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特表2022-524282オリゴヌクレオチドを投与及び放出する組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチドを投与及び放出する組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20220422BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20220422BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220422BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220422BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220422BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220422BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220422BHJP
   A61K 8/72 20060101ALN20220422BHJP
   A61K 8/90 20060101ALN20220422BHJP
   A61K 8/86 20060101ALN20220422BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALN20220422BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20220422BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61P1/02 ZNA
A61P29/00
A61K31/7105
A61K31/713
A61K47/10
A61K48/00
A61K8/72
A61K8/90
A61K8/86
A61Q11/00
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543333
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(85)【翻訳文提出日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2020050866
(87)【国際公開番号】W WO2020151999
(87)【国際公開日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】19153663.0
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521325857
【氏名又は名称】パリカム セラピューティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュツァキエル ゲオルク アロイス
(72)【発明者】
【氏名】ルップ トーマス マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】ネドバル ヴォルフガング
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA95
4C076BB22
4C076BB23
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC16
4C076EE23
4C076FF34
4C083AD011
4C083AD051
4C083BB55
4C083CC41
4C083EE33
4C083FF01
4C084AA13
4C084MA57
4C084MA63
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA67
4C084ZB11
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA57
4C086MA63
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA67
4C086ZB11
(57)【要約】
