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特表2022-524510パルス化電気機械制御のためのブースト変換器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-06
(54)【発明の名称】パルス化電気機械制御のためのブースト変換器
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220425BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20220425BHJP
   H02M 3/07 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
H02M7/48 F
H02P27/06
H02M3/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553027
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(85)【翻訳文提出日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 US2020022262
(87)【国際公開番号】W WO2020190614
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】62/819,097
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520347203
【氏名又は名称】トゥラ イーテクノロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マツダ,ババック
(72)【発明者】
【氏名】トリパシー,アディア エス.
(72)【発明者】
【氏名】カーヴェル,ポール
【テーマコード(参考)】
5H505
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H505BB02
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD05
5H505DD06
5H505DD08
5H505DD11
5H505EE49
5H505GG01
5H505HA05
5H505HA06
5H505HA09
5H505HB01
5H505JJ04
5H505JJ09
5H505JJ17
5H505LL01
5H505LL38
5H505LL41
5H730AS13
5H730BB01
5H730BB98
5H770AA01
5H770BA01
5H770CA01
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770HA07Z
5H770JA17W
(57)【要約】
ブースト回路が、電気機械のパルス化制御動作に使用されるパルス化電力の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を短縮するように配列される。パルスの終了時に電気機械に存在する磁気エネルギーが、ブースト回路によって抽出されて、パルスの立ち下がり時間を短縮する。エネルギーは、ブースト回路によって貯蔵され、次に、後続のパルスの開始時に印加されて、立ち上がり時間を短縮する。このようなブースト回路を使用しない場合と比較して立ち上がり時間及び立ち下がり時間を短縮することによって、機械効率を向上させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
電源と、
巻線部を有するとともに、前記巻線部に磁気エネルギーが貯蔵されている電気機械と、
前記電気機械をパルス化モードで選択的に動作させるように構成された電気機械コントローラと、
前記電源と前記電気機械との間に結合された電力変換器であって、前記機械コントローラに応答して、パルス化電力を前記電気機械の前記巻線部に送達するように、又は、前記電気機械の前記巻線部からパルス化電力を受け取るように配列された前記電力変換器と、
を備える装置において、
前記電力変換器が、パルスの終了時に、前記電気機械に存在する前記磁気エネルギーの少なくとも一部を抽出して、前記パルスの立ち下がり時間を短縮し、前記エネルギーの少なくとも一部を貯蔵し、後続のパルスの開始時に、前記エネルギーの少なくとも一部を印加し、これにより、前記パルス化電力の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を、ブースト回路がない場合の前記パルス化電力の前記立ち上がり時間及び立ち下がり時間と比較して、短縮するように配列された前記ブースト回路を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、パルス化動作のパルスの間に、前記電気機械が実質的にその最大効率動作点で動作することを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置において、前記電源がDC電源であることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の装置において、前記DC電源によって発生したDC電力をAC電力に変換する電力インバータとして前記電力変換器を動作させて、前記電気機械を駆動することを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の装置において、前記電気機械によって発生したAC電力を前記DC電源に貯蔵されるDC電力に変換する電力整流器として、前記電力変換器を動作させることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項3乃至5の何れか1項に記載の装置において、前記ブースト回路が、前記DC電源の端子と、前記電気機械を行き来する電力を制御するスイッチングネットワークと、の間で電気的に接続されたスイッチを含むことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、前記ブースト回路が、前記スイッチによって前記スイッチングネットワークと電気的に選択的に接続されたキャパシタを含むことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の装置において、前記ブースト回路が、ステータの前記巻線部に貯蔵された磁気エネルギーを使用して、前記電気機械を駆動するために利用可能な電位を一時的にブーストすることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の装置において、前記ブースト回路が、前記電気機械のオフ期間中に、一連の1つ又は複数のブーストステップにおいて、前記電気機械を駆動するために前記利用可能な電位をブーストすることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項3乃至9の何れか1項に記載の装置において、前記ブースト回路が、前記電源と、前記電気機械を行き来する電力を制御するスイッチングネットワークと、の間にダイオードを含むことを特徴とする装置。
【請求項11】
電気機械を動作させる方法において、
前記電気機械をパルス化して動作させることで、前記電気機械に印加された電力、又は前記電気機械から取り出された電力が、電力が減少した期間によって分離された一連のパルスで構成されるようにするとともに、所望の大きさのトルクを送達するように、前記一連のパルスのデューティサイクルを決定するステップと、
パルスの終了時に、前記電気機械に存在する磁気エネルギーの少なくとも一部を抽出して、前記パルスの立ち下がり時間を短縮するステップと、
前記エネルギーの少なくとも一部を貯蔵するステップと、
後続のパルスの開始時に、前記エネルギーの少なくとも一部を印加し、これにより、前記パルス化電力の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を短縮するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記一連のパルスのパルスの間に、前記電気機械に印加された前記電力、又は前記電気機械から取り出された前記電力が、前記電気機械にとって実質的に最も効率的な動作点で前記電気機械を動作させることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法において、前記一連のパルスがブースト回路を含む電力変換器によって発生し、前記ブースト回路が、前記一連のパルスのパルスの立ち上がり時間及び立ち下がり時間を、前記ブースト回路がない場合の前記パルスの前記立ち上がり時間及び立ち下がり時間と比較して、短縮するように配列されていることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、DC電源によって発生したDC電力を、前記電気機械を駆動するためにAC電力に変換する電力インバータとして、前記電力変換器を動作させることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、前記電気機械によって発生したAC電力を、DC電源に貯蔵されるDC電力に変換する電力整流器として、前記電力変換器を動作させることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項11乃至15の何れか1項に記載の方法において、電気モータ又は発電機として前記電気機械を動作させることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項11乃至16の何れか1項に記載の方法において、電気モータとして前記電気機械を動作させ、ブースト回路を含む電力変換器によって前記一連のパルスを発生させ、前記ブースト回路が、前記一連のパルスの少なくとも1つのパルスの開始時に、前記電気モータを駆動するために利用可能な電位を増加させることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記ブースト回路が、前記一連のパルスの前記少なくとも1つのパルスに先行するパルスの終了時に、前記電気モータを駆動するために前記利用可能な電位を増加させることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の方法において、前記ブースト回路が、前記一連のパルスの前記少なくとも1つのパルスに先行するオフ期間中に、前記電気モータを駆動するために前記利用可能な電位を増加させることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、前記ブースト回路が、一連の1つ又は複数のステップにおいて、前記電気モータを駆動するために前記利用可能な電位を増加させることを特徴とする方法。
