(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(54)【発明の名称】バッテリインバータシステム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220422BHJP
H02M 7/493 20070101ALI20220422BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/493
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553284
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2020055491
(87)【国際公開番号】W WO2020182530
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】102019106257.8
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515078095
【氏名又は名称】エスエムエイ ソーラー テクノロジー アクティエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SMA Solar Technology AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ハーメリング,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ロージンガー,ティム
(72)【発明者】
【氏名】モスタファ,モハメド
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA11
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA11
5H770DA22
5H770DA30
5H770JA17Y
5H770KA01Y
5H770LA05X
5H770LA10W
(57)【要約】
バッテリインバータシステム(1)は、複数のバッテリインバータユニット(15)を含み、バッテリインバータユニット(15)の各々が、多相インバータ(2.1~2.3)と、インバータ(2.1~2.3)にDC側で接続されたバッテリユニット(3.1~3.3)とを備える。バッテリユニット(3.1~3.3)は、互いに並列に接続され、かつラックヒューズ(5)によって過電流から保護された複数の個別ユニット(4)を含み、バッテリインバータユニット(15)は、AC側で並列に接続され、かつ共通の駆動パルスパターンで動作するように構成されている。バッテリインバータユニット(15)は、補償ヒューズ(13)を介してDC側で相互に接続されており、インバータ(2.1~2.3)の1つで短絡が発生した場合に、補償ヒューズ(13)がラックヒューズ(5)よりも速くトリガされるように、補償ヒューズ(13)が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリインバータユニット(15)を含むバッテリインバータシステム(1)であって、
-前記バッテリインバータユニット(15)の各々が、多相インバータ(2.1~2.3)と、前記インバータ(2.1~2.3)のDC側に接続されたバッテリユニット(3.1~3.3)とを備え、
-前記バッテリユニット(3.1~3.3)が、互いに並列に接続された複数の個別ユニット(4)を含み、それら個別ユニットが、ラックヒューズ(5)によって過電流から保護され、
-前記バッテリインバータユニット(15)が、AC側で並列に接続され、かつ共通の駆動パルスパターンで動作するように構成された、バッテリインバータシステムにおいて、
前記バッテリインバータユニット(15)が、補償ヒューズ(13)を介してDC側で相互に接続されており、前記インバータ(2.1~2.3)の1つで短絡が発生した場合に、前記補償ヒューズ(13)が前記ラックヒューズ(5)よりも速くトリガされるように、前記補償ヒューズ(13)が設けられていることを特徴とするバッテリインバータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリインバータシステム(1)において、
隣接するバッテリインバータユニット(15)が、補償ヒューズ(13)介して互いに接続されていることを特徴とするバッテリインバータシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のバッテリインバータシステム(1)において、
前記バッテリインバータユニット(15)の各々が、補償ヒューズ(13)を介して共通の中性点(14)に接続されていることを特徴とするバッテリインバータシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のバッテリインバータシステム(1)において、
前記インバータ(2.1~2.3)が、三相インバータとして設けられていることを特徴とするバッテリインバータシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のバッテリインバータシステム(1)において、
