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特表2022-524420コロニー形成患者における黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)感染症の低減
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(54)【発明の名称】コロニー形成患者における黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)感染症の低減
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220422BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220422BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220422BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220422BHJP
   C07K 16/12 20060101ALI20220422BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220422BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20220422BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20220422BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALN20220422BHJP
【FI】
A61K39/395 R
A61P31/04
A61P11/00
A61K45/00
C07K16/12 ZNA
C12P21/08
G01N33/569 E
C12Q1/686 Z
C12Q1/6851 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021554623
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(85)【翻訳文提出日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 US2020022226
(87)【国際公開番号】W WO2020185986
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】62/817,934
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504333972
【氏名又は名称】メディミューン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】エッサー,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ルジン,アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャフリ,ハサン
(72)【発明者】
【氏名】シューメイカー,キャスリン
(72)【発明者】
【氏名】セルマン,ブレット
(72)【発明者】
【氏名】ユー,リィ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS32
4B063QS34
4B063QX02
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B064DA15
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA591
4C084ZB322
4C084ZB331
4C085AA14
4C085BA13
4C085CC23
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045EA53
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、高α毒素抗体若しくはその抗原結合断片を備える黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成した対象を治療する方法に向けられる。本方法は、前記対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)の存在に付随する感染症の発生率を低減させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(S.aureus))がコロニー形成した対象を治療する方法であって、前記方法は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)α毒素(AT)に結合する抗体若しくはその抗原結合断片を前記対象に投与する工程を含み、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が前記対象から得られた試料中における黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを検出するために使用されている方法。
【請求項2】
前記対象から得られた前記試料は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)サイクル閾値(Ct)値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)の前記存在に付随する感染症の発生率を低減させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症を予防する方法であって、前記方法は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片を前記対象に投与する工程を含み、前記対象から得られた試料は、PCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する方法。
【請求項5】
対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)肺炎の前記発生率を低減させるための方法であって、前記方法は、前記対象にスブラトクスマブを投与する工程を含み、前記低減は、臨床的手段、微生物学的手段及びX線写真手段によって決定され、任意選択的に前記発生率は約30%低減させられる方法。
【請求項6】
対象における原因を問わない肺炎の発生率を低減させるための方法であって、前記方法は、前記対象にスブラトクスマブを投与する工程を含み、前記低減は、臨床的手段、微生物学的手段及びX線写真手段によって決定され、任意選択的に前記発生率は約30%低減させられる方法。
【請求項7】
前記感染症は、臨床的手段、微生物学的手段及びX線写真手段によって決定される、請求項3及び4の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記臨床的手段は、異常な体温、異常な白血球数、咳、膿性痰、気管支呼吸音、呼吸困難、頻呼吸(呼吸数>30回/分)、低酸素症又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項5、6及び7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記微生物学的手段は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して陽性である呼吸器検体、血液培養、胸膜液吸引物又は肺組織培養を含む、請求項5、6、7及び8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記X線写真手段は、胸部X線写真上の新規又は悪化する浸潤液を含む、請求項5、6及び7~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
PCRは、前記対象から得られた試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の前記レベルを検出するために使用されている、請求項5~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象から得られた前記試料は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)サイクル閾値(Ct)値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記対象から得られた試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを検出する工程を更に含む、請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象から得られた前記試料は、29以上の前記PCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する、請求項1~4及び11~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
29の前記PCR Ct値は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の約1,600~約1,700コロニー形成単位(CFU)/mLの濃度に対応する、請求項16に記載の方法。
【請求項16】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染がコロニー形成した対象を治療する方法であって、前記方法は黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片を前記対象に投与する工程を含み、前記対象から得られた試料が、1,700CFU/mLを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)の濃度を有する方法。
【請求項17】
前記方法は、前記対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)の前記存在に付随する感染症の前記発生率を低減させる、請求項18に記載の方法
【請求項18】
対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症を予防する方法であって、前記方法は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片を前記対象に投与する工程を含み、前記対象から得られた試料は、1,700CFU/mLを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)の濃度を有する方法。
【請求項19】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATの前記濃度は、PCRを用いて測定された、請求項18~20の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象には、黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成している、請求項4~17及び20~21の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象から得られた試料は、少なくともPCRのCt値と相関するレベルの黄色ブドウ球菌(S.aureus)を有する、請求項1~22の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象から得られた試料は、少なくとも3のPCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項23】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)の前記レベルは、3時間以内に、任意選択的に2時間以内に検出される、請求項1~24の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記PCRは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)プロテインAを検出する、請求項1~4、11~15及び19~23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象は、人工換気されており、任意選択的に前記対象には人工呼吸器が装着されている、請求項1~24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記対象は、抗生物質を摂取している、請求項1~25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記試料は、皮膚又は軟組織試料である、請求項1~4及び11~26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記試料は、前記対象の下気道から得られている、請求項1~4及び11~26の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記試料は、気管内吸引物である、請求項1~4及び11~26の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記試料は、気道試料である、請求項1~4及び11~26の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記試料は、気管支試料である、請求項1~4及び11~26の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記試料は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)を同定するための培養中では増殖しないであろう細菌を含有する、請求項1~4及び11~31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記試料は、ブドウ球菌(Staphylococcus)ではない細菌を含有する、請求項1~4及び11~32、13~34の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、抗生物質耐性である、請求項1~5及び7~33の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記黄色ブドウ球菌(S.aureus)が抗生物質耐性であるかどうかを決定する工程を更に含む、請求項1~5及び7~34の何れか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、メチシリン耐性である、請求項1~5及び7~35の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記黄色ブドウ球菌(S.aureus)がメチシリン耐性であるかどうかを決定する工程を更に含む、請求項1~5及び7~36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記耐性は、PCRを用いて決定される、請求項34~37の何れか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記感染症は、肺炎である、請求項3、4及び7~37の何れか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記感染症は、集中治療室(ICU)肺炎である、請求項3、4及び7~37の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記対象は、ヒトである、請求項1~40の何れか一項に記載の方法。
【請求項42】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくはその抗原結合断片は、配列番号7の前記アミノ酸配列を含むVH及び配列番号8の前記アミノ酸配列を含むVLを含む抗体として前記同一黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATエピトープに結合する、請求項1~4及び7~41の何れか一項に記載の方法。
