(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-06
(54)【発明の名称】個人の歯列弓の仮想モデルとこの個人の顔のデジタルモデルとをレジストレーションする方法
(51)【国際特許分類】
A61C 19/045 20060101AFI20220425BHJP
A61C 9/00 20060101ALI20220425BHJP
A61B 34/20 20160101ALI20220425BHJP
【FI】
A61C19/045
A61C9/00 Z
A61B34/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021554581
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(85)【翻訳文提出日】2021-10-20
(86)【国際出願番号】 FR2020050526
(87)【国際公開番号】W WO2020183115
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521220585
【氏名又は名称】モジャ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン,マクシム
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052AA20
4C052JJ10
4C052NN02
4C052NN03
4C052NN15
(57)【要約】
個人の歯列弓の仮想モデルと、この個人の顔のデジタルモデルとをレジストレーションする方法。
本発明は、個人の下顎弓及び上顎弓の非X線撮影の仮想モデルと、この個人の顔の非X線撮影のデジタルモデルとをレジストレーションする方法に関し、当該方法は:
- 第1の基準系を定める下顎マーカーを個人の下顎弓にしっかりと固定することと、
- 下顎弓の非X線撮影の仮想モデル及び上顎弓の非X線撮影の仮想モデルを提供することと、
- 口腔内又は口腔外のカメラによって、歯又は上記の弓と一体になっている補綴装置の表面の少なくとも一部分及び上記のマーカーの少なくとも1つの剛性部分をデジタル化することであり、同じ第2の基準系において上記の下顎弓の部分及びマーカーの部分のデジタル記録を生成するようにデジタル化することと、
- 上記の下顎弓及び下顎マーカーの記録及び仮想モデルから、下顎マーカーを有する下顎マーカーのデジタルモデルと、下顎弓を有する下顎弓の仮想モデルとをマッチさせ、下顎弓の仮想モデルを第1の基準系において局在化させることと、
- 患者の顔の非X線撮影のデジタルモデルを取得することと、
- 上顎弓及び下顎弓の仮想モデルと上記の顔のデジタルモデルとをレジストレーションするように、顔のデジタルモデルを第1の基準系において局在化させることと、
を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の下顎弓及び上顎弓の非X線撮影の仮想モデルと、前記個人の顔の非X線撮影のデジタルモデルとをレジストレーションする方法であって、
- 第1の基準系を定める下顎マーカーを前記個人の下顎弓にしっかりと固定することと、
- 前記下顎弓の非X線撮影の仮想モデル及び前記上顎弓の非X線撮影の仮想モデルを提供することと、
- 口腔内又は口腔外のカメラによって、歯又は前記弓と一体になっている補綴装置の表面の少なくとも一部分及び前記マーカーの少なくとも1つの剛性部分をデジタル化することであり、同じ第2の基準系において前記下顎弓の部分及び前記マーカーの部分のデジタル化された記録を生成するようにデジタル化することと、
- 前記下顎弓及び前記下顎マーカーの記録及び仮想モデルから、前記下顎マーカーを有する前記下顎マーカーのデジタルモデルと、前記下顎弓を有する前記下顎弓の仮想モデルとをマッチさせ、前記下顎弓の仮想モデルを前記第1の基準系において局在化させることと、
- 患者の顔の非X線撮影のデジタルモデルを取得することと、
- 前記上顎弓及び下顎弓の仮想モデルと前記顔のデジタルモデルとをレジストレーションするように、前記顔のデジタルモデルを前記第1の基準系において局在化させることと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
決定された前記弓の咬合位置において、前記上顎弓の仮想モデルを前記下顎弓の仮想モデルとマッチさせることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者の顔のデジタルモデルに重ね合わされた前記上顎弓の仮想モデル及び前記下顎弓の仮想モデルを表示することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記患者の顔のデジタルモデルの取得は、前頭としっかりと一体になっている前頭マーカーを装着している前記患者において実行され、前記前頭マーカーの仮想モデルが提供され、前記上顎弓の仮想モデル及び前記下顎弓の仮想モデルと前記顔のデジタルモデルとのレジストレーションは、前記前頭マーカーの仮想モデルを、前記顔の仮想モデル上で見える前記前頭