IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタの特許一覧

特表2022-524422患者を処置するための複合超音波及び電気刺激のためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(54)【発明の名称】患者を処置するための複合超音波及び電気刺激のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 7/00 20060101AFI20220422BHJP
   A61N 1/36 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
A61N7/00
A61N1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021554626
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 US2020021811
(87)【国際公開番号】W WO2020185734
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】62/816,857
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】305023366
【氏名又は名称】リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】リム ヒューバート
(72)【発明者】
【氏名】ザックス ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】カイザー クレア
【テーマコード(参考)】
4C053
4C160
【Fターム(参考)】
4C053JJ01
4C053JJ21
4C053JJ31
4C160MM32
(57)【要約】
炎症、自己免疫障害、及び関節リウマチなどを処置するための複合超音波及び電気刺激のためのシステム及び方法を提供する。治療効果を促進するように適切にタイミング調整されたパターンで脾臓、関節、体肢、又は疼痛を受けて局所腫脹を有する領域に非侵襲的超音波刺激を印加することができ、末梢神経、迷走神経、三又神経、又は他の神経にアクセスするために顔、首、又は他の身体領域に電気刺激を印加することができる。望ましい臨床効果又は処置に基づいて刺激タイミング又は遅延タイミングを最適化することができる。自然な生理学的機能をより的確に模擬するために複数のターゲットを協調様式で刺激することができる。ウェアラブル超音波フェーズドアレイデバイスを用いて脾臓にターゲットを定めるようにエネルギをビーム形成し、同時にターゲット領域の局所刺激を維持するために脾臓の動きを追跡するための撮像機能を有することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の協調超音波及び電気刺激のための方法であって、
超音波刺激を前記患者の第1のターゲットに印加する段階と、
電気刺激を前記患者の第2のターゲットに印加する段階と、
前記印加された超音波刺激及び前記印加された電気刺激に基づいて刺激パラメータ及び前記第1のターゲットと前記第2のターゲットとの間のタイミング遅延を決定する段階と、
前記患者の病態を処置するために前記決定されたタイミング遅延及び刺激パラメータを用いて前記患者に協調超音波刺激及び電気刺激を印加する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記タイミング遅延を決定する段階は、
前記患者の身体サイズ、
前記第1のターゲットと前記第2のターゲットとの間の信号の通過時間、
前記第1のターゲットと前記第2のターゲットとの間の信号の速度、
前記患者の心拍数、
処置されている特定の疾患の生理学的要件、
刺激に関連する関連の分子マーカ及び生体マーカの変化を評価するための血液サンプル、
前記第1又は第2のターゲットのうちの少なくとも一方に関連する局所領域のEEG脳活動、及び
前記患者内の炎症の重篤度、
のうちの少なくとも1つを測定する段階を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タイミング遅延は、0から1000msの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記タイミング遅延は、300msよりも短い、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のターゲットは脾臓である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のターゲットは、
顔、
首、
耳、又は
迷走神経又は三又神経に近い前記患者上の部位、
のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記協調超音波刺激及び電気刺激は、前記患者上に位置付けられた少なくとも1つのウェアラブルデバイスを使用する段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
超音波ビームステアリングを用いて前記第1のターゲットの動きを補償する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
刺激パラメータを決定する段階は、
負荷サイクル、
周波数、
圧力、
持続時間、
ビームフォーカス、及び
パルスパターン、
のうちの少なくとも1つを含む超音波刺激パラメータを決定する段階を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記パルスパターンは、
パルスの非変調バースト、
正弦波変調パルス列、
チャープパルス、及び
スパイクパルス、
のうちの少なくとも1つを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
刺激パラメータを決定する段階は、
電流、
電圧、
周波数、
持続時間、