本発明は、オリゴヌクレオチドと、少なくとも2つがポロキサマー188及びポロキサマー407である少なくとも2種のコポリマーと、媒体とを含む組成物に関する。本発明は更に上記組成物を製造する方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴヌクレオチドと、少なくとも2つがポロキサマー188及びポロキサマー407である少なくとも2種のコポリマーと、媒体とを含む組成物。
【請求項2】
前記オリゴヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチド及び/又は修飾ヌクレオチドの天然の、半合成の、合成の又は修飾された一本鎖又は二本鎖の核酸分子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は2種のコポリマーを含み、前記コポリマーはポロキサマー188及びポロキサマー407である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中のポロキサマー188の質量とポロキサマー407の質量との比率は、5:1~1:10である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記媒体は、水、PBS、及びグリシンからなる群の1つ以上から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物のゾル-ゲル転移温度は、25℃~35℃である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドの濃度は、1.0pM~10Mである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
哺乳動物における口腔の炎症性疾患又は炎症性状態を予防又は治療する方法で使用される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記口腔の炎症性疾患又は炎症性状態は、歯周疾患又は歯周状態である、請求項8に記載の使用される組成物。
【請求項10】
前記歯周疾患又は前記歯周状態は、歯肉炎、慢性歯周炎、侵襲性歯周炎、歯周炎及びインプラント周囲炎又は全身性疾患の症状としての粘膜炎、壊死性潰瘍性歯肉炎、壊死性潰瘍性歯周炎、歯周組織の膿瘍、及び歯周歯内複合病変からなる群より選択される、請求項9に記載の使用される組成物。
【請求項11】
前記組成物は、皮膚適用を介して適用される、請求項8~10のいずれか一項に記載の使用される組成物。
【請求項12】
前記組成物は、医薬組成物である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、
(a)前記オリゴヌクレオチドと、前記コポリマーと、前記媒体とを混合する工程と、
(b)前記混合物を撹拌する工程と、
を含む、方法。
【請求項14】
工程(a)における前記媒体の温度を、該媒体を前記組成物の他の成分と混合する前に、その合間に、及び/又はその後に0℃~10℃に調整する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(b)は、前記混合物を0℃~10℃の温度で1分間~96時間撹拌することを含む、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴヌクレオチドと、少なくとも2つがポロキサマー188及びポロキサマー407である少なくとも2種のコポリマーと、媒体とを含む組成物に関する。本発明は更に上記組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物における疾患又は状態を医薬品で効果的に治療するには、適切な薬学的活性化合物を適用することだけでなく、上記化合物を投与及び放出する適切かつ効果的な手段を見出すことも必要である。
【0003】
疾患又は状態の一例は、歯肉疾患、歯周疾患、インプラント周囲疾患若しくは粘膜炎又は他の関連状態を含む哺乳動物における口腔の慢性炎症性疾患又は慢性炎症性状態である。哺乳動物における頬側口腔/口腔の慢性炎症性疾患又は慢性炎症性状態を治療する1つの治療アプローチは、オリゴヌクレオチドの使用による「アンチセンス戦略」である。様々なオリゴヌクレオチドが、特異的なアンチセンス薬としてヒトにおけるICAM-1(細胞間接着分子-1)遺伝子発現を低減する又は完全に抑制することが当該技術分野で知られている。ICAM-1は、通常は細胞間接着相互作用に関与し、炎症時に上方調節される膜結合タンパク質である。ICAM-1の制御不能な病的な過剰発現を基礎的な発現レベルまで低下させることは、歯肉疾患又は最終的には歯周炎を含む慢性炎症及びこれらに基づく疾患を治療するのに効果的な原因となる治療標的であると考えられている。