度に関連する値および/または過去のある時点で前記患者から得られた値および/または所定の統計的カットオフ値と相関させることと、を含む、イムノアッセイ法。
【請求項12】
検出は定量的である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体は、C末端アミノ酸配列PMKTMKGPFG(配列番号1)を有するC末端バイオマーカーに特異的に反応性を示す、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体はモノクローナル抗体である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体は、前記C末端アミノ酸配列のC末端が延長された伸長型または前記C末端アミノ酸配列のC末端が切断された短縮型を特異的に認識しないまたはそれに結合しない、請求項11または12に記載の方法。
【請求項16】
前記モノクローナル抗体と前記C末端バイオマーカーとの前記結合量の前記統計的カットオフ値は、少なくとも1.0ng/mLである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記生体液試料は、血液、尿、滑液、血清、または血漿である、請求項11~16に記載の方法。
【請求項18】
クローン病に罹患した患者において線維性狭窄の存在を診断するためまたは線維性狭窄の発症の可能性を評価するためのイムノアッセイ法であって、前記患者から得られた生体液試料を、C末端アミノ酸配列PMKTMKGPFG(配列番号1)を有するC末端バイオマーカーに特異的に反応性を示すモノクローナル抗体と接触させることと、前記モノクローナル抗体と前記バイオマーカーとの結合量を決定することと、を含み、1.7ng/mL以上の決定された結合量は、前記患者における線維性狭窄の存在または発症の可能性を示唆する、イムノアッセイ法。
【請求項19】
前記モノクローナル抗体は、前記C末端アミノ酸配列のC末端が延長された伸長型または前記C末端アミノ酸配列のC末端が切断された短縮型を特異的に認識しないまたはそれに結合しない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記生体液試料は、血液、尿、滑液、血清、または血漿である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
アミノ酸配列PMKTMKGPFG(配列番号1)を有するC末端バイオマーカーに特異的に反応性を示す、モノクローナル抗体。
【請求項22】
請求項21に記載のモノクローナル抗体を産生する、細胞株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、XVI型コラーゲンアッセイと、XVI型コラーゲンに関連する疾患、特に、結腸直腸癌および潰瘍性大腸炎の評価における該XVI型コラーゲンアッセイの使用、ならびに線維性狭窄を有する(または発症する可能性がある)クローン病に罹患した患者のサブグループを同定するための、該XVI型コラーゲンアッセイの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外マトリックス(ECM)は、組織構造の維持を担う非細胞性の構成成分である。ECMリモデリングの変化は、結腸直腸癌(CRC)(1)および潰瘍性大腸炎(UC)(2)等の消化器(GI)疾患の病態の重要な一部である。結腸におけるECMの形成と分解の不均衡は、ECMの組成に変化をもたらし、それによって異常な組織機能を引き起こす。腫瘍微小環境におけるECMタンパク質の沈着増加は、ECMの硬化を増長させ、細胞の増殖、接着、遊走および侵入等の細胞機能に影響する(3,4)。また、腫瘍微小環境における炎症反応がECMリモデリングに影響を及ぼすということも明らかになってきている(5,6)。同様に、UCでは、腸のECMが慢性炎症により大きな影響を受け、組織ホメオスタシスの消失および不均衡なコラーゲン代謝回転をもたらす(2,7-9)。上皮細胞の慢性炎症および連続的代謝回転は、CRCに変化し得る異形成症の発症の一因となる(10)。したがって、このECMリモデリングの増加を反映するバイオマーカーは、CRCおよびUCの発症および進行に寄与する組織/ECM構造が破壊された患者を同定するために重要であり得る。
【0003】
腸において、XVI型コラーゲン(これ以降col-16という。)が、上皮および内皮細胞層の下に位置する特殊なECMの層である基底膜の安定化および維持に寄与することが示唆されている(11)。Col-16は、断続性三重らせんを有する線維付随性コラーゲン(FACIT)であり、上皮細胞および上皮下筋線維芽細胞によって発現される。これらは基底膜の下に局在化し、腺窩上皮のマトリックスにcol-16の顕著な沈着が見られる(11)。皮膚の研究により、col-16は基底膜付近の真皮・上皮接合部に局在化することが示されており、col-16が、ミクロフィブリルを基底膜に固定することに積極的な役割を担うことが示唆される(12,13)。
