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特表2022-524540抗酸化活性および神経保護活性を有する大環状化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-06
(54)【発明の名称】抗酸化活性および神経保護活性を有する大環状化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/08 20060101AFI20220425BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220425BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220425BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20220425BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220425BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220425BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220425BHJP
   C07D 491/18 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
C07D491/08
A61P25/00
A61P43/00
A61K31/407
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/28
C07D491/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021554649
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2020056665
(87)【国際公開番号】W WO2020182947
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】19382179.0
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502001961
【氏名又は名称】インスティトゥート・バイオマール・ソシエダード・アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(74)【代理人】
【識別番号】100217294
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 尚和
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ、フェルナンデス、メダルデ
(72)【発明者】
【氏名】マリア、デ、ロス、アンヘレス、ビヌエサ、ナバロ
(72)【発明者】
【氏名】ホセ、マリア、サンチェス、ロペス
(72)【発明者】
【氏名】フアン、ペドロ、ボラーニョス、エルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】マリア、デ、ロス、アンヘレス、アルメイダ、パラ
(72)【発明者】
【氏名】エミリオ、フィルナンデス、サンチェス
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA03
4C050BB04
4C050CC12
4C050DD05
4C050EE01
4C050FF02
4C050GG03
4C050HH01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA22
4C086ZC01
(57)【要約】
酸化ストレスと関連する疾患の治療における使用のための、以下の一般式:
【化1】
(式中、
波線の結合「~」は、二重結合またはエポキシド
【化2】
のいずれかである。)
の化合物またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性疾患、脳卒中、および神経筋障害を伴うミトコンドリア症から選択される、酸化ストレスと関連する疾患の治療における使用のための、下記式:
【化1】
(式中、
波線の結合「~」は、二重結合またはエポキシド
【化2】
のいずれかであり;
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素および置換または無置換C-Cアルキルからなる群から選択され;
は、水素、置換もしくは無置換C-Cアルキル、またはハロゲンからなる群から選択され;
Xは、式(III)~(XII)で表される基を表し、
【化3】
ここで、
破線の結合は、存在する場合に式(II)の化合物におけるXと(B)との間の二重結合である任意選択の二重結合を表し;
は、水素、置換または無置換アシル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルケニル、置換または無置換アルキニル、置換または無置換アリール、置換または無置換アラルキル、-CONH、アルカリ金属、および糖からなる群から選択され;かつ
は、水素、置換または無置換C-Cアルキル、置換または無置換C-Cアルキニル、ニトリル、-CH-ニトリルおよび-CH-CO-CHからなる群から選択される。)
の化合物またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体。
【請求項2】
前記疾患が、神経変性疾患、および神経筋障害を伴うミトコンドリア症から選択される、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
前記神経変性疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、老人性認知症、ハンチントン病、多発性硬化症および筋萎縮性側索硬化症から選択される、請求項2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
、R、R、RおよびRが、それぞれ独立に、水素およびメチルからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
が、水素、置換または無置換C-C12アシル、置換または無置換C-Cアルキル、置換または無置換C-Cアルケニル、置換または無置換C-Cアルキニル、置換または無置換C-C10アリール、置換または無置換(C-C10)アリール(C-C)アルキル、-CONH、アルカリ金属、および糖からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
が、水素、置換または無置換アセチル、置換または無置換メチル、エチル、フェニルおよび置換または無置換ベンジルからなる群から選択される、請求項5に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
式(I)または(II)の化合物が、
【化4】
またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
下記式:
【化5】
(式中、
波線の結合「~」は、二重結合またはエポキシド
【化6】
のいずれかであり;
Xは、下記式で表される基を表し、
【化7】
ここで、
破線の結合は、存在する場合に式(II)の化合物におけるXと(B)との間の二重結合である任意選択の二重結合を表し;
ここで、Rは、水素、置換または無置換アシル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルケニル、置換または無置換アルキニル、置換または無置換アリール、置換または無置換アラルキル、-CONH、アルカリ金属、および糖からなる群から選択され;
ここで、Rは、水素、置換または無置換C-Cアルキル、置換または無置換C-Cアルキニル、ニトリル、-CH-ニトリルおよび-CH-CO-CHからなる群から選択される。)
の化合物またはその薬学上許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物もしくは立体異性体
(ただし、下記式の化合物:
【化8】
は除く)。
【請求項9】
が、水素、置換または無置換C-C12アシル、置換または無置換C-Cアルキル、置換または無置換C-Cアルケニル、置換または無置換C-Cアルキニル、置換または無置換C-C10アリール、置換または無置換(C-C10)アリール(C-C)アルキル、-CONH、アルカリ金属、および糖からなる群から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
が、水素、置換または無置換C-Cアルキル、置換または無置換C-Cアルキニルおよび-CH-ニトリルからなる群から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
【化9】
またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体から選択される、請求項8~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
スペインのバレンシア大学におけるColeccion Espanola de Cultivos Tipoから受託番号CECT20769の下で入手可能なHT-09B-VENT-WQ002株を水性栄養培地中で培養すること、得られた化合物を培養ブロスから単離および精製すること、ならびに場合により、この化合物を修飾することを含んでなり、それにより請求項1~11のいずれかに定義される化合物を得る、請求項1~11のいずれか一項に定義される化合物を調製する方法。
【請求項13】
前記水性栄養培地が、pH5~7の間のpH値のポテトデキストロース寒天培養物を含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項8~11のいずれかに定義される化合物またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体もしくは立体異性体、および薬学上許容可能な担体を含んでなる、医薬組成物。
【請求項15】
医薬としての使用のための、請求項8~11のいずれか一項に定義される化合物またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大環状化合物、それらを含有する医薬組成物、ならびに抗酸化製品および神経保護製品としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
