(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(54)【発明の名称】デュオカルマイシン類似体
(51)【国際特許分類】
C07D 498/04 20060101AFI20220422BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220422BHJP
A61K 31/424 20060101ALI20220422BHJP
A61K 47/68 20170101ALN20220422BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20220422BHJP
C07K 5/06 20060101ALN20220422BHJP
【FI】
C07D498/04 103
C07D498/04 CSP
A61P35/00
A61K31/424
A61K47/68
C07K16/00
C07K5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544577
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(85)【翻訳文提出日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 IB2020050665
(87)【国際公開番号】W WO2020157662
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504448092
【氏名又は名称】オークランド ユニサービシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AUCKLAND UNISERVICES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】リー,ホ・ファ
(72)【発明者】
【氏名】ターセル,モアナ
【テーマコード(参考)】
4C072
4C076
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C072AA07
4C072BB02
4C072BB06
4C072CC02
4C072CC11
4C072EE03
4C072FF03
4C072GG07
4C072HH07
4C072UU01
4C072UU08
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB22
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、デュオカルマイシンのDNAアルキル化サブユニットの類似体である式Iの2-メチルベンゾオキサゾール化合物に関する。
式Iの化合物は、DNAアルキル化剤および抗体-薬物コンジュゲートおよび関連化合物の合成において使用することができる。式Iの2-メチルベンゾオキサゾールユニットは、高い細胞毒性、低い親油性、および並外れた水性安定性を組み合わせる際に有利な特性を有し、これら全ては、有効な抗体-薬物コンジュゲートにおけるペイロードとしての適用に望ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物
【化1】
(式中:
LGは脱離基であり;
Xは、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、プロドラッグヒドロキシル、アミノ、および保護されたアミノから選択される基であり;ここで、アミノは、-NH
2、または-NH(C
1~C
6)アルキルであり;
YはN保護基である)。
【請求項2】
Yは、Boc、COCF
3、Fmoc、Alloc、Cbz、TeocおよびTrocから選択されるN保護基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物
【化2】
(式中:
LGは脱離基であり;
Xは、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、プロドラッグヒドロキシル、アミノ、および保護されたアミノから選択される基であり;ここで、アミノは、-NH
2、または-NH(C
1~C
6)アルキルであり;
DBはDNA副溝結合ユニットである)。
【請求項4】
DBは、直接またはアルケニル基を介して結合している、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリール基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
DBは、置換されていてもよいインドール、アザインドール、ベンゼン、ベンゾフラン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、チオフェン、チアゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジンまたはピリダジン基である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Xは、-OH、-OBn、-OTf、-OMOM、-OMEM、-OBOM、-OTBDMS、-OPMB、-OSEM、ピペラジン-1-カルボキシレートからなる群から選択され、ここで、4位のNは、(C
1~C
10)アルキル、-OP(O)(OH)
2、-OP(O)(OR
2)
2、-NH
2、-N=C(Ph)
2、-NHZ、NH(C
1~C
10)アルキルおよび-N-Z(C
1~C
10)アルキルで置換されており;
ここで、R
2は、t-Bu、Bnまたはアリルであり;Zは、Boc、COCF
3、Fmoc、Alloc、Cbz、TeocおよびTrocから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
LGは、塩化物、臭化物、ヨウ化物および-OSO
2R
1からなる群から選択され;ここで、R
1は、(C
1~C
10)アルキル、(C
1~C
10)ヘテロアルキル、(C
1~C
10)アリールまたは(C
1~C
10)ヘテロアリールから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
式IIIの化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物
【化3】
(式中:
LGは脱離基であり;
Xは、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、プロドラッグヒドロキシル、アミノ、および保護されたアミノから選択される基であり;ここで、アミノは、-NH
2、または-NH(C
1~C
6)アルキルであり;
Yは
(a)N保護基;
(b)-C(O)-Ar
1
(c)-C(O)-Ar
1-NH-C(O)-Ar
2
(d)-C(O)-Ar
1-NH-C(O)-CH=CH-Ar
3;または
(e)-C(O)-CH=CH-Ar
3
から選択され:
ここで、Ar
1、Ar
2およびAr
3は、ヘテロアリールまたはアリール基からそれぞれ独立して選択され、ヘテロアリールまたはアリール基は、-(C
1~C
6)アルキル、-CO-(C
1~C
6)アルキル、-CONH(C
1~C
6)アルキル、-CON(C
1~C
6)アルキル(C
1~C
6)アルキル、-OH、-O-(C
1~C
6)アルキル、-NH
2、-NH(C
1~C
6)アルキル、-N(C
1~C
6)アルキル(C
1~C
6)アルキルおよび-NHC(O)-(C
1~C
6)アルキルのうちの1つまたは複数で置換されていてもよく;
ここで、各場合において、-(C
1~C
6)アルキル、-CO-(C
1~C
6)アルキル、-CONH(C
1~C
6)アルキル、-CON(C
1~C
6)アルキル(C
1~C
6)アルキル、-O-(C
1~C
6)アルキル、-NH(C
1~C
6)アルキル、-N(C
1~C
6)アルキル(C
1~C
6)アルキルおよび-NHC(O)-(C
1~C
6)アルキルは、-NMe
2、-NHMe、-NH
2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で独立して置換されていてもよい)。
【請求項9】
Yは、Boc、COCF
3、Fmoc、Alloc、Cbz、TeocおよびTrocから選択されるN保護基である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Yは、
(b)-C(O)-Ar
1
(c)-C(O)-Ar
1-NH-C(O)-Ar
2
(d)-C(O)-Ar
1-NH-C(O)-CH=CH-Ar
3;および
(e)-C(O)-CH=CH-Ar
3
からなる群から選択され、
ここで、Ar
1、Ar
2およびAr
3は、
【化4】
からなる群から独立して選択され、
ここで、
【化5】
は結合点を表し、各アリールまたはヘテロアリール基は、-(C
1~C
6)アルキル、-CO-(C
1~C
6)アルキル、-CONH(C
1~C
6)アルキル、-CON(C
1~C
6)アルキル(C
1~C
6)アルキル、-OH、-O-(C
1~C
6)アルキル、-NH
2、-NH(C
1~C
6)アルキル、-N(C
1~C
6)アルキル(C
1~C
6)アルキルおよび-NHC(O)-(C
1~C
6)アルキルから選択される最大3つの置換基で番号が付された位置において置換されていてもよく、ここで、各場合において、-(C
1~C
6)アルキル、-CO-(C
1~C
6)アルキル、-CONH(C
1~C
6)アルキル、-CON(C
1~C
6)アルキル(C
1~C
6)アルキル、-O-(C
1~C
6)アルキル、-NH(C
1~C
6)アルキル、-N(C
1~C
6)アルキル(C
1~C
6)アルキルおよび-NHC(O)-(C
1~C
6)アルキルは、-NMe
2、-NHMe、-NH
2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で独立して置換されていてもよい、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
Ar
1はヘテロアリール基であり、好ましくはインドール、アザインドール、ベンゾフランまたはベンゾチオフェン基であり、これらは、ヘテロアリール基の2位においてDNAアルキル化ユニットに結合している、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
Ar
2は、インドール、アザインドール、ベンゼン、ベンゾフラン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、チオフェン、チアゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジンまたはピリダジンからなる群から選択され、好ましくはインドール、アザインドール、ベンゼン、ベンゾフラン、ピロールまたはイミダゾールからなる群から選択される、請求項10または11に記載の化合物。
【請求項13】
Ar
3は、ベンゼン、ピリジン、ピリミジンおよびピリダジンから選択され、好ましくはベンゼンまたはピリジンであり、より好ましくはベンゼンである、請求項10から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Yは-C(O)-Ar
1-NH-C(O)-Ar
2であり;
Ar
1は、インドール、アザインドール、ベンゾフランまたはベンゾチオフェン基であり、これらは、ヘテロアリール基の2位においてDNAアルキル化ユニットに結合しており、Ar
2は、インドール、アザインドール、ベンゼン、ベンゾフラン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、チオフェン、チアゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジンまたはピリダジンからなる群から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項15】
Yは-C(O)-Ar
1-NH-C(O)-CH=CH-Ar
3であり;Ar
1は、インドール、アザインドール、ベンゾフランまたはベンゾチオフェン基であり、これらは、ヘテロアリール基の2位においてDNAアルキル化ユニットに結合しており、Ar
3は、ベンゼン、ピリジン、ピリミジンおよびピリダジンから選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項16】
Ar
1の結合点は、インドール、アザインドール、ベンゾフランまたはベンゾチオフェン基の5位にある、請求項14または15に記載の化合物。
【請求項17】
Xは、-OH、-OBn、-OTf、-OMOM、-OMEM、-OBOM、-OTBDMS、-OPMB、-OSEM、ピペラジン-1-カルボキシレートからなる群から選択され、ここで、4位のNは、(C
1~C
10)アルキル、-OP(O)(OH)
2、-OP(O)(OR
2)
2、-NH
2、-N=C(Ph)
2、-NHZ、NH(C
1~C
10)アルキルまたは-N-Z(C
1~C
10)アルキルで置換されており;
ここで、R
2は、t-Bu、Bnまたはアリルであり;Zは、Boc、COCF
3、Fmoc、Alloc、Cbz、TeocおよびTrocから選択される、請求項8から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
LGは、塩化物、臭化物、ヨウ化物および-OSO
2R
1からなる群から選択され;ここで、R
1は、(C
1~C
10)アルキル、(C
1~C
10)ヘテロアルキル、(C
1~C
10)アリールまたは(C
1~C
10)ヘテロアリールから選択される、請求項8から17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
LGはハロであり、好ましくは塩化物であり、LGが結合しているキラル炭素における立体配置は(S)である、請求項8から17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
【化6】
からなる群から選択される化合物。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)および関連化合物の合成において使用することができる2-メチルベンゾオキサゾール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
デュオカルマイシンは、DNAの副溝において結合し、アデニンのN3位をアルキル化する非常に細胞毒性のある天然産物である。以下の2つの例、デュオカルマイシンSAおよびCC-1065は典型的なデュオカルマイシン構造を例示しており、これらはDNAアルキル化サブユニットと、DNAヘリックスの副溝内に非共有結合するDNA結合サブユニットとからなる。
【0003】
【0004】
結合の作用機序は、アルキル化サブユニットのシクロプロピル環へのアデニン付加を伴い、このサブユニットに関する一般的な構造を使用して以下のスキーム1において示す。DNAとの反応は迅速で選択的であるが、水のような他の求核剤とは桁違いに遅く、その結果、DNA非存在下では、アルキル化サブユニットは、長時間にわたる生理学的条件下で水性緩衝液中で存続する。
【0005】
【0006】
シクロプロピル環は、スキーム1で示すように、クロロメチルまたは他の脱離基置換基を有するseco(すなわち開環)前駆体から形成することができる。閉環反応は生理学的条件下で非常に容易に生じ、2つの形態(secoおよびシクロプロピル)は実質的に同じ細胞毒性を示す。しかし、secoアルキル化サブユニットのフェノールが環化を阻止する化学的形態である場合、細胞毒性は大幅に低下する。
【0007】
天然産物、例えばデュオカルマイシンSAは、示されるとおり単一のエナンチオマー形態で単離される。しかし、自然界には存在しないエナンチオマーは一般的に細胞毒性が低いものの、両方のエナンチオマーがDNAをアルキル化することができる。
【0008】
デュオカルマイシンアルキル化サブユニットの多くの合成バージョンが報告されている。これらは、上記のスキーム1の構造における点線によって示される環縮合の性質の点で異なることが多い。これらの環縮合の性質は細胞毒性に対して非常に強力な影響を有する場合がある。
【0009】
例えば、CBI(シクロプロパベンズインドール)アルキル化サブユニット(デュオカルマイシンSAにおいて認められるTMI(トリメトキシインドール)側鎖と組み合わせたseco形態で以下に示される)は、天然産物のものと同様の細胞毒性効力のデュオカルマイシン類似体を生成する(J.Org.Chem.(1990)55,5823)。
【0010】
【0011】
対照的に、TMIと組み合わせた代替のCOI(クロプロパオキサゾロインドール)アルキル化サブユニットを含む化合物は、細胞毒性が数百分の1である(Bioorg.Med.Chem.Lett.(2010)20,1854)。
【0012】
他の合成バリエーションも報告されている。例えば、アミン基がフェノールのヒドロキシル基と交換されたアミノseco-CBIは既知である。これらのバリアントは、それらのフェノール類似体と同じスピロ環化およびDNAアルキル化反応を受け、同等の細胞毒性効力を有する(Chem Bio Chem(2014)15,1998)。
【0013】
さらなるバリエーションは、DNAにおける2つのアデニンの鎖間の架橋を可能にする方法で2つのアルキル化サブユニットを一緒に連結することに関与する(J.Am.Chem.Soc.(1989)111,6428;Angew.Chem.(2010)49,7336))。これらの二量体は、対応するモノアルキル化剤よりもさらに細胞毒性を示す場合があるが、二量体の活性はその構成成分であるモノアルキル化ユニットの活性から必ずしも予測できるものではない。
【0014】
アミノseco-デュオカルマイシンおよびアルキル化サブユニットの二量体を以下に示す。
【0015】
【0016】
デュオカルマイシンのいくつかの類似体は、潜在的な小分子抗癌剤として調査されている。しかし、毒性によって、投与することができる量が非常に低用量に限られたため、臨床試験は成功しなかった。
【0017】
最近になって、デュオカルマイシン類似体は、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)のためのペイロードとしての適用が見出されている。ADCは、癌療法において最も頻繁に使用されており、この癌療法では、細胞毒性小分子(ペイロード)が、リンカーを介して腫瘍関連抗原を認識する抗体に結合している(Nat.Rev.Drug Discov.(2017)16,315;Pharmacol.Rev.(2016)68,3)。
【0018】
ADCは、ペイロードを好適なリンカーに化学的に結合させることによって構築され、そのリンカーはそれ自体が所望の抗体にコンジュゲートしている。ADCは、循環内で安定であるが、通常、受容体に結合し、標的細胞中に内在化した後に所定の標的位置においてペイロードを放出するように設計されている。このようにして、ペイロードの細胞毒性作用は、損傷が望ましい位置、すなわち腫瘍内に特に向けられる。いくつかのそのようなADCは抗癌処置として承認されている。
【0019】
ADCの概念は、ペイロードをその標的細胞に特に向ける賢明な手段であり、その結果、in vivoで毒性化合物の従来の非特異的全身性送達と関連する不所望の影響を最小限にする。残念ながら、重要な技術的課題によって、ADC概念の適用が成功することは限定されている。
【0020】
ADCの概念によって標的細胞に送達することができるペイロードの量は限定され、その結果、ADCが治療的効果を有するように、ペイロードは細胞毒性が非常に高くなければならない。
【0021】
その高い細胞毒性のために、デュオカルマイシン類似体は、モノアルキル化剤とDNAに架橋することができる二量体の構成要素の両方としてのADCペイロードとして調査されている(例えば、Mol.Pharm.(2015)12,1813;国際公開第2011/133039号;Biopharm.Drug Dispos.(2016)37,93;Cancer Chemother.Pharmacol.(2016)77:155-162;J.Med.Chem.(2012)55,766;J.Med.Chem.(2005)48,1344;CancerRes.(1995)55,4079;Bioorg.Med.Chem.(2000)8,2175;国際公開第2018/035391号;国際公開第2015/038426号;国際公開第2015/153401号;国際公開第2015/023355号;国際公開第2017/194960号;国際公開第2018/071455号を参照のこと)。
【0022】
これらの例の大部分において、以下に示すアルキル化サブユニットは、毒性の高いseco-CBIである。
【0023】
【0024】
このアルキル化サブユニットを使用すると、必要な細胞毒性を有するADCが生じるはずであるが、seco-CBIは高親油性であるという重大な欠点を有する。親油性ペイロードおよびその誘導体は、ペイロード-リンカー構成要素を抗体にコンジュゲートさせるために使用される水性緩衝液中では全く溶解せず、コンジュゲートステップを困難にする。得られたADCも凝集する傾向がある。ADC凝集物は、ADCを使用し得る前に除去する必要があり、臨床的に有用なADCを生産するための複雑さおよびコストが追加される。
【0025】
親油性ペイロードは、血流からのADCのクリアランスが速いこととも関連し、それによって、その全体的な曝露は減少し、その結果、その抗腫瘍有効性が減少する(Nat.Biotechnol.(2015)33,733-735)。
【0026】
親油性ペイロード、特に凝集をもたらすものはまた、in vivoで免疫応答を引き起こすADCを生成する場合があり、予想外の毒性または治療有効性の低下につながる。
しかし、親油性と関連する問題にもかかわらず、seco-CBI化合物の高い細胞毒性によって、引き続き化合物は、不利益を減少させるために用いられるさまざまな戦略を伴って抗癌ADCのための魅力的なペイロードであり続けている。
【0027】
例えば、seco-CBIの高親油性を打ち消すために、一部の研究者は、他の構成成分部分を改変することに頼っており、その結果ADC全体としての親油性が低くなる。一部の研究者は、改変されたリンカー(例えば、Mol.Pharm.(2015)12,1813;J.Med.Chem.(2005)48,1344の場合、ポリエチレングリコールスペーサー)を組み込んでいる。他の研究者は、より水溶性のプロドラッグ形態を構築している(例えば、J.Med.Chem.(2012)55,766、国際公開第2015/023355号)。
【0028】
しかし、ADCの他の構成要素を改変することによってペイロード親油性問題を解決することは、それ自体が不利益を有する場合がある。ペイロード-リンカー構成要素の合成をより複雑で時間のかかるものにするだけではなく、この技術はリンカーの選択も制限する場合がある。
【0029】
ペイロードに結合されるリンカー部分は、in vivoでのADCの有効性および安全性プロファイルに著しい影響を有する(Bioanalysis(2015)7(13),1561)。それは循環において適切な安定性のものであるが、必要に応じてin vivoで開裂しなければならない。ADCの設計にはペイロードが放出される生理学的条件の考慮が含まれ、その結果、適切なリンカーを使用することができる。例えば、ヒドラゾン部分を含むリンカーはpH高感受性であり、低pH環境において、例えばエンドソームおよびリソソームにおいて開裂することになる。ジスルフィドリンカーは、還元環境において、例えば細胞内環境においてペイロードを放出する。
【0030】
アルキル化サブユニットの不所望の親油性特性を軽減するために行われたいくつかのリンカー改変は、それらが使用されるADCの有効性を低下させる場合があり、その結果得られたADCは、特定のペイロードおよび抗体から作製することができる最も有効な製品ではない場合がある。
【0031】
親油性の課題に対する他の解決策としては、ADC Bioの登録商標を有するLock-Release技術(www.adcbio.com)があり、これは抗体を固体支持体に固定化してからペイロード-リンカー構成成分にコンジュゲートさせている。凝集は、その製造中にADC分子を互いに物理的に分離することによって阻止される。これは、広範囲のリンカーを使用することを可能にするが、コンジュゲートプロセスに追加のコストが加わり、最終的なADC製品の親油性を実際に低下させることはない。
【0032】
その結果、高毒性のアルキル化サブユニットの親油性は、新規のADCの開発を妨げる問題である。
ADCペイロードとしての既知のデュオカルマイシン類似体のさらなる潜在的な欠点は、アルキル化サブユニットのシクロプロピル形態の安定性が高いことである。ADCから循環に放出される安定なペイロードは、不所望の全身性毒性をもたらすように十分長く持続される場合がある。残念ながら、安定性が高いことは所望の強力な細胞毒性を保持するというCBIアルキル化サブユニットの事実上全ての合成類似体の特徴である。以前の研究では、水性安定性と細胞毒性との間に相関が示されており、その結果、大部分の細胞毒性類似体は中性pHの水性緩衝液中で安定である(J Med Chem(2009)52,5271)。
【0033】
したがって、さまざまなADCの効率的な合成を促進する代替のDNAアルキル化サブユニットが必要とされており、同時に有効性に必要な細胞毒性および安定性特性が実証されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
したがって、本発明の目的は、この必要性を満たす方向に向かう少なくともいくつかの方法に進むことであり;および/または少なくとも有用な選択を公衆に提供することである。本発明の他の目的は、ほんの一例として与えられる以下の説明から明らかになり得る。
【0035】
