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特表2022-524344金属トリフルオロ酢酸塩を用いてトリフルオロヨードメタンを製造するためのプロセス
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  • 特表-金属トリフルオロ酢酸塩を用いてトリフルオロヨードメタンを製造するためのプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(54)【発明の名称】金属トリフルオロ酢酸塩を用いてトリフルオロヨードメタンを製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/361 20060101AFI20220422BHJP
   C07C 19/16 20060101ALI20220422BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220422BHJP
【FI】
C07C17/361
C07C19/16
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552787
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(85)【翻訳文提出日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 US2020020256
(87)【国際公開番号】W WO2020180637
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】62/813,499
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/797,677
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】チュンゴン、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ハイユウ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、テリス
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC26
4H006BA65
4H006BB23
4H006BC10
4H006BE53
4H006EA02
4H039CA54
4H039CG40
(57)【要約】
【解決手段】 本開示は、トリフルオロヨードメタンを製造するためのプロセスを提供する。このプロセスは、金属トリフルオロ酢酸塩、ヨウ素、相間移動触媒、及び有機溶媒を提供することと、金属トリフルオロ酢酸塩とヨウ素とを相間移動触媒及び有機溶媒の存在下で反応させて、トリフルオロヨードメタンを製造することと、を含む。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフルオロヨードメタン(CFI)を製造するためのプロセスであって、
金属トリフルオロ酢酸塩、ヨウ素、相間移動触媒、及び有機溶媒を混合することと、
前記金属トリフルオロ酢酸塩、前記ヨウ素、前記相間移動触媒、及び前記有機溶媒を加熱して、前記金属トリフルオロ酢酸塩及び前記ヨウ素を反応させて、トリフルオロヨードメタン及び金属ヨウ化物を製造することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記トリフルオロヨードメタンを前記金属ヨウ化物から分離することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記相間移動触媒が、約0.5%~約50%の前記金属トリフルオロ酢酸塩のモルパーセントで提供される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記有機溶媒は、約500容積ppm未満の水を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記金属トリフルオロ酢酸塩が、トリフルオロ酢酸リチウム、トリフルオロ酢酸カリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ルビジウム、トリフルオロ酢酸セシウム、トリフルオロ酢酸カルシウム、トリフルオロ酢酸マグネシウム、トリフルオロ酢酸鉄、トリフルオロ酢酸亜鉛、及びトリフルオロ酢酸銅の群から選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記有機溶媒が、イオン性液体及び極性非プロトン性溶媒の群から選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記有機溶媒