生検または剖検の病理組織学的検査は、かなりの数のヒト慢性疾患および急性疾患が、酸化ストレスの生化学的徴候と関連することを明らかにしている。酸化ストレスは、まとめてRONSと呼ばれる活性酸素窒素種の内因性形成を細胞が効率的に排除できない異常な状態を定義する(Bolanos JP, et al. Adv. Drug Deliv. Rev. 61:1299-1315, 2009)。RONS(とりわけ、以下の種:過酸化水素すなわちH、スーパーオキシドアニオンすなわちO ・-、一酸化窒素すなわちNO、ペルオキシニトライトアニオンすなわちONOO、ヒドロキシルラジカルすなわちOHのうち1以上を含む)は、重要な細胞シグナル伝達機能を果たす生理的に合成された分子であるが、RONSは、本質的に不安定であり、それら自身、酸素、または細胞構成要素、例えば、脂質、核酸もしくはタンパク質との化学反応により急速に分解する。さらに、RONSの分解は、主に、一般に抗酸化酵素と呼ばれる特異的酵素の作用により、実際に生じる。これらには、いくつかのタンパク質のファミリーが含まれ、組織および細胞において遍在的に分布するグルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオンレダクターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、ペルオキシレドキシン、チオレドキシンなどが挙げられる。これらの抗酸化酵素のいくつかは、完全に機能的である補因子を必要とし、そのうち最も重要なものは、グルタチオンおよびNADPHである。これらのうち、グルタチオンは、RONSと直接反応することもでき、それゆえにそれらの除去に寄与することから、抗酸化剤としてもみなされるが、グルタチオンのこのスカベンジング効果の全体的な寄与は最小限である。さらに、これらの補因子の生合成または再生を担う酵素も抗酸化酵素とみなされ、グルタミン酸システインリガーゼ(グルタチオン生合成における律速段階を触媒する酵素)、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(その酸化型であるNADPからNADPHを再生するペントースリン酸経路の第1の律速酵素)が挙げられる。
【0003】
RONSの形成は遍在的に生じるが、主要源は、ミトコンドリア呼吸鎖の複合体Iおよび複合体III(O ・-を形成する)、形質膜結合NADPHオキシダーゼ(O ・-を形成する)、一酸化窒素合成酵素(NOを形成する)、スーパーオキシドジスムターゼ(O ・-からHを形成する)、ならびにOHを形成する陽イオン(銅または鉄)とのO ・-の化学反応である。ミトコンドリア複合体IによるRONSの形成は、ロテノンの作用により強く刺激され得る。細胞は、通常、RONSの蓄積を防止し、したがって、それらの潜在的に細胞を損傷させる作用を回避するようなバランスのとれた様式で、RONSを連続的に産生および分解している。しかしながら、過剰なRONS形成または障害された抗酸化剤媒介RONS排除のいずれかに至る特定の病態生理学的状況下では、酸化ストレスが生じる。細胞の核酸、脂質およびタンパク質に対する全体的かつ無差別の損傷が原因で、酸化ストレスは、細胞傷害性、組織および器官の機能不全ならびに最終的に死を引き起こす。この酸化ストレスと関連する多数のヒト疾患が存在し、神経変性疾患、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、老人性認知症、ハンチントン病、多発性硬化症または筋萎縮性側索硬化症、脳卒中および神経筋障害を伴うミトコンドリア症が挙げられる。
【0004】
細胞RONS代謝(すなわち、RONSの形成および除去)ならびにヒト疾患とのその非常に重要な関連性における深い知識にもかかわらず、現在までのところ、臨床試験において有効である(すなわち、保護的または修復的である)と証明されている抗酸化剤の薬理学的戦略は存在しない(Kamat CD, et all. J. Alzheimers Dis 15:473-493, 2008)。この文脈において、現在までに使用された提案された薬理学的戦略は、薬剤がRONSをスカベンジする、すなわち、直接反応により除去および不活性化し、それゆえに、理論上は、酸化ストレスの防止および/または遮断に寄与する能力に基づいている。理解しがたいことであるが、酸化ストレスと関連する特定のヒト疾患動物モデル(齧歯類)において実施された試験は、いくつかの抗酸化剤による薬理学的戦略で非常に有望な結果をもたらしているが、それはその後に臨床試験において失敗した。この矛盾の理由は不明である。
【0005】
したがって、抗酸化特性および神経保護特性を有する小分子の設計および開発は、新規の治療剤の開発にとって魅力的なアプローチである。
【0006】
ピロシジンA、BおよびCが、抗菌性、細胞傷害性およびアポトーシス誘導物質化合物として開示されている(Wicklow DT, et al., Phytopathology, 99: 109-15, 2009; Haiyin HH, et al., Tetrahedron Lett., 43: 1633-6, 2002; Wicklow DT, et al., Mycol. Res. 109: 610-8, 2005; Yoshihito S et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 18: 6050-6053, 2008; Ear A. et al., Organic & biomolecular chemistry 13.12: 3662-3666, 2015; US7129266B2; Casella, Thiago M., et al. Phytochemistry 96: 370-377, 2013)。
【化1】
【0007】
ヒルステロンA~Eが、結核菌に対する抗細菌性化合物として開示されている(Masahiko I, et all., Tetrahedron 61: 5577-83, 2005; US20060122252)。
【化2】
【0008】
化合物GKK1032A1およびA2が、抗菌性および抗腫瘍性化合物として開示されている(JP2001247574)。GKK1032が、抗菌性化合物として開示されている(Pastre R et al. Quimica Nova, 30: 1867-71, 2007)。GKK1032Cが、抗菌性化合物として開示されている(Qi Xin et al., The Journal of Antibiotics, 72:237-240, 2019)。
【化3】
【発明の概要】
【0009】
本発明は、酸化ストレスと関連する疾患の治療における使用のための、以下の一般式:
【化4】
(式中、
波線の結合「~」は、二重結合またはエポキシド
【化5】
のいずれかであり;
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素および置換または無置換C-Cアルキルからなる群から選択され;
は、水素、置換もしくは無置換C-Cアルキル、またはハロゲンからなる群から選択され;
Xは、式(III)~(XII)で表される基を表し、
【化6】
ここで、
破線の結合は、存在する場合に式(II)の化合物におけるXと(B)との間の二重結合である任意選択の二重結合を表し;
は、水素、置換または無置換アシル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルケニル、置換または無置換アルキニル、置換または無置換アリール、置換または無置換アラルキル、-CONH、アルカリ金属、および糖からなる群から選択され;かつ
は、水素、置換または無置換C-Cアルキル、置換または無置換C-Cアルキニル、ニトリル、-CH-ニトリルおよび-CH-CO-CHからなる群から選択される。)
の化合物またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体の使用を対象とする。
【0010】
別の側面において、本発明はまた、酸化ストレスと関連する疾患の治療のための薬剤としての使用のための、一般式(I)または(II)の化合物、その薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、立体異性体、または混合物を対象とする。
【0011】
別の側面において、本発明はまた、一般式(Ia)もしくは(IIa)の化合物またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体:
【化7】
(式中、
波線の結合「~」は、二重結合またはエポキシド
【化8】
のいずれかであり;
Xは、下記式で表される基を表し、
【化9】
ここで、
破線の結合は、存在する場合に式(II)の化合物におけるXと(B)との間の二重結合である任意選択の二重結合を表し;
ここで、Rは、水素、置換または無置換アシル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルケニル、置換または無置換アルキニル、置換または無置換アリール、置換または無置換アラルキル、-CONH、アルカリ金属、および糖からなる群から選択され;
ここで、Rは、水素、置換または無置換C-Cアルキル、置換または無置換C-Cアルキニル、ニトリル、-CH-ニトリルおよび-CH-CO-CHからなる群から選択される。)
またはその薬学上許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物もしくは立体異性体を対象とする
(ただし、下記式の化合物:
【化10】
は除く)。
【0012】
別の側面において、本発明はまた、薬剤としての使用のための、一般式(Ia)または(IIa)の化合物、その薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、立体異性体、または混合物を対象とする。
【0013】
別の側面において、本発明はまた、薬剤の調製における、一般式(Ia)または(IIa)の化合物、その薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、立体異性体または混合物の使用を対象とする。
【0014】
本発明の化合物で治療され得る疾患のいくつかは、限定されない様式で、神経変性疾患、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、老人性認知症、ハンチントン病、多発性硬化症または筋萎縮性側索硬化症;脳卒中;および神経筋障害を伴うミトコンドリア症である。
【0015】
本発明の他の複数の側面は、治療の方法、およびこれらの方法における使用のための化合物である。
【0016】
したがって、本発明は、酸化ストレスと関連する疾患を治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に、治療上有効な量の上記で定義される一般式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体を投与することを含んでなる方法をさらに提供する。好ましくは、このような治療を必要とする患者は、任意の哺乳動物、特にヒトであり得る。
【0017】
本発明はまた、一般式(Ia)または(IIa)の化合物を、それらを産生することができる微生物の株から得ることに関する。
【0018】
好ましい方法は、制御された液内好気性条件下で、同化可能な炭素源および窒素源ならびに塩を含有する水性栄養培地中で、一般式(Ia)または(IIa)の化合物を産生することができる微生物の株を培養し、次いで、培養ブロスから本発明に係る天然化合物を回収および精製する工程、または当業者に公知の標準的な有機合成反応を使用して培養ブロスを処理することにより、対応する誘導体を得、次いで、これらの誘導体を反応粗物から回収および精製する工程を含んでなる。
【0019】
本発明はまた、一般式(Ia)または(IIa)の化合物を、それらを産生することができる微生物の株から単離された天然化合物から合成することにより得ることに関する。
【0020】
一般式(Ia)または(IIa)の化合物は、従来の手順を使用して、例えば、当業者に公知の標準的な有機合成反応を使用して、市販の出発材料から合成してもよい。
【0021】
