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特表2022-524573横断的に向けられるインサートのためのインサート・ホルダ、切削工具及び切削インサート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-09
(54)【発明の名称】横断的に向けられるインサートのためのインサート・ホルダ、切削工具及び切削インサート
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/16 20060101AFI20220426BHJP
   B23B 29/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
B23B27/16 B
B23B29/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544274
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 IL2020050198
(87)【国際公開番号】W WO2020188554
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】16/357,458
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アサド,シモン
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046EE14
3C046KK02
(57)【要約】
切削工具(20)は、インサート・ホルダ(24)の横断的に向けられたインサート受入れポケット(46)内に締め付けられる2方向刃先交換可能切削インサート(22)を含む。インサート・ホルダ(24)は、前方に位置するインサート取付け部分(32)を含み、インサート取付け部分(32)は、上顎部(34)と下顎部(36)とを含み、上顎部(34)及び下顎部(36)は、ポケット前開口(52a)を有するインサート受入れポケット(46)を一緒に画定する。下顎部(36)は、ポケット下締付け面(54)を含む。上顎部(34)は、ポケット下締付け面(54)に向かって相互に向き合うポケット上締付け面(60)と、全体がポケット前開口(52a)に向かって向くポケット・ストッパ面(68)と、を含む。ポケット・ストッパ面(68)は、ポケット上締付け面(60)よりも、ポケット下締付け面(54)に近く、ポケット前開口(52a)から遠い。ポケット・ストッパ面(68)は、ポケット下締付け面(54)よりも、ポケット後開口(52b)から遠い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反対の前方向(D)から後方向(D)までを画定するホルダ長手方向軸(B)を有する細長いインサート・ホルダ(24)であって、前記インサート・ホルダ(24)は、
前記ホルダ長手方向軸(B)周りに円周方向に延在するホルダ外周面(26)であって、前記ホルダ外周面(26)は、前記インサート・ホルダ(24)の前方端部でホルダ端面(28)に交差し、前記ホルダ端面(28)の境界を形成する、ホルダ外周面(26)と、
シャンク部分(30)と、
前記インサート・ホルダの前方端部に位置するインサート取付け部分(32)と、を備え、
前記インサート取付け部分(32)は、
締付け凹部(38)によって離間される上顎部(34)及び下顎部(36)であって、前記締付け凹部(38)は、第1の凹側開口(40a)及び第2の凹側開口(40b)で前記ホルダ端面(28)内に凹み、前記ホルダ外周面(26)に開口し、前記上顎部(34)は、枢動軸(P)周りに回転させることによって前記下顎部(36)に対して移動可能である、上顎部(34)及び下顎部(36)と、
切削インサートを中に受け入れるように構成した、横断的に向けられたインサート受入れポケット(46)と、を備え、
前記インサート受入れポケット(46)は、前記締付け凹部(38)内に形成され、少なくとも部分的に、前記上顎部(34)及び前記下顎部(36)のそれぞれの上に形成されたポケット上面(48)及びポケット下面(50)によって画定され、
前記ポケット上面(48)及び前記ポケット下面(50)は、ポケット長手方向軸(L)に沿って前記第1の凹側開口(40a)及び前記第2の凹側開口(40b)まで長手方向に延在し、反対のポケット前開口(52a)及びポケット後開口(52b)のそれぞれを画定し、
前記ポケット上面(48)と前記ポケット下面(50)との間に位置するポケット長手方向平面(LP)は、前記ポケット長手方向軸(L)を含み、
前記ポケット下面(50)は、ポケット下締付け面(54)を備え、
前記ポケット上面(48)は、
前記ポケット下締付け面(54)に向かって相互に向き合うポケット上締付け面(60)と、
全体が前記ポケット前開口(52a)に向かって向くポケット・ストッパ面(68)と、を備え、
前記ポケット・ストッパ面(68)は、前記ポケット上締付け面(60)よりも、前記ポケット下締付け面(54)に近く、前記ポケット前開口(52a)から遠く、
前記ポケット下締付け面(54)は、前記ポケット・ストッパ面(68)よりも前記ポケット後開口(52b)に近い状態で前記ポケット長手方向軸(L)に沿って延在する、インサート・ホルダ(24)。
【請求項2】
前記ポケット・ストッパ面(68)は、前記ポケット前開口(52a)から離れる方向で前記ポケット長手方向平面(LP)に向かって傾斜する、請求項1に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項3】
前記ポケット上締付け面(60)は、前記ポケット前開口(52a)から離れる方向で前記ポケット長手方向平面(LP)に向かって傾斜し、
前記ポケット・ストッパ面(68)は、前記ポケット上締付け面(60)よりも急峻に傾斜する、請求項2に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項4】
前記インサート受入れポケット(46)は、横断ポケット平面(PP)に沿って向けられ、
前記横断ポケット平面(PP)は、前記ポケット長手方向軸(L)を含み、前記ポケット上面(48)及び前記ポケット下面(50)に交差し、
前記横断ポケット平面(PP)は、前記ホルダ長手方向軸(B)に横断する、請求項1~3のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項5】
前記横断ポケット平面(PP)は、前記ホルダ長手方向軸(B)に直交する、請求項4に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項6】
前記ポケット長手方向平面(LP)は、前記横断ポケット平面(PP)に直交し、
前記ポケット下締付け面(54)は、前記後方向(D)で前記ポケット長手方向平面(LP)から離れて傾斜する、請求項4に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項7】
前記ポケット下締付け面(54)は、前記第1の凹側開口(40a)と第2の凹側開口(40b)との間で、前記ポケット長手方向軸(L)に平行な方向で長手方向に延在する、請求項1~6のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項8】
前記ポケット下締付け面(54)は、2つのポケット下締付け小面(54a、54b)を備え、
前記2つのポケット下締付け小面(54a、54b)は、同一平面上にあり、前記ポケット前開口(52a)から離れる方向で、前記ポケット下面(50)内に凹む下逃げ凹部(56)によって互いに離間する、請求項1~7のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項9】
前記インサート受入れポケット(46)は、挿入溝(62)を備え、
前記挿入溝(62)は、前記ポケット上締付け面(60)内に凹み、前記ポケット前開口(52a)から離れて延在する、請求項1~8のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項10】
前記挿入溝(62)は、前記ポケット上締付け面(60)が2つのポケット上締付け小面(60a、60b)を含むように、前記ポケット上締付け面(60)の長手方向範囲全体に沿って中心に延在し、
前記2つのポケット上締付け小面(60a、60b)は、同一平面上にあり、前記ホルダ端面(28)から離れる方向で、前記挿入溝(62)によって互いに離間する、請求項9に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項11】
前記インサート受入れポケット(46)は、前記ホルダ端面(28)に開口する、請求項1~10のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項12】
