(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(54)【発明の名称】負極活性材料、その製造方法、及びそれに関連した二次電池、電池モジュール、電池パック及び装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20220422BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220422BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220422BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220422BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021554734
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(85)【翻訳文提出日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 CN2020102062
(87)【国際公開番号】W WO2021017827
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】201910687174.2
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】梁成都
(72)【発明者】
【氏名】趙玉珍
(72)【発明者】
【氏名】官英傑
(72)【発明者】
【氏名】温厳
(72)【発明者】
【氏名】黄起森
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB20
5H050CB26
5H050EA23
5H050EA25
5H050EA28
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA10
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA15
5H050HA20
(57)【要約】
本願は、負極活性材料、その製造方法、及びそれに関連した二次電池、電池モジュール、電池パック及び装置を開示している。前記負極活性材料は、コア材料とその少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、前記コア材料は、シリコン系材料、スズ系材料のうちの1種類又は複数種類を含み、前記被覆層は、硫黄元素及び炭素元素を含み、前記負極活性材料のラマンスペクトルにおいて、900cm
-1~960cm
-1、1300cm
-1~1380cm
-1及び1520cm
-1~1590cm
-1である位置にそれぞれ散乱ピークを有し、ラマンシフトが900cm
-1~960cm
-1である位置の散乱ピークのピークの強度I
1と、ラマンシフトが1520cm
-1~1590cm
-1である位置の散乱ピークのピークの強度I
Gとは、0.2≦I
1/I
G≦0.8を満たす。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活性材料であって、
コア材料とその少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、
前記コア材料は、シリコン系材料、スズ系材料のうちの1種類又は複数種類を含み、
前記被覆層は、硫黄元素及び炭素元素を含み、
前記負極活性材料のラマンスペクトルにおいて、ラマンシフトが900cm
-1~960cm
-1、1300cm
-1~1380cm
-1及び1520cm
-1~1590cm
-1である位置にそれぞれ散乱ピークを有し、ラマンシフトが900cm
-1~960cm
-1である位置の散乱ピークのピークの強度I
1と、ラマンシフトが1520cm
-1~1590cm
-1である位置の散乱ピークのピークの強度I
Gとは、0.2≦I
1/I
G≦0.8を満たす、負極活性材料。
【請求項2】
前記I
1とI
Gとは、0.22≦I
1/I
G≦0.6を満たす、請求項1に記載の負極活性材料。
【請求項3】
前記負極活性材料のラマンスペクトルにおけるラマンシフトが1300cm
-1~1380cm
-1である位置での散乱ピークのピークの強度はI
Dであり、前記I
DとI
Gとは、1.05≦I
D/I
G≦1.50を満たし、選択可能に、1.1≦I
D/I
G≦1.45である、請求項1ま又は2に記載の負極活性材料。
【請求項4】
前記負極活性材料のラマンスペクトルにおけるラマンシフトが1300cm
-1~1380cm
-1である位置での散乱ピークの半値幅は、120cm
-1~160cm
-1であり、選択可能に、128cm
-1~152cm
-1である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の負極活性材料。
【請求項5】
前記負極活性材料における硫黄元素の質量百分率は、0.5%~3%であり、選択可能に、0.8%~1.5%である、及び/又は、
前記負極活性材料における炭素元素の質量百分率は、0.1%~4%であり、選択可能に、0.5%~3%である、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の負極活性材料。
【請求項6】
前記負極活性材料のX線回折スペクトルにおいて、回折角2θが19°~27°である位置に回折ピークを有し、且つ半値幅が4°~12°であり、選択可能に、前記半値幅が5°~10°である、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の負極活性材料。
【請求項7】
前記負極活性材料の粒度分布は、0.5≦(D
v90-D
v10)/D
v50≦2.5を満たし、選択可能に、0.8≦(D
v90-D
v10)/D
v50≦2.0である、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の負極活性材料。
【請求項8】
前記負極活性材料の平均粒径D
v50は、2μm~12μmであり、選択可能に、4μm~8μmであることが好ましく、及び/又は、
前記負極活性材料の比表面積は、0.5m
2/g~5m
2/gであり、選択可能に、0.8m
2/g~3m
2/gである、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の負極活性材料。
【請求項9】
前記負極活性材料のタップ密度は、0.8g/cm
3~1.3g/cm
3であり、選択可能に、0.9g/cm
3~1.2g/cm
3である、及び/又は、
5トン(49KNに相当)圧力下で測定された前記負極活性材料の圧密度は、1.2g/cm
3~1.5g/cm
3であり、選択可能に、1.25g/cm
3~1.45g/cm
3である、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の負極活性材料。
【請求項10】
前記シリコン系材料は、単体シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素化合物、シリコン合金のうちの1種類又は複数種類から選択され、
選択可能に、前記シリコン系材料は、シリコン酸化物から選択され、
前記スズ系材料は、単体スズ、スズ酸化物、スズ合金のうちの1種類又は複数種類から選択され、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の負極活性材料。
【請求項11】
負極活性材料の製造方法であって、
ポリマー含有の溶液を提供するステップと、
シリコン系材料、スズ系材料のうちの1種類又は複数種類を含むコア材料と、前記溶液とを混合して、混合スラリーを取得するステップと、
前記混合スラリーを不活性雰囲気下で乾燥して、固体粉末を取得するステップと、
前記固体粉末と硫黄粉末とを混合し、不活性雰囲気下で熱処理して、負極活性材料を取得するステップと、
を含み、
ここで、前記負極活性材料は、コア材料とその少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、前記被覆層は、硫黄元素及び炭素元素を含み、前記負極活性材料のラマンスペクトルにおいて、ラマンシフトが900cm
-1~960cm
-1、1300cm
-1~1380cm
-1及び1520cm
-1~1590cm
-1である位置にそれぞれ散乱ピークを有し、ラマンシフトが900cm
-1~960cm
-1である位置の散乱ピークのピークの強度I