別の側面において、本発明は、薬学上許容可能な担体とともに、一般式(Ia)または(IIa)の化合物、その薬学上許容可能な塩、または立体異性体を含有する医薬組成物を対象とする。
【0022】
本発明のこれらの側面およびさらなる側面は、特許請求の範囲において定義される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、4つの異なるニューロン群におけるH形成を表し、A)は、未処理群を表し、B)は、L-ブチオニンスルホキシイミンおよびロテノンで処理したニューロンを表し、C)は、L-ブチオニンスルホキシイミンおよびロテノンならびに1μg/mlの化合物Iで処理したニューロンを表し、D)は、L-ブチオニンスルホキシイミンおよびロテノンならびに5μg/mlの化合物Iで処理したニューロンを表す。
図2図2は、5つの異なるニューロン群(それらの総てが6時間インキュベートされた)におけるH形成を表す。A)は、未処理群を表し、B)は、L-ブチオニンスルホキシイミンおよびロテノンで処理したニューロンを表し、C)は、L-ブチオニンスルホキシイミンおよびロテノンならびに1μg/mlの化合物Iで処理したニューロンを表し、D)は、L-ブチオニンスルホキシイミンおよびロテノンならびに1μg/mlのGKK1032で処理したニューロンを表し、E)は、L-ブチオニンスルホキシイミンおよびロテノンならびに1μg/mlのピロシジンAで処理したニューロンを表す。
図3図3は、2つの異なるニューロン群におけるH形成を表し、A)は、対照群を表し(化合物Iによる未処理のA1および5μg/mlの化合物Iで前処理したA2)、B)は、L-ブチオニンスルホキシイミンおよびロテノンで処理したニューロンを表す(化合物Iで未処理のB1および5μg/mlの化合物Iで前処理したB2)。
図4図4は、5つの異なるニューロン群におけるタンパク質含量を表し、A)は、未処理群を表し(3時間インキュベートしたA1および6時間インキュベートしたA2)、B)は、L-ブチオニンスルホキシイミンおよびロテノンで処理したニューロンを表し(3時間インキュベートしたB1および6時間インキュベートしたB2)、C)は、L-ブチオニンスルホキシイミンおよびロテノンならびに0.1μg/mlの化合物Iで処理したニューロンを表し(3時間インキュベートしたC1および6時間インキュベートしたC2)、D)は、L-ブチオニンスルホキシイミンおよびロテノンならびに1μg/mlの化合物Iで処理したニューロンを表し(3時間インキュベートしたD1および6時間インキュベートしたD2)、E)は、L-ブチオニンスルホキシイミンおよびロテノンならびに5μg/mlの化合物Iで処理したニューロンを表す(3時間インキュベートしたE1および6時間インキュベートしたE2)。
図5図5は、興奮毒性NMDA刺激後、または刺激なし(対照)の神経(C57BL6/J)細胞におけるH産生を示す。NMDA受容体の活性化のために、イン・ビトロ(in vitro)における8日目のニューロンを、100μM NMDAと10分間インキュベートした。次いで、ニューロンを洗浄し、DMSOのみ(DMSO白色のバー)、DMSOおよびNMDA(DMSO黒色のバー)ならびに増加する量のGKK1032C、GKK1032、ピロシジンA、ピロシジンB、CL0661、CL0667およびCL0670を含有する培養培地中で4時間さらにインキュベートした。0.1μM、1μM、5μMの濃度。:DMSO+NMDAに対するp値<0.05(スチューデントの検定)。
図6図6は、興奮毒性NMDA刺激後、または刺激なし(対照)の神経(C57BL6/J)細胞におけるカスパーゼ3活性を示す。NMDA受容体の活性化のために、イン・ビトロにおける8日目のニューロンを、100μM NMDAと10分間インキュベートした。次いで、ニューロンを洗浄し、DMSOのみ(DMSO白色のバー)、DMSOおよびNMDA(DMSO黒色のバー)ならびに増加する量のGKK1032C、GKK1032、ピロシジンB、CL0661、CL0665、CL0667およびCL0670を含有する培養培地中で24時間さらにインキュベートした。0.1μM、1μM、5μMの濃度。:DMSO+NMDAに対するp値<0.05(スチューデントの検定)。
図7図7は、興奮毒性NMDA刺激後、または刺激なし(対照)の神経(C57BL6/J)細胞におけるカスパーゼ3活性を示す。NMDA受容体の活性化のために、イン・ビトロにおける8日目のニューロンを、10μM βアミロイドと10分間インキュベートした。次いで、ニューロンを洗浄し、DMSOのみ(DMSO白色のバー)、DMSOおよびβアミロイド(DMSO黒色のバー)ならびに増加する量のGKK1032C、GKK1032、ピロシジンA、CL0661、CL0663、CL0664、CL0665、CL0666、CL0667、CL0669およびCL0670を含有する培養培地中で24時間さらにインキュベートした。0.1μM、1μM、および5μMの濃度。:DMSO+βアミロイドに対するp値<0.05(スチューデントの検定)。
図8図8は、化合物CLO670(5μM)で24時間処理した変異ハンチンチンタンパク質を発現するSH-SY5Yヒト神経芽腫細胞の代表的な画像を示す。変異ハンチンチンタンパク質の凝集は、白色の矢印、GFPハンチンチンタンパク質(緑色)およびβチューブリン(赤色)で示される。画像は、40倍水浸対物レンズを用いたOperetta CLS自動共焦点顕微鏡を使用して取得した。
図9図9は、化合物GKK1032C(5μM)およびCL0670(5μM)で24時間処理した変異αシヌクレインタンパク質を発現するSH-SY5Yヒト神経芽腫細胞の代表的な画像を示す。変異αシヌクレインタンパク質の凝集は、白色の矢印、GFPαシヌクレインタンパク質(緑色)およびβチューブリン(赤色)で示される。画像は、40倍水浸対物レンズを用いたOperetta CLS自動共焦点顕微鏡を使用して取得した。
図10図10は、t=0分、5分、15分、30分、1時間、4時間、10時間、24時間および48時間において採取した雌C57BL/6マウスの血漿および脳中の化合物Iの濃度を表す。
図11図11は、2つの群:対照(ビヒクルを注射したマウス)および化合物I(1日1回の用量150mg/kgの化合物Iを注射したマウス)に分けられた8週齢のC57BL6/J雄マウスに対するロータロッド試験の結果を表す。
図12図12は、ビヒクルのみを注射した8週齢のC57BL6/J雄マウスおよび化合物I(1日1回の用量150mg/kg)を注射したマウスのオープンフィールド試験結果を表す。:対照に対するp値<0.05(スチューデントの検定)
図13図13は、図12と同じオープンフィールド試験結果であるが、動物の活動性の点で表した結果を示す。上の4つの画像は、マウスの活動性を示し、一方、下の4つの画像は、ヒートマップを表す。
図14図14は、ビヒクルのみを注射した8週齢のC57BL6/J雄マウスおよび化合物I(1日1回の用量150mg/kg)を注射したマウスの新奇物体認識試験を示す。上の画像は、選好指数(preference index)を示し、一方、下の画像は、活動性マップを表す。
図15図15は、群I(□)、II(■)、III(●)およびIV(○)に関するロータロッド試験結果を示す。または#:3-ニトロプロピオン酸に対するp値<0.05(スチューデントの検定;#ANOVA、DMS事後)。化合物IおよびCL0670の注射は、1日目および2日目に行った。3-ニトロプロピオン酸の注射は、1、1.5、2、2.5、3および3.5日目に行った。示したデータポイントは、注射の2時間後に得たものであった。対照に対するp値<0.05(スチューデントの検定)。
図16図16は、群I(□)、II(■)、III(●)およびIV(○)に関するオープンフィールド試験結果を示す。または#:3-ニトロプロピオン酸に対するp値<0.05(スチューデントの検定;#ANOVA、DMS事後)。GKK1032CおよびCL0670の注射は、1日目、2日目および3日目に行った。3-ニトロプロピオン酸の注射は、1、1.5、2、2.5、3および3.5日目に行った。示したデータポイントは、注射の4時間後に得たものであった。対照に対するp値<0.05(スチューデントの検定)。
図17図17は、中大脳動脈閉塞に供した、または供さなかったマウス;閉塞なしの手術ならびにGKK1032CおよびCL0670の投与に供したマウス;中大脳動脈閉塞(虚血)に供したマウス、中大脳動脈閉塞ならびにGKK1032CおよびCL0670の投与に供したマウスにおける化合物IおよびCL0670の神経保護効果の評価におけるロータロッド試験結果を示す。:虚血に対するp値<0.05(スチューデントの検定)。
図18図18は、実施例11において説明した試験に供したマウス、閉塞なしの手術ならびにGKK1032CおよびCL0670の投与に供したマウス;中大脳動脈閉塞(虚血)に供したマウス、中大脳動脈閉塞ならびにGKK1032CおよびCL0670の投与に供したマウスに関する脳卒中の大きさを示す。
図19図19は、中大脳動脈閉塞作用に供したマウス(白色のバー)ならびに中大脳動脈閉塞ならびに化合物IおよびCL0670の投与に供したマウス(黒色のバー)の脳卒中の容積のグラフ表示である。:虚血に対するp値<0.05(スチューデントの検定)。
図20図20は、化合物CL0661のH-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
図21図21は、化合物CL0661の13C-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
図22図22は、化合物CL0665のH-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
図23図23は、化合物CL0665の13C-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
図24図24は、化合物CL0666のH-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
図25図25は、化合物CL0666の13C-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
図26図26は、化合物CL0670のH-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
図27図27は、化合物CL0670の13C-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
図28図28は、化合物CL0663のH-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
図29図29は、化合物CL0663の13C-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
図30図30は、化合物CL0664のH-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
図31図31は、化合物CL0664の13C-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
図32図32は、化合物CL0667のH-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
図33図33は、化合物CL0667の13C-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
