IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司の特許一覧

特表2022-524460負極活性材料、その製造方法、並びにその関連の電池、電池モジュール、電池パック及び装置
<>
  • 特表-負極活性材料、その製造方法、並びにその関連の電池、電池モジュール、電池パック及び装置 図1
  • 特表-負極活性材料、その製造方法、並びにその関連の電池、電池モジュール、電池パック及び装置 図2
  • 特表-負極活性材料、その製造方法、並びにその関連の電池、電池モジュール、電池パック及び装置 図3
  • 特表-負極活性材料、その製造方法、並びにその関連の電池、電池モジュール、電池パック及び装置 図4
  • 特表-負極活性材料、その製造方法、並びにその関連の電池、電池モジュール、電池パック及び装置 図5
  • 特表-負極活性材料、その製造方法、並びにその関連の電池、電池モジュール、電池パック及び装置 図6
  • 特表-負極活性材料、その製造方法、並びにその関連の電池、電池モジュール、電池パック及び装置 図7
  • 特表-負極活性材料、その製造方法、並びにその関連の電池、電池モジュール、電池パック及び装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(54)【発明の名称】負極活性材料、その製造方法、並びにその関連の電池、電池モジュール、電池パック及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20220422BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220422BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20220422BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20220422BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/48
H01M4/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555013
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(85)【翻訳文提出日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 CN2020103107
(87)【国際公開番号】W WO2021017929
(87)【国際公開日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】201910689512.6
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(74)【代理人】
【識別番号】100222106
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】梁成都
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼玉珍
(72)【発明者】
【氏名】官英▲傑▼
(72)【発明者】
【氏名】温▲嚴▼
(72)【発明者】
【氏名】黄起森
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB11
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA13
5H050HA14
(57)【要約】
負極活性材料、その製造方法、並びにその関連の電池(5)、電池モジュール(4)、電池パック(1)及び装置に関する。前記負極活性材料は、コア材及びその少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層を含み、前記コア材は、シリコン系負極材及び錫系負極材のうちの一種類又は複数種類であり、前記負極活性材料は、熱重量分析測定において、不活性非酸化性ガスの雰囲気下で、温度が25℃から800℃まで昇温する過程で、重量減少率が、0.2%≦重量減少率≦2%を満たす。当該技術案は、電池(5)の充放電過程での負極活性材料の表面構造の損傷を減少させ、活性イオンの損失を低下させ、電池(5)の容量損失を低減させると同時に、電池(5)のクーロン効率を良好に向上させ、電池(5)のサイクル性能を改善することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活性材料であって、
コア材及びその少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層を含み、
前記コア材は、シリコン系負極材及び錫系負極材のうちの一種類又は複数種類であり、
前記負極活性材料は、熱重量分析測定において、不活性非酸化性ガスの雰囲気下で、温度が25℃から800℃まで昇温する過程で、重量減少率が、0.2%≦重量減少率≦2%を満たす、
負極活性材料。
【請求項2】
前記重量減少率は、0.3%≦重量減少率≦1%を満たす、
請求項1に記載の負極活性材料。
【請求項3】
前記ポリマー改質被覆層は、窒素元素を含有し、且つ、-C=N-結合を含む、
請求項1又は2に記載の負極活性材料。
【請求項4】
負極活性材料における前記窒素元素の質量割合は、0.1%~0.65%であり、好ましくは、負極活性材料における前記窒素元素の質量割合は、0.15%~0.5%である、
請求項3に記載の負極活性材料。
【請求項5】
前記ポリマー改質被覆層は、硫黄元素を含有し、且つ、-C-S-結合及び/又は-S-S-結合を含む、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の負極活性材料。
【請求項6】
前記負極活性材料の体積粒径分布幅(Dv90-Dv10)/Dv50は、0.5~2.5であり、好ましくは、前記負極活性材料の体積粒径分布幅(Dv90-Dv10)/Dv50は、0.8~2.0である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の負極活性材料。
【請求項7】
前記負極活性材料の個数粒径Dn10は、0.17μm~3μmであり、好ましくは、前記負極活性材料の個数粒径Dn10は、0.2μm~1.5μmである、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の負極活性材料。
【請求項8】
