(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(54)【発明の名称】非侵襲的音響化学療法
(51)【国際特許分類】
A61N 7/00 20060101AFI20220422BHJP
【FI】
A61N7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544856
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 US2020017983
(87)【国際公開番号】W WO2020167992
(87)【国際公開日】2020-08-20
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521339186
【氏名又は名称】アルフェウス メディカル,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100207217
【氏名又は名称】樋口 智夫
(72)【発明者】
【氏名】アガルワル ヴィジャイ
(72)【発明者】
【氏名】エリアソン ブレーデン
(72)【発明者】
【氏名】リン ジェレミー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ33
4C160JJ36
(57)【要約】
音響化学治療法を提供するためのシステムが開示される。システムは、トランスデューサと、患者インタフェースと、トランスデューサに結合されたコントローラとを含む。患者インタフェースは、トランスデューサを患者に音響的に結合するように構成される。コントローラは、ある範囲の周波数から選択される周波数を用いて電気駆動信号を生成し、駆動信号を変調し、変調駆動信号を用いて、前記周波数でトランスデューサを駆動して変調音波を生成し、治療領域内の健常細胞を損傷させることなく治療領域内の超音波増感剤を活性化するのに十分な平均音響強度を生成するように構成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスデューサと、
前記トランスデューサを患者に音響的に結合するための患者インタフェースと、
前記トランスデューサに結合されたコントローラと
を備え、前記コントローラは、
変調音波パラメータのセットから電気駆動信号を生成し、
駆動信号を変調し、かつ
前記変調された駆動信号を用いてある周波数において前記トランスデューサを駆動して、治療領域内で超音波増感剤を活性化するのに十分な音響強度を生成する変調音波を生成させる
ように構成される、音響化学治療法のためのシステム。
【請求項2】
前記音波が波束(a wave packet)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記トランスデューサが、前記治療領域を優先的に標的とするように前記コントローラによって変調された収束音波を生成するように構成される、請求項1から2のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項4】
前記トランスデューサが、前記収束音波を生成するための凹状音響レンズを備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記トランスデューサが、前記収束音波を生成するために所定の順序で作動可能な複数の素子を備える、請求項3から4のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項6】
前記トランスデューサが、前記治療領域を優先的に標的とするように前記コントローラによって変調された発散音波を生成するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記トランスデューサが、発散音波を生成するための凸状音響レンズを備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記トランスデューサが、前記発散音波を生成するために所定の方法で作動可能な複数の素子を備える、請求項6から7のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項9】
前記トランスデューサが、平面音波を生成するための平坦面を備える、請求項1から8のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項10】
前記トランスデューサが、トランスデューサ素子の環状アレイを備える、請求項1から8のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項11】
前記トランスデューサが、トランスデューサ素子のグリッドアレイを備える、請求項1から8のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項12】
シェルを備え、前記トランスデューサが前記トランスデューサの位置及び配向を決定するために前記シェルに固定される、請求項1から11のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項13】
前記シェルが剛性材料から作製される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記シェルが可撓性材料から作製される、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記変調音波が、前記治療領域内で約0.1W/cm
2~約50.0W/cm
2の時間平均音響強度を生成する、請求項1から14のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項16】
前記変調音波が、前記治療領域内で約0.2W/cm
2~約20.0W/cm
2の時間平均音響強度を生成する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記変調音波が、前記治療領域内で約0.5W/cm
2~約8.0W/cm
2の時間平均音響強度を生成する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記周波数が、約20.00kHz~約12.00MHzの超音波周波数の範囲から選択される、請求項1から17のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項19】
前記周波数が、約650.00kHz~約3.00MHzの超音波周波数の範囲から選択される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記周波数が、約900.00kHz~1.20MHzの超音波周波数の範囲から選択される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記コントローラが、in situ変数を決定し、前記in situ変数に基づいて最適化された音波を生成するために前記音波パラメータを適応的に変調するように構成される、請求項1から20のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項22】
前記コントローラが、in situ変数を決定し、前記in situ変数に基づいて最適化された音波を生成するために時間平均音響強度を適応的に調整するように構成される、請求項1から21のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項23】
前記コントローラが、in situ変数を決定し、前記in situ変数に基づいて治療領域を優先的に標的とするために前記音波を適応的に変調するように構成される、請求項1から22のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項24】
前記コントローラが、組織深さ、組織厚さ、組織体積、頭蓋骨厚さ、温度、前記治療領域までの距離、又はそれらの組み合わせから選択されるin situ変数を決定するように構成される、請求項1から23のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項25】
前記患者インタフェースが冷却システムを備える請求項1から24のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項26】
前記患者インタフェースが流体を循環させるための冷却チャネルを備える、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記患者インタフェースがゲルを備える、請求項1から26のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項28】
前記患者インタフェースが、前記治療領域を優先的に標的とするためにトランスデューサの位置合わせを支援するように構成される、請求項1から27のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項29】
前記患者インタフェースが、様々な患者の解剖学的構造に合うように適応的に調整するように構成される、請求項1から28のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項30】
前記患者インタフェースが、前記コントローラに結合されるセンサを備える、請求項1から29のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項31】
前記センサが温度センサである、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記変調された駆動信号が、振幅変調音波を生成するための振幅変調駆動信号である、請求項1から31のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項33】
前記変調された駆動信号が、パルス音波を生成するためにパルス信号によって変調される、請求項1から31のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項34】
前記変調された駆動信号が、音波のパケットを生成するためにパケット当たり所定のサイクル数を含むパケットである、請求項1から31のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項35】
前記変調された駆動信号が、周波数変調音波を生成するための周波数変調駆動信号である、請求項1から31のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項36】
前記周波数変調駆動信号がパルス内変動を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記周波数変調駆動信号がパルス間変動を含む、請求項35から36のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項38】
前記変調駆動信号が、デューティサイクル変調音波を生成するためのデューティサイクル変調駆動信号である、請求項1から31のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項39】
前記コントローラが、前記トランスデューサを検出し、前記トランスデューサに従って治療アルゴリズムを選択するように構成される、請求項1から38のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項40】
前記コントローラが、前記患者インタフェースを検出し、前記患者インタフェースに従って治療アルゴリズムを選択するように構成される、請求項1から39のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項41】
前記コントローラが、前記治療領域内の健常細胞に熱的又は他の損傷を引き起こすことのない時間平均音響強度を生成する変調音波を生成するために、前記変調された駆動信号を用いて前記周波数において前記トランスデューサを駆動するように構成される、請求項1から40のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項42】
前記コントローラが、前記治療領域内の健常組織の温度が42℃を超えて上昇することのない時間平均音響強度を生成する変調音波を生成するために、前記変調された駆動信号を用いて前記周波数において前記トランスデューサを駆動するように構成される、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
第1のトランスデューサと、
第2のトランスデューサと、
前記第1及び第2のトランスデューサに結合されたコントローラと
を備え、前記コントローラが、
変調音波パラメータのセットから第1の電気駆動信号を生成し、
前記変調音波パラメータのセットから第2の電気駆動信号を生成し、
第1の電気駆動信号において第1のトランスデューサを駆動して第1の音波を生成させ、
第2の電気駆動信号において第2のトランスデューサを駆動して第2の音波を生成させる
ように構成され、前記第1及び第2の音波は、治療領域において超音波増感剤を活性化するのに十分な音響強度を生成するように組み合わせ可能である、音響化学治療法のためのシステム。
【請求項44】
前記第1及び第2の音波が、前記第1及び第2のトランスデューサから所定の距離で収束音波を生成するように組み合わせ可能である、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記第1及び第2の音波が、発散音波を生成するように組み合わせ可能である、請求項43に記載のシステム。
【請求項46】
前記第1及び第2の音波が、平面音波を生成するように組み合わせ可能である、請求項43に記載のシステム。
【請求項47】
前記コントローラが、第1の変調用信号を用いて前記第1の電気駆動信号を変調し、第2の変調用信号を用いて前記第2の電気駆動を変調し、前記第1及び第2のトランスデューサを駆動して第1及び第2の変調音波を生成するように構成される、請求項43から46のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項48】
前記コントローラが、前記第1及び第2の電気駆動信号を振幅変調して、第1及び第2の振幅変調音波を生成するように構成される、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
前記コントローラが、前記第1及び第2の電気駆動信号を周波数変調して、第1及び第2の周波数変調音波を生成するように構成される、請求項47から48のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項50】
前記コントローラが、前記第1及び第2の電気駆動信号を位相変調して、第1及び第2の位相変調音波を生成するように構成される、請求項47から49のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項51】
前記コントローラが、前記第1及び第2の電気駆動信号を位相変調して、位相ランダム化音波を生成するように構成される、請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記コントローラが、前記第1又は第2の電気駆動信号のいずれかを遅延させて、前記対応する第1又は第2の音波の相対遅延を生成するように構成される、請求項43から51のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項53】
前記第1の電気駆動信号が第1の周波数を有し、前記第2の電気駆動信号が第2の周波数を有する、請求項43から52のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項54】
前記周波数が、約20.00kHz~約12.00MHzの超音波周波数の範囲から選択される、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記周波数が、約650.00kHz~約3.00MHzの超音波周波数の範囲から選択される、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
前記周波数が、約900.00kHz~1.20MHzの超音波周波数の範囲から選択される、請求項54に記載のシステム。
【請求項57】
