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特表2022-524542加速度計を使用したVFA心臓再同期治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-06
(54)【発明の名称】加速度計を使用したVFA心臓再同期治療
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/368 20060101AFI20220425BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20220425BHJP
   A61B 5/283 20210101ALI20220425BHJP
   A61B 5/353 20210101ALI20220425BHJP
   A61B 5/352 20210101ALI20220425BHJP
【FI】
A61N1/368
A61B5/33 110
A61B5/33 120
A61B5/283
A61B5/353
A61B5/352
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021554666
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(85)【翻訳文提出日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 US2020019788
(87)【国際公開番号】W WO2020185400
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】62/816,847
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/793,193
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507020152
【氏名又は名称】メドトロニック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ,スバム
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C053BB12
4C053BB23
4C053CC01
4C053JJ18
4C053JJ23
4C053KK02
4C127AA02
4C127AA06
4C127BB05
4C127GG01
4C127GG02
4C127GG05
4C127GG16
4C127LL08
4C127LL13
(57)【要約】
植込み型医療機器は、電気的活動を検出するための複数の電極と、機械的活動を検出するための運動検出器と、電気的活動および機械的活動のうちの少なくとも1つに基づいて少なくとも1つの電気機械的間隔を決定するコントローラとを含む。検出された活動は、第2の電極を使用して房室(AV)ペーシング間隔に従ってペーシングパルスを送達することに応答してもよい。AVペーシング間隔は、電気機械的間隔を調整するために使用されてもよい。電気機械的間隔は、心臓治療が許容できるかどうか、または心房または心室のリモデリングが成功するかどうかを決定するために使用されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植込み型医療機器であって、
複数の電極であって、
患者の心臓の心房に、心臓治療を送達するか、または前記患者の心臓の前記心房の電気的活動を検知するために植込まれる第1の電極と、
前記第1の電極より遠位の前記患者の心臓の中隔壁(septal wall)に、前記患者の心臓の心室に心臓治療を送達するか、またはその電気的活動を検知するために植込まれる第2の電極と、を含む複数の電極と、
前記患者の心臓の機械的活動を検出するための運動検出器と、前記患者の心臓に心臓治療を送達するための前記複数の電極に動作可能に結合された治療送達回路と、
前記患者の心臓の電気的活動を検知するための前記複数の電極、および前記患者の心臓の機械的活動を検知するための前記運動検出器に動作可能に結合された検知回路と、
前記治療送達回路および前記検知回路に動作可能に結合された処理回路を含むコントローラであって、
前記第2の電極を使用して房室(AV)ペーシング間隔に従ってペーシングパルスを送達し、
前記ペーシングパルスを送達することに応答する電気的活動および機械的活動のうちの少なくとも1つに基づいて少なくとも1つの電気機械的間隔を決定し、かつ
前記少なくとも1つの電気機械的間隔に基づいて前記AVペーシング間隔を調整するように構成されているコントローラと、を備える、機器。
【請求項2】
前記AVペーシング間隔を調整するために、コントローラが、
前記少なくとも1つの電気機械的間隔が心臓治療のために許容できるかどうかを決定し、かつ
心臓治療のために許容できない前記少なくとも1つの電気機械的間隔に応答して、前記AVペーシング間隔を調整するようにさらに構成されている、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記コントローラが、
前記第1の電極を用いた心房興奮を示す電気的活動、および前記運動検出器を用いた心房収縮を示す機械的活動に基づいて心房興奮から収縮間隔までを決定し、かつ
前記決定された心房興奮から収縮間隔までに基づいて前記AVペーシング間隔を決定するようにさらに構成されている、請求項1または2に記載の機器。
【請求項4】
検出された前記心房興奮が、前記第1の電極を使用して検出された内因性心房興奮である、請求項3に記載の機器。
【請求項5】
心房収縮を示す検出された前記機械的活動が、S4心音に対応する、請求項3または4に記載の機器。
【請求項6】
遠位端領域を含むハウジングをさらに備え、前記第1の電極が、前記ハウジングにリードレスで結合され、前記第2の電極が、前記ハウジングの前記遠位端領域からリードレスで延び、前記運動検出器、前記治療送達回路、前記検知回路、および前記コントローラが、前記ハウジング内に封入されている、請求項1~5のいずれかに記載の機器。
【請求項7】
前記第1の電極が、右心房電極であり、前記第2の電極が、組織貫通電極である、請求項1~6のいずれかに記載の機器。
【請求項8】
前記第1の電極が、前記患者の心臓の前記RAに心臓治療を送達するか、またはその電気的活動を検知するために、前記患者の心臓の右心房(RA)に植込み可能であり、前記第2の電極が、前記患者の心臓の左心室心筋の基底領域(basal region)、中隔領域(septal region)、または基底中隔領域(basal-septal region)における左心室(LV)に心臓治療を送達するか、またはその電気的活動を検知するために、前記患者の心臓の前記RAのKoch三角領域から植込み可能である、請求項1~7のいずれかに記載の機器。
【請求項9】
前記少なくとも1つの電気機械的間隔が、心室ペーシングを示す電気的活動から僧帽弁閉鎖(mitral valve closure)を示す機械的活動までの間隔を含む、請求項1~8のいずれかに記載の機器。
【請求項10】
心室ペーシングから僧帽弁閉鎖までの前記間隔が、内因性心室興奮から僧帽弁閉鎖までの間隔の所定のパーセンテージよりも長くなることに応答して許容できない、請求項9に記載の機器。
【請求項11】
僧帽弁閉鎖を示す前記機械的活動が、S1心音に対応する、請求項9または10に記載の機器。
【請求項12】
前記少なくとも1つの電気機械的間隔が、僧帽弁閉鎖を示す機械的活動から、心室ペーシングに応答して大動脈弁閉鎖を示す機械的活動までの間隔を含む、請求項1~11のいずれかに記載の機器。
【請求項13】
心室ペーシングに応答して僧帽弁閉鎖から大動脈弁閉鎖までの前記間隔が、内因性僧帽弁閉鎖から内因性大動脈弁閉鎖までの間隔の所定のパーセンテージより短くなることに応答して許容できない、請求項12に記載の機器。
【請求項14】
大動脈弁閉鎖を示す前記機械的活動が、S2心音に対応する、請求項12または13に記載の機器。
【請求項15】
前記AVペーシング間隔が、心臓治療のために許容できない前記少なくとも1つの電気機械的間隔に応答して、短縮されている、請求項1に記載の機器。
【請求項16】
前記少なくとも1つの電気機械的間隔が心臓治療のために許容できるかどうかを決定することが、前記少なくとも1つの電気機械的間隔をそれぞれの閾値電気機械的間隔と比較することを含み、前記それぞれの閾値電気機械的間隔が、特定のAVペーシング間隔を使用して決定され、前記特定のAVペーシング間隔が、複数の外部電極を含む電極装置からの監視された電気的活動に基づいて決定される、請求項1~15のいずれかに記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、概して、医療機器に関し、特に、心臓再同期治療のための医療機器に関する。
【0002】
心臓伝導系には、洞房(SA)結節、房室(AV)結節、ヒス束、脚、およびプルキンエ線維が含まれる。心拍は、心臓の自然な「ペースメーカー」として記載されてもよい、SA結節で開始される。SA結節から生じる電気インパルスにより、心房心筋が収縮する。信号は、心室が収縮し始める前に心房が収縮を停止させるように伝導を先天的に遅らせるAV結節を介して心室に伝導され、それによって適切なAV同期を提供する。電気インパルスは、AV結節から、ヒス束、脚、およびプルキンエ線維を介して心室心筋へ伝導される。
【0003】
AV結節の伝導不良またはSA結節機能の低下などの伝導系異常のある患者は、ペースメーカーなどの植込み型医療機器(IMD)を受け入れ、より正常な心調律とAV同期を回復することがある。心臓ペースメーカー、植込み型除細動器(ICD)、または心臓再同期治療(CRT)機器など、いくつかのタイプのIMDは、心臓内または心臓に隣接して位置決めされている1つ以上の植込み型の心内膜、心外膜、または冠状静脈リードにおける電極を介して、患者の心臓に治療用電気刺激を提供する。治療用電気刺激は、ペーシング、電気的除細動、または除細動のためのパルスまたはショックの形で心臓へ送達されてもよい。場合によっては、IMDは、心臓の内因性脱分極を検知し、その検知に基づいて心臓への治療刺激の送達を制御してもよい。
【0004】
心臓への治療用電気刺激の送達は、患者において発生することがある心室同期不全などの心臓状態に対処するのに有用である可能性がある。心室同期不全は、心臓の異なる心室における同期の欠如、または収縮のタイミングの違いとして説明されてもよい。収縮のタイミングの大きな違いは、心臓の効率を低下させる可能性がある。IMDによって心臓に送達されるCRTは、心臓の心室の電気機械的活動を再同期させることによって心拍出量を高めることがある。CRTは、右心房、右心室、および左心室のペーシングのために、「トリプルチャンバペーシング」と呼ばれることがある。
【0005】
心不整脈は、例えばICDから、心臓ペーシングに加えて心臓を電気的除細動または除細動するための電気ショック治療を送達することによって治療されてもよく、ICDは、患者の心拍を検知し、頻脈または細動の発現を検出するために不整脈検出スキームに従って拍を分類してもよい。検出される不整脈には、心室性頻脈(VT)、高速心室性頻脈(FVT)、心室細動(VF)、心房性頻脈(AT)、および心房細動(AT)が含まれ得る。多くの単形性の速いリズムを実質的に終了させるために、抗頻脈ペーシング(ATP)の無痛治療が心室頻脈(VT)を治療するために使用され得る。ATPは無痛であるが、ATPはすべてのタイプのVTに効果的な治療を送達しないことがある。例えば、ATPは、形態が変化する多形性VTにはそれほど効果的ではないことがある。多形性VTおよび心室細動(VF)はより致命的である可能性があり、ショックによる迅速な治療が必要になることがある。
【0006】
デュアルチャンバ医療機器が利用可能であり、デュアルチャンバ医療機器は、右心房に配置されてもよい経静脈心房リード搬送電極と、右心房を介して右心室に配置されてもよい経静脈心室リード搬送電極とを含む。デュアルチャンバ医療機器自体は、概して皮下ポケットに植込まれ、経静脈リードは皮下ポケットにトンネルされる。デュアルチャンバ医療機器は、心房電気信号および心室電気信号を検知し、正常な心臓リズムとAV同期を促進するために必要に応じて心房ペーシングおよび心室ペーシングの両方を提供することができる。いくつかのデュアルチャンバ医療機器は、心房性不整脈および心室性不整脈の両方を治療することができる。
【0007】
リードレスペースメーカーなどの心臓内医療機器は、患者の心臓内に完全に植込むために導入または提案されており、経静脈リードの必要性を排除する。リードレスペースメーカーは、治療用電気信号を送達するため、および/または心臓の内因性脱分極を検知するために、その外側ハウジングに1つ以上の電極を含んでもよい。心臓内医療機器は、患者の心臓のシングルチャンバ内で、検知およびペーシングなどの心臓治療機能を提供してもよい。シングルチャンバ心臓内機器は、心房性または心室性いずれかの不整脈または細動のいずれかを治療することもできる。いくつかのリードレスペースメーカーは心臓内式ではなく、心臓の外側に位置決めされてもよく、いくつかの例では、固定メカニズムを介して心臓の壁に固定されてもよい。
【0008】
一部の患者では、シングルチャンバ機器は患者のニーズに適切に対応することがある。しかしながら、シングルチャンバの検知および治療のみが可能なシングルチャンバ機器は、すべての患者、例えば、いくつか形式のAV同期不全または頻脈を持つ患者の心臓伝導性疾患または異常に完全に対処できないことがある。より正常な心臓リズムを回復するために、場合によってはICD機能に加えてデュアルチャンバ検知および/またはペーシング機能が使用されてもよい。
【発明の概要】
【0009】
本開示の技術は、概して、加速度計などの運動検出器を使用して検出されてもよい、患者の心臓の電気的または機械的活動に基づいた心臓再同期治療(CRT)を最適化することに関する。電気的および/または機械的活動は、効果的な心臓治療が送達されているかどうか、または患者の心臓の効果的なリモデリングが経時的に示されているかどうかを決定するために使用されてもよい。様々な植込み型医療機器は、例えば、右心房から左心室(例えば、心房から心室、またはVfA)を通して、または冠状静脈洞を通して心臓伝導系または左心室心筋を使用して心臓治療を提供してもよい。心臓治療の様々な非限定的な例は、シングルチャンバもしくはマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルもしくはトリプルチャンバペーシング)、房室同期ペーシング、非同期ペーシング、トリガペーシング、心臓再同期ペーシング、または頻脈関連治療を含む。一般に、組織貫通電極は、患者の心臓の左心室心筋に隣接する、またはその内部の基底領域、中隔領域、または基底中隔領域に植込み可能であり得る。
【0010】
一態様では、本開示は、複数の電極を含む植込み型医療機器を提供する。複数の電極は、患者の心臓の心房に、心臓治療を送達するか、または患者の心臓の心房の電気的活動を検知するために植込まれる第1の電極と、第1の電極より遠位の患者の心臓の中隔壁に、患者の心臓の心室に心臓治療を送達するか、またはその電気的活動を検知するために植込まれる第2の電極と、を含む。植込み型医療機器はまた、患者の心臓の機械的活動を検出するための運動検出器と、患者の心臓に心臓治療を送達するための複数の電極に動作可能に結合された治療送達回路と、患者の心臓の電気的活動を検知するための複数の電極、および患者の心臓の機械的活動を検知するための運動検出器に動作可能に結合された検知回路と、を含む。機器はまた、治療送達回路および検知回路に動作可能に結合された処理回路を有するコントローラとを含む。コントローラは、第2の電極を使用して房室(AV)ペーシング間隔に従ってペーシングパルスを送達し、ペーシングパルスを送達することに応答する電気的活動および機械的活動のうちの少なくとも1つに基づいて少なくとも1つの電気機械的間隔を決定し、かつ少なくとも1つの電気機械的間隔に基づいてAVペーシング間隔を調整するように構成されている。
【0011】
別の態様では、本開示は、複数の電極を含む植込み型医療機器を提供する。複数の電極は、患者の心臓の心房に、心臓治療を送達するか、または患者の心臓の心房の電気的活動を検知するために植込まれる第1の電極と、第1の電極より遠位の患者の心臓の中隔壁に、患者の心臓の心室に心臓治療を送達するか、またはその電気的活動を検知するために植込まれる第2の電極と、を含む。植込み型医療機器はまた、患者の心臓の機械的活動を検出するための運動検出器と、患者の心臓に心臓治療を送達するための複数の電極に動作可能に結合された治療送達回路と、患者の心臓の電気的活動を検知するための複数の電極、および患者の心臓の機械的活動を検知するための運動検出器に動作可能に結合された検知回路と、を含む。機器はまた、治療送達回路および検知回路に動作可能に結合された処理回路を有するコントローラとを含む。コントローラは、心房興奮を示す第1の電極からの電気的活動を検出し、心房収縮を示す運動検出器から機械的活動を検出し、検出された心房興奮および検出された心房収縮に基づいて少なくとも1つの電気機械的間隔を決定し、かつ少なくとも1つの電気機械的間隔の繰り返し測定が心房リモデリングを示しているかどうかを決定するように構成されている。
【0012】
別の態様では、本開示は、複数の電極を含む植込み型医療機器を提供する。複数の電極は、患者の心臓の心房に、心臓治療を送達するか、または患者の心臓の心房の電気的活動を検知するために植込まれる第1の電極と、第1の電極より遠位の患者の心臓の中隔壁に、患者の心臓の心室に心臓治療を送達するか、またはその電気的活動を検知するために植込まれる第2の電極と、を含む。植込み型医療機器はまた、患者の心臓の機械的活動を検出するための運動検出器と、患者の心臓に心臓治療を送達するための複数の電極に動作可能に結合された治療送達回路と、患者の心臓の電気的活動を検知するための複数の電極、および患者の心臓の機械的活動を検知するための運動検出器に動作可能に結合された検知回路と、を含む。機器はまた、治療送達回路および検知回路に動作可能に結合された処理回路を有するコントローラとを含む。コントローラは、第2の電極を使用して心室興奮を示す電気的活動を検出し、心室収縮を示す運動検出器を使用して機械的活動を検出し、検出された心室興奮および検出された心室収縮に基づいて少なくとも1つの電気機械的間隔を決定し、かつ少なくとも1つの電気機械的間隔の繰り返し測定が心室リモデリングを示しているかどうかを決定するように構成されている。
【0013】
別の態様では、本開示は、房室(AV)ペーシング間隔に従って患者の心臓にペーシングパルスを送達することを含む方法を提供する。方法はまた、ペーシングパルスを送達することに応答する電気的活動および機械的活動のうちの少なくとも1つに基づいて少なくとも1つの電気機械的間隔を決定することも含む。方法はまた、少なくとも1つの電気機械的間隔に基づいてAVペーシング間隔を調整することも含む。
【0014】
本開示の1つ以上の態様の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。本開示に記載される技術の他の特徴、目的、および利点は、本明細書および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】患者の心臓に植込まれた心臓内医療機器と、患者の心臓の外側に位置決めされた別の医療機器と、を含む、例示的な心臓治療システムの概念図である。
図2】患者の心臓に植込まれた電極を備えたリードを含む医療機器を含む例示的な心臓治療システムの概念図である。
図3】患者の心臓に植込まれた電極を備えたリードを含む医療機器を含む例示的な心臓治療システムの概念図である。
図4】患者の心臓に植込まれた電極を備えたリードを含む医療機器を含む例示的な心臓治療システムの概念図である。
図5図1の心臓内医療機器および患者の心臓の解剖学的構造の拡大概念図である。
図6】左心室の標準的な17のセグメントビューにおける患者の心臓のマップの概念図である。
図7】例えば、図1図4および図16の例示的なシステムおよび機器とともに使用するためのリング電極として実装された遠位ハウジングベース電極を含む、遠位固定および電極アセンブリを有する心臓内医療機器の斜視図である。
図8】例えば、本明細書に記載の機能および治療を提供するために、図1図4および図16の医療機器のハウジング内に封入され得る例示的な回路のブロック図である。
図9】例えば、図1図4および図16の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための別の例示的な心臓内医療機器の斜視図である。
図10】例えば、図1図4および図16の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための心房運動検出器を使用して心房活動を検出する例示的な方法のフローチャートである。
図11】例えば、図1図4および図16の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための生理学的反応情報を表すために心音を検出する例示的な方法のフローチャートである。
図12】例えば、図1図4および図16の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための生理学的反応情報を表すための生体インピーダンスを検出する例示的な方法のフローチャートである。
図13】例えば、図1図4および図16の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための電極装置、表示装置、および演算装置を含む例示的なシステムの図である。
図14】例えば、図1図4および図16の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための胴体表面電位を測定するための例示的な外部電極装置の図である。
図15】例えば、図1図4および図16の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための胴体表面電位を測定するための例示的な外部電極装置の図である。
図16】本開示の様々なシステムおよび方法とともに使用するための電極および加速度計を有する例示的な植込み型医療機器の図である。
図17】例えば、図16の植込み型医療機器を使用して検出され得る例示的な電気的および機械的活動信号のプロットである。
図18】例えば、図16の植込み型医療機器を使用して決定され得る例示的な成果のプロットである。
図19】例えば、図16の植込み型医療機器とともに使用するための電気機械的間隔を使用する心臓治療のための1つの例示的な方法のフローチャートを示す。