【請求項21】
電気機械を動作させる方法において、
前記電気機械をパルス化して動作させることで、前記電気機械に印加された電力、又は前記電気機械から取り出された電力が、電力が減少した期間によって分離された一連のパルスで構成されるようにするとともに、所望の大きさのトルクを送達するように、前記一連のパルスのデューティサイクルを決定するステップと、
前記一連のパルスの移行時間をそれぞれ短縮するように、正電圧バスと負電圧バスとの間の電位差を増加させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記一連のパルスの間の前記期間中に、一連の1つ又は複数のステップにおいて、電気モータを駆動するために前記電位を増加させることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の方法において、前記電位差が、前記電気機械にエネルギーを貯蔵、又は送達するために使用される電源の前記電位差を超過することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項21乃至23の何れか1項に記載の方法において、電力が無視できる程度である期間中に、前記電気機械に印加された前記電力、又は前記電気機械から取り出された前記電力が、前記一連のパルスの間に、前記電気機械に供給された前記電力、又は前記電気機械から取り出された前記電力の10%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満、及び0.1%未満からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項25】
システムにおいて、
電気モータと、
トルク変調モジュールであって、
(a)トルク要求を受け取るように、
(b)前記受け取ったトルク要求が前記モータのピーク効率トルク未満であるかどうかを確認するように、且つ、
(c)前記トルク要求が前記モータの前記ピーク効率未満である場合に、変調された波形を生成するように
配列されたトルク変調モジュールと、
前記変調された波形を受け取るように配列された電力変換器であって、前記変調された波形に応答して、一連のエネルギーパルスであって、その平均が前記受け取ったトルク要求と実質的に等しい、前記電気モータのピーク効率でのトルク及び低トルクをそれぞれ生成するために前記電気モータを駆動する前記一連のエネルギーパルスを生成するように配列された前記電力変換器と、
前記電力変換器に結合されたブースト回路であって、前記一連のエネルギーパルスの移行時間を、前記ブースト回路がない場合の移行時間と比較して、短縮させる前記ブースト回路と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項26】
請求項25に記載のシステムにおいて、前記低トルクがゼロであることを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項25又は26に記載のシステムにおいて、前記低トルクはゼロよりも大きいが、前記モータの前記ピーク効率での前記トルク未満であることを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項25乃至27の何れか1項に記載のシステムにおいて、前記電力変換器が、第1の電位に維持された第1の電力レールと、第2の電位に維持された第2の電力レールとの間に結合されたスイッチングネットワークを含み、前記ブースト回路が、前記第1の電力レールと前記第2の電力との間の電位差を、前記ブースト回路がない場合の前記第1の電位と前記第2の電位との間の前記電位差よりも大きくなるように、ブーストするように配列されていることを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項28に記載のシステムにおいて、前記スイッチングネットワークが、前記電気モータをそれぞれ駆動するために使用されるエネルギーの3つの相のそれぞれにスイッチの対を含み、前記スイッチの対のそれぞれが、前記第1の電力レールと前記第2の電力レールとの間に、それぞれ直列に結合されていることを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項28に記載のシステムにおいて、前記ブースト回路を前記電力変換器の少なくとも前記第1の電力レールに選択的に結合するためのスイッチをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項31】
請求項25乃至30の何れか1項に記載のシステムにおいて、前記ブースト回路が、以下のうちの1つ、すなわち、
(a)チャージポンプ、
(b)電圧源、
(c)キャパシタ、
(d)バッテリ、又は
(e)(a)から(d)の任意の組み合わせ
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項32】
請求項25乃至31の何れか1項に記載のシステムにおいて、前記変調された波形が、
(a)パルス幅変調(PWM)、
(b)直接トルク制御(DTC)、
(c)ヒステリシス、又は
(d)デッドビート制御
のうちの1つを使用して、前記トルク変調モジュールによって変調されることを特徴とするシステム。
【請求項33】
請求項25乃至32の何れか1項に記載のシステムにおいて、前記電気モータのロータの角度位置を表す信号から、前記電気モータの推定速度を生成するように配列された速度推定モジュールをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項34】
請求項25乃至33の何れか1項に記載のシステムにおいて、前記電気モータのロータの角度位置を表す信号から、前記電気モータの推定トルクを生成するように配列されたトルク推定モジュールをさらに備えることを特徴とするシステム。
【請求項35】
請求項25乃至34の何れか1項に記載のシステムにおいて、前記トルク変調モジュールが、前記電気モータのロータの感知された角度位置から得られる信号に応答して、前記変調された波形を調節するようにさらに構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項36】
請求項25乃至35の何れか1項に記載のシステムにおいて、前記受け取ったトルク要求が前記モータの前記ピーク効率トルクよりも大きい場合に、前記トルク変調モジュールが、前記電力変換器と連携して、前記電気モータを連続モードで動作させるようにさらに構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項37】
請求項25乃至36の何れか1項に記載のシステムにおいて、前記電気モータが、連続モード又はパルス化モードのいずれかで動作することが可能な発電機として動作することができる電気機械であることを特徴とするシステム。
【請求項38】
請求項25乃至37の何れか1項に記載のシステムにおいて、前記電力変換器が、第1の電力レールと第2の電力レールとの間に結合された複数のスイッチを含むスイッチングネットワークを含み、前記ブースト回路が、前記第1の電力レールと前記第2の電力レールとの間の前記スイッチングネットワークの前記複数のスイッチと並列に結合されたキャパシタを含むことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月15日に出願された米国仮特許出願第62/819,097号明細書の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、概して、よりエネルギー効率の良いやり方で所望の出力を選択的に送達するための電気機械のパルス化制御に関し、より詳細には、電気機械をパルス化するための立ち上がり時間及び立ち下がり時間が改善された、ブースト変換器回路に関する。
【背景技術】
【0003】
「機械」という用語は、本明細書で使用する場合、電気モータ及び発電機の両方を意味するように広義に解釈されることが意図される。電気モータ及び発電機は、構造的に非常によく似ている。両方とも、複数のポールを有するステータと、ロータと、を含んでいる。機械がモータとして動作している際には、機械は電気エネルギーを機械エネルギーに変換する。発電機として動作している際には、機械は機械エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0004】
電気機械は、直流電流(DC)又は交流電流(AC)のいずれかを使用して動作することができる。
【0005】
代表的なDC機械には、ブラシレス型、電気励磁型、永久磁石型、直巻型、分巻型、ブラシ付き型、複巻型、及びその他のものが含まれる。
【0006】
AC機械の場合、2つの種類、すなわち非同期機及び同期機が一般的である。非同期電気機械の一例が、三相誘導モータである。
【0007】
最新の電気機械は、比較的高いエネルギー変換効率を有する。しかしながら、ほとんどの電気機械のエネルギー変換効率は、それらの動作負荷に基づいて著しく変わる可能性がある。多くの用途では、機械は、多種多様な異なる動作負荷条件の下で動作することが要求される。その結果、機械は通常、ある特定の時に最高レベルの効率で、又は最高レベルに近い効率で動作するが、一方、それ以外の時には、機械はそれよりも低いレベルの効率で動作する。
【0008】
バッテリにより動力が供給される電気自動車は、広範囲の効率レベルで動作する電気機械の好例を提供する。典型的な運転サイクルの間、電気自動車は、加速したり、一定速度で走行したり、減速したり、ブレーキをかけたり、角を曲がったり等々を行う。ある特定のロータ速度及び/又はトルク範囲内では、電気機械は、最も効率的な動作点、すなわち、その「スイートスポット」で、又はその付近で動作する。これらの範囲外では、電気機械の動作は効率が下がる。運転条件が変化すると、ロータ速度及び/又はトルク変化とともに、機械は、高いレベルの動作効率と低いレベルの動作効率との間で移行する。効率の良い動作領域で動作する運転サイクルの割合が大きくなるように電気機械を作ることができれば、所与のバッテリ充電レベルの車両の範囲が拡大されることであろう。バッテリにより動力が供給される電気自動車の範囲が限られていることが、それらを使用するにあたっての主要な商業上の妨げとなっているので、車両の動作範囲を拡張することは、大いに有利である。
【0009】
したがって、より高いレベルの効率で、モータ及び発電機などの電気機械を動作させる必要が存在する。
【発明の概要】
【0010】