1と、ラマンシフトが1520cm
-1~1590cm
-1である位置の散乱ピークのピークの強度I
Gとは、0.2≦I
1/I
G≦0.8を満たす、製造方法。
【請求項12】
前記ポリマーは、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル及びポリエチレンのうちの1種類又は複数種類を含む、
請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ポリマー含有の溶液において、前記ポリマーの質量と前記溶媒の体積との比は、0.1g/L~10g/Lであり、選択可能に、前記ポリマーの質量と前記溶媒の体積との比は、1g/L~5g/Lである、
請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記混合スラリーにおけるコア材料とポリマーとの質量比は、10~200であり、選択可能に、前記混合スラリーにおけるコア材料とポリマーとの質量比は、20~100である、
請求項11乃至13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記固体粉末と硫黄粉末とを混合するステップは、前記硫黄粉末の質量と前記固体粉末におけるポリマーの質量との比が1~5であり、選択可能に、前記硫黄粉末の質量と前記固体粉末におけるポリマーの質量との比が2~4であることを満たす、
請求項11乃至14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記熱処理の温度は、200℃~450℃であり、選択可能に、300℃~450℃である、
請求項11乃至15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記熱処理の時間は、2~8時間であり、選択可能に、3~5時間である、
請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の負極活性材料又は請求項11乃至17のいずれか1項に記載の製造方法で得られる負極活性材料を含む、二次電池。
【請求項19】
請求項18に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項20】
請求項19に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項21】
請求項18に記載の二次電池、請求項19に記載の電池モジュール、又は請求項20に記載の電池パックのうちの少なくとも1種類を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年07月29日に提出された「負極活性材料及び二次電池」という発明の名称の中国特許出願201910687174.2の優先権を主張し、当該出願の全ての内容は本文に援用される。
【0002】
本願は、エネルギー貯蔵の技術分野に属し、具体的に、負極活性材料、その製造方法、及びそれに関連した二次電池、電池モジュール、電池パック及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
環境保護問題が日増しに重視されることに伴い、環境に優しい二次電池は徐々に電気自動車に応用されている。消費類電子製品用の二次電池と異なって、動力型二次電池はエネルギー密度及びサイクル寿命に対してより高い要求を有する。従来の炭素材料に比べて、炭素系材料及びスズ系材料は負極活性材料として非常に高い理論グラム容量を有し、黒鉛系負極活性材料の数倍であり、そのため、業界はシリコン酸化物を使用して二次電池のエネルギー密度を向上させることを期待することができる。
【0004】
しかしながら、シリコン系材料及びスズ系材料は、サイクル寿命が悪いため、実際の応用で二次電池のサイクル性能が悪くなってしまう。したがって、比較的高いグラム容量を有した上で、さらに比較的長いサイクル寿命を有する負極活性材料を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本願の第1の態様は、負極活性材料を提供し、それは、コア材料とその少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、前記コア材料は、シリコン系材料、スズ系材料のうちの1種類又は複数種類を含み、前記被覆層は、硫黄元素及び炭素元素を含み、前記負極活性材料のラマンスペクトルにおいて、ラマンシフトが900cm-1~960cm-1、1300cm-1~1380cm-1及び1520cm-1~1590cm-1である位置にそれぞれ散乱ピークを有し、ラマンシフトが900cm-1~960cm-1である位置の散乱ピークのピークの強度I1と、ラマンシフトが1520cm-1~1590cm-1である位置の散乱ピークのピークの強度IGとは、0.2≦I1/IG≦0.8を満たす。
【0006】
驚くべきことに、本願に係る負極活性材料は、コア材料とその少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、前記コア材料は、シリコン系材料、スズ系材料のうちの1種類又は複数種類を含み、前記被覆層は、硫黄元素及び炭素元素を含み、ラマンシフトが900cm-1~960cm-1、1300cm-1~1380cm-1及び1520cm-1~1590cm-1である位置にそれぞれ散乱ピークを有すると同時に、ラマンシフトが900cm-1~960cm-1である位置の散乱ピークのピークの強度I1と、ラマンシフトが1520cm-1~1590cm-1である位置の散乱ピークのピークの強度IGとが、0.2≦I1/IG≦0.8を満たすことにより、負極活性材料が比較的高いイオン伝導性及び電子伝導性を有し、これにより負極活性材料の初回クーロン効率及びサイクル寿命はいずれも顕著に改善されるため、二次電池の初回クーロン効率及びサイクル性能はいずれも大きく向上している。
【0007】
上記任意の実施形態において、前記I1とIGとは、0.22≦I1/IG≦0.6を満たす。負極活性材料のI1とIGとが上記関係を満たすことにより、電池の倍率性能及びサイクル寿命をさらに向上させ、電池の初回クーロン効率をさらに向上させることができる。
【0008】
上記任意の実施形態において、前記負極活性材料のラマンスペクトルにおけるラマンシフトが1300cm-1~1380cm-1である位置での散乱ピークのピークの強度はIDであり、前記IDとIGとは、1.05≦ID/IG≦1.50を満たし、選択可能に、1.1≦ID/IG≦1.45である。負極活性材料のIDとIGとが上記関係を満たすことにより、二次電池のサイクル性能さらに向上させることができ、さらに二次電池の初回クーロン効率及びエネルギー密度の向上に有利である。
【0009】
上記任意の実施形態において、前記負極活性材料のラマンスペクトルにおけるラマンシフトが1300cm-1~1380cm-1である位置での散乱ピークの半値幅は、120cm-1~160cm-1であり、選択可能に、128cm-1~152cm-1である。前記負極活性材料のラマンスペクトルにおいて、ラマンシフトが1300cm-1~1380cm-1である位置での散乱ピークの半値幅を上記範囲内にすることで、二次電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0010】
上記任意の実施形態において、前記負極活性材料における硫黄元素の質量百分率は、0.5%~3%に選択することができ、例えば0.8%~1.5%である。負極活性材料おける硫黄元素の含有量を上記範囲内にすることで、二次電池のサイクル性能及びエネルギー密度を向上させることができる。
【0011】
上記任意の実施形態において、前記負極活性材料における炭素元素の質量百分率は、0.1%~4%に選択することができ、例えば0.5%~3%である。負極活性材料における炭素元素の含有量を上記範囲内にすることで、二次電池のサイクル性能及びエネルギー密度を向上させることができる。
【0012】
上記任意の実施形態において、前記負極活性材料のX線回折スペクトルにおいて、回折角2θが19°~27°である位置に回折ピークを有し、且つ半値幅が4°~12°であり、選択可能に、前記半値幅が5°~10°である。回折角2θが19°~27°である位置に回折ピークを有し、且つ半値幅が上記範囲内にある負極活性材料は、電池のサイクル寿命をさらに改善させることができる。
【0013】
