(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(54)【発明の名称】多色の角形の光シートを使用した濁った試料の分光光度測定のためのアセンブリ
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20220427BHJP
【FI】
G01N21/27 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551891
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(85)【翻訳文提出日】2021-08-31
(86)【国際出願番号】 SE2020050229
(87)【国際公開番号】W WO2020180233
(87)【国際公開日】2020-09-10
(32)【優先日】2019-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521389837
【氏名又は名称】スペック-イメージング アー・ベー
【氏名又は名称原語表記】Spec-Imaging AB
【住所又は居所原語表記】Knut Den Stores Gata 13D, 222 21 Lund, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアルト ベルロカル
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム チャセ
(72)【発明者】
【氏名】エリアス クリステンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー ツォウ
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB06
2G059EE12
2G059GG02
2G059HH02
2G059JJ01
2G059JJ11
2G059JJ30
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM14
(57)【要約】
媒体の1つ以上の光学パラメータを測定するためのアセンブリが開示される。前記アセンブリは、光シート生成器、光強度変調器、試料用のホルダ、および光学センサを含む。前記光生成器は、第1の空間的次元において延在する光スペクトルを含む多色光シートを提供するように構成され、前記多色光シートは第2の空間的次元における伝搬経路を有する。前記光シート生成器は、白色光を提供するように構成される光源、前記白色光を第1の空間的次元において広げて光スペクトルを提供するように構成される分散要素、および、その広がった白色光を制限することにより多色光シートを提供するように構成される、第1の空間的次元において延在する光学スリットを含む。前記光強度変調器は、第1の空間的次元における周期的な(または実質的に周期的な)パターンを有する強度変調を、多色光シートに適用することにより、強度変調された多色光シートを提供するように構成される。媒体の試料用のホルダは、強度変調された多色光シートが試料を照射できるように構成される。前記光学センサは、試料を出てくる光の強度を光スペクトルにわたって記録し、1つ以上の光学パラメータを提供するように構成される。媒体の1つ以上の光学パラメータを測定するために前記アセンブリを使用する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の1つ以上の光学パラメータを測定するためのアセンブリであって、
第1の空間的次元(101)において延在する光スペクトルを含む多色光シート(192、292)を提供するように構成される光シート生成器(110、210)であって、前記多色光シートは第2の空間的次元(102)における伝搬経路を有し、前記光シート生成器(110、210)は、白色光を提供するように構成される光源(203)、前記白色光を第1の空間的次元において広げて光スペクトルを提供するように構成される分散要素(204)、およびその広がった白色光を制限することにより多色光シートを提供するように構成される、第1の空間的次元において延在する光学スリット(205)を含む、前記光シート生成器(110、210)、
第1の空間的次元において周期的または実質的に周期的なパターンを有する強度変調を、前記多色光シートに適用することによって強度変調された多色光シート(193、193a)を提供するように構成される光強度変調器(130、330)、
前記強度変調された多色光シートが試料を照射できるように構成される、媒体の試料(140)用のホルダ(145)、および
試料を出てくる光(194、195)の強度を光スペクトルにわたって記録し、1つ以上の光学パラメータを提供するように構成される光学センサ(161、162)
を含む、前記アセンブリ。
【請求項2】
前記周期的なパターンが、前記光強度変調器について利用可能な複数の周期的なパターン(331、332)から選択され、前記周期的なパターンの少なくとも1つは、第1の空間的次元における周期的なパターンの他の1つに対して位相がずれている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記光強度変調器(130)が液晶ディスプレイLCDを含む、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記分散要素(204)が、多色光シートの光スペクトルの範囲を変えるために傾斜可能である、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記光学センサ(161、162)が、多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光(195)の強度を記録するように、且つ/または照明の反対側で試料を出てくる光(194)の強度を記録するように構成される、請求項1から4までのいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項6】
第2の空間的次元に沿った多色光シートの伝搬経路における光学反射器(150)をさらに含み、前記光学反射器は、照明の反対側で試料を出てくる強度変調された多色光シートの光(194)を、光学センサ(162)に向かって反射するように構成される、請求項1から5までのいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記光学センサ(162)が、多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光(195)の強度を記録するように構成され、且つ、試料の幅全体に沿った光の強度の変動の記録と、試料の幅の一部に沿った光の強度の変動の記録との間を切り替えるように構成可能であり、且つ、前記アセンブリが、第1の空間的次元において利用可能な複数の延在部の1つにおいて、強度変調された多色光シート(193、193a)を提供するように構成される光シートリサイザ(135)を含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項8】
光スペクトルの空間的較正を提供するように構成される2つ以上の変位可能な単色フィルタ(106)をさらに含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
