(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(54)【発明の名称】マイクロ粒子およびナノ粒子を観察するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/36 20060101AFI20220422BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
G02B21/36
G01N21/17 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555079
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2020056382
(87)【国際公開番号】W WO2020182828
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521412548
【氏名又は名称】ミリアド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】グレッフェ,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】タリニ,リュック
【テーマコード(参考)】
2G059
2H052
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059CC16
2G059EE02
2G059FF01
2G059GG02
2G059JJ11
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM02
2H052AA00
2H052AA04
2H052AB02
2H052AC02
2H052AC03
2H052AC05
2H052AC07
2H052AC33
2H052AC34
2H052AF14
2H052AF25
(57)【要約】
顕微鏡(1)を使用して、前記顕微鏡(1)を介してデジタルカメラ(3)と共役する一組の粒子の画像を得るための方法であって、前記一組の粒子は、前記顕微鏡(1)によって解像されないナノ粒子と、前記顕微鏡(1)によって解像されるマイクロ粒子と、を含み、前記粒子は光源(2)によって照明され、前記光源(2)は、前記顕微鏡(1)を介して前記デジタルカメラ(3)を照明し、前記デジタルカメラ(3)によって記録された画像において、前記ナノ粒子の光強度の変化が観察者に見えるように、前記光源(2)を用いて前記記録された画像に過剰露光が行われる工程と、前記記録された画像において、前記ナノ粒子の光強度の変化と同時に前記マイクロ粒子の光強度の変化が前記観察者に見えるように、前記記録された画像の前記過剰露光をデジタル的に補正する工程と、を含む、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡(1)を使用して、前記顕微鏡(1)を介してデジタルカメラ(3)と共役する一組の粒子の画像を得るための方法であって、前記一組の粒子は、前記顕微鏡(1)によって解像されないナノ粒子と、前記顕微鏡(1)によって解像されるマイクロ粒子と、を含み、前記粒子は光源(2)によって照明され、前記光源(2)は、前記顕微鏡(1)を介して前記デジタルカメラ(3)を照明し、
前記デジタルカメラ(3)によって記録された画像において、前記ナノ粒子の光強度の変化が観察者に見えるように、前記光源(2)を用いて前記記録された画像に過剰露光が行われる工程と、
前記記録された画像において、前記ナノ粒子の光強度の変化と同時に前記マイクロ粒子の光強度の変化が前記観察者に見えるように、前記記録された画像の前記過剰露光をデジタル的に補正する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記ナノ粒子がウイルスを含み、前記マイクロ粒子がウイルスの凝集体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記過剰露光の前記デジタル補正が、前記画像の前記ヒストグラムの変換によって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記画像の前記ヒストグラムの前記変換は、前記画像の前記ヒストグラムの拡張である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記画像の前記ヒストグラムの前記変換は、前記画像の前記ヒストグラムの平行移動である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記画像の前記ヒストグラムの前記拡張は線形である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記画像の前記ヒストグラムの前記拡張は非線形である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記画像の前記ヒストグラムの前記変換は、前記画像の前記ヒストグラムの拡張と、前記画像の前記ヒストグラムの平行移動とを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