上記任意の実施形態において、前記負極活性材料の粒度分布は、0.5≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦2.5を満たし、選択可能に、0.8≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦2.0である。負極活性材料の粒度分布を上記範囲内にすることで、電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0014】
上記任意の実施形態において、前記負極活性材料の平均粒径Dv50は、2μm~12μmであり、選択可能に、4μm~8μmである。負極活性材料のDv50を上記範囲内にすることで、二次電池のサイクル性能をさらに向上させることができ、さらに二次電池のエネルギー密度の向上に有利である。
【0015】
上記任意の実施形態において、前記負極活性材料の比表面積は、0.5m2/g~5m2/gであり、選択可能に、0.8m2/g~3m2/gである。負極活性材料の比表面積を適切な範囲内にすることで、二次電池のダイナミクス性能及び倍率性能の需要を満たすと同時に、二次電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0016】
上記任意の実施形態において、前記負極活性材料のタップ密度は、0.8g/cm3~1.3g/cm3であり、選択可能に、0.9g/cm3~1.2g/cm3である。負極活性材料のタップ密度を上記範囲内にすることで、二次電池のエネルギー密度の向上に有利である。
【0017】
上記任意の実施形態において、5トン(49KNに相当)圧力下で測定された前記負極活性材料の圧密度は、1.2g/cm3~1.5g/cm3であり、選択可能に、1.25g/cm3~1.45g/cm3である。49KN圧力下で測定された負極活性材料の圧密度を上記範囲内にすることで、二次電池のエネルギー密度の向上に有利である。
【0018】
上記任意の実施形態において、前記シリコン系材料は、単体シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素化合物、シリコン合金のうちの1種類又は複数種類から選択され、選択可能に、前記シリコン系材料は、シリコン酸化物から選択され、前記スズ系材料は、単体スズ、スズ酸化物、スズ合金のうちの1種類又は複数種類から選択される。これらの材料は、比較的高いグラム容量を有するため、それを使用した二次電池は、比較的高いエネルギー密度を取得することができる。
【0019】
本願の第2の態様は、負極活性材料の製造方法を提供し、それは、
ポリマー含有の溶液を提供するステップと、
シリコン系材料、スズ系材料のうちの1種類又は複数種類を含むコア材料と、前記溶液とを混合して、混合スラリーを取得するステップと、
前記混合スラリーを不活性雰囲気下で乾燥して、固体粉末を取得するステップと、
前記固体粉末と硫黄粉末とを混合し、不活性雰囲気下で熱処理して、負極活性材料を取得するステップと、
を含み、
ここで、前記負極活性材料は、コア材料とその少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、前記被覆層は、硫黄元素及び炭素元素を含み、前記負極活性材料のラマンスペクトルにおいて、ラマンシフトが900cm-1~960cm-1、1300cm-1~1380cm-1及び1520cm-1~1590cm-1である位置にそれぞれ散乱ピークを有し、ラマンシフトが900cm-1~960cm-1である位置の散乱ピークのピークの強度I1と、ラマンシフトが1520cm-1~1590cm-1である位置の散乱ピークのピークの強度IGとは、0.2≦I1/IG≦0.8を満たす。
【0020】
本願に係る製造方法によって得られる負極活性材料は、コア材料とその少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、前記コア材料は、シリコン系材料、スズ系材料のうちの1種類又は複数種類を含み、前記被覆層は、硫黄元素及び炭素元素を含み、ラマンシフトが900cm-1~960cm-1、1300cm-1~1380cm-1及び1520cm-1~1590cm-1である位置にそれぞれ散乱ピークを有すると同時に、ラマンシフトが900cm-1~960cm-1である位置の散乱ピークのピークの強度と、ラマンシフトが1520cm-1~1590cm-1である位置の散乱ピークのピークの強度とが所定の関係を満たすことにより、負極活性材料が比較的高いイオン伝導性及び電子伝導性を有し、これにより負極活性材料の初回クーロン効率及びサイクル寿命はいずれも顕著に改善されるため、二次電池の初回クーロン効率及びサイクル性能はいずれも大きく向上している。
【0021】
上記任意の実施形態において、前記ポリマーは、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル及びポリエチレンのうちの1種類又は複数種類を含む。当該ポリマーに基づく被覆層は、コア材料に効果的な保護を提供し、負極活性材料の電子伝導性能を向上させることができるため、二次電池のサイクル性能の向上に有利である。
【0022】
上記任意の実施形態において、前記ポリマー含有の溶液において、前記ポリマーの質量と前記溶媒の体積との比は、0.1g/L~10g/Lであり、選択可能に、前記ポリマーの質量と前記溶媒の体積との比は、1g/L~5g/Lである。ポリマーの添加量が適切であると、負極活性材料の粒径分布の改善に有利であり、負極活性材料のDv10、Dv50及びDv99を適切な範囲内にすることで、二次電池のエネルギー密度及びサイクル性能を改善させることができる。
【0023】
上記任意の実施形態において、前記混合スラリーにおけるコア材料とポリマーとの質量比は、10~200であり、選択可能に、前記混合スラリーにおけるコア材料とポリマーとの質量比は、20~100である。コア材料及びポリマーの質量比を適切な範囲内にすることで、二次電池が比較的高いエネルギー密度及びサイクル性能を有するのに有利である。
【0024】
上記任意の実施形態において、前記固体粉末と硫黄粉末とを混合するステップは、前記硫黄粉末の質量と前記固体粉末におけるポリマーの質量との比が1~5であり、選択可能に、前記硫黄粉末の質量と前記固体粉末におけるポリマーの質量との比が2~4であることを満たす。硫黄粉末とポリマーとの質量比を上記範囲内にすることで、二次電池が比較的高いサイクル性能を取得するのに有利である。
【0025】
上記任意の実施形態において、前記熱処理の温度は、200℃~450℃であり、選択可能に、300℃~450℃である。熱処理温度を上記範囲内にすることで、二次電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0026】
上記任意の実施形態において、前記熱処理の時間は、2~8時間であり、選択可能に、3~5時間である。
【0027】
本願の第3の態様は、第1の態様に係る負極活性材料又は本願の第2の態様に係る製造方法で得られる負極活性材料を含む二次電池を提供する。
【0028】
本願の二次電池が本願の負極活性材料を使用するため、比較的高いエネルギー密度、比較的高い初回クーロン効率及び比較的長いサイクル性能を同時に有することができる。
【0029】
本願の第4の態様は、本願の第3の態様に係る二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0030】
本願の第5の態様は、本願の第4の態様に係る電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0031】
本願の第6の態様は、本願の第3の態様に係る二次電池、本願の第4の態様に係る電池モジュール、又は本願の第5の態様に係る電池パックのうちの少なくとも1種類を含む装置を提供する。
【0032】
本願の電池モジュール、電池パック及び装置は、本願に記載の二次電池を含むため、少なくとも前記二次電池と同じ又は類似した技術的効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本願に係る負極活性材料のラマンスペクトルである。
【
図2】本願に係る負極活性材料のX線回折スペクトル(XRD)である。
【
図5】電池モジュールの一実施形態の模式図である。
【
図8】二次電池を電源とする装置の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本願の発明目的、技術的解決手段及び有益な技術的効果をより明確にするために、具体的な実施例を参照して本願を詳細に説明する。理解すべきことは、本明細書に記載の実施例は本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものではない。
【0035】