位相、
位相パターン、及び
パルスパターン、
のうちの少なくとも1つを含む電気刺激パラメータを決定する段階を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
患者の協調超音波及び電気刺激のためのシステムであって、
前記患者の第1のターゲットを刺激するための超音波変換器と、
前記患者の第2のターゲットを刺激するための電気刺激器と、
前記第1のターゲットの超音波刺激及び前記第2のターゲットの電気刺激に基づいて刺激パラメータ及び前記第1のターゲットと前記第2のターゲットとの間のタイミング遅延を決定し、かつ
前記患者の病態を処置するために前記決定されたタイミング遅延及び刺激パラメータを用いて前記患者に協調超音波刺激及び電気刺激を印加する、
ように構成されたコンピュータシステムと、
を含むシステム。
【請求項13】
前記タイミング遅延を決定することは、
前記患者の身体サイズ、
前記第1のターゲットと前記第2のターゲットとの間の信号の通過時間、
前記第1のターゲットと前記第2のターゲットとの間の信号の速度、
前記患者の心拍数、
処置されている特定の疾患の生理学的要件、
刺激に関連する関連の分子マーカ及び生体マーカの変化を評価するための血液サンプル、
前記第1又は第2のターゲットのうちの少なくとも一方に関連する局所領域のEEG脳活動、及び
前記患者内の炎症の重篤度、
のうちの少なくとも1つを測定することを含む、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記タイミング遅延は、0から1000msの範囲にある、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記タイミング遅延は、300msよりも短い、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1のターゲットは脾臓である、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記第2のターゲットは、
顔、
首、
耳、又は
迷走神経又は三又神経に近い前記患者上の部位、
のうちの少なくとも1つである、
請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記協調超音波刺激及び電気刺激は、前記患者上に位置付けられた少なくとも1つのウェアラブルデバイスを使用することを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記コンピュータシステムは、超音波ビームステアリングを用いて前記第1のターゲットの動きを補償するように構成されることを更に含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
刺激パラメータを決定することは、
負荷サイクル、
周波数、
圧力、
持続時間、
ビームフォーカス、及び
パルスパターン、
のうちの少なくとも1つを含む超音波刺激パラメータを決定することを含む、
請求項12に記載のシステム。
【請求項21】
前記パルスパターンは、
パルスの非変調バースト、
正弦波変調パルス列、
チャープパルス、及び
スパイクパルス、
のうちの少なくとも1つを含む、
請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
刺激パラメータを決定することは、
電流、
電圧、
周波数、
持続時間、
位相、
位相パターン、及び
パルスパターン、
のうちの少なくとも1つを含む電気刺激パラメータを決定することを含む、
請求項12に記載のシステム。
【請求項23】
患者の協調超音波及び電気刺激に使用されることになる信号を発生させるためのコンピュータ実行方法であって、
前記患者の第1のターゲットへの超音波刺激をトリガするように構成された第1の制御信号を発生する段階と、
前記患者の第2のターゲットへの電気刺激をトリガするように構成された第2の制御信号を発生する段階と、
前記超音波刺激の第1の制御信号及び前記電気刺激の第2の制御信号に基づいて刺激パラメータ及び前記第1のターゲットと前記第2のターゲットとの間のタイミング遅延を決定する段階と、
前記患者の病態を処置するために前記決定されたタイミング遅延及び刺激パラメータを用いて前記患者の協調超音波刺激及び電気刺激のための第3の制御信号を発生する段階と、
を含むコンピュータ実行方法。
【請求項24】
前記タイミング遅延を決定する段階は、
前記患者の身体サイズ、
前記第1のターゲットと前記第2のターゲットの間の信号の通過時間、
前記第1のターゲットと前記第2のターゲットの間の信号の速度、
前記患者の心拍数、
処置されている特定の疾患の生理学的要件、
刺激に関連する関連の分子マーカ及び生体マーカの変化を評価するための血液サンプル、
前記第1又は第2のターゲットのうちの少なくとも一方に関連する局所領域のEEG脳活動、及び
前記患者内の炎症の重篤度、
のうちの少なくとも1つを測定する段階を含む、
請求項23に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項25】
前記タイミング遅延は、0から1000msの範囲にある、請求項23に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項26】
前記タイミング遅延は、300msよりも短い、請求項25に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項27】
前記第1のターゲットは脾臓である、請求項23に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項28】
前記第2のターゲットは、
顔、
首、
耳、又は
迷走神経又は三又神経に近い前記患者上の部位、
のうちの少なくとも1つである、
請求項23に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項29】
