(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(54)【発明の名称】ハンチントン病を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20220422BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220422BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61P25/14
A61K31/7125
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553317
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(85)【翻訳文提出日】2021-10-15
(86)【国際出願番号】 US2020021652
(87)【国際公開番号】W WO2020185651
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510144959
【氏名又は名称】ラトガース,ザ ステート ユニバーシティ オブ ニュー ジャージー
(71)【出願人】
【識別番号】521402206
【氏名又は名称】シラジーン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・イアン・ガンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ラファル・ゴラツニアク
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZC75
(57)【要約】
ハンチントン病の阻害、処置、および/または予防のための組成物および方法が提供される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンチンチン遺伝子の発現を阻害するためのU1アダプターオリゴヌクレオチドであって、該U1アダプターオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのエフェクタードメインと作動可能に連結されたアニーリングドメインを含む核酸分子であり、該アニーリングドメインは、該ハンチンチン遺伝子のプレmRNAとハイブリダイズし、該エフェクタードメインは、U1 snRNPのU1 snRNAとハイブリダイズする、前記U1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
アニーリングドメインは約10ヌクレオチド長~約30ヌクレオチド長である、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
エフェクタードメインは約8ヌクレオチド長~約20ヌクレオチド長である、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
エフェクタードメインとアニーリングドメインは、結合または約1ヌクレオチド~約10ヌクレオチドのリンカードメインにより連結されている、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
エフェクタードメインは、配列5’-CAGGUAAGUA-3’(配列番号1)、5’-CAGGUAAGUAU-3’(配列番号4)、または5’-GCCAGGUAAGUAU-3’(配列番号5)を含む、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
少なくとも1つのターゲティング部分および/または細胞透過性部分をさらに含み、該ターゲティング部分および/または細胞透過性部分は、U1アダプターオリゴヌクレオチドと作動可能に連結されている、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
U1アダプターオリゴヌクレオチドは少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含む、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
U1アダプターオリゴヌクレオチドは、2’-O-メチルヌクレオチド、2’-O-メチルオキシエトキシヌクレオチド、2’-ハロ(例えば、2’-フルオロ)、および/またはロックド核酸を含む、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
U1アダプターオリゴヌクレオチドはホスホロチオエートを含む、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
アニーリングドメインは、ハンチンチン遺伝子の3’末端エクソンにおける標的配列とハイブリダイズする、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
エフェクタードメインは、アニーリングドメインの3’末端、アニーリングドメインの5’末端、またはアニーリングドメインの5’末端と3’末端の両方と作動可能に連結されている、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
アニーリングドメインは、少なくとも7デオキシリボヌクレオチドのストレッチを含む、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
U1 snRNAはU1バリアントsnRNAである、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
U1アダプターオリゴヌクレオチドとターゲティング部分および/または細胞透過性部分はリンカーを介してコンジュゲートされている、請求項6に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
リンカーは切断可能である、請求項14に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
ターゲティング部分および/または細胞透過性部分は、U1アダプターオリゴヌクレオチドの3’末端、5’末端、または5’末端と3’末端の両方と作動可能に連結されている、請求項6に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
ターゲティング部分および/または細胞透過性部分は、U1アダプターオリゴヌクレオチドの5’末端と作動可能に連結されている、請求項16に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
U1アダプターオリゴヌクレオチドは、3’末端において第1のターゲティング部分と、および5’末端において第2のターゲティング部分と作動可能に連結されている、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
ターゲティング部分は抗体またはその断片である、請求項6に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
U1アダプターオリゴヌクレオチドは、完全長および/またはトランケート型ハンチンチンmRNAの発現を阻害する、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項21】
U1アダプターオリゴヌクレオチドは、配列番号8、配列番号37、配列番号38、配列番号9、配列番号39、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、および配列番号16からなる群から選択される配列を含む、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
U1アダプターオリゴヌクレオチドは、配列番号8、配列番号9、および配列番号15からなる群から選択される配列を含む、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項23】
アニーリングドメインは、配列番号26~36からなる群から選択される配列とハイブリダイズする、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項24】
アニーリングドメインは、配列番号26、配列番号29、および配列番号35からなる群から選択される配列とハイブリダイズする、請求項1に記載のU1アダプターオリゴヌクレオチド。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか1項に記載の少なくとも1つのU1アダプターオリゴヌクレオチドおよび少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項26】
ハンチンチン遺伝子に対して方向づけられた少なくとも1つのsiRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1~24のいずれか1項に記載の少なくとも1つのU1アダプターオリゴヌクレオチドを細胞へ送達する工程を含む、ハンチンチン遺伝子の発現を阻害する方法。
【請求項28】
U1アダプターオリゴヌクレオチドの少なくとも2つが送達され、該U1アダプターオリゴヌクレオチドのアニーリングドメインは、ハンチンチン遺伝子における異なる標的配列とハイブリダイズする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
必要としている対象においてハンチントン病を処置する方法であって、請求項1~24のいずれか1項に記載の少なくとも1つのU1アダプターオリゴヌクレオチドを該対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項30】
U1アダプターオリゴヌクレオチドの少なくとも2つが投与され、該U1アダプターオリゴヌクレオチドのアニーリングドメインは、ハンチンチン遺伝子における異なる標的配列とハイブリダイズする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ハンチンチン遺伝子に対して方向づけられた少なくとも1つのsiRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年3月8日に出願された米国仮特許出願第62/815,647号の米国特許法第119条(e)による優先権を主張する。前述の出願は、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、一般的に、遺伝子サイレンシングの分野に関する。具体的には、本発明は、ハンチンチン遺伝子の発現を制御するための組成物および方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
ハンチントン病(HD)は、常染色体優性神経変性疾患である。HDは、特定の遺伝子(例えば、ハンチンチン)における可変的に伸長したトリヌクレオチドCAGリピートに起因する少なくとも9つの異なる神経変性疾患を含むポリグルタミン(ポリQ)障害のファミリーの一部である(非特許文献1;非特許文献2)。その伸長のサイズは、ある程度、発症の年齢(例えば、成人発症対若年発症)と負の相関関係がある。HDは、ハンチンチン遺伝子の第1のエクソン内のCAGリピート伸長(約>36リピート)により引き起こされる。
【0004】
ハンチンチン遺伝子(htt)およびタンパク質(HTT)は広範かつ遍在性に発現しているが、その疾患は(例えば、脳内に)選択的神経細胞脆弱性のパターンを有する(特許文献3;非特許文献4)。httについての正常な機能も変異体httについての病理学的機構も完全には理解されていない。毒性機能獲得および野生型機能の喪失を含む複数の機構が存在する可能性がある。特に、HTTタンパク質の凝集体が、神経細胞の異なる位置および異なる型に見出される可能性がある。
【0005】
HDについて治療法はなく、処置は、それ症状を管理することに焦点をおいている(非特許文献5)。最近のデータは、完全長およびトランケート型mRNA転写産物ならびにそれらの関連タンパク質産物がHD患者に存在し、神経細胞機能障害および死の機構に寄与することを示している(非特許文献6)。特に、遺伝子改変マウスモデルの使用によって、変異体ハンチンチン発現が排除されたならば、疾患進行期においてさえも、HD様疾患表現型が消散できることが示された(特許文献7;特許文献8)。したがって、変異体htt mRNA(完全長および/または切り詰め型)を低下させることは、治療介入をもたらすことができる(非特許文献9)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Walker,F.O.(2007)Lancet、369:218~228頁
【非特許文献2】Walker,F.O.(2007)Semin.Neurol.、27:143~150頁
【非特許文献3】Ambroseら(1994)Somat.Cell Mol.Genet.、20:27~38頁
【非特許文献4】Landlesら(2004)EMBO Rep.、5:958~963
【非特許文献5】Johnsonら(2010)Hum.Mol.Genet.、19:R98~R102頁