簡単のために、本文は、いくつかの数値範囲のみを明確に開示する。しかしながら、任意の下限と任意の上限を組み合わせて形成された範囲、任意の下限と他の下限を組み合わせて形成された範囲、及び任意の上限と任意の他の上限を組み合わせて形成された範囲は、いずれも本願の保護範囲内にある。なお、任意の範囲の上下限の間の各点又は単一の数値はいずれも保護を要求する範囲内に含まれる。したがって、各点又は単一の数値を下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値と組み合わせ又は他の下限又は上限と組み合わせて、明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0036】
本文の説明において、説明すべきこととして、他に説明しない限り、「以上」、「以下」は本数を含み、「1種類又は複数種類」における「複数種類」の意味は2種類又は2種類以上である。
【0037】
本願の上記発明の概要は、本願の各開示された実施形態又は各実現形態を説明するためのものではない。以下、例を挙げて例示的実施形態をさらに具体的に説明する。本願全体の複数個所において、一連の実施例によりガイダンスを提供しているが、これらの実施例は、様々な組み合わせの形式で使用することができる。各実施例において、例は代表的なグループのみとして列挙し、網羅的に解釈すべきではない。
【0038】
負極活性材料
【0039】
本願の第1の態様は、負極活性材料を提供し、前記負極活性材料は、コア材料とその少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、前記コア材料は、シリコン系材料、スズ系材料のうちの1種類又は複数種類を含み、前記被覆層は、硫黄元素及び炭素元素を含み、前記負極活性材料のラマンスペクトルにおいて、900cm
-1~960cm
-1、1300cm
-1~1380cm
-1及び1520cm
-1~1590cm
-1のラマンシフトの位置にそれぞれ散乱ピークを有し(
図1を参照)、900cm
-1~960cm
-1のラマンシフトの位置での散乱ピークのピークの強度I
1と、1520cm
-1~1590cm
-1のラマンシフトの位置での散乱ピークのピークの強度I
Gとは、0.2≦I
1/I
G≦0.8を満たす。
【0040】
本願の負極活性材料は、コア材料の少なくとも一部の外面にポリマー改質被覆層が被覆され、コア材料に対し良好な保護作用を果たし、コア材料の表面での電解液の副反応を抑制し、負極活性材料が比較的高い容量及びサイクル寿命を有することを保証する。
【0041】
また、前記負極活性材料のラマンスペクトルにおいて、900cm-1~960cm-1のラマンシフトの位置にS-S結合に帰属される散乱ピーク(以下、S-Sピークと略称する)を有し、被覆層が比較的高い活性イオン伝導性能を有する。1300cm-1~1380cm-1のラマンシフトの位置に炭素のDバンドの散乱ピーク(以下、Dピークと略称する)を有し、1520cm-1~1590cm-1のラマンシフトの位置に炭素のGバンドの散乱ピーク(以下、Gピークと略称する)を有し、被覆層が比較的高い電子伝導性能を有する。電池の充電過程において、S-S結合が断裂されて活性イオンと結合することにより、イオン移動を行い、且つ比較的高い移動速度を有し、電池の放電過程において、活性イオンが脱出し、S-S結合が再結合する。電池の充放電過程において、S-S結合の断裂及び結合のみが発生され、炭素系骨格の構造は不変であり、シリコン酸化物に対する被覆層の保護作用を保証する。
【0042】
特に、負極活性材料のラマンスペクトルにおいて、S-Sピークのピークの強度I1とGピークのピークの強度IGとは、0.2≦I1/IG≦0.8を満たす。発明者らの研究によると、S-Sピークのピークの強度とGピークのピークの強度とが上記所定の関係を満たすことで、負極活性材料のイオン伝導性能及び電子伝導性がいずれも大幅に向上することができる。これにより、負極活性材料は、比較的高い活性イオン及び電子の伝導性能を有し、負極活性材料の容量発揮及びサイクル過程での容量保持率に有利であり、さらに電池の分極を低減させ、電池の不可逆容量を低減させることができるため、二次電池の初回クーロン効率及びサイクル性能を顕著に向上させることができる。
【0043】
したがって、本願の負極活性材料を使用すると、二次電池が比較的高い初回クーロン効率、サイクル性能及びエネルギー密度を同時に有することができる。
【0044】
本願の負極活性材料は、コア材料がシリコン系材料、スズ系材料のうちの1種類又は複数種類を含む。
【0045】
選択可能に、前記シリコン系材料は、単体シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素化合物、シリコン合金のうちの1種類又は複数種類から選択される。例えば、前記シリコン系材料は、シリコン酸化物から選択される。ここで、シリコン酸化物の理論的グラム容量は、黒鉛の約7倍であり、且つシリコン単体に比べてその充電過程での体積膨張が大幅に減少し、電池のサイクル安定性を大幅に向上させることができる。
【0046】
選択可能に、前記スズ系材料は、単体スズ、スズ酸化物、スズ合金のうちの1種類又は複数種類から選択されることができる。
【0047】
本願の負極活性材料において、S-Sピークのピークの強度I1とGピークのピークの強度IGとの比であるI1/IGは、≦0.8、≦0.75、≦0.7、≦0.65、≦0.6、≦0.55、又は≦0.5であってもよい。I1/IGは、≧0.4、≧0.35、≧0.3、≧0.25、≧0.22、又は≧0.2であってもよい。
【0048】
選択可能に、前記負極活性材料は、0.22≦I1/IG≦0.6を満たし、例えば、0.25≦I1/IG≦0.53、又は0.25≦I1/IG≦0.42などである。S-Sピークのピークの強度とGピークのピークの強度とが上記関係を満たすことで、被覆層がより優れた活性イオン伝導性能及び電子伝導性能を有することができるため、電池の倍率性能及び充放電サイクル寿命をさらに向上させ、電池の初回クーロン効率をさらに向上させることができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料のラマンスペクトルにおいて、Dピークのピークの強度IDとGピークのピークの強度IGとの比は、1.05≦ID/IG≦1.50を満たすことができる。
【0050】
選択可能に、本願の負極活性材料において、ID/IGは、≦1.50、≦1.48、≦1.45、≦1.42、≦1.40、≦1.37、≦1.35、≦1.33、又は≦1.30であってもよい。ID/IGは、≧1.28、≧1.25、≧1.23、≧1.20、≧1.18、≧1.15、≧1.12、≧1.10、≧1.08、又は≧1.05であってもよい。選択可能に、1.1≦ID/IG≦1.45、又は、1.2≦ID/IG≦1.39などである。
【0051】
Dピークのピークの強度IDとGピークのピークの強度IGとの比を上記範囲内にすることで、充放電サイクルでの材料の不可逆容量を低減させると同時に、被覆層が優れた導電性能を有することを保証することができ、材料容量の発揮に有利であり、材料のサイクル容量保持率を向上させるため、二次電池の初回クーロン効率、サイクル性能及びエネルギー密度を向上させることができる。
【0052】
いくつかの実施形態において、本願の負極活性材料は、選択可能に、前記Dピークの半値幅が120cm-1~160cm-1であり、例えば128cm-1~152cm-1である。
【0053】
本文において、半値幅は、半高幅とも呼ばれ、ピーク値の高さの半分である時のピーク幅を指す。
【0054】
前記負極活性材料のラマンスペクトルにおいて、Dピークの半値幅は、120cm-1以上に選択することができ、例えば128cm-1以上であり、被覆層の弾性及靭性をさらに改善して、被覆層が、シリコン酸化物の充放電過程での膨張及び収縮により良好に適応し、破裂が発生しないようにする。Dピークの半値幅は、160cm-1以下に選択することができ、例えば152cm-1以下であり、被覆層がより高い導電性能を有することを保証し、二次電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0055】
いくつかの実施形態において、選択可能に、前記負極活性材料のX線回折スペクトルにおいて、回折角2θが19°~27°である位置に回折ピーク(
図2を参照)を有し、当該回折ピークの半値幅は、4°~12°に選択することができ、例えば5°~10°である。2θが19°~27°である位置に回折ピークを有し且つ半値幅が上記範囲内にある負極活性材料は、比較的高いグラム容量及び比較的低いサイクル膨張率を有するため、二次電池の充放電サイクル過程で破裂又は粉末化が発生しにくく、電池のサイクル寿命をさらに改善させることができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料における硫黄元素の質量百分率は、0.5%~3%に選択することができ、例えば0.8%~1.5%などである。
