(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(54)【発明の名称】直流バスと保護接地との間の絶縁を監視する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01R 27/02 20060101AFI20220422BHJP
H02H 11/00 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
G01R27/02 R
H02H11/00 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538184
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(85)【翻訳文提出日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019086901
(87)【国際公開番号】W WO2020136157
(87)【国際公開日】2020-07-02
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511051982
【氏名又は名称】ヴィト ナムローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】VITO NV
【住所又は居所原語表記】Boerentang 200,B-2400 Mol,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイエン、ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】クーネン、ピーター
【テーマコード(参考)】
2G028
【Fターム(参考)】
2G028BF04
2G028CG03
2G028DH03
2G028FK08
2G028GL07
2G028GL09
2G028LR06
2G028LR08
(57)【要約】
直流バスと保護接地との間の絶縁を監視するための方法及び装置であって、バスは直流電源に接続されている。電源の端子は、第1の期間の間、第1の電気回路網によって保護接地に接続され、第1の期間における複数の時間ステップにおける第1の電気回路網に関連する過渡的な第1の電気値が測定される。第1の定常値は、複数の第1の時間ステップにおける複数の第1の測定点を用いて計算される。さらに、電源の端子は、第2の期間の間、第2の電気回路網によって保護接地に接続され、第2の期間における複数の第2の時間ステップにおける第2の電気回路網に関連する過渡的な第2の電気値が測定される。第2の定常値は、複数の第2の時間ステップにおける複数の第2の測定点を用いて計算される。電源の端子と保護接地の間の絶縁抵抗の指標は、第1電気値と第2電気値の算出された定常値に基づいて決定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の電源に接続された直流バスと保護接地との間の絶縁を監視する方法であって、
第1の期間の間に第1の電気回路網によって前記電源の端子を保護接地に接続すること、
前記第1の期間内の複数の時間ステップにおいて、前記第1の電気回路網に関連する過渡的な第1の電気値を測定することであって、第1の定常値が前記複数の第1の時間ステップにおける複数の第1の測定点を用いて計算され、
第2の期間の間に第2の電気回路網によって前記電源の端子を保護接地に接続すること、
前記第2の期間内の複数の第2の時間ステップにおいて、前記第2の電気回路網に関連する過渡的な第2の電気値を測定することであって、第2の定常値が前記複数の第2の時間ステップにおける複数の第2の測定点を用いて計算され、及び、
前記第1の電気値及び前記第2の電気値の計算された前記定常値に基づいて、前記電源の前記端子と保護接地との間の絶縁抵抗の指標を決定すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の定常値及び前記第2の定常値が、測定される前記第1の電気値及び前記第2の電気値がそれぞれ前記第1の期間及び前記第2の期間において定常状態に達する前に計算される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の期間及び/又は前記第2の期間が、抵抗-キャパシタ(RC)時定数の3倍未満である、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の期間及び/又は前記第2の期間が、100ms未満である、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の定常値が、前記複数の第1の時間ステップにおける前記複数の測定点を用いた第1の曲線フィッティングによって計算され、
前記第2の定常値が、前記複数の第2の時間ステップにおける前記複数の測定点を用いた第2の曲線フィッティングによって計算される、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
連続する時間ステップ間の時間間隔が、電源周期に基づいて選択される、
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記時間間隔が、前記電源周期の倍数として選択され、好ましくは1つの電源周期に等しい、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の曲線フィッティング及び前記第2の曲線フィッティングの各々に対して、3つの測定点が使用される、
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の電気値及び前記第2の電気値が、同じ基準に関して同じ測定位置で測定され、
励起電圧が、前記直流の電源によって提供される直流電源電圧に正規化される、
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の期間の間に、前記保護接地が、前記直流電源電圧の第1の割合のブロック電圧で励起され、
前記第2の期間の間に、前記保護接地が、前記直流電源電圧の第2の割合のブロック電圧で励起され、
前記第1の割合が前記第2の割合とは異なる、
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
1つ又は複数のバイアス抵抗が、前記第1の割合を増加させ、前記第2の割合を減少させるために使用され、
前記1つ又は複数のバイアス抵抗が、0.1~2%、より好ましくは0.5~1%のバイアスを提供するように構成されている、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の電気値及び前記第2の電気値を測定するためにフィルタが採用され、前記フィルタがローパスフィルタである、
請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記定常値が、前記直流の電源が交流回路網に結合されている場合にのみ、曲線フィッティングを使用して計算される、
請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
第1の状態と第2の状態との間で切り替え可能なスイッチが設けられ、
前記第1の状態では、前記スイッチが、前記電源の前記端子を前記第1の電気回路網に接続し、
前記第2の状態では、前記スイッチが、前記電源の前記端子を前記第2の電気回路網に接続し、
前記第1の期間と前記第2の期間とが等しく、
前記第1の期間及び前記第2の期間のシーケンスが一定の頻度で繰り返され、
測定、計算、及び比較することが同じ前記頻度で繰り返される、
請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
直流の電源に接続された直流バスと保護接地との間の絶縁を監視する装置であって、
第1の期間の間に第1の電気回路網によって前記電源の端子を保護接地に接続し、
前記第1の期間内の複数の時間ステップにおいて、前記第1の電気回路網に関連する過渡的な第1の電気値を測定し、第1の定常値が前記複数の第1の時間ステップにおける複数の第1の測定点を用いて計算され、
第2の期間の間に第2の電気回路網によって前記電源の端子を保護接地に接続し、
前記第2の期間内の複数の第2の時間ステップにおいて、前記第2の電気回路網に関連する過渡的な第2の電気値を測定し、第2の定常値が前記複数の第2の時間ステップにおける複数の第2の測定点を用いて計算され、
前記第1の電気値及び前記第2の電気値の計算された前記定常値に基づいて、前記電源の前記端子と保護接地との間の絶縁抵抗の指標を決定する、
ように構成された装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流バスと保護接地との間の絶縁を監視する方法及び装置に関する。本発明はさらに、絶縁不良監視のための装置の使用に関する。さらに、本発明はおそらく交流グリッドに容量結合される直流バスを備えるシステムであって、直流バスと保護接地との間の絶縁を監視するように本装置が配置されているシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