前記負極活性材料のX線回折スペクトルにおいて、回折角2θが19°~27°の位置に回折ピークを有し、且つ、半値幅が4°~12°であり、好ましくは、前記半値幅が5°~10°である、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の負極活性材料。
【請求項9】
前記負極活性材料のラマンスペクトルにおいて、ラマンシフトが1320cm-1~1410cm-1及び1550cm-1~1650cm-1の位置にそれぞれ散乱ピークを有し、
ラマンシフトが1320cm-1~1410cm-1の位置での散乱ピークのピーク強度をIとし、ラマンシフトが1550cm-1~1650cm-1の位置での散乱ピークのピーク強度をIとすると、前記IとIとは、1.60≦I/I≦2.50を満たし、好ましくは、前記IとIとは、1.80≦I/IG≦2.40を満たす、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の負極活性材料。
【請求項10】
前記負極活性材料は、5トン(49KNに相当する)の圧力下で測定された圧密度が、1.1g/cm~1.7g/cmであり、
好ましくは、前記負極活性材料は、5トン(49KNに相当する)の圧力下で測定された圧密度が、1.2g/cm~1.5g/cmである、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の負極活性材料。
【請求項11】
前記シリコン系負極材は、シリコン単量体、シリコン炭素複合体、シリコン酸素化合物、シリコン窒素化合物、及びシリコン合金のうちの一種類又は複数種類から選択され、
前記錫系負極材は、錫単量体、錫酸素化合物、及び錫合金のうちの一種類又は複数種類から選択される、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の負極活性材料。
【請求項12】
前記シリコン系負極材は、シリコン酸素化合物から選択される、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の負極活性材料。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の負極活性材料を製造するための負極活性材料の製造方法であって、
ポリマー前駆体を溶媒で溶解し、均一に分散するまで攪拌する工程と、
シリコン系負極材及び錫系負極材のうちの一種類又は複数種類から選択されるコア材を、ポリマー前駆体溶液に添加し、攪拌して混合スラリーを取得する工程と、
混合スラリーを噴霧乾燥機又は湿式被覆機に入れて、不活性非酸化性ガスの雰囲気下で乾燥して、固体粉末を取得する工程と、
前記固体粉末を不活性非酸化性ガスの雰囲気下で、200℃~450℃の温度で熱処理して、負極活性材料を取得する工程と、
を含み、
前記負極活性材料は、コア材及びその少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層を含み、
前記コア材は、シリコン系負極材及び錫系負極材のうちの一種類又は複数種類であり、
前記負極活性材料は、熱重量分析測定において、不活性非酸化性ガスの雰囲気下で、温度が25℃から800℃まで昇温する過程で、重量減少率が、0.2%≦重量減少率≦2%を満たす、
負極活性材料の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の負極活性材料、又は、請求項13に記載の製造方法で得られる負極活性材料を含む電池。
【請求項15】
請求項14に記載の電池を含む電池モジュール。
【請求項16】
請求項15に記載の電池モジュールを含む電池パック。
【請求項17】
請求項14に記載の電池、請求項15に記載の電池モジュール、又は、請求項16に記載の電池パックのうちの少なくとも一種を含む装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年7月29日に提出された発明名称が「負極活性材料及び電池」である中国特許出願201910689512.6の優先権を主張し、当該出願の全ての内容は、本明細書に援用される。
【0002】
本願は、電池の分野に関し、特に、負極活性材料、その製造方法、並びにその関連の電池、電池モジュール、電池パック及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、電気自動車産業のエネルギー密度に対するさらに高い要求により、人々は高容量の負極活性材料に対して大量の検討を展開している。そのうち、シリコン系及び錫系の負極材は、黒鉛に比べて理論的なグラム容量がはるかに高いため重視されているが、シリコン系及び錫系の材料には深刻な体積効果が存在しているため、充電過程で巨大な体積膨張が発生し、これにより充放電過程で、負極活性材料は破砕して粉化しやすく、表面に安定なSEI膜を形成しにくいため、電池の容量の減衰が速すぎ、サイクル性能がよくない。また、シリコンは半導体材料として、電気伝導率が低いという欠点が存在し、活性イオンの充放電過程での不可逆程度が大きく、電池のサイクル性能に影響を与える。
【発明の概要】
【0004】
本願の第1の態様は、負極活性材料を提供し、前記負極活性材料は、コア材及びその少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層を含み、前記コア材は、シリコン系負極材及び錫系負極材のうちの一種類又は複数種類であり、前記負極活性材料は、熱重量分析測定において、不活性非酸化性ガスの雰囲気下で、温度が25℃から800℃まで昇温する過程で、重量減少率が、0.2%≦重量減少率≦2%を満たす。
【0005】
驚くべきことに、本願により提供される負極活性材料は、電池充放電過程で負極活性材料の表面構造の損傷を低減させ、活性イオンの損失を低下させ、電池の容量損失を低減することができるため、電池のクーロン効率を良好に向上させ、電池のサイクル性能を改善することができることを見出した。
【0006】
上記の任意の実施形態において、前記重量減少率は、0.3%≦重量減少率≦1%を満たす。重量減少率が前述の範囲内にある場合、電池のクーロン効率及びサイクル性能をさらに改善することができる。
【0007】
上記の任意の実施形態において、前記ポリマー改質被覆層は、窒素元素を含有し、且つ、-C=N-結合を含む。前記ポリマー改質被覆層が-C=N-結合を含む場合、電池のサイクル性能をさらに向上することができる。
【0008】
上記の任意の実施形態において、負極活性材料における前記窒素元素の質量割合は、0.1%~0.65%であり、好ましくは、負極活性材料における前記窒素元素の質量割合は、0.15%~0.5%である。
【0009】
