(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(54)【発明の名称】光吸収性コンタクトレンズの製造方法及びそれによって生産される光吸収性コンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20220427BHJP
G02C 7/10 20060101ALI20220427BHJP
G02B 5/23 20060101ALI20220427BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220427BHJP
C09K 9/02 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
G02C7/04
G02C7/10
G02B5/23
C08F2/44 Z
C09K9/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020565803
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(85)【翻訳文提出日】2020-11-24
(86)【国際出願番号】 IB2020052307
(87)【国際公開番号】W WO2020194110
(87)【国際公開日】2020-10-01
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】エイトケン・ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】カルトライダー・ジェフリー・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ソノダ・レイラニ・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】スミス・ロバート・マクドナルド
(72)【発明者】
【氏名】デュイス・ドニー・ジェイ
【テーマコード(参考)】
2H006
2H148
4J011
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB03
2H006BB05
2H006BB07
2H006BB08
2H006BC07
2H006BE02
2H006BE05
2H148DA04
2H148DA09
2H148DA24
4J011PA43
4J011PB25
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4J011PC08
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4J011UA01
4J011UA09
(57)【要約】
光吸収性コンタクトレンズの製造方法及びそれによって生産される光吸収性コンタクトレンズが提供される。本方法は、(a)ベースカーブと、フロントカーブで構成される成形型アセンブリを提供することであって、ベースカーブとフロントカーブは、それらの間に空洞を画定し、これを包囲し、この空洞は反応性混合物を収容しており、反応性混合物は、少なくとも1つの重合性モノマーと、活性化波長で吸収する光開始剤と、活性化波長で吸収を表示する光吸収性化合物と、を含むことと、(b)反応性混合物を活性化波長を含む放射線に曝露することによって、反応性混合物を硬化させて光吸収性コンタクトレンズを形成することであって、放射線が、成形型アセンブリのベースカーブとフロントカーブの両方に向けられ、かつベースカーブにおける放射線の放射エネルギーは、フロントカーブにおける放射線の放射エネルギーより大きいことと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光吸収性コンタクトレンズを製造するための方法であって、
(a)ベースカーブと、フロントカーブで構成される成形型アセンブリを提供することであって、前記ベースカーブと前記フロントカーブは、それらの間に空洞を画定し、これを包囲し、前記空洞は反応性混合物を収容しており、前記反応性混合物は、少なくとも1つの重合性モノマーと、活性化波長で吸収する光開始剤と、前記活性化波長で吸収を表示する光吸収性化合物と、を含む、ことと、
(b)前記反応性混合物を、前記活性化波長を含む放射線に曝露することによって、前記反応性混合物を硬化させて前記光吸収性コンタクトレンズを形成することであって、前記放射線が、前記成形型アセンブリの前記ベースカーブ及び前記フロントカーブの両方に向けられ、かつ前記ベースカーブにおける前記放射線の放射エネルギーが、前記フロントカーブにおける前記放射線の放射エネルギーよりも大きい、ことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記放射エネルギーが、前記成形型アセンブリの前記ベースカーブに近接する第1の光源と、前記成形型アセンブリの前記フロントカーブに近接する第2の光源とによって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の光源が発光ダイオードであり、前記第2の光源が発光ダイオードである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記光吸収性化合物が静的光吸収性化合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記光吸収性化合物が、高エネルギー可視光吸収体である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光吸収性化合物がフォトクロミック化合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記成形型アセンブリの前記ベースカーブ及び前記フロントカーブが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、水素化スチレンブタジエンブロックコポリマー、環状オレフィンポリマー、及びそれらの組み合わせから構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記放射エネルギーが、前記放射線の強度、前記放射線の波長、又はこれらの組み合わせによって制御される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記放射エネルギーが、前記放射線の強度によって制御される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ベースカーブにおける前記強度が、前記フロントカーブにおける前記強度よりも大きい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ベースカーブにおける前記強度が、前記フロントカーブにおける前記強度より350%未満大きい、請求項9から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記放射エネルギーが、前記放射線の波長によって制御される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記ベースカーブにおける前記波長が、前記フロントカーブにおける前記波長よりも短い、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ベースカーブにおける前記波長が、前記フロントカーブにおける前記波長より少なくとも約10ナノメートル短い、請求項12から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記レンズは、前記ベースカーブ及び前記フロントカーブにおいて等しい放射エネルギーの条件下で作製された、他の点では全く同じレンズと比較して低減された、6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面度数及び円柱度数並び除去されたコマ収差を有するレンズ設計目標からの二乗平均平方根光路波面偏差を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面度数及び円柱度数並びに除去されたコマ収差を有するレンズ設計目標からの前記二乗平均平方根光路波面偏差が、前記ベースカーブ及び前記フロントカーブにおいて等しい放射エネルギーの条件下で作製された、他の点では全く同じレンズと比較して少なくとも3%低減されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面度数及び円柱度数並びに除去されたコマ収差を有するレンズ設計目標からの前記二乗平均平方根光路波面偏差が、前記ベースカーブ及び前記フロントカーブにおいて等しい放射エネルギーの条件下で作製された、他の点では全く同じレンズと比較して少なくとも0.0020ミクロン低減されている、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年3月2日に出願された米国特許出願第16/805,931号及び2019年3月28日に出願された米国特許仮出願第62/825,050号に対する優先権を主張するものであり、それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、コンタクトレンズ及びその製造方法に関する。より具体的には、本発明は、高エネルギー可視(HEV)光吸収性化合物又はフォトクロミック化合物などの光吸収性化合物を含有するコンタクトレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
精密分光フィルタは可視線又は紫外線の特定の波長をフィルタする。このことは、例えば眼鏡のような光学製品の製造を可能にし、このような製品は、角膜、レンズ、及び網膜を特定の有害な放射線波長から保護することを含め、異なる用途のために特定の波長を遮断するように調整することができる。例えば、フォトクロミック眼鏡、偏光眼鏡、及び射撃及び釣りなどの特定の活動用の眼鏡を含め、人の眼を強い光から保護するために様々なサングラスが開発されてきた。フォトクロミック眼鏡は、典型的には紫外線(UV)である特定の波長の光に曝露されると暗くなり、紫外線が取り除かれると明るくなる。しばしば、そのようなフォトクロミック眼鏡は視力補正のための処方を含む。
【0004】
フォトクロミック技術を含む特定の技術をコンタクトレンズに適応することは、同じ技術を眼鏡に適応するより困難である。得られるレンズの酸素透過性、快適さ、及び適合性のような付加的因子を考慮しなくてはならない。コンタクトレンズの製造プロセスはまた更に複雑になる。典型的には、コンタクトレンズは1つ以上の重合可能な材料の存在下で光開始剤を照射することによって形成される。フォトクロミックコンタクトレンズの場合、重合されてコンタクトレンズを形成する、光開始剤及び重合可能な材料を含有する反応性混合物にフォトクロミック染料を含めることが望ましい。残念ながら、フォトクロミック染料を含む特定の光吸収性化合物は、光開始剤を活性化するためにそれ以外で必要とされる放射線を吸収する可能性があり、したがって、重合反応を妨げる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光吸収性化合物をコンタクトレンズに効率的かつ再現可能に組み込むことを可能にする製造方法は、当該分野において有意な進歩になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光吸収性コンタクトレンズを製造するための方法、及びそのような方法によって生産される光吸収性コンタクトレンズに関する。光吸収性化合物を含有するコンタクトレンズは、本明細書に記載される製造方法によって効率的かつ再現可能に調製され得ることが発見された。コンタクトレンズは、典型的には、レンズ形状の成形型の中で反応性モノマー混合物を重合させることによって製造される。重合反応は、UV又は可視光開始反応或いは熱開始反応などの様々な既知の技術によって開始されてよい。典型的なUV光又は可視光開始反応技術では、反応性モノマー混合物は、一方向からの活性化放射線に曝露される。しかしながら、本発明では、反応性モノマー混合物は、少なくとも2つの方向から活性化放射線に曝露される。更に、活性化放射線の放射エネルギーは2つの方向の間で異なり、本明細書では差別硬化と呼ばれる。結果として、本発明のプロセスは、光吸収性化合物を含有するコンタクトレンズを提供し、その光学パラメータは、片面硬化及び非差別の両面硬化の両方と比較して改善されており、かつそのレンズ特性は、時間、温度、及び照射強度及び波長などの硬化条件にあまり左右されない。