【0004】
Col-16は、α1β1およびα2β1インテグリンと相互作用してこれらのインテグリンの焦点接着斑への動員を誘導し、細胞伸展および細胞形態の変化等のインテグリン媒介性の細胞反応を促進する(14,15)。col-16のインテグリンへの結合は、細胞とマトリックスの相互作用を刺激し、腫瘍細胞において浸潤性の表現型を誘導し得ると仮定される。興味深いことに、col-16の過剰発現は、口腔扁平上皮癌(OSCC)において細胞浸潤および増殖性の細胞表現型を誘導することが示されている(16,17)。Col-16は、正常な口腔上皮では基底膜に沈着するが、OSCC患者の組織では基底膜から消失すると考えられる(17)。OSCCの発症における基底膜部からのcol-16の消失は、ECMリモデリング、ならびに腫瘍細胞浸潤および疾患の進行を促進する基底膜の破壊を誘導し得る。神経膠芽腫では、col-16は、腫瘍細胞の接着および浸潤、ならびにECMの腫瘍特異的リモデリングに関与している(18,19)。col-16の発現増加は、炎症性クローン病の組織生検から単離された腸上皮下筋線維芽細胞においても検出されている(11)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは、col-16とUCおよびCRCとの間に病理学的関連性を確立し、また、線維性狭窄を有する(または発症する可能性がある)クローン病に罹患した患者のサブグループを同定するための方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、第1の態様において、本発明は、ヒト生体液試料中のXVI型コラーゲンまたはその断片を検出する方法に関連し、その方法は、
a)ヒト患者から生体液試料を得ることと、
b)生体液試料を、C末端アミノ酸配列PMKTMKGPFG(配列番号1)を有するC末端バイオマーカーに特異的に反応性を示すモノクローナル抗体と接触させて、バイオマーカーと抗体との結合を検出することと、を含む。
【0007】
検出は、好ましくは定量的である。
【0008】
好ましくは、モノクローナル抗体は、アミノ酸配列PMKTMKGPFG(配列番号1)を有する合成ペプチドに対して産生される。合成ペプチドは、限定されないが、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等の担体タンパク質に結合され得る。
【0009】
好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、C末端アミノ酸配列のC末端が延長された伸長型またはC末端アミノ酸配列のC末端が切断された短縮型を特異的に認識しないまたはそれに結合しない。これに関して、「C末端アミノ酸配列のC末端が延長された伸長型」は、1つ以上のアミノ酸が配列PMKTMKGPFG-COOH(配列番号1)のC末端を超えて延長していることを意味する。例えば、C末端のアミノ酸配列PMKTMKGPFG-COOH(配列番号1)がグリシン残基によって伸長された場合、対応する「C末端が延長された伸長型」はPMKTMKGPFGG-COOH(配列番号2)である。同様に、抗体が、C末端アミノ酸配列のC末端が切断された短縮型を特異的に認識しないまたはそれに結合しないことが好ましい。これに関して、「C末端アミノ酸配列のC末端が切断された短縮型」は、1つ以上のアミノ酸が配列PMKTMKGPFG-COOH(配列番号1)のC末端から除去されたことを意味する。例えば、C末端のアミノ酸配列PMKTMKGPFG-COOH(配列番号1)が1つのアミノ酸残基だけ短縮された場合、対応する「C末端が切断された短縮型」はPMKTMKGPF-COOH(配列番号3)である。
【0010】
様々な統計分析の使用を通して、モノクローナル抗体(前述)とC末端バイオマーカーとの1.0ng/mL以上の測定結合量は、潰瘍性大腸炎または結腸直腸癌の高い可能性と関連していることが分かった。 これに関して、スクリーニングした全集団のうち(健常対象、UC患者およびCRC患者を含む)、1.0ng/mL以上のC末端バイオマーカーレベルを有するその集団の対象の少なくとも90%がUCまたはCRCに罹患していたことが分かった。そのため、1.0ng/mLのカットオフ値を設定することにより、本発明の方法を利用して潰瘍性大腸炎または結腸直腸癌の可能性を高い信頼水準で予測することが可能である。または、換言すると、本発明の方法に統計的カットオフ値を適用することにより、結果として独立した予測アッセイが得られる、すなわち、診断結果に到達するために、健康な個体および/または既知の疾患重症度を有する患者とのあらゆる直接比較の必要性を排除するため、特に有利である。