この明細書において、特許明細書および他の文献を含む外部情報源が参照されている場合、これは全般的に、本発明の特徴を議論するための文脈を提供することを目的としている。特に記載がない限り、そのような情報源への言及は、いかなる権限においても、そのような情報源が先行技術であるかまたは当技術分野において周知の一般的な知識の一部を形成することを認めるものとして解釈するべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明は、広範囲のヘテロアリールおよびアリールDNA結合部分に結合して細胞毒性の高いデュオカルマイシン類似体を生成するのに好適な、新規なアルキル化サブユニット「2-メチルベンゾオキサゾール」ならびにこのサブユニットの保護されたプロドラッグ誘導体を提供する。
【0037】
本発明は、DNA副溝結合ユニットにコンジュゲートされた新規な2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットを含むデュオカルマイシン類似体も提供する。これらの化合物は、リンカー基を介して抗体に結合させる場合に、ADCを生成するために使用してもよい。
【0038】
したがって、第1の態様において、本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する
【0039】
【0040】
(式中:
LGは脱離基であり;
Xは、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、プロドラッグヒドロキシル、アミン、および保護されたアミンから選択される基であり;アミンは、-NH2、または-NH(C1~C6)アルキルであり;
YはN保護基である)。
【0041】
第2の態様において、本発明は、式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する
【0042】
【0043】
(式中:
LGは脱離基であり;
Xは、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、プロドラッグヒドロキシル、アミン、および保護されたアミンから選択される基であり;アミンは、-NH2、または-NH(C1~C6)アルキルであり;
DBはDNA副溝結合ユニットである)。
【0044】
1つの実施形態において、DBは、直接またはアルケニル基を介して結合している、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリール基である。
1つの実施形態において、DBは、置換されていてもよいインドール、アザインドール、ベンゾフラン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、チオフェン、チアゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジンまたはピリダジン基である。
【0045】
第3の態様において、本発明は、式IIIの化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する
【0046】
【0047】
(式中:
LGは脱離基であり;
Xは、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、プロドラッグヒドロキシル、アミン、および保護されたアミンから選択される基であり;アミンは、-NH2、または-NH(C1~C6)アルキルであり;
Yは
(a)N保護基;
(b)-C(O)-Ar1
(c)-C(O)-Ar1-NH-C(O)-Ar2
(d)-C(O)-Ar1-NH-C(O)-CH=CH-Ar3;または
(e)-C(O)-CH=CH-Ar3
から選択され:
ここで、Ar1、Ar2およびAr3は、ヘテロアリールまたはアリール基からそれぞれ独立して選択され、ここで、各ヘテロアリールまたはアリール基は、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-OH、-O-(C1~C6)アルキル、-NH2、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルおよび-NHC(O)-(C1~C6)アルキルのうちの1つまたは複数で置換されていてもよく;
ここで、各場合において、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-O-(C1~C6)アルキル、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルおよび-NHC(O)-(C1~C6)アルキルは、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で独立して置換されていてもよい)。
【0048】
1つの実施形態において、Ar1、Ar2およびAr3は、
【0049】
【0050】
からなる群から独立して選択される
(式中、
【0051】
【0052】
は-C(O)またはC(O)-CH=CH-基への結合点を表し、各アリールまたはヘテロアリール基は、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-OH、-O-(C1~C6)アルキル、-NH2、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルおよび-NHC(O)-(C1~C6)アルキルから選択される最大3つの置換基で番号が付された位置において置換されていてもよく;
ここで、各場合において、置換基-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-O-(C1~C6)アルキル、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルおよび-NHC(O)-(C1~C6)アルキルは、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で独立して置換されていてもよい場合がある)。
【0053】
第4の態様において、本発明は、式IVの化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する
【0054】
【0055】
(式中、Vは、YまたはDBであり、X、YおよびDBは、式I、II、およびIIIの化合物に関して定義されるものと同じ意味を有し、X’は、Hを失ったXである)。
式IVの化合物は、in vitroまたはin vivoで転位させ、式I、IIおよびIIIの対応するseco-化合物からH-LGを同時に消失させることを介して形成してもよい。式I、IIもしくはIIIの化合物、またはこれらの一部のいずれかに関する本明細書において記載する本発明の全ての実施形態も、文脈上特に指示がない限り、式IVの化合物に関する本発明の態様の一部として特に検討される。
【0056】
以下の実施形態および好ましいものは、本明細書において記載する発明の態様のいずれかを単独でまたはいずれかのうちの任意の2つ以上の組合せで関連する場合がある。
1つの実施形態において、LGは、塩化物、臭化物、ヨウ化物および-OSO2R1からなる群から選択され;ここで、R1は、(C1~C10)アルキル、(C1~C10)ヘテロアルキル、(C1~C10)アリールまたは(C1~C10)ヘテロアリールから選択される。
【0057】
1つの実施形態において、LGはハロであり、好ましくは塩化物であり、LGが結合しているキラル炭素における立体配置は(S)である。
1つの実施形態において、Xは、-OH、-OBn、-OTf、-OMOM、-OMEM、-OBOM、-OTBDMS、-OPMB、-OSEM、ピペラジン-1-カルボキシレートからなる群から選択され、ここで、4位のNは、(C1~C10)アルキル、-OP(O)(OH)2、-OP(O)(OR2)2、-NH2、-N=C(Ph)2、-NHZ、NH(C1~C10)アルキルおよび-N-Z(C1~C10)アルキルで置換されており;
ここで、R2は、t-Bu、Bnまたはアリルであり;Zは、Boc、COCF3、Fmoc、Alloc、Cbz、TeocおよびTrocから選択される。
【0058】
1つの実施形態において、Yは、Boc、COCF3、Fmoc、Alloc、Cbz、TeocおよびTrocから選択されるN保護基である。
本明細書において開示されるさまざまな数(例えば、1から10)への言及は、範囲内の全ての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9および10)、またその範囲内の有理数の任意の範囲(例えば、2から8、1.5から5.5および3.1から4.7)への言及も組み込むことを意図し、したがって、本明細書において明示的に開示する全ての範囲の全ての部分範囲は、本明細書によって明示的に開示される。これらは特に意図するものの例にすぎず、列挙する最小値と最高値の間の数値の全ての可能な組合せは、同様の様式で本出願において明示的に記載するものと考えられる。
【0059】
本発明は、上記で定義されたとおり広範であるが、当業者であれば、本発明はそれに限定されるものではなく、本発明は以下の説明で例を与える実施形態も含むことは理解するであろう。
【0060】
本発明は以下の添付の図面を参照しながら記載することにする:
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】中性水性緩衝液中のseco-CBI-TMIの安定性のLCMS分析を示す図である。上のパネルはクロマトグラムの例を示す(20分のインキュベート時間後)。下のパネルは、300分を超える総インキュベート時間にわたる混合物の組成における変化を要約する。
【
図2】中性水性緩衝液中の化合物23の安定性のLCMS分析を示す図である。上のパネルはクロマトグラムの例を示す(200分のインキュベート時間後)。下のパネルは500分の総インキュベート時間にわたる混合物の組成における変化を要約する。
【
図3】中性水性緩衝液中の化合物52の安定性のHPLC分析を示す図である。実験は1時間ごとに合計8時間モニターした。
【
図4】中性水性緩衝液中の化合物59の安定性のHPLC分析を示す図である。実験は1時間ごとに合計8時間モニターした。
【
図5】中性水性緩衝液中の化合物66の安定性のHPLC分析を示す図である。実験は1時間ごとに合計8時間モニターした。
【発明を実施するための形態】
【0062】
5.1定義
この明細書および特許請求の範囲において使用する「含むこと(comprising)」という用語は、「少なくとも一部は~からなる」を意味する。「含むこと(comprising)」という用語を含むこの明細書および特許請求の範囲における各文章を説明する場合、それ以外の特徴またはその用語で始まるものも存在する場合がある。関連する用語、例えば「含む(comprise)」および「含む(comprises)」は同じ様式で判断されたい。
【0063】
本明細書において使用する「および/または」という用語は、「および」もしくは「または」、またはその両方を意味する。
本明細書において使用する名詞に続く「(複数可)((s))」は、その名詞の複数形および/または単数形を意味する。
【0064】
不斉中心は、本明細書において記載する化合物において存在していてもよい。不斉中心は、キラル炭素原子の3次元空間における置換基の立体配置に応じて(R)または(S)として表してもよい。特定の立体化学または異性体が示されていない限り、構造の全てのキラル体、ジアステレオマー体およびラセミ体が意図される。ジアステレオマー体、エナンチオマー体、およびエピマー体を含む化合物の全ての立体化学異性体、ならびに立体化学異性体のエナンチオマー的に富化されたかつジアステレオマー的に富化された混合物を含むd-異性体およびl-異性体、およびこれらの混合物は本発明の範囲内である。
【0065】
個々のエナンチオマーは、市販されているエナンチオ純粋な出発材料から、またはエナンチオマー混合物を調製し、混合物を個々のエナンチオマーに分割することによって合成的に調製してもよい。分割方法としては、(a)キラル固定相クロマトグラフィーによってエナンチオマー混合物を分離するステップ、および(b)エナンチオマー混合物をジアステレオマー混合物に変換し、ジアステレオマーを、例えば、再結晶またはクロマトグラフィー、および当技術分野において既知のその他の適切な方法によって分離するステップがある。定義される立体化学の出発材料は、市販のものであっても作製してもよく、必要であれば、当技術分野において周知の技術によって分割してもよい。キラル炭素(seco形態においてCH2-LG部分を有する炭素)において「天然」立体配置を有するエナンチオマーが好ましい。
【0066】
本明細書において記載する化合物は、シス、トランス、シン、アンチ、エントゲーゲン(E)、およびツザーメン(Z)異性体を含む立体構造異性体または幾何異性体として存在していてもよい。全てのそのような異性体およびそれらの任意の混合物は発明の範囲内である。
【0067】
記載する化合物の任意の互変異性体またはこれらの混合物も本発明の範囲内である。当業者であれば理解するであろうように、さまざまな官能基および他の構造が互変異性を示す場合がある。例としては、これらに限定されるものではないが、ケト/エノール、イミン/エナミン、およびチオケトン/エンチオール互変異性がある。
【0068】
本明細書において記載する化合物は、化合物における1つまたは複数の原子が異なる同位体で交換されたアイソトポログおよびアイソトポマーとして存在してもよい。好適な同位体としては、例えば、1H、2H(D)、3H(T)、12C、13C、14C、16O、および18Oがある。そのような同位体を本明細書において記載する化合物に組み込むための手順は当業者であれば明らかであろう。本明細書において記載する化合物のアイソトポログおよびアイソトポマーも発明の範囲内である。
【0069】
薬学的に許容される塩を含む本明細書において記載する化合物の塩も本発明の範囲内である。そのような塩としては、酸付加塩、塩基付加塩、および塩基性窒素含有基の四級塩がある。酸付加塩は、化合物を遊離塩基形態で無機または有機酸と反応させることによって調製してもよい。無機酸の例としては、これらに限定されるものではないが、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、およびリン酸がある。有機酸の例としては、これらに限定されるものではないが、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ステアリン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸、スルファニル酸、アジピン酸、酪酸、およびピバリン酸がある。塩基付加塩は、化合物を遊離酸性形態で無機または有機塩基と反応させることによって調製してもよい。無機塩基付加塩の例としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、および他の生理学的に許容される金属塩、例えば、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、または亜鉛の塩がある。有機塩基付加塩の例としては、アミン塩、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、およびエチレンジアミンの塩がある。化合物における塩基性窒素含基の四級塩は、例えば、化合物をハロゲン化アルキルと、例えば、メチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物と、硫酸ジアルキル、例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミルの硫酸化物などと反応させることによって調製してもよい。
【0070】
本明細書において記載する化合物は、さまざまな溶媒との溶媒和物として形成しても存在していてもよい。溶媒が水である場合、溶媒和物は、水和物、例えば、一水和物、二水和物、または三水和物と称してもよい。本明細書において記載する化合物の全ての溶媒和形態および非溶媒和形態は発明の範囲内である。
【0071】
本明細書において使用する一般的な化学用語はその通常の意味を有する。
化学基に関する標準的な略語は当技術分野において周知であり、その通常の意味を有し、例えば、Me=メチル、Et=エチル、Bu=ブチル、t-Bu=tert-ブチル、Ph=フェニル、Bn=ベンジル、Ac=アセチル、Boc=tert-ブトキシカルボニル、Fmoc=9-フルオレニルメトキシカルボニル、Tf=トリフレート、OMOM=メトキシメチルエーテル、OMEM=メトキシエトキシメチルエーテル、OBOM=ベンジルオキシメチルエーテル、OTBDMS=tert-ブチルジメチルシリルエーテル、DPPA=ジフェニルホスホリルアジド、NBS=N-ブロモスクシンイミド、NIS=N-ヨードスクシンイミド、OPMB=4-メトキシベンジルエーテル、EDCI=1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、HOBt=ヒドロキシベンゾトリアゾール、OSEM=[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチルエーテル、Alloc=アリルオキシカルボニル、Cbz=ベンジルオキシカルボニル、Teoc=(2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル、TEMPO=2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ、Troc=2,2,2-トリクロロエチルカルボニルなどである。
【0072】
特に記載がない限り、これらの略語は以下の例の全てに対して適用可能である。
本明細書において単独でまたは他の用語と組み合わせて使用する「アルキル」という用語は、特に指示がない限り、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和非環式炭化水素基を指す。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1から15、1から13、1から11、1から10、1から8、1から6、1から5、1から4、1から3、1から2、2から12、2から9、2から8、2から6、2から4、3から9、3から8、4から9、4から15、6から15、8から15、10から15、または1、または2、または3個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アルキル基は飽和である。そのようなアルキル基の例としては、これらに限定されるものではないが、-メチル、-エチル、-n-プロピル、-n-ブチル、-n-ペンチル、-n-ヘキシル、-n-ヘプチル、-n-オクチル、-n-ノニル、-n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、-イソプロピル、-sec-ブチル、-イソブチル、-tert-ブチル、-イソペンチル、-ネオペンチル、2-メチルブチル、-イソヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、2,3,4-トリメチルペンチル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、3,5-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルペンチル、2-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、n-ヘプチル、イソヘプチル、イソオクチル、イソノニル、イソデシル、イソウンデシル、イソドデシル、イソトリデシル、イソテトラデシル、およびイソペンタデシルなどがある。いくつかの実施形態において、アルキル基は不飽和である。そのようなアルキル基の例としては、これらに限定されるものではないが、-ビニル、-アリル、-1-ブテニル、-2-ブテニル、-イソブチレニル、-1-ペンテニル、-2-ペンテニル、-3-メチル-1-ブテニル、-2-メチル-2-ブテニル、-2,3-ジメチル-2-ブテニル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル,-アセチレニル、-プロピニル、-1-ブチニル、-2-ブチニル、-1-ペンチニル、-2-ペンチニル、-3-メチル-1-ブチニルなどがある。接頭辞「Cx~Cy」(ここで、xおよびyはそれぞれ整数である)は、「アルキル」という用語と組み合わせて使用する場合、アルキル基における炭素原子の数を指す。いくつかの実施形態において、「アルキル」基は、本明細書において記載する1つまたは複数の任意選択の置換基で置換されていてもよい。
【0073】
本明細書において単独でまたは他の用語と組み合わせて使用する「アリール」という用語は、特に指示がない限り、環ヘテロ原子を一切含まない環式芳香族炭化水素基を指す。アリール基は、単環式、二環式および三環式環系を含む。アリール基の例としては、これらに限定されるものではないが、フェニル、アズレニル、ヘプタレニル、ビフェニル、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、インデニル、インダニル、ペンタレニル、およびナフチルがある。いくつかの実施形態において、アリール基は、環中に6から20、6から14、6から12、または6から10個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アリール基は、フェニルまたはナフチルである。アリール基は芳香族-炭素環縮合環系を含む。例としては、これらに限定されるものではないが、インダニルおよびテトラヒドロナフチルがある。接頭辞「Cx~Cy」(ここで、xおよびyはそれぞれ整数である)は、「アリール」という用語と組み合わせて使用する場合、アリール基における環炭素原子の数を指す。いくつかの実施形態において、「アリール」基は、本明細書において記載する1つまたは複数の任意選択の置換基で置換されていてもよい。
【0074】
本明細書において単独でまたは他の用語と組み合わせて使用する「ヘテロアリール」という用語は、特に指示がない限り、5個またはそれを超える環原子を含み、そのうちの1つまたは複数がヘテロ原子である芳香族環系を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロ原子は窒素、酸素、または硫黄である。ヘテロアリール基は、芳香族電子構造を有するさまざまな複素環式基である。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、5から20、5から16、5から14、5から12、5から10、5から8、または5から6個の環原子を有する単環式-、二環式-および三環式環系を含む。ヘテロアリール基としては、これらに限定されるものではないが、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、フラニル、ベンゾフラニル、インドリル、アザインドリル(ピロロピリジニル)、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピラゾロピリジニル、トリアゾロピリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、イミダゾピリジニル、イミダジル、イソキサゾロピリジニルキサンチニル、グアニニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、キノキサリニル、およびキナゾリニルがある。ヘテロアリール基は、環の全てが芳香族である縮合環系、例えばインドリル、および環のうちの1つのみが芳香族である縮合環系、例えば2,3-ジヒドロインドリルを含む。接頭辞「x~y員」(ここで、xおよびyはそれぞれ整数である)は、「ヘテロアリール」という用語と組み合わせて使用する場合、ヘテロアリール基における環原子の数を指す。いくつかの実施形態において「ヘテロアリール」基は、本明細書において記載する1つまたは複数の任意選択の置換基で置換されていてもよい。
【0075】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br、およびIを含むことを意図する。
「ヘテロ原子」という用語は、酸素、窒素、硫黄、セレン、またはリンを含むことを意図する。いくつかの実施形態において、ヘテロ原子は、酸素、窒素、および硫黄からなる群から選択される。
【0076】
本明細書において使用する「置換された」という用語は、示された基における1つまたは複数の水素原子が、1つまたは複数の独立して選択された好適な置換基で交換されていることを意味し、ただし、置換基が結合している各原子の通常の原子価は超えず、置換によって安定な化合物が生じることを意図する。さまざまな実施形態において、本明細書において記載する化合物における好適な任意選択の置換基としては、これらに限定されるものではないが、ハロ、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-OH、-O-(C1~C6)アルキル、-NH2、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、および-NHC(O)-(C1~C6)アルキル、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHがある。この文脈における「安定」という用語は、特に指示がない限り、製造を可能にするのに十分な安定性を有し、本明細書において記載する目的に有用であるのに十分な時間にわたりその完全性を維持する化合物を指す。
【0077】
