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特表2022-524593塩含有処理水の調整及び再使用のための方法
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  • 特表-塩含有処理水の調整及び再使用のための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-09
(54)【発明の名称】塩含有処理水の調整及び再使用のための方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/02 20060101AFI20220426BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20220426BHJP
   C02F 1/20 20060101ALI20220426BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20220426BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20220426BHJP
   C25B 1/26 20060101ALI20220426BHJP
   C25B 1/16 20060101ALI20220426BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20220426BHJP
   C25B 15/029 20210101ALI20220426BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20220426BHJP
   B01D 61/04 20060101ALI20220426BHJP
   C02F 1/461 20060101ALI20220426BHJP
   C07C 39/04 20060101ALN20220426BHJP
   C07C 39/06 20060101ALN20220426BHJP
   C07C 37/56 20060101ALN20220426BHJP
【FI】
B01D61/02 500
C02F1/44 E
C02F1/20 Z
C02F1/28 D
B01D71/56
C25B1/26 A
C25B1/16
C25B1/04
C25B15/029
C25B15/00 302Z
B01D61/04
C02F1/461 101C
C07C39/04
C07C39/06
C07C37/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553839
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(85)【翻訳文提出日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2020056392
(87)【国際公開番号】W WO2020182834
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】19162515.1
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520204744
【氏名又は名称】コベストロ・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・アンド・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】シーサー,ユリヤ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー,クヌート
(72)【発明者】
【氏名】ブラン,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4D006
4D037
4D061
4D624
4H006
4K021
【Fターム(参考)】
4D006HA01
4D006HA21
4D006HA41
4D006KA01
4D006KA03
4D006KB11
4D006KB12
4D006KB17
4D006KD11
4D006KD12
4D006KD30
4D006KE05Q
4D006KE05R
4D006KE06Q
4D006KE06R
4D006KE12Q
4D006KE12R
4D006KE15Q
4D006KE15R
4D006KE16Q
4D006KE16R
4D006KE19P
4D006KE19Q
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MB05
4D006MC54
4D006MC88
4D006PA01
4D006PA02
4D006PB08
4D006PB27
4D037AA13
4D037AB07
4D037BB05
4D037CA01
4D037CA03
4D037CA15
4D061DA08
4D061DB20
4D061EA02
4D061EB12
4D061EB30
4D061EB31
4D061ED13
4D061FA02
4D061FA03
4D061FA06
4D061FA08
4D061FA09
4D061FA11
4D624AA04
4D624AA10
4D624BA02
4D624CA01
4D624DA07
4D624DB01
4D624DB05
4H006AA02
4H006AC41
4H006AD17
4H006FC52
4H006FE13
4K021AA01
4K021AA03
4K021AB01
4K021BA03
4K021BB01
4K021BC01
4K021CA08
4K021CA09
4K021DB40
4K021DC03
4K021DC15
4K021EA06
(57)【要約】
本発明は、ポリカーボネートの製造(I)からの処理水(1)を調整し(ここで、処理水は少なくとも触媒残留物および/または有機不純物および塩化ナトリウムを含有する)、次いでその後の塩化ナトリウム電気分解(V)において処理水(1)を利用するための統合されたプロセスに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート、特にジアリールカーボネートまたは溶液重合法によるポリカーボネートの製造(I)からの少なくとも触媒残留物および/または有機不純物および塩化ナトリウムを含有する処理水(1)の後処理、ならびに下流の塩化ナトリウム電気分解(V)における前記処理水(1)のその後の処理のための統合されたプロセスであって、
少なくとも以下の工程:
a)塩素と一酸化炭素の反応によるホスゲンの生成、
次いで、
b1)工程a)で形成されたホスゲンと、少なくとも1つのビスフェノールとを、水酸化ナトリウム溶液および任意に触媒の存在下で反応させて、標的生成物としてのポリカーボネートおよび塩化ナトリウム含有水溶液を得ること、
または
b2)1つ以上のビスフェノールと1つ以上のジアリールカーボネートとのエステル交換により、オリゴ/ポリカーボネートおよびモノフェノールを得ること、
ポリカーボネートおよびモノフェノールの単離/分離、
水酸化ナトリウム溶液および触媒の存在下でのモノフェノールと工程a)からのホスゲンとの反応、ならびにその生成物塩化ナトリウム水溶液、標的生成物としてのポリカーボネートおよびジアリールカーボネートの分離(ここで、ジアリールカーボネートは、好ましくは最初のエステル交換で再使用される)、
c)工程b1)またはb2)で得られた塩化ナトリウム含有水溶液(処理水)(1)を、溶媒残留物および/または任意に触媒残留物から、特に蒸気で前記溶液をストリッピングすることによって分離すること、次いでその予備精製された溶液を8以下のpHに調整すること、続いてその予備精製されたNaCl溶液を吸着剤、特に活性炭で精製すること、
d)工程c)から得られた塩化ナトリウム含有溶液の少なくとも一部の電気化学的酸化(V)によって、塩素、水酸化ナトリウム溶液、および任意に水素を形成すること、
e)ここで、工程d)で生成された塩素の少なくとも一部は、工程a)におけるホスゲンの生成に再生利用され、および/または