顕微鏡(1)と、光源(2)と、デジタルカメラ(3)とを備えたイメージング装置であって、前記顕微鏡(1)を使用して、前記顕微鏡(1)を介して前記デジタルカメラ(3)と共役する一組の粒子の画像を得るように構成され、前記一組の粒子は、前記顕微鏡(1)によって解像されないナノ粒子と、前記顕微鏡(1)によって解像されるマイクロ粒子と、を含み、前記粒子が前記光源(2)によって照明され、前記光源(2)が、前記顕微鏡(1)を介して前記デジタルカメラ(3)を照明し、
前記光源(2)は、前記顕微鏡(1)を介して前記デジタルカメラ(3)によって記録された画像に過剰露光を行い、かつ、前記記録された画像において、前記顕微鏡(1)を介して前記デジタルカメラ(3)と共役するナノ粒子の光強度の変化が観察者に見えるようにするのに、十分な光強度のものであり、
前記装置は、前記記録された画像において、前記ナノ粒子の光強度の変化と同時に前記マイクロ粒子の光強度の変化が前記観察者に見えるように、前記カメラ(3)によって記録された前記画像の前記過剰露光を補正するためのデジタル手段をさらに備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルター処理がなされていないという意味で自然な、粒子混合物の観察に適用される顕微鏡検査の分野に関し、前記自然な混合物は、光学顕微鏡で解像される粒子すなわちマイクロ粒子と、光学顕微鏡で解像されない粒子すなわちナノ粒子と、を予測できない形で含む。
【背景技術】
【0002】
より明確には、本開示は、このような混合物、特に、液体媒質、特に水性媒質中で特にブラウン運動する位相物体をなす生物学的粒子で構成されるものなどの混合物を、顕微鏡とカメラで観察することに関する。
【0003】
また、本開示は、マイクロサイズまたはナノサイズの振幅物体すなわち、特に液体媒質中でブラウン運動しているときに、例えば金マイクロ粒子および金ナノ粒子が当該粒子を透過する光または粒子で反射する光または粒子によって吸収される光を減衰させるように、透過光または反射光または吸収される光を減衰させるマイクロ物体またはナノ物体を含有する混合物を観察することに関する。
【0004】
このように、本開示は、広義にはマイクロ物体またはナノ物体である位相物体または振幅物体の混合物を、特にブラウン運動しているときに、観察することに関するが、任意の大きさの粒子や動かない粒子を観察することにも関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
顕微鏡により集光される照明光の源(特に熱源、発光ダイオード、レーザーなど)を用いて、顕微鏡で解像される物体、すなわち、横方向の大きさが顕微鏡の横方向の解像限界より大きい物体の、強度画像を形成できるようにする、明視野での解像された光学観察法(英語では、brightfield microscopy(明視野顕微鏡検査))が、先行技術で知られている。このシステムでは、解像されない粒子は一般に目に見えないため、解像される粒子と同時に観察することはできない。
【0006】
また、解像されない粒子だけを含むように事前にフィルター処理がなされているため自然な状態ではない、流体試料中のナノ粒子を、干渉法に基づいて光学的に検出するための方法および装置も、先行技術で、例えば仏国特許出願公開第3027107号(BOCCARA)から、知られている。具体的には、この文献には、水性媒質中でブラウン運動している生物学的ナノ粒子を、顕微鏡とカメラを用いて観察するための干渉法が記載されている。また、この文献に開示された明視野干渉法では、特にこの文献の6ページ目に、どのような場合にも、事前にフィルター処理をして数百ナノメートル未満の粒子だけを含むようにした試料が必要である旨が説明されている。この文献で用いられている光学顕微鏡は可視域での分解能がわずか数百ナノメートルであることから、この文献は、観察対象となる試料には解像されない粒子だけが含まれていなければならないと教示していることになる。このシステムでは、解像される粒子は、事前に物理的なフィルタリングによって観察対象の物体から外されており、それゆえ、原則として観察対象となる物体のどの画像にも存在しないため、これを解像されない粒子と同時に観察することはできない。
【0007】
よって、先行技術には、自然な混合物と称する、顕微鏡で解像される粒子と顕微鏡で解像されない粒子との混合物を、顕微鏡とカメラによって画像で観察するという技術的課題があり、したがって、これは、特に粒子が液体マトリックス中でブラウン運動をしている位相物体である場合に、困難な課題である。
