(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(54)【発明の名称】前立腺がんを予測するための方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6813 20180101AFI20220422BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220422BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220422BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20220422BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220422BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20220422BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20220422BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20220422BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20220422BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALN20220422BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20220422BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20220422BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220422BHJP
【FI】
C12Q1/6813 Z ZNA
A61K45/00
A61P35/00
A61P13/08
G01N33/53 M
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
G01N33/574 Z
C12N15/11 Z
C12Q1/6837 Z
C12Q1/686 Z
C12M1/00 A
C12N15/09 200
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553304
(86)(22)【出願日】2020-03-14
(85)【翻訳文提出日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 US2020022862
(87)【国際公開番号】W WO2020190819
(87)【国際公開日】2020-09-24
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518436124
【氏名又は名称】エムアイアール サイエンティフィック,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】テニスウッド,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ディレンツォ,アルバート グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ウェイ-リン ウィニー
【テーマコード(参考)】
2G045
4B029
4B063
4C084
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CB03
2G045DA13
2G045DA14
2G045FB02
4B029AA23
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4C084AA17
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA81
4C084ZB26
(57)【要約】
本発明は、前立腺がんを有する患者を診断、予後診断、モニタリング、および治療するための組成物および方法に関する。特に、本発明は、臨床的に有意な前立腺がんを特定するための発現シグネチャーとしてのmiRNAおよびsnoRNAの使用に関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺がんのリスクがある対象をスクリーニングするための方法であって、
(i)前記対象から生物学的サンプルを得ることと、
(ii)前記生物学的サンプルからの小分子非コードRNA(sncRNA)のシグネチャー集合の総発現プロファイルを検出することであって、
前記シグネチャーsncRNAの集合の総発現プロファイルを検出することが、前記生物学的サンプルから得られたsncRNAに由来するcDNAの各々に特異的なハイブリダイズプローブを含み、
前記ハイブリダイズプローブのうちの少なくとも1つが、配列番号1~280からなる群から選択される、検出することと、
(iii)前立腺がんを有しないか、または前立腺がんを有する標的集団からのトレーニングデータセットにおける配列番号1~280の総発現プロファイルを比較することにより、前記対象からの配列番号1~280の前記総発現プロファイルを相関させることと、
(iv)上記(iii)から得られた結果に基づいて、対象が前立腺がんのリスクを有する可能性を判断することと、を含む、方法。
【請求項2】
前立腺がんのリスクがあると判断された前記対象におけるsncRNAの発現を再分析し、無痛性(低悪性度、GG1)または中もしくは高悪性度(GG2~GG5)の前立腺がんを有する標的集団からのトレーニングデータセットにおける配列番号281~560の総発現プロファイルと比較することにより、無痛性(低悪性度、GG1)または中もしくは高悪性度(GG2~GG5)の前立腺がんを有するとして前記対象をさらに分類する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
侵攻性(中もしくは高悪性度、GG2~GG5)の前立腺がんを有すると判断された前記対象におけるsncRNAの発現を再分析し、低/中等度リスク(GG1~GG2)または侵攻性(高悪性度、GG3~GG5)の前立腺がんを有する標的集団からのトレーニングセットにおける配列番号561~840の総発現プロファイルと比較することにより、低/中悪性度(GG2~GG5)または侵攻性(高悪性度、GG3~GG5)の前立腺がんを有するとして前記対象をさらに分類する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
侵攻性(中もしくは高悪性度、GG2~GG5)の前立腺がんを有するとして分類された前記対象が、根治的前立腺切除術、前立腺の近接照射療法、前立腺の放射線療法、ネオアジュバントホルモン療法およびアジュバントホルモン療法のうちの1つ以上で治療される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記生物学的サンプルが、無細胞尿である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的サンプルが、尿中エクソソームである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的サンプルが、尿中エクソソームから抽出されたsncRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記sncRNAが、miRNA、C/DボックスsnoRNA、H/ACAボックスsnoRNA、scaRNA、piRNAおよびlncRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記sncRNAが、miRNAおよびsnoRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前立腺がんのリスクがある対象をスクリーニングするための前記方法が、Sentinel(商標)PCa(PCa)試験を実施することを含み、前記PCa試験が、
(i)情報価値のある配列について、Open Arrayプラットフォーム上で、配列番号1~280のsncRNA配列を調べるステップと、
(ii)前記配列すべての前記総発現プロファイル、および第1の分類アルゴリズムに含まれる配列間の相互作用を検査するSentinelスコアを求めるステップと、
(iii)前記情報価値のある配列についての(ii)における前記Sentinelスコアを、前立腺がんを有するか、または前立腺がんを有しないことが知られている患者からのトレーニングデータセットについて得られたSentinelスコアと比較するステップと、
(iv)前記対象が前立腺がんを有するのか、前立腺がんを有しないのかを判断するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
無痛性もしくは低悪性度(GG-1)または中もしくは高悪性度(GG-2~GG-5)の前立腺がんを有するとして分類される前立腺がんを有する対象をスクリーニングするための前記方法が、Sentinel(商標)臨床的有意性(CS)試験を実施することを含み、前記CS試験が、
(i)情報価値のある配列の異なるセットについて、Open Arrayプラットフォーム上で、第2ラウンドで、配列番号281~560のsncRNAを調べるステップと、
(ii)前記配列すべての前記総発現プロファイル、および第2の分類アルゴリズムに含まれる配列間の相互作用を検査するSentinelスコアを求めるステップと、
(iii)前記情報価値のある配列についての前記(ii)におけるSentinelスコアを、患者GG1前立腺がんおよびGG2~GG-5前立腺がんからのトレーニングデータセットについて得られたSentinelスコアと比較するステップと、
(iv)前記対象がGG1前立腺がんを有するのか、またはGG2~GG-5前立腺がんを有するのかを判断するステップと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
無痛性もしくは低悪性度(GG1)または中もしくは高悪性度(GG-2~GG-5)の前立腺がんを有するとして分類される前立腺がんを有する対象をスクリーニングするための前記方法が、Sentinel(商標)高悪性度(HG-試験を実施することを含み、前記CS試験が、
(i)情報価値のある配列の異なるセットについて、Open Arrayプラットフォーム上で、第3ラウンドで、配列番号561~840のsncRNAを調べるステップと、
(ii)前記配列すべての前記総発現プロファイル、および第3の分類アルゴリズムに含まれる配列間の相互作用を検査するSentinelスコアを求めるステップと、
(iii)前記情報価値のある配列についての前記(ii)におけるSentinelスコアを、患者低/中悪性度(GG1~GG2)の前立腺がんおよび高悪性度(GG3~GG-5)の前立腺がんからのトレーニングデータセットについて得られたSentinelスコアと比較するステップと、
(iv)前記対象が低/中悪性度(GG1~GG2)の前立腺がんを有するのか、または高悪性度(GG3~GG-5)の前立腺がんを有するのかを判断するステップと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記検出するステップが、マイクロアレイ法、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、ポリメラーゼ連鎖反応、核酸ハイブリダイゼーション、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前立腺がんのリスクがある対象におけるsncRNAシグネチャーの集合の前記総発現プロファイルが、前立腺がんを有しない対象におけるsncRNA(配列番号1~280)のシグネチャー集合の前記総発現プロファイルよりも高いまたは低い、sncRNA(配列番号1~280)のシグネチャー集合の総発現プロファイルの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
中/高悪性度(GG2~GG5)の前立腺がんを有する対象におけるsncRNAシグネチャーの集合の前記総発現プロファイルが、無痛性もしくは低悪性度(GG1)前立腺がんを有する対象におけるsncRNA(配列番号281~560)のシグネチャー集合の前記総発現プロファイルよりも高いまたは低い、sncRNA(配列番号281~560)シグネチャーの集合の総発現プロファイルの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
対象が前立腺がんであるか否かを診断するための方法であって、
(i)対象から生物学的サンプルを得ることと、
(ii)前記生物学的サンプルからの小分子非コードRNA(sncRNA)のシグネチャー集合の総発現プロファイルを検出することであって、
前記シグネチャーsncRNAの集合の総発現プロファイルを検出することが、前記生物学的サンプルから得られたsncRNAに由来するcDNAの各々に特異的なハイブリダイズプローブを含み、
前記ハイブリダイズプローブが、配列番号1~280からなる群から選択される、検出することと、
(iii)前立腺がんを有しないか、または前立腺がんを有する標的集団からのトレーニングデータセットにおける配列番号1~280の発現を比較することにより、前記対象からの配列番号1~280の発現を相関させることと、
(iv)上記(iii)から得られた結果に基づいて、対象が前立腺のリスクを有する可能性を判断することと、を含む、方法。
【請求項17】
