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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-09
(54)【発明の名称】新規ペプチドおよびその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20220426BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20220426BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20220426BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220426BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220426BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61K38/08
A61P1/18
A61P29/00
A61P43/00 111
A61P3/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548177
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(85)【翻訳文提出日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 KR2020003132
(87)【国際公開番号】W WO2020184901
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0028654
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517255681
【氏名又は名称】エンソル バイオサイエンス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】金 海 鎭
(72)【発明者】
【氏名】文 銀 貞
(72)【発明者】
【氏名】李 英 熏
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA23
4C084CA59
4C084NA14
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC411
4C084ZC412
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA15
4H045EA20
4H045FA34
4H045GA25
(57)【要約】
本発明は配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、または薬学的に許容可能なその塩と用途に関する。本発明によって膵島炎を効果的に治療または予防することができる。また、本発明によって第1型糖尿病を効果的に治療または予防することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、または薬学的に許容可能なその塩。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩を含む、膵島炎の治療または予防用薬学組成物。
【請求項3】
前記治療または予防はIFN-γ発現抑制、TNF-α発現抑制、およびTGF-β1発現誘導の中から選ばれた一つ以上によるものである、請求項2に記載の薬学組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩を含む第1型糖尿病の治療または予防用薬学組成物。
【請求項5】
前記第1型糖尿病は膵島炎によるものである、請求項4に記載の薬学組成物。
【請求項6】
前記治療または予防は前記膵島炎の生成抑制または減少から選ばれた一つ以上によるものである、請求項5に記載の薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規ペプチドに関し、より詳細には新規ペプチドとその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
膵臓のランゲルハンス島(pancreatic islet)にリンパ性浸潤(lymphocytic infiltration)が起きる現象を膵島炎(insulitis)という。膵島炎は窮極的にインシュリンを分泌するβ細胞(pancreaticβ-cell)を破壊させて第1型糖尿病(Type 1 Diabetes;T1D)を招き{Lennon GP, Bettini M, Burton AR, Vincent E, Arnold PY, Santamaria P, Vignali DA. “T cell islet accumulation in type 1 diabetes is a tightly regulated, cell-autonomous event”. Immunity. 2009 Oct 16;31(4):643-53.など}、膵島炎から膵臓を保護することによって第1型糖尿病が改善されることが報告されている{Norman Ende, Ruifeng Chen, Alluru S. Reddi. “Effect of human umbilical cord blood cells on glycemia and insulitis in type 1 diabetic mice”. Biochemical and Biophysical Research Communications 325 (2004) 665-669.など}。
【0003】
膵島炎の発生と抑制にはIFN-γ(interferon-gamma、インターフェロン-ガンマ)、TNF-α(tumor necrosis factor-alpha、腫瘍壊死因子-アルファ)、およびTGF-β1(Transforming growth factor-beta1,形質転換成長因子-ベータ1)のような多様なサイトカイン(cytokine)が関与すると知られている。IFN-γによって膵島炎が発生すると知られており{von Herrath MG, Oldstone MB. “Interferon-γ Is Essential for Destruction of β Cells and Development of Insulin-dependent Diabetes Mellitus”.J. Exp Med. 1997 Feb 3;185(3):531-9.など}、TNF-αによっても膵島炎が発生すると知られている{Kyoungho Suk, Sunshin Kim, Yun-Hee Kim, Kyoung-Ah Kim, Inik Chang, Hideo Yagita, Minho Shong, Myung-Shik Lee. “IFN-γ/TNF-α Synergism as the Final Effector in Autoimmune Diabetes: A Key Role for STAT1/IFN Regulatory Factor-1 Pathway in Pancreatic β Cell Death”. J. Immunol April 1, 2001, 166 (7) 4481-4489.など}。一方、TGF-β1の発現増加によってはNOD(Non-obese diabetic)マウスを膵島炎から保護できると報告されている{Piccirillo CA, Chang Y, Prud'homme GJ. “TGF-β1 Somatic Gene Therapy Prevents Autoimmune Disease in Nonobese Diabetic Mice” J. Immunol. 1998 Oct 15;161(8):3950-6.など}。
【0004】
したがって、このような膵島炎に効果を示す物質の開発が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
(非特許文献1)Lennon GP, Bettini M, Burton AR, Vincent E, Arnold PY, Santamaria P, Vignali DA. T cell islet accumulation in type 1 diabetes is a tightly regulated, cell-autonomous event. Immunity. 2009 Oct 16;31(4):643-53.
(非特許文献2)Norman Ende, Ruifeng Chen, Alluru S. Reddi. “Effect of human umbilical cord blood cells on glycemia and insulitis in type 1 diabetic mice”. Biochemical and Biophysical Research Communications 325 (2004) 665-669.