前記第1又は第2のトランスデューサの少なくとも一方が、トランスデューサ素子の環状アレイを備える、請求項43から56のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項58】
前記第1又は第2のトランスデューサの少なくとも一方が、トランスデューサ素子のグリッドアレイを備える、請求項43から56のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項59】
シェルを備え、前記第1及び第2のトランスデューサが前記第1及び第2のトランスデューサの位置及び配向を決定するために前記シェルに固定される、請求項43から58のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項60】
前記シェルが剛性材料から作製される、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
前記シェルが可撓性材料から作製される、請求項59に記載のシステム。
【請求項62】
前記変調音波が、前記治療領域内で約0.1W/cm
2~約50.0W/cm
2の時間平均音響強度を生成する、請求項43から61のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項63】
前記変調音波が、前記治療領域内で約0.2W/cm
2~約20.0W/cm
2の時間平均音響強度を生成する、請求項62に記載のシステム。
【請求項64】
前記変調音波が、前記治療領域内で約0.5W/cm
2~約8.0W/cm
2の時間平均音響強度を生成する、請求項63に記載のシステム。
【請求項65】
前記第1及び第2のトランスデューサを患者に音響的に結合するための患者インタフェースを備える、請求項43から64のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項66】
前記患者インタフェースが冷却システムを備える、請求項65に記載のシステム。
【請求項67】
前記患者インタフェースが流体を循環させるための冷却チャネルを備える、請求項66に記載のシステム。
【請求項68】
前記患者インタフェースがゲルを備える、請求項65に記載のシステム。
【請求項69】
前記患者インタフェースが、前記治療領域を優先的に標的とするためにトランスデューサの位置合わせを支援するように構成される、請求項65から68のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項70】
前記患者インタフェースが、様々な患者の解剖学的構造に合うように適応的に調整するように構成される、請求項65から68のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項71】
前記患者インタフェースが、前記コントローラに結合されるセンサを備える、請求項65から70のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項72】
前記センサが温度センサである、請求項71に記載のシステム。
【請求項73】
前記コントローラが、前記患者インタフェースを検出し、前記検出された患者インタフェースに従って治療アルゴリズムを選択するように構成される、請求項65から72のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項74】
前記コントローラが、in situ変数を決定し、前記in situ変数に基づいて最適化された音波を生成するために音波パラメータを適応的に変調するように構成される、請求項43から73のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項75】
前記コントローラが、in situ変数を決定し、前記in situ変数に基づいて最適化された音波を生成するために前記時間平均音響強度を適応的に調整するように構成される、請求項43から74のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項76】
前記コントローラが、in situ変数を決定し、前記in situ変数に基づいて治療領域を優先的に標的とするために前記音波を適応的に変調するように構成される、請求項43から75のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項77】
前記コントローラが、組織深さ、組織厚さ、組織体積、頭蓋骨厚さ、温度、前記治療領域までの距離、又はそれらの組み合わせから選択されるin situ変数を決定するように構成される、請求項43から76のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項78】
前記コントローラが、前記第1又は第2のトランスデューサの少なくとも一方を検出し、前記検出された第1及び第2のトランスデューサに従って治療アルゴリズムを選択するように構成される、請求項43から77のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項79】
前記第1及び第2の変調音波が、前記治療領域内の健常細胞に熱的又は他の損傷を引き起こすことのない時間平均音響強度を生成するように組み合わせ可能である、請求項43から78のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項80】
前記第1及び第2の変調音波が、前記治療領域内の健常組織の温度が42℃を超えて上昇することのない時間平均音響強度を生成するように組み合わせ可能である、請求項79に記載のシステム。
【請求項81】
複数のトランスデューサと、
前記複数のトランスデューサに結合されたコントローラと
を備え、前記コントローラが、
変調音波パラメータのセットから複数の電気駆動信号を生成し、
前記複数の電気駆動信号において前記複数のトランスデューサを駆動して、複数の変調音波を生成する
ように構成され、前記複数の変調音波が、治療領域において超音波増感剤を活性化するのに十分な音響強度を生成するように組み合わせ可能である、音響化学治療法のためのシステム。
【請求項82】
前記複数の音波が、前記複数のトランスデューサから所定の距離において収束音波を生成するように組み合わせ可能である、請求項81に記載のシステム。
【請求項83】
前記複数の音波が、発散音波を生成するように組み合わせ可能である、請求項81に記載のシステム。
【請求項84】
前記複数の音波が、平面音波を生成するように組み合わせ可能である、請求項81に記載のシステム。
【請求項85】
前記コントローラが、変調用信号を用いて前記複数の電気駆動信号の各々を変調し、前記複数のトランスデューサを駆動して複数の変調音波を生成させるように構成される、請求項81から84のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項86】
前記コントローラが、前記複数の電気駆動信号を振幅変調して複数の振幅変調音波を生成するように構成される、請求項85に記載のシステム。
【請求項87】
前記コントローラが、前記複数の電気駆動信号を周波数変調して複数の周波数変調音波を生成するように構成される、請求項85から86のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項88】
前記コントローラが、前記複数の電気駆動信号を位相変調して複数の位相変調音波を生成するように構成される、請求項85から87のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項89】
前記コントローラが、前記複数の電気駆動信号を位相変調して位相ランダム化音波を生成するように構成される、請求項88に記載のシステム。
【請求項90】
前記コントローラが、前記複数の電気駆動信号のうちの少なくとも1つを残りの電気駆動信号に対して遅延させて、残りの音波に対して遅延を有する音波を生成するように構成される、請求項81から89のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項91】
前記複数の電気駆動信号のうちの前記少なくとも1つの電気駆動信号が、前記残りの電気駆動信号とは異なる周波数を有する、請求項81から90のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項92】
前記少なくとも1つの電気駆動信号及び前記残りの電気駆動信号の周波数が、約20.00kHz~約12.00MHzの超音波周波数の範囲から選択される、請求項91に記載のシステム。
【請求項93】
前記少なくとも1つの電気駆動信号及び前記残りの電気駆動信号の周波数が、約650.00kHz~約3.00MHzの超音波周波数の範囲から選択される、請求項92に記載のシステム。
【請求項94】
前記少なくとも1つの電気駆動信号及び前記残りの電気駆動信号の周波数が、約900.00kHz~1.20MHzの超音波周波数の範囲から選択される、請求項93に記載のシステム。
【請求項95】
前記複数のトランスデューサが、トランスデューサ素子の環状アレイに配列される、請求項81から94のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項96】
前記複数のトランスデューサが、トランスデューサ素子のグリッドアレイに配列される、請求項81から94のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項97】
シェルを備え、前記複数のトランスデューサが前記複数のトランスデューサの各々の位置及び配向を決定するために前記シェルに固定される、請求項81から96のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項98】
前記シェルが剛性材料から作製される、請求項97に記載のシステム。
【請求項99】
前記シェルが可撓性材料から作製される、請求項97に記載のシステム。
【請求項100】
前記複数の変調音波が、前記治療領域内で約0.1W/cm
2~約50.0W/cm
2の時間平均音響強度を生成するように組み合わせ可能である、請求項81から99のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項101】
前記複数の変調音波が、前記治療領域内で約0.2W/cm
2~約20.0W/cm
2の時間平均音響強度を生成するように組み合わせ可能である、請求項100に記載のシステム。
【請求項102】
前記複数の変調音波が、前記治療領域内で約0.5W/cm
2~約8.0W/cm
2の時間平均音響強度を生成するように組み合わせ可能である、請求項101に記載のシステム。
【請求項103】
前記複数のトランスデューサを患者に音響的に結合するための患者インタフェースを備える、請求項81から102のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項104】
前記患者インタフェースが冷却システムを備える、請求項103に記載のシステム。
【請求項105】
前記患者インタフェースが、流体を循環させるための冷却チャネルを備える、請求項104に記載のシステム。
【請求項106】
前記患者インタフェースがゲルを備える、請求項103から105のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項107】
前記患者インタフェースが、前記治療領域を優先的に標的とするためにトランスデューサの位置合わせを支援するように構成される、請求項103から106のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項108】
前記患者インタフェースが、様々な患者の解剖学的構造に合うように適応的に調整するように構成される、請求項103から107のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項109】
前記患者インタフェースが、前記コントローラに結合されるセンサを備える、請求項103から108のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項110】
前記センサが温度センサである、請求項109に記載のシステム。
【請求項111】
前記コントローラが、前記患者インタフェースを検出し、前記患者インタフェースに従って治療アルゴリズムを選択するように構成される、請求項103から110のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項112】
前記コントローラが、in situ変数を決定し、前記in situ変数に基づいて最適化された音波を生成するために前記複数の電気駆動信号の音波パラメータを適応的に変調するように構成される、請求項81から111のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項113】
前記コントローラが、in situ変数を決定し、前記in situ変数に基づいて最適化された音波を生成するために前記組み合わせられた複数の変調音波の前記時間平均音響強度を適応的に調整するように構成される、請求項81から112のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項114】
前記コントローラが、in situ変数を決定し、前記in situ変数に基づいて治療領域を優先的に標的とするために前記音波を適応的に変調するように構成される、請求項81から113のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項115】
前記コントローラが、組織深さ、組織厚さ、組織体積、頭蓋骨厚さ、温度、前記治療領域までの距離、又はそれらの組み合わせから選択されるin situ変数を決定するように構成される、請求項81から114のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項116】
前記コントローラが、前記複数のトランスデューサのうちの少なくとも1つを検出し、前記検出されたトランスデューサに従って治療アルゴリズムを選択するように構成される、請求項81から115のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項117】
前記複数の音波が、前記治療領域内の健常細胞に熱的又は他の損傷を引き起こすことのない時間平均音響強度を生成するように組み合わせ可能である、請求項81から116のいずれか1項又は複数の項に記載のシステム。
【請求項118】
前記複数の音波が、前記治療領域内の健常組織の温度が42℃を超えて上昇することのない時間平均音響強度を生成するように組み合わせ可能である、請求項117に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、2019年2月13日に出願された、発明の名称がNON-INVASIVE SONODYNAMIC THERAPYである米国仮特許出願第62/805,186号の米国特許法第119条に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、音響化学療法を使用して病変を治療するための広く適用可能な技術プラットフォームに関する。より詳細には、本開示は、音響化学療法を使用して身体部分の腫瘍及び癌を治療するための装置、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
音響化学療法は、超音波への曝露時にのみ細胞傷害性になる薬剤を使用する、提案された治療形態である。超音波は体内の小さな組織体積に集束することができるため、この方法は、治療を局在化させ、体内の他の場所での副作用のリスクを低減する潜在的な手段を提供する。この点で、音響化学療法は、薬剤活性化のために光を使用する光線力学療法に類似しており、光及び音の両方に感受性があることが示されているいくつかの薬剤が存在する。光線力学療法に対する音響化学の潜在的な重要な利点は、光と比較して、超音波は組織のさらに深くまで非侵襲的に到達可能であることである。
【0004】