f)任意に、工程d)で生成されたアルカリ金属水酸化物溶液の少なくとも一部は、工程b1)におけるポリカーボネートの製造に再生利用されること、
を含み、
工程c)での塩化ナトリウム含有溶液の吸着剤による精製(II)に続いて、精製されたNaCl含有溶液は、追加の工程c1)において、ナノ濾過(IV)に供され、ここで、前記NaCl含有溶液は、ろ過生成物としての高度に精製されたNaCl溶液(8)および有機および無機不純物を含むNaCl含有濃縮物(11)に分割され、前記高度に精製されたNaCl溶液は電気化学的酸化d)(V)に送られ、前記濃縮物(11)は所望に応じて後処理または廃棄されることを特徴とする、前記統合されたプロセス。
【請求項2】
ナノ濾過c1)(IV)から得られた高度に精製された塩化ナトリウム含有溶液(8)の少なくとも一部の電気化学的酸化d)(V)によって塩素および水酸化ナトリウム溶液を得ることが、カソードとして酸素消費電極を使用する膜電気分解において行われることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ナノ濾過c1)(IV)が、10℃~45℃、好ましくは20℃~45℃、特に好ましくは20℃~35℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
ナノ濾過c1)(IV)が、150~300Da、好ましくは180~220Daの分離限界(MWCO)を有するナノ濾過膜を用いて行われることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
ナノ濾過c1)(IV)が、ピペラジンアミドをベースとする分離層を有するナノ濾過膜を用いて行われることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
ナノ濾過c1)(IV)が、4重量%~20重量%、好ましくは7重量%~20重量%の範囲のNaCl濃度を有する予備精製されたNaCl水溶液を用いて行われることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
ナノ濾過c1)(IV)が、5~50bar、好ましくは15~45barの圧力で行われることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
アンモニウム化合物およびその塩に対するナノ濾過膜の保持率がそれぞれの場合において独立して少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%であることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
ナノ濾過c1)(IV)において、ナノ濾過c1)(IV)前の予備精製されたNaCl溶液中に存在する塩化ナトリウムの少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%がろ過生成物中に保持されることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
ナノ濾過c1)(IV)に使用される膜が、10%以下、好ましくは5%以下の塩化ナトリウムの保持率を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
精製c)において、塩化ナトリウム含有溶液(1)が、吸着(II)前に、特に塩酸または塩化水素を用いることによって、8以下のpHに調整されることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
ナノ濾過(IV)中の膜を通るろ過生成物の流れが15~40L/(hm)であることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
電気分解d)(V)、特に膜電気分解法による電気分解の前に、工程c1)から得られた高度に精製された塩化ナトリウム含有溶液を、少なくとも23重量%、好ましくは少なくとも25重量%のNaCl濃度にすることを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
ポリカーボネートの製造(I)におけるビスフェノールが、式(2)
HO-Z-OH (2)
(ここで、Zは、6~30個の炭素原子を有し、1つ以上の芳香環を含んでもよく、置換されていてもよく、架橋要素として脂肪族または環状脂肪族基またはアルキルアリールまたはヘテロ原子を含んでもよい芳香族基である)
のジヒドロキシアリール化合物であり、反応b)で使用されることを特徴とする、請求項1~13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
工程b)、特に工程b1)で使用されるビスフェノールが、ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテルおよびそれらの環アルキル化および環ハロゲン化したもの、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)および1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(TMCビスフェノール)、特に好ましくは2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から選択されることを特徴とする、請求項1~14のいずれかに記載のプロセス。
【請求項16】
ナノ濾過c1)で得られた濃縮物(11)は、塩化ナトリウム溶液および触媒残留物を含有するものであり、後処理g)に送られ、ここで、カチオン交換樹脂を使用してイオン性および非イオン性触媒残留物を濃縮された塩化ナトリウム溶液から分離し、および/またはc1)からの濃縮物は、活性炭を使用して精製され、精製された濃縮物は、電気化学的酸化d)(V)d)で再使用するために送られてもよいことを特徴とする、請求項1~15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項17】
工程c)および/または工程g)において使用される吸着(II)のための活性炭が、熱分解されたココナツ殻に基づく活性炭であり、特には、活性炭から無機成分を除去するために酸およびその後のアルカリ洗浄に更に供された活性炭であることを特徴とする、請求項1~16のいずれかに記載のプロセス。
【請求項18】
工程g)で得られた精製された濃縮された塩化ナトリウム溶液が、電気化学的酸化d)(V)で更に反応させることを特徴とする、請求項16または17に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、クロルアルカリ(CA)電気分解における塩を利用する目的で、溶液重合プロセス(SPC)およびジフェニルカーボネート(DPC)によるポリカーボネートの製造からの、塩含有処理水の後処理のための方法に関する。
【0002】
本発明は、塩素製造に必要とされる原料塩化ナトリウムの可能な使用を最も節約し、環境、すなわち水路への塩含有廃水の問題のある排出を回避する目的で、ポリカーボネート製造からの塩含有廃水の後処理のためのそれ自体公知の方法から前進する。
【背景技術】
【0003】
溶液重合法(SPC)によるポリカーボネートの製造は、典型的にはホスゲンの製造と、その後の、アルカリ金属水酸化物および窒素触媒、連鎖停止剤および任意に分岐剤の存在下、水性アルカリ相および有機溶媒相の混合物の界面でのビスフェノールおよびホスゲンの反応とによる連続法によって実施される。
【0004】
対照的に、ジアリールカーボネート(DPC)の製造は、典型的には、異なる連続法によって、すなわち、ホスゲンの製造と、その後の、有機相と水性相との間の界面でのアルカリ金属水酸化物および塩基性窒素触媒の存在下での不活性溶媒中でのモノフェノールおよびホスゲンの反応とによって実施される。
【0005】
反応に適した触媒には、原則として、界面法によるポリカーボネートの製造に知られているあらゆる触媒、例えば第三級アミン、N-アルキルピペリジンまたはピリジン等が含まれる。使用されるアミン触媒は、開鎖または環状であってもよく、トリエチルアミンおよびエチルピペリジンが典型的である。
