(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-06
(54)【発明の名称】タンパク質ベースのバイオプラスチックの産生のためのガス発酵
(51)【国際特許分類】
C08H 1/00 20060101AFI20220425BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20220425BHJP
C08L 89/00 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
C08H1/00
C12N1/00 N
C08L89/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021554400
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(85)【翻訳文提出日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 US2020022659
(87)【国際公開番号】W WO2020186173
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518403425
【氏名又は名称】ランザテク,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】アレン,ワイアット
(72)【発明者】
【氏名】カルネイロ,スーザン エイミー ヴィエイラ
【テーマコード(参考)】
4B065
4J002
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA23X
4B065AC20
4B065BD10
4B065BD13
4B065BD15
4B065CA60
4J002AD031
4J002DE026
4J002EC046
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4J002ED036
4J002EF056
4J002EH096
4J002EN066
4J002FD018
4J002FD026
4J002FD119
4J002FD147
4J002FD209
(57)【要約】
本発明は、微生物を培養して、微生物バイオマスを産生することによって、タンパク質ベースのバイオプラスチックおよびタンパク質ベースのバイオフィルムを産生する方法を提供する。特に、本発明は、特にグラム陽性、嫌気性、および/またはClostridium微生物による、CO、CO2、およびH2のうちの1つ以上を含むガス状基質の発酵によって産生されるタンパク質ベースのバイオプラスチックおよびタンパク質ベースのバイオフィルムに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質ベースのバイオプラスチックを産生する方法であって、
a.ガス状基質の存在下、栄養培地中で微生物を培養して、微生物バイオマスを産生する工程と、
b.前記微生物バイオマスを処理して、タンパク質ベースのバイオプラスチックを産生する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記処理工程が、前記微生物バイオマスを滅菌すること、前記微生物バイオマスを遠心分離すること、前記微生物バイオマスを乾燥させること、前記微生物バイオマスを変性させること、および前記微生物バイオマスを抽出することのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理工程が、前記微生物バイオマスを可塑剤と混和することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記可塑剤が、水、グリセロール、エチレングリセロール、プロピレングリセロール、パルミチン酸、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ポリエチレングリコール(PEG)、ソルビトール、マンチトレクト(mantitoletc)、ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、および2,3-ブタンジオールのうちの1つ以上である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記可塑剤が、グリセロールである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記微生物バイオマスを可塑剤との前記混和が、物理化学的方法を使用して行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記微生物バイオマスを可塑剤との前記混和が、または熱機械的方法を使用して行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記処理工程が、前記微生物バイオマスに添加剤を添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記添加剤が、架橋剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記添加剤が、還元剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記添加剤が、強化剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記添加剤が、導電剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記添加剤が、相溶化剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記添加剤が、耐水性剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記微生物が、グラム陽性である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記微生物が、酢酸生成性および/または一酸化炭素資化性である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記微生物が、嫌気性である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記微生物が、Clostridium属のメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記微生物が、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、またはClostridium coskatiiであるか、またはそれに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記微生物が、メタン資化性でない、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記ガス状基質が、CO、CO