歯周炎は、哺乳動物の口腔の広範な炎症性疾患又は炎症性状態である。歯周炎は、C反応性タンパク質及びインターロイキン-6のレベルの上昇によって示されるような体内の炎症マーカーの増加に関連している。歯周炎を患う人々の口腔内では、シェディングされたICAM-1(sICAM-1)のレベルが大幅に増加することから、炎症/疾患の段階を監視するのに魅力的な分子マーカーと同じ役割を果たす。歯周炎は、脳卒中、心筋梗塞、流産の数/リスクの増加、及びアテローム性動脈硬化症を含む幾つかの重症疾患のリスク増加に関連している。高齢者に関しては、歯周炎は、遅延記憶及び計算能力の障害とも関連付けられている。したがって、歯周炎の治療に使用されるそのような作用物質を適切に投与して効果的に放出するのに使用され得る医薬組成物に対する強い(医学的)必要性が存在する。実際、概してオリゴヌクレオチドの投与及び放出については、依然として改善が必要とされている。冒された歯を取り巻く溝滲出液の一掃速度の向上により薬物の残存及び取り込みが妨げられる口腔内では、効果的な薬物送達(投与)は困難であることが明らかになった。
【0004】
さらに、例えばオリゴヌクレオチドを、医薬組成物を介して送達するのに効果的な組成物を見出すことだけでなく、例えばオリゴヌクレオチドを効果的に送達することができる一般的な組成物、例えばパーソナルケア製品、例えば練り歯磨き用の組成物を提供することも重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の基礎をなす技術的課題は、オリゴヌクレオチドを投与及び放出するための、例えば哺乳動物における疾患又は状態を治療するための単純かつ効率的な手段、特に、液量の増加により薬物の残存及び取り込みが妨げられる経口薬物送達に特化した送達システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題の解決は、特許請求の範囲で特徴付けられる実施の形態により達成される。
【0007】
特に、第一の態様では、本発明は、オリゴヌクレオチドと、少なくとも2つがポロキサマー188及びポロキサマー407からなる群より選択される少なくとも2種のコポリマーと、媒体とを含む組成物に関する。好ましい実施の形態では、組成物は、オリゴヌクレオチドと、ポロキサマー188及びポロキサマー407である2種のコポリマーと、媒体とのみからなる。
【0008】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチド及び/又は修飾ヌクレオチドの天然の、半合成の、合成の又は(化学的に)修飾された一本鎖又は二本鎖の核酸分子に関連する。適切な修飾ヌクレオチドは、修飾塩基、糖、及び/又はリン酸基を有するヌクレオチド、例えば、モノホスホロチオエート修飾されたヌクレオチド間リン酸エステルを含む。オリゴヌクレオチドを製造、単離及び/又は精製する方法は当該技術分野で知られており、化学的合成法又は酵素的方法とそれに続くオリゴヌクレオチドの精製とを含む。好ましい実施の形態では、オリゴヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖のオリゴヌクレオチド、好ましくは上で概説された化学の一本鎖の修飾オリゴヌクレオチド、より好ましくはモノホスホロチオエート修飾されたヌクレオチド間リン酸エステルを有するオリゴヌクレオチド、更により好ましくはモノホスホロチオエート修飾されたヌクレオチド間リン酸エステルを有するギャップマー型オリゴヌクレオチドである。
【0009】
本明細書において、「ギャップマー型オリゴヌクレオチド」という用語は、一方又は両方の末端に一本鎖の2’-O-メチルRNAオリゴヌクレオチド配列が隣接する中心の一本鎖のDNAオリゴヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドを指す。RNAオリゴヌクレオチド配列はそれぞれ、好ましくは3個~7個、より好ましくは4個のオリゴヌクレオチドの長さを有する。好ましくは、ギャップマー型オリゴヌクレオチドは、特定のRNアーゼH活性及び連続的な標的mRNA切断を引き起こすためにデオキシリボ核酸コアに隣接する2’-O-メチル認識アームを含む第2世代のギャップマー型オリゴヌクレオチドである。
【0010】
