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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(54)【発明の名称】ダイヤフラムベローズ
(51)【国際特許分類】
   F16J 3/04 20060101AFI20220427BHJP
【FI】
F16J3/04 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547455
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(85)【翻訳文提出日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 EP2020052729
(87)【国際公開番号】W WO2020192987
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】102019107630.7
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593030945
【氏名又は名称】バット ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ハスラー
【テーマコード(参考)】
3J045
【Fターム(参考)】
3J045AA04
3J045AA14
3J045BA04
3J045CB09
3J045CB14
3J045DA05
3J045DA10
3J045EA02
3J045EA10
(57)【要約】
ダイヤフラムベローズは、その内部の貫通開口部を貫通するロッド(6)の外側面にしたがって案内するための、複数のダイヤフラム(2)および少なくとも1つの案内部材(8)を備えている。案内部材(8)は、隣接するダイヤフラム(2)の縁部の間にあって、それらに溶接されている保持フィン(9)と、長手方向の中心軸線(7)を取り囲む案内スリーブ(10)と、を有し、さらにロッド(6)の外側面のダイヤフラムベローズを案内するための案内面(12)を有している。案内スリーブ(10)の肉厚は、取付フィンの肉厚の3倍以上である。案内スリーブ(10)には、当接面(11)を有する段差がある。保持フィン(9)は、その縁部に隣接するエリアにおいて当接面(11)に対して静止し、当接面(11)から李軟しないように形状が適合した状態で固定されている。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周縁部(2a)および内周縁部(2b)を有する複数のダイヤフラム(2)を備えているダイヤフラムベローズであって、
前記ダイヤフラムベローズの中心軸線(7)の方向について隣接するダイヤフラム(2)が、前記内周縁部(2b)のエリアおよび前記外周縁部(2a)のエリアにおいて相互に溶接され、
前記ダイヤフラムベローズが、前記ダイヤフラムベローズの内部の貫通開口部を貫通するロッド(6)の外側面を案内するための少なくとも1つの案内部材(8)を備え、
前記ロッド(6)が、
前記ダイヤフラムベローズにおいて隣接するダイヤフラム(2)の間にあり、かつ、当該隣接するダイヤフラム(2)に対して溶接され、かつ、当該隣接するダイヤフラム(2)の前記内周縁部(2b)よりも、中央開口部を取り囲んでいる内周縁部(9b)が前記ダイヤフラムベローズの前記中心軸線(7)に対して近くに配置されている保持フィン(9)と、
前記ロッド(6)の外側面に沿って前記ダイヤフラムベローズを案内する案内面(12)を有する、前記中心軸線(7)を取り囲む案内スリーブ(10)と、備え、
前記案内スリーブ(10)が、前記保持フィン(9)の中央開口部(9c)を貫通し、かつ、前記保持フィン(9)に連結され、
前記案内スリーブ(10)の肉厚が、前記保持フィン(9)の肉厚の3倍以上であり、前記案内スリーブ(10)が、外径の断続的変化によって形成された、当接面(11)を形成する段差部を有し、前記保持フィン(9)は、前記内周縁部(9b)に対して連結されているエリアにおいて前記当接面(11)に対して当接し、前記当接面(11)から離間しないように固定されている
ダイヤフラムベローズ。
【請求項2】
外周縁部(2a)および内周縁部(2b)を有する複数のダイヤフラム(2)を備えているダイヤフラムベローズであって、
前記ダイヤフラムベローズの中心軸線(7)の方向について隣接するダイヤフラム(2)が、前記内周縁部(2b)のエリアおよび前記外周縁部(2a)のエリアにおいて相互に溶接され、