【0006】
通常使用可能な不活性有機溶媒には、20℃付近の温度で少なくとも5重量%の範囲でポリカーボネートを溶解することができる全ての公知の溶媒およびそれらの混合物が含まれる。典型的な溶媒は、ジクロロメタンおよびジクロロメタンとモノクロロベンゼンとの混合物である。
【0007】
溶媒と触媒との間の反応はとりわけ製造プロセス中に起こり得、ここで、副生成物の形成はアンモニウム塩の形成をもたらす。
【0008】
反応後、両方のプロセス(LPCおよびDPC製造)において、有機のポリカーボネート含有相は、典型的に、NaCl含有反応水から分離され、水性液体(洗浄水)で洗浄され、各洗浄操作後に可能な限り水相から分離される。それによって得られたNaCl含有反応水は、二次的な有機成分で汚染されており、蒸気で別々に、または洗浄水と混合してストリッピングし、大体において再使用することができる。得られた処理水は、以下、略して、LPCまたはDPC処理水とも呼ばれる。上述の手順は、例えばEP2229343A1に記載されている。
【0009】
典型的には約5重量%~20重量%(処理水)の塩化ナトリウム含有量を有する水相(LPCまたはDPC処理水)は、大体において、塩素および水酸化ナトリウムを生成するために、クロルアルカリ電気分解(以下、略してCA電気分解とも)において再使用され得る。
【0010】
しかしながら、CA電気分解におけるこれらの処理水の使用は、堆積物または化学プロセスによる電解槽の膜および/または電極への損傷を防ぐために、有機および無機不純物の特定の閾値が観察されなければならないことを必要とする。
【0011】
ポリカーボネート製造からの処理水中の可能な一次不純物としては、典型的に、種々のアルキル置換基を有するフェノール、ビスフェノールA、フェノールおよびベンゼン誘導体、ならびにハロゲン化芳香族化合物(例えば、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、トリクロロフェノール、ジブロモフェノール等)、ならびに極性脂肪族アミンおよびその塩(トリメチルアミン、ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン)ならびにアンモニウム化合物およびその塩が挙げられる。製造の結果として、界面法によるジフェニルカーボネート(DPC)およびポリカーボネート製造(略してLPC製造)からの処理水は、典型的に12~14の範囲のpHを有し、5重量%~7重量%(LPC法の場合)および14重量%~17重量%(DPC法の場合)の範囲の塩化ナトリウムの典型的な濃度を有する。処理水は、10g/Lまでの濃度の炭酸塩をさらに含有することができる。
【0012】
フェノールおよびその誘導体、ビスフェノールAおよびさらなる高分子量の有機化合物は、クロルアルカリ電気分解において塩素化され、AOX(吸着性有機ハロゲン化合物)を形成する。第三級アンモニウム化合物およびその塩ならびに全てのアミンは、NCl、非常に爆発性の危険物質の形成、ならびにクロルアルカリ電気分解におけるセル電位の上昇ひいてはエネルギー消費の増加をもたらす。さらに、これらの有機不純物の酸化生成物は、同様にCA電気分解における電圧上昇をもたらす。これらの不純物の全ては、電気分解のための処理水の経済的利用を可能にするために、それぞれの処理水から可能な限り最大限に除去されるべきである。
【0013】
処理水中の無機不純物(Ca、Mg、Si、Mn、Ni等)は、CA電気分解における電圧の増加をもたらし、同様に可能な限り最大限に除去されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】EP2229343A1
【発明の概要】
【0015】
本発明の特定の目的は、処理水をクロルアルカリ電気分解において安全に使用することを可能にするために、上記の不純物、特にアンモニウム化合物およびその塩の割合を所定の閾値まで減少させることである。
【0016】
ポリカーボネートの製造からの塩含有処理水の後処理のための種々の手段は、従来技術から知られており、多数の刊行物に記載されている。
【0017】
WO2017/001513A1およびWO2015168339A1は、処理水の精製および濃縮のための方法を記載しており、ここで、処理水は、適切な精製、とりわけ活性炭上での優れた精製、およびその後の浸透蒸留による濃縮の後、CA電気分解での使用のために送られる。しかしながら、本発明者は、彼ら自身の実験において、列挙された不純物が、活性炭によって処理水から除去されないかまたは完全に除去されないことを見出した。特に、アンモニウム化合物およびその塩は、活性炭への吸着性が低いことを特徴とする。
【0018】
特許明細書US6214235B1には、吸着剤(活性炭、イオン交換体、炭化イオン交換体)を使用して塩化ナトリウム溶液からアンモニウム塩を除去する方法が記載されている。この既知の精製方法を用いる場合に、アンモニウム塩の高い供給不可の場合に活性炭床を通って早期に突破され、それ故に汚染された溶液がクロルアルカリ電気分解に入ることは、同様に、無視することができない。
【0019】
特許明細書US6340736B1には、処理水の精製および濃縮のための方法が記載され、ここで、精製は触媒的酸化によって行われ、これに続いて蒸発濃縮が行われ、塩化ナトリウム濃度を増加させる。しかしながら、酸化で形成される酸化生成物は、同様に、処理水(特にCA電気分解の陽極液回路)中で濃縮され、その結果、CA電気分解における塩水としての使用時に望ましくない電圧上昇をもたらす。電気分解での電圧上昇は、電気分解のための全エネルギー消費が増加する結果となり、それ故に、塩素および水酸化ナトリウム溶液の製造をより経済的でなくするだけでなく、一次エネルギー消費の増加(CO排出問題)による望ましくない環境負荷を構成する。
【0020】
公開明細書DE102007004164A1には、酸化とそれに続く吸着による塩含有水からの窒素含有有機化合物の除去方法が記載されている。その記載された方法は、50ppmを超える窒素含有有機化合物の濃度を有する水に対してのみ意図されており、適している。
【0021】
列挙された従来技術から出発して、本発明によって対処される課題は、ポリカーボネート製造からの塩含有処理水の後処理のための統合されたプロセスを提供することであり、ここで、ポリカーボネート製造からの塩含有処理水は、電気分解のための上述の産業上の不利な点を受け入れることなく、塩素および水酸化ナトリウム溶液を製造するためのクロルアルカリ電気分解において安全かつ問題なく再使用され得るように精製される。処理水は、特に、電気分解塩水として使用される前に、アンモニウム化合物およびその塩を実質的に含まないように後処理されなければならない。
【0022】
驚くべきことに、追加の膜に基づいた精製段階(ナノ濾過)は、前処理された処理水からアンモニウム化合物およびその塩が大きく除去され、CA電気分解に送ることができるという結果を有することが見出された。さらに、処理水からは多価無機イオンも除去される。
【0023】
本発明は、ポリカーボネート、特にジアリールカーボネートまたは溶液重合法によるポリカーボネートの製造からの少なくとも触媒残留物および/または有機不純物および塩化ナトリウムを含有する処理水の後処理、ならびに下流の塩化ナトリウム電気分解における処理水のその後の処理のための統合されたプロセスであって、
少なくとも以下の工程:
a)塩素と一酸化炭素の反応によるホスゲンの生成、
次いで、
b1)工程a)で形成されたホスゲンと、少なくとも1つのビスフェノールとを、水酸化ナトリウム溶液および任意に触媒の存在下で反応させて、ポリカーボネートおよび塩化ナトリウム含有水溶液を得ること、
または
b2)1つ以上のビスフェノールと1つ以上のジアリールカーボネートとのエステル交換により、オリゴ/ポリカーボネートおよびモノフェノールを得ること、
ポリカーボネートおよびモノフェノールの単離/分離、
水酸化ナトリウム溶液および触媒の存在下でのモノフェノールとホスゲンとの反応、ならびにその生成物塩化ナトリウム水溶液、ポリカーボネートおよびジアリールカーボネートの分離(ここで、ジアリールカーボネートは、好ましくは最初のエステル交換で再使用される)、