薬剤は、病変の細胞に優先的に蓄積する超音波増感性作用剤(すなわち、超音波増感剤)である。超音波増感剤は、超音波エネルギーに曝露されると、標的組織において細胞傷害性応答を開始する。超音波エネルギーによって活性化されると、音響化学治療薬又は「超音波増感剤」は、細胞傷害効果を生じる活性酸素種(ROS)を生成する。ROS生成の詳細な機構は完全には理解されていないが、いくつかの研究は、音響キャビテーション及び関連する熱、化学又は発光現象が関与し得ることを示唆している。超音波増感剤は、単独で、又は他の超音波増感剤と一緒に使用することができ、その多くは、全身の腫瘍の神経外科診断撮像又は治療に使用するために米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。
【0005】
音響化学療法の見込みは、傷害又は疾患、例えば創傷、潰瘍、膿瘍又は腫瘍を介して損傷を受けた臓器又は組織の領域などの病変を、健常組織にとって安全であるが、超音波増感剤を含む病変内の細胞にとって致命的である超音波レベルで治療する能力である。
【0006】
企図される低侵襲性音響化学プロセスでは、生検を模倣する比較的簡単な手順を使用して、原位置(in situ)に配置されたカテーテルで病変を直接治療することができる。小型の針状カテーテル装置から、安定した無指向性の音波を得ることは、場合によっては技術的課題を提示する可能性がある。低侵襲処置に必要なカテーテル装置の小径は、先端から軸方向に音響放射する任意の素子のための開口サイズを制限する可能性がある。このため、球面発散により場の強度が低下する可能性がある。十分に長いトランスデューサから半径方向に放出された音波でさえ、円筒状に低下する。
【0007】
発散により音響強度が低下するため、カテーテル装置の近くの音波は、カテーテル装置から数センチメートル離れた超音波増感剤を活性化させるのに十分な音響強度を有するために比較的高くする必要がある場合がある。カテーテル装置の近くのこれらのより高い強度は、カテーテル装置付近で無差別細胞死を引き起こし、カテーテル装置の周囲に壊死領域を作り出すのに十分である場合さえある。カテーテル装置のこの「壊死」領域が不可避であった場合、カテーテル装置を配置することができる身体の位置を制限し、治療に適格な患者の数を制限する可能性がある。
【0008】
高強度集束超音波(HIFU)は、わずか数立方ミリメートルに正確にピンポイントされた、500W/cm2~20,000W/cm2の強度を使用して組織の熱アブレーションを引き起こす、病変の非侵襲的治療を提供する。HIFU技術は、42℃を超える温度に組織を加熱して壊死細胞死を引き起こすことによって非侵襲的に組織を切除することができる。この処置で使用される超音波のレベルは、設計上、超音波焦点内のすべての細胞にとって致命的であり、したがって、このアプローチでは、健常組織と疾患組織とを識別する広いカバレッジを提供することは不可能である。
【0009】
音響化学療法を利用する非侵襲的技術のさらなる課題は、軟組織及び骨を治療するときの患者の身体、特に頭蓋骨からの音圧の強い減衰及び反射である場合がある。水/皮膚と骨との間のインピーダンス不整合は重大であり、その結果、皮膚-骨及び骨-脳界面で強い反射が生じる。頭蓋骨の減衰係数も非常に高くなる可能性があり、その結果、頭蓋骨内での吸収及び散乱による損失が生じる。
【0010】
以下の開示は、体内に深く侵入することができる、完全に非侵襲的な治療のための様々な音響化学治療機器、システム、及び方法を説明する。
【発明の概要】
【0011】
音響化学療法への例示的な非侵襲的アプローチは、身体部分の外側に、皮膚を通って身体部分に音波を送信するために使用されるいくつかの超音波トランスデューサ又は複数の素子を有する単一のトランスデューサを配置することを含む。トランスデューサのサイズにより、入射音波はほぼ平面となり、円筒状又は球状発散ほどの発散損失を受けないことが可能になる。一態様では、いくつかの超音波トランスデューサ又は単一のトランスデューサのいくつかの素子によって生成された音波は収束して、波面が強め合うように干渉することを可能にする。さらに、音響素子の総表面領域により、すべてのエネルギーが単一の素子から来ることを必要とする代わりに、エネルギー伝送を多くの素子の間で分割することが可能になる。
【0012】
臨床的に言えば、そのようなシステムは患者の経験を改善することができる。非侵襲性であるため、手術、感染、及び出血のコスト及びリスクが排除され、健康管理のコスト及び複雑さが大幅に低減される。患者の治療準備に要する時間を大幅に短縮することができる。治療は、腫瘍学クリニックなどの非外科的クリニック環境で30分~1時間続く場合がある。1人の開業医が同時に複数の患者を監視することができる。装置のリスクが低いため、より頻繁な治療、疾患進行内の早期治療、及びより致死性の低い疾患の治療への扉を開く可能性がある。
【0013】
以下の開示に記載される例示的な非侵襲的機器、システム、及び方法は、従来の方法に対して、より広い治療領域にわたって比較的低い音響強度を使用することができる。以下で論じられる例示的な非侵襲的技術は、傷害若しくは疾患、例えば創傷、潰瘍、膿瘍、若しくは腫瘍を介して損傷を受けた臓器又は組織の領域などの病変について治療されている身体部分の大部分又は全部にわたって、約0.1W/cm2~約50W/cm2、又は約0.2W/cm2~約20W/cm2、又は約0.5W/cm2~約8.0W/cm2の範囲の非熱的切除の時間平均音響強度を生成する。特に明記しない限り、値に関する「約」及び「一般に」という用語は、最下位単位の10%以内を意味する。例えば、「約0.1」は、0.09から0.11の間を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下の図面は、本開示の特定の態様を例示するものであり、したがって、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。図面は、以下の説明における解説と併せて使用することを意図している。開示された態様は、添付の図面と併せて以下に記載され、同様の符号は同様の要素を示す。
【0015】
【
図1】本開示の少なくとも1つの態様による、患者の頭部の上に配置された複数のトランスデューサ及び冷却システムを有する、シェルを備えた経頭蓋音響化学治療装置の斜視図である。
【0016】
【
図2】本開示の少なくとも1つの態様による、患者の頭部の上に配置された複数のトランスデューサ及び冷却システムを備えた経頭蓋音響化学治療装置の斜視図である。
【0017】
【
図3】本開示の少なくとも1つの態様による、患者の頭部の上に配置された経頭蓋音響化学治療装置の部分破断図であり、複数のトランスデューサの部分図を示す。
【0018】
【
図4】本開示の少なくとも1つの態様による、凹面を画定するレンズを備えたトランスデューサの概略図である。
【0019】
【
図5】本開示の少なくとも1つの態様による、凸面を画定するレンズを備えたトランスデューサの概略図である。
【0020】
【
図6】本開示の少なくとも1つの態様による、様々な音波を生成するために個別に励起することができる複数の素子を備えたトランスデューサの概略図である。
【0021】
【
図7】本開示の少なくとも1つの態様による、同心リングによって囲まれた内部素子を有するトランスデューサの底面図である。
【0022】
【
図8】本開示の少なくとも1つの態様による、2次元(2D)グリッドアレイに配列された内部素子を有するトランスデューサの底面図である。
【0023】
【
図9】本開示の少なくとも1つの態様による、強め合うように干渉する、遅延のない2つの音響超音波パルスの図である。
【0024】
【
図10】本開示の少なくとも1つの態様による、ガウスパルス信号によって変調された正弦波信号からなるパルスパケットの図である。
【0025】
【
図11】本開示の少なくとも1つの態様による、患者の頭部の上に配置された経頭蓋音響化学治療装置の部分破断図であり、患者の頭蓋骨及び脳並びに複数のトランスデューサの部分図を示し、1つのトランスデューサが患者の脳内にエネルギーを放出している。
【0026】
【
図12】本開示の少なくとも1つの態様による、複数の周波数にわたる強度透過率を示すチャートである。
【0027】
【
図13A】本開示の少なくとも1つの態様による、ミリメートル単位の頭蓋骨厚さに対する1MHzでの透過率及び反射率を示すチャートである。
【0028】
【
図13B】本開示の少なくとも1つの態様による、波長単位の頭蓋骨厚さに対する1MHzでの透過率及び反射率を示すチャートである。
【0029】
【
図14A】本開示の少なくとも1つの態様による、周波数の関数としての強度透過率を示すチャートである。
【0030】
【
図14B】本開示の少なくとも1つの態様による、周波数の関数としての反射率を示すチャートである。
【0031】
【
図15】本開示の少なくとも1つの態様による、多組織頭蓋骨モデルに入射する平面波の場の強度を示すチャートである。
【0032】
【
図16】本開示の少なくとも1つの態様による、複数の周波数における、新たに切除されたヒト頭蓋骨のエネルギー吸収率を示すチャートである。
【0033】
【
図17】本開示の少なくとも1つの態様による、患者の頭部の上に配置された経頭蓋音響化学治療装置の部分破断図であり、複数のトランスデューサの部分図及び冷却システムの全体図を示す。
【0034】
【
図18】本開示の少なくとも1つの態様による、患者インタフェースの斜視図である。
【0035】
【
図19】本開示の少なくとも1つの態様による、赤外線(IR)温度センサの相対感度プロットを示すチャートである。
【0036】
【
図20】本開示の少なくとも1つの態様による、一般的な非侵襲的音響化学治療システムのブロック図である。
【0037】
【
図21】本開示の少なくとも1つの態様による、
図18に示す音響化学治療システムの説明図である。
【0038】
【
図22】本開示の少なくとも1つの態様による、
図18及び
図19に示す音響化学治療システムの概略図である。
【0039】
【
図23】本開示の少なくとも1つの態様による、別個の送信及び受信トランスデューサを備えた音響化学治療システムの概略図である。
【0040】
【
図24】本開示の少なくとも1つの態様による、単一の送信及び受信トランスデューサを備えた音響化学治療システムの概略図である。
【0041】
【
図25】本開示の少なくとも1つの態様による、音響化学治療プロセスの概要である。
【0042】
【
図26】本開示の少なくとも1つの態様による、増感剤の選択的蓄積の初期段階を説明する癌細胞の図である。
【0043】
【
図27】本開示の少なくとも1つの態様による、増感剤の選択的蓄積の増加を説明する癌細胞の図である。
【0044】
【
図28】本開示の少なくとも1つの態様による、音響化学療法を受けている
図24及び
図25に示す癌細胞の図である。
【0045】
【
図29】本開示の少なくとも1つの態様による、ソノルミネッセンスのプロセスを説明する図である。
【0046】
【
図30】本開示の少なくとも1つの態様による、増感剤の選択的蓄積を説明する癌細胞の概略図である。
【0047】
【
図31】本開示の少なくとも1つの態様による、音響化学療法を受けている
図28に示す癌細胞の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下の詳細な説明は、本質的に例示的なものであり、いくつかの実際的な例証及び例を提供する。当業者は、記載された例の多くが様々な適切な代替形態を有することを認識するであろう。添付の図面に加えて以下に提供される説明を使用して、多数の様々な例示的な経頭蓋音響化学治療装置が本明細書に開示される。本明細書に開示される態様の各々は、独立して、又は本明細書に開示される他の態様の1つ又は複数(例えば、すべて)と組み合わせて利用することができる。
【0049】
図面の説明に入る前に、本開示はまず、非侵襲的音響化学治療システムの様々な態様の一般的な説明に移る。一態様では、本開示は、音響化学療法のためのシステムに関する。システムは、トランスデューサと、トランスデューサを患者に音響的に結合するための患者インタフェースと、トランスデューサに結合されたコントローラとを備える。コントローラは、変調音波パラメータのセットから電気駆動信号を生成し、駆動信号を変調し、変調された駆動信号を用いてトランスデューサをある周波数で駆動して変調音波を生成させ、治療領域において超音波増感剤を活性化させるのに十分な音響強度を生成させるように構成される。
【0050】
別の態様では、本開示は、音響化学療法のための別のシステムに関する。システムは、第1のトランスデューサと、第2のトランスデューサと、第1及び第2のトランスデューサに結合されたコントローラとを備える。コントローラは、変調音波パラメータのセットから第1の電気駆動信号を生成し、変調音波パラメータのセットから第2の電気駆動信号を生成し、第1の電気駆動信号において第1のトランスデューサを駆動して第1の音波を生成させ、第2の電気駆動信号において第2のトランスデューサを駆動して第2の音波を生成させるように構成される。第1及び第2の音波は、治療領域において超音波増感剤を活性化させるのに十分な音響強度を生成するように組み合わせ可能である。
【0051】
さらに別の態様では、本開示は、音響化学療法のためのさらに別のシステムに関する。システムは、複数のトランスデューサと、複数のトランスデューサに結合されたコントローラとを備える。コントローラは、変調音波パラメータのセットから複数の電気駆動信号を生成し、複数の電気駆動信号において複数のトランスデューサを駆動して複数の変調音波を生成させるように構成される。複数の変調音波は、治療領域において超音波増感剤を活性化させるのに十分な音響強度を生成するように組み合わせ可能である。
【0052】
以下の説明は、脳内の腫瘍を治療するための非侵襲的音響化学治療技術の適用の例示的な例を提供する。しかしながら、そのような技術は、他の身体部分内の腫瘍を治療するために適用可能であることが理解されよう。ここで
図1を参照すると、ヒトの頭蓋骨は、性別及び解剖学的位置によって異なる場合がある。本開示の一態様は、
図1に示すような非侵襲的音響化学治療装置100を提供する。非侵襲的音響化学治療装置100は、これらの変動にもかかわらず予測可能かつ一貫した音波照射を提供することができるトランスデューサ150を有するシェル110を備えることができる。シェル110は、剛性材料を備えることができる。トランスデューサ150の既知の相対位置により、大型のトランスデューサ150を用いた低解像度であっても、頭部の撮像が可能になる。図示の態様は、患者が座位又は仰臥位で待機している間、可動スタンドが患者の定位置に保持されることを必要とする場合がある。剛性シェル110は、治療中に患者が着用することができる軽量ヘルメットであってもよく、インフラストラクチャ要件をほとんど伴わずにトランスデューサ150の予測可能な配置を可能にする。
【0053】
非侵襲的音響化学治療装置100は、本明細書の他の箇所でさらに説明するように、液冷式スカルキャップ160の上に配置されたトランスデューサ150を有する可撓性シェル110(例えば、ヘルメット)を備えることができ、トランスデューサ150のアレイを支持するためのインフラストラクチャをほとんど必要としない。患者が治療の完了を待っている間、患者は任意の椅子でスカルキャップ160及びシェル110を身に着けることが可能である場合がある。軽量設計は、患者が長時間、トランスデューサ150及び冷却キャップの重量と共に自身の頭部を保持することによる首の痛みを最小限に抑えることができる。可撓性シェル110は、各頭蓋骨の形状に一致することができる。そのような装置は、いくつかのトランスデューサ150を内側又は外側にさらに湾曲させる各患者の頭部の形状に応じた、治療間の微妙な変動を担うことができる。
【0054】
非侵襲的音響化学治療装置100は、頭部に着脱可能に適用することができる、いくつかのトランスデューサ150を有する剛性又は可撓性パッチを備えることができる。そのような態様は、臨床医が各パッチを個別に適用することを必要とする場合がある。個別のパッチを有することにより、各トランスデューサ150を個別に計画及び配置する必要なく、ある程度の治療の柔軟性を可能にすることができる。例示的な非侵襲的音響化学治療装置100は、パッチを繰り返し頭部に付着させることによって引き起こされる痛みを最小限に抑えることができ、この痛みはより高齢で具合の悪い患者にとって特に懸念される場合がある。
【0055】
非侵襲的音響化学治療装置100は、頭部に着脱可能に適用することができる、単一のトランスデューサ150を有するパッチを備えることができる。個々のトランスデューサ150は、最も高い治療柔軟性を提供することができる。そのような装置は、トランスデューサ150の適用を計画するための詳細なプロセスを必要とする場合がある。さらなる柔軟性が与えられることにより、例示的な非侵襲的音響化学治療装置100は、より大きなユーザビリティリスクに対応することができる。
【0056】