前記ダイヤフラムベローズが、前記ダイヤフラムベローズを取り囲む筒状部材(14)の内側面を案内するための少なくとも1つの案内部材(8)を備え、
前記筒状部材(14)が、
前記ダイヤフラムベローズにおいて隣接するダイヤフラム(2)の間にあり、かつ、当該隣接するダイヤフラム(2)に対して溶接され、かつ、当該隣接するダイヤフラム(2)の前記外周縁部(2a)よりも、外周縁部(9a)が前記ダイヤフラムベローズの前記中心軸線(7)に対して遠くに配置されている保持フィン(9)と、
前記筒状部材(14)の外表面に沿って前記ダイヤフラムベローズを案内する案内面(12)を有する、前記中心軸線(7)を取り囲む案内スリーブ(10)と、備え、
前記案内スリーブ(10)が、前記保持フィン(9)の前記外周縁部(9a)を取り囲み、かつ、前記保持フィン(9)に連結され、
前記案内スリーブ(10)の肉厚が、前記保持フィン(9)の肉厚の3倍以上であり、前記案内スリーブ(10)が、内径の断続的変化によって形成された、当接面(11)を形成する段差部を有し、前記保持フィン(9)は、前記外周縁部(9a)に対して連結されているエリアにおいて前記当接面(11)に対して当接し、前記当接面(11)から離間しないように固定されている
ダイヤフラムベローズ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のダイヤフラムベローズにおいて、
前記段差部が前記案内スリーブ(10)の端部エリアに存在し、かつ、前記保持フィン(9)を形状が適合した状態で保持するため、前記案内スリーブ(10)の比較的肉薄に形成された端部が屈曲または湾曲している
ダイヤフラムベローズ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のダイヤフラムベローズにおいて、
固定スリーブ(13)が、前記保持フィン(9)を形状が適合した状態で支持するための、前記案内スリーブ(10)の肉薄に形成された部分に押し付けられ、かつ、前記案内スリーブ(10)の当該部分に固定されることにより前記保持フィン(9)が前記段差部の前記当接面(11)と前記固定スリーブ(13)との間に配置されている
ダイヤフラムベローズ。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか1項に記載のダイヤフラムベローズにおいて、
前記案内スリーブ(10)の長さが、前記案内スリーブ(10)の前記案内面(12)の直径よりも20%以上大きい
ダイヤフラムベローズ。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか1項に記載のダイヤフラムベローズにおいて、
前記保持フィン(9)が前記案内スリーブ(10)に連結されているエリアと、前記保持フィン(9)が隣接するダイヤフラム(2)に連結されているエリアとの間に存在する径方向エリアにおいて、前記保持フィン(9)が少なくとも1つの開口部(9d)を備えている
ダイヤフラムベローズ。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか1項に記載のダイヤフラムベローズにおいて、
前記保持フィン(9)の肉厚が、中間に前記保持フィン(9)が配置されている前記複数のダイヤフラム(2)の肉厚の5倍以下である
ダイヤフラムベローズ。
【請求項8】
請求項7に記載のダイヤフラムベローズにおいて、
前記保持フィン(9)の肉厚が、中間に前記保持フィン(9)が配置されている前記複数のダイヤフラム(2)の肉厚の3倍以下である
ダイヤフラムベローズ。
【請求項9】
請求項1~8のうちいずれか1項に記載のダイヤフラムベローズにおいて、
前記案内スリーブ(10)の肉厚が、前記案内スリーブ(10)に連結されている前記保持フィン(9)の肉厚の5倍以上である
ダイヤフラムベローズ。
【請求項10】
請求項1~9のうちいずれか1項に記載のダイヤフラムベローズにおいて、
前記段差部の前記当接面(11)が前記ダイヤフラムベローズの前記中心軸線(7)に対して垂直である
ダイヤフラムベローズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周縁部および内周縁部を有する複数のダイヤフラムを備えているダイヤフラムベローズであって、
前記ダイヤフラムベローズの中心軸線の方向について隣接するダイヤフラムが、前記内周縁部のエリアおよび前記外周縁部のエリアにおいて相互に溶接され、