(非特許文献3)von Herrath MG, Oldstone MB. “Interferon-γ Is Essential for Destruction of β Cells and Development of Insulin-dependent Diabetes Mellitus”. J. Exp Med. 1997 Feb 3;185(3):531-9.
(非特許文献4)Kyoungho Suk, Sunshin Kim, Yun-Hee Kim, Kyoung-Ah Kim, Inik Chang, Hideo Yagita, Minho Shong, Myung-Shik Lee. “IFN-γ/TNF-α Synergism as the Final Effector in Autoimmune Diabetes: A Key Role for STAT1/IFN Regulatory Factor-1 Pathway in Pancreatic β Cell Death”. J. Immunol April 1, 2001, 166 (7) 4481-4489.
(非特許文献5)Piccirillo CA, Chang Y, Prud'homme GJ. “TGF-β1 Somatic Gene Therapy Prevents Autoimmune Disease in Nonobese Diabetic Mice” J. Immunol. 1998 Oct 15;161(8):3950-6.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする一つの課題は、新規なペプチドを提供することにある。
【0007】
また、本発明が解決しようとする他の一つの課題は、本発明ペプチドの新規用途を提供することにある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は配列番号1のアミノ酸配列(YGAGAGAGY)からなるペプチド、または薬学的に許容可能なその塩を提供する。
【0010】
前記アミノ酸配列のYはチロシン(Tyrosine;Tyr)、Gはグリシン(Glycine;Gly)、Aはアラニン(Alanine;Ala)を示す。
【0011】
前記ペプチドを構成するアミノ酸にはL-体、D-体、DL-体が存在し、本発明のペプチドを構成するアミノ酸はこれらをすべて含む。また、前記YはTyrosine、または4-hydroxyphenylalanineと称されるアミノ酸をすべて含む意味と解釈できるのは自明である。
【0012】
前記ペプチドは変異体を含むことにより、自然的変異または人工的変異によって主な活性に変化を与えることなく本発明のペプチド構造の一部が変異したものを含む。
【0013】
前記薬学的に許容可能な塩の例 は、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などを含み得る。
【0014】
本発明はまた、本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩の用途、好ましくは膵島炎(insulitis)の治療または予防用途を提供する。治療は症状の改善、軽減などを包括する意味であり、予防は疾病以前の段階で疾病に発展することの抑制を包括する意味である。
【0015】
前記治療または予防はIFN-γ(interferon-gamma、インターフェロン-ガンマ)発現抑制、TNF-α(tumor necrosis factor-alpha、腫瘍壊死因子-アルファ)発現抑制、およびTGF-β1(transforming growth factor-beta1,形質転換成長因子-ベータ1)発現誘導の中から選ばれた一つ以上によるものであり得る。
【0016】
前記IFN-γ発現抑制はIFN-γmRNA発現抑制であり得る。
【0017】
前記TNF-α発現抑制はTNF-αmRNA発現抑制であり得る。
【0018】
前記TGF-β1発現誘導はTGF-β1 mRNA発現誘導であり得る。
【0019】
本発明はまた、本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩の用途、好ましくは第1型糖尿病(Type 1 Diabetes;T1D)の治療または予防用途を提供する。
【0020】
前記第1型糖尿病は膵島炎によるものであり得る。
【0021】
前記治療または予防は前記膵島炎の生成抑制または減少から選ばれた一つ以上によるものであり得る。
【0022】
前記治療または予防は血糖降下によるものであり得る。
【0023】
前記血糖降下は前記膵島炎の生成抑制または減少から選ばれた一つ以上によるものであり得る。
【0024】
また、本発明は本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩を含む膵島炎の治療または予防用組成物を提供する。また、本発明は本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩を含む第1型糖尿病の治療または予防用組成物を提供する。前記組成物は薬学組成物であり得る。
【0025】
前記組成物は本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩を有効成分として含み得る。