直流(DC)電力回路網は、直流電圧配電システム、電気自動車、電気自動車用充電ステーション、太陽光発電など、様々な用途に使用されている。
【0003】
フローティング直流グリッドでは、直流グリッドと保護接地との間の適切な電気絶縁を保証するための安全対策として絶縁監視が必要である。このような絶縁抵抗監視装置は、例えば人体に故障電流が流れる前に、絶縁不良や絶縁故障を検出するために採用することができる。この装置は、絶縁不良や絶縁故障が検出されると、直流供給電圧を自動的に遮断及び/又は切断することができる。したがって、ユーザや他の人員の感電を効果的に回避することができるように、アクティブな保護を得ることができる。絶縁監視装置はコンパクトであり、他の装置と容易に一体化することができる。直流グリッドとは反対に、交流グリッドは残留電流装置によって保護することができる。これらの装置は、動作する前に故障電流を流す必要がある。
【0004】
直流回路網における絶縁監視は、いくつかの方法で実行することができる。この装置は、フローティングシステム内の電源ラインと保護接地(例えば、筐体)との間の絶縁抵抗を測定するように構成することができる。一般に、直流電源ラインと保護接地との間に小さな電気励起(electric excitation)(小さな直流又は交流の電圧又は電流)が印加され、応答が観察される。これにより、接続されている(既知の)機器が比較的少ない小型の直流アイランドグリッド(例えば、車両)では、適切な結果が得られる傾向にある。
【0005】
しかしながら、様々な用途及び直流回路網では、より多くの外部装置が直流電源に接続されている。これらの装置は、設計時には知られていないか、定義されていない可能性がある。さらに、これらの装置は、フィルタリング目的で保護接地と電源ラインとの間に何らかの結合を提供するパワーエレクトロニクスを含んでいる可能性がある。例えば、より大きなグリッドでは、装置に含まれるフィルタが、絶縁監視装置の動作を著しく妨害する可能性がある。例えばパワーエレクトロニクスを介して直流グリッドが交流グリッドに結合されている場合、絶縁監視装置が正しく動作しないことがある。例えば、直流グリッドが交流グリッドに接続又は結合されている場合、絶縁を提供するために絶縁変圧器を使用することができる。しかしながら、保護接地は、直流電源及び交流グリッドに対して共通であるため、直流グリッド内の故障が残留電流装置によって正確に検出されない可能性がある。
【0006】
このような状況に対応できる絶縁監視、及び/又は多種多様な直流回路網のための改善された絶縁監視を提供することができる絶縁監視が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、上述の欠点の少なくとも1つを取り除く方法及びシステムを提供することである。
【0008】
追加的に又は代替的に、本発明の目的は、改善された絶縁監視を提供することである。
【0009】
追加的に又は代替的に、本発明の目的は、改善された安全性を有する絶縁監視方法及び装置を提供することである。
【0010】
追加的に又は代替的に、本発明の目的は、直流バスと交流グリッドの保護接地との間の改善された絶縁監視を提供することである。
【0011】
それゆえに、本発明は、直流バスと保護接地との間の絶縁を監視する方法を提供し、前記バスは直流電源に接続されており、前記方法は、第1の期間の間に第1の電気回路網によって前記電源の端子を保護接地に接続することと、前記第1の期間内の複数の時間ステップにおいて、前記第1の電気回路網に関連する過渡的な第1の電気値を測定することであって、第1の定常値が前記複数の第1の時間ステップにおける複数の第1の測定点を用いて計算されることと、第2の期間の間に第2の電気回路網によって前記電源の端子を保護接地に接続することと、前記第2の期間内の複数の第2の時間ステップにおいて、前記第2の電気回路網に関連する過渡的な第2の電気値を測定することであって、第2の定常値が前記複数の第2の時間ステップにおける複数の第2の測定点を用いて計算されることと、前記第1の電気値及び前記第2の電気値の計算された前記定常値に基づいて、前記電源の前記端子と保護接地との間の絶縁抵抗の指標を決定することと、を含む。
【0012】
有利なことに、絶縁監視はより広範囲の直流回路網において使用され得る。例えば、大型の直流グリッド及び/又は交流グリッドに結合される直流グリッドの場合には、絶縁監視によって絶縁抵抗の正確な指標を提供することができる。電気励起の応答に抵抗-キャパシタ(RC)成分が含まれている場合でも、絶縁抵抗値を正確かつ高速に決定することができ、それによって絶縁監視の全体的な安全性も向上する。これにより、感電のリスクを低減することができる。
【0013】
保護接地は、2つの電圧レベルで次々に励起できる。多くの場合及び用途では、安全性を保証し人体を感電から保護するために、絶縁不良が発生してから300ms(ミリ秒)以内(不具合の大きさに応じて)に絶縁監視が反応することが望まれている。寄生容量のRC時定数は、励起に使用される抵抗の高いインピーダンスが組み合わさると、容易に50msを超えることがある。励起回路内の抵抗の値を小さくすることでRC時定数を下げると、励起電流が人体に危険な値まで増加してしまう。また、静電容量Cは、電気回路網に結合されている他の機器に依存する可能性があるため、静電容量Cに影響を与えることが困難な場合がある。
【0014】
絶縁監視の反応時間の合計が800msを超えてしまうため、測定を行う前にRC時定数(200ms以上であり得る)の3倍~5倍の間待機することは望ましくないか、又は許容できない場合がある。本発明によれば、RC応答が、限られた時間(期間を参照)にわたって監視され得るし、定常状態の最終値を推定又は予測して、さらなる計算において使用することで、抵抗絶縁値をより速く見出すことができる。安定した最終値を予測/推定するために、様々なタイプのモデルを使用することができる。
【0015】
決定される端子間の絶縁抵抗値は、直流電源の端子が第1の電気回路網によって保護接地に接続されたとき、及び直流電源の端子が第2の電気回路網によって保護接地に接続されたときに得られる電圧測定値に基づいて(例えば、マイクロコントローラによって)計算され得る。
【0016】
絶縁抵抗の指標を決定することができ、この指標から、前記絶縁抵抗値を直接的又は間接的に導出することができる。抵抗値の計算値及び/又は並列抵抗値の計算値(又はその指標)は、絶縁障害のアラームレベルに達したときにアラームをトリガーするために使用することができる。
【0017】
任意選択で、第1の定常値及び第2の定常値は、測定される第1の電気値及び第2の電気値がそれぞれ第1の期間及び第2の期間において定常状態に達する前に計算される。安定値又は定常値に到達する前に、予測された定常値、すなわち、安定化のために十分に長い期間の後に得られたであろう定常値を計算又は推定するために、モデルを使用することができる(例えば、フィッティング)。
【0018】
このように、第1の電気値及び第2の電気値が一定及び/又は安定した値に安定するのを待つ代わりに(例えば、RC成分の5倍より長い時間:5*RC)、限られた第1の期間及び第2の期間における複数の異なる測定点(サンプリングされたデータ点)を、それぞれ最終値の計算/推定に使用することができる。例えば、フィッティングを実行することで全体的な傾向を特定することができ、その結果、望ましくない又は許容できない待ち時間を必要とすることなく、最終値を正確に決定することができる。その結果、安全性を大幅に向上させることができる。
【0019】
任意選択で、第1の期間及び/又は第2の期間は、抵抗-キャパシタ(RC)時定数の3倍未満である。
【0020】
絶縁不良の検出速度を改善することができるように、抵抗-キャパシタ(RC)遅延の結果としての遅い応答を回避することができる。測定された第1の電気値及び第2の電気値の安定した定常状態の最終値が得られるまで待機するのに十分な時間がないことが多いので、有害なRC遅延は重要な役割を果たしている。
【0021】
定常状態の最終値を得るための合計時間は、時定数RCの5倍である。しかしながら、本発明によれば、充放電曲線の限られた部分のみが、定常状態の最終値を決定するために使用される。第1の電気値及び第2の電気値は、電圧であってもよい。電気回路網の結果として、電圧は、最初の時定数の間はより速い速度で増加し、最後の時定数の間はより低い速度で増加することができ、又はその逆も可能である。充電曲線における複数の測定点は、定常状態の最終値を決定するために使用することができる。
【0022】
RC時定数は、電源の端子が第1の電気回路網又は第2の電気回路網によって保護接地に接続されたときに得られる抵抗に応じて変化し得る。さらに、RC時定数は、保護接地と直流電源の正負端子との間の静電容量に応じて変化し得る。静電容量は、例えば、直流電源が交流電気回路網に接続されたときに得られる寄生容量であってもよい。
【0023】