マーカーとマッチさせることを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記患者の顔のデジタルモデルはテクスチャード加工され、前記患者の顔の上でトレースされた点及び/又は解剖学的特徴が前記テクスチャード加工されたデジタルモデル上で見えるようにされ、前記上顎弓の仮想モデル及び前記下顎弓の仮想モデルと前記顔のデジタルモデルとのレジストレーションは、前記患者の顔に装備されたマーカーと同じ局在化装置により追跡されるスタイレットによって点を指し示すこと、及び、前記指し示された点及び/又は解剖学的特徴と、前記患者の顔のデジタルモデル上に見える点とをマッチさせることを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記患者の顔のデジタルモデルの取得は、前頭としっかりと一体になっている前頭マーカーを装着している前記患者において実行され、前記前頭マーカーの仮想モデルが提供され、前記患者の顔の上で事前にトレースされた点及び/又は解剖学的特徴が前記患者の顔のデジタルモデル上で見え、前記上顎弓の仮想モデル及び前記下顎弓の仮想モデルと前記顔のデジタルモデルとのレジストレーションは、前記前頭マーカーと同じ局在化装置により追跡されるスタイレットによって前記点を指し示すこと、及び、前記指し示された点と、前記患者の顔のデジタルモデル上に見える点とをマッチさせることを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記患者の顔のデジタルモデルはテクスチャード加工されておらず、前記顔のデジタルモデルの取得中に、認識可能な幾何学的形状が前記患者の顔に固定され、前記上顎弓の仮想モデル及び前記下顎弓の仮想モデルと前記顔のデジタルモデルとのレジストレーションは、前記患者の顔に装備されたマーカーと同じ局在化装置により追跡されるスタイレットによって前記幾何学的形状を指し示すこと、及び、前記指し示された幾何学的形状と、前記患者の顔のデジタルモデル上で検出可能な幾何学的形状とをマッチさせることを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人の歯列弓の仮想モデルと、この個人の顔のデジタルモデルとをレジストレーションする方法に関する。この方法の適用は、個人の下顎運動学の取得を実施する治療計画の間の美的考慮と、歯列弓の仮想モデルへのこの運動学の適用を考慮に入れている。
【背景技術】
【0002】
歯科矯正又は歯科口腔外科において、治療を計画するため及び/又はこの治療の効果を決定するために、患者の歯列弓(上顎及び下顎)の三次元(3D)仮想モデルを、この患者の下顎運動学を用いて動画化することは有用である。
【0003】
下顎運動学の記録には、磁気若しくは他の慣性型位置センサ又はカメラによって検出可能な物体を含むマーカーを患者の顔に装備すること、及び、下顎運動を行うように患者に依頼する必要がある。これらの運動の間に、物体はカメラによってリアルタイムで特定されるか、又はセンサの位置データがリアルタイムで記録される。
【0004】
下顎弓及び上顎弓の仮想3Dモデルは、一般的に、口腔内光学スキャナーを使用して、又は、歯列弓の印象若しくはこの歯列弓の物理モデルの3Dデジタル化によって得られる。従って、これらの仮想モデルは、デジタル化装置に関連する座標系において定められる。
【0005】
顔に装備されるマーカー又はセンサは、歯列弓の仮想3Dモデルの座標系とは異なる患者の座標系を定める。
【0006】
歯列弓の仮想モデルを動画化するためには、患者における記録された運動情報を歯列弓の仮想3Dモデルに転送する必要がある。これには、剛体幾何学的変換(並進及び回転)を知って、一方の座標系から他方の座標系への移動を可能にする必要がある。
【0007】
特許文献1は、個人のための歯科装置を設計する方法を記載しており、この個人における記録された下顎運動学が、個人の歯列弓の仮想モデルを動画化するために使用されている。
【0008】
第1の実施形態では、歯列弓の仮想モデルとトモデンシトメトリー画像とをレジストレーションすることが提案されている。しかし、そのような画像は、患者の顔面骨内の歯列弓の位置を可視化することを可能にするけれども、X線による患者の照射を必要とし、X線による患者の照射なしで行われることが望まれる。
【0009】
第2の実施形態では、スタイレットにより、歯列弓の少なくとも4つの決定された点を患者の口内で指し示すことによって、歯列弓の仮想モデルと下顎マーカーとをマッチさせることが提案されている。スタイレットは、カメラによって位置特定可能な物体を含み、下顎マーカーを特定し、これらの物体は、既知の幾何学的形状に従って配置されている。従って、下顎弓に取り付けられる患者の座標系に関して下顎弓の仮想モデルを局在化することが可能である。
【0010】
この指し示す技術の代替案が、顔認識技術を実施する特許文献2に記載されている。患者の上顎弓の少なくとも3本の歯が見える患者の顔の立体画像から、これらの歯が、顔認識方法によって検出され、これらの歯は、患者の三次元表面モデル上、及び上顎弓のモデル上でマッチさせられる。しかし、使用されるアルゴリズムに応じて、この顔認識技術はここでも、不正確になる恐れがある。