前立腺がんのリスクがあると判断された前記対象を再分析し、無痛性または侵攻性の前立腺がんを有する標的集団からのトレーニングデータセットにおける配列番号281~560の発現と比較することにより、無痛性(低悪性度、GG1)または中もしくは高悪性度(GG2~GG5)の前立腺がんのいずれかを有するとして前記対象をさらに分類する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
中もしくは高悪性度(GG2~GG5)の前立腺がんのリスクがあると判断された前記対象を再分析し、低/中悪性度(GG1~GG2)の前立腺がんを有する標的集団からのトレーニングデータセットにおける配列番号561~840の発現と比較することにより、無痛性(低/中悪性度、GG1~GG2)または侵攻性もしくは高悪性度(GG3~GG5)の前立腺がんのいずれかを有するとして前記対象をさらに分類する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
中もしくは高悪性度または侵攻性の前立腺がんを有するとして分類された前記対象が、根治的前立腺切除術、前立腺の近接照射療法、前立腺の放射線療法、ネオアジュバントホルモン療法およびアジュバントホルモン療法のうちの1つ以上で治療される、請求項16および17に記載の方法。
【請求項20】
前記生物学的サンプルが、無細胞尿である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記生物学的サンプルが、尿中エクソソームである、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記生物学的サンプルが、尿中エクソソームから抽出されたsncRNAである、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記sncRNAが、miRNA、C/DボックスsnoRNA、H/ACAボックスsnoRNA、scaRNA、piRNAおよびlncRNAを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記sncRNAが、miRNAおよびsnoRNAである、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記シグネチャーsncRNAの集合の前記総発現プロファイルが、無痛性前立腺の生物学的サンプルにおける前記シグネチャーsncRNAの集合の発現レベルよりも高いのか、または低いのかについて分析することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前立腺がんのリスクがある対象を診断するための前記方法が、Sentinel(商標)前立腺がん(PCa)試験を実施することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
無痛性/低悪性度(GG-1)または中/高等度リスク(GG2~GG5)の前立腺がんを有するとして対象を診断するための前記方法が、Sentinel(商標)臨床的有意性(CS)試験を実施することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
低/中悪性度(GG-1~GG2)または高等度リスク(GG3~GG5)の前立腺がんを有するとして対象を診断するための前記方法が、Sentinel(商標)高悪性度(HG)試験を実施することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記診断するステップが、マイクロアレイ法、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、ポリメラーゼ連鎖反応、核酸ハイブリダイゼーション、またはそれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
対象において前立腺がんを治療するための方法であって、
(i)患者から生物学的サンプルを得ることと、
(ii)前記生物学的サンプルからの小分子非コードRNA(sncRNA)のシグネチャー集合の総発現プロファイルを検出することであって、
前記シグネチャーsncRNAの集合の総発現プロファイルを検出することが、前記生物学的サンプルから得られたsncRNAに由来するcDNAの各々に特異的なハイブリダイズプローブを含み、
前記ハイブリダイズプローブが、配列番号1~280からなる群から選択される、検出することと、
(iii)
(a)前立腺がんを有しないか、または前立腺がんを有する標的集団からのトレーニングデータセットにおける配列番号1~280の発現を比較し、
(b)上記(a)から得られた結果に基づいて、前立腺がんを有する対象においてがんを有する可能性を判断することにより、前記対象からの配列番号1~280の発現を相関させることと、
(iv)無痛性もしくは低等度リスク(GG1)の前立腺がんを有する標的集団からのトレーニングデータセットにおける配列番号281~560の総発現プロファイルを比較することによって、前立腺がんを有する前記対象からの配列番号281~560の総発現プロファイルを再分析して、無痛性もしくは低等度リスク(GG1)または中/高悪性度(GG2~GG5)の前立腺がんのいずれかを有するとして前記対象をさらに分類することと、
(v)中/高悪性度(GG2~GG5)の前立腺がんを有する前記対象を、(a)根治的前立腺切除術、(b)前立腺の近接照射療法、(c)前立腺の放射線療法、(d)ネオアジュバントホルモン療法、(e)アジュバントホルモン療法、および(f)それらの組み合わせのうちの1つ以上で治療することと、を含む、方法。
【請求項31】
前記生物学的サンプルが、無細胞尿である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記生物学的サンプルが、尿中エクソソームである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記生物学的サンプルが、尿中エクソソームから抽出されたsncRNAである、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記sncRNAが、miRNA、C/DボックスsnoRNA、H/ACAボックスsnoRNA、scaRNA、piRNAおよびlncRNAを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記sncRNAが、miRNAおよびsnoRNAを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前立腺がんのリスクがある対象を治療するための前記方法が、Sentinel(商標)PCa(PCa)試験を実施することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
無痛性/低悪性度(GG1)または中/高悪性度(GG2~GG5)の前立腺がんを有するとして対象を分類する前記対象を治療するための前記方法が、Sentinel(商標)臨床的有意性(CS)試験を実施することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記検出するステップが、マイクロアレイ法、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、ポリメラーゼ連鎖反応、核酸ハイブリダイゼーション、またはそれらの組み合わせを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前立腺がんを有すると診断された対象におけるsncRNAのシグネチャー集合の前記総発現プロファイルが、前立腺がんを有しない対象における前記sncRNA(配列番号1~280)のシグネチャー集合の前記総発現プロファイルよりも高いまたは低い、前記sncRNA(配列番号1~280)のシグネチャー集合の総発現プロファイルの組み合わせである、請求項30に記載の方法。中/高悪性度(GG2~GG-5)の前立腺がんを有する対象におけるsncRNAのシグネチャー集合の前記総発現プロファイルが、無痛性もしくは低悪性度(GG1)の前立腺がんを有する対象における前記sncRNA(配列番号281~840)のシグネチャー集合の前記総発現プロファイルよりも高いまたは低い、前記sncRNA(配列番号281~840)のシグネチャー集合の総発現プロファイルの組み合わせである、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
対象ががんを有するのか、がんを有しないのかを判断し、がんを有する前記対象を、(i)無痛性(低悪性度、GG1)、(ii)中もしくは高悪性度(GG2~GG5)、(iii)低/中等度リスク(GG1~G2)、または(iv)侵攻性(高悪性度、GG3~GG5)の前立腺がんを有するとして分類するためのシステムであって、
(i)
(a)情報価値のある配列について、第1のOpen Arrayプラットフォーム上で、配列番号1~280のsncRNA配列を調べ、
(b)配列番号1~280の前記配列すべての前記総発現プロファイルおよび第1の分類アルゴリズムに含まれる配列間の相互作用を検査するSentinelスコアを求め、
(c)前記情報価値のある配列についての前記(b)におけるSentinelスコアを、前立腺がんを有するか、または前立腺がんを有しないことが知られている患者からのトレーニングデータセットにおいて得られたSentinelスコアと比較し、
(d)前記対象が前立腺がんを有するのか、前立腺がんを有しないのかを判断するように構成された、第1のプロセッサであって、
前立腺がんを有すると判断された前記対象が、無痛性(低悪性度、GG1)または中もしくは高悪性度(GG2~GG5)の前立腺がんを有するとして分類される、第1のプロセッサと、
(ii)
(a)情報価値のある配列について、第2のOpen Arrayプラットフォーム上で、配列番号281~560のsncRNA配列を調べ、
(b)配列番号281~560の前記配列すべての前記総発現プロファイルおよび第2の分類アルゴリズムに含まれる配列間の相互作用を検査するSentinelスコアを求め、
(c)前記情報価値のある配列についての(f)における前記Sentinelスコアを、無痛性(低悪性度、GG1)または高悪性度(GG2~GG5)の前立腺がんを有することが知られている患者からのトレーニングデータセットにおいて得られたSentinelスコアと比較し、
(d)前記対象が無痛性(低悪性度、GG1)の前立腺がんを有するのか、または高悪性度(GG2~GG5)の前立腺がんを有するのかを判断するように構成された、第2のプロセッサであって、
高悪性度(GG2~GG5)の前立腺がんを有すると判断された前記対象が、低/中等度リスク(GG1~GG2)または侵攻性(高悪性度、GG3~GG5)の前立腺がんを有するとしてさらに分類される、第2のプロセッサと、
(iii)
(a)情報価値のある配列について、第3のオープンアレイプラットフォーム上で、配列番号561~840のsncRNA配列を調べ、
(b)配列番号561~840の前記配列すべての前記総発現プロファイルおよび第3の分類アルゴリズムに含まれる配列間の相互作用を検査するSentinelスコアを求め、
(c)前記情報価値のある配列についての(j)における前記Sentinelスコアを、低/中等度リスク(GG1~GG2)または侵攻性(高悪性度、GG3~GG5)の前立腺がんを有することが知られている患者からのトレーニングデータセットにおいて得られたSentinelスコアと比較し、
(d)前記対象が、低/中等度リスク(GG1~GG2)を有するのか、または侵攻性(高悪性度、GG3~GG5)を有するのかを判断するように構成された、第3のプロセッサと、を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年2月18日に出願された米国仮特許出願第62/978,184号および2019年3月15日に出願された米国仮特許出願第62/819,325号の利益を主張するものであり、これらは参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、前立腺がんを有する患者を診断、予後診断、モニタリング、および治療するための組成物および方法に関する。具体的には、本発明は、臨床的に有意な前立腺がんを特定するための発現シグネチャーとしてのmiRNAおよびsnoRNAなどの小分子非コードRNA(sncRNA)の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
現在の前立腺がんのスクリーニング方法には、直腸指診とそれに続く前立腺特異抗原(PSA)検査が含まれる。前者は侵襲的であり、後者は対象からの血液サンプルの採取を必要とする。
【0004】
疑わしいDREを有するおよび/またはPSAレベルが上昇している患者は、体系的な12針コア生検または磁気共鳴画像法(MRI)ガイド下の標的針生検を受ける。この標準的な診断戦略は、侵襲的で不正確であり、重大な費用のかかる罹患率、特に細菌感染症と関連している。
【0005】