【0008】
画像のコントラスト、特にブラウン運動の有無を問わず解像される位相物体の画像のコントラストを高めるための処理が、先行技術でも知られている。特に、これらの画像のコントラストを高めるための処理は、画像のヒストグラムの変換からなる。画像処理において、ヒストグラム変換は、各画素を独立して処理することによって画像を変更するものである。これらの変換は、ほぼすべての画像処理および分析プロセスに見られる。特に、これらの変換は、通常、画像を画素の形で記録するカメラで撮影されたデジタル画像に適用され、これらの画素には各々、画像の記録前に当該画像を正規化する前処理を行う間と、画像の記録後に観察結果を改善する後処理を行う間、1つのグレースケールレベルが割り当てられているか、色に関連した複数のグレースケールレベルが割り当てられている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、以下の定義を用いる。
【0010】
画像の正規化:人間の観察者が見たときにコントラストが最大になるように、記録前または記録後の画像のヒストグラムを、記録を取るのに使用したセンサー、観察に使用したディスプレイ、または観察者の目のグレースケールレベルの全範囲にわたるグレースケールレベルで構成されるように拡張すること。
【0011】
ブラウン運動:熱運動によって引き起こされる動きであって、かつ重力の作用による粒子の沈降を防いでいる、液体媒質や粘性媒質中の粒子の自発的な動き。
【0012】
ストロボスコープ:カメラで撮影される画像の露光時間を制限し、動きを止める装置。「ストロボ画像」とは、特定の動きを静止させるのに十分短い露光時間を持つ画像と理解される。
【0013】
デジタルコントラストエンハンスメント:人間の観察者または一連のデジタル方法を実行できるシステムが画像内で視認可能な細部の数を、特に画像の正規化によって増加することができ、デジタル画像の過剰露光を補正することができる、一連のデジタル方法をいう。
【0014】
本開示は、顕微鏡を使用して、顕微鏡を介してデジタルカメラと共役する一組の粒子の画像を得るための方法であって、一組の粒子は、顕微鏡によって解像されないナノ粒子と、顕微鏡によって解像されるマイクロ粒子と、を含み、粒子は光源によって照明され、光源は、顕微鏡を介してデジタルカメラを照明する、方法に関する。この方法は、
-デジタルカメラによって記録された画像において、ナノ粒子の光強度の変化が観察者に見えるよう、光源を用いて記録された画像に過剰露光が行われる工程と、
-記録された画像において、ナノ粒子の光強度の変化と同時にマイクロ粒子の光強度の変化が観察者に見えるように、記録された画像の過剰露光をデジタル的に補正する工程と、を含む。
【0015】
変形例として、本方法は以下の特徴を含むことができ、これらは単独で実施されてもよいし、互いに組み合わせてもよい(ただし、技術的に大きな不整合を生じる場合を除く)。
ナノ粒子がウイルスを含み、マイクロ粒子がウイルスの凝集体を含む。
過剰露光のデジタル補正が、画像のヒストグラムの変換によって得られる。
画像のヒストグラムの変換は、画像のヒストグラムの拡張である。
画像のヒストグラムの変換は、画像のヒストグラムの平行移動である。
画像のヒストグラムの変換は、画像のヒストグラムの平行移動と、画像のヒストグラムの拡張と、を含む。
画像のヒストグラムの拡張は、線形である。
画像のヒストグラムの拡張は、非線形である。
【0016】
また、本開示は、上記の方法を実施するための装置であって、光源は、顕微鏡を介してデジタルカメラによって記録された画像に過剰露光を行い、顕微鏡を介してデジタルカメラと共役するナノ粒子の光強度の変化が見えるようにするのに、十分な光強度のものである、装置に関する。この装置は、カメラによって記録された画像の露光を補正するためのデジタル手段を備える。本開示の教示内容は、言及された方法、変形例、および装置のどのような組み合わせにも適用される。
【0017】
上述した特徴および利点などは、装置および提案された方法の実施形態についての以下の詳細な説明を読めば、明らかになるだろう。この詳細な説明では、添付の図面を参照する。
【0018】
添付の図面は概略的なものであり、必ずしも縮尺通りではないが、何より本発明の原理を示すことを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、粒子を観察するための装置の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照し、提案された発明の実施形態の例を詳細に説明する。これらの例は、本発明の特徴および利点を示すものである。しかしながら、本発明がこれらの例に限定されるものではないことは、想起されるであろう。