【0011】
患者の下顎運動学に基づく歯列弓の仮想モデルの動画は、治療の計画において咬合態様を考慮に入れることを可能にする。
【0012】
特定の臨床応用に対して、特に、治療の美的意味を制御することを視野に入れて、患者の顔の三次元モデル上で治療の効果を可視化することは有利であり得る。そのようなモデル(顔スキャン)は、典型的には、三次元で患者の顔をデジタル化することによって得られる。この場合、歯列弓の仮想モデルと患者の顔の三次元モデルとのレジストレーションの問題が提起される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2013/030511号
【特許文献2】国際公開第2016/062962号
【特許文献3】国際公開第2018/158551号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、個人の歯列弓の仮想モデルと、この個人の顔の三次元モデルとをレジストレーションするための、ロバストで、信頼性があり、且つ実施するのが簡単な方法を考えることである。X線への個人の被曝に関連するリスクを考慮すると、X線を実施しない技術(本明細書の残りの部分において「非X線撮影(non-radiographic)」と呼ばれる)を用いて、方法全体を実施できなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明は、個人の下顎弓及び上顎弓の非X線撮影の仮想モデルと、この個人の顔の非X線撮影のデジタルモデルとをレジストレーションする方法を提案し、当該方法は:
- 第1の基準系(frame of reference)を定める下顎マーカーを個人の下顎弓にしっかりと固定することと、
- 下顎弓の非X線撮影の仮想モデル及び上顎弓の非X線撮影の仮想モデルを提供することと、
- 口腔内又は口腔外のカメラによって、歯又は上記の歯列弓と一体になっている補綴装置の表面の少なくとも一部分及び上記のマーカーの少なくとも1つの剛性部分をデジタル化することであり、同じ第2の基準系において上記の下顎弓の部分及びマーカーの部分のデジタル記録を生成するようにデジタル化することと、
- 上記の下顎弓及び下顎マーカーの記録及び仮想モデルから、下顎マーカーを有する下顎マーカーのデジタルモデルと、下顎弓を有する下顎弓の仮想モデルとをマッチさせ、下顎弓の仮想モデルを第1の基準系において局在化させることと、
- 患者の顔の非X線撮影のデジタルモデルを取得することと、
- 上顎弓及び下顎弓の仮想モデルと上記の顔のデジタルモデルとをレジストレーションするように、顔のデジタルモデルを第1の基準系において局在化させることと、
を含むことを特徴とする。
【0016】
「提供する」とは、本明細書において、既存の仮想モデルを得ること、又は、代わりにそのような仮想モデルを作成することを意味すると受け取られている。
【0017】
好ましくは、当該方法は、例えば、咬頭嵌合位(a maximum intercuspal occlusion)等、決定された上記の歯列弓の咬合位置において、上顎弓の仮想モデルと下顎弓の仮想モデルとをマッチさせることをさらに含む。
【0018】
特定の実施形態において、当該方法は、患者の顔のデジタルモデルに重ね合わされた上顎弓及び下顎弓の仮想モデルを表示することをさらに含む。
【0019】
特定の実施形態では、患者の顔のデジタルモデルの取得は、前頭としっかりと一体になっている前頭マーカーを装着している患者において実行され、上記の前頭マーカーの仮想モデルが提供され、上顎弓及び下顎弓の仮想モデルと顔のデジタルモデルとのレジストレーションは、前頭マーカーの仮想モデルと、上記の顔の仮想モデル上で見える前頭マーカーとをマッチさせることを含む。
【0020】
特定の実施形態において、患者の顔のデジタルモデルはテクスチャード加工され、患者の顔の上でトレースされた点及び/又は解剖学的特徴が上記のテクスチャード加工されたデジタルモデル上で見えるようにされ、上顎弓及び下顎弓の仮想モデルと顔のデジタルモデルとのレジストレーションは、患者の顔に装備されたマーカーと同じ局在化装置により追跡されるスタイレットによって点を指し示すこと、及び、上記の点及び/又は解剖学的特徴をマッチさせることを含む。
【0021】
特定の実施形態では、患者の顔のデジタルモデルの取得は、前頭としっかりと一体になっている前頭マーカーを装着している患者において実行され、上記の前頭マーカーの仮想モデルが提供され、患者の顔の上で事前にトレースされた点及び/又は解剖学的特徴が患者の顔のデジタルモデル上で見え、上顎弓及び下顎弓の仮想モデルと顔のデジタルモデルとのレジストレーションは、前頭マーカーと同じ局在化装置により追跡されるスタイレットによって上記の点を指し示すこと、及び、上記の指し示された点と、患者の顔のデジタルモデル上に見える点とをマッチさせることを含む。
【0022】