これはまた、初期予後を裏付けるための迅速かつ決定的なツールとして機能することもでき、したがって潜在的に内視鏡検査等のより侵襲性の高い手技の必要性を排除し、好適な治療計画の開始を迅速化するため、結腸直腸癌または潰瘍性大腸炎を一般的に示唆する医学的徴候または症状(例えば、身体検査および/または医療専門家による診察によって決定される)を既に有する患者を評価するためにアッセイを利用する場合に特に有利であり得る。結腸直腸癌の特定の症例では、最終診断の迅速化によって、より早い段階で疾患が検出および治療される結果となり得、それが全体的な生存確率を向上させ得る。したがって、統計的カットオフ値は、UCまたはCRCを有するまたは発症する患者のリスクを評価するために使用され得る。
【0011】
さらに、患者がクローン病を有する場合、モノクローナル抗体(前述)とC末端バイオマーカーとの1.7ng/mL(統計的カットオフ値)以上の測定結合量は、その患者が線維性狭窄を有する、または発症する可能性がある、という高い可能性と関連していることが分かっている。このことは、上に記載したのとほぼ同じ理由から有利である。
【0012】
したがって、第2の態様において、本発明は、患者において結腸直腸癌または潰瘍性大腸炎の可能性を診断および/または監視および/または評価するためのイムノアッセイ法であって、患者から得られた生体液試料を、XVI型コラーゲンまたはその断片に反応性を示す抗体と接触させることと、抗体とXVI型コラーゲンまたはその断片との結合量を決定することと、結合量を、正常な健常対象に関連する値および/または既知の疾患重症度に関連する値および/または過去のある時点に患者から得られた値および/または所定の統計的カットオフ値と相関させることと、を含む、イムノアッセイ法に関する。
【0013】
具体的には、本方法は、患者におけるUCもしくはCRCの進行、および/またはUCもしくはCRCに罹患した患者に対する治療の効果を監視するために使用することができる。例えば、第1の値は、治療開始前の第1の時点に得ることができ、第2の値は、治療開始後の第2のより後の時点に得ることができる。第1の時点から第2の時点までに本方法によって測定される結合量の減少は、患者の状態の改善を示唆するものであり、ひいては患者が治療に反応していることを証明するものである。反対に、第1の時点から第2の時点までに本方法によって測定される結合量の増加は、患者の状態の悪化を示唆するものであり、ひいては患者が治療に反応していないことを証明するものである。したがって、本方法は、限定されないが、新しい薬物療法または抗体療法等の新規治療の有効性を監視および/または評価するために使用され得る。
【0014】
同様に、患者がクローン病を有する場合、本発明は、クローン病に罹患した患者において線維性狭窄の存在を診断するため、または線維性狭窄の発症の可能性を評価するためのイムノアッセイ法であって、患者から得られた生体液試料を、C末端アミノ酸配列PMKTMKGPFG(配列番号1)を有するC末端バイオマーカーに特異的に反応性を示す抗体と接触させることと、抗体とバイオマーカーとの結合量を決定することと、を含み、1.7ng/mL以上の決定された結合量は、患者における線維性狭窄の存在または発症の可能性を示唆する、イムノアッセイ法に関する。この場合も同様に、この方法は上に記載したのとほぼ同じ理由から有利である(疾患の進行、治療の効果等を監視する)。
検出は、好ましくは定量的である。断片は、好ましくはXVI型コラーゲンのC末端断片である。
【0015】
好ましくは、抗体は、アミノ酸配列PMKTMKGPFG(配列番号1)を有するC末端バイオマーカーに特異的に反応性を示す。より好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。さらに好ましくは、抗体は、C末端アミノ酸配列のC末端が延長された伸長型またはC末端アミノ酸配列のC末端が切断された短縮型を特異的に認識しないまたはそれに結合しない。
【0016】
上に記載した理由から、第2の態様のイムノアッセイ法は、C末端バイオマーカーの1.0ng/mLの統計的カットオフ値を用いてUCまたはCRCの可能性を決定することができる。
【0017】
本明細書に記載の本発明の方法のいずれにおいても、生体液試料は、限定されないが、血液、尿、滑液、血清、または血漿であり得る。
【0018】
本明細書に記載の本発明の方法のいずれにおいても、イムノアッセイの方法は、限定されないが、競合アッセイまたはサンドイッチアッセイであり得る。イムノアッセイの方法は、限定されないが、ラジオイムノアッセイまたは酵素結合免疫吸着検定法であり得る。
【0019】
第3の態様において、本発明は、アッセイキットであって、アミノ酸配列PMKTMKGPFG(配列番号1)を有するC末端バイオマーカーに特異的に反応性を示すモノクローナル抗体と、