図34図34は、化合物CL0669のH-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
図35図35は、化合物CL0669の13C-NMRスペクトル(CDCl)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明は、酸化ストレスと関連する疾患の治療における使用のための、以下の一般式:
【化11】
(式中、
波線の結合「~」は、二重結合またはエポキシド
【化12】
のいずれかであり;
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素および置換または無置換C-Cアルキルからなる群から選択され;
は、水素、置換もしくは無置換C-Cアルキル、またはハロゲンからなる群から選択され;
Xは、式(III)~(XII)で表される基を表し、
【化13】
ここで、
破線の結合は、存在する場合に式(II)の化合物におけるXと(B)との間の二重結合である任意選択の二重結合を表し;
は、水素、置換または無置換アシル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルケニル、置換または無置換アルキニル、置換または無置換アリール、置換または無置換アラルキル、-CONH、アルカリ金属、および糖からなる群から選択され;かつ
は、水素、置換または無置換C-Cアルキル、置換または無置換C-Cアルキニル、ニトリル、-CH-ニトリルおよび-CH-CO-CHからなる群から選択される。)
の化合物またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体を対象とする。
【0025】
本発明はまた、酸化ストレスと関連する疾患の治療のための薬剤の調製における、上記で定義される一般式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体の使用を対象とする。
【0026】
本発明はまた、酸化ストレスと関連する疾患の治療のための方法であって、前記方法が、それを必要とする者に対する、治療上有効な量の上記で定義される一般式(I)もしくは(II)の化合物、またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体の投与を含んでなる方法を対象とする。
【0027】
式(III)~(XII)における用語(A)および(B)は、それを介して基Xが残りの分子と結合する位置を指す。
【0028】
別の側面において、本発明は、一般式(Ia)もしくは(IIa)の化合物またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体:
【化14】
(式中、
波線の結合「~」は、二重結合またはエポキシド
【化15】
のいずれかであり;
Xは、下記式で表される基を表し、
【化16】
ここで、
破線の結合は、存在する場合に式(II)の化合物におけるXと(B)との間の二重結合である任意選択の二重結合を表し;
ここで、Rは、水素、置換または無置換アシル、置換または無置換アルキル、置換または無置換アルケニル、置換または無置換アルキニル、置換または無置換アリール、置換または無置換アラルキル、-CONH、アルカリ金属、および糖からなる群から選択され;
ここで、Rは、水素、置換または無置換C-Cアルキル、置換または無置換C-Cアルキニル、ニトリル、-CH-ニトリルおよび-CH-CO-CHからなる群から選択される。)
またはその薬学上許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物もしくは立体異性体を対象とする
(ただし、下記式の化合物:
【化17】
は除く)。
【0029】
本明細書において、以下の用語は、以下に示す意味を有する。
【0030】
エポキシド
【化18】
は、エポキシドの2つの炭素原子のそれぞれにより式(I)の化合物の6員環に結合されている3原子環状エーテル環と理解されるべきである。
【0031】
アルキル基は、好ましくは、1~約20個の炭素原子、より好ましくは、1~約12個の炭素原子、さらにより好ましくは、1~約6個の炭素原子を有する。1、2、3、4または5個の炭素原子を有するアルキル基が、特に好ましい。メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルおよびブチル(n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチルおよびイソブチルを含む)が、本発明の化合物における特に好ましいアルキル基である。本明細書で使用する場合、用語「アルキル」は、特に断りのない限り、環式基および非環式基の両方を指すが、環式基は、少なくとも3個の炭素環員を含んでなる。非環式アルキルは、直鎖状または分岐鎖状アルキル基を指す。
【0032】
本発明の化合物における好ましいアルケニル基およびアルキニル基は、1以上の不飽和結合および2~約20個の炭素原子、より好ましくは、2~約12個の炭素原子、さらにより好ましくは、2~約6個の炭素原子を有する。用語「アルケニル」および「アルキニル」は、本明細書で使用する場合、環式基および非環式基の両方を指すが、環式基は、それぞれ少なくとも3または5個の炭素環員を含んでなる。非環式アルケニルまたはアルキニルは、直鎖状または分岐鎖状アルケニル基またはアルキニル基を指す。本発明の好ましい非環式アルキニル基は、-CH-CCである。
【0033】
アリールは、分離および/または縮合アリール基を含有する複数の環ラジカルを含む、単一および複数の芳香環ラジカルを指す。典型的なアリール基は、1~3個の分離環または縮合環および6~約18個の炭素環原子、例えば、フェニル、ナフチル、インデニル、フェナントリルまたはアントラシルラジカルを含有する。本発明の化合物におけるアリール基は、1以上の利用可能な位置において1以上の好適な基で置換されてもよい。
【0034】
アシル基は、RCO-の形態(式中、Rは、以前に定義されたアルキルまたはアリール基などの有機基である)、例えば、アセチル、プロピオニル、ベンゾイルなどである。好適なアシル基は、2~約12個の炭素原子、好ましくは、2~約8個の炭素原子、より好ましくは、2~約6個の炭素原子、最も好ましくは、2個の炭素原子を有する。
【0035】
注目すべきアルカリ金属としては、ナトリウムまたはカリウムが挙げられる。
【0036】
アラルキルは、上記で定義されるアルキルラジカルに連結されたアリール基を指す。好ましいアラルキル基は、ベンジルである。
【0037】
ハロゲンは、F、Cl、Br、Iを指す。好ましいハロゲンは、Brである。
【0038】
糖は、単糖類、二糖類もしくは三糖類またはそれらの糖類の誘導体を指し、好ましくは、単糖類または二糖類である。ペントースまたはヘキソース化合物が好ましい。誘導体としては、糖グリコシド、N-グリコシルアミン、O-アシル誘導体、O-メチル誘導体、糖アルコール、糖酸、およびデオキシ糖が挙げられる。
【0039】
ニトリルは、-C≡N官能基を有する有機化合物であり、好ましくは、本発明の文脈内で、ニトリルは-CH-C≡N基である。
【0040】
上記の基は、1以上の利用可能な位置において、1以上の好適な基、例えば、OR’、=O、SR’、SOR’、SOR’、OSOR’、OSOR’、NO、NHR’、N(R’),=N-R’、N(R’)COR’、N(COR’)、N(R’)SOR’、N(R’)C(=NR’)N(R’)R’、N、CN、ハロゲン、COR’、COOR’、OCOR’、OCOOR’、OCONHR’、OCON(R’)、CONHR’、CON(R’)、CON(R’)OR’、CON(R’)SOR’、PO(OR’)、PO(OR’)R’、PO(OR’)(N(R’)R’)、置換または無置換C-C12アルキル、置換または無置換C-C12アルケニル、置換または無置換C-C12アルキニル、置換または無置換アリール、および置換または無置換アラルキルで置換されてもよく、ここで、R’基は、それぞれ独立に、水素、OH、O-糖、NO、NH、SH、CN、ハロゲン、=O、COH、COアルキル、COOH、COアルカリ金属、置換または無置換C-C12アルキル、置換または無置換C-C12アルケニル、置換または無置換C-C12アルキニルおよび置換または無置換アリールからなる群から選択される。このような基がそれ自体置換される場合、置換基は、上記の一覧から選択されてもよい。
【0041】
用語「薬学上許容可能な塩」は、患者への投与時に、本明細書に記載の化合物を(直接的または間接的に)提供することができる任意の塩を指す。薬学上許容可能ではない塩は、薬学上許容可能な塩の調製において有用であり得るため、それも本発明の範囲内にあることが認識されるであろう。塩および誘導体の調製は、当技術分野で公知の方法により行うことができる。
【0042】
例えば、本明細書において提供される化合物の薬学上許容可能な塩は、従来の化学的方法により、塩基性または酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、例えば、これらの化合物の遊離酸形態または遊離塩基形態を、水もしくは有機溶媒またはその混合物中の化学量論量の適当な塩基または酸と反応させることにより、調製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。酸付加塩の例としては、鉱酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ならびに有機酸付加塩、例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩およびp-トルエンスルホン酸塩が挙げられる。アルカリ付加塩の例としては、無機塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩、ならびに有機アルカリ塩、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミンおよび塩基性アミノ酸塩が挙げられる。
【0043】
本発明の化合物は、遊離化合物または溶媒和物(例えば、水和物、アルコラート、特にメタノール付加物)のいずれかとしての結晶形であってもよく、両形態が本発明の範囲内にあることが意図される。溶媒和の方法は、一般に当技術分野で公知である。本発明の化合物は、異なる多形形態を示してもよく、本発明はこのような形態を総て包含することが意図される。
【0044】
特に断りのない限り、一般式(I)または(II)の化合物の誘導体であるいずれの化合物も、本発明の範囲および趣旨内にある。用語「誘導体」は、その最も広い意味で使用され、イン・ビボ(in vivo)において本発明の化合物に変換される化合物を包含する。誘導体の例としては、限定されるものではないが、生加水分解性部分、例えば、生加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カルバミン酸塩、生加水分解性炭酸塩、生加水分解性ウレイド、および生加水分解性リン酸塩類似体を含む一般式(I)または(II)の化合物の誘導体および代謝産物が挙げられる。好ましくは、カルボキシル官能基を有する化合物の誘導体は、カルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボン酸エステルは、好都合には、分子上に存在するカルボン酸部分のいずれかをエステル化することにより形成される。誘導体は、一般に、周知の方法、例えば、Burger「Medicinal Chemistry and Drug Discovery 第6版(Donald J. Abraham編, 2001, Wiley)」および「Design and Applications of Prodrugs」(H. Bundgaard編, 1985, Harwood Academic Publishers)により記載の方法を使用して調製することができる。