図2に見られるように、トランスデューサ150のサイズ及び形状は、開示された様々な態様により異なる。費用効果が高く簡単なシステムには、指向性音波を生成する、より大型のトランスデューサ150を使用することができる。本明細書の他の箇所でさらに説明するように、音波を曲げる音響レンズを各トランスデューサ150に適用することによって、大型トランスデューサ150の指向性を低くすることができる。頭部に一致することができるシステムには、より大型のトランスデューサ150よりも広く放射することができるより小型のトランスデューサ150を使用することができる。そのような小型のトランスデューサ150は、単一のアレイとして、撮像又はビームステアする、より高い能力を有していてもよい。
【0057】
図3は、本開示の少なくとも1つの態様による、患者の頭部の上に配置された経頭蓋音響化学治療装置100の部分破断図であり、複数のトランスデューサ150の部分図を示す。音波200を小さな点に集束させる代わりに、音波200をデフォーカスして、脳内の音波強度の空間的変動を最小限に抑えることができる。
【0058】
トランスデューサ150のサイズ及び形状は、各トランスデューサ150をデフォーカス又は集束させることができる。本明細書で使用される場合、集束という用語は、平面放出面を有するトランスデューサ150によって生成される波面よりも収束する音波面を指し、デフォーカスという用語は、平面放出面を有するトランスデューサ150によって生成される波面よりも発散する音波面を指す。波をより発散させるためにレンズが凹状又は凸状である必要があるかは、音波が低音響インピーダンスの領域から高音響インピーダンスの領域に遷移しているか、又は音波が高音響インピーダンスの領域から低音響インピーダンスの領域に遷移しているかに依存する。ここで、レンズが対象媒質(水/組織)よりも音響インピーダンスの高い材料で作製されている場合、音波は高インピーダンス材料から発生し、低音響インピーダンスの対象媒質へと遷移する。レンズが凹状である場合、レンズは、音波を「集束」してより収束させる。レンズが凸状である場合、レンズは音波を「デフォーカス」してより発散させる。
【0059】
図4は、本開示の少なくとも1つの態様による、凹面304を画定するレンズ302を有するトランスデューサ150の概略図である。レンズ302は、トランスデューサ150に音響的に結合されてもよく、又はトランスデューサと一体的に形成されてもよい。図示の例では、音波306が高インピーダンス材料から発生して低音響インピーダンスの対象媒体へと遷移し、それにより、音波306が対象組織に「集束」又は収束するように、レンズ302は、対象媒体(水/組織)よりも高い音響インピーダンスを有する材料で作製される。
【0060】
図5は、本開示の少なくとも1つの態様による、凸面310を画定するレンズ308を有するトランスデューサ150の概略図である。レンズ308は、トランスデューサ150に音響的に結合されてもよく、又はトランスデューサと一体的に形成されてもよい。図示の例では、レンズ308は、対象となる媒質(水/組織)よりも音響インピーダンスが高い材料から作製される。したがって、音波312は、高インピーダンス材料から発生して低音響インピーダンスの標的媒質に遷移し、それにより、音波312は標的組織に対して「デフォーカス」又は発散する。
【0061】
トランスデューサ150の焦点は、レンズ(図示せず)の材料及び形状にも依存する。レンズ302、308を使用することにより、トランスデューサ150を平坦にすることができ、製造コストを最小限に抑えることができる。凹面304を有するレンズ302及び凸面310を有するレンズ310の両方は、固定焦点を生成するように構成されてもよい。
【0062】
異なる焦点を作り出すためにその形状を調整することができるレンズを製造することが可能である場合がある。レンズとして機能する弾性の流体充填ポケットを作り出すことが可能である場合がある。流体は、ポケットの形状、したがってトランスデューサの焦点を調整するために、レンズの中又は外に圧送することができる。
【0063】
図6は、本開示の少なくとも1つの態様による、様々な音波を生成するために個別に励起することができる複数の素子150a~150hを有するトランスデューサ150の概略図である。
図6に示すように、複数のトランスデューサ素子150a~150hをアレイ状に配列して、収束、発散、又は平面音波を生成することができる。例えば、トランスデューサ素子150a~150hを所定の順序で作動させて、例えば、
図4に示す収束音波314、又は
図5に示す発散音波312などの収束/発散/平面音波を選択的に生成することができる。収束音波314を生成するために、例えば、外側トランスデューサ素子150a、150hが最初に励起され、時間遅延後に、隣接する内側トランスデューサ素子150b、150gが励起される。次の隣接する内側トランスデューサ素子150c、150fは、第2の時間遅延後に励起される。最後に、内側トランスデューサ素子150d、150eが、第3の時間遅延後に励起される。このパターンは、収束音波314を生成するために繰り返すことができる。第1、第2、及び第3の時間遅延は、等しくてもよいし、より複雑な音波を生成するために異なっていてもよい。あるいは、トランスデューサ素子150a~150hは、等しい又は異なる時間遅延を使用して、発散音波を生成するために逆の順序で励起されてもよい。トランスデューサ素子150a~150hは、音波を送信又は受信するように交換可能に構成することができる。
【0064】
図7は、本開示の少なくとも1つの態様による、同心リング410によって囲まれた内部素子420を有するトランスデューサ400の底面図である。各トランスデューサ150は、可変焦点を有する音波を生成するように適合及び構成することができる。これを達成するための1つの方法は、
図7に示すように、各トランスデューサ400が同心リング410(例えば、環状アレイ)を有することであり得る。各同心リング410は、異なる信号で駆動することができる。音波を集束させるために、内側素子420に向かう信号は、同心リング410の外側よりも徐々に遅延させることができる。各同心リング410からの音波は、ある点で収束することができる。環状アレイから来る音波をデフォーカスするために、同心リング410の外側の音波は、内側素子420と比べて徐々に遅延させることができる。環状アレイを形成する1つの方法は、等しい面積の同心リング410を用いることであり得る。別の態様では、環状アレイは、面積が不均等な同心リング410を備えてもよい。
【0065】
図8は、本開示の少なくとも1つの態様による、2次元(2D)グリッドアレイ450に配列された内部素子452を備えるトランスデューサの底面図である。2Dグリッド・トランスデューサ・アレイ450の各内部素子452は、異なる信号で駆動することができる。収束音波(例えば、「フォーカス」)を生成するために、内側素子454に適用される信号は、2Dグリッド・トランスデューサ・アレイ450の外側素子に適用される信号よりも徐々に遅延させることができる。発散音波(例えば、「デフォーカス」)を生成するために、外側素子452によって生成された音波は、内側素子454に対して徐々に遅延させることができる。一態様では、2Dグリッド・トランスデューサ・アレイ450の内部素子452の各々は、等しい面積を画定してもよい。別の態様では、2Dグリッドトランスデューサ450アレイの内部素子452の各々は、不均等な面積を画定してもよい。
【0066】
一態様では、トランスデューサ150、400、450は、アレイ状に配列された音響的/電気的に独立した部分を有する複数の圧電素子を備える単一のトランスデューサとして実装されてもよい。他の態様では、トランスデューサ150、400、450は、協調して動作する異なるトランスデューサとして実装されてもよい。複数の素子を有する単一のトランスデューサと、協調して動作する異なるトランスデューサとの間には、物理的観点からの区別はほとんど又は全くない。アレイの素子は、波長程度の大きさにすることができる。一態様では、トランスデューサ150、400、450は、
図7に示すように環状アレイとして、又は
図8に示すようにグリッドアレイとして実装された複数の素子を含む単一のトランスデューサとして実装されてもよい。別の態様では、トランスデューサ150、400、450は、複数の個々のトランスデューサとして実装されてもよい。
【0067】
一態様では、
図4~
図8に示すトランスデューサ150、400、450又はその素子の各々は非侵襲的であり、患者の身体部分に合うように適切なサイズ及び形状で実装することができる。また、トランスデューサ素子の個々の数及び配列は、患者の身体部分に合うように選択することができる。一態様では、トランスデューサ150、400、450又はその素子は、電気エネルギーを超音波エネルギーに変換する圧電材料又は単結晶材料から作製されてもよい。トランスデューサ150、400、450はまた、超音波エネルギーを受け取って電気エネルギーに変換することができる。トランスデューサ150、400、450の各々又はその素子は、協同的なトランスデューサ性能によって音波を生成するように適応的に集束することができる。例えば、トランスデューサ150、400、450の各々又はその素子は、以下に説明するようにコントローラによって送信機又は受信機のいずれかとして動作するように選択的に制御することができる。さらに、トランスデューサ150、400、450の各々又はその素子は、以下の説明でより詳細に論じられるように、収束、発散、又は平面音波を生成するように選択的に励起及び作動されてもよい。
【0068】
ここで
図4~
図8を参照すると、一態様では、トランスデューサ150、400、450によって生成された音波は、フェルゲンツ、すなわち音波面の曲率の尺度によって画定することができる。負のフェルゲンツは、音波面が点から離れて(すなわち、発散して)伝搬するときである。正のフェルゲンツは、音波面が点に向かって(すなわち、収束)伝搬するときである。ゼロフェルゲンツは、収束又は発散しない平面音波面である。フェルゲンツは、単一の音波面の特性である。単一の収束/発散音波面は、トランスデューサ150、400、450の複数の素子(例えば、環状アレイ400又はグリッドアレイ450を備えるトランスデューサ)によって生成することができる。
【0069】
一態様では、トランスデューサ150、400、450によって生成された音波は、位相及び/又は遅延によって特徴付けることができる。位相及び/又は遅延を利用して、2つの音波間の相対的な時間シフトを測定することができる。位相は、2つの音波の周期に対して2つの音波間でシフトした時間量(例えば、度又はラジアンで測定される)である。遅延は、2つの音波間でシフトした時間量の尺度(例えば、ミリ秒単位で測定される)である。遅延及び位相は、しばしば交換可能に使用される。例えば、「遅延」は度又はラジアンの単位で説明することができるが、「遅延」は「位相遅延」の略語であることはよく理解されている。単一の音波パルスの場合、位相シフトが周期的信号を必要とするため、2つの音波パルスのピーク間の遅延を時間的に論じることがより明確となる。音波を繰り返す場合、相対遅延は、しばしば位相に関して測定される。連続的で周期的な音波の場合、定義により、周期的信号は全周期シフトにわたって対称性を示すため、整数個の周期を遅延させても効果はないはずである。繰り返し音波(例えば、1000サイクルの正弦波)のパルスの場合、音波は整数サイクルだけ遅延させることができる。波束(wave packet)の開始及び終了は、一方の信号が他方の信号の前に開始/終了する場合に何らかのエッジ効果を有する。2つの波束の中央では、効果は生じない(信号が依然として重複している場合)。
【0070】
一態様では、トランスデューサ150、400、450は、点に収束する収束音波を生成することによって、「集束」した音波を生成するように適合及び構成されてもよい。別の態様では、トランスデューサ150、400、450は、「デフォーカス」した音波、例えば発散音波を生成するように適合及び構成されてもよい。他の態様では、トランスデューサ150、400、450は、音波が「デフォーカス」も「デフォーカス」もしない平面音波(例えば、ゼロフェルゲンツ)を生成するように適合及び構成されてもよい。
【0071】
様々な態様において、トランスデューサ150、400、450は、約20.00kHz~約12.00MHzの範囲の超音波周波数で駆動されてもよい。より具体的には、トランスデューサ150、400、450は、約650.00kHz~約2.00MHzの範囲の超音波周波数で駆動されてもよい。好ましい範囲では、トランスデューサ150、400、450は、約900.00kHz~約1.20MHzの範囲の超音波周波数で、より好ましくは約1.06MHzで駆動されてもよい。
【0072】
図9は、本開示の少なくとも1つの態様による、強め合うように干渉する、遅延のない2つの音響超音波パルス472、474のダイアグラム470である。前述したように、トランスデューサ150、400、450は、複数の音波面間の時間を協調させ、強め合うように干渉する波面を生成することによって、「集束」音波を生成するように適合及び構成することができる。音波面の協調は、音波面のフェルゲンツとは無関係である。波面が集束する点は、1つの信号を別の信号に対して遅延させることによって調整することができる。
図9に示すダイアグラム470は、相対遅延なしに生成された2つのパルス472、474を示す。2つのパルス472、474は、中心に到達すると強め合うように干渉し、そして、中心で集束して合成パルス474を生成すると言うことができる。左側の音響パルス472が右側の音響パルス474に対して遅延している場合、2つのパルス472、474は中心より左側の点で合流し、したがって、強め合う干渉の点を中心の左側にシフトさせる。同様に、右側の音響パルス474が右側の音響パルス474に対して遅延している場合、2つのパルス472、474は中心より右側の点で合流し、したがって強め合う干渉の点を中心の右側にシフトさせる。
【0073】
別の態様では、収束/発散/平面音波の混合は、1つの位置で合流し、強め合うように干渉するようにタイミングを合わせることができる。発散音波は、1つの位置で合流して弱め合うように干渉するようにタイミングを合わせることができる。
【0074】
トランスデューサ150、400、450によって生成された収束及び発散波面の制御は、前処理計画の一部として考慮することができる。前処理計画プロセスからの入力に基づいて、コントローラは、音波面が協調して所望の治療領域を優先的に標的とするように、トランスデューサ150、400、450を適応的に変調することができる。一態様では、コンピュータ断層撮影(CT)又は他の撮像源からのデジタル撮像及び通信(DICOM)画像は、特定の患者の治療領域を最適化する、カスタマイズされた変調用パターンを生成するための装置コントローラへの入力とすることができる。別の態様では、治療前計画は、特定の疾患状態に対して最適化された治療領域を生成する、好ましいトランスデューサタイプ又はトランスデューサタイプの配列の選択を含むことができる。別の態様では、患者インタフェースは、治療のための好ましい配列でトランスデューサを協調させる、治療前計画中に選択することができる様々な配列とすることができる。
【0075】
「デフォーカスされた」音波は、節及び腹の数に従って、治療される組織の体積に基づいて測定することができる。一部の体積にわたる強度又は圧力のヒストグラムを利用して、「デフォーカスされた」音波を測定することができる。一態様では、用量体積ヒストグラムは、音響化学療法を計画する際に利用することができる。あるいは、累積ヒストグラムを利用することができる。
【0076】
図10は、本開示の少なくとも1つの態様による、ガウスパルス信号によって変調された繰り返し信号からなる音響パルスパケット480の図である。一態様では、トランスデューサ150、400、450によって生成された音波は、振幅変調されてもよい。音響パルスパケット480は、正弦波などの繰り返し信号を、ガウスパルスで変調することによって生成することができ、ここで、繰り返し信号はガウスパルスから独立している。トランスデューサ150、400、450が変調信号によって駆動されると、ガウスパルスの形態である包絡線484に従って振幅が変化する音圧パルス482を生成する。図示の例では、繰り返し信号は正弦波であるが、繰り返し信号は多くの形態を取ることができる。繰り返し信号は、矩形パルス、三角形パルス、又は所定の数学的形状のパルスによって変調されてもよい。振幅変調に加えて、繰り返し信号は、パルス幅変調、デューティサイクル変調、位相変調、周波数変調、ランダム化位相変調されてもよく、又は所望の音響パルスパケットを生成するために任意の適切な変調技術を使用して変調されてもよい。繰り返し信号は、パルス間又はパルス内での変動を含むことができる。