任意選択で、第1の期間及び第2の期間は、RC時定数の推定値を考慮に入れて選択される。RC時定数のこの推定値は、事前に設定することができる。
【0024】
任意選択で、RC時定数は、測定点に基づいて決定される。
【0025】
任意選択で、第1の期間及び/又は第2の期間は、400ms未満、より好ましくは200ms未満、さらに好ましくは100ms未満である。第1の期間と第2の期間との合計は、800ms未満、より好ましくは400ms未満、さらに好ましくは120ms未満とすることができる。
【0026】
第1の定常値及び第2の定常値は、様々な方法で予測することができる。例えば、限られた数の測定点に基づいて定常状態の最終値を予測するように構成された計算モデルを採用することができる。例えば、モデルフィッティング、推定器アルゴリズム、機械学習アルゴリズム等を使用することができる。
【0027】
いくつかの例では、第1の期間及び/又は第2の期間の400msの持続時間は長すぎる場合がある。これは、300msの期間内にリアクション(例えば、アラーム)を行うことができない可能性があるためである。任意選択で、第1の期間及び第2の期間は、絶縁抵抗値を決定し、アラーム動作を実行するために必要な時間が300ms未満、より好ましくは200ms未満となるように選択される。
【0028】
任意選択で、第1の定常値は、複数の第1の時間ステップにおける複数の測定点を用いた第1の曲線フィッティングによって計算され、第2の定常値は、複数の第2の時間ステップにおける複数の測定点を用いた第2の曲線フィッティングによって計算される。
【0029】
測定された電気量の定常値の推定値を得るために必要な時間は、曲線フィッティングを実行することによって大幅に短縮することができる。曲線フィッティングは、定常値の正確な予測を提供することができる。したがって、第1の電気値/第2の電気値(例えば、電圧)が、定常値に到達するまで(サイクルの全期間)待機する必要がなくなる。予測された最終値に基づいて、絶縁抵抗の指標が決定され得る。また、指標の代わりに、絶縁抵抗の値を、直接的及び/又は間接的に計算することも可能である。
【0030】
任意選択で、連続する時間ステップ間の時間間隔は、電源サイクルに基づいて選択される。
【0031】
保護接地は交流ラインに容量結合できるので、保護接地上の電圧はそのグリッド周波数又はその高調波に従うことができる。任意の数の電源周期又は電源サイクル中に測定することにより、この有害な結合の影響を効果的に平均化することができる。
【0032】
任意選択で、時間間隔は、電源周期の倍数として選択され、好ましくは1つの電源周期に等しい。
【0033】
第1の定常値及び第2の定常値を予測するために使用される測定点は、交流グリッドの電源サイクルの持続時間のn倍の距離で選択することができる。電源サイクルは、欧州では20ms(cf. 50Hz)、米国では16.7ms(cf. 60Hz)である。
【0034】
任意選択で、第1の曲線フィッティングと第2の曲線フィッティングの各々に対して3つの測定点が使用される。
【0035】
曲線フィッティングは、少なくとも3つの測定点を利用する指数フィッティングであってもよい。3つの測定点を採用することにより、3つの未知数で3つの方程式を得ることができる。例えば、最小二乗法又はLevenberg-Marquartを含む、他の曲線フィッティング法も実行することができる。曲線フィッティングを実行するために、3つより多い測定点が使用され得ることが理解されよう。
【0036】
測定された電気値の(例えばマイクロコントローラにおける)処理方法は、より良好な精度が得られるように選択されてもよい。1/3と2/3のように非対称の比率を選択することにより、計算(式)や測定した電気値の(例えばマイクロコントローラにおける)処理方法を大幅に簡素化することができる。このようにして、精度を向上させることができる。さらに、対称的な故障を検出することができる。
【0037】
任意選択で、第1の電気値及び第2の電気値は、同じ基準に関して同じ測定位置で測定され、励起電圧は、直流電源によって提供される直流電源電圧に正規化される。
【0038】
絶縁電圧の計算に用いる場合に、励起電圧に対する測定された応答は、直流電源電圧に正規化することができる。励起電圧は、直流電圧に対してスケーリングすることができる。スケーリングは、マイクロコントローラに実装することができる。任意選択で、励起電圧は、直流電圧に線形比例する。直流電源電圧を第1の電圧値及び第2の電圧値と同じ係数で割って、第1のものをA/D変換器の基準として使用することにより、複数のA/Dチャネルはもはや不要である。さらに、比率をAD変換器によって直接測定するため、計算時間を短縮することができる。
【0039】
直流電圧(Vdc)を基準として使用することができる。有利なことに、もはや全電圧で割る必要はない。より高い精度を得ることができ、測定範囲のフルスケールを使用することができる。また、直流電圧はある程度変動する可能性がある。相対的な値(例えば、1/3、2/3)で測定することにより、直流電圧の変動による不正確さを解消することができる。電気回路網における抵抗の配置により、1/3及び2/3の非対称な比率となることがある。他の比率が使用され得ることが理解されよう。
【0040】
任意選択で、基準電圧Vrefは、マイクロコントローラの直流電源電圧又は直接供給電圧を使用して、マイクロコントローラの内部で生成される。
【0041】
任意選択で、第1の期間の間に、保護接地が、直流電源電圧の第1の割合(fraction)のブロック電圧で励起され、第2の期間の間に、保護接地が、直流電源電圧の第2の割合のブロック電圧で励起され、第1の割合は第2の割合とは異なる。有利なことに、この監視は、直流電源の正極端子及び負極端子に発生した対称的な絶縁不良に対しても機能する。正電圧端子と負電圧端子に同様の絶縁故障がある、対称的な絶縁不良を検出することができる。直流システムでは、このタイプの故障が起こる可能性は、決して少なくはない。
【0042】
一例として、スタックされた直流電源の中間電圧レベルで、直流電源自体に不具合が発生した場合、対称的な不具合が発生する可能性がある。さらに、直流バスにモータインバータが搭載されている場合や、(例えば、電気自動車の)インバータの後に絶縁故障が発生した場合に、対称的な不具合が発生する可能性がある。絶縁材料の劣化も、対称的な不具合を引き起こす可能性がある。
【0043】
任意選択で、第1の割合と第2の割合との合計は、実質的に1に等しい。任意選択で、第1の割合は1/3であり、第2の割合は2/3である。
【0044】
無次元の値(例えば、1/3及び2/3)を採用することによって、精度及び計算時間を向上させることができる。1/3、2/3の比率を直接測定できるように、ボルトを測定できるようにするためには、AD変換器に対して基準値(Vref)を使用することができる。基準値Vrefは、直流電源電圧を、マイクロコントローラで使用可能な十分低い電圧を得るための数値で割ったものとして定義され得る。この場合、Vrefは、直流電源電圧に応じて変化する可能性がある。V1(すなわち、第1の電気値)と直流電源電圧との比を、直接測定することができる。Vrefは、AD変換のための基準電圧とすることができる。
【0045】
第1の電気値(例えば、電圧V1)及び第2の電気値(例えば、電圧V2)は、直流電圧が変化した異なる時点で測定され得る。直流電圧が知られていない(例えば、測定されていない)場合、V1及びV2の両方は、同じ数で割られることになる。これは、測定の際に(絶対電圧の代わりに)無次元の分数を用いて作業することで克服できる。
【0046】
任意選択で、1つ又は複数のバイアス抵抗が、第1の割合を増加させ、第2の割合を減少させるために使用され、1つ又は複数のバイアス抵抗は、0.1%~2%、より好ましくは0.1%~1%のバイアスを提供するように構成されている。
【0047】
バイアス抵抗により、部品の公差の補償を可能にすることができる(例えば、より安価な部品の使用)。ノイズ耐性をさらに高めるために、第1の励起電圧(Vx1)が第1の割合(例えば1/3Vdc)よりもわずかに大きく、第2の励起電圧(Vx2)が第2の割合(例えば2/3Vdc)よりもわずかに小さくなるように、バイアス抵抗を導入することができる。その結果、Vx2-Vx1は、注入されるノイズ及び構成要素の許容誤差を考慮すると、すべての状況においてVdc/3よりも小さくなる。
【0048】
有利なことに、バイアス抵抗は、抵抗値が高い場合には、より低い絶縁抵抗推定値(すなわち、安全)をもたらすことができ、絶縁不良の場合には、推定値に無視できる程度の誤差を与えることができる。絶縁値がかなり大きい場合には、絶縁測定でエラーが発生する可能性がある。しかしながら、絶縁値が小さくなった場合、つまり絶縁不良が発生した場合であっても、測定を正確に行うことができる。
【0049】
任意選択で、第1の電気値及び第2の電気値を測定するためにフィルタが採用され、フィルタは、ローパスフィルタである。
【0050】