【0007】
したがって、一態様では、本発明は、光吸収性コンタクトレンズを製造するための方法を提供する。本方法は、(a)ベースカーブと、フロントカーブで構成される成形型アセンブリを提供することであって、ベースカーブとフロントカーブは、それらの間に空洞を画定し、これを包囲し、この空洞は反応性混合物を収容しており、反応性混合物は、少なくとも1つの重合性モノマーと、活性化波長で吸収する光開始剤と、活性化波長で吸収を表示する光吸収性化合物と、を含むことと、(b)反応性混合物を活性化波長を含む放射線に曝露することによって、反応性混合物を硬化させて光吸収性コンタクトレンズを形成することであって、放射線が、成形型アセンブリのベースカーブとフロントカーブの両方に向けられ、かつベースカーブにおける放射線の放射エネルギーは、フロントカーブにおける放射線の放射エネルギーより大きいことと、を含む、方法。
【0008】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の製造方法によって調製された光吸収性コンタクトレンズを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】LEDランプ発光帯域幅内の光開始剤及び光吸収モノマーの重複する吸収スペクトルを示す図である。
【
図3】RMS_65データの散乱プロットを示す図である。
【
図4】DMDデータの散乱プロットを示す図である。
【
図5】BCDデータの散乱プロットを示す図である。
【
図6】上部パネル波長及び下部パネル波長が435nmである、RMS_65データの散乱プロットを示す図である。
【
図7】上部パネルと下部パネルの強度比が1である、RMS_65データの散乱プロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、以下の説明に記載されている構造又はプロセス工程の詳細に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、本明細書に記載の教示を用いた様々な方法によって実行又は実施することが可能である。
【0011】
本開示において使用される用語に関しては、以下の定義が提供される。
【0012】
特段の規定がない限り、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。ポリマーの定義は、Compendium of Polymer Terminology and Nomenclature,IUPAC Recommendations 2008,edited by:Richard G.Jones,Jaroslav Kahovec,Robert Stepto,Edward S.Wilks,Michael Hess,Tatsuki Kitayama,and W.Val Metanomskiに開示される定義に一致する。本明細書において言及される刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
用語「(メタ)」は、任意選択的なメチル置換を指す。したがって、「(メタ)アクリレート」などの用語は、メタクリレート及びアクリレートの両方を意味する。
【0014】
「コンタクトレンズ」という用語は、個体の眼の角膜上に置くことができる眼科用デバイスを指す。コンタクトレンズは、創傷治癒、薬剤若しくは栄養補助剤の送達、診断的評価若しくはモニタリング、紫外線吸収、可視光若しくはグレアの低減、又はこれらの任意の組み合わせを含む、矯正的、美容的、又は治療的な利益をもたらし得る。コンタクトレンズは、当該技術分野で既知の任意の適切な材料であり得、ソフトレンズ、ハードレンズ、又は弾性率、含水率、光透過、若しくはこれらの組み合わせなどの、異なる物理、機械、若しくは光学特性を有する少なくとも2つの別個の部分を含有するハイブリッドレンズであり得る。
【0015】
「モノマー」は、連鎖成長重合、特にフリーラジカル重合を受け、それによって標的巨大分子の化学構造内に反復単位を作り出すことができる単官能性分子である。本明細書で使用するとき、用語「モノマー」は、小分子、並びにマクロマー、オリゴマー、及びプレポリマーなどのフリーラジカル重合条件下で鎖成長が可能なより大きい分子を包含する。「親水性モノマー」とは、5重量%の濃度において25℃で脱イオン水と混合されたときに、透明な単相溶液が得られるモノマーである。
【0016】
「シリコーン含有成分」は、典型的にはシロキシ基、シロキサン基、カルボシロキサン基、及びこれらの混合物の形態で少なくとも1つのケイ素-酸素結合を有する分子であり、典型にはモノマーである。
【0017】
「開始剤」は、続いてモノマーと反応してフリーラジカル重合反応を開始することができるラジカルに分解可能である分子である。熱開始剤は、温度に応じて特定の速度で分解し、典型例は、1,1’-アゾビスイソブチロニトリル及び4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)などのアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジクミルペルオキシド、及びラウロイルペルオキシドなどのペルオキシド、過酢酸及び過硫酸カリウムなどの過酸、並びに様々な酸化還元系である。光開始剤は、光化学プロセスにより分解し、典型例は、ベンジル、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、及びこれらの混合物の誘導体、並びに様々なモノアシル及びビスアシルホスフィンオキシド、並びにこれらの組み合わせである。
【0018】
「反応性混合物」及び「反応性モノマー混合物」という用語は、一緒に混合され、重合条件に曝されたとき、従来の又は本発明のシリコーンヒドロゲルを形成するとともに、そこから作製されるコンタクトレンズを形成する成分(反応性及び非反応性の両方)の混合物を指す。反応性モノマー混合物は、モノマー、架橋剤、及び開始剤などの反応性成分、湿潤剤、離型剤、ポリマー、染料などの添加剤、光吸収性化合物、例えば、UV吸収剤、顔料、染料、及びフォトクロミック化合物(それらのいずれも反応性又は非反応性であってもよいが、得られる生物医学装置内に保持されることが可能である)、並びに医薬化合物及び栄養補助化合物、及び任意の希釈剤を含んでもよい。製造されるコンタクトレンズ及び意図する用途に基づいて、広範囲の添加物が加えられる場合があることが理解されよう。反応性混合物の成分の濃度は、希釈剤を除いて、反応性混合物中の全ての成分の重量百分率として表される。希釈剤が使用される場合、それらの濃度は、反応性混合物中の全ての成分及び希釈剤の量に基づき重量百分率として表される。
【0019】
「従来のヒドロゲル」は、いかなるシロキシ、シロキサン、又はカルボシロキサン基も有しない成分から作製されたポリマーネットワークを指す。従来のヒドロゲルは、親水性モノマーを含む反応性混合物から調製される。例としては、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)、N-ビニルピロリドン(「NVP」)、N,N-ジメチルアクリルアミド(「DMA」)、又は酢酸ビニルが挙げられる。米国特許第4,436,887号、同第4,495,313号、同第4,889,664号、同第5,006,622号、同第5,039459号、同第5,236,969号、同第5,270,418号、同第5,298,533号、同第5,824,719号、同第6,420,453号、同第6,423,761号、同第6,767,979号、同第7,934,830号、同第8,138,290号、及び同第8,389,597号は、従来のヒドロゲルの形成を開示している。従来のヒドロゲルは、ポリビニルアルコールから形成されてもよい。従来のヒドロゲルレンズはコーティングを含んでもよく、コーティングは、基材と同じ材料であっても、異なる材料であってもよい。従来のヒドロゲルとしては、ポリビニルピロリドンなどの添加剤、及びホスホリルコリン、メタクリル酸などを含むコモノマーを含んでもよい。市販の従来のヒドロゲルとしては、エタフィルコン(etafilcon)、ゲンフィルコン(genfilcon)、ヒラフィルコン(hilafilcon)、レネフィルコン(lenefilcon)、ネソフィルコン(nesofilcon)、オマフィルコン(omafilcon)、ポリマコン(polymacon)、及びビフィルコン(vifilcon)(それらの変形の全てを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1つの親水性成分及び少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されるポリマーネットワークを指す。反応性混合物中に存在し得る親水性成分の適切なファミリーの例としては、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、N-ビニルイミド、N-ビニル尿素、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、他の親水性ビニル化合物、及びそれらの混合物が挙げられる。シリコーン含有成分はよく知られており、特許文献に広く記載されている。例えば、シリコーン含有成分は、少なくとも1つの重合性基(例えば、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、ビニル基、又は前述の混合物)、少なくとも1つのシロキサン基、及び重合性基(複数可)をシロキサン基(複数可)に接続する1つ又は複数の連結基(化学結合であり得る)を含んでよい。シリコーン含有成分は、例えば、1~220個のシロキサン反復単位を含有してもよい。シリコーン含有成分はまた、少なくとも1つのフッ素原子も含有し得る。シリコーンヒドロゲルレンズはコーティングを含んでもよく、コーティングは、基材と同じ材料であっても、異なる材料であってもよい。
【0021】