【0045】
本明細書で言及されるいずれの化合物も、このような特異的な化合物および特定の異形または形態を表すことを意図する。用語「立体異性体」は、本明細書で使用する場合、このような化合物の任意の鏡像異性体、ジアステレオマーまたは幾何異性体(E/Z)を含む。特に、本明細書で言及される化合物は、不斉中心を有し得、したがって、異なる鏡像異性形態またはジアステレオマー形態で存在し得る。このため、本明細書で言及される任意の所与の化合物は、ラセミ体、1以上の鏡像異性形態、1以上のジアステレオマー形態、およびそれらの混合物のいずれか1つを表すことを意図する。同様に、二重結合に関する立体異性または幾何異性も可能であり、したがって、いくつかの例において、分子は(E)-異性体または(Z)-異性体(トランスおよびシス異性体)として存在し得る。分子がいくつかの二重結合を含有する場合、各二重結合は、その分子の他の二重結合の立体異性と同じであり得るまたは異なり得るそれ自体の立体異性を有することになる。本明細書で言及される化合物の鏡像異性体、ジアステレオ異性体および幾何異性体を含む総ての立体異性体、ならびにそれらの混合物は、本発明の範囲内にあるとみなされる。
【0046】
さらに、本明細書で言及されるいずれの化合物も、互変異性体として存在してもよい。具体的には、用語「互変異性体」は、平衡状態で存在し、かつ1つの異性形から別の異性形に迅速に変換される化合物の2以上の構造異性体のうちの1つを指す。一般的な互変異性対は、アミン-イミン、アミド-イミド酸、ケト-エノール、ラクタム-ラクチムなどである。
【0047】
さらに、本明細書で言及されるいずれの化合物も、水和物、溶媒和物、および多形体、ならびにそれらの混合物を、このような形態が媒体中に存在する場合に表すことを意図する。本明細書で言及される化合物の総ての幾何異性体、互変異性体、アトロプ異性体、水和物、溶媒和物、多形体、および同位体標識形態、ならびにそれらの混合物は、本発明の範囲内にあるとみなされる。
【0048】
特に断りのない限り、本発明の化合物は、1以上の同位体濃縮原子の存在のみが異なる化合物を含むことも意味する。例えば、重水素もしくはトリチウムによる水素の置換、または13C-もしくは14C-濃縮炭素もしくは15N-濃縮窒素による炭素の置換を除く本構造を有する化合物は、本発明の範囲内にある。
【0049】
上記の式(I)または(II)の化合物の重要な特徴は、それらの生物活性ならびに特に抗酸化特性および神経保護特性である。
【0050】
したがって、本発明は、酸化ストレスと関連する疾患または病態の治療に有用である化合物および医薬組成物を提供する。このような疾患または病態としては、神経変性疾患、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、老人性認知症、ハンチントン病、多発性硬化症または筋萎縮性側索硬化症、脳卒中および神経筋障害を伴うミトコンドリア症が挙げられる。
【0051】
本発明の方法に有用である医薬組成物は、患者への投与のための、薬学上許容可能な担体とともに、式(I)、(II)の化合物、またはそれらの混合物、その薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、または立体異性体を含んでなる。
【0052】
用語「担体」は、それとともに有効成分が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを指す。好適な医薬担体は、E. W. Martin, 1995による「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0053】
医薬組成物の例としては、経口、局所または非経口投与のための任意の固体(錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤など)または液体(液剤、懸濁剤もしくはエマルション)組成物が挙げられる。
【0054】
好ましい実施形態において、医薬組成物は、固体または液体のいずれかの経口形態である。経口投与のための好適な投与形は、錠剤、カプセル剤、シロップ剤または液剤であってもよく、当技術分野で公知の従来の賦形剤、例えば、結合剤、例えば、シロップ剤、アラビアガム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントガム、もしくはポリビニルピロリドン;充填剤、例えば、ラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトールもしくはグリシン;錠剤化滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム;崩壊剤、例えば、デンプン、ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウムもしくは微晶質セルロース;または薬学上許容可能な湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムを含有してもよい。
【0055】
固体経口組成物は、混合、充填または打錠の従来の方法により調製してもよい。大量の充填剤を用いて、有効薬剤をそれらの組成物の全体に分布させるために、反復混合操作を使用してもよい。このような操作は、当技術分野で従来のものである。錠剤は、例えば、湿式造粒または乾式造粒により調製してもよく、場合により、通常の薬務において周知の方法に従って、特に、腸溶コーティングでコーティングしてもよい。
【0056】
医薬組成物はまた、適当な単位投与形での非経口投与、例えば、無菌溶液、懸濁液または凍結乾燥製品に適合させてもよい。増量剤、緩衝剤または界面活性剤などの適切な賦形剤を使用することができる。
【0057】
上記の処方物は、スペインおよび米国薬局方ならびに類似の参照文に記載のものまたはそれらにおいて言及されるものなどの標準的な方法を使用して、調製される。
【0058】
式(I)、(II)の化合物またはそれらの組成物の投与は、任意の好適な方法、例えば、静脈内注入、経口剤、ならびに腹腔内投与および静脈内投与によるものでもよい。患者にとっての利便性および治療される疾患の慢性の特徴のために、経口投与が好ましい。
【0059】
一般に、式(I)または(II)の化合物の有効投与量は、選択される化合物の相対的有効性、治療される障害の重症度および罹患者の体重に依存する。しかしながら、有効化合物は、一般に、1日1回以上、例えば、1日1、2、3または4回投与され、典型的な総1日量は、0.1~1000mg/kg/日の範囲である。
【0060】
一般式(I)または(II)の化合物およびそれらの組成物は、組合せ療法を提供するために他の1つまたは複数の薬剤とともに使用してもよい。他の1つまたは複数の薬剤は、同じ組成物の一部を形成してもよいし、同時または異なる時点での投与のために別々の組成物として提供してもよい。
【0061】
本発明の特定の実施形態において、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素および置換または無置換C-Cアルキルからなる群から選択される。好ましくは、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素およびメチルからなる群から選択される。
【0062】
ある実施形態において、R、R、R、RおよびRのうち少なくとも1つ、好ましくは、少なくとも2つ、より好ましくは、少なくとも3つは、置換または無置換C-Cアルキルから独立に選択される。特定の実施形態において、前記置換または無置換C-Cアルキル基は、置換または無置換C-Cアルキルである。好ましくは、それはメチルである。
【0063】
別の実施形態において、R、R、R、RおよびRは、置換または無置換C-Cアルキル、好ましくは、置換または無置換C-Cアルキルから独立に選択され、より好ましくは、それらはメチルである。
【0064】
本発明の特定の実施形態において、Rは、水素、置換または無置換C-C12アシル、置換または無置換C-Cアルキル、置換または無置換C-Cアルケニル、置換または無置換C-Cアルキニル、置換または無置換C-C10アリール、置換または無置換(C-C10)アリール(C-C)アルキル、-CONH、アルカリ金属、および糖からなる群から選択される。
【0065】
別の実施形態において、Rは、水素、置換または無置換-C(O)(C-C)アルキル、置換または無置換C-Cアルキル、置換または無置換C-Cアルケニル、置換または無置換C-Cアルキニル、置換または無置換C-C10アリールおよび置換または無置換(C-C10)アリール(C-C)アルキルからなる群から選択される。
【0066】
さらなる実施形態において、Rは、水素、置換または無置換アセチル、置換または無置換メチル、エチル、フェニルおよび置換または無置換ベンジルからなる群から選択される。
【0067】
ある実施形態によれば、Rは、水素、アセチル、メチル、エチル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択される。好ましい実施形態において、Rは水素である。
【0068】
本発明の特定の実施形態において、Xは、下記式で表される基を表す。
【化19】
(式中、Rおよび破線の結合は、先に定義された通りである。)
【0069】
本発明の別の特定の実施形態において、Xは、下記式で表される基を表す。
【化20】
(式中、
は、水素、置換または無置換C-Cアルキル、置換または無置換C-Cアルキニル、ニトリル、-CH-ニトリルおよび-CH-CO-CHからなる群から選択され、好ましくは、水素、置換または無置換C-Cアルキル、置換または無置換C-Cアルキニルおよび-CH-ニトリルからなる群から選択される。)
【0070】
本発明の第1の側面のある実施形態によれば、使用のための式(I)または(II)の化合物は、
【化21】
またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体から選択される。
【0071】
好ましくは、使用のための式(I)または(II)の化合物は、
【化22】
またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体から選択される。
【0072】
一つの実施形態において、本発明の化合物は、好ましくは、一般式が(Ia)または(IIa)である化合物:
【化23】
(式中、Xは、下記式で表される基を表し、
【化24】
ここで、R、R、波線の結合および破線の結合は、先に定義された通りである。)
またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体である。
【0073】
特定の実施形態において、Rは、水素、置換または無置換C-C12アシル、置換または無置換C-Cアルキル、置換または無置換C-Cアルケニル、置換または無置換C-Cアルキニル、置換または無置換C-C10アリール、置換または無置換(C-C10)アリール(C-C)アルキル、-CONH、アルカリ金属、および糖からなる群から選択される。
【0074】