-ストレプトアビジン被覆ウェルプレート
-ビオチン化ペプチドであるビオチン-L-PMKTMKGPFG(配列番号4)(式中、Lは任意選択的なリンカーである)
-サンドイッチイムノアッセイに使用するための二次抗体
-配列PMKTMKGPFG-COOH(配列番号1)を含む較正物質ペプチド
-抗体ビオチン化キット
-抗体HRP標識キット
-抗体放射性標識キット
-アッセイ可視化キット、のうちの少なくとも1つと、を含む、アッセイキットに関する。
【0020】
キットは、好ましくは前述の方法のいずれかとともに、潰瘍性大腸炎もしくは結腸直腸癌のリスクを診断もしくは予測するため、または線維性狭窄疾患の表現型を有する、もしくは発症する可能性があるクローン病に罹患した患者を同定するために使用され得る。
【0021】
定義
本明細書で使用される場合、「C末端」という用語は、ポリペプチドの端を指し、すなわち、ポリペプチドのC末端側終端にあり、その一般的な方向を意味すると解釈されるべきではない。
【0022】
本明細書で使用される場合、「競合ELISA」という用語は、競合酵素結合免疫吸着検定法を指し、当業者に既知の技術である。
【0023】
本明細書で使用される場合、「サンドイッチイムノアッセイ」という用語は、試料中の抗原の検出のための少なくとも2つの抗体の使用を指し、当業者に既知の技術である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「結合量」という用語は、抗体とバイオマーカーとの結合の定量化を指し、定量化は、生体液試料中のバイオマーカーの測定値を較正曲線と比較することによって決定され、較正曲線は、既知の濃度のバイオマーカーの標準試料を用いて作成される。生体液中でC末端アミノ酸配列PMKTMKGPFG(配列番号1)を有するC末端バイオマーカーを測定する本明細書に開示される特定のアッセイにおいて、較正曲線は、既知の濃度の較正ペプチドPMKTMKGPFG(配列番号1)の標準試料を用いて作成される。生体液試料中で測定される値を較正曲線と比較して、試料中のバイオマーカーの実際の量を決定する。本発明は、検量線を作成することおよび生体液試料中の結合量を測定することの両方のために分光光度分析を用いる:後述の実施例において、本方法はHRPおよびTMBを用いて、結合量に比例し、分光光度計によって読み取ることができる、測定可能な色の強度を生成する。当然のことながら、いずれか他の好適な分析方法が使用されてもよい。
【0025】
本明細書で使用される場合、「統計的カットオフ値」は、患者におけるUCもしくはCRCの高い可能性を示唆する、または線維性狭窄を有する(もしくは発症する可能性がある)クローン病(CD)患者を示唆すると統計的に決定される結合量を意味し、統計的カットオフ値以上である患者試料(好ましくは血清試料)中のバイオマーカーの測定値は、少なくとも80%の確率、好ましくは少なくとも85%の確率、より好ましくは少なくとも90%の確率、および最も好ましくは少なくとも95%の確率の、UCもしくはCRCの存在もしくは可能性、または(CD患者の場合)線維性狭窄の存在もしくはそれを発症する可能性に対応する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「正常な健常対象に関連する値および/または既知の疾患重症度に関連する値」という用語は、健康であるとみなされる対象、すなわち、UCもしくはCRCを有しない対象について上記方法によって決定されたXVI型コラーゲンの正規化された量、および/または既知の重症度のUCもしくはCRCを有する事が分かっている対象について上記方法によって決定されたXVI型コラーゲンの正規化された量を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】PRO-C16アッセイ(図中、「C16-C」とも称される)の特異性。%B/B0:Bは、xnMペプチドでのODに等しく、B0は0nMペプチドでのODに等しい。
図2】健常対照と比較した結腸直腸癌(CRC)および潰瘍性大腸炎(UC)に罹患した患者の血清PRO-C16レベル:(a)対照(n=50)、CRC患者(n=50)およびUC患者(n=39)の血清中のPRO-C16レベル。測定範囲の下限(LLMR)より低いレベルは、LLMRまで調節される。結果はテューキーの箱ひげ図として表される。箱は、中央値とともに25および75パーセンタイルを表す。ひげは最低値および最高値を表すが、例外として、外れ値(・)は75パーセンタイルよりも1.5倍高い。クラスカル・ウォリス検定を用いて群を比較した。アスタリスクは以下を示す:**p<0.01および****p<0.0001;(b)四分位(Q)で分割したCRC患者、UC患者、および対照の血清中のPRO-C16レベル。各群の対照、CRCおよびUC患者の数が示されている。ROC曲線から得られたカットオフ値(1.0ng/mL)は点線で示される;(c)CRC患者の血清中のPRO-C16を、ベースラインおよび腫瘍切除の3ヶ月後(追跡調査)で比較した。統計的有意差は、ウィルコクソン検定とp>0.9999を組み合わせて用いて決定した。