2、および/またはH
2を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ガス状基質が、メタンを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記ガス状基質が、産業廃棄物ガス、産業オフガス、または合成ガスであるか、またはそれに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の方法によって産生されるタンパク質ベースのバイオプラスチック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物バイオマスを使用してタンパク質ベースのバイオプラスチックまたはタンパク質ベースのバイオフィルムを産生するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
石油由来のプラスチックは、主にその軽量性、堅牢性、耐久性、および耐劣化性により、現代の生活に不可欠である。しかしながら、石油由来のプラスチックへの依存により、原油の枯渇、汚染、埋め立てごみの蓄積を含む、多くの深刻な問題を引き起こしている。プラスチックの環境への影響を減少させるために、従来の石油由来のプラスチックを、従来のプラスチックと同様の物理化学的特性を有するポリ乳酸、多糖類、脂肪族ポリエステル、およびポリヒドロキシアルカノエート等のバイオプラスチックに置き換える努力が進められている(Anjum,Int J Biol Macromol,89:161-174,2016)。
【0003】
同様に、気候変動を制限するために、世界的な化石燃料の消費に伴う排出量を大幅に削減することの差し迫った必要性が存在する。しかしながら、炭素ベースの材料、化学物質、および輸送用燃料は主に化石資源から作られ、現在、それらを適切に置換するために利用できる代替資源はない。
【0004】
二酸化炭素(CO2)および一酸化炭素(CO)を固定するガス発酵微生物は、ガス状炭素を有用な生成物に変換できるので、この依存性の影響を緩和し得る。ガス発酵微生物は、あらゆる種類のガス化有機物(すなわち、都市固形廃棄物、産業廃棄物、バイオマス、および農業廃棄物の残渣)または産業オフガス(すなわち、製鋼所やその他の処理プラントからの)を含む幅広い原料を利用できる。さらに、これらの微生物は、高い増殖速度を有し、遺伝子改変してアミノ酸組成をあつらえることができ、そして高いタンパク質含有量を有する。
【0005】
タンパク質ベースのバイオプラスチックは、再生可能であり、生分解性であり、そして機能化可能(functionizable)であることにおいて利点を与える。しかしながら、タンパク質ベースのバイオプラスチックを産生するための方法はまだ大部分が未開発である。微生物をタンパク質供給源として使用してタンパク質ベースのバイオプラスチックを産生するための方法を開発する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0006】
本発明が従来技術に勝る特定の利点および進歩を提供することは、上記の背景に反する。
【0007】
本明細書に開示される本発明は、特定の利点または機能性に限定されないが、本発明は、微生物バイオマスを使用してタンパク質ベースのバイオプラスチックまたはバイオフィルムを産生する方法を提供する。
【0008】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、微生物バイオマスは、CO、CO2、およびH2のうちの1つ以上を含むガス状基質などのガス状基質で増殖する微生物を含む。ガス状基質は、産業廃棄物ガス、産業オフガス、または合成ガスであり得るか、またはそれに由来し得る。
【0009】
本明細書に開示される方法のいくつかの態様では、微生物は、グラム陽性、酢酸生成性(acetogenic)、一酸化炭素資化性(carboxydotrophic)、および/または嫌気性であり得る。一般に、微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、またはClostridium coskatiiであるか、またはそれに由来する微生物などの、Clostridium属のメンバーである。
【0010】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、方法は、微生物バイオマスを処理する工程を含む。処理工程は、微生物バイオマスを滅菌すること、微生物バイオマスを遠心分離すること、および微生物バイオマスを乾燥させることのうちの1つ以上を含み得る。処理工程は、微生物バイオマスの変性をさらに含み得る。処理工程はまた、DNA除去のためなどの微生物バイオマスの抽出を含み得る。
【0011】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、方法は、微生物バイオマスを可塑剤と混和することを含む。可塑剤は、水、グリセロール、エチレングリセロール、プロピレングリセロール、パルミチン酸、酒石酸ジエチル(diethyl tartarate)、酒石酸ジブチル(dibutyl tartarate)、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ポリエチレングリコール(PEG)、ソルビトール、マンチトレクト(mantitoletc)、ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、および2,3-ブタンジオールのうちの1つ以上であり得る。