【請求項43】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくはその抗原結合断片は、配列番号7の前記アミノ酸配列を含むVH及び配列番号8の前記アミノ酸配列を含むVLを含む抗体の黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATへの結合を競合的に阻害する、請求項1~4及び7~42の何れか一項に記載の方法。
【請求項44】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくはその抗原結合断片は、MEDI4893のVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3を含む、請求項1~4及び7~43の何れか一項に記載の方法。
【請求項45】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくはその抗原結合断片は、配列番号1の前記アミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)1、配列番号2の前記アミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号3の前記アミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号4の前記アミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)CDR1、配列番号5の前記アミノ酸配列を含むVL CDR2及び配列番号6の前記アミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、請求項1~4及び7~44の何れか一項に記載の方法。
【請求項46】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくは抗原結合断片は、配列番号7の前記アミノ酸配列を含むVHを含む、請求項1~4及び7~45の何れか一項に記載の方法。
【請求項47】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくは抗原結合断片は、配列番号8の前記アミノ酸配列を含むVLを含む、請求項1~4及び7~46の何れか一項に記載の方法。
【請求項48】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくはその抗原結合断片は、配列番号9の前記アミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1~4及び7~47の何れか一項に記載の方法。
【請求項49】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくはその抗原結合断片は、配列番号10の前記アミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~4及び7~48の何れか一項に記載の方法。
【請求項50】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくはその抗原結合断片は、重鎖定常領域を更に含む、請求項1~4、7~47及び49の何れか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記重鎖定常領域は、ヒト免疫グロブリンIgG、IgG、IgG、IgG、IgA及びIgA重鎖定常領域から成る群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記重鎖定常領域は、ヒトIgG定常領域である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくはその抗原結合断片は、軽鎖定常領域を更に含む、請求項1~4、7~48及び51~52の何れか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記軽鎖定常領域は、ヒト免疫グロブリンIgGκ及びIgGλ軽鎖定常領域から成る群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記軽鎖定常領域は、ヒトIgGκ軽鎖定常領域である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくはその抗原結合断片は、IgG抗体若しくはその抗原結合断片である、請求項1~4及び7~47の何れか一項に記載の方法。
【請求項57】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくはその抗原結合断片は、半減期を改善するために遺伝子組み換えされているFc領域を含む、請求項1~4、7~47及び56の何れか一項に記載の方法。
【請求項58】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくはその抗原結合断片は、YTE突然変異を備えるFc領域を含む、請求項1~4、7~47及び56の何れか一項に記載の方法。
【請求項59】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくは抗原結合断片は、モノクローナル抗体若しくは抗原結合断片である、請求項1~4及び7~58の何れか一項に記載の方法。
【請求項60】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくは抗原結合断片は、全長抗体である、請求項1~4及び7~59の何れか一項に記載の方法。
【請求項61】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくは抗原結合断片は、抗原結合断片である、請求項1~4及び7~59の何れか一項に記載の方法。
【請求項62】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくは抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、単鎖Fv(scFv)、ジスルフィド連結Fv、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、DVD-Ig、Fcab、mAb、(scFv)又はscFv-Fcを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する前記抗体若しくはその抗原結合断片は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに対する80~100pMの親和性を有する、請求項1~4及び7~62の何れか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記抗体若しくはその抗原結合断片は、スブラトクスマブである、請求項1~4及び7~63の何れか一項に記載の方法。
【請求項65】
2,000mgの前記抗体若しくはその抗原結合断片が投与される、請求項1~4及び7~64の何れか一項に記載の方法。
【請求項66】
5,000mgの前記抗体若しくは抗原結合断片が投与される、請求項1~4及び7~64の何れか一項に記載の方法。
【請求項67】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症を予防する工程は、毒素の中和、細胞溶解を阻害すること、多臓器不全を阻害すること、黄色ブドウ球菌(S.aureus)関連敗血症を阻害すること、又は前述のものの任意の組み合わせを含む、請求項1~4、7~15及び18~66の何れか一項に記載の方法。
【請求項68】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(S.aureus))がコロニー形成した対象を治療する際に使用するために黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片であって、前記対象から得られた試料は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)サイクル閾値(Ct)値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する、抗体若しくはその抗原結合断片。
【請求項69】
前記治療する工程は、前記対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)の前記存在に付随する感染症の前記発生率を低減させる、請求項68に記載の抗体若しくは抗原結合断片。
【請求項70】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成した対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症の予防において使用するための黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片であって、前記対象から得られた試料は、PCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する、抗体若しくはその抗原結合断片。
【請求項71】
前記対象から得られた前記試料は、29の前記PCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する、請求項68~70の何れか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片。
【請求項72】
前記抗体若しくはその抗原結合断片は、前記対象から得られた試料中において黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルがPCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えると検出された例では前記対象に投与されない、請求項68~70の何れか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片。
【請求項73】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片に応答性である黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成した対象を同定するためのin vitro法であって、前記対象から得られた試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを検出する工程を含み、前記PCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルが前記抗体若しくはその抗原結合断片に前記対象が応答性であることを示す方法。
【請求項74】
前記PCR Ct値は、29である、請求項73に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
入院患者集団又は集中治療室(ICU)患者集団内で発生する細菌性肺炎は、罹患率及び死亡率に大きく寄与する臨床的に有意且つ深刻な疾患である。この疾患は、第2の主要なタイプの院内感染症及び米合衆国内の院内感染症に起因する主要な死因を構成する(非特許文献1)。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、院内肺炎の主要な原因である。欧州ICUの近年の研究は、人工呼吸器が装着されたICU患者の23%が黄色ブドウ球菌(S.aureus)によって引き起こされた肺炎を発症し、その半数以上がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)によって引き起こされたことを報告した(非特許文献2)。
【0002】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、更に皮膚及び軟組織の感染症、心内膜炎、骨髄炎、肺炎及び菌血症を含む広範な追加の疾患を引き起こす(非特許文献3)。感染中、黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、組織浸潤及び壊死を引き起こす最も優勢なビルレンス因子としてのα毒素(AT)を含む多数の毒性を放出する(非特許文献4)。黄色ブドウ球菌(S.aureus)の病因においてATが果たす極めて重要な役割は、動物モデル(皮膚壊死、肺炎、敗血症、心内膜炎及び乳腺炎)によって、及び重度の感染中の抗AT抗体の存在に改良された転帰が結び付いていたヒトにおける解析的研究によって支持されている。
【0003】
前臨床試験は、モノクローナル抗体ベースのアプローチが黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症に対する予防及び補助療法に有望であることを示している(例えば、非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;及び非特許文献8を参照されたい)。抗AT抗体は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症を治療及び予防するそれらの能力において前途有望な結果を示している。MEDI4893、又はスブラトクスマブは、ATに高親和性で結合し、標的細胞膜内でAT孔形成を効果的に遮断する長期の半減期を備えるヒトモノクローナル抗体である。前臨床試験の結果は、MEDI4893結合領域を含む抗AT抗体を用いた予防法が、皮膚壊死、肺炎及び致死性菌血症/敗血症のマウス感染症モデルにおいて疾患重症度を減少させたことを証明した(例えば、それぞれが全体として参照により本明細書に組み込まれる特許文献1及び特許文献2を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/109285号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2014/074540号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Spellberg and Talbot,2010
【非特許文献2】Esperatti et al,2010
【非特許文献3】Lowy,F.D.,N.Engl.J.Med.,339(8):520-32(1998)
【非特許文献4】Wilke and Bubeck Wardenburg,2010
【非特許文献5】Hazenbos et al.,PLoS Pathog.,9(10):e1003653.doi:10.1371/journal.ppat.10036532013(2013)
【非特許文献6】Rouha,H.,MAbs,7(1):243-254(2015);Foletti et al.,J.Mol.Biol.,425(10):1641-1654(2013)
【非特許文献7】Karauzum et al.,J Biol Chem.,287(30):25203-15(2012)
【非特許文献8】Hua et al.,Antimicrob Agents Chemother.,58(2):1108-17(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、肺炎等の黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成した患者において極めて急速に発症し得るので、そこで抗AT抗体からの最高の利益を達成するであろうリスク状態にある患者を同定する方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(S.aureus))肺炎は、人工呼吸器が装着された集中治療室(ICU)患者において、感染の管理及び抗生物質を行っているにもかかわらず早期に発生する生命を脅かす合併症である。本明細書で証明するように、抗α毒素(AT)抗体は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)肺炎の予防について評価され、臨床的に意味のある有効性(≧25%の関連リスクの低減)及び容認される安全性が結び付いていることが証明されている。特に、抗AT抗体を摂取している患者においては、黄色ブドウ球菌(S.aureus)肺炎の32%の低減が観察され、安全性の懸念は全く生じなかった。更に、所定の部分群の患者においては、より一層大きな有効性さえ観察された。従って、本明細書では、抗AT抗体を摂取することから利益を得るであろう黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症を発生するリスクが高い患者を同定する方法が提供される。