媒体の1つ以上の光学パラメータを測定するために、請求項1から8までのいずれか1項に記載のアセンブリを使用する方法であって、
媒体の試料を備えたホルダを準備すること(410)、
アセンブリの光シート生成器および光強度変調器によって提供される強度変調された多色光シートによって前記試料を照射すること(415)、
照明の反対側で試料を出てくる光(194)の強度および前記多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光(195)の強度の少なくとも1つの像を、アセンブリの光学センサによって記録すること(430)、および
記録された少なくとも1つの像に基づいて1つ以上の光学パラメータを特定すること(460)
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は分光光度測定の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
分光光度測定のためのいくつかの従来の手段においては、単色光(例えば多色光源から選択される)を使用して検査中の媒体を照射し、媒体の照射される側に対して反対側に光検出器を配置して、試料の通過後に残留する光強度を記録する。媒体の吸収または減衰係数を、その単色光の波長に対して、試料の通過前後の光強度の間の比を計算することによって特定できる。
【0003】
分光光度測定のためのより精巧な手段も知られている。例えば、単色光を適用する、媒体の光学特性を測定するためのシステムが国際公開第2012/015344号(WO2012/015344A1)内に記載されている。そこでは、空間的に変調された照明を用いて入射照明をマークし、望ましくない多重散乱光を抑制することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分光光度測定のための先行技術の策に伴う問題は、測定を実施するための効率および保存された結果の精度である。
【0006】
従って、分光光度測定のための代替的な手段のニーズがある。前記のニーズは、濁った媒体における測定のために特に顕著であることがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
「含む/含んでいる」との用語は、本明細書において使用される場合、述べられた特徴、整数、段階または要素の存在を特定するとして捉えられるが、1つ以上の他の特徴、整数、段階、要素またはそれらの群の存在または追加を除外するものではないことが強調されるべきである。本願内で使用される場合、単数形は、文脈が明らかにそうではないことを示さない限り、複数の形態も含むことが意図されている。
【0008】
一般に、アセンブリが本願内で示される場合、それは物理的な製品、例えば装置として理解されるべきである。前記物理的な製品は1つ以上の部品を含み得る。いくつかの実施態様において、前記部品は1つ以上のコントローラ、1つ以上のプロセッサまたはその種のものの形での制御回路を含み得る。
【0009】
いくつかの実施態様の目的は、上記または他の欠点の少なくともいくつかを解決または緩和、軽減または除去することである。
【0010】
第1の態様によれば、これは、媒体の1つ以上の光学パラメータを測定するためのアセンブリによって実現される。前記アセンブリは、第1の空間的次元において広がる光スペクトルを含む多色光シートを提供するように構成される光シート生成器を含み、前記多色光シートは第2の空間的次元における伝搬経路を有する。前記光シート生成器は、白色光を提供するように構成される光源、前記白色光を第1の空間的次元において広げて光スペクトルを提供するように構成される分散要素、および、その広がった白色光を制限することにより多色光シートを提供するように構成される、第1の空間的次元において延在する光学スリットを含む。前記アセンブリは、第1の空間的次元における周期的な(または実質的に周期的な)パターンを有する強度変調を多色光シートに適用することにより、強度変調された多色光シートを提供するように構成される光強度変調器も含む。前記アセンブリはさらに、強度変調された多色光シートが試料を照射できるように構成される媒体の試料用のホルダ、および試料を出てくる光の強度を光スペクトルにわたって記録して1つ以上の光学パラメータを提供するように構成される光学センサを含む。
【0011】
いくつかの実施態様において、周期的なパターンは、光強度変調器について利用可能な複数の周期的なパターンから選択され、前記周期的なパターンの少なくとも1つは、第1の空間的次元における周期的なパターンの他の1つに対して位相がずれている。
【0012】
いくつかの実施態様において、光強度変調器は、液晶ディスプレイ(LCD)を含む。
【0013】
いくつかの実施態様において、分散要素は、いくつかの実施態様によれば多色光シートの光スペクトルの範囲を変化させるために傾斜可能である。
【0014】
いくつかの実施態様において、光学センサは、多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光の強度を記録するように、および/または照明の反対側で試料を出てくる光の強度を記録するように構成される。照明の反対側で試料を出てくる光は、透過光と称されることがある。
【0015】
いくつかの実施態様において、前記アセンブリはさらに、第2の空間的次元に沿った多色光シートの伝搬経路に光学反射器を含む。前記光学反射器は、照明の反対側で試料を出てくる強度変調された多色光シートの光を、光学センサに向かって反射するように構成される。
【0016】
いくつかの実施態様において、光学センサは、多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光の強度を記録するように構成される。いくつかの実施態様において、光学センサは、試料の幅全体に沿った光強度の変動の記録と、試料の幅の一部に沿った光強度の変動の記録との間で切り替わるように構成可能である。その際、前記アセンブリは、第1の空間的次元における利用可能な複数の延在部の1つに、強度変調された多色光シートを提供するように構成される光シートリサイザを含み得る。
【0017】
いくつかの実施態様において、前記アセンブリはさらに、光スペクトルの空間的較正を提供するように構成される2つ以上の変位可能な単色フィルタを含む。
【0018】
第2の態様は、第1の態様によるアセンブリを、媒体の1つ以上の光学パラメータを測定するために使用する方法である。前記方法は、媒体の試料を備えたホルダを準備すること、アセンブリの光シート生成器および光強度変調器によって提供される強度変調された多色光シートによって前記試料を照射すること、照明の反対側で試料を出てくる光の強度および前記多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光の強度の少なくとも1つの像を(アセンブリの光学センサによって)記録すること、および記録された少なくとも1つの像に基づいて1つ以上の光学パラメータを特定することを含む。
【0019】
いくつかの実施態様において、上記の態様のいずれかは追加的に、他の態様のいずれかについて上記で説明された様々な特徴のいずれかと同一または相応する特徴を有し得る。