【0021】
図1の装置は、顕微鏡1と、顕微鏡の視野を照明する光源2と、カメラ3と、を含む。カメラは、顕微鏡1の物体焦点面と共役な像面に配置され、明視野画像が形成されるように顕微鏡を介して光源2からの直接光を集光する。ストロボスコープ(図示せず)や露光時間を制限するための他の何らかの手段、ならびに、取得した画像のコントラストを改善するためのデジタル画像処理手段を設けてもよい。この明視野構成は、顕微鏡の視野内に位置し解像される位相物体による強度の変動を収集する一方で、同じく顕微鏡の視野内に位置し解像されない位相物体によって散乱される光も集めるように設定されている。
【0022】
解像される物体の観察には、解像される物体による直接光の変調を利用し、解像されない物体の観察には、カメラと共役な物体焦点面の近傍で解像されない物体から散乱される光との干渉による変調を利用する。
【0023】
したがって、図示された装置では、顕微鏡の物体焦点面から顕微鏡の被写界深度にわたる範囲内、より広義には、顕微鏡によってカメラの平面と共役する物面から顕微鏡の被写界深度にわたる範囲内にある、解像される物体と解像されない物体を、同一の画像および同一の基準枠で観察することが可能になる。カメラは平面であると仮定されているが、本開示の教示内容から逸脱することなく、顕微鏡の像面湾曲に適合するカメラを想定することができる。
【0024】
図1の例で示される第1の実施形態では、装置は、顕微鏡1すなわち光学系と、光源2すなわち照明源またはソースと、カメラ3とを備える。このように、いずれの実施形態においても、本発明は、カメラ3と顕微鏡1によって集められる照明光の光源2を備える。観察対象となる物体は顕微鏡1の物体空間に配置されるため、明視野モードで照明されカメラ3で撮像される。
【0025】
好ましくは、カメラ3と共役であるナノ粒子について観察される干渉信号のコントラストが最大になるように、光源2からの照明を平行にする。
【0026】
ルミナスパワーが可能な限り高い光源2あるいは、いずれにしろ露光時間内にカメラの容量すなわちウェルの深さを満たすのに十分なパワーを持つ光源が好ましい。また、波長帯域が可能な限り狭い光源2であってもよい。
【0027】
このため、光源2として、中心波長405nmの可視光を発する発光ダイオード(例えば、型番M405LP1 Thorlabs社製 インペリアルブルーLED)を使用することができる。
【0028】
しかしながら、達成できる信号対雑音比が理由で所与の大きさのナノ粒子を検出することができさえすれば、スペクトルがさらに広い他の光源を使用しても構わない。したがって、例示的な一実施形態では、白色発光ダイオード(例えば、型番MWWHLP1 Thorlabs社製 LED)を使用して、平行照明を提供している。上述したスペクトルの狭い青色LEDほどは適していないにもかかわらず、このような白色LEDでは、100nmのナノ粒子(NP)を見ることができる場合がある(これに対して青色LEDでは、10nm)。このようなナノ粒子は、可視光では解像されない。
【0029】
ナノ粒子(NP)によって散乱される光を最大限に集めるには、開口数(NA)の大きい対物レンズが好ましい。
【0030】
よって、オリンパスの100倍対物レンズなどの油浸対物レンズを備えた顕微鏡1を使用してもよい。照明条件については、光源の自由空間での伝搬によって定義されるか、照明条件を変更できる集光器によって定義される(ケーラー照明、クリティカル照明または他のタイプの照明、特に平行照明)。
【0031】
すべての実施形態において、光学系の倍率、カメラ3の画素サイズ、カメラ3の1秒あたりの画像数としてのフレームレートは、ナノ粒子の2枚の取得されたまたは記録された画像間の動きが定量化できるように、選択される。
【0032】
明視野画像は、どのような場合でも、顕微鏡1を介して、高ダイナミックレンジのカメラ3すなわちウェルの深さが大きいカメラ、例えば、型番PHF-MV-D1024E-160-CL-12のPhoton Focus社製 CMOSカメラで画像化される。これよりも画素数が多く、ウェルの深さが浅い、別のカメラでも、画素がビニングされていれば使用することができる。
【0033】
カメラ3は、収差の光学的補正が最適化され、ほぼ回折限界に達する光学構成で、顕微鏡1の物体焦点面と共役な像面に配置されていると好ましい。
【0034】
光源2による照明を調整することで、例えばフィルター処理がなされていない自然の状態にある試料など、解像される粒子と横方向に解像されない粒子とを含む試料の明視野画像を、顕微鏡1で確実に形成することができる。可視域の最小波長、すなわち400nmで、開口数が1の対物レンズを用いると、解像限界は、既知のように200nmに近い。また、動くことのない解像される粒子と解像されない粒子が存在する試験試料を使用してもよい。
【0035】