前記ダイヤフラムベローズが、前記ダイヤフラムベローズの内部の貫通開口部を貫通するロッドの外側面を案内するための少なくとも1つの案内部材を備え、
前記ロッドが、
前記ダイヤフラムベローズにおいて隣接するダイヤフラムの間にあり、かつ、当該隣接するダイヤフラムに対して溶接され、かつ、当該隣接するダイヤフラムの前記内周縁部よりも、中央開口部を取り囲んでいる内周縁部が前記ダイヤフラムベローズの前記中心軸線に対して近くに配置されている保持フィンと、
前記ロッドの外側面に沿って前記ダイヤフラムベローズを案内する案内面を有する、前記中心軸線を取り囲む案内スリーブと、備え、
前記案内スリーブが、前記保持フィンの中央開口部を貫通し、かつ、前記保持フィンに連結されているダイヤフラムベローズに関する。
【0002】
さらに、本発明は、外周縁部および内周縁部を有する複数のダイヤフラムを備えているダイヤフラムベローズであって、
前記ダイヤフラムベローズの中心軸線の方向について隣接するダイヤフラムが、前記内周縁部のエリアおよび前記外周縁部のエリアにおいて相互に溶接され、
前記ダイヤフラムベローズが、前記ダイヤフラムベローズを取り囲む筒状部材の内側面を案内するための少なくとも1つの案内部材を備え、
前記筒状部材が、
前記ダイヤフラムベローズにおいて隣接するダイヤフラムの間にあり、かつ、当該隣接するダイヤフラムに対して溶接され、かつ、当該隣接するダイヤフラムの前記外周縁部よりも、外周縁部が前記ダイヤフラムベローズの前記中心軸線に対して遠くに配置されている保持フィンと、
前記筒状部材の外表面に沿って前記ダイヤフラムベローズを案内する案内面を有する、前記中心軸線を取り囲む案内スリーブと、備え、
前記案内スリーブが、前記保持フィンの前記外周縁部を取り囲み、かつ、前記保持フィンに連結されているダイヤフラムベローズに関する。
【背景技術】
【0003】
ダイヤフラムベローズは通常、設備における異なる圧力のエリアを隔離するための柔軟性がある封止要素として使用される。例えば、ダイヤフラムベローズは真空バルブの真空経路に使用され、ダイヤフラムベローズはバルブのドライブロッドを包摂し、バルブの開閉時に真空領域を大気領域から封止する。ダイヤフラムベローズは、真空に可動性を導入するための真空経路への用途に加えて、例えば、熱膨張またはアセンブリの公差を吸収するための補償機構として使用される。別の用途としては、例えば、真空システムにおける、真空ポンプと測定装置との間の振動デカップリングがあげられる。
【0004】
ダイヤフラムベローズは、外周縁部および内周縁部において交互に溶接された複数のダイヤフラムによって構成されている。製造過程において、対をなすダイヤフラムはまず内周縁部において相互に溶接され、続いて当該対をなすダイヤフラムが整列されて外周縁部において相互に溶接される。このようなダイヤフラムベローズが使用されることにより、軸方向および/または横方向および/または傾斜方向へのストロークが可能になる。
【0005】
ダイヤフラムベローズに加えて、筒状部材がベローズのように変形する波形ベローズが知られており、それによって可動性が実現される(例えば、特許文献1および2参照)。
【0006】
ダイヤフラムベローズが使用される場合、通常、ダイヤフラムベローズの内部空間と外部空間との圧力差があり、ダイヤフラムベローズの内部空間の圧力は、ダイヤフラムベローズの外部空間の圧力よりも低い場合および高い場合がある。このような圧力差(特にダイヤフラムベローズの内部空間の圧力がダイヤフラムベローズの外部空間の圧力よりも高い場合)および/または重力のために、ダイヤフラムベローズが十分に長い場合、ダイヤフラムベローズは多少は座屈する可能性がある。例えば、これは、ダイヤフラムベローズが、ダイヤフラムの内周縁部の溶接エリアにおいてダイヤフラムベローズの内部の貫通開口部を貫通して延在するロッド(例えば、真空バルブの駆動ロッド)に対して当接することが可能になる。ロッドが変位すると、ダイヤフラムの内周縁部がロッドに擦れ、ダイヤフラムの内周縁部の間の溶接箇所が摩耗し、時間の経過とともにこれらの溶接箇所の強度が低下し、漏れが発生する可能性がある。
【0007】