上記の任意の実施形態において、前記ポリマー改質被覆層は、硫黄元素を含有し、且つ、-C-S-結合及び/又は-S-S-結合を含む。負極活性材料がこの条件を満たす場合、電池のサイクル性能をさらに改善することができる。
【0010】
上記の任意の実施形態において、前記負極活性材料の体積粒径分布幅(Dv90-Dv10)/Dv50は、0.5~2.5であり、好ましくは、前記負極活性材料の体積粒径分布幅(Dv90-Dv10)/Dv50は、0.8~2.0である。
【0011】
上記の任意の実施形態において、前記負極活性材料の個数粒径Dn10は、0.17μm~3μmであり、好ましくは、前記負極活性材料の個数粒径Dn10は、0.2μm~1.5μmである。
【0012】
上記の任意の実施形態において、前記負極活性材料のX線回折スペクトルにおいて、回折角2θが19°~27°の位置に回折ピークを有し、且つ、半値幅が4°~12°であり、好ましくは、前記半値幅が5°~10°である。負極活性材料の回折ピークが上記範囲内にある場合、電池のサイクル寿命をさらに改善することができる。
【0013】
上記の任意の実施形態において、前記負極活性材料のラマンスペクトルにおいて、ラマンシフトが1320cm-1~1410cm-1及び1550cm-1~1650cm-1の位置にそれぞれ散乱ピークを有し、ラマンシフトが1320cm-1~1410cm-1の位置での散乱ピークのピーク強度をIとし、ラマンシフトが1550cm-1~1650cm-1の位置での散乱ピークのピーク強度をIとすると、前記IとIとは、1.60≦I/I≦2.50を満たし、好ましくは、前記IとIとは、1.80≦I/IG≦2.40を満たす。IとIとの比が上記範囲内にあると、電池の初回クーロン効率、サイクル性能及びエネルギー密度をさらに向上することができる。
【0014】
上記の任意の実施形態において、前記負極活性材料は、5トン(49KNに相当する)の圧力下で測定された圧密度が、1.1g/cm~1.7g/cmであり、好ましくは、前記負極活性材料は、5トン(49KNに相当する)の圧力下で測定された圧密度が、1.2g/cm~1.5g/cmである。
【0015】
上記の任意の実施形態において、前記シリコン系負極材は、シリコン単量体、シリコン炭素複合体、シリコン酸素化合物、シリコン窒素化合物、及びシリコン合金のうちの一種類又は複数種類から選択され、
前記錫系負極材は、錫単量体、錫酸素化合物、及び錫合金のうちの一種類又は複数種類から選択される。
【0016】
上記の任意の実施形態において、前記シリコン系負極材は、シリコン酸素化合物から選択される。
【0017】
本願の第2の態様は、本願の第1の様態に記載の負極活性材料を製造するための負極活性材料の製造方法を提供し、前記負極活性材料の製造方法は、
ポリマー前駆体を溶媒で溶解し、均一に分散するまで攪拌する工程と、
シリコン系負極材及び錫系負極材のうちの一種類又は複数種類から選択されるコア材を、ポリマー前駆体溶液に添加し、攪拌して混合スラリーを取得する工程と、
混合スラリーを噴霧乾燥機又は湿式被覆機に入れて、不活性非酸化性ガスの雰囲気下で乾燥して、固体粉末を取得する工程と、
前記固体粉末を不活性非酸化性ガスの雰囲気下で、200℃~450℃の温度で熱処理して、負極活性材料を取得する工程と、
を含み、
前記負極活性材料は、コア材及びその少なくとも一部の表面上のポリマー改質被覆層を含み、前記コア材は、シリコン系負極材及び錫系負極材のうちの一種類又は複数種類であり、前記負極活性材料は、熱重量分析測定において、不活性非酸化性ガスの雰囲気下で、温度が25℃から800℃まで昇温する過程で、重量減少率が、0.2%≦重量減少率≦2%を満たす。
【0018】
本願の第3の態様は、本願の第1の様態に記載の負極活性材料、又は、本願の第2の態様に係る方法で製造される負極活性材料を含む電池を提供する。
【0019】
本願の第4の態様は、本願の第3の態様に記載の電池を含む電池モジュールを提供する。
【0020】
本願の第5の態様は、本願の第4の態様に記載の電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0021】
本願の第6の態様は、本願の第3の態様に記載の電池、本願の第4の態様に記載の電池モジュール、又は、本願の第5の態様に記載の電池パックのうちの少なくとも一種類を含む装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本願の負極活性材料の一実施形態のSEM図(Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)である。
図2】本願の負極活性材料の一実施形態のX線回折スペクトルでの回折ピークである。
図3】電池の一実施形態の模式図である。
図4図3の分解図である。
図5】電池モジュールの一実施形態の模式図である。
図6】電池パックの一実施形態の模式図である。
図7図6の分解図である。
図8】装置の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面及び実施例を参照して、本願の実施形態をさらに詳細に説明する。以下の実施例の詳細な説明及び図面は本願の原理を例示的に説明するために用いられ、本願の範囲を限定するものではない。即ち、本願は記述された実施例に限定されない。
【0024】
なお、本願の説明において、特に説明がない限り、「複数」の意味は二つ以上であり、用語「上」、「下」、「左」、「右」、「内」、「外」などが示す方向又は位置関係は本願を説明しやすくするか、説明を簡略化するためであり、示された装置又は素子が必ず特定の方向を有し、特定の方向で構成されて操作されなければならないことを示すか又は暗示するものではないため、本願を限定するものと理解されてはいけない。また、用語「第1」、「第2」、「第3」などは単に説明のために用いられる用語であって、相対的な重要性を示すか又は暗示するものと理解されてはいけない。「垂直」は、厳密な意味での垂直ではなく、誤差許容範囲内にあることを意味する。「平行」は、厳密な意味での平行ではなく、誤差許容範囲内にあることを意味する。
【0025】
以下の説明で現れる方向は、いずれも図示の方向であり、本願の具体的な構成を限定するものではない。本願の説明において、さらに説明すべきものは、特に説明がない限り、用語「取り付け」、「装着」、「接続」、「連結」は、広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよく、取り外し可能な接続でもよく、又は一体的な接続でもよく、直接的に接続されてもよく、中間媒体を介して間接的に接続されてもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の本願での具体的な意味を理解することができる。