【0012】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、方法は、微生物バイオマスに添加剤を添加することを含む。添加剤は、架橋剤、還元剤、強化剤、導電剤、相溶化剤(compatabilizing agent)、または耐水性剤であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、ガス状基質、特にCO、CO2、およびH2のうちの1つ以上を含むガス状基質の発酵から産生される微生物バイオマスが、タンパク質ベースのバイオプラスチックおよびタンパク質ベースのバイオフィルムの産生に適した供給源であることを見出した。
【0014】
「微生物(microorganism)」または「微生物(microbe)」は、顕微鏡的生物、特に、細菌、古細菌、ウイルス、または真菌である。微生物は、典型的には細菌である。本明細書で使用される場合、「微生物」の記載は、「細菌」を包含するものと解釈されるべきである。
【0015】
「微生物バイオマス」は、微生物細胞を含む生物材料を指す。例えば、微生物バイオマスは、細菌、古細菌、ウイルス、または真菌の純粋なまたは実質的に純粋な培養物を含み得るか、またはそれからなり得る。最初に発酵ブロスから分離されたときには、微生物バイオマスは一般に多量の水を含んでいる。この水は、微生物バイオマスを乾燥させるかまたは処理することによって、除去され得るかまたは低減させられ得る。
【0016】
微生物バイオマスは、実施例1における表の第1列に列挙される成分のいずれかを含み得る。とりわけ、実施例1の微生物バイオマスは、15重量%の水分(水)を含む。したがって、実施例1において列挙される値は、湿潤(すなわち、非乾燥)微生物バイオマスの量あたりの各成分の量を指す。本明細書では、微生物バイオマスの組成は、湿潤(すなわち、非乾燥)微生物バイオマスの重量あたりの成分の重量に関して記載される。もちろん、微生物バイオマスの組成を、乾燥微生物バイオマスの重量あたりの成分の重量に関して計算することも可能である。
【0017】
微生物バイオマスは一般に、50重量%(50gタンパク質/100gバイオマス)超、60重量%(60gタンパク質/100gバイオマス)超、70重量%(70gタンパク質/100gバイオマス)超、または80重量%(80gタンパク質/100gバイオマス)超のタンパク質などの、タンパク質の大きな画分を含む。好ましい実施形態では、微生物バイオマスは、少なくとも72重量%(72gタンパク質/100gバイオマス)のタンパク質を含む。タンパク質画分は、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、チロシン、および/またはバリンを含むアミノ酸を含む。
【0018】
微生物バイオマスは、ビタミンA(レチノール)、C、B1(チアミン)、B2(リボフラビン)、B3(ナイアシン)、B5(パントテン酸)、および/またはB6(ピリドキシン)を含むいくつかのビタミンを含み得る。
【0019】
微生物バイオマスは、比較的少量の炭水化物および脂肪を含み得る。例えば、微生物バイオマスは、15%重量(15g炭水化物/100gバイオマス)未満、10重量%(10g炭水化物/100gバイオマス)未満、または5重量%(5g炭水化物/100gバイオマス)未満の炭水化物を含み得る。例えば、微生物バイオマスは、10重量%(10g脂肪/100gバイオマス)未満、または5重量%(5g脂肪/100gバイオマス)未満、2重量%(2g脂肪/100gバイオマス)未満、または1重量%(1g脂肪/100gバイオマス)未満の脂肪を含み得る。
【0020】
本発明の方法は、微生物バイオマスを利用して、タンパク質ベースのバイオプラスチックまたはタンパク質ベースのバイオフィルムを産生する前に、微生物バイオマスの処理(processing)または処理(treatment)の工程を含み得る。例えば、方法は、微生物バイオマスを滅菌すること、微生物バイオマスを遠心分離すること、および/または微生物バイオマスを乾燥させることを含み得る。特定の実施形態では、微生物バイオマスは、噴霧乾燥またはパドル乾燥を使用して乾燥される。方法はまた、当該技術分野で知られている任意の方法を使用して、微生物バイオマスの核酸含有量および/または無機物含有量を低減させることを含み得る。例えば、微生物バイオマスの処理は、溶媒洗浄の使用を含み得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「タンパク質ベースのバイオプラスチック」、「タンパク質バイオベースのプラスチック」、および「タンパク質バイオコンポジット」という用語は、交換可能に使用され得る。「タンパク質ベースのバイオプラスチック」および「タンパク質ベースのタンパク質ベースのバイオフィルム」は、天然由来の生分解性ポリマーを指す。タンパク質ベースのバイオプラスチックおよびタンパク質ベースのバイオフィルムは、主にタンパク質で構成される。「タンパク質ベースの材料」は、水素結合、疎水性相互作用、およびジスルフィド結合を含む三次元高分子ネットワークを指す。例えば、Martinez,Journal of Food Engineering,17:247-254、2013およびPommet,Polymer,44:115-122、2003を参照のこと。好ましい実施形態では、タンパク質ベースのバイオプラスチックまたはタンパク質ベースのバイオフィルムのタンパク質成分は、微生物バイオマスである。タンパク質ベースのバイオプラスチックおよびタンパク質ベースのバイオフィルムの産生は、化学的、熱的、または圧力誘導性の方法によるタンパク質変性の工程を必要とし得る。例えば、Mekonnen,Biocomposites:Design and Mechanical Performance,2015を参照のこと。タンパク質ベースのバイオプラスチックおよびタンパク質ベースのバイオフィルムの産生は、微生物バイオマスを単離または分画して、精製タンパク質材料を産生する工程をさらに必要とし得る。
【0022】