【0026】
また、前記組成物は、薬剤学的に許容される添加剤をさらに含み、本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩および前記添加剤からなる。
【0027】
本発明のペプチドはペプチド化学で通常使われる方法によって製造することができる。例えば、該当分野で広く知られた文献を参照して製造することができ、溶液相合成または固相合成などの方法によって製造することができる。
【0028】
ペプチド結合を形成するための方法の例は、アシルアジド法、アシルハライド法、アシルイミダゾール法、カルボジイミド法、ホスホニウム法、無水物法、混合無水物法、酸化-還元法、およびWoodward試薬Kを使用する方法などがある。
【0029】
縮合反応を行う前に、反応に関与しないカルボキシル基、アミノ基などを保護させることができ、縮合反応に関与するカルボキシル基などを当分野に公知された方法で活性化させることができる。
【0030】
カルボキシル基を保護する基の例は、メチル、tert-ブチル、アリール、ペンタフルオロフェニル、ベンジル、パラ-メトキシベンジル、およびメトキシエトキシメチルのようなエステル-形成基を含み得る。
【0031】
アミノ基を保護する基の例はトリチルカルボニル、アリールオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、および/または9-フルオレニルメチルオキシカルボニルを含み得る。
【0032】
カルボキシル基の活性形態の例は混合無水物、アジド、アシルクロリドおよび活性エステル[アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、p-ニトロフェノール、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシフタルアミド、または1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)とのエステル]を含み得る。
【0033】
ペプチド結合を形成するための縮合反応に使用できる溶媒はベンゼン、トルエン、ヘキサン、アセトン、ニトロメタン、シクロヘキサン、エーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、水、メタノール、およびエタノールの単一溶媒またはこれらの混合溶媒を含み得る。
【0034】
反応温度は反応に一般的に使われる約-70℃~100℃の範囲であり得、より好ましくは-30℃~30℃の範囲であり得る。
【0035】
ペプチド保護基を除去する反応は保護基の種類によって異なるが、ペプチド結合に何ら影響を与えることなく保護基を離脱させることができる酸化合物、塩基化合物、または遷移金属などを用いて除去することができる。
【0036】
保護基を酸処理、例えば、塩化水素、臭化水素、フッ化水素、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリメチルクロロシラン、またはこれらの混合物で処理することによって除去させることができる。
【0037】
前記酸処理により保護基を除去する反応を行う場合、アニソール、フェノールまたはチオアニソールのような補助剤を添加して反応を促進させることができる。
【0038】
また、保護基を塩基処理、例えば、アンモニア、ジエチルアミン、ヒドラジン、モルホリン、N-メチルピロリジン、ピペリジン、炭酸ナトリウム、またはこれら塩基の混合物を用いて除去することができる。
【0039】
また、保護基を遷移金属処理、例えば、亜鉛、水銀、パラジウム/水素などを用いて除去することができる。
【0040】
反応完結後、通常のペプチド精製方法例えば、抽出、層分離、固体沈殿、再結晶またはカラムクロマトグラフィーによりペプチドを精製することができる。
【0041】
また、本発明のペプチドを通常の方法により変異体または薬学的に許容可能なその塩に転換させることができる。
【0042】
本発明によるペプチドは自動ペプチド合成機によって合成することができ、遺伝子操作技術によっても生産することができる。例えば、遺伝子操作により融合パートナーと本発明のペプチドからなる融合タンパク質をコーディングする融合遺伝子を製造し、それにより宿主微生物を形質転換させた後宿主微生物で融合タンパク質形態で発現させた後タンパク質分解酵素または化合物を用いて融合タンパク質から本発明のペプチドを切断、分離して所望するペプチドを生産することができる。
【0043】
前記ペプチド、または薬学的に許容可能なその塩の投与量は非経口投与時24.3mg/日~4860mg/日であり、好ましくは48.6mg/日~2430mg/日である。経口投与の場合、投与量は非経口投与量の5~10倍である。1日1回または数回に分けて投与することも可能であり、このような投与量は成人(体重60kg)基準であり得るが、体重、身体状態などによって変わるのは勿論である。本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩を主に非経口的な方法で、例えば静脈注射または皮下注射、脊髄腔内投与、経皮投与、経鼻投与または直腸内投与により投与する。また、場合によって経口的に投与することができる。
【0044】