フィルタは、ノイズやクロストークをフィルタリングするために使用することができる。しかしながら、場合によっては、そのようなフィルタ(例えば、50Hz又は60Hzの成分及び任意選択でそれらの高調波をフィルタリングするように構成されたフィルタ)は、例えば、電気的測定においてミリ秒オーダの望ましくない(さらなる)遅延を導入する可能性がある。さらに、有害な位相シフトが測定結果に導入されることがある。しかしながら、高周波フィルタを採用することにより、改善された信号が得られる一方で、遅延及び位相シフトを抑制することができる。過渡的な第1の電気値及び第2電気値の定常状態の最終値の計算は、様々な方法で行うことができる。
【0051】
任意選択で、定常状態の電気値は、直流電源が交流回路網に結合されている場合にだけ、曲線フィッティングを使用して計算される。
【0052】
本方法は、直流電源が交流回路網に結合されているかどうかを判定することをさらに含むことができる。交流回路網への結合が存在する場合に、第1の電気値及び第2の電気値は、計算/予測されてもよい。定常値に到達するまで待つことは、RC時定数(例えば、容量結合)の結果として時間が長くかかりすぎる可能性がある。交流回路網への結合がない場合は、定常状態の第1の電気値及び第2の電気値が、直接測定されてもよい。これは、RC遅延がないので、十分に速く実行することができる。任意選択で、動作モードを手動で選択することもできる。
【0053】
任意選択で、第1の状態と第2の状態との間で切り替え可能なスイッチが設けられ、第1の状態ではスイッチが電源の端子を第1の回路網に接続し、第2の状態ではスイッチが電源の端子を第2の回路網に接続し、前記第1の期間と第2の期間とが等しく、前記第1の期間及び第2の期間のシーケンスは一定の頻度で繰り返され、測定、計算、及び比較することが同じ頻度で繰り返される。
【0054】
任意選択で、決定された絶縁抵抗(R1、R2)の値は、予め定めたアラームレベルと比較され、絶縁抵抗の値が予め定めたレベルを超えた場合には、アラーム動作が実行される。
【0055】
任意選択で、本発明の装置は絶縁故障の場合に、前記故障を遠隔制御ステーションに伝達するために、直流電源に接続された負荷に信号を送信する手段を備える。
【0056】
任意選択で、過渡的な第1の電気値及び過渡的な第2の電気値は、レシオメトリックA/D変換で測定される。有利なことに、結果として固定基準は必要とされない。
【0057】
任意選択で、直流電源の直流電圧が測定される。追加的に又は代替的に、直流電圧の指標がマイクロコントローラに提供される。
【0058】
一態様によれば、本発明は、直流バスと保護接地との間の絶縁を監視する装置を提供する。前記バスは直流電源に接続されており、前記装置は、第1の期間の間に第1の電気回路網によって前記電源の端子を保護接地に接続し、前記第1の期間内の複数の時間ステップにおいて、前記第1の電気回路網に関連する過渡的な第1の電気値を測定し、第1の定常値が前記複数の第1の時間ステップにおける複数の第1の測定点を用いて計算され、第2の期間の間に第2の電気回路網によって前記電源の端子を保護接地に接続し、前記第2の期間内の複数の第2の時間ステップにおいて、前記第2の電気回路網に関連する過渡的な第2の電気値を測定し、第2の定常値が前記複数の第2の時間ステップにおける複数の第2の測定点を用いて計算され、前記第1の電気値及び前記第2の電気値の計算された前記定常値に基づいて、前記電源の前記端子と保護接地との間の絶縁抵抗の指標を決定する、ように構成されている。
【0059】
有利なことに、本装置は、監視対象の電気回路網が容量結合を介して交流グリッドに結合された直流回路網である場合(例えば、電気自動車用の充電ステーションなど)であっても、正しく動作することができる。容量結合によって得られる結果としての静電容量は、電気量(例えば電圧)の測定に著しく影響を及ぼす可能性がある。RC時定数は、定常状態の最終値に到達するまで、かなりの遅延を形成することができる。ブロック電圧が印加されると、遅延した矩形波が得られる場合がある。本装置は、容量結合に起因する前記RC時定数が存在しても、絶縁不良を検出するのに十分な速さで応答することができる。
【0060】
加えて、本装置は、交流グリッドに結合されていない直流回路網でも使用することができる。いずれの場合も、絶縁抵抗の正確な指標を決定することができる。
【0061】
本装置は「オン」状態と「オフ」状態との間でスイッチを制御するように構成されたマイクロコントローラを含んでいてもよく、「オン」状態において、電源の端子は第1の電気回路網によって保護接地に接続され、「オフ」状態において、電源の端子は第2の電気回路網によって保護接地に接続される。スイッチの状態に応じて、第1の電気値及び第2の電気値(例えば、2つの電圧)を測定することができる。直流電源によって生成された直流電圧を測定するために、追加の電圧測定を実行してもよい。
【0062】
任意選択で、本装置は、他の監視機能を実行するように構成される。
【0063】
絶縁抵抗R1及びR2は物理的に存在するが、抵抗成分の形ではないことが理解されよう。故障抵抗は、電気的に抵抗として振舞うので、抵抗と見なすことができる。
【0064】
本方法の観点から説明される態様、特徴、及び任意構成のいずれもが、本装置に等しく適用されること、及び/又はその逆も同様であることが理解されよう。また、上記の態様、特徴、及び任意構成のいずれか1つ又は複数を組み合わせることができることも明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0065】
本発明は、図面に示される例示的な実施形態に基づいてさらに説明される。例示的な実施形態は、非限定的な例示として与えられる。図面は、非限定的な例示として与えられる本発明の実施形態の概略的な表現に過ぎないことに留意されたい。
【0066】
【
図2】
図2は、直流バス及び保護接地の実施形態の概略図を示す。
【
図3a】
図3aは、測定された過渡電気値を時間の関数で表した概略図を示す。
【
図3b】
図3bは、測定された過渡電気値を時間の関数で表した概略図を示す。
【
図4a】
図4aは、測定された過渡電気値を時間の関数で表した概略図を示す。
【
図4b】
図4bは、測定された過渡電気値を時間の関数で表した概略図を示す。
【
図5】
図5は、測定された過渡電気値を時間の関数で表した概略図を示す。
【
図6】
図6は本発明に係る絶縁監視装置の一実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1は直流バスと保護接地との間の絶縁を監視する方法100の概略図を示しており、バスは直流電源に接続されている。第1のステップ101では、第1の期間の間に、電源の端子が第1の電気回路網によって保護接地に接続される。第2のステップ102では、第1の回路網に関連する過渡的な第1の電気値が、第1の期間における複数の時間ステップで測定され、第1の定常値が、複数の第1の時間ステップにおける複数の第1の測定点を使用して計算される。第3のステップ103では、第2の期間の間に電源の端子が第2の電気回路網によって保護接地に接続される。第4のステップ104では、第2の回路網に関連する過渡的な第2の電気値が、第2の期間における複数の第2の時間ステップで測定され、第2の定常値が、複数の第2の時間ステップにおける複数の第2の測定点を使用して計算される。第5のステップ105では、算出された第1の電気値の定常値と第2の電気値の定常値とに基づいて、電源の端子と保護接地との間の絶縁抵抗の指標が決定される。
【0068】
直流電源が交流電気回路網に接続されている場合、保護接地と直流の正負端子との間に寄生容量が存在することがある。この容量は未知であり、経時的に変化し得る。この容量は、例えば、交流グリッドに接続されている機器に依存する場合がある。容量結合の結果、定常状態の最終値に達するのに必要な時間が長くなりすぎる可能性がある(安全上許容できない)。
【0069】
第1の電気値及び第2の電気値が安定した最終値に到達するまでに、かなりの遅延が存在する可能性がある。この遅延は、R*Cに等しい時定数に依存する。R値(抵抗)は、限定されたリーク電流を得るために比較的大きい。C値(容量)は、電気回路網に機器が接続された結果として比較的大きくなる可能性がある。RC値が比較的大きい場合、定常状態の最終値を得るのに時間がかかりすぎることがある。例えば、時定数RCの3倍~5倍は、安全性及び/又は特定の用途に関して許容できない可能性がある。第1及び第2の定常状態の最終値を予測することによって、例えば、RC曲線の曲線フィッティングを実行することによって、より速くより正確な応答が得られ得る。
【0070】
図2は、直流バス及び保護接地の一実施形態の概略図を示す。直流バスは、直流電源1に接続されている。電源1の端子は保護接地4に接続されている。絶縁抵抗はR1とR2で表される。第1の回路網(この図には図示せず)を介して電源1を保護接地4に接続することで、第1の励起を印加することができる。続いて、第2の回路網(本図では示されていない)を介して電源1を保護接地4に接続することで、第2の電気励起を印加することができる。
【0071】