タンパク質ベースのバイオプラスチックまたはタンパク質ベースのバイオフィルムは、微生物バイオマスなどのタンパク質の可塑剤との混和物であり得る。本明細書で使用される場合、「可塑剤」は、低分子量および揮発性を有する分子を指す。可塑剤は、タンパク質中に存在する分子間力を低減させ、ポリマー鎖の可動性を増加させることによって、タンパク質の構造を改変するために使用される。例えば、Martinez,Journal of Food Engineering,17:247-254,2013およびGennadios,CRC Press,New York,66-115、2002を参照のこと。可塑剤の非限定的な例としては、水、グリセロール、エチレングリセロール、プロピレングリセロール、パルミチン酸、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ポリエチレングリコール(PEG)、ソルビトール、マンチトレクト、ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、および2,3-ブタンジオールが挙げられる。例えば、Mekonnen,Biocomposites:Design and Mechanical Performance,2015を参照のこと。いくつかの実施形態では、グリセロールが可塑剤として使用される。いくつかの実施形態では、30%グリセロールが可塑剤として使用される。いくつかの実施形態では、Clostridium autoethanogenumの天然生成物である2,3-ブタンジオールが可塑剤として使用される。
【0023】
いくつかの実施形態では、可塑剤は、「キャスティング」方法などの物理化学的方法によってタンパク質マトリックスに導入される。この方法において、ジスルフィド結合が破壊されるように化学反応物が導入される。例えば、Martinez,Journal of Food Engineering,17:247-254,2013およびGontard,J.Food Sci.,57:190-196、1993を参照のこと。
【0024】
いくつかの実施形態では、可塑剤は、熱可塑性処理によってタンパク質マトリックスに導入される。この方法において、タンパク質と可塑剤とが、熱とせん断との組み合わせによって混合される。この方法は、圧縮成形、熱成形、および押出などの熱機械的処理をさらに必要とし得る。例えば、Martinez,Journal of Food Engineering,17:247-254,2013およびFelix,Industrial Crops and Products,79:152-159,2016を参照のこと。
【0025】
いくつかの実施形態では、タンパク質/可塑剤混和物が混合などの熱機械的手順によって調製されて、適切な一貫性および均質性の生地様材料が得られる。次いで、生地様材料が射出成形によって処理されて、タンパク質ベースのバイオプラスチックまたはタンパク質ベースのバイオフィルムが産生される。例えば、Felix,Industrial Crops and Products,79:152-159,2016を参照のこと。
【0026】
いくつかの実施形態では、タンパク質ベースのバイオプラスチックまたはタンパク質ベースのバイオフィルムを産生するために添加剤が必要とされる。例えば、添加剤は、還元剤、架橋剤、強化剤、導電剤、相溶化剤、または耐水性剤であり得る。還元剤の非限定的な例は、亜硫酸水素ナトリウムである。架橋剤の非限定的な例としては、グリオキサール、L-システイン、およびホルムアルデヒドが挙げられる。強化剤の非限定的な例としては、バクテリアセルロースナノファイバー、パイナップル葉繊維、リグニン、亜麻、ジュート、麻、およびサイザル麻が挙げられる。導電剤の非限定的な例は、カーボンナノチューブ材料である。相溶化剤の非限定的な例としては、無水リンゴ酸およびトルエンジイソシアネートが挙げられる。耐水性剤の非限定的な例は、ポリホスフェート材料である。いくつかの実施形態では、耐水性を改善するために化学修飾が使用される。化学修飾は、低分子量アルコールを用いるエステル化であり得る。例えば、Felix,Industrial Crops and Products,79:152-159,2016およびMekonnen,Biocomposites:Design and Mechanical Performance,2015を参照のこと。
【0027】
いくつかの実施形態では、タンパク質ベースのバイオプラスチックまたはタンパク質ベースのバイオフィルムは、押出によって産生され、ここで、微生物バイオマスは、加熱され、押出ダイを通して押される。
【0028】
いくつかの実施形態では、タンパク質ベースのバイオプラスチックは、化石由来のプラスチックと混和され得るが、これは必要とされる工程ではない。
【0029】
本明細書に記載のタンパク質ベースのバイオプラスチックは、包装、バッグ、ボトル、容器、使い捨て皿、カトラリー、植木鉢、グラウンドカバー、干し草の梱包、ボタン、またはバックルにおいて使用され得る。
【0030】
本発明の利点は、微生物バイオマスの水における可溶性である。タンパク質ベースのバイオプラスチックにおける植物タンパク質の使用に関連していくらかの研究が行われたが、一般的な溶媒に可溶性の植物タンパク質はほとんどなく、溶媒またはアルカリ性溶液の使用は、コストを増加させ、環境に優しくない場合がある。Perez,Food and Bioproducts Processing,97:100-108,2016。
【0031】
微生物は、機能的特徴に基づいて分類され得る。例えば、微生物は、C1固定微生物、嫌気性菌、アセトゲン(acetogen)、エタノロゲン(ethanologen)、および/または一酸化炭素資化性菌(carboxydotroph)であり得るか、またはそれに由来し得る。表1は、微生物の代表的なリストを提供し、微生物の機能特徴を特定する。
【表1】
【0032】
「C1」は、1炭素分子、例えば、CO、またはCO2を指す。「C1酸素化物(C1-oxygenate)」は、少なくとも1つの酸素原子も含む1炭素分子、例えば、CO、またはCO2を指す。「C1炭素源」は、微生物のための部分的なまたは唯一の炭素源として作用する1炭素分子を指す。例えば、C1炭素源は、CO、CO2、またはCH2O2のうちの1つ以上を含み得る。好ましくは、C1炭素源は、COおよびCO2のうちの一方または両方を含む。「C1固定微生物」は、C1炭素源から1つ以上の生成物を産生する能力を有する微生物である。典型的には、微生物はC1固定細菌である。好ましい実施形態では、微生物は、表1において特定されるC1固定微生物であるか、またはそれに由来する。
【0033】