本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩、または組成物は薬学的に許容される添加剤とともに製剤化して注射剤、坐剤、粉末、点鼻剤、顆粒、錠剤、経皮投与用パッチ剤の形態で作ることができる。
【0045】
薬学的に許容される添加剤は当業者に良く知られている様々な因子によって適用されるが、例えば用いられた特定の生理活性物質、その濃度、安定性および意図された生体利用性;治療しようとする疾患および疾病または状態;治療を受ける個体、年齢、大きさおよび一般的な状態;組成物を投与するために用いられる経路、例えば鼻腔、口腔、眼球、局所、経皮および筋肉などの要因を考慮しなければならないが、これに制限されない。一般的に経口投与経路以外の生理活性物質の投与に用いられる薬剤学的に利用可能な添加剤にはD5W(水中の5%ブドウ糖)、デキストロースおよび生理学的塩を容積の5%以内で含む水溶液を含み、病巣内局所注射の場合、治療効果を増進させ、かつ持続時間を増加させるために様々な注射可能なヒドロゲル(hydrogel)を使用することができる。また、薬学的に利用可能な添加剤は保存剤および抗酸化剤のような活性成分の安定性を補強させる得る追加成分を含み得る。本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩、または組成物は該当分野の適切な方法で製剤化することができ、製剤化に関して該当分野に広く知られた文献を参照し、各疾患によってまたは成分によって好ましく製剤化することができる。
【0046】
本発明のペプチドを生理食塩水溶液に保管することができ、マンニトールまたはソルビトールの添加後アンプル(ampoule)に凍結乾燥させることができ、これを投与するために使用する際には生理食塩水に溶解させることができる。
【0047】
本発明はまた、本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩を投与を必要とする人間を含む哺乳類に投与する段階を含む膵島炎の治療または予防法を提供する。また、本発明は本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩を投与を必要とする人間を含む哺乳類に投与する段階を含む第1型糖尿病の治療または予防法を提供する。また、本発明は本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩の膵島炎の治療または予防用製剤製造のための用途を提供する。また、本発明は本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩の第1型糖尿病の治療または予防用製剤製造のための用途を提供する。前記投与されるペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩は有効量のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩であり得る。
【0048】
別途の言及がない限り、本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能な塩、用途、組成物、方法で言及された内容は互いに矛盾しない限り、同一性の範囲で互いに同一に適用される。
【発明の効果】
【0049】
本発明によって膵島炎を効果的に治療または予防することができる。また、本発明によって第1型糖尿病を効果的に治療または予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】実施例1のペプチドが膵島炎の生成抑制または減少に及ぼす影響を分析した結果を示すグラフである。
図2】実施例1のペプチドが血糖降下に及ぼす影響を分析した結果を示すグラフである。
図3】実施例1のペプチドがIFN-γ発現抑制、およびTNF-α発現抑制に及ぼす影響を分析した結果を示すグラフである。
図4】実施例1のペプチドがTGF-β1発現誘導に及ぼす影響を分析した結果を示すグラフである。
図5】比較例1および比較例2のペプチドがIFN-γ発現抑制、およびTNF-α発現抑制に及ぼす影響を分析した結果を示すグラフである。
図6】比較例1および比較例2のペプチドがTGF-β1発現誘導に及ぼす影響を分析した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、実施例、比較例、および製造例によって本発明をより詳細に説明するが、下記実施例および製造例は本発明を例示するためのものであり、本発明の内容は下記実施例や製造例によって限定されるものではない。
【0052】
以下、実施例などで使用した試薬は、市販されている最上品を使用し、別途の言及がない限り、Sigma-aldrich社から購入したものを使用した。
【0053】
<実施例1>ペプチドの製造
下記の表1に記載されたペプチドはソリッドフェーズペプチド合成法を用いて製造した。具体的にはFmoc(9-fluorenyl-methoxycarbonyl)化学的性質を用いたソリッドフェーズ法(solid phase method)を用いて合成した。
【0054】