【0057】
負極活性材料における硫黄元素の含有量は、0.5%以上に選択することができ、例えば0.8%以上であり、被覆層中の-S-S-基の含有量を増加させ、被覆層の活性イオン伝導性能を向上させ、電池の分極を低減することができる。硫黄元素の含有量は、3%以下に選択することができ、例えば1.5%以下であり、一方では、被覆層が比較的高い電子伝導性能を有すると同時に、さらに比較的低い厚さを有することを保障するのに有利であり、被覆層の含有量の増加による材料容量の低下の損失を減少することができ、他方では、材料に単体硫黄残留物が存在しないことを確保して、単体硫黄と活性イオンとの完全な不可逆的化学反応による材料容量の損失を避けることができる。そのため、負極活性材料における硫黄元素の含有量を上記範囲内にすることで、二次電池のサイクル性能及びエネルギー密度を向上させることができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料における炭素元素の質量百分率は、0.1%~4%に選択することができ、例えば0.5%~3%などである。負極活性材料における炭素元素の含有量を上記範囲内にすることで、被覆層が比較的高い電子伝導性能を有するのに有利であり、さらに被覆層が比較的優れた弾性及び靭性を有し、シリコン酸化物をより良好に保護することができるため、二次電池のサイクル性能及びエネルギー密度を向上させることができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、選択可能に、シリコン酸化物の外面全体はいずれも被覆層を有する。これにより、電池の初回クーロン効率及びサイクル性能をより十分に改善することができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料の粒度分布Dv10、Dv90及びDv50は、0.5≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦2.5を満たすことができる。負極活性材料の粒度分布を上記範囲内にすることで、負極フィルム層の副反応を減少し、電解液の消費を低減することができ、さらに粒子が充放電過程で破裂又は破砕されることを防止し、材料の構造安定性を向上させるのに有利であるため、電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0061】
選択可能に、負極活性材料の粒度分布Dv10、Dv90及びDv50は、0.8≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦2.0を満たす。例えば、1.02≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.48、又は1.16≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.48などである。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料の平均粒径Dv50は、2μm~12μmに選択することができ、例えば、4μm~8μm、4μm~6.4μm、又は5.9μm~6.3μmなどである。
【0063】
負極活性材料のDv50は、2μm以上に選択することができ、例えば4μm以上であり、負極の成膜での活性イオンの消費を減少させ、負極での電解液の副反応を減少できるため、二次電池の不可逆容量を低下させ、二次電池のサイクル性能を向上させることができる。負極活性材料のDv50は、2μm以上に選択することができ、例えば4μm以上であり、負極における接着剤の添加量を減少させることができ、これは二次電池のエネルギー密度の向上に有利である。
【0064】
負極活性材料のDv50は、12μm以下に選択することができ、例えば8μm以下であり、活性イオン及び電子の伝導性能の向上に有利であり、さらに粒子が充放電過程で破裂又は粉末化されることを防止するのに有利であるため、二次電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料の比表面積は、0.5m2/g~5m2/gに選択することができ、例えば、0.8m2/g~3m2/g、1.07m2/g~3m2/g、又は2.57m2/g~3m2/gなどである。
【0066】
負極活性材料の比表面積は、0.5m2/g以上に選択することができ、例えば0.8m2/g以上であり、このような場合、材料の表面は、比較的多い活性部位を有し、材料の電気化学的性能を向上させることができ、ダイナミクス性能及び倍率性能に対する二次電池の要求を満たすことができる。負極活性材料の比表面積は、5m2/g以下に選択することができ、例えば3m2/g以下であり、このような場合、負極での電解液の副反応を減少するのに有利であり、さらに負極の成膜での活性イオンの消費を減少することができるため、電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料のタップ密度は、0.8g/cm3~1.3g/cm3に選択することができ、例えば0.9g/cm3~1.2g/cm3などである。負極活性材料のタップ密度を上記範囲内にすることで、二次電池のエネルギー密度の向上に有利である。
【0068】
いくつかの実施形態において、5トン(49KNに相当)圧力下で測定された前記負極活性材料の圧密度は、1.2g/cm3~1.5g/cm3に選択することができ、例えば1.25g/cm3~1.45g/cm3などである。5トン(49KNに相当)圧力下で30保圧した後放圧して測定された負極活性材料の圧密度を上記範囲内にすることで、二次電池のエネルギー密度の向上に有利である。
【0069】
本願において、本分野の周知の機器及び方法を使用して、負極活性材料のラマンスペクトルを測定することができる。例えば、LabRAM HR Evolution型レーザ顕微ラマン分光計のようなラマン分光計を使用してもよい。前記負極活性材料のある範囲内のピークの強度とは、当該範囲内におけるラマンシフトに対応するラマンスペクトルの強度値の最大値である。
【0070】
本願において、本分野の周知の機器及び方法を使用して、負極活性材料のX線回折スペクトルを測定することができる。X線回折スペクトルは、例えば、X線回折計を使用して、JIS K0131-1996 X線回折分析ルールに従って測定される。例えば、Bruker D8 Discover型X線回折計を使用して、CuKα射線を放射線源とし、射線の波長がλ=1.5406Aであり、走査2θ角度範囲が15°~80°であり、走査速度が4°/minである。
【0071】
本願において、本分野の周知の機器及び方法を使用して、負極活性材料における硫黄元素及び炭素元素の含有量を測定することができる。例えば、中国上海DEKAI社(SHANGHAI DEKAI INSTR CO LTD)のHCS-140型赤外線炭素硫黄分析計を使用して、GB/T 20123-2006/ISO 15350:2000の測定方法に従って測定を行い、検出精度は計量検定規則JJG 395-1997標準に合致する。
【0072】
本願において、負極活性材料の粒度分布Dv10、Dv50及びDv90は、いずれも本分野の周知の意味であり、本分野の周知の機器及び方法を使用して測定することができる。例えば、レーザ粒度分析計で便利に測定することができ、例えばイギリスのマルバーン機器有限会社のMastersizer3000型レーザ粒度分析計を使用することができる。
【0073】
ここで、Dv10、Dv50、Dv90の物理的定義は、以下のとおりである。
Dv10:前記負極活性材料の累積体積分布百分率が10%に達した場合に対応する粒径、
Dv50:前記負極活性材料の累積体積分布百分率が50%に達した場合に対応する粒径、
Dv90:前記負極活性材料の累積体積分布百分率が90%に達した場合に対応する粒径。
【0074】
本願において、負極活性材料の比表面積は、本分野の周知の意味であり、本分野の周知の機器及び方法で測定を行うことができる。例えばGB/T 19587-2004ガス吸着BET法を参照して、固体物質比表面積標準を測定することができ、窒素ガス吸着比表面積分析測定方法を使用して測定を行い、且つ、BET(Brunauer Emmett Teller)法で計算して得られるが、ここで窒素ガス吸着比表面積分析試験は、米国Micromeritics社のTri StarII 3020型比表面積及び孔隙分析計によって測定されることができる。