が、イミダゾリウム塩、カプロラクタム硫酸水素塩、スルホラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N-メチル-2-ピロリドン、及びジメチルスルホンの群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記相間移動触媒が、第四級アンモニウム塩及び四級ホスホニウム塩の群から選択される少なくとも1種である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記相間移動触媒が、テトラフェニルホスホニウムブロミドを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属トリフルオロ酢酸塩、前記ヨウ素、前記相間移動触媒、及び前記有機溶媒が、約100℃~約250℃の温度に加熱される、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トリフルオロヨードメタン(CFI)を製造するためのプロセスに関する。具体的には、本開示は、相間移動触媒の存在下でトリフルオロヨードメタンを金属トリフルオロ酢酸塩から製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリフルオロヨードメタン(CFI)は、例えば、冷媒又は火災抑制剤として商業用途において有用な化合物である。トリフルオロヨードメタンは、地球温暖化係数が低く、オゾン破壊係数が低い、環境的に許容可能な化合物である。トリフルオロヨードメタンは、より環境的に害のある材料に取って代わることができる。
【0003】
金属トリフルオロ酢酸塩及びヨウ素からトリフルオロヨードメタンを調製する方法が知られている。例えば、R.N Haszeldine、Reactions of metallic salts of acids with halogens.Part I.The reaction of metal trifluoroacetates with iodine,bromine,and chlorine,124 J.Chem.Soc.124 (1951) は、トリフルオロヨードメタンを製造するために、ヨウ素の存在下で金属トリフルオロ酢酸塩(CFCOOM)の脱炭酸ヨウ素化を開示している。R.N Haszeldineによるプロセスは、中で金属トリフルオロ酢酸塩及びヨウ素元素を溶媒なしで一緒に加熱してトリフルオロヨードメタンを製造する、封管又はステンレス鋼オートクレーブ中で実施される。別の例では、中国特許第CN102992943B号は、トリフルオロヨードメタン、二酸化炭素、及びヨウ化金属を製造するための、液相中の金属トリフルオロ酢酸塩及びヨウ素元素の反応を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トリフルオロヨードメタンを製造するための金属トリフルオロ酢酸塩及びヨウ素の使用による固有の制限は、出発反応物質の両方が最も有機溶媒中で限定された溶解度を有するため、反応混合物が不均一な点である。反応物質の限定された溶解度は、反応速度を低下させ、反応時間及び製造コストを増加させる。したがって、ヨウ素をより効率的に使用するプロセスを開発する必要性に加えて、反応溶媒中の金属トリフルオロ酢酸塩及びヨウ素の溶解度の増加を可能にするプロセスを開発する必要もある。反応速度の向上により、金属トリフルオロ酢酸塩からのトリフルオロヨードメタンの製造効率が向上する。
【0005】
本開示は、相間移動触媒の存在下で、金属トリフルオロ酢酸塩をヨウ素と反応させることによってトリフルオロヨードメタンを製造するためのプロセスを提供する。
【0006】
その一形態では、本開示は、トリフルオロヨードメタンを製造するためのプロセスを提供する。このプロセスは、金属トリフルオロ酢酸塩、ヨウ素、相間移動触媒、及び有機溶媒を提供することと、金属トリフルオロ酢酸塩とヨウ素とを相間移動触媒及び有機溶媒の存在下で反応させて、トリフルオロヨードメタンを製造することと、を含む。
【0007】
その一形態では、本開示は、トリフルオロヨードメタンを製造するためのプロセスを提供する。このプロセスは、金属トリフルオロ酢酸塩、ヨウ素、相間移動触媒、及び有機溶媒を混合することと、金属トリフルオロ酢酸塩、ヨウ素、相間移動触媒、及び有機溶媒を加熱して、金属トリフルオロ酢酸塩とヨウ素を反応させて、トリフルオロヨードメタン及び金属ヨウ化物を製造することと、を含む。
【0008】
添付の図面を考慮して、実施形態についての以下の記載を参照することによって、本開示の上述及び他の特性、並びにそれらを達成する様式がより明らかになり、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、以下の実施例1~2に対応するトリフルオロヨードメタンのバッチ合成の時間に対する反応器内の圧力を示す。この図は、相間移動触媒を用いた合成と、相間移動触媒を用いない合成とを比較する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、以下の式1による脱炭酸ヨウ素化による、金属トリフルオロ酢酸塩(CFCOOM)及びI反応物質からのトリフルオロヨードメタン(CFI)の製造のための液相プロセスを提供する。