PSA検査には重大な欠点がある。前立腺がんを示すことに加えて、PSAレベルの上昇はまた、尿路感染症または前立腺炎(炎症、または前立腺もしくは良性前立腺肥大症(BPH))を示している可能性がある。この検査は前立腺がんを過剰診断し、多くの男性が不必要にコア針生検を受ける。次いで、生検中に収集された前立腺組織が病理医によって検査され、疾患の悪性度を評価するグリソンスコアが割り当てられる。グリソンスコアは、2つの数値の合計である:(1)最も一般的な病理学における腫瘍の悪性度についての病理医の判断に基づいて病理医によって割り当てられた一次悪性度、(2)二番目に顕著な病理学における腫瘍の悪性度の判断に基づいた二次悪性度。各領域に、出現している腫瘍の侵攻性の程度に基づいて1~5のスコアが割り当てられ、2つの数値が合計されて、最終的なグリソンスコアが得られる。細胞が正常に近いように見える腫瘍には低いグリソンスコア(6以下、グリソン3+3として報告)が割り当てられ、細胞が正常な前立腺の細胞と明らかに異なるように見える腫瘍には高いグリソンスコアが割り当てられる(7以上)。低いグリソンスコアに基づく低悪性度の腫瘍は、侵攻性である可能性が低くなり、一方、グリソンスコアが高い腫瘍は、侵攻性で転移する可能性が高くなる。グリソンスコアリングシステムには、実施以来問題となっている局面がある。最も注目すべきは、グリソン3+4およびグリソン4+3の腫瘍がいずれもグリソン7として報告されるという事実であるが、これらのグループの臨床転帰は明らかに異なる。この問題を解消するために、悪性度のグループ化と呼ばれるグリソンスコアの最近の改良が採用されている(悪性度グループ1(GG1)にはグリソン3+3、GG2にはグリソン3+4、GG3にはグリソン4+3、GG4にはグリソン4+4、およびGG5にはグリソン5+4以上が含まれる)。スコアリングシステムへのこの変更により、前立腺がんの組織病理学の報告が単純化され、「グリソン7」腫瘍と関連する曖昧さが解消され、結果の分類がより簡単になった。
【0006】
「上昇した」PSA(>3ng/mL)に基づいてコア針生検を推奨される患者の約50~70%は生検が陰性であり、PSA<3ng/mLの男性の14%は前立腺がんを有しているが、PSAレベルが低いため、定期的に生検を受けていない。PSAスクリーニングとコア針生検との組み合わせは侵襲的であり、パフォーマンス特性が低いため、医師と患者は治療オプションの選択のベースとなる信頼できる手段がない。その結果、多くの男性が不必要に臨床的介入、非常に多くの場合には前立腺切除術を選択する。また、グリソンスコアの「ゴールドスタンダード」自体が前立腺腫瘍の進行の信頼できる指標ではないため、新たな予後診断ツールの開発を妨げる。
【0007】
この問題は少なくとも30年前から認識されている。これは、今日でも大きな問題である。その間に、倍数性、核形態および核マトリックス構造、マイクロアレイベースのトランスクリプトーム分析、DNAメチル化状況、およびTMPRSS2:ETSファミリー融合などの遺伝子融合の検出を含む、侵攻性疾患の予後マーカーを開発する多くの試みが見られた。これらの方法論のいずれも、前立腺腫瘍の進行の指標としてグリソンスコアよりも有意に優れていることが証明されていない。さらに、それらの方法論は、がんの病期または悪性度を適切に特定しない。
【0008】
mRNA発現プロファイルを使用してがんの状態を区別するように設計された試験が開発されている。しかしながら、各々重大な欠点がある。まず、ほんのわずかな例外を除いて、これらのアッセイは根治的前立腺切除術試料に由来する腫瘍材料を使用していたため、せいぜい早期腫瘍再発を予測する程度である。継続的な臨床決定に関連する術後の臨床決定を行うのに潜在的に有用である一方、それらは手術前に前立腺がんの悪性度を区別するには役立たない。第二に、これらのゲノムアプローチの多くは、アンドロゲン受容体(AR)調節遺伝子発現、上皮-間質相互作用、および細胞周期など、前立腺がんの進行に関与している特定の経路に焦点を当てている。これらのアッセイは、すべての前立腺腫瘍が共通の経路に沿って進行することを前提としている。他の市販のバイオマーカーアッセイは、遺伝子の小さなサブセットのリアルタイムPCRによって生成されたmRNA発現プロファイルを使用する。
【0009】
今日まで、前立腺がんにおけるsncRNAのゲノムワイドなトランスクリプトーム研究はほとんどなかった。1つの研究では、(i)新たに凍結した根治的前立腺切除術サンプルおよび(ii)SangerのmiRBase v.10.1(Wellcome Sanger Institute)にカタログ化されている723個のヒトmiRNAを含有するAffymetrixのmiRNA(登録商標)v.2マイクロアレイ上でのIllumina/Solexaディープシーケンシングおよびマイクロアレイ分析を使用して、同じ患者からの隣接する正常組織におけるmiRNAおよびsnoRNAシグネチャーを比較した。この研究は、前立腺がんおよび腫瘍周囲の良性組織において発現するsncRNAの補体を比較するための貴重なデータセットを提供するが、臨床的介入前の腫瘍の進行の予後診断を行うおよび/またはそれを予測するsncRNAのパネルの合理的な設計には役立たない。また、この技術は、手術後にのみ利用可能であり、診断に使用することができない顕微解剖された瞬間冷凍材料を必要とするため、一般的なスクリーニング技術としても障害がある。
【0010】
したがって、前立腺がんを予測し、スクリーニングし、分類する改善された方法が必要である。本開示は、高感度かつ特異的である前立腺がんの存在または不在をスクリーニングするための非侵襲的(不必要なコア針生検を排除または低減することによる)方法に関する。
【0011】
この方法はまた、疾患の診断、分類、予後診断、ならびにその進行および治療のモニタリングに有用な疾患管理のためのプラットフォームを提供する。開示された方法は、Sentinel(商標)PCa、Sentinel(商標)CS、およびSentinel(商標)HG試験と組み合わせて、尿中エクソソームから単離された少なくとも200個の小分子非コードRNA(sncRNA)の大規模なセットの調査に基づいている。Sentinel(商標)PCa、Sentinel(商標)CS、およびSentinel(商標)HG試験は、Sentinel(商標)PCa試験では前立腺がん(NEPC)の徴候がないか、もしくは前立腺がん(GG1~GG5)を有する;Sentinel(商標)CS試験では、低悪性度のがん(GG1)と、中悪性度および高悪性度のがん(GG2~GG5)を有する;ならびにSentinel(商標)HG試験では、低悪性度および良好な中悪性度のがん(GG1+GG2)と、良好でない中悪性度および高悪性度のがん(GG3~GG5)を有する大規模な標的集団からカタログ化されたsnRNA配列のアルゴリズム分析および比較に基づいている。単一の尿サンプルに対して実施することができる3つのSentinel(商標)試験を使用して、患者が前立腺がんを有するか否か、および前立腺がんの患者がアクティブサーベイランスプロトコルでモニタリングできる低悪性度もしくは良好な中悪性度の疾患を有するのか、または即時治療が必要な高悪性度の疾患を有するのかを順次判断する。
【発明の概要】
【0012】
一態様において、本開示は、前立腺がんの対象をスクリーニングするための方法であって、(i)対象から生物学的サンプルを得ることと、(ii)生物学的サンプルからの小分子非コードRNA(sncRNA)のシグネチャー集合の総発現プロファイルを検出することであって、sncRNAの集合が、配列番号1~280を含む、検出することと、(iii)前立腺がん(NEPC)の徴候を有しないか、または前立腺がんを有する標的集団からのトレーニングデータセットにおける配列番号1~280の総発現プロファイルを比較することにより、対象からの配列番号1~280の総発現プロファイルを相関させることと、(iv)(iii)の結果に基づいて、NEPCとして、または前立腺がんを有するとして対象を分類することと、を含む、方法を提供する。この手順は、Sentinel(商標)PCa試験において具体化される。
【0013】
さらに別の態様において、本開示は、がんを有すると診断された患者が低悪性度(GG1)を有するのか、または中もしくは高悪性度の疾患(GG2~GG5)を有するのかを判断する方法であって、(i)対象から生物学的サンプルを得ることと、(ii)生物学的サンプルからの小分子非コードRNA(sncRNA)のシグネチャー集合の総発現プロファイルを検出することであって、sncRNAの集合が、配列番号281~560を含む、検出することと、(iii)低等度リスク、低悪性度(GG1)または中および高悪性度、中および高等度リスクの前立腺がん(GG2~GG5)を有することが分かっている標的集団からのトレーニングデータセットにおける配列番号281~560の総発現プロファイルを比較することにより、対象からの配列番号281~560の総発現プロファイルを相関させることと、(iv)(iii)から得られた結果に基づいて、GG1またはGG2~GG5として対象を分類することと、を含む、方法を提供する。この手順は、Sentinel(商標)CS試験において具体化される。
【0014】
さらに別の態様において、本開示は、がんを有すると診断された患者が高悪性度(GG3~GG5)を有するのか、または(低もしくは中悪性度の疾患(GG1+GG2)を有するのかを判断する方法であって、(i)対象から生物学的サンプルを得ることと、(ii)生物学的サンプルからの小分子非コードRNA(sncRNA)のシグネチャー集合の総発現プロファイルを検出することであって、sncRNAの集合が、配列番号561~840を含む、検出することと、(iii)高悪性度、高等度リスクの前立腺がん(GG3~GG5)または低もしくは中等度リスクのがん(GG1+GG2)を有することが分かっている標的集団からのトレーニングデータセットにおける配列番号561~840の総発現プロファイルを比較することにより、対象からの配列番号561~840の総発現プロファイルを相関させることと、(iv)(iii)から得られた結果に基づいて、GG3~GG5またはGG1+GG2として対象を分類することと、を含む、方法を提供する。この手順は、Sentinel(商標)HG試験において具体化される。
【0015】
さらに別の態様において、本開示は、前立腺がんを治療するための方法であって、(i)対象から生物学的サンプルを得ることと、(ii)生物学的サンプルからの小分子非コードRNA(sncRNA)のシグネチャー集合の総発現プロファイルを検出することであって、sncRNAの集合が、配列番号1~840を含む、検出することと、(iii)NEPC、GG1、GG2、GG3、GG4またはGG5の前立腺がんを有する標的集団からのトレーニングデータセットにおける配列番号281~840の総発現プロファイルを比較することにより、対象からの配列番号1~840の総発現プロファイルを相関させることと、(iv)(iii)から得られた結果に基づいて、低-中悪性度の前立腺がん(GG1~GG2)または高悪性度の前立腺がん(GG3~GG5)を有するとして対象を分類することと、(v)1つ以上の化学療法剤、ホルモン、免疫療法、放射線、凍結療法、手術またはそれらの組み合わせを施すことにより、高等度リスクの前立腺がんを有するとして分類された対象を治療することと、を含む、方法を提供する。
【0016】
さらなる態様において、本開示は、前立腺がんを有する対象の生存、疾患再発、または治療に対する応答の可能性を判断するための方法であって、(i)対象から生物学的サンプルを得ることと、(ii)生物学的サンプルからの小分子非コードRNA(sncRNA)のシグネチャー集合の総発現プロファイルを検出することであって、sncRNAの集合が、配列番号1~840を含む、検出することと、(iii)処理後の配列番号1~840の凝集発現プロファイルを処理前のものと比較することと、(iv)前立腺がん(NEPC)の徴候がないか、または前立腺がんを有する標的集団からのトレーニングデータセットにおける配列番号1~840の総発現プロファイルと、悪性度グループ1、2、3または4~5の標的集団からのトレーニングデータセットにおける配列番号1~840の凝集発現プロファイルとを比較することによって、対象からの配列番号1~840の総発現プロファイルを相関させることと、(v)前立腺がんの治療を受けた被験者の生存、疾患再発、または治療に対する応答の可能性を判断することと、を含む、方法を提供する。
【0017】
一態様において、本開示は、対象の将来の前立腺がんを予測するための方法であって、(i)対象から生物学的サンプルを得ることと、(ii)生物学的サンプルからの小分子非コードRNA(sncRNA)のシグネチャー集合の総発現プロファイルを検出することであって、sncRNAの集合が、配列番号1~280を含む、検出することと、(iii)悪性度グループ1、2,3または4~5を有する標的集団からの標的集団からのトレーニングデータセットにおける配列番号1~280の総発現プロファイルを比較することにより、対象からの配列番号1~280の総発現プロファイルを相関させることと、(iv)(iii)から得られた結果に基づいて、対象が悪性度グループ2~5の前立腺がんを有するリスクを有する可能性を判断することと、(iv)1つ以上の化学療法剤、ホルモン、免疫療法、放射線、凍結療法、手術またはそれらの組み合わせを施すことにより、侵攻性前立腺がんを発症する高いリスクが予測される対象を治療することと、を含む、方法を提供する。
【0018】
別の態様において、本開示は、患者ががんを有しないのか、がんを有するのかを判断し、がんを有する対象を、(i)無痛性(低悪性度、GG1)、(ii)中もしくは高悪性度(GG2~GG5)、(iii)低/中等度リスク(GG1~GG2)、または(iv)侵攻性(高悪性度、GG3~GG5)の前立腺がんとして分類するためのシステムであって、(a)情報価値のある配列についてsncRNA配列を調べ、(b)Sentinelスコアを判断し、比較して、対象が前立腺がんを有するのか、前立腺がんを有しないのかを判断し、前立腺がんの病期グループを分類するように構成された少なくとも3つのプロセッサを含む、システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
特許または出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。カラー図面を有する本特許または特許出願公開の写しは、要求に応じて、必要手数料を支払うことにより、官庁から提供される。
【
図1】エクソソームは、初期のエンドソームにおいて形成され、細胞から放出される小さな細胞外の膜結合小胞である。エクソソームには、細胞の生物学を反映するタンパク質、mRNA、および一連のsncRNA[miRNAとC/DボックスおよびH/ACAボックスの核小体低分子RNA(snoRNA)]が含まれている。
【