前記患者の協調超音波刺激及び電気刺激のための前記第3の制御信号を発生する段階は、前記患者上に位置付けられた少なくとも1つのウェアラブルデバイスに対して前記第3の制御信号を発生する段階を含む、請求項23に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項30】
超音波ビームステアリングを用いて前記第1のターゲットの動きを補償する段階を更に含む請求項23に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項31】
刺激パラメータを決定する段階は、
負荷サイクル、
周波数、
圧力、
持続時間、
ビームフォーカス、及び
パルスパターン、
のうちの少なくとも1つを含む超音波刺激パラメータを決定する段階を含む、
請求項23に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項32】
前記パルスパターンは、
パルスの非変調バースト、
正弦波変調パルス列、
チャープパルス、及び
スパイクパルス、
のうちの少なくとも1つを含む、
請求項31に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項33】
刺激パラメータを決定する段階は、
電流、
電圧、
周波数、
持続時間、
位相、
位相パターン、及び
パルスパターン、
のうちの少なくとも1つを含む電気刺激パラメータを決定する段階を含む、
請求項23に記載のコンピュータ実行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この出願は、引用によって本明細書にその全体が組み込まれている2019年3月11日出願の「患者を処置するための複合超音波及び電気刺激のためのシステム及び方法(Systems and Methods for Combined Ultrasound and Electrical Stimulation for Treating A Subject)」という名称の米国仮特許出願第62/816,857号の利益を主張するものである。
【0002】
〔連邦支援研究に関する陳述〕
該当せず
【背景技術】
【0003】
関節リウマチ(RA)及び他の炎症病態は、多くの場合に疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)又は抗腫瘍壊死ファクタ(抗TNF)薬を用いて処置される。そのような療法は、多くの患者に対して有効であるが、深刻な副作用を引き起こす場合があり、かつ依然として多数の患者に対して無効であることが実証されており、RA患者の3分の1までが彼らの1回目の抗TNF薬に反応しないと推定されている。反応しない患者は、多くの場合に、中毒及び他の危険な副作用を引き起こす可能性がある非ステロイド抗炎症薬(NSAID)が処方される。
【0004】
最近になって、広範囲の健康障害を処置するために末梢神経(例えば、迷走神経)及び終末器官(すなわち、神経伝導路の末端終末にある器官)を刺激する電気薬学又は生体電子工学医療として知られる分野で急激な成長及び注目が高まっている。例えば、侵襲的迷走神経刺激が、関節リウマチ、過敏性腸症候群、及び耳鳴、鬱、発作などのような多くの他の健康状態を処置することができることを示す最近の研究がある。迷走神経によって調節され、関節リウマチ、腎不全、及び肝損傷の処置に関与し、並びに癌/腫瘍の処置及び脳卒中の回復に密接な関係がある抗炎症効果を引き出すために脾臓内の活動が重要な構成要素であることを示す研究もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
迷走神経は、脾臓と分離した状態では機能せず、脾臓は、膨脹関節/体肢と分離した状態では機能しない。迷走神経刺激は有望ではあるが、迷走神経に電気刺激を印加することは、電流が組織を通って制御不能に流れる可能性があり、かつ迷走神経が身体の多くの機能に関与し、心拍数のような生命維持機能にさえも関与するので複雑である。電気インプラントを用いてこれらの終末器官内の細胞にアクセスすることも、これらの領域の中にチップを埋め込む段階だけではなく、更に特定領域にターゲットを定めることを可能にする段階では困難である。それでも尚、関節リウマチは世界人口のほぼ~1%に影響を及ぼしているので、従来薬物の副作用を含まない有効な非侵襲処置の必要が残っている。そのようなソリューションに自己免疫/炎症病態と共に他の関節炎型が含まれる場合に、潜在的に一億人の人々が利益を受けることができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の開示は、炎症及び自己免疫障害などを非侵襲的に処置するための複合超音波及び電気刺激のためのシステム及び方法を提供することによって上述の欠点に対処する。脾臓、関節、体肢、又は疼痛を受けて局所腫脹を有する領域に非侵襲的超音波刺激を印加することができ、末梢神経、迷走神経、三又神経、又は他の神経にアクセスするために顔、首、耳、又は他の身体領域に電気刺激を印加することができる。関節リウマチなどのような自己免疫障害及び炎症性障害に対する処置効果を促進するように適切にタイミングを協調させたパターンを使用することができる。望ましい臨床効果又は処置に基づいて刺激タイミング又は遅延タイミングを最適化することができる。自然な生理学的機能をより的確に模擬するために複数のターゲットを協調様式で刺激することができる。一部の構成では、超音波処置又は電気処置が長く施されるほど処置効果を大きくすることができる。一部の構成では、ウェアラブル超音波フェーズドアレイデバイスを用いて、脾臓にターゲットを定めるようにエネルギをビーム形成し、同時にターゲット領域の局所刺激を維持するために脾臓の動きを追跡するための撮像機能を有することができる。
【0007】
一構成では、患者への超音波と電気の協調刺激のための方法を提供する。本方法は、超音波刺激を患者の第1のターゲットに印加する段階と、電気刺激を患者の第2のターゲットに印加する段階とを含む。更に、本方法は、印加超音波刺激及び印加電気刺激に基づいて刺激パラメータ及び第1のターゲットと第2のターゲットの間のタイミング遅延を決定する段階を含む。その後に、患者の病態を処置するために決定されたタイミング遅延及び刺激パラメータを用いて患者に協調超音波刺激及び電気刺激を印加することができる。