本出願は、モータ及び発電機などの電気機械の、動作効率を向上させるためのパルス化制御に向けたものである。非排他的な一実施形態では、このようなパルス化制御された機械は、電源と、巻線部を有するステータと、モータのトポロジによって設計が決まるロータと、この機械をパルス化モードで選択的に動作させるように構成された機械コントローラと、電源と電気機械との間に結合された電力変換器と、を含む。電力変換器は、機械コントローラに応答して、パルス化入力電力を機械のステータの巻線部に供給するように配列されている。加えて、電力変換器は、ブースト回路を含んでもよい。ブースト回路は、パルス化電力の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を、ブースト回路がない場合のパルス化電力の立ち上がり時間及び立ち下がり時間と比較して、短縮するように配列されている。ブースト回路は、パルスの終了時に、パルスの立ち下がり時間を短縮するために、電気機械に存在する磁気エネルギーの少なくとも一部を抽出し、エネルギーの少なくとも一部を貯蔵し、後続のパルスの開始時に、立ち上がり時間を短縮するために、エネルギーの少なくとも一部を印加する。パルス化電力の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を短縮することによって、電気機械及び電気系統全体の効率が向上する。
【0011】
本発明及びその利点は、以下の説明を添付の図面と併せて参照することによって最も良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、異なる動作条件下における代表的な電気モータのエネルギー変換効率を図示する代表的なトルク/速度/効率のグラフである。
図2図2は、電気モータに印加されたパルス化電流信号を図示するグラフである。
図3A図3Aは、ゼロからピーク効率トルクに移行する間に固定速度で動作するモータの、トルク対効率のマップである。
図3B図3Bは、ゼロからピーク効率トルクに移行する間に固定速度で動作する例示的なモータの、トルク対損失される仕事量である。
図4図4は、本発明の非排他的な一実施形態によるパルス化制御された電気機械を図示する。
図5A図5Aは、50アンペアのピーク値を有する連続的な三相AC波形を図式的に表したものである。
図5B図5Bは、図5Aの連続的な波形と同じ電力出力を供給する50%のデューティサイクルを有するパルス化波形である。
図5C図5Cは、図5Aの連続的な波形と同じ電力出力を供給する50%のデューティサイクルを有するパルス化波形である。
図6A図6Aは、例示的なモータの3つの相A、B及びCを通る電流の流れをモデル化している代表的な回路である。
図6B図6Bは、例示的なモータの3つの相A、B及びCを通る電流の流れをモデル化している代表的な回路である。
図7A図7Aは、先行技術の電力変換器を図示する回路図である。
図7B図7Bは、図5Aに示されている電力変換器の切り替え状態及び電圧を示す例示的な先行技術のタイミング図である。
図7C図7Cは、図5Aに示されている電力変換器の切り替え状態及び電圧を示す例示的な先行技術のタイミング図である。
図7D図7Dは、図5Aに示されている電力変換器の切り替え状態及び電圧を示す例示的な先行技術のタイミング図である。
図7E図7Eは、図5Aに示されている電力変換器の切り替え状態及び電圧を示す例示的な先行技術のタイミング図である。
図7F図7Fは、図5Aに示されている電力変換器の切り替え状態及び電圧を示す例示的な先行技術のタイミング図である。
図8図8は、本発明の非排他的な一実施形態によるブースト回路を含む電力変換器である。
図9A図9Aは、本発明の非排他的な一実施形態によるブースト回路が、電力変換器のパルス化制御された動作中にどのように立ち上がり時間及び立ち下がり時間を改善するかを図示する信号図である。
図9B図9Bは、本発明の非排他的な一実施形態によるブースト回路が、電力変換器のパルス化制御された動作中にどのように立ち上がり時間及び立ち下がり時間を改善するかを図示する信号図である。
図9C図9Cは、本発明の非排他的な一実施形態によるブースト回路が、電力変換器のパルス化制御された動作中にどのように立ち上がり時間及び立ち下がり時間を改善するかを図示する信号図である。
図10図10は、本発明の非排他的な一実施形態による電気機械を駆動するために利用可能な例示的な電圧を時間の関数として図示する。
図11図11は、本発明の非排他的な一実施形態による電気機械を駆動するために利用可能な例示的な電圧を時間の関数として図示する。
図12図12は、本発明の別の非排他的な実施形態によるブースト回路を含む別の電力変換器である。
図13図13は、本発明による車両における電気機械のパルス化制御動作のためのステップを図示するフロー図である。
図14図14は、本発明の別の実施形態によるモータに供給されるエネルギーの変調を図示する図である。
【0013】
図面において、同様の参照符号は、同様の構造要素を指定するために使用される場合がある。図面内の描写は、図式的なものであり、縮尺通りではないこともまた認識されたい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本出願は、概して、パルス化しなければ連続的に動作する多種多様な電気機械(例えば、電気モータ及び発電機)のパルス化制御に関する。パルス化制御によって、機械は、インテリジェントに、且つ、断続的にオンとオフとにパルス化され、(1)動作要求を満たすだけでなく、同時に(2)全体的な効率もまた向上させる。より具体的には、選択された動作条件下において、電気機械は、従来の連続的な機械動作によって達成されるよりも効率的に所望の平均出力を送達するために、より効率的なエネルギー変換動作レベルで断続的にパルス駆動される。パルス化動作により、電気機械トルクが意図的に変調されるようになる。ただし、変調は、意図される用途にとって許容できない騒音又は振動を発生しないように管理される。
【0015】
簡潔にするために、本明細書に提供されるような多種多様な電気機械のパルス化制御は、車両内の三相誘導電気モータの文脈で説明されている。しかしながら、この説明は、いかなる点に関しても限定するものとして解釈されないものとする。それどころか、本明細書に記載のパルス化制御は、多くのタイプの電気機械、すなわち、電気モータ及び発電機のいずれにも使用することができる。例えば、本明細書に記載の機械のパルス化制御は、AC(例えば、誘導機、同期機、任意の数のポール、等々)か、又はDC(例えば、ブラシレス型、電気励磁型、永久磁石型、直巻型、分巻型、ブラシ付き型、複巻型、等々)かに関係なく、任意のタイプの機械とともに使用してもよい。加えて、このような電気機械のパルス化制御は、電気自動車だけに限定されるのではなく、任意の用途で使用してもよい。特に、パルス化制御は、暖房システム、冷房システム、及び換気システム用の電気モータなど、車両用途よりも加速及び減速の割合を低くする必要があるシステムにおいて使用してもよい。
【0016】
パルス化エンジン制御は、2019年3月14日に出願された米国特許出願公開第16/353,159号明細書、並びに2018年3月19日に出願された米国仮特許出願第62/644,912号明細書、2018年4月17日に出願された米国仮特許出願第62/658,739号明細書、及び2019年2月26日に出願された米国仮特許出願第62/810,861号明細書に記載されている。前述の出願はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
三相誘導機
誘導機は、2つの主要部品、静止ステータ及び回転ロータを含む。三相機械では、ステータは、三相AC入力によって励磁される3コイル巻線部を含んでもよい。三相AC入力が三相巻線部を通過すると、回転磁場(RMF:rotating magnetic field)が生成される。RMFの回転速度は、電気機械の同期速度(N)として知られている。ロータは、通常は、「リスかご」型又は「巻線」型ロータであり、いずれも端部で電気的に短絡された複数の導電性素子を有する。ファラデーの法則に従って、RMFは、ロータの導電性素子内に電流を誘導する。誘導された電流は誘導磁場を確立し、これは、ステータコイルに発生した磁場と相互に作用する。ロータ磁場及びステータ磁場の相互作用は、ロータの回転を引き起こす電磁力(EMF:electromagnetic force)を生成する。このタイプのモータは、電磁誘導によって電流がロータの導電性素子上に誘導されるので、直接的な導電性経路に対立するものとして、誘導モータと呼ばれる。
【0018】
三相誘導モータは、多くの利点を提供する。第1に、それらは元来、自動始動型である。第2に、ロータの回転速度は、制御が容易である。ロータの回転速度(N)は、常に同期速度(N)よりも僅かに遅い。この差は、スリップとして知られており、パーセンテージに換算して表現してもよい。
スリップ%=(N-N)/N 式(1)
【0019】
ステータ巻線部に通電する三相AC電力の周波数は、RMF回転速度を制御し、したがって、同期周波数を制御する。次に、ロータの回転速度は、上記で定義された式(1)に基づいて制御することができる。
【0020】
三相巻線部に供給される周波数は、同期速度(N)を制御し、一方、印加されるACの振幅は、電気機械の出力トルクを制御する。振幅が大きくなるか、又は小さくなると、機械の出力は、それぞれ大きくなるか、又は小さくなる。
【0021】
車両モータ効率マップ
図1を参照すると、異なる負荷及び速度条件下での例示的な車両モータ効率マップ10が図示されている。マップ10は、縦軸に沿ったトルク(N*m)を、横軸に沿ったモータ速度(RPM)の関数としてプロットしたものである。最大定常状態出力電力は、曲線12で示されている。
【0022】
ピークトルク/速度曲線12の下の区域は、動作効率のパーセント表示がそれぞれに付された複数の領域にマッピングされている。示されている特定のモータの場合、以下の特性が明らかである。
●その動作範囲の最も効率的な領域、すなわち「スイートスポット」領域は、符号14が付された動作領域であり、それは、トルク出力が約40~70N*mの範囲にある場合、概して、4,500~6,000RPMの範囲にある。領域14では、エネルギー変換効率は96%のオーダーであり、この領域は、モータがその最も効率的な動作範囲で動作している「スイートスポット」になっている。
●モータ速度が上昇しておよそ6,000+RPMを超えると、効率は、出力トルクに関係なく低下する傾向にある。
●出力トルクが70N*mを超えて上がるか、又は40N*m未満に下がると、効率のパーセンテージは、ピークから減少する傾向にあり、状況によっては、かなり大幅に減少する。例えば、モータがおよそ2,000RPM、且つ、出力トルク100N*mで動作している場合、効率はおよそ86%である。トルク出力が約30N*m未満に下がると、モータ速度に関係なく、効率は低下して、無負荷時でゼロに近づく。
●どの特定のモータ速度においても、対応する最も効率的な出力トルクがあり、これは最大効率曲線16によって図式的に示されている。