電気励起50は、第1の回路網及び第2の回路網の構成によって決定される2つの異なる直流電圧V1、V2を印加することによって実行することができる。第1の回路網及び第2の回路網に関連する電気値52は、限られた期間にわたって測定され、複数の時間ステップにおける測定点に基づいて定常(安定)値が予測され、絶縁抵抗R1及びR2を計算するために必要な値が限定される。
【0072】
この例では、矩形波の電圧を印加(励起)しているが、測定される電圧は静電容量の影響で矩形波ではない。印加電圧を長時間維持すると定常状態の最終値に達することができるが、安全性を考慮するとこの時点ではアラームを作動させるには遅すぎる可能性がある。したがって、定常状態に到達するのに必要な時間よりも短い(例えば、5*RCよりも短い)限られた期間で定常値が予測される。
【0073】
図3a及び
図3bは、振幅Aを有する測定された過渡的な電気値を時間tの関数として表す概略図を示す。
図3aは、第2の回路網に関連する過渡的な第2の電気値54と、第1の回路網に関連する過渡的な第1の電気値56との交互のシーケンスを示す。上述したように、保護接地と交流グリッドとの間には結合が存在する可能性があり、その結果、容量が生じることがある。直流電源の端子が第2の電気回路網によって保護接地に接続されると、測定電圧は、定常値58に達するまで(RC遅延の結果として)徐々に増加することがある。
【0074】
結果として生じるRC回路の影響として、電圧は、充電フェーズでは印加(励起)電圧に向かって時間の関数として上昇する。励起電圧が低下すると、電圧が低下する放電フェーズとなる。電圧は、新しい励起電圧に向かって放電する。充電中、電圧の増加は、最初の時定数の間に最も速くなり、最後の時定数で最も遅くなる。同様に、放電中、電圧の減少は、最初の時定数の間に最も速くなり、最後の時定数で最も遅くなる。充放電曲線は5つの時定数、すなわち、実質的に安定な又は定常状態の最終値に到達する時点に到達することができる。
【0075】
図3bは、3つの測定点60を用いて定常値を計算する拡大図を示す。これらの測定点60は、定常状態の最終値58を予測/推定するために使用される。これは、例えば、指数フィッティングを実行することによって行われてもよい。他のモデルやアルゴリズムを使用することもできる。定常状態の最終値58を決定するには、5*RC までではなく、t
predまでの限られた期間のみが必要である。したがって、第1及び第2の回路網に関連する過渡電気値が測定される期間は、5*RCよりも大幅に小さくすることができる。
図3bに示すように、第2の期間(t
pred-t
0)は(5*RC-t
0)よりも大幅に小さくなる。これはまた、第1の回路網に関連する過渡電気値が収集される第1の期間についても有効である。この例では、充電フェーズ80aは時間ステップt
predまで続き、その後に放電フェーズ80bが続く。
【0076】
図4a及び
図4bは、測定された過渡電気値を時間の関数で表した概略図を示す。例えば、スイッチの第1の状態(「オン」)及び第2の状態(「オフ」)によって実現される、第1の電気回路網を介した電源端子の保護接地への接続と、第2の電気回路網を介した電源端子の保護接地への接続との間の切り替えは、安全を保証しながら絶縁エラーをタイムリーに検出するために、十分な速度で行われるべきである。その結果、定常値を待つのに十分な時間がない場合がある。
【0077】
非対称の励起を採用してもよい。V1とV2との間の比率を非対称にすることによって、対称的な絶縁エラーも検出することができる。例えば、絶縁劣化(自然劣化)の結果として発生する絶縁エラーは、対称的である可能性がある。保護接地は、例えば、第1の期間の間は直流電源電圧(DC line voltage)の1/3で最初に励起され、第2の期間の間は電源電圧の2/3で励起されてもよい。絶縁不良を判定及び確認するには、少なくとも2回の測定サイクルが必要である。
【0078】
一例では、1/3に励起される2つの電源周期(power line periods)と、2/3に励起される2つの電源周期の間に、複数の測定を行うことができる。各組の測定値はRC曲線を形成することができ、そこから最終値を計算することができる。したがって、最終値は、それが安定するのを待たずに計算することができる。測定を実行するには、2つの電源周期で十分な場合がある。このようにして、測定時間を大幅に改善することができる。例えば、300msの反応時間を達成することができる。
【0079】
この例では、50Vの直流システムの絶縁が監視されている。したがって、励起電圧は、Vx1=16.67Vで、かつ、Vx2=33.33Vである。励起電圧は、例示的に、直流グリッド電圧の1/3及び直流グリッド電圧の2/3として選択されている。直流バスとPEとの間の容量性負荷のために、
図4aにおいて線61によって示されるVx1には、励起時間の40ms以内に到達せず、
図4bにおいて線62によって示されるVx2には、励起時間の60msの間に到達しない。しかしながら、これらの最終値は、指数関数的なRC曲線を外挿することによって導出することができる。この最終値は、絶縁抵抗の計算に使用される。
図4bでは、十分に長い時間待った場合に電圧が収束する値、すなわち定常値62には決して到達していない。本発明は、この文脈に限定されない。
【0080】
直流電源電圧の1/3の第1のブロック電圧を第1の持続時間(time duration)だけ印加し、直流電源電圧の2/3の第2のブロック電圧を第2の持続時間だけ印加してもよい。これにより、保護接地の電位差は、直流電源の正負端子間の電位差の1/3となる。印加電圧比1/3及び2/3は、絶縁抵抗R1、R2の計算を簡単にすることができる。例えば(1/4及び3/4)、(2/5及び3/5)、(1/5及び4/5)などの他の非対称な比率も使用できることが理解されよう。多くの比率ペアの組み合わせを実施することができる。
【0081】
第1の期間と第2の期間とは、それぞれ、保護接地が第1の(抵抗)回路網と第2の(抵抗)回路網に接続されている持続時間と見なすことができる。一例では、保護接地が60msの間は一方の回路網に接続され、40msの間は他方の回路網に接続されてもよい。警戒すべき絶縁抵抗値が報告される前に、複数の期間にわたって測定することが望ましい場合がある。
図4a及び
図4bの例では、電源端子と保護接地との間の絶縁抵抗の指標を提供するための完全な測定は、100ms以内に行うことができる。
【0082】
図5は、測定された過渡電気値を時間の関数で表した概略図を示す。保護接地は、交流ライン及び直流ラインに容量結合することができるため、保護接地上の電圧はグリッド周波数又はその高調波に従う。任意の整数(whole number)の電源周期Δtの間に測定することにより、結合されたグリッド周波数の影響を平均化することができる。
【0083】
図5に示すように、振動信号70は、指数関数72上に重ね合わせることができる(一部のみが描かれる)。振動信号の振幅(例えば、50Hzで振動)は制限される場合がある。しかしながら、振動信号は、(例えば、曲線フィッティングを使用する)第1及び第2の定常値の推定に悪影響を及ぼす可能性がある。比較的小さな振動が、すでに絶縁エラーの計算値に大きな影響を与えている可能性がある。例えば、約600Vの信号に±0.1Vの振動を引き起こす振動信号は、計算値/推定値と実際の定常値との間にすでに大きな偏差を生じさせている可能性がある。
【0084】
この効果は、絶縁抵抗が小さくなると(例えば、最小絶縁値の限界値に近づくと)、さらに大きくなる場合がある。絶縁抵抗が小さい場合、V1とV2の差が小さくなることがある。例えば、1/3励起及び2/3励起を使用する場合、V2-V1の差は、もはや直流電源電圧の1/3ではなく、より小さくなることがある。
【0085】
2つの測定点間の時間距離ΔTは、直流電源が結合されている交流グリッドの電源周期に基づいて選択することができる。不良サンプリングに起因するエラーを防止することができる。有利な実施形態では、2つの時点間の距離は電源周期の整数倍である。例えば、必要な処理時間を短縮するために、2つの時点間の距離は1電源周期であってもよい。
【0086】
最終値の推定又は予測を実行するために、少なくとも3つの連続する測定点が決定されてもよい。曲線フィッティングの場合は、3つの測定ポイントを使用することができる。例えば、Lenberg-Marquartアルゴリズムを採用する場合には、3つ以上の測定点を使用することもできる。この例では、3つの時間ステップ、すなわちT1、T2、T3でサンプリングされた3つの測定点が使用されている。フィッティング曲線が3つの点T1、T2、T3を通過する場合に、定常値を決定するための正しい傾向を得ることができる。
【0087】
この時間間隔は、関連する電源サイクル(power line cycle)に応じて調整可能である場合がある。一例では、電源サイクルが例えば初期化中に決定される。本装置は、電源サイクルの指標を決定又は受信するように構成され得る。また、電源サイクルは、事前に設定されるか、及び/又はユーザが選択可能であることも想定される(例えば、欧州:50Hz、米国:60Hz)。
【0088】
定常状態の電圧値62を計算するために、指数曲線フィッティングが実行されてもよい。定常状態の電気値は、次の式に基づいて計算することができる。