c)工程b1)またはb2)で得られた塩化ナトリウム含有水溶液(処理水)を、溶媒残留物および/または任意に触媒残留物から、特に蒸気で溶液をストリッピングすることによって分離すること、次いでその予備精製された溶液を8以下のpHに調整すること、続いてその予備精製されたNaCl溶液を吸着剤、特に活性炭で精製すること、
d)工程c)から得られた塩化ナトリウム含有溶液の少なくとも一部の電気化学的酸化(V)によって、塩素、水酸化ナトリウム溶液および任意に水素を形成すること、
e)ここで、工程d)で生成された塩素の少なくとも一部は、工程a)におけるホスゲンの生成に再生利用(リサイクル)され、および/または
f)任意に、工程d)で生成されたアルカリ金属水酸化物溶液の少なくとも一部は、工程b1)におけるポリカーボネートの製造に再生利用(リサイクル)されること、
を含み、
工程c)での塩化ナトリウム含有溶液の吸着剤による精製に続いて、精製されたNaCl含有溶液は、追加の工程c1)において、ナノ濾過に供され、ここで、NaCl含有溶液は、ろ過生成物(パーミエイト)としての高度に精製されたNaCl溶液ならびに有機および無機不純物を含むNaCl含有濃縮物に分割され、高度に精製されたNaCl溶液は電気化学的酸化d)に送られ、濃縮物は所望に応じて後処理または廃棄されることを特徴とする、統合されたプロセスを提供する。
【0024】
新規プロセスにおける工程c)および特に工程c1)での予備精製の目的は、塩素を生成するための電気分解における処理水の安全かつ問題のない利用を確実にするための塩含有処理水のリサイクルである。上記でより詳細に述べたように、処理水は、有機および無機不純物および/または触媒残留物、特に窒素触媒/塩基性窒素触媒のものを含有し、それらは除去されるものである。CA電気分解における塩水の再循環は、そうしないと、不純物の蓄積をもたらし、それ故に、生成物品質の低下をもたらし、製造プラントに損傷さえももたらす。
【0025】
ポリカーボネート製造からの処理水からの有機不純物の除去のためのナノ濾過は、唯一のプロセス工程としては不十分であり、膜の汚れおよび膜のブロッキング等の付随する効果によって妨げられる。社内調査によれば、ナノ濾過膜の単なる使用によって、全TOC(全有機炭素)の50%~60%のみが保持されたことを示した(例4参照)。文献からは、有機不純物、とりわけフェノール、フェノール誘導体およびビスフェノールAは、膜材料との吸着相互作用のために膜の汚れおよびブロッキングをもたらす場合があり、それ故にフィルター膜の使用を基本的に妨げることがよく知られている(Separation and Purification Technology 63(2008)251-263;Water Research Volume 40,Issue 20,December 2006,pages 3793-3799)。これはまた、以下の例2に記載されるように、ドープされた溶液を用いた社内調査によっても確認される。
【0026】
有機アンモニウム化合物およびそのアンモニウム塩、例えばN-エチルピペリジンおよびそのジクロロメタンとの反応生成物は、活性炭への吸着性が低いことを特徴とする。可能な限り定量的に活性炭を用いて処理水からこれらの化合物を除去することは、吸着剤として大量の活性炭を必要とし、これもまた非常に頻繁な交換を必要とする。
【0027】
それにもかかわらず、活性炭を用いて公知の精製プロセスを安全に操作するために、活性炭容量は、安全性のために、50~75%までの程度までしか利用されない。さもなければ、有機不純物、特に有機アンモニウム化合物およびそのアンモニウム塩が活性炭を通って早期に突破され、クロルアルカリ電気分解に入ることを妨げることができるようにするために、複雑な制御分析が必要になるであろう。
【0028】
上述の技術的課題は、ポリカーボネート製造からの処理水から容易に吸着可能な有機不純物を除去することを目的とする予備精製と、列挙されたアンモニウム化合物(触媒残留物)およびそのアンモニウム塩等の難分解性化合物を除去することを目的とするナノ濾過による後精製とからなる本発明に従うプロセスによって解決される。
【0029】
予備精製は、例えば、フェノール(例えば、非置換フェノール、アルキルフェノール)およびさらなる吸着性芳香族化合物(例えば、ビスフェノールA)を処理水から除去するために有用である。なぜなら、これらは、ナノ濾過によって分離することができず、ナノ濾過膜のブロッキングも生じ得るからである。
【0030】
容易に吸着可能な不純物の除去は、様々な方法で、プロセスの様々な時点で行うことができる。DPCおよびLPC処理水の予備精製は、好ましくは、8以下のpHで活性炭で処理することによって行われる。これらは驚くべきことに特に適していることが証明されているので、特に熱分解されたココナツ殻に基づく活性炭、特に活性炭から無機成分を除去するために追加的に酸およびその後のアルカリ洗浄に供されたものを使用することが特に好ましい。ココナツ殻ベースの活性炭は、特に、その微細な細孔(マイクロメートル範囲)および高い硬度、それ故に著しく少ない炭素摩耗を特徴とする。酸およびアルカリ洗浄は、さらに、処理水のための予備精製工程c)中の活性炭からの鉱物成分の洗い流しが最小限に抑えられるという結果を有する。あるいは、他の吸着剤(ゼオライト、マクロポーラスおよびメソポーラス合成樹脂、ゼオライト等)を用いて予備精製を行ってもよい。予備精製c)は、特に好ましくは、フェノール、フェノール誘導体およびビスフェノールAの総濃度を2mg/L以下の値まで低下させるべきである。
【0031】
新規なプロセスの好ましい態様において、精製c)では、塩化ナトリウム含有溶液は、吸着前に、特に塩酸または塩化水素の使用により、7以下のpHに調整される。
【0032】
使用されるナノ濾過膜(NF膜)は、一般に、対称または非対称の膜であり得る。異なるパラメータ(ポリマーの種類、層の厚さ、多孔度、ポリマーの架橋度等)を有する複数の層(4層まで)からなる非対称複合膜を使用することが好ましい。NF膜の分離活性層は、同様に、異なるポリマーから製造することができ、ここで、多くの市販のNF膜は、ピペラジンアミドに基づく分離層を有する。分離作業のための決定的なパラメータは、膜の活性層の分離限界(MWCO分子量カットオフ)である。ナノ濾過においては、150~300Da、特に好ましくは180~220Daの分離限界(MWCO)を有するNF膜を用いることが好ましい。
【0033】
原則として、様々な形状のNF膜(平坦な膜、中空繊維、チューブ膜)を使用することができる。らせん状に巻かれたモジュールの形態で市販されている平坦な膜を使用することが好ましい。
【0034】
ナノ濾過は、それ自体知られている、異なる塩を含有する水溶液の後処理のための圧力駆動膜プロセスである。ナノ濾過膜の特別な特徴はそのイオン選択性である:一価アニオンを有する塩は(膜に応じて)膜を大きく通過することができるが、多価アニオンを有する塩(例えば、硫酸塩および炭酸塩)は、非常に大きく保持される。このナノ濾過のイオン選択性は、静電相互作用によって多価アニオンの浸透を妨げる膜上/中の負に帯電した基に基づく。水溶液からの有機成分の分離に関して、ナノ濾過膜は、M=200kg/kmolのモル質量を超えるだけのかなりの保持を達成する(例えば、Membrane Processes,R.Rautenbach et al,1989,John Wiley & Sons Ltd.参照)。
【0035】
クロルアルカリ電気分解での使用のための塩化ナトリウム溶液からの多価無機不純物の分離は知られている。これは、ナノ濾過膜(WO2014008593)を用いて直接行うことができ、またはEP1858806B1に記載されるように、保持増強成分の初期添加およびその後のナノ濾過によって行うことができる。
【0036】
新規なプロセスの好ましい実施形態において、ナノ濾過c1)は、10℃~45℃、好ましくは20℃~45℃、特に好ましくは20℃~35℃の温度で行われる。
【0037】