【0075】
本願において、負極活性材料のタップ密度は、本分野の周知の意味であり、本分野の周知の機器及び方法で測定を行うことができ、例えばタップ密度測定計で便利に測定することができ、例えばBT-300型タップ密度測定計で測定することができる。
【0076】
本願において、負極活性材料の圧密度は、本分野の周知の意味であり、本分野の周知の機器及び方法で測定を行うことができる。例えば、GB/T24533-2009標準を参照し、電子圧力試験機で行うことができ、例えばUTM7305型電子圧力試験機で行うことができる。1gの負極活性材料を秤量し、1.327cm2の底面積の金型に入れて、5トン(49KNに相当)に加圧し、30s保圧した後、放圧し10s保持した後、記録し計算して、負極活性材料の圧密度を取得する。
【0077】
次に、負極活性材料の製造方法を提供し、当該製造方法によって、本願の負極活性材料を製造することができる。
【0078】
具体的な例として、負極活性材料の製造方法は、以下のステップを含む。
S10において、ポリマー含有の溶液を提供する。
S20において、コア材料と溶液とを混合して、混合スラリーを取得する。
S30において、混合スラリーを不活性雰囲気下で乾燥して、固体粉末を取得する。
S40において、固体粉末と硫黄粉末とを混合し、不活性雰囲気下で熱処理して、負極活性材料を取得する。
【0079】
ステップS10において、ポリマーは、ポリアニリン(Polyaniline、PANIと略記する)、ポリアセチレン(Polyacetylene、PAと略記する)、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile、PANと略記する)、ポリスチレン(Polystyrene、PSと略記する)、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chloride、PVCと略記する)及びポリエチレン(Polyethylene、PEと略記する)のうちの1種類又は複数種類から選択することができる。当該ポリマーに基づく被覆層は、良好な強度、弾性及び靭性、並びに良好な導電性能などを含む良好な総合性能を有するため、被覆層はコア材料に効果的な保護を提供し、負極活性材料の電子伝導性能を向上させることができるため、電池のサイクル性能の向上に有利である。
【0080】
ステップS10において、溶媒の種類は特に限定しないが、選択可能に、溶媒は、N-メチルピロリドン(N-Methyl pyrrolidone、NMPと略記する)、キシレン(Dimethylbenzene、DMBと略記する)、トルエン(Methylbenzene、MBと略記する)及びジメチルホルムアミド(N、N-Dimethylformamide、DMFと略記する)のうちの1種類又は複数種類から選択される。
【0081】
ステップS10において、選択可能に、ポリマーの質量と溶媒の体積との比は、0.1g/L~10g/Lである。例えば、ポリマーの質量と溶媒の体積との比は、1g/L~5g/L、1.5g/L~6.5g/L、2.5g/L~5.5g/L、又は2.5g/L~4g/Lなどである。
【0082】
ステップS20において、市販で必要な粒径分布のコア材料を購入してもよく、又は、コア材料を粉砕処理して、一定の粒径分布を有するコア材料を取得してもよい。
【0083】
ステップS20において、選択可能に、コア材料とポリマーとの質量比は、10~200であり、例えば、20~100、15~70、18~50、又は25~40などである。ポリマーの質量の含有量が高いほど、負極活性材料の被覆層における炭素元素の含有量が高い。コア材料とポリマーとの質量比を上記範囲内にすることで、コア材料に対する被覆層の良好な保護作用を保証すると同時に、負極活性材料の製造過程での凝集を効果的に防止することができ、材料が充放電過程で比較的高い活性イオン伝導性能を有するのに有利である。
【0084】
ステップS30において、本分野の既知の機器及び方法を使用して、混合スラリーに対して、真空乾燥、気流乾燥、噴霧乾燥などのような乾燥を行うことができる。例として、ステップS30は、湿式被覆機を使用して行うことができる。
【0085】
選択可能に、不活性雰囲気下で混合スラリーを乾燥する温度は、80℃~300℃であり、例えば、110℃~250℃、又は180℃~230℃などである。昇温速度は、1℃/min~10℃/minに選択することができ、例えば、1℃/min~5℃/minである。
【0086】
ステップS30において、不活性雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気及びヘリウムガス雰囲気のうちの1種類又は複数種類から選択されるできる。
【0087】
ステップS40において、硫黄粉末とポリマーとは不活性雰囲気下で架橋反応を行い、被覆層の弾性及び靭性を向上させると同時に、被覆層のイオン伝導性を向上させることにより、電池のサイクル性能を向上させる。
【0088】
選択可能に、硫黄粉末とポリマーとの質量比は、1~5であり、例えば、1.6~4、2~4、又は2~3などである。硫黄粉末とポリマーとの質量比を上記範囲内にすることで、負極活性材料の被覆層が比較的高い電子伝導性能及び活性イオン伝導性能を同時に有するのに有利であり、被覆層に単体硫黄残留物が存在することを回避し、残留の単体硫黄と活性イオンとの不可逆反応による容量損失を効果的に防止するため、電池が比較的高いサイクル性能を有することを保証するのに有利である。
【0089】
なお、硫黄粉末とポリマーとの質量比を上記範囲内にすることで、硫黄粉末がポリマーと十分に架橋するようにし、被覆層の弾性及び靭性を向上させる。
【0090】
ステップS40において、選択可能に、不活性雰囲気下で固体粉末と硫黄粉末との混合粉体を熱処理する温度は、200℃~450℃であり、例えば、300℃~450℃、350℃~450℃、又は400℃~450℃などである。熱処理温度を上記範囲内にすることで、前記被覆層が完全に炭素化しないよう確保でき、被覆層の弾性及び靭性をさらに向上させて、充放電過程でのシリコン酸化物の膨張及び収縮により良好に適応するのに有利である。また、得られた被覆層は、シリコン酸化物と電解液とを効果的に遮断し、副反応を減少する。したがって、電池のサイクル性能の向上を実現することができる。
【0091】
選択可能に、熱処理の時間は、2h~8hであり、例えば、2h~5h、2h~4h、2h~3h、又は3h~5hなどである。
【0092】
ステップS40において、不活性雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気及びヘリウムガス雰囲気のうちの1種類又は複数種類から選択されることができる。
【0093】
二次電池
【0094】
本願の他の態様は、二次電池を提供し、前記二次電池は、正極シート、負極シート、セパレータ及び電解質を含み、前記負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一面に設置され且つ負極活物質を含む負極フィルム層と、を含み、前記負極活物質は、本願の負極活性材料を含む。
【0095】
本願の二次電池は、本願の負極活性材料を使用するため、比較的高い初回クーロン効率、サイクル性能及びエネルギー密度を同時に有することができる。
【0096】
本願の二次電池において、前記負極集電体は、良好な導電性及び機械的強度を有する材質を使用し、例えば銅箔を使用している。
【0097】
本願の二次電池において、さらに、前記負極活物質は、さらに選択的に炭素材料を含むことができ、前記炭素材料は、人造黒鉛、天然黒鉛、メソフェーズマイクロカーボンボール(MCMB)、ハードカーボン及びソフトカーボンのうちの1種類又は複数種類から選択される。選択可能に、前記炭素材料は、人造黒鉛及び天然黒鉛のうちの1種類又は複数種類から選択される。
【0098】
本願の二次電池において、前記負極フィルム層は、さらに選択的に導電剤、接着剤及び増粘剤のうちの1種類又は複数種類を含むことができ、それらの種類は具体的に限定されず、当業者は実際の需要に応じて選択することができる。
【0099】
選択可能に、前記導電剤は、グラファイト、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの1種類又は複数種類であってもよい。
【0100】
選択可能に、前記接着剤は、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの1種類又は複数種類であってもよい。
【0101】
選択可能に、前記増粘剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)であってもよい。
