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特表2022-524301開放式炭素ナノ材料連続成長の装置および作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(54)【発明の名称】開放式炭素ナノ材料連続成長の装置および作製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/164 20170101AFI20220422BHJP
   C01B 32/159 20170101ALI20220422BHJP
   C01B 32/162 20170101ALI20220422BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20220422BHJP
   C01B 32/15 20170101ALI20220422BHJP
   C01B 32/186 20170101ALI20220422BHJP
   C23C 16/26 20060101ALI20220422BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20220422BHJP
   C23C 16/54 20060101ALI20220422BHJP
   C23C 16/56 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
C01B32/164
C01B32/159
C01B32/162
C01B32/168
C01B32/15
C01B32/186
C23C16/26
C23C16/02
C23C16/54
C23C16/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546443
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(85)【翻訳文提出日】2021-04-19
(86)【国際出願番号】 CN2019121124
(87)【国際公開番号】W WO2020078480
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】201811222119.8
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521168162
【氏名又は名称】深▲せん▼市納設智能装備有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN NASO TECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】3009 GUANGUANG RD UN 1B BLDG A6 CHINA MERCHANTS GUANGMING SCIENCE PARK GUANGMING DIST SHENZHEN, GUANGDONG PROVINCE 518000 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鍾 国倣
(72)【発明者】
【氏名】張 燦
【テーマコード(参考)】
4G146
4K030
【Fターム(参考)】
4G146AA07
4G146AA11
4G146AA12
4G146AB04
4G146AB06
4G146AC16B
4G146AD28
4G146BA12
4G146BA48
4G146BB22
4G146BB23
4G146BC09
4G146BC23
4G146BC42
4G146BC44
4G146CB01
4G146DA03
4G146DA07
4G146DA23
4G146DA26
4G146DA27
4G146DA28
4G146DA29
4G146DA30
4G146DA40
4G146DA43
4G146DA45
4K030AA09
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA27
4K030BB01
4K030CA02
4K030CA12
4K030CA17
4K030DA03
4K030DA04
4K030DA08
4K030EA03
4K030EA11
4K030FA10
4K030FA17
4K030GA14
4K030HA11
4K030JA05
4K030JA10
4K030KA10
4K030KA26
4K030KA41
4K030KA43
4K030LA01
(57)【要約】
本発明は、開放式炭素ナノ材料連続成長の装置および作製方法を開示し、該装置は、金属箔帯供給システムと、CVDシステムと、収集システムとを備える。該方法は、前処理またはいかなる前処理されていない金属箔帯を、金属箔帯供給システムを介して化学気相堆積システムに連続的に供給し、該システムにおいて化学気相堆積方法を介して金属箔帯表面に必要とされる炭素ナノ材料を堆積させ、次に、収集システムを介して直接収集または後処理システムに統合することにより、炭素ナノ材料に対して後処理を直接行い、更には炭素ナノ材料の最終製品を直接生産することである。本発明におけるすべてのシステムは、空気を遮断する封止空間内ではなく、開放大気中に配置され、毎日24時間の連続無停止運行を実現し、炭素ナノ材料の成長効率を大幅に向上させることができる
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放式炭素ナノ材料連続成長装置であって、
いずれも開放ガス中にある金属箔帯供給システムと、CVDシステムと、収集システムとを備え、
前記金属箔帯供給システムは、金属箔帯を大気中から前記CVDシステムに搬送するためのものであり、
前記CVDシステムは、炭素ナノ材料を反応生成するためのものであり、
前記金属箔帯は、前記CVDシステム内に炭素ナノ材料を付着させた後に前記収集システムに入り、
前記CVDシステムは、CVD炉と、制御システムとを備え、前記CVD炉は、前記制御システムと信号接続され、前記CVD炉の出入り口に、1つのスリット結合器がそれぞれ封止連結され、前記スリット結合器の軸方向には、一端が前記CVD炉に連通され、他端が大気に開放されるスリットが少なくとも1本設けられ、且つ2つの前記スリット結合器上の各スリットが1対1で対応し、前記金属箔帯は、各対のスリットのみを介して前記CVD炉に出入りし、
前記スリット結合器の各々には、前記スリットの外周に設けられた冷却水出入り配管からなる冷却回路が少なくとも1本設けられ、前記冷却水出入り配管内に冷却水が通設されてスリット結合器を冷却し、
前記スリット結合器の各々には、複数の吸気管がさらに設けられ、各吸気管の末端は、前記CVD炉の異なる部位に封止導通され、前記CVDシステムに必要とされるキャリアガスおよび反応ガスは、前記吸気管を介して前記CVD炉の各部位に注入し、前記CVD炉内を常に正圧または微正圧状態とし、前記吸気管は、前記CVD炉へ必要とされるキャリアガスおよび反応ガスを供給する唯一の通路となるように構成され、
前記スリット結合器には、前記スリットに連通される保護ガス注入口がさらに設けられ、前記CVDシステムに必要とされる保護ガスは、前記保護ガス注入口を介して前記スリット結合器のスリットに直接導通され、前記CVDシステム内部で生じた排気ガスは、両端のスリットを介して排出され、且つ前記スリット内で前記保護ガスと混合された後に、前記スリットの開放端により噴出され、前記排気ガスと保護ガスとが前記スリットの外部へ噴出する作用により、全ての前記スリットを常に動的にシールし、空気が前記スリットを介して前記CVD炉内に漏れたり、浸透したりしないようにする、開放式炭素ナノ材料連続成長装置。
【請求項2】
前記CVDシステム内には、前記制御システムと信号接続され、前記金属箔帯が前記CVDシステムを介して炭素ナノ材料を生成する状況をオンラインで監視し、信号を前記制御システムにフィードバックするためのオンライン品質監視フィードバック装置がさらに備えられ、
前記制御システムは、前記信号に基づいて前記CVD炉内の炭素ナノ材料の成長条件を制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記CVDシステムは、ドラフト内に配置され、前記ドラフトの排気管は、排気ガス処理部に接続され、且つ前記ドラフトの排気量が前記CVDシステムにおける各種ガスの総排出量よりもはるかに多い、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記制御システム内には、前記キャリアガス、反応ガス、および保護ガスの流量を制御し、前記キャリアガスおよび保護ガスの流量を調整制御することにより、前記スリットから排出される可燃性爆発性ガスの濃度を爆発限界以下に低下させる安全監視制御サブシステムが設けられ、