ナノ濾過c1)の上流の供給物に対する操作圧力は、典型的に、好ましくは5bar~50bar、特に好ましくは15~45barである。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、ナノ濾過c1)を使用して、4重量%~20重量%の範囲のNaCl濃度、好ましくは7重量%および20重量%のNaCl濃度を有する予備精製NaCl含有水を処理することができる。
【0039】
膜の分離の鋭さの尺度は、供給物およびろ過生成物(パーミエイト)中の濃度に従って以下のとおり定義される成分iに関する保持容量または保持Riである:
【数1】
ここで、
Riは、保持容量であり、
yiは、ろ過生成物中の成分iの物質画分の量であり、
xiは、供給物中の成分iの物質画分の量である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、NaClに対するナノ濾過膜の保持率が10%以下、特に好ましくは5%以下である。より高い保持率はより高い作動圧力を必要とする場合があり、エネルギー的に不利である。
【0041】
本発明のさらに好ましい実施形態において、ナノ濾過c1)は、ナノ濾過c1)において、ナノ濾過c1)の前に予備精製されたNaCl溶液中に存在する塩化ナトリウム(100重量%)の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%がろ過生成物中に保持されるように操作される。
【0042】
本発明の特定の実施形態では、アンモニウム化合物およびその塩に対するナノ濾過膜の保持率がそれぞれの場合において独立して90%を超えるものとする。
【0043】
本発明のさらなる特定の実施形態では、ナノ濾過中に膜を通るろ過生成物の流れが15~40L/(hm)でなければならない。
【0044】
ナノ濾過による処理のための処理水のpHは、典型的に2~10の間で変化し得、さらなるプロセス工程に従って選択され得る。新規なプロセスでは、ナノ濾過における処理水のpHが3~8に調整されることが特に好ましい。
【0045】
アンモニウム化合物およびその塩を実質的に含まない得られたろ過生成物は、固体塩の添加によって濃縮され、CA電気分解塩水回路に供給される。濃縮は、任意に、蒸発濃縮、高圧逆浸透、膜蒸留、浸透蒸留等の濃縮プロセスの手段によって行うことができる。得られたNF濃縮物は、廃棄されてもよいし、または任意選択で、吸着プロセス(活性炭、イオン交換体)を使用して、濃縮形態で、アンモニウム化合物およびその塩ならびにさらなる多価イオンが除去され、同様に濃縮され、CA電気分解塩水回路に供給されてもよい。
【0046】
塩化ナトリウム溶液中のアルカリ金属炭酸塩の任意の割合が、好ましくは、pHを4以下に調整し、続いてストリッピングガスを使用して、好ましくは不活性ガスまたは空気を使用して除去することによって除去される。その目的は、アルカリ金属炭酸塩の残留含量が好ましくは50mg/L以下である。4以下の範囲のpHでストリッピングガスによってストリッピングすることによる炭酸塩の任意の除去は、ナノ濾過工程の前または後のいずれかで、好ましくはナノ濾過工程の前に実施することができる。
【0047】
活性炭を用いた予備精製工程の後にナノ濾過膜を使用するさらなる利点は、処理水で活性炭から洗い流された全ての多価イオンが同様に除去されることである。これにより、酸およびアルカリ洗浄による活性炭の高価で複雑な調製を省くことが可能になる。
【0048】
工程c1)からの高度に精製された塩化ナトリウム含有溶液の少なくとも一部を、塩素、水酸化ナトリウム溶液および任意に水素を製造するための膜電気分解の塩水回路に導入することが好ましい。膜電気分解のために、2mg/Lの最大BPA含有量を有する混合塩水を製造することが特に好ましい。塩水は、特に好ましくは5mg/L以下のTOC含量を有するべきである。
【0049】
新規なプロセスの特に好ましい実施形態は、ナノ濾過c1)から得られた高度に精製された塩化ナトリウム含有溶液の少なくとも一部の電気化学的酸化d)が、塩素および水酸化ナトリウム溶液を与えるために、カソードとして酸素消費電極を使用する膜電気分解において行われることを特徴とする。
【0050】
新規なプロセスの好ましい変形において、電気分解d)の前に、工程c1)からの高度に精製された塩化ナトリウム含有溶液に追加の塩化ナトリウムを添加して、塩化ナトリウム濃度を増加させるか、または上記のように濃度を増加させることが必要となり得る。
【0051】
したがって、電気分解d)、特に膜電解法の手段による電気分解の前に、工程c1)から得られた高度に精製された塩化ナトリウム含有溶液を、少なくとも23重量%、好ましくは少なくとも25重量%のNaCl濃度にすることを特徴とする新規なプロセスの実施形態も好ましい。
【0052】
新規なプロセスのさらに好ましい変形は、ナノ濾過c1)で得られた濃縮物が、塩化ナトリウム溶液および触媒残留物を含有し、イオン性および非イオン性触媒残留物が陽イオン交換樹脂を使用して濃縮塩化ナトリウム溶液から分離される後処理g)に送られることを特徴とする。カチオン交換樹脂に吸着された触媒残留物を3未満のpHで有機溶媒(例えばメタノール)を用いて溶出させることが好ましい。ナノ濾過c1)で得られた濃縮物は、それとは独立して、後処理g)において活性炭処理によって精製することもできる。同様に、これに適したものは、上述のようなココナツ殻ベースの活性炭であり、特に、活性炭から無機成分を除去するために酸およびアルカリ洗浄に追加的に供されたものである。
【0053】
新規なプロセスの上記変形の特に好ましい実施形態では、工程g)で得られた精製された濃縮濃塩化ナトリウム溶液を、電気化学的酸化d)において追加的に反応させる。
【0054】
新規なプロセスの別の好ましい実施形態において、電気分解がより低いNaCl濃度で作動できる場合、電気分解d)に入る塩化ナトリウム溶液の塩化ナトリウム濃度が100~320g/l、好ましくは100~280g/lの値に調整される。
【0055】
次いで、電気分解から得られた水酸化ナトリウム溶液の濃度は、典型的に10重量%~33重量%、好ましくは12重量%~32重量%である。このようにして達成された比較的低い塩化ナトリウム溶液濃度は、選択された化学プロセスに直接使用するのに有利であり得る。しかしながら、一般に、求められるのは、上記の最小濃度である。
【0056】
工程d)における電気分解において、膜電気分解を使用する場合、電気分解d)において、ナトリウム1molあたりの水移動量が4molHO/molナトリウムより高いイオン交換膜を使用することが好ましい。
【0057】
電気分解d)において、ナトリウム1molあたりの水移動量が5.5~6.5molHO/molナトリウムであるイオン交換膜を使用することが特に好ましい。
【0058】
膜電気分解を使用する場合、電気分解d)は、2~6kA/mの電流密度で都合よく操作され、ここで、電流密度を計算するための基礎として使用される面積は膜面積である。
【0059】
電気分解d)は、70℃~100℃、好ましくは80℃~95℃の温度で最適に操作される。
【0060】
特に、膜電気分解を用いる場合、電気分解d)は、1.0~1.4bar、好ましくは1.1~1.3barの絶対圧力で操作される。
【0061】
膜電気分解を使用する場合、電気分解d)は、20~150mbar、好ましくは30~100mbarのカソード空間とアノード空間の間の差圧で都合よく操作される。
【0062】
電気分解d)は、好ましくは、電気活性コーティングとして酸化ルテニウムだけでなく、元素の周期表の第7および第8遷移族および/または第4主族のさらなる貴金属化合物も含有するアノードを用いて操作される。
【0063】
イオン交換膜の表面積よりも大きな表面積を有するアノードは、電気分解d)における電気分解セルにおいて最適に使用され得る。
【0064】
ポリカーボネートを得るための水酸化ナトリウム溶液および任意にアミン触媒の存在下でのホスゲンと少なくとも1つのビスフェノールの反応b1)は、原理上知られている。
【0065】
ポリカーボネートは、本発明の文脈において、ホモポリカーボネートだけでなく、コポリカーボネートおよび/またはポリエステルカーボネートも意味すると理解されるべきである;ポリカーボネートは、公知の様式で直鎖状または分岐状であり得る。ポリカーボネートの混合物も使用することができる。