特に、先験的に10nm~10μmの大きさの位相物体の集団を形成するウイルスおよびウイルスの凝集体を含有する未濾過の天然水からなる試料を、本発明を用いて観察することができる。生物学的粒子を含有する液体試料は、どのようなものであっても、本発明の装置および方法で観察することができる。通常、本発明は、ブラウン運動している位相物体を含む天然媒質を観察するのに特に有用である。
【0036】
ある実施形態では、約130画像/秒以上程度のカメラフレームレートを定義できる一方で、明視野顕微鏡で得られた過剰露光の画像(すなわち、画像を飽和させずに露光量を最大にした画像)に適した、コントラストを上げる処理を、カメラによって撮影される各画像またはストロボ画像に適用することができる。したがって、次第に小さくなる解像されない物体を、解像される物体の存在下で観察するには、所与の信号対雑音比に対応できるカメラフレームレートの増加が有利である。粒子のブラウン運動を可能な限りうまく追跡できるようにするために、どのような場合であってもフレームレートができるだけ高くなるように選択される一方で、いくつかの実施形態では、ノイズの主な原因となるショットノイズを最小化するために、カメラのウェルが完全に満たされるようにしている。
【0037】
コントラストを上げる処理については、画像処理手段が許すのであればリアルタイムで適用してもよいし、画像メモリに格納された一連のストロボ画像に事後的に適用してもよい。
【0038】
このように、顕微鏡で解像されない粒子によって散乱した光と直接光との干渉がゆえにコントラストが増した干渉パターンと、顕微鏡で解像される粒子の光学画像とを、単一の装置で得られた画像において、人間の目に見えるようにすることが可能であり、前記画像は、高コントラストにされている上、飽和する代わり人間の観察者が視認できる細部を含む。
【0039】
本発明の1つの利点は、2種類の粒子の(干渉イメージングと強度イメージングによって作られた)表現が厳密に同一の明視野装置を用いて得られているため、これらの表現が同一の空間フレームを共有していることにある。顕微鏡と、顕微鏡によってカメラと共役する物面との間の距離が機械的に安定している場合、顕微鏡の解像限界よりも小さいか解像限界よりも大きい寸法の粒子を、断面でイメージングする定量的な手段が存在する。
【0040】
特に、単に空間的な変化(すなわち、解像される粒子もあれば、解像されない粒子もあるという、一組の別々の粒子)だけでなく、時間的にも変化する(すなわち、例えば解像されない直径から解像される直径へと連続的に大きさが増す様々な大きさの気泡の場合のように、同一の粒子についての一組の異なる寸法)、解像されるまたは解像されない複数組の粒子を観察することが可能である。本願では、本発明のすべての実施形態において、「一組の粒子」という表現は、これらの2種類の変化が生じ得る組を少なくとも包含する。
【0041】
本発明の1つの利点は、同一の機器で両方のタイプのイメージングを得ることができ、それゆえ、当然ながら粒度に応じて顕微鏡によって自動的に行われる両方のタイプのイメージング(散乱光と直接光との間での干渉法および従来の強度イメージング)を同一の空間フレーム内にまとめることができる機能にある。
【0042】
したがって、上述した実施形態の方法によって、解像される2つの粒子間または解像されない2つの粒子間の距離の測定だけでなく、解像される粒子と解像されない粒子との間の距離の測定も確実に行うことができる。
【0043】
よって、本実施形態では、顕微鏡の被写界深度と等しい厚さの断面で、解像される自然な粒子と解像されない自然な粒子の断面画像を得ることが可能となる。
【0044】
さらに、画像の光学的コントラストを取得する工程と、これを増す工程とを同時に適用し、リアルタイムのイメージングを実現することも、そうでなければ、ノイズを低減する観点から画像を時間的に処理した後、時間的にオフセットしてリアルタイムではないイメージングを得ることも可能である。
【0045】
10nmを超える粒子の場合、1/130秒以下の露光時間を選択することができる。通常、この時間により、最も速く動く粒子のブラウン運動を止めるように、すなわち、イメージングの対象となる最小の粒子の動きがストロボ画像の露光時間内に顕微鏡によって解像されないように選択することができる。
【0046】
このように、最短の露光時間について、本実施形態の装置および方法でイメージング可能な粒子の最小サイズ、すなわち、本発明の装置の干渉法での解像力を算出することができる。
【0047】
画像の明るさの調整は、干渉画像も強度画像も飽和させないという制約のもと、明るい背景を最大にする、あるいは最大まで過剰露光にするという条件を満たすものであり、これは顕微鏡検査では従来から行われている調整である。この調整は、人間の観察者によって、ディスプレイ上で観察されるストロボ画像に対して行うことができる。
【0048】