前記インサート受入れポケット(46)は、前記第2の凹側開口(40b)まで延在し、前記ポケット前開口(52a)の反対側のポケット後開口(52b)を画定する、請求項1~11のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項13】
前記ホルダ外周面(26)から突出し、前記ポケット前開口(52a)に隣接する状態で前記下顎部(36)上に位置する下支持リブ(58)を備える、請求項1~12のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項14】
前記締付け凹部(38)内に形成され、前記インサート受入れポケット(46)から後方に延在する弾性細穴(70)を備え、
前記弾性細穴(70)は、前記インサート受入れポケット(46)によって前記ホルダ端面(28)から完全に離間する、請求項1~13のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項15】
前記締付け凹部(38)は、前記上顎部(34)及び前記下顎部(36)のそれぞれの上に形成される反対の凹上面(42)及び凹下面(44)によって画定され、
前記上顎部(34)は、前記凹上面(42)内に凹む内側可撓性溝(78)を備える、請求項1~14のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項16】
前記内側可撓性溝(78)は、内側可撓性溝開口(80)で前記ホルダ端面(28)に開口し、前記インサート・ホルダ(24)の前記後方向(D)で前記インサート受入れポケット(46)を越えて延在する、請求項15に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項17】
前記インサート受入れポケット(46)は、前記下顎部(36)上に形成される少なくとも1つのポケット軸方向当接面(64)を備え、
前記少なくとも1つのポケット軸方向当接面(64)は、前記インサート・ホルダ(24)の前記後方向(D)で前記インサート受入れポケット(46)の境界を定める、請求項1~16のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項18】
前記下顎部(36)は、2つのポケット軸方向当接面(64)を備え、
前記2つのポケット軸方向当接面(64)は、前記ポケット下締付け面(54)から離れる方向で、軸方向逃げ凹部(66)によって互いに離間する、請求項17に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項19】
前記シャンク部分(30)及び前記インサート取付け部分(32)は、単一の一体化構造を有するように一緒に一体に形成される、請求項1~18のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)と、
前記インサート受入れポケット(46)内に解放可能に締め付けられる切削インサート(22)と、
を備える、切削工具(20)。
【請求項21】
前記切削インサート(22)は、インサート長手方向軸(A)を画定する方向で長手方向に伸長する両端式切削インサートであり、
2つの対向するインサート端面(86)、及び前記2つの対向するインサート端面(86)の間に延在するインサート外周面(88)であって、前記インサート外周面(88)は、前記インサート長手方向軸(A)周りに円周方向に延在し、対向するインサート上面(90)及びインサート下面(92)、並びに前記2つのインサート端面(86)を全て接続する2つの対向するインサート側面(94)を備える、インサート端面(86)及びインサート外周面(88)と、
前記インサート上面(90)と前記2つのインサート端面(86)のそれぞれとの交線に形成される2つの切れ刃(96)と、
前記インサート上面(90)から突出する取付け突出部(100)と、を備え、
前記取付け突出部(100)は、2つのインサート支承面(102)を備え、
前記2つのインサート支承面(102)は、前記インサート長手方向軸(A)の方向でずれ、切れ刃平面(EP)の上方で前記インサート上面(90)上に形成され、前記各切れ刃(96)は、前記各切れ刃(96)に最も接近する前記インサート支承面(102)に付随し、
前記インサート上面(90)と前記インサート下面(92)との間に位置するインサート中央平面(MP)は、前記インサート長手方向軸(A)を含み、前記2つの対向するインサート側面(94)に交差し、前記2つの対向するインサート端面(86)にも交差し、
反対の前記インサート側面(94)の間に位置するインサート長手方向平面(IP)は、前記インサート長手方向軸(A)を含み、対向する前記インサート上面(90)及び前記インサート下面(92)に交差し、対向する前記インサート端面(86)にも交差し、
前記インサート下面(92)は、少なくとも1つのインサート下当接面(98)を備え、
各前記インサート支承面(102)は、
前記少なくとも1つのインサート下当接面(98)から離れて相互に向き合うインサート上当接面(104)と、
前記インサート上当接面(104)よりも、付随する前記切れ刃(96)及び更には前記インサート下当接面(98)に近いインサート・ストッパ面(110)と、
を備える、請求項20に記載の切削工具(20)。
【請求項22】
各前記インサート・ストッパ面(110)は、付随する前記切れ刃(96)に向かう方向で前記インサート中央平面(MP)に向かって傾斜する、請求項21に記載の切削工具(20)。
【請求項23】
各前記インサート上当接面(104)は、付随する前記切れ刃(96)に向かう方向で前記インサート中央平面(MP)に向かって傾斜し、
あらゆる所与のインサート支承面(102)に関し、前記インサート・ストッパ面(110)は、前記インサート上当接面(104)よりも急峻に傾斜する、請求項21又は22に記載の切削工具(20)。
【請求項24】
前記切削インサート(22)は、前記インサート受入れポケット(46)内に弾性的に締め付けられる、請求項21~23のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項25】
前記ポケット前開口(52a)に近接する前記切れ刃(96)は、有効切れ刃(96a)を形成し、
前記ポケット・ストッパ面(68)は、前記インサート・ストッパ面(110)に当接し、
前記ポケット下締付け面(54)は、前記少なくとも1つのインサート下当接面(98)の1つに当接し、
前記ポケット上締付け面(60)は、前記有効切れ刃(96a)から最も遠い前記インサート上当接面(104)に当接する、請求項21~24のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項26】
前記インサート受入れポケット(46)は、少なくとも1つの前向きポケット軸方向当接面(64)を備え、
前記少なくとも1つの前向きポケット軸方向当接面(64)は、前記下顎部(36)上に形成され、前記後方向(D)で前記インサート受入れポケット(46)の境界を定め、
各前記インサート側面(94)は、インサート側当接面(108)を備え、
前記少なくとも1つのポケット軸方向当接面(64)は、前記インサート側面(94)の1つに当接する、請求項25に記載の切削工具(20)。
【請求項27】
前記取付け突出部(100)は、2つの前記インサート側面(94)の間に延在する、請求項21~26のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項28】
前記取付け突出部(100)は、前記インサート長手方向軸(A)に沿った方向で2つの前記すくい面(97a)から離間する、請求項21~27のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項29】
前記取付け突出部(100)は、2つの突出挿入稜線部(106)を備え、
各前記挿入稜線部(106)は、それぞれのインサート上当接面(104)から突出する、請求項21~28のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項30】
各前記挿入稜線部(106)は、各前記インサート上当接面(104)が2つの平行なインサート上当接小面(104a、104b)を備えるように、前記インサート上当接面(104)の長手方向範囲全体に沿って中心に延在し、
前記2つの平行なインサート上当接小面(104a、104b)は、同一平面上にあり、前記インサート長手方向平面(IP)の両側で、前記挿入稜線部(106)によって互いに離間する、請求項29に記載の切削工具(20)。
【請求項31】
前記切削インサート(22)は、インサート中心軸(F)を有し、
前記インサート中心軸(F)は、前記インサート長手方向軸(A)に直交し、前記インサート長手方向軸(A)と交差し、前記インサート上面(90)及び前記インサート下面(92)に交差し、
前記切削インサート(22)は、前記インサート中心軸(F)周りに回転対称を呈する、請求項21~30のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項32】