本明細書において使用する「抗体」という用語は、完全長免疫グロブリン分子または完全長免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち、目的の標的の抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子またはその一部を指し、そのような標的としては、これらに限定されないが、癌細胞または自己免疫疾患と関連する自己免疫抗体を生成する細胞がある。「抗体」という用語は、これらが所望の生物学的活性を示す限りは、無傷モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメントを含む。構造的に、抗体は典型的には2つの重鎖および2つの軽鎖の4つのアミノ酸鎖からなるY字型タンパク質である。各抗体は、主に2つの領域:可変領域および定常領域を有する。Yのアーム部の末端に位置する可変領域は、標的抗原に結合し、それと相互に作用する。この可変領域は、特定の抗原の特定の結合部位を認識し、そこに結合する相補性決定領域(CDR)を含む。Yの尾部に位置する定常領域は、免疫系によって認識され、それと相互に作用する(Janeway,C.,Travers,P.,Walport,M.,Shlomchik(2001)Immuno Biology,5th Ed.,Garland Publishing,New York)。標的抗原は、複数の抗体のCDRによって認識される、エピトープとも称される多数の結合部位を一般的に有する。異なるエピトープに特異的に結合する各抗体は異なる構造を有する。したがって、1つの抗原は1つを超える対応する抗体を有する場合がある。
【0078】
本明細書において使用する「反応性部分」という用語は、比較的に穏やかな条件下で、事前の官能基化を必要とせずに第2の官能基と反応させることができる官能基を意味する。反応性部分と第2の官能基との間の反応は、熱、圧力、触媒、酸および/または塩基の適用のみを必要とする。反応性部分の例としては、ハロゲン化カルバモイル、ハロゲン化アシル、活性エステル、無水物、α-ハロアセチル、α-ハロアセトアミド、マレイミド、イソシアネート、イソチオシアネート、ジスルフィド、チオール、ヒドラジン、ヒドラジド、塩化スルホニル、アルデヒド、メチルケトン、ビニルスルホン、ハロメチルおよびメチルスルホネートがある。第2の官能基は、一般的に、リンカーまたはリガンドであることになる。
【0079】
本明細書において使用する「リガンド」という用語は、受容体、抗原または所与の標的細胞母集団と関連する他の受容的な部分と結合するかまたは反応的に会合もしくは複合体形成するリガンドを意味する。リガンドは、分子間力、例えば、水素結合、イオン結合およびファンデルワールス力を介して一般的に結合することになる。リガンドは、一般的に特定の抗原を発現する細胞または細胞表面受容体に結合することによって、リガンドが結合する標的細胞母集団にペイロードを送達する。例えば、リガンドは、罹患した細胞、例えば癌細胞において過剰発現する細胞表面受容体または表面タンパク質に結合する場合がある。
【0080】
本発明に使用するためのリガンドの例としては、抗体(モノクローナル、二重特異性、キメラまたはヒト化抗体、またはこれらのいずれかの抗体フラグメントであってもよい)、成長因子、ホルモン、細胞/組織標的化ペプチド、アプタマーおよび小分子、例えば造影剤、補因子またはサイトカインがある。
【0081】
本明細書において使用する「薬学的に許容される塩」という用語は、特に指示がない限り、本明細書において記載する化合物の薬学的に許容される有機または無機塩を指す。例えば、本明細書において記載する化合物は、アミノ基を含んでいてもよく、したがって酸付加塩はこのアミノ基とともに形成することができる。塩の例としては、これらに限定されるものではないが、硫酸、クエン酸、酢酸、シュウ酸、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸、重硫酸、リン酸、酸性リン酸、イソニコチン酸、乳酸、サリチル酸、酸性クエン酸、酒石酸、オレイン酸、タンニン酸、パントテン酸、重酒石酸、アスコルビン酸、スクシン酸、マレイン酸、ゲンチシン酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、サッカリン酸、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、およびパモ酸(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))の塩がある。薬学的に許容される塩は、別の分子、例えばアセテートイオン、スクシネートイオンまたは他の対イオンの包含を伴う場合がある。対イオンは、親化合物の電荷を安定化させる任意の有機または無機部分であってもよい。さらに、薬学的に許容される塩は、その構造において1つを超える荷電原子を有していてもよい。複数の荷電原子が薬学的に許容される塩の一部である場合、複数の対イオンを有していてもよい。したがって、薬学的に許容される塩は、1つまたは複数の荷電原子および/または1つまたは複数の対イオンを有していてもよい。
【0082】
本明細書において使用する「薬学的に許容される溶媒和物」または「溶媒和物」という用語は、特に指示がない限り、1つまたは複数の溶媒分子および本明細書において記載する化合物の会合を指す。薬学的に許容される溶媒和物を形成する溶媒の例としては、これらに限定されるものではないが、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、およびエタノールアミンがある。
5.2本発明の化合物
本発明の化合物は、従来技術を使用した広範囲の非常に有効なADCの合成において利用することができる、非常に望ましい特性を有する新規のDNAアルキル化ユニットを提供する。
【0083】
特に、本発明の化合物は以下を含む:
(a)N保護された2-メチルベンゾオキサゾールDNAアルキル化ユニット(式中、YはN保護基である)および
(b)DNA副溝結合ユニットに結合している2-メチルベンゾオキサゾールDNAアルキル化ユニット。
【0084】
本発明のN保護された2-メチルベンゾオキサゾールDNAアルキル化ユニットは、DNA副溝結合ユニットに容易に結合して、細胞毒性の高いデュオカルマイシン類似体を提供し得る。これはまた、他の化学的部分にコンジュゲートさせて、ADCを含む新規の生物学的な活性化合物を形成することができる。
【0085】
DNAアルキル化サブユニットがDNA副溝結合ユニットに結合している本発明の化合物は、リンカーを介して、抗体または他のリガンドを結合させることによってADCに変換することができる。リンカーは、ヒドロキシルもしくはアミン基Xを介してDNAアルキル化サブユニットに直接結合させても、Y位置においてDNA副溝結合ユニットを介して間接的に結合させてもよい。
【0086】
第1の態様において、本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する
【0087】
【0088】
(式中:
LGは脱離基であり;
Xは、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、プロドラッグヒドロキシル、アミノ、および保護されたアミノから選択される基であり;ここで、アミノは、-NH2、または-NH(C1~C6)アルキルであり;
YはN保護基である)。
【0089】
式Iの化合物は、式IIおよびIIIの化合物の合成において、ならびにADCおよびその前駆体において使用してもよい。
本発明はまた式Iaの化合物に関する
【0090】
【0091】
(式中、LG、XおよびYは、式Iに関して定義したとおりである)。
第2の態様において、本発明は、式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する
【0092】
【0093】
(式中:
LGは脱離基であり;
Xは、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、プロドラッグヒドロキシル、アミノ、および保護されたアミノから選択される基であり;ここで、アミノは、-NH2、または-NH(C1~C6)アルキルであり;
DBはDNA副溝結合ユニットである)。
【0094】
本発明はまた、式IIaの化合物に関する
【0095】
【0096】
(式中、LG、XおよびDBは、式IIに関して定義したとおりである)。
1つの実施形態において、DBは、直接またはアルケニル基を介して結合している、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリール基である。
【0097】
1つの実施形態において、DBは、置換されていてもよいインドール、アザインドール、ベンゾフラン、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、チオフェン、チアゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジンまたはピリダジン基である。
【0098】
以下で記載するように、DNA副溝結合ユニットの設計および合成、ならびにDNA結合のその様式および強度を確立するための方法に関する当技術分野において利用可能な広範な情報が存在する。したがって、当業者は、特定の化学物質がDNA副溝結合ユニットを構成するかどうかを容易に確立することができる。
【0099】
1つの実施形態において、DBは、リンカー基の相補的反応部位またはリンカー基の構成成分に適合する反応性部分RMを含み、前記リンカー基は、リガンド、例えば抗体に結合するかまたは結合に好適である。
【0100】
1つの実施形態において、RMは、アジド、アルキン、ハロゲン化カルバモイル、ハロゲン化アシル、活性エステル、無水物、α-ハロアセチル、α-ハロアセトアミド、マレイミド、イソシアネート、イソチオシアネート、ジスルフィド、チオール、ヒドラジン、ヒドラジド、塩化スルホニル、アルデヒド、メチルケトン、ビニルスルホン、ハロメチルおよびメチルスルホネートからなる群から選択される反応性部分である。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態、例えば式IIの化合物において、2-メチルベンゾオキサゾールDNAアルキル化サブユニットは、DNA副溝結合ユニット(DB)に結合している。本発明において使用するための適切なDNA結合部分は、二本鎖DNAの副溝における結合に親和性を有する。例えば、Drug-Nucleic Acid Interactions edited by J.B.Chaires and M.J.Waring(Methods in Enzymology Vol 340,Academic Press,2001);Molecular Recognition of DNA by Small Molecules(Bioorg.Med.Chem.(2001)9,2215);Structure-Based DNA-Targeting Strategies with Small Molecule Ligands for Drug Discovery(Med.Res.Rev.(2013)33,1119);およびA Fluorescent Intercalator Displacement Assay for Establishing DNA Binding Selectivity and Affinity(Chem.Rev.(2004)37,61)において記載されているように、そのような分子の設計および合成、ならびにDNA結合のその様式および強度を確立するための方法に関する利用可能な広範な情報が存在する。
【0102】
DNAアルキル化ユニットに結合するためのDNA結合部分は、ヘテロアリールまたはアリール基であり、これらの基は他の官能基で置換されていてもよい。一般的に、平面アリールおよびヘテロ環系は、副溝内の結合に適切な物理化学的特性を有し、これは溝の壁および塩基のDNA構成要素とのH結合およびファンデルワールス相互作用の組合せによって通常促進される。これらの相互作用を強化するアリールおよびヘテロアリール環置換基は結合の強度を高める。
【0103】
結合は、2つ以上の環系と一緒に連結して、副溝とより長くより広範な相互作用を生成することによってさらに有利に働くが、それは全体的な構造が正確な屈曲およびねじれを保持して、それが結合する副溝のものと一致する場合に限る。これは、小分子リガンドまたはDNAのいずれかの歪みが最小である場合;すなわち形状相補性が高度である場合、最も有利に達成される。環系に連結するためにアミド結合を使用することは、アミドがそれ自体がDNAとのH結合相互作用に関与する場合があり、同時に所望のねじれおよび屈曲に適合するのに十分な可撓性も提供するため、有利なモチーフである。
【0104】
特に長さが延長されたDNA副溝バインダーに関して考慮するためのさらなる因子は、リガンドのH結合ドナーとDNAのアクセプターとの間の正確なレジスター(register)または位置を維持することである。一部の場合において、これはアリールまたはヘテロアリール環の置換基の特質を変化させるかまたは位置をシフトさせることによって達成してもよい。DNA副溝結合リガンドの広範なライブラリーは構築され、その結合親和性に関してアッセイされており(例えば、Total Synthesis of Distamycin A and 2640 Analogues:A Solution-Phase Combinatorial Approach to the Discovery of New,Bioactive DNA Binding Agents and Development of a Rapid,High-Throughput Screen for Determining Relative DNA Binding Affinity or DNA Binding Sequence Selectivity,J.Am.Chem.Soc.(2000)122,6382)、そのようなライブラリーを適用してデュオカルマイシン類似体は調製されている(例えば、Parallel Synthesis and Evaluation of 132(+)-1,2,9,9a-Tetrahydrocyclopropa[c]benz[e]indol-4-one(CBI)Analogues of CC-1065 and the Duocarmycins Defining the Contribution of the DNA-Binding Domain,J.Org.Chem.(2001)66,6654)。
【0105】
式II、およびIIaの化合物の具体的な実施形態において、DNA副溝結合ユニットは、アミド結合を介して第2のヘテロアリール基またはアリール基に連結していてもよいヘテロアリール基を含む。
【0106】
式IIおよびIIaの化合物の他の実施形態において、DNA副溝結合ユニットは、アルケニル基(-CH=CH-)を介してDNAアルキル化ユニットに連結した単一のアリールまたはヘテロアリール基を含む。
【0107】
第3の態様において、本発明は、式IIIの化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する
【0108】
【0109】
(式中:
LGは脱離基であり;
Xは、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、プロドラッグヒドロキシル、アミノ、および保護されたアミノから選択される基であり;ここで、アミノは、-NH2、または-NH(C1~C6)アルキルであり;
Yは
(a)N保護基;
(b)-C(O)-Ar1
(c)-C(O)-Ar1-NH-C(O)-Ar2
(d)-C(O)-Ar1-NH-C(O)-CH=CH-Ar3;または
(e)-C(O)-CH=CH-Ar3
から選択され:
ここで、Ar1、Ar2およびAr3は、ヘテロアリールまたはアリール基からそれぞれ独立して選択され、ここで、各ヘテロアリールまたはアリール基は、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-OH、-O-(C1~C6)アルキル、-NH2、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルおよび-NHC(O)-(C1~C6)アルキルのうちの1つまたは複数で置換されていてもよく;
ここで、各場合において、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-O-(C1~C6)アルキル、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルおよび-NHC(O)-(C1~C6)アルキルは、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で独立して置換されていてもよい)。
【0110】
本発明はまた、式IIIaの化合物に関する
【0111】
【0112】
(式中、LG、XおよびDBは、式IIIに関して定義したとおりである)。
以下の実施形態は、式I、Ia、II、IIa、IIIおよびIIIaの化合物に適用される。
【0113】
本明細書において使用する「脱離基」という用語は、置換反応において炭素中心から外れる基を意味する。通常そのような基は陰イオン形態で安定である。脱離基の例は当技術分野において周知であり、脱離基としては、これらに限定されるものではないが、ハロ基およびスルホネート基、例えば、置換されていてもよい(C1~C6)アルカンスルホネート(例えば、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネートおよびトリフルオロエタンスルホネート)および置換されていてもよいベンゼンスルホネートがある。
【0114】
1つの実施形態において、LGは、塩化物、臭化物、ヨウ化物および-OSO2R1からなる群から選択され;ここで、R1は、(C1~C10)アルキル、(C1~C10)ヘテロアルキル、(C1~C10)アリールまたは(C1~C10)ヘテロアリールから選択される。1つの実施形態において、LGは、ハロゲン化物基であり、好ましくは塩化物である。以下のスキーム2では、異なる脱離基を含むDNAアルキル化サブユニットの合成を示す。
【0115】
本発明の化合物において、基Xは、遊離ヒドロキシルまたは遊離アミノ基であっても、好適な保護基によって保護されたヒドロキシルまたはアミノ基(それぞれ保護されたヒドロキシルまたは保護されたアミノ基)であってもよい。Xはまた、ヒドロキシルのプロドラッグ形態(プロドラッグヒドロキシル)であってもよい。
【0116】
「プロドラッグヒドロキシル」という用語は、生化学物質、例えば酵素の作用によってin vivoで変換されて遊離OH基を提供する基を意味する。使用することができる好適なプロドラッグヒドロキシル基を選択し、調製するための従来の手順は、“Design of Prodrugs”,edited by H.Bundgaard,Elsevier,1985において記載されている。例は当技術分野において周知であり、例としては、これらに限定されるものではないが、ホスフェート基、カルバメートおよびグリコシドがある。
【0117】
Xがプロドラッグヒドロキシルである本発明の化合物は、リンカーが、Xを介してではなく、DNA副溝結合ユニットに結合することになるADCにおいて使用することができる。これは、ADCのプロドラッグ形態をもたらすことになる。本発明の化合物を組み込んだADCを設計する当業者であれば、抗体構成成分に繋ぐ適切な位置を選択し、ADCの意図する適用のための特定のプロドラッグ形態の望ましい状態を決定するであろう。
【0118】
本明細書において使用する「保護されたヒドロキシル」という用語は、合成手順中の不所望の反応に対して保護されているヒドロキシル基を指す。保護されたヒドロキシル基は、不用になった場合および/またはヒドロキシル基の反応を可能にするために、遊離ヒドロキシル基に容易に変換される。ヒドロキシル保護基は、Protective Groups in Organic Synthesis edited by T.W.Greene et al.(John Wiley & Sons,1999)に記載されている。本明細書において使用する「保護されたヒドロキシル」という用語は、良好な脱離基を含み、OH基が代替の基で交換された誘導体の合成において有用であるOTfなどの基も含む。本発明の化合物において有用であるヒドロキシル保護基の例としては、-OBn、-OTf、-OMOM、-OMEM、-OBOM、-OTBDMS、-OPMB、-OSEMがある。
【0119】
本明細書において使用する「保護されたアミノ」という用語は、合成手順中の不所望の反応に対して保護されているアミノ基を指す。保護されたアミノ基は、不用になった場合および/またはアミノ基の反応を可能にするために、遊離アミノ基に容易に変換される。本発明の化合物において、X位におけるアミノ基は、-NH2、および-NH(C1~C6)アルキルから選択される。アミノ保護基はProtective Groups in Organic Synthesis edited by T.W.Greene et al.(John Wiley & Sons,1999)および’Amino Acid-Protecting Groups’ by Fernando Albericio(with Albert Isidro-Llobet and Mercedes Alvarez)Chemical Reviews 2009(109)2455-2504に記載されている。
【0120】
本発明の化合物において有用であるアミノ保護基の例としては、これらに限定されるものではないが、アシルおよびアシルオキシ基、例えば、アセチル、クロロアセチル、トリクロロアセチル、o-ニトロフェニルアセチル、o-ニトロフェノキシ-アセチル、トリフルオロアセチル、アセトアセチル、4-クロロブチリル、イソブチリル、ピコリノイル、アミノカプロイル、ベンゾイル、メトキシ-カルボニル、9-フルオレニルメトキシカルボニル、2,2,2-トリフルオロエトキシカルボニル、2-トリメチルシリルエトキシ-カルボニル、tert-ブチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、2,4-ジクロロ-ベンジルオキシカルボニルなどがある。さらなる例としては、Nosyl(o-またはp-ニトロフェニルスルホニル)、Bpoc(2-(4-ビフェニル)イソプロポキシカルボニル)およびDde(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソヘキシリデン)エチル)がある。
【0121】
1つの実施形態において、Xは、-OH、-OBn、-OTf、-OMOM、-OMEM、-OBOM、-OTBDMS、-OPMB、-OSEM、ピペラジン-1-カルボキシレートからなる群から選択され、ここで、4位のNは、(C1~C10)アルキル、-OP(O)(OH)2、-OP(O)(OR2)2、-NH2、-N=C(Ph)2、-NHZ、NH(C1~C10)アルキルおよび-N-Z(C1~C10)アルキルで置換されており;
ここで、R2は、t-Bu、Bnまたはアリルであり;Zは、Boc、COCF3、Fmoc、Alloc、Cbz、TeocおよびTrocから選択される。
【0122】
1つの実施形態において、Xは、-OHまたは-NH2である。
1つの実施形態においてXは、保護されたまたはプロドラッグ-OHである。
1つの実施形態において、Xは、保護された-NH2である。
【0123】
1つの実施形態において、Xは、-OBn、-OTf、-OMOMおよび-OMEMを含む群から選択される。
Xが、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシルまたはプロドラッグヒドロキシルである本発明の化合物を作製する方法は、以下のスキーム2に示す。Xが、アミノまたは保護されたアミノである本発明の化合物を作製する方法は、以下のスキーム3に示す。
【0124】
YがN保護基である本発明の化合物は、DNA副溝結合ユニットに容易に結合して、2-メチルベンゾオキサゾールDNAアルキル化ユニットを提供し、それが細胞毒性の高いデュオカルマイシン類似体を提供し得る。
【0125】
本明細書において使用する「N保護基」という用語は、容易に除去されて遊離Nを提供することができ、合成手順中の不所望の反応に対してN原子を保護する基を意味する。そのような保護基は、Protective Groups in Organic Synthesis edited by T.W.Greene et al.(John Wiley & Sons,1999)and ’Amino Acid-Protecting Groups’ by Fernando Albericio(with Albert Isidro-Llobet and Mercedes Alvarez)Chemical Reviews 2009(109)2455-2504に記載されている。例としては、これらに限定されるものではないが、アシルおよびアシルオキシ基、例えば、アセチル、クロロアセチル、トリクロロアセチル、o-ニトロフェニルアセチル、o-ニトロフェノキシ-アセチル、トリフルオロアセチル、アセトアセチル、4-クロロブチリル、イソブチリル、ピコリノイル、アミノカプロイル、ベンゾイル、メトキシ-カルボニル、9-フルオレニルメトキシカルボニル、2,2,2-リフルオロエトキシカルボニル、2-トリメチルシリルエトキシ-カルボニル、tert-ブチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、2,4-ジクロロ-ベンジルオキシカルボニルなどがある。さらなる例としては、Nosyl(o-またはp-ニトロフェニルスルホニル)、Bpoc(2-(4-ビフェニル)イソプロポキシカルボニル)およびDde(1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソヘキシリデン)エチル)がある。
【0126】
1つの実施形態において、Yは、Boc、COCF3、Fmoc、Alloc、Cbz、TeocおよびTrocから選択されるN保護基である。
当業者であれば、使用する特定の合成スキームおよび所望の最終製品に好適な保護基およびプロドラッグヒドロキシル部分を選択することができるであろう。
【0127】
式IIIの化合物において、DNA副溝結合ユニットは、ヘテロアリールまたはアリール基を含み、これらは、第2のヘテロアリール基またはアリール基にアミド結合を介してまたは-NH-C(O)-CH=CH-を介して連結していてもよい。
【0128】
他の実施形態において、DNA副溝結合ユニットは、単一のアリールまたはヘテロアリール基を含む。
1つの実施形態において、Ar1、Ar2およびAr3は、
【0129】
【0130】
からなる群から独立して選択される
(式中、
【0131】
【0132】