図2】市販のキットを使用して、無細胞尿を患者から採取する。尿中のエクソソームを捕捉し、RNAをエクソソームから抽出する。RNA収量はQubitアッセイ(ThermoFisher)を使用して測定し、サンプル品質はAgilent2100バイオアナライザーを使用して評価する。得られたsncRNAレベルは、miR Scientific Sentinel(商標)PCa、Sentinel(商標)CS、またはSentinel(商標)HG試験用に特別に設計されたカスタムメイドのOpenArray(商標)(Thermo Fisher)プレートを使用して調べる。調べる(Interrogate)は、生物学的サンプル中の多数の配列を同時に分析するための一般的な技術用語である。次に、snoRNAおよびmicroRNA(まとめてsncRNAと呼ばれる)の増幅曲線の結果の読み取り値を分析し、使用して、患者を診断する。がんが存在する場合は、疾患を分類し、それに応じて治療をモニタリングする。
【
図3】複数のエンティティを使用して偏りのない統計的アプローチを確立し、重要な相互作用を特定して個々のsncRNAおよびsncRNAの組み合わせを特定し、悪性度のグループ化または前立腺がんの表現型を相関させることの複雑さを示している。([00048]~[00051]を参照)。
【
図4】前立腺がんを有する疑いのある患者のスクリーニングおよび診断の概略図を示している。 患者はまず、3層のSentinel(商標)分析用の尿サンプルを提供する。総尿中エクソソームRNAを抽出し、Sentinel(商標)PCa試験に固有のsncRNA(配列番号1~280)、Sentinel(商標)CS試験に固有のsncRNA(配列番号281~560)、およびSentinel(商標)HG試験に固有のsncRNA(配列番号561~840)の発現について調べる。発現シグネチャーを使用して、患者を、前立腺がんを有する患者と有しない患者に分類する(Sentinel(商標)PCa試験、第1層)。スコアが陰性の患者は、モニタリングのために12か月ごとに再訪する。 第2層では、Sentinel(商標)PCaスコアが陽性の患者(前立腺がんの患者)を、Sentinel(商標)CS試験を使用して、臨床的に有意でない(GG1)腫瘍または臨床的に有意な腫瘍(GG2~GG5)に分類する二次分析にかける。臨床的に有意でない(GG1)腫瘍の患者は、腫瘍がGG2以上に進行していないことを確認するために、アクティブサーベイランス(AS)が推奨され、四半期ごとのSentinel(商標)CS試験で継続的にモニタリングされる。臨床的に有意な腫瘍(GG2~GG5)を有する患者は、即時治療のために紹介される。 一部の患者については、第3の分類層であるSentinel(商標)HG試験により、GG1~GG2腫瘍またはGG3~GG5腫瘍を有するとして患者をさらに分類する。この試験は、即時介入が必要なGG3~GG5がんの患者を特定するように設計されている。GG1またはGG2の患者を四半期ごとにSentinel(商標)HG試験でモニタリングして、GG3に進行し、故に治療的介入が必要な患者を特定することができる。Sentinel(商標)CSおよびSentinel(商標)HGの可用性は、患者と医療提供者の両方に、治療の意思決定のための個別化情報を提供する。
【
図5】Discovery PCa実験の出力を示している。PCa Discovery研究では、十分に特徴づけられた組織病理を有する非常に慎重に規定された患者コホートを使用して[NEPC=89;がん(GG1~GG5)=146]、miR4.0マイクロアレイ上で調べた6,599個のsncRNAの中で最も情報価値のある配列を特定する。
図5(左パネル):トレーニングデータセット内の非がん(NEPC)およびがん(GG1~GG5)の状態の散布図。正のDiscovery PCaスコアは前立腺がんを有することを示し、負のDiscoveryPCaスコアはがんがないことを示す。コア生検の組織病理学によって判断されたがんの状態は、青(非がん)と赤(がん)の円で示されている。
図5(右パネル):Sentinel(商標)PCa試験の情報価値のあるsncRNAの識別。独自の選択アルゴリズムを使用して、非がんとがんの状態とを区別するための最も情報価値のあるsncRNAエンティティの識別(上位35個が表示され、各円は単一のエンティティを表す)。結果として得られたSentinel(商標)PCa試験は、棒グラフに示されているように、60個のsnoRNAエンティティと85個のmiRNAエンティティで構成される145個の最も情報価値のあるsncRNA配列を含む280個のsncRNAを調べる。緑:miRNAエンティティ、黄色:snoRNAエンティティ。
【
図6】(左パネル)Discovery CS実験の出力を示している。CS Discovery研究では、十分に特徴づけられた組織病理を有する非常に慎重に規定された患者コホートを使用して[GG1=90;GG2~GG5=56]、miR4.0マイクロアレイ上で調べた6,599個のsncRNAの中で最も情報価値のある配列を特定する。正のDiscovery CSスコアは、GG2~GG5のがん(黄色の円)を有することを示し、負のDiscovery CSスコアは、GG1のがんを有することを示す。(緑色の円)
図6(右パネル):Sentinel(商標)CS試験の情報価値のあるsncRNAの識別。独自の選択アルゴリズムを使用して、GG1のがんとGG2~GG5のがんとを区別するための最も情報価値のあるsncRNAエンティティの識別(上位35個が表示され、各円は単一のエンティティを表す)。結果として得られたSentinel(商標)CS試験は、棒グラフに示されているように、66個のsnoRNAエンティティと130個のmiRNAエンティティで構成される145個の最も情報価値のあるsncRNA配列を含む280個のsncRNAを調べる。緑:miRNAエンティティ、黄色:snoRNAエンティティ。
【
図7】(左パネル)Discovery HG実験の出力を示している。HG Discovery研究では、十分に特徴づけられた組織病理を有する非常に慎重に規定された患者コホートを使用して[GG1+GG2=181;GG3~GG5=55]、miR4.0マイクロアレイ上で調べた6,599個のsncRNAの中で最も情報価値のある配列を特定する。正のDiscovery HGスコアは、GG3~GG5のがん(紫色の円)を有することを示し、負のDiscovery HGスコアは、GG1+GG2のがんを有することを示す(茶色の円)。
図7(右パネル):Sentinel(商標)HG試験の情報価値のあるsncRNAの識別。独自の選択アルゴリズムを使用して、GG1のがんとGG2~GG5のがんとを区別するための最も情報価値のあるsncRNAエンティティの識別(上位35個が表示され、各円は単一のエンティティを表す)。結果として得られたSentinel(商標)CS試験は、棒グラフに示されているように、66個のsnoRNAエンティティと130個のmiRNAエンティティで構成される196個の最も情報価値のあるsncRNA配列を含む280個のsncRNAを調べる。緑:miRNAエンティティ、黄色:snoRNAエンティティ。
【
図8A-8C】Sentinel(商標)PCa試験を使用した尿中エクソソームsncRNAのハイスループットOpenArray(商標)調査の臨床的検証を示す。1436人の男性(Discovery PCaフェーズで特定されたsncRNAの調査を相互検証するために使用されたトレーニンググループにおける836人の対象と、検証研究で使用された600人の独立した対象)の症例対照研究からのデータが示されている。
【
図8A】600人の患者(非がん300人;がん300人)を検査する検証グループセットにおけるがん状態の散布図。非がん(黒丸)およびがん(緑丸)患者の分類であって、Sentinel(商標)PCaスコアが正の場合は前立腺がんを有することを示し、Sentinel(商標)PCaスコアが負の場合はがんがないことを示す。
【
図8B】600人の患者を検査する検証グループセットにおけるがん状態のソートされたプロット。非がん(黒丸)およびがん(緑丸)患者の分類であって、Sentinel(商標)PCaスコアが正の場合は前立腺がんを有することを示し、Sentinel(商標)PCaスコアが負の場合はがんがないことを示す。
【
図8C】Sentinel(商標)PCa試験の受信者操作曲線(ROC)。
図8Aおよび8Bに示す試験グループ中の600人の患者の分析に関するROC曲線は、様々なユーザー定義の偽陰性率を連続して計算する(1-特異度)ことによって計算した。表6に報告されているパフォーマンス特性([000112]を参照)は、ユーザー定義の偽陰性率0.05(赤で表示)からであった。
【
図9A-9C】Sentinel(商標)CS試験を使用した尿中エクソソームsncRNAのハイスループットOpenArray(商標)調査の臨床的検証を示す。1436人の男性(Discovery CSフェーズで特定されたsncRNAの調査を相互検証するために使用されたトレーニンググループにおける836人の対象と、検証研究で使用された600人の独立した対象)の症例対照研究からのデータが示されている。
【
図9A】300人の前立腺がん患者(GG1-低悪性度146人およびGG2~GG5中および高悪性度154人)を検査する検証グループセットにおけるがん状態の散布図。低悪性度(青緑色の円)ならびに中および高悪性度のがん(オレンジ色の円)患者の分類であり、正のSentinel(商標)CSスコアの場合は高悪性度の前立腺がんを有することを示し、負のSentinel(商標)CSスコアの場合は低悪性度のがんを示す。
【
図9B】300人の前立腺がん患者を検査する、
図9Aに示すような検証グループセットにおけるがん状態のソートされたプロット。低悪性度(青緑色の円)および高悪性度のがん(オレンジ色の円)患者の分類であり、正のSentinel(商標)CSスコアの場合は高悪性度の前立腺がんを有することを示し、負のSentinel(商標)CSスコアの場合は低悪性度のがんを示す。
【
図9C】Sentinel(商標)CS試験の受信者操作曲線(ROC)。
図9Aおよび9Bに示すような300人の前立腺がん患者の分析に関するROC曲線は、様々なユーザー定義の偽陰性率を連続して計算する(1-特異度)ことによって計算した。表6に報告されているパフォーマンス特性([000112]を参照)は、ユーザー定義の偽陰性率0.05(赤で表示)からであった。
【
図10A-10C】Sentinel(商標)HG試験を使用した尿中エクソソームsncRNAのハイスループットOpenArray(商標)調査の臨床的検証を示す。1436人の男性(Discovery HGフェーズで特定された同じsncRNAの調査を相互検証するために使用されたトレーニンググループにおける836人の対象と、検証研究で使用された600人の独立した対象)の症例対照研究からのデータが示されている。
【
図10A】300人の前立腺がん患者(GG1+GG2低悪性度200人およびGG3~GG5中および高悪性度100人)を検査する検証グループセットにおけるがん状態の散布図。低悪性度(青緑色の円)ならびに中および高悪性度のがん(オレンジ色の円)患者の分類であり、正のSentinel(商標)CSスコアの場合は高悪性度の前立腺がんを有することを示し、負のSentinel(商標)CSスコアの場合は低悪性度のがんを示す。
【
図10B】300人の前立腺がん患者を検査する、
図10Aに示すような検証グループセットにおけるがん状態のソートされたプロット。低悪性度(青色の円)および高悪性度のがん(赤色の円)患者の分類であり、正のSentinel(商標)HGスコアの場合は高悪性度の前立腺がんを有することを示し、負のSentinel(商標)HGスコアの場合は低悪性度のがんを示す。
【
図10C】Sentinel(商標)HG試験の受信者操作曲線(ROC)。
図10Aおよび10Bに示すような300人の前立腺がん患者の分析に関するROC曲線は、様々なユーザー定義の偽陰性率を連続して計算する(1-特異度)ことによって計算した。表6に報告されているパフォーマンス特性([000112]を参照)は、ユーザー定義の偽陰性率0.05(赤で表示)からであった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本主題は、本開示の一部を形成する以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。本発明は、本明細書に記載および/または示される特定の製品、方法、条件またはパラメータに限定されず、使用される用語は、例としてのみ特定の態様および実施形態を説明することを目的としており、特許請求された発明を限定することを意図しない。
【0021】
本開示は、対象における前立腺がんをスクリーニング、診断および治療するための方法に関する。本方法は、(1)前立腺がんの状態が不明な男性患者を分類し、(2)患者からの生物学的サンプル中の前立腺がんの悪性度を正確に区別するための堅牢な試験を提供する。本方法は、患者の生物学的サンプルからのsncRNAの集合の総発現プロファイルの検出および相関に基づいて、患者が前立腺がんを有するか否かを、Sentinel(商標)PCa試験を使用して判断する。前立腺がんを有すると特定された患者の場合、Sentinel(商標)臨床的有意性(CS)試験を使用して、エクソソームsncRNAをさらに調べ、臨床的に有意または侵攻性(GG2~GG5)の前立腺がんを有する患者を、臨床的に有意でないか、または無痛性(GG1)の前立腺がんを有する患者から区別し、Sentinel(商標)高悪性度(HG)試験を使用して、高悪性度、高等度リスク(GG3~GG5)の前立腺がんを有する患者を特定する。
【0022】
開示された方法は、個々の配列の重要な相互作用および目的の表現型に最もよく相関する配列の組み合わせを特定するために開発された偏りのない統計的アプローチに基づいている。このアプローチは、(i)mRNAに対するmiRNAの修飾効果、および(ii)リボソームRNA、tRNAおよびその他の核RNAの転写後修飾による、mRNAの翻訳可能性に対するsnoRNAの影響に基づいており、タンパク質の機能および表現型を変化させる新たなタンパク質産物をもたらす。