【0077】
図11は、本開示の少なくとも1つの態様による、患者の頭部の上に配置された経頭蓋音響化学治療装置の部分破断図であり、患者の頭蓋骨510及び脳の部分図、並びに複数のトランスデューサ150を示し、1つのトランスデューサが患者の脳内にエネルギー200を放出している。
図11に示すように、頭蓋骨510の測定を行うか又は粗い画像を得ることが可能である場合がある。このことは、トランスデューサ150が剛性シェルに固定され、それらの相対的な位置及び配向が既知である場合に容易になる場合がある。大まかな測定を使用して、頭蓋骨厚さ「t」などの測定されたパラメータによって治療アルゴリズムを調整することができる。各トランスデューサ150は、音響パルスを送出し、エコーをリスンすることができる。エコーは、各トランスデューサ150の下方の頭蓋骨厚さ「t」の迅速な推定に使用することができる。患者の他の身体部分の腫瘍を治療するために、音響化学治療装置は、患者の身体に結合するように適合及び構成されてもよい。
【0078】
調整可能な焦点を有するトランスデューサ150を有する設計の場合、各トランスデューサ150の焦点は、治療計画を用いて事前に設定することができる。あるいは、トランスデューサ150は、頭部の温度読み取り値に基づいて又は頭蓋骨厚さ「t」の測定値に基づいて、自動的にトランスデューサの焦点を調整することができる。
【0079】
トランスデューサ150を駆動する電気駆動信号の振幅は、制御又は変調することができる。場合によっては、治療される頭部又は他の身体部分の温度に基づいて、トランスデューサ150を駆動する電気駆動信号を変調することが有益である場合がある。例えば、温度センサが温度の急激な上昇を検出している場合、トランスデューサ150の振幅を減少させること、ある期間遮断すること、又はデューティサイクルを減少させることができる。音響パルスの強度を変調することにより、時間平均音響強度を調節して、細胞への熱損傷及び場合によっては壊死性細胞死を引き起こすことができる温度未満(例えば、42℃未満)に腫瘍細胞の温度を維持しながら、増感剤を活性化することができる。別の態様では、音響化学療法は、様々な異なる周波数で機能することができる。各周波数は、特定の厚さの頭蓋骨に対して効率的に頭蓋骨510を透過することができる。様々な周波数を使用することにより、非侵襲的音響化学治療装置100は、広範囲の頭蓋骨厚さ「t」で動作することができる。
【0080】
トランスデューサ150が複数の周波数で動作することができる態様では、各トランスデューサ150の周波数は、手動で又は自動的に選択することができる。前述の説明で述べたように、トランスデューサ150は、約20.00kHz~約12.00MHzの範囲の超音波周波数で駆動されてもよい。より具体的には、トランスデューサ150は、約650.00kHz~約2.00MHzの範囲の超音波周波数で駆動されてもよい。好ましい範囲では、トランスデューサ150は、約900.00kHz~約1.20MHzの範囲の超音波周波数で、より好ましくは約1.06MHzで駆動されてもよい。周波数は、医師によって予め選択することができる。周波数は、頭部の解剖学的構造(例えば頭蓋骨厚さ「t」)の測定値に基づいて選択することができる。例えば、各トランスデューサ150は、各トランスデューサに最も近い頭蓋骨510の厚さを測定するために一連のパルスを送出することができる。頭蓋骨厚さ「t」の測定結果に基づいて、アルゴリズムを使用して、頭蓋骨厚さ「t」に最も適し得る周波数のセット又は周波数の範囲から周波数を選択し、それに従ってトランスデューサ150を励起させることができる。
【0081】
図2に見られるように、トランスデューサ150のサイズ及び形状は、開示された様々な態様により異なる。費用効果が高く簡単なシステムには、指向性音波を有し得る、より大型のトランスデューサ150を使用することができる。本明細書の他の箇所でさらに説明するように、音波を曲げる音響レンズを各トランスデューサ150に適用することによって、大型トランスデューサ150の指向性を低くすることができる。頭蓋骨に一致することができるシステムには、より大型のトランスデューサ150よりも広く放射することができる、より小型のトランスデューサ150を使用することができる。そのような小型のトランスデューサ150は、単一のアレイとして、撮像又はビームステアする、より高い能力を有していてもよい。
【0082】
音波200を小さな点に集束させる代わりに、
図4に示すように、音波200をデフォーカスして脳内の音波強度の空間変動を最小限に抑えることができる。トランスデューサ150のサイズ及び形状は、各トランスデューサ150をデフォーカス又は集束させることができる。デフォーカスしたトランスデューサは、
図5に見られるように、凸状放出面310を有するトランスデューサ150を使用して形成することができる。
図4に見られるように、トランスデューサの設計は、音が集束できる曲率中心を有する凹状放出面304を使用して、各トランスデューサ150からの音を集束させることができる。
図6に示すように、トランスデューサ150a~150hのアレイを使用して、収束、発散、又はより複雑な音波を生成することができる。
【0083】
各トランスデューサ150は、周波数の少なくとも1つが所与の頭蓋骨厚さ「t」に対してほぼ最適に透過できるように、いくつかの周波数を繰り返すことができる。各トランスデューサ150はまた、ある周波数から別の周波数に連続的に掃引してもよい。周波数は、各トランスデューサ150に対して、各トランスデューサに最も近い頭蓋骨510の厚さに基づいて予め(例えば、医師による治療計画の間に)選択することができる。治療の前に、各トランスデューサ150は、試験信号を送信し、反射音を監視して、どの周波数がそのトランスデューサ150に対して最もよく機能し得るかを自動的に決定することができる。試験信号は、パルスエコーの遅延を測定することによって、直接頭蓋骨厚さ「t」を測定するために使用することができ、又は反射音響エネルギーの相対量を検出するために使用することができる。
【0084】
各トランスデューサ150は、広域スペクトル超音波トランスデューサで構成することができ、又は特定の周波数で動作するように設計された、いくつかのより小型のトランスデューサ(例えば、
図6~
図8に示す圧電素子)で構成することができる。各トランスデューサ150は、頭部から反射された波を監視するように特別に設計された素子を有することができる。トランスデューサ150がいくつかのより小型のトランスデューサ150で構成されている場合、一方のトランスデューサ150が音を送信している間、残りのトランスデューサ150を使用して到来する音響パルスを監視することができる。
【0085】
音響化学治療法で機能するすべての周波数のうち、一般的な頭蓋骨厚さ「t」の範囲を最もよくカバーするように、周波数のサブセットを選択することができる。多くの公約数を共有する周波数(例えば、1MHz及び2MHzなどの高調波)は、2つの周波数間の透過ピークの多くが共有され得るため、最も多くの頭蓋骨厚さをカバーする良好な選択とはならない場合がある。透過ピークは異なる頭蓋骨厚さで発生し得るため、公約数が多くない、又は公約数が一切ない周波数(例えば、互いに素な数)は、周波数に関して良好な選択となる場合がある。
【0086】
図12は、本開示の少なくとも1つの態様による、複数の周波数にわたる強度透過率を示すチャート700である。
図12に示すように、4mm~9mmの異なる頭蓋骨厚さにわたる5つの異なる周波数の透過である。1.107MHzの第1の周波数702、1.052MHzの第2の周波数704、1.000MHzの第3の周波数706、0.961MHzの第4の周波数708、及び0.898MHzの第5の周波数である。異なる頭蓋骨厚さを良好にカバーすることができる。この例では、各頭蓋骨厚さは、そのエネルギーの75%以上を透過することができる少なくとも1つの周波数を有することができる。これは、898kHz~1.107MHzの周波数、すなわちわずか0.2MHzの範囲において達成することができる。
【0087】
組織の吸収層を通る音の透過は、厚さの関数として単調に減少しない場合がある。代わりに、頭蓋骨厚さがその層内の音の波長の半分の倍数である場合、透過を高めることができる。同様に、頭蓋骨厚さが4分の1波長(A/2倍の中間)の奇数倍である場合、透過率を低減することができる。
【0088】
図13Aは、本開示の少なくとも1つの態様による、ミリメートル単位の頭蓋骨厚さに対する1MHzでの強度透過率及び圧力反射率を示すチャート720であり、
図13Bは、波長単位の頭蓋骨厚さに対する1MHzでの透過率及び反射率を示すチャート730である。
図13A及び
図13Bに示すように、様々な頭蓋骨厚さを通過する1MHzの音波の透過である。強度透過率722及び反射率724に関して、
図7Aは、頭蓋骨厚さをミリメートル単位で示し、
図13Bは、頭蓋骨厚さを波長の倍数で示す。強度透過率722は、頭蓋骨が半波長の倍数であるときは常にピークに達することができる。同様に、反射率724として示されている反射音の割合は、頭蓋骨が半波長の倍数であるときは常に最小となることができる。
【0089】
強度透過率722及び圧力反射率724は、頭蓋骨厚さ及び周波数の両方の関数とすることができる。
図14Aは、本開示の少なくとも1つの態様による、周波数の関数として強度透過率722を示すチャート740であり、
図14Bは、周波数の関数として反射率724を示すチャート750である。
図14Aのチャート740の右側には、0.0から1.0の範囲の強度透過率722のスケール742があり、
図14Bのチャート750の右側には、-1.0から+1.0の範囲の反射率724のスケールがある。
図14A及び
図14Bは、頭蓋骨厚さ及び周波数によって強度透過率722及び反射率724がどのように変化するかを示す。負の反射率は、ピーク透過が発生している場合は常に達成することができる。負の反射率は、反射波が入射波に対して180°位相シフトされ得ることを示すことができる。
図14Aのチャート740に示されるように、強度透過率722は、約1.0の最大割合744及び約0.4の最小割合746を有し、これは、
図13A及び
図13Bのチャート720、730に示される最大/最小割合と一致する。
図14Bに示されるチャート750は、反射率724が約0.0の最小割合754及び約0.8の最大割合756を有することを示し、これは
図13A及び
図13Bのチャート720、730に示される最大/最小割合と一致する。
【0090】
無理数だけ異なる周波数は、異なる厚さにおけるピーク透過を有することができるため、良好な選択となる場合がある。黄金比(例えば、「最も有理数近似しにくい無理数(most irrational number)」)は、周波数の選択に有用である場合がある。選択された周波数の透過は、同じ頭蓋骨厚さ「t」でのピークを回避するのに十分ではない場合がある。
【0091】
2つの周波数が特定の厚さでピーク透過率を共有することも許容され得るが、共有ピークは、自然に発生すると予想される厚さの外側の頭蓋骨厚さ「t」で発生するものとする。装置が各頭蓋骨厚さ「t」で最良の周波数(例えば、最大透過率)を選択することができる場合、限られた数の周波数を用いて多くの頭蓋骨厚さ「t」における最適なカバレッジを得ることは、選択された頭蓋骨厚さ「t」における最良の周波数の平均透過率を最大化すること、又は選択された頭蓋骨厚さ「t」内の最良の周波数の最小透過率を最大化することを意味することができる。
【0092】
脳内への音の効率的な透過を可能にするために、患者の頭部の毛髪を剃るか短くする必要がある場合がある。いくつかの態様では、毛髪をそのままにしておくことが可能になる場合がある。櫛状構造は、音を透過させるために、毛髪を通過して多くの位置で頭蓋骨に接触することができる。毛髪はまた、音が比較的妨げられずに透過することを可能にするために、濡れて艶消しされてもよい。
【0093】
図15は、本開示の少なくとも1つの態様による、多組織頭蓋骨モデルに入射する平面波762の場の強度を示すチャート760である。
図15を参照すると、頭蓋骨は、短い距離で超音波エネルギーの大部分を吸収することができる。挿入損失764(頭蓋骨を音波200に加えることによって失われ得るエネルギーの量)は、約12dBを中心とすることができる。さらに3dB分ごとの損失が、エネルギーの約半分が減少することに相当する場合がある。12dBの損失は、頭蓋骨の表面に残されている皮膚の表面に導入されるエネルギーの16分の1に相当することができる。このため、頭蓋骨は、経頭蓋音響化学治療中に発熱する場合がある。
【0094】
表1は、頭蓋骨のモデルにおいて使用され得るパラメータの概要である。頭蓋骨の固有の音響特性に加えて、皮膚は厚さ2.5mmであると仮定することができ、頭蓋骨は厚さ約6.8 mmであると仮定することができる。
図15は、頭部モデル内の距離の関数として、場の強度(dB)の観点から音響強度を示す。挿入損失764の強調表示された領域は、界面で失われたエネルギーのジャンプ及び頭蓋骨内の急激な減衰を強調する。
【0095】
【0096】
このモデルは、様々なヒトの頭蓋骨厚さの平均を使用する。「前頭骨、頭頂骨、及び後頭骨」の厚さは、「男性について(mm単位で)それぞれ6.58、5.37、及び7.56であり、女性についてそれぞれ7.48、5.58及び8.17であった。」 本明細書の他の箇所で述べられているように、ヒトの頭蓋骨は、性別及び解剖学的位置によってかなり異なる。モデルは平均減衰量を表すことができるが、頭蓋骨のより厚い部分はより大きな減衰量を有する場合がある。一般に、頭蓋骨が2.7mm相当追加されるごとに、減衰は3dB増加する(2倍)場合がある。
【0097】
このモデルは、組織の平面層に衝突する単純な平面波モデルに基づくことができる。組織の各層は、均質で均一な厚さであると仮定することができる。このモデルでは、頭蓋骨の様々な厚さと一致する音波長(λ)の影響は無視される。すべての反射波が失われ、脳に再入射しないと仮定することもできる。
【0098】
Pichardoらは、新たに切除したヒトの頭蓋骨を介した、様々な周波数における超音波の透過を調査した。Pichardoらは、0.270、0.836、及び1.402MHzの周波数における、いくつかの位置での7つの頭蓋骨の吸収エネルギーの割合を報告している。1MHzで失われたエネルギーを特には測定しなかったが、彼らの研究は、挿入損失が約12dBを中心とし得るという補間及び推定を可能にする。彼らの研究はまた、挿入損失が頭蓋骨及び解剖学的位置によって異なると予測可能であると確認することができる。
【0099】
図16は、本開示の少なくとも1つの態様による、複数の周波数における、新たに切除されたヒト頭蓋骨のエネルギー吸収率772を示すチャート770である。
図16に示すように、Pintonらはまた、頭蓋骨厚さ8mmの部分に沿った9点の1MHzでの減衰を測定し、12.6±1.33dBの挿入損失(厚い頭蓋骨部分に起因するよりも高い損失)を見出した。単純化された頭部モデル及び異なる実験室から得られた測定値の両方は、挿入損失(頭蓋骨をモデルに加えることによって失われるエネルギーの量)が、約12dB(16分の1)を中心とし、かなりの変動を伴い得ることで一致している。
【0100】
音が頭蓋骨を通過するときに失われるエネルギーは、主に頭蓋骨内で熱に変換される場合がある。頭蓋骨の温度が上昇し始めると、熱は経時的に近くの組織に分散する場合がある。発熱の大部分は、頭蓋骨の外面に由来し、皮膚及び骨の他の層に分散する場合がある。特定の度合いを超えると、血液は十分な熱を運び去ることができず、骨及び皮膚の温度は安全でないレベルにまで上昇する可能性がある。血液は、通過する各連続するトランスデューサによって温められ、組織から追加の熱を吸収する能力を失い得るため、システムにトランスデューサを追加すると、この閾値に到達し得る度合いが減少する可能性がある。
【0101】
発熱の影響に対抗する方法はいくつか存在し得る。特に、冷却、断続的な治療、監視、及びトランスデューサ変調を使用して、発熱の結果を低減することができる。
【0102】
図17は、本開示の少なくとも1つの態様による、患者の頭部の上に配置された経頭蓋音響化学治療装置の部分破断図であり、複数のトランスデューサ150の部分図及び冷却システム600の全体図を示す。
図17に示す冷却システム600は、頭蓋骨及び周囲組織の温度を安全なレベル内に維持するように実装することができる。トランスデューサ150と患者の頭部との間に冷却層(例えば、水)を設けることができる。冷却層は、各患者の頭部に一致することができる可撓性膜又はバルーンから作製することができる。大型の冷却層は再利用可能とすることができ、したがって、各使用の間に洗浄を必要とする場合がある。