【0020】
いくつかの実施態様の利点は、分光光度測定のための代替的な手段が提供されることである。
【0021】
いくつかの実施態様の重要な利点は、光学的に密な濁った媒体において分光光度測定が得られる可能性が提供されることである。この利点は、空間的に変調された多色光シートの使用に起因する。
【0022】
いくつかの実施態様の他の利点は多色光シートの使用に起因し、測定を効率的に行うことができ、なぜなら、目的の全ての波長にわたる走査が回避されるからである。
【0023】
LCDが光強度変調器として使用される場合、変調の柔軟性が改善される。LCDを使用して、事実上あらゆる変調パターンを適用でき(同じことが他の空間ビーム変調器/成形器に該当し得る)、LCDの画素の分解能および画素の配置によってのみ制限される。
【0024】
格子を光強度変調器として使用する場合、各々の変調パターンは専用の格子によって(個々の格子本体において、または同じ格子本体の異なる部品において)提供されなければならない。格子を光強度変調器として使用する場合、異なる変調(パターンおよび/または位相)の適用は、格子本体の取り替えおよび/または格子本体の正確な動きを必要とする。
【0025】
従って、光強度変調器としてLCDを使用することにより、効率および/または精度も改善され得る。
【0026】
いくつかの実施態様のさらに他の利点は、測定用のアセンブリがコンパクトであり且つ再配置が比較的容易であることである。
【0027】
いくつかの実施態様のさらに他の利点は、単一の光学センサ(例えば単一の光学記録装置、例えばカメラ)を使用して、多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光の強度、および照明の反対側で試料を出てくる光の強度を、反射器を使用した単一の記録において、または2つの異なる位置の間を光学センサが動く2つの異なる記録において記録できることである。後者の代替は、2つの(据え置きの)光学センサを、その2つの位置の各々に1つずつ使用することであり、その際、一方のセンサが多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光の強度を記録し、他方のセンサが照明の反対側で試料を出てくる光の強度を記録する。
【0028】
いくつかの実施態様のさらなる利点は、広い範囲の値にわたって光学特性についての正確な測定を実現できることである。例えば、
・ 反射器を使用することによって(または照明の反対側に光学センサを配置することによって)、非散乱/発光媒体の吸収を特定するために必要とされる、試料を通過する光の強度を正確に測定することが可能であり、
・ 光学センサの記録領域を狭くするためにズームインし、且つ多色光シートについてのリサイズ機能を適用することによって、濁った媒体(つまり非常に濁った媒体)についての減衰を正確に測定することが可能である。
【0029】
さらなる課題、特徴、利点は、以下の実施態様の詳細な説明から、添付の図面を参照して明らかになる。図面は必ずしも寸法通りではなく、代わりに例示的な実施態様を説明することを重要視している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、いくつかの実施態様による例示的なアセンブリを示す模式的なブロック図である。
【
図2】
図2は、いくつかの実施態様による例示的な光シート生成器を示す模式的なブロック図である。
【
図3】
図3は、いくつかの実施態様による例示的な光強度変調器を示す模式的なブロック図である。
【
図4】
図4は、いくつかの実施態様による例示的な方法の段階を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明
既に上述したとおり、「含む/含んでいる」との用語は、本明細書において使用される場合、述べられた特徴、整数、段階または要素の存在を特定するとして捉えられるが、1つ以上の他の特徴、整数、段階、要素またはそれらの群の存在または追加を除外するものではないことが強調されるべきである。本願内で使用される場合、単数形は、文脈が明らかにそうではないことを示さない限り、複数形も含むことが意図されている。
【0032】
本開示の実施態様を以下で、添付の図面を参照してより完全に説明し且つ例示する。しかしながら、本願内に開示される策は、多くの異なる形で実現することができ、本願において示される実施態様に限定されると解釈されるべきではない。
【0033】
上述のとおり、分光光度の測定のための多くの従来の手段は、連続的に適用される単色ビームを使用して検査中の媒体の試料を照射する。1つより多くの波長についての情報を得るには、目的の全ての波長にわたって走査を実施する必要がある。そのような手段は測定を実施するために非効率であることがある。
【0034】
分光光度測定のための他の手段は、“Quantitative measurements of turbid liquids via structured laser illumination planar imaging where absorption spectrophotometry fails”; Regnima, et al.; Applied Optics, vol.56, no.13, 2017年5月, 3929~3938ページに記載されており、そこでは、それぞれ波長450nmおよび638nmを有する2つのレーザーが使用され、測定のために一度に1つのレーザーを起動する。
【0035】
分光光度測定のためのさらに他の手段は、国際公開第2012/015344号(WO2012/015344A1)に記載されている。
【0036】
さらに、“Using a supercontinuum light source for instantaneous excitation-emission fluorescence mapping”; Kiefer; Measurement Science and Technology, no.28, 2017は、スーパーコンティニウム光源および測定体において光を分散するための透過型格子を使用することを記載している。この手段に伴う問題は、目的の光学特性が常に正確に測定できるわけではないことである。この問題は、散乱効果が生じる場合の濁った媒体において特に顕著であることがある。この手段に伴って発生し得るいくつかの例示的な問題は、一次散乱(別名、単一散乱)を、より高いオーダーの散乱から分離することが不可能であり得ること、および1つの光の波長の散乱が、他の光の波長についての記録領域を汚染し得ることである。散乱媒体については、この手段を使用して、いかなる関連する測定も行えないことがある。
【0037】
以下において、効率的且つ正確な測定を可能にする実施態様を説明する。さらに、いくつかの実施態様は、検査中の媒体の光学特性の測定における柔軟性の増加を提供する。それにより、広い範囲の様々な光学特性を有する媒体について同じアセンブリによって正確な測定を行うことができる。
【0038】
一般に「測定」との用語は、例えば分光光度測定を示すことがある。
【0039】
一般に「光学パラメータ」との用語は、光学特性を記載する任意の適した光学パラメータ、例えば吸収係数、減衰係数(別名、吸光係数)、散乱係数、蛍光量子収率(QY)、リン光量子収率(QY)等を示し得る。吸光係数は、吸収係数と散乱係数との合計に等しい。光学特性の他の例は、濃度、平均断面積、および粒子サイズ(媒体中に粒子がある場合)の1つ以上に関連する特性を含む。従って、それらのパラメータも導出され得る。従って、光学パラメータの測定は、(相応の)光学特性を測定することとして定義できる。