前記ドラフトの排気管には、前記安全監視制御サブシステムと信号接続され、前記CVD炉内から前記ドラフト内に排出される気流の強さを監視するための気流センサが設けられ、前記ドラフト内の気流が安全閾値に満たなかった場合、または運行過程において気流が安全閾値以下に低下した場合、前記気流センサは、信号を前記安全監視制御サブシステムに送信し、前記安全監視制御サブシステムは、前記信号を受信した後に、前記CVD炉の加熱電源および前記吸気管内のキャリアガスと反応ガスの搬送を強制的に遮断して警報を発し、
前記CVDシステム内には、前記安全監視制御サブシステムと信号接続され、前記CVD炉のスリットから排出される可燃性爆発性ガスの濃度を監視するためのガス濃度センサがさらに設けられ、
前記ガス濃度センサは、前記可燃性爆発性ガスの濃度が爆発下限に近づいたと検出した場合、危険信号を前記安全監視制御サブシステムに送信し、前記安全監視制御サブシステムは、前記危険信号を受信した後に、前記可燃性爆発性ガスの流量を強制的に遮断するとともに、CVDシステムの加熱電源をオフにして警報を発し、
前記ドラフトが存在する作業場内には、安全監視制御サブシステムと信号接続され、前記作業場内の可燃性爆発性ガス、酸素および一酸化炭素の濃度を監視するための第2ガス濃度センサがさらに別途設けられてもよく、前記第2ガス濃度センサは、前記可燃性爆発性ガスの濃度が爆発下限に近づき、酸素の濃度が警告濃度に低下し、または一酸化炭素の濃度が規制外になったことを検出した場合、危険信号を前記安全監視制御サブシステムに送信し、前記安全監視制御サブシステムは、前記危険信号を受信した後に、前記可燃性爆発性ガスの流量を強制的に遮断し、更にはキャリアガスおよび反応ガスの流量を強制的に遮断するとともに、CVDシステムの加熱電源をオフにして警報を発する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記金属箔帯供給システムは、送出しローラーホイールと、駆動ローラーホイールと、ガイドローラーホイールとを備え、
前記送出しローラーホイールは、前記金属箔帯を支持するためのものであり、
前記駆動ローラーホイールは、前記金属箔帯を前進させるためのものであり、
前記ガイドローラーホイールは、前記金属箔帯の移動軌跡を調整するためのものであり、
前記収集システム内には、炭素ナノ材料が付着した金属箔帯を巻回して収集するための巻取りローラーホイールが設けられ、前記送出しローラーホイール、駆動ローラーホイール、ガイドローラーホイール、および巻取りローラーホイールは、それぞれ前記制御システムと信号接続され、
隣接する前記送出しローラーホイールと、駆動ローラーホイールと、ガイドローラーホイールと、巻取りローラーホイールとの間は、互いに非同期ローラーホイールであり、
また、少なくとも前記金属箔帯には1つの応力センサが設けられて、および/または送出しローラーホイール、駆動ローラーホイール、ガイドローラーホイールおよび巻取りローラーホイールには1つのトルクセンサが設けられ、 前記応力センサおよび/または前記トルクセンサは、前記制御システムにそれぞれ信号接続され、前記制御システムは、前記応力センサおよび/または前記トルクセンサから送信される信号に基づいて、前記送出しローラーホイール、駆動ローラーホイール、ガイドローラーホイールおよび巻取りローラーホイールの回転速度およびトルクを調整制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記金属箔帯のロール供給システムは、前記金属箔帯の移動軌跡上に配置され、前記金属箔帯に対して洗浄、研磨および/または表面触媒コーティングを行うための前処理システムがさらに備えられ、
前記洗浄は、表面脱脂、不純物除去および酸化物除去を含むが、これらに限られず、
前記研磨は、機械研磨、化学研磨、または電解研磨のうちの1つまたは複数の種を含むが、これらに限られず、
前記表面触媒コーティングの方法は、物理コーティング、化学コーティング、または電気化学コーティングのうちの1つまたは複数の種を含むが、これらに限られない、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記金属箔帯のロール供給システムは、前記金属箔帯の移動軌跡上に配置され、前記金属箔帯に対して洗浄、研磨および/または表面触媒コーティングを行うための前処理システムがさらに備えられ、
前記洗浄は、表面脱脂、不純物除去および酸化物除去を含むが、これらに限られず、
前記研磨は、機械研磨、化学研磨、または電解研磨のうちの1つまたは複数の種を含むが、これらに限られず、および
前記表面触媒コーティングの方法は、物理コーティング、化学コーティング、または電気化学コーティングのうちの1つまたは複数の種を含むが、これらに限られない、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記CVD炉は、閉鎖式出入り口を有する高温加熱炉であり、
前記高温加熱炉は、複数のセグメントが単独制御される一体炉であり、
前記CVD炉内のセグメント各々には、前記制御システムと信号接続される温度センサが少なくとも1つ設けられ、および
前記制御システムは、温度センサから送信される信号に基づいて、前記CVD炉内の異なるセグメントの温度および昇温または降温過程での加熱または冷却速度を調整制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記収集システム内には、第2スリット結合器と前記巻取りローラーホイールとの間に配置された後処理システムがさらに設けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置を用いてグラフェンを作製する方法であって、
金属箔帯を前記金属箔帯供給システムに入れ、前記金属箔帯供給システムの伝動作用により前記CVDシステムに連続的に供給され、異なる特性のグラフェンの需要に応じて、アルゴンガスまたは窒素ガスを前記CVD炉のキャリアガスおよび保護ガスとして前記CVDシステム内に供給し、水素ガスおよび少なくとも1種の炭素含有ガスを前記CVD炉の反応ガスとして前記CVDシステム内に供給するとともに、前記CVD炉の成長温度を500~1200℃に制御するステップと、
前記金属箔帯の表面に前記グラフェンを生成した後、収集システムに搬送して排出するステップとを含む、グラフェンを作製する方法。
【請求項11】
前記CVDシステム内には、前記制御システムと信号接続され、前記金属箔帯が前記CVDシステムを介して炭素ナノ材料を生成する状況をオンラインで監視し、信号を前記制御システムにフィードバックするためのオンライン品質監視フィードバック装置がさらに備えられ、
前記制御システムは、前記信号に基づいて前記CVD炉内の炭素ナノ材料の成長条件を制御する、請求項10に記載の装置、グラフェンを作製する方法。
【請求項12】
前記CVDシステムは、ドラフト内に配置され、前記ドラフトの排気管は、排気ガス処理部に接続され、且つ前記ドラフトの排気量が前記CVDシステムにおける各種ガスの総排出量よりもはるかに多い、請求項10に記載の装置、グラフェンを作製する方法。
【請求項13】
前記制御システム内には、前記キャリアガス、反応ガス、および保護ガスの流量を制御し、前記キャリアガスおよび保護ガスの流量を調整制御することにより、前記スリットから排出される可燃性爆発性ガスの濃度を爆発限界以下に低下させる安全監視制御サブシステムが設けられ、
前記ドラフトの排気管には、前記安全監視制御サブシステムと信号接続され、前記CVD炉内から前記ドラフト内に排出される気流の強さを監視するための気流センサが設けられ、前記ドラフト内の気流が安全閾値に満たなかった場合、または運行過程において気流が安全閾値以下に低下した場合、前記気流センサは、信号を前記安全監視制御サブシステムに送信し、前記安全監視制御サブシステムは、前記信号を受信した後に、前記CVD炉の加熱電源および前記吸気管内のキャリアガスと反応ガスの搬送を強制的に遮断して警報を発し、
前記CVDシステム内には、前記安全監視制御サブシステムと信号接続され、前記CVD炉のスリットから排出される可燃性爆発性ガスの濃度を監視するためのガス濃度センサがさらに設けられ、
前記ガス濃度センサは、前記可燃性爆発性ガスの濃度が爆発下限に近づいたと検出した場合、危険信号を前記安全監視制御サブシステムに送信し、前記安全監視制御サブシステムは、前記危険信号を受信した後に、前記可燃性爆発性ガスの流量を強制的に遮断するとともに、CVDシステムの加熱電源をオフにして警報を発し、および
前記ドラフトが存在する作業場内には、安全監視制御サブシステムと信号接続され、前記作業場内の可燃性爆発性ガス、酸素および一酸化炭素の濃度を監視するための第2ガス濃度センサがさらに別途設けられてもよく、前記第2ガス濃度センサは、前記可燃性爆発性ガスの濃度が爆発下限に近づき、酸素の濃度が警告濃度に低下し、または一酸化炭素の濃度が規制外になったことを検出した場合、危険信号を前記安全監視制御サブシステムに送信し、前記安全監視制御サブシステムは、前記危険信号を受信した後に、前記可燃性爆発性ガスの流量を強制的に遮断し、更にはキャリアガスおよび反応ガスの流量を強制的に遮断するとともに、CVDシステムの加熱電源をオフにして警報を発する、請求項10に記載の装置、グラフェンを作製する方法。