このため、ダイヤフラムベローズの長手方向の延在部分の中央領域においてダイヤフラムベローズを案内するための案内部材が既に使用されている。ダイヤフラムベローズの隣接するダイヤフラムの間の空間に突出し、ダイヤフラムベローズの軸線方向の変位に対して案内部材を形状が適合した状態で固定する、外側に突出する突起を有する環状案内部材(=スライドリング)が提案されている(例えば、特許文献3参照)。それぞれのスライドリングが保持されている2つのダイヤフラムの内周縁部は、スライドリングの外套面にある。ダイヤフラムベローズの収縮状態では、隣接するダイヤフラムの内周縁部もスライディングリングの外套面に配置されている。このようなスライドリングの欠点は、ダイヤフラムベローズの軸線方向について可能なストロークが低減されることである。さらに、そのようなスライドリングはダイヤフラムと比較して質量が大きく、その結果、ダイヤフラムに動的な負荷が増大する。垂直方向に取り付けられた状態のスライドリングの質量により、それぞれのスライドリングの上下でダイヤフラムベローズが異なる形態で伸長する。これは、複数のスライドリングが使用された場合、より顕著となり、ダイヤフラムベローズにかかる負荷も大きくなる。
【0008】
ダイヤフラムベローズの2つのセクションの間に中実のサポートリングが溶接されているダイヤフラムベローズが提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、上記と同様の問題が生じる。
【0009】
シザー型の案内部材を備えているベローズが提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかし、構造が複雑である。
【0010】
ベローズの膨張を制限するための機構を備えているベローズが提案されている(例えば、特許文献6参照)。環状プレートが設けられ、その外周縁部は、ベローズにおいて隣接するダイヤフラムの間に存在し、それらの径方向について内周縁部のエリアで、スリーブ形状の要素に連結され、その端部に停止突部が配置されている。
【0011】
薬剤を輸送するために埋め込み型輸液ポンプでダイヤフラムベローズを使用することも知られている。薬剤はダイヤフラムベローズの内側にあり、下側がベースにより閉塞され、上側が輸液ポンプのベースプレートにより閉塞されている。ベースに作用する圧力によってダイヤフラムベローズが収縮し、薬剤が投与される。ダイヤフラムベローズの残容量、ひいては薬剤の残量を決定するために、ダイヤフラムベローズの底にコイルを含む電子共鳴回路が使用されている。ダイヤフラムベローズの容積を決定するための共振回路の感度を高めるために、薬物が通過するための少なくとも1つの開口部を備えているダイヤフラムベローズの付加的な中間プレートを用いることが提案されている(例えば、特許文献7参照)。中央連結エリアにおいて相互に連結され、かつ、中間プレートが溶接されている十字型の保持アームを有する保持リングが、中間プレートを固定するために使用されている。保持リングはその外周縁部のエリアにおいて、2つのダイヤフラムの外周縁部の間にあって当該2つのダイヤフラムに溶接されている。このような装置では、ダイヤフラムベローズが短いため、ダイヤフラムベローズが横に座屈するのを防ぐための案内部材は必要ない。
【0012】
一対の外側ダイヤフラムおよび一対の内側ダイヤフラムを備えた二重壁ダイヤフラムベローズが提案されている(例えば、特許文献8参照)。これにより、閉じられた気体空間が外側ダイヤフラムと内側ダイヤフラムとの間に形成される。
【0013】
前述のタイプの他のダイヤフラムベローズが提案されている(例えば、特許文献9参照)。ダイヤフラムベローズには、ロッドを案内するための板金製の案内部材が設けられ、それぞれに保持フィンと当該保持フィンに連結された案内スリーブとが設けられている。保持フィンおよび案内スリーブは肉薄であり、一実施形態によれば相互に溶接されている。他の実施形態では、案内部材は一体的に形成され、断面が略L字形状である。同様の方法で、案内のための案内部材を備えているダイヤフラムベローズが、ダイヤフラムベローズを取り囲む筒状部材の内側面に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許公報 US4650160A
【特許文献2】英国特許公報 GB2062132A
【特許文献3】米国特許公開公報 US2002/0175480A1
【特許文献4】中国実用新案登録公報 CN203363518U
【特許文献5】特開2013-221596号公報
【特許文献6】米国特許公報 US4183289A
【特許文献7】欧州特許公報 EP2177792A1
【特許文献8】米国特許公報 US2657075A