【0066】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネートを含む熱可塑性ポリカーボネートは、典型的に20000g/mol~32000g/mol、好ましくは23000g/mol~31000g/mol、特に24000g/mol~31000g/molの平均分子量M(CHCl中25℃およびCHCl100mL当たり0.5gの濃度での相対粘度を測定することによって決定される)を有する。
【0067】
ポリカーボネート中のカーボネート基の80mol%まで、好ましくは20mol%~50mol%の割合を芳香族ジカルボン酸エステル基で置き換えてもよい。この種のポリカーボネートは、炭酸に由来する酸基だけでなく、芳香族ジカルボン酸に由来する酸基も分子鎖に組み込むものであり、芳香族ポリエステルカーボネートと称される。本発明の文脈において、それらは、包括的な用語「熱可塑性芳香族ポリカーボネート」に包含される。
【0068】
ポリカーボネートは、ジフェノール、炭酸誘導体、任意に連鎖停止剤および任意に分岐剤から公知の方法で製造され、ポリエステルカーボネートは、芳香族ポリカーボネート中のカーボネート構造単位を芳香族ジカルボン酸エステル構造単位で置換すべき程度に、炭酸誘導体の一部を芳香族ジカルボン酸またはそのジカルボン酸の誘導体で置換することによって製造される。
【0069】
ポリカーボネートの製造に適したジヒドロキシアリール化合物は、式(2)のものである。
HO-Z-OH (2)
ここで、
Zは、6~30個の炭素原子を有し、1つ以上の芳香環を含んでいてもよく、置換されていてもよく、架橋元素として脂肪族または環状脂肪族基またはアルキルアリールまたはヘテロ原子を含んでもよい芳香族基である。
【0070】
式(2)のZは、好ましくは、式(3)の基を表す。
【化1】
ここで、
およびRは、互いに独立して、H、C-からC18-アルキル-、C-からC18-アルコキシ、ClまたはBr等のハロゲン、またはそれぞれの場合において置換されていてもよいアリールまたはアラルキル、好ましくはHまたはC-からC12-アルキル、特に好ましくはHまたはC-からC-アルキル、非常に特に好ましくはHまたはメチルを表し、
Xは、単結合、-SO-、-CO-、-O-、-S-、C-からC-アルキレン、C-からC-アルキリデンまたはC-からC-シクロアルキリデンを表し、C-からC-アルキル、好ましくはメチルまたはエチルで置換されてもよく、またはC-からC12-アリーレンを表し、任意にヘテロ原子を含有する更なる芳香環に融合されていてもよい。
【0071】
Xは、好ましくは、単結合、C-からC-アルキレン、C-からC-アルキリデン、C-からC-シクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO-または式(3a)の基を表す。
【化2】
【0072】
ジヒドロキシアリール化合物(ジフェノール)の例は、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)アリール、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、1,1’-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンならびにそれらの環アルキル化および環ハロゲン化化合物である。
【0073】
ポリカーボネートの製造に特に適したジフェノールは、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンならびにそれらのアルキル化、環アルキル化および環ハロゲン化化合物である。
【0074】
好ましいジフェノールは、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼンおよび1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0075】
特に好ましいジフェノールは、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0076】
ホモポリカーボネートの場合には1つのジフェノールのみが使用され、コポリカーボネートの場合には2つ以上のジフェノールが使用される。使用されるジフェノールは、合成に加えられる全ての他の化学物質および助剤と同様に、それら自体の合成、取扱いおよび貯蔵からの汚染物質で汚染されている場合がある。しかしながら、可能な限り高い純度の原料を使用することが望ましい。
【0077】
分子量調節に必要な単官能性連鎖停止剤、例えばフェノールまたはアルキルフェノール、特にフェノール、p-tert-ブチルフェノール、イソオクチルフェノール、クミルフェノール、そのクロロ炭酸エステルまたはモノカルボン酸のアシル塩化物またはこれら連鎖停止剤の混合物は、ビスフェノキシドとの反応に供給されるか、またはホスゲンまたはクロロ炭酸末端基が反応混合物中に依然として存在している条件でまたは連鎖停止剤としてアシル塩化物およびクロロ炭酸エステルの場合には初期ポリマーの十分なフェノール性末端基が利用可能である限り、その合成の任意の所望の時点で加えられる。しかしながら、連鎖停止剤は、ホスゲン化の後、ホスゲンはもはや存在しないが、触媒がまだ添加されていない位置または時点で加えられる場合、またはそれらが触媒の前に、触媒と一緒に若しくは触媒と並行して加えられる場合が好ましい。
【0078】
使用される任意の分岐剤または分岐剤混合物は、同じ方法で合成に添加されるが、典型的には連鎖停止剤の前に添加される。典型的に使用される化合物は、トリまたはテトラカルボン酸のトリスフェノール、クアテルフェノールまたはアシル塩化物、またはポリフェノールまたはアシル塩化物の混合物である。
【0079】
分岐剤として使用可能であり、3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の一部の例としては、フロログルシノール、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタ-2-エン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス[4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタンが挙げられる。
【0080】
他の三官能性化合物の一部は、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌリルおよび3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドールである。
【0081】
好ましい分岐剤は、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロインドールおよび1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタンである。
【0082】
任意に使用可能な分岐剤の量は、同様にそれぞれの場合において使用されるジフェノールのモルに基づいて、0.05mol%~2mol%である。
【0083】
分岐剤は、最初に、水性アルカリ相中にジフェノールおよび連鎖停止剤と共に投入されてもよいし、またはホスゲン化の前に有機溶媒中に溶解して添加されてもよい。
【0084】
ポリカーボネートを製造するためのこれらの上述の特定の手段の全ては、原則として、当業者にとってよく知られている。
【0085】
ポリエステルカーボネートの製造に適した芳香族ジカルボン酸は、例えば、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、tert-ブチルイソフタル酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、トリメチル-3-フェニルインダン-4,5’-ジカルボン酸である。
【0086】
芳香族ジカルボン酸の中で、テレフタル酸および/またはイソフタル酸を使用することが特に好ましい。
【0087】
ジカルボン酸の誘導体は、ジカルボニルジハライドおよびジアルキルジカルボキシレート、特にジカルボニルジクロリドおよびジメチルジカルボキシレートである。