別の特定の実施形態において、Rは、水素、置換または無置換C-Cアルキル、置換または無置換C-Cアルキニルおよび-CH-ニトリルからなる群から選択される。
【0075】
好ましい実施形態において、式(Ia)または(IIa)の化合物は、
【化25】
またはその薬学上許容可能な塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは立体異性体から選択される。
【0076】
一般式(Ia)または(IIa)に該当する本発明の特に好ましい化合物は、以下の化合物:
【化26】
である。
【0077】
式(Ia)または(IIa)の化合物は、微生物を使用して産生することができる。好ましくは、式(Ia)または(IIa)の化合物の産生に使用される生物体は、真菌株HT-09B-VENT-WQ002であり、その培養物は、受託番号CECT20769の下でスペインのバレンシア大学におけるColeccion Espanola de Cultivos Tipoにおいて、Instituto Biomar S.A.(Parque Tecnologico de Leon, Parcela M-10.4, 24009-アルムニア、レオン、スペイン)により、2011年1月18日に寄託されている。この寄託は、ブダペスト条約の規定の下に行われており、その公への利用可能性に関する総ての制限は、本出願に関する特許の付与時に撤回不能に維持される。
【0078】
生物体は、El Ventorrillo、マドリード、スペインにて採取された土壌サンプルから単離された。
【0079】
寄託株が明らかに好ましいが、本発明は、任意の特定の株または生物体に制限または限定されない。式(Ia)または(IIa)の化合物を産生する他の生物体、株または変異体を本発明の範囲内に含めることが、本発明の意図するところである。
【0080】
好適な培地において制御された条件下で培養されたHT-09B-VENT-WQ002は、化合物(I)を産生する。この株は、好ましくは、好気性および中温性条件下で水性栄養培地中にて成長させる。固形培地上でそれを成長させるための最適な温度は、24~28℃である。成長のためのpH範囲は、5~7である。グルコースおよびデンプンを用いた成長が最良であった。他の炭素源、例えば、小麦粉、グリセロール、およびデキストロースも使用することができる。振盪培養物において、菌糸体が高密度で成長する。
【0081】
本発明において、化合物(I)、化合物IおよびGKK1032Cは、総て同じ化合物である。
【0082】
培養物の特徴:
コロニーは、湿度42%を維持する培養チャンバーにおいて、ポテトデキストロース寒天上で24℃にて10日で直径4cmに達する。
【0083】
コロニーの特徴
コロニーは、中程度に成長し、白色の毛様~綿様である。それは、潜入菌糸において黄色色素を産生する。
【0084】
顕微鏡法
分枝のない基底梗子の散開した渦巻を有する、直立の無色透明の分生子柄。直径2~3μmの、球形で滑壁の分生子。
ITS1-5.8S-ITS2リボソームDNA領域のシークエンシング解析後に、分類学の分類が達成された。配列は、Blastnアルゴリズムを使用して、Gene Bankのデポジトリーと比較した。株HT-09B-VENT-WQ002は、ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)と比較した場合、100%一致を示している。
【0085】
発酵
ペニシリウム・シトリナムHT-09B-VENT-WQ002は、好適な培地において制御された条件下で培養した場合、一般式(Ia)または(IIa)の化合物を産生する。この株は、好ましくは、好気性および中温性条件下、好ましくは、24℃~28℃にて、5.0~7.0の範囲のpHで、水性栄養培地中にて成長させる。多種多様な液体培養培地を生物体の培養に利用することができる。有用な培地は、同化可能な炭素源、例えば、デンプン、デキストリン、グルコースなど、同化可能な窒素源、例えば、タンパク質、タンパク質加水分解産物、脱脂ミール、コーンスティープなど、ならびに有用な無機陰イオンおよび陽イオン、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、アンモニウム、硫酸塩、塩化物、リン酸塩、炭酸塩などを含む培地である。微量元素を加えてもよい。エアレーションは、好ましくは、発酵培地に空気を供給することにより達成される。撹拌は、機械的インペラーにより提供される。
【0086】
好ましくは、保存培養物は、20%グリセロール中にて-70℃で凍結保存する。
【0087】
好ましい生物体による式(Ia)または(IIa)の化合物の産生に必要な工程は、以下の通りである:凍結菌糸体または凍結乾燥菌糸体で開始する。中温性温度でかつ好気性条件下で、上記の成分のいくつかを含有する培養培地とともに、振とうフラスコ中で始原細胞を培養することにより、菌糸塊を得る。この接種材料を使用して、より高容量のフラスコ中で培養を開始する。産生培地は、接種材料として使用したものと異なる場合がある。
【0088】
好ましい実施形態において、化合物は、クロマトグラフィー、沈殿または結晶化により、好ましくは、クロマトグラフィーにより、単離および精製される。
【0089】
本発明の他の化合物は、当技術分野で既知の技術を使用して調製することができる。例として、前記化合物は、発酵の条件の改変により、または出発材料として式(I)もしくは(II)の化合物を使用した従来の化学的方法により、または「Comprehensive Organic Transformations: A Guide to Functional Group Preparations」, 第2版, Richard C. Larock、もしくは「March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure」, 第6版, Michael B. Smith, and Jerry March、もしくは「Advanced Organic Chemistry, Part B: Reactions and Synthesis」, 第5版, Francis A. Carey, and Richard J. Sundbergに記載のものなどの当業者に公知の標準的な有機合成反応を使用した、市販の製品および試薬からの合成により、作製することができる。
【0090】
従来の化学的方法により入手可能な式(Ia)または(IIa)の天然物の誘導体の例として、化合物AおよびBは、それぞれMeOH/HClおよびEtOH/HClによる化合物Iの処理により得られ得る。
【化27】
【0091】
化合物Cは、AcOおよびピリジンによる化合物Iの処理により得られ得る。
【化28】
【0092】
本発明を実施例によりさらに説明する。これらは、単に本発明の例示として解釈されるべきである。以下、本発明を、特許請求の範囲に定義される本出願における式(I)または(II)の化合物の有用性を明確に示す本発明者らにより実施された試験により説明する。
【実施例
【0093】
例1:HT-09B-VENT-WQ002の発酵
保存培養物
HT-09B-VENT-WQ002の純粋培養物を、20%グリセロール中にて-70℃で凍結保存した。
【0094】
接種材料
十分に成長した寒天培養物を使用して、250mL振とうフラスコ中の2%オートミール、2%麦芽エキス、0.01%KHPO、0.005%MgSOおよび水道水を含有する種培地40mLを接種し、200rpmのロータリーシェーカーで24℃にて培養した。フラスコを48時間インキュベートし、第1段階の接種材料として使用した。
【0095】
発酵
2Lエルレンマイヤーフラスコ中の同培地250mLに、10%の第1段階の接種材料を接種した。発酵は、200rpmのロータリーシェーカーで、24℃にて7日間行った。化合物Iの産生は、HPLCまたは十分な感度を有する任意の他の方法によりモニタリングすることができる。
【0096】
例2:化合物IおよびGKK1032の製造
真菌HT-09B-VENT-WQ002の発酵ブロス(4L)をセライトで濾過し、菌糸体ケーキを、EtOAc/MeOH(3:1)の混合物2Lで2回抽出した。得られた懸濁液を濾過し、EtOAcと水とに分配した。有機層を乾固させ、粗抽出物(3.1g)をシリカゲル上でVFC(真空フラッシュクロマトグラフィー)により分画し、ヘキサン/EtOAc/MeOHのステップワイズグラジエントで溶出させた。画分7~8(EtOAcおよびEtOAc/MeOH 9:1で溶出、0.4g)をシリカゲルカラムに適用し、ヘキサン/EtOAcグラジエントでの溶出により、フラッシュクロマトグラフィーを行った。画分11(ヘキサン/EtOAc 6:4で溶出、32mg)を、セミ分取逆相HPLC(Agilent Prep 1100 HPLC、5μg C18カラム;30×100mm;流速21.6mL/分での40~100水性MeOHの25分グラジエントで溶出、200nmでUV検出)により最終的に精製し、19mgの化合物Iを得た(Rt:17.64分)。画分6(ヘキサン/EtOAc 8:2で溶出、32mg)を、同じプロトコールに従って精製し、9.5mgの既知の化合物GKK1032を得た(Rt:18.57分)。保持時間は、Agilent 1200 HPLC、Zorbax XDB C18、1.8μmカラム;4.6×50mm;流速0.5mL/分、20℃での0.1%トリフルオロ酢酸を含有する15~100水性MeOHの20分グラジエントで溶出、220nmでのUV検出における分析に関する。
【0097】
化合物Iは、APCIおよびAPI-ES質量スペクトル(m/z518における[M+H])、13C NMR、およびDEPTデータにより確立されたC3239NOの分子式を有する。化合物IのHおよび13C NMRスペクトルの完全な割り当ては、2D NMR実験(COSY、HSQCおよびHMBC)により最終的に確立され、その分光学的データを表1に示す。
【化29】
【0098】
【表1】
【0099】
例3:式(I)または(II)の化合物の製造
真菌HT-09B-VENT-WQ002の発酵ブロス(8L)を、固定相として吸着樹脂XAD-1180および移動相としてEtOAc/MeOH 3:1を使用した固相抽出に供した。LCMSは、化合物I(106mg、純度96%)、GKK1032(3.5mg、純度70%)、ピロシジンA(15.8mg、純度77%)、ピロシジンB(5.63mg、純度94%)およびGKK-1032 A2(7.67mg、純度53%)の単離を可能とした。
【0100】
5つのさらなる発酵ブロスを行い(総量49.5L)、3gのGKK1032を単離した。この化合物を、主に低分子量有機金属、酸、塩基、アルキル化剤および還元剤との異なる反応に供し、化合物Iと構造的に関連する14個の化合物を得た。
【化30】
【0101】
化合物CL0652は、以下のように調製した。
13mgの化合物GKK1032を、10mLのCHClおよび1mLのCHCNに溶解させた。次いで、小さじ2杯のKCOを加えた。30分後、2CHI当量を加えた。24時間後、TLCは、残存するいくつかの出発材料の存在を示したため、さらに2CHI当量を加えた。4時間後、さらに2当量のCHIを加えた。最後に、反応物を24時間後に除去し、計6当量のCHIとした。溶媒を蒸発させ、残渣をEtOAcに溶解させ、飽和ブライン水溶液で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過および蒸発乾固し、11mgのCL0652を得た。
【0102】
化合物CL0653は、以下のように調製した。