前記バッテリインバータユニット(15)が、構造および/または電力が同一のものとして提供されていることを特徴とするバッテリインバータシステム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のバッテリインバータシステム(1)において、
前記バッテリインバータユニット(15)の間で、それぞれのバッテリユニット(3.1~3.3)の蓄電容量と関連するインバータ(2.1~2.3)の電力との間の比率が等しいことを特徴とするバッテリインバータシステム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のバッテリインバータシステム(1)において、
前記インバータ(2.1~2.3)が、中性導体接続なしで提供されていることを特徴とするバッテリインバータシステム。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のバッテリインバータシステム(1)において、
前記インバータ(2.1~2.3)が、DC/DCコンバータなしで提供されていることを特徴とするバッテリインバータシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のバッテリインバータシステム(1)において、
前記ラックヒューズ(5)の公称電流および前記補償ヒューズ(13)の公称電流は、差が2倍以下であり、好ましくは同じであることを特徴とするバッテリインバータシステム。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載のバッテリインバータシステム(1)において、
前記ラックヒューズ(5)の公称電流および前記補償ヒューズ(13)の公称電流が、100A~1000Aの範囲内であることを特徴とするバッテリインバータシステム。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載のバッテリインバータシステム(1)において、
前記バッテリインバータユニットの正弦波フィルタ(6.1~6.3)のフィルタチョークが磁気的に互いに結合されておらず、前記正弦波フィルタ(6.1~6.3)のフィルタコンデンサが、可能な場合に、それぞれ共通の基準電位に接続されていることを特徴とするバッテリインバータシステム。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載のバッテリインバータシステム(1)において、
前記インバータ(2.1~2.3)が何れも、循環電流を抑制しない正弦波フィルタ(6.1~6.3)を介して、AC側で互いに並列に接続されていることを特徴とするバッテリインバータシステム。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載のバッテリインバータシステム(1)において、
共通のフィルタチョーク(7)が、AC側で並列に接続された前記バッテリインバータユニットの下流に接続されていることを特徴とするバッテリインバータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバッテリインバータユニットを並列に接続したバッテリインバータシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バッテリインバータシステムは、公共のエネルギー供給網からの余剰電力を一時的に蓄え、グリッドサポート機能を提供するために、益々利用されている。この目的のためには、数メガワット時の範囲の、対応する高い蓄電容量のエネルギー貯蔵デバイス、典型的にはリチウムイオン電池、およびメガワット範囲のインバータ電力も必要とされる。この種の用途では、必要なコンバータ電力を供給するために、通常、複数のインバータブリッジがAC側に並列に接続される。その際、各インバータブリッジをDC側でそれぞれのバッテリユニットに接続し、バッテリユニット同士を結合しない方法が知られている。
【0003】
特に効率的で費用対効果の高いバッテリインバータシステムでは、インバータブリッジを同じ駆動パルスパターンで、すなわち共通の制御で動作させることができるのが望ましい。同時に、ACフィルタチョークを使用することで、更なるコスト削減が可能になり、また、ACフィルタチョークはインバータブリッジ間の循環電流を打ち消すことがないため、特に費用対効果の高い方法で製造することができる。異なるインバータブリッジのACフィルタチョークの間に磁気的な結合を提供する必要性を排除することにより、フィルタチョークの設計を簡素化してコストを大幅に削減することができる。
【0004】
しかしながら、この簡素化の結果、バッテリユニットを並列に接続する必要があり、それにより、インバータブリッジのDC入力に同一の入力電圧が印加され、すべてのバッテリユニットが常に同じ充電状態であることが保証される。このバッテリユニットの並列接続の欠点は、障害が発生したときの動作、特にインバータに短絡が発生したときの動作である。その場合、DC側に短絡電流が発生し、それが非常に大きいため、バッテリユニット全体を共通のヒューズで保護することはできない。実際には、バッテリユニットを個別ユニットのロット(ここでは簡略化してバッテリラックと称する)に分割し、それらをラックヒューズで個々に保護する必要がある。ここでいうラックヒューズという用語は、必ずしもラック内に組み込まれた個々のユニットのヒューズを指すのではなく、十分に高速なヒューズが低コストで入手できるように動作電流または短絡電流が設計された個々のユニットを指している。現在のところ、これは公称値が最大200Aのヒューズに適用されている。