図3】腫瘍病期による結腸直腸癌(CRC)患者の血清中のPRO-C16の評価。疾患の病期に分割したベースラインでのCRC患者の血清中のPRO-C16レベルであり、中央値が水平線で示されている。クラスカル・ウォリス検定を用いて群を比較した。
図4】クローン病に罹患した患者の血清中のPRO-C16の評価B1:管腔疾患を有するCD患者、B2:線維性狭窄疾患の表現型を有するCD患者、B3:瘻形成疾患の表現型を有するCD患者
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示の実施形態を以下の実施例において説明するが、それらは本開示を理解する上での助けになるように記載されるのであって、決して後に続く特許請求の範囲に定義される本開示の範囲を制限するものであると解釈されるべきではない。以下の例は、記載される実施形態をどのように作製および使用するかについての完全な開示および説明を当業者に提供するために提示されるのであって、本開示の範囲を限定することは意図されておらず、また、以下の実験が実施される全てまたは唯一の実験であると示すことも意図されていない。使用される数値(例えば、量、温度等)に関して正確さを確保する努力がなされているが、ある程度の実験誤差および偏差を考慮に入れるべきである。別途示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧またはその付近である。
以下の実施形態において、以下の材料および方法が用いられた。
【実施例
【0029】
材料
実験に使用した全ての試薬は、Merck(Whitehouse station,NJ,USA)およびSigma Aldrich(St.Louis,MO,USA)からの標準的な化学物質であった。抗体産生およびアッセイ開発に使用した合成ペプチドは、Chinese Peptide Company(Beijing,China)から購入した(表1)。
ペプチドの選択および概要
【0030】
エピトープ選択
col-16のα1鎖のC末端が標的ペプチドとして選択され、本明細書において「PRO-C16」と称される。C末端に位置するPRO-C16のアミノ酸配列1595’-PMKTMKGPFG(配列番号1)を用いてcol-16のC末端に特異的な抗体を作製した。それをさらに選択ペプチドを設計するために用いた(PMKTMKGPFG:配列番号1)(表1)。NPS@:network protein sequence analysis with the Uniprot/Swiss-Prot databaseを使用して、他のヒトタンパク質および種に対する相同性について配列をBLAST検索した(20)。アミノ酸配列は、ヒトcol-16に固有である。ビオチン化ペプチド(ビオチン-K-PMKTMKGPFG)を用いて、ELISAに適用されるストレプトアビジン被覆プレートを被覆した。伸長ペプチド(PMKTMKGPFGG:配列番号2)、切断ペプチド(PMKTMKGPF:配列番号3)、ナンセンスペプチド(VPKDLPPDTT:配列番号5)、およびナンセンスビオチン化ペプチド(ビオチン-VPKDLPPDTT:配列番号6)を、抗体の特異性を試験するために含めた。
【表1】
【0031】
モノクローナル抗体の産生およびクローンの特徴付け
モノクローナル抗体の作製は、以前に記載されたように行った(21)。端的に述べると、フロイントの不完全アジュバント(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)を用いて、200μlの乳化抗原および50μgの免疫原性ペプチド(キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)-CGG-PMKTMKGPFG:配列番号7)を4~6週齢のBalb/Cマウスの皮下に免疫した。安定な血清力価レベルに達するまで2週間の間隔でマウスを免疫した。最も高い血清力価を有するマウスを融合のために選択し、1ヶ月間休息させ、次いで、100μlの0.9%NaCl溶液中の50μgの免疫原性ペプチドで静脈内に免疫した。3日後、細胞融合のために脾細胞を単離した。端的に述べると、脾細胞をSP2/0骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマ細胞を生成し、次いで、半培地法を用いて培養皿にクローニングした(22)。96ウェルマイクロタイタープレートにクローンを播種し、限界希釈を用いてモノクローナル増殖を確実にした。