【請求項14】
前記金属箔帯供給システムは、送出しローラーホイールと、駆動ローラーホイールと、ガイドローラーホイールとを備え、
前記送出しローラーホイールは、前記金属箔帯を支持するためのものであり、
前記駆動ローラーホイールは、前記金属箔帯を前進させるためのものであり、
前記ガイドローラーホイールは、前記金属箔帯の移動軌跡を調整するためのものであり、
前記収集システム内には、炭素ナノ材料が付着した金属箔帯を巻回して収集するための巻取りローラーホイールが設けられ、前記送出しローラーホイール、駆動ローラーホイール、ガイドローラーホイール、および巻取りローラーホイールは、それぞれ前記制御システムと信号接続され、
隣接する前記送出しローラーホイールと、駆動ローラーホイールと、ガイドローラーホイールと、巻取りローラーホイールとの間は、互いに非同期ローラーホイールであり、および
少なくとも前記金属箔帯には1つの応力センサが設けられて、および/または送出しローラーホイール、駆動ローラーホイール、ガイドローラーホイールおよび巻取りローラーホイールには1つのトルクセンサが設けられ、前記応力センサおよび/または前記トルクセンサは、前記制御システムにそれぞれ信号接続され、前記制御システムは、前記応力センサおよび/または前記トルクセンサから送信される信号に基づいて、前記送出しローラーホイール、駆動ローラーホイール、ガイドローラーホイールおよび巻取りローラーホイールの回転速度およびトルクを調整制御する、請求項10に記載の装置、グラフェンを作製する方法。
【請求項15】
前記金属箔帯のロール供給システムは、前記金属箔帯の移動軌跡上に配置され、前記金属箔帯に対して洗浄、研磨および/または表面触媒コーティングを行うための前処理システムがさらに備えられ、
前記洗浄は、表面脱脂、不純物除去および酸化物除去を含むが、これらに限られず、
前記研磨は、機械研磨、化学研磨、または電解研磨のうちの1つまたは複数の種を含むが、これらに限られず、および
前記表面触媒コーティングの方法は、物理コーティング、化学コーティング、または電気化学コーティングのうちの1つまたは複数の種を含むが、これらに限られない、請求項10に記載の装置、グラフェンを作製する方法。
【請求項16】
前記CVD炉は、閉鎖式出入り口を有する高温加熱炉であり、
前記高温加熱炉は、複数のセグメントが単独制御される一体炉であり、
前記CVD炉内のセグメント各々には、前記制御システムと信号接続される温度センサが少なくとも1つ設けられ、および
前記制御システムは、温度センサから送信される信号に基づいて、前記CVD炉内の異なるセグメントの温度および昇温または降温過程での加熱または冷却速度を調整制御する、請求項10に記載の装置、グラフェンを作製する方法。
【請求項17】
前記収集システム内には、第2スリット結合器と前記巻取りローラーホイールとの間に配置された後処理システムがさらに設けられる、請求項10に記載の装置、グラフェンを作製する方法。
【請求項18】
請求項6に記載の装置を用いてカーボンナノチューブを作製する方法であって、
触媒をコーティングした金属箔帯を前記金属箔帯供給システムを介して前記CVDシステムに連続的に供給し、異なる特性のカーボンナノチューブの需要に応じて、アルゴンガスまたは窒素ガスを前記CVD炉のキャリアガスおよび保護ガスとして前記CVDシステム内に供給し、水素ガスおよび少なくとも1種の炭素含有ガスを前記CVD炉の反応ガスとして前記CVDシステム内に供給するとともに、前記CVD炉の成長温度を400~1000℃に制御するステップと、
前記金属箔帯の表面に前記カーボンナノチューブを生成した後、収集システムに搬送して排出するステップとを含み、
前記触媒は、鉄、コバルト、ニッケルのうちの1つまたは複数からなるナノ薄膜またはナノ粒子、またはその酸化物、塩のナノ薄膜またはナノ粒子であり、および、
前記触媒は、前記前処理システムを介して金属箔帯を前処理することにより実現することができ、前記前処理は、触媒を金属箔帯の表面に直接コーティングするステップと、または遷移層を金属箔帯の表面に直接コーティングしてから触媒をコーティングするステップとを含む、カーボンナノチューブを作製する方法。
【請求項19】
前記CVD炉は、閉鎖式出入り口を有する高温加熱炉であり、
前記高温加熱炉は、複数のセグメントが単独制御される一体炉であり、
前記CVD炉内のセグメント各々には、前記制御システムと信号接続される温度センサが少なくとも1つ設けられ、および
前記制御システムは、温度センサから送信される信号に基づいて、前記CVD炉内の異なるセグメントの温度および昇温または降温過程での加熱または冷却速度を調整制御する、請求項18に記載の装置、カーボンナノチューブを作製する方法。
【請求項20】
前記収集システム内には、第2スリット結合器と前記巻取りローラーホイールとの間に配置された後処理システムがさらに設けられる、請求項18に記載の装置、カーボンナノチューブを作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、炭素ナノ材料(例えば、グラフェンまたはカーボンナノチューブなど)を成長させる化学気相堆積(CVD)装置の分野に関し、特に微正圧または正圧条件下で、大気から装置へ金属箔帯を連続的に供給し、CVDプロセスを経た後に、該金属箔帯を連続的に排出し、排出された箔帯の表面に所望の製品を成長させた開放式炭素ナノ材料連続成長の装置および作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラフェン、カーボンナノチューブは、金剛石、グラファイトと同様、炭素の同素体である。グラフェンとは、単結晶状黒鉛から抽出された1層の原子厚さしかない2次元結晶としてイメージ的に理解できる。厳格ではない場合、少数のグラフェンからなるナノ材料は、グラフェンとも呼ばれる。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブに分けられる。単層カーボンナノチューブとは、単層グラフェンにより一定方向に沿って巻き掛けられ、ナノ直径尺度を有する継目無管であるものに理解できる。多層カーボンナノチューブとは、マトリョーシカ人形のように2本以上の異なる直径の単層カーボンナノチューブにより互いに埋め込まれたカーボンナノチューブに理解でき、層と層との間の間隔がグラファイトの層間距離に近づく。炭素ナノ材料は、極めて優れた化学と物理性能を有するので、力学、光学、電気学、熱学などの様々な分野で極めて広い応用展望を有する。
【0003】
炭素ナノ材料の作製方法は様々であり、現在、CVD法は、高品質炭素ナノ材料を作製するための最も将来性のある方法と考えられる。CVDはChemical Vapor Deposition(化学気相堆積)の略称であり、高温での気相反応、例えば、金属ハロゲン化物、有機金属、炭化水素化合物などの熱分解を指し、水素還元やその混合ガスを高温で化学反応させて金属、酸化物、炭化物などの無機材料を析出させる方法である。現在、高純度金属の精製、粉末合成、半導体薄膜などに広く応用されており、かなり特徴を持つ技術分野である。CVD法は他の方法よりも優れているが、迅速、連続、大規模に高品質の炭素ナノ材料を製造する装置と技術ではずっと大きな進展がなかった。従来のCVD方法は、基板材料を密閉されたキャビティ内に置き、真空、低圧又は常圧で試料を加熱し、次に、キャリアガスで希釈または希釈していない水素ガスと炭素含有ガスを導入し、CVDにより基板表面に必要とされる炭素ナノ材料を成長させ、最後に冷却して試料を取り出す。しかしながら、制限のある基板サイズ、長時間の加熱と冷却過程のため、生産効率が極めて低く、炭素ナノ材料の応用も深刻な制約を被った。
【0004】
生産効率、特に、グラフェンの生産効率を高めるために、近年、一回に1ロール或いは複数ロールの金属箔帯を加熱することを試みる人もいる。例えば、特許CN 94477898 Bに記載するように、各層の金属箔帯の間で特別な治具で隔てられる、少数の機関と個人がロール対ロールのCVD装置とプロセスの研究開発も開始し、その品質や効率はまだ応用の要求に遥かに達していない。後者のうちの典型的なものとしては、日本ソニー社が開発したロール対ロールグラフェン製造装置があり、基板を電気的に加熱する方法によりグラフェンを製造するが、加熱方式および均一性問題などの要因により、非連続なグラフェンしか製造できない。米国マサチューセッツ工科大学が開発したロール対ロール装置は、金属箔帯を石英管に巻回することで加熱効率を向上させ、急速な成長を実現しているが、グラフェンの品質は依然として不十分である。中国国内にも同様の特許があり、例えば、97201405 A、CN 92976318 B、CN 93305806 Bなどがあり、さらに目立つものは、グラフェンの成長過程において、水素ガスと炭素含有ガスの濃度が往々にして爆発限界よりはるかに高いことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