【0103】
冷却システム600は、水などの冷却剤が循環するための入口及び出口を有する可撓性キャビティ(図示せず)から作製することができる。患者の頭部は、弾性開口部を有する凹形状(例えば、「ボウル」)に挿入することができる。弾性開口部は、患者の頭部に対してシールすることができる。水は、患者の頭部とボウルとの間の空間を満たすことができる。
【0104】
単一のキャビティ設計と同様に、水を循環させて、水の温度が上昇しないようにすることができる。そのようなシステムの1つの利点は、冷却システム600内の水が患者の頭部と直接接触できることであり得る。患者の毛髪の周りの空気は水によって除去することができ、これにより、超音波トランスデューサ150を患者の頭部に結合するのを助けることができる。
【0105】
図18は、本開示の少なくとも1つの態様による、患者インタフェース650の斜視図である。冷却システム600は、冷却チャネル630が全体に分布したキャップ160とすることができる。キャップ160は、冷却チャネル630の単一の長いループを有することができ、又はいくつかの独立したループを有することができる。いくつかの冷却ループを有するシステムは、マニホールドを介して単一の入口及び出口管に接続することができ、又はそれらを独立して制御することができる。水又は他の熱伝達流体は、冷却チャネル630を通して循環し、トランスデューサ150、患者の身体、又はそれらの組み合わせによって生成された熱を交換することができる。
【0106】
水は、熱を吸収し得る頭部のすべての領域を通って流れることができる。水を圧送して、水の冷却効率を低下させる水温の上昇を防ぐことができる。複数のトランスデューサ150を有するパッチと同様に、各パッチは、それ自体の冷却チャネル630を有することができる。冷却チャネル630は、トランスデューサ150に向かうワイヤよりも大きくて重い場合がある水充填チューブとすることができる。固有の冷却チャネル630の数を最適化して、冷却層の重量が過剰にならないようにすることができる。
【0107】
発熱の影響は、温度センサで容易に監視することができ、流体冷却システム600で低減することができる。超音波トランスデューサ150と頭部との間の冷たい脱気水の層は、頭部をトランスデューサ150に結合すること、及び頭蓋骨の温度を制御することという二重の機能を果たすことができる。音波照射の前に、頭部を一定流量の冷水によって数分間冷却することができる。治療が始まると、頭蓋骨の温度を連続的に監視することができ、頭蓋骨全体にわたって治療を調節することができ、又は、各トランスデューサ150を個別に調節することができる。頭蓋骨温度を連続的に監視しなくても、すべての患者に対して安全域を確保しながらの断続的な治療及び連続的な冷却を伴う安全な治療アルゴリズムを考案することができる。断続的な治療はまた、超音波増感剤の周りの酸素拡散の速度制限ステップのために、連続的に行われる同じ有効治療時間よりも効果的である場合がある。
【0108】
表面温度監視のみを必要とし得る可能性がある。いずれの場合も、深部組織の様々な温度測定を使用して頭蓋骨全体の温度を監視することが可能である場合がある。プローブが冷却層の効果に支配されるのを防ぐために、温度の任意の表面測定を水の冷却層から断熱する必要がある場合がある。
【0109】
患者の頭部の温度を監視する必要がある場合がある。温度センサ(図示せず)が単に冷却層と頭部との間に配置される場合、温度センサは、頭部温度と冷却層温度との何らかの組み合わせを読み取る可能性がある。
【0110】
温度センサを冷却層の温度から隔離することができるいくつかの方法が存在し得る。冷却層と各温度センサとの間に断熱層を配置することができる。そのような場合、各温度センサの周囲の領域は、冷却をあまり受けないか、又は全く受けない可能性がある。
【0111】
図19は、本開示の少なくとも1つの態様による、赤外線(IR)温度センサの相対感度プロット802を示すチャート800である。
図19に示すように、一方向のみ(例えば、一方向性)で測定する温度プローブ(図示せず)を利用することができる。一方向性温度センサの例は、IR温度センサとすることができる。IR温度センサは、黒体放射を介して物体が発する赤外光を測定する。IR温度センサは、小さな範囲の角度(例えば、受光コーン)から来る放射を受け付ける。本出願では、1つ又は複数のIRセンサは、各センサの受光コーンが患者の頭部に面することができるように配向することができる。上記の1つ又は複数の方法を組み合わせて、患者の頭部の温度を正確に監視することができる。
【0112】
図20は、本開示の少なくとも1つの態様による、一般的な非侵襲的音響化学治療システム900のブロック図である。非侵襲的音響化学治療システム900は、超音波トランスデューサアレイ904の動作を制御して適切な超音波を生成するために、超音波トランスデューサアレイ904に結合されたコントローラ902を備える。超音波トランスデューサアレイ904は、患者インタフェース906に結合され、患者インタフェースは、超音波トランスデューサアレイ904によって生成された超音波を患者の体内の腫瘍細胞に蓄積する増感剤908に結合する。ソノルミネッセンスと呼ばれるプロセスにより、超音波は、増感剤908を活性化し、腫瘍細胞の壊死を引き起こす光を生成する。
【0113】
音響化学療法の治療は、超音波への曝露時にのみ細胞傷害性になる増感剤908の薬剤を利用する。活性化すると、一般に「超音波増感剤」と呼ばれる音響化学治療薬は、腫瘍細胞を死滅させる細胞傷害効果を生じるROSを生成する。音響化学療法は、光線力学療法と比較して、超音波によって非侵襲的に到達することができる組織深さがはるかに深くなる。一態様では、増感剤908は、他の増感剤908、例えば、ヘマトポルフィリン、Rose Bengal、クルクミン、チタンナノ粒子、塩素e6、及びそれらの任意の組み合わせの中でも、5-アミノレブリン酸(5-ALA)を含んでもよい。さらに、音響化学プロセスは、キャビテーションを「シード」するために腫瘍組織にマイクロバブルを注入すること、腫瘍組織に気泡を蓄積させることを可能にすること、又は腫瘍組織を酸化するために薬剤を注入することを含んでもよい。本明細書に記載される音響化学療法プロセスは、化学療法、免疫療法、放射線療法、及び/又はHIFUなどの1つ又は複数の他の補助療法と組み合わせることができる。
【0114】
非侵襲的音響化学治療システム900は、悪性又は非悪性にかかわらず、様々な腫瘍を治療し、腫瘍腔の周囲の領域を治療するために利用することができる。腫瘍腔の周囲の領域は、悪性腫瘍において再発及び最終的な死亡を引き起こす細胞を含む。一態様では、非侵襲的音響化学治療システム900は、例えば、経直腸音響化学療法を介して前立腺癌を治療し、経膣音響化学療法を介して子宮頸癌を治療するように構成することができる。
【0115】
一態様では、コントローラ902は、超音波トランスデューサアレイ904を駆動するように構成されてもよい。コントローラ902は、1つ又は複数の制御アルゴリズム設定/反射評価を実行し、頭蓋骨厚さに対して駆動周波数を調整するように構成されてもよい。これは自動的に行うことができる。一態様では、制御アルゴリズムは、超音波トランスデューサアレイ904の駆動波形の「デューティサイクル」をパルス又は制御して、治療領域内の腫瘍細胞の熱壊死を防止しながら、増感剤908を活性化するのに十分な低い時間平均音響強度を有する、時間ピーク音響強度の高い超音波を生成するように構成されてもよい。別の態様では、制御アルゴリズムは、腫瘍と重複するように遅延された波のパケット(波束、packets of waves)を生成するように構成されてもよい。別の態様では、制御アルゴリズムは、超音波の強度を制御するように構成されてもよい。
【0116】
別の態様では、制御アルゴリズムは、超音波の位相を制御するように構成されてもよい。別の態様では、制御アルゴリズムは、超音波の位相をランダム化するように構成されてもよい。位相ランダム化を用いて音波を変調することは、音波面が各サイクルで全く同じ位置ではなく、治療領域内の様々な擬似ランダム位置で強め合うように結合する、治療領域にわたって広範で安定したカバレッジを促進する。この制御スキームは、より均一な治療領域を提供して、広範で安定した治療カバレッジを支援し、治療領域内における治療量以下のデッドスポットを回避する。位相ランダム化は、治療環境への適応においてさらなる利益をもたらす。いくつかのタイプの音響環境で全く同じ励起パターンを繰り返すと、定在波が形成される可能性がある。定在波は、意図しない治療エネルギーを患者に送達する可能性があるため、本質的に危険である。音波形の位相ランダム化を提供する制御スキームは、定在波につながる可能性がある繰り返し励起のリスクを軽減することができる。
【0117】
フィードバックループをコントローラ902に戻して、他の変数の中でも、組織深さ、組織厚さ、組織体積、頭蓋骨厚さ、温度などのin situ変数に基づいて、超音波トランスデューサアレイ904への駆動信号を調整することができる。一態様では、コントローラ902は、超音波発生器内に位置してもよく、又は他の場所に位置してもよい。様々な態様では、in situ変数は、疾患状態又は体内位置を含んでもよい。疾患状態は、疾患状態ごとに異なるように駆動される代替治療用超音波トランスデューサプローブを含んでもよい。フィードバックループの例は、
図22~
図24に関連して以下に説明される。
【0118】
一態様では、超音波トランスデューサアレイ904は、上述したトランスデューサ150、400、450に従って構成することができる。しかしながら、様々な態様では、超音波トランスデューサアレイ904のフォームファクタは、頭部以外の患者の身体の様々な位置で超音波を結合するように構成されてもよい。例えば、超音波トランスデューサアレイ904は、とりわけ、脳、肺、乳房、胃、肝臓、膵臓、腸、直腸、結腸、膣、精巣の腫瘍、例えば神経膠芽腫を、腫瘍が悪性であるか非悪性であるかにかかわらず治療するために増感剤908を活性化する超音波を生成するように構成されてもよい。
【0119】
様々な構成において、超音波トランスデューサアレイ904は非侵襲的であり、非侵襲的に標的腫瘍細胞に到達することができる超音波を生成する。上述したように、超音波トランスデューサアレイ904は、他の変数の中でも、組織深さ、組織厚さ、組織体積、頭蓋骨厚さなどのin situ変数に基づいて最適化された、適応的に集束する超音波を生成するために、環状アレイ、2Dグリッドアレイ、線形アレイなどとして構成されてもよい。他の態様では、超音波トランスデューサアレイ904は、前治療計画又は安全性に基づいて、超音波を適応的に集束又は調整することができる。一態様では、コントローラ902は制御アルゴリズムを実行して、協同的なトランスデューサ性能のための適応的な集束を含む、選択的に収束/発散する超音波を生成する。超音波音響アレイ904は、コントローラ902によって制御され得る送信機及び受信機機能を実行するように構成されてもよい。
【0120】
超音波トランスデューサアレイ904は、超音波トランスデューサアレイ904によって生成された超音波振動を患者の体内に容易に音響結合させるために患者インタフェース906に結合される。患者インタフェース906は、超音波トランスデューサアレイ904と同様に、非侵襲的である。一態様では、患者インタフェース906は、音響結合を容易にするために超音波トランスデューサアレイ904と患者の身体との間の空気を除去するように構成されてもよい。一態様では、患者インタフェース906は、患者の身体から過剰な熱を除去するように構成されてもよい。いくつかの構成では、患者インタフェース906は、例えば温度センサなどの様々なセンサを備えてもよい。そのようなセンサからの信号は、フィードバックとしてコントローラ902に提供することができる(例えば、
図22を参照)。そのようなフィードバックは、所望の超音波を生成するように超音波トランスデューサアレイ904を制御するために利用することができる。患者インタフェース906はまた、超音波トランスデューサアレイ904と患者の身体との間の音響結合を改善するためにゲル又はヒドロゲル層を含んでもよい。一態様では、患者インタフェース1022は、局所的に冷却を適用するように構成されてもよい。一態様では、患者インタフェース1022は、処理ユニット902へのセンサフィードバックのために構成されてもよい。
【0121】
最後に、非侵襲的音響化学治療システム900は、腫瘍細胞によって吸収され得る増感剤908を含む。音響化学療法は、増感薬などの増感剤908と、患者インタフェース906によって患者の体内に結合される超音波トランスデューサアレイ904によって生成される超音波と、分子状酸素との組み合わせを必要とする。これらの構成要素は個々には非毒性であるが、一緒に組み合わせると、腫瘍細胞を死滅させるために細胞傷害性ROSが生成される。音響化学療法は、患者の体内に侵入する超音波を提供するように構成することができ、深くてアクセスが困難な広範囲の腫瘍を治療するために使用することができる。
【0122】
図21は、本開示の少なくとも1つの態様による、
図20に示す音響化学治療システム900の説明
図1000である。一態様では、音響化学治療システム900は、超音波発生器1002内に位置することができるコントローラ902を備える。超音波発生器1002は、コントローラ1012と、ユーザインタフェース1004と、コントローラ1012を作動させるためのフットスイッチ1006と、患者の頭部の上に配置されたキャップ又はヘルメット1008とを備える。超音波トランスデューサアレイ904との間で電気信号を運ぶケーブル1010が、トランスデューサアレイ904と超音波発生器1002とを結合する。超音波トランスデューサアレイ904は、スカルキャップ160などの患者インタフェース906上に配置された超音波トランスデューサ150、400、450のアレイを備える。超音波発生器1002は、超音波トランスデューサ150、400、450を駆動して超音波200を発生させ、超音波は患者の体内に結合されて、患者に摂取されて腫瘍細胞に吸収された増感剤908を励起する。コントローラ1012は、収束、発散、若しくは平面音波、又はより複雑な音波を達成するように音波を成形する。前述のように、一態様では、増感剤908は、例えば、ソノルミネッセンスプロセスで活性化されるALA増感薬を含んでもよい。
【0123】
図22は、本開示の少なくとも1つの態様による、
図20及び
図21に示す音響化学治療システム900の概略
図1100である。音響化学治療システム900のコントローラ902は、処理ユニット1104に結合され、ユーザからの入力を受信し、出力をユーザに提供するように構成されたユーザインタフェース1102を備える。処理ユニット1104は、メモリ、制御回路、又はそれらの組み合わせに結合されたプロセッサ又はマイクロコントローラであってもよい。超音波トランスデューサアレイ904は、1つ又は複数の超音波トランスデューサ1114と、1つ又は複数の監視超音波トランスデューサ1116とを備える。同じ超音波トランスデューサ素子が、超音波送信機機能並びに受信機機能を実施するように構成されてもよいことが理解されよう(例えば、
図24を参照)。患者インタフェース906は、患者1122の温度を監視するための1つ又は2つ以上の温度センサ1118を備える。患者インタフェース906はまた、患者1122の温度を低下させるための冷却システム1120を備える。一態様では、患者インタフェース906は、音響結合を可能にするためにトランスデューサ1114と患者1122との間の空隙を排除するように構成されてもよい。
【0124】
処理ユニット1104は、前述のように様々な制御アルゴリズムを実施するための機械実行可能命令を実行するように構成される。処理ユニット1104は、制御アルゴリズムを実行するためのそのような機械実行可能命令及び処理エンジンを格納するためのメモリを備えることができる。処理ユニット1104はまた、デジタル及びアナログ電子コンポーネントを有するハードウェアで実装されてもよい。処理ユニット1104は、多重化システム1112、及び超音波トランスデューサ1114を駆動するのに適した電源1106に結合される。
【0125】