【0026】
簡略化のために、本明細書にはいくつかの数値範囲のみが明確に開示されている。しかしながら、任意の下限は任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、任意の下限は他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、同様に任意の上限は任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、明確に記載されていないが、範囲の端点間の各点又は単一数値はいずれも当該範囲内に含まれる。そのため、各点又は単一数値の自身を下限又は上限として任意の他の点又は単一数値と組み合わせて、又は他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されない範囲を形成することができる。
【0027】
なお、本明細書において、特に説明がない限り、「以上」、「以下」は対象となる数字を含み、「一種類又は複数種類」のうちの「複数種類」は、二種類又は二種類以上を意味する。
【0028】
前述の発明の概要は、本願に開示の実施形態や各種の実現形態に限定されるものではない。以下、例示的な実施形態をより詳細に説明する。本願全文の複数の箇所で、一連の実施例によりガイダンスが提供され、これらの実施例は様々な組み合わせで使用されることができる。各実施例において、代表的なグループのみを例示しており、網羅的なものと解釈されてはいけない。
【0029】
以下、本願の負極活性材料及び電池を詳細に説明する。
【0030】
まず、本願の第1の様態の負極活性材料を説明する。
【0031】
本願の第1の態様は、負極活性材料を提供し、本願の負極活性材料は、コア材及びその一部の表面上のポリマー改質被覆層を含み、前記コア材は、シリコン系負極材及び錫系負極材のうちの一種類又は複数種類であり、前記負極活性材料は、熱重量分析測定において、不活性非酸化性ガスの雰囲気下で、温度が25℃から800℃まで昇温する過程で、重量減少率が、0.2%≦重量減少率≦2%を満たす。
【0032】
電池が初回充電される際に、負極活性材料の表面にSEI膜が形成されるが、シリコン系負極材や錫系負極材が大きい体積効果を有するため、電池の充放電過程で負極活性材料表面のSEI膜が破壊及び修復し続け、これは大量の活性イオンを消費し、それにより電池のクーロン効率を低下させ、活性イオンの不可逆程度を増加させる。また、負極活性材料の表面のSEI膜が破砕された後、露出した負極活性材料は電解液と直接接触し、負極活性材料の表面の副反応も増加させ、且つ、電解液の侵食により、負極活性材料の構造が破壊されやすく、これは電池容量の減衰を加速化する。
【0033】
本願は、シリコン系負極材や錫系負極材の表面にポリマー改質被覆層が被覆されており、業界の一般的な無機炭素層に比べて、本願のポリマー改質被覆層はさらに大きな弾性及び靭性を有し、シリコン系負極材や錫系負極材の電池充放電過程での膨張及び収縮にさらに良好に適応することができ、負極活性材料の表面にさらに安定したSEI膜を形成することを保証し、SEI膜が破壊及び修復し続けて大量の活性イオンが消費されることを回避することができる。電池の充放電過程で、SEI膜が負極活性材料と電解液との直接接触を常に遮断できるよう保証し、負極活性材料の表面の副反応の発生を低減し、電解液の侵食による負極活性材料の表面構造への破壊を低減し、電池の容量損失を低減することができる。
【0034】
本願の負極活性材料において、前記負極活性材料は、熱重量分析測定において、不活性非酸化性ガスの雰囲気下で、温度が25℃から800℃まで昇温する過程で、重量減少率が0.2%≦重量減少率≦2%を満たす。負極活性材料の重量減少率が高いほど、負極活性材料の被覆量が大きいことを示す。負極活性材料の重量減少率が大きすぎると、被覆品質が悪くなり、負極活性材料のグラム容量が低下し、且つ、凝集しやすくなり、さらに、負極活性材料の表面の一部が被覆されないことが発生しやすくなる。充放電サイクル過程で、負極活性材料粒子が膨張するため、凝集した負極活性材料粒子が徐々に分散し、大量の新しい非被覆表面が露出され、活性イオンの消費を加速化し、それにより電池のクーロン効率を低下させ、電池のサイクル性能を悪化させる。
【0035】
したがって、本願は、電池充放電過程での負極活性材料の表面構造の損傷を低減し、活性イオン損失を低下させ、電池の容量損失を低減できるため、電池のクーロン効率を良好に向上させ、且つ電池のサイクル性能を改善することができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料は、熱重量分析測定において、不活性非酸化性ガスの雰囲気下で、温度が25℃から800℃まで昇温する過程で、重量減少率が、0.3%≦重量減少率≦1%を満たす。
【0037】
選択可能に、前記不活性非酸化性ガスの雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの一種類又は複数種類から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記ポリマー改質被覆層は、窒素元素を含有し、且つ、-C=N-結合を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、負極活性材料における前記窒素元素の質量割合は、0.1%~0.65%である。選択可能に、負極活性材料における前記窒素元素の質量割合は、0.15%~0.5%である。
【0040】
前記ポリマー改質被覆層が-C=N-結合を含むと、ポリマー改質被覆層にさらに高い導電性を持たせ、負極活性材料の電子伝導性能を向上させることができ、それにより負極活性材料の容量発揮及びサイクル過程での容量維持率に役立ち、さらに電池の充放電サイクル過程での抵抗の増大を抑制し、電池の分極を減少させることができる。これにより、電池のサイクル性能をさらに向上することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記シリコン系負極材は、シリコン単量体、シリコン炭素複合体、シリコン酸素化合物、シリコン窒素化合物、シリコン合金のうちの一種類又は複数種類から選択することができる。例えば、前記シリコン系負極材は、シリコン酸素化合物から選択されることができる。