技術的課題:
従来技術において、ロール対ロール装置は、依然として低圧と常圧で動作する閉鎖式システムでなければならず、1ロールの生産が完了した後に、ロールを交換するために操業を停止しなければならず、依然として生産効率が有限であり、大気環境下での開放式グラフェンの連続生産を実現することができず、グラフェン最終製品生産ラインとを一体化するのは言うまでもない。
従来技術における欠陥を克服するために、本開示は、高品質、大面積の炭素ナノ材料を連続的に大規模に成長させることができるだけでなく、真の毎日24時間連続的に持続的に成長させ、生産効率を大幅に向上させ、且つ応用製品の生産ラインに集積することができ、中間プロセスによる炭素ナノ材料への破壊を減少させ、歩留まりを向上させる、開放式炭素ナノ材料連続成長の装置および作製方法を提供することを目的とする。当該方法は、炭素ナノ材料を成長から加工、最終製品製造まで連続的な生産ラインを形成し、封止空間を不要とするものを連続的に生産することができ、生産効率が高い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本開示によれば、
いずれも開放ガス中にある金属箔帯供給システムと、CVDシステムと、収集システムとを備える装置であって、前記金属箔帯供給システムは、金属箔帯を大気中から前記CVDシステムに搬送するためのものであり、前記CVDシステムは、炭素ナノ材料を反応生成するためのものであり、前記金属箔帯は、前記CVDシステム内に炭素ナノ材料を付着させた後に前記収集システムに入る、ことを特徴とする開放式炭素ナノ材料連続成長装置が提供される。
【0007】
ここで、前記CVDシステムは、CVD炉と、制御システムとを備え、前記CVD炉は、前記制御システムと信号接続され、前記CVD炉の出入り口に、1つのスリット結合器がそれぞれ封止連結され、前記スリット結合器の軸方向には、一端が前記CVD炉に連通され、他端が大気に開放されるスリットが少なくとも1本設けられ、且つ2つの前記スリット結合器上の各スリットが1対1で対応し、前記金属箔帯は、各対のスリットのみを介して前記CVD炉に出入りする。
【0008】
前記スリット結合器の各々には、前記スリットの外周に設けられた冷却水出入り配管からなる冷却回路が少なくとも1本設けられ、前記冷却水出入り配管内に冷却水が通設されてスリット結合器を冷却する。
【0009】
前記スリット結合器の各々には、複数の吸気管がさらに設けられ、各吸気管の末端は、前記CVD炉の異なる部位に封止導通され、前記CVDシステムに必要とされるキャリアガスおよび反応ガスは、前記吸気管を介して前記CVD炉の各部位に注入し、前記CVD炉内を常に正圧または微正圧状態とし、前記吸気管は、前記CVD炉へ必要とされるキャリアガスおよび反応ガスを供給する唯一の通路となるように構成される。
【0010】
前記スリット結合器には、前記スリットに連通される保護ガス注入口がさらに設けられ、前記CVDシステムに必要とされる保護ガスは、前記保護ガス注入口を介して前記スリット結合器のスリットに直接導通され、前記CVDシステム内部で生じた排気ガスは、両端のスリットを介して排出され、且つ前記スリット内で前記保護ガスと混合された後に、前記スリットの開放端により噴出され、前記排気ガスと保護ガスとが前記スリットの外部へ噴出する作用により、全ての前記スリットを常に動的にシールし、空気が前記スリットを介して前記CVD炉内に漏れたり、浸透したりしないようにする。
【0011】
オプションとして、前記スリット結合器の各々には、複数のスリットが設けられ、且つ2つの前記スリット結合器上の各スリットは、1対1で対応する。
【0012】
オプションとして、前記CVDシステム内には、前記制御システムと信号接続され、前記金属箔帯が前記CVDシステムを介して炭素ナノ材料を生成する状況をオンラインで監視し、信号を前記制御システムにフィードバックするためのオンライン品質監視フィードバック装置がさらに備えられ、前記制御システムは、前記信号に基づいて前記CVD炉内の炭素ナノ材料の成長条件を制御する。
【0013】
オプションとして、前記CVDシステムは、ドラフト内に配置され、前記ドラフトの排気管は、排気ガス処理部に接続され、且つ前記ドラフトの排気量が前記CVDシステムにおける各種ガスの総排出量よりもはるかに多い。
【0014】
さらに、前記制御システム内には、前記キャリアガス、反応ガス、および保護ガスの流量を制御し、前記キャリアガスおよび保護ガスの流量を調整制御することにより、前記スリットから排出される可燃性爆発性ガスの濃度を爆発限界以下に低下させる安全監視制御サブシステムが設けられる。前記ドラフトの排気管には、前記安全監視制御サブシステムと信号接続され、前記CVD炉内から前記ドラフト内に排出される気流の強さを監視するための気流センサが設けられ、前記ドラフト内の気流が安全閾値に満たなかった場合、または運行過程において気流が安全閾値以下に低下した場合、前記気流センサは、信号を前記安全監視制御サブシステムに送信し、前記安全監視制御サブシステムは、前記信号を受信した後に、前記CVD炉の加熱電源および前記吸気管内のキャリアガスと反応ガスの搬送を強制的に遮断して警報を発する。
【0015】
前記CVDシステム内には、前記安全監視制御サブシステムと信号接続され、前記CVD炉のスリットから排出される可燃性爆発性ガスの濃度を監視するためのガス濃度センサがさらに設けられる。前記ガス濃度センサは、前記可燃性爆発性ガスの濃度が爆発下限に近づいたと検出した場合、危険信号を前記安全監視制御サブシステムに送信し、前記安全監視制御サブシステムは、前記危険信号を受信した後に、前記可燃性爆発性ガスの流量を強制的に遮断するとともに、CVDシステムの加熱電源をオフにして警報を発する。
【0016】
前記ドラフトが存在する作業場内には、安全監視制御サブシステムと信号接続され、前記作業場内の可燃性爆発性ガス、酸素および一酸化炭素の濃度を監視するための第2ガス濃度センサがさらに別途設けられてもよく、前記第2ガス濃度センサは、前記可燃性爆発性ガスの濃度が爆発下限に近づき、酸素の濃度が警告濃度に低下し、または一酸化炭素の濃度が規制外になったことを検出した場合、危険信号を前記安全監視制御サブシステムに送信し、前記安全監視制御サブシステムは、前記危険信号を受信した後に、前記可燃性爆発性ガスの流量を強制的に遮断し、更にはキャリアガスおよび反応ガスの流量を強制的に遮断するとともに、CVDシステムの加熱電源をオフにして警報を発する。
【0017】
オプションとして、前記金属箔帯供給システムは、送出しローラーホイールと、駆動ローラーホイールと、ガイドローラーホイールとを備え、前記送出しローラーホイールは、前記金属箔帯を支持するためのものであり、前記駆動ローラーホイールは、前記金属箔帯を前進させるためのものであり、前記ガイドローラーホイールは、前記金属箔帯の移動軌跡を調整するためのものである。前記収集システム内には、炭素ナノ材料が付着した金属箔帯を巻回して収集するための巻取りローラーホイールが設けられ、前記送出しローラーホイール、駆動ローラーホイール、ガイドローラーホイール、および巻取りローラーホイールは、それぞれ前記制御システムと信号接続されている。
【0018】
隣接する前記送出しローラーホイールと、駆動ローラーホイールと、ガイドローラーホイールと、巻取りローラーホイールとの間は、互いに非同期ローラーホイールであり、また、少なくとも前記金属箔帯には1つの応力センサが設けられて、および/または送出しローラーホイール、駆動ローラーホイール、ガイドローラーホイールおよび巻取りローラーホイールには1つのトルクセンサが設けられる。前記応力センサおよび/または前記トルクセンサは、前記制御システムにそれぞれ信号接続され、前記制御システムは、前記応力センサおよび/または前記トルクセンサから送信される信号に基づいて、前記送出しローラーホイール、駆動ローラーホイール、ガイドローラーホイールおよび巻取りローラーホイールの回転速度およびトルクを調整制御する。
【0019】
オプションとして、前記金属箔帯のロール供給システムは、前記金属箔帯の移動軌跡上に配置され、前記金属箔帯に対して洗浄、研磨および/または表面触媒コーティングを行うための前処理システムがさらに備えられ、前記洗浄は、表面脱脂、不純物除去および酸化物除去を含むが、これらに限られない。前記研磨は、機械研磨、化学研磨、または電解研磨のうちの1つまたは複数の種を含むが、これらに限られない。前記表面触媒コーティングの方法は、物理コーティング、化学コーティング、または電気化学コーティングのうちの1つまたは複数の種を含むが、これらに限られない。