ストレプトアビジン被覆プレートを使用した間接競合ELISA(Roche,Hvidovre,Denmark、カタログ番号11940279)において、選択ペプチド(PMKTMKGPFG:配列番号1)および天然材料(血清)に対する反応性について上清をスクリーニングした。最も高い反応性を示したクローンを、製造業者(GE healthcare Life Sciences,Little Chalfont,Buckinghamshire,UK)の指示に従ってプロテインGカラムを使用して精製した。2つのモノクローンを、伸長(PMKTMKGPFGG:配列番号2)、切断(PMKTMKGPF:配列番号3)、またはナンセンスペプチド(VPKDLPPDTT:配列番号5)ではなく、選択ペプチド(PMKTMKGPFG:配列番号1)に対するそれらの反応性について試験した。アッセイ開発のために1つのモノクローンを選択した。最適なインキュベーション緩衝液、時間、温度、およびビオチン化ペプチドと抗体との最適な比を決定した。
【0032】
PRO-C16 ELISAプロトコル
PRO-C16競合ELISAの手順は以下の通りである:96ウェルのストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレートを、アッセイ緩衝液(50mM PBS-BTB、4g/l NaCl、pH7.4)中に溶解した100μlのビオチン化ペプチド(ビオチン-K-PMKTMKGPFG:配列番号4)で被覆した(最終濃度3.1.0ng/mL)。プレートを振盪(300rpm)しながら20℃で30分間インキュベートし、次いで、洗浄緩衝液(20mM TRIS、50mM NaCl、pH7.2)中で5回洗浄した。体積20μlの試料/対照/選択ペプチド(PMKTMKGPFG:配列番号1)を加えた後、アッセイ緩衝液に希釈した100μlのモノクローナル抗体を直ちに加えた(最終濃度62.5ng/ml)。プレートを振盪しながら20℃で1時間インキュベートした後、洗浄緩衝液中で5回洗浄した。次いで、アッセイ緩衝液に希釈した100μlのヤギ抗マウスHRP結合IgG抗体(Thermo Scientific,Waltham,MA,USA:カタログ番号31437)を各ウェルに加えた(最終濃度130ng/ml)。プレートを振盪しながら20℃で1時間インキュベートし、その後、洗浄緩衝液中で5回洗浄した。次いで、100μlのテトラメチルベンジジン(TMB,Kem-En-Tec Diagnostics,Taastrup,Denmark)を加え、暗所で振盪しながら20℃で15分間インキュベートした。TMBの反応を停止するために、100μlの1% HSOを加え、VersaMax ELISAマイクロプレートリーダーにおいて、650nmを基準として、450nmでプレートを分析した。4パラメータの数学的フィッティングモデルを用いて検量線をプロットし、Softmax Pro v.6.3ソフトウェアを使用してデータを分析した。
【0033】
技術的評価
2倍希釈選択ペプチド(PMKTMKGPFG:配列番号1)、伸長ペプチド(PMKTMKGPFGG:配列番号2)、切断ペプチド(PMKTMKGPF:配列番号3)、またはナンセンスペプチド(VPKDLPPDTT:配列番号5)のシグナル阻害のパーセンテージとして抗体特異性を算出した。測定範囲の下限(LLMR)および測定範囲の上限(ULMR)は、10回の独立した実行からの検量線に基づいて算出した。ヒトの健康な血清試料(n=3)の2倍希釈物を用いて直線性を決定し、未希釈試料の回収率として算出した。PRO-C16アッセイの検出範囲(LLMR-ULMR)を網羅する7つの試料の10回の独立した実行を用いてアッセイ内およびアッセイ間変動を算出した。7つの試料は、3つのヒト血清試料と、アッセイ緩衝液中で選択ペプチドをスパイクした4つの試料とを含んでいた。アッセイ内変動は、プレート内の平均変動係数(CV%)として決定し、アッセイ間変動は、プレート間の平均CV%として算出した。精度は、選択ペプチドの2倍希釈物でスパイクした3つのヒト血清試料から決定し、予想濃度(血清とペプチドを合わせたもの)の回収率として算出した。分析物の安定性は、最大4回の凍結融解サイクルに供した3つの健康な血清試料について決定した。凍結融解回収率は、1回目のサイクルを基準として算出した。分析物の安定性は、3つのヒト血清試料を4℃または20℃で24時間または48時間インキュベートすることによりさらに決定した。回収率は、-20℃で保存した試料を基準として算出した。干渉は、低/高含量のビオチン(1.5/4.5ng/ml)、脂質(0.75/2.5mg/ml)、またはヘモグロビン(1.25/2.5mg/ml)を既知の濃度の血清試料に加えて決定し、非スパイク血清中の分析物の回収率として算出した。
【0034】
患者血清試料