【0023】
図示されているようなマップ10は、2010年式トヨタ・プリウスで使用されている電気モータから得られたものである。マップ10は、内部永久磁石型同期モータのものである。このマップ10は、単に例示的なものであり、いかなる点に関しても限定するものとして解釈されないものとすることを理解されたい。同様のマップは、車両で、又は他の何らかの用途で使用されているかどうかに関係なく、ほぼすべての電気モータ、例えば、3相誘導モータに対して生成することができる。
【0024】
マップ10から分かるように、モータは、概して、スイートスポット14の速度及びトルク範囲内で動作しているときに、最も効率的である。モータが、そのスイートスポット14で、又はその付近で動作する時間の割合が大きくなるように動作条件を制御することができれば、モータの全体的なエネルギー変換効率を大幅に向上させることができる。
【0025】
しかしながら、実際的見地から言えば、運転状況の多くは、モータがスイートスポット14の速度及びトルク範囲の外で動作することが求められる。電気自動車では、トランスミッションがないため、電気モータの回転速度と車輪の回転速度の比率が固定されているのが一般的である。この場合、モータ速度は、車両が停止しているときのゼロから、高速道路の速度で走行するときの比較的高いRPMの間で変わる場合がある。トルク要件もまた、車両が加速又は減速しているのか、上り坂を走行しているのか、下り坂を走行しているのか、水平面を移動しているのか、ブレーキをかけているのか、等々といった要因に基づいて、大きく変わる場合がある。
【0026】
図1に見られるように、任意の特定のモータ速度において、最大効率曲線16によって図式的に示されている、対応する最も効率的な出力トルクが存在することになる。概念の観点から言えば、所望のモータトルクが現在のモータ速度の最も効率的な出力トルクを下回っている場合、モータをパルス化することによって、モータの全体的な効率を向上させ、これにより、一部の時間はスイートスポットで、又はその付近でモータを動作させ、残りの時間は低トルク又はゼロトルクの出力レベルでモータを動作させることができる。このように生成された平均トルクは、スイートスポット動作のデューティサイクルを制御することによって制御される。
【0027】
図2を参照すると、縦軸の電気モータへの合計印加電流対横軸の時間をプロットしたグラフ20が図示されている。印加電流は、三相モータの三相のすべての電流の和とすることができる。例示目的で、それぞれのアンペアの印加電流が1N*mの出力トルクを発生すると仮定する。この特定の例では、所望のモータ出力トルクは10N*mであり、これは、破線22によって表されているように、10アンペアの電流を必要とする。この例では、モータの最も効率的なトルク出力は、50アンペアの印加電流に対応する50N*mである。
【0028】
従来の動作中であれば、所望のトルクが10N*mのままである限り、モータはこの値を連続的に生成する。パルス化制御動作を用いると、モータはパルス化されて、パルス24によって表されるように、20%の時間の間に50N*mのトルクを送達する。残りの80%の時間は、モータはオフである。したがって、モータの正味出力は、動作上の要求である10N*mを満たす。モータは、10N*mを送達する場合よりも50N*mを送達する場合の方が効率的に動作するので、20%のデューティサイクルを使用してモータをパルス化することによって、平均トルク要求を満たし続けながら、モータの全体的な効率を向上させることができる。
【0029】
上記の例では、デューティサイクルは、必ずしも20%に限定されない。所望のモータ出力が50N*mを超過しない限り、所望のモータ出力は、デューティサイクルを変化させることによって満たすことができる。例えば、所望のモータ出力が20N*mに変化すれば、50N*mで動作するモータのデューティサイクルを40%に増やすことができ、所望のモータ出力が40N*mに変化すれば、デューティサイクルを80%に増やすことができ、所望のモータ出力が5N*mに変化すれば、デューティサイクルを10%に減らすこと、等々ができる。概して、パルス化モータ制御は、場合によっては、所望のモータトルクが図1の最大効率曲線16未満に低下する時にはいつでも有利に使用することができる。
【0030】
他方、所望のモータトルクが最大効率曲線16以上であるときには、モータは、所望のトルクを送達するために、従来の(連続的な、又はパルス化されない)やり方で動作させてもよい。パルス化動作に効率向上の機会があるのは、モータが最大動作効率点に対応する平均トルクを下回る平均トルクを送達する必要がある場合だけである。
【0031】
図2に提供されている電流値及びトルク値、並びに時間スケールは、単に例示的なものであり、いかなるやり方でも限定することを意図するものではないことに留意されたい。実際のモータパルス化の実施形態では、使用されるパルス持続時間は、任意の特定のシステムの設計上のニーズに基づいて大きく変わる場合がある。しかしながら、概して、各オン/オフサイクルの周期のスケールは、下記でより詳細に論じるように、例えば、0.2~20ミリ秒(50~5000Hz)のような、10μ秒~0.10秒のオーダー(すなわち、10~100,000Hzの範囲の周波数におけるパルス化)であることが予想される。さらに、多種多様な異なるモータがあり、各モータはその独自の効率特性を有する。さらに、異なるモータ速度では、所与のモータは異なる効率曲線を有することになる。曲線の性質は、特定のモータに応じて変わる場合がある。電流パルスは、図2に描かれているような、水平の頂部である必要がないこともまた認識されたい。同様に、電流は、オフ期間中にゼロに達する必要はなく、ゼロ以外の何らかの値であってもよい。電流波形の重要な特性は、ある割合の時間、現在のモータ速度の最も効率の良い領域で、又はその付近で、モータが動作していることである。
【0032】
トルク上昇率の向上による効率の向上
現在のモータ変換器の大多数は、通常、連続的な、パルス化されていない動作用に設計されている。このようなモータは、概して、非通電状態から通電状態に移行することは比較的希である。その結果、このような移行を管理する際に設計上の努力がなされることはほとんどない。移行を管理する際に何らかの設計上の努力がなされる場合には、通常、急速な移行ではなくむしろ、円滑な移行を実現することに向けられている。したがって、通電状態から通電状態への移行は、ほとんどのモータにとって、速度に制限がある(すなわち、比較的急速ではない)場合が多い。
【0033】
本出願人は、パルス化動作を用いた場合のように、非通電のモータ状態からピーク効率状態に定期的に移行するモータシステムの場合、移行が可能な限り速く生じると、さらなる効率の向上さえもが実現できることを見出した。例えば、ゼロトルクからピーク効率トルクに急速に移行すると、モータが移行に費やす時間である、効率がピーク未満である時間が短くなるため、全体的な平均モータ効率が向上する。この関係が図3A及び図3Bに描かれている。
【0034】
図3Aを参照すると、固定速度(例えば、6000rpm)で動作する例示的なモータの、トルク対効率のマップが図示されている。この例示的なマップでは、0.0Nmから250Nmまでのトルク出力の範囲が横軸に沿ってプロットされ、一方、0.0パーセントから100パーセントまでのモータの効率が縦軸に沿ってプロットされている。曲線26は、ゼロからピーク効率トルクへのモータの移行を描いている。この移行の間、網掛けした領域27によって描かれているように、ピーク効率トルクは、ピーク効率トルク28で効率がはるかに低くなっている。
【0035】
図3Bを参照すると、ゼロからピーク効率トルクへの移行中に固定速度で動作する例示的なモータの、トルク対損失される仕事量を図示するマップが提示されている。このマップでは、仕事損失(W)が縦軸に沿ってプロットされ、一方、モータのトルク出力が横軸に沿ってプロットされている。曲線29によって示されているように、モータの仕事損失は、ゼロからピーク効率トルクへの移行の間、トルク出力が増加するにつれて増加している。したがって、ゼロからピーク効率トルクへの移行時間が速いほど、実行される仕事量が少なくなり、モータによって消費されるエネルギーが少なくなっている。
【0036】
横軸に沿ったトルクの代わりに時間を代入し、次に曲線29の下の区域を積分することによって、所与の移行時間にモータによって消費されるエネルギーを計算することができる。例えば、本出願人は、例示的なモータの場合、0.5秒の移行時間で使用されたエネルギーが7234.5ジュールであったが、一方、0.05秒の移行時間で使用されたエネルギーは723.4ジュールだけであったことを見出した。この比較は、ゼロからピーク効率トルクへの移行時間が速いほど、損失で消費されるエネルギーが少なくなることを示している。この例の場合、負荷の加速は生じないと仮定しているため、負荷の慣性にエネルギーが加えられていないとことに留意されたい。
【0037】
モータが異なれば、ゼロからピーク効率トルクへのモータの移行、ピーク効率トルク、ピーク効率トルク及び仕事損失は、すべて異なってくる。したがって、図3A及び図3Bのマップは、単に例示的なものとして見るべきであり、いかなる点に関しても限定するものとして解釈されないものとする。
【0038】
電力変換器
電力インベンタは、バッテリ又はキャパシタによって発生した電力などのDC電力供給を、モータステータ巻線部に印加される三相AC入力電力に変換するために電気モータとともに使用される既知のデバイスである。これに応答して、ステータ巻線部は、上述したようなRMFを生成する。
【0039】
図4を参照すると、電気機械のパルス化動作のための電力コントローラ30の図が示されている。電力コントローラ30は、電力変換器32と、DC電源34と、電気機械36と、パルスコントローラ38と、を含む。電力変換器32は、システムを通るエネルギーの流れの方向に応じて電力インバータ又は電力整流器として動作してもよい。電気機械がモータとして動作する場合、電力変換器32は、DC電源34から三相AC電力を生成して、誘導機36を駆動する役割を担う。相A37a、相B37b、及び相C37cとして表示されている三相入力電力は、上述したようにRMFを生成するために、電気機械36のステータの巻線部に印加される。様々な相37a、37b、及び37cを描いている線は、矢印で描かれており、矢印の両端は、機械がモータとして使用される場合には電流が電力変換器32から電気機械36に流れ、機械が発電機として使用される場合には電流が電気機械36から電力変換器32に流れることが可能であることを表示している。電気機械が発電機として動作する場合、電力変換器32は、電力整流器として動作し、電気機械36から来るAC電力は、DC電源に貯蔵されるDC電力に変換される。
【0040】