【0020】
オプションとして、前記CVD炉は、閉鎖式出入り口を有する高温加熱炉であり、前記高温加熱炉は、複数のセグメントが単独制御される一体炉であり、前記CVD炉内のセグメント各々には、前記制御システムと信号接続される温度センサが少なくとも1つ設けられる。前記制御システムは、温度センサから送信される信号に基づいて、前記CVD炉内の異なるセグメントの温度および昇温または降温過程での加熱または冷却速度を調整制御する。
【0021】
オプションとして、前記収集システム内には、第2スリット結合器と前記巻取りローラーホイールとの間に配置された後処理システムがさらに設けられる。
【0022】
前記装置を用いてグラフェンを開放式で連続的成長させる方法は、
金属箔帯を前記金属箔帯供給システムに入れ、前記金属箔帯供給システムの伝動作用により前記CVDシステムに連続的に供給され、異なる特性のグラフェンの需要に応じて、アルゴンガスまたは窒素ガスを前記CVD炉のキャリアガスおよび保護ガスとして前記CVDシステム内に供給し、水素ガスおよび少なくとも1種の炭素含有ガスを前記CVD炉の反応ガスとして前記CVDシステム内に供給するとともに、前記CVD炉の成長温度を500~1200℃に制御ステップと、
および前記金属箔帯の表面に前記グラフェンを生成した後、収集システムに搬送して排出すればよいステップとを含む。
【0023】
前記装置を用いてカーボンナノチューブを開放式で連続的成長させる方法は、
触媒をコーティングした金属箔帯を前記金属箔帯供給システムを介して前記CVDシステムに連続的に供給し、異なる特性のカーボンナノチューブの需要に応じて、アルゴンガスまたは窒素ガスを前記CVD炉のキャリアガスおよび保護ガスとして前記CVDシステム内に供給し、水素ガスおよび少なくとも1種の炭素含有ガスを前記CVD炉の反応ガスとして前記CVDシステム内に供給するとともに、前記CVD炉の成長温度を400~1000℃に制御するステップと、
前記金属箔帯の表面に前記カーボンナノチューブを生成した後、収集システムに搬送して排出すればよいステップとを含む。
【0024】
ここで、前記触媒は、鉄、コバルト、ニッケルのうちの1つまたは複数からなるナノ薄膜またはナノ粒子、またはその酸化物、塩のナノ薄膜またはナノ粒子であり、前記触媒は、前記前処理システムを介して金属箔帯を前処理することにより実現することができ、前記前処理は、触媒を金属箔帯の表面に直接コーティングするステップと、または遷移層を金属箔帯の表面に直接コーティングしてから触媒をコーティングするステップとを含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、従来技術に比べて、以下の有益な効果を有する。
(1) 本出願のスリット結合器は、CVD炉と信頼性の高い封止連結を実現し、一体的に形成することができる。ここで、スリット結合器は、金属箔帯案内、空気遮断および冷却作用を同時に果たし、CVD炉用のキャリアガスおよび反応ガスは、スリット結合器上の吸気管を介してCVD炉内の異なる部位にしか供給できず、各スリットに保護ガスが直接充填される。CVD炉内のガスが漲り渡って正圧または微正圧になると、生じた排気ガスは、スリットにて保護ガスと混合した後、最終的にCVD炉両端のスリット結合器のスリットを介して外部へ高速に噴出する。もちろん、環境保護の要因を考慮すると、CVDシステムをドラフト内に設置してもよく、排気ガスをドラフトに排出した後、ドラフトの排気装置を介して排出する。排気ガスおよび保護ガスを前記スリットの外部へ噴出する作用により、前記スリットを常に動的にシールし、空気が前記スリットを介して前記CVD炉内に漏れたり、浸透したりしないようにする。従って、金属箔帯供給システム、CVDシステム、および収集システムは、大気中に空気から遮断されることなく完全に配置することができることにより、金属箔帯供給システムを介してCVDシステムへの連続的な供給を可能にし、収集システムが、作製された炭素ナノ材料を間欠無しで完成品に形成して出庫することができ、最終的に真の毎日24時間連続成長を実現し、製品の生産効率を大幅に向上させ、中間工程による製品への破壊を減少し、さらに、歩留まりを高めることができる。
(2) 本出願は、また、制御システムにそれぞれ信号接続されたオンライン品質監視フィードバックシステムと安全監視サブシステムを設け、人身、財産の安全を最大限に保障することが可能であり、ここで、オンライン品質監視フィードバックシステムの品質検査結果は、制御システムにフィードバックすることができ、それによって各種のガスの流量と配合比率、CVD炉内の温度を自動的に調整して、炭素ナノ材料品質の最適な制御を実現する。一方、安全監視サブシステムは、CVDシステム内に内蔵されたガス濃度センサから送信された信号に基づいて水素ガスや炭素含有ガスなどの可燃性爆発性ガスをキャリアガスおよび保護ガスによりその濃度が爆発限界未満まで希釈する。流量監視フィードバックにより、キャリアガスの流量が可燃性爆発性ガスを爆発限界以下に希釈するのに不十分である場合、CVD炉の起動を拒否するか、または運行過程においてキャリアガスの流量が異常になる場合、CVD炉の加熱電源を自動的にオフにし、可燃性ガスの流量を遮断しながら警報を発する。他方、すべての排出ガスは、ドラフト排気管を介して排気ガス処理部に排出され、排気管には気流センサが取り付けられており、気流が安全閾値に達しない場合、CVD炉を起動できない。または、運行過程において気流が安全閾値以下に低下した場合、CVD炉の電源を強制的にオフにし、可燃性ガスの流量を遮断しながら警報を発する。また、冷却水流量が異常に低下し、室内の可燃爆発性ガス濃度が異常に増加した場合、または酸素含有量が異常に低下した場合、または一酸化炭素の濃度が危険濃度になると検出された場合、CVD炉の加熱電源をオフにし、可燃爆発性ガス、更にはキャリアガスや保護ガスの流量を遮断しながら警報を発する可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本出願の実施例または従来技術における技術案をさらに明確に説明するために、以下、実施例または従来技術の説明において必要とされる図面を簡単に説明する。しかしながら、
下記に記載の図面は、本出願の一部の実施例に関するものにすぎず、当業者にとっては、記載の図面に示す構造に基づいて、創造的な労働をせずに他の図面を取得することが可能であることは明らかである。
【0027】
図1図1は本出願一実施例に係る構成概略図である。
図2図2は本出願一実施例に係るCVDシステムの部分の概略図である。
図3図3は本出願の実施例2を用いた作製されたグラフェンおよび銅箔帯のラマン線である。
図4図4は実施例2で作製されたグラフェンおよび銅箔帯の電子顕微鏡写真である。
図5図5は実施例2で作製されたグラフェンを300nm SiO/Siに移転させた光学顕微鏡写真である。
図6図6は実施例2で作製されたグラフェンを300nm SiO/Siに移転させたラマン線である。
図7図7は実施例3のニッケル箔帯上に成長した連続多層グラフェンのラマン線である。
図8図8は実施例4のアルミニウム箔帯上に両面成長したカーボンナノチューブの電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本出願の技術案について明確かつ完全に説明する。明らかなように、記載の実施例は、本出願の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。記載の本出願の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をせずに取得するその他の実施例は、いずれも本出願の保護範囲に含まれる。
【0029】
なお、本出願の説明において、「中心」、「上」、「下」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「内」、「外」などのような用語により示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係に基づくものであり、本出願の説明および説明の簡単化のためのものに過ぎず、示される装置又は要素が特定の方位を有したり、特定の方位で構成又は操作されたりすることを指示又は示唆するものではなく、よって、本発明を限定するものとして理解すべきではない。「第1」、「第2」、「第3」は、相対的重要性を示すまたは示唆するものではなく、説明するためのものにすぎない。
【0030】
なお、本出願の説明において、明確に指定又は限定しない限り、「取付」、「連結」、「接続」などの用語は、広義で理解すべきであり、たとえば、固定して接続してもよく、取り外し可能に接続してもよく、又は一体に接続してもよく、機械的に接続してもよく、或いは、電気的に接続してもよく、直接接続してもよく、中間媒体を介して間接的に接続してもよく、2つの要素の内部が連通してもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて上記用語の本出願における具体的な意味を理解し得る。