【非特許文献6】Sathasivamら(2013)Proc.Natl.Acad.Sci.、110:2366~2370頁
【非特許文献7】Yamamotoら(2000)Cell、101:57~66頁
【非特許文献8】Diaz-Hernandezら(2005)J.Neurosci.、25:9773~9781頁
【非特許文献9】Sahら(2011)J.Clin.Invest.、121:500~507頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、htt遺伝子発現を制御する改善された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、ハンチンチン遺伝子(htt)の発現を阻害するための核酸分子が提供される。特定の実施形態において、その核酸分子は、少なくとも1つのエフェクタードメインと作動可能に連結されたアニーリングドメインを含み、前記アニーリングドメインがhttのプレmRNAとハイブリダイズし、前記エフェクタードメインがU1 snRNPのU1 snRNAとハイブリダイズする。特定の実施形態において、U1AOは完全長および/またはトランケート型httへ方向づけられる。
【0009】
本発明の別の態様によれば、核酸分子は、ターゲティング部分と(例えば、直接的にまたはリンカーを介して)コンジュゲートされている。ターゲティング部分は、5’末端および/または3’末端にコンジュゲートされている(例えば、核酸は、同じか異なるかのいずれかの2つのターゲティング部分を含み得る)。特定の実施形態において、核酸分子はアプタマーとコンジュゲートされている。
【0010】
本発明の別の態様によれば、本発明の核酸分子の少なくとも1つを細胞へ送達する工程を含む、httの発現を阻害するための方法が提供される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、本発明の核酸分子の少なくとも1つおよび少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む組成物が提供される。
【0012】
さらに別の態様において、本発明の核酸分子をコードするベクターもまた提供される。
【0013】
本発明の別の態様によれば、対象においてハンチントン病を処置し、阻害し、および/または予防する方法が提供される。方法は、本発明の少なくとも1つの核酸分子(例えば、U1AOまたはU1AOをコードするベクター)の治療有効量を、それを必要としている対象に投与する工程を含む。特定の実施形態において、方法は、1つより多いU1AOを投与する工程を含む。特定の実施形態において、方法は、完全長htt、トランケート型htt、または完全長とトランケート型の両方のhtt(例えば、別々のU1AOを用いて)に方向づけられたU1AOを投与する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】2つのドメイン:標的遺伝子のプレmRNAとその3’末端エクソンにおいて塩基対形成するアニーリングドメイン、および内因性U1 snRNPの結合を介して前記プレmRNAの成熟を阻害するエフェクタードメインを描く、U1アダプターオリゴヌクレオチドの概略図である。エフェクタードメインの提供された配列は配列番号1である。
【
図1B】標的プレmRNAとのU1アダプターのアニーリングの概略図である。エフェクタードメインの提供された配列は配列番号1である。
【
図1C】ポリ(A)部位阻害をもたらす、U1 snRNPを結合するU1アダプターの概略図である。Ψ=U1 snRNPにおけるU1 snRNAのプソイドウリジン。U1 snRNPにおけるU1 snRNAの提供された配列は配列番号2である。エフェクタードメインの提供された配列は配列番号1である。
【
図2】完全長ヒトHTTに対して方向づけられた、20nM U1アダプターオリゴヌクレオチド(U1AO)および20nM siRNAの一群を44時間、トランスフェクションされたHD9197細胞における、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT1)に対して標準化されたヒトハンチンチン(HTT)mRNAのパーセント変化を示すグラフである。
【
図3】レーン9における7nMおよびレーン7における30nMを例外として、20nMの様々なhHTT-FL U1AOおよびsiRNAを48時間、トランスフェクションされたDU145細胞のウェスタンブロットを示す図である。GAPDHはローディング対照として提供されている。U1A(U1 snRNPサブユニット)は、第2のローディング対照として提供されている。1レーンあたり1,500,00個の細胞等価物がロードされた。レーン4および6は、独立したレプリケートである。MW:分子量マーカー。
【
図4】
図4Aは、食塩水またはhHTT-FL-2 U1AOの左脳室への脳室内(ICV)注射後のYAC128前脳におけるhHTT-FL mRNAのパーセント変化のグラフを示す図である。YAC128は、128個のCAGリピートを含む約300,000個の塩基対のヒトハンチンチン遺伝子を含有するハンチントン病の十分確立されたマウスモデルである。対照マウスの平均が100%に設定された。N=7は、2つの異なる実験(n=3およびn=4)由来である。
図4Bは、食塩水またはhHTT-FL-2 U1AOのICV注射後のYAC128前脳におけるhHTT-TR mRNAのパーセント変化のグラフを示す図である。対照マウスの平均が100%に設定された。
【
図5】食塩水またはhHTT-FL-2 U1AOの注射後のYAC128前脳由来の全RNAの8%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)ノーザンブロットの画像を示す図である。プローブは33ヌクレオチドの
32P-抗hHTT-FL-2オリゴヌクレオチドであった。標準は注射されていないU1AOである。
【
図6】食塩水ICV処理マウス(左)またはhTT-FL-2 U1AO ICV処理マウス(右)の線条体におけるhHTT-FLのRNAScope(登録商標)検出の画像を示す図である。4日間後、マウスを分析した。核を染色するために4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を用いた。
【
図7】
図7Aは、示された時間にわたる食塩水またはhHTT-FL-2 U1AOのICV注射後のYAC128前脳におけるhHTT-FL mRNAのパーセント変化のグラフを示す図である。対照マウスの平均が100%に設定された。
図7Bは、食塩水またはhHTT-FL-2 U1AOのICV注射後の示された時間におけるYAC128前脳由来の全RNAのノーザンブロットの画像を示す図である。プローブは33ヌクレオチドの
32P-抗hHTT-FL-2オリゴヌクレオチドであった。標準は注射されていないU1AOである。対照の食塩水マウス1~7およびマウス11~12および16~17は、
図4および5に示されたのと同じマウスである。
【
図8】
図8Aは、食塩水、hHTT-TR-1 U1AO、またはhHTT-TR-2 U1AOのICV注射後のYAC128前脳におけるhHTT-TR mRNAのパーセント変化のグラフを示す図である。5日間後、マウス組織を分析した。対照マウスの平均が100%に設定された。N=7は、2つの異なる実験(n=3およびn=4)由来である。
図8Bは、食塩水、hHTT-TR-1 U1AO、またはhHTT-TR-2 U1AOの注射後のYAC128前脳におけるhHTT-FL mRNAのパーセント変化のグラフを示す図である。対照マウスの平均が100%に設定された。N=7は、2つの異なる実験(n=3およびn=4)由来である。
【
図9】
図9Aは、食塩水、mHTT-TR-A U1AO、またはNC-A対照U1AOの注射後の月齢8~9カ月のQ175前脳におけるmHTT-TR mRNAのパーセント変化のグラフを示す図である。Q175は、マウスhtt遺伝子において約175個のCAGリピートを有する、十分確立されたノックインマウスである。対照マウスの平均が100%に設定された。N=7は、2つの異なる実験(n=3およびn=4)由来である。
図9Bは、
図9Aと同じ試料を用いた、mHTT-FL mRNAのパーセント変化のグラフを示す図である。対照マウスの平均が100%に設定された。N=7は、2つの異なる実験(n=3およびn=4)由来である。
【
図10】4日間での食塩水処理マウス(左)またはmHTT-TR-A U1AO処理マウス(右)の線条体におけるmHTT-TRのRNAScope(登録商標)検出の画像を示す図である。
【
図11】
図11Aは、食塩水またはmHTT-TR-A U1AOのICV注射から21日後の月齢8~9カ月のQ175マウス前脳におけるmHTT-TR mRNAのパーセント変化のグラフを示す図である。対照マウスの平均が100%に設定された。
図11Bは、食塩水またはmHTT-TR-A U1AOの注射から21日後の月齢8~9カ月のQ175マウス前脳におけるmHTT-FL mRNAのパーセント変化のグラフを示す図である。対照マウスの平均が100%に設定された。
【
図12】
図12Aは、食塩水、mHTT-FL-A U1AO、またはNC-A対照U1AOの注射後の月齢8~9カ月のQ175前脳におけるmHTT-FL mRNAのパーセント変化のグラフを示す図である。対照マウスの平均が100%に設定された。N=7は、2つの異なる実験(n=3およびn=4)由来である。
図12Bは、食塩水、mHTT-FL-A U1AO、またはNC-A対照U1AOの注射後のQ175前脳におけるmHTT-TR mRNAのパーセント変化のグラフを示す図である。対照マウスの平均が100%に設定された。N=7は、2つの異なる実験(n=3およびn=4)由来である。
【
図13】食塩水処理マウス(左)またはmHTT-FL-A U1AO処理マウス(右)の線条体におけるmHTT-FLのRNAScope(登録商標)検出の画像を示す図である。
【
図14-1】
図14A~14Lは、U1AOについてのヒトhttにおける標的部位、およびDNA形式でのU1AO配列の例を示す図である。行50、272、151、3、187、4、5、10、および2における標的配列は、それぞれ、配列番号26~34である。行1、6~9、11~49、51~150、152~186、188~271、および273~325における標的配列は、それぞれ、配列番号40~355である。DNA形式で提供されたU1AO配列は、上から下へ配列番号356~680である。
【
図15A】4つの異なる濃度でのmHTT-FL-a U1AOのQ175マウスへのICV注射後の1カ月目(
図15A)、2カ月目(
図15B)、および4カ月目(
図15C)におけるmHTT-FlおよびmHTT-Trのサイレンシングのレベルのグラフを示す図である。
【
図15B】4つの異なる濃度でのmHTT-FL-a U1AOのQ175マウスへのICV注射後の1カ月目(
図15A)、2カ月目(
図15B)、および4カ月目(
図15C)におけるmHTT-FlおよびmHTT-Trのサイレンシングのレベルのグラフを示す図である。
【
図15C】4つの異なる濃度でのmHTT-FL-a U1AOのQ175マウスへのICV注射後の1カ月目(
図15A)、2カ月目(
図15B)、および4カ月目(
図15C)におけるmHTT-FlおよびmHTT-Trのサイレンシングのレベルのグラフを示す図である。
【
図15D】80μgでの対照NC-a U1AOのQ175マウスへのICV注射後の1カ月目、2カ月目、および4カ月目におけるmHTT-FlおよびmHTT-Trのサイレンシングのレベルのグラフを示す図である。
【
図16A】4つの異なる濃度でのmHTT-Tr-a U1AOのQ175マウスへのICV注射後の1カ月目(
図16A)、2カ月目(
図16B)、および4カ月目(
図16C)におけるmHTT-FlおよびmHTT-Trのサイレンシングのレベルのグラフを示す図である。
【
図16B】4つの異なる濃度でのmHTT-Tr-a U1AOのQ175マウスへのICV注射後の1カ月目(
図16A)、2カ月目(
図16B)、および4カ月目(
図16C)におけるmHTT-FlおよびmHTT-Trのサイレンシングのレベルのグラフを示す図である。
【
図16C】4つの異なる濃度でのmHTT-Tr-a U1AOのQ175マウスへのICV注射後の1カ月目(
図16A)、2カ月目(
図16B)、および4カ月目(
図16C)におけるmHTT-FlおよびmHTT-Trのサイレンシングのレベルのグラフを示す図である。
【
図17】mHTT-FL-a U1AO(上部)、mHTT-Tr-a U1AO(中央)、およびNC-a U1AO(下部)の薬物動態のグラフを示す図である。1カ月目、2カ月目、および4カ月目におけるRNAの量が示されている。4つの異なる濃度のmHTT-FL-a U1AOおよびmHTT-Tr-a U1AOのそれぞれが示され、一方、NC-a U1AOについての80μg濃度のみが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