【0089】
【0090】
より多数の測定点を有する曲線フィッティングも想定されていることが理解されよう。多くのフィッティングアルゴリズムが実装されてもよい。
【0091】
図6は、本発明による絶縁監視装置の一実施形態の概略図を示す。導線12及び13を含む直流バスを介して1つ以上の負荷(図示せず)に接続可能である直流電源1が存在する。直流電源1に接続された直流バスの絶縁は、直流電源1の端子と保護接地4との間で、一対の抵抗R1及びR2として模式的に表されている。直流バスと保護接地4との間の絶縁は、導線12及び13並びに負荷に繋がるすべての導線の絶縁によって影響を受けると同時に、これらの負荷からなる直流システムの絶縁に影響を及ぼす。R1及びR2の抵抗値は、安全目的のために、正確かつ十分な速さで決定されるべきである。
【0092】
絶縁監視装置5は、電源1に電気的に接続することができる。絶縁監視装置5は、抵抗、容量、及び/又はインダクタの回路網を含む電気回路8と、スイッチング装置6と、マイクロコントローラ7とを含み得る。スイッチング装置6は、例えば、バイポーラトランジスタ又はMOSFETであり、接続部9を介してスイッチ6の「オン」又は「オフ」状態を指令するマイクロコントローラ7によって制御可能である。スイッチ6の状態は、任意の時点で電源に接続されている実際の回路を定義する。このことは、スイッチ6を制御することによって、2つの異なる電気回路網を形成できることを意味する。
【0093】
マイクロコントローラ7には、回路の特定の点の値、好ましくは電圧を測定するための手段が設けられている。この測定値は、接続部10を介して取得される。この回路は、スイッチ6の各状態(オン又はオフ)の間に、2つの十分に異なる値が同じ点で測定されるように工夫されている。必要であれば、3つ以上の値を測定してもよく、例えば、スイッチ6の状態に依存しない1つの追加の測定値、又はスイッチ6の状態に依存する2つの追加の測定値、又はその両方を測定することができる。
【0094】
R1及びR2の決定されるべき抵抗値は、これらの少なくとも2つの測定値に基づいて計算され、スイッチのオン又はオフにそれぞれ対応する2つの異なる回路網に適用される回路網法則と組み合わされる。
【0095】
R1及びR2の計算は、適切な式に従って、マイクロコントローラ7によって実行することができる。マイクロコントローラは、R1及びR2の値が十分に高いかどうかをチェックするように構成することができる。そうでない場合には、絶縁故障が検出され、電源1の端子を、これらの端子に接続された任意の負荷から切り離すことができる。任意選択で、R1及びR2が予め定めたアラームレベルに近いが、まだ前記アラームレベルを下回っていない場合に、プレアラーム警告信号を作動させてもよい。
【0096】
R1及びR2の計算では、スイッチ6の1つの状態(オン又はオフ)それぞれの間に、2つの連続した測定が行われる。スイッチの状態を所定の頻度(frequency)で順次変更することにより、連続的な監視を行うことができる。
【0097】
任意選択で、電源1を負荷に接続又は切断するためにメインスイッチが配置されてもよい。例えば、メインスイッチは、直流バスの導線のそれぞれに1つずつ配置され、リレーによって動作する2つの同期されたスイッチを用いて配置されてもよい。また、この装置は、直流バスのキャパシタへの過度の突入電流を防止する追加のリレーを動作させることもできる。また、追加のリレーを動作させることで、メインスイッチをオフにした後、直流バスのキャパシタの残留電圧を放電することもできる。
【0098】
図示された装置は、第1の期間の間に第1の電気回路網によって電源1の端子を保護接地4に接続し、続いて、第1の期間における複数の時間ステップにおいて第1の回路網に関連する過渡的な第1の電気値を測定し、複数の第1の時間ステップにおける複数の第1の測定点を使用して第1の定常値が計算されるように構成することができる。
【0099】
さらに、この装置は、第2の期間の間に第2の電気回路網によって電源の端子を保護接地4に接続し、続いて、第2の期間における複数の第2の時間ステップにおいて第2の回路網に関連する過渡的な第2の電気値を測定し、複数の第2の時間ステップにおける複数の第2の測定点を使用して第2の定常値が計算されるように構成することができる。これらの工程は、1回又は複数回繰り返されてもよく、算出された第1の電気値の定常値及び第2の電気値の定常値に基づいて、電源の端子と保護接地4との間の絶縁抵抗の指標を決定することができる。
【0100】
図7は、本発明による絶縁監視装置の概略図である。直流電源1の直流バス端子(正+、負-)と保護接地4との間の絶縁を表す2つの絶縁抵抗(Rf1、Rf2) を監視する必要がある。スイッチS1は、MOSFETトランジスタとすることができる。2つの電気回路網の間の切り替えのために他の実装も可能である。本実施形態では、正の電源端子と保護接地4との間の抵抗R3と、負の電源端子と保護接地4との間に直列に配置された2つの抵抗R4及びR8と、S1と直列に接続された抵抗R7であって、R7及びS1が抵抗R4及びR8と並列に配置された抵抗R7と、直列に配置された2つの抵抗R5及びR6であって、電源1の端子に接続された抵抗R5及びR6と、を備える電気回路網が提供される。
【0101】
スイッチS1がオフのとき、抵抗分圧回路網は、抵抗R3、R4及びR8のみを含む。S1が作動すると、R7を含む並列分岐が作動する。どちらの状態においても、マイクロコントローラは、直列抵抗R4とR8の間の点である位置16で保護接地4に関する電圧を測定する。この抵抗分圧回路網としての構成により、測定電圧をマイクロコントローラの回路によって測定可能な十分に低い値まで低下させることができる。2回の連続した電圧測定により2つの値を得ることができる。次に説明するように、これらの値はR1とR2の計算に使用される。
【0102】
DC+又はDC-と保護接地4との間の容量結合は、例えば、直流バスに接続されている機器内の絶縁トランス及び/又は電磁干渉デカップリングキャパシタの寄生容量によって生じる可能性がある。従来技術で知られている装置は、通常、高インピーダンス抵抗を採用しており、2回の測定を行う必要がある。これに静電容量効果が加わると、測定の不具合又は長いセトリング時間のいずれかが発生し、装置の動作が遅くなる。絶縁監視装置は、人体を保護するために、絶縁不良が発生した後(障害の大きさに応じて)40ms~300ms以内に反応しなければならないと一般に認められている。
【0103】
寄生容量と高インピーダンスの測定用抵抗の時定数は10msのオーダである。また、セトリング時間は約50msである。しかしながら、これらのパラメータは大きく変動する可能性があるので、実際には、ほとんどの場合、1回の測定当たり100msのセトリング時間が良好な妥協点であることが分かっている。1回の絶縁抵抗の計算には2回の測定が必要であり、電磁干渉やその他の外乱に対する耐性を作り出すために、反応する前に少なくとも2回~3回は絶縁抵抗を計算する必要がある。
【0104】
グリッドに存在する寄生容量のために、提案された絶縁監視装置は十分に高速で反応できないことは明らかである。さらに、グリッドの信号は保護接地にクロストークする可能性がある。保護接地は、主要周波数及び/又はその1つ又は複数の高調波における電圧リップルの形で、主電圧の痕跡を運ぶ可能性がある。これらの信号をフィルタリングすると、保護接地に印加される信号の取得が遅くなる可能性がある。本発明による方法は、これらの技術的問題を克服することができ、様々な異なるタイプの絶縁監視装置において実施することができる。
【0105】
保護接地は、2つの電圧レベルで次々に励起される。保護接地電圧の最初の測定は、手順の開始直後、つまりスイッチを開いた直後に行われる。2回目と3回目の測定は、1グリッド周期待った後に行われる。これらの測定値は、Vpe1.1+Vg1.1、Vpe1.2+Vg1.2、Vpe1.3+Vg1.3である。Vpe1は、スイッチが開いた状態のRC回路による保護接地の電圧であり、Vgは、主電源からのクロストークによる重畳正弦波電圧である。
【0106】
次に、スイッチを閉じて、同じ方法で測定を行うと、Vpe2.1+Vg2.1、Vpe2.2+Vg2.2、Vpe2.3+Vg2.3となる。
【0107】
すべての測定は、グリッド電圧の同じ位相角で行われるため、以下の通り、Vg1.1=Vg1.2=Vg1、及びVg2.1=Vg2.2=Vg2となる。さらに、ソリッド・ステート・スイッチを閉じる時間はグリッド周期と比較して無視できるので、Vg1=Vg2=Vgとなる。Vpe1.1及びVpe1.2は、Vpe1.1で始まり、第1の測定値Vpe1についての確定値(settled value)で終わる指数曲線の一部である。
【0108】
【0109】
Rf1、Rf2 は、算出される絶縁抵抗値である。また、Rf1及びRf2の指標(例えば、等価電気量及び/又はRf1及びRf2の比に基づく値など)が決定されることも想定される。
【0110】
マイクロコントローラ7は、予め定めた時間(例えば、60ms)の間、スイッチS1を開き、その後、スイッチS1を(例えば、40ms)閉じるように構成することができる。これを連続的に繰り返すことができる。