【特許文献9】欧州特許公報 EP2982888A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、前述のタイプの有利なダイヤフラムベローズを提供することであり、その少なくとも1つの案内部材が安定的または堅固に設計され、ダイヤフラムベローズを貫通するロッドまたは周囲の筒状部材に関して適当な案内を可能にし、製造が簡単なダイヤフラムベローズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、これは、請求項1または2に記載の特徴を備えているダイヤフラムベローズによって達成される。
【0017】
本発明によれば、少なくとも1つの案内部材の案内スリーブの肉厚が、案内部材の保持フィンの肉厚の3倍以上である。ダイヤフラムベローズを貫通するロッドにしたがってダイヤフラムベローズを案内するために少なくとも1つの案内部材が使用される本発明の第1態様によれば、案内スリーブが、その外径の断続的変化によって構成されている段差部を有し、特に長手方向の中心軸線に対して垂直な当接面を有している。保持フィンは、その内周縁部に隣接するエリアで当接面に対して当接し、当該当接面から離間しないように形状が適合した状態で固定されている。ダイヤフラムベローズを取り囲む筒状部材の内側面にしたがってダイヤフラムベローズを案内するために少なくとも1つの案内部材が使用される本発明の第2態様によれば、少なくとも1つの案内部材の案内スリーブは、その内径の断続的変化によって構成されている段差部を有し、特に、長手方向の中心軸線に対して垂直に延在している当接面を有している。案内部材の保持フィンは、その外周縁部に隣接するエリアにおいて当接面に対して当接し、当接面から離間しないように形状が適合した状態で固定されている。
【0018】
本発明によれば、少なくとも1つの案内部材は、案内スリーブのエリアにおいて堅固な構成であり、案内スリーブと保持フィンとが、溶接を必要とせずに適当に固定可能になる。これにより、ダイヤフラムベローズを貫通するロッドまたはダイヤフラムベローズを取り囲む筒状部材の内側面にしたがった正確な案内が実現される。
【0019】
段差部の当接面に対して保持フィンが、その形状が適合した状態で固定される構成によれば、段差部が案内スリーブの端部エリアに存在し、かつ、案内スリーブにおいて保持フィンを保持するための比較的小径の端部エリアが屈曲または湾曲している。ダイヤフラムベローズを貫通するロッドによりダイヤフラムベローズが案内される第1態様において、案内スリーブの端部は外側に(長手方向の中心軸線から離れる方向に)屈曲または湾曲している。ダイヤフラムベローズを取り囲む筒状部材の内側面によりダイヤフラムベローズが案内される第2態様において、案内スリーブの端部は、内側に(長手方向の中心軸線に向かう方向に)屈曲または湾曲している。
【0020】
段差部の当接面に対して保持フィンをその形状を適合させた状態で確実に固定するための構成によれば、固定スリーブが、案内スリーブの比較的肉薄の部分に押し付けられ、案内スリーブの当該部分に対して固定される。したがって、保持フィンは、段差部と固定スリーブとの間に配置されている。ダイヤフラムベローズを貫通するロッドによりダイヤフラムベローズが案内される第1態様において、固定スリーブが案内スリーブの外側面に当接する。ダイヤフラムベローズを取り囲む筒状部材の内側面によりダイヤフラムベローズが案内される第2態様において、固定スリーブが案内スリーブの内側に挿入される。
【0021】
ダイヤフラムベローズの中心軸線の方向について測定された案内スリーブの長さは、好ましくは、案内スリーブの案内面の径よりも20%以上大きい。ダイヤフラムベローズを貫通するロッドの外側面によりダイヤフラムベローズが案内される第1態様において、案内スリーブの内側面が案内面である。ダイヤフラムベローズを取り囲む筒状部材の内側面によりダイヤフラムベローズが案内される第2態様において、案内スリーブの外側面が案内面である。当該構成により、安定した案内が実現され、案内スリーブの詰まりのリスクが軽減される。
【0022】
保持フィンは、保持フィンと案内スリーブとの間の連結エリアと、保持フィンと2つの隣接するダイヤフラムとの間の連結のエリアとの間にある径方向のエリアに少なくとも1つの開口部を有していることが好ましい。ダイヤフラムベローズを貫通するロッドによりダイヤフラムベローズが案内される第1態様において、少なくとも1つの開口部は、案内スリーブの径方向外側に配置されている。ダイヤフラムベローズを取り囲む筒状部材の内側面によりダイヤフラムベローズが案内される第2態様において、当該開口部は案内スリーブの径方向内側に配置されている。少なくとも1つの開口部を通して、ダイヤフラムベローズにおいて案内部材によって隔離された部分の間で効率的な換気が実現される。
【0023】