特定の実施形態において、患者の顔のデジタルモデルはテクスチャード加工されておらず、顔のデジタルモデルの取得中に、認識可能な幾何学的形状が患者の顔に固定され、上顎弓及び下顎弓の仮想モデルと顔のデジタルモデルとのレジストレーションは、患者の顔に装備されたマーカーと同じ局在化装置により追跡されるスタイレットによって上記の幾何学的形状を指し示すこと、及び、上記の指し示された幾何学的形状と、患者の顔のデジタルモデル上で検出可能な幾何学的形状とをマッチさせることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明から明らかになる。
【
図1】局在化マーカーを備えた下顎固定装置の斜視図である。
【
図2】局在化マーカーが存在しない場合の
図1の下顎固定装置の斜視図である。
【
図3】口腔内スキャナーによる下顎弓及び下顎マーカーの一部のデジタル化の概略図である。
【
図4A】前頭マーカーの仮想モデル及び歯列弓の仮想モデルの図である。
【
図4B】
図4Aの前頭マーカーを装着した個人の顔のデジタルモデルの図である。
【
図4C】
図4Aの歯列弓の仮想モデル及び前頭マーカーの仮想モデルを、個人の顔のデジタルモデルに重ね合わせた図である。
【
図5A】歯列弓のデジタルモデルと顔のデジタルモデルとのレジストレーションの別の原理を示す図である。
【
図5B】
図5Aのレジストレーションの終わりにおける、歯列弓の仮想モデルを、個人の顔のデジタルモデルに重ね合わせた図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、一方では、歯列弓の歯の表面と、上記の歯列弓に固定されたマーカーの少なくとも一部分、又は、必要に応じて、歯列弓にマーカーを固定するための装置の一部を同時に走査するために、口腔内スキャナー(又は代替の実施形態においては口腔外カメラ)を使用し、他方では、個人の顔をデジタル化するための装置を使用することを提案する。これらの動作の結果は、口腔内スキャナーと同じ基準系における、歯列弓の少なくとも一部分及びマーカーの少なくとも一部分のデジタル記録、並びに、顔の表面のデジタル記録である。以下において詳細に記載されるように、これらの記録は、マーカーに関連する基準系によって、歯列弓の仮想モデルと患者の顔のデジタルモデルとをレジストレーションすることを可能にする。
【0025】
このレジストレーション方法は、異なる座標系で定められたモデル間の剛体変換の計算及び画像解析のためのアルゴリズムを実施するように構成されたプロセッサを含むコンピュータによって実施される。コンピュータは、プロセッサに連結され、歯列弓の仮想モデルだけでなく、以下に記載される方法で実施される他の画像も表示するように構成されたスクリーンを含む。
【0026】
歯列弓の仮想モデル
歯列弓の仮想モデルは、任意の適切な非X線撮影の技術によって得ることができる。最も広く使用されている技術の中でも、非限定的な様式で、実験室のスキャナーによる患者の歯列弓の印象又は物理モデル(例えば、プラスター又は樹脂で作製されるもの等)のデジタル化、又は代わりに、口腔内スキャナーによる患者の口内の直接的なデジタル化を引用することができる。
【0027】
歯列弓が完全に又は部分的に歯がない状態である場合、咬合モデルとも呼ばれる補綴装置を歯列弓に固定することが知られており、これは、補綴支持面を覆うベースと、歯及び歯槽骨に置き換わるビーズとを含む。上記の装置の仮想モデルは、コンピュータ支援設計(CAD)によって作成されたその計画から得られる。この場合、歯列弓の仮想モデルは、上記の装置が提供された歯列弓の仮想モデルである。
【0028】
使用される技術が何であれ、デジタル化は、個別に撮影される歯列弓ごとに、咬合状態の2つの歯列弓に対して実行される。この咬合状態では、2つの歯列弓が同じ基準系で走査され、これは、2つの歯列弓の仮想モデル間の関係を確立することを可能にする。
【0029】
これらの仮想モデルの作成は、本発明によるレジストレーション方法の実施前に、又はそれに付随して実行されてもよい。
【0030】
マーカー
上顎弓に対する下顎弓の動きを追跡するために、患者には少なくとも、患者の顔に取り付けられる座標系を定める下顎マーカーが装備される。
【0031】
一実施形態によると、患者には、上顎マーカーも装備される。上顎マーカーの使用に対する代替の様式では、患者の顔自体を「マーカー」として使用することができ;顔認識アルゴリズムによって、顔の上部の特徴であるいくつかの要素をスキャナーによりリアルタイムで追跡することが可能であり、これは、上顎弓のモデルに関連することになる。顔の上部は、実際には、マーカーそのものを必要としないほど十分に変形不能であると考えられている。
【0032】
一実施形態によると、各マーカーは、決定された幾何学的形状に従って配置されたいくつかの反射チップを含む。各マーカーは、スキャナーによって追跡され、チップの位置を特定することによって、空間内でマーカーを局在化させることを可能にしている。
【0033】
他の実施形態によると、マーカーは、既知の幾何学的形状の2色パターンを有するチップ、ダイオード、慣性センサ等を含んでもよく、これらも、対応する局在化装置によって空間内で各マーカーを局在化させることを可能にする。当業者は、市場に存在する技術の中から適切な局在化装置及び1つ又は複数の関連するマーカーを選ぶことができる。
【0034】
下顎マーカー