図20】例えば、図16の植込み型医療機器とともに使用するための電気機械的間隔を使用してリモデリングを検出するための1つの例示的な方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の技術は、患者の心臓の電気的または機械的活動に基づいて、心臓再同期治療(CRT)などの心臓治療を最適化することに関する。電気的および/または機械的活動は、効果的な心臓治療が送達されているかどうか、または患者の心臓の効果的なリモデリングが経時的に示されているかどうかを決定するために使用されてもよい。これらの技術は、例えば、右心房から左心室(例えば、心房から心室、またはVfA)を通して、または冠状静脈洞を通して心臓伝導系または左心室心筋を使用して心臓治療を提供するための植込み型医療機器を使用することを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明する様々な技術を、ヒス束または脚ペーシングアプリケーションに適用してもよい。心臓治療の様々な非限定的な例は、シングルチャンバまたはマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)、房室同期ペーシング、非同期ペーシング、トリガペーシング、心臓再同期ペーシング、または頻脈関連治療を含む。本明細書では、ペースメーカーまたはICDなどの植込み型医療機器について言及しているが、その方法およびプロセスは、患者の心臓に関する任意の医療機器、システム、または方法とともに使用することができる。様々な他の用途が、本開示の利益を有する当業者に明らかになるであろう。
【0017】
電気的および/または機械的活動に基づいて心臓治療を最適化するために使用され得る植込み型医療機器および技術を提供することが有益であり得る。経静脈リードのない植込み型医療機器(例えば、リードレス機器)を提供することは有益であることがある。シングルまたはマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)、房室同期ペーシング、非同期ペーシング、トリガペーシング、心臓再同期ペーシング、または頻脈関連治療などの様々な心臓治療のために使用することができる植込み型医療機器を提供することも有益であり得る。さらに、心内膜および/またはヒス束伝導系のペーシングを容易にするために、医療機器を右心房のKoch三角領域または心臓伝導系に正確かつ正確な方法で送達するための技術を提供することが有益であり得る。
【0018】
本開示は、患者の心臓の左心室心筋に隣接する、またはその内部の基底領域、中隔領域、または基底中隔領域において、組織貫通電極を植込むための技術を提供する。特に、組織貫通電極は、心臓伝導系または左心室心筋を検知またはペーシングするように位置決めされてもよく、例えば、右心房を通して左心室へ、または冠状静脈洞を通して植込み可能である。組織貫通電極、または別の画像化可能な部材は、少なくとも部分的に画像化可能な材料で形成されてもよい。この技術は、二次元(2D)画像化データを捕捉するために画像化機器を使用することを含んでもよく、三次元(3D)情報(例えば、配向情報)は、植込み型医療機器を表す2D画像化データから生成されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、組織貫通電極は、右心房心内膜および中心線維体を通して右心房のKoch三角領域から患者の心臓の左心室心筋の基底領域および/または中隔領域おいて植込まれてもよい。リードレス植込み型医療機器では、組織貫通電極は、機器のハウジングの遠位端領域からリードレスに延びていてもよく、右心房電極は、ハウジングにリードレスで結合されてもよい(例えば、ハウジングの外側の一部であるか、またはハウジングの外側に位置決めされる)。右心房運動検出器は、植込み型医療機器内にあってもよい。リード付き植込み型医療機器では、1つ以上の電極は、植込み型リードを使用してハウジングに結合されてもよい。機器が植込まれるとき、電極は、患者の心臓の1つ以上の心房および/または心室における電気的活動を検知するために使用されてもよい。運動検出器は、患者の心臓の1つ以上の心房および/または心室の機械的活動を検知するために使用されてもよい。特に、右心房および左心室の活動が監視されてもよく、任意選択的に、右心室の活動が監視されてもよい。電極は、心房細動のためのシングルチャンバペーシング、徐脈のための房室同期ペーシング、非同期ペーシング、同期型ペーシング、心室同期不全のための心臓再同期ペーシング、抗頻脈ペーシング、またはショック治療などの、心臓治療を送達するために使用されてもよい。ショック治療は、植込み型医療機器によって開始されてもよい。同じく植込まれてもよい血管外ICDなどの別個の医療機器は、植込み型医療機器と動作的に通信してもよく、機器によって提供される信号パルス(例えば、トリガ、信号、または独特の電気パルス)などのトリガに応答して電気ショックを送達してもよい。
【0020】
一般に、電気的または機械的活動は、本開示の利益を有する当業者に利用可能な様々な技術を使用して、検知、決定、取得、または監視されてもよい。本明細書で使用される場合、「監視」という用語は、概して、使用、例えば、処理または記憶され得るデータまたは情報を検知、取得、または受信することを指す。
【0021】
本開示はまた、例えば、右心房のKoch三角領域において、医療機器を送達および植込むための技術を提供する。植込み部位として説明され得るKoch三角領域の一般的な位置を識別するために、様々な機器が使用されてもよい。柔軟なリードまたは別のプローブを潜在的な植込み部位に前進させて、電極、リードレット、リード、または心臓内機器などの医療機器の植込みのための正確な位置を識別するために使用してもよい。特に、本開示の技術は、同期不全の患者に同期ペーシングを提供するための機器を植込むため、および中等度の心不全を有する徐脈患者にデュアルチャンバペーシングを提供するために使用されてもよい。
【0022】
図1~4は、例えば、医療機器を植込み部位に送達するために図24~25に示される方法を使用して植込まれ得る様々な心臓治療システムの例を示す。これらの図では、左心室(LV)は、概して右心室(RV)の後ろに位置決めされている。
【0023】
本開示は、リードレスおよびリード付き植込み型医療機器について記載しているが、最初に図1を参照すると、図1は、シングルまたはデュアルチャンバ治療のために構成され、患者の心臓8に植込まれてもよい心臓内医療機器10を含む心臓治療システム2の概念図を示す。いくつかの実施形態では、機器10は、シングルチャンバペーシングのために構成されてもよいし、例えば、シングルチャンバペーシングとマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)との間で切り替えてもよい。本明細書で使用される場合、「心臓内」は、例えば、心臓治療を提供するために、患者の心臓内に完全に植込まれるように構成された機器を指す。機器10は、標的植込み領域4における患者の心臓8の右心房(RA)に植込まれて示されている。機器10は、標的植込み領域4内における心房心内膜に対して機器の遠位端を固定する1つ以上の固定部材20を含んでもよい。標的植込み領域4は、ヒス束5(またはヒスの束)と冠状静脈洞3との間にあってもよいし、三尖弁6に隣接してもよい。機器10は、概して、右心房に位置決めされながら、一方または両方の心室(例えば、状況に応じて、右心室、左心室、または両方の心室)を検知または治療を提供し得る心房からの心室(VfA)機器として記載され得る。特に、機器10は、組織貫通電極を含んでもよく、組織貫通電極は、右心房のKoch三角領域から右心房心内膜および中心線維体を通って、患者の心臓の左心室心筋の基底領域、中隔領域または基底中隔領域に植込まれてもよい。
【0024】
機器10は、リードレス植込み型医療機器として説明されてもよい。本明細書で使用される場合、「リードレス」は、患者の心臓8から延びるリードがない機器を指す。言い換えれば、リードレス機器は、患者の心臓の外側から患者の心臓の内側に延びていないリードを有してもよい。いくつかのリードレス機器は、静脈を通じて導入されてもよいが、一旦植込まれると、機器は、いかなる経静脈リードも有さない、または含まないことがあり、いかなる経静脈リードも使用せずに心臓治療を提供するように構成されてもよい。さらに、特に、リードレスVfA機器は、機器のハウジングが心房に位置決めされるときに、心室の電極に動作可能に接続するためにリードを使用しない。追加的に、リードレス電極は、電極とハウジングとの間にリードを使用せずに、医療機器のハウジングに結合されてもよい。
【0025】
機器10は、機器10の遠位端領域から延びる真っ直ぐなシャフトを規定するまたは有するダーツ電極アセンブリ12を含んでもよい。ダーツ電極アセンブリ12は、心室の心内膜または心外膜の表面を完全に貫通することなく、心房心筋および中心線維体を通って心室心筋14内に、または心室中隔に沿って配置されてもよい、または少なくとも配置されるように構成されてもよい。ダーツ電極アセンブリ12は、シャフトの遠位端領域に電極を有してもよいまたは含んでもよく、これにより、電極は、心室信号を検知して、心室パルスを送達するために(例えば、左心室の収縮を開始するために左心室を脱分極するために)、電極が心室心筋内に位置決めされてもよい。いくつかの例では、シャフトの遠位端領域における電極は、ペーシングおよび検知のための双極電極対において使用するために提供された陰極電極である。図示されるように植込み領域4は、ダーツ電極アセンブリ12の1つ以上の電極が心室心筋に位置決めされることを可能にしてもよいが、本明細書で開示される態様を有する機器は、マルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)、マルチチャンバ検知を有するシングルチャンバペーシング、シングルチャンバペーシングおよび/または検知、または必要に応じて他の臨床治療および用途のために、他の位置に植込まれてもよいことが認識される。
【0026】
機器10は、本明細書ではシングルダーツ電極アセンブリを含むものとして記載されているが、機器10は、心室の心内膜または心外膜の表面を完全に貫通することなく、心房心筋および中心線維体を通って、心室の心筋14内へ、または心室中隔に沿って配置されたまたは配置されるように構成された2つ以上のダーツ電極アセンブリを含んでもよいことを理解されたい。追加的に、各ダーツ電極アセンブリは、シャフトの遠位端領域に、または他の領域(例えば、近位または中央領域)に沿って、複数の電極を担持するか、または含んでもよい。
【0027】
心臓治療システム2はまた、別個の医療機器50(図1の概略的に示されている)を含んでもよく、この別個の医療機器50は、患者の心臓8の外側(例えば、皮下)に位置決めされてもよく、かつ心臓治療を送達するために患者の心臓8に動作可能に結合されてもよい。一例では、別個の医療機器50は、血管外ICDであってもよい。いくつかの実施形態では、血管外ICDは、除細動電極を含むまたは除細動電極を有する除細動リードを含んでもよい。治療ベクトルは、除細動リードにおける除細動電極と、ICDのハウジング電極との間に存在してもよい。さらに、ICDの1つ以上の電極は、患者の心臓8に関する電気信号を検知するために使用されてもよい。ICDは、1つ以上の除細動または電気的除細動ショックを含むショック治療を送達するように構成されてもよい。例えば、不整脈が検知された場合、ICDは電気リード線を介してパルスを送信し、心臓にショックを与え、正常なリズムを回復してもよい。いくつかの例では、ICDは、心臓内にリード線を配置したり、心臓に直接電線を取り付けたりすることなく、ショック治療を送達してもよい(皮下ICD)。本明細書に記載のシステム2とともに使用できる血管外皮下ICDの例は、2016年3月8日に発行された米国特許第9,278,229号(Reinkeら)に記載され得、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
ショック治療(例えば、除細動リードの除細動電極によって提供される除細動ショック)の場合、別個の医療機器50(例えば、血管外ICD)は、治療送達回路を使用して、最先端の電圧、傾斜、送達されるエネルギー、パルス位相などを含む多くの波形特性のうちの任意のものを有する除細動ショックを生成させる制御回路を含み得る。治療送達回路は、例えば、単相、二相、または多相の波形を生成してもよい。追加的に、治療送達回路は、異なる量のエネルギーを有する除細動波形を生成してもよい。例えば、治療送達回路は、皮下除細動のために合計で約60~80ジュール(J)のエネルギーを送達する除細動波形を生成させ得る。
【0029】
別の医療用デバイス50は、感知回路をさらに含み得る。検知回路は、電極の1つ以上の組み合わせを介して検知された電気信号を取得し、得られた信号を処理するように構成されてもよい。検知回路の構成要素は、アナログ構成要素、デジタル構成要素、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。検知回路は、例えば、1つ以上の検知増幅器、フィルタ、整流器、閾値検出器、アナログ-デジタル変換器(ADC)などを含んでもよい。検知回路は、検知された信号をデジタル形式に変換し、処理および/または分析のためにデジタル信号を制御回路に提供してもよい。例えば、検知回路は、検知電極からの信号を増幅してもよく、増幅された信号をADCによってマルチビットデジタル信号に変換し、次いで、デジタル信号を制御回路に提供してもよい。1つ以上の実施形態では、検知回路は、処理された信号を閾値と比較して、心房または心室の脱分極(例えば、P波またはR波)の存在を検出し、心房の脱分極(例えば、P波)または心室脱分極(例えば、R波)の存在を制御回路に示してもよい。
【0030】
機器10および別個の医療機器50は、協力して、患者の心臓8に心臓治療を提供してもよい。例えば、機器10および別個の医療機器50は、頻脈を検出し、頻脈を監視し、および/または頻脈関連治療を提供するために使用されてもよい。例えば、機器10は、別個の医療機器50と無線で通信して、別個の医療機器50を使用してショック治療をトリガしてもよい。本明細書で使用される場合、「無線で」は、機器10と別個の医療機器50との間の金属導体を使用しない動作的結合または接続を指す。一例では、無線通信は、機器10によって提供される特有の、信号を送る、またはトリガする電気パルスを使用してもよく、この電気パルスは、患者の組織を通って伝導し、別個の医療機器50によって検出可能である。別の例では、無線通信は、患者の組織を通って伝播し、かつ、例えば、別個の医療機器50の別個の通信インターフェース(例えば、アンテナ)を使用して検出可能である電磁放射を提供するために、機器10の通信インターフェース(例えば、アンテナ)を使用してもよい。
【0031】
図2を参照すると、心臓治療システム402は、リードの遠位端領域に結合され、患者の心臓8の内部に植込まれた組織貫通電極アセンブリ12を有する1つまたは単一の植込み型リード410を含むリード付き医療機器408を含んでもよい。リード付き医療機器408のハウジング420は、患者の心臓8の外側に植込まれて、位置付けられてもよく、ペーシング治療を較正する、および/またはペーシング治療を送達するように構成されてもよい。リード410は、右心房電極を含んでもよく、機器408は、デュアルチャネル対応機器(例えば、右心房および左心室の両方におけるペーシングおよび/または検知をする)として動作してもよい。いくつかの実施形態では、リード410は、右心房電極を含まなくてもよい。言い換えれば、リード付き医療機器408は、非同期、トリガ、または別のタイプのシングルチャネルペーシングのために使用され得るシングルチャネル機器であってもよい。リード410を使用するリード付き医療機器408は、例えば、図1に関して記載されたのと同じまたは同様の方法で、組織貫通電極アセンブリ12が植込まれたときに、活動を検知するか、または左心室(LV)にペーシングを送達してもよい。
【0032】
図3を参照すると、心臓治療システム404は、機器418が2つの植込み型リード410、412を含むことを除いて、図2のリード付き医療機器408と同様のリード付き医療機器418を含んでもよい。特に、植込み型リード412は、リード412の遠位端領域に結合された電極(例えば、右心房電極)を含んでもよく、リード410とは異なる位置に植込まれてもよい。いくつかの実施形態では、リード412は、右心房の異なる領域に植込まれる。いくつかの実施形態では、各リード410、412は、デュアルチャネル機器418の1つのチャネルに寄与してもよい。例えば、リード410は、例えば、図1に関して記載したのと同じまたは同様の方法で、組織貫通電極アセンブリ12の組織貫通電極が植込まれるときに、活動を検知するか、または左心室(LV)にペーシングを送達してもよく、リード412は、活動を検知するか、右心房(RA)にペーシングを送達し得る。
【0033】
図4を参照すると、心臓治療システム406は、機器428が3つの植込み型リード410、412、414を含むことを除いて、図3のリード付き医療機器418と同様のリード付き医療機器428を含んでもよい。特に、植込み型リード414は、リード414の遠位端領域に結合された電極(例えば、右心室電極)を含んでもよく、リード410、412とは異なる位置に植込まれてもよい。図示のように、植込み型リード414は、三尖弁6を通って右心房(RA)から右心室(RV)まで延びる。いくつかの実施形態では、リード414は、右心室の領域に植込まれる。いくつかの実施形態では、各リード410、412、414は、1つのチャネルをマルチチャネル機器428に寄与してもよい。例えば、リード410は、組織貫通電極アセンブリ12が、例えば、図1に関して記載したのと同じまたは同様の方法で植込まれたときに、活動を検知するか、または左心室(LV)にペーシングを送達してもよく、リード412は、ペーシングをRAに送達する活動を検知してもよいし、リード414は、活動を検知するか、またはペーシングをRVに送達してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、RVをペーシングするためのリード414上のRV電極と、LVをペーシングするためのリード410上のLV電極との間のペーシング遅延(例えば、RV-LVペーシング遅延、またはより概して、VVペーシング遅延)は、例えば、電極装置(例えば、ECGベルト)などの別個の医療機器を使用して較正または最適化されてもよい。VV遅延を較正または最適化するために、様々な方法を使用されてもよい。いくつかの実施形態では、複数の異なるVV遅延においてペーシングを試験するために、医療機器428が使用されてもよい。例えば、RVは、LVよりも約80、60、40、および20ミリ秒(ms)進んでペーシングされてもよく、LVは、RVよりも約80、60、40、および20ms進んでペーシングされてもよく、同時RV-LVペーシング(例えば、約0msのVVペーシング遅延)であってもよい。次に、医療機器428は、例えば、ペーシングのために使用されたときに、電極装置を使用して測定された最小の電気的同期不全に対応するVVペーシング遅延を自動的に選択するように構成されてもよい。異なるVVペーシング遅延での試験ペーシングは、医療機器428によって設定された公称AV遅延などの特定のAV遅延を使用して、または患者の特性に基づく所定の最適AV遅延で実施され得る。
【0035】
図5は、図1の心臓内医療機器10および患者の心臓8の解剖学的構造の拡大概念図である。特に、機器10は、電気的活動を検知し、および/またはペーシング治療を送達するように構成されている。心臓内機器10は、ハウジング30を含んでもよい。ハウジング30は、図8と併せて概して記載される検知回路、治療送達回路、制御回路、メモリ、遠隔測定回路、他の任意選択的なセンサー、および電源などの機器10の内部構成要素が存在する密閉された内部空洞を画定し得る。ハウジング30は、チタンもしくはチタン合金、ステンレス鋼、MP35N(非磁性ニッケルーコバルトークロムモリブデン合金)、白金合金、または他の生体適合性金属もしくは金属合金を含む導電性材料から形成され得る。他の例では、ハウジング30は、セラミック、ガラス、サファイア、シリコーン、ポリウレタン、エポキシ、アセチルコポリマープラスチック、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、または他の生体適合性ポリマーを含む非導電性材料から形成され得る。
【0036】
少なくとも一実施形態では、ハウジング30は、カテーテル送達を容易にするために、概して円筒形の遠位端領域32と近位端領域34との間に延びるものとして記載され得る。他の実施形態では、ハウジング30は、本明細書に記載の機能性および有用性を実施するために、角柱状または任意の他の形状であってもよい。ハウジング30は、機器10の植込み中に送達ツールと係合するために、例えば、近位端領域34で送達ツールインターフェース部材26を含んでもよい。
【0037】
ハウジング30の全部または一部は、心臓治療中、例えば、検知および/またはペーシングにおいて電極として機能してもよい。示された例では、ハウジングベース電極24は、ハウジング30の近位部分(例えば、遠位端領域32よりも近位端領域34に近い)を取り囲むように示されている。ハウジング30が、チタン合金または上記の他の例などの導電性材料から形成される場合、ハウジング30の一部は、パリレン、ポリウレタン、シリコーン、エポキシ、または他の生体適合性ポリマーなどの非導電性材料によって電気的に絶縁されてもよく、導電性材料の1つ以上の別個の領域を、近位ハウジングベース電極24を規定するために露出させたままにする。ハウジング30が、セラミック、ガラスまたはポリマー材料などの非導電性材料から形成される場合、チタン、プラチナ、ステンレス鋼、またはそれらの合金などの導電性コーティングまたは層が、近位ハウジングベース電極24を形成するために、ハウジング30の1つ以上の別個の領域に適用されてもよい。他の例では、近位ハウジングベース電極24は、ハウジング30に取り付けられるかまたは組み立てられるリング電極などの構成要素であってもよい。近位ハウジングベース電極24は、例えば、導電性ハウジング30またはハウジング30が非導電性材料である場合の導電体を介して、機器10の内部回路に電気的に結合されてもよい。
【0038】
示された例では、近位ハウジングベース電極24は、ハウジング遠位端領域32よりもハウジング近位端領域34の近くに配置されており、したがって、「近位ハウジングベース電極」24と称される。しかしながら、他の例では、ハウジングベース電極24は、ハウジング30に沿った他の位置、例えば、示された位置に対してより遠位に配置されてもよい。
【0039】
遠位端領域32で、機器10は、遠位固定および電極アセンブリ36を含んでもよく、これは、1つ以上の固定部材20および等しいまたは等しくない長さの1つ以上のダーツ電極アセンブリ12を含んでもよい。一例では、シングルダーツ電極アセンブリ12は、ハウジング遠位端領域32から遠位方向に延びるシャフト40と、シャフト40の自由な遠位端領域またはその近くにおける、先端電極42などの1つ以上の電極要素とを含む。先端電極42は、鋭いまたは斜めのエッジを有する鋭い先端または針状の先端を使用せずに、組織層内へおよび組織層を通って貫通するための比較的狭い先端直径(例えば、約1ミリメートル(mm)未満)を有する円錐形または半球形の遠位先端を有してもよい。
【0040】
ダーツ電極アセンブリ12のシャフト40は、通常は真っ直ぐな部材であってもよく、剛性であってもよい。他の実施形態では、シャフト40は、比較的剛性であるが、それでも横方向に制限された柔軟性を有すると説明されてもよい。さらに、シャフト40は、心臓の運動に合わせていくらかの横方向のたわみを可能にするために非剛性であってもよい。しかしながら、弛緩状態では、外力を受けていないときに、シャフト40は、少なくともシャフト40の高さ47だけハウジング遠位端領域32から離間して先端電極42を保持するために、示されたように真っ直ぐな位置を維持してもよい。言い換えれば、ダーツ電極アセンブリ12は、弾性であると記載されてもよい。