シリコン酸素化合物の理論的なグラム容量は、黒鉛の約7倍であり、且つ、シリコン単量体と比べて、その充電過程での体積膨張が大幅に減少し、電池のサイクル安定性を大幅に向上することができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記錫系負極材は、錫単量体、錫酸素化合物、錫合金のうちの一種類又は複数種類から選択されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料の体積粒径分布幅(Dv90-Dv10)/Dv50は、0.5~2.5であってもよい。例えば、前記負極活性材料の体積粒径分布幅(Dv90-Dv10)/Dv50は、0.8~2.0であってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料の個数粒径Dn10は、0.1μm~4μmであってもよい。例えば、前記負極活性材料の個数粒径Dn10は、0.17μm~3μmであってもよい。また、例えば、前記負極活性材料の個数粒径Dn10は、0.2μm~1.5μmであってもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料のX線回折スペクトルにおいて、回折角2θが19°~27°の位置に回折ピークを有し、選択可能に、該回折ピークの半値幅は、4°~12°であってもよい。例えば、該回折ピークの半値幅は、5°~10°であってもよい。2θが19°~27°の位置に回折ピークを有し、且つ、半値幅が上記4°~12°の範囲内にある負極活性材料は、高いグラム容量及び低いサイクル膨張率を有し、電池充放電サイクル過程での破裂又は粉化が発生しにくいため、電池のサイクル寿命をさらに改善することができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料は、ラマン散乱分析において、ラマンシフトが1320cm-1~1410cm-1及び1550cm-1~1650cm-1の位置にそれぞれ散乱ピークを有する。即ち、前記負極活性材料のラマンスペクトルにおいて、ラマンシフトが1320cm-1~1410cm-1の位置に炭素のD周波数帯域の散乱ピーク(Dピークと略称する)を有し、ラマンシフトが1550cm-1~1650cm-1の位置に炭素のG周波数帯域の散乱ピーク(Gピーク略称する)を有する。選択可能に、Dピークのピーク強度IとGピークのピーク強度Iとの比は、1.60≦I/I≦2.50であってもよい。例えば、Dピークのピーク強度IとGピークのピーク強度Iとの比は、1.80≦I/I≦2.40であってもよい。
【0047】
Dピークのピーク強度IとGピークのピーク強度Iとの比が上記範囲内にあると、材料の充放電サイクルでの不可逆容量を低減することができると同時に、被覆層が優れた導電性能を有するよう保証し、材料容量の発揮に役立ち、材料のサイクル容量維持率を向上させ、それによりこれら負極活性材料を採用する電池の初回クーロン効率、サイクル性能及びエネルギー密度を向上することができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記負極活性材料の5トン(49KNに相当する)の圧力下で測定された圧密度は、1.1g/cm~1.7g/cmであってもよい。例えば、前記負極活性材料の5トン(49KNに相当する)の圧力下で測定された圧密度は、1.2g/cm~1.5g/cmであってもよい。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記ポリマー改質被覆層は、硫黄元素をさらに含有し、且つ、-C-S-結合、及び/又は、-S-S-結合を含んでもよい。-C-S-結合は、ポリマー改質被覆層にさらに高い弾性及び靭性を持たせることができ、シリコン系材料や錫系材料のリチウム脱離過程での膨張及び収縮に良好に適応することができる。-S-S-結合は、ポリマー改質被覆層にさらに高い活性イオン伝導性能を持たせることができ、それにより電池のサイクル性能をさらに良好に改善することができる。
【0050】
本願により提供される第2の態様は、負極活性材料の製造方法であり、当該負極活性材料の製造方法は、以下の工程を含む。工程S01において、ポリマー前駆体を溶媒で溶解し、均一に分散するまで攪拌する。工程S02において、コア材をポリマー前駆体溶液に添加し、攪拌して混合スラリーを取得し、ここで、コア材は、シリコン系負極材及び錫系負極材のうちの一種類又は複数種類から選択される。工程S03において、混合スラリーを噴霧乾燥機に移し、不活性非酸化性ガスの雰囲気下で噴霧乾燥を行って、固体粉末を取得する。工程S04において、工程S03での固体粉末を不活性非酸化性ガスの雰囲気下で、一定の温度で所定の時間熱処理して、負極活性材料を取得する。
【0051】
ここで、従来の湿式被覆に比べて、噴霧乾燥法で製造される場合、負極活性材料の被覆がより均一で、凝集がより少なくなり、製造効率がより高い。従来の湿式被覆で負極活性材料が製造される場合、前述の本願の負極活性材料の製造方法において、工程S03は、工程S02の混合スラリーを湿式被覆機に入れ、不活性非酸化性ガスの雰囲気下で乾燥して、固体粉末を取得することであり、その他の工程はいずれも同じである。
【0052】
工程S01において、前記ポリマー前駆体は、ポリスチレン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリフェニレン、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリ塩化ビニリデンから選択される一種類又は複数種類である。例えば、前記ポリマー前駆体は、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリアクリルアミドから選択される一種類又は複数種類である。
【0053】
工程S02において、前記溶媒は、水、N-メチルピロリドン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミドから選択される一種類又は複数種類である。
【0054】
工程S03において、前記ポリマー前駆体の重量平均分子量は、5万~20万であってもよい。例えば、前記ポリマー前駆体の重量平均分子量は、6万~15万であってもよい。
【0055】
工程S01において、選択可能に、前記ポリマー前駆体の質量と前記溶媒の体積との比は、0.1g/L~20g/Lである。例えば、前記ポリマー前駆体の質量と前記溶媒の体積との比は、0.5g/L~10g/Lであってもよい。
【0056】
工程S02において、選択可能に、前記コア材の質量と前記ポリマー前駆体の質量との比は、7~180である。例えば、前記コア材の質量と前記ポリマー前駆体の質量との比は、12~100であってもよい。ポリマー前駆体の添加質量が多すぎると、熱重量分析測定において、負極活性材料の重量減少率が増加し、且つ、負極活性材料の被覆量も大きくなりすぎ、製造過程で凝集が発生しやすくなり、充放電過程での活性イオンの伝導に影響を及ぼし、電池のサイクル性能が悪くなる。ポリマー前駆体の添加質量が少なすぎると、均一被覆と電解液の侵食を遮断する作用を果たすことが困難である。