【0088】
芳香族ジカルボン酸エステル基によるカーボネート基の置換は、実質的に化学量論的であり、また定量的であり、したがって、反応物のモル比も、最終的なポリエステルカーボネート中に維持される。芳香族ジカルボン酸エステル基は、ランダムにまたはブロック状に組み込むことができる。
【0089】
ポリエステルカーボネートを含むポリカーボネートの製造の形態としては、それ自体公知の界面法およびそれ自体公知の溶融エステル交換法が挙げられる(その変形は、例えば、WO2004/063249A1、WO2001/05866A1、WO2000/105867、US5,340,905Aに記載されている)。
【0090】
前者の場合、使用される酸誘導体は、好ましくはホスゲンおよび任意にジカルボニルジクロリドであり、後者の場合、好ましくは、ジフェニルカーボネートおよび任意にジカルボン酸ジエステルである。ポリカーボネート製造またはポリエステルカーボネート製造のための触媒、溶媒、後処理、反応条件等は、十分によく記載されており、両方の場合について知られている。
【0091】
好ましい新規なプロセスでは、工程b1)で使用されるビスフェノールが、ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテルおよびそれらの環アルキル化および環ハロゲン化したもの、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)および1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(TMCビスフェノール)、特に好ましくは2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から選択される。
【0092】
ポリカーボネート形成のための工程b2)でのエステル交換および反応は、原則として、以下の文献から知られている:Encyclopedia of Polymer Science,Vol.10(1969),Chemistry and Physics of Polycarbonates,Polymer Reviews,H.Schnell,Vol.9,John Wiley and Sons,Inc.(1964)。
【0093】
本発明は、以下に、図面を参照しながら、実施例によってより具体的に説明されるが、それは、本発明のいかなる限定をも構成するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】活性炭を介する予備精製、ストリッピングによる炭酸塩の除去およびナノ濾過によるポリカーボネート製造からの処理水の精製のための本発明によるプロセスの概略図を示す。
【0095】
図1
図中の参照数字の定義は次のとおりである:
I ポリカーボネート製造(処理水発生)
II 活性炭を用いた処理水の予備精製
III ストリッピングによる炭酸塩の除去
IV ナノ濾過
V クロルアルカリ電気分解用の塩水回路
VI 活性炭/カチオン交換体による任意の濃縮物精製
VII イオン交換体による任意の濃縮物精製
1 ポリカーボネート製造からの処理水 pH12~14
2 pHを7~8に調整するための塩酸
3 活性炭を介して予備精製された処理水
4 pHを2~4に調整するための塩酸
5 ストリッピングカラムからの二酸化炭素
6 予備精製およびストリッピングした処理水
7 pH6~8に調整するための水酸化ナトリウム溶液
8 ナノ濾過からのろ過生成物(パーミエイト)
9 固体NaCl
10 精製および濃縮された処理水
11 ナノ濾過からの濃縮物
12 任意に精製された濃縮物(有機物除去)
13 任意に精製された濃縮物(無機物除去)
【実施例
【0096】
処理水の後処理の概要
約20~100mg/LのTOC含量、0.5~5mg/Lのアンモニウム化合物およびその塩の濃度、15重量%~20重量%のNaCl含量、10g/Lまでの炭酸塩含量、および12~14のpHを有するジフェニルカーボネート(DPC)処理水Iは、最初にHCl(2)で8未満のpHに調整され、活性炭精製IIに送られる。得られた流れ3は、フェノール、フェノール誘導体およびビスフェノールAの濃度が2mg/L以下である。ストリッピングIIIによる炭酸塩の任意の除去のために、処理水3は、HCl4でpH2~4に調整される。ストリッピングした処理水6は、50mg/L未満の炭酸塩濃度を有し、水酸化ナトリウム溶液7を用いてpH5~8に調整され、ナノ濾過IVに供給される。ナノ濾過では、ナノ濾過前の予備精製されたNaCl溶液中に存在する塩化ナトリウム(100重量%)の少なくとも50重量%がろ過生成物8中に保持されるように、濃縮因子が確立される。アンモニウム化合物およびその塩の濃度は、少なくとも90%減少する。精製されたろ過生成物8は、飽和(約25重量%)まで固体NaCl9で足されてもよく(流れ10)、クロルアルカリ電気分解Vの塩水回路に供給されてもよい。アンモニウム化合物およびその塩ならびに多価イオンが豊富な濃縮物11を廃棄してもよい。濃縮物11は、任意に、追加の活性炭精製/カチオン交換体VIおよびイオン交換体VIIを介して後処理されてもよく、同様に塩水回路Vに供給されてもよい。
【0097】
例1
表1に報告された組成を有する4つの溶液バッチBV1~BV4を製造し、供給流としてプラントに供給した。供給物の導電率は約110mS/cmであった。テストセルは、約130cmの面積を有するGE DK型ナノ濾過膜を備えていた。供給物は、500ml/minの体積流量で供給された。500ml/hの一定のろ過生成物流が生成された。濃縮物側の圧力発生を記録した。約4の体積濃縮が達成されるまでその濃縮物をリサイクルした。これは、例えば、100Lの供給物が25Lの濃縮物および75Lのろ過生成物を生成することを意味する。
【0098】
次いで、集められたろ過生成物および濃縮物を分析した。その値を表1に報告する。
【0099】
【表1】
【0100】
表1から明らかなように、GE DK膜は、pH3およびpH7の両方で94%のモノクロロメチルエチルピペリジニウムクロリドの保持率を達成した。膜の閉塞は観察されなかった。pH3での操作圧力の増加は、膜の特性によるものである。
【0101】
例2(比較;活性炭による予備精製なし)
表2に報告された組成を有する3つの溶液バッチBV5~BV7を製造し、例1と同様の手順に従った。例1の実験とは対照的に、テストセル内の圧力は、連続的な顕著な増加を受け、したがって、セルの安定した動作を妨げた。実験BV6は、41bar以下の膜の最大許容動作圧力が15時間後に既に達成されていたので、早期に中止された。次いで、集められたろ過生成物および濃縮物を分析した。その値を表2に報告する。
【0102】
【表2】
【0103】
例から明らかなように、少しの濃度のビスフェノールAでさえ膜の閉塞をもたらし、それ故に、例えば活性炭を介した処理水の予備精製が必要である。
【0104】
例3
塩化ナトリウム(130mS/cm)およびエチルピペリジン(EPP)(20mg/L)からなるドープ溶液を製造し、500ml/minの体積流量で供給物としてプラントに供給した。3つの異なるナノ濾過膜GE DK、NF270Dow FilmtecおよびTR60RopurをpH3.2およびpH6.8でテストした(面積約130cm)。500ml/hの一定のろ過生成物流が生成された。その値を表3に報告する。
【0105】
【表3】
【0106】
表3から明らかなように、膜の保持率は、一部の場合において、pHおよび膜特性に強く依存している。
【0107】
例4