【0041】
ダーツ電極アセンブリ12は、先端電極42を所望の組織層、例えば、心室心筋内に配置するために1つ以上の組織層を貫通するように構成されてもよい。したがって、シャフト40の高さ47または長さは、予想されるペーシング部位の深さに対応してもよく、シャフト40は、植込み領域4に押し付けられたときに横方向または半径方向への曲げに抵抗するために、その長手方向軸線に沿って比較的高い圧縮強度を有してもよい。第2のダーツ電極アセンブリ12が使用される場合、その長さは、予想されるペーシング部位の深さに等しくなくてもよく、ペーシングエネルギーを組織に送達するための無関係な電極として機能するように構成されてもよい。長手方向の軸方向の力は、例えば、ダーツ電極アセンブリ12を標的植込み領域内の組織内に前進させるためにハウジング30の近位端34に長手方向の押付け力を加えることによって、先端電極42に対して加えられてもよい。シャフト40は、長手方向において非圧縮性であり、および/または、例えば組織運動に合わせて一時的なたわみを許容するために、横方向または半径方向の力を受けたときに横方向または半径方向に弾性変形可能であると説明することができるが、横方向の力が減少したときには通常の真っ直ぐな位置へ戻ってもよい。シャフト40がいかなる外力にも曝されていない、またはその長手方向の中心軸に沿った力のみに曝されているときに、シャフト40は、示されたように真っ直ぐな線形位置を保持してもよい。
【0042】
1つ以上の固定部材20は、通常は湾曲した位置を有する1つ以上の「タイン」として記載されてもよい。タインは、送達ツール内の遠位に延ばされた位置に保持されてもよい。タインの遠位先端は、送達ツールから解放されると、通常の湾曲位置(図示された)へ再び近位方向に弾性的に湾曲する前に、限られた深さまで心臓組織を貫通してもよい。さらに、固定部材20は、例えば、2017年6月13日に発行された米国特許第9,675,579号(Grubacら)、および2015年9月1日に発行された米国特許第9,119,959号(Rysら)に記載された1つ以上の態様を含んでもよく、これらは、各々参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0043】
いくつかの例では、遠位固定および電極アセンブリ36は、遠位ハウジングベース電極22を含む。マルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)および検知のためのペースメーカーとして機器10を使用する場合、先端電極42は、リターン陽極電極として働く近位ハウジングベース電極24と対になる陰極電極として使用されてもよい。代替的に、遠位ハウジングベース電極22は、心室信号を検知して、心室ペーシングパルスを送達するために、先端電極42と対になったリターン陽極電極として働いてもよい。他の例では、遠位ハウジングベース電極22は、心房信号を検知して、標的植込み対象領域4における心房心筋にペーシングパルスを送達するための陰極電極であってもよい。遠位ハウジングベース電極22が心房陰極電極として機能するときに、近位ハウジングベース電極24は、心室ペーシングおよび検知のために先端電極42と対になっている戻り陽極として、および心房ペーシングおよび検知のために遠位ハウジングベース電極22と対になっている戻り陽極として機能してもよい。
【0044】
この図に示されているように、いくつかのペーシング用途における標的植込み領域4は、概してAV結節15およびヒス束5よりも下側の心房心内膜18に沿っている。ダーツ電極アセンブリ12は、心室心内膜の表面17を貫通することなく、標的植込み領域4における心房心内膜18を通り、中心線維体16を通って、心室心筋14内へ突き刺さるためのシャフト40の高さ47または長さを少なくとも部分的に規定してもよい。ダーツ電極アセンブリ12の高さ47または長さが標的植込み領域4内へ完全に進められるときに、先端電極42は、心室心筋14内にとどまってもよく、遠位ハウジングベース電極22は、心房心内膜18と密接してまたはその近傍に位置決めされてもよい。ダーツ電極アセンブリ12は、様々な例において、約3mm~約8mmの先端電極42およびシャフト40の合計結合高さ47または長さを有してもよい。シャフト40の直径は、約2mm未満であってもよく、約1mm以下、または約0.6mm以下であってもよい。
【0045】
機器10は、ハウジング30内に音響または運動検出器11を含んでもよい。音響または運動検出器11は、1つ以上の制御回路80(図8)、検知回路86(図8)、または治療送達回路84(図8)に動作可能に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、音響または運動検出器11は、図10図12に示されたように方法600、650または800とともに使用されてもよい。音響または運動検出器11は、心房の機械的活動(例えば、心房収縮)および/または心室の機械的活動(例えば、心室収縮)などの機械的活動を監視するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、音響または運動検出器11は、右心房の機械的活動を検出するために使用されてもよい。音響または運動検出器11の非限定的な例は、加速度計またはマイクロフォンを含む。いくつかの実施形態では、音響または運動検出器11によって検出された機械的活動は、機器10の1つ以上の電極によって検出された電気的活動を補足または置き換えるために使用されてもよい。例えば、音響または運動検出器11は、近位ハウジングベース電極24に加えて、またはその代替として使用され得る。
【0046】
音響または運動検出器11は、レート反応検出のために、またはレート反応IMDを提供するように使用されてもよい。レート応答に関連する様々な技術は、「Optimization for rate responsive cardiac pacemaker」と題された、1992年10月13日に発行された米国特許第5,154,170号(Bennettら)、および「Method and apparatus for rate-responsive cardiac pacing」と題された、1996年10月8日に発行された米国特許第5,562,711号(Yerichら)に記載され得、各々参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0047】
様々な実施形態において、音響または運動検出器11(または運動センサー)は、HSセンサーとして使用されてもよいし、マイクロフォンまたは1軸、2軸、もしくは3軸加速度計として実装されてもよい。一実施形態では、音響センサーは、植込み型医療機器ハウジング内に取り付けられ、心音に関連する機械的運動に応答する圧電結晶として実装される。圧電結晶は、専用のHSセンサーであってもよく、または複数の機能のために使用されてもよい。示された例示的な実施形態では、音響センサーは、IMDハウジングの知覚可能な振動の形式で患者アラート信号を生成するためにも使用される圧電結晶として具体化されている。アラート状態を検出すると、制御回路80は、圧電結晶を興奮させることによって、患者アラート制御回路にアラート信号を生成させ得る。
【0048】
制御回路は、圧電結晶を「リスニングモード」で使用してHS検知回路によってHS信号を検知するか、または「出力モード」で使用して患者アラートを生成させるかを制御するように使用され得る。患者アラートの生成中に、HS検知回路は、制御回路によってHSセンサーから一時的に切り離され得る。
【0049】
本開示の技術を用いた実装に適合させ得る音響センサーの他の実施形態の例は、概して、米国特許第4,546,777号(Grochら)、米国特許第6,869,404号(Schulhauserら)、米国特許第5,554,177号(Kievalら)、および米国特許第7,035,684号(Leeら)に記載され得、各々参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0050】
様々なタイプの音響センサーは、使用され得る。音響センサーは、前述のように生成した1つ以上の心音に応答する任意の植込み型または外部センサーであってもよく、それによって、時間および振幅において心音に相関した電気アナログ信号を生成する。次に、アナログ信号は処理されてもよく、これは、HS検知モジュールまたは制御回路80によって導き出されるような振幅または相対時間間隔などのHSパラメータを取得するための、HS検知モジュールによるデジタル変換を含んでもよい。音響センサーおよびHS検知モジュールは、最適化されているCRTまたは別の心臓治療を送達することができるIMDに組み込まれてもよいし、本明細書で記載されるペースパラメータ最適化手順中に使用されるIMDもしくは外部プログラマまたはコンピュータとの有線または無線通信を有する別個の機器において実装されてもよい。
【0051】
図6は、患者の心臓の二次元(2D)心室マップ300(例えば、トップダウンビュー)であり、標準の17セグメントビューにおける左心室320および右心室322を示している。マップ300は、人間の心臓の異なる領域に対応する複数の領域326を含む。図示のように、領域326は、数字で1~17とラベル付けされている(例えば、これは、人間の心臓の左心室の17のセグメントに対応する)。マップ300の領域326は、基底前領域1、基底前中隔領域2、基底下中隔領域3、基底下領域4、基底下外側領域5、基底前外側領域6、中央前領域7、中央前中隔領域8、中央下中隔領域9、中央下領域10、中央下外側領域11、中央前外側領域12、頂端前領域13、頂端中隔領域14、頂端下領域15、頂端外側領域16、および頂端領域17を含み得る。右心室322の下中隔および前中隔領域、ならびに右索枝ブロック(RBB)および左索枝ブロック(LBB)も、示されている。
【0052】
いくつかの実施形態では、本開示の組織貫通電極のいずれかは、患者の心臓の左心室心筋の基底領域、中隔領域、または基底中隔領域に植込まれてもよい。特に、組織貫通電極は、右心房のKoch三角領域から、右心房心内膜および中心線維体を通って植込まれてもよい。
【0053】
植込まれると、組織貫通電極は、左心室心筋の基底領域、中隔領域、または基底中隔領域などの、標的植込み領域4(図1~5)に位置決めされてもよい。マップ300を参照すると、基底領域は、基底前領域1、基底前中隔領域2、基底下中隔領域3、基底下領域4、中央前領域7、中央前中隔領域8、中央下中隔領域9、および中央下領域10のうちの1つ以上を含む。マップ300を参照すると、中隔領域は、基底前中隔領域2、基底前中隔領域3、中央前中隔領域8、中央下中隔領域9、および頂端中隔領域14のうちの1つ以上を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、組織貫通電極は、植込まれたときに、左心室心筋の基底中隔領域に位置決めされてもよい。基底中隔領域は、基底前中隔領域2、基底下中隔領域3、中央前中隔領域8、および中央下中隔領域9のうちの1つ以上を含み得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、組織貫通電極は、植込まれたときに、左心室心筋の高い下/後基底中隔領域に位置決めされ得る。左心室心筋の高い下/後基底中隔領域は、基底下中隔領域3および中央下中隔領域9のうちの1つ以上の一部(例えば、基底下中隔領域のみ、中央下中隔領域のみ、または基底下中隔領域および中央下中隔領域の両方)を含んでもよい。例えば、高い下部/後部基底中隔領域は、概して破線の境界として示された領域324を含んでもよい。示されているように、破線の境界は、高い下/後基底中隔領域が位置している場所の概算を表しており、特定の用途に応じて、いくらか異なる形状またはサイズを採ることがある。
【0056】
図7は、ペーシング治療を較正し、および/またはペーシング治療を送達することが可能な機器10の三次元透視図である。示されたように、遠位固定および電極アセンブリ36は、リング電極として実装された遠位ハウジングベース電極22を含む。遠位ハウジングベース電極22は、固定部材20の固定部材タイン20a、20bおよび20cが心房組織と係合した場合に、心房組織と密接してまたは心房組織に動作的に近接して位置決めされてもよい。タイン20a、20b、および20cは、弾性的に変形可能であってもよく、植込み部位への機器10の送達中に遠位に延ばされてもよい。例えば、タイン20a、20b、および20cは、機器10が送達ツールから前進させられるときに心房心内膜表面を貫通し、送達ツール内にもはや拘束されなくなったとき、(図示されたように)それらの通常の湾曲位置に戻ってもよい。タイン20a、20b、および20cがそれらの通常の位置に戻るように湾曲すると、固定部材20は、遠位固定部材および電極アセンブリ36を心房心内膜表面に向かって引っ張ってもよい。遠位固定部材および電極アセンブリ36が心房心内膜に向かって引っ張られると、先端電極42は、心房心筋および中心線維体を通って心室心筋内へ前進させられてもよい。次に、遠位ハウジングベース電極22は、心房内膜表面に対して位置決めされ得る。
【0057】
遠位ハウジングベース電極22は、チタン、白金、イリジウム、またはそれらの合金などの導電性材料で形成されたリングを含み得る。遠位ハウジングベース電極22は、シングルの連続リング電極であってもよい。他の例では、リングの一部は、リング電極の導電性表面積を減少させるために、電気絶縁コーティング、例えば、パリレン、ポリウレタン、シリコーン、エポキシ、または別の絶縁コーティングでコーティングされてもよい。例えば、遠位ハウジングベース電極22の2つ以上の導電性の露出した表面領域を分離するために、リングの1つ以上のセクターがコーティングされてもよい。例えば、導電性リングの一部を絶縁コーティングで覆うことによって、遠位ハウジングベース電極22の導電性表面積を減少させると、遠位ハウジングベース電極22の電気インピーダンスを増加させて、それにより、心筋、例えば心房心筋組織を捕捉するペーシングパルス中に送達される電流を減少させてもよい。より低い電流ドレインは、機器10の電源、例えば、1つ以上の充電式または非充電式電池を節約し得る。
【0058】
上記のように、遠位ハウジングベース電極22は、戻りアノードとしての近位ハウジングベース電極24と組み合わせて、植込み部位の心房組織にペーシングパルスを送達するための心房カソード電極として構成され得る。電極22および24を使用して、心房P波を検知して、心房ペーシングパルス(検知されたP波がない状態で送達される)を制御してもよく、また、先端電極42を陰極として、および近位ハウジングベース電極24を戻り陽極として使用して送達される心房同期型心室ペーシングパルスを制御し得る。他の例では、遠位ハウジングベース電極22は、心室ペーシングおよび検知のためのカソード先端電極42と併せて、戻りアノードとして使用され得る。
【0059】
図8は、一実施例による機器10を使用して、または本明細書に記載された他の任意の医療機器(例えば、図2の機器408、図3の機器418、図4の機器428、または図9の機器710)のハウジング内に、ペーシング治療を較正する機能および/またはペーシング治療を送達する機能を提供するために、ハウジング30(図7)内に封入され得る回路のブロック図である。別の医療機器50(図1図4)は、同様の方法で構成され得るいくつかまたはすべての同じ構成要素を含み得る。ハウジング30内に封入された電子回路は、ソフトウェア、ファームウェア、およびハードウェアを含んでもよく、これらは、心房および心室の電気心臓信号を共同で監視し、心臓治療が必要な時期を決定し、および/またはプログラムされた治療モードおよびパルス制御パラメータに従って患者の心臓に電気パルスを送達する。電子回路は、制御回路80(例えば、処理回路を含む)、メモリ82、治療送達回路84、検知回路86、および/または遠隔測定回路88を含んでもよい。いくつかの例では、機器10は、ペーシング治療の必要性を決定し、および/またはペーシングレートを制御する際に使用するための、患者の生理学的機能、状態または条件に相関させられた信号を生成するための1つ以上のセンサー90、例えば、患者活動センサーを含む。例えば、1つのセンサー90は、運動を測定するための慣性測定ユニット(例えば、加速度計)を含んでもよい。
【0060】
電源98は、必要に応じて、構成要素80、82、84、86、88、90の各々を含む機器10の回路に電力を供給し得る。電源98は、1つ以上の充電式または非充電式電池などの1つ以上のエネルギー貯蔵機器を含み得る。電源98とセンサー等、80、82、84、86、88、90の構成要素の各々との間の接続(図示されず)は、当業者に示された概略的なブロック図から理解されてもよい。例えば、電源98は、ペーシングパルスを送達するための制御回路80の制御下で適切なタイミングで放電される治療送達回路84に含まれる保持コンデンサを充電するために使用される電力を提供するために、(例えば、DDI(R)のようなデュアルチャンバペーシングモードに従って)治療送達回路84に含まれる1つ以上の充電回路に結合され得る。電源98は、様々な回路に電力を提供するために、検知増幅器、アナログ-デジタル変換器、スイッチング回路など、センサー90、遠隔測定回路88、およびメモリ82などの、検知回路86の構成要素にも結合されている。
【0061】
示された機能ブロックは、機器10に含まれた機能性を表し、本明細書の医療機器10に起因する機能を生成することができるアナログおよび/またはデジタル回路を実施する任意のディスクリートおよび/または集積電子回路構成要素を含んでもよい。様々な構成要素は、特定用途向け集積回路(ASIC)、電子回路、プロセッサ(共有、専用、またはグループ)、および1つ以上のソフトウェアまたはファームウェアプログラムを実行するメモリ、組み合わせ論理回路、状態機械、または他の好適な構成要素、または説明されている機能を提供する構成要素の組み合わせなどの、処理回路を含んでもよい。本明細書に開示された機能性を実装するために使用されるソフトウェア、ハードウェア、および/またはファームウェアの特定の形態は、主に、医療機器において使用される特定のシステムアーキテクチャによって、および医療機器において使用される特定の検出および治療送達方法によって決定される。
【0062】
メモリ82は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、電気的に消去可能なプログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、もしくは任意の他のメモリ機器などの、任意の揮発性、非揮発性、磁気的、または電気的非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含み得る。さらに、メモリ82は、1つ以上の処理回路によって実行されると、制御回路80および/または他の処理回路に、ペーシング治療を較正し、および/または較正されたペーシング治療(例えば、シングルチャンバまたはマルチチャンバペーシング)、または機器10に帰属する他の心臓治療機能(例えば、治療を検知または送達する)を実施させる命令を記憶する非一時的のコンピュータ可読媒体を含み得る。命令を記憶する非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体は、上記に挙げた媒体のいずれかを含んでもよい。
【0063】
制御回路80は、例えば、データバスを介して、心臓電気信号を検知し、検知された心臓イベント、例えば、P波およびR波、またはその欠如に反応して心臓電気刺激治療の送達を制御するための治療送達回路84および検知回路86と通信し得る。先端電極42、遠位ハウジングベース電極22、および近位ハウジングベース電極24は、電気刺激パルスを患者の心臓および検知回路86に送達するために、および心臓電気信号を検知するために、治療送達回路84に電気的に結合され得る。
【0064】
検知回路86は、心房(A)検知チャネル87および心室(V)検知チャネル89を含み得る。遠位ハウジングベース電極22および近位ハウジングベース電極24は、心房信号、例えば、心房心筋の脱分極に付随するP波を検知するために、心房検知チャネル87に結合されてもよい。2つ以上の選択可能な遠位ハウジングベース電極を含む例では、検知回路86は、利用可能な遠位ハウジングベース電極のうちの1つ以上を、心房検知チャネル87に含まれる心臓イベント検出回路に選択的に結合するためのスイッチング回路を含んでもよい。スイッチング回路は、スイッチアレイ、スイッチマトリックス、マルチプレクサ、または検知回路86の構成要素を選択された電極に選択的に結合するのに好適な任意の他のタイプのスイッチング機器を含んでもよい。先端電極42および近位ハウジングベース電極24は、心室信号、例えば、心室心筋の脱分極に付随するR波を検知するために、心室検知チャネル89に結合され得る。
【0065】
心房検知チャネル87および心室検知チャネル89の各々は、各々の検知チャネルによって受信された心臓電気信号から、それぞれP波およびR波を検出するための心臓イベント検出回路を含み得る。チャネル87および89の各々に含まれる心臓イベント検出回路は、心臓電気イベントを検出するための信号品質を改善するために、選択された電極から受信された心臓電気信号を増幅、フィルタリング、デジタル化、および整流するように構成されてもよい。各チャネル87および89内の心臓イベント検出回路は、1つ以上の検知増幅器、フィルタ、整流器、閾値検出器、コンパレーター、アナログ-デジタル変換器(ADC)、タイマー、もしくは他のアナログまたはデジタル構成要素を含んでもよい。心臓イベント検知閾値、例えば、P波検知閾値およびR波検知閾値は、例えば、タイミング間隔および制御回路80によって決定され、メモリ82に記憶され、および/または制御回路80および/または検知回路86のハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアによって制御される検知閾値に基づいて、制御回路80の制御下で、各々の検知チャネル87および89によって自動的に調整され得る。
【0066】
検知閾値交差に基づいて心臓の電気的イベントを検出すると、検知回路86は、制御回路
80に渡される検知されたイベント信号を生成し得る。例えば、心房検知チャネル87は、P波検知閾値交差に応答して、P波検知イベント信号を生成してもよい。心室検知チャネル89は、R波検知閾値交差に応答して、R波検知イベント信号を生成してもよい。検知されたイベント信号は、心臓ペーシングパルスをスケジューリングするために使用される基本時間間隔を制御するペーシングエスケープ間隔タイマーを設定するために、制御回路80によって使用されてもよい。検知されたイベント信号は、特定のプログラムされたペーシングモードに応じて、ペーシングパルスをトリガまたは阻止してもよい。例えば、心房検知チャネル87から受信されたP波検知イベント信号により、制御回路80は、スケジュールされた心房ペーシングパルスを阻止し、プログラムされた房室(AV)ペーシング間隔で心室ペーシングパルスをスケジュールしてもよい。AVペーシング間隔が終了する前にR波が検知された場合、心室ペーシングパルスが阻止されてもよい。制御回路80が心室検知チャネル89からR波検知イベント信号を受信する前にAVペーシング間隔が満了すると、制御回路80は、検知されたP波に同期したスケジュールされた心室ペーシングパルスを送達するために治療送達回路84を使用し得る