【0005】
それにもかかわらず、先行技術によれば、並列に接続されたバッテリユニットでは、インバータの短絡の極端な場合に、短絡により、すべてのラックヒューズがトリガされ、交換する必要が生じる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、DC側で並列に接続されたバッテリユニットを有するバッテリインバータシステムであって、インバータが短絡した場合にラックヒューズの一部のみを交換すればよいように保護することができるバッテリインバータシステムを開示することである。
【発明の概要】
【0007】
この目的は、独立請求項1の特徴を有するバッテリインバータシステムによって達成される。バッテリインバータシステムの好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明によれば、バッテリインバータシステムは、複数のバッテリインバータユニットを備え、バッテリインバータユニットの各々が、多相、好ましくは三相のインバータと、DC側でインバータに接続されたバッテリユニットとを備える。バッテリユニットの各々は、互いに並列に接続された複数のバッテリパックを含み、それらがラックヒューズによって過電流から保護されており、バッテリインバータユニットは、AC側で並列に接続され、何れも、共通の駆動パルスパターンで動作するように構成され、バッテリインバータユニットは、補償ヒューズを介してDC側で相互に接続され、補償ヒューズは、インバータの1つで短絡が発生した場合に、補償ヒューズがラックヒューズよりも速くトリガされるように設けられている。補償ヒューズを介したバッテリインバータユニットの接続は、接続されるバッテリインバータユニットのバッテリユニットとインバータとの間の電気的接続の任意の点から行うことができる。この場合、補償ヒューズが無傷のときは、バッテリインバータシステムのすべてのインバータのDC側入力電圧が同じになるように接続が形成される。
【0009】
この実施形態のバッテリインバータシステムは、AC側に複雑なフィルタ配置を必要とすることなく、通常運転中のバッテリインバータユニット間の補償電流を最小限に抑えることができ、同時に、バッテリユニットが常に同じ充電状態であることが保証されるため、それらの容量を最適な方法で使用することができる。補償電流が低いことにより、ラックヒューズの公称値に対応する公称値を持つヒューズを補償ヒューズとして使用することができ、少なくとも両公称値の間に2倍以上の差があってはならず、補償ヒューズの公称値はラックヒューズの公称値よりも高くする必要はなく、むしろ低くてもよい。補償ヒューズの公称値がラックヒューズよりも高い場合でも、短絡時の補償ヒューズのより速いトリガが保証される。それは、複数の個別ユニットを有するバッテリユニット全体の少なくとも総電流、つまり1つのラックヒューズを流れるバッテリパックの短絡電流よりも遥かに高い電流が、補償ヒューズを流れ、I2tのトリガ特性を介してより速いトリガが保証されるからである。
【0010】
このようにして、バッテリユニットが並列に接続された5つの個別ユニットから形成され、各個別ユニットが250Aの短絡電流を供給する場合、当該バッテリユニットは1250Aの短絡電流を供給することができる。その後、短絡を起こしているバッテリインバータユニットに隣接するバッテリユニットのこの短絡電流が、補償ヒューズを流れ、その結果、予想されるI2tのトリガ特性の場合、補償ヒューズの公称値と同じ公称値のラックヒューズと比較して、バッテリユニットのラックヒューズの25((1250A/250A)2に対応)分の1のより短いトリガ時間内に補償ヒューズがトリガされる。このトリガ動作は、比較ヒューズの公称値がラックヒューズの公称値よりも2倍高い場合、ラックヒューズと比較して補償ヒューズのより速いトリガを保証する。バッテリユニット内のラックヒューズまたは個別ユニットの数が多いほど、この効果をさらに高めることができる。それは、ラックヒューズを流れる個別ユニットの短絡電流と比較して、バッテリユニット全体の短絡電流が、個別ユニットの数に応じて増加するためである。同様の理由で、複数のバッテリユニットの短絡電流が流れる補償ヒューズは、1つのバッテリユニットの短絡電流が流れる(同じ公称値の)補償ヒューズよりも確実に速くトリガされる。
【0011】
補償ヒューズとラックヒューズに公称値100A~1000Aのヒューズを使用する場合、短絡時のバッテリユニットの損傷を回避するために、依然として低いヒューズコストで十分に高速なトリガ動作を確保することができる。現時点では、公称値200Aのヒューズが特に適している。
【0012】
本発明の好ましい一実施形態では、隣接するバッテリインバータユニットが、それぞれ補償ヒューズを介して互いに接続されている。したがって、バッテリインバータシステムが有するバッテリインバータユニットの数と比べて、使用する補償ヒューズの数を1つ減らすことができる。それにもかかわらず、短絡が発生した場合、複数の補償ヒューズがトリガされる可能性あり、その後交換する必要がある。
【0013】