【化1】
式中、Mは、リチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、若しくはセシウムなどのアルカリ金属、カルシウム若しくはマグネシウムなどのアルカリ土類金属、又は鉄、亜鉛、若しくは銅などの遷移金属であってよい。したがって、金属トリフルオロ酢酸塩としては、トリフルオロ酢酸リチウム、トリフルオロ酢酸カリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ルビジウム、トリフルオロ酢酸セシウム、トリフルオロ酢酸カルシウム、トリフルオロ酢酸マグネシウム、トリフルオロ酢酸鉄、トリフルオロ酢酸亜鉛、トリフルオロ酢酸銅、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0011】
上記の脱炭酸ヨウ素化反応における相間移動触媒の使用により、使用される有機溶媒中の反応物質の溶媒反応速度を著しく増加させることができ、直接反応速度の増加及び反応時間の短縮をもたらす。相間移動触媒を使用して、2つの相互に不溶性の相(すなわち、液体-液体又は固体-液体)間の無機イオンの輸送を増加させることができる。無機イオンの輸送は、有機溶媒に可溶性である錯体の形成によって達成される。有機溶媒へのイオンの輸送は、反応速度の増加及び反応時間の減少、更に製造コストを大幅に低減することができることにつながる。いかなる理論にも束縛されるものではないが、相間移動触媒は、反応物質によって形成された異種混合物中の1つの相から別の相への反応物質の移動を促進すると考えられる。
【0012】
反応は有機溶媒中で実施される。液相中の反応を実施するために有用な有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、スルホラン、イオン性液体、及びこれらの組み合わせが挙げられる。イオン性液体の例としては、イミダゾリウム塩及びカプロラクタム硫酸水素塩が挙げられる。
【0013】
溶媒は、水を実質的に含まない。実質的に水を含まないということは、溶媒中の任意の水が、重量で約500の100万分の1(ppm)、約300ppm、約200ppm、約100ppm、約50ppm、約30ppm、約20ppm、又は約10ppm未満、又は、前述の値のうちのいずれか2つの間に定義される任意の値未満の量であることを意味する。前述のppm値は、溶媒及び任意の水の重量である。好ましくは、溶媒中の水の量は、約100ppm未満である。より好ましくは、溶媒中の水の量は、約50ppm未満である。最も好ましくは、溶媒中の水の量は、約10ppm未満である。
【0014】
反応は、相間移動触媒の存在下で実施される。液相中の反応を実施するために有用な相間移動触媒としては、第四級アンモニウム塩及び四級ホスホニウム塩が挙げられる。四級アンモニウム塩の非限定的な例は、テトラメチルアンモニウムクロリドである。四級ホスホニウム塩の非限定的な例は、テトラフェニルホスホニウムブロミドである。一般に、四級塩は、極性及び非極性反応媒体の両方に対する親和性を有する。この特性により、無機イオン種を含有する2つの相互に不溶性の相において、四級塩を準化学量論的量で使用することが可能となる。反応温度が150C未満であるときは第四級アンモニウム塩が好ましく、一方反応温度が150C超であるときには四級ホスホニウム塩が好ましいが、第四級アンモニウム塩の分解がより高い可能性が高い。
【0015】
相間移動触媒は、約0.5%、約1%、約2%、約5%、約10%、約15%、約20%又は約25%の低さ、又は約30%、約35%、約40%、約45%、又は約50%の高さで、又は前述の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内、例えば、約5%~約50%、約2%~約45%、約5%~約40%、約10%~約35%、約15%~約30%で金属トリフルオロ酢酸塩のモルパーセントでの反応のために提供されてもよい。好ましくは、触媒は、約0.5%~約35%の金属トリフルオロ酢酸塩のモルパーセントで提供される。より好ましくは、触媒は、約10%~約30%の金属トリフルオロ酢酸塩のモルパーセントで提供される。最も好ましくは、触媒は、約20%~約30%の金属トリフルオロ酢酸塩のモルパーセントで提供される。
【0016】