23mgの化合物GKK1032を25mLのCHClに溶解させ、1.2N-ブロモスクシンイミド(NBS)当量を加えた。反応をTLCによりモニタリングした。24時間後、さらに1NBS当量を加えた。最後に、48時間後に反応混合物を飽和ブライン水溶液で洗浄し、27mgの反応混合物を得、これを分取TLCにより精製し、ヘキサン/EtOAc 6:4で溶出させ、8mgの純粋CL0653を単離した。
【0103】
化合物CL0661は、以下のように調製した。
60mgの化合物GKK1032を乾燥THFに溶解させ、過剰量のNaHを加えた(窒素雰囲気下)。72時間後、反応油を氷上に注ぎ、EtOAcおよびTHFを蒸発させた。得られた残渣を飽和ブライン溶液で洗浄し、51mgの反応混合物を得、これを分取TLCにより精製し、ヘキサン/EtOAc 6:4で溶出させ、9mgの純粋CL0661および20mgの出発材料を単離した。
【0104】
化合物CL0663およびCL0664は、以下のように調製した。
237mgの化合物GKK1032を、20mLのCHClおよび20mLのCHCNに溶解させた。次いで、小さじ2杯のKCOを加えた。30分後、3当量のCHIを加えた。反応をTLCによりモニタリングし、最後に、6日後に計5CHI当量とし、溶媒を蒸発させ、残渣をEtOAcに溶解させ、飽和ブライン溶液で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過および蒸発乾固した。反応混合物(218mg)をCHOH中で結晶化し、120mgの純粋CL0652および96mgの母液を得た。母液を分取TLCにより精製し、ヘキサン/EtOAc 8:2で溶出させ、16mgのCL0652、12mgのCL0663および10mgのCL0664を得た。
【0105】
化合物CL0665は、以下のように調製した。
83mgの化合物GKK1032を40mLのCHOHに溶解させ、氷で0℃に冷却した。それぞれ5当量のNaBHおよびLiClを加えた。8日後、反応物を飽和ブライン溶液で洗浄した。反応混合物をCHOHで結晶化し、60mgの沈殿を得、これを分取TLCにより精製し、ヘキサン/EtOAc 7:3で溶出させた。その後、12mgのCL0665を単離し、メタノールで再結晶化し、3mgの純粋CL0665を得た。
【0106】
化合物CL0666は、以下のように調製した。
85mgの化合物GKK1032を20mLのTHFに溶解させ、氷で0℃に冷却した。次いで、5当量のLiAlHを加えた。6日後、反応物をEtOAcおよび氷上に注いだ。THFを蒸発させ、残渣を飽和ブライン溶液で洗浄した。反応生成物を分取TLCによりさらに精製し、ヘキサン/EtOAc 2:8で溶出させ、18mgの純粋CL0666を得た。
【0107】
化合物CL0667は、以下のように調製した。
48mgの化合物GKK1032を、2mLのDMFに溶解させた。次いで、小さじ2杯のKCOを加えた。30分後、2当量のクロロアセトニトリルを加えた。24時間後、さらに2当量のクロロアセトニトリルを加え、さらに24時間撹拌した。次いで、DMFを蒸発させ、粗残渣をEtOAcに溶解させ、NaClの飽和溶液で洗浄し、55mgの粗残渣を得、これを分取TLCによりさらに精製し、CHCl/CHOH 98:2で溶出させ、15mgのCL0667を単離し、これを最後にシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、ヘキサン/EtOAc 6:4で溶出させ、12mgの純粋CL0667を得た。
【0108】
化合物CL0669は、以下のように調製した。
43mgの化合物GKK1032を3mLのDMFに溶解させ、過剰量のKCOを加えた。30分後、1.5当量のクロロアセトニトリルを加えた。5日後に計3当量のクロロアセトニトリルとし、DMFを蒸発させ、反応混合物をEtOAcに溶解させ、飽和ブライン溶液で洗浄した。次いで、反応混合物を乾固させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、CHCl/CHOH 92:8で溶出させ、34mgのCL0669を単離し、これを分取TLCによりさらに精製し、CHCl/CHOH 96:4で溶出させ、9mgの純粋CL0669を得た。
【0109】
化合物CL0670は、以下のように調製した。
32mgの化合物GKK1032を20mLのCHClに溶解させ、1.2当量のメタクロロ過安息香酸を加えた。4日後、反応混合物を5%NaHCO溶液で洗浄し、飽和ブライン溶液で中和し、乾固させた。粗残渣をCHOHから結晶化し、10.5mgの純粋CL0670を得た。
【0110】
化合物CL0671およびCL0672は、以下のように調製した。
79mgの化合物GKK1032をDMFに溶解させ、5当量のクロロアセトンおよび過剰量のKCOを加えた。4日後、DMFを蒸発させ、反応混合物をEtOAcに溶解させ、飽和ブライン溶液で洗浄し、100mgの複合混合物を得、これを分取TLCによりさらに精製し、ヘキサン/EtOAc 6:4で溶出させ、14.8mgのCL0671および12.2mgのCL0672を得た。両化合物を最後にメタノール中で結晶化し、7mgの純粋CL0671および5mgの純粋CL0672を得た。
【0111】
化合物CL0673は、以下のように調製した。
28mgの化合物CL0652を20mLのCHClに溶解させ、1.2当量のメタクロロ過安息香酸を加えた。24時間後、反応混合物を5%NaHCO溶液で洗浄し、飽和ブライン溶液で中和し、乾固させた。粗残渣をCHOHから結晶化し、12.7mgの純粋CL0673を得た。
【0112】
化合物CL0674は、以下のように調製した。
67mgの化合物GKK1032を15mLのCHClに溶解させ、1.2当量の酢酸水銀(II)を加えた。6日後に酢酸水銀(II)をいくつか加え、反応混合物をNaClの飽和水溶液で洗浄し、蒸発乾固した。粗残渣を分取TLCによりさらに精製し、ヘキサン/EtOAc 1:1で溶出させ、58mgのCL0674を単離し、これを最後にメタノールから結晶化し、4.2mgの純粋CL0674を得た。
【0113】
化合物は、H-NMR、13C-NMRおよびMS技術により同定およびキャラクタリゼーションした。化合物CL0661、CL0665、CL0666およびCL0670のNMRスペクトル(CDCl)を図17~24に示す。
【0114】
例4:活性酸素種形成に干渉する化合物I、GKK1032、およびピロシジンAの能力
実験は、以前に記載のように得たラット皮質一次ニューロンにおいて行った(Herrero-Mendez A. et al., Nat. Cell. Biol. 11:747-752, 2009)。培養7または8日後、ニューロンを、それゆえにグルタチオンの細胞枯渇を引き起こすグルタミン酸システインリガーゼの阻害剤であるL-ブチオニンスルホキシイミン(L-BSO;100μM)の非存在下または存在下、およびミトコンドリア複合体I阻害剤であるロテノン(0.2μM)の非存在下または存在下でインキュベートした。
【0115】
データは、n=6(すなわち、独立に測定された6個の独立したウェル)からの平均値±平均値の標準偏差(SEM)として示す。L-BSOおよびロテノンによる処理は、マルチウェル蛍光リーダー(Varioskan、Thermo Scientific社)を用いた蛍光法Amplex(著作権)Red過酸化水素/ペルオキシダーゼアッセイキット(Invitrogen社、カタログ番号A22188)を使用してHの放出により検出されたように、ニューロンにおける活性酸素窒素種(RONS)の内因性産生を有意に刺激した。
【0116】
を化合物I、GKK1032、およびピロシジンAと混合し、それがH定量法に干渉し、そのような干渉が存在しなくなったかどうかを評価した。
【0117】
化合物が内因性活性酸素種形成に干渉する能力を検討するために、4つの異なる実験を行った。
【0118】
a)ニューロンを6時間の間にL-BSOおよびロテノンで処理し、次いで、リン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄し、その後、化合物Iを1および5μg/mlの濃度でニューロンに加え、続く2時間の間にHの放出を直ちに記録した。図1に示されるように、化合物Iは、ニューロンによるH形成の速度を用量依存的に減少させた。
【0119】
b)ニューロンを、L-BSOおよびロテノンとともに、化合物I、またはGKK1032、またはピロシジンA(1μg/ml)と6時間インキュベートし、その後、細胞をPBSで2回洗浄し、続く2時間においてH形成の速度を記録した。図2に示されるように、化合物I、またはGKK1032、またはピロシジンAによるニューロンの前処理は、Hの速度を有意に低下させた。
【0120】
c)ニューロンを化合物I(5μg/ml)と72時間(すなわち、培養4日目~7日目)インキュベートし、その後、細胞をPBSで2回洗浄し、さらにL-BSOおよびロテノンと6時間インキュベートした。この期間の後、細胞を再度洗浄し、翌2時間の間のH産生の速度を定量した。図3に示されるように、化合物Iによるニューロンの前処理は、L-BSO+ロテノンにより誘導されたH形成を非常に有意に防止した。化合物Iは、未処理ニューロンにおけるH形成も防止した。
【0121】
d)異なる濃度の化合物I(0.1、1または5μg/ml)の存在下でのL-BSOおよびロテノンとのインキュベーションの3または6時間後のニューロンにおいて、タンパク質濃度を定量した。図4に示されるように、L-BSOおよびロテノンとのニューロンのインキュベーションは、ウェルに残存するタンパク質濃度をわずかに減少させ、低レベルであるが測定可能なレベルの神経細胞死が示唆された。対照的に、化合物Iの存在は、0.1μg/ml(6時間)からのようなタンパク質濃度の減少を用量依存的に防止した。このため、化合物Iは、抗神経毒性および生存促進性化合物として明らかとなっている。
【0122】
例5:H 形成の防止における式(I)の化合物
実験は、以前に記載のように得たラット皮質一次ニューロンにおいて行った(Herrero-Mendez A. et al., Nat. Cell. Biol. 11:747-752, 2009)。B27-MAO培養の7または8日後、ニューロン(C57BL6/Jマウス由来)を、N-メチル-D-アスパラギン酸塩(NMDA、H産生プロモーター;100μM)の存在下で10分間インキュベートし、次いで、PBS洗浄工程を行い、増加する量のGKK1032C、GKK1032、ピロシジンB、ピロシジンA、CL0661、CL0665、CL0667およびCL0670(0.1μM、1μMおよび5μM)の非存在下(DMSO)または存在下での24時間B27インキュベーション工程に供した。B27-MAOは、抗酸化剤の非存在下(マイナス抗酸化剤、MAO)でB27サプリメントを補充したNeurobasal培地を意味する。
【0123】
の放出は、マルチウェル蛍光リーダー(Varioskan、Thermo Scientific社)を用いた蛍光法Amplex(著作権)Red過酸化水素/ペルオキシダーゼアッセイキット(Invitrogen社、カタログ番号A22188)を使用して測定した。
【0124】
神経細胞アポトーシスは、カスパーゼ3活性を測定することにより決定した(Veas-Perez de Tudela et al. Sci Rep 5:18180; doi:10.1038/srep18180 (2015)。
【0125】
データは、n=3からの平均値±平均値の標準偏差として示す。
【0126】
図5に示されるように、GKK1032C、GKK1032、ピロシジンB、ピロシジンA、CL0661、CL0667およびCL0670は、神経細胞においてHが産生されることを防止することに成功した。