【0008】
本明細書では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)α毒素(AT)に結合する抗体若しくはその抗原結合断片を対象に投与する工程を含む、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(S.aureus))がコロニー形成した対象を治療する方法であって、ここで対象から得られた試料中における黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを検出するためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が使用されている方法が提供される。所定の例では、対象から得られた試料は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)サイクル閾値(Ct)値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する。所定の例では、本方法は、対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)の存在に付随する感染症の発生率を低減させる。
【0009】
本明細書では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片を対象に投与する工程を含む、対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症を予防する方法であって、ここで対象から得られた試料が、PCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する方法が提供される。
【0010】
本明細書では、対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)肺炎の発生率を低減させるための対象にスブラトクスマブを投与する工程を含む方法であって、その低減は、臨床的手段、微生物学的手段及びX線写真手段によって決定され、任意選択的に発生率が約30%低減させられる方法が提供される。
【0011】
本明細書では、対象における原因を問わない肺炎の発生率を低減させるために対象にスブラトクスマブを投与する工程を含む方法であって、その低減は、臨床的手段、微生物学的手段及びX線写真手段によって決定され、任意選択的に発生率が約30%低減させられる方法が提供される。
【0012】
所定の例では、感染症は、臨床的手段、微生物学的手段及びX線写真手段によって決定される。
【0013】
所定の例では、臨床的手段は、異常な体温、異常な白血球数、咳、膿性痰、気管支呼吸音、呼吸困難、頻呼吸(呼吸数>30回/分)、低酸素症又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0014】
所定の例では、微生物学的手段は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して陽性である呼吸器検体、血液培養、胸膜液吸引物又は肺組織培養を含む。
【0015】
所定の例では、X線写真手段は、胸部X線写真上の新規又は悪化する浸潤液を含む。
【0016】
所定の例では、PCRは、対象から得られた試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを検出するために使用されてきた。所定の例では、対象から得られた試料は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)サイクル閾値(Ct)値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する。
【0017】
所定の例では、本明細書で提供される方法は、対象から得られた試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを検出する工程を更に含む。
【0018】
所定の例では、対象から得られた試料は、29以上のPCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する。所定の例では、29のPCR Ct値は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の約1,600~約1,700コロニー形成単位(CFU)/mLの濃度に対応する。
【0019】
本明細書では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染がコロニー形成した対象を治療する方法であって、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片を対象に投与する工程を含み、ここで対象から得られた試料が、1,700CFU/mLを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)の濃度を有する方法が提供される。所定の例では、本方法は、対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)の存在に付随する感染症の発生率を低減させる。
【0020】
本明細書では、対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症を予防する方法であって、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片を対象に投与する工程を含み、ここで対象から得られた試料が、1,700CFU/mLを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)の濃度を有する方法が提供される。
【0021】
所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATの濃度は、PCRを用いて測定された。
【0022】
所定の例では、対象には、黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成している。
【0023】
所定の例では、対象から得られた試料は、少なくともPCRのCt値と相関するレベルの黄色ブドウ球菌(S.aureus)を有する。所定の例では、対象から得られた試料は、少なくとも3のPCR Ct値と相関するレベルの黄色ブドウ球菌(S.aureus)を有する。
【0024】
所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルは、3時間以内に、任意選択的に2時間以内に検出される。
【0025】
所定の例では、PCRは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)プロテインAを検出する。
【0026】
所定の例では、対象は、人工換気されるが、任意選択的に、対象には人工呼吸器が装着される。所定の例では、対象は、抗生物質を摂取している。
【0027】
所定の例では、試料は、皮膚又は軟組織試料である。所定の例では、試料は、対象の下気道から得られる。所定の例では、試料は、気管内吸引物である。所定の例では、試料は、気管試料である。所定の例では、試料は、気管支試料である。
【0028】
所定の例では、試料は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)を同定するための培養中では増殖しないであろう細菌を含有する。所定の例では、試料は、ブドウ球菌(Staphylococcus)ではない細菌を含有する。所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、抗生物質耐性である。所定の例では、本明細書に提供する方法は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)が抗生物質耐性であるかどうかを決定する工程を更に含む。
【0029】
所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、メチシリン耐性である。所定の例では、本明細書に提供する方法は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)がメチシリン耐性であるかどうかを決定する工程を更に含む。
【0030】
所定の例では、耐性は、PCRを用いて決定される。
【0031】
所定の例では、感染症は、肺炎である。所定の例では、感染症は、ICU(集中治療室)肺炎である。
【0032】
所定の例では、対象は、ヒトである。
【0033】
所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含むVH及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体と同一の黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATエピトープに結合する。所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含むVH及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLを含む抗体の黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATへの結合を競合的に阻害する。
【0034】
所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片は、MEDI4893のVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3を含む。所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)1、配列番号2のアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号4のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含むVL CDR2及び配列番号6のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む。
【0035】
所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含むVHを含む。所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片は、配列番号8のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0036】
所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片は、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0037】
所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくは抗原結合断片は、重鎖定常領域を更に含む。所定の例では、重鎖定常領域は、ヒト免疫グロブリンIgG、IgG、IgG、IgG、IgA及びIgA重鎖定常領域から成る群から選択される。所定の例では、重鎖定常領域は、ヒトIgG定常領域である。
【0038】
所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくは抗原結合断片は、軽鎖定常領域を更に含む。所定の例では、軽鎖定常領域は、ヒト免疫グロブリンIgGκ及びIgGλ軽鎖定常領域から成る群から選択される。所定の例では、軽鎖定常領域は、ヒトIgGκ軽鎖定常領域である。
【0039】
所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片は、IgG抗体若しくはその抗原結合断片である。
【0040】
所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片は、半減期を改善するために遺伝子組み換えされているFc領域を含む。所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片は、YTE突然変異を含むFc領域を含む。
【0041】
所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくは抗原結合断片は、モノクローナル抗体若しくは抗原結合断片である。
【0042】
所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくは抗原結合断片は、完全長抗体である。所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくは抗原結合断片は、抗原結合断片である。所定の例では、抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド連結Fv、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、DVD-Ig、Fcab、mAb、(scFv)又はscFv-Fcを含む。
【0043】
所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに対する80~100pMの親和性を有する。
【0044】
所定の例では、抗体若しくはその抗原結合断片は、スブラトクスマブである。
【0045】
所定の例では、2,000mgの抗体若しくは抗原結合断片が投与される。所定の例では、5,000mgの抗体若しくは抗原結合断片が投与される。
【0046】
所定の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症を予防することは、毒素の中和、オプソニン化貪食作用を誘導すること、血栓塞栓症性病変形成を阻害すること、黄色ブドウ球菌(S.aureus)関連敗血症を阻害すること、又は上記の任意の組み合わせを含む。
【0047】
本明細書で提供されるのは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(S.aureus))がコロニー形成した対象を治療する際に使用するための黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくは抗原結合断片であって、対象から得られた試料が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)サイクル閾値(Ct)値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくは抗原結合断片である。所定の例では、治療する工程は、対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)の存在に付随する感染症の発生率を低減させる。
【0048】
本明細書で提供されるのは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成した対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症の予防において使用するための黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片であって、対象から得られた試料が、PCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する抗体若しくはその抗原結合断片である。
【0049】
所定の例では、対象から得られた試料は、29のPCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する。所定の例では、抗体若しくはその抗原結合断片は、対象から得られた試料中での黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルがPCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えないと検出された例では対象に投与されない。
【0050】