【0040】
また、一般に「媒体」との用語は、例えば液体、ゲル、固体媒体または気体を示し得る。いくつかの一般的な用途は液体媒体を含む。いくつかの実施態様は、濁ったおよび/または発光媒体に関して測定するために特に適していることがあり、その際、濁りは散乱および吸収を含み、且つ発光はフォトルミネセンス(例えば蛍光および/またはリン光)を含む。
【0041】
また一般に、散乱による例示は、フォトルミネッセンス媒体の発光についても関連することを意味し、その逆もまた然りである。
【0042】
また一般に、「光」との用語は、特定の範囲内の波長を有する電磁放射線を示す。この範囲は可視光として一般に称されるもの(つまり、人間の目に可視である電磁放射線スペクトルの部分)を含み得る。代替的または追加的に、この範囲は非可視光として一般に称されるもの(つまり、人間の目に可視ではない電磁放射線スペクトルの部分)、例えば赤外(IR)光および/または紫外(UV)光を含み得る。「照明」との用語は、上記で定義されたとおり、光による照射を示す。
【0043】
また一般に、「多色」との用語は、電磁放射線スペクトルの2つ以上の(可視または非可視の)波長を含むものを記載する。
【0044】
また一般に、(単一の)光学センサとの用語は、構成要素の光学センサのアレイ/マトリックス(例えば各々の画素が相応の構成要素の光学センサを有するデジタルカメラ、光学検出器)、または記録範囲にわたって走査するように構成される単一の光学センサ要素(単一の光学検出器)を示し得る。
【0045】
図1は、媒体の1つ以上の光学パラメータを測定するためのいくつかの実施態様による例示的なセンブリを模式的に示す。(a)の部分はアセンブリの1つの変化形の側方の波を示し、(b)および(c)の部分はアセンブリの2つの異なる変化形のそれぞれ上面図を示す。
【0046】
アセンブリは、光シート生成器(LSG)110、光強度変調器(LIM)130、媒体の試料(SAMP)140用ホルダ(HOLD)145、および光学センサ(SENS)161、162を含む。
【0047】
光シート生成器110は、第1の空間的次元101において広がる光スペクトルを含み且つ第2の空間的次元102における伝搬経路を有する多色光シート192を提供するように構成される。
【0048】
第2の空間的次元は、(例えばユークリッド座標において)第1の空間的次元に対して非平行(典型的には直交)である。第3の空間的次元103(第1の空間的次元および第2の空間的次元に対して非平行、典型的には直交)と共に、第1および第2の空間的次元は三次元空間を張っている。「空間的次元」および「次元」との用語は本願においては互換的に使用される。
【0049】
光シートは例えば、単一の面における(例えばユークリッド座標における)2つ以上の経路に沿って伝搬する光として定義され得る。
【0050】
光スペクトルが第1の空間的次元において延在することは、光の波長の変動として理解されることができ、それは第1の空間的次元における経路に沿った各々の座標が最大で1つの光の波長を経るという特性を有する。
【0051】
図2は、いくつかの実施態様による例示的な光シート生成器(LSG)210を模式的に示す。光生成器210は、例えば
図1の光シート生成器110として使用され得る。
図2の(a)の部分は、第1の次元101および第2の次元102において延在する面内での光シート生成器の図を示す。
【0052】
例示的な光シート生成器210は、光源(LS)203、分散要素(例えば回折格子またはプリズム)204、および第1の空間的次元101において延在する光学スリット205を含む。
【0053】
好ましくは、光学スリットを媒体の試料のできるだけ近くに配置して、光シート生成器と媒体の試料との間の距離にわたって光シートを保存できる。これは光学スリットが試料用の容器上の刻印であるという手段によって本質的に達成できる。
【0054】
光学スリットを使用することの代替は、円柱レンズの使用である。好ましくは、媒体の試料からの、レンズの焦点距離に等しい距離のところに円柱レンズを配置できる。
【0055】
光源(例えば発光ダイオードLED)203は、白色光、または任意の他の適した多重波長の光を提供するように構成される。
【0056】
光源によって提供される光290は分散要素を照射し、前記分散要素は、例えばその向きによって、光源によって提供される光290を第1の空間的次元101において広げて、光スペクトル291の形で広がった光を提供するように構成される。
【0057】
光スペクトル(分散されたビーム)291の少なくとも一部が光学スリット205を照射し、前記光学スリットは、分散要素によって提供された広がった光291を、少なくとも第3の次元103において、制限することにより多色光シート292を提供するように構成される。従って、光学スリット205によって提供される多色光シート292は、第2の空間的次元102における伝搬経路を有し、且つ第1の空間的次元101において延在する光スペクトルを含む。
図2の(b)の部分は、第1の次元101および第3の次元103において延在する面内での光学スリットの図を示す。
【0058】
いくつかの実施態様において、分散要素204は、221で示されるように典型的には第3の次元において延在する傾斜軸周りに傾斜可能である。それにより、光スペクトル291のどの部分が光学スリットを照射するか、ひいては多色光シート292の光スペクトルの範囲を変えることができる。
【0059】
図1には表示されていないものの、異なる波長の伝搬経路は完全に平行ではないことがある。従って、多色光シート192は例えば、第1の次元101において、
図1の最も右の部分では最も左の部分よりも大きな延在部を有し得る。これは、広がった光291および多色光シート292について
図2に示されている。
【0060】
いくつかの実施態様において、光シート生成器210は、さらなる要素、例えばダイアフラム、および光源によって提供される光290をコリメーティング(つまり平行化)するための1つ以上の光学レンズをさらに含み得る。
【0061】
代替的または追加的に、光シート生成器210は、
図1の106として示されるとおり、2つ以上の(典型的には4つ、5つ、または6つの)変位可能な単色フィルタ(または比較的狭い帯域幅を有するフィルタ)をさらに含み得る。いくつかの実施態様においては、変位可能な単色フィルタを、光シート生成器に含まれない、アセンブリの他の位置に配置してよい。
【0062】
単色フィルタの1つを光路に施与して、測定のために、(例えば、施与されたフィルタによって提供される特定の光の波長と媒体の試料内の位置との間のマッピング、および発散する光シートの伝搬方向を特定するために)光スペクトルを空間的に較正することができる。前記較正を単色フィルタの1つまたはさらに他のものについて繰り返すことができる。測定を実施する際、単色フィルタは典型的には光路から取り除かれる。前記フィルタは例えば、容易に施与および除去するために、フィルタホイールまたは他の手段上に提供され得る。
【0063】