パルスコントローラ38は、三相入力電力を選択的にパルス化する役割を担う。従来の(すなわち、連続的な)動作の間、三相入力電力は、連続的であり、すなわちパルス化されていない。これに対して、パルス化動作の間、三相入力電力はパルス化される。パルス化動作は、非排他的な実施形態では、限定ではないが、図5B図5C、及び図8乃至図14に関して説明したアプローチなど、本明細書に記載のアプローチのうちのいずれか使用して実装してもよい。
【0041】
図5A乃至図5Cを参照すると、誘導モータ36に供給される連続的な三相入力電力と、パルス化された三相入力電力との差異を図示するためのプロットが示されている。各プロットでは、電流が縦軸上にプロットされ、時間が横軸に沿ってプロットされている。
【0042】
図5Aは、誘導械36に送達される従来の正弦波三相入力電流42a、42b、及び42cを図示する。曲線42bによって表される相Bは、42aによって表される相Aよりも120度だけ遅れている。曲線42cによって表される相Cは、相Bよりも120度だけ遅れている。正弦波周期はτである。三相入力電力42a、42b、及び42cは連続的であり(パルス化されておらず)、およそ50アンペアの指定最大振幅を有する。50アンペアは単なる代表的な最大電流にすぎず、最大電流は任意の値を有してもよいことを認識されたい。
【0043】
図5B及び図5Cは、それぞれが50%のデューティサイクル及びおよそ100アンペアのピーク振幅を有する、異なるパルス化三相電流波形の2つの例、44a、44b、及び44c、並びに46a、46b、及び46cを図示する。図5Aのように、ベースとなる正弦波の周期はτであるが、ここでは、正弦波がオンとオフに変調される。図5B及び図5Cの送達電流は、図5Aの連続的に印加される三相入力電流と同じ平均トルクを送達する(トルクが電流に比例すると仮定するが、これはよくあることである)。パルス化電流44a~cと46a~cとの差異は、それぞれの電流パルスの持続時間、及び交互に配置された「オフ」期間である。図5Bでは、電流パルス44a~cは、長さの等しい「オフ」期間が交互に配置されている。各オン及びオフ期間の長さは2τである。図5Cでは、電流パルス46a~c及び交互に配置された「オフ」期間は、ここでもやはり、等しい持続時間を有する。この場合、持続時間はτ/2である。いずれの例においても、デューティサイクルは50%である。しかしながら、「オン」及び「オフ」時間の持続時間が異なっており、すなわち、パルス変調の周波数が異なる。パルス変調の周波数は、使用される電気機械のタイプ、騒音及び振動の考慮事項、現在の動作ロータ速度、並びに他の要因に基づいて変化し得る。
【0044】
図5B及び図5Cは、モータが定常状態の所望の出力レベルで動作している間に、「オン」のモータ駆動パルスが等間隔に配置されている適用例を図示する。このようなアプローチは多くの状況でうまく機能するが、必要条件ではない。デューティサイクルは50%である必要はなく、所望の平均出力トルクに合致するように調節することができる。図5B及び図5Cでは、オン/オフパルスの相は、印加されるAC電力と同期される。しかしながら、いくつかの実施形態では、オン/オフパルスの相は、印加されるAC電力の相と同期されなくてもよい。したがって、モータ駆動パルスの相対的なサイズ及び/又はタイミングは、平均化されて所望の平均トルクを送達する限り、変化させることができる。
【0045】
モータの物理的性質及び制約
いかなるモータでも、物理的性質により、ゼロからピーク効率トルクへの移行の速さは、最終的に制限される。概して、移行速度は、モータに電界が構築される速さの物理的性質に基づいており、これは、ひいては、印加電圧、電気モータの逆起電力(「BEMF:back emf」)、及びモータ巻線部のインダクタンスによって制限される。
【0046】
時間ゼロで電力変換器32の設定点が増分され、フィードバックがゼロであると仮定すると、各相の出力段への制御は飽和してしまう。その結果、各モータ相の低出力デバイス又は高出力デバイスのいずれかがハードオン状態になる。これにより、以下を含む6つの組み合わせが可能になる。すなわち、
1.相A及び相Bが正であり、相Cが負である。
2.相Aが正であり、相B及び相Cが負である。
3.相B及び相Cが正であり、相Aが負である。
4.相Bが正であり、相A及び相Cが負である。
5.相C及び相Aが正であり、相Bが負である。
6.相Cが正であり、相A及び相Bが負である。
【0047】
これらの6つの可能な組み合わせのそれぞれで、時間ゼロでのモータ36内の電流の流れは、(a)1つの相では全電流となり、(b)一方、他の2つの相は電流を分割している。これらの電流の比率は、以下でさらに説明するように、時間ゼロでのロータの位置によって決まってくる。
【0048】
図6Aを参照すると、3つの相A、B及びCを通って流れる電流をモデル化している、代表的な回路が示されている。
【0049】
各相A、B及びCは、その自己インダクタンス(「LS」)、その相互インダクタンス(「LM」)、その抵抗(「R」)、及びそのBEMFによって表されている。
【0050】
示されている場合では、Ic=Ia+Ibである。相互インダクタンスに流れる電流の和はゼロであるため、相互インダクタンスは電流の流れに影響を与えない。その結果、モータのBEMFがゼロであると仮定すると、図6Bに図示されているように、等価回路は縮小される。この回路は、電流を所与の値に構築するのに時間がかかる。
【0051】
BEMFがゼロでなければ、各相への印加電圧は異なってくる。相インピーダンス及び相電流は平衡が保たれているので、この場合の巻線部の中性点=Vbus*2/3である。巻線部Bが負のレールに接続されている場合なら、中性点電圧=Vbus/3となる。これは、相A、B及びCの電流Ia、Ib及びIcを次のように定義する。
【0052】
上記の値はすべて瞬間的なものであるため、時間ゼロにおける値は、各相のBEMFの瞬時値によって決まり、これは、ひいては、1つの電気サイクル又は極対ピッチ内のロータの位置によって決まる。時間が推移するにつれて、1つの相当たりの瞬時BEMF電圧、モータインダクタンスに印加される電圧、及びモータ相電流の上昇率も同様に推移することもまた留意しなければならない。
【0053】
意図しているのは、電流がその所望の値に到達して、相が要求トルクを供給することである。電流は通常、フィールド指向制御、すなわち「FOC(Field Oriented Control)」を使用して制御されるため、相電流は、回転座標値「iq」(直交電流)及び「id」(直流電流)に置き換えられる。なお、idとiqのベクトル和は相電流のピーク値に等しく、ArcTan id/iqが角度である。角度の余弦は力率である。したがって、直接直交ゼロ変換(Direct Quadrature Zero transform)を使用してid及びiqの値を導出すると、次式が得られる。
【0054】
上記の式を詳しく調べると、BEMF波形Vpkは、iq(直交電流)にのみ影響を与え、どちらもバス電圧Vbus、及びロータの角度位置θによって影響を受ける。角度もモータBEMFも、モータを変えずに変えることはできないため、相電流の上昇率に、ゆえにモータトルクに影響を与えるように制御することが可能な唯一のパラメータは、印加されるバス電圧Vbusである。本発明の一態様は、したがって、バス電圧が、パルス化の間にゼロからピーク効率トルクへの移行時間の期間中、通常の動作バス電圧よりも高い値に一時的に昇圧又は「ブースト」されることで、こうした移行時間を短縮することを提案する。
【0055】
変換器がオフになると、電気モータ巻線部に貯蔵されたエネルギーは、バス電圧供給部に戻されることに留意されたい。供給部がこのエネルギーを吸収することができない場合には、バス静電容量がこのエネルギーを吸収するので、バス電圧が上昇する。バス供給部全体にわたる静電容量の量に起因して、この通常のプロセスでは、バス電圧は通常ごく僅かなパーセンテージしか上昇せず、概して、バス電圧をブーストしていると見なすほどには十分ではない。しかしながら、このエネルギーを独立して取り込む場合、例えば、キャパシタ又はバッテリなどの貯蔵デバイスに取り込み、貯蔵するのであれば、ブースト電圧の形でエネルギーをモータに戻して再利用することが可能であろう。
【0056】
或いは、「オフ」期間中であれば、チャージポンプ又は別個の電圧源を使用して、別個のブースト電圧源によってバス電圧を増大させることが可能であろう。このブースト供給部は、メインバス静電容量を充電するように設計されるのではなく、ゼロから要求トルクへのオン移行時間にわたってモータに放電することが可能な別個の静電容量を充電するように設計されるものとする。
【0057】
従来の電力変換器回路
このようにモータの固有インダクタンスは、オン及びオフのモータ状態の間の電圧/電力ステップを一時的に遅延させる/遅くすることができる。連続的な(パルス化されない)動作の間は、これらの一時的な効果は、モータ動作全体に比較的最小限の影響しか与えない傾向にある。しかしながら、本明細書で企図されるような急速なパルス化を使用する場合、一時的な効果が及ぼす正味の影響が大きくなる可能性があるため、立ち上がり端及び立ち下がり端のパルス移行時間を短縮する誘因がある。
【0058】
図7Aを参照すると、代表的な先行技術の電力変換器32の回路図が図示されている。電力変換器回路32は、S1からS6として表示されている3対のスイッチを含む。スイッチの各対S1~S2、S3~S4、及びS5~S6は、2つの電圧バス(+VBUS)と(-VBUS)との間で直列に接続されている。2つの電圧バス(+VBUS)と(-VBUS)との間の電位は、電気機械36を動作させるために利用可能な電位である。それぞれのスイッチ、S1~S6は、スイッチに並列に電気的に接続されたバイパスダイオード(D1~D6)を有してもよい。これらのダイオードは、スイッチ動作中に生成される可能性がある、スイッチを損傷する電圧スパイクを防ぐのに役立つ。
【0059】
ダイオードは、スイッチが遮断する可能性がある電流を再利用するための経路もまた提供する。電気機械36が発電機として使用されるときに、これは特に重要である。スイッチS1~S6はそれぞれ、ダイオードが組み込まれたMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)スイッチとすることができる。或いは、限定ではないが、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)のような他のタイプのトランジスタを使用してもよい。
【0060】
電気機械36のステータコイル巻線部への接続は、各スイッチの対の間で行われる。相Aの場合、接続は、スイッチの対S1~S2の間であり、37aとして指定されている。相Bの場合、接続は、スイッチの対S3~S4の間であり、37bとして指定されている。相Cの場合、接続は、スイッチの対S5~S6の間であり、37cとして指定されている。
【0061】