【0067】
いくつかの例では、機器10は、とりわけ、徐脈ペーシング、心臓再同期治療、ショック後ペーシング、および/または頻脈関連治療(ATPなど)を含む様々なペーシング治療を送達するように構成され得る。例えば、機器10は、非洞性頻脈を検出して、ATPを送達するように構成されてもよい。制御回路80は、心臓イベント時間間隔、例えば、心房検知チャネル87から受信された連続するP波検知イベント信号間のP-P間隔、心室検知チャネル89から受信された連続R波検知イベント信号間のR-R間隔、およびP波検知イベント信号とR波検知イベント信号との間で受信されたP-Rおよび/またはR-P間隔を決定してもよい。これらの間隔は、非洞性頻脈を検出するための頻脈検出間隔と比較されてもよい。頻脈は、検出されている頻脈検出間隔の閾値数に基づいて所与の心腔内で検出されてもよい。
【0068】
治療送達回路84は、心房ペーシング回路83および心室ペーシング回路85を含み得る。各ペーシング回路83、85は、充電回路、1つ以上の低電圧保持コンデンサなどの1つ以上の電荷蓄積機器、出力コンデンサ、および/または、それぞれのペーシング回路83、85に結合されたペーシング電極ベクトルにペーシングパルスを送達するために保持コンデンサ(複数可)がいつ充電および放電されるかを制御するスイッチング回路を含んでもよい。先端電極42および近位ハウジングベース電極24は、例えば、制御回路80によって設定されたAVまたはVVペーシング間隔の満了時に、心房同期心室ペーシングおよび基本的なより低い心室ペーシングレートを提供するために、心室ペーシングパルスを送達するための双極陰極およびア結節対として心室ペーシング回路85に結合され得る。
【0069】
心房ペーシング回路83は、遠位のハウジングベースの電極22および近位のハウジングベースの電極24に結合されて、心房ペーシングパルスを送達し得る。制御回路80は、プログラムされたより低いペーシングレート、またはレート応答センサーが示したペーシングレートに従って設定される一時的なより低いレートに従って1つ以上の心房ペーシング間隔を設定してもよい。心房ペーシング回路は、P波検知イベント信号が心房検知チャネル87から受信される前に心房ペーシング間隔が終了した場合に、心房ペーシングパルスを送達するように制御されてもよい。制御回路80は、同期された複数のチャンバペーシング(例えば、デュアル-またはトリプル-チャンバペーシング)を提供するために、送達された心房ペーシングパルスに反応してAVペーシング間隔を開始する。
【0070】
心房または心室ペーシング回路83、85の保持コンデンサのプログラムされたペーシング電圧振幅への充電およびプログラムされたペーシングパルス幅に対するコンデンサの放電は、制御回路80から受信した制御信号に従って、治療送達回路84によって実施され得る。例えば、制御回路80に含まれるペースタイミング回路は、様々なシングルチャンバまたはマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)モードまたは抗頻脈ペーシングシーケンスに関連する基本ペーシング時間間隔を制御するために、制御回路80のマイクロプロセッサによって設定されたプログラム可能なデジタルカウンタを含んでもよい。制御回路80のマイクロプロセッサはまた、心臓ペーシングパルスの振幅、パルス幅、極性、または他の特性を設定することができ、これは、メモリ82に記憶されたプログラム値に基づき得る。
【0071】
機器10は、治療送達回路84によって送達される電気刺激治療の必要性を決定し、および/または制御する際に使用するために、患者からの信号を検知するための他のセンサー90を含んでもよい。いくつかの例では、心拍出量の増加の必要性を示すセンサーは、加速度計などの患者活動センサーを含んでもよい。患者活動センサーによって示されるような活動の増加による患者の代謝要求の増加は、センサーが示すペーシングレートを決定する際に使用するために、制御回路80によって決定されてもよい。
【0072】
心臓イベントを検知し、ペーシング治療の送達を制御するために制御回路80によって利用される制御パラメータは、通信インターフェースとして記載されてもよい遠隔測定回路88を介してメモリ82にプログラムされてもよい。遠隔測定回路88は、無線周波数通信または他の通信プロトコルを使用して、プログラマまたはホームモニタなどの外部機器と通信するためのトランシーバおよびアンテナを含む。制御回路80は、外部機器からのダウンリンク遠隔測定を受信しかつ外部機器にアップリンク遠隔測定を送信するために遠隔測定回路88を使用してもよい。場合によっては、遠隔測定回路88は、患者に植込まれた別の医療機器へ/別の医療機器から通信信号を送受信するために使用されてもよい。
【0073】
図9は、別の例による、例えば、シングルまたはマルチチャンバ心臓治療(例えば、デュアル-またはトリプル-チャンバ心臓治療)のために、ペーシング治療を較正および/またはペーシング治療を提供するように構成され得る、別のリードレス心臓内医療機器710の三次元斜視図である。機器710は、ハウジング遠位端領域732からハウジング近位端領域734まで延びた、円筒状の外側側壁として示された外側側壁735を有するハウジング730を含んでもよい。ハウジング730は、心房および心室の心臓電気信号検知および心房および心室のペーシングを含む、シングルまたはマルチチャンバの心臓治療を実施するように構成された電子回路を封入し得る。送達ツールインターフェース部材726は、ハウジング近位端領域734に示されている。
【0074】
遠位固定および電極アセンブリ736は、ハウジング遠位端領域732に結合され得る。遠位固定および電極アセンブリ736は、ハウジング遠位端領域732に結合された電気的に絶縁性の遠位部材772を含んでもよい。組織貫通電極アセンブリ712は、ハウジング遠位端領域732から離れる方向に延在し、複数の非組織貫通電極722は、絶縁性遠位部材772に直接結合し得る。組織貫通電極アセンブリ712は、ハウジング遠位端領域732から離れる方向に長手方向に延在し、ハウジング730の長手方向中心軸731と同軸であってもよい。
【0075】
遠位組織貫通電極アセンブリ712は、電気的に絶縁されたシャフト740および先端電極742(例えば、組織貫通電極)を含み得る。いくつかの例では、組織貫通電極アセンブリ712は、らせんシャフト740および遠位陰極先端電極742を含む能動固定部材である。らせんシャフト740は、シャフト遠位端領域743からシャフト近位端領域741まで延びていてもよく、シャフト近位端領域741は、絶縁性遠位部材772に直接結合されてもよい。らせんシャフト740は、シャフト長さに沿った心臓組織の検知または刺激を回避するために、電気絶縁材料、例えば、パリレンまたは本明細書に列挙された他の例でコーティングされてもよい。先端電極742は、シャフト遠位端領域743にあり、先端電極742が心室内へ前進させられるとき、リターン陽極としての近位ハウジングベース電極724を使用して、心室ペーシングパルスを送達しかつ心室電気信号を検知するための陰極電極として働いてもよい。近位ハウジングベース電極724は、ハウジング730に外接したリング電極であってもよく、長手方向側壁735の非絶縁部分によって規定されてもよい。電極として機能しないハウジング730の他の部分は、図7に関連して上記のように電気絶縁材料でコーティングし得る。
【0076】
LV心筋に貫通する2つ以上の組織貫通電極(例えば、任意のタイプの)を使用することは、より局所的なペーシング捕捉に使用されてもよく、心房組織の捕捉に影響を与える心室ペーシングスパイクを軽減し得る。いくつかの実施形態では、複数の組織貫通電極は、2つ以上のダーツ型電極アセンブリ(例えば、図7の電極アセンブリ12)、らせん型電極(例えば、電極アセンブリ712)を含み得る。複数の組織の貫通電極の非限定的な例は、2つのダーツ電極アセンブリ、それを通って(例えば、中心を通って)延在するダーツ電極アセンブリを備えたヘリックス電極、または二重に絡み合ったヘリックスを含み得る。複数の組織貫通電極は、双極または多極ペーシングに使用されることもできる。
【0077】
いくつかの実施形態では、LV心筋に貫通する1つ以上の組織貫通電極(例えば、任意のタイプの)は、多極組織貫通電極であってもよい。多極組織貫通電極は、1つ以上の電気的に活性で電気的に分離された要素を含み得、これは、1つ以上の組織貫通電極からの双極または多極ペーシングを可能にし得る。
【0078】
複数の非組織貫通電極722は、組織貫通電極アセンブリ712の周辺にある、絶縁性遠位部材772の周辺に沿って提供され得る。絶縁性遠位部材772は、機器710の遠位に面した表面738と、ハウジングの長手方向側壁735に隣接する機器710に外接する円周面739とを規定してもよい。絶縁性遠位部材772は、機器710の遠位に面した表面738と、ハウジングの長手方向側壁735に隣接する機器710に外接する円周面739とを規定してもよい。非組織貫通電極722は、チタン、白金、イリジウム、またはそれらの合金などの導電性材料から形成されてもよい。図示の実施形態では、6つの非組織貫通電極722は、絶縁性遠位部材772の外周に沿って等距離で半径方向に離間されている。しかしながら、2つ以上の非組織貫通電極722が提供されてもよい。
【0079】
非組織貫通電極722は、非組織貫通電極722と嵌合するようなサイズおよび形状の絶縁部材772内のそれぞれの凹部774内に各々保持された別個の構成要素であってもよい。他の例では、非組織貫通電極722はそれぞれ、絶縁性遠位部材772内または絶縁性遠位部材772上に取り付けられた一体型部材の絶縁されていない露出部分であってもよい。電極として機能しない単一部材の介在部分は、絶縁性遠位部材772によって絶縁されてもよく、または周囲環境に露出される場合、電気絶縁コーティング、例えば、パリレン、ポリウレタン、シリコーン、エポキシ、または別の絶縁コーティングでコーティングされ得る。
【0080】
組織貫通電極アセンブリ712が心臓組織内へ前進させられるときに、少なくとも1つの非組織貫通電極722は、パルスを送達するためにおよび/または患者の心臓によって生成された心臓の電気信号を検知するために、心臓組織表面に当接して、密接して、または動作的に近接して位置決めされてもよい。例えば、非組織貫通電極722は、遠位先端電極742が心室組織、例えば心室心筋および/または心室伝導系の一部と直接接触して位置決めされるまで、組織貫通電極アセンブリ712が心房組織内で、および中心線維体を通して前進させられるときに、心房内のペーシングおよびセンシングのために、右心房内心房組織と接触して位置決めされ得る。
【0081】
非組織貫通電極722は、リターン陽極としての近位ハウジングベース電極724との組み合わせにおいて、心房ペーシングパルスを送達するために、および心房電気信号、例えばP波を検知するための陰極電極として集合的に機能するために、治療送達回路84と、ハウジング730によって封入された検知回路86(図8を参照)とに結合されてもよい。検知回路86に含まれたスイッチング回路は、非組織貫通電極のうちの1つ以上を心房検知チャネル87に結合するために制御回路80の制御下で作動させられてもよい。遠位の非組織貫通電極722は、互いに電気的に絶縁されてもよく、これにより、個々の1つの電極722は、単独でまたは心房陰極電極としての電極722のうちの2つ以上の組み合わせにおいて働くために、治療送達回路84に含まれたスイッチング回路によって個々に選択されてもよい。治療送達回路84に含まれたスイッチング回路は、非組織貫通電極722のうちの1つ以上を心房ペーシング回路83に結合するために制御回路80の制御下で作動させられてもよい。2つ以上の非組織貫通電極722は、多点心房陰極電極として動作するように一度に選択され得る。
【0082】
心房ペーシングおよび/または心房検知のために選択された特定の非組織貫通電極722は、心房捕捉閾値試験、電極インピーダンス、心臓電気信号におけるP波信号強度、または他の要因に基づいて選択され得る。例えば、電源98からの最小限の電流ドレインを使用して信頼性の高い心房ペーシングを達成するために、低いペーシング捕捉閾値振幅および比較的高い電極インピーダンスの最適な組み合わせを提供するカソード電極として機能する2つ以上の個々の非組織貫通電極722の単一の1つまたは任意の組み合わせを選択し得る。
【0083】
場合によっては、組織貫通電極アセンブリ712がハウジング730を植込み部位に固定するときに、遠位に面する表面738は、心房心内膜表面に均一に接触し得る。その場合、すべての電極722が、心房陰極を形成するために一緒に選択されてもよい。代替的に、遠位に面した表面738に沿って依然として均等に分散させられたより高い電気インピーダンスを有するマルチポイント心房陰極を形成するために、1つおきの電極722が一緒に選択されてもよい。代替的に、絶縁性遠位部材772の片側に沿った1つ以上の電極722のサブセットを選択して、電極722のペーシングされている心房組織に対する相対位置による最低のペーシング捕捉閾値を達成する所望の部位にペーシングを提供し得る。
【0084】
他の例では、遠位に面する表面738は、組織貫通電極アセンブリ712が心臓組織に入る位置および配向に応じて、隣接する心内膜表面に対してある角度で配向され得る。この状況では、非組織貫通電極722のうちの1つ以上が、他の非組織貫通電極722よりも、隣接する心内膜組織とより密接して位置決めされてもよく、他の非組織貫通電極722は、心内膜表面から離れて角度付けられてもよい。絶縁性遠位部材772の周囲に沿って複数の非組織貫通電極を提供することにより、心臓表面、例えば右心房心内膜表面に対する組織貫通電極アセンブリ712およびハウジング遠位端領域732の角度は、実質的に平行であることが要求されなくてもよい。解剖学的相違および位置の相違により、遠位に面した表面738は、心内膜表面に対して角度づけられてもよいまたは斜めになってもよいが、絶縁性遠位部材772の周囲に沿って分布した複数の非組織貫通電極722は、少なくとも複数の電極722のサブセットを使用して許容できるペーシング閾値および確実な心臓イベント検知を促進するために、1つ以上の電極722と、隣接する心臓組織との間の良好な接触の可能性を高める。絶縁性遠位部材772の全周に沿って円周方向に接触または固定する必要がない場合がある。
【0085】
非組織貫通電極722は各々、遠位に面する表面738に沿って延在する第1の部分722aと、円周面739に沿って延在する第2の部分722bと、を含むことが示されている。第1の部分722aおよび第2の部分722bは連続的な露出面であってもよく、これにより、活性電極表面が、遠位に面した表面738と円周面739とを接続している絶縁性遠位部材772の周縁776を包囲している。非組織貫通電極722は、遠位に面した表面738に沿った1つ以上の電極722、円周面739に沿った1つ以上の電極、各々が遠位に面した表面738および円周面739の両方に沿って延びた1つ以上の電極、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。各非組織貫通電極722の各々の露出面は、それぞれの遠位に面した表面738および/または円周面と同一平面であってもよい。他の例では、各非組織貫通電極722の各々は、絶縁性遠位部材772から突出した隆起した表面を有してもよい。しかしながら、電極722の任意の隆起した表面は、滑らかなまたは丸みを帯びた、組織を貫通しない表面を画定し得る。
【0086】
遠位固定および電極アセンブリ736は、ハウジング730の遠位端領域を密封し得、電極722が装着される基礎を提供し得る。電極722は、ハウジングベース電極と呼ばれてもよい。電極722は、ハウジング730から離れる方向に延びたらせんシャフト740の遠位先端にある遠位先端電極742のように、アクティブな電極部分をハウジング730から離れる方向に延ばすシャフトまたは他の延長部によって支持されなくてもよい。絶縁性遠位部材の遠位に面する表面および/または円周面に結合される、本明細書に提示される非組織貫通電極の他の例は、遠位のハウジングベースのリング電極22(図7)、アセンブリ36(図7)の周りに円周方向に延在する遠位のハウジングベースのリング電極、ボタン電極、他のハウジングベースの電極、および他の円周方向のリング電極を含む。遠位の絶縁部材に直接結合された、中央の組織貫通電極の周囲にある任意の非組織貫通電極は、隣接する心臓組織にペーシングパルスを送達するための陰極電極として、個別に、集合的に、または任意の組み合わせで機能するように提供されてもよい。遠位リング電極22および/または円周リング電極などのリング電極が設けられるときに、リング電極の一部は、コーティングによって電気的に絶縁されて、遠位に面する表面および/または絶縁性遠位部材の円周面に沿って複数の分散された非組織貫通電極を設けてもよい。
【0087】
非組織貫通電極722および上記の他の例は、遠位固定および電極アセンブリ736に沿って提供される組織貫通電極よりも信頼性が高く効果的な心房ペーシングおよび検知を提供することが期待される。心房壁は、心室壁と比較して比較的薄い。組織貫通心房陰極電極は、心房組織内へ深く延びすぎることがあり、これは、心室組織の不意の持続したまたは断続的な捕捉につながる。組織貫通心房陰極電極は、心室組織に物理的に近接している組織貫通心房陰極電極を介して受信される心臓電気信号においてより大きな信号強度を有する心室信号により、心房信号の検知の妨害につながることがある。組織貫通電極アセンブリ712は、機器710の植込み位置を安定させ、非組織貫通電極722が心房において確実にペーシングし、かつ検知しながら先端電極742が心室組織において検知およびペーシングする合理的確実性を提供するために、心室組織に確実に固定されてもよい。機器710が、標的植込み領域4、例えば、図1に示されたように心室中隔に植込まれるときに、非組織貫通電極722が右心房においてペーシングおよび検知を提供しながら、先端電極742は、左心室のペーシングために左心室組織に到達してもよい。組織貫通電極アセンブリ712の長さは、左心室組織に到達するために、遠位に面した表面738から約4~約8mmの範囲であってもよい。場合によっては、機器710は、心房ペーシング回路83から、植込み対象領域4の非組織貫通電極722を介して心房ペーシングパルスを送達して両心房(右心房および左心房)の捕捉を達成することによって、および、心室ペーシング回路85から、先端電極742を介して、植込み対象領域4から心室組織に前進させられた心室ペーシングパルスを送達して両心室(右心室および左心室)の捕捉を達成することによって、4チャンバペーシングを達成し得る。
【0088】
図10は、例えば、生理学的反応情報を表すために使用し得る、図5の音響または運動検出器11を使用して、心房活動を検出する例示的な方法600を示している。特に、方法600は、患者の心臓に植込まれたIMDによって行われてもよい(例えば、運動検出器11によって提供される)運動信号の分析に基づいて心房収縮を検出することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、運動信号は、患者の心臓の右心室などの心室内に植込まれたIMDによって提供されてもよい。方法600は、心室興奮イベントの識別時に心房収縮検出遅延期間を開始すること630を含んでもよい。方法600は、心房収縮遅延期間の終了時に心房収縮検出ウィンドウを開始すること632を含んでもよい。方法600は、心房収縮検出ウィンドウ内の運動信号を分析することを含み得る。
【0089】
方法600は、心房収縮検出ウィンドウ内で運動信号をフィルタリングし、フィルタリングされた信号を整流し、心房収縮検出ウィンドウ内でフィルタリングされ整流された運動信号の微分信号を生成させること634を含み得る。方法600は、心房収縮検出ウィンドウ内の派生信号の振幅が閾値を超えるかどうかを決定すること636を含んでもよい。心房収縮検出ウィンドウ内の派生信号の振幅が閾値を超えると決定することに応答して(636のYES)、方法600は、心房収縮を検出すること638に進んでもよい。そうでなければ(636のNO)、方法600は、派生信号をフィルタリング、整流、および生成すること634に戻ってもよい。運動信号を提供する運動検出器を使用するための様々な技術は、2016年7月26日に発行された「Atrial contraction detection by a ventricular leadless pacing device for atrio-synchronous ventricular pacing」と題された米国特許第9,399,140号(Choら)に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0090】
図11に関して記載するように、心音(HS)を検出し、生理学的反応情報を表すために使用することができる。本明細書に記載のように、S1~S4までの心音のうちの1つ以上の振幅および/または相対時間間隔は、血行力学的利益を達成するための心臓ペーシングおよび/または神経刺激を含むCRTまたは他の心臓治療に対する患者の血行力学的応答を最適化するのに有用である可能性がある。最初の心音S1は、心室収縮期の開始に対応する。房室結節(AV結節)を通って活動電位が伝導すると心室収縮期が開始し、心室心筋を急速に脱分極する。このイベントは、ECGのQRSコンプレックスによって区別される。心室が収縮すると、心室の圧力が上昇し始め、心室圧が心房圧を超えると、心室と心房との間の僧帽弁および三尖弁が突然閉じる。この弁閉鎖がS1を生成してもよい。S1は、概して、約150msの継続時間および約20~250Hzのオーダーの周波数を有する。S1の振幅は、LV収縮性の代理測定を提供してもよい。したがって、S1振幅の増加は、LV収縮性の改善と正の相関があってもよい。QRSの発症からS1まで測定された駆出前期間のような他の測定値が、心筋収縮性指数の代理としても使用されてもよい。
【0091】
心室同期不全による僧帽弁と三尖弁の閉鎖の分離は、S1信号の別々のM1およびT1ピークとして観察されることができる。M1(僧帽弁閉鎖音)とT1(三尖弁閉鎖音)の併合は、心室同期の改善の指標として使用されることができる。
【0092】
概して、左心室圧(LVP)は、ECGのQRSコンプレックスおよび僧帽弁の閉鎖に続いて劇的に上昇し、大動脈弁および肺動脈弁が開いて血液を大動脈および肺動脈へ排出するまで、心室収縮期中に上昇し続ける。心室収縮は、典型的に、駆出期の間、心室、大動脈、および肺動脈において血圧を上昇させ続ける。収縮が減少すると、血圧は、大動脈弁および肺動脈弁が閉じるまで低下する。
【0093】
第2の心音S2は、心室収縮期の終了および心室拡張期の開始の近くで、大動脈弁および肺動脈弁を閉じることによって生成され得る。したがって、S2は、大動脈および肺動脈における拡張期血圧と相関させられていることがある。S2は、概して、約120msの継続時間および25~350Hzのオーダーの周波数を有する。S1とS2との間の時間間隔、すなわち、S1-S2時間間隔は、心室等容性収縮(駆出前)および心周期の駆出期に対応する収縮期時間間隔(STI)を表してもよい。このS1-S2時間間隔は、1回拍出量の代理測定を提供してもよい。さらに、駆出前期間(Q-S1)とS1-S2時間の比率は、心筋収縮性の指標として使用され得る。