金属トリフルオロ酢酸塩及びヨウ素は、商業的な量で容易に入手可能である。例えば、トリフルオロ酢酸カリウム及びヨウ素は、Sigma-Aldrich Corp.(St.Louis,MO)から入手することができる。溶媒はまた、商業的な量で容易に得ることができる。例えば、スルホランはまた、Sigma-Aldrich Corp.(St.Louis,MO)から入手することができる。相間移動触媒はまた、商業的な量で容易に得ることができる。例えば、テトラフェニルホスホニウムブロミドは、Sigma-Aldrich Corp.(St.Louis,MO)から入手することができる。
【0017】
反応物質は、例えば、約0.1:1、約0.2:1、約0.3:1、約0.4:1、約0.5:1、約0.6:1、約0.7:1、約0.8:1、約0.9:1、約0.95:1、約0.99:1、若しくは約1:1の低さ、又は約1.01:1、約1.05:1約、1.1:1、約1.2:1、約1.3:1、約1.4:1、約1.5:1、約1.6:1、約1.8:1、若しくは約2.0:1の高さで、又は例えば、約0.1:1~約2.0:1、約0.5:1~約1.5:1、約0.6:1~約1.4:1、約0.7:1~約1.3:1、約0.8:1~約1.2:1、約0.9:1~約1.1:1、約0.95:1~約1.05:1、約0.99:1~約1.01:1、約1:1~約2:1、約0.8:1~約1.5:1、若しくは約0.95:1~約1.2:1など、前述の値のうちの任意の2つの間に定義される任意の範囲内である金属トリフルオロ酢酸塩とヨウ素とのモル比での反応のために提供されてもよい。好ましくは、金属トリフルオロ酢酸塩とヨウ素とのモル比は、約0.8:1~約1.5:1である。より好ましくは、金属トリフルオロ酢酸塩とヨウ素とのモル比は、約1:1~約1.2:1である。最も好ましくは、金属トリフルオロ酢酸塩のヨウ素に対するモル比は、約1:1である。
【0018】
反応は、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、若しくは約170℃の低さで、又は180℃、約190℃、約200℃、約210℃、約220℃、約230℃、約240℃、若しくは約250℃の高さで、又は、前述の値のいずれか2つの間に定義された任意の範囲内、例えば、約100℃~約250℃、約110℃~約240℃、約120℃~約230℃、約130℃~約220℃、約140℃~約210℃、約150℃~約200℃、約160℃~約190℃、約170℃~約180℃、約120℃~約130℃、約110℃~約180℃、若しくは約120℃~約250℃、又は前述の値のいずれか2つの間に定義された任意の範囲内で、例えば、約100℃~約250℃、約110℃~約240℃、約120℃~約230℃、約130℃~約220℃、約140℃~約210℃、約150℃~約200℃、約160℃~約190℃、約170℃~約180℃、約120℃~約130℃、約110℃~約180℃、若しくは約120℃~約250℃の温度で実行され得る。好ましくは、反応物質は、約100℃~約250℃の温度に加熱される。より好ましくは、反応物質は、約110℃~約200℃の温度に加熱される。最も好ましくは、反応物質は、約120℃~約190℃の温度に加熱される。
【0019】
圧力は重要ではない。好都合な動作圧力は、約10kPa~約4,000kPa、好ましくは周囲圧力付近、又は約100kPa~約250kPaの範囲である。
【0020】
反応は、液相反応器内で実施される。液相反応器は、セミバッチ又は連続撹拌タンク反応器(CSTR)であってもよい。反応は、バッチプロセス又は連続プロセスとして実施することができる。
【0021】
トリフルオロヨードメタンを含む反応の揮発性生成物は、凝縮及び回収されてもよく、したがって、トリフルオロヨードメタンを不揮発性金属ヨウ化物副生成物から分離することができる。
【0022】
反応の揮発性有機生成物の組成は、ガスクロマトグラフィー(gas chromatography、GC)分析及びガスクロマトグラフィー質量分析(gas chromatography-mass spectroscopy、GC-MS)によって測定することができる。揮発性有機化合物の各々に対する全揮発性有機化合物のGC面積百分率(GC面積%)を反応中に製造される揮発性有機化合物の相対濃度の測定値として提供するために、揮発性有機化合物の各々に対してGC分析によって提供されるグラフ面積を組み合わせてもよい。
【0023】
本発明は、例示的な設計に対するものとして説明したが、本発明は、本開示の趣旨及び範囲内で更に修正することができる。更に、本出願は、本発明が関連する技術分野における既知の又は慣習的な実践に属する本開示からのそのような逸脱を包含することが意図されている。
【0024】
本明細書で使用するとき、「前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内」という句は、それらの値が列挙のより低い部分にあるか又は列挙のより高い部分にあるかにかかわらず、任意の範囲がそのような句の前に列挙された値のうちのいずれかの2つから選択され得ることを意味する。例えば、1対の値は、2つのより低い値、2つのより高い値、又はより低い値及びより高い値から選択されてもよい。