「嫌気性菌」は、増殖のために酸素を必要としない微生物である。嫌気性菌は、酸素が特定の閾値を超えて存在する場合、負の反応を起こし得るか、または死滅し得る。典型的には、微生物は嫌気性菌である(すなわち、嫌気性である)。好ましい実施形態では、微生物は、表1において特定される嫌気性菌であるか、またはそれに由来する。
【0034】
「アセトゲン」は、嫌気呼吸の生成物としてアセテート(または酢酸)を産生する、または産生することが可能である微生物である。典型的には、アセトゲンは、エネルギー節約のため、ならびにアセチル-CoAおよびアセテートなどのアセチル-CoA誘導生成物の合成のためのそれらの主要機構として、ウッド・ユングダール経路を使用する、偏性嫌気性細菌である(Ragsdale,Biochim Biophys Acta,1784:1873-1898,2008)。アセトゲンは、アセチル-CoA経路を、(1)CO2からのアセチル-CoAの還元的合成のための機構、(2)最終電子受容、エネルギー節約プロセス、(3)細胞炭素の合成におけるCO2の固定(同化)のための機構として使用する(Drake,Acetogenic Prokaryotes,In:The Prokaryotes,3rd edition,p.354,New York,NY,2006)。天然に存在するすべてのアセトゲンは、C1固定、嫌気性、独立栄養性、および非メタン資化性である。好ましい実施形態では、微生物はアセトゲンである。好ましい実施形態では、微生物は、表1において特定されるアセトゲンであるか、またはそれに由来する。
【0035】
「エタノロゲン(ethanologen)」は、エタノールを産生する、または産生することが可能である微生物である。好ましい実施形態では、微生物はエタノロゲンである。好ましい実施形態では、微生物は、表1において特定されるエタノロゲンであるか、またはそれに由来する。
【0036】
「独立栄養生物」は、有機炭素の非存在下で増殖することが可能な微生物である。代わりに、独立栄養生物は、COおよび/またはCO2などの無機炭素源を使用する。好ましい実施形態では、微生物は独立栄養生物である。好ましい実施形態では、微生物は、表1において特定される独立栄養生物であるか、またはそれに由来する。
【0037】
「一酸化炭素資化性菌」は、炭素の唯一の供給源としてCOを利用することが可能な微生物である。好ましい実施形態では、微生物は一酸化炭素資化性菌である。好ましい実施形態では、微生物は、表1において特定される一酸化炭素資化性菌であるか、またはそれに由来する。
【0038】
特定の実施形態では、微生物は、メタンまたはメタノールなどの特定の基質を消費しない。一実施形態では、微生物はメタン資化性菌ではなく、そして/またはメチロトローフ(methylotroph)ではない。
【0039】
好ましくは、微生物はグラム陽性である。より広くは、微生物は、表1において特定されるいずれかの属または種であり得るか、またはそれに由来し得る。例えば、微生物は、Clostridium属のメンバーであり得る。
【0040】
好ましい実施形態では、微生物は、Clostridium autoethanogenum種、Clostridium ljungdahlii種、およびClostridium ragsdalei種を含むClostridiaのクラスターであるか、またはそれに由来する。これらの種は、Abrini,Arch Microbiol,161:345-351,1994(Clostridium autoethanogenum)、Tanner,Int J System Bacteriol,43:232-236,1993(Clostridium ljungdahlii)、およびHuhnke,WO2008/028055(Clostridium ragsdalei)によって最初に報告され、そして特徴付けられた。
【0041】
これら3つの種は、多くの類似点を有する。特に、これらの種は全て、Clostridium属の、C1固定、嫌気性、酢酸生成性、エタノール生成性(ethanologenic)、および一酸化炭素資化性のメンバーである。これらの種は、類似の遺伝子型および表現型ならびにエネルギー節約および発酵代謝のモードを有する。さらに、これらの種は、99%超同一である16S rRNA DNAを有してクロストリジウムrRNAホモロジーグループIにクラスター化され、約22~30モル%のDNA G+C含量を有し、グラム陽性であり、類似の形態およびサイズを有し(対数増殖細胞は0.5~0.7×3~5μm)、中温性であり(30~37℃で最適に増殖する)、約4~7.5の類似のpH範囲を有し(最適pHは約5.5~6)、シトクロムを欠いており、そしてRnf複合体を介してエネルギーを節約する。また、カルボン酸のそれらの対応するアルコールへの還元が、これらの種において示されている(Perez,Biotechnol Bioeng,110:1066-1077,2012)。重要なことには、これらの種はまた、全てが、CO含有ガスで強い独立栄養性増殖を示し、主要な発酵生成物としてエタノールおよびアセテート(または酢酸)を産生し、そして特定の条件下で少量の2,3-ブタンジオールおよび乳酸を産生する。
【0042】
しかしながら、これら3つの種は、いくつかの違いも有する。これらの種は、Clostridium autoethanogenumはウサギの腸から、Clostridium ljungdahliiは養鶏場の廃棄物から、およびClostridium ragsdaleiは淡水堆積物からというように、異なる供給源から単離された。これらの種は、様々な糖(例えば、ラムノース、アラビノース)、酸(例えば、グルコン酸、クエン酸)、アミノ酸(例えば、アルギニン、ヒスチジン)、および他の基質(例えば、べタイン、ブタノール)の利用において異なる。さらに、これらの種は、特定のビタミン(例えば、チアミン、ビオチン)に対する栄養要求性において異なる。これらの種は、ウッド・ユングダール経路遺伝子およびタンパク質の核酸およびアミノ酸配列において違いを有するが、これらの遺伝子およびタンパク質の一般的構成および数は、全ての種において同じであることが分かっている(Kopke,Curr Opin Biotechnol,22:320-325,2011)。
【0043】