U1アダプター(またはU1アダプターオリゴヌクレオチド(U1AO))は、アンチセンスまたはsiRNAとは機構的に異なる、オリゴヌクレオチド媒介性遺伝子サイレンシングテクノロジーである。U1アダプターは、mRNA成熟における重要な工程:3’ポリアデノシン(ポリA)テールの付加に選択的に干渉することにより作用する。ほとんど全てのタンパク質コードmRNAはポリAテールを必要とし、それを付加できなかったことは、結果として、核内での新生mRNAの急速な分解を生じ、それにより、タンパク質産物の発現を阻止する。U1アダプターは、米国特許第9,441,221号;米国特許第9,078,823号;米国特許第8,907,075号;および米国特許第8,343,941号に記載されている(それらの米国特許のそれぞれは、参照によって本明細書に組み入れられる)。
【0016】
U1アダプターオリゴヌクレオチドは、インビボ適用によく適しており、それらが、ヌクレアーゼ抵抗性を向上させるための広範な化学修飾および画像化のためのタグまたは標的細胞による受容体媒介性取り込みのためのリガンドのようなかさ高い基の付着を、サイレンシング活性の損失なしに、受け入れることができるからである。ハンチントン病は、U1AOを用いる処置に特によく適しているものにさせるいくつかの特性を有する。第1に、変異体htt遺伝子の発現を低下させることは、神経変性を遅らせおよび/または停止させるのに有益である。第2に、その疾患は、遺伝子検査によって確実に診断することができる。第3に、その疾患は、通常、成人で発症する。第4に、その疾患は、ゆっくり進行し、十分立証されており、経過が予測可能である。第5に、疾患の進行を追跡して、介入が有益であるかどうかを決定するために、臨床検査と非侵襲性方法の両方が利用できる。第6に、尾状核が、顕著に冒される領域であり、画像化でモニターすることができ、脳室系に投与された介入からの拡散として、脳室の近くに位置する。最後に、尾状核における非常に脆弱な中型有棘神経細胞は、十分、研究されており、修飾型担体による細胞指向性ターゲティングに有用であり得るマーカーを発現する。
【0017】
htt、特に、変異体htt(完全長および/またはトランケート型を含む、伸長したトリヌクレオチドCAGリピートを含むhtt)の発現の調節のための方法および組成物が本明細書に提供される。方法は、U1アダプターオリゴヌクレオチド/分子(一般的には、
図1参照)の使用を含む。それの最も単純な形態において、U1AOは、2つのドメイン:(1)htt遺伝子のプレmRNAと(例えば、その末端エクソンにおいて)塩基対形成するようにデザインされたアニーリングドメイン、および(2)標的プレmRNAの3’末端形成を内因性U1 snRNPを結合することにより阻害するエフェクタードメイン(U1ドメインとも呼ばれる)を有するオリゴヌクレオチドである。理論によって縛られるつもりはないが、U1アダプターは、内因性U1 snRNPを遺伝子特異的プレmRNAに繋ぎ止め、生じた複合体が適切な3’末端形成をブロックする。特に、U1 snRNPは非常に豊富であり(約100万個/哺乳動物細胞核)、他のスプライソソーム構成要素と比較して化学量論的過剰である。したがって、内因性U1 snRNPを排除すること(titrating out)の有害な効果はない。
【0018】
U1AOは、単独でかまたは送達試薬(例えば、脂質ベースのトランスフェクション試薬)と複合してかのいずれかで細胞へ入ることができる。U1AOはまた、核に入ってプレmRNAと結合することができるはずである。実際、この性質は、そのオリゴが核へ入り、プレmRNAと結合する、リボヌクレアーゼH経路を利用するアンチセンスアプローチにおいてのような核酸低分子についてすでに確立されている。さらに、アンチセンスオリゴは核内プレmRNAと結合し、スプライシング因子のアクセスを立体的にブロックし、スプライシングパターンの変化をもたらすことができることが示されている(Ittigら(2004)Nuc.Acids Res、32:346~53頁)。
【0019】
特定の実施形態において、U1アダプター分子のアニーリングドメインは、(例えば、他のプレmRNAを除外して)標的プレmRNA上の標的部位に対して高い親和性および特異性を有するようにデザインされる。特定の実施形態において、アニーリングドメインを短くし過ぎること(これは親和性を危うくするだろうため)と、長くし過ぎること(これは「オフターゲット」効果を促進し、または他の細胞経路を変化させるだろうため)の間でバランスを達成させるべきである。さらに、アニーリングドメインは、エフェクタードメインの機能に(例えば、塩基対形成およびヘアピン形成により)干渉するべきではない。U1AOアニーリングドメインは、長さに関して絶対条件はない。しかしながら、アニーリングドメインは、典型的には、約10ヌクレオチド長から約50ヌクレオチド長まで、より典型的には約10ヌクレオチド長から約30長まで、または約10ヌクレオチド長から約20ヌクレオチド長までである。特定の実施形態において、アニーリングドメインは少なくとも約13ヌクレオチド長または15ヌクレオチド長である。アニーリングドメインは、関心対象となる遺伝子(htt)と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、またはより特に、100%相補的であり得る。一実施形態において、アニーリングドメインは、3’末端エクソン内の標的部位とハイブリダイズし、前記3’末端エクソンは、末端コード領域および3’UTRおよびポリアデニル化シグナル配列(例えば、ポリアデニル化部位まで)を含む。別の実施形態において、標的配列は、ポリ(A)シグナル配列から約500塩基対以内、250塩基対以内、約100塩基対以内、または約50bp以内にある。
【0020】
HTTにおけるCAG(グルタミンをコードする)疾患伸長(典型的には、36リピートより多い)は、HTT遺伝子の第1エクソン内に位置する(The Huntington’s Disease Collaborative Research Group (1993)Cell 72:971~983頁)。変異体アレルの異常なスプライシングに起因する短いエクソン1 HTTポリアデニル化mRNAは、疾患進行に寄与する病原性エクソン1 HTTタンパク質へ翻訳される(Sathasivamら(2013)Proc.Natl.Acad.Sci.、110:2366~2370頁;Gipsonら(2013)RNA Biol.、10:1647~1652頁)。ヒトHTTおよびhttの例示的なアミノ酸およびヌクレオチド配列は、例えば、Gene ID:3064ならびにGenBankアクセッション番号NM_002111.8およびNP_002102.4に見出すことができる。
【0021】
U1AOについてのhtt内の標的部位は、遺伝子サイレンシングのための選択基準を用いて本明細書で同定されている。
図14A~14Lは、U1AOについてのhtt内の標的部位を列挙し、最高スコアリングの標的部位が最初に挙げられている。特定の実施形態において、アニーリングドメインは、
図14A~14Lに提供された標的部位とハイブリダイズする。特定の実施形態において、アニーリングドメインは、
図14A~14Lの行1~278に提供された標的部位とハイブリダイズする。特定の実施形態において、アニーリングドメインは、
図14A~14Lの行1~192に提供された標的部位とハイブリダイズする。特定の実施形態において、アニーリングドメインは、
図14A~14Lの行1~58に提供された標的部位とハイブリダイズする。特定の実施形態において、アニーリングドメインは、
図14A~14Lの行1~26に提供された標的部位とハイブリダイズする。特定の実施形態において、アニーリングドメインは、
図14A~14Lの行1~10に提供された標的部位とハイブリダイズする。特定の実施形態において、アニーリングドメインは、以下から選択される標的部位とハイブリダイズする:
CCCACATGTCATCAGCAGGA(配列番号26);
CAGCAGGATGGGCAAGCTGG(配列番号27);
GAGCAGGTGGACGTGAACCT(配列番号28);
GTGGACGTGAACCTTTTCTG(配列番号29);
TCTGCCTGGTCGCCACAGAC(配列番号30);
GTCTGTGCTTGAGGTGGTTG(配列番号31):
GCTGCTGACTTGTTTACGAA(配列番号32);
GGTGGGAGAGACTGTGAGGC(配列番号33);
TCCTTTCTCCTGATAGTCAC(配列番号34);
GCGGGGATGGCGGTAACCCT(配列番号35);または
GTCTTCCCTTGTCCTCTCGC(配列番号36)。
【0022】
特定の実施形態において、アニーリングドメインは、GTGGACGTGAACCTTTTCTG(配列番号29)とハイブリダイズする。アニーリングドメインは、
図14A~14L内の任意の標的配列または配列番号26~36のいずれか1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、またはより特に、100%相補的であり得る。アニーリングドメインは、
図14A~14L内の任意の標的配列または配列番号26~36のいずれか1つの5’末端および/または3’末端において追加のまたはより少ないヌクレオチドを含み得る。例えば、アニーリングドメインは、(例えば、htt遺伝子の配列由来の)
図14A~14L内の任意の標的配列もしくは配列番号26~36のいずれか1つの5’末端および/もしくは3’末端に付加された少なくとも1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、もしくは最長10ヌクレオチドもしくは20ヌクレオチドを含み得、または
図14A~14L内の任意の標的配列もしくは配列番号26~36のいずれか1つの5’末端および/もしくは3’末端から少なくとも1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、もしくは5ヌクレオチドの欠失を有し得る。
【0023】
特定の実施形態において、U1AOのU1ドメインは、U1 snRNPと高親和性で結合する。特定の実施形態において、U1ドメインは、内因性U1 snRNAのヌクレオチド2~11と相補的である。特定の実施形態において、U1ドメインは、5’-CAGGUAAGUA-3’(配列番号1);5’-CAGGUAAGUAU-3’(配列番号4);5’-GCCAGGUAAGUAU-3’(配列番号5)を含む。特定の実施形態において、U1ドメインは配列5’-CAGGUAAGUA-3’(配列番号1)を含む。特定の実施形態において、U1ドメインは配列5’-GCCAGGUAAGUAU-3’(配列番号5)を含む。別の実施形態において、U1ドメインは、配列番号1、配列番号4、または配列番号5と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、より特に、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも97%同一性を有する。U1ドメインは、配列番号1、配列番号4、または配列番号5の5’側または3’側に追加のヌクレオチドを含み得る。例えば、U1ドメインは、配列番号1、配列番号4、または配列番号5の5’側または3’側に少なくとも1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、または最長10ヌクレオチドもしくは20ヌクレオチドを含み得る。実際、U1 snRNAのステム1への塩基対形成および/または位置1との塩基対形成を含むようにU1ドメインの長さを増加させることは、U1アダプターのU1 snRNPに対する親和性を向上させる。エフェクタードメインは、約8ヌクレオチド長から約30ヌクレオチド長まで、約10ヌクレオチド長から約20ヌクレオチド長まで、または約10ヌクレオチド長から約15ヌクレオチド長までであり得る。例えば、エフェクタードメインは、8ヌクレオチド長、9ヌクレオチド長、10ヌクレオチド長、11ヌクレオチド長、12ヌクレオチド長、13ヌクレオチド長、14ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長、16ヌクレオチド長、17ヌクレオチド長、18ヌクレオチド長、19ヌクレオチド長、または20ヌクレオチド長であり得る。
【0024】
U1ドメインへの点変異の挿入、すなわち、コンセンサス配列の配列番号1、配列番号4、または配列番号5から分岐させることにより、サイレンシングを加減することができる。実際、前記コンセンサス配列を変化させることは、U1 snRNAに対する異なる強度および親和性のU1ドメインを生じ、それにより、異なるレベルのサイレンシングをもたらす。したがって、いったんアニーリングドメインが関心対象となる遺伝子について決定されたならば、関心対象となる遺伝子の異なるレベルのサイレンシングをもたらすために、異なる強度の異なるU1ドメインをアニーリングドメインへ付着させることができる。例えば、gAGGUAAGUA(配列番号3)は、配列番号1より弱くU1 snRNPと結合し、それゆえに、より低いレベルのサイレンシングを生じるだろう。上記で論じられているように、ヌクレオチド類似体を、内因性U1 snRNPに対する親和性を増加させるためにU1ドメインに含むことができる。ヌクレオチド類似体を加えることは、そのヌクレオチド類似体が、置換されたヌクレオチドと同じヌクレオチドを結合するならば、点変異と見なされない可能性がある。
【0025】