【実施例
【0025】
実施例1
触媒なしのCFCOOMの脱炭酸ヨウ素化
この実施例では、トリフルオロ酢酸カリウム(CFCOOK)及びヨウ素元素からのトリフルオロヨードメタンの製造は、比較目的で実証される。20gの量のトリフルオロ酢酸カリウム及び38gの量のヨウ素元素を、Parr Instrument Company(Moline,IL)からの300 mLの反応器に添加した。反応器に凝縮器を備え付けた。反応器を300psigまで圧力試験し、次いで排気した。60mLの量のスルホランを反応器に添加して、トリフルオロ酢酸カリウムとヨウ素元素とのモル比が約0.88:1の反応混合物を形成した。反応物質及び溶媒は、Sigma-Aldrich Corp.(St.Louis,MO)から入手し、更に精製することなく使用した。
【0026】
反応混合物を約175℃まで加熱した。この反応では、相間移動触媒又は金属触媒を使用しなかった。反応が進行するにつれて、揮発性ガス状生成物及び副生成物が製造された。反応器内の圧力を、反応の進行に応じて測定した。反応器の経時的な圧力を図に示す。凝縮器から出る揮発性ガスを、ドライアイスで冷却された生成物収集筒内に収集した。
【0027】
生成物収集筒内に収集された揮発性ガス中の有機化合物の組成をガスクロマトグラフィー(GC)により測定した。各有機化合物のGC分析によって提供されるグラフ面積を組み合わせて、有機化合物の相対濃度の測定値として、有機化合物の各々に対する全有機化合物のGC面積パーセンテージ(GC面積%)を提供する。結果を以下の表に示す。
実施例2
相間移動触媒を用いたCFCOOMの脱炭酸ヨウ素化
【0028】
この実施例では、上記の式1によるトリフルオロ酢酸カリウム(CFCOOK)及びヨウ素(I)からのトリフルオロヨードメタンの製造が示されている。20gの量のトリフルオロ酢酸カリウム、13.8g(25mol%)の量のテトラフェニルホスホニウムブロミド(TPPB)、及び36.7gの量のヨウ素(I)を、Parr Instrument Company(Moline,IL)からの300 mLの反応器に添加した。反応器に凝縮器を備え付けた。反応器を300psigまで圧力試験し、次いで排気した。60mLの量のスルホランでスルホランを反応器に添加して、トリフルオロ酢酸カリウムとヨウ素元素とのモル比が約0.91:1の反応混合物を形成した。反応物質及び溶媒は、Sigma-Aldrich Corp.(St.Louis,MO)から入手し、更に精製することなく使用した。相間移動触媒は、Sigma-Aldrich Corp.(St.Louis,MO)から入手し、更に精製することなく使用した。反応混合物を約175℃まで加熱した。反応が進行するにつれて、揮発性ガス状生成物及び副生成物が製造された。反応器内の圧力を、反応の進行に応じて測定した。反応器の経時的な圧力を図に示す。凝縮器を出る揮発性ガスを、ドライアイスで冷却された生成物収集筒内に収集した。
【0029】
生成物収集筒内に収集された揮発性ガス中の有機化合物の組成をガスクロマトグラフィー(GC)により測定した。各有機化合物のGC分析によって提供されるグラフ面積を組み合わせて、有機化合物の相対濃度の測定値として、有機化合物の各々に対する全有機化合物のGC面積パーセンテージ(GC面積%)を提供する。結果を以下の表に示す。
【0030】
以下の表に示すように、相間移動触媒の使用は、相間移動触媒なしでの反応と比較したときに、副生成物であるトリフルオロメタン(CHF)の製造が低減されたトリフルオロヨードメタンに対するより高い選択性がもたらす。図に示されるように、使用相間移動触媒はまた、反応時間の著しい低減をもたらす。CHFの形成は、反応容器中の水分の存在に起因する。
【表1】
【0031】
態様
態様1は、トリフルオロヨードメタン(CFI)を製造するためのプロセスであって、金属トリフルオロ酢酸塩、ヨウ素、相間移動触媒、及び有機溶媒を提供することと、金属トリフルオロ酢酸塩とヨウ素とを相間移動触媒及び有機溶媒の存在下で反応させてトリフルオロヨードメタンを製造することと、を含む。
【0032】
態様2は、提供工程において、相間移動触媒が、約0.5%~約50%の金属トリフルオロ酢酸塩のモルパーセントで反応するために提供される、態様1に記載のプロセスである。
【0033】
態様3は、提供工程において、相間移動触媒が、約0.5%~約35%の金属トリフルオロ酢酸塩のモルパーセントで反応するために提供される、態様1に記載のプロセスである。
【0034】
態様4は、提供工程において、相間移動触媒が、約10%~約30%の金属トリフルオロ酢酸塩のモルパーセントで反応するために提供される、態様1に記載のプロセスである。
【0035】