特定の実施の形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号1の少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも12ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、又は18ヌクレオチドを有する配列番号1によるヌクレオチド配列の断片を含む。すなわち、上記断片は、配列番号1の10ヌクレオチド、12ヌクレオチド、15ヌクレオチド、又は18ヌクレオチドを有する。好ましくは、上記オリゴヌクレオチドは、上記フラグメントのみからなる。すなわち、上記オリゴヌクレオチドは、10ヌクレオチド、12ヌクレオチド、15ヌクレオチド、又は18ヌクレオチドの長さを有する。上記断片を含むオリゴヌクレオチドは、好ましくは少なくとも10ヌクレオチド、12ヌクレオチド、15ヌクレオチド、又は18ヌクレオチドで、かつ多くとも50ヌクレオチド以下、より好ましくは40ヌクレオチド以下、より好ましくは35ヌクレオチド以下、より好ましくは30ヌクレオチド以下、最も好ましくは25ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0011】
特に好ましい実施の形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号1によるヌクレオチド配列全体を含む。好ましくは、上記オリゴヌクレオチドは、上記ヌクレオチド配列のみからなる。すなわち、上記オリゴヌクレオチドは、20ヌクレオチドの長さを有する。上記ヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドは、好ましくは20ヌクレオチド~50ヌクレオチド、より好ましくは20ヌクレオチド~40ヌクレオチド、より好ましくは20ヌクレオチド~35ヌクレオチド、より好ましくは20ヌクレオチド~30ヌクレオチド、最も好ましくは20ヌクレオチド~25ヌクレオチドの長さを有する。
【0012】
本発明の組成物中のオリゴヌクレオチドの濃度は特に限定されない。例えば、組成物中のオリゴヌクレオチドの濃度は、1.0pM~10M、好ましくは0.10μM~5.0M、より好ましくは1.0μM~500mM、より好ましくは10μM~500μM、更により好ましくは50μM~200μMであり得る。
【0013】
「コポリマー」という用語には、特に限定はなく、交互コポリマー、周期コポリマー、統計コポリマー、及びブロックコポリマーが含まれる。好ましくは、本発明によるコポリマーは、ブロックコポリマー、好ましくは非イオン性トリブロックコポリマーである。
【0014】
本発明によれば、少なくとも2種のコポリマーが組成物中に含まれる。異なるコポリマーの数は特に限定されない。したがって、組成物は、2種、3種、4種、又は更に多くの異なるコポリマーを含み得る。好ましくは、組成物は2種のコポリマーを含む。
【0015】
組成物中のコポリマーの総含有量は特に限定されない。例えば、組成物中のコポリマーの総含有量は、100質量%の組成物に対して10質量%~50質量%、好ましくは15質量%~45質量%、最も好ましくは20質量%~40質量%であり得る。
【0016】
本発明によれば、コポリマーのうちの少なくとも2つは、ポロキサマー188及びポロキサマー407である。好ましくは、組成物は2種のコポリマーを含み、これらのコポリマーはポロキサマー188及びポロキサマー407である。ポロキサマーは、ポリ(エチレンオキシド)の2つの親水性鎖が隣接するポリ(プロピレンオキシド)の中心の疎水性鎖から構成されるトリブロックコポリマーである。
【0017】
組成物中のポロキサマー188の質量とポロキサマー407の質量との比率は特に限定されない。例えば、組成物中のポロキサマー188の質量とポロキサマー407の質量との比率は、物理的特性及び加工関連特性(粘度及び流動性等)が改善されるため、5:1~1:10、好ましくは4:1~1:8、より好ましくは2:1~1:5、より好ましくは1:1~1:3であり得る。
【0018】
媒体は特に限定されない。例えば、媒体は、水性媒体、1種以上の有機溶剤を基礎とする媒体、又は水と1種以上の有機溶剤との混合物を基礎とする媒体であり得る。媒体は塩を含む場合があり、特定のpHを有し得る。好ましくは、媒体は、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、及びグリシンからなる群より選択される。好ましくは、媒体は、水、特に注射用水(aqua ad iniectabilia)(例えば、欧州薬局方、00169、注射用水(Water for injections)を参照)である。
【0019】