【0094】
第3の心音S3は、心室の早期の受動的な拡張期充満に関連し、第4の心音S4は、心房収縮による心室の遅い能動的な充満に関連し得る。第3の音は、聴診器を使用して通常の患者において聞くことは概して困難であり、第4の音は、通常の患者において概して聞こえない。聴診器を使用した検査中の第3および第4の心音の存在は、病的条件を示していることがある。S3およびS4心音は、心臓の拡張期機能に関連しているため、ペースパラメータの最適化に使用され得る。概して、これらの音は、最適なペースパラメータが識別されると最小化または消失する。S1~S4の心音およびそれらのタイミングの他の態様は、当業者に知られているように心臓ペースパラメータ最適化において有用であってもよい。
【0095】
図11は、一実施形態による、心音を使用してペース制御パラメータを最適化するための方法のフローチャート800である。本開示の方法は、フローチャート800に示された1つ以上のブロックを含み得る。心臓治療を最適化するために心音を使用する他の例は、2017年5月9日に付与された「System and method for pacing parameter optimization using heart sounds」と題された米国特許第9,643,0134号に概して記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0096】
ペースパラメータ最適化方法は、ブロック802で開始され得る。最適化プロセスは、外部プログラマを介して受信されたユーザコマンドに応答して開始されてもよい。最初のIMD植込み時、その後の外来通院の間、またはリモートでの患者モニタリングセッションの間、ユーザは外部プログラマまたはネットワークコンピューターを使用してHSベース最適化手順を開始してもよい。追加的または代替的に、フローチャート800によって示されたプロセスは、定期的に開始される、または検知されたHS信号を含んでもよい検知された生理学的信号に基づく治療送達または治療調整の必要性の検知に応答して開始される、自動化されたプロセスであってもよい。
【0097】
ブロック804で、最適化されるペース制御パラメータが選択される。制御パラメータは、AV間隔またはVV間隔などのタイミング関連パラメータであってもよい。ペーシングベクトルは、最適化のためにブロック804において選択されてもよい別の制御パラメータである。例えば、冠状静脈洞リードなどの多極リードが使用される場合、所与の心腔におけるペーシングのために複数の双極または単極ペーシングベクトルが選択されてもよい。特定のペーシングベクトルに関連するペーシング部位は、ペーシング治療の血行力学的利益に大きな影響を与えることがある。したがって、ペーシングベクトルは、本明細書に記載の方法を使用して最適化し得る1つのペース制御パラメータである。
【0098】
ペーシングシーケンスは、ブロック804で選択された試験パラメータの初期パラメータ設定を使用して、ブロック806で開始される。一実施形態では、AV間隔は最適化されており、心室ペーシングは、初期AV間隔設定において送達される。無傷のAV伝導を有する、すなわち、AVブロックを有さない患者における内因性AV間隔をまず測定することによって、初期AV間隔設定がブロック806で選択されてもよいことが理解される。初期AV間隔は、デフォルトのペーシング間隔、最後にプログラムされたAV間隔、または試験される最小または最大のAV間隔であってもよい。代替的に、最適化のためにVV間隔が選択された場合、内因性心室間伝導時間がまず測定されてもよく、ペーシングされたVV間隔は、内因性VV伝導時間より長い、短い、またはほぼ等しいVV間隔において始まって繰り返し調整されてもよい。
【0099】
選択された試験パラメータを少なくとも2つの異なる設定に調整するための反復プロセスが、実行される。パラメータは、任意の所望の順序、例えば、増加、減少、ランダムなどで異なる設定に調整され得る。例えば、AV間隔の調整中に、初期のAV間隔は、測定された内因性AV伝導時間よりちょうど長いか、またはほぼ等しいように設定され得、その後、最小のAV間隔試験設定まで反復的に減少され得る。各ペースパラメータ設定を使用するペーシング中に、HS信号はブロック808において取得される。反復プロセスは、ブロック810で決定されるように、すべての試験パラメータ設定が適用され、各設定についてHS信号が記録されるまで、ブロック812で次の試験パラメータ設定に進む。
【0100】
HS信号は、個々の心臓サイクルから取得されたHSパラメータ測定値のアンサンブル平均化または平均化を可能にするために、複数の心臓サイクルについて取得され得る。増幅、フィルタリング、整流、ノイズキャンセル技法、または他の信号処理ステップを使用して、HS信号の信号対ノイズ比を改善することができ、これらのステップは、心音の一部またはすべてが含まれ得る取得される心音ごとに異なる可能性があることが理解される。
【0101】
少なくとも1つのHSパラメータ測定値は、ブロック814での各試験パラメータ設定について記録されたHS信号から決定される。例えば、プログラマに含まれる、IMDプロセッサまたは外部プロセッサ、または両方の組み合わせが、本明細書で説明されるHS信号分析を実施してもよい。一実施形態では、ブロック814において、S1およびS2が記録され、S1およびS2信号を用いてHSパラメータが測定される。例えば、S1の振幅、V-S2間隔(Vイベントは、Vペースまたは検出されたR波であり得る)、およびS1-S2間隔が、測定される。S3および/もしくはS4の存在に追加的に注意してもよいか、またはこれらの信号の測定は、関連するパラメータを決定するために行われてもよい。HS信号パラメータは、少なくとも2つの異なる試験パラメータ設定、例えば、少なくとも2つの異なるAV間隔、2つ以上の異なるVV間隔、または2つ以上の異なるペーシングベクトルに対して決定される。
【0102】
ブロック818で、ペースパラメータ試験設定の関数としてブロック810で決定された各HSパラメータの傾向が、決定される。一実施形態では、V-S2間隔、S1振幅、およびS1-S2間隔の各々の傾向が決定される。他の実施形態は、S1信号中のM1音とT1音の分離を決定することを含んでもよい。変化したペース制御パラメータに関するHSパラメータ(複数可)の傾向に基づいて、最適なペースパラメータ設定が、ブロック820においてプロセッサによって自動的に識別されてもよい。追加的に、または代替的に、HS傾向は、プログラマなどの外部機器上のブロック822またはリモートネットワーク化されたコンピュータで報告および表示される。
【0103】
試験されるペースパラメータが、例えば、多極電極がLVに沿った四極リードのような心腔に沿って位置決めされる場合のペーシング部位またはペーシングベクトルである場合、ペーシング部位またはペーシングベクトルは、心室収縮性のためのHSベースの代理を最大化することに基づいて選択され得る。一実施形態では、S1の振幅は、心室収縮性の代理として使用され、最大S1に関連するペーシング部位またはベクトルは、最適なペーシングベクトル設定としてブロック820で識別される。
【0104】
ブロック818での各HSパラメータの傾向を決定することは、V-S2間隔傾向が、例えば、実質的に平坦な傾向から減少する傾向への突然の勾配変化を示すかどうかを決定することを含み得る。VS2間隔の傾向の突然の変化に関連するAV間隔は、最適なAV間隔設定として識別される場合がある。最適なAV間隔は、他のHS傾向、例えば、最大S1振幅、および/または最大S1-S2間隔に基づいてさらに識別され得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、自動的に識別された最適なペースパラメータ設定もまた、ブロック824でIMDに自動的にプログラムされ得る。他の実施形態では、臨床医またはユーザは、報告されたHSデータおよび推奨されるペースパラメータ設定を検討し、推奨される設定を受け入れるか、またはHSデータに基づいて別の設定を選択し得る。
【0106】
HS感知モジュールまたは回路は、制御回路80(図8)に動作可能に結合され得、これらの心音の1つ以上を感知するためにHSセンサーからアナログ信号を受信するように構成され得る。例えば、HS検知モジュールは、心音の周波数、継続時間、およびタイミングに基づいて特定の心音を特に検知するように構成された1つ以上の「チャネル」を含んでもよい。例えば、心電図/電位図(ECG/EGM)感知回路は、心音を感知するためにHS感知モジュールによって使用されるHS感知ウィンドウを設定するために、制御回路80によって使用され得る。HS検知モジュールは、心音信号の信号対ノイズ比を最適化するための1つ以上の検知増幅器、フィルタ、および整流器を含んでもよい。別個で固有の増幅およびフィルタリング特性は、必要に応じて信号品質を改善するために、S1~S4の各音を感知するために提供され得る。
【0107】
生体インピーダンス、または心臓内インピーダンスは、測定され得、生理学的反応情報を表すために使用され得る。例えば、本明細書に記載のIMDのいずれも、電流を注入し、電極ベクトル構成の電極(例えば、選択された電極)間の電圧を測定することによって、心臓内インピーダンス信号を測定し得る。例えば、IMDは、第1の電極(例えば、RV電極)と三尖弁に近接するRVに位置している電極との間に電流(例えば、非ペーシング閾値電流)を注入し、第1の電極と第2の電極との間の電圧を測定することによって、インピーダンス信号を測定し得る。使用されてもよい別のベクトルは、LV電極からRV電極までである。他のベクトルペア構成が刺激と測定に使用されてもよいことを認識するであろう。インピーダンスは、対象の組織または心腔を含む電極の任意のセット間で測定することができる。したがって、同じ2つの電極におけるインピーダンスを計算するために電流を注入して電圧を測定するか(バイポーラ構成)、または2つの別個の電極対において電流を注入して電圧を測定することができ(例えば、電流注入のための一対と、電圧検知のための一対)、これは、したがって、四極構成である。四極電極構成の場合、電流注入電極と電圧検知電極は互いに一列に並んでいて(または密接に平行であり)、電圧検知電極は電流検知フィールド内にあってもよい。例えば、SVCコイル電極とRV先端電極との間に1つの注入電流がある場合、電圧検知は、RVコイル電極とRVリング電極との間であってもよい。そのような実施形態において、VfAリードが、LV心臓治療または検知のために使用されてもよい。インピーダンスベクトルは、心房または心室などの特定の解剖学的関心領域を包含するように構成されることができる。
【0108】
本明細書に記載の例示的な方法および/または機器は、1つ以上の電極ベクトル構成を監視し得る。さらに、複数のインピーダンスベクトルは、別のインピーダンスベクトルに対して同時におよび/または定期的に測定されてもよい。少なくとも一実施形態では、例示的な方法および/または機器は、インピーダンス波形を使用して、CRTを最適化するための選択データを取得し得る(例えば、適用可能な基準点を見つけるため、そのような波形からの測定値の抽出を可能にするためなど)。
【0109】
本明細書で使用される場合、「インピーダンス信号」という用語は、生のインピーダンス信号に限定されない。生のインピーダンス信号は、インピーダンス信号を提供するために(例えば、アーチファクト、ノイズ、雑音、電磁干渉(EMI)、および/または外来信号を除去するために)処理、正規化、および/またはフィルタリングされてもよいことが暗示されるべきである。さらに、「インピーダンス信号」という用語は、インピーダンス信号の実数部および虚数部、インピーダンスに基づくコンダクタンス信号(すなわち、インピーダンスの逆数または逆数)などを含み得、その様々な数学的導関数を含み得る。言い換えれば、「インピーダンス信号」という用語は、コンダクタンス信号、すなわちインピーダンス信号の逆数である信号を含むと理解され得る。
【0110】
本明細書に記載の方法および/または機器の1つ以上の実施形態では、様々な患者の生理学的パラメータ(例えば、心臓内インピーダンス、心音、R-R間隔などの心周期間隔など)は、CRTを最適化するための選択データを取得する際に使用するために、監視され得る(例えば、AVおよび/またはVV遅延を設定し、例えばインピーダンスの一次導関数を使用および/または測定することによって、心臓収縮を最適化し、ペーシング部位を選択し、ペーシングベクトルを選択し、リード線を配置し、または電気的および機械的観点の両方からのペーシングキャプチャを評価し、ペーシングに効果的な電極ベクトル構成を選択する(例えば、電気的捕捉は、機械的捕捉を意味しない場合があり、心音およびインピーダンスは、心音およびインピーダンスからの機械的情報を調べることによって、電気的刺激が心臓を捕捉するかどうかを評価するのに役立ち得る)など)。例えば、2つ以上の電極間の心臓内インピーダンス信号は、そのような最適化を提供する際に使用するために監視され得る。
【0111】
図12は、機器パラメータオプションの1つ(例えば、最適なパラメータであってもよい潜在的なAV遅延など、CRTを最適化するために使用され得る選択可能な機器パラメータの1つ)の選択データを取得するための方法850の一例を示す。心音を使用して心臓治療を最適化する他の例は、2017年7月18日に付与された「Cardiac resynchronization therapy optimization based on intracardiac impedance and heart sounds」と題された米国特許第9,707,399号に概して記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0112】
示されるように、ペーシング治療は、複数の機器オプションのうちの1つを使用して送達される(ブロック852)(例えば、複数の機器パラメータオプションは、内因性AV遅延のパーセンテージ、例えば、内因性AV遅延の40%、内因性AV遅延の50%、内因性AV遅延の60%、内因性AV遅延の70%、内因性AV遅延の80%などの、選択、決定、および/または計算されたAV遅延であってもよい)。ペーシング(ブロック852)に使用される機器パラメータオプションのために、選択データは、複数の電極ベクトル構成のそれぞれにおいて取得される(例えば、心臓内インピーダンスは、複数の心周期にわたって監視され、選択データは、そのようなインピーダンス信号を使用して抽出される)。決定ブロック854によって示されたように、選択データがすべての所望の電極ベクトル構成から取得されていない場合、選択データを取得するループ(例えば、ブロック858、860、862および864によって示されたループ)が繰り返される。選択データがすべての所望の電極ベクトル構成から取得された場合、治療を送達するために別の異なる機器パラメータオプションが使用され(ブロック856)、すべての異なる機器パラメータオプションのために選択データが取得されるまで(例えば、異なる機器パラメータオプションのために)図12の方法850が繰り返される(例えば、異なる機器パラメータオプションの各々のために、複数の電極ベクトル構成の各々において選択データが収集される)。
【0113】
所望の電極ベクトル構成(例えば、ブロック858、860、862、および864)の各々について選択データを取得する繰り返しループに示されるように、複数の電極ベクトル構成のうちの1つが、選択データの取得に使用するために選択される(ブロック858)。選択された電極ベクトル構成のために、少なくとも1つの心周期の収縮期部分の少なくとも一部に関連する時間基準点、および/または少なくとも1つの心周期の拡張期部分の少なくとも一部に関連する時間基準点が取得される(ブロック860)(例えば、心音の使用、インピーダンス信号の最小および最大の分析、RR間隔などの生理学的パラメータに基づくアルゴリズムの適用などによって)。例えば、心周期の収縮期および/または拡張期部分に関連する時間基準点が取得されてもよく、心周期の収縮期および/または拡張期部分内の1つ以上の規定されたセグメントに関連する時間基準点が取得されてもよく、および/または心周期の収縮期および/または拡張期部分の1つ以上の点および/または部分内の、またはそれらに関連する一時的な基準点が取得されてもよい。なおさらに、例えば、心周期の収縮期部分のみまたは拡張期部分のみに関連する時間基準点が取得されてもよく、心周期の収縮期部分のみまたは拡張期部分のみにおける1つ以上の規定されたセグメントに関連する時間基準点が取得されてもよく、および/または心周期の収縮期部分のみまたは拡張期部分のみにおける1つ以上の点および/または部分内の、またはそれらに関連する一時的な基準点が取得されてもよい。言い換えれば、心周期の収縮期部分と拡張期部分の両方に関連するか、または心周期のそのような部分の1つだけに関連する基準点が取得されてもよい。さらに、例えば、そのような基準点は、本明細書で記載する分析において使用するために心臓内インピーダンスを測定することができる、測定ウィンドウおよび/または期間(例えば、間隔、点など)を代表するか、または示してもよい。
【0114】
ほぼ同じ時間枠で(例えば、取得された基準点とほぼ同時に)、心臓内インピーダンス信号が、選択された電極ベクトル構成で取得される(ブロック862)。取得された基準点および取得された心臓内インピーダンス信号を用いて、インピーダンス信号からの測定値は、時間基準点(ブロック864)に基づいて抽出される(例えば、基準点間に規定された測定ウィンドウにおけるインピーダンス信号の積分、基準点の間に規定された測定ウィンドウにおけるインピーダンス信号の最大傾斜、基準点の間の時間、基準点における最大インピーダンスなど)。そのような測定値の1つ以上は、そのような測定値の所望の値に匹敵してもよく、測定値が、機器パラメータオプションが治療を最適化するための効果的な機器パラメータであってもよいことを示し得るかどうかの決定を可能にする(例えば、スコアリングアルゴリズムを使用して、機器パラメータオプションが、そのような複数の測定値が特定の基準または閾値を満たしているかどうかに基づいて最適なパラメータである可能性があるかどうかを決定し得る)。
【0115】
(例えば、図12に記載されるように得られた)機器パラメータオプションの各々の測定データは、少なくとも1つの心周期について決定される。1つ以上の実施形態では、そのような測定データは、複数の心周期のために取得される。測定データが取得される心周期は、任意の好適な心周期であってもよい。1つ以上の実施形態では、その間に測定データが取得される、選択された心周期は、呼吸周期に基づく。少なくとも一実施形態では、測定データは、呼吸周期の終了(例えば、呼気の終了の近く)に発生する心周期の間に取得される。
【0116】
図13は、電極装置110、表示装置130、および演算装置140を含む例示的なシステム100を示している。示されるように、電極装置110は、患者120の胸部または胴体の周りに巻かれたバンド内に組み込まれるか、または含まれる複数の電極を含む。電極装置110は、分析、評価などのために、各電極からの電気信号を演算装置140に提供するために、演算装置140に動作的に結合されている(例えば、1つまたは有線の電気的接続を通して、無線でなど)。例示的な電極装置は、2016年4月26日に発行された「Bioelectric Sensor Device and Methods」と題された米国特許第9,320,446号に記載され得、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、例示的な電極装置110は、図14図15を参照してより詳細に記載される。
【0117】
本明細書には記載されないが、例示的なシステム100は、画像化装置をさらに含んでもよい。画像化装置は、非侵襲的な方法で患者の少なくとも一部を画像化する、または画像を提供するように構成された任意のタイプの画像化装置であってもよい。例えば、画像化装置は、造影剤などの非侵襲的ツールを除いて、患者の画像を提供するために患者内に位置し得るいかなる構成要素または部品も使用してはならない。本明細書で記載する例示的なシステム、方法、およびインターフェースは、さらに画像化装置を使用して、VfAペーシング治療を較正および/または送達するため、機器を位置付けおよび位置決めして、VfA心臓ペーシング治療を送達するため、および/または心房からの心室ペーシング治療の評価に関連して、心房からの心室ペーシング治療のために患者の心臓に近接したペーシング電極またはペーシングベクトルを位置付けるか、または選択するためにユーザ(例えば、医師)に非侵襲的な支援を提供してもよい。
【0118】
例えば、例示的なシステム、方法、およびインターフェースは、患者の体内で、リードレス機器、電極、リードレス電極、無線電極、カテーテルなどを含むリードをナビゲートするために使用され得る画像ガイドナビゲーションを提供する一方で、心房から心室(VfA)ペース設定が最適であるかどうかを決定すること、または選択された位置情報(例えば、左心室の特定の位置付けを対象とする電極の位置情報)などの1つ以上の選択されたパラメータが最適であるかどうかを決定することを含む非侵襲的な心臓治療評価を提供することも可能である。画像化装置および/または電極装置を使用する例示的なシステムおよび方法は、2013年6月12日に出願された、「Implantable Electrode Location Selection」と題する米国特許公開第2014/0371832号、2013年6月12日に出願された、「Implantable Electrode Location Selection」と題する米国特許公開第2014/0371833号、2014年3月27日に出願された「Systems,Methods,and Interfaces for Identifying Effective Electrodes」と題する米国特許公開第2014/0323892号、2014年3月27日に出願された「Systems,Methods,and Interfaces for Identifying Optical-Electrical Vectors」と題する、米国特許公開第2014/0323882号に記載されており、これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0119】