本明細書では、対象から得られた試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)レベルを検出する工程を含む、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片に応答性である黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成した対象を同定するためのin vitro法であって、PCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルが抗体若しくはその抗原結合断片に応答性であることを示す方法が提供される。所定の例では、PCR Ct値は、29である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】迅速に患者を同定するための、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PCR検査の使用を例示する略図である。PCR検査は、閾値信号(図の右側のグラフ内の水平線によって表示)に達するために必要とされるPCRサイクル数を表すサイクル閾値(Ct)値を生成する。Ct値は、細菌負荷と反比例する:試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の数が多いほど閾値レベルに達するために必要とされるサイクル数が少なくなるので、低いCt値(グラフの左側の曲線)を有するが、他方試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の数が少ないほど、閾値レベルに達するためにより多くのサイクル数が必要となるので、このためより高いCt値(グラフの右側の曲線)を有する。(実施例1を参照されたい。)
図2】第II相臨床試験におけるスクリーニング時の患者から得られたCt値を示しているヒストグラムである。相当に多数の患者がスクリーニング時に低いCt値(高い細菌負荷)を有していた。(実施例2を参照されたい。)
図3】人工呼吸器上での経時的なCt値の変動性を示すグラフである。初期の数日間中でさえ、Ct値は広範囲の分布を有した。(実施例2を参照されたい。)
図4】3種のタイプの培養アッセイからの結果を示す図である:CFU/mLを測定する定量的アッセイ、半定量的アッセイ(培養スコア、ここで軽度=+又は++;中等度=+++及び重度=+++)並びに定性的アッセイ(存在/非存在)。検査した対象の半数超は、高度の細菌負荷を有していた(少なくとも10CFU/mL(定量的アッセイにおいて)又は中等度若しくは重度の培養スコア(sure)(半定量的アッセイにおいて)の何れかによって定義されて)。(実施例3を参照されたい。)
図5】半定量的アッセイにおいて軽度、中等度又は高度のスコアを備える試料から得られたCt値を示すグラフである。(実施例3を参照されたい。)
図6】黄色ブドウ球菌(S.aureus)についてのPCRと培養アッセイとの間の一致及び不一致を示すグラフである。PCRアッセイにおいて検査結果が陽性であった試料209例中162例は培養アッセイにおいても陽性であったが(77.5%の一致率)、それらの47例は培養アッセイにおいて陰性であった(22.5%の不一致率)。不一致結果は全例が、培養アッセイにおいて結果が陰性であり、PCRアッセイにおいて結果が陽性であった試料からであった。従って、PCRアッセイは、培養アッセイよりはるかに感受性である。(実施例3を参照されたい。)
図7】抗生物質の使用が培養結果に不都合な影響を及ぼすことを示すグラフである。抗生物質を摂取している患者のパーセンテージは、PCRによって黄色ブドウ球菌(S.aureus)について検査結果が陽性であった患者群においては有意に高かったが、培養による黄色ブドウ球菌(S.aureus)についての陰性の検査結果は、PCR及び培養の両方によって黄色ブドウ球菌(S.aureus)について検査結果が陽性であった患者群と匹敵していた。(実施例3を参照されたい。)
図8】抗生物質の使用歴が培養結果に影響を及ぼさなかったことを示すグラフである。(実施例3を参照されたい。)
図9】PCR Ct値による培養陽性及び培養陰性試料の分布を示しているグラフである。培養陰性試料の85%は、29より高いCt値を有し、培養陽性試料の約80%は、29より低いCt値を有する。従って、29のCt値は、培養陽性試料と培養陰性試料とを効果的に識別する。(実施例4を参照されたい。)
図10】第2相臨床試験において測定された、試料中のCt値と黄色ブドウ球菌(S.aureus)の濃度(コロニー形成単位(CFU)/mL)との関連を示しているグラフである。Ct値とCFU/mL数との間には統計的有意な逆相関が存在した。29より大きいCt値を備える大多数の試料は、10CFU/mL以下の黄色ブドウ球菌(S.aureus)負荷を有していた。29未満のCt値を備える大多数の試料は、10CFU/mL超の黄色ブドウ球菌(S.aureus)負荷を有していた。29のCt値は、約3.2log 10CFU/mL(約1,600~1,700CFU/mL)に対応し、このCt値は低コロニー形成菌と高コロニー形成菌とを効果的に識別する。(実施例4を参照されたい。)
図11】気管(左のグラフ)試料及び気管支(右のグラフ)試料中における、試料中のCt値と黄色ブドウ球菌(S.aureus)の濃度(コロニー形成単位(CFU)/mL)との相関関係を示すグラフである。これらの結果は、気管試料及び気管支試料の両方において、Ct値が黄色ブドウ球菌(S.aureus)付加と逆相関することを証明している。(実施例4を参照されたい。)
図12】非ブドウ球菌(non-Staphylococcus)増殖を備える試料(左のグラフ)及び非ブドウ球菌(non-Staphylococcus)増殖を備えない試料(右のグラフ)中における、試料中のCt値と黄色ブドウ球菌(S.aureus)の濃度(コロニー形成単位(CFU)/mL)との相関関係を示すグラフである。これらの結果は、Ct値が試料中の非ブドウ球菌(non-Staphylococcus)細菌の存在又は非存在とは無関係に黄色ブドウ球菌(S.aureus)付加と逆相関することを示しており、これはPCR検査が黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して特異的であることを証明している。(実施例4を参照されたい。)
【発明を実施するための形態】
【0052】
本開示は、低レベルの黄色ブドウ球菌(S.aureus)コロニー形成を備える患者において黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症を予防する方法並びに黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成している患者及びα毒素抗体から利益が得られる患者を同定する方法に向けられる。
【0053】
I.定義
本発明を説明する文脈における(特に以下の請求項の文脈における)用語「1つの」及び「その」及び「少なくとも1つの」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって明確に矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈すべきである。
【0054】
1つ以上の項目の列挙に続く用語「少なくとも1つの」の使用(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって明確に矛盾しない限り、列挙した項目(A又はB)から選択された1つの項目、又は列挙した項目の2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味すると解釈すべきである。
【0055】
用語「含む」、「有する」、「包含する」及び「含有する」は、別途注記のない限り、非限定的用語として解釈すべきである(即ち、「含むが、それらに限定されない」を意味する)。
【0056】
本明細書で使用する用語「α毒素」若しくは「AT」は、天然α毒素ポリペプチド及びα毒素ポリペプチドのアイソフォームを含むがそれらに限定されない細菌性α毒素ポリペプチドを指す。「α毒素」は、完全長の未処理α毒素ポリペプチド並びに細胞内のプロセッシングの結果として生じるα毒素ポリペプチドの形態を含む。本明細書で使用する用語「黄色ブドウ球菌(S.aureus)α毒素」は:
【化1】
のアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。
【0057】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)α毒素H35L突然変異体は、配列
【化2】
を有する。
【0058】
「α毒素ポリヌクレオチド」、「α毒素ヌクレオチド」若しくは「α毒素核酸」は、α毒素をコードするポリヌクレオチドを指す。
【0059】
用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を介して、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質又は前述の組み合わせ等の標的を認識し、それに特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味する。本明細書で使用する用語「抗体」は、その抗体が所望の生物学的活性を示す限り、インタクトポリクローナル抗体、インタクトモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体を含む融合タンパク質及び任意の他の改変免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、免疫グロブリンの5つの主要なクラス:それぞれα(アルファ)、δ(デルタ)、ε(イプシロン)、γ(ガンマ)及びμ(ミュー)と呼ばれる、それらの重鎖定常ドメインの同一性に基づいて、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM又はそれらのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)の何れかであり得る。免疫グロブリンの異なるクラスは、異なる周知のサブユニット構造及び3次元立体配置を有する。抗体は、裸であり得るか、又は毒素、放射性同位体等の他の分子と共役され得る。
【0060】
用語「モノクローナル抗体」は、本発明で使用する場合、B細胞の単独クローンによって産生され、同一エピトープに結合する抗体を指す。対照的に、用語「ポリクローナル抗体」は、異なるB細胞によって産生され、同一抗原の異なるエピトープに結合する抗体の集団を指す。
【0061】
用語「抗体断片」は、インタクト抗体の一部分を指す。「抗原結合断片」、「抗原結合ドメイン」又は「抗原結合領域」は、抗原に結合するインタクト抗体の一部分を指す。抗原結合断片は、インタクト抗体の抗原決定領域(例えば、相補性決定領域(CDR))を含み得る。抗体の抗原結合断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片、線状抗体並びに一本鎖抗体が挙げられるが、これらに限定されない。抗体の抗原結合断片は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット又はハムスター)及びヒト等の任意の動物種から得ることができるか、又は人工的に作製することができる。
【0062】
全抗体は、典型的には、下記の4つのポリペプチド:重(H)鎖ポリペプチドの2つの同一コピー及び軽(L)鎖ポリペプチドの2つの同一コピーから成る。重鎖の各々は、1つのN末端可変(VH)領域と、3つのC末端定常(CH1、CH2及びCH3)領域とを含み、各軽鎖は、1つのN末端可変(VL)領域と、1つのC末端定常(CL)領域とを含む。軽鎖及び重鎖の各対の可変領域は、抗体の抗原結合部位を形成する。VH領域及びVL領域は、同一の一般構造を有し、各領域は、それらの配列が比較的に保存されている4つのフレームワーク領域を含む。本明細書で使用する用語「フレームワーク領域」は、超可変領域又は相補性決定領域(CDR)間に位置する可変領域内の比較的に保存されたアミノ酸配列を指す。各可変ドメインには、FR1、FR2、FR3及びFR4と指定されている4つのフレームワーク領域がある。これらのフレームワーク領域は、可変領域の構造フレームワークを提供するβシートを形成する(例えば、C.A.Janeway et al.(eds.),Immunobiology,5th Ed.,Garland Publishing,New York,NY(2001)を参照されたい)。CDR1、CDR2及びCDR3として公知の3つのCDRは、抗原結合を担っている、抗体の「超可変領域」を形成する。
【0063】
用語「VL」及び「VLドメイン」は、抗体の軽鎖可変領域を意味するために互換的に使用される。
【0064】
用語「VH」及び「VHドメイン」は、抗体の重鎖可変領域を意味するために互換的に使用される。
【0065】
用語「Kabat付番」及び同様の用語は、当該技術分野において認識されており、抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域又はそれらの抗原結合断片のアミノ酸残基を付番する方式を指す。所定の態様では、CDRは、Kabat付番方式に従って決定され得る(例えば、Kabat EA&Wu TT(1971)Ann NY Acad Sci 190:382-391及びKabat EA et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照されたい)。Kabat付番方式を使用すると、抗体重鎖分子内のCDRは、典型的には、35に続く1つ又は2つの追加のアミノ酸(Kabat付番スキームでは35A及び35Bと呼ばれる)を任意選択的に含み得るアミノ酸位置31~35(CDR1)、アミノ酸位置50~65(CDR2)及びアミノ酸位置95~102(CDR3)に存在する。Kabat付番方式を使用すると、抗体軽鎖分子内のCDRは、典型的には、アミノ酸位置24~34(CDR1)、アミノ酸位置50~56(CDR2)及びアミノ酸位置89~97(CDR3)に存在する。特定の実施形態では、本明細書で記載されている抗体のCDRは、Kabat付番スキームに従って決定されている。
【0066】
Chothiaは、その代わりに、構造ループの位置について言及している(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。Kabat付番規則を使用して付番した場合のChothia CDR-H1ループの末端は、このループの長さに応じてH32~H34で変化する(これは、Kabat付番スキームがH35A及びH35Bに挿入を置くためであり、35Aも35Bも存在しない場合、このループは、32で終わり、35Aのみが存在する場合、このループは、33で終わり、35A及び35Bの両方が存在する場合、このループは、34で終わる)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループとの妥協案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。
【0067】
【表1】
【0068】
本明細書で使用する用語「定常領域」又は「定常ドメイン」は、互換的であり、当該技術分野において一般的な意味を有する。定常領域は、抗体部分、例えば、抗体の抗原への結合に直接的には関与しないが、Fc受容体との相互作用等の様々なエフェクター機能を示し得る軽鎖及び/又は重鎖のカルボキシル末端部分である。免疫グロブリン分子の定常領域は、一般に、免疫グロブリン可変ドメインと比較してより保存されたアミノ酸配列を有する。
【0069】
本明細書で使用する用語「重鎖」は、抗体に関して使用する場合は、任意の別個のタイプ、例えば、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、IgG、例えば、IgG、IgG、IgG及びIgGのサブクラスを含む、抗体のIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMクラスをそれぞれを生じさせる、α(アルファ)、δ(デルタ)、ε(イプシロン)、γ(ガンマ)及びμ(ミュー)を指す。重鎖アミノ酸配列は、当該技術分野において周知である。特定の実施形態では、重鎖は、ヒト重鎖である。
【0070】
本明細書で使用する用語「軽鎖」は、抗体に関して使用する場合は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、任意の別個のタイプ、例えばκ(カッパ)又はλ(ラムダ)を指すことができる。軽鎖アミノ酸配列は、当該技術分野において周知である。特定の実施形態では、軽鎖は、ヒト軽鎖である。
【0071】