態様5は、提供工程において、相間移動触媒が、約20%~約30%の金属トリフルオロ酢酸塩のモルパーセントで反応するために提供される、態様1に記載のプロセスである。
【0036】
態様6は、提供工程において、金属トリフルオロ酢酸塩が、トリフルオロ酢酸リチウム、トリフルオロ酢酸カリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ルビジウム、トリフルオロ酢酸セシウム、トリフルオロ酢酸カルシウム、トリフルオロ酢酸マグネシウム、トリフルオロ酢酸鉄、トリフルオロ酢酸亜鉛、及びトリフルオロ酢酸銅の群から選択される少なくとも1種である、態様1~5のいずれかに記載のプロセスである。
【0037】
態様7は、提供工程において、金属トリフルオロ酢酸塩が、トリフルオロ酢酸リチウム、トリフルオロ酢酸カリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ルビジウム、及びトリフルオロ酢酸セシウムの群から選択される少なくとも1種である、態様1~5のいずれかに記載のプロセスである。
【0038】
態様8は、提供工程において、金属トリフルオロ酢酸塩が、トリフルオロ酢酸カリウム及びトリフルオロ酢酸ナトリウムの群から選択される少なくとも1種である、態様1~5のいずれかに記載のプロセスである。
【0039】
態様9は、提供する工程において、金属トリフルオロ酢酸塩がトリフルオロ酢酸カリウムからなる、態様1~5のいずれかに記載のプロセスである。
【0040】
態様10は、提供工程において、有機溶媒が約500容積ppm未満の水を含む、態様1~9のいずれかに記載のプロセスである。
【0041】
態様11は、提供工程において、有機溶媒が約100容積ppm未満の水を含む、態様1~9のいずれかに記載のプロセスである。
【0042】
態様12は、提供工程において、有機溶媒が約50容積ppm未満の水を含む、態様1~9のいずれかに記載のプロセスである。
【0043】
態様13は、提供工程において、有機溶媒が約10容積ppm未満の水を含む、態様1~9のいずれかに記載のプロセスである。
【0044】
態様14は、提供工程において、有機溶媒がイオン性液体及び極性非プロトン性溶媒の群から選択される少なくとも1種である、態様1~13のいずれかに記載のプロセスである。
【0045】
態様15は、有機溶媒が、イミダゾリウム塩、カプロラクタム硫酸水素塩、スルホラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N-メチル-2-ピロリドン、及びジメチルスルホンの群から選択される少なくとも1種である、態様14に記載のプロセスである。
【0046】
態様16は、有機溶媒がスルホランからなる、態様15に記載のプロセスである。
【0047】
態様17は、提供工程において、相間移動触媒が、第四級アンモニウム塩及び四級ホスホニウム塩の群から選択される少なくとも1種である、態様1~16のいずれかに記載のプロセスである。
【0048】
態様18は、相間移動触媒がテトラフェニルホスホニウムブロミドを含む、態様17に記載のプロセスである。
【0049】
態様19は、提供工程において、金属トリフルオロ酢酸塩とヨウ素のモル比が約0.1:1~約2.0:1である、態様1~18のいずれかに記載のプロセスである。
【0050】
態様20は、提供工程において、金属トリフルオロ酢酸塩とヨウ素とのモル比が約0.8:1~約1.5:1である、態様1~18のいずれかに記載のプロセスである。
【0051】
態様21は、提供工程において、金属トリフルオロ酢酸塩とヨウ素とのモル比が約1:1~約1.2:1である、態様1~18のいずれかに記載のプロセスである。
【0052】
態様22は、反応工程において、金属トリフルオロ酢酸塩、ヨウ素、相間移動触媒、及び有機溶媒が約100℃~約250℃の温度である、態様1~21のいずれかに記載のプロセスである。
【0053】
態様23は、反応工程において、金属トリフルオロ酢酸塩、ヨウ素、相間移動触媒、及び有機溶媒が約110℃~約200℃の温度である、態様1~21のいずれかに記載のプロセスである。
【0054】
態様24は、反応工程において、金属トリフルオロ酢酸塩、ヨウ素、相間移動触媒、及び有機溶媒が約120℃~約190℃の温度である、態様1~21のいずれかに記載のプロセスである。
【0055】
態様25は、トリフルオロヨードメタン(CFI)を製造するためのプロセスであって、金属トリフルオロ酢酸塩、ヨウ素、相間移動触媒、及び有機溶媒を混合することと、金属トリフルオロ酢酸塩、ヨウ素、相間移動触媒、及び有機溶媒を加熱して、金属トリフルオロ酢酸塩とヨウ素を反応させて、トリフルオロヨードメタン及び金属ヨウ化物を製造することとを含む。
【0056】
態様26は、トリフルオロヨードメタンを金属ヨウ化物から分離することを更に含む、態様25に記載のプロセスである。
【0057】
態様27は、プロセスが連続プロセスである、態様25又は26のいずれかに記載のプロセスである。