電気機械36内では、相ステータ巻線部はそれぞれ、インダクタ31、抵抗器33、及び相互インダクタンス35としてモデル化してもよい。これらの要素は、図7Aでは、相Cについてのみ参照符号が付されているが、類似した要素は、相A及び相Bの巻線部にも存在している。
【0062】
スイッチS1~S6は、総称して、電気機械36を行き来する電力を制御するスイッチングネットワークと呼んでもよい。
【0063】
電気機械36をモータとして動作させる場合、スイッチS1~S6は、従来のやり方で動作して、ステータ巻線部のそれぞれに電流を印加する。例えば、スイッチは、電気機械36にAC電力を供給する6ステップインバータとして動作させてもよい。
【0064】
図7Bは、電力変換器32から6ステップの出力を得るためのスイッチングシーケンスを示す。各スイッチは、サイクル周期の1/2の間、時間をずらせて開いている。巻線部ごとに、電流は、一番上の行にある1つのスイッチと、一番下の行にある1つ又は2つのスイッチと、に流れることができる。スイッチの対S1~S2、S3~S4、及びS5~S6は、決して同時にオンにならず、これにより、DC電源34が短絡されることになる。
【0065】
図7Cは、点Aと点Bとの間の電圧を電圧Vabとして示す。
【0066】
同様に、図7D及び図7Eは、点Bと点Cとの間の電圧、及び点Cと点Aとの間の電圧をそれぞれ示す。これらの電圧を合計すると、各相と中性点との間の電圧を求めることが可能になる。
【0067】
図7Fは、結果として得られた相Aの相電圧を示す。結果として得られた6ステップの波形は、周波数がωである正弦波に近似しており、一般に変調信号と呼ばれる。相B及び相Cの相電圧は、相Aの電圧に対して、それぞれ120°及び240°だけ相がずれている。
【0068】
電気機械36は、モータとしてだけでなく、発電機としても動作する場合があることを認識されたい。発電機として動作する場合、エネルギーは電気機械36からDC電源34に流れる。電力変換器32は、インバータではなく三相整流器として作用する。
【0069】
典型的な先行技術のシステムでは、スイッチングネットワークを使用して、パルス幅変調(PWM)制御により電気モータに流れる電力を制御する。PWM制御は、スイッチングネットワークがスイッチS1~S6のアクティブな構成にあり、電力が電気モータに流れることが可能な時間を短縮する。すなわち、スイッチS1~S6が、非アクティブな構成にある時間、つまりS1、S3、及びS5、又はS2、S4及びS6のいずれかがすべてオフになっている時間の割合は、所望の電気モータトルク出力が減少するにつれて増加する。
【0070】
ブースト回路を有する電力変換器
図8は、本発明の非排他的な一実施形態によるブースト回路を含む電力変換器回路132を示す。図7Aに示されている先行技術の電力変換器回路32と比較すると、電力変換器回路132は、追加のスイッチSA及びSBもまた含み、それらはそれぞれ、パルスコントローラ38によって制御される。それらは、(図8に示されているような)共通の信号ライン41によって制御されてもよいし、又は、(図8には示されていない)独立した制御ラインを有していてもよい。スイッチSAがオンになると、正の電源電圧(+VDC)が、(+VBUS)に結合される。スイッチSBがオンになると、負の電源電圧(-VDC)が、(-VBUS)に結合される。
【0071】
動作中、パルスコントローラ38は、信号ライン41にパルス波形を適用することによって、スイッチSA又はスイッチSBを、選択的にオン及びオフにするように動作し、これにより、パルスコントローラ38をスイッチSA及びスイッチSBに電気的に接続する。スイッチSA及びスイッチSBがオンになると、電流を電気機械36に送達することができる。逆に、SA及び/又はSBがオフになると、電気機械36に電流が送達されないか、又は、過渡電流だけが送達される。
【0072】
電力変換器回路132は、キャパシタC1もまた含み、このキャパシタは、一方の導電プレートが(+VBUS)に結合され、もう一方の導電プレートが(-VBUS)に結合されている。スイッチSA及びスイッチSB、並びにキャパシタC1は、総称してブースト回路と呼ばれることがあるが、それは、それらの目的が、以下で説明するように「オン」パルスの開始時に、+VBUSバス及び-VBUSバス上の初期電圧を上昇させることであるからである。様々な実施形態では、ブースト回路は、スイッチングネットワークに組み込まれてもよいし、又はスイッチングネットワークとは別個の要素を含んでもよい。
【0073】
前述したように、パルス化モータ制御の目的は、「オン」期間中に、電気機械36を現在の機械速度の実質的に最も効率的なレベルで動作させ、「オフ」期間中に、電力を遮断する(ゼロ又は無視できる程度の電力を供給する)ことである。例えば、オフ期間中に供給される電力は、「オン」期間中に供給される電力の10%、5%、1%、0.5%、又は0.1%未満とすることができる。「オン」期間中に動作している間の動作点は、効率が、現在のモータ速度におけるモータの最大動作効率点の5%、2%、又は1%以内であってもよい。「オフ」期間と「オン」期間との間の低効率動作領域を通る移行は、効率を最大化するために、可能な限り速くする必要がある。したがって、機械電力の「オン」状態と「オフ」状態との間の電力移行は、理想的には、垂直に真っ直ぐ上に移行する前縁部と、垂直に真っ直ぐ下に移行する後縁部と、を有する。このような「完全な」パルス60が、図9Aに図式的に示されており、この図は50%のデューティサイクルを有するパルス化制御の、理想的なモータ駆動電流対時間を示している。この図では、電流パルスは、すべての相の電流の和を表している。電流パルスは、水平な頂部として示されているが、必ずしもそうであるとは限らない。
【0074】
実際の状況(real world)では、多くの実用上の制限により、このような完全なパルスの生成は、実現困難になっている。例えば、電気機械36及び電力変換器32の回路類の両方の誘導性側面により、電流の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が遅くなる。特定の機械の実際の応答は、電気機械36の電気特性、電気機械の回転速度、及び利用可能なバス電圧に応じて変わってくる。概して、パルスの実際の立ち上がり及び立ち下がりは、もっと漸進的に生じる。つまり、移行は経時的に生じる。実際の状況での立ち上がり及び立ち下がりの性質が、図9Bに図式的に示されている。同図に見られるように、電流がゼロから所望の「オン」電力レベルまで実際に立ち上がるために必要とされるランプアップ期間(立ち上がり時間)62、及び電流が「オン」電力レベルからゼロまで実際に立ち下がるために必要とされるランプダウン期間(立ち下がり時間)64が存在する。
【0075】
電力のランプアップ期間及びランプダウン期間中、電気機械36は電力を消費又は生成し続ける。しかしながら、これらの移行期間中、機械の動作効率は低下する。概して、機械効率は、動作電流がその最大効率条件(図1の曲線16)からゼロに向かって低下するにつれて低下し、電流レベルがゼロに近づくにつれてエネルギー変換効率が顕著に悪化していく。それゆえ、電流のランプアップ期間及びランプダウン期間によって表されるパルスひずみは、パルス化動作の結果として得られる効率の向上を損ねる。概して、パルス長に対する立ち上がり時間/立ち下がり時間の比が小さいほど、一時的なスイッチング効果がパルス化の間の機械のエネルギー変換効率に及ぼす影響は小さい。
【0076】
図9Bに示されている一時的な効果は、性質の点において例示的なものであり、任意の特定の電気機械の動作に関連する実際の立ち上がり時間/立ち下がり時間を必ずしも反映していないことを認識されたい。パルス長に対する立ち上がり時間の比の相対的スケールは、使用される機械の特性(これは、主として、立ち上がり時間及び立ち下がり時間を規定する)、パルス化の周波数(これは、主として、使用される制御方式によって規定される)、及びパルス幅(これは、制御方式及び機械の負荷によって規定される)に基づいて広範に変化し得る。電気機械に動力供給するために利用可能な電圧、及び機械回転速度もまた、パルスの立ち上がり時間及び立ち下がり時間に影響を及ぼす。パルス化が機械応答と比較して低速である場合には、立ち上がり時間/立ち下がり時間はパルス幅のごく一部分になる場合があり、一時的なスイッチング効果が機械性能に及ぼす影響は最小限になる場合がある。逆に、パルス化が非常に急速である場合、及び/又は機械の応答が低い場合には、立ち上がり時間/立ち下がり時間は、パルス幅のかなりの部分になる場合があり、状況によってはパルス幅を上回る可能性すらある。注意深く管理しなければ、スイッチングに関連する一時的な効率の損失は、パルス化動作によって達成可能な理論上の向上が大幅に減少するか、又は無くなってしまう可能性すらある。それゆえ、任意の特定の用途に適したパルス化周波数及び制御方式を決定する際には、パルス化動作に関連付する一時的なスイッチング効果を考慮することが重要である。
【0077】
図8の電力変換器回路132に含まれるキャパシタC1は、電流の立ち上がり時間及び立ち下がり時間を改善するために設けられている。キャパシタC1は、ランプダウン期間中に電気機械36からのエネルギーを貯蔵し、ランプアップ期間中に電気機械36にエネルギーを供給してもよい。この結果、ターンオン・ターンオフの移行は、キャパシタC1なしで生じる場合よりも速くなる。
【0078】
電力変換器132の動作をさらに良く理解するために、電力変換器132は、最初は「オン」状態にあり、電気機械36は、モータとして動作していると仮定する。これは、スイッチSA及びSBがオンになり、これにより、電流は、DC電源34の正端子から電力変換器132を通って電気機械36に流れ、DC電源34の負端子に戻ることが可能になることを示唆している。スイッチS1乃至S6は、図7Bに示されている構成で振動して、電気機械36にAC電力を印加する。
【0079】
モータ動作を終了するには、スイッチSA及びSBをオフにし、+VBUSバス及び-VBUSバスが、DC電源34のそれぞれの端子とは異なる電位を有することができるようにしてもよい。回路はこのとき開いているので、電流は回路を流れることを停止しているはずである。しかしながら、電気機械36で電流により生成された磁場に関連するかなりのエネルギーが存在する場合がある。このエネルギーの少なくとも一部は、電気機械36から抽出される場合があり、キャパシタC1に取り込まれ、そこで貯蔵される。これにより、正電圧バスと負電圧バスとの間の電位差が大きくなる。例えば、ライン+VBUS上の電位は、DC電源の正端子+VDCの電位を超えて増加する場合があり、ライン-VBUS上の電位は、DC電源の負端子-VDCの電位未満に減少する場合がある。スイッチS1~S6がすべてバイパスダイオードを有していることで、スイッチの位置とは関係なく、単向電流が電気機械36から+VBUSラインに、また、-VBUSラインから電気機械36に流れることが可能になっていることに留意されたい。スイッチSA及びスイッチSBがオフになると同時に、又はほぼ同時に、スイッチSA及びスイッチSBが開いたときにオンになっていた可能性があるスイッチS1~S6のうちのいずれかがオフになることで、+VBUSラインと-VBUSラインとの間のこれらのどのスイッチを介しても、電気機械36には電流が流れないようにしている。