【0057】
工程S03において、選択可能に、前記不活性非酸化性ガスの雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの一種類又は複数種類から選択される。
【0058】
工程S03において、選択可能に、前記噴霧乾燥の温度は、80℃~250℃である。例えば、前記噴霧乾燥の温度は、110℃~200℃であってもよい。ここで、昇温速度は、1℃/min~10℃/minであってもよく、例えば、前記昇温速度は、1℃/min~5℃/minであってもよい。
【0059】
工程S04において、選択可能に、前記不活性非酸化性ガスの雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの一種類又は複数種類から選択される。
【0060】
工程S04において、選択可能に、前記熱処理温度は、250℃~450℃であってもよい。例えば、前記熱処理温度は、300℃~450℃であってもよい。熱処理温度が高すぎるか又は低すぎると、ポリマー改質被覆層が完全に炭化する傾向があり、材料の重量減少率が上記要件を満たすことができず、且つ、ポリマー改質被覆層の弾性及び靭性が悪くなり、シリコン系負極材や錫系負極材の充放電過程での膨張及び収縮に良好に適応することができず、負極活性材料の表面と電解液との遮断を保証することもできず、電池のサイクル性能が悪くなる。
【0061】
工程S04において、選択可能に、前記熱処理時間は、2h~8hであってもよい。例えば、前記熱処理時間は、3h~5hであってもよい。
【0062】
上記製造方法において、工程S04は、選択可能に、固体粉末をまず一定の質量の硫黄粉と混合した後、熱処理を行う工程を含む。前記硫黄粉の質量と前記ポリマー前駆体の質量との比は、1~5であってもよい。例えば、前記硫黄粉の質量と前記ポリマー前駆体の質量との比は、2~4であってもよい。
【0063】
次に、本願の第3の様態に係る電池を説明する。
【0064】
本願の第3の態様は電池を提供し、前記電池は、正極シート、負極シート、セパレータ及び電解質などを含む。ここで、前記負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面に設けられ且つ本願の第1の態様に記載の負極活性材料を含む負極フィルムと、を含み得る。前記負極フィルムは、負極集電体の一つの表面に設けられていてもよいし、負極集電体の両面に設けられていてもよい。前記負極フィルムは、本願の第1の様態に記載の負極活性材料を含む以外にも、例えば炭素材料のような他の負極活性材料をさらに含み得る。選択可能に、前記炭素材料は、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボンのうちの一種類又は複数種類から選択される。前記負極フィルムは、導電剤及び接着剤をさらに含むことができ、そのうち、導電剤及び接着剤の種類及び含有量は特に限定されず、実際の必要に応じて選択することができる。前記負極集電体の種類も特に限定されず、実際の必要に応じて選択することができる。
【0065】
本願の電池において、前記正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設けられ且つ正極活性材料を含む正極フィルムと、を含み得る。正極フィルムは、正極集電体の一つの表面に設けられていてもよいし、正極集電体の両面に設けられていてもよい。前記正極フィルムは、導電剤及び接着剤をさらに含むことができ、そのうち、導電剤及び接着剤の種類及び含有量は特に限定されず、実際の必要に応じて選択することができる。前記正極集電体の種類も特に限定されず、実際の必要に応じて選択することができる。
【0066】
なお、本願の第3の態様の電池は、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、及び本願の第1の態様に記載の負極活性材料を用いる任意の他の電池であってもよい。
【0067】
電池がリチウムイオン電池である場合、前記正極活性材料は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩などから選択されることができるが、本願は、これらの材料に限定されず、他のリチウムイオン電池の正極活性材料として用いられる従来の周知の材料を用いることができる。これらの正極活性材料は、一種類のみを単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。選択可能に、正極活性材料は、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM333)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM622)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)、LiNi0.85Co0.15Al0.05、LiFePO(LFP)、LiMnPOのうちの一種類又は複数種類から選択される。
【0068】
電池がナトリウムイオン電池である場合、前記正極活性材料は、Mn、Fe、Ni、Co、V、Cu、Crのうちの一種類又は複数種類から選択される遷移金属Mを有し、0<x≦1である遷移金属酸化物NaMOと、リン酸塩、フルオロリン酸塩、ピロリン酸塩、硫酸塩から選択されるポリアニオン材料と、プルシアンブルー材料などとから選択されることができる。しかしながら、本願は、これらの材料に限定されず、さらに他のナトリウムイオン電池の正極活性材料として用いられる従来の周知の材料を使用することができる。これらの正極活性材料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。選択可能に、正極活性材料は、NaFeO、NaCoO、NaCrO、NaMnO、NaNiO、NaNi1/2Ti1/2、NaNi1/2Mn1/2、Na2/3Fe1/3Mn2/3、NaNi1/3Co1/3Mn1/3、NaFePO、NaMnPO、NaCoPO、プルシアンブルー材料、一般式がA(PO3-xの材料(ここで、Aは、H、Li、Na、K、NH から選択される一種類又は複数種類であり、Mは、遷移金属陽イオンであって、V、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選択される一種類又は複数種類であってもよく、Yは、ハロゲンアニオンであって、F、Cl、Brから選択される一種類又は複数種類であってもよく、0<a≦4、0<b≦2、1≦c≦3、0≦x≦2である)から選択される一種類又は複数種類である。