【0031】
また、以下の説明において、本出願の異なる実施例に係る技術特徴は、互いに矛盾が構成されない限り、互いに組合せて実施することができる。
【0032】
実施例1:
図1に示すように、本出願によれば、いずれも開放ガス中にある金属箔帯供給システムIと、CVDシステムIIと、収集システムIIIとを備える装置であって、金属箔帯供給システムIは、金属箔帯2を大気から前記CVDシステムIIに搬送するためのものであり、CVDシステムIIは、炭素ナノ材料を反応生成するためのものであり、金属箔帯2は、CVDシステムII内に炭素ナノ材料を付着させた後に収集システムIIIに入る、ことを特徴とする開放式炭素ナノ材料連続成長装置が提供される。ここで、CVDシステムIIは、CVD炉6と、制御システム(図示せず)とを備え、CVD炉6は、制御システムと信号接続され、CVD炉6の出入り口に、1つのスリット結合器5をそれぞれ封止連結され、各スリット結合器5の軸方向には、一端がCVD炉6に連通され、他端が大気に開放されるスリット12が少なくとも1本設けられ、且つ2つのスリット結合器5上の各スリット12が1対1で対応し、金属箔帯2は、各対のスリット12のみを介してCVD炉6に出入りする。スリット結合器5の各々には、スリット12の外周に設けられた冷却水出入り配管14からなる冷却回路が設けられ、前記冷却水出入り配管14内に冷却水が通設されてスリット結合器5を冷却する。スリット結合器5の各々には、複数の吸気管13がさらに設けられ、各吸気管13の末端は、CVD炉6の異なる部位に封止導通され、CVDシステムIIに必要とされるキャリアガスおよび反応ガスは、吸気管13を介してCVD炉6の各部位に注入し、CVD炉6内を常に正圧または微正圧状態とし、吸気管は13、CVD炉6へ必要とされるキャリアガスおよび反応ガスを供給する唯一の通路となるように構成される。スリット結合器5には、スリット12に連通される保護ガス注入口15がさらに設けられ、CVDシステムIIに必要とされる保護ガスは、保護ガス注入口15を介してスリット結合器5のスリットに直接導通され、CVDシステムII内部で生じた排気ガスは、両端のスリット12を介して排出され、スリット12内で保護ガスと混合された後に、スリット12の開放端により噴出され、排気ガスと保護ガスとがスリット12外部へ噴出する作用により、全てのスリット12を常に動的にシールし、空気がスリット12を介してCVD炉6内に漏れたり、浸透したりしないようにする。
【0033】
本出願のスリット結合器5は、CVD炉6と信頼性の高い封止連結を実現し、一体的に形成することができる。ここで、スリット結合器5は、金属箔帯2案内、空気遮断および冷却作用を同時に果たし、CVD炉6用のキャリアガスおよび反応ガスは、スリット結合器5上の吸気管13を介してCVD炉6内の異なる部位にしか供給できず、各スリット12に保護ガスが直接充填される。CVD炉6内のガスが漲り渡って正圧または微正圧になると、生じた排気ガスは、スリットにて保護ガスと混合した後、最終的にCVD炉6両端のスリット結合器5のスリット12を介して大気中に高速に噴出する。もちろん、環境保護の要因を考慮すると、CVDシステムIIをドラフト4内に設置してもよく、排気ガスをドラフト4に排出した後、ドラフト4の排気装置を介して排気ガス処理部に排出し、排気ガス処理部で無害化処理して大気中に排出し、排気ガスおよび保護ガスを前記スリット12の外部へ噴出する作用により、前記スリット12を常に動的にシールし、空気がスリット12を介してCVD炉6内に漏れたり、浸透したりしないようにする。従って、金属箔帯供給システムI、CVDシステムII、および収集システムIIIは、大気中に空気から遮断されることなく完全に配置することができることにより、金属箔帯供給システムIを介してCVDシステムIIへの連続的な供給を可能にし、収集システムIIIが、作製された炭素ナノ材料を間欠無しで完成品に形成して出庫することができ、最終的に真の毎日24時間連続成長を実現し、炭素ナノ材料の生産効率を大幅に向上させ、中間工程による炭素ナノ材料への破壊を減少し、さらに、歩留まりを高めることができる。
【0034】
本実施例では、金属箔帯供給システムIは、送出しローラーホイール1と、駆動ローラーホイール3と、ガイドローラーホイール3とを備え、送出しローラーホイール1は、ロール状の金属箔帯2を支持するためのものであり、駆動ローラーホイール3は、金属箔帯2を前進させるためのものであり、ガイドローラーホイール3は、金属箔帯2の移動軌跡を調整するためのものである。もちろん、金属箔帯供給システムIは、金属箔帯2の移動軌跡上に配置される可能であり、金属箔帯2に対して洗浄、研磨および/または表面触媒コーティングを行うための前処理システム11がさらに備えることができる。ここで、洗浄は、表面脱脂、不純物除去および酸化物除去などを含むが、これらに限られない。研磨は、機械研磨、化学研磨、電解研磨およびその総合研磨を含むが、これらに限られない。表面触媒コーティングの方法は、物理コーティング、化学コーティング、または電気化学コーティングおよびその総合コーティングを含むが、これらに限られない。本出願では、作製された炭素ナノ材料製品の品質をさらに向上させるか、またはコストをさらに低減するために、前処理システム11を一体化した金属箔帯供給システムIを採用することが好ましい。例えば、文献に記載の洗浄と研磨を通じて、銅箔帯にて作製したグラフェンの品質を著しく高めることができる。
【0035】
本出願では、金属箔帯2は、巻き取る可能なものを指し、その厚さがミクロン級からミリメートル級まで、幅がミリメートル級からメートル級まで、長さがメートル級から千メートル級まで、さらに無限長である(有限長さの箔帯を人工的または自動的に溶接する)。金属は、アルミニウム、銅、鉄、コバルト、ニッケルおよびそれらの合金またはコーティングを含むが、これらに限られない。コストを低減するか、または金属箔帯の強度を向上させるために、所望の金属箔帯は、例えば、鉄箔帯のような低コスト金属箔帯2に一層の銅膜または他の金属薄膜を電気めっきする方法または無電解めっきする方法によって製造されてもよい。例えば、銅箔帯上にグラフェンを成長させる最適温度が銅の融点に近いため、銅箔帯を用いてグラフェンをロール対ロールで成長させると、成長温度を適当に低下させなければならず、そうでなければ、銅箔帯は、成長過程で引き切りやすくなる。しかしながら、鉄箔帯を研磨洗浄することにより、鉄箔帯の表面に銅膜を化学コーティングまたは電気化学的にコーティングし、最適な温度でグラフェンの成長を実現した。また、鉄箔帯の価格が銅箔帯よりも明らかに優れているため、プロセス制御が合理的であれば、コストをさらに低減する可能性がある。炭素ナノ材料は、グラフェンおよびカーボンナノチューブを含むが、これらに限られない。グラフェンは、不連続グラフェン、連続グラフェン、単層グラフェン、多層グラフェンおよびそれらの混合物を含むが、これらに限られない。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブおよびそれらの混合物を含むが、これらに限られない。カーボンナノチューブは、金属箔帯2の表面に垂直なカーボンナノチューブアレイであってもよいし、無秩序配向されていてもよい。
【0036】
CVDシステムIIは、縦型レイアウトであってもよいし、横型レイアウトであってもよいし、0~90°傾斜型レイアウトであってもよい。該システムの全体または一部は、ドラフト4に取り付けられる。縦型レイアウトまたは傾斜式レイアウトを採用した場合、金属箔帯2は、上から下までCVD炉6に出入りしてもよいし、下から上までのようにCVD炉6に出入りしてもよい。本実施例では、望ましくは縦型レイアウトである。
【0037】
金属箔帯2搬送の安定性を保証するために、CVDシステムIIと金属箔帯供給システムIとの間に、ガイドローラホイール3および駆動ローラホイール3を個別に設けるとともに、CVDシステムIIと収集系IIIとの間にガイドローラホイール3および駆動ローラホイール3を個別に設けることができる。熱による膨張収縮のため、金属箔帯2は、異なる温度で大きさの異なる変形が生じる。熱膨張による金属箔帯2の曲げ変形または冷却による金属箔帯2の収縮引切りを回避するために、送出しローラーホイール1、駆動ローラホイール3、ガイドローラホイール3、および収集システムIII内に設けられた巻取りローラーホイール10などの全てのローラホイールは、非同期ローラホイールを用いる。また、CVDシステムIIには、温度センサ(図示せず)が少なくとも1つ設けられ、金属箔帯2には、応力センサ(図示せず)が少なくとも1つ設けられるか、または、送出しローラーホイール1、駆動ローラホイール3、ガイドローラホイール3、および巻取りローラーホイール10には、トルクセンサ(図示せず)がそれぞれ少なくとも1つ設けられている。温度センサ、応力センサおよび/またはトルクセンサは、制御システムにそれぞれ信号接続される。制御システムは、応力センサおよび/またはトルクセンサがリアルタイムにフィードバックする信号に基づいて各ローラホイールのトルクを調整制御するか、または温度センサから送信される信号に基づいてCVD炉6内の異なるセグメントの温度および昇温または降温過程での加熱または冷却速度を調整制御することで、金属箔帯2が前記CVD炉6内で高温膨張によりたるんだり、垂下したりすること、停止冷却収縮やトルクが大きすぎるせいで引き切ることを防止する。