前記少なくとも1つのインサート下当接面(98)は、前記インサート長手方向軸(A)に平行に延在する、請求項21~31のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項33】
前記切削インサート(22)は、インサート中心軸(F)を有し、
前記インサート中心軸(F)は、前記インサート長手方向軸(A)に直交し、前記インサート長手方向軸(A)と交差し、前記インサート上面(90)及び前記インサート下面(92)に交差し、
前記インサート下面(92)は、2つのインサート下当接面(98)を含み、
前記インサート下当接面(98)は、平坦であり、前記インサート上面(90)から離れる方向で前記インサート中心軸(F)に向かって傾斜する、請求項21~32のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項34】
インサート長手方向軸(A)を画定する方向で長手方向に伸長する両端式切削インサート(22)であって、前記両端式切削インサート(22)は、
2つの対向するインサート端面(86)、及び前記2つの対向するインサート端面(86)の間に延在するインサート外周面(88)であって、前記インサート外周面(88)は、前記インサート長手方向軸(A)周りに円周方向に延在し、対向するインサート上面(90)及びインサート下面(92)、並びに前記2つのインサート端面(86)を全て接続する2つの対向するインサート側面(94)を備える、インサート端面(86)及びインサート外周面(88)と、
前記インサート上面(90)と前記2つのインサート端面(86)のそれぞれとの交線に形成される2つの切れ刃(96)と、
前記インサート上面(90)から突出する取付け突出部(100)と、を備え、
前記取付け突出部(100)は、2つのインサート支承面(102)を備え、
前記2つのインサート支承面(102)は、前記インサート長手方向軸(A)の方向でずれ、切れ刃平面(EP)の上方で前記インサート上面(90)上に形成され、前記各切れ刃(96)は、前記各切れ刃(96)に最も接近する前記インサート支承面(102)に付随し、
前記インサート上面(90)と前記インサート下面(92)との間に位置するインサート中央平面(MP)は、前記インサート長手方向軸(A)を含み、2つの対向する前記インサート側面(94)に交差し、2つの対向する前記インサート端面(86)にも交差し、
反対の前記インサート側面(94)の間に位置するインサート長手方向平面(IP)は、前記インサート長手方向軸(A)を含み、対向する前記インサート上面(90)及び前記インサート下面(92)に交差し、対向する前記インサート端面(86)にも交差し、
前記インサート下面(92)は、少なくとも1つのインサート下当接面(98)を備え、
各前記インサート支承面(102)は、
前記少なくとも1つのインサート下当接面(98)から離れて相互に向き合うインサート上当接面(104)と、
前記インサート上当接面(104)よりも、付随する前記切れ刃(96)及び前記インサート下当接面(98)に近いインサート・ストッパ面(110)と、を備え、
前記インサート上当接面(104)及び前記インサート・ストッパ面(110)は、付随する前記切れ刃(96)に向かう方向で前記インサート中央平面(MP)に向かって傾斜し、
前記インサート・ストッパ面(110)は、前記インサート上当接面(104)よりも急峻に傾斜する、両端式切削インサート(22)。
【請求項35】
前記取付け突出部(100)は、2つの突出挿入稜線部(106)を備え、
各前記挿入稜線部(106)は、それぞれのインサート上当接面(104)から突出する、請求項34に記載の切削インサート(22)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の主題は、切削工具に関し、より詳細には、工作物に対する内側切削作業のために設計した切削工具に関し、この切削工具は、切削インサートが、横断的に向けられたインサート受入れポケット内に解放可能に締め付けられる種類のものであり、インサート受入れポケットは、インサート・ホルダ上に設けられている。
【背景技術】
【0002】
工作物に対する内側切削作業のための切削工具は、インサート・ホルダと、横断的に向けられたインサート受入れポケット内に解放可能に締め付けられる切削インサートと、を含むことができる。インサート・ホルダは、上顎部と下顎部とを含むことができ、上顎部及び下顎部は、締付け凹部によって離間され、インサート受入れポケットは、締付け凹部内に位置する。
【0003】
インサート受入れポケットは、切削インサートをインサート受入れポケットに挿入する際、予め規定した位置内に切削インサートを配置するポケット・ストッパ面を含むことができる。ポケット・ストッパ面は、ポケット・ストッパ面の背後に位置するストッパ支持部分上に形成され、ポケット・ストッパ面に強度及び剛性をもたらす。
【0004】
そのようなインサート受入れポケットの例は、例えば欧州特許出願公開第0477480号明細書及び米国特許出願公開第2017/333997号明細書に開示されており、ポケット・ストッパ面は、下顎部上に形成され、切削インサートの後方部分に当接する。しかし、そのようなインサート受入れポケットの1つの欠点は、ストッパ支持部分が切削工具の径方向寸法に関与することである。このことは、(例えば穴加工又は内溝加工の際に)切削工具を小さな穴に挿入するには不利である。
【発明の概要】
【0005】
工作物に対する内側切削作業のために設計した切削工具のために提供され、インサート受入れポケットを有し、上述の欠点を著しく低減又は克服するインサート・ホルダを提供することは、本発明の一目的である。
【0006】
インサート受入れポケット内に受け入れられるように構成した切削インサートを提供することは、本発明の更なる目的である。
【0007】
インサート・ホルダ及び切削インサートの両方を備える切削工具を提供することは、本発明のまた更なる目的である。
【0008】
本出願の主題の第1の態様によれば、ホルダ長手方向軸を有する細長いインサート・ホルダが提供され、ホルダ長手方向軸は、反対の前方向から後方向までを画定し、インサート・ホルダは、
ホルダ長手方向軸周りに円周方向に延在するホルダ外周面であって、ホルダ外周面は、インサート・ホルダの前方端部でホルダ端面に交差し、ホルダ端面の境界を形成する、ホルダ外周面と、
シャンク部分と、
インサート・ホルダの前方端部に位置するインサート取付け部分と、を備え、
インサート取付け部分は、
締付け凹部によって離間される上顎部及び下顎部であって、締付け凹部は、第1の凹側開口及び第2の凹側開口でホルダ端面内に凹み、ホルダ外周面に開口し、上顎部は、枢動軸周りに回転させることによって下顎部に対して移動可能である、上顎部及び下顎部と、
切削インサートを中に受け入れるように構成した、横断的に向けられたインサート受入れポケットと、を備え、
インサート受入れポケットは、締付け凹部内に形成され、少なくとも部分的に、上顎部及び下顎部のそれぞれの上に形成されたポケット上面及びポケット下面によって画定され、
ポケット上面及びポケット下面は、ポケット長手方向軸に沿って第1の凹側開口及び第2の凹側開口まで長手方向に延在し、反対のポケット前開口及びポケット後開口のそれぞれを画定し、
ポケット上面とポケット下面との間に位置するポケット長手方向平面は、ポケット長手方向軸を含み、
ポケット下面は、ポケット下締付け面を備え、
ポケット上面は、
ポケット下締付け面に向かって相互に向き合うポケット上締付け面と、
全体がポケット前開口に向かって向くポケット・ストッパ面と、を備え、
ポケット・ストッパ面は、ポケット上締付け面よりも、ポケット下締付け面に近く、ポケット前開口から遠く、
ポケット下締付け面は、ポケット・ストッパ面よりもポケット後開口に近い状態でポケット長手方向軸に沿って延在する。
【0009】
本出願の主題の第2の態様によれば、切削工具を提供し、切削工具は、
上記した種類のインサート・ホルダと、
インサート受入れポケット内に解放可能に締め付けられる切削インサートと、
を備える。
【0010】
本出願の主題の第3の態様によれば、インサート長手方向軸を画定する方向で長手方向に伸長する両端式切削インサートが提供され、両端式切削インサートは、
2つの対向するインサート端面、及び2つの対向するインサート端面の間に延在するインサート外周面であって、インサート外周面は、インサート長手方向軸周りに円周方向に延在し、対向するインサート上面及びインサート下面、並びに2つのインサート端面を全て接続する2つの対向するインサート側面を備える、インサート端面及びインサート外周面と、
インサート上面と2つのインサート端面のそれぞれとの交線に形成される2つの切れ刃と、
インサート上面から突出する取付け突出部と、を備え、
取付け突出部は、2つのインサート支承面を備え、
2つのインサート支承面は、インサート長手方向軸の方向でずれ、切れ刃平面の上方でインサート上面上に形成され、
各切れ刃は、各切れ刃に最も接近するインサート支承面に付随し、
インサート上面とインサート下面との間に位置するインサート中央平面は、インサート長手方向軸を含み、2つの対向するインサート側面に交差し、2つの対向するインサート端面にも交差し、