は、-C(O)またはC(O)-CH=CH-基への結合点を表し、各アリールまたはヘテロアリール基は、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-OH、-O-(C1~C6)アルキル、-NH2、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルおよび-NHC(O)-(C1~C6)アルキルから選択される最大3つの置換基で番号が付された位置において置換されていてもよい)。
【0133】
当業者に理解されるであろうように、5-アザインドール、6-アザインドール、7-アザインドール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾールおよびピラゾール基は、最大2つの基およびトリアゾールと、1つだけ置換することができる。
【0134】
Ar1がAr2にNH-C(O)を介して結合する場合、またはAr1がAr3に-NH-C(O)-CH=CHを介して結合する場合、Ar1の結合点は、番号が付された位置のうちのいずれか1つであってもよい。当業者に理解されるであろうように、そのような結合は、Ar1の可能な置換基を1つ減少させることになる。
【0135】
各場合において、置換基-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-O-(C1~C6)アルキル、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルおよび-NHC(O)-(C1~C6)アルキルは、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で独立して置換されていてもよい場合がある。
【0136】
1つの実施形態において、Ar1はヘテロアリール基である。1つの実施形態において、ヘテロアリール基は、インドール、アザインドール、ベンゾフランまたはベンゾチオフェン基であり、これらは、ヘテロアリール基の2位において-C(O)またはC(O)-CH=CH-を介してDNAアルキル化ユニットに結合している。
【0137】
1つの実施形態において、Ar1はAr2にNH-C(O)を介して結合するかまたはAr1は-NH-C(O)-CH=CHを介してAr3に結合する。1つの実施形態において、Ar1の結合点は、インドール、アザインドール、ベンゾフランまたはベンゾチオフェン基の5位にある。
【0138】
1つの実施形態において、Ar2は、インドール、アザインドール、ベンゼン、ベンゾフラン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、チオフェン、チアゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジンまたはピリダジンからなる群から選択される。
【0139】
1つの実施形態において、Ar2は、インドール、アザインドール、ベンゼン、ベンゾフラン、ピロールまたはイミダゾールからなる群から選択される。
1つの実施形態において、Ar3は、ベンゼン、ピリジン、ピリミジンおよびピリダジンから選択される。1つの実施形態においてAr3は、ベンゼンまたはピリジンであり、好ましくはベンゼンである。
【0140】
1つの実施形態において、Yは-C(O)-Ar1であり、ここで、Ar1は、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-OH、-O-(C1~C6)アルキル、-NH2、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルまたは-NHC(O)-(C1~C6)アルキルのうちの1つまたは複数で置換されていてもよいヘテロアリールまたはアリール基であり、
ここで、各場合において、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-O-(C1~C6)アルキル、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルおよび-NHC(O)-(C1~C6)アルキルは、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で独立して置換されていてもよい。
【0141】
1つの実施形態において、Ar1は、ヘテロアリールまたはアリール環の1位において置換されている。
1つの実施形態において、Ar1はヘテロアリール基である。
【0142】
1つの実施形態においてヘテロアリール基は、インドール、アザインドール、ベンゾフランまたはベンゾチオフェン基であり、これらは、ヘテロアリール基の2位において-C(O)またはC(O)-CH=CH-を介してDNAアルキル化ユニットに結合している。
【0143】
1つの実施形態において、Ar1は
【0144】
【0145】
である
(式中、Aは、NH、OまたはSであり、
R10、R11およびR12は、H、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-OH、-O-(C1~C6)アルキル、-NH2、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルおよび-NHC(O)-(C1~C6)アルキルから独立して選択され、
ここで、各場合において、-(C1~C6)アルキル、-O-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、および-NH-C(O)-(C1~C6)アルキルは、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で独立して置換されていてもよい)。
【0146】
1つの実施形態において、AはNHである。
1つの実施形態において、R10、R11およびR12はOMeである。
1つの実施形態において、R10は、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で置換されていてもよい-O-(C1~C6)アルキルであり;R11およびR12は両方ともHである。
【0147】
1つの実施形態において、R10は、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で置換されていてもよい-NHC(O)-(C1~C6)アルキルであり;R11およびR12は両方ともHである。
【0148】
1つの実施形態において、R10は-NH-C(O)-Ar2であり、ここでAr2は、置換されていてもよいインドール、アザインドール、ベンゼン、ベンゾフラン、ピロールまたはイミダゾール基であり;R11およびR12は両方ともHである。
【0149】
1つの実施形態において、R10は-NH-C(O)-Ar2であり、ここで、Ar2は、置換されていてもよいインドール基であり;R11およびR12は両方ともHである。1つの実施形態において、インドール基は、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で置換されていてもよい-O-(C1~C6)アルキルで置換されている。
【0150】
1つの実施形態において、R10は-NH-C(O)-Ar2であり、ここで、Ar2は置換されていてもよいベンゼン基であり;R11およびR12は両方ともHである。1つの実施形態において、ベンゼン基は、-OH、-NH2、または-O-(C1~C6)アルキルで置換されており、ここで、-O-(C1~C6)アルキルは、-NMe2で置換されていてもよい。
【0151】
1つの実施形態において、R10は-NH-C(O)-CH=CH-Ar3であり、ここで、Ar3は、置換されていてもよいベンゼン、ピリミジン基またはピロール基であり;R11およびR12は両方ともHである。1つの実施形態において、ベンゼン、ピリミジン基またはピロール基は、-O-(C1~C6)アルキル、-NH2、または-NHC(O)-(C1~C6)アルキルで置換されており、ここで、-O-(C1~C6)アルキルはモルホリンで置換されていてもよい。
【0152】
1つの実施形態において、Ar1は、
【0153】
【0154】
からなる群から選択される
(式中、R10、R11およびR12(存在する場合)は、H、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-OH、-O-(C1~C6)アルキル、-NH2、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルおよび-NHC(O)-(C1~C6)アルキルから独立して選択され、
ここで、各場合において、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-O-(C1~C6)アルキル、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルおよび-NHC(O)-(C1~C6)アルキルは、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で独立して置換されていてもよい)。
【0155】
1つの実施形態において、R10、R11およびR12はOMeである。
1つの実施形態において、R10、R11およびR12のうちの1つは、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で置換されていてもよい-O-(C1~C6)アルキルである。
【0156】
1つの実施形態において、R10、R11およびR12のうちの1つは、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で置換されていてもよい-NHC(O)-(C1~C6)アルキルである。
【0157】
1つの実施形態において、R10、R11およびR12のうちの1つは-NH-C(O)-Ar2であり、ここで、Ar2は、置換されていてもよいインドール、アザインドール、ベンゼン、ベンゾフラン、ピロールまたはイミダゾール基である。
【0158】
1つの実施形態において、R10、R11およびR12のうちの1つは-NH-C(O)-Ar2であり、ここで、Ar2は、置換されていてもよいインドール基である。1つの実施形態において、インドール基は、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で置換されていてもよい-O-(C1~C6)アルキルで置換されている。
【0159】
1つの実施形態において、R10、R11およびR12のうちの1つは-NH-C(O)-Ar2であり、ここで、Ar2は置換されていてもよいベンゼン基である。1つの実施形態において、ベンゼン基は、-OH、-NH2、または-O-(C1~C6)アルキルで置換されており、ここで、-O-(C1~C6)アルキルは、-NMe2で置換されていてもよい。
【0160】
1つの実施形態において、R10、R11およびR12のうちの1つは-NH-C(O)-CH=CH-Ar3であり、ここで、Ar3は、置換されていてもよいベンゼン、ピリミジン基またはピロール基である。1つの実施形態において、ベンゼン、ピリミジン基またはピロール基は、-O-(C1~C6)アルキル、-NH2、または-NHC(O)-(C1~C6)アルキルで置換されており、ここで、-O-(C1~C6)アルキルは、モルホリンで置換されていてもよい。
【0161】
1つの実施形態において、Yは-C(O)-Ar1-NH-C(O)-Ar2であり、ここで、Ar1およびAr2は、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-OH、-O-(C1~C6)アルキル、-NH2、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルまたは-NHC(O)-(C1~C6)アルキルのうちの1つまたは複数で置換されていてもよいヘテロアリールまたはアリール基であり、
ここで、各場合において、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-O-(C1~C6)アルキル、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルおよび-NHC(O)-(C1~C6)アルキルは、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で独立して置換されていてもよい。
【0162】
1つの実施形態において、Ar1はヘテロアリール基であり、Ar2は、ヘテロアリールまたはアリール基である。
1つの実施形態において、Ar1は、インドール、アザインドール、ベンゾフランまたはベンゾチオフェン基であり、これらは、ヘテロアリール基の2位においてDNAアルキル化ユニットに結合している。
【0163】
1つの実施形態において、Ar2は、インドール、アザインドール、ベンゼン、ベンゾフラン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、チオフェン、チアゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジンまたはピリダジンからなる群から選択される。
【0164】
1つの実施形態において、Ar2は、インドール、アザインドール、ベンゼン、ベンゾフラン、ピロールまたはイミダゾール基からなる群から選択される。
1つの実施形態において、Ar1は、インドール、アザインドール、ベンゾフランまたはベンゾチオフェン基であり、これらは、ヘテロアリール基の2位においてDNAアルキル化ユニットに結合しており、Ar2は、インドール、アザインドール、ベンゼン、ベンゾフラン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、チオフェン、チアゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジンまたはピリダジンからなる群から選択される。
【0165】
1つの実施形態において、Ar1の結合点は、インドール、アザインドール、ベンゾフランまたはベンゾチオフェン基の5位にある。
1つの実施形態において、Yは-C(O)-Ar1-NH-C(O)-CH=CH-Ar3であり、ここで、Ar2およびAr3は、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-OH、-O-(C1~C6)アルキル、-NH2、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルまたは-NHC(O)-(C1~C6)アルキルのうちの1つまたは複数で置換されていてもよいヘテロアリールまたはアリール基であり、
ここで、各場合において、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-O-(C1~C6)アルキル、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルおよび-NHC(O)-(C1~C6)アルキルは、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で独立して置換されていてもよい。
【0166】
1つの実施形態において、Ar1はヘテロアリール基であり、Ar3は、ヘテロアリールまたはアリール基である。
1つの実施形態において、Ar1は、インドール、アザインドール、ベンゾフランまたはベンゾチオフェン基であり、これらは、ヘテロアリール基の2位においてDNAアルキル化ユニットに結合している。
【0167】
1つの実施形態において、Ar3は、ベンゼン、ピリジン、ピリミジンおよびピリダジンから選択される。1つの実施形態において、Ar3は、ベンゼンまたはピリジンであり、好ましくはベンゼンである。
【0168】
1つの実施形態において、Ar1は、インドール、アザインドール、ベンゾフランまたはベンゾチオフェン基であり、これらは、ヘテロアリール基の2位においてDNAアルキル化ユニットに結合しており、Ar3は、ベンゼン、ピリジン、ピリミジンおよびピリダジンから選択される。
【0169】
1つの実施形態において、Ar1の結合点は、インドール、アザインドール、ベンゾフランまたはベンゾチオフェン基の5位にある。
1つの実施形態において、Yは-C(O)-CH=CH-Ar3であり、ここで、Ar3は、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-OH、-O-(C1~C6)アルキル、-NH2、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルまたは-NHC(O)-(C1~C6)アルキルのうちの1つまたは複数で置換されていてもよいヘテロアリールまたはアリール基であり、
ここで、各場合において、-(C1~C6)アルキル、-CO-(C1~C6)アルキル、-CONH(C1~C6)アルキル、-CON(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキル、-O-(C1~C6)アルキル、-NH(C1~C6)アルキル、-N(C1~C6)アルキル(C1~C6)アルキルおよび-NHC(O)-(C1~C6)アルキルは、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で独立して置換されていてもよい。
【0170】
1つの実施形態において、Ar3は、ベンゼン、ピリジン、ピリミジンおよびピリダジンから選択される。1つの実施形態において、Ar3は、ベンゼンまたはピリジンであり、好ましくはベンゼンである。
【0171】
1つの実施形態において、Ar3は、-NMe2、-NHMe、-NH2、-OH、モルホリンおよび-SHのうちの1つまたは複数で置換されていてもよい-O-(C1~C6)アルキルで置換されていてもよいベンゼン基である。
【0172】
式I、IIおよびIIIの化合物は、式IVの化合物に対するseco前駆体であり、これはin vivoでの活性薬剤と考えらている。
第4の態様において、本発明は、式IVの化合物またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する
【0173】
【0174】
(式中、Vは、YまたはDBであり、X、YおよびDBは、式I、II、およびIIIの化合物に関して定義されるものと同じ意味を有し、X’は、Hを失ったXである)。
式IVの化合物は、in vitroまたはin vivoで転位させ、式I、IIおよびIIIの対応するseco-化合物からH-LGを同時に消失させることを介して形成してもよい。式I、IIもしくはIIIの化合物、またはこれらの一部のいずれかに関する本明細書において記載する本発明の全ての実施形態も、文脈上特に指示がない限り、式IVの化合物に関する本発明の態様の一部として特に検討される。
【0175】
式I、IIおよびIIIの化合物は、脱離基(LG)を含み、LGは生理学的条件下でシクロプロピル環形成を促進して式IVの化合物を形成する。
1つの態様において、本発明は、化合物49、18、50、51、23、52、53、57、58、59、63、64、65、66、70、74、79、80、81、82、83、24、26、85、87、88、89、90、91および93のうちのいずれか1つからなる群から選択される化合物を提供する。
【0176】
1つの実施形態において、本発明は、化合物49、18、50、51、23、52、57、53、58、59、63、64、65、66、70、74、79、80、81、82、83、24、85、88および90のうちのいずれか1つからなる群から選択される化合物を提供する。
【0177】
1つの実施形態において、本発明は、
【0178】
【0179】
からなる群から選択される化合物を提供する。
1つの実施形態において、本発明は、
【0180】
【0181】
からなる群から選択される化合物を提供する。
1つの実施形態において、本発明は、
【0182】
【0183】
からなる群から選択される化合物を提供する。
5.3本発明の化合物の合成
本発明の化合物は、本明細書において記載する方法および手順またはそれに類似した方法および手順を使用して調製してもよい。本発明の化合物を調製するための他の好適な方法は、当業者であれば明らかであろう。
【0184】
典型的なまたは好ましいプロセス条件(例えば、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が示される場合、特に記載がない限り、他のプロセス条件も使用してもよいことは理解されるであろう。最適な反応条件は、使用する特定の反応物に伴って変化する場合がある。
【0185】
方法および反応において有用である出発材料は、市販されているか、または既知の手順もしくはその改変物、例えば、標準的な参照テキスト、例えばFieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,Volumes 1-15(John Wiley and Sons,1991),Organic Reactions,Volumes 1-40(John Wiley and Sons,1991)、March’s Advanced Organic Chemistry,(John Wiley and Sons,4th Edition)、およびLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.,1989)に記載されているものによって調製してもよい。
【0186】
さまざまな出発材料、中間体、および化合物は、適切な従来技術、例えば、沈殿、濾過、結晶化、蒸発、蒸留、およびクロマトグラフィーを使用して単離し精製してもよい。化合物の特性評価は、従来の方法を使用して、例えば、融点、マススペクトル、核磁気共鳴、およびさまざまな他の分光学的分析によって行ってもよい。
【0187】
従来の保護基は、ある特定の官能基が不所望の反応を受けることから阻止するために必要な場合がある。保護および脱保護の必要性、ならびに適切な保護基の選択は当業者であれば容易に判定することができる。さまざまな官能基に好適な保護基ならびに特定の官能基を保護および脱保護するための好適な条件は当技術分野において周知である(例えば、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999を参照のこと)。
【0188】
2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットを含むペイロードの個々のエナンチオマーは、好適な中間体、例えば、化合物49または18のキラルHPLC分割を使用して調製してもよい。好適なカラムとしては、関連するアルキル化サブユニットを分割するために使用されるもの、例えば、CBI(J.Am.Chem.Soc.(1994)116,7996)、CTI(Bioorg.Med.Chem.Lett.(2009)19,6962)、iso-DSA(J.Am.Chem.Soc.(2009)131,1187)、CImI(Bioorg.Med.Chem.(2016)24,4779)がある。分割した中間体は、ラセミ体に関して記載するものと類似の方法によってペイロードおよび薬物-リンカーコンジュゲートに変換することができる。
【0189】
X=保護されたOHである2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットを作製するための一般的な方法をスキーム2に示す。このスキームにおける化合物5および7は、X=遊離OHおよびX=プロドラッグOHである2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットに容易に変換される。
【0190】
【0191】
このスキームにおいて、3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロ安息香酸エステル1は出発材料として機能する。これらは、例えば、3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロベンズアルデヒドを対応する酸に酸化し、続いてアルコールROHを用いてエステル化することによって調製してもよい。あるいは、1は、4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸をニトロ化し、続いて試薬、例えば、HBrまたはBBr3を使用してメトキシ基を脱アルキル化し、続いてアルコールROHを用いてエステル化することによって調製してもよい。
【0192】
1のニトロ基は、好適な条件(例えばPdまたはPt触媒での水素添加、または酸性条件下でのFe(III)塩への曝露)に曝露することによって対応するアミンに還元され、生成物は、酸性条件下でトリアルキルオルトアセテート、例えばトリメチルオルトアセテートで処置して、置換された2-メチルベンゾオキサゾール2への環化を誘導する。
【0193】
合成のこの時点において、さまざまなX=保護された-OHを導入してもよい。例えば、ベンジル保護基は、2とベンジル臭化物またはベンジル塩化物との塩基性条件下での反応によって導入して、X=OBnである3を得てもよい。同様に、MOM保護基は、MOMClとの反応によって導入してもよく;MEM保護基は、MEMClとの反応によって導入してもよく;BOM保護基は、BOMClとの反応によって導入してもよく;TBDMS保護基は、TBDMSClとの反応によって導入してもよく;PMB保護基は、PMBClとの反応によって導入してもよく;SEM保護基は、SEMClとの反応によって導入してもよい。異なる保護基に関しては、異なる反応条件(例えば、塩基、溶媒、温度、塩化物または臭化物試薬、添加物、例えばヨウ化物塩)を必要に応じて選択して3の収率を最適化してもよい。
【0194】