本発明のさらに好ましい実施形態では、バッテリインバータユニットの各々が、補償ヒューズを介してバッテリインバータシステムの共通の中性点に接続されている。ここで、補償ヒューズの数は、バッテリインバータユニットの数に対応している。しかしながら、この実施形態では、短絡時に、短絡しているインバータを中性点に接続する補償ヒューズのみがトリガされることになる。それは、他のすべてのバッテリユニットの短絡電流がこの補償ヒューズに流れる一方で、個々のバッテリユニットの短絡電流しか、他のすべての補償ヒューズに流れないためである。
【0014】
本発明に係るバッテリインバータシステムのバッテリインバータユニットを電力的に同一に構成することは、インバータ間で特に低い補償電流を実現することが可能になるため、有利である。この場合、インバータが同一の構造であるという実施形態は特に有利であり、共通の駆動パルスパターンでインバータを駆動する結果として、補償電流を少なくとも理論的に完全に防止することができる。
【0015】
さらに、バッテリインバータユニット(15)の間で、それぞれのバッテリユニット(3.1~3.3)の蓄電容量と、関連するインバータ(2.1~2.3)の電力との比率が等しいことは有利である。これにより、動作中に補償ヒューズを流れる補償電流も最小限に抑えられる。
【0016】
好ましい一変形例では、バッテリインバータシステムまたはインバータが、中性導体接続なしで設計されている。その結果、補償ラインを介して補償しなければならない対応する中性導体電流が、そもそも生じることがない。
【0017】
好ましい一実施形態では、インバータがDC/DCコンバータなしで設計されている。これにより、インバータブリッジの入力に同一のDC電圧が印加され、それがインバータ間の補償電流の回避にも寄与することができる。
【0018】
確かに、適切な循環電流抑制ACチョーク配置を用いて循環電流を最小化することが考えられるが、この種のチョークはバッテリインバータシステムに大きな追加の負担を強いることになる。この場合、循環電流抑制正弦波フィルタという用語は、ゼロシーケンスシステムのインダクタンスが正シーケンスシステムのインダクタンスに達するか、それを超えるチョーク配置を意味すると理解される。
【0019】
補償電流を最小化することを目的とした上記手段は、例えばバッテリインバータユニットの正弦波フィルタのフィルタチョークを互いに磁気的に結合しないことにより、循環電流抑制ACチョーク配置をなくすことができるような方法で、バッテリインバータシステムを設計することを可能にする。任意選択的に存在する正弦波フィルタのフィルタコンデンサは、何れにしても、好ましくは共通の基準電位に接続される。これは、例えば、各インバータの正弦波フィルタとして個別の3レッグチョークを使用する場合である。このようにして、特に費用対効果の高いバッテリインバータシステムが実現される。
【0020】
さらに、バッテリインバータシステムのインバータが、正弦波フィルタの下流のAC側で並列に接続されることも考えられ、この場合、更なるコンポーネント、特に共通のフィルタコンデンサを有する共通のグリッドフィルタまたは共通のフィルタチョークが、AC側で並列に接続されたバッテリインバータユニットの下流に接続されることになる。
【0021】
バッテリインバータユニットのインバータは、別々のハウジングに収容することができるが、複数のバッテリインバータユニット、少なくともそれらのインバータおよび正弦波フィルタが共通のハウジングに収容されることも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明は、図面によって示されている。
【
図1】
図1は、バッテリユニットが並列に接続された従来技術によるバッテリインバータシステムを示している。
【
図2】
図2は、本発明に係るバッテリインバータシステムの第1の実施形態を示している。
【
図3】
図3は、本発明に係るバッテリインバータシステムの第2の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、3つのインバータ2.1~2.3が、インバータ2.1~2.3に関連する正弦波フィルタ6.1~6.3を介して、AC側の共通のAC接続点に接続されたバッテリインバータシステム1を示している。正弦波フィルタ6.1~6.3は、ここではフィルタチョークとしてのみ示されているが、更なるコンポーネント、特にフィルタコンデンサも含むこともできる。
【0024】
共通接続点から出発して、バッテリインバータシステム1は、共通フィルタチョーク7および共通フィルタコンデンサ8、断路器および変圧器9を介して、グリッド10に接続されている。記載したすべての実施形態において、これは、多相インバータ、例えば三相インバータにおいて、各相の共通フィルタチョーク7が、各相についてフィルタ巻線を有する別個のフィルタチョークまたはフィルタチョーク配列を備え、それらが磁気的にも結合される場合を含む。また、各相に個別のフィルタコンデンサを設けることもできる。
【0025】
インバータ2.1~2.3は、DC側でバッテリユニット3.1~3.3に接続されており、何れの場合も、バッテリユニットがインバータの1つに関連付けられ、両者がバッテリインバータユニット15を形成するようになっている。バッテリインバータユニット15は、その一部が接続ライン、例えばDCバスを介して並列に接続されている。バッテリユニット3.1~3.3は、エネルギー貯蔵デバイスとしての複数の個別ユニット4から形成されている。個別ユニット4は、何れの場合も、バッテリパックとして、棚ユニット、いわゆるラックに、好ましくは着脱可能に収容することができる。各個別ユニット4は、例えばラックヒューズ5を介して、短絡による過電流から保護されている。ラックヒューズ5は、電流制限値としての公称値を有し、恒久的に超過した場合にラックヒューズ5をトリガし、関連するバッテリユニット4がインバータ2.1~2.3から切り離される。トリガ後、ラックヒューズは一方向ヒューズとして欠陥があるため、交換する必要がある。