【0080】
モータ動作を再び所望する場合には、図7Bに示されているパターンのうちの1つでスイッチS1~S6をオンにしてもよい。スイッチングパターンは、印加電流の相が正しい相に合致して再び電気機械36に電力を供給するように、ロータの回転角度に対応していなければならない。スイッチSA及びスイッチSBは、それぞれ+VBUSの電圧が+VDCまで低下し、-VBUSが-VDCまで上昇すると閉じる。この回路構成及び制御方法は、「オン」相の開始時に電気機械36に印加される初期電圧が高くなるようになっており、これにより、パルスの立ち上がり時間が有利に短縮される。
【0081】
図10は、図8に示されている回路の例示的な+VBUS波形及び-VBUS波形対時間を図示する。パルス発生器38は、デジタル「0」及び「1」のストリングからなるデジタル波形43を生成する。1は、「オン」になっている電気機械36に対応し、0は、「オフ」になっている電気機械に対応し得る。図10では、電気機械36は、40%のデューティサイクルでパルス化されている。しかしながら、これは単なる例示であり、任意のデューティサイクルを使用してもよい。+VBUSのレールの電圧45は、ランプダウン期間中に+VBOOSTまで上昇し、-VBUSのレールの電圧47は、ランプダウン期間中に-VBOOSTまで降下する。+VBUSバス及び-VBUSバスの電圧変化の大きさは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。+VBUSの電圧45及び-VBUSの電圧47は、モータのランプダウンからのエネルギーがキャパシタC1に貯蔵されるので、モータのオフ時間中、比較的一定のままである。パルス発生器の波形43がデジタル「1」に戻ると、キャパシタC1に貯蔵されたエネルギーは、スイッチアレイS1~S6を通して電気機械36に供給される。これにより、キャパシタC1内の電荷が散逸され、キャパシタC1に貯蔵されたエネルギーがモータを駆動するために使用されると、+VBUSのレールの電圧45は+VDCに戻され、-VBUSのレールの電圧47は-VDCに戻される。「オン」期間中のモータ動作は、スイッチSA及びスイッチSBをオンにすることにより保持されることで、DC電源34からのエネルギーを使用してモータを駆動することができるようにしている。事実上、ブースト回路は、正電圧バスと負電圧バスとの間の利用可能な電位を増加させて、一連のパルスの少なくとも1つのパルスの開始時に電気機械を駆動する。正電圧バス及び負電圧バスは、相対的な用語であり、これらのバスの接地電位に対するそれぞれの電位は、正又は負のいずれかであり得ることを認識されたい。ブースト回路を使用して、一連のパルスのすべてのパルスに対して、電気機械を駆動するために利用可能な電位を増加させてもよい。
【0082】
ブースト回路を有する例示的な電力変換器は、DC電源の正端子及び負端子の両方に隣接するスイッチを有するものとして図8に示されているが、これは必要条件ではない。いくつかの実施形態では、単一のスイッチだけを必要とする場合がある。
【0083】
スイッチSA及びスイッチSBは、このようにキャパシタC1と連携して使用されて、電力立ち上がり時間及び立ち下がり時間を、場合によっては、2分の1、5分の1、10分の1又はそれ以下に短縮することができる。キャパシタC1の両端の電圧は、ランプダウンの間にモータから回収されたエネルギーを貯蔵することにより、電源の電圧よりも高くすることができる。電圧の大きさは、抽出、及び取り込み可能な磁気エネルギーの量とともに増加する。これにより、場合によっては有害な、パルス化動作に関連する一時的なスイッチング効果を大幅に低減することができる。
【0084】
改善された立ち上がり時間及び立ち下がり時間の例が、図9Cに概略的に示されている。図で明らかなように、パルス立ち上がり端のランプアップ立ち上がり時間66は、図9Bに示されている対応するランプアップ時間62と比較して速く/短くなっている。同様に、パルス立ち下がり端のランプダウン時間68は、図9Bに示されている対応するランプダウン時間64と比較して速く/短くなっている。したがって、パルス化制御を念頭に置いて設計されている電気機械、又は電力パルスに対する機械の過渡的な応答を改善するように修正された電気機械は、既存の機械よりもパルス化動作からさらに大きく恩恵を受ける可能性があることを認識されたい。
【0085】
パルスコントローラ38によって実装される様々な機械に対する適切なパルス化周波数は、機械の構造、動作環境、及び動作範囲に基づいて大きく異なる場合があることを認識されたい。ある電気機械には、10~50kHzのオーダーのスイッチング周波数が適切な場合があるのに対し、他の機械には、それよりもはるかに低い、例えば、10~500Hzなどの範囲のスイッチング周波数の方が適切な場合がある。任意の特定の機械の最適なパルス化周波数は、機械のタイプ、機械の負荷、及び/又は機械の用途など多種多様な状況によって決まることになる。
【0086】
電気機械への電力又は電気機械からの電力の、立ち上がり時間及び立ち下がり時間を短縮するために使用されるブースト回路の詳細は、電気機械のタイプ、及びその動作レジームに応じて変わり得ることを認識されたい。例えば、場合によっては、スイッチSA又はスイッチSBのうちの1つは、電力変換器回路132から削除することができる。他のタイプの電力変換器回路及び制御戦略を使用してもよい。例えば、状況によっては、ダイオード、2つのインダクタ、及び2つのキャパシタが電源とスイッチングネットワークとの間に位置するZソースインバータを使用してもよい。
【0087】
キャパシタC1の電圧ブーストのレベル及びサイズは、電気機械並びにその誘導特性及び抵抗特性に合わせて適切に選択することで、機械のオンとオフのパルス化に関連する過渡的な立ち上がり時間/立ち下がり時間を短縮することができる。好ましくは、それぞれの静電容量及びブースト電圧レベルもまた、過渡現象それ自体に関連する非効率性、及びキャパシタC1の使用により生じる可能性のある任意のオバーシュートの効果を含む、パルス化の間の全体的な機械効率を最大化するように選択される。キャパシタC1は過渡応答を改善するために使用されるので、モータに電力が供給されていない期間、例えば、電気機械のオフ期間中などに、日和見的に再充電される場合がある。この動作の態様は、図11に関する以下の記述において、より詳細に説明する。
【0088】
モータ速度及び負荷によっては、急峻な立ち上がり時間及び立ち下がり時間の+VBUS電圧及び-VBUS電圧を十分にブーストするには、モータの磁場に貯蔵されたエネルギーが不十分な場合がある。このような場合、パルス間のオフ期間中に、電気機械の両端の電位差をブーストすることが望ましい場合がある。2つのブーストサイクル73a及び73bを示す例示的な電圧波形が、図11に示されている。電気機械の動作条件に応じて、使用するブーストサイクルは、2つよりも多くても少なくてもよいことを認識されたい。適切なスイッチングネットワーク及び制御戦略は、このタイプの制御を実装することが必要である。
【0089】
図12を参照すると、本発明の別の実施形態によるブースト回路202を含む別の電力変換器200が図示されている。電力変換器200は、相AのためのスイッチS1及びスイッチS2と、相BのためのスイッチS3及びスイッチS4と、相CのためのスイッチS5及びスイッチS6と、を含む。スイッチの各対S1~S2、S3~S4、及びS5~S6は、2つの電圧バス(+VBUS)と(-VBUS)との間で直列に接続されている。2つの電圧バス(+VBUS)と(-VBUS)との間の電位は、電気機械36を動作させるために利用可能な電位である。スイッチS1~S6は、総称して、機械36を行き来する電力を制御するスイッチングネットワークと呼ばれる。モータとして動作する場合、DC電源からの電力は、スイッチS1~S6のスイッチングネットワークを介して供給される。次に、スイッチングネットワークは、前述したような機械36のステータ巻線部の3つの相に位相エネルギーを供給する。同様に、発電機として動作する場合、エネルギーの流れは、機械36から、バッテリなどの貯蔵デバイスまでである。
【0090】
ブースト回路202は、ブースト電源204と、スイッチ206と、キャパシタC1と、バッテリと、パルスコントローラ38によって生成された制御信号208と、を含む。パルスコントローラ38については前述したので、簡潔にするために、本明細書では詳細な説明は繰り返さない。
【0091】
様々な実施形態では、ブースト電源204は、ブースト電圧を生成することが可能な、専用の回路(例えば、チャージポンプ又は別個の電圧源)、及び/又は、別のキャパシタ及び/又はバッテリなどの貯蔵デバイスとすることができる。後述の実施形態では、貯蔵デバイスによって貯蔵されたエネルギーの少なくとも一部は、モータ38それ自体から引き出してもよい。例えば、機械36が発電機として動作している場合、又は機械36がモータとして作用しており、パルス化の間などに、オン状態からオフ状態に移行する場合、発生したエネルギーは、ある特定の成分に転換し、それをブースト回路202に、例えば、キャパシタC1及び/又はバッテリに保存することができる。次に、保存されたエネルギーを使用して、以下で説明するような正の移行中に、正のレール(+VBUS)を「ブーストする」ことができる。
【0092】
スイッチ206は、ブースト電源204の正(+)電極と負(-)電極との間を切り替えることが可能な任意のタイプのスイッチとすることができる。このスイッチは、半導体デバイスを使用して構築されることが見込まれる。特定の一実施形態だが、非排他的な一実施形態では、スイッチ206は、シングルプルダブルスロー(single pull double throw)スイッチである。
【0093】
当技術分野においてよく知られているように、連続的なモータ動作中に、相AのためのスイッチS1及びスイッチS2、相BのためのスイッチS3及びスイッチS4、及び相CのためのスイッチS5及びスイッチS6を介して、機械36のステータ巻線部に位相電力が供給される。最終的には、前述したようにモータのトルクが連続的に出力される結果となる。
【0094】