次いで、3のエステルを標準的な条件下で加水分解して、対応する酸を得、これを4のNHY基に変換する。Yがカルバメート保護基を表す場合、第2のこれらのステップは、有機塩基、例えばトリメチルアミンおよび好適なアルコールと組み合わせてジフェニルホスホリルアジド(DPPA)試薬を使用して単一のポット中で好都合には行ってもよい。例えば、DPPAおよびt-BuOHでY=Bocである4が得られることになる。同様にベンジルアルコールを使用するとY=Cbzのものが得られることになり、2-(トリメチルシリル)エタノールを使用するとY=Teocのものが得られることになり、2,2,2-(トリクロロ)エタノールを使用するとY=Trocのものが得られることになる。あるいは、中間体イソシアネートを、アルコールの代わりに水と反応させて対応する非保護アミンを生成してもよい。次いで、これを標準的な条件下で保護された形態に変換してもよく、例えばトリフルオロ酢酸無水物との反応でY=COCF3のものが得られることになり、同時にクロロギ酸ベンジルとの反応でY=Cbzのものが得られることになる。
【0195】
化合物4を、好適な試薬との反応によって4位において選択的にハロゲン化してもよく、例えばNBSは4位に臭化物を導入し、同時にNISは4位にヨウ化物を導入する。これらの反応は、4および6位におけるジハロゲン化を最小限にするために1当量のハロゲン化剤で行うのが最良である。脱離基が塩化物である、すなわち5のアルキル化サブユニットを作成するために、次いで、ハロゲン化中間体を1,3-ジクロロプロペンと好適な塩基、例えばNaHまたはK2CO3の存在下で反応させ、これらが、NHY基を脱プロトン化し、この位置を直接クロロアリル化するための働きをする。次いで、この中間体を好適な試薬、例えばトリブチルスズヒドリドまたはトリス(トリメチルシリル)シランで処置して、ハロゲン原子を除去し、ペンダントクロロアリル基のラジカル介在性環化を開始し、これにより製品5が生成する。
【0196】
脱離基がハロゲン化物またはスルホネートであるアルキル化サブユニットは、中間体6を介して作製することができる。化合物6は、上述のステップを改変することによって4から調製してもよい。臭化アリルを1,3-ジクロロプロペンの代わりに使用し、ラジカル介在性環化をスピントラップTEMPO(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ)の存在下で行う。これにより、N-O結合を含む製品が生成し、この結合は、Znおよび酸、例えば酢酸に曝露することによって開裂して6が生成する。6の第一級アルコールを、標準的な試薬を使用することによってLG=ハロゲン化物またはスルホネートのものに変換し、例えば、臭素およびトリフェニルホスフィンを使用して、LG=Brのものを作製することができ、同時に塩化メタンスルホニルおよびトリエチルアミンを使用してLG=OSO2Meのものを作製することができる。
【0197】
XおよびYの保護基を、化合物5および7の段階において選択的に除去し、交換してもよい。化合物4の後の合成ステップにおいて使用する条件に対して不安定な場合があるいくつかのY保護基に関しては、その導入のための好ましい方法である可能性が高い。例えば、Y=COCF3は、アリル化反応において使用する塩基性条件に対して不安定な場合があるが、5または7(ここで、例えばY=Boc)を脱保護し、続いてトリフルオロ酢酸無水物と反応させることによって導入してもよい。同様に、Y=Fmocも同じ塩基性条件で不安定な場合があり、同時にY=Allocはラジカル介在性環化に干渉する場合がある。それにもかかわらず、これらの代替の保護基は、異なる反応条件に対する安定性が必要な5および7のその後の反応において非常に有用な場合がある。これは、例として、X=保護されたNH2であるアルキル化サブユニットの合成において以下に示す。
【0198】
5および7に関しては、基X=保護されたOHも、遊離OH(すなわち以下の化合物8)に変換してもよく、したがってプロドラッグOHに変換してもよい。後者の変換は、十分確立された合成方法を介して進行する。例えば、8と4-アルキルピペラジンカルボニル塩化物との反応によって、5および7が得られる(ここで、X=ピペラジン-1-カルボキシレートであり、4位におけるNがアルキル基で置換されている)。別の例において、8の遊離OHを一般的な構造R2NP(OR2)2のホスホルアミダイト試薬と反応させる(ここでRは低級アルキル、例えばエチルまたはイソプロピルであり、R4はt-Bu、Bnまたはアリルである)。次いで、中間体生成物を好適な試薬、例えば過酸化水素または有機過酸を用いて酸化させて、5および7(ここで、X=OP(O)(OR2)2)が得られる。
【0199】
2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニット(ここで、X=NH2、保護されたNH2、NHR1、または保護されたNHR1、ここで、R1は(C1~C6)アルキルである)を作製するための一般的な方法をスキーム3に示す。
【0200】
【0201】
遊離OH基を含む化合物8をトリフルオロメタンスルホン酸無水物および好適な塩基、例えばトリエチルアミンと反応させて、化合物9を得る。この化合物を、好適な触媒、例えばPd(OAc)2およびリガンド、例えばBINAPを使用してベンゾフェノンイミンと反応させて、アミノ化を行い、化合物10を生成する。ベンゾフェノンイミンを、酸性条件下で開裂させて、化合物11を生成する。必要な酸性条件は、いくつかの保護基Yが他のものよりも好適であることを意味する。例えば、Y=COCF3はY=Bocよりも好適であり、その結果1つの好都合な経路は、化合物7の段階においてY=BocからY=COCF3への交換を伴う。保護基の他の組合せも可能であり、特定の標的化合物に応じてさまざまな合成の利点を提供することができる。
【0202】
化合物11は、X位においてNHR1(ここで、R1は(C1~C6)アルキルである)置換基を有するアルキル化サブユニット12にさらに変換してもよい。例えば、11は酢酸ギ酸無水物と反応させて、ホルミル化中間体を生成してもよく、これを、ボランを使用して還元して、12(ここで、R1=Me)を得る。あるいは、11をアルデヒドR1CHO(ここで、R1は(C1~C6)アルキルである)と縮合させて、イミンを得てもよく、これを試薬、例えば水素化ホウ素ナトリウムまたはシアノホウ素化ナトリウムを用いて還元して、12(ここで、R1=(C1~C6)アルキルである)を得る。化合物11および12は、上記で示したような標準的な条件を使用して保護された類似体13および14に変換することができ、例えば、トリフルオロ酢酸無水物との反応で、X=NHZおよびNZR1(ここで、Z=COCF3であり、R1は(C1~C6)アルキルである)を生成することになり、同時にフルオレニルメチルオキシカルボニル塩化物との反応はX=NHZおよびNZR1(ここで、Z=Fmoc、R1は(C1~C6)アルキルである)を生成することになる。
【0203】
2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットおよびDNA副溝結合部分(DB)を組み込んだDNAアルキル化剤を作製するための一般的な方法をスキーム4に示す。
【0204】
【0205】
15がX=OHを含む場合、保護基Yは、適切な方法によって(例えば、Y=Bocに関してはHClとの処置によって)除去し、得られた中間体を、DNA副溝結合ユニットAr1CO2HまたはAr3CH=CHCO2Hと、好適なアミドカップリング剤、例えばEDCIまたはHOBtの存在下で反応させる。DNA副溝結合ユニットの他の活性化形態、例えば酸塩化物も使用してもよい。このアプローチは、17(ここで、X=OHである)を直接生成する。
【0206】
15が、X=保護されたOHまたは保護されたNH2または保護されたNHR1を含む場合、合成は、2ステップで中間体16を介して進行する。XおよびYにおける保護基の適切な選択は、Xにおいて使用する保護基の存在下でYの脱保護を可能にするために行うべきであることは当業者であれば明らかであろう。例えば、YはBocである場合、XはNHBocもしくはNRBoc、または酸に対して高感受性であるその他の保護基、例えばNHTeocまたはNRTeocであるべきではない。直交性保護基の好適な組合せは、上記で示す一般的なスキームに従うことによって容易に利用可能である。化合物16(ここで、Y=-C(O)Ar1または-C(O)-CH=CH-Ar3)を形成するためのアミドカップリングを上述と同じ一般的な方法で行い、16を、Xにおける保護基を除去することによって17に変換する。化合物17がX=NH2を含む場合、ベンゾフェノンイミンは好適な保護された前駆体、すなわち15(ここで、X=N=C(Ph)2)として機能する場合がある。
【0207】
同じアプローチを使用して、適切な側鎖酸を置換することによって、すなわち、Ar2C(O)NHAr1CO2HまたはAr3CH=CHC(O)NHAr1CO2Hを使用することによって、側鎖が2つの連結した芳香環を含むペイロードを作製することができる。
【0208】
スキーム5は、XがNH2である本発明の化合物の合成の予測的な例を示す。
【0209】
【0210】
スキーム5において提案する合成では、遊離アミノ基を含む2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニット(一般的な構造22)を、seco-CBI化合物に関して報告済みの方法に類似した方法によって調製してもよい(Bioorg.Med.Chem.(2016)24,6075)。特に、化合物18は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物およびトリエチルアミンを使用してトリフレート19に変換する。化合物19は、ベンゾフェノンイミンおよびPd(OAc)2触媒およびBINAPリガンドを使用してアミノ化して20を得る。Boc保護基が、メタノール中のHClまたはジクロロメタン中のTFAを使用して選択的に開裂し、得られた中間体は、カップリング剤としてEDCIを使用して好適な側鎖酸と反応させてアミド21を得る。ベンゾフェノン保護基を、水性酢酸を使用して除去して所望の製品22を得る。この方法は、18のRおよびSエナンチオマーにも適用して、22の対応するRおよびSエナンチオマーを得てもよい。
【0211】
好適な置換基を有する多くのDNA副溝結合ユニット酸Ar1CO2HまたはAr3CH=CHCO2Hは市販されている化合物であるか、または単純な官能基の変更によって市販されている化合物から容易に作成することができ、例えば、エステルおよびニトリルをカルボン酸に加水分解することができ、ニトロ置換基をアミノ置換基に還元することができ、これをさらにアルキル化またはアシル化することができ、ハロゲン化物置換基はさまざまな金属-介在性反応および/または変位反応を受けて、さまざまな所望の置換基にアクセスすることができる。さらに、好適なDNA副溝結合ユニット酸を調製するのに有用である多数の他のアリールおよびヘテロアリール化合物は既知の化合物であるか、または既知の合成方法を改変することによって作製することができる。多くのこれらの方法は、“Comprehensive Heterocyclic Chemistry III”,edited by A.R.Katritzky,C.A.Ramsden,E.F.V.Scriven and R.J.K.Taylor,Elsevier,2008に記載されている。例えば、インドールの合成は、第3.03項(3巻、269~351頁)においてレビューされており、アザインドールの合成は第10.06項(10巻、263~338頁)においてレビューされており、ベンゾフランの合成は第3.07項(3巻、497~569頁)においてレビューされており、ベンゾチオフェンの合成は第3.11項(3巻、834~930頁)においてレビューされており、これら全ては参照により本明細書に組み込まれるものとする。置換されたヘテロアリール化合物の合成に対する多くのレビューが存在し、例えば、インドールの合成は以下の出版物においてレビューされている:Chem.Rev.(2006)106,2875;Chem.Rev.(2005)105,2873;Perkin Trans 1(2000),1045。
【0212】
より具体的には、DNA副溝結合ユニット酸としての適用に関しては、所望の2位においてカルボキシレート置換基を有するヘテロアリール化合物を生成する方法が既知である。これらの多くは前述のレビューに含まれているが、特定の例もここに示す:インドール-2-カルボキシレートに関しては、Org.Lett.(2016)18,3586;Org.Lett.(2004)6,2953;アザインドール-2-カルボキシレートに関しては、国際公開第2009/030725号;ベンゾフラン-2-カルボキシレートに関しては、Org.Lett.(2013)15,3876;J.Chem.Soc.,Perkin Trans.2(1998)1063;ベンゾチオフェン-2-カルボキシレートに関しては、Org.Lett.(2013)15,3876;Org.Lett.(2012)14,5334。
【0213】
多くのこれらの方法は、デュオカルマイシン類似体の調製に使用するための特定のDNA副溝結合ユニット酸の合成において採用されている。例えば、72個の異なる置換されたインドール-2-カルボキシレートの合成およびそのseco-CBIアルキル化サブユニットへのカップリングは、Bioorg.Med.Chem.(2003)11,3815に記載されている。デュオカルマイシン類似体を調製するために使用するさまざまな置換されたインドール-2-カルボキシレートの他の例は、J.Med.Chem.(2017)60,5834;ChemMedChem(2014)9,2193;Eur.J.Org.Chem.(2006)2314;およびJ.Am.Chem.Soc.(1997)119,4977に記載されており;同時にさまざまな置換されたケイ皮酸の同様の使用は、J.Med.Chem.(1997)40,972に記載されている。Ar1がアリールまたはヘテロアリール基Ar3に結合しているタイプのDNA副溝結合ユニット酸の合成も報告されている、例えば、国際公開第2011/133039号;J.Med.Chem.(2003)46,634;およびJ.Org.Chem.(2001)66,6654において記載されている(これらは、他の環系の中でも、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、およびチアゾールを組み合わせた132個の側鎖の合成を記載している)。
【0214】
当業者であれば、Ar1がAr2またはAr3に結合している多くの側鎖を、標準的な方法およびカップリング剤を使用して、特定の例に関与する他の置換基に応じて適切な保護基を使用して、アミノ置換基を含むAr1ユニットとカルボン酸置換基を含むAr2またはAr3ユニットとの間のアミド結合を形成することによって調製してもよいことを認識するであろう。したがって、本発明の化合物の合成において、DNAアルキル化ユニットと反応させる酸Ar1CO2HまたはAr3CH=CHCO2HまたはAr2CONHAr1CO2HまたはAr3CH=CHCONHAr1CO2Hを調製する一般的で特定の方法を記載している大量の情報および前例が存在する。
【0215】
2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットおよび副溝結合側鎖が組み込まれたDNAアルキル化剤をADCのペイロードとして使用することができる。この目的のために、リンカーを使用してペイロードを抗体に結合させる必要がある。リンカーは、いくつかの異なる方法でペイロードに結合させてもよい。例えば、リンカーはX位において結合させてもよく、これは、カルバメート(-OC(O)NHRもしくは-OC(O)NR2または-NHC(O)ORまたは-NRC(O)OR’)を介していても、エーテル(-OR)官能基を介していてもよい。これらのタイプのリンカーは、「トレースレス」リンカーとして既知の結合タイプのものであり、ADCが代謝された後にフラグメント化してX=OHまたはNH2またはNHRを放出することを必要とする。好適なリンカータイプのいくつかの例は既知であり、自壊性スペーサー、例えばパラ-アミノベンジルエーテルまたはパラ-アミノベンジルカルバメートが組み込まれていることが多く、これらのフラグメンテーション速度に影響を与える方法でさらに置換されていても、または追加の開裂可能なスペーサー、例えばN,N-ジアルキル-1,2-ジアミノエタンに結合させてもよい。
【0216】
X位置にトレースレスリンカーを含む代表的な薬物-リンカー化合物の合成の例示的な例を以下に示す。
スキーム6は、リンカーがフェノールカルバメートを介して結合している本発明の化合物の調製を概説する。
【0217】
【0218】
このスキームにおいて、化合物23を4-ニトロフェニルクロロホルメートと反応させ、次いで、生成物をモノBoc-保護されたN,N’-ジメチル-1,2-ジアミノエタンと反応させて24を得る。24のBoc基を、TFAを使用して脱保護して、対応するTFA塩を得る。活性化マレイミド-バリン-シトルリン-PABA化合物25を記載されているように調製する(Mol.Pharm.(2015)12、1813)。TFA塩および25を弱塩基性条件下で反応させ、薬物-リンカー26を得る。
【0219】
スキーム7は、リンカーがフェノールエーテルを介して結合している本発明の化合物の調製を概説する。
【0220】
【0221】
このスキームにおいて、フェノール18を、好適な塩基、例えばMeLiを使用して脱プロトン化し、次いで、既知のバリン-アラニン-PAB-臭化物化合物27と反応させて(国際公開第2018/035391号)、化合物28を得る。両方のBoc保護基をTFAで処置することによって除去し、続いて、脂肪族アミンのBoc保護基を、DIPEAの存在下で(Boc)2Oで処置することによって置き換えて化合物29を得る。この化合物を、カップリング剤としてEDCIを使用して5-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-1H-インドール-2-カルボン酸と反応させて、30を生成する。Boc保護基をTFAで除去し、アミンを市販されているNHSエステル31と反応させ、ペイロード-リンカー化合物32を得る。
【0222】
スキーム8は、リンカーがアミノカルバメートを介して結合している本発明の化合物の調製を概説する。
【0223】
【0224】
化合物33を、塩基としてのピリジンの存在下で既知のジスルフィドクロロホルメート試薬34(ACS Med.Chem.Lett.(2016)7,988))と反応させ、本発明の化合物35を得る。
【0225】
これらの例は、リンカーがin vivoでの選択的な代謝または反応のための特定の官能基を含むべきであることを例示するのにも役立つ。例としては、リソソーム酵素によって認識されるジペプチド(例えば、カテプシンに対して認識される開裂部位であるバリン-シトルリンまたはバリン-アラニンジペプチド)または高レベルの細胞内還元剤、例えばグルタチオンに曝露された場合に開裂するジスルフィド結合がある。リンカーは、抗体への結合を可能にする官能基、例えば、チオール、例えば、抗体鎖内ジスルフィド結合の還元によって生成されたもの、または位置選択的に改変された抗体において遺伝子操作されたシステイン残基上のものと選択的に反応するマレイミドも含んでいるべきである。
【0226】
ペイロードをリンカーに結合させるための代替の位置は、側鎖Y内の官能基にある。このアプローチは、X=OHまたはX=プロドラッグOHである場合に使用することができる。後者の場合において、プロドラッグは、以下のスキーム9において示すように、通常、アルキル化サブユニットに導入されてから側鎖が結合される。
【0227】
【0228】
スキーム9は、リンカーを、カルバメートを介して側鎖に結合させる本発明の化合物の調製を概説する。このスキームにおいて、アルキル化サブユニットのフェノールはカルバメートプロドラッグとして保護される。化合物18をDMAPの存在下で4-メチルピペラジンカルボニル塩化物と反応させ、化合物36を得る。Boc保護基を、HClを使用して除去し、中間体を、カップリング試薬としてEDCIを使用して5-(2-(メチルアミノ)エトキシ)-1H-インドール-2-カルボン酸と反応させて、化合物37を得る。上述の活性化リンカー25との反応によって薬物-リンカー38を得る。
【0229】
プロドラッグがホスフェートOP(O)(OH)2である場合、合成は、リン酸エステル脱保護の最終的なステップまでホスフェートエステル中間体OP(O)(OR4)2を使用して好ましくは進行する。側鎖Yへの結合において、リンカーを側鎖に結合させる方法に関しては多くの融通性が存在する。結合は、上記のスキームで示したようにトレースレスであってもよく、好適な側鎖官能基としては、アルコール(カルバメート結合に関して)、第一級および第二級アミン(カルバメート結合に関して)、第三級アミン(第四級塩結合に関して)およびチオール(ジスルフィド結合に関して)がある。これらの官能基は、同定された置換基位置のいずれかにおいて側鎖に結合させてもよい。結合はまた、トレースレスではないものであってもよく、すなわちADCから開裂した後、ペイロードはリンカーのフラグメントが含まれたままである。このアプローチは、リンカーフラグメントが構造のものであり、ペイロードによってDNAのアルキル化が干渉されない、すなわち放出される種の細胞毒性に有害な影響を与えない位置にある場合、好適である。この限定の範囲内で、非トレースレスリンカーを、すでに定義されている任意のタイプの側鎖反応性部分RMに結合させてもよい。
5.4 本発明の化合物の使用
本発明の化合物は、ADCおよび他の生物学的な活性化合物の調製に使用するための、細胞毒性の高いペイロードまたはペイロード構成要素を含む。
【0230】
2-メチルベンゾオキサゾールサブユニットがDNA副溝結合ユニットに結合している本発明の化合物は、リンカーを介して、抗体または他のリガンド結合基を結合させることによってADCに変換することができる。リンカーは、ヒドロキシルまたはアミノ基Xを介してDNAアルキル化サブユニットに直接結合させても、DNA副溝結合ユニットを介して間接的に結合させてもよい。
【0231】
結合リガンド(例えば、抗体)および適切なリンカーは、ADCが意図する特定の臨床適用のために選択してもよい。リンカーの性質は、コンジュゲートの薬物動態特性に影響を与える場合があるため、使用することになる結合リガンドとの適合性、およびコンジュゲート全体の薬理学的要件に関して選択するべきである。リンカーは、ストレッチャーユニット、スペーサーユニットおよび溶解性を高めるための部分を含んでいてもよい。
【0232】
そのようなリンカー基、ストレッチャーユニット、およびスペーサーユニットの例としては、これらに限定されるものではないが、米国特許第7,964,566B2号および同第2017/0232108A1号に記載されているものがあり、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0233】
1つの態様において、本発明は、ADCの調製における式I、Ia、II、IIa、IIIまたはIIIaの化合物の使用を提供する。
別の態様において、本発明は、ADCまたはADC構成成分を作製する方法であって、式I、Ia、II、IIa、IIIまたはIIIaの化合物をリンカーまたはリンカー-抗体部分と反応させることを含む方法を提供する。
【0234】
新規の2-メチルベンゾオキサゾールDNAアルキル化ユニットは、例6および24において実証されたように、多くのデュオカルマイシン類似体に存在し広範囲に使用されているCBIアルキル化ユニットよりも親油性がはるかに低い。
【0235】
これにより、ペイロード構成成分が抗体-リンカー構成成分をコンジュゲートさせるために使用する水性溶媒中により溶解性となるために、対応するADCの製造は容易になるであろう。ペイロードの親油性が低くなると、ADCの凝集も低下することになり、製造がさらに単純化することになる。凝集が低下すると、in vivoでの免疫応答のリスクが低下することになり、ADCの親油性が低下すると、血流からのクリアランスが長くなり、したがって全体的な曝露は大きくなることになる。要約すると、2-メチルベンゾオキサゾール系のペイロードによって、より作製が簡単で安全で有効なADCを生成することになる。
【0236】
デュオカルマイシンの2-メチルベンゾオキサゾール類似体をベースとするDNAアルキル化剤は細胞毒性の高い化合物である。これは、本発明の化合物とseco-CBI-TMIとを比較する細胞毒性試験を記載する例7および25において実証される。後者は、ADCペイロードとしての適用に関して十分な細胞毒性効力を有するとして広範囲に認識されている。seco-CBI-TMIと本発明の化合物との間の最も近い比較を化合物23で行った。化合物23は同じ副溝結合側鎖(すなわちTMI)を共有するため、これらの2つの化合物を直接突き合わせて比較することができ、同等の細胞毒性効力が実証される。本発明の化合物の細胞毒性が高いことは非常に驚くべきものである。2-メチルベンゾオキサゾール類似体の構造は、既知のCOIデュオカルマイシン類似体と密接に関連する(Bioorg.Med.Chem.Lett.(2010)20,1854)。seco-COI-TMIで示されるように、これらの構造の唯一の違いは、オキサゾール環縮合の配向、および2-置換基の特質(Me対CO2Me)である。それにもかかわらず、COIデュオカルマイシン類似体は、CBI類似体よりも細胞毒性が数百倍低いため、COI類似体はADCペイロードとしての使用に不適切となる。
【0237】
【0238】
本発明の2-メトキシベンゾオキサゾールデュオカルマイシン類似体の別の利点は、例8および26において実証されるように、それが生理学的条件下、水性緩衝液中で急速に加水分解を受けて、不活性生成物を形成することである。
【0239】
これは、循環において非常に長く存続する可能性が低く、したがって、ADCからの全身性の放出が生じた場合、これらは関連する機序以外の毒性をもたらす可能性が低いことを意味する。デュオカルマイシン類似体の細胞毒性と水性安定性とは相関するということが見い出されているために、この安定性特性も非常に驚くべきものである。言い換えれば、以前に報告されている大部分の細胞毒性類似体(CBIを含む)の全てもほぼ安定しており、その結果、以前に報告されている類似体の全てが、全身循環に放出された場合、不所望の副作用をもたらす潜在力を有する。
【0240】
本発明の化合物は、ADCに組み込まれることになるペイロードとして主に有用であるが、いくつかの実施形態において、これらは療法薬としてそれ自体だけで使用してもよい。その結果、本発明はさらに、式I、Ia、II、IIa、IIIまたはIIIaの化合物、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0241】