【0008】
一部の構成では、タイミング遅延を決定する段階は、患者の身体サイズ、第1のターゲットと第2のターゲットの間の信号の通過時間、第1のターゲットと第2のターゲットの間の信号の速度、患者の心拍数、処置されている特定の疾患の生理学的要件、刺激に関連する分子マーカ及び生体マーカの変化を評価するための血液サンプル、第1又は第2のターゲットのうちの少なくとも一方に関連する局所領域のEEG脳活動、及び/又は患者内の炎症の重篤度を測定する段階を含むことができる。一部の構成では、タイミング遅延は、0から1000msの範囲にある場合があり、又は300msである場合がある。
【0009】
一部の構成では、刺激パラメータを決定する段階は、負荷サイクル、周波数、圧力、持続時間、ビームフォーカス、及び/又はパルスパターンを含む超音波刺激パラメータを決定する段階を含むことができる。一部の構成では、刺激パラメータを決定する段階は、電流、電圧、周波数、持続時間、位相、位相パターン、及び/又はパルスパターンを含む電気刺激パラメータを決定する段階を含むことができる。
【0010】
一部の構成では、第1のターゲットは脾臓である。一部の構成では、第2のターゲットは、顔、首、耳、又は患者上で迷走神経又は三又神経に近い部位である。
【0011】
一構成では、患者の協調超音波及び電気刺激のためのシステムを提供する。システムは、患者の第1のターゲットを刺激するのに使用される超音波変換器と、患者の第2のターゲットを刺激するための電気刺激器とを含む。更に、システムは、第1のターゲットの超音波刺激及び第2のターゲットの電気刺激に基づいて刺激パラメータ及び第1のターゲットと第2のターゲットの間のタイミング遅延を決定するように構成されたコンピュータシステムを含む。コンピュータシステムは、患者の病態を処置するために決定されたタイミング遅延及び刺激パラメータを用いて患者に協調超音波刺激及び電気刺激を印加するように更に構成される。
【0012】
一構成では、患者の協調超音波及び電気刺激に使用されることになる信号を発生させるためのコンピュータ実行方法を提供する。コンピュータ実行方法は、患者の第1のターゲットへの超音波刺激をトリガするように構成された第1の制御信号を発生する段階と、患者の第2のターゲットへの電気刺激をトリガするように構成された第2の制御信号を発生する段階とを含む。更に、コンピュータ実行方法は、超音波刺激の第1の制御信号及び電気刺激の第2の制御信号に基づいて刺激パラメータ及び第1のターゲットと第2のターゲットの間のタイミング遅延を決定する段階を含む。患者の病態を処置するために決定されたタイミング遅延及び刺激パラメータを用いて患者の協調超音波刺激及び電気刺激のための第3の制御信号を発生させることができる。
【0013】
コンピュータ実行方法の一部の構成では、タイミング遅延を決定する段階は、患者の身体サイズ、第1のターゲットと第2のターゲットの間の信号の通過時間、第1のターゲットと第2のターゲットの間の信号の速度、患者の心拍数、処置されている特定の疾患の生理学的要件、刺激に関連する分子マーカ及び生体マーカの変化を評価するための血液サンプル、第1又は第2のターゲットのうちの少なくとも一方に関連する局所領域のEEG脳活動、及び/又は患者内の炎症の重篤度のうちの少なくとも1つを測定する段階を含む。一部の構成では、タイミング遅延は、0から1000msの範囲にある。一部の構成では、タイミング遅延は、300msよりも短いか又はそれに等しい。
【0014】
コンピュータ実行方法の一部の構成では、第1のターゲットは脾臓である。第2のターゲットは、顔、首、耳、又は患者上で迷走神経又は三又神経に近い部位のうちの少なくとも1つとすることができる。
【0015】
コンピュータ実行方法の一部の構成では、患者の協調超音波刺激及び電気刺激のための第3の制御信号を発生する段階は、患者上に位置付けられた少なくとも1つのウェアラブルデバイスのためにこの制御信号を発生する段階を含む。第1のターゲットの動きを補償する段階は、超音波ビームステアリングを用いて実施することができる。
【0016】
コンピュータ実行方法の一部の構成では、刺激パラメータを決定する段階は、負荷サイクル、周波数、圧力、持続時間、ビームフォーカス、及び/又はパルスパターンのうちの少なくとも1つを含む超音波刺激パラメータを決定する段階を含む。刺激パラメータを決定する段階は、電流、電圧、周波数、持続時間、位相、位相パターン、及び/又はパルスパターンのうちの少なくとも1つを含む電気刺激パラメータを決定する段階を含むことができる。
【0017】
本発明の開示の以上の及び他の態様及び利点は、以下の説明から明らかであろう。この説明では、その一部を形成して好ましい実施形態を例示的に示す添付図面を参照する。しかし、この実施形態は、必ずしも本発明の完全な範囲を表すとは限らず、従って、本発明の範囲を解釈するために特許請求の範囲と本明細書を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】協調超音波及び電気刺激を提供するための非限定的な例示的フローチャートである。
図2A】本発明の開示のシステム及び方法と併用することができる超音波システムのブロック図である。
図2B】非限定的な例示的ウェアラブル電極システムの図である。
図2C】非限定的な例示的複合超音波及び電気刺激システムの図である。
図3】電気刺激のみの非限定的な例示的結果を描くグラフである。
図4A-4D】図4Aは治療効果が2つのモダリティの間の遅延に依存する複合超音波及び電気刺激を用いた非限定的な例示的結果を描くグラフである。図4Bは超音波及び電気刺激タイミングを示す図4Aの一部分の詳細図である。図4Cは超音波及び電気刺激タイミングを示す図4Aの別の部分の詳細図である。図4Dは超音波及び電気刺激タイミングを示す図4Aの更に別の部分の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