シリコーンヒドロゲルの例としては、アクアフィルコン(acquafilcon)、アスモフィルコン(asmofilcon)、バラフィルコン(balafilcon)、コムフィルコン(comfilcon)、デレフィルコン(delefilcon)、エンフィルコン(enfilcon)、ファンフィルコン(fanfilcon)、フォルモフィルコン(formofilcon)、ガリフィルコン(galyfilcon)、ロトラフィルコン(lotrafilcon)、ナラフィルコン(narafilcon)、リオフィルコン(riofilcon)、サムフィルコン(samfilcon)、セノフィルコン(senofilcon)、ソモフィルコン(somofilcon)、及びステンフィルコン(stenfilcon)(これらの変形の全てを含む)に加えて、米国特許第4,659,782号、同第4,659,783号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,998,498号、同第6,087,415号、同第5,760,100号、同第5,776,999号、同第5,789,461号、同第5,849,811号、同第5,965,631号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第6,867,245号、同第6,943,203号、同第7,247,692号、同第7,249,848号、同第7,553,880号、同第7,666,921号、同第7,786,185号、同第7,956,131号、同第8,022,158号、同第8,273,802号、同第8,399,538号、同第8,470,906号、同第8,450,387号、同第8,487,058号、同第8,507,577号、同第8,637,621号、同第8,703,891号、同第8,937,110号、同第8,937,111号、同第8,940,812号、同第9,056,878号、同第9,057,821号、同第9,125,808号、同第9,140,825号、同第9156,934号、同第9,170,349号、同第9,244,196号、同第9,244,197号、同第9,260,544号、同第9,297,928号、同第9,297,929号、並びに国際公開第03/22321号、同第2008/061992号、及び米国特許出願公開第2010/0048847号で調製されるようなシリコーンヒドロゲルが挙げられる。これらの特許は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「放射エネルギー」は、反応性モノマー混合物中に存在する光開始剤を活性化するために使用される電磁放射線のエネルギーを意味する。本発明では、放射エネルギーは、放射線の強度、波長、又は強度と波長の両方によって制御される。放射エネルギーは、放射線の強度に正比例し、放射の波長に反比例する(波長が短いほど、より大きな放射エネルギーを提供する)。
【0023】
上述のように、本発明は、光吸収性コンタクトレンズ、例えば、フォトクロミック化合物及び/又は高エネルギー可視(HEV)光吸収性化合物を含有するコンタクトレンズを製造するための方法を提供する。コンタクトレンズは、少なくとも1つの重合性モノマーと、活性化波長で吸収する光開始剤と、活性化波長で吸収を表示する光吸収性化合物とを含む反応性混合物から作製される。
【0024】
同じ反応性混合物中に重なり合う光吸収特性を有する光開始剤と光吸収性化合物の両方が存在することは、光開始剤の制御された活性化を不確かにする可能性がある。特定の理論に拘束されることを望まないが、光開始剤と同じスペクトル領域での光吸収性化合物による吸収によって、光吸収性化合物が光開始剤を少なくとも部分的に「遮蔽」すると考えられている。光吸収性化合物がフォトクロミック化合物である場合、この吸収は、フォトクロミックが少なくとも部分的に活性化されたときに起こり得る。光吸収性化合物による吸収に起因する開始剤の不完全な活性化は、硬化を阻止する、及び/又は、レンズ内に材料の欠陥及び応力を形成させる不均一な若しくは異方性の硬化をもたらすと考えられている。これらの欠陥は、得られるコンタクトレンズの機械的特性及び光学的特性に悪影響を及ぼす。本発明は、以下に更に記載されるように、差別硬化プロセスを提供することによってこれらの問題に対処する。
【0025】
本発明は、任意の既知のレンズ材料又はこの種のレンズを製造するのに好適な材料でできたハード又はソフトコンタクトレンズを提供するために利用できる。好ましくは、本発明のレンズは約0~約90パーセント又は約20~約75%の含水量を有し得るソフトコンタクトレンズである。本発明のコンタクトレンズは、少なくとも約25%の含水量を有し得る。本発明のレンズは、約200psi未満、又は約150psi未満の引張弾性率などの他の望ましい特性を有し得る。レンズは、約50×10-11(cm2/秒)(ml O2/ml×mmHg)超、又は約75×10-11(cm2/秒)(ml O2/ml×mmHg)超の酸素透過性を有し得る。前述の特性の組み合わせは望ましく、また先に参照された範囲は、任意の組み合わせで組み合わせられ得ることを理解すべきである。
【0026】
本発明のコンタクトレンズは、従来のヒドロゲルであってもよい。本発明のコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルであってもよい。コンタクトレンズは、親水性モノマー、シリコーン含有成分、及びそれらの混合物から作製されて、シロキサン、ヒドロゲル、シリコーンヒドロゲル、及びそれらの組み合わせなどのポリマーを形成し得る。本発明のレンズを形成するのに有用な材料は、重合開始剤等の添加剤に加えて、マクロマー、モノマー、及びこれらの組み合わせの混合物を反応させることによって、製造し得る。好適な材料としては、シリコーンマクロマー及び親水性モノマーから作成されるシリコーンヒドロゲルが挙げられるが、これらに限定されない。異なる重合性モノマーの反応性混合物を使用することもでき、その結果、コポリマーが生成される。
【0027】
コンタクトレンズを作製するための反応性混合物はよく知られており、このような混合物の成分は市販されているか、又は当業者によって容易に調製され得る。コンタクトレンズの形成に好適なポリマーの例としては、非限定的に、エタフィルコンA、ゲンフィルコンA、レネフィルコンA、ポリマコン、バラフィルコン、アクアフィルコン、コムフィルコン、ガリフィルコン、セノフィルコン、ナラフィルコン、及びロトラフィルコンが挙げられる。コンタクトレンズ製剤として、例えば、米国特許第5,998,498号で調製されたようなエタフィルコン、セノフィルコン、バラフィルコン、ガリフィルコン、ロトラフィルコン、コフィルコン、フィルコンII 3、アモフィルコンA、及びシリコーンヒドロゲルが挙げられ得る。米国特許出願第09/532,943号、2000年8月30日に出願された米国特許出願第09/532,943号の一部継続出願、及び、米国特許第6,087,415号、同第6,087,415号、同第5,760,100号、同第5,776,999号、同第5,789,461号、同第5,849,811号、同第5,965,631号、同第7,553,880号、国際公開第2008/061992号、米国特許出願第2010/048847号に開示されるものなどのシリコーンヒドロゲル製剤も、使用されてもよい。これらの特許は、その中に含まれるヒドロゲル組成物に関し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
本発明の反応性混合物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第4,680,336号及び同第4,495,313号に開示される、エタフィルコンA Etafilcon Aなどの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)系ヒドロゲルであってもよく、一般に、主にHEMA及びメタクリル酸(MAA)、並びに架橋剤及び可視性染料などの様々な他の添加剤の製剤である。
【0029】
本発明の反応性混合物は、少なくとも1つの親水性モノマー及び少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されたシリコーンヒドロゲルであってもよい。シリコーンヒドロゲルの例としては、アクアフィルコン、アスモフィルコン、バラフィルコン、コフィルコン、デリフィルコン、エンフィルコン、ファンフィルコン、フォーモフィルコン、ガリフィルコン、ロトラフィルコン、ナラフィルコン、リノフィルコン、サマフィルコン、セノフィルコン、ソモフィルコン、及びステンフィルコン、これらの変異体の全てを含めたものが挙げられる。
【0030】
好ましい反応性混合物は、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、HEMA、及びこれらの混合物から選択される親水性モノマー;2-ヒドロキシ-3-[3-メチル-3,3-ジ(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ]-プロピルメタクリレート(SiMAA)、モノ-メタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)、モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(OH-mPDMS)、及びこれらの混合物から選択されるシリコーン含有成分に基づいてよい。親水性モノマーの場合、DMA及びHEMAの混合物が好ましい。シリコーン含有成分については、SiMAA及びmPDMSの混合物が好ましい。
【0031】
好ましい反応性混合物は、DMA及びHEMAの混合物を含む親水性モノマー;2から20の繰り返し単位(好ましくは4と15の繰り返し単位)を有するモノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシプロピルオキシ)-プロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(OH-mPDMS)の混合物を含むシリコーン含有成分に基づいてよい。
【0032】
本発明の方法で使用される反応性混合物は、光開始剤を含有する。光開始剤は、例えばUV波長及び/又は可視波長など、様々な波長の光を吸収することができる(及びそれによって活性化され得る)。好ましくは、本発明の方法の光開始剤は、電磁スペクトルの可視範囲(約380nmから約780nm)内で吸収することができる。適切な可視光光開始剤は当技術分野で知られており、芳香族α-ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、及び第三級アミンとジケトン、それらの混合物などが含まれるが、これらに限定されない。光開始剤の例示的な例は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure819)、2,4,6-トリメチルベンジルジフェニルホスフィンオキシド、及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、並びに、カンファーキノンとエチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエートの組み合わせである。市販の可視光開始剤系には、Irgacure819、Irgacure1700、Irgacure1800、Irgacure819、Irgacure1850(いずれもCiba Specialty Chemicalsより)及びLucirinTPO開始剤(BASFより販売)が挙げられる。使用され得るこれら及び他の光開始剤は、Volume III,Photoinitiators for Free Radical Cationic & Anionic Photopolymerization,2nd Edition by J.V.Crivello& K.Dietliker;edited by G.Bradley;John Wiley and Sons;New York;1998に開示され、これは、参照によって本明細書に組み込まれる。Crivello& K.Dietliker;edited by G.Bradley;John Wiley and Sons;New York;1998年。開始剤は、反応性混合物の光重合を開始するのに有効な量、例えば、反応性モノマー混合物の100部当たり約0.1~約2重量部までで、反応性混合物中で使用されてもよい。
【0033】
特に好ましい可視光光開始剤としては、CIBAから入手可能なIrgacure(登録商標)(例えば、Irgacure1700又は1800)などのα-ヒドロキシケトン、様々な有機ホスフィンオキシド、2,2’-アゾ-ビス-イソブチロニトリル、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、フェノチアジン、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ベンゾイン又はベンゾイン誘導体などが挙げられる。好ましくは、光開始剤は、200から600nm、又は300から500nm、又は350から450nm、又は380から450nm、又は400から450nm、又は430から440nmの範囲を含む波長で活性化される。