「薬学的に許容される担体」という用語は、式I、Ia、II、IIa、IIIまたはIIIaの化合物とともに対象に投与してもよい担体(例えばアジュバントまたはビヒクル)を指し、これは一般的に安全であり、非毒性であり、生物学的に不所望のものでもその他の不所望のものでもなく、獣医用ならびにヒト医薬用途に好適な担体を含む。
【0242】
組成物において使用してもよい薬学的に許容される担体としては、これらに限定されるものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、自己乳化薬物送達システム(SEDDS)、例えばd-a-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート、医薬剤形において使用される界面活性剤、例えばTweenまたは他の同様の高分子送達マトリックス、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の一部のグリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素ジナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂がある。シクロデキストリン、例えば、α-、β-、およびγ-シクロデキストリン、または化学的に改変された誘導体、例えば、2-および3-ヒドロキシプロピル-3-シクロデキストリンを含むヒドロキシアルキルシクロデキストリン、または他の可溶化された誘導体も、送達を強化するために有利には使用してもよい。油性溶液または懸濁液も、長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤、またはカルボキシメチルセルロースまたは同様の分散剤を含んでいてもよく、これらは、薬学的に許容される剤形、例えばエマルションおよびまたは懸濁液の製剤において通常使用される。
【0243】
本発明の医薬組成物は、単回用量としてまたは複数回用量スケジュールで、単独の治療剤、または1つもしくは複数の追加の治療剤と組み合わせて同時に、連続的に、もしくは個別に投与してもよい。1つまたは複数の追加の治療剤は、処置されることになる疾患もしくは状態、または他の所望の治療的利点に依存することになる。当業者であれば既知であろうように、1つまたは複数の追加の治療剤は、特定の薬剤に関して表示されているかまたは承認された治療量で使用することができる。
【0244】
医薬組成物は、これらに限定されないが、経口または非経口(局在、皮下、筋肉内および静脈内を含む)投与を含む任意の選択された経路によって対象に投与するのが可能になるように製剤化される。いくつかの実施形態において、組成物は、経口、静脈内、皮下、筋肉内、経皮、腹腔内、または他の薬理学的に許容される経路で投与するために製剤化される。例えば、組成物は、意図する投与経路および標準的な製薬慣行に関して選択された適切な薬学的に許容される担体(賦形剤、希釈剤、助剤、およびこれらの組合せを含む)とともに製剤化してもよい。例えば、組成物は、散剤、液剤、錠剤もしくはカプセル剤として経口で、または軟膏剤、クリーム剤もしくはローション剤として局在的に投与してもよい。好適な製剤は、必要に応じて、乳化剤、抗酸化剤、香味料または着色剤を含む追加の薬剤を含んでいてもよく、即時-、遅延性-、改変-、持続性-、パルス-または制御放出に適応してもよい。
【0245】
組成物は、非経口経路を介して投与してもよい。非経口剤形の例としては、活性薬剤の水溶液、等張生理食塩水または5%グルコース、または他の周知の薬学的に許容される賦形剤がある。例えば、シクロデキストリン、または当業者に周知の他の可溶化剤を、治療剤を送達するための医薬賦形剤として利用してもよい。
【0246】
経口投与に好適な剤形の例としては、これらに限定されるものではないが、組成物の治療有効量を提供することができる、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、もしくは類似の形態、または任意の液体形態、例えば、シロップ剤、水性溶液剤、エマルション剤などがある。カプセル剤は、任意の標準的な薬学的に許容される材料、例えば、ゼラチンまたはセルロースを含んでいてもよい。錠剤は、活性成分の混合物と固体担体および滑沢剤とを圧縮することによって従来の手順に従って製剤化してもよい。固体担体の例としては、デンプンおよび糖ベントナイトがある。活性成分はまた、結合剤、例えば、ラクトースまたはマンニトール、従来のフィラー、および打錠剤を含む、ハードシェル錠剤またはカプセル剤の形態で投与してもよい。
【0247】
剤形に好適な経皮投与の例としては、これらに限定されるものではないが、経皮皮膚パッチ、経皮絆創膏などがある。
組成物の局在投与に好適な剤形の例としては、皮膚に直接適用するか、パッド、パッチなどの手段を介して適用するかにかかわらず、任意のローション剤、スティック剤、噴霧剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ゲル剤などがある。
【0248】
組成物の坐剤投与に好適な剤形の例には、身体の開口部へ挿入する任意の固体剤形、特に、経直腸で、経膣でおよび尿道で挿入するものが含まれる。
組成物の注射に好適な剤形の例には、ボーラスを介した送達、例えば、静脈内注射、皮下、真皮下、および筋肉内投与または経口投与による単回または複数回の投与が含まれる。
【0249】
組成物のデポー投与に好適な剤形の例としては、活性物質が、生分解性ポリマー、マイクロエマルション、リポソームのマトリックス中に封入されているか、またはマイクロカプセル化されているペレットもしくは固体形態がある。
【0250】
組成物のための注入デバイスの例としては、所望の回数の投薬または定常状態投与を提供するための注入ポンプがあり、埋め込み型薬物ポンプがある。組成物のための埋め込み型注入デバイスの例としては、活性物質が、生分解性ポリマーまたは合成ポリマー、例えば、シリコーン、シリコーンゴム、シラスティックもしくは同様のポリマー内にカプセル化されているかまたは全体にわたって分散されている任意の固体形態がある。
【0251】
組成物の経粘膜送達に好適な剤形の例としては、浣腸用溶液(depositories solutions for enemas)、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、噴霧溶液、粉末および同様の製剤があり、活性成分に加えて、適切であることが当技術分野において既知の担体を含む。そのような剤形には、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒中の溶液および/もしくは懸濁液、またはこれらの混合物、および/または粉末を含む組成物を含む、組成物の吸入または吹入に好適な形態が含まれる。組成物の経粘膜投与には任意の粘膜を利用してもよいが、鼻、頬、膣および直腸組織が通常利用される。組成物の経鼻投与に好適な製剤は、液体形態、例えば、鼻腔用スプレー、点鼻で、またはポリマー粒子の水性または油性溶液を含むネブライザーによるエアロゾル投与によって投与してもよい。製剤は、例えば、ベンジルアルコールまたは他の好適な防腐剤、バイオアベイラビリティを強化するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当技術分野において既知の他の可溶化剤もしくは分散剤を用いた溶液である生理食塩水中の水溶液として調製してもよい。
【0252】
組成物の経頬または舌下投与に好適な剤形の例としては、トローチ剤、錠剤などがある。組成物の眼投与に好適な剤形の例としては、薬学的に許容される水性または有機溶媒中の溶液および/または懸濁液を含む挿入物および/または組成物がある。
【0253】
組成物の製剤の例は、例えば、Sweetman,S.C.(Ed.).Martindale.The Complete Drug Reference,33rd Edition,Pharmaceutical Press,Chicago,2002,2483 pp.;Aulton,M.E.(Ed.)Pharmaceutics.The Science of Dosage Form Design.Churchill Livingstone,Edinburgh,2000,734 pp.;およびAnsel,H.C,Allen,L.V.and Popovich,N.G.Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th Ed.,Lippincott 1999,676 ppで見出すことができる。薬物送達システムの製造において用いられる賦形剤は、当業者であれば既知であるさまざまな出版物に記載されており、例えば、Kibbe,E.H.Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd Ed.,American Pharmaceutical Association,Washington,2000,665 pp.がある。USPは、錠剤またはカプセル剤として製剤化されたものを含む、放出調節経口剤形の例も提供する。例えば、米国薬局方23/National Formulary 18,The United States Pharmacopeial Convention,Inc.,Rockville MD,1995(以下「USP」)を参照されたく、これも、徐放性および遅延放出錠剤およびカプセル剤の薬物を放出する能力を決定するための特定の試験を記載している。徐放性および遅延放出物品のための薬物放出に関するUSP試験は、経過試験時間に対する投薬単位からの薬物溶解に基づいている。さまざまな試験装置および手順の説明は、USPで見出すことができる。持続放出剤形の分析に関するさらなるガイダンスは、F.D.A.によって提供されている(産業向けガイダンス、Extended release oral dosage forms:development,evaluation,and application of in vitro/in vivo correlations. Rockville,MD:Center for Drug Evaluation and Research,Food and Drug Administration,1997を参照のこと)。
【0254】
本明細書において記載する剤形は、処置されることになる対象のための単回投薬としての使用に好適な物理的に個別単位の形態であってもよく、各単位は、所望の治療効果を生成するように計算された所定の量の活性材料を含む。
【0255】
医薬組成物における活性成分の投薬量レベルは、患者に対する毒性を示すことなく、特定の患者、組成物、および投与様式に関して所望の治療効果を達成するのに効果的な量(有効量)の活性成分が提供されるように多様であってもよい。
【0256】
選択される投薬量レベルは、用いられる特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、用いられる特定の本発明の化合物の排出速度、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康および過去の既往歴、ならびに医学分野において周知の同様の因子を含むさまざまな薬物動態学的因子に依存することになる。一般的に、1日の量またはレジメンは、体重1キログラム(kg)あたり本発明の化合物約0.01mgから約2000mgの範囲であるべきである。
【実施例】
【0257】
6.実施例
一般的方法および材料
全ての試薬は試薬グレードとして購入し、さらに精製することなく使用した。反応のための溶媒は、標準的な手順に従って使用前に蒸留した。石油エーテルは、bp40~60℃を有する画分を指す。溶媒は標準的な手順に従って、すなわち無水Na2SO4またはMgSO4で乾燥させた。カラムクロマトグラフィーはシリカゲル(Merck 230~400メッシュ)上で行った。
【0258】
NMRスペクトルは、1HについてBruker Avance 400MHz装置で、13Cスペクトルについて100MHzで記録した。化学シフトは、百万分率(ppm)で報告し、1Hスペクトルでは内部標準としてのテトラメチルシラン(0ppm)に対して、13Cスペクトルでは残留溶媒に対して較正される。多重度は以下のように報告する:br=幅広、s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線、dd=二重線の二重線、dt=三重線の二重線、ddd=二重線の二重線の二重線。高分解能質量スペクトル(HRMS)は、Bruker microTOF-Q IIまたはAgilent 6530B Accurate Mass Q-TOF質量分析計を使用して取得した。LRMSは、Surveyor MSQ質量分析計を用いて実施した。
【0259】
代替的な一般的方法および材料が示されない限り、上記の一般的材料および方法は、下記の実施例の全てに適用可能である。
実施例1
tert-ブチル6-メチル-4-オキソ-8,8a-ジヒドロ-1H-シクロプロパ[c]オキサゾロ[4,5-e]インドール-2(4H)-カルボキシレート(50)
【0260】
【0261】
H2O(10mL)中のNaH2PO4・2H2O(4.29g、27.5mmol)の溶液を、DMSO(25mL)中の3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロベンズアルデヒド 39(5.03g、27.5mmol)の溶液に添加した。撹拌混合物に、内部温度を45℃未満に保ちながらH2O(25mL)中のNaClO2(80%、4.35g、38.5mmol)の溶液を50分間かけて滴下添加した。暗赤褐色混合物を室温で16時間撹拌し、次いでNaHCO3水溶液(5%、80mL)に注ぎ入れた。混合物をCH2Cl2(×2)で洗浄し、水相をc.HClで酸性化してpH約1にした。混合物をEtOAc(×3)で抽出し、合わせた抽出物をブラインで洗浄し、次いで乾燥させ、蒸発させて、3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロ安息香酸(40)を黄褐色固体(5.12g、94%)として得た;
【0262】
【0263】
MeOH(60mL)およびc.H2SO4(1.5mL)中の40(3.99g、20.0mmol)の混合物を、19時間還流撹拌し、次いで冷却し、蒸発させた。残留物をEtOAcとブラインとの間で分配した(×2)。EtOAc抽出物を乾燥させ、蒸発させ、得られた固体をH2Oから再結晶して、メチル3,4-ジヒドロキシ-5-ニトロベンゾエート(41)を橙褐色結晶性固体(3.30g、77%)として得た;mp137~139℃;
【0264】
【0265】
ジオキサン中HCl(4M、2.94mL、11.8mmol)およびPd/C(10%、0.25g)を、EtOH(35mL)中の41(2.51g、11.8mmol)の溶液に添加した。混合物を窒素で脱気し、水素でフラッシュし、次いで還元が完了するまで(約8時間)水素バルーン下で撹拌した。混合物をCeliteに通して濾過し、EtOHで洗浄し、濾液を蒸発させて、メチル3-アミノ-4,5-ジヒドロキシベンゾエート塩酸塩(42)を淡黄色固体(3.0g)として得、これを次のステップで直接使用した。[M+H]+の分析(C8H10NO4)計算値184.1;実測値184.1。
【0266】
オルト酢酸トリメチル(13.6mL、107mmol)を、上記のように調製した42の一部(2.71g)に添加した。懸濁液を1時間還流撹拌し、次いで冷却し、石油エーテルで希釈した。沈殿物を濾別し、乾燥させて、メチル7-ヒドロキシ-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-カルボキシレート(43)を薄黄褐色固体(41から2.02g、91%)として得た;
【0267】
【0268】
[M+H]+の分析(C10H9NO4)計算値208.06043;実測値208.06061。
臭化ベンジル(98%、1.24mL、10.2mmol)およびK2CO3(1.48g、10.7mmol)を、DMF(20mL)中の43(2.02g、9.75mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で18時間撹拌した。混合物をH2Oで希釈し、固体を濾別し、乾燥させて、メチル7-(ベンジルオキシ)-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-カルボキシレート(44)(2.81g、97%)を薄黄褐色固体として得た;
【0269】
【0270】
[M+H]+の分析(C17H15NO4)計算値298.10738;実測値298.10834。
H2O(15mL)中のKOH(1.62g、29.1mmol)の溶液を、MeOH(60mL)中の44(2.79g、9.38mmol)の懸濁液に添加し、混合物を70℃で40分間撹拌した。MeOHを蒸発させ、水性残留物を0℃にてHCl水溶液(2N、12mL)で酸性化した。沈殿した固体を濾別し、乾燥させて、7-(ベンジルオキシ)-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-カルボン酸(45)をオフホワイトの固体(2.62g、98%)として得た;
【0271】
【0272】
[M+H]+の分析(C16H13NO4)計算値284.09173;実測値284.09164。
Et3N(1.54mL、11.1mmol)およびDPPA(97%、2.25mL、10.1mmol)を、乾燥tert-BuOH(80mL)中の45(2.61g、9.21mmol)の懸濁液に添加し、混合物を3時間還流撹拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 9:1、次いで4:1)により精製して、tert-ブチル(7-(ベンジルオキシ)-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)カルバメート(46)をクリーム色固体(2.44g、75%)として得た;
【0273】
【0274】
[M+H]+の分析(C20H22N2O4)計算値355.1652;実測値355.1668。試料をEtOAc/石油エーテルから再結晶して、白色針状物、mp150~152℃を得た。
【0275】
NBS(1.16g、6.52mmol)を、0℃のCH3CN(100mL)中の46(2.31g、6.52mmol)の溶液に10分間かけて少量ずつ添加した。混合物を室温で3時間撹拌し、次いで溶媒を蒸発させた。残留物をEtOAcに溶解し、溶液をH2O(×2)で、次いでブラインで洗浄し、次いで乾燥させ、蒸発させた。得られたクリーム色固体をEtOAc/石油エーテルから再結晶して、tert-ブチル(7-(ベンジルオキシ)-4-ブロモ-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)カルバメート(47)を白色固体(2.15g、76%)として得た;mp154~156℃;
【0276】
【0277】
[M+H]+の分析(C20H21
79BrN2O4)計算値433.0757;実測値433.0762;[M+H]+の(C20H21
81BrN2O4)計算値435.0740;実測値435.0745。母液を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 4:1)により精製して、さらなる47(0.60g、21%)を得た。
【0278】
1,3-ジクロロプロペン(混合異性体、90%、1.92mL、18.6mmol)およびK2CO3(4.3g、31mmol)を、DMF(12mL)中の47(2.69g、6.21mmol)の溶液に添加し、混合物を80℃で7時間撹拌した。DMFを蒸発させ、残留物をEtOAcとH2Oとの間で分配した。水層をEtOAc(×2)で再度抽出し、合わせたEtOAc層をブライン(×3)で洗浄し、次いで乾燥させ、蒸発させて、粗製のtert-ブチル(7-(ベンジルオキシ)-4-ブロモ-2-メチルベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)(3-クロロアリル)カルバメート(48)を薄褐色ガム状物(3.21g、100%)として得た;
【0279】
【0280】
[M+H]+の分析(C23H24
79BrClN2O4)計算値507.06807;実測値507.06909。
Bu3SnH(97%、1.09mL、3.92mmol)およびAIBN(64mg、0.39mmol)を、窒素下、乾燥トルエン(15mL)中の48(995mg、1.96mmol)の溶液に添加し、混合物を還流撹拌した。さらなる分量のBu3SnH(97%、0.54mL、2.0mmol)およびAIBN(32mg、0.2mmol)を1.5および3時間後に添加した。4時間後、トルエンを蒸発させ、残留物をCH3CNと石油エーテルとの間で分配した。石油エーテル層をCH3CN(×2)で再度抽出し、合わせた抽出物を石油エーテル(×2)で洗浄し、次いで蒸発させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 9:1、次いで6:1)により精製して、粗生成物を白色泡状物として得た。これを石油エーテル(8mL)とともに撹拌して、tert-ブチル4-(ベンジルオキシ)-8-(クロロメチル)-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-カルボキシレート(49)を白色固体(668mg、80%)として得た;mp142~143℃;
【0281】
【0282】
[M+H]+の分析(C23H25ClN2O4)計算値429.15756;実測値429.15735。
NH4HCO2の水溶液(25%、3.9mL、15.4mmol)およびPd/C(10%、53%H2Oで湿潤させた、0.13g)を、0℃の窒素下、THF(10mL)中の48(660mg、1.54mmol)の溶液に添加し、混合物をこの温度で激しく撹拌した。さらなる分量のNH4HCO2水溶液(25%、3.9mL、15.4mmol)およびPd/C(10%、53%H2Oで湿潤させた、0.13g)を3時間後に添加した。7時間後、混合物をCeliteに通して濾過し、EtOAcで洗浄した。濾液からのEtOAc層をブラインで洗浄し、次いで乾燥させ、蒸発させた。残留物をEtOAc/石油エーテルから再結晶して、tert-ブチル8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-カルボキシレート(18)を白色固体(444mg、85%)として得た;mp234~238℃;
【0283】
【0284】
[M+H]+の分析(C16H19ClN2O4)計算値339.11061;実測値339.11149。
K2CO3(41mg、0.3mmol)を、DMF(1mL)中の18(67mg、0.2mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で3.5時間撹拌し、次いでEtOAcおよびH2Oで希釈した。EtOAc層をブライン(×3)で洗浄し、次いで乾燥させ、蒸発させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:EtOAc 2:3、次いで1:4)により精製して、50を無色油状物(22mg、37%)として得た;
【0285】
【0286】
[M+H]+の分析(C16H18N2O4)計算値303.13393;実測値303.13458。
実施例2
(8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-イル)(5,6,7-トリメトキシ-1H-インドール-2-イル)メタノン(23)
【0287】
【0288】
49(51mg、0.12mmol)およびジオキサン中HCl(4M、1mL)の混合物を、室温で3時間撹拌し、次いで蒸発させた。残留物をDMA(1.5mL)中に懸濁させ、5,6,7-トリメトキシ-1H-インドール-2-カルボン酸(31.4mg、0.13mmol)およびEDCI.HCl(46mg、0.24mmol)を添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで希NaHCO3水溶液を添加した。沈殿した固体を濾別し、H2Oで洗浄し、乾燥させた。粗生成物をEtOAcから再結晶して、(4-(ベンジルオキシ)-8-(クロロメチル)-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-イル)(5,6,7-トリメトキシ-1H-インドール-2-イル)メタノン(51)をオフホワイトの固体(34mg、51%)として得た;mp225~227℃;
【0289】
【0290】
[M+H]+の分析(C30H28ClN3O6)計算値562.17394;実測値562.17311。
NH4HCO2の水溶液(25%、0.14mL、0.55mmol)およびPd/C(10%、53%H2Oで湿潤させた、34mg)を、0℃の窒素下、THF(20mL)中の51(31mg、0.055mmol)の溶液に添加し、混合物をこの温度で激しく撹拌した。さらなるNH4HCO2水溶液(25%、0.28mL、1.1mmol)およびPd/C(10%、53%H2Oで湿潤させた、35mg)を1時間後に添加した。2時間後、混合物をCeliteに通して濾過し、THFで洗浄し、濾液を30℃で蒸発乾固させた。残留物をH2Oで摩砕し、固体を濾別し、乾燥させた。EtOAcでさらに摩砕して、23を白色固体(21mg、81%)として得た;mp285℃(dec);
【0291】
【0292】
[M+H]+の分析(C23H22ClN3O6)計算値472.12699;実測値472.12694。
実施例3
(8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-イル)(5-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-1H-インドール-2-イル)メタノン(52)
【0293】
【0294】