【0058】
態様28は、プロセスがバッチプロセスである、態様25又は26のいずれかに記載のプロセスである。
【0059】
態様29は、相間移動触媒が、約0.5%~約50%の金属トリフルオロ酢酸塩のモルパーセントで反応するために提供される、態様25~28のいずれかに記載のプロセスである。
【0060】
態様30は、相間移動触媒が、約0.5%~約35%の金属トリフルオロ酢酸塩のモルパーセントで反応するために提供される、態様25~28のいずれかに記載のプロセスである。
【0061】
態様31は、相間移動触媒が、約10%~約30%の金属トリフルオロ酢酸塩のモルパーセントで反応するために提供される、態様25~28のいずれかに記載のプロセスである。
【0062】
態様32は、相間移動触媒が、約20%~約30%の金属トリフルオロ酢酸塩のモルパーセントで反応するために提供される、態様25~28のいずれかに記載のプロセスである。
【0063】
態様33は、金属トリフルオロ酢酸塩が、トリフルオロ酢酸リチウム、トリフルオロ酢酸カリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ルビジウム、トリフルオロ酢酸セシウム、トリフルオロ酢酸カルシウム、トリフルオロ酢酸マグネシウム、トリフルオロ酢酸鉄、トリフルオロ酢酸亜鉛、及びトリフルオロ酢酸銅の群から選択される少なくとも1種である、態様25~32のいずれかに記載のプロセスである。
【0064】
態様34は、金属トリフルオロ酢酸塩が、トリフルオロ酢酸リチウム、トリフルオロ酢酸カリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ルビジウム、及びトリフルオロ酢酸セシウムの群から選択される少なくとも1種である、態様25~32のいずれかに記載のプロセスである。
【0065】
態様35は、金属トリフルオロ酢酸塩が、トリフルオロ酢酸カリウム及びトリフルオロ酢酸ナトリウムの群から選択される少なくとも1種である、態様25~32のいずれかに記載のプロセスである。
【0066】
態様36は、金属トリフルオロ酢酸塩がトリフルオロ酢酸カリウムからなる、態様25~32のいずれかに記載のプロセスである。
【0067】
態様37は、有機溶媒が約500容積ppm未満の水を含む、態様25~36のいずれかに記載のプロセスである。
【0068】
態様38は、有機溶媒が、約100容積ppm未満の水を含む、態様25~36のいずれかに記載のプロセスである。
【0069】
態様39は、有機溶媒が、約50容積ppm未満の水を含む、態様25~36のいずれかに記載のプロセスである。
【0070】
態様40は、有機溶媒が、約10容積ppm未満の水を含む、態様25~36のいずれかに記載のプロセスである。
【0071】
態様41は、有機溶媒が、イオン性液体及び極性非プロトン性溶媒の群から選択される少なくとも1種である、態様25~40のいずれかに記載のプロセスである。
【0072】
態様42は、有機溶媒が、イミダゾリウム塩、カプロラクタム硫酸水素塩、スルホラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N-メチル-2-ピロリドン、及びジメチルスルホンの群から選択される少なくとも1種である、態様41に記載のプロセスである。
【0073】
態様43は、有機溶媒がスルホランからなる、態様42に記載のプロセスである。
【0074】
態様44は、相間移動触媒が、第四級アンモニウム塩及び四級ホスホニウム塩の群から選択される少なくとも1種である、態様25~43のいずれかに記載のプロセスである。
【0075】
態様45は、相間移動触媒がテトラフェニルホスホニウムブロミドを含む、態様44に記載のプロセスである。
【0076】
態様46は、金属トリフルオロ酢酸塩とヨウ素のモル比が約0.1:1~約2.0:1である、態様25~45のいずれかに記載のプロセスである。
【0077】
態様47は、金属トリフルオロ酢酸塩とヨウ素のモル比が約0.8:1~約1.5:1である、態様25~45のいずれかに記載のプロセスである。
【0078】
態様48は、金属トリフルオロ酢酸塩とヨウ素のモル比が約0.1:1~約1.2:1である、態様25~45のいずれかに記載のプロセスである。
【0079】
態様49は、金属トリフルオロ酢酸塩、ヨウ素、相間移動触媒、及び有機溶媒が100℃~250℃の温度に加熱される、態様25~48のいずれかに記載のプロセスである。
【0080】
態様50は、金属トリフルオロ酢酸塩、ヨウ素、相間移動触媒、及び有機溶媒が、約110℃~約200℃の温度に加熱される、態様25~48のいずれかに記載のプロセスである。
【0081】
態様51は、金属トリフルオロ酢酸塩、ヨウ素、相間移動触媒、及び有機溶媒が、約120℃~約190℃の温度に加熱される、態様25~48のいずれかに記載のプロセスである。

図1
【国際調査報告】