変位可能な単色フィルタを光源203の近くに配置することが好ましいことがあり、なぜなら、その際、前記フィルタは小さく、ひいては安価であり得るからである。しかしながら、光源と光学センサとの間の(媒体の試料を介する)光路における任意の配置が可能であり得る。
【0064】
光強度変調器130は、第1の空間的次元における周期的(または実質的に周期的)なパターンを有する強度変調を(多色光シートに)適用することにより、強度変調された多色光シート193、193aを提供するように構成される。
【0065】
周期的なパターンの例は、ロンキー・ルーリングによって定義されたパターン、つまり、一定の間隔のバーおよびスペースの方形波(例えば2kb≦x<(2k+1)bの場合aに等しく、且つ(2k+1)b≦x<(2k+2)bの場合はcに等しい、k∈Z)、およびシヌソイド関数によって定義されるパターンを含む。実質的に周期的なパターンの例は、xにわたる特定の周期性においてその平均値を下回る値とその平均値を上回る値との間で変動するが、その平均値を下回る値および/またはその平均値を上回る値は異なる周期については異なり得る、任意のパターンを含む。実質的に周期的なパターンの他の例は、xに沿ってわずかな周期性のシフトを有するパターンである。
【0066】
光強度変調器は、例えばロンキー格子であってよい。1つの例示的なロンキー格子330を
図3に示す。ロンキー格子は単一の周期的パターンまたは複数の異なる周期的パターンを含み得る。例示的な格子330は、異なる周期性を有する2つの異なる周期的パターン331および332を含むとして示されている。格子は、用途のために複数の異なる周期的パターンの1つを選択できるように可動であり得る。
図3の例においては、このために格子が第3の次元103において可動であり得る。さらには、格子は、選択された周期的パターンの位相のずれを提供するために、第1の次元101において可動であり得る。
【0067】
代替的または追加的に、光強度変調器は例えば、媒体の試料用の容器(例えばガラスキュベット)上の刻印であることができる。前記刻印は単一の周期的パターンまたは複数の異なる周期的パターンを(例えば容器の異なる側の上に)含み得る。ホルダ145および/または容器は、用途について異なる複数の周期的パターンの1つを選択できるように、可動(例えば第1の次元において延在する軸周りに回転可能)であり得る。さらには、ホルダ145および/または容器は、選択された周期的パターンの位相のずれをもたらすために、第1の次元101において可動であり得る。
【0068】
さらに代替的または追加的に、光強度変調器は例えば、液晶ディスプレイ(LCD)であってよい。このためにLCDを使用する利点は、異なる周期的パターン、および/または選択された周期的パターンの位相のずれが、機械的な動きを用いずに提供され得ることである。さらに、変調の柔軟性が改善される。LCDを使用して、事実上あらゆる変調パターンを提供でき、LCDの画素の分解能および画素の配置のよってのみ制限される。例えば、画素の分解能はパターンの周期長に下限を与える(1周期に2つの画素)。さらに、n個の位相のずれが適用されるべき場合、画素の分解能はパターンの周期長における下限を与える(1周期にn個の画素)。
【0069】
典型的には2つ以上(例えば3つ)の位相を、異なる記録のために適用して、光学パラメータの特定を可能にする。また、典型的には、各々の位相のずれは、変調の周期に相応する距離による変調の変位を、記録数nで除したものに相応する。
【0070】
変調された光シートが試料に入るまで空間的な変調を保存するために、できるだけ試料に近く位置付けられた光強度変調器を有することが好ましいことがある。これは本質的に、光強度変調器が試料用の容器上の刻印であるという手段によって達成できる。
【0071】
ここでもまた
図1を参照して、媒体の試料140用のホルダ145は、強度変調された多色光シートが試料を照射できるように構成される。例えば、試料がホルダに備えられる際に強度変調された多色光シートが試料を照射するように、ホルダを光強度変調器および光シート生成器に対して位置付けることができる。
【0072】
典型的には、強度変調された多色光シート全体が試料を照射するが、いくつかの実施態様は、強度変調された多色光シートの一部のみが試料を照射するという策を適用し得る。
【0073】
好ましくは、ホルダは、試料の照明が、光学センサ162に面する試料の側141に近くなるように構成される。これは、一次散乱光(つまり単一光散乱)が試料を通過して光学センサに達する距離を減少させる。
【0074】
ホルダは例えば、試料を収容するためのスタンドであってよい。試料は、容器を用いずに提供されることがある(例えば媒体が固体またはゲルの場合)。代替的に、試料が容器に備えられることがあり(例えば媒体が液体または気体の場合)、この場合、ホルダは、試料を含む容器を収容するために適することができる。例示的な容器はキュベット(例えばガラスキュベット)である。
【0075】
光学センサ161、162は、試料を出る光の強度を(光スペクトルにわたって)記録するように構成される。その際、記録される強度を使用して、1つ以上の光学パラメータを特定できる。
【0076】
典型的には、光学センサはカメラ(例えば電荷結合素子-CCD-カメラ、または科学的相補型金属酸化膜半導体-sCMOS-カメラ)であってよい。
【0077】
光学センサ161、162は、照明の反対側で試料を出てくる光(
図1において194として示される、いわゆる透過光)の強度を記録するように、且つ/または多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光(
図1において195として示される、散乱光またはフォトルミネッセンス光)の強度を記録するように構成される。
【0078】
多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光195の強度を記録することは、試料および光学センサを通る直線が、多色光シートに対して実質的に直交するように、つまり第3の次元において延在するように、光学センサを配置することによって達成され得る。これは、
図1の(b)および(c)の部分において光学センサの配置162によって示されている。
【0079】
照明の反対側で試料を出てくる光194の強度を記録することは、試料および光学センサを通る直線が、多色光シートの伝搬に対して平行であるように、つまり第1の次元において延在するように、光学センサを配置することによって達成され得る。これは、
図1の(c)の部分において光学センサの配置161によって示されている。
【0080】
単一の光学センサが
図1の(c)の部分に示される位置161と162との間で可動であり、照明の反対側で試料を出てくる光の強度、および多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光の強度を記録することができる。代替的に、2つの光学センサを使用して、1つは161の位置で、照明の反対側で試料を出てくる光の強度を記録し、且つ1つは162の位置で、多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光の強度を記録することができる。
【0081】
照明の反対側で試料を出てくる光194の強度を記録することを、代替的に、第2の空間的次元に沿った多色光シートの伝搬経路において光学反射器150をアセンブリにさらに含ませることによって達成でき、ここで前記光学反射器は、照明の反対側で試料を出てくる、強度変調された多色光シートの光194を、光学センサ162に向かって反射するように構成される。そのような手段を