より具体的に、よく乾燥された反応器に固相樹脂(Wang resin;Sigma-aldrich社)0.55mmol/g、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide,DMF)5ml、Fmoc-Tyr(tBu)-OH 1.1mmol、およびO-Benzotriazole-N,N,N’,N’-tetramethyl-uronium-hexafluoro-phosphate(HBTU)0.55mmolを投入して室温で2時間の間攪拌してFmoc-Tyr(tBu)-レジンを合成し、合成したレジンを濾過した後、ジメチルホルムアミドで洗浄した。洗浄したレジンに20%ピペリジン(ジメチルホルムアミド溶解)溶液8mlを投入して室温で30分間攪拌してFmoc(fluorenylmethyloxycarbonyl protecting group)がDeprotectionされたTyr(tBu)-レジンを合成した。合成したTyr(tBu)-レジンを濾過してジメチルホルムアミドで洗浄した。
【0055】
洗浄したTyr(tBu)-レジンにジメチルホルムアミド5ml、Fmoc-Gly-OH 1.1mmol、およびO-Benzotriazole-N,N,N’,N’-tetramethyl-uronium-hexafluoro-phosphate(HBTU)0.55mmolを投入して室温で2時間の間攪拌してFmoc-Gly-Tyr(tBu)-レジンを合成し、合成したレジンを濾過した後、ジメチルホルムアミドで洗浄した。洗浄したレジンに20%ピペリジン(ジメチルホルムアミド溶解)溶液8mlを投入して室温で30分間攪拌してFmocがDeprotectionされたGly-Tyr(tBu)-レジンを合成した。合成したGly-Tyr(tBu)-レジンを濾過してジメチルホルムアミドで洗浄した。このような過程を経てグリシンとチロシンの間のペプチド結合を形成した。
【0056】
その後、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OHを順に使用、グリシンとチロシンの間のペプチド結合形成過程と同じ過程を繰り返し、表1に記載されたアミノ酸配列を有するペプチド-レジン化合物を製造した。
【0057】
その後、トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid)と水を95:5(v/v)の比率で混合した溶液10mlを入れて室温で3時間の間攪拌した後濾過して得られた濾過液にジエチルエーテル(diethylether)を投入して固体を結晶化させた。生成された固体を濾過してジエチルエーテルで洗浄して乾燥して表1に記載されたアミノ酸配列を有する粗(crude)ペプチド化合物を合成した。
【0058】
粗(crude)ペプチド化合物はShimadzu 5mm Shimpak ODS C18 column(20x250mm)を用いて逆相高速液体クロマトグラフィー(reverse-phase HPLC;RP-HPLC)方法で精製、凍結乾燥して実施例1のペプチドを白色固体形態で収得した。
【0059】
精製されたペプチドはShimpak 5mm ODS C18column(4.6x250mm)を用いて分析用逆相高速液体クロマトグラフィー(analytical RP-HPLC)方法で確認し、分子量はマトリックス-補助レーザー脱離イオン化マススペクトロメーター{matrix-assisted laser desorption ionization (MALDI)-mass spectrometer}(Axima CFR,Kratos Analytical,Manchester,UK)を用いて確認した。
【表1】
表1においてYはチロシン(Tyrosine;Tyr)、Gはグリシン(Glycine;Gly)、Aはアラニン(Alanine;Ala)を示す。
【0060】
<実施例2>ペプチド効果の確認
2-1.膵島炎の生成抑制または減少効果の確認
実施例1のペプチドが膵島炎(insulitis)生成を抑制または減少させることを実験により確認した。
【0061】
実験動物は8週齢の雌NOD/ShiLtJ(Jackson Lab)を使用した。NOD(Non-obese diabetic)マウスは膵島炎および第1型糖尿病発生動物モデルであり、平均的に18週齢になると第1型糖尿病が発病し、30週齢まで90%が発病すると知られている。Osong先端医療産業振興財団動物実験倫理委員会(Kbio-IACUC 2018-066)の承認後、すべての動物はSPFバリア(barrier)条件で飼育した。一週間の順化期間を設け、明暗周期は12時間(08:00消灯-20:00点灯)とした。温度は20±2℃、相対湿度は60~80%であり、腸内微生物の発生によって糖尿発病が阻害され得るため、水はHClを用いてpH2.8~3.2に調整して実験動物に供給した。
【0062】
準備した実験動物の尾の端部分に一週間に一回ずつ傷をつけて血を一滴取り出して血糖測定器(Roche,Accu-CHEK Performa)を用いて血糖を測定した。測定された血糖数値が250mg/dL以上で、それから3日目に再測定した血糖数値も250mg/dL以上の場合は第1型糖尿病が発病したと見て実験を行った。
【0063】