【0111】
回路網内の抵抗は、次のように構成できる。
【0112】
【0113】
抵抗値R3、R4、R7、及びR8の選択により、直流電源電圧の2/3のブロック電圧(S1が開いている場合)及び直流電源電圧の1/3のブロック電圧(S1が閉じている場合)で保護接地を励起することができる。S1が開いているときは、マイクロコントローラのピン15でVx2を測定することができ、次いでS1を閉じることができます。S1が閉じている状態で、ピン15でVx1を測定することができる。ピン15で電圧Vx1及びVx2を測定することができる。
【0114】
この例では、ノイズ耐性をさらに高めるために、Vx2が2/3Vdcよりわずかに小さく、Vx1が1/3Vdcよりわずかに大きくなるように、バイアス抵抗が導入されている(抵抗値R3及びR7の+0.5%)。その結果、注入ノイズと部品の許容誤差を考慮したすべての状況において、Vx2-Vx1<Vdc/3となる。マイクロコントローラによって処理される計算式は、その場合にのみ有効である可能性がある。バイアス抵抗は、その抵抗値が高い場合には絶縁抵抗推定値(安全側)が低くなり、絶縁不良の場合には無視できる。抵抗分圧R5/R6の結果は、AD変換のための電圧基準(18)を形成し、マイクロコントローラのVcc(電源)より低くすることができる。
【0115】
AD変換のためのVrefとして固定の電圧基準(例えば5V)が使用されている場合、AD変換器の12ビット(4096個が参照される)は、5Vの固定の電圧基準に相当する。AD変換器の出力は、電圧単位に変換する必要がある。電圧単位(ミリボルト)=4096*ADresult/5000。
【0116】
抵抗分割したR5/R6を電圧基準として使用する場合、AD変換器の測定値はVdcの2/3又は1/3となり、この測定値はVdcと見なされる。電圧単位に変換する必要はない。電圧基準としての抵抗分割R5/R6は、AD変換器の分解能が低下するという追加の利点を有する。例えば、Vref=2V:AD変換器の12ビット(4096)が2Vに相当:1ビット:分解能=2000/4096=0.488mV/ビット(分解能=5000/4096=1.22mVビット(5Vの固定電圧の場合))。
【0117】
Vrefは、直流電圧に基づいて決定することができる。任意選択で、Vrefを決定するために分圧が使用される。Vrefは、直流電源電圧に比例させることができる。マイクロコントローラの電圧供給回路網が描かれていないことが理解されよう。Vrefは、直流電源電圧を測定するために使用され得る別個の入力になり得る。
【0118】
Vx2及びVx1の測定のために、フィルタ(ローパスフィルタ)を追加することができる。このフィルタのカットオフ周波数は、測定周波数(60ms及び40ms)の10倍以上でなければならない。低周波数のフィルタリングは、測定時間が増加し、これが許容されないので、解決策にならない。
【0119】
一例では、本装置は、状態S1「オン」と状態S1「オフ」との間で、一定間隔で、例えば10Hzの周波数で切り替わる。(予測を提供するために)定常値が計算されるので、測定位置16で安定した電圧を発生させるために、S1の切り替え後、所定の遅延時間(例えば、50ms)の後に測定を実行することはもはや必要ない。
【0120】
任意選択で、1つ以上のサイクルで絶縁エラーが検出されると、アラームがトリガーされる。一例では、複数回の測定が行われ、連続するサイクルで絶縁エラーが検出されると、アラームがトリガーされる。各サイクルで、絶縁抵抗の測定値を得ることができる。1回のサイクルでも十分であるが、サイクルを繰り返すことによって信頼性を高めることができ、絶縁抵抗の経時変化も監視できる。
【0121】
保護接地は、用途に応じて、車両のシャーシ等の保護筐体や実際の接地への接続に関連する場合があることが理解されよう。
【0122】
用途によっては、直流電源電圧の知識が望まれていることが理解されよう。このような場合には、上述のように基準電圧Vrefを用いて電気測定を行うことができ、さらに、V(ボルト)で表される直流電源電圧を決定することができるように、直流電源電圧を固定基準で決定することができる。本実施形態は、この文脈に限定されない。
【0123】
本装置は、専用アプリケーションに有用な他の安全機能、例えば、低電圧保護および過電圧保護、温度測定、自己診断、警告レベル表示なども実行できることが理解されよう。これは、マイクロコントローラを再プログラミングすることによって実行することができる。また、これは、絶縁抵抗R1及びR2以外の値が計算されるように、追加の測定、計算、及び/又はリレーなどのための追加のコマンド信号を作動させるように設計されたマイクロコントローラを使用することによっても実行することができる。チェックされるべき複数の値は、マイクロコントローラ7によって計算されてもよく、それによって多数の安全対策、即ち、電流を遮断するためのリレー、アラーム信号等を作動させることができる。
【0124】
本方法は、コンピュータで実施されるステップを含むことができることが理解されよう。上記のすべてのステップは、コンピュータで実施されるステップとすることができる。本実施形態は、コンピュータ装置を含むことができ、プロセスは、コンピュータ装置で実行される。また、本発明は、本発明を実施するように適合されたコンピュータプログラム、特にキャリア上又はキャリア内のコンピュータプログラムにも及ぶ。プログラムは、ソースコード又はオブジェクトコードの形態であってもよく、又は本発明によるプロセスの実施に使用するのに適した任意の他の形態であってもよい。キャリアは、プログラムを搬送することができる任意のエンティティ又はデバイスであってもよい。例えば、キャリアは、ROMなどの記憶媒体、例えば半導体ROM又はハードディスクを含むことができる。さらに、キャリアは、電気信号又は光信号などの伝送可能なキャリアであり得、これらの信号は、電気ケーブルや光ケーブルを介して伝達されてもよく、又は無線や他の手段、例えばインターネット又はクラウドを介して伝達されてもよい。
【0125】
いくつかの実施形態は、例えば、機械によって実行される場合に、機械に、実施形態に従った方法及び/又は動作を実行させることができる命令又は命令のセットを格納し得る、機械又は有形のコンピュータ可読媒体又は物品を使用して、実装され得る。
【0126】
様々な実施形態は、ハードウェア要素、ソフトウェア要素、又はその両方の組合せを使用して実装され得る。ハードウェア要素の例としては、プロセッサ、マイクロプロセッサ、回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、論理ゲート、レジスタ、半導体デバイス、マイクロチップ、チップセットなどを含むことができる。ソフトウェアの例としては、ソフトウェアコンポーネント、プログラム、アプリケーションプログラム、コンピュータプログラム、システムプログラム、マシンプログラム、オペレーティングシステムソフトウェア、モバイルアプリ、ミドルウェア、ファームウェア、ソフトウェアモジュール、ルーチン、サブルーチン、機能、コンピュータ実装方法、手順、ソフトウェアインターフェース、アプリケーションプログラムインターフェース(API)、方法、命令セット、コンピューティングコード、コンピュータコードなどが含まれる。
【0127】
また、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続されている(connected)」、「取り付けられている(attached)」、又は「結合されている(coupled)」と言及される場合、それは、他の特徴又は要素に直接接続され、取り付けられ、又は結合されてもよいし、介在する特徴又は要素が存在してもよいことが理解されよう。
【0128】
「第1の(first)」、「第2の(second)」などの用語は、本明細書で使用される場合、同様の要素の異なる例を示すことによって、ある要素を別の要素から区別することができる。「第1の」、「第2の」などの用語は、時間的に、空間的に、順位付け、又は任意の他の方法のいずれにおいても、いかなる順序、量、重要度、シーケンスを示さないことを理解されたい。
【0129】
さらに、「回路網(network)」、「回路(circuit)」、「回路(circuitry)」、及び「コントローラ(controller)」という用語は、単一の構成要素又は複数の構成要素のいずれかを含んでもよい。これらの構成要素は、能動及び/又は受動のいずれかであり、(例えば、1つまたは複数の集積回路チップとして)接続されるか、またはその他の方法で結合されて、説明された機能を提供する。
【0130】