図1の(b)の部分に示す。反射器は、例えばミラーまたは拡散ガラス層であってよい。
【0082】
この手段によれば、単一の据え置きの光学センサを使用して、照明の反対側で試料を出てくる光の強度、および多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光の強度を、できれば単一の記録において記録することができる。
【0083】
いくつかの実施態様において、この手段はさらに、減衰器(例えば中密度フィルタ)または増幅器を、反射器と光学センサとの間の光路において含んで、照明の反対側で試料を出てくる光、および多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光を、光学センサのところで同様の強度で提供することができる。これは、光学センサが飽和することを回避する一方で、比較的小さい強度の変動を記録することを可能にする。光学センサが飽和することを回避する一方で、比較的小さい強度の変動を記録することを可能にするための他の方法は、照明の反対側で試料を出てくる光の強度、および多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光の強度を、異なる記録において記録し、且つ記録の間に光学センサの露出時間および/または光源の強度を変化させることを含む。
【0084】
多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光195の強度を記録する場合(光学センサの配置162)、光学センサは、典型的には、試料の「幅」142全体に沿った光の強度の変動を測定できる(「幅」は第2の次元における延在部である)。
【0085】
いくつかの実施態様において、多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光の強度を記録する光学センサはさらに、試料の幅142全体に沿った光の強度の変動の記録と、試料の幅の一部に沿った光の強度の変動の記録との間で切り替わるように構成され得る。前記一部とは、典型的には試料の照明に最も近い部分である。いくつかの実施態様において、光学センサは、前記一部のサイズを変えるように構成されることができる。この特徴は、例えば、光学センサ用のズーム機能、例えば対物レンズ、テレセントリック対物、ズームレンズ、または同種のものを使用することによって達成され得る。
【0086】
試料の幅の一部に沿った光強度の変動を記録するこの手段に関し、第1の空間的次元における利用可能な複数の延在部の1つにおいて(例えば複数の利用可能なサイズまたは規模の1つにおいて)強度変調された多色光シートを提供するように構成される光シートリサイザ(RS)135をアセンブリに含ませることが有益であることがある。これは、
図1の(a)の部分において、最初の強度変調された多色光シート193を縮小して、第1の空間的次元においてより小さな延在部を有するリサイズされた強度変調された多色光シート193aを提供する光シートリサイザとして示される。従って、光学センサが試料の幅の一部に(および本質的に試料の「高さ」の一部に(「高さ」とは第2の次元における延在部である))ズームインする場合、リサイズされた強度変調された多色光シート193aは、それが光学センサによって全体的にまだ記録され得るように成形されることができる。光シートリサイザ135は、例えば、1つ以上のレンズおよびフーリエフィルタリングの適した適用によって実現され得る。
【0087】
上述のとおり、異なる波長の伝搬経路は完全に平行ではないことがある。従って、リサイズされた強度変調された多色光シート193aを実現するための他の方法は、光強度変調器を試料のすぐ隣に配置し、光シート生成器と光強度変調器との間の距離を(例えば光シート生成器、および/または光強度変調器、ホルダおよび光学センサを含む部品のアセンブリを動かすことによって)変えることである。その際、多色光シート192の幅の変動が、強度変調された多色光シートのサイズ決定をもたらす。
【0088】
それら両方の手段のいずれにおいても、本質的に、変調およびスペクトルの延在部が、強度変調された多色光シートのリサイズと同調してリサイズされることが注記される。
【0089】
光学センサがズーム可能であり且つ強度変調された多色光シートがリサイズ可能である実施態様は、様々な試料濃度の取り扱いについて特に有益である。高濃度の試料は、試料の一部のみを記録するために、光シート(および変調周期)の縮小およびズームインを必要とすることがある一方で、低濃度の試料は、試料の「幅」全体を記録するために、元のサイズの光シートの使用およびズームアウトを必要とすることがある。
【0090】
図4は、媒体の1つ以上の光学パラメータを測定するためにアセンブリ(例えば
図1~3に関連して説明されたアセンブリの変化形のいずれか)を使用する例示的な方法400を示すフローチャートである。
【0091】
前記方法は、任意の段階405で開始でき、ここで、アセンブリで生成されるべき多色光シート(例えば192)の光スペクトルの範囲が選択される。これは例えば、
図2に関連して上記で例示された傾斜可能な分散要素(例えば204)の位置を変えることによって実現できる。任意の段階405の選択を実現するための他の方法は、分散要素を取り外し、その位置に他の分散要素を差し込むことである。任意の段階405の選択を実現するためのさらに他の方法は、2つ以上の部分を有する分散要素を用い、そこで、異なる部分が異なる分散をもたらし、且つ分散要素が用途のために部分の1つを選択するように動くことができることである(
図3のロンキー格子330と同様に考える)。
【0092】
段階410において、アセンブリで提供されるべき強度変調された多色光シートが試料を照射するように(例えば位置および/または向きによって)、媒体の試料をアセンブリのホルダに備える。
【0093】
段階415において、強度変調された多色光シートによって(例えば、上記で例示したように光強度変調器によって強度変調された多色光シートを提供するように構成される光シート生成器の光源のスイッチをオンにすることによって)試料を照射する。
【0094】
図1および3に関連して上述したとおり、強度変調において使用されるパターンは周期的であり、且つ同じ試料の異なる測定について異なる位相を適用することができる。典型的には、2つまたは3つの異なる位相を適用できる。任意の段階420において、後の測定のために適した位相を適用するように強度変調を設定できる。これを例えば、
図1および3に関連して上記で例示したように、格子(例えば330)の、および/または強度変調の刻印された容器の適切な動きによって、またはLCDの適切な制御によって実現できる。
【0095】
例えば、強度変調パターンが位相をずらしてそれぞれの位相のずれでの3つの異なる測定を行う場合、パターンの周期の三分の一の位相のずれを適用できる。
【0096】
変調された照明は、記録された信号の変調増幅の測定から単一光散乱強度の特定を可能にする。異なる位相の(変調を変位させることによる)適用は、目的の波長範囲全体について単一光散乱の強度特定することを可能にする。
【0097】