したがって、要約すると、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、またはClostridium ragsdaleiの特徴の多くは、その種に特異的ではなく、むしろClostridium属の、C1固定、嫌気性、酢酸生成性、エタノール生成性、および一酸化炭素資化性のメンバーのこのクラスターについて一般的な特徴である。しかしながら、これらの種は、実際は、全く異なるため、これらの種のうちの1つの遺伝子改変または操作は、これらの種のうちの別のものにおいては同一の効果を有しない場合がある。例えば、増殖、性能、または生成物産生における違いが観察され得る。
【0044】
微生物はまた、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、またはClostridium ragsdaleiの分離株または変異体であり得るか、またはそれに由来し得る。Clostridium autoethanogenumの分離株および変異体としては、JA1-1(DSM10061)(Abrini,Arch Microbiol,161:345-351,1994)、LBS1560(DSM19630)(WO2009/064200)、およびLZ1561(DSM23693)が挙げられる。Clostridium ljungdahliiの分離株および変異体としては、ATCC 49587(Tanner,Int J Syst Bacteriol,43:232-236,1993)、PETCT(DSM13528、ATCC 55383)、ERI-2(ATCC 55380)(US5,593,886)、C-01(ATCC 55988)(US6,368,819)、O-52(ATCC 55989)(US6,368,819)、およびOTA-1(Tirado-Acevedo,Production of bioethanol from synthesis gas using Clostridium ljungdahlii,PhD thesis,North Carolina State University,2010)が挙げられる。Clostridium ragsdaleiの分離株および変異体としては、PI 1(ATCC BAA-622、ATCC PTA-7826)(WO2008/028055)が挙げられる。
【0045】
「由来する」という用語は、新たな微生物を産生するように、異なる(例えば、親または野生型)微生物から改変されたまたは適合させられた微生物を指す。そのような改変または適合は、典型的には、核酸または遺伝子の挿入、欠失、変異、または置換を含む。
【0046】
「基質」は、微生物のための炭素および/またはエネルギー源を指す。典型的には、基質は、ガス状であり、C1炭素源、例えば、COまたはCO2を含む。好ましくは、基質は、COまたはCO+CO2のC1炭素源を含む。基質は、H2、N2、または電子などの他の非炭素成分をさらに含み得る。
【0047】
基質は、概して、約1、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100モル%のCOなどの少なくともいくらかの量のCOを含む。基質は、約20~80、30~70、または40~60モル%のCOなど、ある範囲のCOを含み得る。好ましくは、基質は、約40~70モル%のCO(例えば、製鋼所または高炉ガス)、約20~30モル%のCO(例えば、塩基性酸素転炉ガス)、または約15~45モル%のCO(例えば、合成ガス)を含む。いくつかの実施形態では、基質は、約1~10または1~20モル%のCOなどの比較的低い量のCOを含み得る。微生物は、典型的には、基質中のCOおよび/またはの少なくとも一部分を生成物に変換する。いくつかの実施形態では、基質は、COを含まないか、または実質的に含まない。
【0048】
基質は、いくらかの量のH2を含み得る。例えば、基質は、約1、2、5、10、15、20、または30モル%のH2を含み得る。いくつかの実施形態では、基質は、約60、70、80、または90モル%のH2など、比較的多量のH2を含み得る。さらなる実施形態では、基質は、H2を含まないか、または実質的に含まない。
【0049】
基質は、いくらかの量のCO2を含み得る。例えば、基質は、約1~80または1~30モル%のCO2を含み得る。いくつかの実施形態では、基質は、約20、15、10、または5モル%未満のCO2を含み得る。別の実施形態では、基質は、CO2を含まないか、または実質的に含まない。
【0050】
いくつかの実施形態では、基質は、メタンまたはメタノールを含まない。
【0051】
基質は典型的にはガス状であるが、基質はまた、代替的な形態で提供されてもよい。例えば、基質は、マイクロバブル分散物発生装置を使用して、CO含有ガスで飽和した液体中に溶解されてもよい。さらなる例として、基質は、固体支持体上に吸着されてもよい。
【0052】
基質および/またはC1炭素源は、自動車の排気ガスまたはバイオマスガス化からなど、産業プロセスの副産物として、または何らかの他の供給源から得られる排ガスまたはオフガスであり得るか、またはそれに由来し得る。特定の実施形態では、産業プロセスは、鉄鋼製造などの鉄金属製品製造、非鉄製品製造、石油精製プロセス、石炭ガス化、電力生産、カーボンブラック生産、アンモニア生産、メタノール生産、およびコークス製造からなる群から選択される。これらの実施形態では、基質および/またはC1炭素源は、任意の簡便な方法を使用して、それが大気中に放出される前に産業プロセスから捕捉されてもよい。
【0053】
基質および/またはC1炭素源は、石炭もしくは精錬残渣のガス化、バイオマスもしくはリグノセルロース材料のガス化、または天然ガスの改質によって得られる合成ガスなどの、合成ガスであり得るか、またはそれに由来し得る。別の実施形態では、合成ガスは、都市固形廃棄物または産業固形廃棄物のガス化から得られてもよい。
【0054】
基質および/またはC1炭素源に関連して、「由来する」という用語は、何らかの改変または混和がなされた基質および/またはC1炭素源を指す。例えば、基質および/またはC1炭素源は、特定の成分を添加または除去するように処理され得るか、あるいは他の基質および/またはC1炭素源の流れと混和され得る。
【0055】
基質の組成は、反応の効率および/またはコストに著しい影響を及ぼし得る。例えば、酸素(O2)の存在は、嫌気性発酵プロセスの効率を低減させ得る。基質の組成に応じて、基質を処理、スクラブ、または濾過して、毒素、望ましくない成分、またはちり粒子等のいかなる望ましくない不純物も除去すること、および/または所望の成分の濃度を増加させることが望ましくあり得る。