【0034】
反応性混合物中に存在する光吸収性化合物は、一般に、活性化放射線の少なくとも一部を吸収する化合物である。例えば、このような化合物は、光開始剤を開始するために必要とされる活性化放射線の波長と少なくとも部分的に重なり合う波長のUV光及び又は可視光を吸収し得る。光吸収性化合物は、静的光吸収性化合物であってもよく、これは、その吸収プロファイルが放射線への曝露時に著しく変化しないことを意味する。静的光吸収性化合物は、例えば、非フォトクロミックサングラスで使用される。例としては、UV光及び/又はHEV光(例えば、青色光)を吸収する化合物が挙げられる。
【0035】
光吸収性化合物は、フォトクロミック染料であってもよい。フォトクロミック染料は、電磁放射線(又は「化学放射線」)の特定の波長の吸収に応答して、第1の「透明な」、「漂白された」又は「活性化されていない」基底状態と、第2の「有色の」、「暗くなった」又は「活性化された」状態との間で変換可能な任意の化合物である。一実施形態では、フォトクロミック染料は活性化された状態のときに電磁スペクトルの可視光域(380nm~780nm)内で吸収する。好適なフォトクロミック染料の例は、当技術分野において既知であり、限定するものではないが、以下のクラスの物質、すなわちナフピラン、ベンゾピラン、インデノナフトピラン及びフェナントロピランなどのクロメン、スピロ(ベンゾインドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)ベンゾピラン、スピロ(インドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)キノノン及びスピロ(インドリン)ピラノースなどのスピロピラン、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(ベンゾインドリン)ピリダベンゾオキサジン、スピロ(ベンゾインドリン)ナフトオキサジン及びスピロ(インドリン)ベンゾオキサジンなどのオキサジン、水銀ジチゾネート、フルギド、フルギミド、及びこのようなフォトクロミック化合物の混合物が挙げられる。
【0036】
追加の好適なフォトクロミック染料としては、限定するものではないが、(アリールアゾ)-チオギ酸アリールヒドラジド、例えば、水銀ジチゾン、並びにフルギド及びフルギミド、ナフトオキサジン、スピロベンゾピラン、重合性スピロベンゾピラン及びスピロベンゾピラン、重合性フルギド、重合性ナフセンジオン、重合性スピロオキサジン、及び重合性ポリアルコキシル化ナプチオランなどの有機金属ジチオゾネートが挙げられる。フォトクロミック染料は単独で使用されても、1つ以上の他のフォトクロミック染料若しくは静的光吸収性化合物との組み合わせとして使用されてもよい。
【0037】
他の好適なフォトクロミック化合物は米国特許第7,556,750号に開示されており、この開示は参考として本明細書に組み込まれる。好適なフォトクロミック染料の非限定的な例としては、表1に示したようなナフトピランが挙げられる。これらの染料は、得られるコンタクトレンズと共重合されるように重合可能な官能基を含んでもよい。重合可能な官能基の例としては(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルなどが挙げられる。一実施形態では、フォトクロミック染料は、活性化状態のときに可視スペクトルにわたって吸収するが、活性化されていないときは可視スペクトルの約430nm未満、及び約10%未満を吸収するように選択される。
【0038】
更に他の有用なフォトクロミック色素には、インデノ[2’、3’:3,4]ナフト[1,2-b]ピラン及びインデノ[1’,2’:[4,3]ナフコ[2,1-b]ピランから選択されたインデノ縮合ナフトピランが挙げられ、これは、米国特許出願公開第2009/0072206号及び同第2006/0226401号、並びに米国特許第7,364,291号に引用されているもの、並びにその組み合わせにおいてより具体的に開示されている。好ましいフォトクロミック染料は、以下の式1に示される4-[4-[3、13-ジヒドロ-6-メトキシ-13,13-ジメチル-3-フェニル-7-(1-ピペリジニル)ベンゾ[3,4]フルオレノ[2,1-b]ピラン-3-イル]フェニル]-γ-オキソ、2-[(2-メチル-1-オキソ-2-プロペン-1-イル)オキシ]エチルエステル1-ピペラジンブタン酸(登録番号1339922-40-5)である。
【0039】
【0040】
コンタクトレンズは、光吸収性化合物、例えば、顔料、染料並びにUV及び/又はHEV吸収化合物を含む他の静的光吸収性化合物と混合した少なくとも1つの光吸収性化合物を含有してよい。好ましいUV及び/又はHEV吸収化合物としては、式2の化合物が挙げられる。
【0041】
【化2】
式中、
m及びnは、独立して、0、1、2、3、又は4であり、
Tは、結合、O、又はNRであり、
Xは、O、S、NR、SO、又はSO
2であり、
Yは、連結基であり、
P
gは、重合性基であり、
Rは、各出現時において、独立して、H、C
1~C
6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はY-P
gであり、
R
1及びR
2は、存在する場合、各出現時において独立して、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6チオアルキル、C
3~C
7シクロアルキル、アリール、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、NR
3R
4、若しくはベンジルであり、ここで、R
3及びR
4は、独立して、H若しくはC
1~C
6アルキルであるか、又は2つの隣接するR
1若しくはR
2基は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、結合してシクロアルキル若しくはアリール環を形成し、
EWGは、電子求引基である。
【0042】
式2の好ましい化合物には、Yが、各出現時において、独立して、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又はこれらの組み合わせであるものが含まれる。
【0043】
式2の好ましい化合物には、Pgがスチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドを含むものが含まれる。
【0044】
式2の好ましい化合物には、XがOであるものが含まれる。
【0045】
式2の好ましい化合物には、XがSであるものが含まれる。
【0046】
式2の好ましい化合物には、EWGがシアノ、アミド、エステル、ケト、又はアルデヒドであるものが含まれる。好ましくは、EWGはシアノである。
【0047】
式2の好ましい化合物には、m及びnがそれぞれゼロであるものが含まれる。
【0048】
式2の好ましい化合物には、それらの2つ以上の混合物を含む、以下が含まれる、すなわち
2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート;
2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルアクリレート;
N-(2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチル)メタクリルアミド;
N-(2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチル)アクリルアミド;
2-(2-シアノ-N-メチル-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート;
2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)-N-(2-(N-ビニルアセトアミド)エチル)アセトアミド;
2-(2-シアノ-2-(9H-キサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート;
2-(2-シアノ-2-(9H-キサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルアクリレート;
N-(2-(2-シアノ-2-(9H-キサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチル)メタクリルアミド;
N-(2-(2-シアノ-2-(9H-キサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチル)アクリルアミド;
2-(2-シアノ-N-メチル-2-(9H-キサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート;
2-シアノ-N-(2-(N-ビニルアセトアミド)エチル)-2-(9H-キサンテン-9-イリデン)アセトアミド;
2-(2-(アクリジン-9(10H)-イリデン)-2-シアノアセトアミド)エチルアクリレート;
N-(2-(2-(アクリジン-9(10H)-イリデン)-2-シアノアセトアミド)エチル)メタクリルアミド;
N-(2-(2-(アクリジン-9(10H)-イリデン)-2-シアノアセトアミド)エチル)アクリルアミド;
2-(2-(アクリジン-9(10H)-イリデン)-2-シアノ-N-メチルアセトアミド)エチルメタクリレート;
2-(アクリジン-9(10H)-イリデン)-2-シアノ-N-(2-(N-ビニルアセトアミド)エチル)アセトアミド;
2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)-2-メチルプロピルメタクリレート;
2-(2-シアノ-2-(9H-キサンテン-9-イリデン)アセトキシ)-2-メチルプロピルアクリレート;
(Z)-2-(2-シアノ-2-(3-ヒドロキシアクリジン-9(10H)-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート;
2-(2-シアノ-2-(10-メチルアクリジン-9(10H)-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート;
2-(2-シアノ-2-(3,6-ジヒドロキシアクリジン-9(10H)-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート;
(E)-2-(2-(7H-ベンゾ[c]キサンテン-7-イリデン)-2-シアノアセトアミド)エチルメタクリレート;
(Z)-2-(2-シアノ-2-(3-メトキシ-9H-キサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート;
2-(2-シアノ-2-(3,6-ジヒドロキシ-9H-キサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート;
(E)-2-(2-シアノ-2-(2-メチル-9H-キサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート;
(E)-2-(2-シアノ-2-(1-ヒドロキシ-9H-キサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート;
(E)-2-(2-シアノ-2-(2,4-ジクロロ-9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート;
(E)-2-(2-(2-クロロ-9H-チオキサンテン-9-イリデン)-2-シアノアセトアミド)エチルメタクリレート;
(E)-2-(2-シアノ-2-(2-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート;
(E)-2-(2-シアノ-2-(4-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート;.