約100mS/cmの導電率および40mg/LのTOC値を有するポリカーボネート製造からの実際の処理水(反応および洗浄水を合わせたもの)を塩酸を用いてpH7に調整し、供給物としてプラントに供給した。モノクロロメチルエチルピペリジニウムクロリドの濃度は約5mg/lであった。再循環モードでGE-DK膜を用いて調査を行った(ろ過生成物および濃縮物を戻した)。供給圧力は40barであった。29L/(hm)の流量を最初に確立し、NaClおよびTOCの保持率をそれぞれ31%および58%で測定した。次いで、4倍の体積濃度を行った。これは、2Lの供給溶液から1.5Lのろ過生成物が生成されたことを意味する。濃縮物の導電率は131mS/cmの値に上昇し、その流量は、約56%の一定のTOC保持率で15L/(hm)に低下した。これに続いて、供給物、ろ過生成物および濃縮物のツイスター分析(定性的トレース分析)を行った。その値を表4に報告する。残念ながら、定量分析は、塩溶液中では不可能であった。従って、特性決定は、定性的な用語を用いる:サンプルのガスクロマトグラムの相対ピーク面積に基づいて、大量、中程度の量、少量。濃縮物およびろ過生成物中のモノクロロメチルエチルピペリジニウムクロリド含有量も測定した:濃縮物は13.8mg/L、ろ過生成物は0.2mg/Lを含有した。
【0108】
【表4】
【0109】
例から明らかなように、ろ過生成物中のTOC減少は、エチルピペリジンおよびモノクロロメチルエチルピペリジニウムクロリドの保持を通してのみ達成された。他の成分は、妨害されずに膜を通過した。NaClに対する膜の保持率は、ドープされたNaCl溶液と比較して8%から31%に増加し、したがって、全体的な性能に悪影響を及ぼした。また、ろ過生成物流は、より高い圧力が採用されているにもかかわらず、ドープされた溶液の値を十分に下回った。これは、ビスフェノールAの存在に起因する(例2参照)。
【0110】
例5
約190mS/cmの導電率および3.1mg/LのTOC値を有する活性炭で予備精製した後のポリカーボネート製造からの実際の処理水(反応および洗浄水を合わせたもの)をpH7で供給物としてプラントに供給した。供給物中のモノクロロメチルエチルピペリジニウムクロリドの濃度は約0.7mg/lであった。GE DK膜を用いて調査を行った。供給圧力は35barであった。4倍の濃度を行った。これは、2Lの供給溶液から1.5Lのろ過生成物が生成されたことを意味する。35L/(hm)の平均流量を確立した。濃縮物の導電率は200mS/cmに上昇した。ろ過生成物の平均導電率は185mS/cmであった。次いで、ろ過生成物中のモノクロロメチルエチルピペリジニウムクロリド含量を0.037mg/Lで測定した。これは、約95%のモノクロロメチルエチルピペリジニウムクロリドの保持率に相当する。流量低下または保持悪化等の悪影響は認められなかった。
図1
【手続補正書】
【提出日】2021-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート、特にジアリールカーボネートまたは溶液重合法によるポリカーボネートの製造(I)からの少なくとも触媒残留物および/または有機不純物および塩化ナトリウムを含有する処理水(1)の後処理、ならびに下流の塩化ナトリウム電気分解(V)における前記処理水(1)のその後の処理のための統合されたプロセスであって、
少なくとも以下の工程:
a)塩素と一酸化炭素の反応によるホスゲンの生成、
次いで、
b1)工程a)で形成されたホスゲンと、少なくとも1つのビスフェノールとを、水酸化ナトリウム溶液および任意に触媒の存在下で反応させて、標的生成物としてのポリカーボネートおよび塩化ナトリウム含有水溶液を得ること、
または
b2)1つ以上のビスフェノールと1つ以上のジアリールカーボネートとのエステル交換により、オリゴ/ポリカーボネートおよびモノフェノールを得ること、
ポリカーボネートおよびモノフェノールの単離/分離、
水酸化ナトリウム溶液および触媒の存在下でのモノフェノールと工程a)からのホスゲンとの反応、ならびにその生成物塩化ナトリウム水溶液、標的生成物としてのポリカーボネートおよびジアリールカーボネートの分離(ここで、ジアリールカーボネートは、好ましくは最初のエステル交換で再使用される)、
c)工程b1)またはb2)で得られた塩化ナトリウム含有水溶液(処理水)(1)を、溶媒残留物および/または任意に触媒残留物から、特に蒸気で前記溶液をストリッピングすることによって分離すること、次いでその予備精製された溶液を8以下のpHに調整すること、続いてその予備精製されたNaCl溶液を吸着剤、特に活性炭で精製すること、
d)工程c)から得られた塩化ナトリウム含有溶液の少なくとも一部の電気化学的酸化(V)によって、塩素、水酸化ナトリウム溶液、および任意に水素を形成すること、
e)ここで、工程d)で生成された塩素の少なくとも一部は、工程a)におけるホスゲンの生成に再生利用され、および/または
f)任意に、工程d)で生成されたアルカリ金属水酸化物溶液の少なくとも一部は、工程b1)におけるポリカーボネートの製造に再生利用されること、
を含み、
工程c)での塩化ナトリウム含有溶液の吸着剤による精製(II)に続いて、精製されたNaCl含有溶液は、追加の工程c1)において、ナノ濾過(IV)に供され、ここで、前記NaCl含有溶液は、ろ過生成物としての高度に精製されたNaCl溶液(8)および有機および無機不純物を含むNaCl含有濃縮物(11)に分割され、前記高度に精製されたNaCl溶液は電気化学的酸化d)(V)に送られ、前記濃縮物(11)は所望に応じて後処理または廃棄されることを特徴とする、前記統合されたプロセス。
【請求項2】
ナノ濾過c1)(IV)から得られた高度に精製された塩化ナトリウム含有溶液(8)の少なくとも一部の電気化学的酸化d)(V)によって塩素および水酸化ナトリウム溶液を得ることが、カソードとして酸素消費電極を使用する膜電気分解において行われることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ナノ濾過c1)(IV)が、10℃~45℃、好ましくは20℃~45℃、特に好ましくは20℃~35℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
ナノ濾過c1)(IV)が、150~300Da、好ましくは180~220Daの分離限界(MWCO)を有するナノ濾過膜を用いて行われることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
ナノ濾過c1)(IV)が、ピペラジンアミドをベースとする分離層を有するナノ濾過膜を用いて行われることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
ナノ濾過c1)(IV)が、4重量%~20重量%、好ましくは7重量%~20重量%の範囲のNaCl濃度を有する予備精製されたNaCl水溶液を用いて行われることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
ナノ濾過c1)(IV)が、5~50bar、好ましくは15~45barの圧力で行われることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
アンモニウム化合物およびその塩に対するナノ濾過膜の保持率がそれぞれの場合において独立して少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%であることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
ナノ濾過c1)(IV)において、ナノ濾過c1)(IV)前の予備精製されたNaCl溶液中に存在する塩化ナトリウムの少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%がろ過生成物中に保持されることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
ナノ濾過c1)(IV)に使用される膜が、10%以下、好ましくは5%以下の塩化ナトリウムの保持率を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
精製c)において、塩化ナトリウム含有溶液(1)が、吸着(II)前に、特に塩酸または塩化水素を用いることによって、8以下のpHに調整されることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
ナノ濾過(IV)中の膜を通るろ過生成物の流れが15~40L/(hm)であることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載のプロセス。
【国際調査報告】