第1型糖尿病が発病した実験動物二匹を実施例1の処理群として選抜し、実施例1のペプチド(5mg/kg)を皮下(Subcutaneous;S.C)に100μlずつ投与を始めた。投与は14日間毎朝、夕方に投与して血糖測定器で血糖を測定し、血糖が250mg/dL以下に減少すると投与を中断した。また、第1型糖尿病が発病した実験動物二匹を陰性対照群として選抜し、実施例1のペプチドの代わりにPBS(phosphate buffered saline,Welgene)を投与したことを除いては実施例1の処理群と同一に処理した。14日目の日、血糖数値が250mg/dL未満の実験動物一匹を正常群として選抜し、第1型糖尿病が発病した実験動物と第1型糖尿病が発病しなかった実験動物のInsulitis Scoreを比較するために使用した。
【0064】
14日目の日に血糖測定後、実験動物から膵臓を摘出して10% Natural buffered Formalin(10% NBF,sigma,HT5011)に入れて固定させた後Paraffin blockを製作した。固定させた膵臓組織をslice製作してヘマトキシリン&エオシン(H&E、hematoxylin and eosin)染色して光学顕微鏡で観察して膵島炎の生成を確認した。膵島炎の程度によって4段階に分け、0段階は膵島炎が観察されない段階、1段階はランゲルハンス島の周囲に膵島炎が観察される段階、2段階は75%未満の膵島炎が観察される段階、3段階は75%以上の膵島炎が観察される段階に設定した。実施例1の処理群は二匹のislet個数を測定し、それぞれのisletを膵島炎段階によって分類してInsulitis Scoreを算定した後、isletの総個数のうちそれぞれの膵島炎段階に該当するislet数を百分率で示した。陰性対照群および正常群も実施例1の処理群と同様の方法によりInsulitis Scoreを算定した後、isletの総個数のうちそれぞれの膵島炎段階に該当するislet数を百分率で示した。その結果を図1に示した。
【0065】
図1は実施例1のペプチドが膵島炎の生成抑制または減少に及ぼす影響を分析した結果を示すグラフである。図1のx軸はそれぞれの群を表し、y軸はInsulitis Score{Insulitis(%of islets)}を表す。図1で、Score 0は0段階、Score 1は1段階、Score 2は2段階、Score 3は3段階を意味する。
【0066】
図1から分かるように、実施例1の処理群は陰性対照群に比べて最も深刻な段階である3段階の比率が減少し、インシュリン分泌が可能な0~2段階の比率は増加した。特に、実施例1の処理群は陰性対照群に比べて膵島炎が起きない0段階の比率が約2倍増加したことを確認することができる。このような結果から、実施例1のペプチドが膵島炎の生成を抑制して膵島炎を減少させて膵島炎の治療に効果があることがわかる。また、実施例1の処理群は正常群に比べても0段階の比率がさらに高い。したがって、実施例1のペプチドが膵島炎の発生を抑制することが分かるので、実施例1のペプチドが膵島炎の治療だけでなく予防にも効果があることがわかる。
【0067】
結果的に 、本発明のペプチドは膵島炎の治療および/または予防の効果があることがわかる。
【0068】
2-2.血糖降下効果の確認
実施例1のペプチドが第1型糖尿病(Type 1 Diabetes;T1D)に効果があることを確認するために、実施例1のペプチドが第1型糖尿病が発病した実験動物で血糖降下効果を示すことを実験により確認した。
【0069】
具体的には、2-1.の実験動物のうち実施例1の処理群および陰性対照群に対する血糖数値を分析し、実施例1のペプチドの血糖降下効果を確認した。その結果を図2に示した。
【0070】
図2は実施例1のペプチドが血糖降下に及ぼす影響を分析した結果を示すグラフである。x軸は投与後の日数{(Time after treatment(d)}を表し、y軸は血糖{Blood Glucose(mg/dL)}を表す。
【0071】
図2から分かるように、実施例1の処理群の二匹(実施例1-1および実施例1-2)は血糖が大幅に減少した後正常血糖を維持するが、陰性対照群の二匹(陰性対照群-1および陰性対照群-2)は血糖が持続的に増加することがわかる。
【0072】
このような結果から、本発明のペプチドが血糖降下に効果があることを確認することができる。本発明のペプチドが第1型糖尿病が発病したマウスの血糖を降下させて正常血糖を維持させる効果を奏するので、本発明のペプチドが血糖降下によって第1型糖尿病の治療または予防が可能であると見られる。また、先立って確認した通り本発明のペプチドが膵島炎の生成を抑制して減少させるので、そのような作用によって第1型糖尿病の治療および/または予防効果を奏することができ、血糖降下効果を奏すると見ることができる。
【0073】
結果的に、本発明のペプチドによって第1型糖尿病の治療および/または予防が可能であることがわかる。
【0074】
2-3.IFN-γ発現抑制、TNF-α発現抑制、およびTGF-β1発現誘導効果の確認
実施例1のペプチドが膵島炎と関連するサイトカイン{IFN-γ(interferon-gamma、インターフェロン-ガンマ)、TNF-α(tumor necrosis factor-alpha、腫瘍壊死因子-アルファ)、およびTGF-β1(Transforming growth factor-beta1,形質転換成長因子-ベータ1)}に及ぼす影響を確認した。IFN-γ、およびTNF-αの発現によって膵島炎が発生すると知られており、TGF-β1の発現増加が膵島炎から膵臓を保護する効果があることが知られている。したがって、実施例1のペプチドがIFN-γおよびTNF-αの発現を抑制するかどうかを確認し、TGF-β1の発現を誘導するかどうかを確認することによって膵島炎に効果を奏するかどうかを調べた。