超音波トランスデューサ1114は、患者1122に投与される増感剤908を活性化するために患者1122の身体に結合される。一態様では、少なくとも1つの超音波増感剤908の作用剤は、患者1122の選択的組織に優先的に蓄積するように構成されてもよい。監視超音波トランスデューサ1116は、患者1122からの音響フィードバックを監視し、アナログ-デジタル変換器1110(ADC)を介して、処理ユニット1104にフィードバックとして提供される信号を生成する。音響フィードバックに加えて、電力監視装置1108が、電源1106を監視し、ADC1110を介して処理ユニット1104にフィードバックを提供する。処理ユニット1104は、音響フィードバック信号及び/又は電力監視信号に基づいて超音波トランスデューサ駆動信号を制御して、患者1122の体内で所望の超音波を達成する。一態様では、少なくとも1つの超音波トランスデューサ1114は、選択的に収束及び発散する音波を出力するように構成される。トランスデューサ1114は、環状アレイ又はグリッドアレイとして構成されてもよい。トランスデューサ1114は、複数の電極を有するように構成されてもよい。トランスデューサ1114は、反射された音響信号を受信するように構成されてもよい。
【0126】
処理ユニット1104は、温度センサ1118に結合され、ADC1010を介して患者の温度フィードバックを受信する。処理ユニット1104は、患者温度フィードバック信号に少なくとも部分的に基づいて冷却システム1120を制御する。
【0127】
一態様では、処理ユニット1102は、8W/cm2未満の時間平均強度出力を有するパルス音響信号を生成するように構成される。処理ユニット1102は、複数の波サイクルにわたって強め合う干渉を含む振幅変調音響信号を適用するように適合されている。処理ユニット1102は、広い組織カバレッジを提供するために、様々な遅延シーケンスで音波のパケット(音波束、packets of acoustic waves)を出力するようにさらに構成されてもよい。処理ユニット1102は、周波数適応アルゴリズムを実行して音響信号の送信を最適化するように構成されてもよい。処理ユニット1102は、音響信号の段階的ランダム化を制御するように構成されてもよい。
【0128】
様々な態様では、本開示は、トランスデューサ904と、患者インタフェース906と、患者1122の体内で増感剤908を活性化させるように適合されるコントローラ902とを備える音響化学治療装置を提供する。トランスデューサ904は、1つ又は複数のトランスデューサ1114、1116を備えることができ、コントローラ902は、トランスデューサ904を駆動して、発散、収束、又は平面音波を生成するために広帯域範囲の超音波周波数を生成させるように構成される。
【0129】
一態様では、患者インタフェース906は、トランスデューサ904によって生成された音波を患者1122の体内に送信し、トランスデューサ904を患者1122に音響的に結合するように構成される。一態様では、患者インタフェース906は、患者1122の身体への結合音響エネルギーとして患者1122内に蓄積する任意の過剰な熱を除去するための冷却システム1120を提供する。一態様では、患者インタフェース906は、一体型冷却システム1120を備えてもよい。患者インタフェース906は、ゲル充填ヒドロゲルキャップ又は冷却チャネルを有する水充填キャップを備えてもよい。一態様では、患者インタフェース906は、コントローラ902の処理ユニット1104にフィードバックを提供するための1つ又は複数のセンサ1118を備える。センサ1118は、例えば、温度センサ、特定の方向の温度を測定するための光学温度センサ、音響信号を送信するために使用されるのと同じトランスデューサ904を含むことができる音響センサを含むことができる。患者インタフェース906は、トランスデューサ904と患者1122の身体との間の音響結合を改善するために、患者インタフェース906から空気を除去するように構成されてもよい。別の態様では、患者インタフェース906は、患者1122を冷却するように構成されてもよい。さらに別の態様では、患者インタフェース906は、例えば、周波数安定性を達成するためにトランスデューサを同じ温度に保つために、トランスデューサ904を冷却するように構成されてもよい。
【0130】
一態様では、患者インタフェース906は、患者の様々な解剖学的構造に合うように適合及び構成されてもよい。例えば、患者インタフェース906は、例えば、とりわけ、脳、肺、乳房、胃、肝臓、膵臓、腸、直腸、結腸、膣、精巣に位置する腫瘍を治療するように特に適合された音響化学療法のために、患者の解剖学的構造に合うように適合及び構成されてもよい。音響化学治療装置は、患者の胴体又は四肢を包むように適合され、かつ/又は骨内の骨肉腫を治療するために利用することができる。コントローラ902は、患者インタフェース906、又はトランスデューサ904若しくは患者インタフェース906などの音響化学治療装置のいずれかを検出し、様々な腫瘍を治療するために最適化された音波を生成するための治療アルゴリズムを選択するように適合されてもよい。トランスデューサ904又は患者インタフェース906は、例えば、単線シリアルEEPROMを備える識別(ID)回路1115、1119を使用して識別することができる。ID回路1115、1119のEEPROMは、予めプログラムされた固有のシリアル番号及びメモリ部の両方を含むことができる。メモリ部のいずれか又はすべては、製品の追跡及びアタッチメントの識別を可能にするために、最終機器製造業者によって恒久的にロックすることができる。他の識別技術は、トランスデューサ904又は患者インタフェース906のインピーダンスを検出し、インピーダンスを治療アルゴリズムと関連付けることを含んでもよい。
【0131】
一態様では、コントローラ902は、電気駆動信号を生成して、音波を生成するように1つ又は複数の超音波トランスデューサ904を作動させ、患者1122の体内に位置する増感剤908を活性化させるように構成される。一態様では、コントローラ902によって生成された電気駆動信号は、1つ又は複数の超音波トランスデューサ904を作動させて、様々な強度、振幅、又は周波数の音波を生成させることができる。別の態様では、音波は、振幅変調、周波数変調、位相変調、連続、不連続、パルス化、ランダム化、又はそれらの組み合わせであってもよい。他の態様では、音波は、波サイクルのパケットで生成することができ、パケット当たりのサイクル数は、例えば、集束超音波パルスとは異なる所望の結果を達成するように予め決定することができる。他の態様では、コントローラ902は、周波数変調音波を生成するために周波数変調用信号を生成するように構成される。一態様では、コントローラは、定在音波を低減するために使用され得るパルス内又はパルス間変動信号を生成するように構成することができる。
【0132】
一態様では、コントローラ902は、複数の波サイクルにわたって強め合うように干渉する、振幅が変調された音響超音波信号を適用するように構成される。一態様では、複数の音波の各々の強度は、複数の音波の各々によって運ばれる超音波エネルギーが脳又は他の身体部分などの患者1122の組織にとって安全である安全範囲内にとどまる。一態様では、コントローラ902は、強め合う波面を生成する振幅変調音波を生成するようにトランスデューサ904を駆動するように構成されてもよい。
【0133】
音響化学治療装置が1つのトランスデューサ904を備える一態様では、コントローラ902は、駆動信号を生成してトランスデューサ904を作動させ、長時間の音響超音波波束(a long acoustic ultrasonic wave packet)を生成させるように構成されてもよい。一態様では、コントローラ902は、駆動信号を生成してトランスデューサ904を作動させ、ガウスパルスによって変調された正弦波振幅からなる超音波波束を生成させるように構成されてもよい(例えば、
図10を参照)。別の態様では、コントローラ902は、駆動信号を生成してトランスデューサ904を作動させ、矩形パルスによって変調された正弦波振幅からなる超音波波束を生成させるように構成されてもよい。別の態様では、コントローラ902は、駆動信号を生成してトランスデューサ904を作動させ、三角形パルスによって変調された正弦波振幅からなる超音波波束を生成させるように構成されてもよい。超音波波束は、波束内変動又は波束間変動(intra or inter wave packet variation)を含むことができる。一態様では、コントローラ902は、駆動信号を生成してトランスデューサ904を作動させ、音響超音波パルスを生成させるように構成されてもよい。超音波パルスの音波面は、超音波エネルギーを特定の領域に集束させるために収束するか、又は超音波エネルギーをより大きな領域に広げるために発散するかのいずれかであってもよい。
【0134】
他の態様では、音響化学治療装置が2つ以上のトランスデューサ904を備える場合、コントローラ902は、駆動信号を生成して2つ以上のトランスデューサ904を作動させ、音響超音波パルスを生成させるように構成されてもよく、個々の波面は、収束しているか発散しているかにかかわらず、超音波エネルギーを集束させるために同時に同じ位置で合流する。一態様では、コントローラ902は、トランスデューサ904ごとに周波数駆動を適合させることができる。
【0135】
図23は、本開示の少なくとも1つの態様による、別個の送信機トランスデューサ930及び受信機トランスデューサ934を有する音響化学治療システム920の概略図である。音響化学治療システム920は、送信機トランスデューサ930を駆動するための電気信号を生成するように信号発生器924を制御するためのシステムコントローラ922を備える。電気信号は増幅器926によって増幅され、駆動信号は整合ネットワーク928によって送信機トランスデューサ930に結合されて、送信機トランスデューサ930に伝達される電力を最大にする。送信機トランスデューサ930は、治療領域内の組織932(例えば、病変)に音波を送信する。受信機トランスデューサ934は、組織932によって放出された音波を検出する。受信機トランスデューサ934の出力は弱い電気信号であり、弱い電気信号をフィルタ938によるフィルタリングなどのさらなる処理のためにノイズ耐性があり、十分強い出力信号に変換する電子前置増幅器936に提供される。フィルタ938の出力は、フィードバック信号をデジタル形式でシステムコントローラ922に提供するアナログ-デジタル変換器940(ADC)に提供される。受信機トランスデューサ934から受信されたフィードバック信号に基づいて、システムコントローラ922は、送信機トランスデューサ930に適用される駆動信号を調整することができる。調整は、駆動信号の変調、強度、周波数、位相、若しくはランダム化、又はそれらの任意の組み合わせを調整することを含むことができる。フィードバック信号は、組織深さ、組織厚さ、組織体積、頭蓋骨厚さ、温度、治療領域までの距離、又はそれらの組み合わせを表すことができる。
【0136】
図24は、本開示の少なくとも1つの態様による、単一の送信及び受信トランスデューサ962を有する音響化学治療システム950の概略図である。音響化学治療システム950は、送信機モードのトランスデューサ962を駆動するための電気信号を生成するように信号発生器954を制御するためのシステムコントローラ952を備える。電気信号は、増幅器956によって増幅され、送信機/受信機(T/R)スイッチ958に適用される。トランスデューサ962が送信機モードにあるとき、T/Rスイッチ958は、整合ネットワーク960を介して駆動信号をトランスデューサ962に結合して、トランスデューサ962に伝達される電力を最適化する。送信機モードでは、トランスデューサ962は、音波を治療領域内の組織964(例えば、病変)に送信する。受信機モードでは、トランスデューサ962は、組織964によって放出された音波を検出する。トランスデューサ962の出力は、整合ネットワーク960によってT/Rスイッチ958に結合される弱い電気信号である。T/Rスイッチ958は、弱い電気信号を電子前置増幅器966に提供し、電子前置増幅器は、弱い電気信号を、フィルタ968によるフィルタリングなどのさらなる処理のためにノイズ耐性があり、十分強い出力信号に変換する。フィルタ968の出力は、デジタル形式でシステムコントローラ952にフィードバック信号を提供するADC970に提供される。受信機モードのトランスデューサ962から受信されたフィードバック信号に基づいて、システムコントローラ952は、送信機モードのトランスデューサ962に適用される駆動信号を調整することができる。調整は、駆動信号の変調、強度、周波数、位相、若しくはランダム化、又はそれらの任意の組み合わせを調整することを含むことができる。フィードバック信号は、組織深さ、組織厚さ、頭蓋骨厚さ、温度、治療領域までの距離、又はそれらの組み合わせを表すことができる。
【0137】
音響化学治療システム920、950、1100及び音響化学治療システム920、950、1100の構成要素の様々な態様を説明してきたが、ここで本開示は、本明細書で上述した音響化学治療システム920、950、1100で実施することができる音響化学治療プロセスの説明に移る。開示を簡潔かつ明確にするために、以下の
図25~
図31による音響化学治療プロセスを
図20~
図24に関連して説明する。
【0138】
図25は、本開示の少なくとも1つの態様による、音響化学治療プロセス1200の概要である。音響化学治療プロセスの第1の段階1202において、患者は、本明細書に記載される音響化学増感剤908を投与され、複数の超音波トランスデューサ150を備える超音波トランスデューサアレイ904を身に着ける。音響化学増感剤908は、経口的に、若しくは他の天然開口部を介して、注射、静脈内、局所的に、又は他の適切な技術によって投与することができる。音響化学治療プロセスの第2の段階1204において、音響化学増感剤908は腫瘍細胞1206に蓄積する。音響化学治療プロセス1200の第3の段階1208において、超音波発生器1002によって生成された超音波1210は、音響化学増感剤908を活性化する。音響化学治療プロセス1200の第4の段階1212において、音響化学増感剤908は腫瘍細胞1206の一連の死滅を引き起こす。
【0139】
図26は、本開示の少なくとも1つの態様による、増感剤908の選択的蓄積の初期段階を説明する腫瘍細胞1206の
図1300である。図示の例では、増感剤908は1302において、癌細胞1206のミトコンドリア1304に吸収されている。患者に、プロドラッグである5-ALA増感剤908を経口投与し、ヘム1306の生合成経路1316をオーバードライブにする。一般に、身体の自然なフィードバック機構は、過剰なヘム1306の生成を防止する。ヘム1306は、5-ALAを内因的に生成するアミノレブリン酸シンターゼ(ALAS)酵素の活性を低下させる。増感剤908を外因的に導入することにより、ALAS酵素が不活性化されても、ヘム1306の生合成は生成を続ける。その結果、プロトポルフィリンIX(PpIX)1308は、多形性膠芽腫(GBM)を含む多くの種類の癌細胞1206に優先的に蓄積する。PpIX 1308は、光子を吸収することによって溶存分子酸素をROSに変換する触媒である。プロトポルフィリンIX 1308は、クロロフィル(すなわち、ポルフィリン)と同じクラスの分子であり、光を化学エネルギーに変換することができる。
【0140】
図27は、本開示の少なくとも1つの態様による、増感剤908の選択的蓄積の増加1322を説明する癌細胞1206の
図1320である。
図27に示すように、PpIX 1308は、活性化合物であり、ヘム1306の生合成経路1316の最後から2番目の中間生成物である。癌細胞1206のミトコンドリア1304におけるPpIX 1308の蓄積は、5-ALA増感剤908の蓄積1322の増加及びPpIX 1308のヘム1306への変換の減少(フェロキレート化酵素の発現の減少)によるものである。
【0141】
図28は、本開示の少なくとも1つの態様による、音響化学療法を受けている、
図26及び
図27に示す癌細胞1206の
図1330である。超音波トランスデューサ904は、癌細胞1206及びミトコンドリア1304に侵入する超音波200を生成する。超音波200は、ソノルミネッセンスと呼ばれるプロセスによって光1312を生成する。ソノルミネッセンスは、超音波200が流体気泡1332を崩壊させてキャビテーション1334を引き起こし、その過程で光1312を生成するときに発生する。光1312の生成は、超音波トランスデューサ904から遠く離れて行われる。ソノルミネッセンスによって生成された光1312は、PpIX 1308を活性化してROS 1336を生成する。ソノルミネッセンスは、超音波200の強度が十分である場所であればどこでも発生する可能性があり、これにより、音響化学療法は光線力学療法よりもはるかに深部を治療することが可能になる。ROS 1336種は、酸化ストレスを引き起こし、結果として、癌細胞1206は光線力学療法と同じであるプログラム細胞死1314(アポトーシス)を受ける。
【0142】
図29は、本開示の少なくとも1つの態様による、ソノルミネッセンスプロセスを説明する
図1400である。