パルス化動作中に、パルスコントローラ38は、制御信号208を介してスイッチ206を制御して、ブースト回路202を制御する。正のパルス移行では、スイッチ206はアクティブ化されて、正のレール(+VBUS)をブースト電源204の正(+)端子に接続する。その結果、キャパシタC1及びバッテリと連携して動作するブースト電源204は、正のレール(+VBUS)の電圧をブーストするように作用する。正のレールの電圧を上昇又はブーストさせることで、移行時間が短縮される。ブースト回路に貯蔵されたエネルギーが減少したか、又はピークトルクレベルが実現されたら、制御信号208は、正のレール(+VBUS)をブースト電源204の負(-)端子に接続するようにスイッチに指示を出す。その結果、ブースト電圧は、正のレール(+VBUS)から事実上除去される。
【0095】
ブースト回路202の効果もまた、図9A図9Cに図示されている。特に、図9Aは、移行時間のない理想的なパルスを示し、図9Bは、移行時間が参照数字62で示された「実際の状況」のパルスを示す。前述したように、電気機械36及び電力変換器200の回路類の両方の誘導性側面により、電流の立ち上がり時間及び立ち下がり時間が遅くなる。図9Cは、ブースト回路202によって支援された移行を示す。比較によって容易に理解することができるように、図9Cに示されているような「ブーストされた」移行時間66は、図9Bに示されているような移行時間62よりも大幅に短く(すなわち、速く)なっている。
【0096】
図12の実施形態では、キャパシタC1は、正のレール(+VBUS)と負のレール(-VBUS)との間で、スイッチの対S1~S2、S3~S4及びS5~S6のそれぞれと並列に配列されている。非排他的な一実施形態では、C1のサイズは、インバータとして作用しているときの電力変換器200のリプル電流から導き出される。この配列により、ブースト回路202がパルスの立ち上がり時間及び立ち下がり時間を短縮する能力が向上する。
【0097】
動作フロー図
図13は、図1に描かれているような特性を有する電気モータのパルス化制御動作のためのステップを図示するフロー図70である。
【0098】
最初のステップ72において、現在のモータ出力及び現在のモータ速度を確認する。
【0099】
決定ステップ74において、現在のモータ出力及び現在のモータ速度に基づいて、モータを連続モードで動作させるべきか、又はパルス化モードで動作させるべきか、の決定がなされる。言いかえれば、所望のモータトルクが、現在のモータ速度にとって最も効率的な出力トルク(すなわち、図1に図示されているモータのマップの最大効率曲線16)を上回っているか、又は下回っているか、の決定がなされる。上回っている場合には、モータを連続モードで動作させる。下回っている場合には、モータをパルス化モードで動作させることが有利な場合がある。
【0100】
ステップ76において、現在のモータトルクが現在のモータ速度にとって最も効率的な出力トルクを上回っているのであれば、モータを連続モード76で動作させる。
【0101】
ステップ78において、現在のモータ速度で実質的に最大効率動作を提供する「オン」パルスの電力出力又は大きさを決定する。
【0102】
ステップ80において、平均出力電力又はトルクが所望の出力に合致するように、パルス化モードで動作するための所望のパルスデューティサイクルを決定する。
【0103】
ステップ82において、決定されたパルスデューティサイクル及びパルス化電力の出力を使用して、モータをパルス化モードで動作させる。ブースト電力変換器回路132、又は電気機械からの磁気エネルギーを貯蔵し、放出することが可能な他の何らかの電力変換器回路を有する電力コントローラ30を使用することで、パルスの立ち上がり時間及び立ち下がり時間を、多くの場合には大幅に短縮し、モータ効率がさらに向上する。
【0104】
モータが動作中の間、上記のステップ72~82が連続的に実行される。どの特定のモータ速度においても、対応する最も効率的な出力トルクがあり、これは図1に最大効率曲線16によって図式的に示されている。瞬間的なモータ出力要請及び/又は現在のモータ速度は変化するので、必要に応じて連続モード又はパルス化モードのいずれかでモータを動作させるように、決定がなされる。概念的観点から言えば、所望のモータトルクが現在のモータ速度にとって最も効率的な出力トルクを下回っている場合、モータをパルス化することによって、モータの全体的な効率を向上させることができる。その結果、電気モータを動力とする車両の場合、車両の全体的な効率が向上する。つまり、バッテリの再充電から再充電までの車両の走行距離が長くなる。
【0105】
図14は、本発明の別の非排他的な実施形態による、機械36に供給されるエネルギーを変調するためのシステム300を示す図である。システム300は、機械36と、電力変換器32と、トルク制御決定モジュール302と、機械36のロータの角度位置を表すフィードバック信号306を生成するためのフィードバックセンサ304と、トルク及び速度推定部308と、を含む。
【0106】
システム300の動作中、トルク変調決定モジュール302は、トルク要求を受け取る。これに応答して、トルク変調決定モジュール302は、要請されたトルクが、モータとして動作しているときの機械36のピーク効率トルク未満であるかどうかの決定を行う。
【0107】
そうでない場合、すなわちトルク要求がピーク効率トルクよりも大きい場合、機械36をモータとして連続モードで動作させる。その場合には、電力変換器32に供給されるトルク要求波形310は、モータとして動作している機械36の連続的な動作を表す。
【0108】
他方で、トルク要求が機械36のピーク効率トルク未満である場合には、機械36をモータとしてパルス化モードで動作させる。その場合には、トルク変調決定モジュール302は、電力変換器32のために変調された波形310を発生させて、モータとして動作している機械36に、モータのピーク効率トルクと、低トルクとの間で切り替え、又はパルス化させ、その平均値は、要求トルクと実質的に等しくなっている。様々な実施形態では、低トルクはゼロとすることができるが、必ずしもゼロであるとは限らない。低トルクとピーク効率トルクの平均値が要求トルクと実質的に等しいという前提で、低トルクはゼロを上回る他の何らかのトルク値とすることができる。
【0109】
電力変換器32は、相Aのためのスイッチの対S1~S2と、相Bのためのスイッチの対S3~S4と、相Cのためのスイッチの対S5~S6と、を含むスイッチングネットワークを含むが、これらはすべて、分かり易くするために図には示されていない。前述したように、スイッチS1~S6は、電力変換器32によって制御され、機械36を、(1)トルク要求がピーク効率トルクよりも大きい場合には連続的なトルク出力を生成するモータとして連続的に、又は(2)トルク要求がピーク効率トルク未満である場合にはパルスモードで、のいずれかで動作させる。電力変換器32は、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)、直接トルク制御(DTC:Direct Torque Control)、ヒステリシス、又は電流変調の一形式である「デッドビート(dead beat)」制御など多数の異なるプロトコルのいずれかを使用して、機械36に供給されるエネルギーを制御することができる。
【0110】
代替的な実施形態では、図8の132、又は図12の200のようなブースト電力変換器を使用してもよい。電力変換器32のブーストバージョンでは、パルス化動作の間のパルスの立ち上がり時間及び/又は立ち下がり時間が速くなることにより、機械36のモータ動作の効率及び性能が向上する。
【0111】
フィードバックセンサ304は、機械36のロータの角度位置を表すフィードバック信号306を生成する。フィードバック信号は、電力変換器32と、トルク及び速度推定部308と、にそれぞれ供給される。既知のロータの角度位置では、トルク及び速度推定部308は、モータのトルク及び速度の正確な推定を、トルク変調決定モジュール302に提供することができる。これに応答して、波形310は、必要があれば、電力変換器32内のスイッチングネットワークのタイミング(すなわち、スイッチS1~S6をオン/オフにするタイミング)を厳密に制御できるように調節して、エネルギーの相A、相B及び相Cのそれぞれのタイミングを、ロータの現在の位置と一致させるようにすることができる。その結果、モータとしての機械36の動作は、円滑であり、しかも効率的である。フィードバックセンサ304を使用することは必須ではなく、機械36のロータの角度位置を測定又は推定するための他の技法を使用することができることに留意されたい。例えば、センサのない多数のアプローチのいずれかを使用してもまたよい。
【0112】
他のモータ及び発電機のタイプ
電気モータにも、発電機にも、DCとACの両方のモータ/発電機を含む多種多様な機械があり、それらは既知であり、市販されている。様々な電気モータ及び発電機のタイプによって、その構造、制御、並びにエネルギー変換効率は大きく異なるが、ほとんどの電気モータ及び発電機は、ある範囲の動作条件で動作するように設計されており、それらのエネルギー変換効率は、その動作範囲で大きく異なってくる場合が多い。概して、本明細書に記載の制御原理は、動作範囲が、図1に示されている最大効率曲線16に相当するよりも下の領域を含むことを前提として、効率を向上させるために、いかなるタイプの機械にも適用することができる。
【0113】
現在、先行技術のモータの中には、パルス幅変調(PWM)制御を使用して動作するものがある。しかしながら、このようなモータは、最も効率的なエネルギー変換レベルとはどういうものであるのかを考慮せずに駆動される。そのため、上述したアプローチを使用して、このようなモータのエネルギー変換効率も同様に向上させることもまた可能である。
【0114】
ブラシレス型DCモータ、誘導モータ、同期ACモータ、スイッチトリラクタンスモータ、等々を含む多くのタイプのモータは、従来、連続的な、ただし場合によっては変化する駆動電流によって駆動されて、所望のトルク出力を送達する。駆動電流は、(モータへの電圧入力としての役割を果たす)インバータ及び/又は変換器の出力電圧を制御することによって制御される場合が多い。概して、ロータ磁場とステータ磁場との間の相対的な位相を変更することによって、モータは発電機として動作させることができる。ゆえに、モータに関して説明した回路及び制御方法は、発電機として電気機械を使用する場合にも同じように適用可能である。説明したパルス化制御は、それぞれの最大エネルギー変換効率点を下回る領域でこのようなモータ及び発電機を動作させる場合には、特に有益である。
【0115】
したがって、本明細書の諸実施形態は、限定的なものではなく、例示的なものであると見なされるべきであり、本発明は、本明細書に与えられている詳細に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で修正してもよい。
図1
図2
図3A-3B】
図4
図5A-5C】
図6A
図6B
図7A
図7B-7F】
図8
図9A-9C】
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】