【0023】
開示された計算/統計的アプローチは、尿中エクソソームsncRNAを分析して、sncRNA間の重要な関連を非常に詳細に分析し、前立腺がんの表現型を正確に予測するSentinel配列を特定する。これは、添付の
図3に示されている。例えば、単一エンティティ分析では、個々のsncRNAの発現レベルは、前立腺がんの悪性度グループ(表現型)と相関している。各sncRNAエンティティには、2つの情報価値のある結果がある。対照の病状(例えば、がんがない)と比較したエンティティの発現レベルの増加または発現レベルの低下である。2つの表現型間で発現に変化がないということは、(1)どちらの表現型とも関連がなく、(2)エンティティがどちらの表現型のマーカーとしても有用でないことを示している。したがって、単一のエンティティを分析に使用した場合、情報価値のある結果は2つだけであり、可能なすべてのsncRNA相互作用はまだ探求されていない。
【0024】
2つのエンティティの分析では、2つのエンティティ間の可能なすべての相互作用の表現の変化の関連を調べると、8つの異なる情報価値のある結果と1つの情報価値のない結果が得られる(どちらのエンティティも表現型の点で異なって発現していない場合)(
図3の「2つのエンティティの調査」を参照)。したがって、Sentinel(商標)試験との関連では、2つのsncRNAエンティティの可能なすべての組み合わせと特定の悪性度グループとの関連を比較すると、sncRNAのペアと悪性度グループとの間の有意義な関連につながる8つの異なる方式がある。これにより、sncRNAの発現レベルと悪性度のグループ化との間の隠れた関連を明らかにする、より詳細な分析が提供される。
【0025】
3つまたは4つ以上のsncRNAエンティティの同じアプローチを使用すると、sncRNAの発現と表現型(悪性度のグループ化)との関連の非常に詳細な分析を提供するため、疾患状態が不明な患者を評価し、アルゴリズムによって選択された尿中エクソソームsncRNAの発現レベルを使用して個々の疾患状態を予測することを可能にする。
【0026】
Sentinel(商標)PCaおよびSentinel(商標)HG試験、Sentinel(商標)CSプラットフォームの開発
Sentinel(商標)PCa試験は、シグネチャーsncRNA(つまり、miRNAおよびsnoRNA配列)レベルの集合の分析に基づく分類プラットフォームまたはアルゴリズムである。各配列の予測値は、前立腺生物学における配列の事前に決定された生物学的役割とは別個のデータ駆動型選択アルゴリズムを介して規定される。選択アルゴリズムは、以下からなるデータセット上でトレーニングされる:(1)前立腺がんとは関係のない状態について泌尿器科で提示された対照対象;(2)生検結果に基づいて前立腺がんを有しないことが分かっている前立腺がんの疑いのある対象;および(3)前立腺がんと診断され、そのコア針生検組織病理学が悪性度グループ1~5(GG1~GG5)として報告された患者。
【0027】
Sentinel(商標)試験用の堅牢なデータセットを確立するために、これらのトレーニングセットの患者の尿中エクソソームから得られたエクソソームsncRNAを、AffymetrixのmiR4.0マイクロアレイを使用して調べ、発現シグネチャーを定義した。十分に特徴づけられた組織病理を有する選択された対象を使用するこれらの研究は、Discovery PCa試験、Discovery CS試験、およびDiscovery HG試験と呼ばれる。「非がん」グループに含まれる患者は、泌尿器腫瘍学とは関係のない問題について泌尿器科クリニックで診察を受けた同年齢の男性、および前立腺がん(NEPC)の徴候を示さなかった1つ以上の12針診断コア針生検を受けた男性から慎重に選択した。「がん」コホートの患者については、各腫瘍のコア針生検の病理学的悪性度グループ分類を徹底的に評価した。これらの慎重に選択された患者のグループ(非がん、およびがんの様々な段階にあるがんグループ)は、Discovery PCa、CSおよびHG試験の開発におけるトレーニングセットを形成する。Discovery実験に使用された235人の患者の人口統計を表4に示す([000103]~[000104]を参照)。
【0028】
選択アルゴリズム
がんと非がんを区別する最も情報価値のあるsncRNA配列を、前立腺がんを有しない患者(NEPC)と前立腺がんを有する患者(GG1~GG5)との間でどのsncRNA配列が異なって表されるかを判断する選択アルゴリズムを使用して識別した。これは、Discovery PCa試験について以下に例示される。選択アルゴリズムは、尿中エクソソームsncRNAのレベルが、慎重に定義された病理を有する大規模な参加者集団[NEPCを有する対象89人と、がん(GG1~GG5)を有する患者146人]の疾患の病理学的病期(がん/非がん)とどの程度よく相関しているかを試験する。選択アルゴリズムは、miR4.0アレイ上で調べた6,599個のsncRNAの各々が、腫瘍の既知の病理とどの程度よく相関しているかを個別に評価する。多くのsncRNAは協調的に調節されるため、アルゴリズムは2つのsncRNA、3つのsncRNA、または4つのsncRNAのすべての組み合わせを評価し、その後、疾患の病理における個々のsncRNAの重要度を評価するためのリーブワンアウト戦略を使用して個々のsncRNAを検査する。予想されるように、選択アルゴリズムから6,599個のsncRNA配列の大半を除外しても、どちらの病理とも異なって関連付けられないため、前立腺がんを有する場合と有しない場合の区別に影響はない。sncRNAs評価の影響は、
図5(右パネル)に示す重要度プロットを使用して視覚化することができる。重要度プロットは次のことを示している:(1)いくつかのエクソソームsncRNAは異なる病理において異なるレベルで存在する、(2)sncRNAはsnoRNAおよびmiRNAであり、1つのタイプのsncRNAが開示された分析には不十分であることを示している、(3)アルゴリズムを使用した診断は、分類評価において280個を超えるsncRNA配列では変化しない。
【0029】
Discovery CS試験(低等度リスクの前立腺がん(GG1)と、中および高等度リスクの前立腺がん(GG2~GG5)とを区別する)の情報価値のある配列は、適切な悪性度グループおよび同じ選択戦略を使用して特定した(
図6)。この分析のための患者集団には、NEPCを有する対象89人およびがん(GG1~GG5)患者146人が含まれていた。]
【0030】
(低および中等度リスク(GG1+GG2)の前立腺がんと、高悪性度、高等度リスク(GG3~GG5)の前立腺がんとを区別するDiscovery HG試験の情報価値のある配列も同様に判断した(
図7)。この分析のための患者集団には、GG1+GG2がん患者181人およびGG3~GG5がん患者55人が含まれていた。(
図7)。
【0031】
一部のsncRNAは試験間で共通であるが、疾患状態の分類におけるそれらの相対的な重要度は試験ごと(つまり、Discovery PCa試験、CS試験およびHG試験)に異なることに留意することが重要である。
【0032】
各試験について、最も情報価値のある280個のsncRNA配列番号1~840)を使用して、カスタマイズされたOpenArray(商標)プラットフォームを設計した。各Sentinel(商標)試験用のOpenArray(商標)プラットフォームを、1436人の患者を対象とした大規模な症例対照研究でさらに検証した。Sentinel(商標)PCa試験、Sentinel(商標)CS試験、およびSentinel(商標)HG試験のトレーニングと検証に使用された対象の人口統計を表5に示す([000109]~[000110]を参照)。検証データセットを特定するために、600人の対象の層化無作為サンプルを選択した。残りの836人の対象は、トレーニングデータセットとした。600人の患者の検証サンプルは、生検陰性の対象と生検陽性の対象が同数(各300人)であり、生検陽性の症例のうち、200人がGG1+GG2(GG1が146人とGG2が54人)ならびに100人がGG3~GG5であるように層化した。
【0033】
前立腺がんを特定するためのSentinel(商標)PCa試験
Sentinel(商標)PCa試験、Sentinel(商標)CS試験、およびSentinel(商標)HG試験は、疾患状態が不明な各患者のsncRNA発現シグネチャーを入力とし、Sentinel(商標)スコアを生成する分類アルゴリズムに基づいている。疾患状態が不明な(ただし、発現シグネチャーは分かっている)将来の患者を分類するための感度を、ユーザー定義のレベル(通常95%以上)で制御する(トレーニングデータセットの相互検証から得た)所定のカットオフ値と、このスコアを比較して、参加者を分類する。
【0034】
Sentinel PCaスコアを、将来の患者に対する感度を例えば95%の望ましいレベルで制御する計算されたカットオフと比較して、PCa試験で前立腺がんを有するのか、有しないのかを区別する(
図7)。Sentinel(商標)PCa試験は、280個のsncRNA(Discovery PCa試験で特定)を利用し、そのうち145個の固有のsncRNA(60個のmiRNAと85個のsnoRNA)が非常に情報価値がある。これは、前立腺がんを有するのか、有しないのかに患者を分けるために使用される分類境界を定義する。カットオフは、患者をがん/非がんに分けるSentinel(商標)PCaスコアが、患者を20回中19回(つまり、95%の感度で)がんを有するとして正しく分類するように、アルゴリズムによって判断される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【0035】
低悪性度(無痛性)の前立腺がんを特定するためのSentinel(商標)CS試験
Sentinel(商標)臨床的有意性(CS)試験は、同様の分類アルゴリズムを使用して、計算されたカットオフと比較されるSentinel(商標)CSスコアを生成する。カットオフは、将来の患者に対する感度を望ましいレベル(95%)で制御し、臨床的に有意ながん(GG2~GG5)(Sentinel(商標)CSスコアがカットオフ以上の場合)と臨床的に有意でないがん(GG1)(Sentinel(商標)CSスコアがカットオフよりも小さい場合)とを区別する。アルゴリズムは、Sentinel(商標)PCa試験のトレーニングに使用されるデータセットにおいて前立腺がんを有することが分かっている患者のサブセットのみを使用してトレーニングされる。同様に、分類アルゴリズムを使用して、Sentinel(商標)CS試験の発現シグネチャーを定義するための基礎として280個のsncRNAを使用した。Sentinel(商標)CS試験は、(Discovery CS試験で特定された280個のsncRNAを利用し、そのうち135個の固有のsncRNA(130個のmiRNAと66個のsnoRNA)が非常に情報価値がある。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【0036】
高悪性度の前立腺がん患者を特定するためのSentinel(商標)HG試験
前立腺がんを有するとして分類された個人の場合、同様のアプローチを使用して、GG1+GG2(低および良好な中等度リスクのがん)と、好ましくない中および高等度リスクの前立腺がん(GG3~GG5)とを区別するSentinel(商標)高悪性度(HG)をトレーニングおよび検証した。特定されたこれらの情報価値のある配列は、Sentinel(商標)HG試験の基礎を形成する。追加の分析により、sncRNAの同じコホートを使用して、がん患者をGG3~5(高等度リスクがん)からGG1+GG2(低および中等度リスクのがん)に分けることが可能であることが実証された。この生物統計分析は、Discovery HG試験によって特定された280個のsncRNAを利用するSentinel(商標)HG試験の基礎を形成し、そのうち280個の固有のsncRNA(191個のmiRNAと89個のsnoRNA)が非常に情報価値がある。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【表3-11】
【表3-12】
【表3-13】
【0037】
Sentinel(商標)PCa試験、CS試験、およびHG試験でのsncRNAの選択は、PSA、グリソンスコア、または生物学的経路分析とは無関係であるため、完全に偏りがない。その理由として、コア針生検が陽性もしくは陰性(PCa試験)である参加者のコホート、またはCS試験のための進行性疾患(GG3~5)もしくは非進行性疾患(PCaの徴候なし、もしくはGG1-1)のいずれかを有するとして分類された患者(GG3~5)で構成される独立したトレーニングセットから得たsncRNAレベルを使用してアルゴリズムが検証されたためである。(表4、[000103]~[000104]および表5、[000109]~[000110]を参照)、この統計的手法は、タイプ1エラー(偽陰性)とタイプ2エラー(偽陽性)の両方を最小限に抑え、試験を確実にする。非がんと低悪性度のがん、低悪性度のがんと中悪性度のがん、および中悪性度の疾患と高悪性度の疾患とを厳密に区別する。分析で使用されたアルゴリズムに基づいて、記載された発明は、偽陰性がなく、非常に低い(<5%)偽陽性率を有する。
【0038】
上記の3つの試験に基づいて、OpenArray(商標)プラットフォームは、3つの試験の感度と特異度を損なうことなく、尿中エクソソームから抽出されたsncRNAの単一サンプルに存在する情報価値のあるRNAエンティティを順次調べる。
【0039】
一態様において、本開示は、前立腺がんを診断するための方法であって、臨床的に有意な腫瘍と無痛性の腫瘍とを区別し、調べたサブセットsncRNAに基づくデータを、独立したトレーニングデータセットに基づいて検証されたアルゴリズムに入れることを可能にするプラットフォームを含む、方法を提供する。