下顎マーカーは、患者の下顎にしっかりと取り付けられ、すなわち、患者によって下顎運動が行われる間に下顎に対して動かないように固定される。下顎マーカーは、下顎弓に直接取り付けられてもよく(マーカーは次に、下顎弓に固定するための手段を組み込む)、又は、一体となる固定装置によって取り付けられてもよい。
【0035】
特許文献3は、本発明において使用され得る下顎マーカーを記載している。
【0036】
図1に例示されている例において、マーカー2は、赤外線カメラによって検出可能な4つの反射チップ20を含み、そのサイズ及び相対位置は既知である。チップの形状は限定的ではない。従って、上記のチップは、例えばビーズ等、任意の他の適切な形状を有する反射要素によって置き換えることができる。或いは、反射チップは、既知の幾何学的形状の2色パターンから形成されたターゲットによって置き換えることができる。他の実施形態によると、反射チップは、ダイオード、電磁コイル、又は慣性センサ(IMU、慣性計測装置)、加速度計、ジャイロスコープ等の任意の他の適切な局在化手段によって置き換えることができる。
【0037】
マーカー2は、取り外し可能に取り付けられる固定装置1によって下顎弓に取り付けられる。装置1は:
- 下顎(図示せず)の歯の外面に対して維持されるよう意図された口腔内部分10、
- マーカー2を固定するための要素を含む(
図2においてより明確に見える)口腔外部分12、
- 口腔内部分10を口腔外部分12に接続することを可能にする連結部分11、
を含む。
【0038】
特に有利な様式では、3つの部分10、11、12のアセンブリは、生体適合性の熱可塑性材料の成形によって、1つの部品から形成される。
【0039】
口腔内部分10は、略U字形状を有する。
【0040】
口腔内部分の材料及び厚さは、その平面内でUの脚部を離れるように動かすか又は近づける方向においてある程度の柔軟性を有するように選ばれる。従って、2つの脚部100は、歯又は歯肉をこすることなく個人の口内に挿入され、次に、正しく位置決めされた後に解放されるように、それらの最初の位置に対して離れるように動かすことができる。
【0041】
任意であるが有利な実施形態によると、Uの脚部の端部は、1つ以上の取り外し可能なセグメント102を画定する1つ以上のノッチ101の存在によって破壊可能にされる。従って、個人の顎の長さに適した脚部100の長さが得られるまで、上記の取り外し可能なセグメントのうち1つ以上を除去することができる。
【0042】
有利には、患者の顎における口腔内部分10の機械的強度は、歯の表面と口腔内部分の下面との間に蓄積された生体適合性接着剤(図示せず)によって少なくとも部分的に保証される。そのような生体適合性接着剤は、歯学分野において頻繁に使用されている。
【0043】
さらに、口腔内部分の下面103、すなわち、歯と接触するように意図された面は、ある程度の粗さを有してもよい。例えば、3Dプリント(SLS(粉末焼結積層造形)技術)から得られる部品は、適切な粗さを有している。成形から得られる部品の場合、射出成形型は、例えば、研磨又は化学エッチング等の処理を受け、その上に滑らかではない表面が与えられ得る。この粗さは、内面103に対する接着剤の機械的強度を改善することを可能にする。
【0044】
さらに、口腔内部分の内面103には、ノッチ104が提供されてもよい。これらのノッチは、装置が個人の口内で所定の位置にあるときに、歯の外面の浮き出た部分に面するように配置される。このように、ノッチ104は、特に前後方向において、口腔内部分をブロックする機能を果たし、これは、口内で装置を安定化させる。
【0045】
特に有利な様式において、口腔内部分の高さhは、装置が個人の口内の所定の位置にあるときに下顎の歯の上面によって形成される平面を越えて延びないように、十分に小さく(典型的には、歯の平均高さよりも小さく)あるように選ばれる。例えば、高さhは、およそ5mmである。
【0046】
このように、口腔内部分は、下顎運動(歯の食いしばり、咀嚼運動等)を妨害しない。
【0047】
口腔外部分12は、それに関する限り、マーカーのための固定要素120を有する。
【0048】
図1及び2に例示されている例において、マーカー2は、口腔外部分12上のスナップロックによって固定されている。この目的のために、下顎マーカー2は、その内面上(すなわち、反射チップの反対側)に、(個人の所定の位置にある場合のマーカーの位置を考慮して)互いの上に配置された2つのラグを含む。固定要素120は、弾性舌部123によって分離された2つのハウジング121、122を含む。固定装置1上でマーカー2を所定の位置に置くために、上側のラグが最初にハウジングに係合し、次に下側のラグがハウジング122に係合し、この係合によって、舌部123が後方(すなわち、反射チップの反対側)にわずかに変形する。このように、マーカーは、ハウジング121、122におけるラグの係合によって、及び変形された舌部123により加えられる圧力によって、口腔外部分12上で維持される。
【0049】