反対のインサート側面の間に位置するインサート長手方向平面は、インサート長手方向軸を含み、対向するインサート上面及びインサート下面に交差し、対向するインサート端面にも交差し、
インサート下面は、少なくとも1つのインサート下当接面を備え、
各インサート支承面は、
少なくとも1つのインサート下当接面から離れて相互に向き合うインサート上当接面と、
インサート上当接面よりも、付随する切れ刃及びインサート下当接面に近いインサート・ストッパ面と、を備え、
インサート上当接面及びインサート・ストッパ面は、付随する切れ刃に向かう方向でインサート中央平面に向かって傾斜し、
インサート・ストッパ面は、インサート上当接面よりも急峻に傾斜する。
【0011】
上記は概要であり、以下で説明する特徴は、あらゆる組合せで本出願の主題に適用可能であり、例えば、以下の特徴のいずれかは、切削インサート、インサート・ホルダ又は切削工具に適用可能であり得ることを理解されたい。
【0012】
ポケット・ストッパ面は、ポケット前開口から離れる方向でポケット長手方向平面に向かって傾斜することができる。
【0013】
ポケット上締付け面は、ポケット前開口から離れる方向でポケット長手方向平面に向かって傾斜することができる。ポケット・ストッパ面は、ポケット上締付け面よりも急峻に傾斜することができる。
【0014】
インサート受入れポケットは、横断ポケット平面に沿って向けることができ、横断ポケット平面は、ポケット長手方向軸を含み、ポケット上面及びポケット下面に交差する。横断ポケット平面は、ホルダ長手方向軸に横断することができる。
【0015】
横断ポケット平面は、ホルダ長手方向軸に直交することができる。
【0016】
ポケット長手方向平面は、横断ポケット平面に直交することができる。ポケット下締付け面は、後方向でポケット長手方向平面から離れて傾斜することができる。
【0017】
ポケット下締付け面は、第1の凹側開口と第2の凹側開口との間で、ポケット長手方向軸に平行な方向で長手方向に延在することができる。
【0018】
ポケット下締付け面は、平坦とすることができる。
【0019】
ポケット下締付け面は、2つのポケット下締付け小面を備えることができ、2つのポケット下締付け小面は、同一平面上にあり、ポケット前開口から離れる方向で、ポケット下面内に凹む下逃げ凹部によって互いに離間することができる。
【0020】
ポケット上締付け面は、平坦とすることができる。
【0021】
インサート受入れポケットは、挿入溝を備えることができ、挿入溝は、ポケット上締付け面内に凹み、ポケット前開口から離れて延在する。
【0022】
挿入溝は、ポケット上締付け面が2つのポケット上締付け小面を備えることができるように、ポケット上締付け面の長手方向範囲全体に沿って中心に延在することができ、2つのポケット上締付け小面は、同一平面上にあり、ホルダ端面から離れる方向で、挿入溝によって互いに離間することができる。
【0023】
ポケット・ストッパ面は、平坦とすることができる。
【0024】
インサート受入れポケットは、ホルダ端面に開口することができる。
【0025】
インサート受入れポケットは、第2の凹側開口まで延在し、ポケット前開口の反対側のポケット後開口を画定することができる。
【0026】
インサート・ホルダは、下支持リブを備えることができ、下支持リブは、ホルダ外周面から突出し、ポケット前開口に隣接する状態で下顎部上に位置する。
【0027】
上顎部は、更なる個別締付けデバイスを使用せずに、インサート受入れポケット内に切削インサートを弾性的に締め付けるように構成することができる。
【0028】
インサート・ホルダは、弾性細穴を備えることができ、弾性細穴は、締付け凹部内に形成され、インサート受入れポケットから後方に延在する。
【0029】
弾性細穴は、インサート受入れポケットによってホルダ端面から全体的に離間することができる。
【0030】
締付け凹部は、上顎部及び下顎部のそれぞれの上に形成される反対の凹上面及び凹下面によって画定することができる。上顎部は、凹上面内に凹む内側可撓性溝を備えることができる。
【0031】
内側可撓性溝は、内側可撓性溝開口でホルダ端面に開口することができ、インサート・ホルダの後方向でインサート受入れポケットを越えて延在することができる。
【0032】
ポケット上締付け面及びポケット・ストッパ面は、内側可撓性溝によって互いに離間することができる。
【0033】
上顎部は、ホルダ外周面内に凹む外側可撓性溝を備えることができる。
【0034】
外側可撓性溝は、外側可撓性溝開口でホルダ端面に開口することができ、インサート・ホルダの後方向でインサート受入れポケットを越えて延在することができる。
【0035】
ポケット長手方向軸に沿った方向において、外側可撓性溝開口は、ポケット・ストッパ面よりもポケット前開口から遠くすることができる。
【0036】
外側可撓性溝は、ホルダ長手方向軸に平行に向けることができる。
【0037】
インサート受入れポケットは、少なくとも1つのポケット軸方向当接面を備えることができ、少なくとも1つのポケット軸方向当接面は、下顎部上に形成され、インサート・ホルダの後方向でインサート受入れポケットの境界を定める。
【0038】
少なくとも1つのポケット軸方向当接面は、ポケット下締付け面から離間することができる。
【0039】
下顎部は、2つのポケット軸方向当接面を備えることができ、2つのポケット軸方向当接面は、ポケット下締付け面から離れる方向で、軸方向逃げ凹部によって互いに離間することができる。
【0040】
シャンク部分及びインサート取付け部分は、単一の一体化構造を有するように一緒に一体に形成することができる。
【0041】
ホルダ外周面は、インサート取付け部分において凸状に湾曲することができる。
【0042】
切削インサートは、インサート長手方向軸を画定する方向で長手方向に伸長する両端式切削インサートであり、両端式切削インサートは、
2つの対向するインサート端面、及び2つの対向するインサート端面の間に延在するインサート外周面であって、インサート外周面は、インサート長手方向軸周りに円周方向に延在し、対向するインサート上面及びインサート下面、並びに2つのインサート端面を全て接続する2つの対向するインサート側面を備える、インサート端面及びインサート外周面と、
インサート上面と2つのインサート端面のそれぞれとの交線に形成される2つの切れ刃と、
インサート上面から突出する取付け突出部と、を備えることができ、
取付け突出部は、2つのインサート支承面を備え、
2つのインサート支承面は、インサート長手方向軸の方向でずれ、切れ刃平面の上方でインサート上面上に形成され、
各切れ刃は、各切れ刃に最も接近するインサート支承面に付随し、
インサート上面とインサート下面との間に位置するインサート中央平面は、インサート長手方向軸を含み、2つの対向するインサート側面に交差し、2つの対向するインサート端面にも交差し、
反対のインサート側面の間に位置するインサート長手方向平面は、インサート長手方向軸を含み、対向するインサート上面及びインサート下面に交差し、対向するインサート端面にも交差し、
インサート下面は、少なくとも1つのインサート下当接面を備え、
各インサート支承面は、
少なくとも1つのインサート下当接面から離れて相互に向き合うインサート上当接面と、
インサート上当接面よりも、付随する切れ刃及び更にはインサート下当接面に近いインサート・ストッパ面と、
を備えることができる。
【0043】
各インサート・ストッパ面は、付随する切れ刃に向かう方向でインサート中央平面に向かって傾斜することができる。
【0044】
各インサート上当接面は、付随する切れ刃に向かう方向でインサート中央平面に向かって傾斜することができる。あらゆる所与のインサート支承面に関し、インサート・ストッパ面は、インサート上当接面よりも急峻に傾斜することができる。
【0045】
切削インサートは、インサート受入れポケット内に弾性的に締め付けることができる。
【0046】
ポケット前開口に近接する切れ刃は、有効切れ刃を形成することができる。ポケット・ストッパ面は、インサート・ストッパ面に当接することができる。ポケット下締付け面は、少なくとも1つのインサート下当接面の1つに当接することができる。ポケット上締付け面は、有効切れ刃から最も遠いインサート上当接面に当接することができる。
【0047】
インサート受入れポケットは、少なくとも1つの前向きポケット軸方向当接面を備えることができ、少なくとも1つの前向きポケット軸方向当接面は、下顎部上に形成され、後方向でインサート受入れポケットの境界を定める。各インサート側面は、インサート側当接面を備えることができる。少なくとも1つのポケット軸方向当接面は、インサート側面の1つに当接することができる。
【0048】
取付け突出部は、2つのインサート側面の間に延在することができる。
【0049】
取付け突出部は、インサート長手方向軸に沿った方向で2つのすくい面から離間することができる。
【0050】
各インサート・ストッパ面は、平坦とすることができる。
【0051】
各インサート上当接面は、平坦とすることができる。
【0052】
取付け突出部は、2つの突出挿入稜線部を備えることができ、各挿入稜線部は、それぞれのインサート上当接面から突出する。