協調非侵襲神経調節のためのシステム及び方法を提供する。関節リウマチのような自己免疫障害及び炎症性障害に対する処置効果を促進するように適切にタイミング調整されたパターンで脾臓及び/又は疼痛を受けて局所腫脹を有する関節、体肢、又は他の領域に超音波刺激を印加し、それに首、顔、又は他の身体領域の電気刺激を組み合わせることができる。協調又は複合超音波及び電気刺激手法は、自然な身体機能を利用し、この場合に、治癒効果を獲得するのにこれらの異なる経路及び局所領域が協調方式で活性化される。本発明の開示でのシステム及び方法は、これらのより自然な過程を模擬して非協調刺激によって又はいずれかの刺激を単独に用いて与えることができる治癒よりも高度な治癒を可能にする。異なる身体組成が分離状態では自然に機能せず、互いに結びついており、相乗的かつ高められた結果を達成するには適切にタイミング調整されたパターンでの共活性化を必要とするので、単純に迷走神経だけ又は脾臓だけを繰り返し人工的に刺激することは、実質的に準最適な効果のみを有することが予想される。
【0020】
本発明の開示の神経調節技術は、脾臓又は終末器官内の細胞を直接調節する可能性を有する。これらの技術は、多くの健康障害に対する薬物処置に取って代わり、副作用を低減することができる。抗TNFRAを用いた有効な処置を受けているかなりの人口のRA患者は、望ましくない副作用を最小限に止めるために自分達の薬物療法を非侵襲的超音波及び電気刺激のための本発明のシステム及び方法で補うことができる。
【0021】
図1を参照すると、協調超音波及び電気刺激のための非限定的な例示的段階を描くフローチャートが示されている。段階110では、超音波刺激のための部位を決定することができる。超音波部位を決定する段階の非限定例は、患者上で身体着用式超音波デバイスを置くための位置を選択する段階、患者上で従来の超音波プローブを置くための位置を選択する段階、又は下記で説明するように脾臓上又はその内部で超音波刺激ターゲットをビームステアリングなどを用いて調節する段階を含む。一部の構成では、本方法は、コンピュータシステム上に又はそれによって実施することができる。
【0022】
段階120では、電気刺激のための部位を決定することができる。この部位は、末梢神経、迷走神経、三又神経、又は他の神経へのアクセス又は近接度に基づいて決定することができる。一部の構成では、非侵襲電気刺激(EStim)のための部位は、関節リウマチのような患者の病態を更に処置することができる脾臓及び脳への迷走神経経路の調節を行うための顔、首、耳、又は他の身体領域の面上のものとして決定することができる。一部の構成では、電気刺激は、処置を送出しながら長期にわたって患者上の定位置に留置することができる身体着用式デバイス又は身体着用式パッチによって送出することができる。電気刺激のための部位は、デバイス又はパッチを患者上にどのようにして物理的に配置することができるかに部分的に基づく場合がある。刺激部位は、例えば、迷走神経経路又は三又神経経路からの投射を受ける脳幹領域の位置付けることができるEEG記録に基づいて心拍数を修正する機能又は最も大きい誘起電位を引き出す機能に基づいて調節することができる。一部の構成では、複数の電気刺激デバイスを患者上の異なる部位に配置することができ、どの電気刺激器を起動又は使用するかは、超音波刺激の結果からのフィードバックに基づくことが可能である。
【0023】
段階130では、協調超音波及び電気刺激のためのタイミング遅延を決定することができる。協調超音波及び電気刺激間のこれらのタイミング遅延は、患者内の炎症を低減することのような望ましい臨床効果を達成するように最適化することができる。一部の構成では、遅延タイミングは、患者の身体サイズ及び望ましい部位への超音波刺激又は電気刺激からの信号の通過時間又は速度などを考慮したものとすることができる。タイミングは、ターゲット抗炎症状態の望ましい持続時間又は所要強度に基づいて個々の患者での処置中の特定の疾患又はその重篤度に適応させることができる。一構成では、タイミング遅延を決定するために、それぞれの部位への電気及び/又は超音波のいずれかの刺激、それに続く他の部位において感受される信号、及びこの信号を感受するのに要する時間を測定する段階を使用することができる。一部の構成では、直前の刺激に基づいて最適なタイミング遅延を決定するために、患者の心拍数を測定することができる。タイミング遅延は、部位間で0と1000msの間に範囲にわたることが可能である。一構成では、タイミング遅延は、100msよりも短いことが可能である。図4Aに示すように、マウスでの炎症を処置するためには50ms又はそれよりも短い遅延を用いた時により有効な治療が発生し、この場合に、300msのようなかなり長い遅延は有効ではなかった。これらのデータは、超音波及び電気刺激間の適切な遅延が処置の有効性に対して重要であることを明らかにしている。より大きい寸法の人体は、数百ミリ秒から1000msまでを含むより大きい遅延範囲から利益を受けることができる。
【0024】
段階140では、最適刺激パラメータを決定することができる。最適刺激パラメータは、上述のように望ましい臨床結果及び/又は望ましいタイミング遅延に基づいて決定することができ、各患者又は臨床処置に対してカスタムパラメータを与えることができる。超音波刺激では、刺激パラメータの最適化は、負荷サイクル、周波数、圧力、持続時間、ビームフォーカス、及びパルスパターンなどを決定する段階を含むことができる。一部の構成では、図4Aに示すように、~350kPaでは、1sのオンと5sのオフとを有する1MHzの超音波を有効とすることができる。他の構成では、超音波刺激は1MHzよりも低くすることができる。非限定例では、超音波刺激は、500kHzとすることができる。電気刺激パルスでは、最適パラメータは、電流、電圧、周波数、持続時間、位相、及びパルスパターンなどを含むことができる。一部の構成では、図3及び図4Aに示すように、処置に対して1Hzで1mAの電気刺激を有効とすることができる。他の構成では、電気刺激は、有効な処置に対して25~30Hzの範囲にあることが可能である。更に別の構成では、処置に対して500μAの電気刺激を有効とすることができる。刺激は、1日に30~60分間にわたって繰り返すことができる。一部の構成では、図4Aのように一度に2分間、一度に12分間にわたって、又は患者に関して測定された炎症の低減のような望ましい臨床結果をもたらすまで実施することができる。他の構成では、刺激は、患者が着用しているデバイスによって絶え間なく供給することができる。最適な治療に向けてモダリティ間のタイミングのような他のパラメータを使用することができる。