18(33mg、0.097mmol)およびジオキサン中HCl(4M、1mL)の混合物を、室温で4時間撹拌し、次いで蒸発させた。残留物をDMA(1.0mL)中に懸濁させ、5-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-1H-インドール-2-カルボン酸塩酸塩(34mg、0.12mmol)、EDCI.HCl(65mg、0.34mmol)、および無水トルエンスルホン酸(3.3mg、0.019mmol)を添加した。混合物を室温で1.5時間撹拌し、次いで氷浴中で冷却した。EtOAc(50mL)およびH2O(10mL)を添加し、pHを、飽和NaHCO3水溶液を使用して8~9に調整した。EtOAc層を分離し、水で洗浄し、次いで乾燥させ、蒸発させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH 10:1)により精製して、52(34mg、75%)を得た;mp206~210℃(dec);
【0295】
【0296】
[M+H]+の分析(C24H25ClN4O4)計算値469.1637;実測値469.1642。
実施例4
N-(2-(8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-カルボニル)-1H-インドール-5-イル)-5-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-1H-インドール-2-カルボキサミド(53)
【0297】
【0298】
18(33mg、0.097mmol)およびジオキサン中HCl(4M、1mL)の混合物を、室温で4時間撹拌し、次いで蒸発させた。残留物をDMA(1.0mL)中に懸濁させ、5-(5-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-1H-インドール-2-カルボキサミド)-1H-インドール-2-カルボン酸塩酸塩(43mg、0.097mmol)、EDCI.HCl(65mg、0.34mmol)、および無水トルエンスルホン酸(3.3mg、0.019mmol)を添加した。混合物を室温で1.5時間撹拌し、次いで氷浴中で冷却した。EtOAc(150mL)およびH2O(50mL)を添加し、pHを、飽和NaHCO3水溶液を使用して8~9に調整した。EtOAc層を分離し、水で洗浄し、次いで乾燥させ、蒸発させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH 10:1、次いで5:1)により精製して、53(46mg、75%)を得た;mp231℃(dec);
【0299】
【0300】
[M+H]+の分析(C33H31ClN6O5)計算値627.2117;実測値627.2119。
実施例5
N-(2-(8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-カルボニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル)-4-ヒドロキシベンズアミド(57)
【0301】
【0302】
DMA(1mL)中のエチル6-アミノイミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-カルボキシレート(54)(50mg、0.24mmol)、4-ヒドロキシ安息香酸(68mg、0.49mmol)、EDCI.HCl(163mg、0.85mmol)、および無水トルエンスルホン酸(8.7mg、0.05mmol)の混合物を、室温で2時間撹拌した。混合物をH2Oで希釈し、EtOAcで抽出した。EtOAc層を乾燥させ、蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(EtOAcのみ、次いでEtOAc:MeOH 10:1)により精製して、エチル6-(4-ヒドロキシベンズアミド)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-カルボキシレート(55)を緑色がかった琥珀色固体(41mg、52%)として得た;mp263~266℃;
【0303】
【0304】
[M+H]+の分析(C17H15N3O4)計算値326.1135;実測値326.1125。
固体KOH(171mg、3.05mmol)を、THF(6mL)、MeOH(6mL)、およびH2O(3mL)中の55(198mg、0.61mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で1時間撹拌し、次いで蒸発させた。残留物を水(10mL)で希釈し、HCl水溶液(5M)でpH<1に酸性化した。固体を濾別し、H2Oで洗浄し、乾燥させて、6-(4-ヒドロキシベンズアミド)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-カルボン酸(56)を黄色固体(143mg、79%)、mp268~271℃として得た;
【0305】
【0306】
[M+H]+の分析(C15H11N3O4)計算値298.0822;実測値298.0818。
18(38mg、0.11mmol)およびジオキサン中HCl(4M、1mL)の混合物を、室温で3時間15分撹拌し、次いで蒸発させた。残留物をDMA(1.0mL)中に懸濁させ、56(28mg、0.093mmol)、EDCI.HCl(63mg、0.33mmol)、および無水トルエンスルホン酸(3.3mg、0.019mmol)を添加した。混合物を室温で1.5時間撹拌した。EtOAc(150mL)およびH2O(50mL)を添加し、EtOAc層を分離し、H2O(×2)で洗浄し、次いで乾燥させ、蒸発させた。残留物をMeOHで摩砕して、57(30mg、63%)を得た;mp232~235℃;
【0307】
【0308】
[M+H]+の分析(C26H20ClN5O5)計算値518.1226;実測値518.1223。
実施例6
本発明の化合物の親油性
親油性は、ChemDraw Professional v.17.0.0ソフトウェアパッケージ(Perkin Elmer Informatics Inc)を使用して、本発明の代表的な化合物について計算した。結果を表1に示す。
【0309】
【0310】
本発明の化合物は、さまざまなDNA副溝結合側鎖を有する:側鎖Aは、デュオカルマイシン天然産物に見出される5,6,7-トリメトキシインドール構造であり;側鎖Bは、ADC BMS-936561のペイロードで使用されており(Biopharm.Drug Disp.(2016)37、93);側鎖Cは、ADC SYD985におけるペイロードseco-DUBAで使用されている(Mol.Pharm.(2015)12、1813)。
【0311】
全ての場合において、2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットを含有する化合物は、seco-CBIアルキル化サブユニットを組み込むものよりも実質的に低いlogP計算値を有し(1.5単位程度)、これは、アルキル化サブユニットがフェノール(X=OH)の形態であるか、アミン(X=NH2)の形態であるかに関わらずあてはまる。
【0312】
ペイロード親油性のこれらの実質的な低下は、2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットを組み込む薬物リンカーおよびADCについての好ましい特性につながる可能性が高い。
【0313】
【0314】
実施例7
細胞毒性
本発明のペイロードの細胞毒性を、2種のヒト腫瘍細胞株、子宮頸癌SiHa、および卵巣癌SKOV3の増殖の阻害を測定することにより決定した。対数期の単層を96ウェルプレート中で5日間、ペイロードに連続的に曝露させ、続いてスルホローダミンB染色を行った。IC50は、細胞密度を同じプレート上の未処置対照の細胞密度の50%まで阻害するために必要とされる薬物濃度として、補間により決定した。全てのプレートは、内部対照として参照化合物seco-CBI-TMIを含んでいた。
【0315】
表2に示したデータは、2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットを含有するDNAアルキル化剤が、nMまたはサブnM範囲の、すなわちADC用途に適していると考えられる範囲内のIC50を有する、細胞毒性の高い化合物であることを示す。
【0316】
重要なことに、化合物23およびseco-CBI-TMIは、同じTMI副溝結合側鎖を有しており、これによって、細胞毒性に対するアルキル化サブユニットの効果の直接比較が可能となる。この比較において、2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットはseco-CBIと同じ細胞毒性を生じるが、このことは、後者がデュオカルマイシン型アルキル化サブユニットの全ての既知のバリアントの中で最も強力なものの1つであるため、注目に値する(J.Med.Chem.(2009)52、5771)。
【0317】
23の顕著な細胞毒性は驚くべきことであり、なぜなら密接に関連する化合物であるseco-COI-TMI(これはオキサゾール環縮合の配向および2-置換基の性質のみが異なる)が、関連する参照化合物と比較した場合に予想されるものの数百分の1の細胞毒性であったからである(Bioorg.Med.Chem.Lett.(2010)20、1854)。
【0318】
【0319】
実施例8
安定性
23および参照化合物seco-CBI-TMIの水性安定性をLC-MS分析により調査した。37℃の10%DMFを含有するトリス緩衝液(pH7.4)中4μMの濃度でペイロードを含有する試料を、300~500分にわたって一定間隔でモニターした。
【0320】
図1に示すように、seco-CBI-TMIは、シクロプロピル形態(CBI-TMI)にクリーンに変換され、これはこれらの条件下で安定であった。これらの観察は、報告されている挙動と一致する(ChemBioChem(2014)15、1998;J.Am.Chem.Soc.(1994)116、7996)。
【0321】
対照的に、
図2に示すように、23もまた、対応するシクロプロピル形態(特徴的なUV-Vis吸収スペクトルおよび質量スペクトルにより同定される)に変換されたが、この化合物はこれらの条件下で安定ではなく、さまざまな生成物に迅速に変換された。主生成物は、水の添加によるシクロプロパンの加水分解、すなわち開環と一致するUV-Vis吸収スペクトルおよび質量スペクトルを有する。そのような生成物は、DNAをアルキル化できず、非毒性と考えることができる。2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットから誘導されるシクロプロピル中間体の不安定性は非常に驚くべきことであり、なぜなら加溶媒分解安定性と細胞毒性効力との間には十分に確立された相関があり、CBIと同じ細胞毒性である全ての他の既知のアルキル化サブユニットは中性pHでの加水分解に対して安定であると報告されているからである(J.Med.Chem.(2009)52、5771)。2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットを含有するペイロードの不安定性は、任意の全身的に放出されるペイロードのための無毒化機序として働くことにより、ADC用途において利点となり得る。
【0322】
実施例9
(E)-1-(8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-イル)-3-(4-メトキシフェニル)プロパ-2-エン-1-オン(58)
【0323】
【0324】
18(31.3mg、0.092mmol)およびジオキサン中HCl(4M、1mL)の混合物を、室温で4時間撹拌し、次いで蒸発させた。残留物をDMA(1.5mL)中に懸濁させ、4-メトキシケイ皮酸(18mg、0.10mmol)およびEDCI.HCl(53mg、0.28mmol)を添加した。混合物を室温で19時間撹拌した。水をゆっくりと添加し、沈殿した固体を濾別し、乾燥させて、58を薄褐色固体(10mg、27%)として得た;
【0325】
【0326】
[M+H]+の分析(C21H19ClN2O4)計算値399.1106;実測値399.1108。
実施例10
(E)-1-(8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-イル)-3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパ-2-エン-1-オン(59)
【0327】
【0328】
18(30.1mg、0.089mmol)およびジオキサン中HCl(4M、1mL)の混合物を、室温で4時間撹拌し、次いで蒸発させた。残留物をDMA(1.0mL)中に懸濁させ、3-ヒドロキシ-4-メトキシケイ皮酸(19mg、0.10mmol)およびEDCI.HCl(51mg、0.27mmol)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌し、次いで水で希釈し、EtOAc(×2)で抽出した。合わせた抽出物を水(×3)およびブラインで洗浄し、次いで乾燥させ、蒸発させた。残留物を少量のEtOAc(約1mL)で摩砕して、59を非常に淡い緑色固体(7.7mg、21%)として得た;
【0329】
【0330】
[M+H]+の分析(C21H19ClN2O5)計算値415.1055;実測値415.1060。
実施例11
(E)-N-(2-(8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-カルボニル)-1H-インドール-5-イル)-3-(4-メトキシフェニル)アクリルアミド(63)
【0331】
【0332】
DMA(4mL)中のエチル5-アミノインドール-2-カルボキシレート(60)(354mg、1.73mmol)、4-メトキシケイ皮酸(309mg、1.73mmol)およびEDCI.HCl(0.67g、3.46mmol)の混合物を、室温で18時間撹拌した。水を添加し、沈殿した固体を濾別し、水で洗浄し、乾燥させた。粗生成物を熱EtOH(40mL)とともに撹拌し、懸濁液を冷却した。固体を濾別し、乾燥させて、エチル(E)-5-(3-(4-メトキシフェニル)アクリルアミド)-1H-インドール-2-カルボキシレート(61)をクリーム色固体(506mg、80%)として得た;mp244~247℃;
【0333】
【0334】
分析(C21H20N2O4・1/4H2O)計算値C、68.37;H、5.60;N、7.59%;実測値C、68.56;H、5.53;N、7.66%。
水(6mL)中のKOH(0.40g、7.1mmol)の溶液を、EtOH(15mL)中の61(480mg、1.32mmol)の懸濁液に添加し、混合物を5分間加熱還流した。溶液を室温に冷却し、HCl水溶液(2N、5mL)で酸性化した。得られた懸濁液を水で希釈し、固体を濾別し、水で洗浄し、乾燥させて、(E)-5-(3-(4-メトキシフェニル)アクリルアミド)-1H-インドール-2-カルボン酸(62)を薄黄褐色固体(414mg、93%)として得た;mp276~279℃;
【0335】
【0336】
分析(C19H16N2O4)計算値C、67.85;H、4.79;N、8.33%;実測値C、68.09;H、4.77;N、8.39%。
18(30.0mg、0.089mmol)およびジオキサン中HCl(4M、1mL)の混合物を、室温で4時間撹拌し、次いで蒸発させた。残留物をDMA(1.0mL)中に懸濁させ、62(33mg、0.10mmol)およびEDCI.HCl(51mg、0.27mmol)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌した。水をゆっくりと添加し、沈殿した固体を濾別し、乾燥させた。粗生成物をEtOAcで摩砕して、63を薄黄褐色固体(24mg、49%)として得た;
【0337】
【0338】
[M+H]+の分析(C30H25ClN4O5)計算値557.1586;実測値557.1593。
実施例12
(8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-イル)(5-メトキシベンゾフラン-2-イル)メタノン(64)
【0339】
【0340】
化合物64は、実施例3および4に記載したものと同じ一般的方法により、18から調製し、灰色固体として単離した;
【0341】
【0342】
[M+H]+の分析(C21H17ClN2O5)計算値413.0899;実測値413.0899。
実施例13
(8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-イル)(5-メトキシベンゾ[b]チオフェン-2-イル)メタノン(65)
【0343】
【0344】
18(40.0mg、0.12mmol)およびジオキサン中HCl(4M、2mL)の混合物を、室温で1.5時間撹拌し、次いで蒸発させた。残留物をDMA(1.5mL)中に懸濁させ、5-メトキシベンゾ[b]チオフェン-2-カルボン酸(25mg、0.12mmol)、EDCI.HCl(68mg、0.36mmol)およびトルエンスルホン酸(4mg、0.024mmol)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌した。水をゆっくりと添加し、沈殿した固体を濾別し、乾燥させた。粗生成物をEtOAcで摩砕して、65をクリーム色固体(35mg、69%)として得た;
【0345】
【0346】
[M+H]+の分析(C21H17ClN2O4S)計算値429.0670;実測値429.0677。
実施例14
(8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-イル)(5-(2-メトキシエトキシ)-1H-インドール-2-イル)メタノン(66)
【0347】
【0348】
18(36mg、0.106mmol)およびジオキサン中HCl(4M、1mL)の混合物を、室温で4時間撹拌し、次いで蒸発させた。残留物をDMA(1.0mL)中に懸濁させ、5-(2-メトキシエトキシ)インドール-2-カルボン酸(27.5mg、0.12mmol)、EDCI.HCl(61mg、0.32mmol)およびトルエンスルホン酸(3.7mg、0.021mmol)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌した。水をゆっくりと添加し、沈殿した固体を濾別し、水で洗浄し、乾燥させた。粗生成物をEtOAcで摩砕して、66を灰色固体(28mg、58%)として得た;
【0349】
【0350】
[M+H]+の分析(C23H22ClN3O5)計算値456.1321;実測値456.1323。
実施例15
N-(2-(8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-カルボニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)アセトアミド(70)
【0351】
【0352】
塩化アセチル(0.12mL、1.7mmol)を、0℃のCH2Cl2(8mL)およびTHF(10mL)中のメチル5-アミノ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-カルボキシレート(67)(165mg、0.86mmol)およびEt3N(0.36mL、2.6mmol)の混合物に添加した。氷浴を取り外し、混合物を1時間撹拌し、次いで水で希釈した。有機溶媒を蒸発させると、水性懸濁液が残った。固体を濾別し、乾燥させて、メチル5-アセトアミド-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-カルボキシレート(68)を白色固体(178mg、89%)として得た;
【0353】
【0354】
[M+H]+の分析(C11H11N3O3)計算値234.0873;実測値234.0868。
水(3mL)中のKOH(205mg、3.6mmol)の溶液を、MeOH(6mL)中の68(167mg、0.72mmol)の懸濁液に添加し、混合物を2分間加熱還流し、次いで室温に冷却した。HCl水溶液(2N、1.6mL)を添加し、沈殿した固体を濾別し、乾燥させて、5-アセトアミド-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-カルボン酸(69)をクリーム色固体(134mg、85%)として得た;
【0355】
【0356】
[M+H]+の分析(C10H9N3O3)計算値220.0717;実測値220.0712。
18(39mg、0.12mmol)およびジオキサン中HCl(4M、2mL)の混合物を、室温で1.5時間撹拌し、次いで蒸発させた。残留物をDMA(1.0mL)中に懸濁させ、69(25mg、0.12mmol)、EDCI.HCl(66mg、0.36mmol)およびトルエンスルホン酸(15mg、0.09mmol)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌した。水をゆっくりと添加し、沈殿した固体を濾別し、水で洗浄し、乾燥させた。粗生成物をEtOAcで摩砕して、70を褐色固体(31mg、61%)として得た;
【0357】
【0358】
[M+H]+の分析(C21H18ClN5O4)計算値440.1120;実測値440.1123。
実施例16
N-(2-(8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-カルボニル)イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル)アセトアミド(74)
【0359】
【0360】
塩化アセチル(0.11mL、1.6mmol)を、室温のCH2Cl2(10mL)中のエチル6-アミノイミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-カルボキシレート(71)(161mg、0.78mmol)およびEt3N(0.33mL、2.3mmol)の混合物に添加した。5分間撹拌した後、混合物を水で希釈し、有機溶媒を蒸発させると、水性懸濁液が残った。固体を濾別し、乾燥させ、次いでEtOAcで摩砕して、エチル6-アセトアミドイミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-カルボキシレート(72)を薄緑色固体(99mg、51%)として得た;
【0361】
【0362】
[M+H]+の分析(C12H13N3O3)計算値248.1030;実測値248.1021。
水(3mL)中のKOH(122mg、2.2mmol)の溶液を、MeOH(5mL)中の72(96mg、0.39mmol)の懸濁液に添加し、混合物を室温で4時間撹拌した。MeOHを蒸発させ、水性残留物をHCl(2N、1.0mL)で酸性化した。沈殿した固体を濾別し、乾燥させて、6-アセトアミドイミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-カルボン酸(73)を薄褐色固体(71mg、83%)として得た;
【0363】
【0364】
[M+H]+の分析(C10H9N3O3)計算値220.0717;実測値220.0709。
18(43mg、0.13mmol)およびジオキサン中HCl(4M、1mL)の混合物を、室温で3.5時間撹拌し、次いで蒸発させた。残留物をDMA(1.0mL)中に懸濁させ、73(27.8mg、0.13mmol)、EDCI.HCl(73mg、0.39mmol)およびトルエンスルホン酸(4.4mg、0.03mmol)を添加した。混合物を室温で3時間撹拌した。水をゆっくりと添加して、エマルジョンを得た。NaHCO3水溶液を添加し、混合物をEtOAc(×4)で抽出した。合わせた抽出物を水およびブラインで洗浄し、次いで乾燥させ、蒸発させた。残留物をEtOAcで摩砕して、74をオフホワイトの固体(25.5mg、46%)として得た;
【0365】
【0366】
[M+H]+の分析(C21H18ClN5O4)計算値440.1120;実測値440.1139。
実施例17
4-アセトアミド-N-(2-(8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-カルボニル)-1H-インドール-5-イル)-1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド(79)
【0367】
【0368】
Pd/C(10%、90mg)を、EtOH(25mL)中のエチル1-メチル-4-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキシレート(75)(254mg、1.28mmol)の溶液に添加し、混合物を344.74kPa(50psi)で2時間水素化した。混合物をCeliteに通して濾過し、EtOAcで洗浄し、濾液を蒸発させた。残留物をCH2Cl2(6mL)に溶解し、溶液を氷浴中で冷却した。Et3N(0.54mL、3.8mmol)および塩化アセチル(0.18mL、2.6mmol)を添加し、氷浴を取り外した。混合物を10分間撹拌し、次いで水で希釈し、CH2Cl2(×2)で抽出した。抽出物を希HCl水溶液および水で洗浄し、次いで乾燥させ、蒸発させた。残留物をEtOHから再結晶して、エチル4-アセトアミド-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキシレート(76)を淡黄色固体(65mg、24%)として得た;mp165~168℃。液-液抽出からの水相をNaHCO3水溶液で塩基性化し、EtOAc(×4)で抽出した。抽出物を乾燥させ、再結晶からの母液と合わせ、蒸発させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル 1:1、次いで4:1、次いでEtOAcのみ)により精製して、さらなる76(139mg、52%)を得た;
【0369】
【0370】
[M+H]+の分析(C9H13N3O3)計算値212.1030;実測値212.1026。