図1400は、参照により本明細書に組み込まれるDetlef Lohse、Sonoluminescence、Inside a micro-reactor、Nature、418巻、381~383頁(2002)に見出すことができる。定在超音波200では、低音波圧力において、音波圧力の増加が気泡1402の崩壊を引き起こすまで、気泡1402は劇的に膨張する。気泡1402内の温度が10,000Kを超えて上昇すると、気泡1402内のガスが部分的に電離し、プラズマ1404が形成される。最後に、電子とイオンの再結合が、発光1406をもたらす。
【0143】
図30は、本開示の少なくとも1つの態様による、増感剤908の選択的蓄積を説明する癌細胞1502の概略
図1500である。図示の例では、5-ALA増感剤908は、癌細胞1502に全身投与され、癌細胞1502のミトコンドリア1504に吸収される。5-ALA増感剤908を患者に経口投与し、ヘム1506の生合成経路をオーバードライブにする。患者の身体の自然なフィードバック機構は、過剰なヘム1506の生成を防止する。ヘム1506は、内因的に5-ALAを生成するアミノレブリン酸シンターゼ(ALAS)酵素の活性を低下させる。ALA増感剤908を外因的に導入することにより、ALAS酵素が不活性化されても、ヘム1506の生合成は生成を続ける。その結果、PpIX 1508は、多形性膠芽腫(GBM)を含む多くの種類の癌細胞1502に優先的に蓄積する。
【0144】
PpIX 1508は、活性化合物であり、ヘム1506の生合成経路1510の最後から2番目の中間生成物である。癌細胞1502のミトコンドリア1504中のPpIX 1508の蓄積は、5-ALA増感剤908の取り込みの増加、PpIX 1508のヘム1506への変換の減少、及びフェロキレート化酵素1512の発現の減少に起因する。
【0145】
PpIX 1508は、光子を吸収することによって溶存分子酸素をROSに変換する触媒である。プロトポルフィリンIX 1508は、クロロフィル(すなわち、ポルフィリン)と同じクラスの分子であり、光を化学エネルギーに変換することができる。
【0146】
図31は、本開示の少なくとも1つの態様による、音響化学療法を受けている、
図30に示す癌細胞1502の概略
図1600である。超音波トランスデューサ904は、癌細胞1502及びミトコンドリア1504に侵入する超音波200を生成する。超音波200は、キャビテーション1606及びソノルミネッセンス1604と呼ばれるプロセスを介して光1602を生成する。光1602の生成は、超音波トランスデューサ904から遠く離れて行われる。ソノルミネッセンス1604によって生成された光1602は、PpIX 1508を活性化してROS 1608を生成する。ソノルミネッセンス1604は、超音波200の強度が十分である場所であればどこでも発生する可能性があり、これにより、音響化学療法は光線力学療法よりもはるかに深部を治療することが可能になる。ROS 1608種は、酸化ストレスを引き起こし、結果として、癌細胞1502は光線力学療法と同じようにプログラム細胞死1610(アポトーシス)を受ける。
【0147】
音波200と水性媒体との相互作用は、キャビテーション1606をもたらす場合がある。キャビテーション1606は、適切な超音波条件下で、ガス充填気泡の核生成、成長、及び内破的崩壊を伴う。ソノルミネッセンス1604では、慣性キャビテーション1606は、気泡がほぼ共鳴サイズまで成長し、激しく崩壊する前に最大にまで膨張することを伴う。この爆縮によって放出されるエネルギーは、周囲の微小環境において最大10,000Kの温度及び最大81MPaの圧力をもたらす。このような極端な温度及び圧力は、破裂点においてソノケミカルリアクターを作り出す。キャビテーション1606は、2つの作用機構の下で、音響化学療法においてROS 1608を生成する。
【0148】
可能な作用機構の1つはソノルミネッセンス1604である。ソノルミネッセンスは、音波200によって生成されたエネルギーの癌細胞1502への曝露時に光1602が生成されるプロセスである。別の可能な作用機構は、熱分解であり得る。熱分解は、慣性キャビテーション1606と同時に起こる局所的な温度上昇が増感剤908を分解し、他の内因性気質と反応してROS 1608を生成することができるフリーラジカルを生成するプロセスである。ROS 1608はSDTで重要な役割を果たすが、いくつかの態様では、音響化学療法はソノメカニカル機構に基づいてもよい。この結論は、HP感作細胞が、慣性キャビテーションを誘発しないことが示された強度の音波200に感受性であり得るという観察に基づいていた。
【0149】
本開示の様々な態様では、音響化学療法は、1つ又は複数の増感剤908を使用して実施することができる。音響化学療法に使用されるそのような増感剤908は、様々な化合物から選択することができる。これらの化合物としては、限定されないが、Photofrinなどのポルフィリン、プロトポルフィリンIX前駆体、Rose Bengal及びその誘導体などのキサンテン系増感剤908、アクリジンオレンジ、メチレンブルー、クルクミン、ヒポクレリン、インドシアニングリーン、ナノ粒子/微粒子増感剤コンジュゲートが挙げられる。音響化学療法に関するさらなる情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2014年10月17日に受領され、2014年11月23日に受理され、2015年1月13日にオンライン公開されたDavid Costleyら、Treating Cancer With Sonodynamic Therapy:A Reviewの107~117頁に見出すことができる。様々な態様では、本開示に記載される音響化学治療技術は、ヒトだけでなく動物にも適用することができる。一態様では、本開示に記載された音響化学治療技術は、哺乳動物に適用することができる。これに関して、本開示全体を通して「患者」という用語の使用は、ヒト及び動物を同様に包含することを意図している。
【0150】
様々な態様では、本開示に記載される音響化学治療技術は、身体の他の部分に適合されてもよい。身体のこれらの他の部分は、自然開口部(口、鼻腔、肛門、膣)又は血管内アクセスなどの低侵襲プロセスを介してアクセスすることができる。音響化学治療装置は、例えば、肝臓、胃、乳房、又は肺などの特定の臓器の腫瘍に到達するための、可撓性で操作可能なカテーテルシャフトを有するように特に適合されてもよい。音響化学治療装置は、胴体又は四肢を包むように適合することができ、骨内の骨肉腫を治療するために利用することができる。
【0151】
様々な態様では、本開示に記載される音響化学治療技術は、補助療法と共に使用するように適合されてもよい。開示される音響化学治療技術は、化学療法、免疫療法、放射線療法、HIFU/温熱療法を含む他の癌治療に利用することができる。さらに、開示された音響化学治療技術は、脳内の酸素を増加させるか、又は脳腫瘍内の酸素を優先的な酸素濃度まで増加させて、効果的な音響化学治療を提供する追加の薬剤を利用する。開示された音響化学治療技術は、腫瘍を効果的に標的とするように改変又はカプセル化された増感剤を利用することができる。開示された音響化学治療技術は、ノーズチューブを用いて全身にO2を送ることができる。開示された音響化学治療技術は、複数の増感剤を併用することができ、腫瘍内に気泡を導入して腫瘍を酸素化し、より多くのキャビテーションを作り出し、撮像のための可能なコントラスト機構を提供することを含むことができる。
【0152】
様々な態様では、本開示に記載される音響化学治療技術は、超音波撮像での使用に適合することができる。このプロセスは、腫瘍に向かう超音波用の造影剤を追加することを含んでもよい。
【0153】
本明細書で使用される場合、プロセッサ又は処理ユニットは、何らかの外部データソース、通常はメモリ又は何らかの他のデータストリームに対して動作を実行する電子回路である。この用語は、本明細書では、いくつかの特化型「プロセッサ」を組み合わせたシステム又はコンピュータシステム(特にシステム・オン・チップ(SoC))内の中央プロセッサ(中央処理装置)を指すために使用される。
【0154】
本明細書で使用される場合、システム・オン・チップ又はシステム・オン・チップ(SoC又はSOC)は、コンピュータ又は他の電子システムのすべてのコンポーネントを統合する集積回路(「IC」又は「チップ」としても知られる)である。これは、デジタル、アナログ、混合信号、及び多くの場合無線周波数機能のすべてを、単一の基板上に含むことができる。SoCは、マイクロコントローラ(又はマイクロプロセッサ)を、グラフィックス処理ユニット(GPU)、Wi-Fiモジュール、又はコプロセッサなどの高度な周辺機器と統合する。SoCは、内蔵メモリを含んでも含まなくてもよい。
【0155】
本明細書で使用される場合、マイクロコントローラ又はコントローラは、マイクロプロセッサを周辺回路及びメモリと一体化するシステムである。マイクロコントローラ(又はマイクロコントローラユニット用MCU)は、単一の集積回路上の小型コンピュータとして実装されてもよい。これは、SoCと同様であり得る。SoCは、そのコンポーネントの1つとしてマイクロコントローラを含むことができる。マイクロコントローラは、メモリ及びプログラマブル入出力周辺機器と共に1つ又は複数のコア処理装置(CPU)を含むことができる。強誘電体RAM、NORフラッシュ又はOTP ROMの形態のプログラムメモリも、多くの場合、チップ上に含まれ、少量のRAMも含まれる。パーソナルコンピュータ又は様々な個別チップからなる他の汎用用途で使用されるマイクロプロセッサとは対照的に、マイクロコントローラは組み込み用途に利用することができる。
【0156】
本明細書で使用される場合、コントローラ又はマイクロコントローラという用語は、周辺装置とインタフェースするスタンドアロンIC又はチップ装置とすることができる。これは、その装置の動作(及び接続)を管理する外部装置上のコンピュータ又はコントローラの2つの部分間のリンクであってもよい。
【0157】
本明細書に記載される任意のプロセッサ又はマイクロコントローラは、Texas Instrumentsによる商標名ARM Cortexとして知られているものなどの任意のシングルコア又はマルチコアプロセッサによって実装されてもよい。一態様では、プロセッサは、Texas Instrumentsから入手可能なLM4F230H5QR ARM Cortex-M4Fプロセッサコアであってもよく、例えば、256KBの単一サイクル・フラッシュ・メモリのオンチップメモリ、又は他の40MHzまでの不揮発性メモリ、40MHzを超える性能を改善するためのプリフェッチバッファ、32KBの単一サイクルのシリアル・ランダム・アクセス・メモリ(SRAM)、StellarisWare(登録商標)ソフトウェアがロードされた内部読み出し専用メモリ(ROM)、2KBの電気的消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、1つ又は複数のパルス幅変調(PWM)モジュール、1つ又は複数の直交エンコーダ入力(QEI)アナログ、12個のアナログ入力チャネルを有する1つ又は複数の12ビットアナログ-デジタル変換器(ADC)を含み、その詳細は製品データシートとして入手可能である。
【0158】
一態様では、プロセッサは、同じくTexas Instruments製の商標名Hercules ARM Cortex R4で知られているTMS 570及びRM4xなどの2つのコントローラベースのファミリを備える安全コントローラを備えることができる。安全コントローラは、スケーラブルな性能、接続性、及びメモリオプションを提供しながら、とりわけ、高度な統合安全機能を提供するために、IEC 61508及びISO 26262の安全性重視用途向けに特別に構成することができる。
【0159】
本明細書で使用される場合、「コンポーネント」、「システム」、「モジュール」などの用語は、電気機械装置に加えて、ハードウェア、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせ、ソフトウェア、又は実行中のソフトウェアのいずれかのコンピュータ関連エンティティを指すことができる。例えば、コンポーネントは、プロセッサ上で実行されるプロセス、プロセッサ、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、プログラム、及び/又はコンピュータであってもよいが、これらに限定されない。例示として、コンピュータ上で実行されているアプリケーション及びコンピュータの両方をコンポーネントとすることができる。1つ又は複数のコンポーネントは、プロセス及び/又は実行スレッド内に存在してもよく、そして、コンポーネントは、1つのコンピュータ上に局在化されてもよく、及び/又は2つ以上のコンピュータ間に分散されてもよい。「例示的」という用語は、本明細書では、例、事例、又は例証として役立つことを意味するために使用される。本明細書で「例示的」として説明される態様又は設計は、必ずしも他の態様又は設計よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。
【0160】
本明細書で使用される場合、制御回路という用語は、例えば、処理ユニット、プロセッサ、マイクロコントローラ、マイクロコントローラユニット、コントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、プログラマブル・ゲート・アレイ(PGA)、フィールドPGA(FPGA)、プログラマブルロジック装置(PLD)、システム・オン・チップ(SoC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、グラフィックス処理ユニット(GPU)などの任意のスタンドアロン又は組み合わせ電子回路とすることができる。様々な態様によれば、本明細書に記載されるプロセスフロー図は、制御回路などのデジタル装置によって実施されてもよい。
【0161】
本開示の様々な態様は、実行ユニット及び論理回路のコンテキストにおける命令処理及び分配を説明しているが、本開示の他の態様は、機械によって実行されると機械に少なくとも1つの態様と一致する機能を実行させる機械可読有形媒体に記憶されたデータ及び/又は命令によって達成することができる。一態様では、本開示の関連する機能は、機械実行可能命令で具現化される。命令を使用して、命令でプログラムされた汎用又は専用プロセッサに、本開示に記載される機能のステップを実行させることができる。本開示の態様は、本開示の態様による1つ又は複数の動作を実行するようにコンピュータ(又は他の電子装置)をプログラムするために使用され得る命令を格納した機械又は非一時的コンピュータ可読媒体を含み得るコンピュータプログラム製品又はソフトウェアとして提供されてもよい。あるいは、本開示による機能は、機能を実行するための固定機能ロジックを含む特定のハードウェアコンポーネントによって、又はプログラムされたコンピュータコンポーネントと固定機能ハードウェアコンポーネントとの任意の組み合わせによって実行されてもよい。
【0162】
様々な開示された態様を実行するための論理をプログラムするために使用される命令は、DRAM、キャッシュ、フラッシュメモリ、又は他の記憶装置などのシステム内のメモリ内に格納することができる。さらに、命令は、ネットワークを介して、又は他のコンピュータ可読媒体を介して配布することができる。したがって、機械可読媒体は、機械(例えば、コンピュータ)よって読み取り可能な形態で情報を格納又は送信するための任意の機構を含むことができ、限定はされないが、フロッピーディスケット、光学ディスク、コンパクトディスク、読み出し専用メモリ(CD-ROM)、及び光磁気ディスク、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、磁気若しくは光カード、フラッシュメモリ、又は電気的、光学的、音響的若しくは他の形態の伝搬信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)を介したインターネット上の情報の送信に使用される有形の機械可読記憶装置である。したがって、非一時的コンピュータ可読媒体は、機械(例えば、コンピュータ)によって読み取り可能な形態で電子命令又は情報を格納又は送信するのに適した任意の種類の有形の機械可読媒体を含む。
【0163】
様々な例が、特定の開示された態様を参照して説明されている。様々な態様は、限定ではなく例示を目的として提示されている。当業者であれば、本開示の範囲又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な変更、適合、及び修正が可能であることを理解するであろう。
【国際調査報告】