U1AOは、ヌクレアーゼに対して抵抗性であるように改変される。特定の実施形態において、U1AOは、少なくとも1個の非天然ヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体を含み得る。ヌクレオチド類似体は、アニーリング親和性、特異性、細胞および生物体における生物学的利用能、細胞内および/もしくは核内輸送、安定性、ならびに/または分解に対する抵抗性を増加させるために用いられる。例えば、オリゴヌクレオチド内のロックド核酸(LNA)塩基の包含が、そのオリゴヌクレオチドのそれの標的部位へのアニーリングの親和性および特異性を増加させることは十分、確立されている(Kauppinenら(2005)Drug Discov.Today Tech.、2:287~290頁;Orumら(2004)Letters Peptide Sci.、10:325~334頁)。RNAiおよびリボヌクレアーゼHに基づいたサイレンシングテクノロジーとは違って、U1AO阻害は、酵素活性を含まない。このため、RNAiおよびリボヌクレアーゼHに基づいたサイレンシングテクノロジーについてのオリゴと比較して、U1AOに用いることができる許容可能なヌクレオチド類似体において有意に高い柔軟性がある。
【0026】
ヌクレオチド類似体には、非限定的に、1つまたはそれ以上のホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホジエステル、ホスホン酸メチル(methyl phosphonate)、ホスホロアミダート、メチルホスホン酸(methylphosphonate)、ホスホトリエステル、ホスホロアリダート(phosphoroaridate)、モルホリノ、アミダート(amidate)、カルバメート、カルボキシメチル、アセトアミダート(acetamidate)、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート(sulfamate)、ホルムアセタル(formacetal)、チオホルムアセタル(thioformacetal)、および/またはアルキルシリル置換を含むリン酸修飾を有するヌクレオチド(例えば、HunzikerおよびLeumann(1995)Nucleic Acid Analogues:Synthesis and Properties、Modern Synthetic Methods、VCH、331~417頁;Mesmaekerら(1994)Novel Backbone Replacements for Oligonucleotides、Carbohydrate Modifications in Antisense Research、ACS、24~39頁参照);修飾糖(例えば、米国特許出願公開第2005/0118605号参照)ならびに2’-O-メチル(2’-O-メチルヌクレオチド)、2’-O-メチルオキシエトキシ、および2’-ハロ(例えば、2’-フルオロ)のような糖修飾を有するヌクレオチド;ならびに、非限定的に、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸、シクロヘキセニル核酸、アンヒドロヘキシトール核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、およびロックド核酸(LNA)(例えば、米国特許出願公開第2005/0118605号参照)のようなヌクレオチド模倣体が挙げられる。他のヌクレオチド修飾もまた、米国特許第5,886,165号;第6,140,482号;第5,693,773号;第5,856,462号;第5,973,136号;第5,929,226号;第6,194,598号;第6,172,209号;第6,175,004号;第6,166,197号;第6,166,188号;第6,160,152号;第6,160,109号;第6,153,737号;第6,147,200号;第6,146,829号;第6,127,533号;および第6,124,445号に提供されている。特定の実施形態において、U1AOは、少なくとも1個のロックド核酸を含む。特定の実施形態において、アニーリングドメインは、少なくとも1個のロックド核酸を含む(場合により、エフェクタードメインがロックド核酸を含有しない場合)。特定の実施形態において、U1AO、特にアニーリングドメインは、2~4ヌクレオチド、特に3ヌクレオチドだけ間隔をあけて、ロックド核酸を有する。
【0027】
特に、エフェクタードメインがmRNAの標的部位またはその標的部位とすぐに隣接する部位に対して有意な親和性を有するU1アダプターをデザインしないように注意するべきである。言い換えれば、標的部位は、エフェクタードメインの標的プレmRNA、特にアニーリング部位の上流に隣接する部分との塩基対形成の可能性を最小限にするように選択されるべきである。
【0028】
U1AOのサイレンシング能力を増加させるために、U1AOはまた、単一のU1アダプター内のヘアピンの形成および/または2つもしくはそれ以上のU1アダプター間のホモダイマーもしくはホモポリマーの形成を防止するために、低い自己アニーリングを有するようにデザインされるべきである。
【0029】
U1AOのアニーリングドメインおよびエフェクタードメインは、エフェクタードメインがアニーリングドメインの5’末端および/または3’末端にあるように連結される。さらに、アニーリングドメインおよびエフェクタードメインは、リンカードメインを介して作動可能に連結される。リンカードメインは、例えば、1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、最長15ヌクレオチド、最長20ヌクレオチド、または最長25ヌクレオチドを含み得る。
【0030】
U1AOは、リボヌクレオチドおよび/またはデオキシヌクレオチドを含み得る。本明細書に提供された配列に関して、ウラシル塩基およびチミジン塩基は交換される場合がある。特定の実施形態において、U1AOは、2’-O-メチルヌクレオチド、2’-O-メチルオキシエトキシヌクレオチド、2’-ハロ(例えば、2’-フルオロ)、および/またはロックド核酸を含む。特定の実施形態において、U1AOはホスホロチオエートを含む。
【0031】
特定の実施形態において、U1AOは、
図14A~14Lに提供されたU1AO(特に、RNAにおける)を含む。特定の実施形態において、U1AOは、
図14A~14Lの行1~278に提供されたU1AO配列を含む。特定の実施形態において、U1AOは、
図14A~14Lの行1~192に提供されたU1AO配列を含む。特定の実施形態において、U1AOは、
図14A~14Lの行1~58に提供されたU1AO配列を含む。特定の実施形態において、U1AOは、
図14A~14Lの行1~26に提供されたU1AO配列を含む。特定の実施形態において、U1AOは、
図14A~14Lの行1~10に提供されたU1AO配列を含む。特定の実施形態において、U1AOは以下を含む:
UCCUGCUGAUGACAUGUGGGGCCAGGUAAGUAU(配列番号8);
CCAGCUUGCCCAUCCUGCUGGCCAGGUAAGUAU(配列番号37);
AGGUUCACGUCCACCUGCUCGCCAGGUAAGUAU(配列番号38);
CAGAAAAGGUUCACGUCCACGCCAGGUAAGUAU(配列番号9);
GUCUGUGGCGACCAGGCAGAGCCAGGUAAGUAU(配列番号39);
CAACCACCUCAAGCACAGACGCCAGGUAAGUAU(配列番号10):
UUCGUAAACAAGUCAGCAGCGCCAGGUAAGUAU(配列番号11);
GCCUCACAGUCUCUCCCACCGCCAGGUAAGUAU(配列番号12);
GUGACUAUCAGGAGAAAGGAGCCAGGUAAGUAU(配列番号13);
CAGAAAAGGTUCACGUCCACGCCAGGUAAGUAU(配列番号14);
AGGGUTACCGCCATCCCCGCGCCAGGUAAGUAU(配列番号15);または
GCGAGAGGACAAGGGAAGACGCCAGGUAAGUAU(配列番号16)。
【0032】
特定の実施形態において、U1AOはCAGAAAAGGUUCACGUCCACGCCAGGUAAGUAU(配列番号9)を含む。別の実施形態において、U1AOは、上記の配列のまたは
図14A~14Lにおける1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、より特に少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%またはそれ以上の同一性を有する。本明細書に提供された配列に関して、ウラシル塩基およびチミジン塩基は交換される場合がある。特定の実施形態において、U1AOは、少なくとも1個または全部のヌクレオチド類似体を含む。特定の実施形態において、U1AOは、2’-O-メチルヌクレオチド、2’-O-メチルオキシエトキシヌクレオチド、2’-ハロ(例えば、2’-フルオロ)、および/またはロックド核酸を含む。特定の実施形態において、U1AOはホスホロチオエートを含む。特定の実施形態において、U1AOは、実施例に示されているように修飾される。
【0033】
本発明の別の実施形態において、関心対象となる遺伝子(htt)に方向づけられた1つより多いU1AOは、発現を調節するために用いられる。同じプレmRNAにおける異なる配列にターゲット(アニール)される複数のU1AOは阻害増強をもたらすことができる。本発明の組成物は、htt遺伝子(htt遺伝子内の異なる標的)に方向づけられた1つより多いU1AOを含み得る。
【0034】
さらに別の実施形態において、U1AOは、関心対象となる遺伝子の発現を調節する他の方法と組み合わせることができる。例えば、U1AOは、阻害増強を与えるために、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボヌクレアーゼHに基づいた方法、RNAi、miRNA、およびモルホリノに基づいた方法のような他の阻害性核酸分子と協調して用いられる。U1AOがこれらの他のアプローチとは異なる機構を利用する限り、組合せ使用は、単一の阻害剤単独の使用と比較して遺伝子発現の阻害の増加を生じるだろう。実際、RNAiおよびある特定のアンチセンスアプローチは一般的にmRNAの先在するプールの細胞質内安定性または翻訳可能性をターゲットするが、U1AOは、核における生合成工程をターゲットし得る。
【0035】
本発明の別の態様において、U1アダプターのエフェクタードメインは、遺伝子発現を制御するいくつかの核内因子の任意の1つの結合部位と置き換えることができる。例えば、ポリピリミジントラクト結合タンパク質(PTB)の結合部位は短く、PTBは、ポリ(A)部位を阻害することが知られている。したがって、エフェクタードメインを高親和性PTB結合部位と置き換えることもまた、標的遺伝子の発現をサイレンスさせるだろう。
【0036】
上記の基準U1 snRNAとは配列の点で異なるU1 snRNA遺伝子がある。まとめて、これらのU1 snRNA遺伝子は、U1バリアント遺伝子と呼ぶことができる。いくつかのU1バリアント遺伝子は、GenBankアクセッション番号L78810、AC025268、AC025264、およびAL592207、ならびにKyriakopoulouら(RNA(2006)12:1603~11頁)(ヒトゲノムにおける200個近くの可能性のあるU1 snRNA様遺伝子を同定した)に記載されている。これらのU1バリアントの一部は、基準U1 snRNAとは異なる5’末端配列を有するため、1つの真実味のある機能は、プレmRNAスプライシング中にオルタナティブスプライスシグナルを認識することである。したがって、本発明のU1AOのU1ドメインは、U1ドメインが本明細書に記載されているように基準U1 snRNAとハイブリダイズするようにデザインされたのと同じように、U1バリアントsnRNAの5’末端とハイブリダイズするようにデザインされる。その後、U1バリアントとハイブリダイズするU1AOは、関心対象となる遺伝子の発現を調節するために用いられる。
【0037】
他の既存のサイレンシングテクノロジーより優った、U1アダプターテクノロジーの多くの利点がある。これらの利点のいくつかは、以下の通りである。第一に、U1AOは、2つの独立したドメイン:(1)アニーリング(すなわち、ターゲティング)活性および(2)阻害活性へ分かれ、それにより、阻害活性に影響することなくアニーリングを最適化することが可能になり、逆もまた同様である。第二に、他のテクノロジーと比較して、同じ遺伝子をターゲットする2つのU1AOの使用は、相加的、さらに相乗的阻害を与える。第三に、U1AOは、新規の阻害機構を有する。したがって、他の方法と組み合わせて用いられる場合、適合性がある。第四に、U1AOは、ポリ(A)テール付加(3’末端プロセシングとも呼ばれる)という、重大な意味をもつ、ほぼ普遍的なプレmRNA成熟工程を阻害することにより、mRNAの生合成を阻害する。
【0038】
本発明の組成物は、本発明の少なくとも1つのU1AOおよび少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む。組成物は、関心対象となる遺伝子(htt)の発現を阻害する少なくとも1つの他の作用物質をさらに含み得る。例えば、組成物は、関心対象となる遺伝子(htt)に対して方向づけられた少なくとも1つのsiRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドをさらに含み得る。