固定装置上のマーカー2の組み立ては、固定装置が患者の口内の所定の位置に置かれ、上述の生体適合性接着剤を使用して固定されると、有利に実行される。従って、マーカーは、この所定の位置に置く動作を妨害しない。口腔外部分上の所定の位置にマーカーを置くのに必要な力は非常に小さく、下顎弓に対する固定装置の機械的強度に影響を及ぼさない。
【0050】
口腔外部分は、変形することなく上記のマーカーの重量を支持するのに十分剛性であるように設計される。
【0051】
より好ましくない実施形態によると、マーカーは、口腔外部分の不可欠な部分を形成することができる。
【0052】
装置1が個人の口内の所定の位置にある場合、口腔外部分12は、有利に、個人の唇の平面の下に位置を定める(マーカー20は、それに関する限り、この平面を越えて延びることができる)。
【0053】
装置の安定性の理由から、上記の装置は、個人の前後面に対して実質的に対称である。
【0054】
口腔内部分10と口腔外部分12との間の連結部分11は、口腔内部分10の中央領域から延びるブリッジフィッティングのようなものである。このブリッジフィッティングは、上顎に向かって延びる第1の部分110と、唇を通って延びる第2の部分111と、口腔外部分12に接続するための第3の部分112とを有する。連結部分の形状及び寸法は、装置が個人の口内の所定の位置にあるときに、第2の部分111が、唇に圧力を加えることなく、唇の平面のレベルまで延びるように選ばれる。従って、装置1は、嚥下するときでさえも不動のままである。
【0055】
さらに、連結部分11は、マーカー20が口腔外部分12に固定されたときに変形しないように十分剛性であるように設計されている。
【0056】
上顎マーカー
上顎マーカーは、患者の上顎に、又は上顎としっかりと一体となる顔の別の要素、例えば前頭に取り付けられる。この場合、前頭マーカーという用語が使用される。
【0057】
上顎又は前頭マーカーは、好ましくは、下顎マーカーと同じ技術に基づいている。例えば、上顎マーカーは、決定されたパターンに従って配置されたいくつかの反射チップを含む。
【0058】
一実施形態によると、前頭マーカーは、患者の前頭を取り囲むように意図されたフレームの形態であり、耳及び鼻梁上での支持に適しており、これを安定化させている。
【0059】
下顎及び上顎マーカー(及び、必要に応じて、それらの固定装置が別個の構成要素の形態である場合にはそれらの固定装置)の仮想モデルは、一般的に、コンピュータ支援設計(CAD)によって生成されたそれらの計画から得られる。
【0060】
上述のように、上顎又は前頭マーカーを使用することなく、顔認識アルゴリズムを使用して患者の顔の上部の動きを追跡することが可能である。
【0061】
歯列弓の仮想モデルと患者の基準系とのレジストレーション
レジストレーションには、(口腔内スキャナーとしても知られている)口腔内印象カメラ、又は、点群若しくはグリッドを形成するように一方又は両方の歯列弓(及び/又は、必要に応じて、歯列弓にしっかりと連結された補綴装置)の表面をデジタル化するのに適した任意の他の非X線撮影の口腔内システムの使用が含まれる。
【0062】
しかし、施術者が対応する歯列弓の仮想モデルを作成する目的で歯の表面のみを走査するそのような口腔内装置の通常の使用と比較して、本発明は、下顎弓にしっかりと連結された下顎マーカーの少なくとも一部分を走査することも含む。
【0063】
図3は、
図1及び2を参照して記載されたもの等、下顎マーカー2及びマーカーの下顎固定装置1を有する、この動作の概略図である。口腔内印象カメラCが、患者の口内に導入され、下顎弓には下顎マーカー2が予め装備されている。
【0064】
施術者は、カメラCを用いて、下顎弓の歯の表面、及び、必要に応じて、上述の補綴装置を、例えば、矢印S1によって概略的に示されている動きに従って走査する。
【0065】
施術者は、矢印S2によって概略的に示されている連結部分11のカメラCを用いた走査も実行する。走査されるゾーンは、点線によって囲まれている。
【0066】
このように、デジタル記録は、同じ基準系において、歯及び/又は歯列弓と一体となる補綴装置の表面の少なくとも一部分だけでなく、連結部分11も含む点群又はグリッドの形態で得られる。
【0067】
特に、固定装置のCADモデルによって、この連結部分11の幾何学的形状を知ると、マーカーを、口腔内走査上と仮想モデル上の連結部分11の形状の相関によって、その仮想モデルとマッチさせることができる。
【0068】
同様に、歯列弓を、口腔内走査上と仮想モデル上の歯の表面の相関によって、その仮想モデルとマッチさせることができる。補綴装置が歯列弓と一体になっている場合、上記の装置の仮想モデルを知ることにより、歯のない歯肉の位置を決定することが可能になる。
【0069】
下顎弓及び下顎マーカー(又は少なくとも連結部分11)が、口腔内スキャナーによって同じ基準系において走査された後、下顎弓の仮想モデルは、下顎弓に取り付けられた患者の座標系を定める下顎マーカーの座標系において局在化され得る。
【0070】