組成物はゾル-ゲル転移を経る場合がある。それに関して、組成物のゾル-ゲル転移温度は特に限定されない。例えば、組成物のゾル-ゲル転移温度は、25℃~35℃、好ましくは27℃~33℃、より好ましくは28℃~31℃であり得る。組成物は、好ましくは冷蔵庫内にある温度(例えば2℃~8℃)で液体状態にあり、体温(例えば37℃)で半固体/ゲルである。特に、液量の増加により薬物の残存及び取り込みが妨げられる炎症領域を治療する場合に、そのような特性は、好ましくは、特に哺乳動物の口腔内、好ましくは口腔粘膜又は歯周ポケットにおいて、組成物の取り扱い及び適用が容易であると共に、治療の間に組成物がその場で残存することを確実にする。
【0020】
好ましい実施の形態では、本発明による組成物は、哺乳動物における疾患又は状態、好ましくは哺乳動物における、例えば粘膜又は皮膚等の表在器官の炎症性疾患又は炎症性状態、より好ましくは哺乳動物における口腔、好ましくは口腔粘膜又は歯周ポケットの炎症性疾患又は炎症性状態を予防又は治療する方法において使用され得る。好ましくは、予防又は治療される口腔の炎症性疾患又は炎症性状態は、歯肉の慢性炎症、例えば、歯周疾患又は歯周状態、より好ましくは、歯肉炎、慢性歯周炎、侵襲性歯周炎、歯周炎及びインプラント周囲炎又は全身性疾患の症状としての粘膜炎、壊死性潰瘍性歯肉炎、壊死性潰瘍性歯周炎、歯周組織の膿瘍、及び歯周歯内複合病変からなる群より選択される歯周疾患又は歯周状態である。
【0021】
哺乳動物の歯肉又は口腔粘膜への適用のためには、組成物は、ポロキサマー407、ポロキサマー188及び媒体の総質量に対して、好ましくは25質量%~35質量%のポロキサマー407、5質量%~15質量%のポロキサマー188及び55質量%~65質量%の媒体を含み、より好ましくは26質量%~31質量%のポロキサマー407、7質量%~13質量%のポロキサマー188及び57質量%~64質量%の媒体を含み、最も好ましくは27質量%~29質量%のポロキサマー407、10質量%~12質量%のポロキサマー188及び60質量%~62質量%の媒体を含む。組成物は、好ましくは、1.0nM(ナノモル濃度)~100μM(マイクロモル濃度)の範囲内の濃度でオリゴヌクレオチドを含む。
【0022】
哺乳動物の歯周ポケットへの適用のためには、組成物は、ポロキサマー407、ポロキサマー188及び媒体の総質量に対して、好ましくは15質量%~25質量%のポロキサマー407、5質量%~15質量%のポロキサマー188及び65質量%~75質量%の媒体を含み、より好ましくは17質量%~23質量%のポロキサマー407、7質量%~13質量%のポロキサマー188及び67質量%~73質量%の媒体を含み、最も好ましくは19質量%~21質量%のポロキサマー407、9質量%~11質量%のポロキサマー188及び69質量%~71質量%の媒体を含む。組成物は、好ましくは、1.0nM(ナノモル濃度)~100μM(マイクロモル濃度)の範囲内の濃度でオリゴヌクレオチドを含む。
【0023】
本発明による組成物の性質は特に限定されない。例えば、組成物は、医薬組成物又は、例えば練り歯磨き等のパーソナルケア製品用の組成物、又は化粧品用途の組成物であり得る。好ましくは、本発明による組成物は医薬組成物である。
【0024】
好ましい実施の形態では、組成物は薬学的活性量でオリゴヌクレオチドを含む。組成物は、任意に許容可能な担体、添加剤、又は希釈剤を更に含み得る。生体接着特性を高めるために、生体接着性ポリアクリル酸系添加剤(例えば、カルボポール)又はセルロース系添加剤(例えば、カルボキシメチルセルロース)だけでなく、アルギン酸塩、キトサン等のような(部分的に)天然な物質も組成物中に含まれ得る。ポリビニルアルコールも生体接着性作用物質として組成物中に含まれ得る。
【0025】
医薬組成物は、哺乳動物に医薬を送達するのに適した当該技術分野で知られるあらゆる投与経路によって投与され得る。投与経路には、特定の限定は示されず、例えば、経口適用、(局所)皮膚適用、局所適用、他の形態の局所適用(例えば、送達デバイスの使用における)が含まれる。
【0026】
本発明の組成物は、好ましくは、本発明によるコポリマーを含まないコントロールと比較して、特に粘膜組織を含む組織においてオリゴヌクレオチドをより効果的に放出することができる。さらに、放出されるオリゴヌクレオチドは、好ましくは、製剤化プロセスによって分解されない。さらに、本発明の組成物は、好ましくは、制御された空間的及び時間的な放出、対応する薬物への全身曝露の実質的な低下、すなわち、コストの低下及び副作用(オフターゲット効果)の回避、並びに特定の臨床的要件又は技術的要件への組成物の適合を可能にする。