「キメラ」抗体は、ヒト領域及び非ヒト領域の両方を含む抗体若しくはその断片を指す。「ヒト化」抗体は、ヒト抗体骨格と、非ヒト抗体から得られるか又は誘導される少なくとも1つのCDRとを含む抗体である。非ヒト抗体として、例えばげっ歯類(例えば、マウス又はラット)等の任意の非ヒト動物から単離される抗体が挙げられる。ヒト化抗体は、非ヒト抗体から得られるか又は誘導される1つ、2つ又は3つのCDRを含み得る。完全ヒト抗体は、非ヒト動物から得られるか又は誘導されるいかなるアミノ酸残基も含まない。完全ヒト抗体及びヒト化抗体は、マウス抗体又はキメラ抗体と比べて、ヒトにおける免疫反応を誘発するリスクが低いと理解されるであろう(例えば、Harding et al.,mAbs,2(3):256-26(2010)を参照されたい)。
【0072】
本明細書で使用する「エピトープ」は、当技術分野の用語であり、抗体若しくはその抗原結合断片が特異的に結合し得る、抗原の局所的な領域を指す。エピトープは、例えば、ポリペプチド(線状エピトープ若しくは連続エピトープ)の連続アミノ酸であり得、又はエピトープは例えば、1つ以上のポリペプチドの2つ以上の非連続領域から一体となり得る(コンフォメーションエピトープ、非線状エピトープ、不連続エピトープ若しくは非連続エピトープ)。所定の実施形態では、抗体若しくはその抗原結合断片が結合するエピトープは、例えばNMR分光法、X線回折結晶学的検査、ELISAアッセイ、質量分析を伴う水素/重水素交換(例えば、液体クロマトグラフィー液体スプレー質量分析)、アレイベースのオリゴペプチドスキャニングアッセイ及び/又は変異誘発マッピング(例えば、部位特異的変異誘発マッピング)により決定することができる。X線結晶構造解析の場合、結晶化は、当技術分野において既知の方法の何れかを使用して達成され得る(例えば、Giege R et al.,(1994)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 50(Pt 4):339-350;McPherson A(1990)Eur J Biochem 189:1-23;Chayen NE(1997)Structure 5:1269-1274;McPherson A(1976)J Biol Chem 251:6300-6303)。抗体/その抗原結合断片:抗原の結晶は、公知のX線回折技術を使用して研究し得、且つX-PLOR(Yale University,1992,distributed by Molecular Simulations,Inc.;例えば、Meth Enzymol(1985)volumes 114&115,eds Wyckoff HW et al.,;米国特許出願公開第2004/0014194号明細書)及びBUSTER(Bricogne G(1993)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 49(Pt 1):37-60;Bricogne G(1997)Meth Enzymol 276A:361-423,ed Carter CW;Roversi P et al.,(2000)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 56(Pt 10):1316-1323を参照されたい)等のコンピューターソフトウェアを使用して精製することができる。変異誘発マッピング研究は、当業者に既知の任意の方法を使用して達成され得る。例えば、アラニンスキャニング変異誘発技術等の変異誘発技術の説明に関しては、Champe M et al.,(1995)J Biol Chem 270:1388-1394及びCunningham BC&Wells JA(1989)Science 244:1081-1085を参照されたい。
【0073】
参照抗体と「同一エピトープに結合する」抗体は、参照抗体と同一アミノ酸残基に結合する抗体を指す。抗体の、参照抗体と同一エピトープに結合する能力は、水素/重水素交換アッセイ(Coales et al.Rapid Commun.Mass Spectrom.2009;23:639-647を参照されたい)又はX線結晶構造解析により決定し得る。
【0074】
本明細書で使用する用語「免疫特異的に結合する」、「免疫特異的に認識する」、「特異的に結合する」及び「特異的に認識する」は、抗体若しくはその抗原結合断片の状況における類似の用語である。これらの用語は、抗体若しくはその抗原結合断片がその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること並びに結合が抗原結合ドメイン及びエピトープ間の一部の相補性を必要とすることを意味する。従って、第1黄色ブドウ球菌(S.aureus)ロイコトキシンに「特異的に結合する」抗体は、更に他の黄色ブドウ球菌(S.aureus)ロイコトキシンにも結合できるが、非関連性、非ロイコトキシンタンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、BiaCore又はoctet結合アッセイによって測定される抗体の第1黄色ブドウ球菌(S.aureus)ロイコトキシンへの結合の約10%未満である。
【0075】
抗体は、それが所与のエピトープへの参照抗体の結合を何らかの程度遮断する限りにおいて、そのエピトープ又は重複エピトープに優先的に結合する場合に、当該のエピトープに対する参照抗体の結合を「競合的に阻害する」と言われる。競合的阻害は、当該技術分野において公知の任意の方法、例えば競合ELISAアッセイによって決定され得る。抗体は、所与のエピトープへの参照抗体の結合を少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%又は少なくとも50%競合的に阻害すると言うことができる。
【0076】
用語「核酸配列」は、DNA又はRNAのポリマー、即ち、一本鎖又は二本鎖であり得、非天然又は改変されたヌクレオチドを含み得るポリヌクレオチドを包含することが意図されている。本発明で使用する用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、リボヌクレオチド(RNA)又はデオキシリボヌクレオチド(DNA)の何れかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。これらの用語は、分子の一次構造を指しており、従って、二本鎖及び一本鎖DNA並びに二本鎖及び一本鎖RNAが含まれる。これらの用語は、同等物として、ヌクレオチド類似体及び改変されたポリヌクレオチド、例えば、限定されないが、メチル化及び/又はキャップ化ポリヌクレオチドから作製されたRNA又はDNAの何れかの類似体を含む。核酸は、典型的には、リン酸結合を介して連結され、核酸配列又はポリヌクレオチドを形成するが、当該技術分野においては他の多くの連結が知られている(例えば、ホスホロチオエート、ボラノホスフェート等)。
【0077】
本明細書で使用する「トランスフェクション」、「形質転換」又は「形質導入」は、物理的又は化学的方法を使用することによる宿主細胞への1つ以上の外因性ポリヌクレオチドの導入を指す。多くのトランスフェクション技術は、当該技術分野において公知であり、例えば、リン酸カルシウムDNA共沈法(例えば、Murray E.J.(ed.),Methods in Molecular Biology,Vol.7,Gene Transfer and Expression Protocols,Humana Press(1991));DEAE-デキストラン;エレクトロポレーション;カチオン性リポソーム媒介性トランスフェクション;タングステン粒子促進性微粒子衝撃法(Johnston,Nature,346:776-777(1990));及びリン酸ストロンチウムDNA共沈法(Brash et al,Mol.Cell Biol.,7:2031-2034(1987)を参照されたい)が挙げられる。ファージ又はウイルスベクターは、多くが市販されている好適なパッケージング細胞中での感染性粒子の増殖後に宿主細胞に導入することができる。
【0078】
本明細書で使用する用語「治療」、「治療すること」等は、診断された病的状態又は障害の症状を治癒させ、緩徐化し、軽減し、且つ/又はその進行を停止させる手段(例えば、対象への本明細書に提供した抗体若しくはその抗原結合断片の投与)を指す。従って、治療を必要とする対象としては、障害を有すると既に診断されたか又は障害を有することが疑われる対象が挙げられる。「治療有効量」は、所望の治療結果(例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症の治療)を達成するために、必要な投与量及び期間に渡り有効な量を指す。
【0079】
予防的(prophylactic又はpreventative)手段は、標的とされる病的状態又は障害の発生を予防及び/又は緩徐化する手段(例えば、対象への本明細書に提供した抗体若しくはその抗原結合断片の投与)を指す。従って、予防的(prophylactic又はpreventative)手段を必要とする対象としては、障害に罹患し易い対象及び障害が予防されなければならない対象が挙げられる。「予防有効量」は、所望の予防結果(例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症又は発病開始の予防)を達成するために、必要な投与量及び期間に渡り有効な量を指す。
【0080】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)が「コロニー形成した」対象は、身体中又は身体上に黄色ブドウ球菌(S.aureus)が存在する対象を指す。コロニー形成は、例えば、対象から得られた試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)を検出する工程によって決定することができる。黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、例えば、培養する工程又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって検出することができる。対象の身体中又は身体上の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の存在の結果として生じる、又はそれに付随する感染症は、細菌のX線写真徴候及び/又は臨床的徴候を示す。黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症は、例えば、皮膚若しくは軟組織感染症(SSTI)又は菌血症として発生し得る。黄色ブドウ球菌(S.aureus)細菌は、血流を通って移動することができ、身体内の部位に感染し、結果として肺炎、ICU肺炎、骨若しくは関節感染症、デバイス感染症、創傷感染症、手術部位感染症又は骨髄炎を生じさせる。X線写真徴候としては、例えば、浸潤物を示すX線が挙げられる。臨床的徴候としては、例えば、異常な体温、異常な白血球数、咳、膿性痰、気管支呼吸音、呼吸困難、頻呼吸(呼吸数>30回/分)及び/又は低酸素症が挙げられる。
【0081】
本明細書で使用する用語「投与する」、「投与する工程」、「投与」等は、所望の生物学的作用部位への薬物、例えば抗黄色ブドウ球菌(S.aureus)抗体若しくはその抗原結合断片の組み合わせの送達を可能にするために使用できる方法(例えば、静脈内投与)を指す。本明細書に記載した薬剤及び方法と共に用いられ得る投与技術は、例えば、下記の:Goodman and Gilman,The Pharmacological Basis of Therapeutics,current edition,Pergamon;及びRemington’s,Pharmaceutical Sciences,current edition,Mack Publishing Co.,Easton,Paに見出される。
【0082】
1種以上の更なる治療薬「との組み合わせ」投与は、同時(併用)投与及び任意の順序での継続投与を含む。
【0083】
特に明記されない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する場合、用語「又は」は、包括的であると理解されている。本明細書の「A及び/又はB」等の語句において使用される用語「及び/又は」は、「A及びB」、「A又はB」、「A」及び「B」の両方を含むことが意図されている。同様に、「A、B及び/又はC」等の語句において使用される用語「及び/又は」は、下記の実施形態:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)の各々を含むことが意図されている。
【0084】
II.抗黄色ブドウ球菌(Anti-Staphylococcus aureus)α毒素抗体
本明細書に提供するように、黄色ブドウ球菌(S.aureus)α毒素に結合する抗体及びその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体及び断片)は、低レベルの黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成した対象において黄色ブドウ球菌(S.aureus)を回避するために使用することができる。
【0085】
α毒素(AT)は、肺炎、皮膚及び軟組織感染症(SSTI)、菌血症等を含む何種かの黄色ブドウ球菌(S.aureus)症状の重要な病原性因子である(Bubeck Wardenburg,J.and O.Schneewind,J.Exp.Med.,205:287-294(2008);Inoshima et al.,J.Invest.Dermatol.,132:1513-1516(2012);及びFoletti et al.,上記を参照されたい)。抗ATモノクローナル抗体による受動免疫は、肺炎及び皮膚壊死モデルにおける疾患の重症度を軽減し(Hua et al.,Antimicrob.Agents Chemother.,58:1108-1117(2014);Tkaczyk et al.,Clin.Vaccine Immunol.,19:377-385(2012);及びRagle,B.E.and J.Wardenburg Bubeck,Infect.Immun.,77:2712-2718(2009))、H35L変異(ATH35L)を含有するAT類毒素によるワクチン接種は、マウス致死性菌血症及び肺炎モデルにおける死亡を防御した(Bubeck Wardenburg,上記、Foletti et al.,上記、Hua et al.,上記、Ragle,上記、Menzies,B.E.and D.S Kernodle,Infect. Immun.,77:2712-2718(2009);及びAdhikari et al.,PLoS One,7:e38567(2012))。ATは、血管の完全性の喪失につながる、敗血症に特徴的な過炎症反応の刺激及びADAM10媒介性内皮密着結合の切断の活性化を含む、菌血症及び敗血症時の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の病因の複数の態様に寄与する(Powers et al.,J Infect.Dis.,206:352-356(2012);Wilke,G.A.and J.Bubeck Wardenburg,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,107:13473-13478(2010);及びBecker et al.,J Innate Immun.,6:619-631(2014))。ATは又、血小板を標的とすることも実証されており、これは損傷した内皮バリアの修復を妨げ、血小板-好中球凝集体の形成を通じて臓器機能障害を促進する(Powers et al.,Cell Host Microbe,17:775-787(2015))。α毒素の構造及び機能は、例えば、Bhakdi,S.and J.Tranum-Jensen,Microbiol.Mol.Biol.Rev.,55(4):733-751(1991)に詳細に記載されている。
【0086】
ATに結合するモノクローナル及びポリクローナル抗体も又は、当該技術分野において公知であり(例えば、Hua et al.,Antimicrob.Agents Chemother.,58(2):1108-1117(2014);及びOganesyan et al.,J.Biol.Chem.,289:29874-29880(2014)を参照されたい)、例えば、Sigma Aldrich(St.Louis,MO)及びAbCam(Cambridge,MA)等の供給元から市販されている。ATに結合する代表的な抗体は、国際公開第2012/109285号パンフレット及び同第2014/074540号パンフレット(これらはどちらも、その全体において参照により本明細書中に組み込まれる)に開示されている。