【0069】
本願の電池において、前記セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設置され、隔離の役割を果たす。ここで、前記セパレータの種類は、特に限定されず、従来の電池に使用される任意のセパレータ材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン及びそれらの多層複合膜であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0070】
本願の電池において、前記電解質の種類は、特に限定されず、前記電解質は、電解液とも呼ばれる液体電解質であってもよく、固体電解質であってもよい。選択可能に、前記電解質は、液体電解質を使用する。ここで、前記液体電解質は、電解質塩及び有機溶媒を含むことができ、電解質塩及び有機溶媒の特定の種類は、いずれも特に限定されず、実際の必要に応じて選択することができる。前記電解質は、添加剤を含むことができ、前記添加剤の種類も特に限定されず、負極成膜添加剤であってもよく、正極成膜添加剤であってもよく、さらに、例えば、電池の過充電を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤などのような電池の一部の性能を改善する添加剤であってもよい。
【0071】
いくつかの実施形態において、電池は、外装を含むことができる。外装は、正極シート、負極シート及び電解質を封止するのに用いられる。
【0072】
いくつかの実施形態において、電池の外装は、例えば、硬質プラスチックケース、アルミケース、鋼ケースなどのハードケースであってもよい。電池の外装は、例えば、袋式ソフトパッケージのようなソフトパッケージであってもよい。ソフトパッケージの材質は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの一種類又は複数種類のようなプラスチックであってもよい。
【0073】
本願の電池は、当該技術分野の周知の方法を用いて製造されることができる。例えば、正極シート、セパレータ及び負極シートに対して巻回プロセス又は積層プロセスを実行して電極アセンブリを形成し、ここで、セパレータは、正極シートと負極シートとの間に位置して隔離の役割を果たし、次に、電極アセンブリを外装に入れ、電解液を注入し、封止して、電池を取得する。
【0074】
本願の電池の形状は、特に限定されず、円筒形、四角形又は他の任意の形状であってもよい。図3は、一例としての四角形構造の電池5である。
【0075】
いくつかの実施形態において、図4を参照すると、外装は、筐体51及びカバープレート53を含むことができる。ここで、筐体51は、底板と底板に接続された側板とを備え、底板と側板とが囲んで収容キャビティを形成する。筐体51は、収容キャビティに連通する開口を有し、カバープレート53は、前記開口をカバーして、前記収容キャビティを密閉することができる。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスを経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティに封止されている。電解液は、電極アッセンブリ52内に浸潤される。電池5に含まれる電極アセンブリ52の個数は一つ又は複数であってもよく、必要に応じて調整することが可能である。
【0076】
本願の第4の態様は、電池モジュールを提供し、上記の本願の第3の態様により提供される電池が組み立てられて本願の第4の態様の電池モジュールになることができ、電池モジュールに含まれる電池の個数は、複数であってもよく、具体的な個数は、電池モジュールの応用及び容量に応じて調整することができる。
【0077】
図5は、一例としての電池モジュール4である。図5を参照すると、電池モジュール4において、複数の電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順次に配列して設置されてもよい。もつろん、他の任意の方式で配列することも可能である。さらに、この複数の電池5を締結具によって固定してもよい。
【0078】
選択可能に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含み、複数の電池5をこの収容空間に収容してもよい。
【0079】
本願の第5の態様は、電池パックを提供し、本願の第4の態様により提供される電池モジュールは、さらに、当該電池パックに組み立てられることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの個数は、電池パックの応用及び容量に応じて調整することが可能である。
【0080】
図6及び図7は、一例としての電池パック1である。図6及び図7を参照すると、電池パック1は、電池ケースと、電池ケース内に設けられた複数の電池モジュール4と、を含んでもよい。電池ケースは、上部ケース2及び下部ケース3を含み、上部ケース2は、下部ケース3をカバーするように設けられ、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、電池ケース内に任意に配置されることができる。
【0081】
本願の第6の態様は、本願に記載の二次電池、電池モジュール、又は電池パックの少なくとも一種類を含む装置を提供する。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記装置の電源として用いられてもよく、前記装置のエネルギー貯蔵部として用いられてもよい。前記装置は、モバイルデバイス(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電気車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電気自転車、電気スクーター、電気ゴルフ車両、電気トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0082】
前記装置は、その使用の必要に応じて、二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0083】
図8は、一例としての装置である。当該装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。二次電池に対する当該装置の高電力及び高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用してもよい。