【0102】
例えば塗布方法のような本分野の常軌の方法で負極シートを製造することができる。例として、負極活物質と選択可能な導電剤、接着剤及び増粘剤とを溶媒で分散させて、均一な負極スラリーを形成することができ、、ここで、溶媒は脱イオン水であってもよい。負極スラリーを負極集電体上に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経た後、負極シートが得られる。
【0103】
本願の二次電池において、前記正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一面に設置され且つ正極活物質を含む正極フィルム層と、を含む。本願は、正極活物質の種類を具体的に限定せず、当業者は実際の需要に応じて二次電池に使用できる正極活物質を選択することができる。
【0104】
選択可能に、前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩のうちの1種類又は複数種類から選択されることができる。
【0105】
本願の二次電池において、正極集電体は、良好な導電性及び機械的強度を有する材質を使用し、例えば、アルミニウム箔を使用することができる。
【0106】
本願の二次電池において、前記正極フィルム層は、さらに選択的に接着剤及び/又は導電剤を含むことができ、接着剤、導電剤の種類は具体的に限定されず、当業者は実際の需要に応じて選択することができる。
【0107】
選択可能に、前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの1種類又は複数種類であってもよい。
【0108】
選択可能に、導電剤は、グラファイト、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの1種類又は複数種類であってもよい。
【0109】
例えば塗布方法のような本分野の常軌の方法で上記正極シートを製造することができる。例として、正極活物質と選択可能な導電剤及び接着剤とを溶媒で分散させて、均一な正極スラリーを形成することができ、ここで、溶媒はN-メチルピロリドンであってもよい。正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経た後、正極シートが得られる。
【0110】
本願の二次電池において、前記電解質は、固体又はゲル電解質を使用してもよく、液体電解質(即ち、電解液)を使用してもよい。活性イオン含有の電解質塩を有機溶媒で分散させて前記電解液を形成することができる。本願は、電解質塩及び溶媒の種類に対して特に限定せず、当業者は実際の需要に応じて選択することができる。
【0111】
選択可能に、前記電解質塩は、LiPF6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF4(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO4(過塩素酸リチウム)、LiAsF6(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)、LiFSI(ジフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiBOB(ジシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiPO2F2(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(ジフルオロジシュウ酸リン酸リチウム)及びLiTFOP(テトラフルオロシュウ酸リン酸リチウム)のうちの1種類又は複数種類から選択されてもよい。
【0112】
選択可能に、前記溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの1種類又は複数種類から選択されてもよい。
【0113】
本願の二次電池において、前記電解液は、さらに選択的に添加剤を含むことができ、ここで、添加剤の種類は具体的に限定されず、実際の需要に応じて選択することができる。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤を含んでもよく、正極成膜添加剤を含んでもよく、さらに、、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤などのような、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤であってもよい。
【0114】
本願の二次電池において、前記セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設置されて隔離の作用を果たす。セパレータの種類は特に限定されず、任意の周知の化学的安定性及び機械的安定性を有する多孔質構造セパレータを選択することができ、例えば、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの1種類又は複数種類を選択することができる。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく、異なってもよい。
【0115】
本分野の常軌の方法によって二次電池を製造することができ、例えば、セパレータが正極シートと負極シートとの間で隔離の作用を果たすように、正極シート、セパレータ、負極シートを順次に巻取って(又は積層して)、電池コアを取得し、電池コアを外装内に配置し、電解液を注入して封止して、二次電池を取得する。
【0116】
本願は、二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、四角形又は他の任意の形状であってもよい。
図3は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0117】
いくつかの実施例において、二次電池は、外装を含んでもよい。当該外装は、正極シート、負極シート及び電解質を封止するために用いられる。
【0118】
いくつかの実施例において、
図4を参照すると、外装は、ケース51及びカバープレート53を含んでもよい。ここで、ケース51は、底板と底板上に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板とは囲んで収容室を形成する。ケース51は、収容室に連通された開口を有し、カバープレート53は、前記開口をカバーして、前記収容室を密閉することができる。
【0119】
正極シート、負極シート及びセパレータは、巻取工程又は積層工程を経て、電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容室に封入される。電解質は、電解液を使用することができ、電解液は、電極アセンブリ52内を浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の個数は、一つ又は複数であってよく、実際の需要に応じて調節することができる。
【0120】
いくつかの実施例において、二次電池の外装は、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼ケースなどのような硬質ケースであってもよい。二次電池の外装は、例えば袋状軟質ケースのような軟質ケースであってもよい。軟質ケースの材質は、プラスチックであってもよく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの1種類又は複数種類を含んでもよい。
【0121】
いくつかの実施例において、二次電池は、電池モジュールに組み立てられることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の個数は、複数であってもよく、具体的な個数は、電池モジュールの適用及び容量によって調節することができる。
【0122】
図5は、一例としての電池モジュール4である。
図5を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順次に配列して設置されてもよい。勿論、他の任意の方式で配列されてもよい。さらに、当該複数の二次電池5を締結具で固定してもよい。
【0123】
選択可能に、電池モジュール4は、さらに、収容空間を有するハウジングを含むことができ、複数の二次電池5は、当該収容空間に収容される。