【0026】
ここでは例としてインバータ2.1での短絡11として示される故障イベントの場合、すべてのバッテリユニットがそれぞれのラックヒューズ5の公称値を超える短絡電流を供給するため、すべてのラックヒューズ5でトリガイベント12が発生する。短絡11の結果として、先行技術では結果的にすべてのラックヒューズ5を交換しなければならず、高いコストと労力を伴う。
【0027】
図2は、本発明に係るバッテリインバータシステム1の第1の実施形態を示している。ここでも、バッテリユニット15を形成するために、バッテリユニット3.1~3.3が各インバータ2.1~2.3にそれぞれ関連付けられている。
図1に係るバッテリインバータシステムとは対照的に、バッテリインバータユニット15間の接続ラインは補償ヒューズ13を介して形成されており、補償ヒューズ13が、何れの場合も、隣接するバッテリインバータユニット15間に配置されている。このため、バッテリインバータシステムにおける補償ヒューズの数は、バッテリユニットまたはインバータの数よりも1つ少ない。図示の3つのバッテリインバータユニット15に加えて、バッテリインバータシステム1の総電力を増加させるために、さらにバッテリインバータユニットを追加して、AC側で並列に接続し、DC側で補償ヒューズを介して他のバッテリインバータユニットと接続することもできる。
【0028】
短絡11が発生した場合(ここでもインバータ2.1において示すように)、影響を受けるバッテリインバータユニット15のすべてのラックヒューズ5に対して、トリガイベント12が発生する。他のバッテリインバータユニットのラックヒューズ5、ここではバッテリユニット3.2および3.3のラックヒューズ5は、トリガから保護される。それは、短絡しているインバータに直接接続されている補償ヒューズ13が、そこに流れるより高い短絡電流により、保護されるラックヒューズ5よりも先にトリガされ、対応するバッテリユニット(ここではバッテリユニット3.2および3.3)の短絡を解決するためである。この場合、個別ユニット4の短絡電流だけでなく、むしろバッテリユニット3.2および3.3の累積短絡電流が補償ヒューズ13を横切って流れ、対応する補償ヒューズ13の迅速なトリガを確実にする助けとなる。このため、バッテリユニット3.2および3.3のラックヒューズ5を交換する必要はなく、トリガされた1または複数の補償ヒューズ13のみがそれぞれ交換される。また、影響を受けたバッテリユニット3.1のラックヒューズ5も、すべて交換する必要がある。
【0029】
バッテリインバータシステム1の正常な動作の範囲内で、すなわち短絡がない状態で、補償ヒューズの望ましくないトリガを防止するためには、インバータ2.1~2.3間の補償電流または循環電流が、インバータ内に含まれるインバータブリッジの駆動によって最小限に抑えられるように、バッテリインバータシステム1を動作させることが必要である。これは、インバータブリッジを同一の駆動パルスパターンで駆動し、かつインバータを電力的にも、特に構造的にも同一のものとして提供することによって、実現することができる。原理的には、異なるインバータの位相出力間のフィルタ巻線を磁気的に結合する複雑なACフィルタの配置によって、かつ/または個々のインバータを個別に複雑に駆動することによって、インバータ間の補償電流を低減することもできるが、その場合、本発明のコスト面での利点は得られない。
【0030】
図3は、本発明に係るバッテリインバータシステム1の第2の実施形態を示している。
図2に係る実施形態とは対照的に、この実施形態では、バッテリインバータユニット15間の接続ラインの各々が、補償ヒューズ13を介して共通の中性点14に接続されている。このため、ここでは、補償ヒューズ13の数が、バッテリインバータユニット15の数に対応している。短絡11が発生した場合(ここでもインバータ2.1において示すように)、
図2による実施形態の場合もそうであったように、短絡しているインバータ2.1に関連するバッテリユニット3.1のすべてのラックヒューズ5でトリガイベント12が発生する。さらに、短絡しているインバータ2.1を中性点14に接続する補償ヒューズ13にもトリガイベント12が発生する。このため、この実施形態では、何れにしても、補償ヒューズ13のうちの1つのみがトリガされる。これは、残りのすべてのバッテリユニット、ここではバッテリユニット3.2~3.3の短絡電流がトリガ出力ヒューズ13を横切って流れるという事実によってもサポートされる。影響を受けた補償ヒューズ13のトリガイベント12の結果として、残りのすべてのラックヒューズ5はトリガから保護され、交換する必要はない。
【符号の説明】
【0031】
1 バッテリインバータシステム
2.1~2.3 インバータ
3.1~3.3 バッテリユニット
4 個別ユニット
5 ラックヒューズ
6.1~6.3 正弦波フィルタ
7 フィルタチョーク
8 フィルタコンデンサ
9 変圧器
10 グリッド
11 短絡
12 トリガイベント
13 補償ヒューズ
14 中性点
15 バッテリインバータユニット
【国際調査報告】