【0025】
非限定的な例示的超音波刺激パラメータを下記の表1に列記する。表1は、拡張されて最適化されたパラメータ範囲を含む。同じく非限定的な例示的電気刺激パラメータを下記の表2に列記する。表2もまた、拡張されて最適化されたパラメータ範囲を含む。
【0026】
表1-超音波刺激パラメータ
【0027】
表2-電気刺激パラメータ
【0028】
一部の構成では、最適刺激パラメータは、最適刺激パルスパターンを含む。超音波に関する非限定的な例示的パルスパターンは、1sオンで5sオフの16.7%負荷サイクル、500msオンで500msオフの50%負荷サイクル、及び350msオンで650msオフの35%負荷サイクル、又はこれらのパラメータの間のパルスパターンタイミング及び負荷サイクルのいずれかの範囲、及びこれらのあらゆる組合せを含む。非変調パルスバースト、正弦波変調パルス列、チャープパルス、及びスパイクパルスなどのようなあらゆる適切なパルスパターンを使用することができる。一部の非限定的な例示的電気信号のパルスパターン及び波形を下記の表3に列記する。
【0029】
表3-パルスのパターン及び波形
【0030】
段階150では、上述のように決定されたタイミング遅延及び最適パラメータを用いて協調超音波及び電気刺激を印加することができる。段階160では、ターゲット又は患者の動きを補償するように又は発生する可能性がある他の変化を考慮するように協調刺激を調節することができる。刺激パラメータを決定し、協調超音波及び電気刺激を患者に送出する過程は、経路170によって示すように繰り返すことができる。繰り返して最適パラメータを決定し、刺激を提供する段階の非限定例は、ターゲットの動きのような変化がトリガとなり又はユーザによって決定され、決定された刺激回数にわたって、各刺激の過程を繰り返す段階を含む。
【0031】
図2Aは、本発明の開示に説明する方法を実施するのに使用することができる超音波システム例200を示している。超音波システム200は、複数の個別駆動式変換器要素204を含む変換器アレイ202を含む。変換器アレイ202は、直線アレイ、曲線アレイ、及びフェーズドアレイ等々を含むあらゆる適切な超音波変換器アレイを含むことができる。同様に、変換器アレイ202は、1D変換器、1.5D変換器、1.75D変換器、2D変換器、及び3D変換器等々を含むことができる。
【0032】
送信機206によって活性化されると、所与の変換器要素204が超音波エネルギのバーストを生成する。検査下の物体又は患者から変換器アレイ202に反射して戻された超音波エネルギ(例えば、エコー)は、各変換器要素204によって電気信号(例えば、エコー信号)に変換され、スイッチ210のセットを通して受信機208に別々に印加することができる。送信機206、受信機208、及びスイッチ210は、1又は2以上のコンピュータを含むことができるコントローラ212の制御下で作動される。一例として、コントローラ212は、コンピュータシステムを含むことができる。
【0033】
送信機206は、非フォーカス又はフォーカス超音波を送信するようにプログラムすることができる。一部の構成では、送信機206は、発散波、球面波、円筒波、平面波、又はその組合せを送信するようにプログラムすることができる。更に、送信機206は、空間符号化又は時間符号化パルスを送信するようにプログラムすることができる。
【0034】
受信機208は、目下の撮像作業に向けて適切な検出シーケンスを実行するようにプログラムすることができる。一部の実施形態では、検出シーケンスは、線毎の走査、複合平面波撮像、合成開口撮像、及び複合発散ビーム撮像のうちの1又は2以上を含むことができる。
【0035】
一部の構成では、送信機206及び受信機208は、高フレームレートを実行するようにプログラムすることができる。例えば、少なくとも100Hzの取得パルス反復周波数(「PRF」)を有するフレームレートを実行することができる。一部の構成では、超音波システム200は、時間方向に少なくとも100個のエコー信号アンサンブルをサンプリング及び格納することができる。
【0036】
コントローラ212は、本発明の開示に説明するか又は当業技術で別途公知の技術を用いて撮像シーケンスを実行するようにプログラムすることができる。一部の実施形態では、コントローラ212は、撮像シーケンスの設計に使用される様々なファクタを定めるユーザ入力を受け入れる。
【0037】
スイッチ210を送信位置に設定し、それによって、設計された撮像シーケンスに従って送信機206を短時間起動して単一送信事象中に変換器要素204を活性化することによって、走査を実行することができる。次いで、スイッチ210を受信位置に設定することができ、1又は2以上の検出されたエコーに応答して変換器要素204が生成したその後のエコー信号が測定されて受信機208に印加される。変換器要素204からの別々のエコー信号を受信機208内で組み合わせて単一エコー信号を生成することができる。
【0038】
一部の構成では、超音波システム200は、1よりも多い超音波アレイ202を含むことができる。治療処置に向けて超音波を送信するためにアレイのうちの少なくとも1つを使用することができ、撮像に向けて超音波を送信及び/又は受信するために少なくとも1つの他のアレイを使用することができる。1つの非限定例では、処置に使用される周波数は、高品質画像を生成するのに使用される周波数よりも低いことが可能である。
【0039】
エコー信号又はそれらから発生させた画像を処理するために、エコー信号は、ハードウエアプロセッサ及びメモリによって実施することができる処理ユニット(図示せず)に通信される。非限定例として、処理ユニットは、炎症を処置するための超音波刺激に向けて本発明の開示に説明する方法を用いて脾臓にターゲットを定めることができる。処理ユニットによってエコー信号から生成された画像は、表示システム214上に表示することができる。