マーカーの完全なデジタル化は、十分に変形不能な部分がデジタル化される瞬間から必要ではなく、この部分の仮想モデルと相関させることができる。デジタル化された部分が特定の幾何学的特徴を有する場合、相関はいっそうロバストである。この点において、口腔内スキャナーによって走査される部分が十分に剛性である瞬間から、マーカーが、固定装置と共に1つの部品で作られているかどうかは、重要ではない。延長線上で考えると、本明細書において、「マーカーの少なくとも1つの剛性部分のデジタル化」という表現は、マーカーがしっかりと且つ再現可能な様式で取り付けられる固定装置の剛性部分のデジタル化をカバーしている。
【0071】
下顎マーカーが下顎固定装置と共に1つの部品で形成される場合、それは、患者の形態に適応するように変形可能な口腔内部分と、反射チップ又は他の検出可能な物体を備えた変形不能な部分とを含む。従って、口腔内走査は、変形不能な部分のうち十分な部分を懸念しなければならない。一方で、口腔内部分は、変形可能でありすぎるため、原則としてレジストレーションを実行するには十分ではない。
【0072】
特定の実施形態によると、下顎弓の仮想モデルの作成は、上記の口腔内走査動作の間に実行することができ;従って、下顎弓の仮想モデル及びレジストレーションに必要な情報は、単一のステップで得られる。しかし、下顎マーカーの存在は、歯の表面の一部をマスクし、従って、下顎弓の仮想モデルの精度を低下させやすい。
【0073】
口腔内スキャナーの使用の代替方法として、歯の一部の表面及び下顎マーカーの十分な部分のデジタル化を、非X線撮影の口腔外カメラを使用して実行することができる。そのような口腔外カメラは、同じ基準系において、下顎マーカーの一般的な形状及び下顎弓の可視の歯の三次元取得を実行する。次に、仮想モデル、より正確には下顎マーカー及び下顎弓の仮想モデルを、上記と同じ原理に従ってマッチさせることができる。
【0074】
同じ基準系において、下顎マーカーの一部及び下顎弓の一部の三次元形状を同時に取得する別の技術は、写真測量である。それ自体既知の様式において、この非X線撮影の技術は、歯及びマーカーが見える異なる角度で写真を撮影することから成る。この一連の写真から、マーカーの幾何学的形状は下顎弓のそれと同様に認識される。
【0075】
同じレジストレーション方法を、上顎又は前頭マーカーの座標系において上顎弓の仮想モデルを局在化するために適用することができる。上顎マーカー(例えば、略U字形状を有する口腔内部分を含む固定装置を有した下顎マーカーと同じタイプのもの)の場合、口腔内スキャナーが、上顎弓の歯(及び/又は、先に記載したもの等の補綴装置)の表面の少なくとも一部分及び下顎マーカー又はその固定装置の十分な剛性部分を同時にデジタル化するために使用される。前頭マーカーの場合、口腔外カメラが、上顎弓の歯(及び/又は、先に記載したもの等の補綴装置)の表面の少なくとも一部分及び前頭マーカーを同時にデジタル化するために使用される。
【0076】
別の実施形態によると、マーカーは、患者の前頭にしっかりと連結され、従って、上顎弓の座標系を定める。既知の歯列弓の咬合位置(一般的に、歯列弓の仮想モデルの作成中に使用されるものである咬頭嵌合位(MIO))の状態に患者をすることによって、上顎弓のモデルは、下顎弓の反対になる。この状況では、下顎マーカーに対する上顎マーカーの位置が、口腔外カメラにより行われた記録によって分かる。従って、上顎弓のモデルは上顎マーカーに関連付けられ得る。次に、患者の点、軸、及び基準面の全てが、歯列弓の仮想モデルに関連付けられる。
【0077】
患者の顔のデジタル化
患者の顔の三次元デジタルモデルは、典型的には、三次元で患者の顔をデジタル化することによって得られる。使用されるデジタル化技術によると、このモデルは、顔のテクスチャ(特に色)を含んでもよく又は含んでなくてもよい。
【0078】
このデジタル化は、以下の技術:立体映像、写真測量、RGB(赤、緑、青)色検出センサに関連するか又は関連しないレーザースキャン、ストラクチャードライト、及び/又はタイムオブフライト(TOF)測定によって実行することができる。
【0079】
このデジタル化の間に、患者には、上述のもの等、上顎又は前頭マーカーが装備されてもよい。
【0080】
歯列弓の仮想モデルと患者の顔のデジタルモデルとのレジストレーション
歯列弓の仮想モデルと患者の顔のデジタルモデルとのレジストレーションは、上述の患者の基準系を実施する。
【0081】
図4A乃至4Cにおいて例示されている実施形態によると、上顎弓のマーカーは、患者の顔のデジタル化の間、患者の前頭に配置される。この実施形態において、このマーカー3は、既知の幾何学的形状に従って配置された反射チップ30を含む(
図4Aを参照)が、下顎マーカーに対して上述したように、他の局在化技術を使用することもできる。マーカー3の仮想モデルは、例えば、そのCAD計画によって得られる。
【0082】
歯列弓の仮想モデルMは、さらに、上述の技術の1つによって得られる。
【0083】
図4Bにおいて例示されているように、マーカー3は、患者の顔のデジタルモデル上で位置特定可能である。従って、この患者の顔のモデルとマーカー3の仮想モデルとをマッチさせることが可能である。
【0084】
図4Cにおいて例示されているように、歯列弓の仮想モデルMを、先に記載した方法のうち1つによって前頭マーカーの仮想モデルと予めマッチさせた後、上記の歯列弓の仮想モデルを患者の顔の3Dモデルと相関させ、患者の顔のモデルに重ね合わされた上記のモデルMを表示することが可能である。