【0075】
実施例2-1.と同様の方法により準備した実験動物の尾の端部分に一週間に一回ずつ傷をつけて血を一滴取り出し、血糖測定器(Roche,Accu-CHEK Performa)を用いて血糖を測定した。血糖が「high」(600mg/dL以上)であることを確認し、マウスを頸椎脱臼させた後脾臓(spleen)を摘出した。50mlチューブ上にcell strainer(BD、352350)を載せ、摘出した脾臓組織をcell strainerに入れて注射器の後部分を用いて透過させた後透過した細胞があるチューブにHBSS(Hanks’ Balanced Salt solution)を添加して細胞を水洗して遠心分離(1,000rpm、5分)して上層液を除去した。1ml HBSSを入れて細胞を懸濁して1X RBC lysisバッファ(Ebioscience、00-4333-57)を10ml入れて弱く振り混ぜた後氷中に5分間置いた後遠心分離(1,000rpm、5分)し上層液を除去して10ml RBC lysisバッファをもう一度入れて氷で5分間置いた後もう一度遠心分離(1,000rpm、5分)して上層液を除去した後10ml HBSSで二回細胞を水洗した。最後の遠心分離(1,000rpm、5分)後1ml HBSSを入れて細胞を懸濁して50μlの細胞をtrypan blue溶液と1:1倍率で希釈してヘモサイトメーター(Hemocytometer)を用いて細胞個数を確認した。分離した脾臓細胞(splenocytes)を6-well plateに一ウェル(well)当たり1x10個ずつ10% FBS(Fetal bovine serum,Corning、35-015-CV)が含有されたRPMI-1640(Welgene,LM011-01)培地2mlを用いて入れ、T細胞の活性を誘導するための2ng/ml anti-mouse CD28(Ebioscience、16-0281-82)を添加した。同時に実施例1のペプチド100μMを処理するが、IFN-γとTNF-αの発現変化を確認するためには3時間、TGF-β1の発現変化を確認するためには72時間の間37℃、5% COのインキュベーターで処理した。
【0076】
処理後細胞遠心分離(1,000rpm、5分)して上層液を除去し、5ml TRIzol(Invitrogen、15596-018)を入れてピペットして細胞を溶解した後5分間常温に置いた。100μl chloroformを添加して激しく混ぜた後常温で2分間置いた。その後、遠心分離(12,000rpm、15分)を行い最も上に位置した上層液のみを注意深く新しい1.5ml e-tubeに移した後300μl isopropanolを添加して弱く振り混ぜた後常温に10分間置いた。遠心分離(12,000rpm、15分)して上層液を除去し、DEPC(Diethyl pyrocarbonate)を処理した水(LPS solution,CBW004)に希釈した70%エタノールを500μl入れて水洗した後、遠心分離(12,000rpm、10分)して上層液を除去して蓋を開けて残っているエタノールを蒸発させた。30μlのDEPCを処理した水を入れてRNAを溶出してRNA定量を実施した。
【0077】
定量した1mgのRNAを用いてcDNA合成キット(ELPISbio,EBT-1512)の実験方法によりcDNAを合成した後PCR(Polymerase Chain Reaction)キット(SolGent、SEF01-M50H)内の方法により、サイトカイン発現変化差の定量的判断のためのハウスキーピング遺伝子(housekeeping gene)GAPDHと各サイトカイン(IFN-γ、TNF-α、TGF-β1)のcDNAを増幅させた。その後2%アガロースゲルにPCR産物を電気泳動してDNAバンドを確認してイメージJ(Image J)プログラムを用いて定量し、定量値をGAPDHに対する比で計算した。対照群は実施例1のペプチドとanti-mouse CD28の代わりにPBS(phosphate buffered saline,Welgene)を処理したことを除いては実施例1の処理群と同一に処理し、陰性対照群は実施例1のペプチドの代わりにPBS(phosphate buffered saline,Welgene)を処理したことを除いては実施例1の処理群と同一に処理した。その結果を図3および図4に示した。各サイトカインのPCRをするためのprimer配列は表2に表記した。
【表2】
表2においてtはチミン(Thymine)、aはアデニン(Adenine)、cはシトシン(Cytosine)、gはグアニン(Guanine)を示す。
【0078】
図3は実施例1のペプチドがIFN-γ発現抑制、およびTNF-α発現抑制に及ぼす影響を分析した結果を示すグラフであり、図4は実施例1のペプチドがTGF-β1発現誘導に及ぼす影響を分析した結果を示すグラフである。図3および図4のx軸はそれぞれ対照群{(-)}、陰性対照群(anti-CD28)、実施例1の処理群(anti-CD28+実施例1)を示し、図3および図4のy軸はmRNA発現量をGAPDHに対する比{cytokines/GAPDH(%)}で示した。