例えば、異なる位相についての測定の像から、画像の後処理後に、再構成像を、その再構成像が多重光散乱強度を有さず且つ望ましくない反射を有さないように作り出すことができる。従って再構成像を使用して、試料の媒体の吸光係数を、多重散乱光強度が抑制され得ない場合よりも正確に見積もることができる。
【0098】
段階430において、
図1に関連して上記で例示したように、照明の反対側で試料を出てくる光の強度の、および多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光の強度の少なくとも1つの像を、光学センサによって記録する。
【0099】
より多くの位相が測定されるべき場合(任意の段階435の外のYのパス)、前記方法は420に戻り、そこで新たな位相を適用し、この新たな位相のために段階430を繰り返す。位相をもはや測定しない場合(任意の段階435の外のNのパス)、前記方法は任意の段階440に続く。
【0100】
任意の段階440において、記録された像から変調増幅が抽出される。例えばこれを、照明の反対側で試料を出てくる光の強度(透過信号の検出)と、多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光の強度(側方検出)との両方について、記録された像を後処理し、且つ記録された変調の増幅を抽出することによって実現できる。上述のとおり、変調増幅を使用して、例えば、一次散乱とより高次の散乱とを区別することができる。
【0101】
任意の段階445において、試料への光の浸透が、記録された像から目的の情報を抽出するために充分であるかどうかを判定する。例えば、任意の段階445は、抽出された変調増幅が、試料への光の浸透が充分であるかどうかを判定するための閾値より高いかどうかを判定することを含み得る。
【0102】
試料への光の浸透が充分ではない場合(任意の段階445の外のNのパス)、前記方法は任意の段階447におけるズームインを適用し、段階420に戻って、適用されたズームで測定を繰り返すことを含み得る。ズームの適用は、例えば光学センサ用のズーム機能を、最初の強度変調された多色光シートのリサイズと組み合わせて使用することによって実現できる。
【0103】
試料への光の浸透が充分である場合(任意の段階445の外のYのパス)、前記方法は任意の段階450に続くことができ、そこで測定を較正できる。例えば、較正は変位可能な単数または複数の単色フィルタ(または比較的狭い帯域を有する複数のフィルタ)を適用して、光スペクトルの空間的な較正を提供することを含み得る。
【0104】
散乱および/またはフォトルミネッセンスがある場合、つまり、光が多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる場合(任意の段階455の外のNのパス)、目的の光学パラメータを、段階460において記録された像に基づき特定する。例えば、段階460は、ランベルト・ベールの法則を使用して、光の伝搬方向に沿って各々の波長についての強度の場合の指数関数的減衰を導出することを含む「側方検出」から光学特性を抽出することを含み得る。
【0105】
散乱および/またはフォトルミネッセンスがない(または非常に少ない)場合、つまり光が照明の反対側のみで試料を出てくる、通過する光のみの場合(任意の段階455の外のYパス)、前記方法は任意の段階457、458および459に続く。それら3つの段階において、参照試料が準備され(段階410と比較)、その参照試料が照射され(段階415と比較)、且つ参照試料について1つ以上の像が記録される(照明の反対側で試料を出てくる光についての段階430と比較)。参照試料は公知の光学特性を有する媒体の試料であってよい。それにより、段階430で実施される測定を段階459で実施される測定と関連させて、段階460で記録された像に基づき目的の光学パラメータを特定することができる。例えば、段階460は、ランベルト・ベールの法則を使用する「伝達信号の検出」、参照試料の測定された強度、および試料の「幅」(例えばキュベットの経路長)から光学特性を抽出することを含み得る。
【0106】
任意の段階455を例えば、照明の反対側で試料を出てくる光の強度を、照明の光の強度と関連する閾値に対して比較して、強度が閾値より上であれば散乱および/またはフォトルミネッセンスがない(または非常に少ない)と結論付けることにより実施できる。
【0107】
様々な実施態様のいくつかのさらなる利点をここで示す。
【0108】
散乱/フォトルミネッセンス/濁った媒体(例えば液体)を通過する光の吸収/吸光をどのように測定するかという問題に関して、いくつかの実施態様は異なる格子を使用して多色光シートを生成し、上記で例示したように1つの測定において全ての波長を得る。そのような手段は従来技術の手段に比して安価であることができ、且つ/または短縮された測定時間を可能にし、且つ/またはよりコンパクトなセットアップを可能にし、且つ/またはより精密/正確な結果を提供する。
【0109】
どのように光強度を空間変調し、変位され得るパターン(例えばラインのパターン)を生成するかという問題に関して、いくつかの実施態様は、パターンの構築とパターンの変位との両方のためにLCDスクリーンを使用する。そのような手段は従来技術の手段に比して安価であり、且つ/またはより柔軟性があり、且つ/またはよりしっかりしていることができる。
【0110】
採取された媒体に応じて、変調のスペクトル分解能およびフリンジの大きさをどのように変化させるかという問題に関して、いくつかの実施態様は、変調された光シートをリサイズするための様々な方法を提供して(特定のリサイザを使用、光シート生成器と光強度変調器との間の距離を変えるなど)、必要な分解能を提供する。そのような手段は従来技術の手段に比して安価であることができ、且つ/または高分解能のイメージングを可能にし、且つ/またはより広い範囲にわたる吸収係数値の正確な測定を提供する。
【0111】
照明の反対側で試料を出てくる光(透過光)、および多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光(例えば散乱光)の両方の光強度をどのように得るのかという問題に関して、いくつかの実施態様は、試料の出口で反射器(例えば白色スクリーン)を使用して、単一の据え置きの光学センサを用いて光の強度を記録することを可能にする。そのような手段は従来技術の手段に比して安価であり、且つ/またはよりしっかりしていることができる。
【0112】
いくつかの実施態様によれば、同じアセンブリを使用して、従来の透過分光計の機能についての測定(精度が高められることがある)、濁った媒体の吸光についての測定、および蛍光色素の量子収率(QY)の評価についての測定を実施することが可能になる。
【0113】
蛍光色素の量子収率の見積もりは、蛍光色素について放出される信号の定量測定に基づいて実現できる。例えば、その見積もりは、波長の関数としての、色素によって放出された生の信号を、既知のQYを有する参照用色素(例えばRhB)の放出と比較することを含み得る。そのような測定(生の信号および/または参照用色素の放出)は、本願内に記載される手段を適用することで典型的には非常に単純化され、なぜなら、積分球または複数の濃度測定の使用を伴う必要がないからである。
【0114】
前記見積もりの例示的な原理において、色素によって放出される蛍光信号を
【数1】
によって記述でき、前記式中、λは波長であり、I