例示的な画像化装置は、X線画像および/または他の任意の代替的な画像化診断法を捕捉するように構成され得る。例えば、画像化装置は、アイソセントリック蛍光透視法、バイプレーン蛍光透視法、超音波、演算断層撮影(CT)、マルチスライス演算断層撮影(MSCT)、磁気共鳴画像法(MRI)、高周波超音波(HIFU)、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)、血管内超音波(IVUS)、二次元(2D)超音波、三次元(3D)超音波、四次元(4D)超音波、術中CT、術中MRIなどを使用して、画像または画像データを捕捉するように構成され得る。さらに、画像化装置は、ビデオフレームデータを提供するために複数の連続した画像を(例えば、連続的に)捕捉するように構成され得ることを理解されたい。言い換えれば、画像化装置を使用して経時的に撮影された複数の画像は、ビデオフレームまたは動画のデータを提供し得る。追加的に、画像は、二次元、三次元、または四次元で取得および表示することもできる。より高度な形態では、心臓または身体の他の領域の四次元表面レンダリングは、地図またはMRI、CT、または心エコー検査診断法によって捕捉された術前画像データからの心臓データまたは他の軟組織データを組み込むことによっても達成され得る。CTと組み合わせた陽電子放出断層撮影(PET)、またはCTと組み合わせた単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)などのハイブリッド診断法からの画像データセットはまた、解剖学的データに重畳された機能的な画像データを提供し、例えば、心臓または他の関心領域内の近位の標的位置(例えば、左心室内の位置、左心室空洞の高後基底および/または中隔領域内の選択された位置を含む)を使用して治療装置をナビゲートすることができる。
【0120】
本明細書に記載される例示的なシステムおよび方法と関連して使用され得るシステムおよび/または画像化装置は、2005年1月13日に公開されたEvronらに対する米国特許出願第2005/0008210号、2006年4月6日に公開されたZarkhらに対する米国特許公開第2006/0074285号、2011年5月12日に公開されたZarkhらに対する米国特許公開第2011/0112398号、2013年5月9日に公開されたBradaらに対する米国特許公開第2013/0116739号、2005年12月27日に発行されたEvronらに対する米国特許第6,980,675号、10月23日に発行されたOkerlundらに対する米国特許第7,286,866号、米国特許第7,286,866号、2011年12月11日に発行されたReddyらに対する米国特許第7,308,297号、2011年12月11日に発行されたBurrellらに対する米国特許第7,308,299号、2008年1月22日に発行されたEvronらに対する米国特許第7,321,677号、2008年3月18日に発行されたOkerlundらに対する米国特許第7,346,381号、2008年11月18日に発行されたBurrellらに対する米国特許第7,454,248号、2009年3月3日に発行されたVassらに対する米国特許第7,499,743号、2013年5月9日に公開されたBradaらに対する米国特許出願第2013/0116739号、2005年12月27日に発行されたEvronらに対する米国特許第6,980,675号、2007年10月23日に発行されたOkerlundらに対する米国特許第7,286,866号、2011年12月11日に発行されたReddyらに対する米国特許第7,308,297号、2011年12月11日に発行されたBurrellらに対する米国特許第7,308,299号、2008年1月22日に発行されたEvronらに対する米国特許第7,321,677号、2008年3月18日に発行されたOkerlundらに対する米国特許第7,346,381号、2008年11月18日に発行されたBurrellらに対する米国特許第7,454,248号、2009年3月3日に発行されたVassらに対する米国特許第7,499,743号、2009年7月21日に発行されたOkerlundらに対する米国特許第7,565,190号、2009年9月8日に発行されたZarkhらに対する米国特許第7,587,074号、2009年10月6日に発行されたHunterらに対する米国特許第7,599,730号、2009年11月3日に発行されたVassらに対する米国特許第7,613,500号、2010年6月22日に発行されたZarkhらに対する米国特許第7,742,629号、2010年6月29日に発行されたOkerlundらに対する米国特許第7,747,047号、2010年8月17日に発行されたEvronらに対する米国特許第7,778,685号、2010年8月17日に発行されたVassらに対する米国特許第7,778,686号、2010年10月12日に発行されたOkerlundらに対する米国特許第7,813,785号、2011年8月9日に発行されたVassらに対する米国特許第7,996,063号、2011年11月15日に発行されたHunterらに対する米国特許第8,060,185号、および2013年3月19日に発行されたVerardらに対する米国特許第8,401,616号、に記載されており、これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0121】
表示装置130および演算装置140は、例えば、電気信号(例えば、心電図データ)、機械的心臓機能および電気的心臓機能の1つ以上を代表する心臓情報(例えば、機械的心臓機能のみ、電気的心臓機能のみ、または機械的心臓機能と電気的心臓機能の両方)などのデータを表示および分析するように構成され得る。心臓情報は、例えば、電極装置110を使用して収集、監視、または収集された電気信号を使用して生成させられる、電気的不均一性情報または電気的同期不全情報、代理電気的興奮情報またはデータなどを含み得る。少なくとも一実施形態では、演算装置140は、サーバ、パーソナルコンピュータ、またはタブレットコンピュータであってもよい。演算装置140は、入力装置142からの入力を受信し、出力を表示装置130に送信するように構成され得る。さらに、演算装置140は、処理プログラムまたはルーチン、および/または1つ以上の他のタイプのデータ、例えば、ペーシング治療を較正および/または送達するため、ペーシング機器の配置を目標とする際にユーザを非侵襲的に支援するように構成されたグラフィカルユーザインターフェースを駆動するため、および/またはその位置(例えば、ペーシングに使用される植込み可能な電極の位置、特定のペーシングベクトルによって送達されるペーシング治療の位置など)におけるペーシング治療を評価するためにアクセスすることを可能にするデータ記憶装置を含み得る。
【0122】
演算装置140は、入力装置142および表示装置130に動作的に結合されて、例えば、入力装置142および表示装置130の各々との間でデータを送信し得る。例えば、演算装置140は、例えば、アナログ電気接続、デジタル電気接続、無線接続、バスベースの接続、ネットワークベースの接続、インターネットを使用して、入力装置142、および表示装置130の各々に電気的に結合され得る。本明細書でさらに説明するように、ユーザは、入力装置142に入力を提供して、表示装置130に表示される、心臓治療に関連している1つ以上のグラフィック描写を操作または修正し、1つ以上の情報を表示および/または選択し得る。
【0123】
図示のように、入力装置142はキーボードであるが、入力装置142は、本明細書で記載する機能、方法、および/または論理を実施するために演算装置140に入力を提供することができる任意の装置を含み得ると理解されたい。例えば、入力装置142は、マウス、トラックボール、タッチスクリーン(例えば、容量性タッチスクリーン、抵抗性タッチスクリーン、マルチタッチスクリーンなど)などを含んでもよい。同様に、表示装置130は、心臓情報、テキスト情報、電気的興奮情報のグラフィカルな描写、人間の心臓の解剖学のグラフィカルな描写、患者の心臓の画像またはグラフィカルな描写、ペーシング治療を較正および/または送達するために使用されるリードレスペーシング機器のグラフィカルな描写、VfAペーシング治療を提供するために位置決めまたは配置されたリードレスペーシング機器のグラフィカルな描写、1つ以上の電極の位置のグラフィカルな描写、人間の胴体のグラフィカルな描写、患者の胴体の画像またはグラフィカルな描写、植込まれた電極および/またはリードのグラフィカルな描写または実際の画像などを含む、グラフィカルユーザインターフェース132のような情報をユーザに表示することができる任意の装置を含んでもよい。さらに、表示装置130は、液晶ディスプレイ、有機発光ダイオードスクリーン、タッチスクリーン、陰極線管ディスプレイなどを含んでもよい。
【0124】
演算装置140によって記憶および/または実行される処理プログラムまたはルーチンは、計算数学、行列数学、分散決定(例えば、標準偏差、分散、範囲、四分位間範囲、平均絶対差、平均絶対偏差など)、フィルタリングアルゴリズム、最大値決定、最小値決定、閾値決定、移動窓アルゴリズム、分解アルゴリズム、圧縮アルゴリズム(例えば、データ圧縮アルゴリズム)、較正アルゴリズム、画像構築アルゴリズム、信号処理アルゴリズム(例えば、各種フィルタリングアルゴリズム、フーリエ変換、高速フーリエ変換など)、標準化アルゴリズム、比較アルゴリズム、ベクトル数学、または本明細書で記載する1つ以上の例示的な方法および/またはプロセスを実装するために必要な他の任意の処理のためのプログラムまたはルーチンを含んでもよい。演算装置140によって記憶および/または使用されるデータは、例えば、電極装置110からの電気信号/波形データ、分散信号、ウィンドウ化された分散信号、様々な信号の一部または部分、電極装置110からの電気的興奮時間、グラフィック(例えば、グラフィカル要素、アイコン、ボタン、ウィンドウ、ダイアログ、プルダウンメニュー、グラフィックエリア、グラフィック領域、3Dグラフィックなど)、グラフィカルユーザインターフェース、本明細書に開示に従って使用される1つ以上の処理プログラムまたはルーチンからの結果(例えば、電気信号、心臓情報など)、または本明細書に記載される1つ以上のプロセスまたは方法を遂行するために必要とされる可能性のある他のデータを含んでもよい。
【0125】
1つ以上の実施形態では、例示的なシステム、方法、およびインターフェースは、例えば、処理能力、データ記憶装置(例えば、揮発性または不揮発性メモリおよび/または記憶素子)、入力機器、および出力機器を含むコンピュータなどのプログラム可能なコンピュータ上で実行される1つ以上のコンピュータプログラムを使用して実装され得る。本明細書で説明するプログラムコードおよび/または論理を入力データに適用して、本明細書で説明する機能を実施し、所望の出力情報を生成してもよい。出力情報は、本明細書に記載されているように、または既知の方法で適用されるように、1つ以上の他のデバイスおよび/または方法への入力として適用され得る。
【0126】
本明細書に記載のシステム、方法、および/またはインターフェースを実装するために使用される1つ以上のプログラムは、任意のプログラム可能な言語、例えば、コンピュータシステムとの通信に好適な高レベルの手続き型および/またはオブジェクト指向プログラミング言語を使用して提供され得る。任意のそのようなプログラムは、例えば、本明細書に記載された手順を実施するために好適な機器が読み取られたときに、コンピュータシステムを構成し動作させるためのコンピュータシステム(例えば、処理装置を含む)上で実行される汎用または特殊目的のプログラムによって読み取られる任意の好適な機器、例えば、記憶媒体に記憶され得る。言い換えれば、少なくとも一実施形態では、例示的なシステム、方法、および/またはインターフェースは、コンピュータプログラムとともに構成されているコンピュータ読み取り可能記憶媒体を使用して実装されてもよく、そのように構成されている記憶媒体は、コンピュータが、本明細書で説明する機能を実施するために、具体的かつ事前定義された方法で動作するようにする。さらに、少なくとも一実施形態では、例示的なシステム、方法、および/またはインターフェースは、実行のためのコードを含む1つ以上の非一時的な媒体にエンコードされ、プロセッサによって実行されると、本明細書で記載する方法、プロセス、および/または機能性のような動作を実施するように動作可能である論理(例えば、例えば、オブジェクトコード)によって実装されていると記載されてもよい。
【0127】
演算装置140は、例えば、任意の固定またはモバイルコンピュータシステム(例えば、コントローラ、マイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ、ミニコンピュータ、タブレットコンピュータなど)であってもよく、概して、処理回路を含むものとして記載され得る。演算装置140の正確な構成は限定的ではなく、本質的に、好適なコンピューティング機能および制御機能(例えば、グラフィックス処理など)を提供し得る任意の機器が使用されてもよい。本明細書に記載されているように、デジタルファイルは、本明細書に記載されている演算装置140によって読み取り可能および/または書き込み可能なデジタルビット(例えば、2進法、3進法などで符号化された)を含む任意の媒体(例えば、揮発性または不揮発性メモリ、CD-ROM、パンチカード、ディスクまたはテープなどの磁気記録可能な媒体など)であってもよい。また、本明細書に記載されているように、ユーザ読み取り可能な形式のファイルは、ユーザによって読み取り可能および/または理解可能な任意の媒体(例えば、紙、ディスプレイなど)上に提示可能なデータ(例えば、ASCIIテキスト、2進数、16進数、10進数、グラフィックなど)の任意の表現であってもよい。
【0128】
上記を考慮して、本開示による1つ以上の実施形態に記載される機能は、当業者に知られている任意の方法で実装され得ることが容易に明らかであろう。このように、本明細書に記載されたプロセスを実装するために使用されるコンピュータ言語、コンピュータシステム、または他のソフトウェア/ハードウェアは、本明細書に記載されたシステム、プロセス、またはプログラム(例えば、そのようなシステム、プロセスまたはプログラムによって提供される機能性)の範囲を制限するものではないものとする。
【0129】
患者の心臓の電気的興奮時間は、患者の心臓の状態を評価し、および/または患者に送達される心房から心室(VfA)心臓治療を較正、送達、もしくは評価するのに有用であり得る。患者の心臓の1つ以上の領域の代理電気的興奮情報またはデータは、図13図15に示されるように、電極装置110を使用して、監視または決定され得る。例示的な電極装置110は、患者120の体表面電位、より具体的には、患者120の胴体表面電位を測定するように構成され得る。
【0130】
図14に示されるように、例示的な電極装置110は、電極112、ストラップ113、およびインターフェース/増幅器回路116のセットまたはアレイを含み得る。少なくとも一実施形態では、電極のセットの一部が使用されてもよく、その部分は、患者の心臓上の特定の位置に対応する。電極112は、ストラップ113に取り付けられ、または結合され得、ストラップ113は、電極112が患者の心臓を取り囲むように、患者120の胴体の周りに巻き付けられるように構成され得る。さらに示されるように、電極112は、患者120の胴体の後方、側方、後外側、前外側、および前方の位置を含む、患者120の周囲に位置決めされ得る。
【0131】
さらに、電極112は、有線接続118を介してインターフェース/増幅器回路116に電気的に接続され得る。インターフェース/増幅器回路116は、電極112からの信号を増幅し、信号を演算装置140に提供するように構成され得る。他の例示的なシステムは、無線接続を使用して、電極112によって検知された信号をインターフェース/増幅器回路116に送信し、次に、例えば、データのチャネルで演算装置140に送信してもよい。例えば、インターフェース/増幅器回路116は、例えば、アナログ電気接続、デジタル電気接続、無線接続、バスベース接続、ネットワークベース接続、インターネットベースの接続などを使用して、演算装置140および表示装置130の各々に電気的に結合され得る。
【0132】
図14の例では、電極装置110は、ストラップ113を含むが、他の例では、電極112の間隔および配置を助けるために、様々な機構、例えば、テープまたは接着剤のいずれかが、使用され得る。いくつかの例では、ストラップ113は、弾性バンド、テープのストリップ、または布を含み得る。他の例では、電極112は、患者120の胴体に個々に配置し得る。さらに、他の例では、電極112(例えば、アレイに配列される)は、パッチ、ベスト、および/または電極112を患者120の胴体に固定する他の方法の一部であっても、またはその中に位置してもよい。
【0133】
電極112は、患者120の心臓を取り囲み、信号が患者120の胴体を通って伝播した後、心臓の脱分極および再分極に関連する電気信号を記録または監視するように構成され得る。電極112の各々は、心臓信号を反映する胴体表面電位を検知するために単極構成で使用され得る。インターフェース/増幅器回路116はまた、単極検知のために各電極112と組み合わせて使用されてもよい、戻り電極または無関心電極(図示されず)に結合され得る。いくつかの例では、患者の胴体の周りに空間的に分布した約12~約50の電極112があってもよい。他の構成は、より多くのまたはより少ない電極112を有してもよい。
【0134】
演算装置140は、電極112によって感知され、インターフェース/増幅器回路116によって増幅/調整された電気的活動(例えば、胴体表面電位信号)を記録および分析し得る。演算装置140は、電極112からの信号を分析して、本明細書にさらに記載されるように、前方電極信号および後方電極信号としての心臓電気的興奮時間、および代理心臓電気的興奮時間、例えば、患者の心臓の1つ以上の領域の実際の、または局所的な電気的興奮時間の代表を提供するように構成されてもよい。演算装置140は、較正、送達、および/またはVfAペーシング治療を評価するための使用のために、例えば、本明細書でさらに記載されるように、患者の心臓の1つ以上の前部中隔領域の実際の、または局所的な、電気的興奮時間を代表する、前部中隔電極信号および代理心臓電気的興奮時間として提供するために、電極112からの信号を分析するように構成され得る。さらに、患者の胴体体の左前部表面位置で測定される電気信号は、患者の心臓の左前部左心室領域の電気信号の代表的なものであってもよく、または代理的なものであってもよく、患者の胴体体の左側部表面位置で測定される電気信号は、患者の心臓の左側部左心室領域の電気信号の代表的なものであってもよく、または代理的なものであってもよく、患者の胴体体の左後側表面位置で測定される電気信号は、患者の心臓の後側左心室領域の電気信号の代表的なものであってもよく、または代理的なものであってもよく、患者の胴体の後側表面位置で測定される電気信号は、患者の心臓の後側左心室領域の電気信号の代表的なものであってもよく、または代理的なものであってもよい。1つ以上の実施形態では、興奮時間の測定は、心臓脱分極の発症(例えば、QRS複合体の発症)と、例えば、ピーク値、最小値、最小勾配、最大勾配、ゼロ交差、閾値交差などの適切な基準点との間の時間の期間を測定することによって実施することができる。
【0135】
追加的に、演算装置140は、電極装置110を使用して得られた代理電気的興奮時間を示すグラフィカルユーザインターフェースを提供するように構成され得る。例示的なシステム、方法、および/またはインターフェースは、電極装置110を使用して収集された電気情報を非侵襲的に使用して、患者の心臓状態を評価し、および/または患者に送達される、または送達されるVfAペーシング治療を較正、送達、または評価し得る。
【0136】
図15は、患者120の心臓を取り囲むように構成された複数の電極112を含み、信号が患者120の胴体を伝搬した後、心臓の脱分極および再分極に関連する電気信号を記録するか、または監視するように構成された別の例示的な電極装置110を図示している。電極装置110は、複数の電極112が取り付けられてもよく、または電極112が結合され得るベスト114を含んでもよい。少なくとも一実施形態では、電極112の複数またはアレイは、例えば、代理電気的興奮時間などの電気情報を収集するために使用され得る。
【0137】
図14の電極装置110と同様に、図13の電極装置110は、有線接続118を介して電極112の各々に電気的に結合され、電極112から演算装置140へ信号を送信するように構成されたインターフェース/増幅器回路116を含み得る。図示のように、電極112は、例えば、患者120の胴体の前面、側面、後外側、前外側、および後面を含む、患者120の胴体全体に分散され得る。
【0138】
ベスト114は、電極112が布に取り付けられた布で形成され得る。ベスト114は、患者120の胴体上の電極112の位置および間隔を維持するように構成され得る。さらに、ベスト114は、患者120の胴体の表面上の電極112の位置を決定するのを助けるためにマークされ得る。1つ以上の実施形態では、ベスト114は、患者の前部胴体に近接して位置決め可能な約17個以上の前部電極、および患者の前部胴体に近接して位置決め可能な約39個以上の後部電極を含んでもよい。いくつかの例では、患者120の胴体の周りに約25個の電極112から約256個の電極112が分布していてもよいが、他の構成は多かれ少なかれ電極112を有してもよい。
【0139】
本明細書に記載されるように、電極装置110は、患者の心臓の異なる領域を表す電気情報(例えば、電気信号)を測定するように構成され得る。例えば、患者の心臓の異なる領域の興奮時間は、患者の心臓の異なる領域に対応する表面領域に近接した表面電極を使用して測定された表面心電図(ECG)興奮時間から概算されることができる。少なくとも1つの例では、患者の心臓の前中隔領域の興奮時間は、患者の心臓の前中隔領域に対応する表面領域に近接する表面電極を使用して測定された表面ECG興奮時間から概算されることができる。すなわち、電極のセット全体ではなく、電極のセット112の一部は、電極のセットの部分が対応する患者の心臓の特定の位置に対応する興奮時間を生成するように使用されることができる。
【0140】
例示的なシステム、方法、およびインターフェースは、患者の心臓の健康または状態の評価、および/または電極装置110の使用による心室から心房(VfA)ペーシング治療などの心臓治療の評価(例えば、植込み中または植込み後に患者に現在提供されている心臓治療)において、ユーザに非侵襲的な支援を提供するために使用され得る。さらに、例示的なシステム、方法、およびインターフェースは、VfAペーシング治療などの心臓治療の構成または較正において、(例えば、測定された心拍数に基づいて)患者に提供される、または提供されることにおいてユーザを支援ために使用され得る。
【0141】
VfAペーシングは、心臓の心室の同期した均一な興奮を提供するものとして記載されることができる。例として、心不全につながる可能性のある心房室(AV)ブロックまたは長期のAVタイミングを持ち、それ以外の場合は無傷の(例えば、正常な)QRSを有する患者は、VfAペーシング治療の恩恵を受けることができる。さらに、例として、VfAペーシングは、内因性心室伝導障害のある心不全患者に有益な興奮を提供し得る。さらに、VfAペーシングを適切に配置することで、そのような患者に心室の最適な興奮を提供することができる。さらに、左脚ブロック(LBBB)を有する心不全患者のための左心室(LV)再同期化は、VfAペーシングが、リードレス機器またはリードを心内膜血溜まりに露出させることなく、左心室心内膜へのより容易なアクセスを可能にすることを見いだしてもよい。同時に、その例では、これは、伝導系の一部を使用してLBBBを修正し、患者を効果的に再同期させるのに役立つことができる。
【0142】