【0039】
本発明のU1AOは、細胞、または動物およびヒトを含む生物体へ、裸のポリヌクレオチドとして、単独で投与される。U1AOは、細胞によるそれの取り込みを増強する作用物質と共に投与される。特定の実施形態において、U1AOは、リポソーム、ナノ粒子、またはポリマー組成物内に含有される。
【0040】
別の実施形態において、U1AOは、プラスミドまたはウイルスベクターのような発現ベクターにおいて、細胞、またはヒトを含む動物へ送達される。例えば、U1AOは、プラスミドまたはウイルスのようなベクターから発現することができる。プラスミドまたはウイルスからのそのような短いRNAの発現は、日常的なことになっており、U1AOを発現するように容易に適応させることができる。RNA分子の発現のための発現ベクターは、構成的または制御性であり得る強いプロモーターを利用し得る。そのようなプロモーターは当技術分野において周知されており、それには、RNAポリメラーゼIIプロモーター、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、ならびにRNAポリメラーゼIIIプロモーターU6およびH1が挙げられるが、それらに限定されない。ウイルス媒介性送達は、非限定的に、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、レンチウイルス、ポリオウイルス、およびヘルペスウイルスに基づいたベクターの使用を含む。
【0041】
本発明の薬学的組成物は、任意の適切な経路により、例えば、注射により(例えば、静脈内に、脳室内に、および筋肉内に)、経口、肺、経鼻、直腸、または他の投与様式により、投与することができる。組成物は、httの下方制御を通して処置することができるハンチントン病の処置のために投与することができる。組成物は、インビトロ、インビボ、および/またはエクスビボで用いられる。エクスビボ使用に関して、本発明のU1AO(またはそれを含む組成物)は、自己細胞に送達され(場合により、その細胞を対象から得る工程を含む)、その後、対象に再導入される。本発明の組成物、U1AO、および/またはベクターはまた、キットに含まれる。
【0042】
本発明はまた、対象においてハンチントン病を処置し、阻害し(遅らせまたは低下させ)、および/または予防する方法を包含する。特定の実施形態において、方法は、治療有効量の本発明の少なくとも1つの組成物のそれを必要としている対象(例えば、動物またはヒト)への投与を含む。特定の実施形態において、組成物は、本発明の少なくとも1つのU1AOおよび少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む。特定の実施形態において、U1AOは、htt、特に、完全長および/またはトランケート型であるhtt(例えば、変異体htt)に方向づけられる。
【0043】
本方法は、標的htt遺伝子の発現を阻害する少なくとも1つの他の作用物質の投与をさらに含み得る。例えば、方法は、htt遺伝子に対して方向づけられた少なくとも1つのsiRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与をさらに含み得る。方法は、少なくとも1つの他の治療剤(例えば、ハンチントン病についての症状軽減治療剤(例えば、テトラベナジン(Xenazine(登録商標))またはデューテトラベナジン(Austedo(登録商標)))の投与も含み得る。特定の実施形態において、治療剤は、U1AOに(例えば、直接的にまたはリンカーを介して;例えば、3’末端および/または5’末端において)コンジュゲートされる。治療剤は、別々の組成物(例えば、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む)において、または同じ組成物において、投与される。治療剤は、U1AOと同時におよび/または連続的に投与される。
【0044】
上記で述べられているように、本発明のU1AOは、単独で(裸のポリヌクレオチドとして)投与され、またはそれの細胞による取り込みを増強する作用物質と共に投与される。特定の実施形態において、U1AOは、ミセル、リポソーム、ナノ粒子、またはポリマー組成物のような送達ビヒクル内に含有される。特定の実施形態において、U1AOは、デンドリマー、特に、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーおよびポリプロピレンイミン(PPI)デンドリマーのようなカチオンデンドリマー(例えば、第2世代、第3世代、第4世代、または第5世代)と複合体形成する(例えば、それらの内部に含有されまたはそれによりカプセル化される)。特定の実施形態において、U1AOは、PPI-G2と複合体形成する。
【0045】
特定の実施形態において、U1AOは、特定の細胞型(例えば、神経細胞)へターゲットされる。特定の実施形態において、U1AOは、少なくとも1つのターゲティング部分と(例えば、直接的にまたはリンカーを介して)共有結合性に連結される。ターゲティング部分は、5’末端、3’末端、もしくは両方の末端と、または内部ヌクレオチドと作動可能に連結される。特定の実施形態において、1つまたはそれ以上のターゲティング部分は、U1AOの1つの末端に(例えば、単一のリンカーを通して)コンジュゲートされる。特定の実施形態において、U1AOを含む複合体(例えば、デンドリマー、ミセル、リポソーム、ナノ粒子、またはポリマー組成物)は、少なくとも1つのターゲティング部分と(例えば、直接的にまたはリンカーを介して)共有結合性に連結される。
【0046】
一般的に、リンカーは、U1AOまたは複合体へのターゲティング部分のような、2つの化合物を共有結合性に付着させる、共有結合または原子鎖を含む化学的部分である。リンカーは、ターゲティング部分およびU1AOまたは複合体(ビヒクル)の任意の合成可能な位置に連結することができる。特定の実施形態において、リンカーは、ターゲティング部分およびU1AOまたは複合体を、アミン基および/またはスルフィドリル/チオール基、特にスルフィドリル/チオール基を介して接続させる。例えば、U1AOは、1つまたはそれ以上のアミノ基またはチオ基で(例えば、5’末端において)誘導体化される。特定の実施形態において、リンカーは、ターゲティング部分またはU1AOの活性をブロックすることを回避する位置で付着される。例示的なリンカーは、少なくとも1つの、場合により置換型;飽和型もしくは不飽和型;直鎖状、分枝状、もしくは環状アルキル基、または場合により置換型アリル基を含み得る。リンカーはまた、ポリペプチド(例えば、約1アミノ酸から約20アミノ酸もしくはそれ以上まで、または1~約5アミノ酸)であり得る。リンカーは、生理的環境または条件下で生分解性(切断可能(例えば、ジスルフィド結合を含む))であり得る。特定の実施形態において、リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)を(単独でまたは別のリンカーと組み合わせて)含む。特定の実施形態において、リンカーは、LC-SPDP(スクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサン酸)のようなSPDP(N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオン酸)リンカー、またはLC-SMCC(スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロン酸)のようなSMCC(スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸)リンカーである。リンカーはまた、非分解性(非切断性)であり得、生理的環境または条件下で、実質的に切断することができず、または全く切断することができない、共有結合または任意の他の化学構造であり得る。
【0047】
本発明のターゲティング部分は、優先的に、関連組織(例えば、神経)または器官(例えば、脳)と結合する。特定の実施形態において、ターゲティング部分は、他の細胞と比較して、標的細胞上に特異的に(例えば、唯一)発現したマーカーまたは標的細胞上で上方制御されたマーカーと特異的に結合する。特定の実施形態において、ターゲティング部分は、標的細胞上の表面タンパク質、または他の細胞、組織、もしくは器官より標的細胞上でより高いレベル(またはより高い密度)で発現した表面タンパク質に免疫学的に特異的な抗体または抗体断片である。抗体または抗体断片は治療用抗体(例えば、それ自体、治療効果を有する)であり得る。特定の実施形態において、ターゲティング部分は、標的細胞上の細胞表面受容体のリガンドまたはその結合断片である。特定の実施形態において、ターゲティング部分はアプタマーである。
【0048】
本発明のU1AOはさらに、他の望ましい化合物とコンジュゲートされる。例えば、U1AOは、検出可能な作用物質、治療用物質(例えば、モノクローナル抗体、ペプチド、タンパク質、阻害性核酸分子、小分子、化学療法剤など)、担体タンパク質、ならびに生物学的利用能、安定性、および/または吸収を向上させる作用物質(例えば、PEG)に(直接的にまたは上記のようなリンカーを介して)さらにコンジュゲートされる。追加の化合物は、U1AO(またはコンジュゲート)の任意の合成可能な位置へ(例えば、U1アダプター(例えば、いずれかの末端)またはターゲティング部分へ)付着し得る。あるいは、ターゲティング部分およびU1AOは、それぞれ個々に、追加の化合物(例えば、担体タンパク質)に付着する(そのようなものとして、追加の化合物は、U1AOとターゲティング部分との間のリンカーとしての役割を果たすと考えることができる)。特定の実施形態において、U1AOは、一方の末端においてターゲティング部分(例えば、神経細胞ターゲティング部分)に、および場合により、他方の末端で治療剤にコンジュゲートされる。優先的には、追加の化合物の付着は、U1AOの活性またはターゲティング部分に有意には影響しない。検出可能な作用物質は、直接的にまたは間接的に、特に直接的に、アッセイされる任意の化合物またはタンパク質であり得る。検出可能な作用物質には、例えば、化学発光、生物発光、および/または蛍光の化合物またはタンパク質、画像化剤、造影剤、放射性核種、常磁性または超常磁性イオン、同位元素(例えば、放射性同位元素(例えば、3H(トリチウム)および14C)または安定同位元素(例えば、2H(ジュウテリウム)、11C、13C、17O、および18O)、光学的作用物質、ならびに蛍光剤が挙げられる。
【0049】
担体タンパク質には、非限定的に、血清アルブミン(例えば、ウシ、ヒト)、オボアルブミン、およびキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)が挙げられる。特定の実施形態において、担体タンパク質はヒト血清アルブミンである。担体タンパク質(および他のタンパク質またはペプチド)は、U1AO(またはコンジュゲート)に任意の合成可能な位置でコンジュゲートされる。例えば、リンカー(例えば、LC-SPDP)は、担体タンパク質のリジン上に見出される遊離アミノ基に付着し得、その後、U1AOおよびターゲティング部分がリンカーにコンジュゲートされる。いかなる未反応リンカーも、システインでのブロッキングにより不活性化される。
【0050】
本発明のU1AOは、U1AOを所望の細胞型へターゲットし、および/またはU1AOの細胞取り込みを促進する(例えば、細胞透過性部分)化合物(例えば、抗体、ペプチド、タンパク質、核酸分子、小分子など)に(例えば、直接的にまたはリンカーを介して)コンジュゲートされる。ターゲティング部分は、5’末端、3’末端、もしくは両方、または内部のヌクレオチドと作動可能に連結される。特定の実施形態において、ターゲティング部分および/または細胞透過性部分は、5’末端および/または3’末端にコンジュゲートされる。特定の実施形態において、ターゲティング部分および/または細胞透過性部分は、5’末端にコンジュゲートされる。特定の実施形態において、U1AOは、ターゲティング部分と細胞透過性部分の両方にコンジュゲートされる。本明細書で用いられる場合、用語「細胞透過性物質」または「細胞透過性部分」は、細胞外空間から細胞内への化合物の移動を媒介する化合物または官能基を指す。特定の実施形態において、U1AOは、アプタマーにコンジュゲートされる。アプタマーは、所望の細胞型の表面化合物またはタンパク質(例えば、受容体)へターゲットされる(例えば、表面化合物またはタンパク質は、ターゲットされるべき細胞型の表面上に優先的にまたはもっぱら、発現し得る)。特定の実施形態において、アプタマーは、細胞透過性アプタマー(例えば、C1またはOtter(例えば、Burke,D.H.(2012)Mol.Ther.、20:251~253参照))である。特定の実施形態において、U1AOは、細胞透過性ペプチド(例えば、Tatペプチド(例えば、YGRKKKRRQRRRPPQ;配列番号6(場合により、N末端上でアセチル化されている))、ペネトラチン(Penetratin)(例えば、RQIKIWFQNRRMKWKKGG;配列番号7)、短い両親媒性ペプチド(例えば、PepファミリーおよびMPGファミリー由来)、オリゴアルギニン(例えば、4~12個連続したアルギニン)、オリゴリジン(例えば、4~12個連続したリジン))にコンジュゲートされる。特定の実施形態において、U1AOは、ビオチン(ターゲティング抗体の一部として)もしくは無極性蛍光基(Cy3またはCy5のようなシアニン)のような小分子、または他の細胞透過性物質にコンジュゲートされる。