【0040】
一態様では、男性患者の前立腺がんを診断するための方法は、(1)患者から生物学的サンプルを得ることと、(2)配列番号1~280からなる群から選択される複数の核酸またはハイブリダイズプローブに結合するシグネチャー小分子非コードRNA(sncRNA)の集合の総発現プロファイルを検出することと、(3)PCa試験を使用してシグネチャーsncRNAの集合の総発現プロファイルを相関させて、患者が前立腺がんのリスクを有するか否か、つまり、前立腺がんの徴候がないのか、または前立腺がんを有するのかを判断する。
【0041】
別の態様において、本開示は、それを使用して前立腺がんをスクリーニングするための方法を提供する。さらに別の態様では、本開示は、対象における前立腺の確率を予測するための方法を提供する。
【0042】
前立腺がんのリスクがあると特定された(つまり、前立腺がんを有すると判断された)患者の場合、Sentinel(商標)臨床的有意性(CS)試験を使用してサンプルを再分析し、臨床的に有意または侵攻性の前立腺がん(GG2~GG5)の患者を、臨床的に有意でないまたは無痛性(GG1)前立腺がんの患者から区別する。一実施形態において、複数のシグネチャーsncRNAもしくはシグネチャーsncRNAの集合の総発現プロファイルまたは組み合わせた発現プロファイルが、前立腺がんの生物学的サンプルにおける総発現プロファイル以上である場合、患者は侵攻性の前立腺がんを有すると特定される。あるいは、シグネチャーsncRNAの集合の総発現プロファイルが、低悪性度の前立腺がんの生物学的サンプルにおける総発現プロファイル以下である場合、患者は、低悪性度の前立腺がんを有すると特定される。
【0043】
一実施形態において、生物学的サンプルには、前立腺組織、血液、血漿、血清、尿、尿上清、尿細胞ペレット、脳脊髄液、精液、前立腺分泌物、および前立腺細胞が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、生物学的サンプルは尿サンプルである。さらに別の実施形態において、サンプルは、尿サンプルから単離されたエクソソームである。好ましい実施形態において、サンプルは、尿サンプルに由来するエクソソームから単離されたsncRNAである。
【0044】
エクソソームは、真核細胞のエンドソーム区画に由来する小さな細胞外小胞(EV)である。それらは、血液、尿、精液、および脳脊髄液などの体液中に見られる。エクソソームの生合成はよく理解されていない。しかしながら、それらは、初期エンドソーム経路が分岐して、エクソソーム経路の最初の段階である後期エンドソームおよび多小胞エンドソームを形成する時点で生じることが一般に認められている。エクソソームには、細胞の細胞質と核小体領域にそれぞれ由来するmiRNAと核小体低分子RNA(snoRNA)を含むsncRNAが含有されている。腫瘍微小環境におけるエクソソームおよびEVの存在は、前立腺がんおよび他のがんを含む多くの腫瘍タイプの悪性腫瘍と関連している。
【0045】
特定の実施形態において、エクソソームから単離されたsncRNAは、精液、血液、前立腺分泌物、および脳脊髄液に由来する。さらなる実施形態において、エクソソームは、前立腺がん細胞、リンパ球、および前立腺組織からの細胞を含むがん細胞から単離される。
【0046】
エクソソームを単離するための方法は当技術分野で周知であり、エクソソームRNA単離キット(Norgen Biotek Corp.、カナダ、オンタリオ)などのキットを使用して実施することができる。sncRNAの収量は、蛍光光度計(Qubit、Thermo Fisher Scientific)によって定量化することができ、単離されたsncRNAの品質は、Agilent 2100バイオアナライザーを使用して評価される。
【0047】
単離されたエクソソームから抽出されたRNAは、miRNA、snoRNA、scaRNA、siRNA、snRNA、およびexRNAを含む低分子非コードRNA(sncRNA)と総称される低分子RNAの混合物である。それらのサイズ(<200ヌクレオチド)のために、sncRNAは、例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織または尿を含む生物学的サンプルから容易に抽出される。sncRNAは、固定または抽出中には分解されないため、FFPE組織からのmRNAの抽出に固有の問題が回避される。生物学的サンプルからの約10ngのsncRNAの収量は、上記のNorgenのエクソソームRNA単離キットを使用する複数の分析に十分である。
【0048】
抽出されたsncRNAはcDNAに逆転写され、cDNAはRNAよりも安定しているため、より長期間の保存が可能である。得られたcDNAは、シグネチャーsncRNAプローブもしくはゲノムアレイもしくはマイクロアレイチップ(miR4.0アレイ(ThermoFisher Scientific)など)の選択されたセットまたは集合とハイブリダイズして、さらに分析を行う。情報価値のあるsncRNAプローブのセットの選択は、PSA、グリソンスコア、または生物学的経路とは無関係である。シグネチャーsncRNAの選択されたセットまたは集合は、配列番号1~280、281~560および561~840を含む。セット内のsncRNA配列またはプローブの数は、145~196の範囲であり、Sentinel(商標)PCa、Sentinel(商標)CS、およびSentinel(商標)HG試験を実行するには、280個以下のsncRNA配列が好ましい。試験は、アルゴリズムに最大280個のsncRNA配列が追加されているため、より正確である。分析に280個を超えるsncRNA配列を追加しても、アッセイの精度は向上しない。
【0049】
リアルタイムPCRまたはRT-PCRは、しばしばqPCRまたはRT-qPCRとして知られ、標的配列の絶対量を定量化するため、またはサンプル間の標的配列の相対量を比較するために実施される。RT-qPCRは、増幅中に放出される標的固有の(プローブ)蛍光シグナルを介して、標的の増幅をリアルタイムでモニタリングする。バックグラウンド蛍光は、標的に対して配列特異的プローブを使用しているにもかかわらず、ほとんどのRT-qPCR反応中に発生するため、バックグラウンド蛍光シグナルの問題は、リアルタイムPCRにおける2つの値を考慮することで対処することができる:(1)閾値ライン(Ct)および(2)サイクルの定量化(Cq)。値。閾値ライン(Ct)は、反応がバックグラウンドレベルを超える蛍光強度に達したときの検出レベルである。これは、反応曲線が指数関数的フェーズを開始する点(変曲点)である。Cqまたはサイクル定量値は、サンプルの反応曲線が閾値ラインと交差するPCRサイクル数である。したがって、Cq,の値は、サンプルから実際のシグナルを検出するのにかかったサイクル数、つまりイベントまでの時間を示す。イベントは蛍光の飽和であり、検出の最大レベルを示す。RT-qPCRの実行により各サンプルの反応曲線が得られるため、多くのCq値がある。PCRサイクラーのソフトウェアは、サンプルの各々のCq値を計算してグラフ化する。値はサンプル中の標的核酸の量に反比例し、サンプル中の標的コピーの数と相関する。Cq値がより低い(通常は29サイクル未満)場合は、標的配列の量が多いことを示す。逆に、Cq値が高い(38サイクルを超える)場合は、サンプル中の標的核酸の量が少ないことを示す。しかしながら、反応曲線の傾きが最大のときにCqを使用するのではなく、傾きがゼロになったときにイベントまでの時間値を得ることができる。一実施形態において、sncRNAは、RT-qPCRを使用して調べられる。別の実施形態において、sncRNAは、qPCRを使用して調べられる。さらなる実施形態において、尿中エクソソームから単離されたsncRNAは、製造業者の指示に従って、AffymetrixのGeneChip(商標)miRNA 4.0アレイを使用して調べられる。
【0050】
トレーニングセットから得られたこれらの情報価値のある配列(通常は280個の配列)は、OpenArrayプラットフォームに転送される。次に、状態が不明な患者サンプルがOpenArrayプラットフォーム上で調べられ、分類アルゴリズムを使用してSentinelスコアが判断される。患者の状態はSentinelスコアから判断される。
【0051】
一実施形態では、前立腺がんの状態が不明な患者からのsncRNAレベルをOpenArrayプラットフォーム上で調べ、次に、疾患状態が不明な患者からのSentinelスコアをトレーニングセットのスコアと比較して、患者の状態を判断することができる。
【0052】
一実施形態において、例えば、AffymetrixのGeneChip(商標)miRNA 4.0アレイ上でRT-qPCRを使用して、前立腺疾患の状態が不明な患者(試験サンプル)からの試験サンプル中のsncRNAレベルの分析から得られたデータを、健康な患者(がんの徴候なし)または前立腺がんを有する対象から得られた健康な細胞からのデータと比較することができる。試験サンプルからのsncRNAレベルの分析から得られたデータを、健康な(非がん)および非健康な(泌尿生殖器がんを有する)患者を分析することによって確立された臨床ベースラインと比較することもでき、非健康な患者を、様々な特定のがんのタイプにさらに分類することができ、これを、特定のがんのタイプ(例えば、前立腺がんなど)の様々な段階または重症度、および特定の疾患の様々な段階にさらに分類することができる。一実施形態では、AffymetrixのGeneChip(商標)miRNA 4.0アレイ上でRT-qPCRを使用して試験サンプル中のsncRNA発現の分析から得られたデータを、健康な患者(がんの徴候なし)からのデータと比較するか、またはこのデータを、健康な(非がん)患者と非健康な(前立腺がんを有する)患者を分析することによって確立された臨床ベースラインと比較し、非健康な患者を、前立腺がんの様々な段階(GG1およびGG2~GG5、またはGG1+2およびGG3~GG5)にさらに分類する。
【0053】
いくつかの実施形態において、本方法は、OpenArray(商標)技術(ThermoFisher Scientific)を使用して、sncRNA(例えば、miRNA、snoRNA)のパネルを調べる。OpenArray(商標)技術は、48個のサブアレイを有する顕微鏡スライドサイズのプレートを使用する。各サブアレイには64個の貫通孔があり、各孔の直径は300μm、深さは300μmである。表面張力を介して試薬を貫通孔内に保持するために、孔は親水性および疎水性コーティングで処理されている。OpenArray(商標)技術は、3,072個の貫通孔(48×64)を備えており、多数のサンプル、アッセイ、またはその両方を使用するリアルタイムPCR研究を合理化するためのシステムを提供する。したがって、このシステムは、微量のサンプルおよび試薬を使用して、遺伝子発現用サンプルを短時間で大量に処理することを可能にする。本方法は、各sncRNAの発現レベルと生検(少なくとも12コア針生検)の等級付けに依存するアルゴリズムを採用している。前立腺がんの場合、方法論は、血清前立腺特異抗原(PSA)レベル、グリソンスコア(どちらも有意義な腫瘍進行マーカーではない)、または患者の年齢とは無関係である。この方法論は、生物学的経路の分析とも無関係である。本発明の方法は、対象から単離されたsncRNA(例えば、尿サンプル、尿エクソソーム、または前立腺組織サンプル)を使用して、男性を、前立腺がんを有する人(無痛性(臨床的に有意でない)または侵攻性(臨床的に有意である)の両方)と有しない人に層化する。この方法論は、前立腺がんの主要なスクリーニングアッセイとして血清PSAの代わりに使用することができる。
【0054】
一態様では、本開示は、病理(グリソンスコア)、腫瘍体積、またはPSAに依存しない分類アルゴリズムに供される、調べたシグネチャーsncRNAの集合の総発現プロファイルに基づいて臨床的に有意な前立腺がんを区別する方法を提供する。がんの転帰が分かっている患者の生物学的サンプルから抽出されたRNAは、逆転写され、sncRNAを含む全ゲノムアレイ(例えば、AffymetrixのGeneChip miR4.0など)に対してハイブリダイズされる。臨床的に有意な前立腺腫瘍において特異的に調節される小分子非コードRNAが特定される。一実施形態において、配列番号281~561のプローブにハイブリダイズするsncRNAを特定するOpen Arrayからのシグナルの絶対値が、臨床的に有意な(GG2~5)前立腺がん腫瘍に見られる総発現プロファイルと比較される。別の実施形態において、配列番号561~840のプローブにハイブリダイズするsncRNAを特定するOpen Arrayからのシグナルの総計値が、臨床的に低い悪性度および良好な中間悪性度(GG1+GG2)と、良好でない中悪性度および高悪性度(GG3~GG5)の前立腺がん腫瘍に見られる絶対発現プロファイルと比較される。
【0055】
開示された方法は、尿サンプルが受け取られてからSentinelスコアを得るまでの72~96時間での前立腺がんの予後の堅牢かつ正確な判断を提供する。別の実施形態において、配列番号281~560および561~840に結合する特定されたsncRNAの総発現プロファイルが、臨床的に有意な前立腺がんにおけるsncRNAの総発現プロファイルと比較される。別の実施形態において、配列番号281~560および561~840に結合する、調べた特定されたsncRNAの総発現プロファイルが、臨床的に有意な前立腺がんにおけるsncRNAの総発現プロファイルと比較される。さらなる実施形態において、配列番号281~560および561~840に結合する特定されたsncRNAの総発現プロファイルが、臨床的に有意な前立腺がんサンプルにおけるsncRNAの総発現プロファイルと比較される。その結果、適切な治療オプション(またはその欠如)を開始することができる。
【0056】