【0124】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールはさらに電池パックに組み立てられることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの個数は、電池パックの適応及び容量によって調節することができる。
【0125】
図6及び
図7は、一例としての電池パック1である。
図6及び
図7を参照すると、電池パック1は、電池ボックスと電池ボックス内に設置された複数の電池モジュール4とを含むことができる。電池ボックスは、上部ボックス本体2及び下部ボックス本体3を含み、上部ボックス本体2は、下部ボックス本体3をカバーすることができ、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ボックス内に配列される。
【0126】
装置
【0127】
本願はさらに装置を提供し、前記装置は、本願に記載の二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1種類を含む。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記装置の電源として用いられてもよく、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記装置は、携帯機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいがこれらに限定されない。
【0128】
前記装置は、使用の需要に応じて、二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0129】
図8は、一例としての装置である。当該装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。二次電池に対する高電力及び高エネルギー密度の需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用することができる。
【0130】
他の一例としての装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコンなどであってもよい。当該装置は、一般的に薄型化が要求されるため、二次電池を電源として使用することができる。
【0131】
下記実施例は、本発明に開示した内容をより具体的に説明し、これらの実施例は説明のためのものに過ぎず、本発明に開示した内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは、当業者にとっては明らかである。他に説明しない限り、以下の実施例に報告された全ての部、百分率、及び比はいずれも重量に基づいて計算され、且つ実施例に使用された全ての試薬はいずれも市販されるか又は従来の方法に従って合成して取得され、且つ、さらに処理する必要がなく直接使用できるものであり、また、実施例に使用された機器はいずれも市販のものである。
【0132】
実施例1
【0133】
負極活性材料の製造
1gのポリアクリロニトリルを1Lのジメチルホルムアミドに添加し、ポリアクリロニトリルが全部溶解されるまで撹拌して、溶液を取得する。
100gの一酸化ケイ素(SiO)を上記溶液に添加して撹拌して、混合スラリーを取得する。
混合スラリーをアルゴンガス雰囲気、180℃下で2h保温乾燥して、固体粉末を取得する。
2gの硫黄粉末(純度>99.9%)を秤量して上記固体粉末と混合し、アルゴンガス雰囲気、380℃下で3h熱処理し、冷却した後に負極活性材料を取得する。
【0134】
ボタン型電池を使用して、負極活性材料の容量性能及びサイクル性能を測定し、ボタン型電池の製造は、以下を含む。
上記製造された負極活性材料と人造黒鉛とを3:7の質量比で混合して、負極活物質を取得する。負極活物質、導電剤としての導電性カーボンブラック Super P、接着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を88:3:6:3の重量比で適量の脱イオン水中で十分に撹拌して混合し、それを均一な負極スラリーに形成させる。負極スラリーを負極集電体の銅箔上に塗布し、乾燥、冷間プレスを経た後、電極シートを取得し、当該電極シートは、二次電池における負極シートとして用いることができる。
金属リチウムシートを対電極とし、Celgard 2400をセパレータとして使用し、電解液を注入し、組み立てて、ボタン型電池を取得する。電解液は、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1の体積比で均一に混合して有機溶媒を取得した後、LiPF6を上記有機溶媒で溶解させ、さらに添加剤としてのフルオロエチレンカーボネート(FEC)を添加して得られたものであり、電解液におけるLiPF6の濃度は、1mol/Lであり、電解液におけるFECの質量割合は、6%である。
【0135】
実施例2~12及び比較例1~4
実施例1との相違とは、負極活性材料の製造ステップでの関連パラメータを調整することであり、表1が参照できる。
【0136】
試験部分
負極活性材料の試験
【0137】
1)ラマンスペクトル分析
LabRAM HR Evolution型レーザ顕微ラマン分光計を使用して、各実施例及び比較例における負極活性材料を測定し、ここで、光源として523nmの波長の固体レーザを使用し、光束の直径が1.2μmで、パワーが1mWである。測定モードは、マクロラマンを使用し、CCD検出器を使用する。
負極活性材料粉末を押圧シートにプレスし、押圧シート上でランダムに3点を取って試験を行い、その平均値を取る。
【0138】
2)初回クーロン効率及びサイクル性能試験
25℃、且つ常圧環境下で、ボタン型電池を0.1Cの倍率で電圧が0.005Vになるまで定電流放電し、さらに0.05Cの倍率で電圧が0.005Vになるまで定電流放電し、この時の放電比容量を記録して、初回リチウム挿入容量とする。その後、0.1Cの倍率で電圧が1.5Vになるまで定電流充電し、この時の充電比容量を記録して、初回リチウム脱離容量とする。ボタン型電池を上記方法で50回サイクル充放電試験を行い、毎回のリチウム脱離容量を記録する。
負極活性材料の初回クーロン効率(%)=初回リチウム脱離容量/初回チウム挿入容量×100%
負極活性材料のサイクル容量保持率(%)=50回目のリチウム脱離容量/初回リチウム脱離容量×100%
【0139】
【0140】
【0141】
表2において、
I1は、負極活性材料のラマンスペクトルにおける900cm-1~960cm-1のラマンシフトの位置での散乱ピークのピークの強度である。
IDは、負極活性材料のラマンスペクトルにおける1300cm-1~1380cm-1のラマンシフトの位置での散乱ピークのピークの強度である。
IGは、負極活性材料のラマンスペクトルにおける1520cm-1~1590cm-1のラマンシフトの位置での散乱ピークのピークの強度である。
粒度分布とは、(Dv90-Dv10)/Dv50を指す。
【0142】
表2のデータから分かるように、本願の負極活性材料は、コア材料とその少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層とを含み、本願の負極活性材料のラマンスペクトルにおいて、ラマンシフトが900cm-1~960cm-1、1300cm-1~1380cm-1及び1520cm-1~1590cm-1である位置でそれぞれ散乱ピークを有し、ラマンシフトが900cm-1~960cm-1である位置での散乱ピークのピークの強度I1と、ラマンシフトのが1520cm-1~1590cm-1である位置での散乱ピークのピークの強度IGとが、0.2≦I1/IG≦0.8を満たすことにより、本願の負極活性材料が比較的高い初回クーロン効率及びサイクル寿命を有する。特に、ラマンシフトが900cm-1~960cm-1である位置での散乱ピークのピークの強度I1と、ラマンシフトが1520cm-1~1590cm-1である位置での散乱ピークのピークの強度IGとが、0.22≦I1/IG≦0.6を満たすと、負極活性材料の初回クーロン効率及びサイクル寿命をさらに向上させることができる。
【0143】
本願の負極活性材料を使用すると、二次電池のエネルギー密度、初回クーロン効率及びサイクル性能を向上させることができる。
【0144】
上記は、本願の具体的な実施形態に過ぎず、本願の保護範囲はこれに限定されず、当業者は本願に開示の技術的範囲内で、様々な等価の修正又は差し替えを容易に想到することができ、これらの修正又は差し替えはいずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本願の保護範囲は請求範囲の保護範囲を基準とすべきである。
【国際調査報告】