【0027】
更なる態様では、本発明は、本発明による組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における疾患又は状態を予防又は治療する方法に関する。上記の記述及び定義は本発明のこの態様にも同様に当てはまる。特に、上述の好ましい予防又は治療される疾患又は状態が本発明のこの態様にも同様に当てはまる。
【0028】
更なる態様では、本発明は、本発明による組成物を哺乳動物、好ましくはヒトに適用することを含む、美容術的方法に関する。上記の記述及び定義は本発明のこの態様にも同様に当てはまる。投与/適用経路には、特定の限定は示されず、例えば、経口適用、(局所)皮膚適用、局所適用、他の形態の局所適用(例えば、送達デバイスの使用における)、好ましくは(局所)皮膚適用が含まれる。
【0029】
更なる態様では、本発明は、本発明による組成物を製造する方法であって、
(a)上記オリゴヌクレオチドと、上記コポリマーと、上記媒体とを混合する工程と、
(b)上記混合物を撹拌する工程と、
を含む、方法に関する。
【0030】
上記の定義は本発明のこの態様にも同様に当てはまる。
【0031】
組成物を製造する方法は更に特に限定されない。したがって、例えば、上記の条件を満たす任意の方法を使用して、本発明による組成物を製造することができる。例えば、組成物は冷間法によって製造され得る。
【0032】
工程(a)における温度は特に限定されない。例えば、工程(a)における媒体の温度は、媒体を組成物の他の成分と混合する前に、その合間に、及び/又はその後に0℃~10℃に調整され得る。好ましくは、工程(a)における媒体の温度は、媒体を組成物の他の成分と混合する前に、その合間に、及び/又はその後に2℃~8℃、より好ましくは3℃~5℃に調整される。
【0033】
組成物の成分を工程(a)で混合する順序は特に限定されない。例えば、オリゴヌクレオチドを最初に媒体中に溶解させた後に、残りの成分が添加され得る。
【0034】
工程(b)における温度は特に限定されない。例えば、工程(b)は、混合物を0℃~10℃の温度で撹拌することを含み得る。好ましくは、工程(b)における媒体の温度は、2℃~8℃、より好ましくは3℃~5℃である。
【0035】
工程(b)における撹拌の継続時間は特に限定されない。例えば、工程(b)は、混合物を1分間~96時間撹拌することを含み得る。好ましくは、工程(b)における撹拌の継続時間は、1時間~72時間、より好ましくは12時間~60時間、より好ましくは36時間~54時間である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ゾル-ゲル転移前の18℃での製剤4の状態を示す図である。
図2】ゾル-ゲル転移後の37℃での製剤4の状態を示す図である。
図3】透析の間に経時的に製剤F4から放出された配列番号1によるヌクレオチド配列のAEX-HPLCトレースを示す図である。
図4】製剤化されていない配列番号1によるヌクレオチド配列についてのHPLCトレースを示す図である(図4)。
図5】本発明による組成物から放出された配列番号1によるヌクレオチド配列についてのHPLCトレースを示す図である(図5)。
図6】本発明による組成物の使用による、ブタ口腔粘膜組織における配列番号1のアンチセンスオリゴヌクレオチドの取り込み及び分布を示す図である。5’末端で放射性標識されたオリゴヌクレオチド(α32P-UTP標識ホスホロチオエート修飾PS-ON)を本発明による組成物中で製剤化し、異なる時点で粘膜に適用した。組織のクライオスタット薄切りを行い(左側)、オリゴヌクレオチドを接触エマルジョンオートラジオグラフィー(contact emulsion autoradiography)によって視覚化した。ブタ口腔粘膜(左側)とヒトの粘膜(右側)との配置は類似している。オリゴヌクレオチドは、暗視野検鏡法において口腔上皮の全ての層に白い斑点として確認することができる(左側)。
図7】ex vivoでのブタ粘膜組織における製剤化された配列番号1のオリゴヌクレオチド送達の動態を示す図である。5’末端で放射性標識された配列番号1のオリゴヌクレオチド(α32P-UTP標識ホスホロチオエート修飾PS-ON)を本発明による組成物中で製剤化し、示される異なる時点で粘膜に適用した。組織のクライオスタット薄切りを行い、オリゴヌクレオチドを接触エマルジョンオートラジオグラフィーによって視覚化した(白色の斑点)。60分間のインキュベート後に、製剤化されたオリゴヌクレオチドの均質な分布を観察することができた。