本発明のさらなる利点および詳細は、添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】最も収縮した状態における、連結部材が取り付けられ、かつ、ロッドが貫通している、本発明の第1実施形態のダイヤフラムベローズの側面図。
図2図1のA-A線に沿った断面図。
図3図2のB部分の拡大図。
図4】最も伸長した状態における図1に対応するダイヤフラムベローズの側面図。
図5図4のC-C線に沿った断面図。
図6図5のD部分の拡大図。
図7図5のE-E線に沿った断面図。
図8】ダイヤフラムベローズの案内部材を一の視線方向から臨んだ際の斜視図。
図9】ダイヤフラムベローズの案内部材の他の視線方向から臨んだ際の斜視図。
図10】案内部材の正面図。
図11】案内部材の側面図。
図12図11のF-F線に沿った断面図。
図13図12のG部分の拡大図。
図14図8に対応する他の実施形態のダイヤフラムベローズの案内部材の斜視図。
図15図9に対応する他の実施形態のダイヤフラムベローズの案内部材の斜視図。
図16図10に対応する他の実施形態のダイヤフラムベローズの案内部材の正面図。
図17図11に対応する他の実施形態のダイヤフラムベローズの案内部材の側面図。
図18図17のH-H線に沿った断面図。
図19図18のI部分の拡大図。
図20】本発明の第2実施形態における図1に対応する側面図。
図21図20のJ-J線に沿った断面図。
図22図21のK部分の拡大図。
図23】最も伸長した状態の図20に対応するダイヤフラムベローズの側面図。
図24図23のL-L線に沿った断面図。
図25図24のM部分の拡大図。
図26図24のN-N線に沿った断面図。
図27】本発明の第2実施形態のダイヤフラムベローズの案内部材の第1斜視図。
図28】本発明の第2実施形態のダイヤフラムベローズの案内部材の第2斜視図。
図29】案内部材の正面図。
図30】案内部材の側面図。
図31図30のO-O線に沿った断面図。
図32図31のP部分の拡大図。
図33】さらに他の実施形態の(図30の断面線O-Oに類似した断面線に沿った)案内部材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係るダイヤフラムベローズの第1実施形態は、図1図13を参照して以下に説明される。図1図7には、端部にあるダイヤフラム2に取り付けられた連結部材3、4と、ダイヤフラムベローズ1の内部の貫通開口部を貫通しているロッド6と、を備えているダイヤフラムベローズ1が示されている。
【0026】
ダイヤフラムベローズ1は、ダイヤフラムディスクまたは環状ダイヤフラムとも呼ばれる複数のダイヤフラム2を備えている。各ダイヤフラム2は、外周縁部2aおよび内周縁部2bを有している。外周縁部2aおよび内周縁部2bは円形状である。
【0027】
よく知られているように、ダイヤフラム2は、外力が作用していない状態で波形状であり、わずかに円錐形状に形成されている。すべてのダイヤフラム2の外周縁部2aは、内周縁部2bと同径である。特に、ダイヤフラム2は、回転対称性を有するように形成されている。ダイヤフラム2は、好ましくは0.07mm~0.3mmの範囲の厚さを有する板金、例えば鋼板からなる。
【0028】
ダイヤフラムベローズ1の中心軸線7の方向に連続する複数のダイヤフラム2は、それぞれの外周縁部2aおよび内周縁部2bで相互に溶接され、その結果としてアコーディオンのように構成されている。
【0029】
さらに、ダイヤフラムベローズ1は案内部材8を備え、第1実施形態では2つの案内部材8を備えている。ダイヤフラムベローズ1の長さに応じて、より多数のまたは少数の案内部材8が設けられていてもよい。
【0030】
それぞれの案内部材8は、保持フィン9および案内スリーブ10を備えている。保持フィン9は、ダイヤフラムベローズ1において隣接する(すなわち中心軸線7の方向に連続する)ダイヤフラム2の外周縁部2aのエリアの間におけるその外周縁部9aのエリアに存在している。当該隣接するダイヤフラム2の外周縁部2aおよびこれに隣接している保持フィン9の外周縁部9aは相互に溶接されている。当該溶接は、ダイヤフラムベローズ1における他の隣接するダイヤフラム2のそれぞれの外周縁部2aにおける溶接と同様の方法で実施されてもよい。
【0031】
保持フィン9は、その外周縁部9aから始まり、案内スリーブ10に向かう方向についてダイヤフラムベローズ1の中心軸線7に対して徐々に接近し、当該中心軸線7に向かう方向についてダイヤフラムベローズ1のダイヤフラム2の内周縁部2bを越えている。したがって、保持フィン9の内周縁部9bは、ダイヤフラム2の内周縁部2bよりもダイヤフラムベローズ1の中心軸線7に対して近い。