2-(3-オキソ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)プロパンアミド)エチルメタクリレート;
2-(3-オキソ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)ブタンアミド)エチルメタクリレート;
2-(3-メトキシ-3-オキソ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)プロパンアミド)エチルメタクリレート;
2-(3-アミノ-3-オキソ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)プロパンアミド)エチルメタクリレート;
2-(2-シアノ-2-(10,10-ジオキシド-9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート;
N-(2-(2-シアノ-2-(10-メチルアクリジン-9(10H)イリデン)アセトアミド)エチル)メタクリルアミド;又は
2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトキシ)エチルメタクリレート。
【0049】
使用される光吸収性化合物の量は、選択された光吸収性化合物が活性である特定の波長での透過率の所望の減少を達成するのに有効な量である。例として、量は、反応性混合物(希釈剤を除く)の総重量に基づいて、重量で0.05から10パーセント、又は0.1から5パーセント、又は0.1から3パーセントの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、量は、反応性混合物の総重量(希釈剤を除く)に基づいて、0.75から1.25重量%である。
【0050】
反応性混合物は、反応性又は非反応性であり得る様々な他の添加剤を含有してもよい。そのような添加剤の例には、架橋剤、湿潤剤、離型剤、ポリマー、染料、UV吸収剤、顔料、医薬化合物、栄養補助食品化合物、希釈剤、又は前述のいずれかの組み合わせなどの他の光吸収性化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明によれば、上記のような反応性混合物は、混合物を成形型アセンブリに分配し、続いて混合物を硬化させることによってコンタクトレンズに形成される。成形型アセンブリは、レンズの後面に接触する成形型の半体であるベースカーブと、前面に接触するフロントカーブで構成される。フロントカーブとベースカーブは、一緒にされると、それらの間に空洞を画定し、これを取り囲み、この空洞は、本発明によれば、反応性混合物を収容する。
【0052】
本発明で使用される成形型アセンブリを構成する成形型構成要素(フロントカーブ及びベースカーブ)は、使い捨て又は再利用可能な材料を含む様々な材料から作製されてよい。例えば、成形型は、限定するものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ホモポリマー、コポリマー、及びターポリマーを含む他のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、ポリ(エチレンテレファタレート)及びポリ(ブチレンテレフタレート)などのポリエステル、ポリアミド、ポリ(ビニルアルコール)及びその誘導体、タフテックなどの水素化スチレンブタジエンブロックコポリマー、Zeonor及びTopas樹脂などの環状オレフィンポリマー、及びそれらの組み合わせを含めた、任意の好適な材料から作製された熱可塑性光学成形型であってよい。成形型は、光開始剤を活性化する波長に対して透明であるか、又はほとんど透明であるように選択されてよく、したがって、フロントカーブ及びベースカーブを通る照射を可能にする。材料は、フロントカーブとベースカーブで同じであってよい、又は違ってもよい。成形型アセンブリのフロントカーブのための好ましい材料は、環状オレフィンポリマーと水素化スチレンブタジエンブロックコポリマーのそれぞれ90:10(w/w)のブレンドである。成形型アセンブリのベースカーブに好ましい材料は、環状オレフィンポリマーとポリプロピレンの90:10(w/w)のブレンドである。他の例示的な材料としては、ベースカーブとフロントカーブのいずれか又はその両方のZeonor及びTuftecのブレンドが挙げられる。ベースカーブ又はフロントカーブ成形型の厚さは、変化し得るが、目標レンズの成形型設計の光学ゾーンの中心で測定される場合、典型的には100から1500ミクロンの間、好ましくは600から800ミクロンの間である。
【0053】
光開始剤を開始するための活性化放射線源には、例えば、そのような開始に適切な波長で光を透過するランプが含まれる。活性化放射線の好ましい供給源は、発光ダイオード(LED)ランプである。好ましいのは、200から600nm、より好ましくは300から500nm、最も好ましくは350から450nmを含む所望される強度及び波長範囲で透過するLEDランプである。
【0054】
硬化工程は、活性化波長(光開始剤を活性化するために必要な波長)を含む放射線に反応性混合物を曝露することによって実施される。本発明では、放射線は、成形型アセンブリのベースカーブとフロントカーブの両方に向けられる。更に、放射のベースカーブでの放射エネルギーは、フロントカーブでの放射の放射エネルギーよりも大きくなる。
【0055】
放射エネルギーの差は、フロントカーブよりもベースカーブにおいてより高い強度の放射線を使用することによって提供されてよい。放射線強度は、様々な機器によって測定することができる。例えば、実施例に示されるように、好ましい器具は、International Light Technologiesから入手したILT-2400である。
【0056】
放射線の強度は、一般に、0.1から25mW/cm2、好ましくは1から15mW/cm2の範囲であってよい。前述のように、ベースカーブでの放射線の強度は、フロントカーブにおける放射線の強度よりも大きい場合がある。放射線は、ベースカーブにおいて、フロントカーブにおける放射線の強度よりも、少なくとも1パーセント、或いは少なくとも5パーセント、或いは少なくとも10パーセント、或いは少なくとも15パーセント、或いは少なくとも20パーセント大きい強度を有し得る。放射線は、ベースカーブにおいて、フロントカーブにおける強度よりも350パーセント未満、或いは最大300パーセント、或いは最大250パーセント、或いは最大200パーセント、或いは最大150パーセント、或いは最大100パーセント、或いは最大90パーセント、或いは最大80パーセント、或いは最大70パーセント、或いは最大60パーセント、或いは最大50パーセント、或いは最大45パーセント、或いは最大40パーセント、或いは最大35パーセント、或いは最大30パーセント大きい強度を有し得る。例えば、放射線は、ベースカーブにおいて、フロントカーブにおける放射線の強度よりも少なくとも1パーセント、かつ350パーセント未満、或いは1から300パーセント、或いは1から250パーセント、或いは1から250パーセント、或いは1から200パーセント、或いは1から150パーセント、或いは1から100パーセント、或いは5から300パーセント、或いは5から250パーセント、或いは5から200パーセント、或いは5から150パーセントパーセント、或いは5から100パーセント、或いは10から300パーセント、或いは10から200パーセント、或いは10から150パーセント、或いは10から100パーセント、或いは20から300パーセント、或いは20から250パーセント或いは、20から200パーセント、或いは20から150パーセント、或いは20~100パーセント大きい強度を有し得る。更なる例として、放射線は、ベースカーブにおいて、フロントカーブにおける放射線の強度よりも少なくとも5%、及び最大100%、或いは5から80%、或いは10から66.7%大きい強度を有してよい。実例として、ベースカーブにおける強度がフロントカーブにおける強度よりも10%大きい場合、ベースカーブの強度が約3.3mW/cm2の場合、フロントカーブにおける放射線の強度は約3.0mW/cm2になる。更に説明するために、ベースカーブにおける強度がフロントカーブでよりも66.7%大きい場合、ベースカーブにおける強度が約4.17mW/cm2である場合、フロントカーブにおける放射線の強度は約2.5mW/cm2である。
【0057】
放射線の強度を使用して、上部カーブと下部カーブで放射エネルギーの差を提供する場合、上部カーブと下部カーブにおける波長は同じであることが好ましい。例えば、波長は、350nmから450nm、又は380nmから450nm、又は400nmから450nm、又は430nmから440nmの範囲であり得る。
【0058】
本発明の方法における放射エネルギーの差は、ベースカーブ及びフロントカーブにおいて異なる波長の放射線を使用することによって提供されてよい。より具体的には、ベースカーブにおける波長は、フロントカーブにおける波長よりも短くてもよい。例えば、ベースカーブにおける波長は、フロントカーブにおける波長よりも少なくとも5nm、又は少なくとも10nm、又は少なくとも20nm短くてもよい。両方の波長とも、光開始剤を活性化することができる。両方の波長が、同じ強度を有してもよい。
【0059】
本発明の方法における放射エネルギーの差は、ベースカーブ及びフロントカーブで異なる波長及び放射強度の両方を使用することによって提供されてよい。例えば、差は、フロントカーブよりもベースカーブでより短い波長及びより高い強度の放射を使用することによって提供されてもよい。
【0060】
上述したように、ベースカーブにおける活性化放射線の放射エネルギーがフロントカーブよりも大きいプロセスを使用することにはいくつかの利点がある。例えば、本発明のプロセスは、光吸収性化合物を含有するコンタクトレンズを提供し、その光学パラメータは、片面硬化又は非差別両面硬化と比較して改善されており、そのレンズ特性は、時間、温度、及び照射強度などの硬化条件にあまり左右されない。
【0061】
成形型アセンブリにわたって放射エネルギー差を生み出す方法はいくつかある。1つの方法は、異なる強度、異なる波長、又は異なる強度と波長の両方を有する2つの別個の光源を使用することである。別の方法は、一連のミラー又は反射パレット機能を備えたベースカーブに向けられた単一の光源を使用して、現在強度が低下している照射光の一部をフロントカーブに向けてリダイレクト及び/又は反射することである。
【0062】
硬化後、レンズを抽出に供して、未反応成分を除去し、レンズをレンズ成形型から取り外してもよい。抽出は、アルコールなどの有機溶媒など、従来の抽出流体を使用して行われてもよいし、又は水溶液を使用して抽出されてもよい。
【0063】