本明細書では、本発明の実施形態の具体例を参照して、本発明を説明する。しかしながら、本発明の本質から逸脱することなく、様々な修正、変形、代替、及び変更を行うことができることは明らかであろう。本明細書では、明確かつ簡潔に説明するために、特徴は同じ実施形態又は別個の実施形態の一部として説明される。しかしながら、これらの別個の実施形態で説明される特徴の全部又は一部の組み合わせを有する別の実施形態も、特許請求の範囲によって概説される本発明の枠内に入ることが想定され、理解される。したがって、明細書、図面、及び実施例は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で捉えられるべきである。本発明は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内にある全ての代替、修正及び変形を包含することを意図している。さらに、説明される要素の多くは、個別の又は分散されたコンポーネントとして、あるいは他のコンポーネントと組み合わせて、任意の適切な組み合わせ及び位置において実装することができる機能エンティティである。
【0131】
特許請求の範囲において、括弧の間に置かれた参照符号は、請求項を限定するものと解釈してはならない。「備える(comprising)」という用語は、請求項に列挙されたもの以外の特徴又はステップの存在を排除するものではない。さらに、「a」及び「an」という用語は、「1つのみ」に限定されるものではなく、代わりに「少なくとも1つ」を意味するために使用され、複数を排除するものではない。特定の手段が相互に異なる請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の電源に接続された直流バスと保護接地との間の絶縁を監視する方法であって、
第1の期間の間に第1の電気回路網によって前記電源の端子を保護接地に接続すること、
前記第1の期間内の複数の時間ステップにおいて、前記第1の電気回路網に関連する過渡的な第1の電気値を測定することであって、第1の定常値が前記複数の第1の時間ステップにおける複数の第1の測定点を用いて計算され、
第2の期間の間に第2の電気回路網によって前記電源の端子を保護接地に接続すること、
前記第2の期間内の複数の第2の時間ステップにおいて、前記第2の電気回路網に関連する過渡的な第2の電気値を測定することであって、第2の定常値が前記複数の第2の時間ステップにおける複数の第2の測定点を用いて計算され、及び、
前記第1の電気値及び前記第2の電気値の計算された前記定常値に基づいて、前記電源の前記端子と保護接地との間の絶縁抵抗の指標を決定すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の定常値及び前記第2の定常値が、測定される前記第1の電気値及び前記第2の電気値がそれぞれ前記第1の期間及び前記第2の期間において定常状態に達する前に計算される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の期間及び/又は前記第2の期間が、抵抗-キャパシタ(RC)時定数の3倍未満である、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の期間及び/又は前記第2の期間が、前記RC時定数の推定値を考慮に入れて選択される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記RC時定数が、測定点に基づいて決定される、
請求項3又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の期間及び/又は前記第2の期間が、100ms未満である、
請求項1から
請求項5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の定常値が、前記複数の第1の時間ステップにおける前記複数の測定点を用いた第1の曲線フィッティングによって計算され、
前記第2の定常値が、前記複数の第2の時間ステップにおける前記複数の測定点を用いた第2の曲線フィッティングによって計算される、
請求項1から
請求項6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
連続する時間ステップ間の時間間隔が、電源周期に基づいて選択される、
請求項1から
請求項7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記時間間隔が、前記電源周期の倍数として選択され、好ましくは1つの電源周期に等しい、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の曲線フィッティング及び前記第2の曲線フィッティングの各々に対して、3つの測定点が使用される、
請求項1から
請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の電気値及び前記第2の電気値が、同じ基準に関して同じ測定位置で測定され、
励起電圧が、前記直流の電源によって提供される直流電源電圧に正規化される、
請求項1から
請求項10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の期間の間に、前記保護接地が、前記直流電源電圧の第1の割合のブロック電圧で励起され、
前記第2の期間の間に、前記保護接地が、前記直流電源電圧の第2の割合のブロック電圧で励起され、
前記第1の割合が前記第2の割合とは異なる、
請求項1から
請求項11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の割合と前記第2の割合の合計が、実質的に1に等しい、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の割合が1/3で、かつ、前記第2の割合が2/3である、
請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1つ又は複数のバイアス抵抗が、前記第1の割合を増加させ、前記第2の割合を減少させるために使用され、
前記1つ又は複数のバイアス抵抗が、0.1~2%、より好ましくは0.5~1%のバイアスを提供するように構成されている、
請求項12から請求項14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の電気値及び前記第2の電気値を測定するためにフィルタが採用され、前記フィルタがローパスフィルタである、
請求項1から
請求項15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記定常値が、前記直流の電源が交流回路網に結合されている場合にのみ、曲線フィッティングを使用して計算される、
請求項1から
請求項16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
第1の状態と第2の状態との間で切り替え可能なスイッチが設けられ、
前記第1の状態では、前記スイッチが、前記電源の前記端子を前記第1の電気回路網に接続し、
前記第2の状態では、前記スイッチが、前記電源の前記端子を前記第2の電気回路網に接続し、
前記第1の期間と前記第2の期間とが等しく、
前記第1の期間及び前記第2の期間のシーケンスが一定の頻度で繰り返され、
測定、計算、及び比較することが同じ前記頻度で繰り返される、
請求項1から
請求項17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
決定された前記絶縁抵抗の値が予め定めたアラームレベルと比較され、
前記絶縁抵抗の値が予め定めたレベルを超えた場合に、アラーム動作が実行される、
請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
絶縁故障が発生した場合に、前記直流の電源に接続された負荷に信号を送信し、前記絶縁故障を遠隔制御ステーションに伝達する手段を備える、
請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記過渡的な第1の電気値および前記過渡的な第2の電気値が、レシオメトリックA/D変換を用いて測定される、
請求項1から請求項20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記直流の電源の直流電圧が測定される、
請求項1から請求項21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
直流の電源に接続された直流バスと保護接地との間の絶縁を監視する装置であって、
第1の期間の間に第1の電気回路網によって前記電源の端子を保護接地に接続し、
前記第1の期間内の複数の時間ステップにおいて、前記第1の電気回路網に関連する過渡的な第1の電気値を測定し、第1の定常値が前記複数の第1の時間ステップにおける複数の第1の測定点を用いて計算され、
第2の期間の間に第2の電気回路網によって前記電源の端子を保護接地に接続し、
前記第2の期間内の複数の第2の時間ステップにおいて、前記第2の電気回路網に関連する過渡的な第2の電気値を測定し、第2の定常値が前記複数の第2の時間ステップにおける複数の第2の測定点を用いて計算され、
前記第1の電気値及び前記第2の電気値の計算された前記定常値に基づいて、前記電源の前記端子と保護接地との間の絶縁抵抗の指標を決定する、
ように構成された装置。
【請求項24】
他の監視機能を実行するように構成された、
請求項23に記載の装置。
【国際調査報告】