【0056】
典型的には、培養は、バイオリアクター中で実行される。「バイオリアクター」という用語は、連続撹拌槽反応器(CSTR)、固定化細胞反応器(ICR)、トリクルベッド反応器(TBR)、気泡塔、ガスリフト発酵槽、静的ミキサ、またはガス-液体接触に適した他の容器もしくは他のデバイスなどの1つ以上の容器、塔、または配管配置からなる培養/発酵デバイスを含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、第1の増殖反応器および第2の培養/発酵反応器を含み得る。基質は、これらの反応器のうちの一方または両方に提供され得る。本明細書で使用する場合、「培養」および「発酵」という用語は、交換可能に使用される。これらの用語は、培養/発酵プロセスの増殖期および生成物生合成期の両方を包含する。
【0057】
培養物は概して、微生物の増殖を可能にするのに十分な栄養素、ビタミン、および/または無機物を含有する水性培地中で維持される。好ましくは、水性培地は、最小嫌気性微生物増殖培地などの嫌気性微生物増殖培地である。好適な培地は、当該技術分野において周知である。
【0058】
培養/発酵は、望ましくは、標的生成物の産生に適切な条件下で実施されるべきである。考慮すべき反応条件は、圧力(または分圧)、温度、ガス流速、液体流速、培地pH、培地酸化還元電位、撹拌速度(連続撹拌槽反応器を使用する場合)、接種レベル、液相中のガスが制限的にならないことを確実にするための最大ガス基質濃度、および生成物阻害を回避するための最大生成物濃度を含む。特に、基質の導入速度は、生成物がガス制限条件下での培養によって消費され得るため、液相中のガスの濃度が制限的にならないことを確実にするように制御されてもよい。
【0059】
本明細書では、微生物バイオマス自体が標的生成物であると考えられる。しかしながら、微生物はまた、1つ以上の他の価値のある生成物を産生する。例えば、Clostridium autoethanogenumは、エタノール(WO2007/117157)、アセテート(WO2007/117157)、ブタノール(WO2008/115080およびWO2012/053905)、ブチレート(WO2008/115080)、2,3-ブタンジオール(WO2009/151342)、ラクテート(WO2011/112103)、ブテン(WO2012/024522)、ブタジエン(WO2012/024522)、メチルエチルケトン(2-ブタノン)(WO2012/024522およびWO2013/185123)、エチレン(WO2012/026833)、アセトン(WO2012/115527)、イソプロパノール(WO2012/115527)、脂質(WO2013/036147)、3-ヒドロキシプロピオネート(3-HP)(WO2013/180581)、イソプレン(WO2013/180584)、脂肪酸(WO2013/191567)、2-ブタノール(WO2013/185123)、1,2-プロパンジオール(WO2014/036152)、ならびに1-プロパノール(WO2014/0369152)を産生するか、または産生するように操作され得る。
【0060】
上昇した圧力でバイオリアクターを操作することは、気相から液相へのガス物質移動の増加した速度を可能にする。したがって、概して、大気圧よりも高い圧力で培養/発酵を実施することが好ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ保持時間がバイオリアクターの必要な容積を示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの容積、およびその結果として培養/発酵装置の資本コストを大幅に削減することができる。これはさらに、バイオリアクター中の液体体積を入力ガス流量で除算したものとして定義される保持時間が、バイオリアクターが大気圧よりも上昇した圧力に維持されるときに減少され得ることを意味する。最適反応条件は、使用される特定の微生物に部分的に依存する。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ所望の保持時間を達成することがバイオリアクターの必要な容積をさらに示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの容積、およびその結果として発酵装置の資本コストを大幅に削減することができる。
【0061】
微生物の培養は、微生物バイオマスの産生を最大化する発酵条件下で実施され得る。方法はまた、微生物バイオマスの産生または微生物バイオマスへの選択性を最大化する発酵条件下で微生物を培養することを含み得る。バイオマスへの選択性を最大化することは、最大の比増殖速度または最大の微生物希釈速度での操作を必要とする。しかしながら、高い微生物希釈速度での操作はまた、培養物における細胞濃度を低減させ、これは分離を妨げる。また、細胞濃度は、高反応器産生性のために重要な要件である。>1/日の比増殖速度または微生物希釈速度を目標とすべきであり、2/日の速度が最適により近い。
【0062】
2反応器システムでは、バイオマス産生速度は、第1および第2の反応器の両方において高いバイオマス産生速度を有することによって最大化される。これは、(1)低い細胞生存率、または(2)第2の反応器における速い比増殖速度のいずれかを有することによって達成され得る。低い細胞生存率は、高い生成物力価の毒性から達成され得、所望されない場合がある。速い比増殖速度は、第1の反応器と比較して第2の反応器においてさらに高い値の微生物希釈速度で操作することによって達成され得る。
【0063】
この関係は、以下の式によってとらえられる:μ2=DW2-DW1*(X1/X2)*(V1/V2)、ここで、μ2は、バイオマスへの選択性を増加させるように最大化される必要がある2反応器システムの第2の反応器における比増殖速度であり、DW2およびDW1は、それぞれ2反応器システムの第2および第1の反応器における微生物希釈速度であり、X2およびX1は、それぞれ2反応器システムの第2および第1の反応器におけるバイオマス力価であり、そしてV2およびV1は、それぞれ2反応器システムの第2および第1の反応器における反応器容積である。
【0064】