CRC患者の血清試料は、ヘルシンキ宣言に準拠して、インフォームドコンセントおよびEthical Committee of the Capital Region of Denmarkによる承認(Copenhagen,Denmark:承認番号H-1-2014-048)後に、Bispebjerg hospital(Copenhagen, Denmark)の医療従事者によって収集された。腫瘍切除の前(ベースライン)および3ヶ月後(追跡調査)に、それぞれ50人および23人の患者から血清試料を収集した。Union for International Cancer Control分類システムに従って腫瘍病期を評価した。
【0035】
UC患者の血清試料(n=39)は、インフォームドコンセント後にOdense University Hospital(Odense,Denmark)から得た。CRCおよびUC患者のPRO-C16レベルを、製造業者の情報によれば全員がインフォームドコンセントを提出した、健康なドナーからの市販の対照血清(n=50)(Valley BioMedical,Winchester,VA,USA)のレベルと比較した。含まれた患者に関連する情報を表2に示す。デンマークの法律によれば、以前に収集した試料中の生化学マーカーを測定する際には追加の倫理審査による承認を得る必要はない。
【表2】
【0036】
統計分析
クラスカル・ウォリス検定を用いた多重比較用に調整した一元配置分散分析(ANOVA)を用いて、対照、ベースラインのCRC患者、およびUC患者のPRO-C16の血清レベルを比較した。ウィルコクソン検定を用いて、ベースラインと追跡調査とでCRC患者を比較した。受診者動作特性(ROC)曲線から得た特定のカットオフ値(1.0ng/mL)からオッズ比および陽性的中率を求め、フィッシャーの直接確率検定およびカイ二乗検定を用いて分析した。p<0.05のp値を統計的に有意であるとみなした。図中、統計的有意差にアスタリスクで印を付け、図の凡例で説明している。Prism 7ソフトウェア(Graphpad v7.01)を全ての統計分析に使用した。
【0037】
PRO-C16アッセイの特異性
異なるペプチドの阻害効果を調べることにより、新しく開発されたPRO-C16 ELISAの特異性を評価した。選択ペプチド(PMKTMKGPFG:配列番号1)はシグナルを6%まで阻害したが、伸長ペプチド(PMKTMKGPFGG:配列番号2)、切断ペプチド(PMKTMKGPF:配列番号3)およびナンセンスペプチド(VPKDLPPDTT:配列番号5)を使用すると軽度の阻害しか検出されず、これは最も高い濃度でのみ検出された(図1)。ナンセンスビオチン化ペプチド(ビオチン-VPKDLPPDTT:配列番号6)に対する反応性は観察されなかった。全体として、このことは、抗体がcol-16のC末端に対して特異的であることを示している。
【0038】
PRO-C16アッセイの技術的評価
PRO-C16アッセイの全体的な技術的性能を評価するためにいくつかの試験を含めた(表3)。LLMRおよびULMRを算出することにより測定範囲を決定し、0.87~95.50ng/mlの範囲が得られた。アッセイ内およびアッセイ間変動は、それぞれ、10%および15%であった。ヒト血清において天然の反応性が観察された。血清における希釈回収率は、未希釈から1:4希釈まで観察された95%であった。ヒト血清に標準ペプチドをスパイクすることにより99%の平均回収率が得られたことから、精度と、試料マトリックスがアッセイ反応に影響しないことが示された。分析物の安定性は、4回の凍結融解サイクル後に許容可能であり、回収率は103%であった。4℃で24時間または48時間のヒト血清の長期保存後にも分析物を回収したところ、それぞれ、106%および95%の回収率が得られた。20℃で24時間または48時間の保存からは、それぞれ、91%および85%の回収率が得られた。低レベルまたは高レベルのビオチン、脂質、またはヘモグロビンのいずれからも干渉は検出されなかった。
【表3】
【0039】
結腸直腸癌および潰瘍性大腸炎の血清PRO-C16レベル
col-16のバイオマーカーとしての可能性を決定するために、CRCおよびUCに罹患した患者から得た血清中のPRO-C16レベルを測定し、健常対照と比較した。PRO-C16レベルは、健常対照と比較してCRC(p=0.0026)およびUC(p<0.0001)に罹患した患者で有意に高かった(図2a)。試験した全集団のCRCおよびUC症例のパーセンテージは、四分位の増加とともに段階的に増加した(図2b)。上位四分位(Q4)のPRO-C16レベルを有する集団のうち、97%(34/35)がCRCまたはUC患者であり、3%(1/35)が健常対照であった。PRO-C16は、CRCまたはUCに罹患した患者を、陽性的中率0.9およびオッズ比12(95%CI=4.5-29.5、p<0.0001)で同定することができた。
【0040】
このことは、PRO-C16レベルにより、健常対照からCRCおよびUCに罹患した患者を区別することができることを示している。したがって、血清中のPRO-C16を測定することは、一般的なGI疾患におけるバイオマーカーとしての可能性を有する。