【0051】
特定の実施形態において、U1AOの3’末端および5’末端の少なくとも1つは、遊離SH基を含む。
【0052】
本明細書に記載されたU1AO(それを含むビヒクルを含む)は、一般的に、薬学的調製物として患者へ投与される。本明細書で用いられる場合、用語「患者」および「対象」は、ヒトおよび動物を含む。これらのU1アダプターは、医師の指導の下、治療的に用いられる。
【0053】
本発明のU1AOを含む組成物は、好都合には、任意の薬学的に許容される担体と共に、投与のために製剤化される。例えば、U1AOは、水、緩衝食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、およびその他同種類のもの)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、油、界面活性剤、懸濁剤、またはそれらの適切な混合物のような許容される媒体と共に製剤化される。選択された媒体におけるU1AOの濃度は様々であり得、媒体は、薬学的調製物の所望の投与経路に基づいて選択される。任意の通常の媒体または作用物質が、投与されるべきU1AOと適合しない場合を除いて、薬学的調製物におけるそれの使用が企図される。
【0054】
特定の患者への投与に適している本発明によるU1AOの用量および投薬計画は、患者の年齢、性別、体重、全身の健康状態、ならびにU1AOが投与されることになっている特定の状態およびその重症度を考慮して、医師により決定される。医師はまた、投与経路、薬学的担体、およびU1AOの生物活性も考慮に入れる場合がある。
【0055】
適切な薬学的調製物の選択はまた、選択された投与様式に依存する。例えば、本発明のU1AOは、所望の部位(例えば、脳)への直接的注射により投与される。この場合、薬学的調製物は、注射の部位と適合する媒体中に分散したU1AOを含む。本発明のU1AOは、任意の方法により投与される。例えば、本発明のU1AOは、非限定的に、非経口で、皮下に、経口で、局所的に、肺内に、直腸性に、膣内に、静脈内に、脳室内に、頭蓋内に、腹腔内に、髄腔内に、脳内に、硬膜外に、筋肉内に、皮内に、または頚動脈内に、投与することができる。特定の実施形態において、投与方法は、(例えば、脳への)直接的注射により、または脳室内による。注射用の薬学的調製物は当技術分野において知られている。注射がU1AOを投与するための方法として選択される場合には、その分子または細胞の十分な量がそれらの標的細胞に達して、生物学的効果を発揮することを保証するように手段を講じるべきである。
【0056】
薬学的に許容される担体と完全混和して活性成分として本発明のU1AOを含有する薬学的組成物は、通常の薬学的配合技術に従って調製することができる。担体は、投与、例えば、静脈内、経口、直接的注射、頭蓋内、脳室内、および硝子体内の投与に望まれる調製の形態に依存して幅広い種類の形をとり得る。
【0057】
本発明の薬学的調製物は、投与の簡便さおよび投薬の均一性のために単位剤形で製剤化される。本明細書で用いられる場合、単位剤形は、処置を受ける患者に適切な薬学的調製物の物理的に分離した単位を指す。各投薬は、選択された薬学的担体と共同して所望の効果を生じるように計算された活性成分の量を含有するべきである。適切な単位投薬量を決定する手順は当業者に周知されている。
【0058】
単位投薬量は、患者の体重に基づいて、比例的に増加または減少される。特定の病理学的状態の軽減のための適切な濃度は、当技術分野において知られているように、投薬濃度曲線計算によって決定される。
【0059】
本発明によれば、U1AOの投与についての適切な単位投薬量は、動物モデルにおける分子または細胞の毒性を評価することにより決定される。薬学的調製物におけるU1AOの様々な濃度が、マウスに投与され、最小および最大投薬量が、処置の結果として観察された有益な結果および副作用に基づいて決定される。適切な単位投薬量はまた、他の標準薬と組み合わせたU1AO処置の効力を評価することにより決定される場合がある。U1AOの単位投薬量は、個々にまたは各処置と組み合わせて、検出された効果に従って決定される。
【0060】
U1AOを含む薬学的調製物は、病理学的症状が低下または軽減するまで、適切な間隔で、例えば、1日少なくとも2回またはそれ以上で、投与され、その後、投薬量は、維持レベルへ低減される。特定の場合における適切な間隔は、通常、患者の状態に依存する。
【0061】
定義
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかに他に規定しない限り、複数の指示対象を含む。
【0062】
本明細書で用いられる場合、「核酸」または「核酸分子」は、一本鎖かまたは二本鎖のいずれかの任意のDNAまたはRNA分子、および一本鎖の場合には、直鎖状かまたは環状のいずれかでのそれの相補配列の分子を指す。核酸分子を論じることにおいて、特定の核酸分子の配列または構造は、5’から3’方向で配列を提供する標準の慣習に従って本明細書に記載される。本発明の核酸に関して、用語「単離された核酸」が時々、用いられる。この用語は、DNAに適用される場合、それの起源である生物体の天然に存在するゲノムにおいてそれがすぐ隣接している配列から分離されているDNA分子を指す。例えば、「単離された核酸」は、プラスミドもしくはウイルスベクターのようなベクターへ挿入された、または原核細胞もしくは真核細胞もしくは宿主生物体のゲノムDNAへ組み込まれたDNA分子を含み得る。
【0063】
RNAに適用される場合、用語「単離された核酸」は、上記で定義されているような単離されたDNA分子によりコードされるRNA分子を指し得る。あるいは、その用語は、それがそれの天然状態で(すなわち、細胞または組織において)関連する他の核酸から十分、分離されているRNA分子を指し得る。単離された核酸(DNAかRNAのいずれか)はさらに、生物学的または合成的手段により直接的に産生され、かつそれの産生中に存在する他の構成要素から分離された分子を表し得る。
【0064】
「ベクター」は、別の遺伝学的配列または因子(DNAかまたはRNAのいずれか)が付着し得るプラスミド、コスミド、バクミド、ファージ、またはウイルスのような遺伝因子である。ベクターは、付着した配列または因子の複製をもたらすためのレプリコンであり得る。
【0065】
「発現オペロン」は、宿主細胞または生物体において核酸またはポリペプチドコード配列の発現を促進する、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(例えば、ATGまたはAUGコドン)、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、およびその他同種類のもののような転写および翻訳調節配列を有し得る核酸セグメントを指す。「発現ベクター」は、宿主細胞または生物体において核酸またはポリペプチドコード配列の発現を促進するベクターである。
【0066】
本明細書で用いられる場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、本発明の核酸配列、プライマー、およびプローブを指し、2個以上、好ましくは3個より多いリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドで構成される核酸分子として定義される。オリゴヌクレオチドの正確なサイズは、様々な因子、ならびにそのオリゴヌクレオチドの特定の適用および使用に依存する。
【0067】
語句「低分子干渉RNA(siRNA)」は、短い(典型的には、30ヌクレオチド長未満、より典型的には約21ヌクレオチド長から約25ヌクレオチド長の間)二本鎖RNA分子を指す。典型的には、siRNAは、そのsiRNAがターゲットする遺伝子の発現を調節する。用語「低分子ヘアピン型RNA」または「shRNA」は、siRNA、および少なくとも1ヌクレオチド、典型的には1~10ヌクレオチドの一本鎖ループ部分を含むヘアピン構造へ折り畳まれた単一のRNA分子であるsiRNA前駆体を指す。
【0068】
用語「RNA干渉」または「RNAi」は、一般的に、標的分子(例えば、標的遺伝子、タンパク質、またはRNA)が、二本鎖RNAによって下方制御される配列特異的または選択的プロセスを指す。典型的にはRNAi活性を駆動させる二本鎖RNA構造は、siRNA、shRNA、マイクロRNA、およびRNA干渉により標的転写産物の発現を阻害する低分子RNA種を生じるようにプロセシングされる他の二本鎖構造である。
【0069】
用語「アンチセンス」は、RNAにおける標的配列とワトソン・クリック塩基対形成によりハイブリダイズして、標的配列、典型的にはmRNAとのRNA:オリゴヌクレオチドヘテロ二重鎖を形成する配列を有するオリゴヌクレオチドを指す。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的配列との正確な配列相補性または極めて近い相補性を有し得る。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNAの翻訳をブロックもしくは阻害し得、および/またはmRNAのプロセシングを改変して、mRNAのスプライスバリアントを生じ得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、典型的には、約5ヌクレオチド長から約100ヌクレオチド長の間、より典型的には、約7ヌクレオチド長から約50ヌクレオチド長の間、さらにより典型的には約10ヌクレオチド長から約30ヌクレオチド長の間である。
【0070】
用語「実質的に純粋な」は、所定の材料(例えば、核酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質など)の少なくとも50~60重量%を含む調製物を指す。より好ましくは、調製物は、所定の化合物の少なくとも75重量%、最も好ましくは90~95重量%を含む。純度は、所定の化合物について適切な方法(例えば、クロマトグラフ的方法、アガロースまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC分析、およびその他同種類のもの)により測定される。
【0071】
用語「単離された」は、それが天然で関連しているだろう他の化合物から十分分離されている化合物または複合体を指し得る。「単離された」は、他の化合物もしくは材料との人工的もしくは合成的混合物、または基本的な活性もしくはアッセイの保証に干渉しない、例えば、不完全な精製もしくは安定剤の添加により存在し得る不純物の存在を排除することを意図するものではない。
【0072】
用語「遺伝子」は、エクソン配列と(場合により)イントロン配列の両方を含むポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む核酸を指す。核酸はまた、場合により、プロモーターまたはエンハンサー配列のような非コード配列を含み得る。用語「イントロン」は、タンパク質へ翻訳されず、かつ一般的にエクソン間に見出される、所定の遺伝子に存在するDNA配列を指す。
【0073】
本明細書で用いられる場合、用語「アプタマー」は、ワトソン・クリック塩基対形成以外の相互作用を通して、タンパク質のような標的と特異的に結合する核酸を指す。特定の実施形態において、アプタマーは、試料中の他の分子は一般的に除外して、1つまたはそれ以上の標的(例えば、タンパク質またはタンパク質複合体)と特異的に結合する。アプタマーは、RNA、DNA、修飾核酸、またはそれらの混合物のような核酸であり得る。アプタマーはまた、直鎖型または環状型での核酸であり得、一本鎖または二本鎖であり得る。アプタマーは、少なくとも5ヌクレオチド長、10ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長、35ヌクレオチド長、40ヌクレオチド長またはそれ以上であるオリゴヌクレオチドを含み得る。アプタマーは、40ヌクレオチド長まで、60ヌクレオチド長まで、80ヌクレオチド長まで、100ヌクレオチド長まで、150ヌクレオチド長まで、200ヌクレオチド長またはそれ以上までである配列を含み得る。アプタマーは、約5ヌクレオチド長から約150ヌクレオチド長まで、約10ヌクレオチド長から約100ヌクレオチド長まで、または約20ヌクレオチド長から約75ヌクレオチド長までであり得る。アプタマーは本明細書では、核酸分子(例えば、オリゴヌクレオチド)アプタマーとして論じられているが、ペプチドアプタマーのようなアプタマー等価物もまた、核酸アプタマーの代わりに用いられる。
【0074】
本明細書で用いられる場合、語句「作動可能に連結された」は、別の核酸配列との機能的関係へ配置された核酸配列を指し得る。作動可能に連結される核酸配列の例には、非限定的に、プロモーター、転写ターミネーター、エンハンサー、またはアクチベーター、ならびに転写され、および適切な場合、翻訳されたとき、タンパク質、リボザイム、またはRNA分子のような機能性産物を生じるだろう異種性遺伝子が挙げられる。
【0075】