【0053】
各挿入稜線部は、各インサート上当接面が2つの平行なインサート上当接小面を備えることができるように、インサート上当接面の長手方向範囲全体に沿って中心に延在することができ、2つの平行なインサート上当接小面は、同一平面上にあり、インサート長手方向平面の両側で、挿入稜線部によって互いに離間することができる。
【0054】
切削インサートは、インサート中心軸を有することができ、インサート中心軸は、インサート長手方向軸に直交し、インサート長手方向軸と交差し、インサート上面及びインサート下面に交差する。切削インサートは、インサート中心軸周りに回転対称を呈することができる。
【0055】
少なくとも1つのインサート下当接面は、インサート長手方向軸に平行に延在することができる。
【0056】
切削インサートには、保持ねじのための貫通穴がなくてよい。
【0057】
少なくとも1つのインサート下当接面は、平坦とすることができる。
【0058】
切削インサートは、インサート中心軸を有することができ、インサート中心軸は、インサート長手方向軸に直交し、インサート長手方向軸と交差し、インサート上面及びインサート下面に交差する。インサート下面は、2つのインサート下当接面を備えることができ、2つのインサート下当接面は、平坦であり、インサート上面から離れる方向でインサート中心軸に向かって傾斜することができる。
【0059】
取付け突出部は、2つの突出挿入稜線部を備えることができ、各挿入稜線部は、それぞれのインサート上当接面から突出する。
【0060】
各インサート・ストッパ面は、平坦とすることができる。
【0061】
本出願をより良好に理解し、本出願を実際にどのように実行し得るかを示すため、次に、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】切削工具の斜視図である。
図2図1に示すインサート・ホルダの第1の斜視図である。
図2a図2の詳細図である。
図2b図1に示すインサート・ホルダの第2の詳細な斜視図である。
図3図2に示すインサート・ホルダの前端面図である。
図4図2に示すインサート・ホルダの第1の側面図である。
図5図2に示すインサート・ホルダの第2の側面図である。
図6図2に示すインサート・ホルダの上面図である。
図7図1に示す切削インサートの斜視図である。
図8図7に示す切削インサートの側面図である。
図9図7に示す切削インサートの端面図である。
図10図7に示す切削インサートの上面図である。
図11図7に示す切削インサートの底面図である。
図12図1に示す切削インサートの側面図である。
図13図12に示す締付け平面で取った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
例示を簡単、明確にするため、図示する要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことを了解されたい。例えば、要素の一部の寸法は、明確にするため、他の要素と比較して誇張されていることがある、又はいくつかの物理的構成要素は、一機能ブロック若しくは要素内に含まれることがある。適切とみなされる場合、参照数字は、対応する又は類似する要素を示すために図面の中で繰り返すことがある。
【0064】
以下の説明において、本出願の主題の様々な態様を説明する。説明のため、特定の設定及び詳細は、本出願の主題に対し完全な理解をもたらすように十分詳細に示す。しかし、本明細書に提示する構成及び詳細を伴わずに本出願の主題を実行し得ることも当業者には明らかであろう。
【0065】
まず、本出願の主題の実施形態によるチップ除去のための切削工具20を示す図1に注意を向けられたい。切削工具20は、典型的には超硬合金から作製し得る切削インサート22を有する。切削工具20は、典型的には鉄鋼から作製し得るインサート・ホルダ24も有する。図示するこの非限定的な例において、切削工具20は、内溝加工工具であり、切削インサート22は、溝加工インサートである。切削工具20は、解放位置と締結位置との間で調節可能である。切削工具20の締結位置において、切削インサート22は、インサート・ホルダ24に解放可能に取り付けられる。
【0066】
次に、本出願によるインサート・ホルダ24を示す図2図6に注意を向けられたい。インサート・ホルダ24は、反対の前方向Dから後方向Dまでを画定するホルダ長手方向軸Bに沿って細長い。インサート・ホルダ24は、ホルダ長手方向軸Bに沿って円周方向に延在するホルダ外周面26を含む。ホルダ外周面26は、インサート・ホルダ24の前方端部でホルダ端面28に交差し、ホルダ端面28の境界を形成する。ホルダ長手方向軸Bは、ホルダ端面28に交差することができる。用語「前方」及び「後方」の使用は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって、図4及び図6のホルダ長手方向軸Bの方向における、左及び右のそれぞれに向かう相対的な位置を指すことを了解されたい。
【0067】
インサート・ホルダ24は、シャンク部分30と、インサート・ホルダ24の前方端部に位置するインサート取付け部分32と、を含む。シャンク部分30及びインサート取付け部分32の両方は、ホルダ外周面26によって円周方向に画定される。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、シャンク部分30及びインサート取付け部分32は、単一の一体化構造を有するように一緒に一体に形成することができる。即ち、工具ホルダには、米国特許第5833403号明細書で開示される種類の個別の適合器がない。図3を参照すると、ホルダ外周面26は、インサート取付け部分32において凸状に湾曲することができる。図示のこの非限定的な例において、ホルダ外周面26は、ホルダ長手方向軸Bに直交する平面で取った楕円断面を有することができる。このことにより、切削工具20を丸穴に挿入するのを支援する。ホルダ外周面26は、シャンク部分30において凸状に湾曲することができる。インサート・ホルダ24は、外溝加工に適している(例えば米国特許第9033622号明細書でも開示されるような)当技術分野で公知の刃の形態ではないことに留意されたい。
【0068】
図3に示されているように、インサート取付け部分32は、上顎部34及び下顎部36と、を含む。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、上顎部34及び下顎部36は、単一の一体化構造を有するように一緒に一体に形成することができる。
【0069】
図2a~図5を参照すると、上顎部34及び下顎部36は、締付け凹部38によって離間される。締付け凹部38は、ホルダ端面28内に凹んでいる。締付け凹部38は、ホルダ外周面26の2つの個別部分までホルダ端面28上に延在する。図2及び図3に示すように、締付け凹部38は、締付け凹部38がホルダ外周面26まで開口する第1の凹側開口40aと第2の凹側開口40bとを含む。概して、第1の凹側開口40a及び第2の凹側開口40bは、ポケット長手方向軸Lに沿ってホルダ外周面26の両側にある。第1の凹側開口40a及び第2の凹側開口40bは、ホルダ端面28に交差することに留意されたい。上記構成のため、インサート・ホルダ24は二又形状を有する。
【0070】
特に図2a及び図2bを参照すると、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、締付け凹部38は、反対の凹上面42及び凹下面44によって画定することができ、凹上面42及び凹下面44は、上顎部34及び下顎部36のそれぞれの上に形成される。凹上面42及び凹下面44は、第1の凹側開口40a及び第2の凹側開口40bを接続し、ホルダ端面28まで延在する。
【0071】
上顎部34は、枢動軸P周りに回転することによって下顎部36に対して移動可能である。枢動軸Pは、ホルダ長手方向軸Bに平行ではない。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、枢動軸Pは、ホルダ長手方向軸Bに直交することができる。上顎部34は、下顎部36に対して弾性的に移動可能であり得る。特に、上顎部34は、締付けねじ又は他の締結器等の更なる個別の締付けデバイスを使用せずに、切削インサート22を弾性的に締め付けるように構成することができる。
【0072】
図2aを参照すると、インサート取付け部分32は、インサート挿入方向DIを有する、横断的に向けられたインサート受入れポケット46を含み、インサート挿入方向DIは、ホルダ長手方向軸Bに横断する。インサート受入れポケット46は、切削インサート22を中に受け入れるように構成される。インサート受入れポケット46は、締付け凹部38内に形成される。より詳細には、インサート受入れポケット46は、少なくとも部分的に、上顎部34及び下顎部36のそれぞれの上に形成されるポケット上面48及びポケット下面50によって画定される。更により詳細には、ポケット上面48及びポケット下面50は、凹上面42及び凹下面44のそれぞれの上に位置する。インサート受入れポケット46は、ポケット長手方向軸Lに沿って第1の凹側開口40aまで長手方向に延在し、ポケット前開口52aを画定する。ポケット前開口52aは、切削インサート22をインサート受入れポケット46に挿入可能にするのに十分な寸法のものである。ポケット長手方向軸Lは、ポケット上面48とポケット下面50との間を通過し、ポケット前開口52aを通過する。ポケット長手方向軸Lは、反対のインサート挿入方向DI及びインサート引抜き方向Dを画定する。インサート受入れポケット46は、第2の凹側開口40bに延在し、ポケット前開口52aの反対側のポケット後開口52bを画定する。ポケット長手方向軸Lは、ポケット後開口52bを通過する。