【0041】
これは、col-16が原発性腫瘍に起源を有しないことを示している。
【0042】
腫瘍病期はCRCにおいて重要な臨床ツールであるため、PRO-C16レベルを腫瘍病期に従って分割した(図3)。腫瘍病期の間に有意差は検出されなかった。しかしながら、病期II期およびIII期にPRO-C16レベルが上昇する傾向が観察された。
【0043】
クローン病に罹患した患者の血清PRO-C16レベル
腸線維症は、炎症性腸疾患(IBD)に多く見られる合併症であるが、クローン病において有病率がより高く、線維性狭窄に発展する可能性がある。
【0044】
腸線維芽細胞および筋線維芽細胞は、腸線維症発症の主なエフェクター細胞であり、腸上皮下筋線維芽細胞(ISEM)は、CD患者において有意に高いレベルのXVI型コラーゲンを産生することが示されている(11)。
【0045】
そのため、PRO-C16アッセイを用いてクローン病(CD)に罹患した患者の様々なサブグループを評価した:
-管腔疾患を有するCD患者(B1)、
-線維性狭窄疾患の表現型を有するCD患者(B2)、および
-瘻形成疾患の表現型を有するCD患者(B3)。
【0046】
管腔疾患を有するCD患者のコホート(B1)、瘻形成疾患の表現型を有するCD患者のコホート(B3)、および健康なドナーと比較して、線維性狭窄を有するCD患者のコホート(B2)で驚くほど高い(かつ統計的に有意な)レベルのPRO-C16バイオマーカーが検出された(図4)。
【0047】
したがって、これらの結果は、PRO-C16アッセイが、線維性狭窄を有する、または発症する可能性があるCD患者を診断するために使用され得ることを示している。狭窄性クローン病の評価に関する最近の再考察で(23,24)、狭窄を評価するための非侵襲的方法が継続的に必要であることが述べられているため、これは重大な発見である。また、これらの再検討は、現在、腸狭窄を発症するリスクを確実に予測する、または臨床症状の前に初期段階の線維症を同定する血清学的バイオマーカーが存在しないとも述べている:線維性狭窄に厳密に特異的であることが証明されている腸線維症の候補バイオマーカーがない。したがって、線維性狭窄疾患の表現型を有する(または発症する可能性がある)CD患者の非侵襲的評価のために、そのような特異的な血清学的バイオマーカーが継続的に必要である。
【0048】
ゆえに、B2コホートにおいて同定されたようなPRO-C16バイオマーカーのレベルの統計的に有意な増加は、PRO-C16アッセイが線維性狭窄を有する(または発症する可能性がある)CD患者を確実に同定するために使用され得ることを示している。それに関して、CD患者から得られた試料では、少なくとも1.7ng/mL(統計的カットオフ値)、および好ましくは少なくとも2.0ng/mLの測定されたPRO-C16値が、線維性狭窄を有する(または発症する可能性がある)CD患者を示唆するとみなされる。
【0049】
結論
col-16(PRO-C16)の非侵襲的測定を可能にするロバストな競合ELISAを開発して検証した。本明細書に記載のPRO-C16アッセイを用いて、CRCおよびUCに罹患した患者の血清において、健常対照と比較して有意に高いレベルのPRO-C16が観察された。我々の知る限りでは、これがCol-16とUCまたはCRCとの関連性を示す初めての研究であり、我々は、Col-16とメラノーマ等の他の疾患との間に病理学的関連性が存在し得ると予測する。さらに、PRO-C16 ELISAは、線維性狭窄疾患の表現型を有する(または発症する可能性がある)CD患者に特異性を示し、それは、この目的のための現在の血清学的バイオマーカーと比べて著しい改善である。
【0050】
本明細書において、別途明示的に示されない限り、「または」という語は、記載される条件のうちの一方のみを満たすことが必要とされる演算子「排他的論理和」とは対照的に、その条件のいずれかまたは両方が満たされる場合に真値を返す演算子の意味で使用される。「含む(comprising)」という語は、「~からなる(consisting of)」を意味するのではなく、「含む(including)」の意味で使用される。上記に承認される全ての先行教示は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書におけるいかなる先行公開文書の承認も、その教示がオーストラリアまたは他の場所において、その公開日の時点で共通の一般的な知識であったことの容認または表明であると解釈されるべきではない。
【0051】
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図1
図2
図3
図4
【配列表】
2022524245000001.app
【国際調査報告】