相対的総発現プロファイルという用語は、同じ意味で使用される。少なくとも複数のsncRNAの総発現プロファイルが組み合わされ、臨床的に有意な前立腺がん組織における同じ総発現プロファイルと比較される。いくつかの実施形態において、少なくとも40個のsncRNAが組み合わされ、臨床的に有意な前立腺がん組織における同じ総発現プロファイルと比較される。いくつかの実施形態において、少なくとも90個のsncRNAが組み合わされ、臨床的に有意な前立腺がん組織における同じ総発現プロファイルと比較される。いくつかの実施形態において、少なくとも150個のsncRNAが組み合わされ、臨床的に有意な前立腺がん組織における同じ総発現プロファイルと比較される。いくつかの実施形態において、少なくとも200個のsncRNAが組み合わされ、臨床的に有意な前立腺がん組織における同じ総発現プロファイルと比較される。好ましい実施形態において、少なくとも224個のsncRNAおよび280個以下のsncRNAが組み合わされ、臨床的に有意な前立腺がん組織における同じ総発現プロファイルと比較される。特定の実施形態において、低悪性度の前立腺がん組織における総発現プロファイルと比較してより高い総発現プロファイルは、患者が侵攻性の前立腺がんを有し、治療が必要であることを示す。他の実施形態において、低悪性度の前立腺がん組織における総発現プロファイル以下の総発現プロファイルは、患者が侵攻性の前立腺がんを有しておらず、モニタリングは必要であるが治療は不必要であることを示す。
【0057】
いくつかの実施形態において、選択されたsncRNAの総発現プロファイルは、sncRNAの様々なタイプの調節された発現の総計である。調節された発現は、健康な前立腺組織、低悪性度の前立腺がん組織、または高悪性度の前立腺がん組織などの他の組織/腫瘍タイプにおける同じsncRNAと比較して、発現プロファイルを増減させることができる。
【0058】
他の実施形態において、選択されたsncRNAの総発現プロファイルは、特定のsncRNAの減少した総発現プロファイルの総計、ならびに同じ組織サンプル中の他のsncRNAの増加した総発現プロファイルの総計であり得る。例えば、シグネチャーsncRNAの集合の進行スコアまたは総発現プロファイルには、別の組織タイプまたは同じ組織サンプル中の他のsncRNAと比較して、総発現プロファイルが減少した1つ以上のsncRNAが含まれ、残りのsncRNAの1つ以上は、同じ組織サンプル中の別の組織タイプまたは他のsncRNAと比較して増加した総発現レベルを示す。特異的に調節されたsncRNAの集合の総発現プロファイルは、前立腺腫瘍が臨床的に有意であるか否かを示す洗練された、偏りのない指標となる。正常組織と比較して、単に個々の標的分子の存在もしくは不在、または単純な増加または減少を評価するだけの他の方法とは異なり、開示された方法は、前立腺組織サンプルの真に偏りのない、独立した、多変量分析を提供し、それにより、前立腺がん腫瘍が臨床的に有意であるか否かについての驚くほど正確な診断を可能にする。
【0059】
いくつかの態様において、本方法は、転移およびがんの病期分類をモニタリングするためのシグネチャーsncRNAの集合の総発現プロファイルの使用を提供する。
【0060】
別の態様では、本開示は、開示された分類アルゴリズムを使用して調べられ、分析されるシグネチャーsncRNAの集合の総発現プロファイルに基づいて泌尿器悪性腫瘍を検出するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、悪性腫瘍は前立腺のがんである。
【0061】
本開示は、前立腺がんを有する患者の臨床転帰を予測するためのアルゴリズムに基づく分子診断アッセイを提供する。1つ以上のsncRNAの発現レベルを単独で使用することも、機能遺伝子サブセットに配置して、臨床転帰の可能性を予測するために使用可能な定量的スコアを計算することもできる。
【0062】
「定量的スコア」は、開示されたsncRNAもしくはsncRNAサブセットの特定の発現プロファイルと前立腺がん患者の臨床転帰の可能性との相関など、より複雑な定量的情報の分析を単純化もしくは開示もしくは通知するのに役立つ、算術的または数学的に計算された数値である。定量的スコアは、特定のアルゴリズムを適用することによって求めることができる。開示された方法において定量的スコアを計算するために使用されるアルゴリズムは、sncRNAの発現プロファイル値をグループ化することができる。sncRNAのグループ化は、本明細書で考察されるグループのように、生理学的機能または構成要素の細胞の特性によるsncRNAの相対的寄与についての知識に少なくとも部分的に基づいて実施され得る。sncRNAグループの定量的スコア(「sncRNAグループスコア」またはSentinel(商標)スコア)を求めることができる。さらに、グループの形成は、定量的スコアに対する、遺伝子または遺伝子サブセットの様々な総発現プロファイルの寄与の数学的重み付けを容易にすることができる。生理学的プロセスまたは構成要素の細胞の特性を表すsncRNAまたはsncRNAsグループの重み付けは、がんの病理およびがんの再発またはアップグレード/アップステージなどの臨床転帰に対する当該プロセスまたは特性の寄与を反映することができる。本発明は、定量的スコアを計算するためのいくつかのアルゴリズムを提供する。例えば、本開示における分類アルゴリズムは、異なる疾患状態を区別するためのSentinelスコアを開発するために同様に機能する。分類アルゴリズムは、臨床的に有意な疾患状態と有意でない疾患状態のトレーニングデータセットから様々なsncRNA配列を選択する。
【0063】
一方、選択アルゴリズムは、尿中エクソソームsncRNAの総発現プロファイルが、既知の病理を有する大規模な参加者集団において、疾患の病理学的病期(がん/非がん)とどの程度よく相関するかを試験する。選択アルゴリズムは、miR4.0アレイ上で調べた6,599個のsncRNAの各々が、参加者の既知の病理とどの程度よく相関しているかを個別に評価する。次に、miR4.0アレイによって調べられた6,599個のsncRNAのうちの2つのsncRNA、3つのsncRNA、または4つのsncRNAのすべての組み合わせを繰り返し評価し、その後、疾患の病理学におけるリーブワンアウト戦略を使用して個々のsncRNAを検査する。次に、Open Arrayを使用して選択したsncRNAを調べることにより、疾患状態が不明な患者のSentinelスコアを求め、このスコアをトレーニングデータセットからのスコアと比較することにより、臨床状態を判断する。本発明の一実施形態において、定量的スコアの増加は、陰性の臨床転帰の可能性の増加を示す。
【0064】
定量的スコアおよび累積的または絶対的な総発現プロファイルに基づいて、治療方法を判断することもできる。前立腺がんを治療する方法には、前立腺組織の完全な外科的除去のための手術、有効量の放射線の投与、および前立腺がんの治療のための治療有効量の薬物の投与、または上記の組み合わせが含まれる。
【0065】
本発明の方法の実施によって提供されるアルゴリズムに基づくアッセイおよび関連情報は、前立腺がんにおける最適な治療の意思決定を容易にする。例えば、このような臨床ツールを使用すると、医師が侵攻性のがんを有する可能性が低い患者を特定することを可能にするため、3か月、6か月、または12か月ごとの定期的なフォローアップまたはアクティブサーベイランスを除いて、さらなる医学的介入は必要ない。非がん患者は、年に一度のフォローアップのために医学的介入を再度受けることを必要としない。侵攻性がんを発症するリスクがある患者は、1つ以上の化学療法剤(例えば、タキソテール、カバジタキセル、ドセタキセル、ミトキサントロン、エピルビシン、パクリタキセルおよびエストラムスチンなど)、ホルモン療法(例えば、リュープロレリン、ゴセレリン、およびトリプトレリンなどのテストステロンの産生を防ぐためのホルモン放出ホルモンアゴニスト、またはテストステロンががん細胞に到達するのを防ぐ抗アンドロゲン薬、例えば、ビカルタミンデおよびニルタミド)、免疫療法、放射線、凍結療法、手術またはそれらの組み合わせによる治療を含むがこれらに限定されない医学的介入を必要とする。
【0066】
治療を受ける患者は、開示された方法を使用してモニタリングされ、治療に対する患者の応答を判断する。一態様において、本開示は、治療に対する患者の応答を判断する方法であって、(i)患者から生物学的サンプルを得ることと、(ii)生物学的サンプルからの小分子非コードRNA(sncRNA)のシグネチャー集合の総発現プロファイルを検出することであって、sncRNAの集合が配列番号1~280、281~560および561~840を含む、検出することと、(iii)配列番号1~280、281~560および561~840の総発現プロファイルを、治療前のものと比較することによって治療後の対象からの配列番号1~280、281~560および561~840のsncRNAの総発現プロファイルを相関させることと、(iv)患者が治療対して応答するか否か、および治療法の変更が必要であるか否かを判断することと、を含む、方法を提供する。一実施形態において、本方法は、次いで、上記(iii)からのsncRNAのシグネチャー集合の結果として生じる総発現プロファイルを、悪性度グループが分かっている前立腺を有する標的集団からの大規模なトレーニングデータセットについてのsncRNAのシグネチャー集合の総発現プロファイルと比較し、シグネチャーsncRNAの集合の総発現プロファイルおよびその悪性度グループのSentinelスコアに基づき、(a)患者の前立腺がんが安定している(悪性度グループと比較して明らかな変化がない)か否か、(b)患者が治療に応答する、すなわち患者が良くなる(結果が、より低い悪性度グループの腫瘍に類似した腫瘍を示す)か否か、または(c)患者が応答しない(結果がより高い悪性度グループの腫瘍に類似している腫瘍を示す場合、患者が悪化する)か否かを判断する。治療法の変更には、投与される化学療法剤、放射線、免疫療法剤またはホルモンの濃度または量の調整、使用される薬剤のうちの1つ以上の添加または除去が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
別の態様では、本開示は、トレーニングデータセットの配列番号1~280、281~560、および561~840の総発現プロファイルと患者の以前のプロファイルとを比較することによって、配列番号1~280、281~560、および561~840を含むシグネチャーsncRNAの集合の総発現プロファイルに基づいて、疾患の再発、疾患の進行、または生存の可能性を判断するための方法を提供する。
【0068】
別の態様において、本開示は、患者ががんを有しないのか、がんを有するのかを判断し、がんを有する対象を、(i)無痛性(低悪性度、GG1)、(ii)中もしくは高悪性度(GG2~GG5)、(iii)低/中等度リスク(GG1~GG2)、または(iv)侵攻性(高悪性度、GG3~GG5)の前立腺がんとして分類するためのシステムであって、(a)情報価値のある配列についてsncRNA配列を調べ、(b)Sentinelスコアを判断し、比較して、対象が前立腺がんを有するのか、前立腺がんを有しないのかを判断し、がんを有すると判断された対象を、様々な悪性度グループ(例えば、低悪性度、中/高悪性度、低/中等度リスク、または侵攻性悪性度のがん)に分類するように構成された少なくとも3つのプロセッサを含む、システムを提供する。がんの徴候がないと判断された対象は、医学的介入を必要とせず、年に一度フォローアップのために再訪する。低悪性度または低/中悪性度の前立腺がんを有すると判断された対象は、3、6、または12か月ごとの定期的なフォローアップまたはアクティブサーベイランスを除いて、医学的介入を必要とせず、中悪性度/高悪性度または侵攻性の前立腺がんを有すると判断された対象は、医学的介入を必要とする。
【実施例】
【0069】
本発明のこの態様および他の態様を、以下の非限定的な例によってさらに例証する。
【0070】
実施例1
研究対象集団:
Sentinel(商標)PCaおよびSentinel(商標)CS試験の開発および検証には、2つの独立した患者コホートを使用した。がんを有するか、またはがんを有しないとして患者を分類するためのSentinel(商標)PCaを開発するべく使用した233人の参加者の臨床的特性および人口統計学的特性は、シグネチャーsnRNAの集合の統計分析に基づいていた。がんを有するとして分類された患者の場合、Sentinel(商標)CS試験を使用して、GG1(無痛性、低等度リスクのがん)の患者を、GG2~5(それぞれ中、高等度リスクおよび侵攻性のがん)から区別する。Sentinel(商標)CS試験はまた、腫瘍をGG1とGG2~5とに分類するための第2の分類アルゴリズムを使用するシグネチャーsncRNAの別の集合の統計分析に基づいている。両方の試験のsncRNAを、AffymetrixのmiR4.0アレイによって調べる。
【0071】
尿の収集および処理
Sentinel(商標)PCaおよびCS試験の開発のための尿サンプル、および米国を拠点とする後ろ向き研究のコホートは、2つの臨床サイトであるAlbany Medical Center(米国、ニューヨーク州アルバニー)およびSUNY Downstate Medical Center(米国、ニューヨーク州ブルックリン)で、臨床検査のための訪問日に収集した。後ろ向き研究の残りのサンプルは、University Health Network(カナダ、トロント)のGUBioBankから取得され、-20℃で凍結されてmiR Scientificの研究所へ大量に出荷された。患者の情報は、各参加サイトの治験審査委員会によって承認されたとおりに収集され、匿名化された。前立腺がんの診断は、コア針生検の組織病理学的等級付けによって得られた。コアあたりの腫瘍のパーセンテージと陽性コアの数を使用して、悪性度グループ(GG)を評価した。
【0072】