【0087】
1つの例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)α毒素(AT)に特異的に結合する抗体若しくは抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体若しくは断片)は、(i)配列番号1のCDR1アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド、及び(ii)配列番号4のCDR1アミノ酸配列、配列番号5のCDR2アミノ酸配列及び配列番号6のCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む、それらから本質的に成る、又はそれらから成る。別の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに特異的に結合する抗体若しくは抗原結合断片の重鎖ポリペプチド(例えば、モノクローナル抗体若しくは断片)は、配列番号7の可変領域アミノ酸配列を含む、それから本質的に成る、又はそれから成る。別の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに特異的に結合する抗体若しくは抗原結合断片の軽鎖ポリペプチド(例えば、モノクローナル抗体若しくは断片)は、配列番号8の可変領域アミノ酸配列を含む、それから本質的に成る、又はそれから成る。別の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに特異的に結合する抗体若しくは抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体若しくは断片)は、配列番号7のアミノ酸配列を含む、それから本質的に成る又はそれから成る可変重鎖及び配列番号8のアミノ酸配列を含む、それから本質的に成る又はそれから成る軽鎖可変領域を含む、それから本質的に成る又はそれから成る。別の例では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに特異的に結合する抗体若しくは抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体若しくは断片)は、配列番号9のアミノ酸配列を含む、それから本質的に成る又はそれから成る重鎖及び/又は配列番号10のアミノ酸配列を含む、それから本質的に成る又はそれから成る軽鎖可変領域を含む、それから本質的に成る又はそれから成る。
【0088】
代表的な抗AT抗体の配列を下記に提供する。追加の抗AT抗体は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,527,905号明細書に提供されている。所定の例では、本明細書で記載される抗体若しくはその抗原結合断片は、ATに結合し、以下の2つの表に列挙した抗体の6つのCDR(即ち、第1の表で列挙した抗体の3つのVH CDR及び第2の表で列挙した同一抗体の3つのVL CDR)を有する。
【0089】
抗AT抗体MEDI4893(スブラトクスマブとしても公知である)は、ATに高親和性で結合し、標的細胞膜内でAT孔形成を効果的に遮断する長期の半減期を備えるヒトモノクローナル抗体である。半減期の延長は、新生児Fc受容体(FcRn)への結合を増加させ、結果として血清半減期を増加させるためのFcドメイン内の3つのアミノ酸置換(M252Y/S254T/T256E;YTEと呼ばれる)を導入して達成された。YTEの突然変異は、抗体半減期及びマウスにおける曝露を低減させるために、MEDI4893の同一バージョンは、「MEDI4893」又は「LC10」と呼ばれるYTE修飾を除いて、国際公開第2012/109285号パンフレット及び同第2014/074540号パンフレット(その両方が全体として本明細書に参照により組み込まれる)において以前に記載された前臨床試験モデルにおける有効性を証明するために利用されてきた。MEDI4893(若しくはスブラトクスマブ)は、配列番号9に規定したアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号10に規定したアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。MEDI4893(スブラトクスマブ)及びMEDI4893の同一のCDR配列、VH配列及びVL配列を下記の表に提供する。
【0090】
【表2】
【0091】
所定の例では、本明細書で記載した抗体若しくはその抗原結合断片は、ATに結合し、以下の表で列挙した抗体のVHを例えばVLと組み合わせて含む。
【0092】
【表3】
【0093】
所定の例では、本明細書で記載した抗体若しくはその抗原結合断片は、ATに結合し、以下の表で列挙した抗体のVLを、例えばVHと組み合わせて、任意選択的に前表で列挙した同一抗体のVHと組み合わせて含む。
【0094】
【表4】
【0095】
所定の例では、本明細書で記載した抗体若しくはその抗原結合断片は、ATに結合し、以下の表で列挙した抗体の重鎖を例えば軽鎖と組み合わせて含む。
【0096】
【表5】
【0097】
所定の例では、本明細書で記載した抗体若しくはその抗原結合断片は、ATに結合し、以下の表で列挙した抗体の軽鎖を、例えば重鎖と組み合わせて、任意選択的に前表で列挙した同一抗体の重鎖を含む。
【0098】
【表6】
【0099】
所定の態様では、抗体若しくはその抗原結合断片のCDRは、免疫グロブリン構造ループの位置を指すChothia付番スキームに従って決定することができる(例えば、Chothia C&Lesk AM,(1987),J Mol Biol 196:901-917;Al-Lazikani B et al.,(1997)J Mol Biol 273:927-948;Chothia C et al.,(1992)J Mol Biol 227:799-817;Tramontano A et al.,(1990)J Mol Biol 215(1):175-82;及び米国特許第7,709,226号明細書を参照されたい)。典型的には、Kabat付番規則を使用する場合、Chothia CDR-H1ループは、重鎖アミノ酸26~32、33又は34に存在し、Chothia CDR-H2ループは、重鎖アミノ酸52~56に存在し、Chothia CDR-H3ループは、重鎖アミノ酸95~102に存在するが、同時にChothia CDR-L1ループは、軽鎖アミノ酸24~34に存在し、Chothia CDR-L2ループは、軽鎖アミノ酸50~56に存在し、Chothia CDR-L3ループは、軽鎖アミノ酸89~97に存在する。Kabat付番規則を使用して付番した場合のChothia CDR-H1ループの末端は、このループの長さに応じてH32~H34で変化する(これは、Kabat付番スキームがH35A及びH35Bに挿入を置くためであり、35Aも35Bも存在しない場合、このループは、32で終わり、35Aのみが存在する場合、このループは、33で終わり、35A及び35Bの両方が存在する場合、このループは、34で終わる)。
【0100】
所定の態様では、本明細書では、MEDI4893抗体のChothia VH CDR及びVL CDRを含む抗体及びその抗原結合断片の組み合わせが提供される。所定の実施形態では、抗体若しくはその抗原結合断片は、1つ以上のCDRを含み、ここで、Chothia CDR及びKabat CDRは同一のアミノ酸配列を有する。所定の実施形態では、本明細書では、提供されるのは、Kabat CDR及びChothia CDRの組み合わせを含む抗体及びその抗原結合断片である。
【0101】
所定の態様では、抗体若しくはその抗原結合断片のCDRは、Lefranc M-P,(1999)The Immunologist 7:132-136及びLefranc M-P et al.,(1999)Nucleic Acids Res 27:209-212で説明されているように、IMGT付番方式に従って決定することができる。IMGT付番スキームによれば、VH-CDR1は、26~35位であり、VH-CDR2は、51~57位であり、VH-CDR3は、93~102位であり、VL-CDR1は、27~32位であり、VL-CDR2は、50~52位であり、VL-CDR3は、89~97位である。所定の実施形態では、本明細書では、例えば、Lefranc M-P(1999)上記及びLefranc M-P et al.,(1999)上記)で記載されているように、MEDI4893のIMGT VH CDR及びVL CDRを含む抗体及びその抗原結合断片の組み合わせが提供される。
【0102】
所定の態様では、抗体若しくはその抗原結合断片のCDRは、MacCallum RM et al.,(1996)J Mol Biol 262:732-745に従って決定され得る。例えば、Martin A.“Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains,”in Antibody Engineering、Kontermann and Duebel,eds.,Chapter 31,pp.422-439,Springer-Verlag,Berlin(2001)もまた参照されたい。特定の実施形態では、本明細書では、MacCallum RM et al.における方法によって決定されたMEDI4893抗体のVH CDR及びVL CDRを含む抗体若しくはその抗原結合断片の組み合わせが提供される。
【0103】
所定の態様では、抗体若しくはその抗原結合断片のCDRは、Kabat CDRとChothia構造ループとの妥協案を示し、且つOxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(Oxford Molecular Group,Inc.)により使用されるAbM超可変領域を指すAbM付番スキームに従って決定することができる。特定の実施形態では、本明細書では、AbM付番スキームにより決定されたMEDI4893抗体のVH CDR及びVL CDRを含む抗体若しくは抗原結合断片の組み合わせが提供される。
【0104】
別の態様では、本明細書に記載した抗体若しくはその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体若しくは断片)は、抗体若しくは抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体若しくは断片)の半減期を改善するために改変されている任意の好適なクラス(例えば、IgG、IgA、IgD、IgM及びIgE)の定常領域(Fc)を含むことができる。例えば、本明細書に記載した抗体若しくはその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体若しくは断片)は、変異していない同一の抗体と比べて半減期を延長する変異を含むFcを含み得る。
【0105】
Fc領域の遺伝子操作は、治療用抗体の半減期を延長し、且つIn vivoでの分解から防御するために当技術分野において広く使用されている。幾つかの実施形態では、IgG抗体若しくは抗原結合断片のFc領域を改変して、IgG異化作用を媒介し、且つIgG分子を分解から防御する胎児性Fc受容体(FcRn)に対するIgG分子の親和性を高め得る。好適なFc領域アミノ酸置換又は改変は、当該技術分野において既知であり、例えば、三重置換M252Y/S254T/T256Eが挙げられる(「YTE」と呼ばれる)(例えば、米国特許第7,658,921号明細書;米国特許出願公開第2014/0302058号明細書;及びYu et al.,Antimicrob. Agents Chemother.,61(1):e01020-16(2017)を参照されたい)。所定の態様では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATに結合する抗体若しくは抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体若しくは断片)は、YTE突然変異を含むFc領域を含む。
【0106】
本明細書で記載した抗体若しくは抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体若しくは断片)は、ヒト抗体、ヒト化抗体、非ヒト抗体又はキメラ抗体であり得るか又はそれらから得られ得る。一態様では、本明細書で記載した抗体若しくはその抗原結合断片は、完全ヒト抗体である。
【0107】
ヒト抗体、非ヒト抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体は、in vitroの供給源(例えば、ハイブリドーマ又は組換え的に抗体を産生する細胞株)及びin vivoの供給源(例えば、げっ歯類、ヒト扁桃腺)を含む任意の手段によって入手することができる。抗体を生成する方法は、当技術分野において公知であり、例えばKoehler and Milstein,Eur.J.Immunol.,5:511-519(1976);Harlow and Lane(eds.),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988);及びJaneway et al.(eds.),Immunobiology,5th Ed.,Garland Publishing,New York,N.Y.(2001))に記載されている。所定の実施形態では、ヒト抗体又はキメラ抗体は、1つ又は複数の内因性免疫グロブリン遺伝子が1つ又は複数のヒト免疫グロブリン遺伝子に置き換えられているトランスジェニック動物(例えば、マウス)を使用して生成することができる。内因性抗体遺伝子が効果的にヒト抗体遺伝子と置き換えられているトランスジェニックマウスの例としては、限定されるものではないが、Medarex HUMAB-MOUSE(商標)、Kirin TC MOUSE(商標)及びKyowa Kirin KM-MOUSE(商標)が挙げられる(例えば、Lonberg,Nat.Biotechnol.,23(9):1117-25(2005),及びLonberg,Handb.Exp.Pharmacol.,181:69-97(2008)を参照されたい)。ヒト化抗体は、任意の好適な当該技術分野において既知の方法を用いて生成することができ(例えば、An,Z.(ed.),Therapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic,John Wiley&Sons,Inc.,Hoboken,N.J.(2009)を参照されたい)、例えば、非ヒトCDRのヒト抗体骨格への移植(例えば、Kashmiri et al.,Methods,36(1):25-34(2005);及びHou et al.,J.Biochem.,144(1):115-120(2008)を参照されたい)が挙げられる。一実施形態では、ヒト化抗体は、例えば、米国特許出願公開第2011/0287485A1号明細書に記載された方法を用いて生成することができる。
【0108】
III.核酸、ベクター及び宿主細胞
同様に本明細書で提供されるのは、ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片(任意選択的に、この抗体若しくはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体若しくは断片である)をコードする1種以上の単離された核酸配列である。
【0109】
本開示は、ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片(任意選択的に、この抗体若しくはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体若しくは断片である)をコードする1種以上の核酸配列を含む1種以上のベクターを更に提供する。ベクターは、例えば、プラスミド、エピソーム、コスミド、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルス若しくはアデノウイルス)又はファージであり得る。
【0110】