【0032】
保持フィン9の中央開口部9cは、保持フィン9の内周縁部9bに設けられている。
【0033】
保持フィン9の肉厚(板金厚さ)は、保持フィン9が中間に配置されている複数のダイヤフラムの肉厚の5倍以下であり、好ましくは3倍以下である。保持フィン9の肉厚は、ダイヤフラム2の肉厚に対応して調整可能である。
【0034】
保持フィン9の中央開口部9cを貫通する案内スリーブ10は、保持フィン9の内周縁部9bのエリアにおいて保持フィン9に連結されている。
【0035】
案内スリーブ10の肉厚は、保持フィン9の肉厚の3倍以上であり、好ましくは5倍以上である。
【0036】
案内スリーブ10を保持フィン9に連結するために、案内スリーブ10はその外径の段差部によって形成される段差部をその外側に有している。したがって、案内スリーブ10は、段差部の一方側で肉厚である一方、段差部の反対側で肉薄である。段差部は、長手方向の中心軸線7に対して垂直な当接面11を構成する。すなわち、当該当接面11の法線は、長手方向の中心軸線7に対して平行である。
【0037】
段差部は案内スリーブ10の端部エリアに存在する。案内スリーブ10は、その延在方向について90%以上の範囲、好ましくは95%以上の範囲にわたって外径が比較的大きく、ひいては比較的肉厚であり、かつ、その延在方向について残りの範囲にわたって外径が比較的小さく、ひいては比較的肉薄である。保持フィン9は、当接面11に対して当接するまで、案内スリーブ10において肉薄の部分に対して押し付けられる。図13に示されているように、当該肉薄の端部はさらに外側に(中心軸線7から離間する方向に)曲げられている。これにより、保持フィン9は、その内周縁部9bのエリアにおいて当接面11に対して押し付けられ、当接面11から離間するまたは浮き上がらないように形状が適合した状態で固定されている。
【0038】
案内スリーブ10の内側面は、ロッド6の外側面においてダイヤフラムベローズ1を案内するための案内面12を構成する。
【0039】
本実施形態では、ロッド6は、連結部材4に連結されている。例えば、連結部材3は、図示されていないフランジを介して真空チャンバに連結されてもよく、ロッド6および連結部材4を介して、当該連結部材4に連結された部品が真空チャンバの真空エリアにおいて駆動されてもよい。連結部材3は、換気孔3aを有している。
【0040】
案内部材8によって相互に隔てられたダイヤフラムベローズ1のエリアを効率的に換気するために、開口部9dが、案内スリーブ10の径方向外側エリアにおいて保持フィン9に設けられている。内周縁部9bのくぼみまたは中央開口部9cの拡張によって形成されていてもよい。案内スリーブ10と保持フィン9の外周縁部9aとの中間エリアにおいて、保持フィン9を貫通する他の形態の開口部が形成されていてもよい。
【0041】
ダイヤフラムベローズ1は、例えば、2つの真空チャンバを連結するために用いられ、ロッド6は、フランジを介して第2の真空チャンバに連結されている連結部材4の開口部を通過していてもよい。
【0042】
ダイヤフラムベローズ1は、図1図3に示されているように、最も収縮された最収縮状態を有している。ダイヤフラムベローズ1の耐用年数を損なわないために、ダイヤフラムベローズ1はこの最収縮状態を超えて収縮されるべきではない。最収縮状態において、ダイヤフラムベローズ1の連続する案内部材8は、ダイヤフラムベローズ1の中心軸線7の方向に相互に間隔をおいて配置されている(図2参照)。
【0043】
耐用年数を損なわないためにダイヤフラムベローズが過度に伸長されるべきではない。最も伸長された最伸長状態が、図4図6に示されている。
【0044】
本発明に係る案内部材8の他の実施形態が、図14図19に示されている。以下に説明する相違点を除き、ダイヤフラムベローズ1の構成は、図1図13を参照しながら説明した第1実施形態の構成に対応しており、当該他の実施形態の説明は、当該構成に関して適宜援用されうる。
【0045】
少なくとも1つの案内部材8の案内スリーブ10の構成と、案内スリーブ10に対する保持フィン9の固定方式と、が第1実施形態との相違点である。外径の断続的変化または変化態様により構成されている案内スリーブ10の段差部は、当該案内スリーブ10の端部からさらに離れている。肉薄部分の長さは、案内スリーブ10の全長の10%以上であり、好ましくは20%以上である。肉薄部分の長さおよび肉厚部分の長さはほぼ同じである(すなわち、両者の差は、案内スリーブ10の全長の10%以下である)。