水溶液は、水を含む溶液である。本発明の水溶液は、少なくとも約20重量%の水、又は少なくとも約50重量%の水、又は少なくとも約70重量%の水、又は少なくとも約95重量%の水を含み得る。水溶液はまた、無機塩又は離型剤、湿潤剤、スリップ剤、医薬及び栄養補助剤、これらの組み合わせなどの追加の水溶性化合物を含んでもよい。離型剤は、化合物又は化合物の混合物であり、これは、水と組み合わせると、離型剤を含まない水溶液を使用してコンタクトレンズを取り外すのに必要な時間と比較した場合、成形型からコンタクトレンズを取り外すのに必要な時間が減少する。
【0064】
抽出は、例えば、水溶液中にこのレンズを浸漬すること、又は水溶液の流れにレンズを曝すことを介して行うことができる。抽出はまた、例えば、水溶液を加熱することと、水溶液を撹拌することと、水溶液の離型剤の濃度を、レンズの離型が生じるのに十分なレベルにまで増大させることと、レンズの機械的撹拌又は超音波撹拌と、少なくとも1種の濾過助剤又は抽出助剤を水溶液に取り入れて、未反応成分をレンズから適切に除去することを容易にするのに十分な濃度にすることと、のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。熱、振動又はその両方の追加の有無にかかわらず、前述は、バッチプロセス又は連続プロセスで行われてもよい。
【0065】
浸出及び離型を促進するために、物理的撹拌の適用が望ましい場合がある。例えば、レンズが付着しているレンズ成形型部分は、水溶液中で振動させるか又は前後運動させることができる。他の方法には、超音波を水溶液に通すことが含まれてもよい。
【0066】
上記のように調製されたレンズは、以下の品質特性を示すことができる。レンズは、ベースカーブ及びフロントカーブでの等しい放射の条件下で作製された、他の点では全く同じレンズと比較して低減された、6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面度数及び円柱度数並びに除去されたコマ収差を有するレンズ設計目標からの二乗平均平方根光路波面偏差を有してよい。レンズは、ベースカーブ及びフロントカーブでの等しい放射の条件下で作製された、他の点では全く同じレンズと比較して少なくとも3%低減された、6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面度数及び円柱度数並びに除去されたコマ収差を有するレンズ設計目標からの二乗平均平方根光路波面偏差を有してよい。レンズは、ベースカーブ及びフロントカーブにおいて等しい放射の条件下で作製された、他の点では全く同じレンズと比較して少なくとも0.0020ミクロン低減された、6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面度数及び円柱度数並びに除去されたコマ収差を有するレンズ設計目標からの二乗平均平方根光路波面偏差を有してよい。
【0067】
以下の項目は、本開示の非限定的な実施形態を列挙する。
【0068】
1.光吸収性コンタクトレンズを製造するための方法であって、
(a)ベースカーブと、フロントカーブで構成される成形型アセンブリを提供することであって、ベースカーブとフロントカーブは、それらの間に空洞を画定し、これを包囲し、この空洞は反応性混合物を収容しており、反応性混合物は、少なくとも1つの重合性モノマーと、活性化波長で吸収する光開始剤と、活性化波長で吸収を表示する光吸収性化合物と、を含むことと、
(b)反応性混合物を活性化波長を含む放射線に曝露することによって、反応性混合物を硬化させて光吸収性コンタクトレンズを形成することであって、放射線が、成形型アセンブリのベースカーブとフロントカーブの両方に向けられ、かつ放射線は、ベースカーブにおいて、フロントカーブにおける放射線の強度より大きい強度を有することと、を含む、方法。
【0069】
2.放射線が、ベースカーブにおいて、フロントカーブにおける放射線の強度よりも350パーセント未満大きい強度を有する、項目1に記載の方法。
【0070】
3.放射線が、ベースカーブにおいて、フロントカーブにおける放射線の強度よりも1%から350%大きい強度を有する、項目1から2のいずれか一項に記載の方法。
【0071】
4.放射線が、成形型アセンブリのベースカーブに近接する第1の光源と、成形型アセンブリのフロントカーブに近接する第2の光源とによって提供される、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
【0072】
5.第1の光源が発光ダイオードであり、第2の光源が発光ダイオードである、項目4に記載の方法。
【0073】
6.光吸収性化合物が静的光吸収性化合物である、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
【0074】
7.光吸収性化合物が、高エネルギー可視光吸収剤である、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
【0075】
8.光吸収性化合物がフォトクロミック化合物である、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
【0076】
9.成形型アセンブリのベースカーブ及びフロントカーブが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、水素化スチレンブタジエンブロックコポリマー、環状オレフィンポリマー、及びこれらの組み合わせで構成される、項目1から8のいずれか一項に記載の方法。
【0077】
10.ベースカーブにおける放射線の波長がフロントカーブにおける放射線の波長と同じである、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
【0078】
11.ベースカーブ及びフロントカーブにおける放射線の波長が350~450nmである、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0079】
12.ベースカーブ及びフロントカーブにおける放射線の波長が400~450nmである、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0080】
13.光吸収性コンタクトレンズを製造するための方法であって、
(a)ベースカーブと、フロントカーブで構成される成形型アセンブリを提供することであって、ベースカーブとフロントカーブは、それらの間に空洞を画定し、これを包囲し、この空洞は反応性混合物を収容しており、反応性混合物は、少なくとも1つの重合性モノマーと、活性化波長で吸収する光開始剤と、活性化波長で吸収を表示する光吸収性化合物と、を含むことと、
(b)反応性混合物を活性化波長を含む放射線に曝露することによって、反応性混合物を硬化させて光吸収性コンタクトレンズを形成することであって、放射線が、成形型アセンブリのベースカーブとフロントカーブの両方に向けられ、かつ放射線は、ベースカーブにおいて、フロントカーブにおける放射線の波長より短い波長を有すること、とを含む、方法。
【0081】
14.ベースカーブにおける波長がフロントカーブにおける波長よりも少なくとも約10ナノメートル短い、項目13のいずれか一項に記載の方法。
【0082】
15.放射線が、成形型アセンブリのベースカーブに近接する第1の光源と、成形型アセンブリのフロントカーブに近接する第2の光源とによって提供される、項目13から14のいずれか一項に記載の方法。
【0083】
16.第1の光源が発光ダイオードであり、第2の光源が発光ダイオードである、項目15に記載の方法。
【0084】
17.光吸収性化合物が静的光吸収性化合物である、項目13から16のいずれか一項に記載の方法。
【0085】
18.光吸収性化合物が高エネルギー可視光吸収剤である、項目13から17のいずれか一項に記載の方法。
【0086】
19.光吸収性化合物がフォトクロミック化合物である、項目13から18のいずれか一項に記載の方法。
【0087】
20.成形型アセンブリのベースカーブ及びフロントカーブが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、水素化スチレンブタジエンブロックコポリマー、環状オレフィンポリマー、及びそれらの組み合わせで構成される、項目13から19のいずれか一項に記載の方法。
【0088】
21.ベースカーブでの放射線の強度が、フロントカーブにおける放射線の強度と同じである、項目13から20のいずれか一項に記載の方法。
【0089】
22.ベースカーブ及びフロントカーブにおける放射線の波長が350から450nmである、項目13から21のいずれか一項に記載の方法。
【0090】
23.ベースカーブ及びフロントカーブにおける放射線の波長が400から450nmである、項目13から22のいずれか一項に記載の方法。
【0091】
24.項目1~12のいずれか一項に記載の方法によって調製される光吸収性コンタクトレンズ。
【0092】
25.レンズは、ベースカーブ及びフロントカーブにおいて等しい放射の条件下で作製された、他の点では全く同じレンズと比較して低減された、6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面度数及び円柱度数並びに除去されたコマ収差を有するレンズ設計目標からの二乗平均平方根光路波面偏差を有する、項目1から12のいずれか一項に記載の方法又は項目24に記載の光吸収性コンタクトレンズ。
【0093】
26.6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面度数及び円柱度数並びに除去されたコマ収差を有するレンズ設計目標からの二乗平均平方根光路波面偏差が、ベースカーブ及びフロントカーブにおける等しい放射エネルギーの条件下で作製された、他の点では全く同じレンズと比較して少なくとも3%低減されている、項目25に記載の方法又はコンタクトレンズ。
【0094】
27.6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面度数及び円柱度数並びに除去されたコマ収差を有するレンズ設計目標からの二乗平均平方根光路波面偏差が、ベースカーブ及びフロントカーブにおける等しい放射エネルギーの条件下で作製された、他の点では全く同じレンズと比較して少なくとも0.0020ミクロン低減されている、項目25に記載の方法又はコンタクトレンズ。
【0095】
28.項目13から23のいずれか一項に記載の方法で調製された光吸収性コンタクトレンズ。
【0096】