【0085】
任意的に、患者の顔のデジタルモデルは、患者が前頭マーカーを装着していない間に生成されてもよく、2つのモデルのグリッドの形状を認識することによって、前頭マーカーを装着している患者の顔のデジタルモデルとマッチさせられる。その後、歯列弓の仮想モデルを、前頭マーカーのない患者の顔のモデル上に表示することができる。
【0086】
このように、患者の口の位置に関係なく、歯列弓を可視化することが可能である。特に、このマッチングは、患者の顔の画像上で歯が見えない場合でさえも実行することができる。さらに、この解決法は、微笑しているときでさえも歯の形状を識別することを可能にしない特定の顔のデジタルモデルの解像度の欠陥をオフセットすることを可能にし、従って、歯列弓の仮想モデルと顔のデジタルモデルとの相関を可能にする。
【0087】
テクスチャード加工された顔のデジタルモデルを用いて実施することができる一実施形態によると、前頭マーカーの又はそれに関連した使用の代替方法として、レジストレーションを、患者の顔の上でトレースされた点、又はステッカーの形で顔に配置された点、及び/又はビューティースポット、瘢痕等の顔の解剖学的特徴を使用して行うことができる。これらの点又は特徴は、顔のデジタルモデルのテクスチャにおいても見える。次に、施術者は、本明細書の導入部で記載したもの等のスタイレットを使用し、スタイレットを使用して、異なる識別された点又は特徴を指し示す。スタイレットによって指し示すことの各動作は、球の形で空間における対応する点を生成する。スタイレットが、前頭マーカーと同時にカメラにより特定されることによって、球の位置が、前頭マーカーの座標系において決定される。
【0088】
任意的に、顔のモデルと歯列弓の仮想モデルとのレジストレーションは、顔のモデル上の前頭マーカーを特定することなく、顔の点及び解剖学的特徴を使用して、独自に実行することができる。この場合、患者には、先に記載したように、下顎弓と下顎マーカーとのレジストレーションの動作のために、下顎マーカーが装備される。次に、患者の点及び/又は解剖学的特徴を指し示すことが、先に説明したようにスタイレットを使用して実行される。この指し示しによって、スタイレットの指し示しの各動作により生成された球と、下顎及び上顎マーカーに関連する座標系とをマッチさせることが可能になる。この動作の前後に、患者の顔のデジタル化が、さらに、テクスチャード加工された顔のデジタルモデルを生成するように、患者上のいかなるマーカーもなしで実行される。上記のテクスチャード加工されたデジタルモデル上で見える点又は解剖学的特徴は、スタイレットを使用して指し示され、さらに、下顎弓及び上顎弓の仮想モデルと相関され、従って、下顎弓及び上顎弓の仮想モデルと顔のデジタルモデルとをマッチさせることが可能である。
【0089】
この実施形態は、
図5A及び5Bにおいて例示されている。
【0090】
図5Aの上部において例示されているように、患者には、下顎運動学の取得のための下顎マーカー及び前頭マーカー3が装備される。
【0091】
患者が下顎マーカー又は前頭マーカーを装着していない間、患者の顔のデジタルモデル(患者の左側及び右側を
図5Aにおいて見ることができる)が得られる。しかし、それぞれ2つの顆状突起、鼻の先端、及び、鼻底と上唇との間隔等、顔の特徴である解剖学的な点のレベルに位置を定める色の点P1~P4が、デジタルモデルにおいてカラーで見えている。
【0092】
モデルのマッチングは、患者に下顎マーカー及び前頭マーカーが装備されている場合に、スタイレット4を用いてこれらの同じ点P1~P4を指し示すことによって可能になっている。
【0093】
これらの点は、歯列弓の仮想モデル及び顔のデジタルモデルに共通する患者の基準系RPを定める。
【0094】
図5Bは、レジストレーションの結果を例示しており、患者の顔のデジタルモデル上への歯列弓の仮想モデルの重ね合わせを可能にしている。
【0095】
顔のデジタルモデルがテクスチャード加工されていない場合、顔のデジタル化の前に、画像処理アルゴリズムによって認識可能な幾何学的形状を患者の顔に固定することが可能である。有利に、これらの幾何学的形状は、例えば、スタイレットの先端を受けるのに適した寸法の中空等、スタイレットに適した場所を含む。
【0096】
次に、モデルのマッチングが、患者に下顎マーカー及び前頭マーカーが装備されている場合に、スタイレットを用いてこれらの場所を指し示すことによって可能になる。
【0097】
顔のデジタルモデル上で前頭マーカーを特定することと、点又は解剖学的特徴を指し示すことの組み合わせは、歯列弓の仮想モデルと顔のデジタルモデルとのレジストレーション方法のロバスト性を高めることを可能にする。特に、顔は歯列弓より剛性が低く、スタイレットの適用中の筋肉の可動性又は皮膚の沈下のために、マーカーを有する顔のデジタルモデルと、マーカーを有さない顔のデジタルモデルとの間に差が生じ得る。
【0098】
当然のことながら、添付の図上のマーカーの表示は、例示目的のために独自に与えられ、当業者は、上記のレジストレーション方法に適した剛性部分を有する任意の他の形状のマーカーを選ぶことができるであろう。
【国際調査報告】