尿サンプルを遠心分離して、遊離細胞と破片を除去した。RNAは、エクソソームRNA単離キット(Norgen Biotek、ON)を使用して、製造元の指示に従って抽出した。sncRNAの収量は蛍光光度計(Qubit、Thermo Fisher Scientific)で定量化し、RNAサンプルは分析まで-80℃で保存した。
【0073】
全エクソソームsncRNAのマイクロアレイ分析
AffymetrixのGeneChip(商標)miR4.0アレイを使用して、製造元の指示に従って、sncRNAを調べた。これらのアレイ上で分析された235人の患者のMAIME準拠の生データファイルは、NCBIのGene Expression Omnibusに保管されている。(Edgar R et al.Gene Expression Omnibus:NCBI gene expression and hybridization array data repository.Nucleic Acid Res 2002 30:207)。トレーニングセットにおける6,599個のsncRNAを、AffymetrixのGeneChip(商標)miRNA4.0アレイ上で調べた。
【0074】
各参加者について調べた小分子非コードRNAエンティティは、独自の選択および分類アルゴリズムを使用して分析された。がんの対象と非がんの対象(配列番号1~280)、および悪性度グループ1の患者と悪性度グループ2~5の患者を区別するための最も情報価値のある配列を特定した。(配列番号281~842)
【0075】
QuantStudio OpenArray(商標)に基づくエクソソームsncRNAの調査
選択したmiRNAのcDNA合成、前増幅:エクソソームmiRNAの分析では、製造元によって推奨されるように、TaqMan(商標)MicroRNA逆転写キット(Thermo Fisher Scientific)を使用して、3つの特定のmiRNAステムループプライマープールを使用した個別の反応において総sncRNAを逆転写した。miRNAのcDNAプールを、16サイクル(95℃で10分間、55℃で2分間、72℃で2分間、95℃で15秒間および60℃で4分間を16サイクル繰り返し、99.9℃で10分間)の間、前増幅プライマープールで個別に濃縮し、製造元の推奨に従って56個のエンティティを含む3つのサブアレイのQuantStudio OpenArray(商標)上で調べた。
【0076】
選択したsnoRNAのcDNA合成、前増幅、および調査:全sncRNAを、製造元により推奨されるように、単一の前増幅プライマープール(Thermo Fisher Scientific)を備えた大容量cDNA逆転写キットを使用して逆転写した。snoRNAのcDNA産物を、前増幅(95℃で10分間、95℃で15秒間、および60℃で4分間をそれぞれ14サイクルと18サイクル繰り返し、99℃で10分間)によって濃縮し、56個のエンティティを含む2つのサブアレイ上で調べた。
【0077】
統計分析:
Sentinel(商標)PCa試験は、コア針生検が陽性または陰性である参加者のコホートでトレーニングされた分類アルゴリズムに基づいている。分類アルゴリズムは、疾患状態が不明な参加者のsncRNA発現シグネチャーを入力とし、Sentinel(商標)スコアを生成する。疾患状態が不明な(ただし、発現シグネチャーは分かっている)将来の患者を分類するための感度を、ユーザー定義のレベル(通常95%以上)で維持する所定のカットオフ値と、このSentinel(商標)スコアを比較して、参加者を分類する。第2の分類アルゴリズムであるSentinel(商標)CS試験は、Sentinel(商標)PCa試験と同様に動作する。しかしながら、Sentinel(商標)CS試験の分類アルゴリズムは、低悪性度(GG1)として分類された患者のコホートと、良好な中~高悪性度の前立腺がん(GG2~GG5)として分類された第2の患者のコホートでトレーニングされる。第3の分類アルゴリズムであるSentinel(商標)HG試験は、低等度および良好な中等度リスク(GG1+GG2)の前立腺がんであると判断された患者のコホートと、良好でない中等度リスクおよび高等度リスク(GG3~GG5)として特徴付けられる第2のコホートでトレーニングされる。
【0078】
Sentinel(商標)試験パラダイムは、2つまたは3つの層で動作する。第一に、参加者の尿からのsncRNAシグネチャーを使用して、Sentinel(商標)PCa試験の分類ルールに入力し、がんが存在するか否かを判断する。第二に、がんと診断された患者について、Sentinel(商標)CS試験は、がんが低等度リスク(GG1)であるか否かを判断する。第三に、Sentinel(商標)HG試験は、腫瘍が良好でない中または高等度リスク(GG3~GG5)であるか否かを判断する。(
図4を参照)
【表4】
【0079】
表4は、Sentinel(商標)試験の開発に使用されるトレーニングデータセットを確立した。235人の患者のうち、「非がん」コホートに含まれる患者(89人の患者)は、泌尿器腫瘍学とは関係のない問題について泌尿器科クリニックで診察を受けた同年齢の男性(n=58)、および前立腺がんの徴候を示さない1つ以上の12針診断コア針生検を受けた男性(n=30)から慎重に選択した。
【0080】
「がん」コホートの患者(n=146)は、コア針生検の組織病理学に基づいて選択した。146人の「がん」コホートのうち、90人の患者がGG1がんとして分類され、56人の患者がGG2~5として分類された。
【0081】
「情報価値のある」結果とそうでない結果を分けるために独自の選択アルゴリズムを使用して調べたトレーニングデータセットからの6,599個のマイクロアレイ配列のうち、情報価値があるのは400~600個のみである。結果は、各配列が追加されたときにアルゴリズムに影響を与えるsncRNA配列を意味し、疾患状態が不明な対象が前立腺がんを有するのか、有しないのか、およびがんの段階(無痛性対侵攻性)を予測する。
【0082】
使用される統計分析は、他の配列の条件付け後にのみ観察される結果との隠れた関連を持つ配列を特定する機能に基づいている。400~600個の情報価値のあるsncRNA配列のうち、280個のsncRNA配列を、Discovery PCa試験(
図5)、Discovery HG試験(
図7)およびDiscovery CS試験(
図6)の発現シグネチャーを定義するための基礎として分類アルゴリズムで使用した。次に、最も重要であると考えられる、情報価値のあるsncRNAのサブセットを、各試験で特定した(それぞれ
図5、
図7および
図6(右パネル))。
【0083】
これらの280のsncRNAを組み合わせて、Sentinel(商標)PCaおよびCS試験の基礎となるOpenArray(商標)プラットフォームを設計した。Sentinel(商標)PCa試験には、疾患状態が不明な対象を前立腺がんまたは前立腺非がんとして分類するための、84個の固有のsncRNA(60個のmiRNAと24個のsnoRNA)の総発現プロファイルが組み込まれている。同様に、Sentinel(商標)CS試験では、135個の固有のsncRNA(105個のmiRNAと30個のsnoRNA)を使用して、前立腺がんを有する対象をGG1(無痛性)の前立腺がんまたはGG2~GG5(侵攻性)の前立腺がんとしてさらに分類する。さらに、61個のsncRNA(25個のmiRNAと36個のsnoRNA)が両方の試験で情報価値がある。OpenArray(商標)プラットフォームは、2つの試験の感度と特異度を損なうことなく、尿中エクソソームから抽出されたsncRNAの単一サンプルに存在する情報価値のあるRNAエンティティを順次調べる。
【0084】
実施例2
症例対照の患者コホートにおけるSentinel(商標)PCa試験、Sentine1(商標)CS試験、およびSentinel(商標)HG試験の検証
OpenArray(商標)プラットフォームを使用するSentinel(商標)PCa試験およびSentinel(商標)CS試験のパフォーマンス特性を、1436人の患者を対象とした症例対照研究において確立した(表5)。
【表5】
【0085】
Sentinel(商標)PCa試験のパフォーマンス特性を、人口統計が表5に示されている600人の男性の症例対照コホートにおいて判断した。Sentinel(商標)PCaスコアの散布図を
図8Aに示し、対応する受信者操作曲線(ROC)曲線を
図8Cに示す。表6に要約されているように、Sentinel(商標)PCa試験では、281/300人の患者ががんを有するとして、275/300人の患者ががんを有しないとして正しく分類される(感度93.7%、特異度91.7%)。
【0086】
Sentinel(商標)CS試験のパフォーマンス特性を、600人の男性の試験コホートにおいて判断した。Sentinel(商標)CSスコアの散布図を
図9Aに示し、対応する受信者操作曲線(ROC)曲線を
図9Cに示す。表6に要約されているように、Sentinel(商標)CS試験では、143/154人の患者が高悪性度(GG3~GG5)として、132/143人が高悪性度ではないとして正しく分類される(感度92.9%、特異度90.4%)。
【0087】
Sentinel(商標)HG試験のパフォーマンス特性を、600人の男性の試験コホートにおいて判断した。Sentinel(商標)HGスコアの散布図を
図10Aに示し、対応する受信者操作曲線(ROC)曲線を
図10Cに示す。表6に要約されているように、Sentinel(商標)CS試験では、94/100人の患者が高悪性度(GG3~GG5)として、191/200人が高悪性度ではない(GG1+GG2)として正しく分類される(感度94%、特異度95.5%)。
【表6】
【0088】
実施例3
Sceintific Sentinel(商標)プラットフォームを使用して臨床的に有意でないPCaを特定するための安全性および科学的妥当性の研究
臨床研究の目的は、Scientific Sentinel(商標)PCa試験およびScientific Sentinel(商標)CS試験のパフォーマンス特性を検証して、(1)生検が実施される、前立腺がんの疑いのある50~80歳の男性の中で前立腺がん患者を特定し、(2)臨床的に有意な前立腺がん(悪性度2以上)の50~80歳の男性を、臨床的に有意でない前立腺がん(悪性度グループ1)の男性から区別することである。これらの分類は、コア針生検および根治的前立腺切除術(利用可能な場合)の結果と比較される。感度、特異度、陽性および陰性的中率が確立される。この研究は、前向き研究、観察的研究、および非介入的研究である。情報を与えられた(informed)参加者は、研究の過程で2つ以上の尿サンプルを提供し、関連する匿名化された臨床データを研究チームと共有することに同意する。
【0089】
コア針生検が実施され、そうでなければ包含および除外基準を満たしている、前立腺がんの疑いのある50~80歳の参加者が登録され、Sentinel(商標)PCa/CS試験用の尿サンプルを提供する。この研究では、分類アルゴリズムを使用して、開示された方法に基づくSentinel(商標)PCa試験およびSentinel(商標)CS試験の特性を評価し、将来の前立腺がん患者を特定し、臨床的に有意であるか、または臨床的に有意でないとして前立腺がんを分類する。
【0090】
がんの「ゴールドスタンダード」評価は、コア針生検の結果から行われる。コアが陽性でない参加者は「非がん」と指定される。1つ以上のコアにがんがある参加者は、がんのあるすべてのコアの組織病理学が悪性度グループ1以下である場合、「臨床的に有意でない」前立腺がんを有すると指定される。任意のコアの悪性度グループが2~5の場合、参加者は「臨床的に有意な」前立腺がんを有すると指定される。
【0091】
登録された各研究参加者は、1年間追跡される。参加者は各訪問中に尿サンプルを提供し、再生検、PSA結果、および根治的前立腺切除術(臨床ケアの一部として施された場合)からの病理報告を含むすべての関連する臨床データが得られる。可能な場合は、フォローアップ結果が結果分析に使用される。提供された尿サンプルごとに、Sentinel(商標)PCa試験およびCS試験を行い、利用可能な1年間のフォローアップ結果のデータと比較して、試験の感度、特異度、陽性および陰性的中率を通知する。
【0092】
分類アルゴリズムは、1-αで示される事前に指定されたレベル以上で感度を制御することによって機能を採用した。例えば、この設計で想定されている値はα=0.05であるため、母集団感度は少なくとも95%である。αの値は、試験の偽陰性率を表す、つまり、試験は真に陽性の患者に対して(誤って)陰性であることに注意されたい。
【0093】
感度を制御するためにSentinel(商標)PCaスコアのカットオフがどのように計算されるかを説明するために、トレーニングデータセットの各参加者について、Sentinel(商標)PCaスコアは、トレーニングデータセットの残りのメンバーとその小分子非コードRNA(sncRNA)配列のみを使用して計算される。つまり、トレーニングデータセットにおける各患者の真の疾患状態は盲検化され、それによって将来の患者の分類の設定を模倣する。次に、Sentinel(商標)PCa試験で使用されるカットオフが計算され、前立腺がんを有するトレーニングデータセットにおける患者に対する経験的感度は、将来の患者の母集団感度に関して少なくとも1-αの95%片側上限信頼区間を提供する値に対応する。
【0094】
トレーニングデータセットから事前に求めたSentinel(商標)PCaスコアのこのカットオフを使用して、感度、特異度、陽性および陰性的中率の対応する値は、盲検化された各生検結果を使用して、つまり、参加者のsncRNA配列のみを使用して、この提案された研究で生じた独自の参加者データに関して、対応する95%上限信頼区間とともに計算される。これらのエラー率は、疾患状態が不明な将来の患者の分類を参照していることに注意されたい。
【0095】
本明細書に引用されるあらゆる特許、特許出願公開、または科学刊行物は、その全体が参照により組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】