【0038】
ここで、CVD炉6は、単セグメント独立制御の一体炉であってもよいし、複数セグメント独立制御を有する一体炉であってもよいし、複数の単セグメント独立制御CVD炉からなる組合せ炉であってもよい。複数の炉を採用すれば、炉と炉との間にシールダクトを用いて接続される。本実施例におけるCVD炉6は、好ましくは管式(石英管、コランダム管)高温加熱炉であり、さらに、異なるセグメントで金属箔帯2の焼鈍、炭素ナノ材料の成長等を実現するために、好ましくは複数セグメント独立制御の石英管式高温加熱一体炉である。具体的な状況は、生産要求に依存する。グラフェンの成長を例にして、好ましくは、CVD炉6は、金属箔帯予熱焼鈍炉および成長炉の2つの炉からなることができる炉、または少なくとも2つの独立したセグメントに区切ることができる一体炉であり、各セグメント内の雰囲気および温度が独立で制御することができることにより、異なるセグメントでそれぞれ予熱焼鈍および成長を可能にする。
【0039】
開放式連続成長炭素ナノ材料の生産効率をさらに向上させるために、本出願において、2つの対向配置されたスリット結合器5上のスリット12が1対1で対応するスリット結合器5上に複数のスリット12が設けられる手段を採用することにより、保護ガスが保護ガス注入口15を介して各スリット12に直接導通される。複数のスリット12を介して複数の金属箔帯2を同時に出入りすることができることにより、CVD炉6内の複数の金属箔帯2上に炭素ナノ材料の成長を同時に実現し、量産性を向上させる。スリット12の断面は、長方形、台形または他のより複雑な形状、例えば、断面が歯状である四角形、縦断面(金属箔帯の移動方向と一致する)が砂時計である形状とすることができるが、これらに限定されるものではなく、金属箔帯2の案内、冷却および空気の遮断に有利であればよい。
【0040】
本出願で用いられる反応ガスは、水素ガス、メタンガス、エタンガス、エチレンガス、アセチレンガス、アルコール(気化)などの炭素含有ガス、およびそれらの混合ガスを含むが、これらに限定されない。保護ガスの種類は、キャリアガスと同様であり、キャリアガスと同じガスを選択してもよいし、異なるガスを選択してもよい。キャリアガスおよび保護ガスは、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなど、およびそれらの混合ガスを含むが、これらに限定されない。炭素ナノ材料の製造品質のみから考えると、キャリアガスと保護ガスは、好ましくは、アルゴンである、コストを考慮しながら場合には、好ましくは、液体窒素から気化した窒素である。炭素含有ガスは、炭素ナノ材料の作製種類に左右される。例えば、単層高品質連続グラフェンを作製する場合、好ましくは、メタンガスである。多層グラフェンを低温で堆積する場合、好ましくは、アセチレンガスまたはエチレンガスである。
【0041】
また、本出願のCVDシステムII内には、制御システムと信号接続され、CVD炉6内の金属箔帯2の炭素ナノ材料の成長状況をオンラインで監視して、品質結果を制御システムにフィードバックするためのオンライン品質監視フィードバック装置9がさらに備えられ、制御システムは、前記信号に基づいて各種ガスの流量と混合比、およびCVD炉6の温度を調整し、炭素ナノ材料品質の最適な制御を実現する。
【0042】
安全を確保するとともに、環境を維持するために、本出願において、CVDシステムIIは、ドラフト4内に配置され、且つドラフト4の排気管は、排気ガス処理部(図示せず)に接続され、また、制御システム内に安全監視制御サブシステム(図示せず)を設置する。CVDシステムおよび作業場内に各種気流センサ、冷却水流量センサ、ガス濃度センサ(図示せず)、ドラフト4内に気流センサ8などを設置し、各種センサを制御システムに信号接続することにより、安全監視制御サブシステムにより3つの安全保護バリアを形成することができる。
【0043】
まず、CVD炉内に流入する可燃性爆発性ガス(水素ガス、メタンガス等)、キャリアガスおよび保護ガスの流量をガス流量センサ(例えば、質量流量計)により制御し、キャリアガスと保護ガスの希釈作用により、CVD炉のスリットから排出される可燃性爆発性ガスの濃度を爆発限界以下に低下させ、第1の安全保護バリアを形成する。キャリアガスの流量が可燃性爆発性ガスを爆発限界以下に希釈するのに不十分である場合、CVD炉6起動不可となり、または運行過程においてのCVD炉6の加熱電源をオフにし、可燃性ガスの流量を遮断して警報を発する。
【0044】
次に、CVDシステム内に設けられた可燃性爆発性ガス濃度センサ、冷却水センサおよびドラフト4により第2の安全保護バリアを形成し、CVDシステム内に設けられた可燃性爆発性ガスセンサは、CVD炉のスリットから排出される可燃性爆発性ガスの濃度を監視するために用いられ、ドラフト4内の気流センサ8は、ドラフトの排気量を監視するために用いられる。ドラフト4の排気量は、CVDシステムにおける各種ガスの総排出量よりもはるかに多くように設計され、CVDシステムの全ての排出ガスは、ドラフト4を介して収集された後、ドラフト排気管7により排気ガス処理部に排出される。可燃性爆発性ガスの濃度が規制外になると検出した場合、冷却水流量が異常に低下した場合、気流センサ8により気流が安全閾値に達しないことを検出した場合、CVD炉6を起動することができなくなり、または運行過程においてのCVD炉6の電源を強制的にオフし、可燃性ガスの流量を遮断して警報を発する。
【0045】
最後に、ドラフトが存在する作業場内に第2ガス濃度センサ(図示せず)を設置して第3の安全保護バリアを形成し、第2ガス濃度センサは、作業場の可燃性爆発性ガス、酸素および一酸化炭素濃度などを監視するために用いられる。室内の可燃性爆発性ガスの濃度が異常に増加した場合、または酸素の含有量が異常に低下した場合、または一酸化炭素が危険濃度に達したことを検出した場合、安全監視制御サブシステムもCVD炉6の加熱電源をオフにし、すべてのキャリアガス、保護ガス、および反応ガスの流量を遮断して警報を発する。具体的には、酸素の含有量低下または一酸化炭素の増加が発生すると、この前の安全防護措置が何らかの原因で故障し、酸素が少なくなり、ドラフト4は、すべてのガスを引き抜くことなく、逆に作業場に排出されることを意味する。したがって、すべてのガスを遮断する必要があり、酸素濃度のさらなる低下を防ぐ。爆発に関する問題については、可燃性爆発性ガスの流量のみを遮断し、保護ガスやキャリアガスを排出し続けることで残りの可燃性爆発性ガスをさらに希釈するのが一般的である。
【0046】
最後に、収集システムIIIは、炭素ナノ材料が成長した金属箔帯2を任意の後処理を経ずに巻取りローラーホイール10に直接巻き取るために用いられてもよく、または収集システムIIIには、後処理システム16が設けられてもよく、後処理システム16を一体化することで、後処理、更には炭素ナノ材料最終製品を直接製造し、炭素ナノ材料の成長、添加通過、最終製品の製造を含む完全な連続製造ラインを形成する。該後処理は、成長した炭素ナノ材料を金属箔帯2から分離されて終端製品に加工される工程と、または炭素ナノ材料の金属箔帯2の表面付着力をさらに強化する工程とを含む。例えば、グラフェンを後処理で金属箔帯2から分離され、タッチスクリーン、センサなどのグラフェン系電子デバイスを製造する。カーボンナノチューブである場合、後処理によりポッティング処理を行い、カーボンナノチューブ間の隙間を埋め、カーボンナノチューブと金属箔帯2との付着力を著しく強化させる必要がある可能性がある。
【0047】
実施例2:
以下は、上記装置を用いて銅箔帯の上に単層、連続、高品質グラフェン薄膜を成長させる方法を示す。
なお、該方法は、最も簡単な装置を採用した。図1に示すように、金属箔帯供給システムが、前処理システム11を備えない構成であり、CVDシステムIIが、オンライン品質監視システム9を備えない構成であり、CVD炉6が、縦型単セグメント石英管式単体加熱炉であり、石英管の直径が25 mmであり、各スリット結合器には1つのスリット12しかなく、収集システムIIIが、後処理システム16を備えない構成である。キャリアガスも保護ガスもアルゴンガスを採用し、反応ガスは、水素ガスとメタンガスを採用し、水素ガスとメタンガスの濃度は、アルゴンガスを介して爆発限界以下に希釈され、もちろん、メタンガスはエタンガス、アセチレンガス、エチレンガス、アルコール(気化)などに置き換えても構わない。別途指摘されない限り、すべてのガスは、高純ガスであり、ガスを集中的に供給することで管路から設備の間に輸送される。ガスの流量は、質量流量計によって制御され、CVD炉6の温度は、熱電対によって監視され、且つPID機能を有する電源により制御される。