電気的活動は、図13図15の電極112などの複数の外部電極を使用して監視され得る。電気的活動は、VfAペーシング治療中またはVfAペーシング治療がない場合に複数の電極によって監視し得る。監視された電気的活動は、患者へのVfAペーシング治療を評価するために使用することができる。説明されているECGベルトを使用して監視される電気的活動は、心臓に対するVfAペーシング治療の少なくとも1つのペーシング設定を評価するために使用できる。例として、ペーシング設定は、電極位置、ペーシング極性、ペーシング出力、ペーシングパルス幅、心房(A)タイミングに対してVfAペーシングが送達されるタイミング、ペーシングレートなどを含むがこれらに限定されない、任意の1つのパラメータまたはパラメータの組み合わせであることができる。さらに、例として、リードレス機器またはペーシングリードの位置は、左心室腔の高後基底および/または中隔(HPBS)領域内で、またはそれに近接して、右心房を介してアクセスされる左心室内の位置を含むことができる。さらに、HPBS領域のペーシング、またはそれに近接したペーシングは、選択的(例えば、HPBSの特定の領域の刺激を単独で含む)または非選択的(例えば、HPBSおよび他の心房および/または心室中隔領域の位置での複合ペーシング)であることができる。
【0143】
さらに、心室興奮の体表面等時性マップは、VfAペーシング治療中またはVfAペーシング治療の非存在下で監視された電気的活動を使用して構築されることができる。監視された電気的活動および/または心室興奮のマップは、電気的不均一性情報(EHI)を生成させるために使用されることができる。電気的不均一性情報は、電気的不均一性の測定基準の決定を含むことができる。電気的不均一性の測定基準は、患者の胴体の左側にある電極の興奮時間の標準偏差(SDAT)の測定基準、および/または患者の胴体の左側の電極の平均左心室興奮時間(LVAT)の測定基準を含むことができる。LVATの測定基準は、左心室により近位にある前面および後面の両方の電極から決定され得る。電気的不均一性情報の測定基準は、患者の胴体の右側にある電極の平均右心室興奮時間(RVAT)の測定基準を含むことができる。RVATの測定基準は、右心室により近い前面と後面の両方の電極から決定され得る。電気的不均一性の測定基準は、患者の胴体の両側からの複数の電極信号から取られた平均総興奮時間(mTAT)の測定基準を含むことができ、または、それは、患者の胴体の右側または左側に位置する複数の電極上の興奮時間の範囲もしくは分散を反映した他の測定基準(例えば、標準偏差、四分位間偏差、最新の興奮時間と最も早い興奮時間との間の差)、または患者の胴体の右側および左側の両方を組み合わせたものを含み得る。電気的不均一性情報の測定基準は、心臓の前中隔部分に近接した胴体上の電極の前中隔興奮時間(ASAT)の測定基準を含むことができる。
【0144】
電気的不均一性情報(EHI)は、1つ以上のVfAペーシング設定でのVfAペーシング治療の送達中に生成され得る。電気的不均一性情報は、電気的不均一性の測定基準を使用して生成されることができる。例として、電気的不均一性の測定基準は、SDAT、LVAT、RVAT、mTAT、およびASATの1つ以上を含むことができる。少なくとも一実施形態では、ASATのみは、決定され、さらに使用され、および/またはASATは、他の値よりも重く重み付けされ得る。
【0145】
VfAペーシング治療に関連する1つ以上のペーシング設定は、評価され得る。ペーシング設定は、複数のペーシングパラメータを含むことができる。複数のペーシングパラメータは、患者の心臓の状態が改善した場合、VfAペーシング治療が左心室の望ましい部分(例えば、高い後部基底および/または中隔領域)を効果的に捕捉している場合、および/または測定基準である場合に最適である可能性がある電気的不均一性の割合は、ベースラインのリズムまたは治療と比較して、特定の閾値だけ改善される。少なくとも一実施形態では、ペーシング設定が最適であるかどうかの決定は、VfAペーシング中(およびいくつかの実施形態では、生来の伝導中、またはVfAペーシングない場合)の電気的活動から生成される電気的不均一性の少なくとも1つの測定基準に基づくことができる。少なくとも1つの測定基準は、SDAT、LVAT、RVAT、mTAT、およびASATの1つ以上を含むことができる。
【0146】
さらに、複数のペーシングパラメータは、電気的不均一性の測定基準が特定の閾値よりも大きいか、またはそれ以下である場合、および/または左心室を励起するためのペーシング治療の位置が、心臓の筋繊維の励起の特定のパターンを引き起こす場合、最適なものとなることができる。さらに、複数のペーシングパラメータは、電気的不均一性の測定基準が左索枝ブロック(LBBB)の矯正を示す場合、および/または電気的不均一性の測定基準がプルキンエシステムの完全な関与を示す場合など、最適であることができる。例として、閾値(例えば、30msの閾値)以下のASATおよび閾値(例えば、30msの閾値)以下のLVATの電気的不均一性の測定基準は、LBBBの補正を示すことができ、したがって、ペース設定が最適である。例として、閾値(例えば、30 msの閾値)以下のRVAT、閾値(例えば、30 msの閾値)以下のASAT、および閾値(例えば、30 msの閾値)以下のLVATの電気的不均一性の測定基準は、プルキンエシステムの完全な関与を示している可能性があり、したがって、ペース設定が最適であり得る。
【0147】
ペーシング設定は、ペーシング設定が許容できること、有益であること、患者の本来の心臓伝導系の完全な関与を示すこと、心室伝導障害(例えば、左脚ブロック)の修正を示すことなどを使用して、VfAペーシング治療に反応して最適であることを決定することができる。ペーシング設定は、ペーシング電極の位置(深さ、角度、スクリューベースの固定機構のための回転量などの1つ以上を含む)、電圧、パルス幅、強度、ペーシング極性、ペーシングベクトル、ペーシング波形、心房内イベントまたはペーシングされた心房内イベントに相対的に、または内因性ヒス束電位に相対的に送達されるペーシングのタイミング、および/またはペーシング位置などのうちの1つ以上を含むことができる。ペーシングベクトルは、例えば、先端電極から缶電極、先端電極からリング電極などのように、VfAペーシング治療を送達するために使用される任意の2以上のペーシング電極を含むことができる。ペーシング位置は、リード、リードレス機器、および/またはVfAを送達するように構成された任意の機器または装置を使用して位置決めされた1つ以上のペーシング電極のいずれかの位置を参照することができる。
【0148】
VfAペーシング治療のためのペース設定は、調整され得る。少なくとも一実施形態では、ペーシング設定は、ペーシング設定が最適でないことに応答して調整されることができる。少なくとも一実施形態では、ペーシング設定は、ペーシング設定が最適範囲内にあることに応答して調整されることができる、ペーシング設定が、VfAペーシング治療にとってより有益であり、より有用であり、より機能的である、最適範囲内の位置にあることができるかどうかを決定するために、ペーシング設定を調整されることができる。ペーシング設定は、電気的不均一性の最適な測定基準を見つけるために調整されることができる。
【0149】
1つ以上の実施形態では、ペーシング設定が最適であるかどうかの決定は、ECGベルトを使用する電気的不均一性の特定の測定基準に基づくことができる。少なくとも1つの例では、ペーシング設定は、電気的不均一性の測定基準が特定の測定基準値またはそれに近接するまで、電気的不均一性の測定基準の変化と相関する間隔で調整することができる。例えば、ペース設定を調整すると、電気的不均一性の測定基準が電気的不均一性の特定の閾値測定基準に近づく可能性があり、測定基準が特定の閾値に近づくと、ペース設定の調整速度を遅くすることができる。別の言い方をすれば、電気的異質性の測定基準が特定の閾値測定基準からさらに離れているので、ペース設定は、より迅速に調整されることができ、電気的異質性の測定基準が特定の閾値測定基準に近づくと、電気的異質性の測定基準が特定の閾値測定基準になるまで、ペース設定をよりゆっくりと調整されることができる。
【0150】
本明細書に記載の機器、システム、および方法とともに使用され得る、患者の組織からの電気的活動を監視するために複数の外部電極を有する電極装置を利用するための様々な技術は、「Evaluation of Ventricle from Atrium Pacing Therapy」と題された、2018年3月23日に出願された米国特許出願番号第15/934,517号に開示されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0151】
植込み型医療機器の様々な実施形態は、電気的および/または機械的活動を使用してCRTを最適化するために、使用され得る。代替的に、または心音の使用に加えて、例えば、運動検出器は、患者の心臓内の機械的活動を示す1つ以上の信号を提供し得、これは、植込み型医療機器の1つの電極を使用して検出される電気的活動と組み合わせて使用され得る。検出された電気的および/または機械的活動は、長期間にわたって起こり得る、左心房および左心室リモデリングなどの心腔リモデリングのマーカーを評価するためにも使用され得る。
【0152】
図16は、右心房(RA)510から房室(AV)中隔壁512、またはAV中隔に取り付けられた、植込み型医療機器、特にLPD500を概略的に示す。LPDが示されているが、他の実施形態では、植込み型医療機器は、リードを含み得る。LPD500は、本開示に記載される医療機器に含まれる他の構成要素のうちの任意の1つ以上を含み得る。図示の実施形態では、LPD500は、LPDの検知回路に結合され得る、少なくとも活動センサー、または加速度計などの運動検出器502を含む。場合によっては、運動検出器502は、運動検出器11(図5)と同様であり得る。LPD500はまた、心臓治療を送達するため、または心房の電気的活動を検知するために、患者の心臓の心房に植込み得る少なくとも1つの心房電極504と、心室の心臓治療を送達するため、またはその電気的活動を検知したりするために、中隔壁に、例えば、中隔壁の心室側に植込まれ得る少なくとも1つの心室電極506と、を含む。
【0153】
1つ以上の実施形態では、LPD500のハウジングは、近位端領域501から遠位端領域503まで延びる。心房電極504は、ハウジングにリードレスで結合されてもよい。心室電極506はまた、ハウジングの遠位端領域503にリードレスで結合されてもよく、特に、遠位端領域からリードレスで延びてもよい。一般に、心室電極506は、心房電極504の遠位に配置される。運動検出器502、治療送達回路、検知回路、およびプロセッサを有するコントローラの各々は、LPD500のハウジング内に封入または含まれ得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、心房電極504は、RA510内のAV中隔壁512の表面上に配置されたRA電極であり得、心室電極506は、AV中隔壁512内に配置された組織貫通電極であり得る。図示のように、心房電極504は、AV中隔壁512と接触してRA510に植込まれ、心室電極506は、AV中隔壁512の左心室側に植込まれる。1つ以上の実施形態では、心室電極506は、患者の心臓のLV心筋に心臓治療を送達するために、または、その基底領域、中隔領域、または基底中隔領域の左心室(LV)の電気的活動を検知するために、患者の心臓のRAのコッホ領域の三角形から植込まれる。
【0155】
LPD500は、患者の心臓の機械的運動または機械的活動を検出するように構成された1つ以上の運動検出器502を含み得る。他のリード、構造、またはLPDは、心臓治療のために心臓の他のチャンバ(例えば、左心房または右心室)に存し得、または存し得ない。LPD500がLPD500の外部ハウジング上に保持される2つ以上の電極を含むときに、構造の他のリードは、必要とされなくともよい。
【0156】
運動検出器502は、LPD500の運動および/または位置を検出することが可能な1つ以上の加速度計または他のそのような機器を含み得る。例えば、運動検出器502は、空間内の任意の方向の加速度を検出するように構成された3軸加速度計を含み得る。具体的には、3軸アクセラレータは、心臓イベントを示し得るLPD500の運動を検出するために使用され得る。例えば、LPD500は、AV中隔壁512などの心臓の心室壁とともに運動し得、検出された加速度の変化は、心臓内の収縮または他の機械的活動を示し得る。運動検出器502によって検出された加速度は、検知回路によって検出された信号内の潜在的なノイズを識別するために、LPD500のプロセッサによって使用され得る。
【0157】
患者の心臓の様々な収縮は、運動検出器からのデータで区別され得る。図17は、1つ以上の電極およびLPD500などのLPDの運動検出器からの信号読み取りのプロット520を示す(図16)。特に、プロット520は、ある期間にわたるEGM信号522および運動信号524を示す。運動信号524は、例えば、RAに植込まれたLPD500内の加速度計からのシグネチャを示す。機械的活動のシグネチャは、心房収縮イベント528、LV収縮イベント530の開始(または僧帽弁閉鎖の開放)、および拡張期イベント532の開始(または大動脈弁の閉鎖)を示し得る。EGM信号522および運動信号524はまた、心房興奮526および心室興奮534に関連して示され、そのいずれも内因性またはペーシングイベントであり得る。ペーシングされた心房興奮は、例えば、治療送達回路から送達されるペーシングパルスを送達することに応答して検出され得る。
【0158】
運動検出器および電極の使用は、患者の心臓の電気的活動が、患者の心臓の機械的活動に対する電気的基準として機能することを可能にする。特に、心房興奮は、心房収縮の基準として機能することができる。電気的および機械的活動は、従来のAVペーシングだけでなく、電気機械的タイミング間隔のマーカーとして使用されることができる。
【0159】
様々な電気機械的間隔は、患者の心臓の様々な状態を示すために、決定および評価され得る。本明細書で使用される電気機械的間隔という用語は、電気的活動イベントと機械的活動イベントとの間、2つの電気的活動イベントの間、または2つの機械的活動イベントの間の間隔を記載するために使用される。特に、電気機械的間隔は、1心拍中の異なるイベント間の間隔を表す。
【0160】
電気機械的間隔536の一例は、心房興奮526および心房収縮イベント528に基づく。心房興奮から収縮間隔536までは、AVペーシング遅延としても記述され得る、AVペーシング間隔を決定するために使用され得る。特に、AVペーシング間隔は、心房興奮から収縮間隔538までよりも大きい値にのみ設定され得る。代替的に、またはさらに、AVペーシング間隔は、心房興奮526と内因性心室興奮との間の間隔のあるパーセンテージ(例えば、80%)以下の値に設定され得る。
【0161】
AVペーシング間隔は、RAなどの心房の内因性興奮を検出した後、LVなどの心室をペーシングするために使用され得る。1つ以上のペーシングパルスは、AV中隔壁512に植込まれた心室電極506を使用して、心室に送達され得る。AVペーシング間隔は、LPDの植込み中または植込み後に決定され得、これは患者が歩行できている間に植込み後にLPDによって使用され得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、AVペーシング間隔は、複数の外部電極を有する電極装置からの監視された電気的活動に基づいて決定され得る。例えば、ECG装置は、SDATまたはLVATに基づいて1つ以上のペーシングパラメータを最適化するために使用され得る。そのようなパラメータは、AVペーシング間隔、ペーシングベクトル、およびペーシング出力を含み得るが、これらに限定されない。この監視された電気的活動に基づいて決定された特定のAVペーシング間隔は、最適化されたAVペーシング間隔として記載され得る。
【0163】
電気機械的間隔538の別の例は、心室興奮534およびLV収縮イベント530(僧帽弁閉鎖など)の開始に基づく。心室興奮から収縮間隔538までは、AVペーシング間隔が心臓治療に許容できるかどうかを決定するために使用され得る。
【0164】
例えば、内因性心室興奮から収縮間隔までは、ペーシングされた心室興奮から収縮間隔までと比較され得る。異なる心拍からの、この間隔の内因性測定値とペーシングされた測定値の比較は、AVペーシング間隔が心臓治療に許容できるかどうかを決定するために使用され得る。
【0165】
別の例では、例えば、患者が診療所にいる間に植込み後に測定された、最適化されたAVペーシング間隔を使用する収縮間隔538までのペーシングされた心室興奮は、内因性測定後の期間、例えば、患者が歩行できている間に測定された収縮間隔538までのペーシングされた心室興奮と比較され得る。患者の心臓の長期的な変化を評価するために、期間は、数週間または数か月のオーダーで必要になり得る。異なる時点でのこの間隔の早い方と遅い方のペーシング測定値の比較は、AVペーシング間隔が心臓治療に許容できるかどうかを決定するために使用され得る。最適なAVペーシング間隔は、例えばリモデリングにより、時間の経過とともに患者の心臓に対して変化し得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、閾値電気機械的間隔は、例えば、内因性測定間隔または以前の測定間隔に基づいて決定され得、ペーシングされた測定間隔またはそれ以降の測定間隔は、AVペーシング間隔が心臓治療のために許容できるかどうかを決定するために、それぞれの閾値と比較され得る。
【0167】
1つ以上の実施形態では、ペーシングされた心室興奮から収縮間隔538までは、内因性心室興奮から収縮間隔538までの所定のパーセンテージよりも長くなることに応答して、許容できないと見なされ得る。例えば、閾値または所定のパーセンテージは、収縮間隔538までの内因性心室興奮の約90%、約85%、またはさらには約80%に等しくあり得る。
【0168】
電気機械的間隔540のさらなる例は、LV収縮イベント530の開始および拡張期イベント532の開始に基づく。心室収縮から拡張期間隔540までは、AVペーシング間隔が心臓治療に許容できるかどうかを決定するために使用され得る。心室収縮から拡張期間隔540までは、心室興奮から収縮間隔538までを評価するのと同じまたは同様の方法で評価され得る。特に、内因性LV収縮から拡張期間隔までは、ペーシングされたLV収縮から拡張期間隔までと比較され得るか、または、より早いLV収縮から拡張期間隔までは、より遅いLV収縮から拡張期間隔までと比較され得る。いずれの場合も、比較は、例えば、内因性間隔または以前の間隔に基づく閾値を使用して、AVペーシング間隔が心臓治療に許容できるかどうかを決定するために使用され得る。
【0169】
1つ以上の実施形態では、ペーシングされた心室収縮から拡張期間隔540までは、内因性心室収縮から拡張期間隔540までの所定のパーセンテージよりも短くなることに応答して、許容できないと見なされ得る。例えば、閾値または所定のパーセンテージは、拡張期間隔540までの内因性心室収縮の約110%、約115%、またはさらに約120%、約130%、約140%、またはさらに約150%に等しくあり得る。
【0170】
測定された1つ以上の電気機械的間隔が許容できないことに応答して、AVペーシング間隔は、調整され得る。一般に、AVペーシング間隔は、心臓治療に許容できないと見なされる少なくとも1つの電気機械的間隔に応答して短縮され得る。
【0171】
運動信号524で検出可能な機械的活動イベントは、心音図で見得る、心音測定を使用して確認、参照、または較正され得る。心音という用語は、S1、S2、S3、またはS4心音などの心音信号の特徴を指す。任意の心周期または心拍に対して、複数の心音、例えば、S1、S2、S3、およびS4心音の各々が存在し得る。心音は、本開示の利益を有する当業者に知られている任意の好適な技術を使用して、検出または測定され得る。例えば、心音センサーは、LPD500などの医療機器システムに含まれ得、圧電セラミック、フィルム、またはポリマーであり得る圧電材料から形成され得、または小型マイクロフォンを含み得る。圧電材料は、パッシブセンサーとして記載され得、マイクロフォンは、音を検出するために電力を供給する必要があり得るアクティブセンサーとして記載され得る。
【0172】
一般に、心音は、患者の心臓の機械的振動および心臓弁を通る血流に関連付けられており、したがって、心臓弁間の圧力勾配および血圧と高度に相関し得る。心音は、心臓内の振動および圧力によるものだけでなく、血液、心臓、大動脈などの心血管系全体にもよることがあり得る。等H心音は、心周期ごとに繰り返され得、振動に関連する活動に従って分離および分類される。
【0173】
第1の心音は、「S1」と呼ばれ、房室(AV)弁、すなわち僧帽弁および三尖弁の閉鎖中に心臓によって作られる振動音として考えられることができる。S1の音は、しばしば、僧帽弁を閉鎖することから、M1音響成分に、および三尖弁を閉鎖することから、T1音響成分に分類されることができる。第2の心音は、「S2」と呼ばれ、半月弁、すなわち肺動脈弁および大動脈弁の閉鎖に起因する。
S2音は、拡張期の開始をマークすることとして考えられることができる。
S2音はまた、成分パーツに分解されることができる。P2音成分は、肺動脈弁の閉鎖からのものであり、A2音成分は、大動脈弁の閉鎖からのものである。第3および第4の心音は、それぞれ「S3」と「S4」と呼ばれ、拡張期中の心室の充満に関連するものとして概念化されることができる。S3は、心室の急速な充満によるものであり、心房から大量の血液が心室に流れ込むときに、心室壁が弛緩していない場合に発生する恐れがある。S4は、心房収縮により、心房から心室に血液が急速に充満することによって引き起こされる。
【0174】
一般に、心房収縮イベント528は、S4心音を使用して確認または参照され得る。LV収縮イベント530の開始は、S1心音、より具体的にはS1心音のM1成分を使用して確認または参照され得る。拡張期イベント532の開始は、S2心音、より具体的にはS2心音のA2成分を使用して参照されることを確認され得る。
【0175】
時間をかけての様々な間隔での繰り返し測定は、患者の心臓が心臓治療による効果的なリモデリングを経験しているかどうかを示すために使用され得る。図18を参照すると、時間軸(T)に対する例示的な間隔(t)のプロット550は、CRTなどの心臓治療の2つの例示的な成果を示している。例示的な間隔は、心室興奮から収縮間隔538まで、または心室収縮から拡張期間隔540までなど、リモデリングを示すのに好適な任意の電気機械的間隔であり得る。
【0176】
間隔データの傾向は、リモデリングが効果的であるかどうかを示し得る。例えば、長期間にわたって減少する間隔を示す第1のデータセット552によって表される特定の電気機械的間隔は、効果的な心房または心室リモデリングを示し得る。同じ期間にわたって増加する間隔を示す第2のデータセット554によって表される特定の電気機械的間隔は、心房または心室弛緩とも記載され得る、効果的でない心房または心室リモデリングを示し得る。
【0177】
間隔データの傾向は、時間の経過とともに行われた測定に基づき得る。いくつかの実施形態では、個々の測定は、例えば周期的に繰り返し行われ得る。定期的な繰り返し測定の非限定的な例は、毎時、毎日、毎週、または毎月の測定値を含む。これらの個々の測定値は、1日、1週間、または1か月以上であり得る、一定期間にわたる傾向をプロットするために使用され得る。一例では、期間は、約6ヶ月に等しくあり得る。