【0127】
さらに、GKK1032C、GKK1032、ピロシジンB、CL0661、CL0665、CL0667およびCL0670は、図6に示されるように、アポトーシスから神経細胞を保護するのに有効であった。
【0128】
例6:神経細胞アポトーシスの防止における式(I)の化合物
実験は、以前に記載のように得たマウス皮質一次ニューロンにおいて行った(Herrero-Mendez A. et al., Nat. Cell. Biol. 11:747-752, 2009)。B27-MAO培養の7または8日後、ニューロン(C57BL6/Jマウス由来)を、増加する濃度の式(I)の化合物:GKK1032C、GKK1032、ピロシジンA、CL0661、CL0663、CL0664、CL0665、CL0666、CL0667、CL0669およびCL0670(0.1μM、1μMおよび5μMの濃度)の非存在下(DMSO)または存在下で、βアミロイド(10μM、24時間)とインキュベートした。アルツハイマー患者の脳において認められるアミロイドプラークの形成をイン・ビトロで模倣するために、βアミロイドによる神経細胞の処理を選択した。B27-MAOは、抗酸化剤の非存在下(マイナス抗酸化剤、MAO)でB27サプリメントを補充したNeurobasal培地を意味する。
【0129】
活性型カスパーゼ3を測定することにより、βアミロイドとの24時間インキュベーションによる神経細胞アポトーシスを測定し、結果を図7に示す。
【0130】
試験した化合物は総て、試験した濃度において明らかな神経保護効果を示した。
【0131】
例7.ハンチンチンおよびαシヌクレインの凝集の防止における式(I)の化合物
SH-SY5Yヒト神経芽腫細胞を、37℃および5%COで、10%ウシ胎仔血清(FBS)、2mM L-グルタミンおよび100U/mLペニシリン-0.1mg/mLストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で維持した。
【0132】
細胞に蓄積する変異ハンチンチンおよびシヌクレインに対する化合物の効果を調べるために、SH-SY5Yを、構成的活性化型変異ハンチンチン発現ベクターpEGFP-Q74(74個のCAGリピートを有するエクソン1に対応するハンチンチンの断片に融合したEGFPタンパク質をコードする;c.54GCA[74];Addgene;#40262)およびEGFP-アルファシヌクレイン-A53T(Addgene;#40823)でトランスフェクトした。
【0133】
トランスフェクションアッセイのために、細胞を96マルチウェルプレート(ポリオルニチン-フィブロネクチンでコーティング)に播種した(30×10個/cm)。製造業者の説明書(Thermo Fisher社)に従って、LTX with Plus Reagentを使用して、細胞を0.3μg pEGFP-Q74プラスミドでトランスフェクトした。24時間後、培地を新しいものと交換し、細胞を、増加する量のGKK1032CおよびCL0670(0.1μM、1μMおよび5μM)またはDMSO(対照細胞)で、37℃にて24時間処理した。最後に、細胞を4%パラホルムアルデヒド(PFA)で室温(RT)にて15分間固定し、免疫蛍光アッセイを行った(βチューブリン:赤およびGFP:緑)。Operetta CLS共焦点顕微鏡(Perkin Elmer社)で画像を得た。
【0134】
図8は、変異シヌクレインおよび凝集体の数が、5μM GKK1032CおよびCL0670処理細胞において有意に減少したことを示す。
【0135】
図9は、変異ハンチンチンおよび凝集体の数が、5μM CL0670処理細胞において有意に減少したことを示す。
【0136】
例8:化合物Iの最大耐用量および薬物動態
化合物Iの最大耐用量(MTD)および薬物動態(PK)を、雌C57BL/6(約25g)9週齢マウスへの腹腔内投与後に決定した。注射は、Creomophor-EtOH-HO(10:5:85)中の化合物Iの150mg/Kg用量を含むものであった。血漿および脳中のGKK1032Cの濃度を、以前に検証された分析方法を使用して、二重反復あたりの異なる時間(投与前、5分、15分、30分、1時間、4時間、10時間、24時間および48時間)で決定した。結果を図10に示し、結果は、血漿中の最高濃度は注射後4時間において30,000ng/mLであることを示している。GKK1032Cは、血液脳関門の通過に成功し、約18時間脳中で高レベルに達している。脳中の最高濃度は、注射後4時間において850ng/mLであり、投与後24時間における対照レベルに達するまで、次第に減少した。
【0137】
例9:化合物Iおよびマウスの運動協調性、恐怖/不安および短期記憶に対する通常条件下でのその効果
実験は、マウスに対する化合物Iの腹腔内投与が、動物の運動協調性、恐怖/不安および短期記憶行動における何らかの効果を有するかどうかを評価するために実施した。この実験の動機は、通常条件下で、化合物Iの注射が、イン・ビボにおける8週齢C57BL6/J雄マウスの行動に影響を及ぼすかどうかを決定することである。マウスを、群I(ビヒクル注射のみ)および群II(化合物I注射)に分けた。マウスに対し、1日1回の用量150mg/kgを3日間注射した。試験は、ロータロッドパフォーマンス試験(1、2、3および4日目)、オープンフィールド試験(2および3日目)ならびに新奇物体認識試験(4日目のみ)からなるものであった。
【0138】
図11は、化合物Iは試験した動物の運動協調性において効果を示さなかったことを示す。
【0139】
図12および13は、恐怖および/または不安に関する動物の行動変化の徴候を示したオープンフィールド試験結果を示す。意外にも、化合物Iは、動物がアリーナの中央の四角で過ごす時間を増加させ、かつ立ち上がり行動(齧歯類が中央の四角において後肢で立つ頻度)を増加させた。化合物Iは、線通過数(すなわち、齧歯類がグリッド線を通過する頻度)をさらに増加させた。この実験の結果は、動物の探索行動の増加を示していること、ならびに化合物Iの、恐怖を軽減させることおよび/または不安レベルを減少させることによる脱抑制効果を示したことの証拠である。
【0140】
図15は、新奇物体認識試験を示す。結果は、化合物Iの投与は、齧歯類の短期記憶を変化させなかったことを示した。
【0141】
例10:化合物IおよびCL0670ならびにマウスモデルにおけるハンチントン病からのニューロンの保護におけるその効果
ハンチントン病の化学的モデルを実施し、ニューロンの保護における化合物IおよびCL0670の能力を評価した。これは、コハク酸デヒドロゲナーゼ酵素を阻害することによりニューロンの酸化ストレスを誘導する3-ニトロプロピオン酸の腹腔内注射により達成される。
【0142】
8週齢のC57BL6/J雄マウスを4群に分けた。
【0143】
群I(4匹)のマウスに対し、GKK1032CおよびCL0670(1日1回の用量150mg/kgを3日間)注射した。
【0144】
群II(5匹)のマウスに対し、GKK1032CおよびCL0670(1日1回の用量150mg/kgを3日間)ならびに3-ニトロプロピオン酸(1日2回の用量50mg/kgを3日間)を注射した。群IIの場合、GKK1032CおよびCL0670の注射の2時間後および12時間後に3-ニトロプロピオン酸を注射した。
【0145】
群III(5匹)のマウスに対し、3-ニトロプロピオン酸(1日2回の用量50mg/kgを3日間)注射した。
【0146】
群IV(6匹)のマウスに対し、ビヒクルのみを注射した。
【0147】
マウスを、注射の2時間後に、1日1回のロータロッド試験に供した。4日目に、マウスを、その日の1~3日目と同じ時間にロータロッド試験に供し、試験の後、サンプルを採取した。
【0148】
図15は、群I(□)、II(■)、III(●)およびIV(○)に関するロータロッド試験結果を示す。群III(酸化ストレス誘導因子3-ニトロプロピオン酸による処理のみ)に属するマウスに関して、実験の1日目から運動協調性が有意に影響を受けた。この結果は、ハンチントン病のシナリオと一致する。群IIのマウスは、処理の2日後に運動能の有意な改善を示し、このことは、GKK1032CおよびCL0670は、2回の投与後に運動非協調性を部分的に防止することを示すものである。
【0149】
図16は、群I、II、IIIおよびIVに関するオープンフィールド試験結果を示す。意外にも、GKK1032CおよびCL0670は、動物がアリーナの中央の四角で過ごす時間および線通過数(すなわち、齧歯類がグリッド線を通過する頻度)を増加させた。この実験の結果は、動物の改善および回復行動を示したことの証拠である。
【0150】
例11:マウスモデルにおける脳卒中からのニューロンの保護における化合物IおよびCL0670の能力
中大脳動脈閉塞は、皮質および線条体へのMCAの血流の一時的または永久的な制限が関与する。脳における虚血傷害を評価するために、脳卒中の脳虚血モデルが一般的に使用される。中大脳動脈(MCA)の閉塞は、線条体および皮質の両方における脳血流量の低下に至る。これは、ヒト脳卒中で生じるものと類似した脳損傷をもたらす高度に再現性のあるモデルである。
【0151】
化合物GKK1032CおよびCL0670を、10mg/kgの用量で静脈内に投与した。11週齢のC57BL6/J雄マウスを、各7匹の3群:中大脳動脈閉塞(虚血)に供したマウス、中大脳動脈閉塞ならびにGKK1032CおよびCL0670の投与に供したマウス、に分けた。
【0152】
総てのマウスに対し、最初に3日連続でロータロッドの訓練を行った。この期間の後、マウスをセボフルランで眠らせ、手術に供した。30分間中大脳動脈を閉塞させる外科用フィラメントを維持することにより、閉塞を行った。一度除去したら、GKK1032CおよびCL0670を頸静脈に注射した。蘇生の24時間後、動物をロータロッド試験に供した。
【0153】
結果を図18に示すが、閉塞術(脳卒中)に供したマウスが、劇的な(約75%)運動協調性の障害を受けたことが認められる。脳卒中を有するマウスに対するGKK1032CおよびCL0670の迅速な注射は、図17に示されるように、動物(約17%)の回復を大幅に改善した。
【0154】
マウスの運動協調性に対するGKK1032CおよびCL0670により生じた神経保護効果と、外科手術により生じた脳損傷とを比較するために、動物を屠殺し、脳卒中の大きさを、塩化テトラゾリウムによる処理後に目視検査により測定した。図18は、パーセント平均脳卒中容積が約48%であったのに対して、GKK1032CおよびCL0670で処理したマウスのパーセント平均脳卒中容積は39.5%であったことを示す。データは、GKK1032CおよびCL0670は脳卒中に対する優れた神経保護剤であることを確認するものである。
【0155】
図19は、GKK1032CおよびCL0670は、中大脳動脈閉塞により生じた脳卒中容積のおよそ18%を保護することができることを示す。
【0156】
寄託微生物または他の生物学的材料
寄託機関の名称:Coleccion Espanola de Cultivos Tipo(CECT)
寄託機関の住所:スペイン国バレンシア、パテルナ、カテドラティコ、オースティン、エスカルディノ、パルク、シエンティフィク、ウニベルシタット、デ、バレンシア、エディフィシオ、3、CUE
受託日:2011年1月18日
受託番号:CECT20769

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【国際調査報告】