この明視野装置では、照明源は、ランプタイプの熱源、発光ダイオード(LED)またはレーザーなど、どのようなタイプのものであってもよい。顕微鏡に関して、結果的に得られる照明は、空間的にコヒーレントであってもインコヒーレントであってもよい、および、時間的にコヒーレントであってもインコヒーレントであってもよい、の少なくとも一方である。
【0049】
したがって、本実施形態の装置によって、同一の明視野顕微鏡を用いて、(散乱光と直接光による)干渉イメージングと、(減衰した直接光による)強度イメージングとの両方をまとめて実現することが可能になる。
【0050】
ストロボ画像またはその時間平均のコントラストを改善するために、特に、画像の正規化とも呼ばれるヒストグラムの拡張または拡大を適用することが可能である。ストロボ画像は、背景が明るいため特に白に向かって飽和し、一般には裸眼で視認できる細部が確認されることはない。それゆえ、画像のヒストグラムを画像の全レベルの範囲に分散させることは、コントラストを高めるのに特に効果的な方法である。位相物体に対する従来の顕微鏡検査または解像顕微鏡検査では、この状況は、照明条件が最適化されておらず、カメラの広い範囲で最も低いグレースケールレベルが必要とされない、欠陥のある顕微鏡検査のセットアップに相当することに注意されたい。
【0051】
明視野顕微鏡だけを含むシステム、ストロボスコープで画像を取得できるシステム(特にカメラ)、および画像のコントラストを改善するための画像処理手段を用いることにより、自然な試料の観察に適用した場合に、粒子をサイズに応じて物理的にフィルタリングすることなく、ブラウン運動している複数の位相物体の同時画像を作成可能な装置を得ることができる。
【0052】
正規化処理によって、解像されない粒子の干渉パターンと解像される粒子の強度パターンのコントラストが改善されることに留意されたい。
【0053】
特にストロボ画像のヒストグラムを平行移動することによって、多くの変形実施形態が可能であるが、処理後に得られるのはコントラストの低いストロボ画像である。
【0054】
また、観察対象となる粒子の種類に応じて、ストロボ画像のヒストグラムに線形または非線形の正規化操作を適用することも可能である。特に、解像される粒子および解像されない粒子の少なくとも一方の強度は通常試料ごとに変化するため、それぞれの非線形正規化は、試料に固有のものであってもよい。
【0055】
ストロボ画像から背景を除去し、そのコントラストを改善できるようにする他の方法も、本発明で使用することができる。
【0056】
本発明のすべての実施形態において、手順は、顕微鏡を介してカメラで記録された画像を、光源を最大出力で使用して過剰露光することから始まり、次にこの過剰露光をデジタル的に補正することを目的としている。この方法によって、顕微鏡で解像されないナノ粒子の強度の変化(人間の目で視認可能)と、顕微鏡で解像されるマイクロ粒子の強度の変化(人間の目で視認可能)とを、1枚の画像で同時に得ることが可能になる。言い換えれば、この方法によって、観察対象となる媒質中の解像されないナノ粒子の存在に起因する散乱光との干渉に関連する光強度の変化と、同一媒質中の解像されるマイクロ粒子の存在に関連する光強度の変化とを、1枚の画像で同時に得ることが可能になる。
【0057】
本発明は、粒子群の各粒子の大きさが10nm~10μmである場合、あるいは、可視域で動作する光学顕微鏡により解像されない粒子と解像される粒子の両方で構成されている場合の、粒子群の観察者による観察に特に適している。
【0058】
本発明の文脈では、「ヒストグラム」は、デジタル画像における「グレースケールレベル」の分布または光強度の分布を意味すると理解される。
【0059】
本発明は、顕微鏡検査の分野において、産業上利用可能または使用可能である。
【0060】
本開示に記載された実施形態または実施形態の例は、例示のためのものであって非限定的なものである。当業者であれば、本開示に照らして、本発明の範囲内において、これらの実施形態または実施形態の例を変更したり、他の実施形態や実施形態の例を想定したりすることが容易にできるであろう。
【0061】
特に、上述した実施形態または実施形態の例の特徴のうち一部だけで本発明の利点の1つを達成するのに十分であれば、当業者は、これらの特徴を含む変形例を容易に想定することができるであろう。また、これらの実施形態または実施形態の例の様々な特徴を単独で使用してもよいし、組み合わせて併用してもよい。組み合わせる場合、これらの特徴は、上述したような組み合わせであってもよいし、その他の組み合わせであってもよく、本発明は、本明細書に記載された特定の組み合わせに限定されるものではない。特に、別段の定めがない限り、ある実施形態または実施形態の例に関連して記載された特徴を、別の実施形態または実施形態の例に類似した方法で適用してもよい。
【国際調査報告】