【0079】
図3から分かるように、膵島炎を発生させると知られているIFN-γとTNF-αの発現量を確認した結果、それぞれの発現量が陰性対照群に比べて減少したことを確認することができる。したがって、実施例1のペプチドがIFN-γとTNF-αの発現を抑制することが分かり、これにより膵島炎が発生することを抑制することができ、膵島炎の治療および/または予防効果を奏することがわかる。
【0080】
図4から分かるように、膵島炎からの膵臓保護に影響を及ぼすと知られているTGF-β1の発現量を確認した結果、発現量が陰性対照群に比べて増加した。したがって、実施例1のペプチドがTGF-β1の発現を誘導することが分かり、これにより膵臓を膵島炎から保護することができ、膵島炎の治療および/または予防効果を奏することがわかる。
【0081】
したがって、実施例1のペプチドはIFN-γ発現抑制、TNF-α発現抑制、および/またはTGF-β1発現誘導によって膵島炎の治療および/または予防効果を奏することがわかる。
【0082】
結局、本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩はIFN-γ発現抑制、TNF-α発現抑制、および/またはTGF-β1発現誘導によって膵島炎の治療および/または予防効果を奏することがわかる。その結果、本発明のペプチドまたは薬学的に許容可能なその塩は第1型糖尿病の治療および/または予防が可能であることがわかる。
【0083】
<比較例1および比較例2>ペプチドの製造
実施例1のペプチドが一部分によっても活性を示すかどうかを調べるために、実施例1のペプチドのアミノ酸配列の一部に該当するアミノ酸配列を有する比較例1のペプチド、および比較例2のペプチドを準備した。比較例1のペプチド、および比較例2のペプチドはそれぞれ実施例1のペプチドのアミノ酸配列(YGAGAGAGY)のうちC-末端から順に6個のアミノ酸からなるペプチド(GAGAGY)、およびN-末端から順に6個のアミノ酸からなるペプチド(YGAGAG)である。比較例1のペプチド、および比較例2のペプチドは表3に記載されたアミノ酸配列に基づいて、実施例1のペプチドと同様の方法により製造した。
【表3】
表3においてYはチロシン(Tyrosine;Tyr)、Gはグリシン(Glycine;Gly)、Aはアラニン(Alanine;Ala)を示す。
【0084】
<比較実験>比較例1および比較例2のペプチド効果の確認
以下では、比較例1および比較例2のペプチドが実施例1のペプチドのようにIFN-γ発現抑制、TNF-α発現抑制、およびTGF-β1発現誘導効果を奏するかどうかを調べるための実験を実施した。
【0085】
実施例1のペプチドの代わりに比較例1のペプチドまたは比較例2のペプチドを使用したことを除いては、2-3.と同一に実施した。その結果を図5および図6に示した。
【0086】
図5は比較例1および比較例2のペプチドがIFN-γ発現抑制、およびTNF-α発現抑制に及ぼす影響を分析した結果を示すグラフであり、図6は比較例1および比較例2のペプチドがTGF-β1発現誘導に及ぼす影響を分析した結果を示すグラフである。図5および図6のx軸はそれぞれ対照群{(-)}、陰性対照群(anti-CD28)、比較例1の処理群(anti-CD28+比較例1)、比較例2の処理群(anti-CD28+比較例2)を示し、図5および図6のy軸はmRNA発現量をGAPDHに対する比{cytokines/GAPDH(%)}で示した。
【0087】
図5から分かるように、膵島炎を発生させると知られているIFN-γとTNF-αの発現量を確認した結果、比較例1の処理群および比較例2の処理群は陰性対照群に比べてそれぞれの発現量の大きな変化はなく、比較例2の処理群はTNF-αの発現量がかえって増加したことを確認することができる。また、図6から分かるように、膵島炎からの膵臓保護に影響を及ぼすと知られているTGF-β1の発現量を確認した結果、比較例1の処理群および比較例2の処理群は陰性対照群に比べて発現量の大きな変化はないことを確認することができる。このような結果から、比較例1と比較例2のペプチドは実施例1のペプチドとは異なりIFN-γ発現抑制、TNF-α発現抑制、およびTGF-β1発現誘導効果を奏することができないことがわかる。
【0088】
以上の結果から、実施例1のペプチドは一部でない全体でIFN-γ発現抑制、TNF-α発現抑制、およびTGF-β1発現誘導効果を奏し、膵島炎ないし第1型糖尿病に効果を奏することがわかる。
【0089】
<製造例1>注射液剤の製造
実施例1と同様の方法で製造したペプチド10mgをPBSに溶解させて溶液1mlを作る。作られた溶液は注射剤用アンプルに充填して注射液剤を製造する。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によって膵島炎を効果的に治療または予防することができる。また、本発明によって第1型糖尿病を効果的に治療または予防することができる。したがって、本発明は産業上の利用可能性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】