ATに結合する抗体若しくはその抗原結合断片(任意選択的に、この抗体若しくはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体若しくは断片である)をコードする核酸配列を含むベクターは、任意の好適な原核細胞又は真核細胞を含む、コードされたポリペプチドを発現し得る宿主細胞に導入し得る。従って、本開示は、このベクターを含む単離細胞を提供する。使用され得る宿主細胞としては、容易且つ確実に増殖し得、適度に速い増殖速度を有し、十分に特徴付けられた発現系を有し、容易に且つ効率的に形質転換され得るか又はトランスフェクトされ得る細胞が挙げられる。
【0111】
本明細書に記載した抗体若しくは抗原結合断片(任意選択的に、モノクローナル抗体又は断片)の何れかのアミノ酸をコードする核酸配列は、「トランスフェクション」、「形質転換」又は「形質導入」によって細胞に導入され得る。
【0112】
IV.医薬組成物及び抗AT抗体を投与する方法
本開示は、有効量の本明細書に記載した任意のAT抗体若しくはその抗原結合断片及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。その量は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成した対象における感染症のリスクを低減させるために有効であり得る。
【0113】
別の態様では、本組成物は、AT結合抗体若しくは抗原結合断片をコードする核酸配列を含み得る。核酸配列は、ベクター内又はベクターの組み合わせ内で存在し得る。
【0114】
一態様では、本組成物は、担体、例えば薬学的に許容される(例えば、生理学的に許容される)担体及びAT結合抗体若しくは抗原結合断片核酸配列又はベクターを含む、薬学的に許容される(例えば、生理学的に許容される)組成物である。
【0115】
任意の好適な担体は、本開示の文脈の範囲内で使用することができ、このような担体は当該技術分野において周知である。担体の選択は、部分的には、本組成物を投与し得る所定の部位及びこの組成物を投与するために使用される所定の方法により決定されるであろう。この組成物は、任意選択的に、無菌であり得る。組成物は、保存のために冷凍又は凍結乾燥することができ、使用前に好適な無菌担体で再構成できる。この組成物は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,PA(2001)で記載された従来の技術に従って生成し得る。
【0116】
本組成物は、望ましくは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成した患者における黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症のリスクを低減させるために有効な量でAT結合抗体若しくは抗原結合断片を含む。この目的のために、本開示の方法は、AT結合抗体若しくはその抗原結合断片又は上述の抗体若しくは断片(モノクローナル抗体若しくは断片を含む)の組成物の治療上有効な量又は予防上有効な量を投与することを含む。
【0117】
状態に応じた数日以上の反復投与の場合、疾患症状の所望の抑制が起こるまで治療を繰り返すことができる。しかしながら、他の投与レジメンが有用である可能性があり、本開示の範囲内に含まれる。所望の投与量は、組成物の単回ボーラス投与、組成物の複数回ボーラス投与又は組成物の持続注入投与によって送達することができる。
【0118】
有効量の抗AT抗体若しくはその抗原結合断片は、ヒト等の対象に、静脈内、腹腔内、皮下及び筋肉内投与経路を含む標準の投与技術を用いて投与され得る。抗AT抗体若しくはその抗原結合断片は、非経口投与のために好適であり得る。本発明で使用する用語「非経口」としては、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与が挙げられる。幾つかの実施形態では、抗AT抗体若しくはその抗原結合断片は、静脈内、腹腔内又は皮下注射による末梢全身送達を使用して対象に投与される。
【0119】
AT結合抗体若しくは抗原結合断片又は同一物を含む組成物は、単独で投与され得るか、又は黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染症を治療するために従来使用されている他の薬物(例えば、アジュバント)と組み合わせて投与され得る。AT結合抗体若しくは抗原結合断片を含む組成物は、例えばペニシリナーゼ耐性β-ラクタム抗生物質(例えば、オキサシリン又はフルクロキサシリン)等の1種以上の抗生物質と組み合わせ使用され得る。ゲンタマイシンは、心内膜炎等の深刻な感染症を治療するために使用することができる。しかしながら、黄色ブドウ球菌(S.aureus)のほとんどの菌株は、現在、ペニシリンに対して耐性を示し、100人中2人が黄色ブドウ球菌(S.aureus)のメチシリン耐性菌(MRSA)を保有している。MRSA感染症は、典型的には、バンコマイシンで治療され、軽度の皮膚感染症は、3剤の抗生物質軟膏で治療され得る。
【0120】
AT結合抗体若しくは抗原結合断片を含む組成物は、例えば、1種以上の抗ブドウ球菌(S.aureus)抗生物質と組み合わせて使用することができる。
【0121】
V.抗AT抗体から利益の得られるであろう患者を同定するための方法
本明細書で証明するように、低レベルの黄色ブドウ球菌(S.aureus)、例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の閾値レベルを超えないレベルの黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成している対象への抗AT抗体若しくはその抗原結合断片の投与は、その対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)の存在に付随する感染症の発生率を低減させることができる。
【0122】
対象における黄色ブドウ球菌(S.aureus)の量は、対象から得られた試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の量に基づいて決定することができる。試料は、例えば、皮膚若しくは軟組織試料であり得る。試料は、例えば、対象の下気道から得ることができる。試料は、例えば、気管内吸引物、気管試料又は気管支試料であり得る。
【0123】
所定の態様では、抗AT抗体若しくはその抗原結合断片は、対象に投与されるが、ここで対象から得られた試料は、3.2log10 CFU/mL(約1,600~1,700CFU/mL)であると推定される所定の閾値を超えない濃度の黄色ブドウ球菌(S.aureus)を有する。
【0124】
対象から得られた試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の量は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて定量することができる。例えば、対象から得られた試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の量は、「サイクル閾値」若しくは「Ct値」と本明細書では呼ぶ、閾値信号に達するために必要とされるPCRサイクル数に基づいて定量できる数であり得る。高いCt値(即ち、閾値信号に達するために必要とされる多数のPCRサイクル)は低レベルの黄色ブドウ球菌(S.aureus)を示すが、他方低いCt値(即ち、閾値信号に達するために必要とされる少数のPCRサイクル)は、高レベルの黄色ブドウ球菌(S.aureus)を示す。
【0125】
PCRは、迅速且つ均等に実施できるので、試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の量を定量するために特に有益な方法である。例えば、PCRは、試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の量を2時間以内で検出することができる。研究所は、細菌培養に関する方法において極めて様々であるが、研究所は様々な研究所に渡って一様なPCR産出量を作製する同一タイプの機器を使用してPCRを実施するであろう。
【0126】
PCRは、試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の量を単一黄色ブドウ球菌(S.aureus)遺伝子又は黄色ブドウ球菌(S.aureus)遺伝子の組み合わせの増幅に基づいて決定するために使用することができる。例えば、PCRは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)プロテインA遺伝子を検出するために使用することができる。黄色ブドウ球菌(S.aureus)プロテインAの検出は、それらのメチシリン感受性とは無関係に、全黄色ブドウ球菌(S.aureus)を検出する。しかしながら、PCRは、更に黄色ブドウ球菌(S.aureus)が抗生物質耐性、例えばメチシリン耐性であるか否かを決定するためにも使用することができる。例えば、PCRは、メチシリン耐性決定因子(mecA)及びブドウ球菌染色体カセット(SCCmec))の存在を検出するために使用することができる。mecA及びSCCmecの両方の検出は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)がメチシリン耐性であることを示している。
【0127】
所定の態様では、抗AT抗体若しくはその抗原結合断片は、対象に投与されるが、ここで対象から得られた試料は、PCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)の最高レベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する。所定の態様では、抗AT抗体若しくはその抗原結合断片は、対象に投与されるが、ここで対象から得られた試料は、約29のPCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する。所定の態様では、抗AT抗体若しくはその抗原結合断片は、対象に投与されるが、ここで対象から得られた試料は、29~36のPCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを超えない黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する。
【0128】
所定の態様では、抗AT抗体若しくはその抗原結合断片は、対象に投与されるが、ここで対象から得られた試料は、少なくともPCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)の最低レベルにある黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する。所定の態様では、抗AT抗体若しくはその抗原結合断片は、対象に投与されるが、ここで対象から得られた試料は、約3~約29のPCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する。所定の態様では、抗AT抗体若しくはその抗原結合断片は、対象に投与されるが、ここで対象から得られた試料は、3~29のPCR Ct値と相関する黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを有する。
【0129】
29のPCR Ct値は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の約1,600~1,700コロニー形成単位(CFU)/mLの濃度に対応すると推定されている。
【0130】
本明細書で提供される、抗AT抗体若しくはその抗原結合断片を摂取することから利益を得るであろう対象を同定するための方法は、人工呼吸器が装着されている対象において特に有用であり得る。従って、対象は人工呼吸器が装着されている対象であり得る。総疾患発生率は約1~2%と相当に低いが、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)がコロニー形成した患者においては、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)肺炎の発生率は、はるかに高い(20%超)。人工呼吸器が装着されている対象では、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)肺炎は、一般に人工換気開始後の最初の1週間以内に発生する早期事象であるので、抗AT抗体若しくはその抗原結合断片のより早期の投与は、肺炎を回避する際に極めて重要であり得る。患者における黄色ブドウ球菌(S.aureus)のレベルを評価するためのPCRに基づく技術は、約2時間以内に完了できるが、他方培養技術は、はるかに緩徐である(及び更にPCRに基づく技術の正確な定量的性質が欠如する)。
【0131】
PCRに基づく技術は、更に黄色ブドウ球菌(S.aureus)コロニー形成のための培養に基づく技術と比較して有益であるが、それはPCRに基づく技術が黄色ブドウ球菌(S.aureus)を検出する際に、特に抗生物質を摂取している対象においてはより感受性が高い可能性があるためである。従って、対象は、抗生物質を摂取することができる。更に、本明細書に提供した方法の所定の態様では、対象から得られた試料のPCR分析は、対象が抗AT抗体若しくはその抗原結合断片を摂取することから利益を得るであろうことを示しており、同時にその試料は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の存在を決定するために使用される培養アッセイにおいて増殖するであろう細菌を含有していない。
【0132】
下記の実施例では、本発明を更に例示するが、当然のことながら、本発明の範囲を限定するものであると解釈されるべきではない。
【実施例
【0133】
実施例1
人工呼吸器が装着されている患者における黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(S.aureus))肺炎は、一般的には人工換気後の最初の1週間以内に発生する早期事象である。従って、この感染症を発症するリスク状態にある患者の迅速な同定は、人命救助となる可能性がある。総疾患発生率は約1~2%と相当に低いが、黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成した患者においては、その発生率は、はるかに高い(20%超)。
【0134】
急速ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、集中治療室(ICU)における人工呼吸器が装着された第2相臨床試験における下部呼吸器(LRT)において黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成したリスク状態にある患者を同定するためのアッセイとして分析した。Xpert(登録商標)MRSA/SA SSTIアッセイ(Cepheid,Sunnyvale,CA)は、PCRを実施するための製品プロトコルに従って使用した。このアッセイは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(SA)を皮膚検体及び軟組織検体から直接的に同時に検出するための高速全自動DNA検定である。検体は、溶出試薬を含有するチューブ内に配置される、二重スワブ上に収集される。ボルテックスミキサーに短時間かけた後、アッセイと共に提供された溶出材料及び2種の単回使用の試薬(試薬1及び試薬2)は、使い捨て流体カートリッジ(Xpert MRSA/SAカートリッジ)の様々な固有に表示されたチャンバーに移される。このカートリッジは、DNAを検出するために自動リアルタイム多重PCRを実施する、GeneExpert(登録商標)DXシステム機器プラットフォームに配置される。このプラットフォームでは、追加の試料調製、増幅及びリアルタイム検出が完全自動化され完全に統合されている。
【0135】
Xpert MRSA/SAアッセイにおけるプライマー及びプローブは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)プロテインA(spa)、MecA媒介性オキサシリン耐性(mecA)のための遺伝子及びSA染色体attB部位に挿入されたブドウ球菌カセット染色体(SCCmec)の核酸配列を検出する。この検定は、標的細菌の適正なプロセッシングを管理するため、及びPCRアッセイにおける阻害剤の存在を監視するための試料プロセッシング制御を含む。プローブチェック管理装置は、試薬の再水和、カートリッジ内のPCRチューブ充填、プローブ完全性及び線量安定性を検証する。
【0136】