0は励起強度であり、εは色素の吸収係数であり、QYは量子収率であり、且つK
opticは光学係数、例えば集束角、レンズの色のフィルタリングなどを集約する。それらのパラメータは2つの測定の間で一定のままである。参照用色素は既知であるので(QYおよびε)、1つの波長についての蛍光強度を記載できる:
【数2】
【0115】
分光計が吸収係数ε(λ)の測定を可能にするとして、QYを絶対信号強度
【数3】
から導出でき、それはQYを
【数4】
によって導出できることを意味する。
【0116】
いくつかの実施態様において、例えば集束経路に沿った再吸収および励起強度の減衰に起因して、補正が有益であることがある。
【0117】
本願内に示される様々な手段のいくつかの実施態様によれば、強度変調は、バックグラウンドノイズ、バックグラウンド反射、拡散された透過光の1つ以上を除去すること(または少なくとも抑制すること)を可能にできる。
【0118】
一般に、本願内で使用される全ての用語は、それが使用される文脈から別の意味が明らかに示され且つ/または示唆されない限り、関連する技術分野におけるそれらの元の意味に従って理解されるべきである。
【0119】
本願内では様々な実施態様が参照されている。しかしながら、当業者は、特許請求の範囲にまだ該当し得る、記載された実施態様についての多数の変化形を認識するであろう。
【0120】
例えば、本願内に記載された方法の実施態様は、特定の順で実施される段階を通じた例示的な方法を開示する。しかしながら、それらの事象の順序は、特許請求の範囲から逸脱することなく他の順で行うことができることが認識される。さらには、いくつかの方法段階は、それらが順に実施されるとして記載されていたとしても、並行して実施され得る。従って、本願内に開示される任意の方法の段階は、ある段階が他の段階に続くかまたは先行すると明示的に記載されていない限り、且つ/またはある段階が他の段階に続くまたは先行しなければならないことが暗に意味されない限り、開示された正確な順で実施しなければならないわけではない。
【0121】
同様に、実施態様に記載において、特定のユニットへの機能ブロックの分割は、限定として意図されるものではないことを注記すべきである。逆に、これらの分割は単なる例である。1つのユニットとして本願内で記載される機能ブロックを、2つ以上のユニットに分けることができる。さらには、2つ以上のユニットとして実施されるとして本願内に記載される機能ブロックを、より少ない(例えば単一の)ユニットに併合できる。
【0122】
本願内に開示される実施態様のいずれかの任意の特徴を、適切であれば任意の他の実施態様に適用できる。同様に、実施態様のいずれかの任意の利点を、任意の他の実施態様に適用でき、その逆もまた然りである。
【0123】
従って、記載された実施態様の詳細が説明の目的で挙げられた単なる例であること、および特許請求の範囲に入る全ての変化形が本願に含まれることが意図されていることが理解されるべきである。
【0124】
例の一覧:
1. 媒体の1つ以上の光学パラメータを測定するためのアセンブリであって、
第1の空間的次元(101)において延在する光スペクトル含む多色光シート(192、292)を提供するように構成される光シート生成器(110、210)であって、前記多色光シートは第2の空間的次元(102)における伝搬経路を有する、前記光シート生成器(110、210)、
第1の空間的次元において周期的または実質的に周期的なパターンを有する強度変調を前記多色光シートに適用することによって強度変調された多色光シート(193、193a)を提供するように構成される光強度変調器(130、330)、
前記強度変調された多色光シートが試料を照射できるように構成される、媒体の試料(140)用のホルダ(145)、および
試料を出てくる光(194、195)の強度を光スペクトルにわたって記録し、1つ以上の光学パラメータを提供するように構成される光学センサ(161、162)
を含む、前記アセンブリ。
【0125】
2. 前記周期的なパターンが、前記光強度変調器について利用可能な複数の周期的なパターン(331、332)から選択され、前記周期的なパターンの少なくとも1つは、第1の空間的次元における周期的なパターンの他の1つに対して位相がずれている、例1に記載のアセンブリ。
【0126】
3. 前記光強度変調器(130)が液晶ディスプレイLCDを含む、例1または2のいずれか1つに記載のアセンブリ。
【0127】
4. 前記光シート生成器(110、210)が、白色光を提供するように構成される光源(203)、前記白色光を第1の空間的次元において広げて光スペクトルを提供するように構成される分散要素(204)、および、その広がった白色光を制限することにより多色光シートを提供するように構成される、第1の空間的次元において延在する光学スリット(205)を含む、例1から3までのいずれか1つに記載のアセンブリ。
【0128】
5. 前記分散要素(204)が、多色光シートの光スペクトルの範囲を変えるために傾斜可能である、例4に記載のアセンブリ。
【0129】
6. 前記光学センサ(161、162)が、多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光(195)の強度を記録するように、および/または照明の反対側で試料を出てくる光(194)の強度を記録するように構成される、例1から5までのいずれか1つに記載のアセンブリ。
【0130】
7. 第2の空間的次元に沿った多色光シートの伝搬経路における光学反射器(150)をさらに含み、前記光学反射器は、照明の反対側で試料を出てくる強度変調された多色光シートの光(194)を、光学センサ(162)に向かって反射するように構成される、例1から6までのいずれか1つに記載のアセンブリ。
【0131】
8. 前記光学センサ(162)が、多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光(195)の強度を記録するように構成され、且つ、試料の幅全体に沿った光の強度の変動の記録と、試料の幅の一部に沿った光の強度の変動の記録との間を切り替えるように構成可能であり、且つ、前記アセンブリが、第1の空間的次元において利用可能な複数の延在部の1つにおいて、強度変調された多色光シート(193、193a)を提供するように構成される光シートリサイザ(135)を含む、例1から7までのいずれか1つに記載のアセンブリ。
【0132】
9. 光スペクトルの空間的較正を提供するように構成される2つ以上の変位可能な単色フィルタ(106)をさらに含む、例1から8までのいずれか1つに記載のアセンブリ。
【0133】
10. 媒体の1つ以上の光学パラメータを測定するために例1から9までのいずれか1つに記載のアセンブリを使用する方法であって、
媒体の試料を備えたホルダを準備すること(410)、
アセンブリの光シート生成器および光強度変調器によって提供される強度変調された多色光シートによって前記試料を照射すること(415)、
照明の反対側で試料を出てくる光(194)の強度および前記多色光シートに対して実質的に直交して試料を出てくる光(195)の強度の少なくとも1つの像を、アセンブリの光学センサによって記録すること(430)、および
記録された少なくとも1つの像に基づいて1つ以上の光学パラメータを特定すること(460)
を含む、前記方法。
【国際調査報告】