「薬学的に許容される」は、連邦政府または州政府の規制機関による認可を示す。「薬学的に許容される」作用物質は、動物、より特にヒトにおける使用として、米国薬局方または他の一般的に認められた薬局方に列挙されている。
【0076】
「担体」は、本発明の活性物質が一緒に投与される、例えば、希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、賦形剤、補助剤、またはビヒクルを指す。そのような薬学的担体は、水、ならびに石油、動物、植物、または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、ミネラルオイル、ゴマ油、およびその他同種類のものを含む油のような無菌液体であり得る。水または食塩水溶液、ならびにデキストロース水溶液およびグリセリン水溶液が担体として用いられる。適切な薬学的担体は、例えば、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0077】
「抗体」または「抗体分子」は、特定の抗原と結合する、抗体およびその断片(例えば、免疫学的特異性断片)を含む任意の免疫グロブリンである。本明細書で用いられる場合、抗体または抗体分子は、無傷の免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分の融合体を企図する。その用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、単一ドメイン(Dab)抗体、および二重特異性抗体を含む。本明細書で用いられる場合、抗体または抗体分子は、組換え的に作製された、無傷の免疫グロブリン分子、ならびに、非限定的にFab、Fab’、F(ab’)2、F(v)、scFv、scFv2、およびscFv-Fcのような、免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分を企図する。
【0078】
抗体に関して、用語「免疫学的特異性の」は、関心対象となるタンパク質または化合物の1つまたはそれ以上のエピトープと結合するが、抗原性生物学的分子の混合集団を含有する試料において他の分子を実質的に認識および結合することはない抗体を指す。
【0079】
用語「処置する」は、患者の疾患を緩和し、軽減し、および/またはその進行を遅くする化合物の能力を指す。言い換えれば、用語「処置する」は、疾患の進行を阻害しおよび/または逆転させることを指す。
【0080】
以下の実施例は、本発明を実施する例証的な方法を記載し、本発明の範囲を限定することを決して意図するものではない。
【実施例】
【0081】
HD9197細胞(Coriel Institute GM09197;21/181 CAGリピート、線維芽細胞 6歳雄)に、Lipofectamine(商標)RNAiMAXトランスフェクション試薬(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いて、完全長ヒトハンチンチン(HTT)に対して方向づけられた、U1アダプターオリゴヌクレオチド(U1AO)の一群およびsiRNA(下記参照)をトランスフェクションした。ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT1)に対して標準化されたヒトHTT mRNAのパーセント変化を決定した。
図2に見られるように、ヒトHTT完全長mRNA-2(hHTT-FL-2)U1AOは、いかなるsiRNAに関して観察されたサイレンシングよりも有意に高い、最高サイレンシング活性を有した。特に、さらなる実験はまた、hHTT-FL-1 U1AOが30%未満までサイレンスさせ得ることを示した。類似した結果が、DU145(ヒト前立腺癌細胞株)およびMia PaCa2細胞(ヒト膵癌細胞株)に関して得られた。HTTのトランケート型バージョン(オルタナティブスプライシング型またはイントロン1トランケート型とも呼ばれる)に関して、hHTT-TR-1 U1AOは、最も高いサイレンシング活性を有することが決定された。
【0082】
本明細書に記載された実験に用いられたU1AOおよびsiRNAは下記である:
U1AO:
hHTT-fl-11:UCCUGCUGAUGACAUGUGGGGCCAGGUAAGUAU(配列番号8)、ただし各ヌクレオチドが2’-O-メチルである;
hHTT-fl-21:CAGAAAAGGUUCACGUCCACGCCAGGUAAGUAU(配列番号9)、ただし各ヌクレオチドが2’-O-メチルである;
hHTT-fl-31:CAACCACCUCAAGCACAGACGCCAGGUAAGUAU(配列番号10)、ただし各ヌクレオチドが2’-O-メチルである;
hHTT-fl-41:UUCGUAAACAAGUCAGCAGCGCCAGGUAAGUAU(配列番号11)、ただし各ヌクレオチドが2’-O-メチルである;
hHTT-fl-51:GCCUCACAGUCUCUCCCACCGCCAGGUAAGUAU(配列番号12)、ただし各ヌクレオチドが2’-O-メチルである;
hHTT-fl-61:GUGACUAUCAGGAGAAAGGAGCCAGGUAAGUAU(配列番号13)、ただし各ヌクレオチドが2’-O-メチルである;
hHTT-FL-2:mC+AmGmAmA+AmAmGmG+TmUmCmA+CmGmUmC+CmAmCmGmCmCmAmGmGmUmAmAmGmUmAmU(配列番号14)、ただし、m=2’-O-メチルおよび+=ロックド核酸;
hHTT-TR-1:mA+GmGmGmU+TmAmCmC+GmCmCmA+TmCmCmC+CmGmCmGmCmCmAmGmGmUmAmAmGmUmAmU(配列番号15)、ただし、m=2’-O-メチルおよび+=ロックド核酸;
hHTT-TR-2:mGmC+GmAmGmA+GmGmAmC+AmAmGmG+GmAmAmG+AmCmGmCmCmAmGmGmUmAmAmGmUmAmU(配列番号16)、ただし、m=2’-O-メチルおよび+=ロックド核酸;
NC-a(対照):mAAmCmGmGmUmUmAmGmGmCmAmCmCmTmCmUmUmGmAmGmCmCmAmGmGmUmAmAmGmUmAmU(配列番号17)、ただし、m=2’-O-メチル;
mHTT-FL-A:mUmGmC+AmGmCmC+AmCmCmA+CmCmUmC+AmAmAmC+AmGmCmC+AmGmG+TmA+AmGmU+AmU(配列番号18)、ただし、m=2’-O-メチルおよび+=ロックド核酸;ならびに
mHTT-TR-A:mA+GmUmUmC+TmCmUmU+CmAmCmA+AmCmAmG+TmCmAmGmCmC+AmGmG+TmA+AmGmU+AmU(配列番号19)、ただし、m=2’-O-メチルおよび+=ロックド核酸;
siRNA:
hHTT-siRNA-1(両方の鎖が示されている;r=RNA):
5’-rGrGrA rUrArG rUrArG rArCrA rGrCrA rArUrA rArCrU rCrGG T-3’(配列番号20)
5’-rArCrC rGrArG rUrUrA rUrUrG rCrUrG rUrCrU rArCrU rArUrC rCrGrU-3’(配列番号21);
hHTT-siRNA-2(両方の鎖が示されている;r=RNA):
5’-rArGrA rArCrU rUrUrC rArGrC rUrArC rCrArA rGrArA rArGA C-3’(配列番号22)
5’-rGrUrC rUrUrU rCrUrU rGrGrU rArGrC rUrGrA rArArG rUrUrC rUrUrU-3’(配列番号23);および
hHTT-siRNA-3 (両方の鎖が示されている;r=RNA):
5’-rArCrA rGrCrU rCrCrA rGrCrC rArGrG rUrCrA rGrCrG rCrCG T-3’(配列番号24)
5’-rArCrGr GrCrG rCrTrG rArCrC rTrGrG rCrTrG rGrArG rCrTrG rTrTrG-3’(配列番号25)
【0083】
図3は、様々な抗hHTT-FL U1AOおよびsiRNAを48時間、トランスフェクション(Lipofectamine(商標)2000)されたヒトDU145細胞のウェスタンブロットを提供する(下記参照)。細胞を直接、laemmliバッファーへ溶解し、その後、6~20%勾配ゲル上での電気泳動後のウェスタンブロットにより分析した。ここでは、最良の抗hHTT-FL U1AO(hHTT-FL-1およびhHTT-FL-2)が用いられ、タンパク質レベルにおけるサイレンシング活性を示している。抗HTT-FL siRNAもまたサイレンシング活性を示した。特に、より少ないU1AOを用いることは、より低いサイレンシングを示した(レーン9をレーン7と比較する)。
【0084】
YAC128は、128個のCAGリピートを有するヒトHTT遺伝子全体(300,000bp)を含有するマウスである。U1AOの有効性を決定するために、hHTT-FL-2 U1AO 1μgかもしくは20μgのいずれかまたは食塩水をYAC128マウスへ一側性に脳室内(ICV)注射した。48時間後、マウスを灌流しながら屠殺した。左の前脳由来の全RNAを、Trizolに基づいた方法により抽出し、RT-qPCRにより分析し、真核細胞翻訳開始因子4A3(Eif4a3)に対して標準化した。
図4Aに見られるように、hHTT-FL-2 U1AOの20μg一側性ICV注射用量は、食塩水処理マウスと比較して、YAC128脳におけるhHTT-Fl mRNAの62%低下で、サイレンスさせた。サイレンシングの特異性は、hHTT-Tr mRNAアイソフォーム(
図4B)もEif4a3ハウスキーピング遺伝子のいずれも発現の観察可能な変化を起こさなかったという事実により確認されている。
【0085】
YAC128マウスの前脳由来の全RNA(4μg/レーン)を、
32Pノーザンブロット(8%PAGE)により分析した(
図5)。具体的には、U1AOレベルを測定するために、hHTT-FL-2 U1AOに相補的な33nt
32P-抗hHTT-FL-2オリゴヌクレオチドでそのブロットをプローブした。「標準」とマークされたレーンは、注射されていないU1AOであり、それらの包含により、厳密な定量化が可能になる。
図5に見られるように、脳組織におけるU1AOは、分解も短縮もされていない。注射されたU1AOの、たった数個のヌクレオチド分の短縮だけでも、標準に比べて移動度の顕著な変化を生じるだろう。
【0086】
一種のインサイチューハイブリダイゼーション(ISH)テクノロジーである、RNAScope(登録商標)分析を用いて、hHTT-FL転写産物をシングルセル分解能で検出した。簡単に述べれば、RNAScope(登録商標)方法は、半脳を4%パラホルムアルデヒド中で48時間、固定し、PBSへ移し、パラフィン包埋のためにティッシュプロセッサにより処理することを含む。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)脳を、矢状面で5ミクロン厚に切断し、線条体切片を、hHTT-FL mRNAに特異的なRNAScope(登録商標)プローブを用いるインサイチューハイブリダイゼーションにより追跡した。
図6に見られるように、hHTT-FL-2 U1AO処理マウス(右)は、食塩水処理マウス(左)と比較して、より少ないドットおよび低下した強度を有し、それにより、hHTT-FLのサイレンシングを示している。
【0087】
hHTT-FL-2 U1AOの安定性をさらに実証するために、hHTT-FL-2 U1AO 20μgまたは食塩水を、YAC128マウスへ一側性に脳室内(ICV)注射した。2日、4日、または7日後、マウスを灌流しながら屠殺した。左の前脳由来の全RNAを、Trizolに基づいた方法により抽出し、RT-qPCRにより分析し、真核細胞翻訳開始因子4A3(Eif4a3)に対して標準化した。
図7Aに見られるように、hHTT-FL-2 U1AOの20μg一側性ICV注射用量は、YAC128脳におけるhHTT-FL mRNAを時間と共に一定して低下させている。
図7Bは、U1AOレベルを測定するためにhHTT-FL-2 U1AOに相補的な33nt
32P-抗hHTT-FL-2オリゴヌクレオチドでプローブされたノーザンブロットを提供する。
図7Bに見られるように、脳組織におけるU1AOは、時間と共に分解されることも短縮されることもない。
【0088】
hHTT-Trをサイレンスさせる能力もまた実証されている。20μgのhHTT-TR-1 U1AO、hHTT-TR-2 U1AO、または食塩水を、YAC128マウスへ一側性にICV注射した。48時間後、マウスを灌流しながら屠殺した。前脳由来の全RNAを、Trizolに基づいた方法により抽出し、RT-qPCRにより分析し、真核細胞翻訳開始因子4A3(Eif4a3)に対して標準化した。
図8Aに見られるように、hHTT-TR-1 U1AOはhHTT-TRを効果的にはサイレンスさせなかったが、hHTT-TR-2 U1AOは、hHTT-TRを約79%、有意にサイレンスさせた。食塩水処理マウスもhHTT-TR処理マウスのどちらにおいてもhHTT-FL mRNAについてのサイレンシングが観察されなかったため(
図8B)、その効果は特異的であった。
【0089】