【0040】
1つの非限定例では、超音波システム200に向けてウェアラブル/小型フェーズドアレイ超音波デバイスを使用することができる。ウェアラブルデバイスは、患者上に置いて長期にわたって着用することができる。一部の構成では、刺激を制御及び/又はモニタするために、再プログラムされるスマート電話又はタブレットデバイスを使用することができる。1つの非限定例では、再プログラムされたスマート電話又はタブレットデバイスは、刺激デバイスのBluetooth(登録商標)ワイヤレス制御を可能にすることができる。一部の構成では、制御システム及び/又はモニタシステムは、スマート電話及びタブレットデバイスなどにインストールされたアプリケーションとすることができる。別の非限定例では、超音波刺激を提供するのに、患者の所々に分散されたいくつかのデバイスを使用することができる。小型超音波アレイ技術を使用する場合に、ウェアラブルデバイスの全体サイズは、スマートウォッチのような他の消費者電子ウェアラブルデバイスと同様とすることができる。1つの非限定例では、デバイスの全体フットプリントを1.2cm×1.2cmよりも小さくすることができる。別の非限定例では、デバイスのフットプリントは、40mm×40mmよりも小さくすることができる。一部の非限定例では、デバイスの全体フットプリントは、脾臓又は他の器官のより大きい領域を網羅することなどに向けてより大きくすることができる。1つの非限定例では、デバイスのフットプリントは、8cmから16cmの範囲である場合がある脾臓と同じサイズである。
【0041】
一部の構成では、平面波面を形成するために複数の超音波変換器要素204を一斉に起動することができる。他の構成では、傾斜波面又はフォーカス波面を形成するためにこれらの超音波を順次起動することができる。
【0042】
一部の構成では、脾臓上又は内の選択部位に超音波刺激でのターゲットを定めるためにビームステアリングを使用することができる。部位は、脾臓内の神経経路にターゲットを定めることなどによって処置効果を最適化するように選択することができる。効果の最適化は、患者の炎症を弱め、関節リウマチを処置するためにコリン作動性抗炎症免疫反射回路を調節する段階を含むことができる。この抗炎症反射経路は、迷走神経を通して脾臓に投射する脳内回路(例えば、延髄C1ニューロンの活性化及び視床下部下垂体の応答)、並びに身体の免疫応答を調節する脳に戻る相互経路を含む。
【0043】
一部の構成では、ウェアラブルエネルギ送出デバイスは、指定ターゲットを撮像し、そこに超音波エネルギを送信する機能を有することになる。患者の動きに起因する深度変化のような脾臓の動きを補償するために撮像及び/又はビームステアリングを使用することができる。脾臓は、深呼吸及び身体姿勢の変化中に腹腔内で自然に移動する。変換器アレイに対する脾臓の面までの距離が変化する時に、撮像フィードバックを用いて超音波ビームフォーカスを再位置合わせすることができる。これは、自動ターゲット再設定アルゴリズムの実施を有する閉ループデバイス作動に対する可能性を提供する。撮像と刺激の両方の機能を有する超音波デバイスの1つの非限定例は、圧電微細加工超音波変換器(pMUT)を含む。
【0044】
ビームステアリング走査をもたらすために、送信機206は、連続変換器要素204に印加されるそれぞれのパルス216に時間遅延を与える。時間遅延がゼロ、Ti=0である場合に、変換器要素204の全てが同時に活性化されることになり、得られる超音波ビームは、変換器202の面に対して直角で変換器アレイ202の中心を原点とする軸線218に沿って誘導されることになる。時間遅延区分Tiが増加すると、超音波ビームは、中心軸線218から角度θだけ遠ざかるように誘導される。変換器アレイ202の一端i=1から他端i=nまで各i番目の信号に順次追加される時間遅延区分Tiの間の関係は、次の関係式によって与えられる。
(1)
【0045】
ここで、Sは、隣接する変換器要素204の中心間の等しい間隔であり、cは、検査下の物体での音の速度であり、Rは、送信ビームをフォーカスされる距離又は深度であり、Toは、全ての計算時間遅延区分値Tiが正の値であることを保証する遅延オフセットである。
【0046】
式(1)の第2項は、ビームを望ましい角度θにステアリングし、第3項は、送信ビームが固定距離Rにフォーカスされることになる時に採用される。連続する励起において時間遅延Tiを漸次的に変化させることによって扇形走査が実施される。このようにして、送信ビームを連続する方向にステアリングするように角度θが区分的に変化する。ビームの方向が中心軸線218の上方にある時に、パルスのタイミングが逆転するが、式(1)は、この状況にも変わらずに適用される。
【0047】
超音波エネルギの各バーストによって生成されるエコー信号は、超音波ビームに沿う連続する距離又は深度Rに位置する反射物体から発する。これらのエコー信号は、変換器アレイ202内の各変換器要素204によって別々に感知され、特定の時点での各エコー信号の大きさのサンプルは、特定の距離Rにおいて発生する反射の量を表している。しかし、フォーカスPと各変換器要素204の間の伝播経路の差に起因して、これらのエコー信号は同時に発生せず、信号の振幅は等しくはならない。受信機208の機能は、これらの別々のエコー信号を増幅かつ復調して各々に適正な時間遅延を与え、これらを互いに加算して角度θに向けられた超音波ビームに沿って連続する距離Rに位置する各フォーカスPから反射される全超音波エネルギを正確に示す単一エコー信号をもたらすことである。
【0048】
デジタルコントローラ212の指示の下で、受信機208は、そのステアリングが送信機206によってステアリングされたビームの方向に追跡を行うように、更に受信機208が連続する距離Rにおいてエコー信号をサンプリングし、適正な遅延を与えてビームに沿う点Pに動的にフォーカスさせるように走査中に遅延を与える。従って、超音波パルスの各放出は、超音波ビームに沿って位置する一連の点Pから反射される音の量を表す対応する一連のデータ点の取得をもたらす。