【0073】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート受入れポケット46は、ホルダ端面28まで開口することができる。別の言い方をすれば、インサート受入れポケット46は、ホルダ端面28に直に隣接する(即ち隣り合う)ことができる。
【0074】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート受入れポケット46は、基本的な締付け細穴形状であり、工作物の内溝加工の実施を可能にする(例えば米国特許第5833403号明細書で開示されるような)当技術分野で公知の種類の細長い溝加工インサートを受け入れるのに適することができる。またいくつかの実施形態では、インサート・ホルダ24は、細穴カッタ等の中で外周に沿って円周方向に離間する2つ以上のインサート受入れポケットではなく、単一インサート受入れポケット46のみを有することができる。
【0075】
ポケット上面48及びポケット下面50は、細長とすることができる。インサート受入れポケット46は、横断ポケット平面PPに沿って向けることができる。横断ポケット平面PPは、ポケット長手方向軸Lを含み、ポケット上面48及びポケット下面50に交差する。横断ポケット平面PPは、ホルダ長手方向軸Bに横断することができる。特に、横断ポケット平面PPは、ホルダ長手方向軸Bに直交することができる。インサート受入れポケット46は、ポケット長手方向平面LPを有し、ポケット長手方向平面LPは、ポケット長手方向軸Lを含み、ポケット上面48とポケット下面50との間を通過する。ポケット長手方向平面LPは、横断ポケット平面PPに直交することができる。また、図3に示されるように、インサート・ホルダ24の正面図において、ホルダ長手方向軸Bは、インサート受入れポケット46を通過する。いくつかの実施形態では、ホルダ長手方向軸Bは、ポケット長手方向軸Lに交差することができる。
【0076】
ポケット下面50は、ポケット下締付け面54を含む。ポケット下締付け面54は、切削インサート22上の対応する面をしっかりと締め付けるためのものである。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ポケット下締付け面54は、平坦とすることができる。ポケット下締付け面54は、後方向Dでポケット長手方向平面LPから離れて傾斜することができる。図2aに最良に示されるように、ポケット下締付け面54は、第1の凹側開口40aと第2の凹側開口40bとの間に延在することができる。ポケット下締付け面54は、ポケット長手方向軸Lに平行な方向で長手方向に延在することができる。インサート受入れポケット46は、端面図で見ると、ポケット前開口52aにおいて、ポケット長手方向平面LPに直交する方向で測定される最大ポケット高さHを有する。
【0077】
図2aを参照すると、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ポケット下締付け面54は、2つのポケット下締付け小面54a、54bを含むことができ、2つのポケット下締付け小面54a、54bは、同一平面上にあり、ポケット長手方向軸Lに沿って、ポケット前開口52aから離れる方向で、ポケット下面50内に凹む下逃げ凹部56によって互いに離間する。
【0078】
図2aを参照すると、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート・ホルダ24は、下支持リブ58を含むことができる。下支持リブ58は、ホルダ外周面26から突出し、ポケット前開口52aに隣接する状態で下顎部36上に位置する。下支持リブ58は、切削インサート22に対して更なる支持をもたらす。下支持リブ58は、切削作業中に干渉しないように切削インサート22よりも細い。ポケット下締付け面54は、下支持リブ58上に延在し、ポケット上面48上の対応する面よりも、(ホルダ軸Bに対して)更に径方向外側に延在できるようにし、これにより、切削力に対する更なる支持をもたらす。
【0079】
ポケット上面48は、ポケット上締付け面60を含む。ポケット上締付け面60は、切削インサート22上の対応する面をしっかりと締め付けるためのものである。ポケット上締付け面60は、ポケット下締付け面54に向かって相互に向き合う(即ち、ポケット上締付け面60及びポケット下締付け面54は互いに向かって向き合う)。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ポケット上締付け面60は、インサート受入れポケット46の前開口の眺めから見ることができる、即ち、ポケット前開口52aの前でポケット長手方向軸Lに沿って見ることができる(即ち図4)。図3に戻ると、ポケット上締付け面60は、ポケット前開口52aから離れる方向でポケット長手方向軸Lに向かって(更にはポケット長手方向平面LPに向かって)傾斜することができる。ポケット上締付け面60は、平坦とすることができる。横断ポケット平面PPに平行であり、上締付け面54及びポケット下締付け面60に交差する締付け平面CPで取った断面図(即ち図13)において、ポケット上締付け面60及びポケット下締付け面54は、ポケット前開口52aから離れる方向で互いに向かって集束することができる。インサート・ホルダ24には、ポケット前開口52aに隣接する上顎部36において、ホルダ外周面26から突出する支持リブがなくてよいことに留意されたい。
【0080】
図2b及び図4を参照すると、インサート受入れポケット46は、ポケット上締付け面60内に凹む挿入溝62を含むことができる。挿入溝62は、切削工具20の組立て時に使用し、本明細書で更に説明する。挿入溝62は、挿入方向DIに沿ってポケット前開口52aから全体的に延在することができる。挿入溝62は、ポケット上締付け面60の長手方向範囲全体に沿って中心に延在することができ、ポケット上締付け面60が2つの同一平面上にあるポケット上締付け小面60a、60bを含むようにし、2つのポケット上締付け小面60a、60bは、ホルダ端面28から離れる方向で、挿入溝62によって互いに離間する。
【0081】
図2a及び図2bを参照すると、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート受入れポケット46は、少なくとも1つの全体が前向きのポケット軸方向当接面64を含むことができ、ポケット軸方向当接面64は、下顎部36上に形成され、インサート・ホルダ24の後方向Dでインサート受入れポケット46の境界を定める。少なくとも1つのポケット軸方向当接面64は、金属切削作業中、切削インサート22が後方に変位するのを防止するように働く。傾斜ポケット下締付け面54と組み合わせて、切削インサート22のためのくさび状下座部をもたらすこともできる。少なくとも1つのポケット軸方向当接面64は、ポケット下締付け面54から離間することができる。下顎部36は、2つのポケット軸方向当接面64を含むことができ、2つのポケット軸方向当接面64は、ポケット下締付け面54から離れる方向で、軸方向逃げ凹部66によって互いに離間する。2つのポケット軸方向当接面64は、ポケット長手方向平面LPの両側に位置することができる。ポケット下締付け面54に最も近いポケット軸方向当接面64は、ポケット長手方向軸Lに平行な方向で、第1の凹側開口40aと第2の凹側開口40bとの間で長手方向に延在することができる。
【0082】
ポケット上面48は、ポケット・ストッパ面68を含む。ポケット・ストッパ面68は、切削インサート22をインサート受入れポケット46に挿入する際、予め規定した位置内に切削インサート22を配置するためのものである。ポケット・ストッパ面68は、金属切削作業中、切削インサート22が、インサート受入れポケット46内でポケット長手方向軸Lに沿って更に内側に変位するのを防止するようにも働く。
【0083】
ポケット・ストッパ面68は、ストッパとして働くようにポケット前開口52aに向かって全体的に面する。上顎部34は、ストッパ支持部分69を含み、ストッパ支持部分69は、ポケット・ストッパ面68の背後に位置する(即ち、ポケット前開口52aから、ポケット・ストッパ面68よりも遠くに位置する)。ポケット・ストッパ面68は、ストッパ支持部分69上に形成される。
【0084】