【0178】
測定値はまた、傾向の実践的見地を提供するために、好適な方法で集計され得る。より短い期間の測定値は、集計され得る。一般に、個々の測定値の集計のために使用される期間は、傾向の評価に使用される期間よりも短い。個々の測定値を集計するために使用される期間は、1心拍よりも長い間隔に制限され得る。
【0179】
複数の集計された測定値は、時間の経過に伴う傾向をプロットするために使用され得る。測定値を集計する手法の非限定的な例は、合計、積、平均、加重平均、中央値、平方偏差、または一定期間にわたる他の集計関数の使用を含む。任意の好適な期間は、1分、1時間、1日、1週間、または1か月以上など、個々の測定値を集計するために使用され得る。一例では、個々の測定値を集計するために使用される期間は、1週間であり得、傾向を評価するために使用される期間は、3か月であり得る。
【0180】
心房または心室のリモデリングが効果的でないという決定は、患者の心不全または心房細動のリスクが高いことを示し得る。患者は、診療所を訪問するように警告され得る。診療所では、臨床医は、情報を提供され、患者は、より良い薬を処方され得るか、または心不全の管理を改善するための他の処置を使用して治療され得る。
【0181】
図19は、電気機械的間隔を使用する心臓治療のための方法560の一例を示す。方法560は、プロセス562において、ペーシングパルスを送達することを含み得る。ペーシングパルスは、AVペーシング間隔に従って送達され得る。方法は、プロセス564において、少なくとも1つの電気機械的間隔を決定することを含み得る。電気機械的間隔は、電気的活動および機械的活動のうちの少なくとも一方に基づき得る。方法560は、プロセス566において、AVペーシング間隔を調整することを含み得る。AVペーシング間隔は、電気機械的間隔に基づいて調整され得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、プロセス566におけるAVペーシング間隔の調整はまた、少なくとも1つの電気機械的間隔が心臓治療に許容できるかどうかを決定することと、心臓治療に許容できない少なくとも1つの電気機械的間隔に応答してAVペーシング間隔を調整することとを含み得る。
【0183】
方法560は、例えば、AVペーシング間隔に従ったペーシングが長期間にわたって有効であることを確実にするために、AVペーシング間隔を更新するために任意の好適な回数繰り返され得る。例えば、AVペーシング間隔は、連続的に、または心拍、分、時間、日、または週ごとに1回更新され得る。
【0184】
図20は、電気機械的間隔を使用して心腔リモデリングを検出するための方法570の一例を示す。方法570は、プロセス572において、興奮を示す電気的活動を検出することを含み得る。いくつかの実施形態では、電気的活動は、心房興奮を検出するための心房電極、または心室興奮を検出するための心室電極を使用して検出され得る。
【0185】
方法570は、プロセス574において、収縮を示す機械的活動を検出することを含み得る。いくつかの実施形態では、機械的活動は、運動検出器を使用して検出され得る。機械的活動は、心房収縮または心室収縮を示し得る。1つ以上の実施形態では、同じ心腔の興奮および収縮は、検出され得る。例えば、心房興奮および心房収縮は、検出され得る。別の例では、心室興奮および心室収縮は、検出され得る。
【0186】
方法570は、プロセス576において、電気機械的間隔を決定することを含み得る。いくつかの実施形態では、電気機械的間隔は、電気的活動イベントと機械的活動イベントとの間の時間間隔として決定され得る。例えば、少なくとも1つの電気機械的間隔は、心房興奮および心房収縮に基づいて決定され得る。別の例では、少なくとも1つの電気機械的間隔は、心室興奮および心室収縮に基づいて決定され得る。
【0187】
方法570はまた、プロセス578において、少なくとも1つの電気機械的間隔の繰り返し測定がリモデリングを示すかどうかを決定することを含み得る。同種の間隔は、時間の経過とともに繰り返し測定され得る。一例では、心房興奮から収縮間隔までの繰り返し測定は、心房リモデリングを示し得る。別の例では、心室興奮から収縮間隔までの繰り返し測定は、心室リモデリングを示し得る。
【0188】
間隔がプロセス578におけるリモデリングを示すかどうかを決定することは、リモデリングが効果的であるかどうかを決定することを含み得る。一例では、心腔リモデリングは、時間とともに減少する収縮間隔に対する心房興奮に応答して効果的であり得る。別の例では、心腔リモデリングは、時間とともに減少する収縮間隔に対する心室興奮に応答して効果的であり得る。
【0189】
例示的な実施形態
本開示は、限定はされないが、開示の様々な態様の理解は、以下に提供される特定の例示的な実施形態の考察を通じて得られるであろう。例示的な実施形態の様々な修正、ならびに本開示の追加の実施形態が、本明細書で明らかになるであろう。
【0190】
例示的な実施形態A1では、植込み型医療機器は、複数の電極を含む。複数の電極は、患者の心臓の心房に、心臓治療を送達するか、または患者の心臓の心房の電気的活動を検知するために植込まれる第1の電極と、第1の電極より遠位の患者の心臓の中隔壁に、患者の心臓の心室に心臓治療を送達するか、またはその電気的活動を検知するために植込まれる第2の電極と、を含む。植込み型医療機器はまた、患者の心臓の機械的活動を検出するための運動検出器と、患者の心臓に心臓治療を送達するための複数の電極に動作可能に結合された治療送達回路と、患者の心臓の電気的活動を検知するための複数の電極、および患者の心臓の機械的活動を検知するための運動検出器に動作可能に結合された検知回路と、を含む。機器はまた、治療送達回路および検知回路に動作可能に結合された処理回路を有するコントローラとを含む。コントローラは、第2の電極を使用して房室(AV)ペーシング間隔に従ってペーシングパルスを送達し、ペーシングパルスを送達することに応答する電気的活動および機械的活動のうちの少なくとも1つに基づいて少なくとも1つの電気機械的間隔を決定し、かつ少なくとも1つの電気機械的間隔に基づいてAVペーシング間隔を調整するように構成されている。
【0191】
例示的な実施形態A2では、機器は、任意のA実施形態による機器を含み、AVペーシング間隔を調整するために、コントローラが、少なくとも1つの電気機械的間隔が心臓治療のために許容できるかどうかを決定し、かつ心臓治療のために許容できない少なくとも1つの電気機械的間隔に応答して、AVペーシング間隔を調整するようにさらに構成されている。
【0192】
例示的な実施形態A3では、機器は、任意のA実施形態による機器を含み、コントローラが、第1の電極を用いた心房興奮を示す電気的活動、および運動検出器を用いた心房収縮を示す機械的活動に基づいて心房興奮から収縮間隔までを決定し、かつ決定された心房興奮から収縮間隔までに基づいてAVペーシング間隔を決定するようにさらに構成されている。
【0193】
例示的な実施形態A4では、機器は、実施形態A3による機器を含み、検出された心房興奮が、第1の電極を使用して検出された内因性心房興奮である。
【0194】
例示的な実施形態A5では、機器は、実施形態A3またはA4による機器を含み、心房収縮を示す検出された機械的活動が、S4心音に対応する。
【0195】
例示的な実施形態A6では、機器は、任意のA実施形態による機器を含み、遠位端領域を含むハウジングをさらに有する。第1の電極は、ハウジングにリードレスで結合され、第2の電極は、ハウジングの遠位端領域からリードレスで延びる。運動検出器、治療送達回路、検知回路、およびコントローラは、ハウジング内に封入されている。
【0196】
例示的な実施形態A7では、機器は、任意のA実施形態による機器を含み、第1の電極が、右心房電極であり、第2の電極が、組織貫通電極である。
【0197】
例示的な実施形態A8では、機器は、任意のA実施形態による機器を含み、第1の電極が、患者の心臓の右心房(RA)に、患者の心臓のRAに心臓治療を送達するか、またはその電気的活動を検知するために植込み可能であり、第2の電極が、患者の心臓の左心室心筋の基底領域、中隔領域、または基底中隔領域における左心室(LV)に心臓治療を送達するか、またはその電気的活動を検知するために、患者の心臓のRAのKoch三角領域から植込み可能である。
【0198】
例示的な実施形態A9では、機器は、任意のA実施形態による機器を含み、少なくとも1つの電気機械的間隔が、心室ペーシングを示す電気的活動から僧帽弁閉鎖を示す機械的活動までの間隔を含む。
【0199】
例示的な実施形態A10では、機器は、実施形態A9による機器を含み、心室ペーシングから僧帽弁閉鎖までの間隔が、内因性心室興奮から僧帽弁閉鎖までの間隔の所定のパーセンテージよりも長くなることに応答して許容できない。
【0200】
例示的な実施形態A11では、機器は、実施形態A9またはA10による機器を含み、僧帽弁閉鎖を示す機械的活動が、S1心音に対応する。
【0201】
例示的な実施形態A12では、機器は、任意のA実施形態による機器を含み、少なくとも1つの電気機械的間隔が、僧帽弁閉鎖を示す機械的活動から、心室ペーシングに応答して大動脈弁閉鎖を示す機械的活動までの間隔を含む。
【0202】
例示的な実施形態A13では、機器は、実施形態A12による機器を含み、心室ペーシングに応答して僧帽弁閉鎖から大動脈弁閉鎖までの間隔が、内因性僧帽弁閉鎖から内因性大動脈弁閉鎖までの間隔の所定のパーセンテージより短くなることに応答して許容できない。
【0203】
例示的な実施形態A14では、機器は、実施形態A12またはA13による機器を含み、大動脈弁閉鎖を示す機械的活動が、S2心音に対応する。
【0204】
例示的な実施形態A15では、機器は、任意のA実施形態による機器を含み、AVペーシング間隔が、心臓治療のために許容できない少なくとも1つの電気機械的間隔に応答して、短縮されている。
【0205】
例示的な実施形態A16では、機器は、任意のA実施形態による機器を含み、少なくとも1つの電気機械的間隔が心臓治療のために許容できるかどうかを決定することが、少なくとも1つの電気機械的間隔をそれぞれの閾値電気機械的間隔と比較することを含み、それぞれの閾値電気機械的間隔が、特定のAVペーシング間隔を使用して決定される。特定のAVペーシング間隔は、複数の外部電極を含む電極装置からの監視された電気的活動に基づいて決定される。
【0206】
例示的な態様B1では、植込み型医療機器は、複数の電極を含む。複数の電極は、患者の心臓の心房に、心臓治療を送達するか、または患者の心臓の心房の電気的活動を検知するために植込まれる第1の電極と、第1の電極より遠位の患者の心臓の中隔壁に、患者の心臓の心室に心臓治療を送達するか、またはその電気的活動を検知するために植込まれる第2の電極と、を含む。植込み型医療機器はまた、患者の心臓の機械的活動を検出するための運動検出器と、患者の心臓に心臓治療を送達するための複数の電極に動作可能に結合された治療送達回路と、患者の心臓の電気的活動を検知するための複数の電極、および患者の心臓の機械的活動を検知するための運動検出器に動作可能に結合された検知回路と、を含む。機器はまた、治療送達回路および検知回路に動作可能に結合された処理回路を有するコントローラとを含む。コントローラは、心房興奮を示す第1の電極からの電気的活動を検出し、心房収縮を示す運動検出器から機械的活動を検出し、検出された心房興奮および検出された心房収縮に基づいて少なくとも1つの電気機械的間隔を決定し、かつ少なくとも1つの電気機械的間隔の繰り返し測定が心房リモデリングを示しているかどうかを決定するように構成されている。
【0207】
例示的な実施形態B2では、機器は、任意のB実施形態による機器を含み、コントローラが、少なくとも1つの電気機械的間隔の繰り返し測定が、時間とともに減少する心房興奮から収縮間隔までに基づく効果的な心房リモデリングを示すかどうかを決定するようにさらに構成されている。
【0208】
例示的な態様C1では、植込み型医療機器は、複数の電極を含む。複数の電極は、患者の心臓の心房に、心臓治療を送達するか、または患者の心臓の心房の電気的活動を検知するために植込まれる第1の電極と、第1の電極より遠位の患者の心臓の中隔壁に、患者の心臓の心室に心臓治療を送達するか、またはその電気的活動を検知するために植込まれる第2の電極と、を含む。植込み型医療機器はまた、患者の心臓の機械的活動を検出するための運動検出器と、患者の心臓に心臓治療を送達するための複数の電極に動作可能に結合された治療送達回路と、患者の心臓の電気的活動を検知するための複数の電極、および患者の心臓の機械的活動を検知するための運動検出器に動作可能に結合された検知回路と、を含む。機器はまた、治療送達回路および検知回路に動作可能に結合された処理回路を有するコントローラとを含む。コントローラは、第2の電極を使用して心室興奮を示す電気的活動を検出し、心室収縮を示す運動検出器を使用して機械的活動を検出し、検出された心室興奮および検出された心室収縮に基づいて少なくとも1つの電気機械的間隔を決定し、かつ少なくとも1つの電気機械的間隔の繰り返し測定が心室リモデリングを示しているかどうかを決定するように構成されている。
【0209】
例示的な実施形態C2では、機器は、任意のC実施形態による機器を含み、コントローラが、少なくとも1つの電気機械的間隔の繰り返し測定が、時間とともに減少する心室興奮から収縮間隔までに基づく効果的な心室リモデリングを示すかどうかを決定するようにさらに構成されている。
【0210】
例示的な実施形態C3では、機器は、任意のC実施形態による機器を含み、少なくとも1つの電気機械的間隔が、心室ペーシングを示す電気的活動から僧帽弁閉鎖を示す機械的活動までの間隔を含む。
【0211】
例示的な実施形態C4では、機器は、実施形態C3による機器を含み、僧帽弁閉鎖を示す機械的活動が、S1心音に対応する。
【0212】
例示的な実施形態C5では、機器は、任意のC実施形態による機器を含み、少なくとも1つの電気機械的間隔が、僧帽弁閉鎖を示す機械的活動から、心室ペーシングに応答して大動脈弁閉鎖を示す機械的活動までの間隔を含む。
【0213】
例示的な実施形態C6では、機器は、実施形態C5による機器を含み、大動脈弁閉鎖を示す機械的活動が、S2心音に対応する。
【0214】
例示的な実施形態D1では、方法は、房室(AV)ペーシング間隔に従って患者の心臓にペーシングパルスを送達することを含む。方法はまた、ペーシングパルスを送達することに応答する電気的活動および機械的活動のうちの少なくとも1つに基づいて少なくとも1つの電気機械的間隔を決定することも含む。方法はまた、少なくとも1つの電気機械的間隔に基づいてAVペーシング間隔を調整することも含む。
【0215】
例示的な実施形態D2では、方法は、任意のD実施形態による方法を含み、AVペーシング間隔を調整することが、少なくとも1つの電気機械的間隔が心臓治療のために許容できるかどうかを決定することと、心臓治療のために許容できない少なくとも1つの電気機械的間隔に応答して、AVペーシング間隔を調整することと、を含む。
【0216】
例示的な実施形態D3では、方法は、任意のD実施形態による方法を含み、少なくとも1つの電気機械的間隔の繰り返し測定が、効果的な心房リモデリングを示すかどうかを決定することをさらに含む。
【0217】
例示的な実施形態D4では、方法は、任意のD実施形態による方法を含み、少なくとも1つの電気機械的間隔の繰り返し測定が、効果的な心室リモデリングを示すかどうかを決定することをさらに含む。
【0218】
このように、加速度計を使用したVFA心臓再同期治療の様々な実施形態が、開示されている。本明細書では、本開示の一部を形成する添付の図面のセットを参照するが、少なくとも当業者の1人は、本明細書で記載する実施形態の様々な適合および修正が本開示の範囲内にあるか、またはその範囲から逸脱しないことを理解するであろう。例えば、本明細書で説明する実施形態の態様は、様々な方法で互いに組み合わせてもよい。したがって、添付の特許請求の範囲内で、請求項に記載の発明は、本明細書に明示的に説明されている以外の方法で実施され得ると理解されたい。
【0219】
本明細書で開示される様々な態様は、記載および添付の図面に具体的に提示される組み合わせとは異なる組み合わせで組み合わせることができることを理解されたい。本明細書に記載のプロセスまたは方法のいずれかの特定の行為またはイベントは、実施例に応じて異なる順序で行われてもよく、追加、併合、または完全に省略されてもよい(例えば、すべての記載された行為またはイベントは、本技術を実行するために必要ではない場合がある)ことも理解されたい。さらに、本開示の特定の態様は、明確にするために単一のモジュールまたはユニットによって行われるものとして記載されているが、本開示の技術は、例えば、医療機器に関連するユニットまたはモジュールの組み合わせによって行われ得ることを理解されたい。
【0220】
1つ以上の実施例では、記載される技術は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装され得る。ソフトウェアで実装される場合、機能は、コンピュータ可読媒体上に1つ以上の命令またはコードとして記憶され、ハードウェアベースの処理ユニットによって実行されることができる。コンピュータ可読媒体は、データ記憶媒体(例えば、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、または命令もしくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶するために使用されることができ、かつコンピュータによってアクセスされることができる任意の他の媒体)などの、有形媒体に対応する非一時的コンピュータ可読媒体を含み得る。
【0221】
命令は、1つ以上のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、汎用マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブル論理アレイ(FPGA)、または他の同等の集積もしくは離散論理回路などの、1つ以上のプロセッサによって実行され得る。したがって、本明細書に使用される「プロセッサ」という用語は、上記の構造のいずれか、または説明された技術の実装に好適な任意の他の物理的構造を指し得る。また、技術は、1つ以上の回路または論理要素で完全に実装されてもよい。
【0222】
本明細書で引用されるすべての参考文献および刊行物は、任意の態様が本開示と直接矛盾する場合を除いて、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0223】
本明細書で使用されるすべての科学的および技術的用語は、特に明記しない限り、当技術分野で一般的に使用される意味を有する。本明細書で提供される定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。
【0224】
特に明記しない限り、明細書および特許請求の範囲で使用される特徴のサイズ、量、および物理的特性を表すすべての数値は、「正確に」または「約」という用語のいずれかによって修正されると理解され得る。したがって、反対に示されない限り、前述の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本明細書に開示される教示を利用して当業者によって得られることが求められる所望の特性に応じて、または例えば、典型的な範囲の実験誤差内において変化し得る近似値である。
【0225】
エンドポイントによる数値範囲の列挙は、その範囲内に含まれるすべての数値(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)、およびその範囲内の任意の範囲を含む。本明細書において、「最大(up to)」または「以下(no greater than)」の数(例えば、最大50)という用語は、その数(例えば、50)を含み、「以上(no less than)」の数(例えば、5位以上)という用語は、その数(例えば、5)を含む。
【0226】
「近位」または「遠位」などの配向に関する用語は、構成要素の相対位置を記載するために使用され、企図される実施形態の配向を制限することを意味するものではない。
【0227】
「結合された」または「接続された」という用語は、直接的(互いに直接接触している)または間接的(2つの要素の間に1つ以上の要素を有して取り付けている)のいずれかで互いに取り付けられている要素を指す。いずれかの用語は、結合または接続が、機能性を実行するために構成要素が相互作用することを可能にするように構成されていることを記載するために、互換的に使用され得る、「動作的に」および「動作可能に」修正され得る。
【0228】
本明細書で使用される場合、「構成されている」という用語は、本開示の内容が明確に別段の指示しない限り、「適合されている」または「構造化されている」という用語と互換的に使用され得る。
【0229】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに別段の定めがない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。
【0230】
「または」という用語は、概して、その包括的な意味で使用され、例えば、文脈上明らかに別段の定めがない限り、「および/または」を意味する。
【0231】
「および/または」という用語は、リストされた要素の1つもしくはすべて、またはリストされた要素のうちの少なくとも2つの組み合わせを意味する。
【0232】
リストに続く「少なくとも1つ」、「少なくとも1つを含む」、および「1つ以上の」という句は、リスト内の項目の任意の1つ、およびリスト内の2つ以上の項目の任意の組み合わせを指す。
【0233】
本明細書で使用される場合、「有する(have)」、「有している(having)」、「含む(include)」、「含んでいる(including)」、「備える(comprise)」、「備えている(comprising)」などは、それらの制限のない意味で使用されており、概して、「含むが、限定されない」を意味する。「基本的にからなる(consisting essentially of)」、「からなる(consisting of)」」などは、「備えている(comprising)」」などに包含されることが理解されよう。
【0234】
「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、または「いくつかの実施形態」などへの言及は、その実施形態に関連して記載された特定の特徴、構成、組成物、または特性が、開示の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。したがって、全体を通して様々な場所でのそのような表現の出現は、必ずしも本開示の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、組成物、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせられ得る。
図1
図2
図3
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【国際調査報告】