29.ベースカーブ及びフロントカーブにおいて等しい放射エネルギーの条件下で作製された、他の点では全く同じレンズと比較して低減された、6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面度数及び円柱度数並びに除去されたコマ収差を有するレンズ設計目標からの二乗平均平方根光路波面偏差を有する、項目13から23のいずれか一項に記載の方法、又は項目28に記載の光吸収性コンタクトレンズ。
【0097】
30.6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面度数及び円柱度数並びに除去されたコマ収差を有するレンズ設計目標からの二乗平均平方根光路波面偏差が、ベースカーブ及びフロントカーブにおける等しい放射エネルギーの条件下で作製された、他の点では全く同じレンズと比較して少なくとも3%低減されている、項目29に記載の方法又はコンタクトレンズ。
【0098】
31.6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面度数及び円柱度数並びに除去されたコマ収差を有するレンズ設計目標からの二乗平均平方根光路波面偏差が、ベースカーブ及びフロントカーブにおける等しい放射エネルギーの条件下で作製された、他の点では全く同じレンズと比較して少なくとも0.0020ミクロン低減されている、項目29に記載の方法又はコンタクトレンズ。
【0099】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例にて詳細に記述する。
【実施例】
【0100】
充填溶液中のコンタクトレンズパラメータを測定するために、較正された二重干渉法が使用された。これらのパラメータには、複数の開口における等価球面度数(ジオプター又はD)、複数の開口における円柱度数(ジオプター又はD)、直径(ミリメートル又はmm)、中心厚(ミリメートル又はmm)、矢状高さ(ミリメートル又はmm)、及び6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面/円柱度数及び除去されたコマ収差を有するマイクロメートル又はマイクロメートル(μm)でのレンズ設計目標からの二乗平均二乗(RMS)光路波面偏差が含まれる。この機器は、波面パラメータの測定のためのカスタムのプロピオネート干渉計と、矢状高さ及び中心厚の寸法パラメータの測定のためのLumetrics OptiGauge(登録商標)II低コヒーレンス干渉計とで構成されている。組み合わされた2つの個々の器具は、Lumetrics Clearwave(商標)Plusと同様であり、ソフトウェアは、Lumetrics OptiGauge Control Center v7.0以降に類似している。Clearwave(商標)Plusでは、カメラを使用してレンズ縁部を見つけ、次いでレンズ中心を計算し、次にこれを使用して、矢状高さ及び中心厚を測定するためにレンズ中心に、1310ナノメートル干渉計プローブをレンズ中心に位置合わせする。伝搬された波面も、波面センサ(シャックハルトマンセンサ)を使用して連続して収集される。コンタクトレンズの透過波面からの複数のパラメータが測定され、他のパラメータはこれらの測定値から計算される。
【0101】
収集されたデータから、目標からの測定値を比較することによって差異項が計算される。これらには、6.5ミリメートル口径を使用して測定したときのμm単位のレンズ設計目標(球面/円柱度数及び除去されたコマ収差)からの二乗平均平方根光路波面偏差(RMS_65)、5ミリメートルの口径を使用して測定したときのジオプター単位(D)のレンズ設計目標からの第2の等価球面度数偏差(PW2EQD)、mm単位のレンズ設計目標直径からの偏差(DMD)、mm単位のISO18369-3による、測定した矢状高さから計算したときのレンズ設計目標ベースカーブ半径及びレンズ直径からの偏差(BCD)、及びmm単位のレンズ設計目標中心厚からの偏差(CTD)が含まれる。RMS_65、DMD、及びBCDを使用して、光吸収性コンタクトレンズの製造プロセスを開発した。
【0102】
ここで、本発明を以下の実施例を参照しながら説明する。本発明の例示の実施形態をいくつか説明するに先立ち、本発明が以下の説明において明らかにされる構成又は処理工程の詳細に限定されないことが理解されよう。本発明は、他の実施形態が可能であり、かつ様々な手法で実践又は実行できる。
【0103】
以下の略語は、実施例をとおして使用され、以下の意味を有する。
PP:プロピレンのホモポリマーであるポリプロピレン
TT:水添スチレンブタジエンブロックコポリマーであるTuftec(Asahi Kasei Chemicals)
Z:ポリシクロオレフィン熱可塑性ポリマーであるZeonor(Nippon Zeon Co Ltd)
DMA:N,N-ジメチルアクリルアミド(Jarchem)
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(Bimax)
mPDMS:モノ-n-ブチル末端モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(Mn=600~1500ダルトン)(Gelest)
SiMAA:2-プロペン酸、2-メチル-2-ヒドロキシ-3-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル又は3-(3-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)プロポキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(東レ)
Norbloc:2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリリルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(Janssen)
Blue HEMA:1-アミノ-4-[3-(4-(2-メタクリロイルオキシ-エトキシ)-6-クロロトリアジン-2-イルアミノ)-4-スルホフェニルアミノ]アントラキノン-2-スルホン酸(米国特許第5,944,853号に記載)
式1:4-[4-[3,13-ジヒドロ-6-メトキシ-13,13-ジメチル-3-フェニル-7-(1-ピペリジニル)ベンゾ[3,4]フルオレン[2,1-b]ピラン-3-イル]フェニル]γ-オキソ-,2-[(2-メチル-1-オキソ-2-プロペン-1-イル)オキシ]エチルエステル1-ピペラジブタン酸。
PVP:ポリ(N-ビニルピロリドン)K90(ISP Ashland)
Irgacure 1870:ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとのブレンド(BASF又はCiba Specialty Chemicals)
D3O:3,7-ジメチル-3-オクタノール(Vigon)
LED:発光ダイオード
パッキング又は充填溶液レシピ:18.52グラム(300ミルモル)のホウ酸、3.7グラム(9.7ミリモル)のホウ酸ナトリウム十水和物、及び28グラム(197ミリモル)の硫酸ナトリウムを、2リットルのメスフラスコを満たすのに十分な脱イオン水に溶解させた。
【0104】
(実施例1~36)
コンタクトレンズは、トンネルの上部と底部から照射が発生し得る2ゾーン硬化トンネルで構成されるパイロットライン上に準備された(
図2を参照)。8つの成形型アセンブリを収容するパレットは、トンネルを下って移動する。第1のゾーンは、成形型アセンブリを支持するパレット上で測定したときに約1.5mW/cm
2の強度を有する435nmのLEDランプを使用した。第2のゾーンは、同じランプを使用したが、成形型アセンブリを支持するパレット上で測定したときに、約5から約10mW/cm
2の強度であった。温度は、両方のゾーンにおいて65℃で一定に保たれた。大気もまた、窒素を使用して両方のゾーンにおいて一定に保たれた。低強度の第1のゾーンで費やされた総硬化時間の割合は、総硬化時間の62.5%に固定された。強度比(I
t/I
b)は、2ゾーン硬化トンネルにおいて変化し、ここでは、I
tは、パレット上で測定したときの成形型アセンブリの上面又はベースカーブ側の光強度として定義され、I
bは、パレット上で測定したときの成形型アセンブリの下面又はフロントカーブ側の光強度として定義される。I
tとI
bが等しい強度である場合、強度比は1に等しくなる(1)。I
tがI
bよりも高い場合、強度比は1を超える(>1)。I
tがI
bよりも低い場合、強度比は1未満である(<1)。1を超える強度比は、ベースカーブでの放射エネルギーがフロントカーブでの放射エネルギーよりも大きい実験条件を表す。所与の強度比に関して、第1のゾーンにおける平均強度(0.5
*I
t+0.5
*I
b)は、約1.5mW/cm
2で一定に保たれた。所与の強度比に関して、第2のゾーンにおける平均のより高い強度は、約5から約10mW/cm
2の間で変化した。
【0105】
使用した硬化光源は、Lumos Solutions Ltdによって製造された、強度が調整可能で発光波長が固定されたLEDパネルであった。各パネルの波長仕様は、ターゲット波長±1nmに等しくなった。各実験設定に関して、パネルの光強度は、XRD340Aセンサを装備したNIST追跡可能放射計モデルILT2400を使用して設定され、そのどちらもInternational Light Technologies Inc.から購入され、較正された。実験のセットアップ中、放射計センサを、上向きの測定(上面強度)の場合は、レンズ型の上部の高さに配置し、下向きの測定(底面強度)の場合は、レンズ型の下部の高さに配置するホルダを使用して、放射計センサが位置決めされた。
【0106】
反応性モノマー混合物(ロット1及び2)は、表1に記載されている成分の混合物と希釈剤(D3O)を組み合わせて調製された。反応性成分と非反応性成分の混合物は、最終反応性モノマー混合物の77重量パーセントを表し、希釈剤D3Oは、最終反応性モノマー混合物の23重量パーセントを表した。最終的な反応性モノマーは、圧力下で3ミクロンの濾紙を通して濾過され、次いで真空下で(約40mmHg)脱気された。約100マイクロリットルのこれらの反応性モノマー混合物がパレットのフロントカーブ成形型に分配された。続いて、ベースカーブ成形型をフロントカーブ成形型の上に置き、機械的に固定した。フロントカーブ成形型は、射出成形によって作製され、90:10(w/w)Zeonor及びTuftecブレンドで構成された。ベースカーブ成形型もまた射出成形され、90:10(w/w)Zeonor及びTuftecブレンドで構成された。成形型は、典型的には射出成形され、ほぼ即座に使用される。成形型はまた、射出成形され、保管され、使用前に少なくとも12時間、酸素ガスの固定量が少ない窒素ガス環境で、平衡化されてもよい。以下の実施例では、使用される成形型は、硬化条件のいずれに対しても較正されておらず、マイナス12ジオプターの球面コンタクトレンズを形成するように設計された。実施例1-36の硬化条件を表2に列挙する。