ポケット・ストッパ面68は、ポケット上締付け面60よりも、ポケット下締付け面54に近い。ポケット・ストッパ面68は、ポケット上締付け面60よりも、ポケット前開口52aから遠い。ポケット下締付け面54は、ポケット・ストッパ面68よりもポケット後開口52bに近い状態でポケット長手方向軸Lに沿って延在する。したがって、ストッパ支持部分69は、切削工具の径方向寸法に影響を与えない。典型的には、このことにより、5mm程度の直径を有する穴の内側切削作業を可能にする。ポケット・ストッパ面68は、インサート受入れポケット46の前開口の眺めにおいて見える。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ポケット・ストッパ面68は、ポケット前開口52aから離れる方向でポケット長手方向軸Lに向かって(更にはポケット長手方向平面LPに向かって)傾斜することができる。図3に示すように、インサート・ホルダ24の前端面図において、ポケット・ストッパ面68は、ポケット前開口52aから離れる方向で、ポケット上締付け面60よりも、ポケット長手方向平面LPに向かって急峻に傾斜することができる。ポケット・ストッパ面68は、平坦とすることができる。ポケット上締付け面60と同様に、ポケット・ストッパ面68及びポケット下締付け面54は、ポケット前開口52aから離れる方向で互いに向かって集束することができる。
【0085】
図2a及び図2bを参照すると、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート・ホルダ24は、締付け凹部38内に形成される弾性細穴70を含むことができる。インサート弾性細穴70は、主に、上顎部34に所望の可撓性をもたらすように設計されている。上顎部34は、切削インサート22をインサート受入れポケット46に挿入可能にするように十分に可撓性であるべきである。同時に、切削インサート22を弾性的に締め付ける構成において、上顎部34は、切削インサート22の十分な締め付けをもたらすように十分に剛性であるべきである。
【0086】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、弾性細穴70は、インサート受入れポケット46から後方に延在する。したがって、弾性細穴70は、インサート受入れポケット46と合流する。弾性細穴70は、インサート・ホルダ24の前端面図(即ち図3)に示すように、弾性細穴70において、凹上面42及び凹下面44に直交する方向で測定される最大細穴幅Wを有する。最大細穴幅Wは、最大ポケット高さH未満とすることができる。したがって、弾性細穴70は、インサート受入れポケット46よりも細い。
【0087】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、弾性細穴70は、インサート受入れポケット46によってホルダ端面28から完全に離間することができる。即ち、弾性細穴70は、弾性細穴70及びインサート受入れポケット46が互いに合流する場所で凹上面42及び/又は凹下面44の部分が平滑に連続し得るにもかかわらず、ホルダ端面28まで延在しない。図示する非限定的な例(例えば図2bを参照)では、凹上面42は、インサート受入れポケット46が弾性細穴70に交差する場所で平滑に連続することができる。
【0088】
図2a~図3を参照すると、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、弾性細穴70は、第1の細穴部分72と、第2の細穴部分74と、を含むことができ、第1の細穴部分72は、第1の凹側開口40aに隣接し、第2の細穴部分74は、第2の凹側開口40bに隣接する。第1の細穴部分72及び第2の細穴部分74は、互いに合流することができる。第1の細穴部分72は、弾性細穴70が後方向Dで終端する細穴応力逃げ溝76を含むことができる。細穴応力逃げ溝76は、枢動軸Pに沿って延在することができる。第2の細穴部分74には、応力逃げ溝がなくてよい。第1の細穴部分72及び第2の細穴部分74は、異なる平面内に延在することができる。
【0089】
図2a~図2bを参照すると、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、上顎部34は、凹上面42内に凹む内側可撓性溝78を含むことができる。内側可撓性溝78は、上顎部34に所望の可撓性をもたらすように設計されている。内側可撓性溝78は、ポケット・ストッパ面68が、切削インサート22をインサート受入れポケット46に挿入する間に変位しない(即ち、予め規定した位置内に留まる)ようにも設計されている。最後に、内側可撓性溝78は、切削インサート22のあらゆる部分との接触を回避する空隙ももたらす。図3に示されるように、内側可撓性溝78は、内側可撓性溝開口80でホルダ端面28に開口することができる。図2bを参照すると、内側可撓性溝78は、インサート・ホルダ24の後方向Dでインサート受入れポケット46を越えて延在することができる。内側可撓性溝78は、ホルダ長手方向軸Bに平行に向けることができる。内側可撓性溝78は、細穴応力逃げ溝76まで延在することができる。ポケット上締付け面60及びポケット・ストッパ面68は、内側可撓性溝78によって互いに離間することができる。ポケット・ストッパ面68は、内側可撓性溝78内に形成しなくてよい。
【0090】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、上顎部34は、ホルダ外周面26内に凹む外側可撓性溝82を含むことができる。内側可撓性溝78と同様に、外側可撓性溝82は、上顎部34に所望の可撓性及び剛性をもたらすように設計されている。外側可撓性溝82は、外側可撓性溝開口84でホルダ端面28に開口することができる。外側可撓性溝82は、インサート・ホルダ24の後方向Dでインサート受入れポケット46を越えて延在することができる。外側可撓性溝82は、ホルダ長手方向軸Bに平行に向けることができる。ポケット長手方向軸Lに沿った方向において、外側可撓性溝開口84は、ポケット・ストッパ面68よりもポケット前開口52aから遠くすることができる。
【0091】
次に、本出願の第2の態様の主題による切削インサート22を示す図7図11を参照されたい。切削インサート22は、単一の一体化構造を有するように一体に形成される。切削インサート22は、2つの対向するインサート端面86と、2つのインサート端面86の間に延在するインサート外周面88と、を含む。インサート外周面88は、インサート長手方向軸A周りで円周方向に延在する。インサート長手方向軸Aは、インサートの長さ方向、即ち、切削インサート22が長手方向に細長く、最長寸法を有する方向を画定する。インサート外周面88は、対向するインサート上面90及びインサート下面92と、2つの対向するインサート側面94と、を含み、全て、2つのインサート端面86を接続する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22には、保持ねじのための貫通孔がなくてよい。
【0092】
切削インサート22は、インサート上面90と2つのインサート端面86のそれぞれとの交線に形成される2つの切れ刃96を含む。言い方を変えれば、切削インサート22は、両端式切削インサートであり、2方向が刃先交換可能である。各切れ刃96に隣接するインサート上面90の一部分は、すくい面97aとして働く。それぞれの切れ刃96に隣接する各インサート端面86の一部分は、逃げ面97bとして働く。
【0093】
インサート長手方向軸Aは、インサート端面86に交差し、インサート上面90とインサート下面92とインサート側面94との間を通過する。インサート上面90とインサート下面92との間に位置するインサート中央平面MPは、インサート長手方向軸Aを含み、2つの対向するインサート側面94に交差し、2つの対向するインサート端面86にも交差する。インサート長手方向軸A及びインサート中央平面MPは、インサート上面90とインサート下面92との間の中間に配置することができる。
【0094】
切削インサート22は、インサート中心(垂直)軸Fを有することができ、インサート中心軸Fは、インサート長手方向軸Aに直交し、インサート長手方向軸Aと交差し、インサート上面90及びインサート下面92に交差する。
【0095】
インサート中心軸Fは、インサート端面86の間の中間に位置し、インサートの高さ方向に沿って延在し、これにより、インサートの上-下方向を確立する。インサート側面94の間に位置するインサート長手方向平面IPは、インサート長手方向軸A及びインサート中心軸Fの両方を含み、インサート上面90及びインサート下面92に交差し、2つの対向するインサート端面86にも交差する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22は、インサート長手方向平面IP周りに鏡面対称を呈することができる。
【0096】
切削インサート22は、切れ刃平面EPを有し、切れ刃平面EPは、インサート中心軸Fに直交し、2つの切れ刃96の最上部分によって画定される。インサートのいくつかの実施形態では、2つの切れ刃96は、切れ刃平面EP内に含めることができる。
【0097】