アッセイは、図1に描出した:気管内吸引物(ETA)試料を患者から入手し、試料のスワブを溶出試薬内に挿入した。混合物をボルテックスミキサーにかけ、カートリッジ内に分注した。カートリッジは次に、検査を開始するためにPCR機器内に挿入した。検査の総実施時間は2分間未満であり、全検査は、75分間以内に完了する。
【0137】
PCR検査は、閾値信号に達するために必要とされるPCRサイクル数を表す、サイクル閾値(Ct)値を生成する。Ct値は、細菌負荷と反比例する:試料中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)の数がより多いほど、閾値レベルに達するために必要とされるサイクル数は少なくなるので、低いCt値を有するが、他方試料中のより少ない数の黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、閾値レベルに達するためにより多くのサイクル数を必要とするので、このためより高いCt値を有する。
【0138】
実施例2
実施例1で考察した迅速なPCR検査を使用して、3種の分子標的を見ることによって、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の存在若しくは非存在を検出し、黄色ブドウ球菌(S.aureus)がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S.aureus(MRSA))であるかどうかを決定した。第1標的は、それらのメチシリン感受性状態とは無関係に、全ての黄色ブドウ球菌(S.aureus)を検出する、黄色ブドウ球菌(S.aureus)プロテインA(SPA)を検出する。第2標的及び第3標的は、メチシリン耐性(methicillin-resistance determinant)決定因子(mecA)及びMRSAを検出するために使用される黄色ブドウ球菌染色体カセット(SCCmec)である。
【0139】
迅速なPCR検査は、第2相臨床試験におけるスクリーニング時の患者720例を対象に実施した。これらの患者中299例(41.5%)には、黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成していた。この数は、一般公衆の黄色ブドウ球菌(S.aureus)のコロニー形成率(25~30%)よりは高いが、ICUにおいて人工呼吸器が装着されている患者にとっては妥当な数である。黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成した患者299例中277例(92.6%)は、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(S.aureus)(MSSA)を有し、22例(7.4%)は、MRSAを有していた。
【0140】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成した患者299例中295例についてのCt値は図2に示した。(4PCR+ゼロ又は数値の得られなかったCt値を備える患者については示していない。)これらの患者における平均Ct値は25.7であり、スクリーニング時には相当に多数の患者が低いCt値(高細菌負荷)を有していた。
【0141】
人工呼吸器の装着を開始後の様々な時点にスクリーニングを実施した。そこで、Ct値は、人工呼吸器の装着の日数と比較した。図3に示した結果は、Ct値が人工呼吸器の装着の日数とは無関係に広範囲の分布を有することを証明している。そこで、黄色ブドウ球菌(S.aureus)のコロニー形成又はCt値を予測するために人工呼吸器の装着日数を使用することはできなかった。
【0142】
実施例3
本実施例では、迅速なPCRが黄色ブドウ球菌(S.aureus)コロニー形成を検出する際に培養アッセイより感受性であることを証明する。培養アッセイは、通常は寒天プレートを含有する寒天上の未希釈試料若しくは連続希釈物何れかを平板培養する工程又は画線培養する工程の何れかを含み、様々な研究所間で大きく変動する。プレートを24~48時間に渡りインキュベートした後、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の散在性コロニーを計数した(定量的培養法)、又は黄色ブドウ球菌(S.aureus)増殖の四分円の数及び増殖密度(半定量的培養法)の何れかを評価した。定性的培養は定量を提供せず、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の存在又は非存在しか評価しない。(図4を参照されたい。)従って、異なる培養法を用いると、培養の状態(黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染について陽性又は陰性)が異なる可能性があり、正確でない場合は治療レジメンを不都合に偏らせる可能性がある。
【0143】
患者299例の無作為化部分群(N=209)を対象に培養を実施した。これらの患者209例中162例(77.5%)だけが陽性培養結果を生成し、他方47例(22.5%)は陰性の培養結果を生成した。従って、培養アッセイは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)がコロニー形成した対象中の22.5%を見逃すであろう。言い換えると、迅速なPCR検査と培養アッセイとの間には77.5%の一致率及び22.5%の不一致率が見られた。この不一致の全ては、検査結果が迅速なPCRにより陽性及び培養により陰性であった試料に起因した。(図6を参照されたい。)
【0144】
結果についての更なる精査は、検査結果がPCRにより陽性及び培養により陰性であった試料を有する患者の有意に高いパーセンテージは、PCR及び培養による検査結果が陽性であった試料を有する患者よりも多くが同時に抗生物質を用いていたことを証明した。(図7を参照されたい。)これらのデータは、抗生物質の使用が培養結果に否定的な影響を及ぼすことを示唆している。しかしながら、抗生物質使用歴は培養結果には何の影響も及ぼさなかった。(図8を参照されたい。)
【0145】
更に、培養アッセイの感受性は、様々な研究所において平板培養における相違(例えば、試料の希釈、平板培養容積及び平板数)に起因して変動した。研究所の調査を下記の表に要約した。
【0146】
【表7】
【0147】
これらの9カ所の研究所間で、検出限界は3.3~10CFU/mLの間で変動した。従って、幾つかの研究所における低い培養感度は、更にPCRと培養アッセイとの間の不一致にも寄与した。
【0148】
培養が軽度、中等度又は重度の何れに分類されるのかに関するCtカットオフ値について検査した。重度と分類された培養の大多数は、29のPCR Ct値未満に低下した。しかしながら、中等度と分類された培養の有意な部分もまた29のPCR Ct値未満に低下した。実際に、更に軽度と分類された一部の培養もまた29のPCR Ct値未満に低下した。従って、これらの培養の評価は、矛盾していた。(図5を参照されたい。)
【0149】
メチシリン感受性の決定は、迅速なPCR又は培養アッセイの何れかを使用して一致していた。PCR及び培養の両方によって検査した試料162例中、方法とは無関係に、9例(5.6%)はMRSAであると同定され、153例(94.4%)はMSSAであると同定された。
【0150】
これらの結果は、培養及びPCRアッセイがメチシリン感受性を検出することに同一に有効であるが、PCRアッセイの方が黄色ブドウ球菌(S.aureus)コロニー形成に関してより感受性であることを証明している。
【0151】
実施例4
Ct値を培養陽性及び培養陰性試料において分析した。Ct値による培養陽性及び培養陰性試料の分布を図9に示し、結果についても下記の表に要約した。
【0152】
【表8】
【0153】
これらの結果に基づいて、29のCt値は、培養陽性試料と培養陰性試料とを識別する最善の仕事を行う。
【0154】
Ct値は、更に黄色ブドウ球菌(S.aureus)濃度とも相関していた。図10に示した結果は、Ct値とCFU/mL数との間の統計的有意な逆線形相関が存在することを証明している。29より大きいCt値を備える試料の大多数は低い黄色ブドウ球菌(S.aureus)負荷(≦10CFU/mL)を有し、29未満のCt値を備える試料の大多数は高い黄色ブドウ球菌(S.aureus)負荷(>10CFU/mL)を有する。29のCt値は、約3.2log10 CFU/mL(約1,600~1,700CFU/mL)に対応した。
【0155】
Ct値と黄色ブドウ球菌(S.aureus)濃度との間の類似の相関は、気管支培養物と気管培養物において検出された。(図11を参照されたい。)
【0156】
非黄色ブドウ球菌(non-Staphylococcus)増殖が観察されるか否かについてもCt値と黄色ブドウ球菌(S.aureus)濃度との間の類似の相関もまた検出された。(図12を参照されたい。)
【0157】
これらの結果は、PCRが黄色ブドウ球菌(S.aureus)コロニー形成を定量するための堅固な方法であること、及び29のCtカットオフ値が低黄色ブドウ球菌(S.aureus)コロニー形成と高黄色ブドウ球菌(S.aureus)コロニー形成を効果的に識別することを証明している。
【0158】
実施例5
人工呼吸器が装着されたICU患者における黄色ブドウ球菌(S.aureus)肺炎を防止する際の抗黄色ブドウ球菌(S.aureus)抗体であるMEDI4893の有効性は、29のCtカットオフ値を用いて低レベルの黄色ブドウ球菌(S.aureus)コロニー形成及び高レベルの黄色ブドウ球菌(S.aureus)コロニー形成を備える患者において比較した。
【0159】
対象は、彼らに(i)気管内若しくは経鼻気管チューブが挿管されており、陽圧換気サポートを受けている場合、又は(ii)気管内チューブも経鼻気管チューブも挿管されていないが、直近24時間以内に8時間以上の陽圧換気(例えば、気管切開術、持続的気道陽圧[CPAP]等を受けた患者)を必要とした場合に、人工呼吸器が装着されていると見なした。
【0160】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)肺炎は、診断時点に、何らかの明白な非感染性原因に起因しない下記のX線写真基準、臨床的基準及び微生物学的基準を満たして、人工呼吸器が装着された患者において診断された。
【0161】
X線写真基準:事象の24時間以内に得られた胸部X線上の肺炎と一致する新たな又は悪化した浸潤影(有資格放射線科医により診断)、及び
【0162】
臨床基準:以下の小さな、若しくは1つの大きな呼吸徴候又は初発の症状の内の少なくとも2つ
・小基準:
感染症の全身性徴候(下記の1つ以上):
異常な体温(>38℃の口腔体温若しくは鼓膜温度、又は≧38.3℃の深部体温、又は<35℃の深部体温により定義される低体温症)、及び/又は異常な白血球数(>細胞10,000個/mm3のWBC数、<細胞4,500個/mm3のWBC数、又は>15%の桿状好中球)
化膿性気管内分泌物の産生
肺炎/肺硬変と一致する新たな健康診断所見(例えば、水泡音、ロンカイ、気管支呼吸音)、打診による濁音
・大基準:
下記により決定される、酸素供給を向上させるための換気サポート系において生じる急激な変化
少なくとも4時間維持される、<240mmHgのPaO/FiO比、又は
少なくとも4時間維持されるPaO/FiOの≧50mmHgの低減
及び
【0163】
微生物学的確認(事象開始後24時間以内に得られた)下記のうちの少なくとも1つ
・ 呼吸器検体は、培養による黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して陽性である。挿管された対象における気管内吸引により得られた、又は気管支肺胞洗浄(BAL)を用いた気管支鏡検査若しくは検体保護ブラシ(PSB)サンプリングにより得られる呼吸分泌物の検体が挙げられる。挿管はされていないが人工呼吸器のプロトコル定義を満たす対象において、喀痰の検体は許容可能であった。
・ 黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して陽性(及び肺外側の明らかな一次感染源はない)である血液培養物
・ 肺炎のエピソード中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)について陽性の胸膜液吸引物又は肺組織培養物
【0164】
結果は、以下の表に示した。
【0165】
【表9】
【0166】
相対リスクの低減(5,000mgのMEDI4893対プラセボ;90%の信頼区間(CI)及び堅固な変動を伴うポアゾン回帰に基づくp値。
【0167】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)単独肺炎の82.6%の相対リスクの低減(90%のCI:-1.0%、97.0%)、あらゆる原因の肺炎の30.6%の相対リスクの軽減(90%のCI:-4.9%、54.0%)及びあらゆる原因の肺炎又は死亡の23.1%の相対リスクの軽減(90%のCI:23.1%~4.9%、43.6%)もまた観察された。
【0168】
【表10】
【0169】
相互作用のp値は、治療群、検査中の部分群及び部分群相互作用による処置を含む、堅固な変動を伴うポアゾン回帰分析から得られる。相対リスクの低減(5,000mgのMEDI4893対プラセボ)及び90%の信頼区間(CI)は、比率に関する無条件の信頼区間に基づいた。
【0170】
少なくとも29のCt値(低黄色ブドウ球菌(S.aureus))を有する患者は、33.3%の発病率を有し、MEDI4893は、約67%の統計的有意な相対的低減リスク(RRR)を生じさせた。これとは対照的に、全集団は、26%の発病率を有し、MEDI4893は、統計的に有意ではない32%のRRRを生成した。29未満のCt値(高黄色ブドウ球菌(S.aureus))を有する患者は22.2%の発病率及び統計的に有意ではない約2.5%のRRRを有していた。
【0171】
これらの結果は、抗α毒素抗体であるMEDI4893が低黄色ブドウ球菌(S.aureus)コロニー形成を有する患者において有効性の増加を示したことを証明している。
【0172】
実施例6
抗黄色ブドウ球菌(S.aureus)抗体が医療資源利用の節約に及ぼす作用についてもまた分析した。主要な結果は、下記の表に要約した。
【0173】
【表11】
【0174】
これらの結果は、MEDI4893が入院期間、ICU滞在期間及び人工呼吸器装着期間を低減させたことを証明している。
【0175】
本明細書に引用した刊行物、特許出願及び特許を含む参考文献は全て、各参考文献が参照により組み込まれることが個別且つ具体的に示され、本明細書にその全体が記載されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0176】
本明細書の数値の範囲の列挙は、本明細書で別段の指示がない限り、範囲内にある各個別の数値を個別に参照する簡略化された方法として役立つことが単に意図され、各個別の値は、本明細書に個別に引用されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載した全ての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって別に明確に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書で提供するありとあらゆる例、又は例示的な言葉(例えば「等の」)の使用は、本発明を、単に、より明らかにするためのものであり、別に主張されない限り、本発明の範囲に対する制限を与えない。本明細書中の言葉は、本発明の実施に不可欠であるものとしての何れかの主張されていない要素を示すと解釈すべきではない。
【0177】
本発明の好ましい実施形態は、本発明を実施するために発明者に知られているベストモードを含めて、本明細書に記載されている。それらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読むと、当業者には明らかになり得る。本発明者らは、当業者がそのような変形形態を適切に用いることを期待し、本発明者らは、本明細書で具体的に説明されている以外の方法で本発明を実施することを意図している。従って、本発明は、適用可能な法律により許可されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲で列挙された主題の全ての改変形態及び均等物を含む。更に、その全ての可能な変形形態における上記の要素の任意の組み合わせは、別途本明細書で指示されない限り又は別途文脈により明確に矛盾しない限り、本発明に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2022524420000001.app
【国際調査報告】