【0046】
保持フィン9は、案内スリーブ10の肉薄部位に沿って当接面11に至るまで動かされる。保持フィン9を当接面11から離間しないように固定するために、当該保持フィン9の形状が適合した状態での保持は、固定スリーブ13によって実現される。固定スリーブ13は、案内スリーブ10の肉薄部分が(内周縁部9bのエリアにおいて)保持フィン9に当接するまで動かされる。したがって、保持フィン9は、内周縁部9bに連続するエリアにおいて、案内スリーブ10の当接面11と固定スリーブ13の対向面との間に存在する。
【0047】
固定スリーブ13は、案内スリーブ10に対してクランプ方式で保持され、および/または、特に接着によって、実質的に一体的に案内スリーブ10に対して連結されている。
【0048】
固定スリーブ13の長さは、固定スリーブ13の肉厚の2倍以上であり、好ましくは3倍以上である。固定スリーブ13は、固定リングとも呼ばれる。
【0049】
本発明の第2実施形態が図20図32に示されている。以下に説明する相違点を除き、図1図13を参照しながら説明された第1実施形態の構成に対応しており、当該構成に関しては第1実施形態に関する説明が適宜援用される。
【0050】
本発明の第2実施形態では、ダイヤフラムベローズ1は、当該ダイヤフラムベローズ1を取り囲む筒状部材14の内側面15によって案内される。保持フィン9がその内周縁部9bのエリアにおいて、隣接するダイヤフラム2の内周縁部2bのエリアの間に存在している。相互に当接している、当該隣接するダイヤフラム2の内周縁部2bと保持フィン9の内周縁部9とが相互に溶接されている。
【0051】
保持フィン9は、案内スリーブ10に向かう方向について、その内周縁部9bから始まってダイヤフラムベローズ1の中心軸線7から徐々に離間し、ダイヤフラムベローズ1の中心軸線7から離れる方向について、ダイヤフラムベローズ1のダイヤフラム2の外周縁部2aを越えて延在している。案内スリーブ10は、中心軸線7を取り囲み、かつ、ダイヤフラムベローズ1のダイヤフラム2の外周縁部2aよりも中心軸線7から離れている。保持フィン9の外周縁部9aは案内スリーブ10に対して連結されている。この目的のために、案内スリーブ10は、その内径の断続的変化または変化態様によって構成されている段差部を有しており、当該段差部は、長手方向の中心軸線7に対して垂直な当接面11を構成している。保持フィン9は、その外周縁部9aに連続するエリアで当接面11に対して当接している。図1図13の第1実施形態と同様に、段差部は案内スリーブ10の端部エリアに存在し、案内スリーブ10を形状が適合した状態で保持するために、案内スリーブ10は肉薄部分を有するその端部において第2実施形態では内側に(中心軸線7に向かう方向に)屈曲している。
【0052】
案内スリーブ10の外側面は、筒状部材14の内測面15を案内するための案内面12を構成している。
【0053】
第2実施形態では、保持フィン9は、案内スリーブ10の径方向内側に通気するための開口部9dを有している。開口部9dを形成するため、保持フィン9の外周縁部9aに、開口部9dを構成する凹部が設けられていてもよい。案内スリーブ10と保持フィン9の内周縁部9bとの間のエリアにおいて、保持フィン9を貫通する他の形態の開口部が形成されていてもよい。
【0054】
本発明の第2実施形態においても、少なくとも1つの案内部材8の他の形態において、保持フィン9は、図14図19に示されている実施形態と同様に、当接面11に対して当接した状態で固定スリーブ13によって保持されていてもよい(図33参照)。内径の断続的変化によって構成されている案内スリーブ10の段差部は、案内スリーブ10の端部からさらに離れており、固定スリーブ13の肉薄部分を有する部分は、固定スリーブ13の内側に挿入され、当該部分において位置決めされる。保持フィン9は、ここでも当接面11と固定スリーブ13との間に配置されている(図33参照)。
【符号の説明】
【0055】
1‥ダイヤフラムベローズ、2‥ダイヤフラム、2a‥外周縁部、2b‥内周縁部、3‥連結部材、3a‥換気孔、4‥連結部材、6‥ロッド、7‥中心軸線、8‥案内部材、9‥保持フィン、9a‥外周縁部、9b‥内周縁部、9c‥中央開口部、9d‥開口部、10‥案内スリーブ、11‥当接面、12‥案内面、13‥固定スリーブ、14‥筒状部材、15‥内側面。
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【国際調査報告】