図8】ブタの頬粘膜組織及び歯肉粘膜組織における製剤化された配列番号1のオリゴヌクレオチドの取り込み動態の定量化を示す図である。5’末端で放射性標識された配列番号1のオリゴヌクレオチド(α32P-UTP標識ホスホロチオエート修飾PS-ON)を本発明による組成物中で製剤化し、種々の時点でブタ粘膜組織にex vivoで適用した(頬:青色の線、歯肉:赤色の線)。示された時点で試料を(三連で)採取し、組織から配列番号1のオリゴヌクレオチドを抽出し、PAGEによって分析した。Phosporimager(Perkin Elmer(商標))を使用して定量化を行った。定量化により、およそ20分間(歯肉粘膜)と45分間(頬粘膜)との間で半分の薬物送達が明らかとなった。C=内部コントロール(サイズ/安定性)のための組織に適用されていない完全長オリゴヌクレオチド。
図9】in vitroでのヒト血清の不存在下(左)又は存在下(右)での配列番号1によるオリゴヌクレオチドの安定性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明を以下の実施例で更に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例
【0038】
材料:
ポロキサマー188(CAS番号9003-11-6)及びポロキサマー407(CAS番号9003-11-6)は、Sigma Aldrichから購入した。PBSは、Biochrom GmbHから購入した。これらの材料は全て、生物学用途のグレードを有していた。
【0039】
実施例1:製剤0(F0)
4℃の1mLの水に100mgのポロキサマー188を添加した。ポリマーが溶解するまで混合物を4℃で撹拌した後に、混合物に250mgのポロキサマー407を添加した。4℃で8時間撹拌した後に澄明な溶液が得られた。
【0040】
実施例2:製剤1(F1)
4℃の7gの水に1gのポロキサマー188及び2gのポロキサマー407を添加した。ポリマーが溶解するまで混合物を4℃で48時間撹拌したところ、澄明な溶液が得られた。
【0041】
実施例3:製剤2(F2)
4℃の7.03gの1×PBSに1gのポロキサマー188及び2gのポロキサマー407を添加した。ポリマーが溶解するまで混合物を4℃で48時間撹拌したところ、澄明な溶液が得られた。
【0042】
実施例4:製剤3(F3)
3.50gの1×PBSに0.30mgの配列番号1によるヌクレオチド配列(21μL、15mg/mL)を添加した。溶液を4℃に冷却した後に、0.50gのポロキサマー188及び1.00gのポロキサマー407を添加した。ポリマーが溶解するまで混合物を4℃で48時間撹拌したところ、澄明な溶液が得られた。
【0043】
実施例5:製剤4(F4)
3.29gの1×PBSに3.15mgの配列番号1によるヌクレオチド配列(210μL、15mg/mL)を添加した。溶液を4℃に冷却した後に、0.50gのポロキサマー188及び1.00gのポロキサマー407を添加した。ポリマーが溶解するまで混合物を4℃で48時間撹拌したところ、澄明な溶液が得られた。
【0044】
実施例6:製剤F1~製剤F4のゾル-ゲル温度の決定
種々の製剤についてゾル-ゲル温度を決定した。ゾル-ゲル転移点は磁気撹拌機法により測定された。それに関して、それぞれの製剤を一定の磁気撹拌(100rpm)をしつつ30分で40℃に加熱し、撹拌機が回転を止める温度がゾル-ゲル転移温度とみなされる。結果を表1にまとめる。ゾル-ゲル転移の前及び後の製剤4の状態は、それぞれ図1及び図2に示されている。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例7:製剤F4及びRNAを含む製剤のPBS中での透析によるRNA放出の決定
25mLのPBSが入ったバイアルを37℃まで温め、この温度で保持した。37℃で事前に湿らせた透析チューブ(MWCO 300kD、Float-A-Lyzer G2、Spectrum Labs)をPBSバイアル中に入れ、1mLの製剤F4(4℃)を、シリンジを介してチューブに充填した。製剤を90分間透析し、それぞれの時点で50μLの緩衝液を収集した。各試料について、AEX HPLC(DNA Pac PA 200カラムを使用したDionex Ultimate 3000 UPLC)によってRNA濃度を決定した。F4中のRNA濃度は30μg/mLである。結果を表2にまとめる。経時的に製剤F4から放出された配列番号1によるヌクレオチド配列のAEX-HPLCトレースが図3に示されている。
【0047】
【表2】
【0048】