この式によれば、第2の反応器におけるバイオマスへの選択性を最大化するために、第2の反応器における微生物希釈速度、DW2、は、>0.5/日の、理想的には1~2/日を目標とした第2の反応器における比増殖速度、μ2、を達成するように増加させられる必要がある。
【0065】
生成物は、例えば、分留、蒸発、浸透蒸発、ガスストリッピング、相分離、および、例えば、液-液抽出などの抽出発酵などを含み、当該技術分野で既知の任意の方法またはその組み合わせを使用して、発酵ブロスから分離または精製され得る。特定の実施形態では、生成物は、ブロスの一部をバイオリアクターから連続的に取り出し、微生物細胞をブロスから分離し(簡便には濾過により)、そして1つ以上の標的生成物をブロスから回収することによって、発酵ブロスから回収される。アルコールおよび/またはアセトンは、例えば、蒸留によって回収され得る。酸は、例えば、活性炭上での吸着によって回収され得る。生成物が取り出された後に残っている無細胞透過液はまた、好ましくは、バイオリアクターに返送される。追加の栄養素(ビタミンBなど)を、無細胞透過液に添加して、培地を補充した後にバイオリアクターに返送することができる。
【実施例】
【0066】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するが、当然のことながら、いかなる方法によってもその範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【0067】
実施例1
この実施例は、C.autoethanogenum DSM23693微生物バイオマスの組成を記載する。
【表2-1】
【表2-2】
【0068】
実施例2
この実施例は、C.autoethanogenumおよびC.ljungdahliiを培養するための一般的な方法を記載する。そのような方法はまた、当該技術分野において周知である。
【0069】
C.autoethanogenum DSM10061およびDSM23693(DSM10061の派生体)ならびにC.ljungdahlii DSM13528は、DSMZ(The German Collection of Microorganisms and Cell Cultures,Inhoffenstraβe 7B,38124 Braunschweig,Germany)から調達した。
【0070】
株を、標準的な嫌気性技術(Hungate,Methods Microbiol,3B:117-132,1969、Wolfe,Adv Microbiol Physiol,6:107-146,1971)を使用して、pH5.6でPETC培地中、37℃で増殖させた。フルクトース(従属栄養性増殖)またはヘッドスペース中の30psiのCO含有製鋼所ガス(Glenbrook,NZのNew Zealand Steelの敷地から収集;組成:44%CO、32%N2、22%CO2、2%H2)(独立栄養性増殖)を基質として使用した。固形培地については、1.2%bacto agar(BD,Franklin Lakes,NJ 07417,USA)を添加した。
【0071】
本明細書に列挙される公表文献、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献があたかも参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、かつその全体が本明細書中に記載された場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における任意の先行技術への言及は、その先行技術が任意の国における努力傾注分野の共通の一般的知識の一部をなすという承認ではなく、かつそのように解釈されるべきではない。
【0072】
本発明の記載との関連で(特に、以下の特許請求の範囲との関連で)、用語「a」および「an」および「the」ならびに同様の指示語の使用は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに相反することがない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるものとする。用語「含むこと(comprising)」、「有すること」、「含むこと(including)」、および「含有すること」は、特に断りのない限り、非限定的な用語(すなわち、「~を含むがこれらに限定されないこと」を意味する)と解釈されるものとする。本明細書の値の範囲の記載は、本明細書に別段の指示がない限り、範囲内に入る各それぞれの値を個々に言及する省略法としての機能を果たすことを単に意図し、各それぞれの値は、あたかも本明細書に個々に記載されたかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに相反することがない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供されるありとあらゆる例または例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、本発明をより良く解明することを単に意図し、別段、特許請求されない限り、本発明の範囲を制限しない。本明細書におけるいかなる言葉も、本発明の実施に不可欠ないかなる非特許請求要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0073】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載される。それらの好ましい実施形態の変化形態は、上記の説明を読むことによって当業者に明らかとなり得る。本発明者等は、当業者が必要に応じてそのような変化形を採用することを予想し、本発明者等は、本発明が本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許可された通り、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題のすべての修正物および均等物を含む。さらに、好ましい実施形態のすべての考えられる変化形における上記の要素のあらゆる組み合わせは、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈と明らかに相反することがない限り、本発明によって包含される。
【国際調査報告】