【0049】
一部の構成では、コーンのような物理的デバイスを用いて超音波ビームをターゲット部位にステアリングすることができる。当業者は、超音波をターゲット部位に誘導するための他のオプションを本発明の開示と併用することができることを認めるであろう。
【0050】
図2Bを参照すると、非限定的な例示的ウェアラブル電極システム250が示されている。電源254は、コントローラ252及び電極256に電力を供給する。電源254は、外部電源に接続された有線電源及び無線電力システムなどとすることができる。コントローラ252は、電極256を制御するための刺激パラメータを含む信号を外部システムから受け入れることができ、又は事前プログラミングされた刺激パラメータ及び電極256を制御するための命令を内蔵することができる。一部の構成では、コントローラ252は、刺激を患者に供給するための刺激パラメータ及び命令を伝達する外部のスマート電話又はタブレットに無線接続される。電極256は、患者との接続状態にある単一電気パッチとすることができ、又はいずれの個数の電気パッチも含むことができる。1つの非限定例では、電極256は、より高い導電率及び身体面の快適な刺激を与えるために接着ゲル層のような導電層を含む。
【0051】
図2Cを参照すると、協調刺激のための複合超音波及び電気刺激システム275の非限定例が示されている。システムは、超音波刺激発生器278を有する超音波刺激デバイス276と、電気刺激発生器282を有する1又は2以上の電極280とを含む。身体着用式システム290は、超音波刺激デバイス276及び1又は2以上の電極280それぞれを用いて送出される超音波刺激パルス及び電気刺激パルスを誘導するための刺激パラメータを発生させることができる外部コントローラ298と結合することができる。外部コントローラ298と身体着用式デバイス276の間で信号を無線通信することを可能にするために、送受信機296を含めることができる。一部の構成では、外部コントローラ298は、スマート電話又はタブレットとすることができる。一部の構成では、身体着用式システム290は、一方が超音波刺激を提供し、第2のものが電気刺激を提供する2つの別々のデバイスとすることができる。他の構成では、電気刺激器と超音波刺激器は、1つの構成要素の中に統合することができる。1又は2以上の実施では、1又は2以上の電極280は電極アレイを含む。1又は2以上の電極280は、顔、首、耳に(例えば、耳の上部に、耳介の周りに、又は耳挿入型の補聴器を使用する時は外耳道の内側にさえも)触れるか、又は他の身体部位に触れる身体着用式システム290のハウジング上に計画的に配置することができる。
【0052】
1又は2以上の実施例では、身体着用式システム290は、システムを給電する、例えば、刺激パラメータ及び指令の通信を可能にする送受信機296及び電力構成要素(身体着用式システム290又は外部コントローラ298の中に組み込むことができ、例えば、Bluetooth又は他の通信プロトコルを使用することができる)を含む。この無線送受信機及び電力構成要素296は、音刺激及び電気刺激に向けてシステムを給電し、システムを制御することを可能にするために身体上又は首の周りに着用することができる。
【0053】
装置は、異なる刺激計画を計算して処理するように構成された超音波刺激発生器278と電気刺激発生器282とを含む。刺激計画は、患者の病態を処置するために超音波刺激及び電気刺激を提供するための受信刺激パラメータに基づいている。
【0054】
図3を参照すると、頚部の面EStimが炎症を低減したことを示す非限定的な例示的結果が示されている。他の構成では、異なる部位を用いて複合超音波及び電気刺激の臨床効果を最適化することができる。
【0055】
図4A図4B図4C、及び図4Dを参照すると、治療効果が2つのモダリティの間の遅延に依存する複合超音波及び電気刺激を用いた非限定的な例示的結果を示すグラフが示されている。図4Aを参照すると、図1の段階140に従って最適刺激パラメータを決定するために結果を評価することができる1つの非限定例が示されている。特に、確立された閾値線420の上方又は下方にあることに基づいて、データ点410は、臨床病態を改善又は悪化させるものとして評価することができる。図4Bを参照すると、図4Aのデータの一部分に関する超音波及び電気刺激タイミングが示されている。図4Cを参照すると、図4Aのデータの別の部分に関する超音波及び電気刺激タイミングが示されている。図4Dを参照すると、図4Aのデータの更に別の部分に関する超音波及び電気刺激タイミングが示されている。
【0056】
他の構成では、取得データ内の極小値/極大値の曲線当て嵌め又は決定を用いて最適刺激パラメータを決定することができる。一部の構成では、炎症関連生体マーカの変化に関して検査を行うために血液サンプルを採取することができる。一部の構成では、最適パラメータを決定するのに関節の超音波撮像、臨床スコア、健康評価質問票を用いた生活の質の変化の評価を使用することができる。当業者は、最適パラメータを決定するために他の方法が利用可能であることを認めるであろう。
【0057】
一例では、慢性炎症を低減する際の超音波の治療利益を関節炎のマウスモデルにおいて評価した。野生型C57BL/6(B6)マウスにK/BxN遺伝子導入マウスのラインからの関節炎血清移入によって腹腔内注射が行われた。毎日、単一超音波変換器を用いて超音波を脾臓に非侵襲的に印加した。毎日、足首の厚み、重量、臨床疾患スコアを測定することによって疾患進行をモニタした。足首厚を用いて減少した炎症をモニタすることにより、多くの実験にわたって広い範囲にわたる異なる周波数、パルス幅、及び持続時間を探求することによって炎症を低減するための最適超音波波形パラメータを見出した。
【0058】
本発明の開示は、1又は2以上の好ましい実施形態を説明したが、説明したもの以外に多くの均等物、代替、変形、及び修正が可能であり、かつ本発明の範囲内であることを認めなければならない。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A-4D】
【国際調査報告】