水(2mL)中のKOH(218mg、3.9mmol)の溶液を、MeOH(4mL)中の76(185mg、0.88mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で30分間撹拌した。MeOHを蒸発させ、水層をHCl水溶液(2N、1.3mL)で中和し、次いで蒸発乾固させた。アミノインドール 60(179mg、0.88mmol)、EDCI.HCl(0.50g、2.6mmol)およびDMA(2mL)を添加し、混合物を室温で29時間撹拌した。混合物を水で希釈し、EtOAc(×2)で抽出した。抽出物を水(×3)で洗浄し、次いで乾燥させ、蒸発させた。残留物をEtOAcで摩砕して、エチル5-(4-アセトアミド-1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド)-1H-インドール-2-カルボキシレート(77)をクリーム色固体(2ステップにわたって59mg、18%)として得た;
【0371】
【0372】
[M+H]+の分析(C18H19N5O4)計算値370.1510;実測値270.1505。
水(1mL)中のKOH(89mg、1.6mmol)の溶液を、MeOH(8mL)中の77(54mg、0.15mmol)の懸濁液に添加し、混合物を50℃で3時間、次いで還流で1.5時間撹拌した。混合物を冷却し、MeOHを蒸発させ、水性残留物をHCl水溶液(2N、0.8mL)で酸性化した。沈殿した固体を濾別し、乾燥させて、5-(4-アセトアミド-1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド)-1H-インドール-2-カルボン酸(78)を灰色固体(46mg、92%)として得た;
【0373】
【0374】
[M+H]+の分析(C16H15N5O4)計算値342.1197;実測値342.1204。
18(39.4mg、0.12mmol)およびジオキサン中HCl(4M、1mL)の混合物を、室温で3.5時間撹拌し、次いで蒸発させた。残留物をDMA(1.0mL)中に懸濁させ、78(39.7mg、0.12mmol)、EDCI.HCl(67mg、0.36mmol)およびトルエンスルホン酸(4mg、0.02mmol)を添加した。混合物を室温で5時間撹拌した。水をゆっくりと添加し、沈殿した固体を濾別し、水で洗浄し、乾燥させた。粗生成物をEtOAcで摩砕して、79をオフホワイトの固体(36mg、55%)として得た;
【0375】
【0376】
[M+H]+の分析(C27H24ClN7O5)計算値562.1600;実測値562.1579。
実施例18
(S)-(8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-イル)(5,6,7-トリメトキシ-1H-インドール-2-イル)メタノン(82)および(R)-(8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-イル)(5,6,7-トリメトキシ-1H-インドール-2-イル)メタノン(83)
【0377】
【0378】
化合物18(334mg)を分取キラルHPLC(Daicel Chiralpak IA 250×21mmカラム、EtOH:ヘキサン 15:85溶離液、6mL/分の流速、α1.43)により分割して、2つのエナンチオマーのベースライン分離を得た。より早く溶出するエナンチオマー(RT9.4分)を含有する画分を合わせ、蒸発させて、tert-ブチル(S)-8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-カルボキシレート(80)を白色固体(131mg、39%)として得た;[α]D=-31°(c0.584、CH2Cl2);1H NMR(CDCl3)は18について記載したものと同一であった。より遅く溶出するエナンチオマー(RT13.4分)を含有する画分を合わせ、蒸発させて、tert-ブチル(R)-8-(クロロメチル)-4-ヒドロキシ-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-6-カルボキシレート(81)を白色固体(130mg、39%)として得た;[α]D=+24°(c0.586、CH2Cl2);1H NMR(CDCl3)は18について記載したものと同一であった。分析カラム(Daicel Chiralpak IA 150×4.6mmカラム)上での再分析により、各エナンチオマーについて100%eeを確認した。
【0379】
記載の一般的方法により、化合物80を82に変換して、白色固体を得た。[M+H]+の分析(C23H22ClN3O6)計算値472.12699;実測値472.12721。記載の一般的方法により、化合物81を83に変換して、白色固体を得た;1H NMR(d6-DMSO)は23について記載したものと同一であった。[M+H]+の分析(C23H22ClN3O6)計算値472.12699;実測値472.12719。
【0380】
実施例19
8-(クロロメチル)-2-メチル-6-(5,6,7-トリメトキシ-1H-インドール-2-カルボニル)-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-4-イル(4-((S)-2-((S)-2-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド)-3-メチルブタンアミド)-5-ウレイドペンタンアミド)ベンジル)エタン-1,2-ジイルビス(メチルカルバメート)(26)
【0381】
【0382】
p-ニトロフェニルクロロホルメート(97%、20mg、0.10mmol)およびEt3N(34μL、0.25mmol)を、0℃の乾燥THF(5mL)およびDMF(1.5mL)中の23(23mg、0.049mmol)の溶液に添加した。1.5時間後、さらなるp-ニトロフェニルクロロホルメート(97%、10mg、0.05mmol)およびEt3N(17μL、0.12mmol)を添加し、さらに50分後、tert-ブチルメチル(2-(メチルアミノ)エチル)カルバメート(95%、40mg、0.21mmol)を添加した。氷浴を取り外し、混合物をさらに20時間撹拌し、次いで蒸発乾固させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル 1:4、次いで1:3、1:1、3:1)により精製して、tert-ブチル(8-(クロロメチル)-2-メチル-6-(5,6,7-トリメトキシ-1H-インドール-2-カルボニル)-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-4-イル)エタン-1,2-ジイルビス(メチルカルバメート)(24)を無色油状物(31mg、94%)として得た;
【0383】
【0384】
[M+H]+の分析(C33H40ClN5O9)計算値686.2587;実測値686.2573。
TFA(0.7mL、9.1mmol)を、0℃のCH2Cl2(0.7mL)中の24(31mg、0.045mmol)の溶液に添加した。30分後、混合物を室温で蒸発乾固させ、残留物をCH2Cl2に溶解し、再度蒸発させた。残留物をDMF(0.5mL)に溶解し、溶液を氷浴中で冷却した。4-((S)-2-((S)-2-(6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミド)-3-メチルブタンアミド)-5-ウレイドペンタンアミド)ベンジル(4-ニトロフェニル)カーボネート(25)(36.7mg、0.050mmol)およびEt3N(32μL、0.23mmol)を添加した。氷浴を取り外し、混合物を18時間撹拌し、次いで室温で蒸発乾固させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2のみ、次いでCH2Cl2:MeOH 100:1、次いで50:1、30:1、15:1)により精製して、回収された23(6mg、28%)および粗生成物を得た。後者をカラムクロマトグラフィー(EtOAc:MeOH 9:1)により精製して、26を淡黄色ガラス状物(22mg、41%)として得た;
【0385】
【0386】
[M+H]+の分析(C57H70ClN11O15)計算値1184.4814;実測値1184.4840。
実施例20
8-(クロロメチル)-2-メチル-6-(5,6,7-トリメトキシ-1H-インドール-2-カルボニル)-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-4-イル(2-((((4-((S)-2-((S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)(メチル)アミノ)エチル)(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)カルバメート(87)
【0387】
【0388】
p-ニトロフェニルクロロホルメート(97%、39mg、0.18mmol)およびEt3N(64μL、0.46mmol)を、0℃のDMF(4mL)中の23(43.5mg、0.092mmol)の溶液に添加した。さらなる分量のp-ニトロフェニルクロロホルメート(97%、19mg、0.18mmol)を45分および2時間後に添加し、さらなるEt3N(32μL、0.28mmol)を70分後に添加した。2.5時間後、DMF(1mL)中のtert-ブチル(2-((2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)アミノ)エチル)(メチル)カルバメート(84)(73mg、0.28mmol)の溶液を添加し、氷浴を取り外した。混合物を18時間撹拌し、次いで蒸発乾固させた。残留物をCH2Cl2で摩砕し、固体を濾別し、乾燥させて、回収された23(23mg、53%)を得た。濾液を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル 1:1、次いで3:1、次いでEtOAcのみ、次いでEtOAc:MeOH 20:1)により精製して、8-(クロロメチル)-2-メチル-6-(5,6,7-トリメトキシ-1H-インドール-2-カルボニル)-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-4-イル(2-((tert-ブトキシカルボニル)(メチル)アミノ)エチル)(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)カルバメート(85)を無色油状物(20mg、29%)として得た;
【0389】
【0390】
[M+H]+の分析(C36H46ClN5O11)計算値760.2955;実測値760.2940。
化合物85(31mg、0.041mmol)を、0℃で15分間、CH2Cl2(0.7mL)およびTFA(0.7mL、9.1mmol)の混合物で処理した。混合物を室温で蒸発乾固させ、残留物をCH2Cl2に溶解し、再度蒸発させた。残留物をDMF(0.5mL)に溶解し、溶液を氷浴中で冷却した。tert-ブチル((S)-3-メチル-1-(((S)-1-((4-((((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-1-オキソプロパン-2-イル)アミノ)-1-オキソブタン-2-イル)カルバメート(86)(23mg、0.041mmol)およびEt3N(28μL、0.21mmol)を添加し、氷浴を取り外した。2.5時間後、混合物を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル 2:3、次いで3:2、次いでEtOAcのみ、次いでEtOAc:MeOH 20:1)により精製して、回収された23(4.3mg、22%)および87を無色ガラス状物(24.8mg、56%)として得た;
【0391】
【0392】
[M+H]+の分析(C52H67ClN8O15)計算値1079.4487;実測値1079.4489。
実施例21
8-(クロロメチル)-6-(5-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-1H-インドール-2-カルボニル)-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-4-イル(2-((((4-((S)-2-((S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)(メチル)アミノ)エチル)(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)カルバメート(89)
【0393】
【0394】
p-ニトロフェニルクロロホルメート(97%、34.5mg、0.16mmol)およびEt3N(88μL、0.63mmol)を、0℃のTHF(6mL)およびDMF(1.5mL)中の52(59.3mg、0.126mmol)の溶液に添加した。30分後、さらなるp-ニトロフェニルクロロホルメート(97%、34.5mg、0.16mmol)を添加し、2.5時間後、THF(1mL)中の84(66mg、0.32mmol)の溶液を添加した。氷浴を取り外し、混合物を18時間撹拌し、次いで蒸発乾固させた。残留物をCH2Cl2で摩砕し、固体を濾別し、乾燥させて、回収された52を塩酸塩(21mg、32%)として得た。濾液を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(EtOAcのみ、次いでEtOAc:MeOH 10:1、次いで5:1、次いで3:2)により精製して、8-(クロロメチル)-6-(5-(2-(ジメチルアミノ)エトキシ)-1H-インドール-2-カルボニル)-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-4-イル(2-((tert-ブトキシカルボニル)(メチル)アミノ)エチル)(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)カルバメート(88)を無色油状物(30mg、31%)として得た;
【0395】
【0396】
[M+H]+の分析(C37H49ClN6O9)計算値757.3322;実測値757.3332。
化合物88(30mg、0.040mmol)を、0℃で15分間、CH2Cl2(0.7mL)およびTFA(0.7mL、9.1mmol)の混合物で処理した。混合物を室温で蒸発乾固させ、残留物をCH2Cl2に溶解し、再度蒸発させた。残留物をDMF(0.5mL)に溶解し、溶液を氷浴中で冷却した。化合物86(22mg、0.040mmol)およびEt3N(33μL、0.24mmol)を添加し、氷浴を取り外した。2時間撹拌した後、混合物を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH 50:1、次いで20:1、10:1、8:1;続いて第2のカラムはEtOAc:MeOH 10:1、次いで5:1、3:1、3:2で溶出)により精製して、89を無色ガラス状物(7.8mg、18%)として得た;
【0397】
【0398】
[M+H]+の分析(C53H70ClN9O13)計算値1076.4854;実測値1076.4857。
実施例22
8-(クロロメチル)-6-(5-(2-メトキシエトキシ)-1H-インドール-2-カルボニル)-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-4-イル(2-((((4-((S)-2-((S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-メチルブタンアミド)プロパンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)(メチル)アミノ)エチル)(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)カルバメート(91)
【0399】
【0400】
p-ニトロフェニルクロロホルメート(96%、160mg、0.76mmol)およびEt3N(0.37mL、2.7mmol)を、0℃のTHF(8mL)中の66(242mg、0.53mmol)の溶液に添加した。75分後、THF(1.5mL)中の84(279mg、1.1mmol)の溶液を添加した。氷浴を取り外し、混合物を5.5時間撹拌し、次いで蒸発乾固させた。残留黄褐色泡状物を最少量のCH2Cl2に溶解し、溶液を4℃で終夜静置した。固体を濾別し、CH2Cl2で洗浄し、濾液を蒸発させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル 1:1、次いで3:1、次いでEtOAcのみ、次いでEtOAc:MeOH 20:1)により精製して、8-(クロロメチル)-6-(5-(2-メトキシエトキシ)-1H-インドール-2-カルボニル)-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-4-イル(2-((tert-ブトキシカルボニル)(メチル)アミノ)エチル)(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)カルバメート(90)を無色油状物(90mg、23%)として得た;
【0401】
【0402】
[M+H]+の分析(C36H46ClN5O10)計算値744.3006;実測値744.3014。
CH2Cl2に不溶性の固体を、カラムクロマトグラフィーからの対応する画分と合わせて、回収された66(142mg、59%)を得た。
【0403】
TFA(0.7mL、9.1mmol)を、0℃のCH2Cl2(2.0mL)中の90(90mg、0.12mmol)の溶液に添加し、混合物をこの温度で40分間撹拌した。混合物を室温で蒸発乾固させ、残留物をCH2Cl2に溶解し、再度蒸発させた。残留物をDMF(1mL)に溶解し、溶液を氷浴中で冷却した。化合物86(67.5mg、0.12mmol)およびEt3N(84μL、0.6mmol)を添加し、氷浴を取り外した。3時間後、混合物を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc:石油エーテル 2:3、次いで1:1、3:1、次いでEtOAcのみ、次いでEtOAc:MeOH 50:1、次いで25:1、15:1)により精製して、回収された66を白色固体(11mg、20%)として、91を白色ガラス状物(58mg、45%)として得た;
【0404】
【0405】
[M+H]+の分析(C52H67ClN8O14)計算値1063.4538;実測値1063.4546。
純度の低い91のさらなる画分も、カラムから白色ガラス状物(14mg、粗収率11%)として得た。
【0406】
実施例23
8-(クロロメチル)-6-(5-(2-メトキシエトキシ)-1H-インドール-2-カルボニル)-2-メチル-7,8-ジヒドロ-6H-オキサゾロ[4,5-e]インドール-4-イル(2-((((4-((2S,5S)-13-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-5-イソプロピル-2-メチル-4,7-ジオキソ-8,11-ジオキサ-3,6-ジアザトリデカンアミド)ベンジル)オキシ)カルボニル)(メチル)アミノ)エチル)(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル)カルバメート(93)
【0407】
【0408】
TFA(0.2mL、2.6mmol)を、0℃のCH2Cl2(1.0mL)中の91(14mg、0.013mmol)の溶液に添加し、溶液をこの温度で3時間保った。混合物を室温で蒸発乾固させ、残留物をCH2Cl2に溶解し、再度蒸発させた。残留物をDMF(0.5mL)に溶解し、溶液を氷浴中で冷却した。2-(2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エトキシ)エチル(4-ニトロフェニル)カーボネート(92)(4.6mg、0.013mmol)およびEt3N(9μL、0.065mmol)を添加し、氷浴を取り外した。19時間後、混合物を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(EtOAcのみ、次いでEtOAc:MeOH 20:1)により精製して、93を無色油状物(8.3mg、54%)として得た;
【0409】
【0410】
[M+H]+の分析(C56H68ClN9O17)計算値1174.4494;実測値1174.4516。
実施例24
追加の親油性データ
小分子化合物の親油性は、多くの異なる方法で計算することができる(例えば、J.Pharm.Sci.(2009)98,861でレビューされている)。例6において提供するデータを補足するために、本発明のいくつかの化合物の計算された親油性を、4つの異なるソフトウェアパッケージ、すなわち、例6におけるもののようなChemDraw Professional(Perkin Elmer Informatics Inc)、ACD/logP(Advanced Chemistry Development)、XLOGP3(Shanghai Institute of Organic Chemistry)、およびMLOGP(Talete SRL,Milano,Italy)を使用して、最後の3つはSwissADME(http://swissadme.ch/,Swiss Institute of Bioinformatics)を介してアクセスし、同じ副溝結合側鎖を有するseco-CBI類似体のものと比較した。化合物の構造を示し(DNA結合ユニットA、D、EおよびFは、2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットに結合している場合、化合物23、59、66および74をそれぞれ表す)、計算値logP値を表3に集約する。
【0411】
【0412】
絶対logP値は使用する計算プログラムによって変化するが、2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットをseco-CBIアルキル化サブユニットに対して比較した場合、いずれの場合においてもlogPは一貫して実質的に減少する(ΔlogPは0.98~1.48の範囲に入る)ことは表3から明らかである。これは、計算プログラムが、プロパティ(例えばMLOGP)またはサブ構造(フラグメントベース、例えばACD、または原子ベース、例えばXLOG3のいずれか)に基づいているかどうかにかかわらず適用される。
【0413】
すでに記載したように、ペイロード親油性におけるこれらの実質的な減少は、2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットが組み込まれた薬物-リンカーおよびADCの良好な特性につながる可能性が非常に高い。
【0414】
【0415】
実施例25
追加の細胞毒性データ
本発明のペイロードの細胞毒性を、例7において記載した一般手順に従って、2つのヒト腫瘍細胞株、頸部癌腫SiHa、および卵巣癌腫SKOV3の増殖の阻害を測定することによって判定した。新規の判定では、DMSO中のペイロードの原液を連続希釈してから、96-ウェルプレートの細胞含有ウェルに添加した。細胞毒性の判定を数回繰り返し(n=3~7、化合物および細胞株に応じて)、結果を表4に集約する。
【0416】
新規のデータは、2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットを含むDNAアルキル化剤は細胞毒性の高い化合物である場合があり、IC50は、nMまたはサブnM範囲、すなわちADCの適用に好適と考えられる範囲内にあるということを示す点で、表2で示される情報を強化する。これらはまた、副溝結合側鎖の適切な選択は、ペイロードの細胞毒性をモジュレートするために使用することができ、表4の例では、調査した2つの細胞株においてIC50の範囲は100倍超に及ぶことを示す。表4のデータによって、2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットの2つのエナンチオマー形態間での比較がさらに可能になる。化合物82および83は、SiHaにおいて93倍およびSKOV3において110倍の異なる細胞毒性効力を示す。これらの所見は、両方のエナンチオマーはアルキル化DNAの結果として細胞毒性を示すが、天然エナンチオマーは一般的に細胞毒性が高いという点において、デュオカルマイシンの他の類似体の挙動と一致する。
【0417】
重要なことには、同じ副溝結合側鎖を共有する化合物23およびseco-CBI-TMIは、IC50測定の誤差の範囲内で同じ細胞毒性効力を有することが再び認められた。これは、2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットは、密接に関連するseco-COIアルキル化サブユニットとは驚くことに異なり、デュオカルマイシン型アルキル化サブユニットの全ての既知のバリアントの最も強力なもののうちの1つと考えることができることを意味する。
【0418】
【0419】
実施例26
追加の安定性データ
化合物52、59および66の水性安定性を、HPLC分析によって調査した。条件は例8に記載されているものと同じであり、すなわち試料は、37℃で10%DMFを含むトリス緩衝液(pH7.4)中に4μMの濃度でペイロードを含んでいた。この実験では、溶液を1時間間隔で8時間にわたってモニターした。
【0420】
図3~5で示すように、3つのペイロード化合物全てが中間体に変換され、これはUV-Vis吸収スペクトルにおいて特徴的なシフトに基づいて、対応するシクロプロピル形態として同定された。3つのケース全てにおいて、シクロプロピル中間体は水性緩衝液中でのさらなる反応に対して不安定であり、さまざまな生成物を生成し、2つの主要な加水分解生成物が優勢であった。この挙動は、例8の化合物23で観察された安定性および生成物の分布と厳密に一致するが(
図2を参照のこと)、参照化合物seco-CBI-TMIの長期の安定性と著しく対照的である(
図1を参照のこと)。その結果、並外れた不安定性は2-メチルベンゾオキサゾールアルキル化サブユニットの一般的な特性であると思われる。それはDNA副溝結合側鎖の特質に大きく依存することはない。言い換えれば、任意の全身的に放出されたペイロードのための解毒機序としての加水分解の潜在的な利点は、本発明の新規の化合物全てに一般的な特性であることを合理的に想定することができる。
【国際調査報告】