コントロールとして、PBS中の配列番号1によるヌクレオチド配列の溶液(1mg/mL)に同じ手順を適用した。溶液を37℃で240分間透析し、各時点で50μLの緩衝液を収集した。各試料について、UV測定(Eppendorf BioPhotometer D30)によりRNA濃度を決定した。結果を表3にまとめる。
【0049】
【表3】
【0050】
実施例8:製剤化されていない配列番号1によるヌクレオチド配列と製剤化された配列番号1によるヌクレオチド配列とのHPLCトレースの比較
製剤化されていない(すなわち無溶媒の)(図4)配列番号1によるヌクレオチド配列及び製剤化された(図5)配列番号1によるヌクレオチド配列について、HPLCトレースを記録した。図4及び図5は、製剤化プロセスがオリゴヌクレオチドの分解を引き起こさないことを明確に裏付けている。
【0051】
実施例9:本発明による組成物を使用するヒト口腔粘膜組織における配列番号1によるヌクレオチド配列の取り込み
粘膜における本発明による組成物に含まれる配列番号1によるヌクレオチド配列の取り込み及び分布を調査するために、5’末端で放射性標識された配列番号1によるオリゴヌクレオチド(α32P-UTP標識ホスホロチオエート修飾PS-ON)を、本発明による組成物中で製剤化し、ヒト歯肉に非常に類似しているブタ粘膜組織にex vivoで適用した。インキュベートした後に、クライオスタット薄切りを行い(図6の左側)、オリゴヌクレオチドを接触エマルジョンオートラジオグラフィーによって視覚化した。ブタ口腔粘膜(図6の左側)とヒトの粘膜(図6の右側)との配置は類似している。オリゴヌクレオチドは、暗視野検鏡法において口腔上皮の全ての層に白い斑点として確認することができる(図6の左側)。
【0052】
角質化層における適用されたオリゴヌクレオチドの60%より多くの蓄積が数分以内に観察され(図示せず)、中間層、有棘細胞層、及び基底細胞層にも時間依存的に到達した(図6)。1時間~2時間後に再び基底膜でオリゴヌクレオチドの蓄積が起こることから、健康な皮膚内のこの膜の更なる保護機能が指摘される(図示せず)。しかしながら、炎症の場合に、浸潤性白血球の酵素分解による破壊のため、基底膜はより柔軟で透過性になる。
【0053】
実施例10:ex vivoでの口腔粘膜組織における配列番号1によるヌクレオチド配列の送達の動態
口腔粘膜組織(ブタ頬粘膜組織及び歯肉粘膜組織)における本発明による組成物に含まれる配列番号1によるヌクレオチド配列の取り込みの時間経過を研究した(図7及び図8図8において、頬:青い線、歯肉:赤い線)。実施例9に記載されるように実験を行い、示される時点で試料を採取することによって動態研究を行った。組織のクライオスタット薄切りを行い、オリゴヌクレオチドを接触エマルジョンオートラジオグラフィーによって視覚化した(図7、白色の斑点)。60分間のインキュベート後に、製剤化されたオリゴヌクレオチドの均質な分布を観察することができた。示された時点で試料を(三連で)採取し、組織からオリゴヌクレオチドを抽出し、PAGEによって分析した(図8)。Phosporimager(Perkin Elmer(商標))を使用して定量化を行った。取り込み動態の定量化により、およそ20分間(歯肉粘膜)と45分間(頬粘膜)との間で半分の薬物送達が明らかになった。
【0054】
実施例11:実験条件下での配列番号1によるヌクレオチド配列の安定性
配列番号1によるヌクレオチド配列の安定性を試験するために、オリゴヌクレオチドを5’末端で放射性標識し、ヒト血清(20%)の不存在下又は存在下のいずれかで種々の時点までインキュベートした。試料をPAGEで分析し、分解産物を確認した。図9に見られるように、血清の不存在下では分解産物を全く観察することができなかったが、血清(20%)の存在下では8時間~16時間後にわずかな分解が見られた(上方の矢印:全長オリゴヌクレオチド、下方の矢印:分解産物)。
【0055】
本発明は、以下のヌクレオチド配列に関する。
【0056】
配列番号1
5'-mA-mU-m(5mC)-mA-G-A-T-G-(5mC)-G-T-G-G-(5mC)-(5mC)-T-mA-mG-mU-mG-3'
【0057】
N=2’-デオキシヌクレオシド、
mN=2’-O-メチルヌクレオシド、
5mC=2’-デオキシ-5-メチル-シチジン、
m(5mC)=2’-O-メチル-5-メチル-シチジン、
全てのヌクレオチド間リン酸エステルは、モノホスホロチオエート修飾されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2022524282000001.app
【国際調査報告】