【0084】
他の一例としての装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコンなどであってもよい。当該装置は、通常、軽薄化を必要とし、二次電池を電源として使用してもよい。
【0085】
以下、実施例と組み合わせて、本願をさらに説明する。これらの実施例は、本願の説明にのみ使用され、本願の範囲を限定するものではないことは理解されたい。
実施例1
【0086】
まず、負極活性材料を製造する。
(1)1gのポリアクリロニトリルを秤量して、1000mLのジメチルホルムアミド溶媒に添加し、ポリアクリロニトリルが完全に溶解するまで攪拌する。
(2)100gの一酸化シリコンを秤量して、工程(1)で得られた溶液に添加し、攪拌して、混合スラリーを取得する。
(3)混合スラリーを噴霧乾燥機に移し、アルゴンガスを導入して、190℃で噴霧乾燥を行って、固体粉末材料を取得する。
(4)取得された固体粉末に対して、アルゴンガスの雰囲気下で熱処理を行い、熱処理温度が450℃であり、熱処理時間が4hであり、冷却した後、必要な負極活性材料が取得される。
【0087】
その後、製造された負極活性材料と人造黒鉛とを3:7の質量比で混合して、負極活性材料及び人造黒鉛の混合物を取得し、さらに、前述の負極活性材料と人造黒鉛との混合物と、導電剤のSuper Pと、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)と、接着剤のスチレンブタジエンゴム(SBR)とを、88:3:3:6の質量比で混合し、溶媒の脱イオン水を添加し、真空撹拌機の作用下で系が均一になるまで攪拌して、スラリーを取得する。スラリーを負極集電体の銅箔上に均一に塗布した後、真空オーブンに移動して完全に乾燥させる。その後に、ロールプレスとパンチングを行って、特定の面積の小さなウェーハを取得する。
【0088】
その後、金属リチウムシートを対電極とし、Celgard 2400をセパレータとし、電解液を注入し、組み立てて、ボタン式電池を取得する。電解液は、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1の体積比で混合して、均一な有機溶媒を取得した後、LiPFを上記有機溶媒で溶解し、添加剤のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を添加して得られるものであり、ここで、LiPFの濃度は、1mol/Lであり、電解液におけるFECの質量割合は、6%である。
【0089】
実施例2~15及び比較例1~4のボタン式電池は、実施例1と同じ方法で製造され、具体的な相違を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
次に、負極活性材料及びボタン式電池の性能測定を説明する。
(1)負極活性材料の重量減少率測定
【0092】
熱重量分析法を採用して、製造された負極活性材料の重量減少率を測定し、測定範囲は、25℃~800℃であり、測定雰囲気は、窒素ガスの雰囲気である。
(2)ボタン式電池の初回クーロン効率及びサイクル性能測定
【0093】
25℃の常圧環境下で、ボタン式電池を0.1Cの倍率の定電流で電圧が0.005Vになるまで放電し、さらに、0.05Cの倍率の定電流で電圧が0.005Vになるまで放電し、この際の放電比容量を記録して、初回リチウム挿入容量とする。その後、0.1Cの倍率の定電流で電圧が1.5Vになるまで充電し、この際の充電比容量を記録して、初回リチウム脱離容量とする。ボタン式電池を上記方法で50回のサイクル充放電測定を行い、毎回のリチウム脱離容量を記録する。
負極活性材料の初回クーロン効率(%)=初回リチウム脱離容量/初回リチウム挿入容量×100%
負極活性材料のサイクル容量維持率(%)=50回目のリチウム脱離容量/初回リチウム脱離容量×100%
【0094】
【表2】
【0095】
表2の測定結果から、実施例1~15により製造されるボタン式電池が改善された初回クーロン効率及びサイクル性能有することが分かる。
【0096】
比較例1は、常用のポリマー被覆層を使用し、ポリマー自体の絶縁特性がリチウムイオンの充放電過程での伝導に影響を及ぼすため、ボタン式電池の初回クーロン効率が比較的低く、サイクル性能も比較的悪い。
【0097】
比較例2において、ポリマー前駆体を1200℃の高温下で熱処理し、ポリマーをほぼ完全に炭化しているため、シリコン酸素化合物の表面のポリマー被覆層はほぼ無機炭素層であり、負極活性材料の重量減少率が非常に低く、負極活性材料の副反応の程度が大きく、そのため、ボタン式電池のサイクル性能が比較的低い。また、無機炭素層の弾性及び靭性が低く、充放電過程でシリコン酸素化合物の膨張及び収縮に良好に適応することができず、負極活性材料表面のSEI膜が破壊及び修復し続け、一方で、大量のリチウムイオンを消費し、他方で、露出した負極活性材料と電解液とが直接接触し、負極活性材料の表面の副反応も増加するため、ボタン式電池のサイクル性能もさらに悪くなる。
【0098】
比較例3で製造される負極活性材料は、重量減少率が低すぎるため、被覆層は均一被覆及び電解液の侵食を遮断する作用を果たすことが困難であり、ボタン式電池の初回クーロン効率が比較的低い。同時に、被覆層の弾性及び靭性も比較的低く、充放電過程でシリコン酸素化合物の膨張及び収縮に良好に適応することができず、負極活性材料の表面のSEI膜が破壊及び修復し続け、一方で、大量のリチウムイオンを消費し、他方で、露出した負極活性材料と電解液とが直接接触し、負極活性材料の表面の副反応も増加するため、ボタン式電池のサイクル性能も比較的悪い。
【0099】
比較例4で製造される負極活性材料は、重量減少率が高すぎるため、負極活性材料が凝集しやすく、負極活性材料の表面の一部が被覆されないことが発生しやすくなり、ボタン式電池の充放電サイクル過程で、負極活性材料粒子が膨張するため、凝集した負極活性材料粒子が徐々に分散し、大量の新しい非被覆表面が露出され、リチウムイオン消耗を加速化するため、ボタン式電池のサイクル性能も比較的に悪い。
【0100】
当業者であれば、前述の明細書の開示及び教示に基づいて、上記実施形態をさらに変更及び修正することができる。そのため、本願は、上記で開示及び説明された特定の実施形態に限定されず、本願に対するいくつかの修正及び変更も、本願の特許請求の範囲内に含まれるべきである。なお、本明細書では特定の用語を使用しているが、これらの用語は説明の便宜上のものであり、本願を限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】