抗マウスHTT U1AOもまた合成され、培養細胞においてmHTTをサイレンスさせることが示された。最良の抗マウスHTT U1AOはmHTT-TR-a(mHTT-TR mRNA転写産物をターゲットする)およびmHTT-FL-a(mHTT-FL mRNA転写産物をターゲットする)であった。その後、これらのU1AOを、Q175マウスモデルにおいて試験した。Q175マウスは、ヘテロ接合体として、HTTアレルのうちの1つが175個のCAGリピートを有する、ノックインマウスである。U1AOの有効性を決定するために、食塩水、mHTT-TR-A U1AO 20μg、または非特異的な対照アダプター(NC-A) U1AO 40μgをQ175マウスへ一側性にICV注射した。NC-A U1AOは、いかなるマウス遺伝子もサイレンスさせないようにデザインされた非特異的な対照U1AOである。48時間後、マウスを灌流しながら屠殺した。左の前脳由来の全RNAを、Trizolに基づいた方法により抽出し、RT-qPCRにより分析し、真核細胞翻訳開始因子4A3(Eif4a3)に対して標準化した。
図9Aに見られるように、mHTT-TR-A U1AOの20μg一側性ICV注射用量は、対照処理マウスと比較して、Q175脳におけるmHTT-TR mRNAの75%低下で、サイレンスさせている。サイレンシングの特異性は、mHTT-FL mRNAアイソフォーム(
図9B)もEif4a3ハウスキーピング遺伝子のどちらも発現の有意な変化を起こさなかったという事実により確認されている。
【0090】
RNAScope(登録商標)分析もまた、mHTT-TR転写産物をシングルセル分解能で検出するために実施した。簡単に述べれば、RNAScope(登録商標)方法は、半脳を4%パラホルムアルデヒド中48時間、固定し、PBSへ移し、パラフィン包埋のためにティッシュプロセッサにより処理することを含む。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)脳を、矢状面で5ミクロン厚に切断し、線条体切片を、mHTT-TR mRNAに特異的なRNAScope(登録商標)プローブを用いるインサイチューハイブリダイゼーションにより追跡した。
図10に見られるように、mHTT-TR U1AO処理マウス(右)は、食塩水処理マウス(左)と比較して、より少ないドットおよび低下した強度を有し、それにより、mHTT-TRのサイレンシングを示している。
【0091】
mHTT-TR-A U1AOの安定性をさらに実証するために、mHTT-TR-A U1AO 20μgまたは食塩水を、Q175マウスへ一側性に脳室内(ICV)注射した。21日後、マウスを灌流しながら屠殺した。左の前脳由来の全RNAを、Trizolに基づいた方法により抽出し、RT-qPCRにより分析し、真核細胞翻訳開始因子4A3(Eif4a3)に対して標準化した。
図11Aに見られるように、mHTT-TR-A U1AOの20μg一側性ICV注射用量は、Q175マウス脳におけるmHTT-TR mRNAを、21日後でさえも低下させている。サイレンシングの特異性は、mHTT-FL mRNAアイソフォーム(
図11B)もEif4a3ハウスキーピング遺伝子のどちらも発現の有意な変化を起こさなかったという事実により確認されている。
【0092】
mHTT-FL U1AOの有効性を決定するために、食塩水、mHTT-FL-A U1AO 40μg、または非特異的な対照アダプター(NC-A)U1AO 40μgをQ175マウスへ一側性にICV注射した。NC-A U1AOは、いかなるマウス遺伝子もサイレンスさせないようにデザインされた非特異的な対照U1AOである。48時間後、マウスを灌流しながら屠殺した。左の前脳から全RNAを、Trizolに基づいた方法により抽出し、RT-qPCRにより分析し、真核細胞翻訳開始因子4A3(Eif4a3)に対して標準化した。
図12Aに見られるように、mHTT-FL-A U1AOの40μg一側性ICV注射用量は、対照処理マウスと比較して、Q175脳におけるmHTT-FL mRNAの69%低下で、サイレンスさせている。サイレンシングの特異性は、mHTT-TR mRNAアイソフォーム(
図12B)もEif4a3ハウスキーピング遺伝子のいずれも発現の有意な変化を起こさなかったという事実により確認されている。
【0093】
RNAScope(登録商標)分析もまた、mHTT-FL転写産物をシングルセル分解能で検出するために実施した。簡単に述べれば、RNAScope(登録商標)方法は、半脳を4%パラホルムアルデヒド中48時間、固定し、PBSへ移し、パラフィン包埋のためにティッシュプロセッサにより処理することを含む。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)脳を、矢状面で5ミクロン厚に切断し、線条体切片を、mHTT-FL mRNAに特異的なRNAScope(登録商標)プローブを用いるインサイチューハイブリダイゼーションにより追跡した。
図13に見られるように、mHTT-FL-A U1AO処理マウス(右)は、食塩水処理マウス(左)と比較して、より少ないドットおよび低下した強度を有し、それにより、mHTT-FLのサイレンシングを示している。
【0094】
hHTT-FL-2 U1AOについての体内分布研究もまた実施した。簡単に述べれば、脳領域における体内分布をシングルセルレベルで評価するために、Cy3蛍光標識hHTT-FL-2 U1AO(Cy3-hHTT-FL-2 U1AO)を用いて一連の実験を実施した。Cy3-hHTT-FL-2 U1AO 5μgを、月齢6~8カ月のYAC128マウス7へ一側性にICV注射した。注射後1日目、7日目、および28日目において、マウスを(食塩水で)灌流しながら屠殺して、血液および細胞外U1AOを除去した。続いて、脳試料を共焦点顕微鏡法により研究した。特に、Cy3蛍光基自体が毒性であるため、Cy3-hHTT-FL-2 U1AOのより高い用量を用いなかった。実際、それぞれ、Cy3-hHTT-FL-2 U1AO 30μgおよび80μgの化学量論的等価物である、遊離Cy3 1.5μgおよび4μgの注射が、YAC128マウスに対して非常に毒性が高いことが決定された。Cy3-hHTT-FL-2 U1AO 5μgの使用は、YAC128マウスにおいて明白な毒性効果は生じなかった。
【0095】
体内分布アッセイは、Cy3-hHTT-FL-2 U1AOを左脳室へICV注射した後、Cy3-hHTT-FL-2 U1AOは、急速(1日以内に)かつ有意に、左半脳と右半脳の両方にわたって分布し、結果として、7日目および28日目までに、脳の左側と右側の両方におけるCy3-hHTT-FL-2 U1AOの対称性分布を生じた。これらの結果は、Cy3-hHTT-FL-2 U1AOが左脳室注射部位から、注射部位から最も遠い右半脳領域を含む他の脳領域(例えば、線条体、皮質、海馬、小脳)へ迅速に移動することを示している。Cy3-hHTT-FL-2 U1AOはまた、たいていの神経細胞(例えば、皮質神経細胞)および細胞型による広範な取り込みを受けた。さらに、Cy3-hHTT-FL-2 U1AOは、核および核周囲において明瞭に目に見えた。最後に、蛍光強度は、1日目および7日目時点と比較して、28日目時点においてほんのわずかだけ減弱し、それにより、時間経過に対するCy3-hHTT-FL-2 U1AOの安定性を示している。
【0096】
1カ月目から4カ月目までのmHTT-Fl転写産物の50%~80%の持続性低下を実証するために、さらなる実験を実施した。並行実験において、1カ月目から4カ月目までのmHTT-Tr転写産物の50%~80%の持続性低下を達成する条件を同定した。
【0097】
第一に、Q175マウスは、4つの異なる濃度:10μg、20μg、40μg、および80μgにおけるmHTT-FL-a U1AOでの単一の一側性ICV用量(1用量あたりマウスn=9)を受けた(合計36匹のマウスになる)。各濃度からの3匹のマウスのコホートを1カ月、2カ月、および4カ月後に安楽死させ、その場合、マウスは1×PBSでの灌流を受け、その後、屠殺された。半脳を収集し、RT-qPCRおよびノーザンブロットによる分析のために処理した。全てのU1アダプター処理マウスを、未処理Q175マウスと比較した。mHTT-Fl転写産物のサイレンシングを、RT-qPCRにより評価し、その後、それを、100%に設定された未処理マウスと比較した。mHTT-Tr転写産物を検出するためのRT-qPCRには、mHTT-Tr転写産物Ct値に干渉したであろうイントロン1番のDNAを除去するために必要なデオキシリボヌクレアーゼ処理を含めた。
【0098】
図15A、
図15B、および
図15Cに見られるように、mHTT-Fl転写産物は、それぞれ、処理後1カ月目、2カ月目、および4カ月目において、特異的に低下した。
図15Dは、80μgの最高濃度における対照NC-a U1AO 単一の一側性ICV用量で処理された対照処理Q175マウスが、mHTT-Fl転写産物の低下もmHTT-Tr転写産物の低下も生じなかったことを示している。
【0099】
第二に、Q175マウスは、4つの異なる濃度:10μg、20μg、40μg、および80μgにおけるmHTT-Tr-a U1AOでの単一の一側性ICV用量(1用量あたりマウスn=9)を受けた(合計36匹のマウスになる)。各濃度からの3匹のマウスのコホートを1カ月、2カ月、および4カ月後に安楽死させ、その場合、マウスは1×PBSでの灌流を受け、その後、屠殺された。半脳を収集し、RT-qPCRおよびノーザンブロットによる分析のために処理した。全てのU1アダプター処理マウスを、未処理Q175マウスと比較した。mHTT-Tr転写産物のサイレンシングを、RT-qPCRにより評価し、その後、それを、100%に設定された未処理マウスと比較した。mHTT-Tr転写産物を検出するためのRT-qPCRには、mHTT-Tr転写産物Ct値に干渉したであろうイントロン1番のDNAを除去するために必要なデオキシリボヌクレアーゼ処理を含めた。
【0100】
図16A、
図16B、および
図16Cに見られるように、mHTT-Tr転写産物は、それぞれ、処理後1カ月目、2カ月目、および4カ月目において、特異的に低下した。
【0101】
mHTT-Tr-a U1AOによるmHTT-Tr転写産物のサイレンシングは特異的であると考えられ、理由は以下である:1)mHTT-Fl転写産物における有意な変化は観察されなかった、および2)NC-a非特異的対照U1AOは、1カ月間、2カ月間、および4カ月間において最高用量(80μg)でサイレンシングを示さなかった。同様に、mHTT-Fl-a U1AOによるmHTT-Fl転写産物のサイレンシングは特異的であると考えられ、理由は以下である:1)mHTT-Tr転写産物における有意な変化は観察されなかった、および2)NC-a非特異的対照U1AOは、1カ月間、2カ月間、および4カ月間において最高用量(80μg)でサイレンシングを示さなかった。
【0102】
薬物動態(PK)研究もまた実施した。PKプロファイルを、上記で列挙された同じマウスの3点の時間経過期間と組み合わせた4点の用量応答に対する
32P-ノーザンブロット分析により達成した。RT-qPCRを実施するために用いられた同じRNAのアリコートを、ノーザンブロッティングに用いた。簡単に述べれば、標準および
32Pトレーサーと共に、U1アダプター処理マウス由来のRNA試料を、8%変性尿素-PAGEゲル上で分離し、続いて、ノーザンブロット膜へ転写した。その後、膜を、同族
32P-プローブでプローブし、洗浄し、X線フィルムに曝露した。同族プローブは、mHTT-Fl-a U1AOに対するアンチセンスである
32P-抗mHTT-FL-aと呼ばれる
32P標識オリゴヌクレオチド、またはmHTT-Tr-a U1AOに対するアンチセンスである
32P-抗mHTT-Tr-aと呼ばれる
32P標識オリゴヌクレオチド、またはNC-a U1AOに対するアンチセンスである
32P-抗NC-aと呼ばれる
32P標識オリゴヌクレオチドであった。X線フィルムへの数回の曝露後、ノーザンブロットを、Typhoon(商標)システムにおけるホスフォイメージャー(phosphorimager)により定量化した。結果は
図17に示される。
【0103】
U1AOの病理組織学もまた研究した。簡単に述べれば、YAC128マウスに、食塩水(n=3)または、食塩水中hHTI-FL-2 U1アダプターオリゴ50μg(n=5)をICV注射した。2匹のマウスは未処理対照として用いた。マウスは全て雄であり、月齢3~5カ月の範囲であった。マウスを7日間、処理した。各マウス由来の脳、腎臓、および肝臓組織からの2つのヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色されたスライドを、病理組織学分析のために調べた。上記のスライドの顕微鏡検査により、ICV-50μg U1アダプターオリゴに関係した毒性の特異的な病理組織学的変化は示されていない。H&Eスライドの顕微鏡検査により、ICV-50μg U1アダプターオリゴに関係した毒性の特異的な病理組織学的変化は示されなかった。
【0104】
本発明の好ましい実施形態のいくつかが上記で記載され、かつ具体的に例示されているが、本発明がそのような実施形態に限定されることは意図されない。以下の特許請求の範囲に示されているような本発明の範囲および精神から逸脱することなく、様々な改変がなし得る。
【0105】
いくつかの刊行物および特許文書は、この発明が関連する技術の状況をより完全に記載するために前述の明細書中に引用されている。これらの引用のそれぞれの開示は、参照によって本明細書に組み入れられている。
【配列表】
【国際調査報告】