切削インサート22は、インサート横軸Gを有し、インサート横軸Gは、インサート長手方向軸A及びインサート中心軸Fに直交し、インサート長手方向軸A及びインサート中心軸Fと交差する。インサート横軸Gは、インサートの幅方向で延在する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22は、インサート中心軸F周りに180°回転対称を呈することができる。インサート長手方向軸A及びインサート横軸Gは、インサート中央平面MPを画定することができる。インサート端面86の間に位置するインサート横断平面GPは、インサート横軸G及びインサート中心軸Fの両方を含み、インサート上面90及びインサート下面92に交差し、2つの対向するインサート側面94にも交差する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22は、インサート横断平面GP周りに鏡面対称を呈することができる。
【0098】
インサート下面92は、少なくとも1つのインサート下当接面98を含む。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのインサート下当接面98は、インサート長手方向軸Aに平行に延在することができる。インサート下面92は、平坦な単一インサート下当接面98を含むことができる(図示せず)。本出願の主題のいくつかの他の実施形態によれば、インサート下面92は、2つのインサート下当接面98を含むことができ、2つのインサート下当接面98は、平坦であり、インサート上面90から離れる方向でインサート中心軸F(したがって、インサート長手方向平面IP)に向かって傾斜する。
【0099】
切削インサート22は、インサート上面90から突出する取付け突出部100を含む。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、取付け突出部100は、インサートの幅方向で2つのインサート側面94の間に延在することができる。取付け突出部100は、インサート長手方向軸Aに沿った方向で2つのすくい面97aから離間することができる。
【0100】
取付け突出部100は、2つのインサート支承面102を含む。2つのインサート支承面102は、インサート下面92の反対側の切れ刃平面EPの側でインサート上面90上に形成される。言い方を変えれば、2つのインサート支承面102は、切れ刃平面EPの上方でインサート上面90上に形成される。2つのインサート支承面102は、インサート横断平面GPの両側に位置し、したがって、インサート長手方向軸Aの方向でずれているとみなすことができる。各切れ刃96は、最も近いインサート支承面102に付随する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、2つのインサート支承面102は、取付け突出部100の軸方向両側に位置することができる。
【0101】
各インサート支承面102は、インサート上当接面104を含む。インサート上当接面104は、インサート受入れポケット46内の対応する面に当接するためのものである。2つのインサート上当接面104は、少なくとも1つのインサート下当接面98から離れて相互に向き合う(別の言い方をすれば、インサート上当接面104及び少なくとも1つのインサート下当接面98は互いから離れて向き合う)。
【0102】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、各インサート上当接面104は、平坦とすることができる。各インサート上当接面104は、インサート横軸Gに平行とすることができる。2つのインサート上当接面104は、互いに隣接することができる。
【0103】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、あらゆる所与のインサート支承面102に関し、インサート上当接面104は、付随する切れ刃96に向かう方向でインサート長手方向軸Aに向かって傾斜する、即ち、インサート中央平面MPに向かって傾斜することができる。インサート上当接面104は、付随する切れ刃96の前でインサート長手方向軸Aに沿った切削インサート22の端面図から見える。
【0104】
本出願の主題のいくつかの他の実施形態によれば、2つのインサート上当接面104は、互いに平滑に連続し、インサート長手方向軸Aに平行とすることができ、インサート横断平面GPの両側に延在する単一連続インサート上当接面104を形成するようにする(図示せず)。そのような構成において、インサート上当接面104は、切削インサート22の端面図から見えない。
【0105】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、取付け突出部100は、2つの突出挿入稜線部106を含むことができる。挿入稜線部106は、挿入方向DIでポケット後開口52bに向かって切削インサート22をインサート受入れポケット46内に挿入した際、挿入溝62内に配置されるように設計されている。このため、切削インサート22とインサート受入れポケット46との初期整合がより容易になり、前方向で切削インサート22がインサート受入れポケット46から偶発的に脱落することが防止される。各挿入稜線部106は、それぞれのインサート上当接面104から突出することができる。図10を参照すると、各挿入稜線部106は、インサート上当接面104の長手方向範囲全体に沿って中心に延在することができ、各インサート上当接面104が2つの平行なインサート上当接小面104a、104bを備えることができるようにする。2つの平行なインサート上当接小面104a、104bは、同一平面上にあり、インサート長手方向平面IPの両側で、挿入稜線部106によって互いに離間することができる。
【0106】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、各インサート側面94は、インサート側当接面108を含むことができる。
【0107】
各インサート支承面102は、インサート・ストッパ面110も含む。インサート・ストッパ面110は、インサート受入れポケット46内の対応する面に当接するためのものである。あらゆる所与のインサート支承面102に関し、インサート・ストッパ面110は、インサート上当接面104よりも、付随する切れ刃96に近い。各インサート・ストッパ面110は、切削インサート22の端面図から見える。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、あらゆる所与のインサート支承面102に関し、インサート・ストッパ面110は、付随する切れ刃96に向かう方向でインサート長手方向軸Aに向かって傾斜する(したがって、インサート中央平面MPに向かって傾斜する)ことができる。図8に示すように、インサート・ストッパ面110は、付随する切れ刃96に向かう方向で、インサート中央平面MPに向かって、インサート上当接面104よりも急峻に傾斜することができる。各インサート・ストッパ面110は、平坦とすることができる。各インサート・ストッパ面110は、インサート横軸Gに平行とすることができる。
【0108】
次に、本出願の第3の態様の主題による切削工具20を示す図12図13を参照されたい。切削工具20は、切削インサート22を含み、切削インサート22は、インサート・ホルダ24のインサート受入れポケット46内に解放可能に締め付けられる。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22は、インサート受入れポケット46内に弾性的に締め付けることができる。(ポケット前開口52aに近接する)最外切れ刃96は、有効切れ刃96aを形成する。
【0109】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ポケット・ストッパ面68は、インサート・ストッパ面110に当接することができる。ポケット下締付け面54は、少なくとも1つのインサート下当接面98の1つに当接することができる。ポケット上締付け面60は、インサート上当接面104に当接することができ、インサート上当接面104は、有効切れ刃96a、即ち、インサート横平面GPの他方の側のインサート上当接面104から最も遠い。少なくとも1つのポケット軸方向当接面64は、インサート側当接面108の1つに当接することができる。挿入稜線部106の1つは、挿入溝62内に位置し得ることに留意されたい。しかし、前記1つの挿入稜線部106は、挿入溝62内に位置するが、挿入溝62から離間することができる、即ち、挿入溝62に実際に接触することがない。
【0110】
本出願の主題の1つの特徴は、ポケット・ストッパ面68が上顎部34上に位置し、切削インサート22の後部分に当接しないことである。
【0111】
本出願の主題は、ある程度の詳細まで説明しているが、以下で請求する本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく様々な代替形態及び修正形態を行い得ることを理解されたい。

図1
図2
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】