【0048】
具体的な実施ステップは、以下のとおりである。
【0049】
ステップ1において、ドラフト4の作動電源をオンし、ドラフト排気管7に取り付けられた気流センサ8の表示ランプが緑色であることを確保し、流量が後のステップでキャリアガス、保護ガスおよび反応ガスの総流量よりもはるかに大きいことを表す。
【0050】
ステップ2において、購入したグラフェンの成長に適した銅箔ロール(11 mm幅、40μm厚、純度99.98%)を送出しローラーホイール1に取り付け、ローラーホイール3および駆動ローラーホイール3を介して第1スリット結合器5上のスリット12によりCVD炉6の石英管に手動で進入させ、第2スリット結合器9上のスリット12から導出して収集システムIIIの巻取りローラーホイール10に巻き取った。
【0051】
ステップ3において、2つのスリット結合器の冷却水を流通させ、アルゴンガスを質量流量計により5~9slmの流量でスリット結合器から石英管に注入するとともに、適量の保護ガスを2つのスリット結合器のスリット12に注入し、すべてのガスを両端のスリット12から排出し、ドラフト5を介して排気ガス処理システムに排出した。この過程は3~5分間持続した。
【0052】
ステップ4において、石英管加熱炉の電源をオンし、加熱温度を900~1000℃の間に設定し、温度が安定して設定加熱温度に維持されるまで、20℃/分間の加熱速度で昇温した。
【0053】
ステップ5において、質量流量計により水素ガスとメタンガスをそれぞれ80~150sccmと0.5~5sccmの速度でキャリアガスと混合した後、スリット結合器から石英管に注入した。
【0054】
ステップ6において、水素ガスとメタンガスを約20分間注入した後、送出しローラーホイール1、巻取りローラーホイール10およびすべてのガイドローラーホイールと駆動ローラーホイール3の電源をオンし、銅箔帯を5~9mm/分間の速度でCVD炉に通過させた。
【0055】
ステップ7において、送出しローラーホイール1上の銅箔帯を使い切りそうになっており、銅箔帯搬送の電源(送出しローラーホイール1、巻取りローラーホイール10および全ての駆動ローラーホイール3、ガイドローラーホイール3を含む)を切って、新たな原料銅箔帯を手動で1ロール交換し、使い切りそう銅箔帯と溶接した。銅箔帯搬送の電源を再起動すると、新たな銅箔帯をスムーズにCVDシステムIIに導入、導出することができる。このとき、銅箔帯搬送の電源を再び切って、銅箔帯を溶接箇所で切断し、グラフェンが成長した銅箔ロールを取り出し、新たな銅箔帯を新たに交換した巻取りローラーホイール10に巻き付け、銅箔帯搬送電源を再起動した。将来、この過程は、自動化可能である。
【0056】
ステップ8において、ステップ7を繰り返すと、24時間の連続成長を実現することができる(材料交換のときに、短時間の作業停止がある)。
【0057】
ステップ9において、グラフェンの成長を停止する必要がある場合、まず、銅箔帯の搬送電源をオフし、その後、メタンガスをオフし、CVD炉6の加熱電源をオフする。CVD炉6の温度が室温まで低下した後、スリット結合器上の冷却水を閉じ、水素ガス、全てのキャリアガス、保護ガスを閉じた。最後に、ドラフト4の電源をオフした。
【0058】
ステップ10において、グラフェンが成長している銅箔ロールを取り出し、一段特性評価用試料を切った。特性評価結果は、図3-6に示すとおりである。図3を参照すると、2700cm-1付近に位置する2Dピークの強度が、1590cm-1付近のGピークの2倍程度に達し、また1350cm-1程度のDピークは明らかに観察されず、作製されたグラフェンが比較的高品質の単層グラフェンであることが分かる。図4を参照すると、グラフェンは、連続単層グラフェンであることが分かる。図5を参照すると、作製されたグラフェンは、均一な連続単層グラフェンであることが分かる。図6を参照すると、作製されたグラフェンは、確実な高品質の単層グラフェンであることが分かる。したがって、作製されたグラフェンは、比較的単層、連続的、高品質のグラフェンであることを表す。
【0059】
実施例3:
本実施例は、実施例1に記載の装置を用いて、ニッケル箔帯上に多層連続グラフェンフィルムを成長させることである。該実施例は、以下の点1~点4で、実施例2と異なる。
点1:金属箔帯2は、ニッケル箔帯(11 mm幅、25μm厚、純度99.9%)を採用する。
点2:ニッケル箔帯の輸送速度は、300~600 mm/minである。
点3:成長設定温度範囲は、500~900℃であり、好ましくは750~900℃であり、温度が高いほど成長速度が速く、ニッケル箔帯の搬送速度が速くなる。搬送速度が同じである場合、ニッケル箔帯搬送速度が遅いほどグラフェンの層数が多くなるか、またはニッケル箔帯搬送速度が変わらない場合、温度が高いほどグラフェンの層数が多くなる。
点4:レーザーラマン分光特性の結果は、図7に示すとおりである。図7を参照すると、2 Dピークの強度がGピークよりも低く、作製されたグラフェンが多層グラフェンであることが分かる。
【0060】
実施例4:
本実施例は、実施例1に記載の装置に加えて、金属箔帯前処理システムを用いて、金属アルミニウム箔帯上にカーボンナノチューブアレイを成長させることである。該実施例は、以下の点1~点2で、実施例2と異なる。
点1:本実施例では、前処理システム11を追加させることによって、金属アルミニウム箔帯2の表面に一層の触媒層を塗布する。該触媒は、鉄、コバルト、ニッケルのうちの1種または複数種からなるナノ薄膜またはナノ粒子、またはその酸化物、塩類のナノ薄膜またはナノ粒子であってもよい。本実施例では、塩化第一鉄を例にしている。具体的には、送出しローラーホイール1とCVDシステムIIとの間に、塩化第一鉄溶液槽を1つ追加させ、槽内に一定濃度の塩化第一鉄を予め調製し、その濃度を液体濃度センサにより監視し、濃度が低下した場合、自動的に溶剤を添加して濃度を一定に保つ。金属箔帯2は、送出しローラーホイール1を介して溶液槽(溶液槽に浸漬する)を通過し、溶液槽から排出した後、走行過程において乾燥を経て金属アルミニウム箔帯2の表面に一層の塩化第一鉄薄膜を形成する。塩化第一鉄の濃度は、成長所望のカーボンナノチューブの性能、金属アルミニウム箔帯2の進行速度、および溶液槽に浸漬する全長に依存する。金属アルミニウム箔帯2の表面に遷移層用の一層のアルミナ鈍化層を固有にするため、本実施例において、金属箔帯2と触媒との間に遷移層を塗布する必要はない。もちろん、他の金属箔帯については、必要に応じて、触媒を塗布する前に、まず、金属箔帯2の表面に遷移層を塗布してもよく、遷移層は、カーボンナノチューブの成長中に触媒と金属箔帯との反応を防止し、触媒粒子の形成を促進し、触媒粒子の安定性を向上し、カーボンナノチューブの成長を促進するのに役立つ。
点2:作製カーボンナノチューブ対象の特性に基づいて、前記CVDシステムII内に供給されるキャリアガスおよび保護ガスは、いずれもアルゴンガスまたは窒素ガスであり、前記CVD炉の反応ガスは、水素ガスおよびメタンガス、エタンガス、アセチレンガス、エチレンガス、アルコール(気化)などの少なくとも1種の炭素含有ガスであり、本実施例では、アセチレンガスを例にしている。
CVD炉6の成長温度は、580~600℃であり、ここで、塩化第一鉄は、高温還元性ガスで還元されて鉄ナノ粒子を形成し、さらにアセチレンガスと反応して鉄ナノ粒子上にカーボンナノチューブを形成し、前記金属箔帯2を前記CVDシステムIIにてカーボンナノチューブアレイ(図8に示すように)を生成し、その後、前記収集システムIIIを介して直接に収集または最終製品に加工する。
【0061】
以上は、本出願の具体的な実施形態にすぎず、本出願の保護範囲はこれに限定されず、当業者にとっては、上記実施例に記載した技術様態に種々の修正、或いは一部や全部の技術特徴に対する同等な変更を行うことができ、これらの修正や変更は全部、相応する技術様態の本質を本出願の保護範囲から脱離せず、本出願の特許請求の範囲と明細書の範囲に限定されるものである。
【符号の説明】
【0062】
I、金属箔帯供給システム
II、CVDシステム
III、収集システム
1、送出しローラーホイール
2、金属箔帯
3、ガイドローラーホイールまたは駆動ローラーホイール
4、ドラフト
5、スリット結合器
6、CVD炉
7、ドラフト排気管
8、気流センサ
9、オンライン品質監視フィードバックシステム
10、巻取りローラーホイール
11、前処理システム
12、スリット
13、吸気管
14、冷却水配管
15、保護ガス注入口
16、後処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】