【0107】
硬化したレンズは、ほとんどのレンズがフロントカーブ成形型に付着した状態で機械的に型から取り出され、レンズをプロピレングリコールに約2~4時間沈めた後、脱イオン水で2回、合計で少なくとも90分間洗浄することによって離型され、ホウ酸塩緩衝充填溶液で平衡化する。当業者は、正確なレンズ離型プロセスは、レンズの配合、成形型の材料、及び離型溶媒/溶液に応じて変化し得ることを認識している。レンズ離型プロセスの目的は、全てのレンズを欠陥なく離型すること、及び希釈剤で膨潤したネットワークから、充填溶液で膨潤したヒドロゲルに移行させることである。印刷されたレンズをバイアルに移し、続いて、122℃で18分間加圧処理することによって殺菌した。滅菌後、コンタクトレンズを光学的特性評価の前に少なくとも14日間平衡化させた。
【0108】
各実施例について、RMS_65、DMD、及びBCDを測定した。RMS_65データが
図3に示されている。DMDデータを
図4に示し、BCDデータを
図5に示す。RMS_65、DMD、及びBCDの手段を表3に列挙する。
【0109】
図3に示すように、強度比の増大に伴うRMS_65の下降傾向は、レンズの光学品質が改善されたことを示した。
図4~
図5に示されるように、総硬化時間変動に対するDMD及びBCDの感度は、1又は1未満の強度比と比較して、強度比が1より大きい場合に著しく低下し、それにより、より堅牢な処理ウィンドウが可能になった。パレットの設計により、成形型アセンブリに到達する下部LEDランプからの光の量がすでに減少しているため、これらの結果は予想外であった。1を超える強度比を使用すると、成形型アセンブリに適用されるこのような光のグラデーションは更に増加する。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
(実施例37~72)
コンタクトレンズは、(1)低強度の第1のゾーンで費やされた総硬化時間の割合が総硬化時間の50%に固定され、(2)ゾーン1及びゾーン2における強度を表4に示すように変化させ、(3)滅菌後、コンタクトレンズを光学特性評価の前に少なくとも14日間平衡化させたこと以外は、表1に列挙したものと同じ製剤の別のバッチを使用し、実施例1-36で説明したのと同じ実験プロトコルに従って作製された。光学的特性評価、すなわち波面測定及びRMS_65平均の計算は、実験条件当たり15枚のレンズのサンプルサイズに基づくものであった。
【0114】
使用した硬化光源は、Lumos Solutions Ltdによって製造された、強度が調整可能で発光波長が固定されたLEDパネルであった。各パネルの波長仕様は、ターゲット波長±1nmに等しくなった。各実験設定に関して、パネルの光強度は、XRD340Aセンサを装備したNIST追跡可能放射計モデルILT2400を使用して設定され、そのどちらもInternational Light Technologies Inc.から購入され、較正された。実験のセットアップ中、放射計センサを、上向きの測定(上面強度)の場合は、レンズ型の上部の高さに配置し、下向きの測定(底面強度)の場合は、レンズ型の下部の高さに配置するホルダを使用して、放射計センサが位置決めされた。
【0115】
表4及び
図6に示すように、強度比の増大に伴うRMS_65の下降傾向は、レンズの光学品質が改善されたことを示した。
【0116】
【0117】
【0118】
(実施例73~96)
コンタクトレンズは、(1)低強度の第1のゾーンで費やされた総硬化時間の割合が総硬化時間の50%に固定され、(2)上部及び下部強度は、表5に示すように、2つの強度ゾーンのそれぞれの中で等しく(It/Ib=1)、及び(3)上部及び下部LEDパネルのピーク発光波長が表5に列挙されるように変えられたこと以外は、表1に列挙したものと同じ製剤の別のバッチを使用し、実施例1-36について記載したのと同じ実験プロトコルに従って作製された。光学的特性評価、すなわち波面測定及びRMS_65平均の計算は、実験条件当たり15枚のレンズのサンプルサイズに基づくものであった。
【0119】
波長比(λt/λb)は、2ゾーン硬化トンネルにわたって変化し、ここでは、λtは、成形型アセンブリの上側LED光パネル又はベースカーブ側のピーク発光波長として定義され、λbは、成形型アセンブリの底面LED光パネル又はフロントカーブ面のピーク発光波長として定義される。λtとλbとが等しい場合、波長比は1に等しい(1)。λtがλbより長い場合、波長比は1を超える(>1)。λtがλbよりも短い場合、波長比は1未満である(<1)。波長比が1未満であることは、ベースカーブにおける放射エネルギーがフロントカーブにおける放射エネルギーよりも大きい実験条件を表す。
【0120】
使用した硬化光源は、Lumos Solutions Ltdによって製造された、強度が調整可能で発光波長が固定されたLEDパネルであった。各パネルの波長仕様は、ターゲット波長±1nmに等しくなった。各実験設定に関して、パネルの光強度は、XRD340Aセンサを装備したNIST追跡可能放射計モデルILT2400を使用して設定され、そのどちらもInternational Light Technologies Inc.から購入され、較正された。実験のセットアップ中、放射計センサを、上向きの測定(上面強度)の場合は、レンズ型の上部の高さに配置し、下向きの測定(底面強度)の場合は、レンズ型の下部の高さに配置するホルダを使用して、放射計センサが位置決めされた。
【0121】
表6及び
図7に示すように、波長比が1未満である場合、RMS_65平均値は、波長比が1より大きい場合のRMS_65平均値よりも実質的に小さくなり、レンズの光学品質が改善されたことを示した。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
〔実施の態様〕
(1) 光吸収性コンタクトレンズを製造するための方法であって、
(a)ベースカーブと、フロントカーブで構成される成形型アセンブリを提供することであって、前記ベースカーブと前記フロントカーブは、それらの間に空洞を画定し、これを包囲し、前記空洞は反応性混合物を収容しており、前記反応性混合物は、少なくとも1つの重合性モノマーと、活性化波長で吸収する光開始剤と、前記活性化波長で吸収を表示する光吸収性化合物と、を含む、ことと、
(b)前記反応性混合物を、前記活性化波長を含む放射線に曝露することによって、前記反応性混合物を硬化させて前記光吸収性コンタクトレンズを形成することであって、前記放射線が、前記成形型アセンブリの前記ベースカーブ及び前記フロントカーブの両方に向けられ、かつ前記ベースカーブにおける前記放射線の放射エネルギーが、前記フロントカーブにおける前記放射線の放射エネルギーよりも大きい、ことと、を含む、方法。
(2) 前記放射エネルギーが、前記成形型アセンブリの前記ベースカーブに近接する第1の光源と、前記成形型アセンブリの前記フロントカーブに近接する第2の光源とによって提供される、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記第1の光源が発光ダイオードであり、前記第2の光源が発光ダイオードである、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記光吸収性化合物が静的光吸収性化合物である、実施態様1から3のいずれかに記載の方法。
(5) 前記光吸収性化合物が、高エネルギー可視光吸収体である、実施態様1から4のいずれかに記載の方法。
【0126】
(6) 前記光吸収性化合物がフォトクロミック化合物である、実施態様1から3のいずれかに記載の方法。
(7) 前記成形型アセンブリの前記ベースカーブ及び前記フロントカーブが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、水素化スチレンブタジエンブロックコポリマー、環状オレフィンポリマー、及びそれらの組み合わせから構成される、実施態様1から6のいずれかに記載の方法。
(8) 前記放射エネルギーが、前記放射線の強度、前記放射線の波長、又はこれらの組み合わせによって制御される、実施態様1から7のいずれかに記載の方法。
(9) 前記放射エネルギーが、前記放射線の強度によって制御される、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記ベースカーブにおける前記強度が、前記フロントカーブにおける前記強度よりも大きい、実施態様9に記載の方法。
【0127】
(11) 前記ベースカーブにおける前記強度が、前記フロントカーブにおける前記強度より350%未満大きい、実施態様9から10のいずれかに記載の方法。
(12) 前記放射エネルギーが、前記放射線の波長によって制御される、実施態様8に記載の方法。
(13) 前記ベースカーブにおける前記波長が、前記フロントカーブにおける前記波長よりも短い、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記ベースカーブにおける前記波長が、前記フロントカーブにおける前記波長より少なくとも約10ナノメートル短い、実施態様12から13のいずれかに記載の方法。
(15) 実施態様1から14のいずれかに記載の方法により調製された光吸収性コンタクトレンズ。
【0128】
(16) 前記レンズは、前記ベースカーブ及び前記フロントカーブにおいて等しい放射エネルギーの条件下で作製された、他の点では全く同じレンズと比較して低減された、6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面度数及び円柱度数並び除去されたコマ収差を有するレンズ設計目標からの二乗平均平方根光路波面偏差を有する、実施態様1から14のいずれかに記載の方法、又は実施態様15に記載の光吸収性コンタクトレンズ。
(17) 6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面度数及び円柱度数並びに除去されたコマ収差を有するレンズ設計目標からの前記二乗平均平方根光路波面偏差が、前記ベースカーブ及び前記フロントカーブにおいて等しい放射エネルギーの条件下で作製された、他の点では全く同じレンズと比較して少なくとも3%低減されている、実施態様16に記載の方法又はコンタクトレンズ。
(18) 6.5ミリメートル口径を使用して測定したときの球面度数及び円柱度数並びに除去されたコマ収差を有するレンズ設計目標からの前記二乗平均平方根光路波面偏差が、前記ベースカーブ及び前記フロントカーブにおいて等しい放射エネルギーの条件下で作製された、他の点では全く同じレンズと比較して少なくとも0.0020ミクロン低減されている、実施態様16に記載の方法又はコンタクトレンズ。
【国際調査報告】