(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(54)【発明の名称】蒸煮装置および調理方法
(51)【国際特許分類】
F24C 1/00 20060101AFI20220427BHJP
A47J 27/04 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
F24C1/00 310B
F24C1/00 310C
A47J27/04 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551940
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 CN2020080206
(87)【国際公開番号】W WO2020187294
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】201910215662.3
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518143495
【氏名又は名称】天揚精密科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】黄 品淳
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲ディー▼程
(72)【発明者】
【氏名】▲チャン▼ 家▲チィー▼
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA22
4B055BA22
4B055CA73
4B055DB12
4B055GC12
4B055GC33
4B055GD02
(57)【要約】
【目的】潜熱を十分に利用して、食材を蒸煮することのできる蒸煮装置および蒸煮方法を提供する。
【解決手段】蒸煮装置(1)は、食材(11)を収納するために使用され、且つ常圧を有する食材収容室(10)と、蒸気室(21)を有し、且つ常圧よりも大きい高圧飽和蒸気を生成して蓄積するために使用される飽和蒸気生成装置(20)と、蒸気室に連結されるとともに、食材収容室(10)に連通する出口を有し、高圧飽和蒸気を食材(11)に向かって放出噴霧するために使用され、且つ高圧飽和蒸気の放出噴霧された飽和蒸気が食材(11)の表面に到達した時、放出噴霧された飽和蒸気が、依然として飽和蒸気点にあり、飽和蒸気点から食材(11)に向かって潜熱を放出して飽和液点に変わる飽和蒸気噴霧装置(30)と、飽和蒸気が潜熱の放出により飽和液点に到達した時に、飽和蒸気が水蒸気混合体に変わり、水蒸気混合体を前記食材収容室(10)の外に排出する水蒸気排出装置(40)と、を含む。これにより、最適な蒸煮効果を得ることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を収納するために使用され、且つ常圧の環境圧力を有する食材収容室と、
蒸気室を有し、且つ前記常圧よりも大きい高圧飽和蒸気を生成して、前記蒸気室に蓄積するために使用される飽和蒸気生成装置と、
前記蒸気室に連結されるとともに、前記食材収容室に連通する出口を有し、前記高圧飽和蒸気を前記食材に向かって放出噴霧するために使用され、且つ前記高圧飽和蒸気の放出噴霧された飽和蒸気が前記食材の表面に到達した時、放出噴霧された前記飽和蒸気が、依然として飽和蒸気点にあり、飽和蒸気点から前記食材に向かって潜熱を放出して飽和液点に変わることによって、放出噴霧された前記飽和蒸気が放出した潜熱で前記食材を直接加熱する飽和蒸気噴霧装置と、
水蒸気排出装置と、
を含み、
前記水蒸気排出装置は、前記飽和蒸気が潜熱の放出により前記飽和液点に到達した時に、前記飽和蒸気が水蒸気混合体に変わり、前記水蒸気混合体が前記水蒸気排出装置に向かって移動して、前記水蒸気混合体を前記食材収容室の外に排出することにより、新たに放出噴霧された前記飽和蒸気を前記食材に供給し続け、前記飽和蒸気点から前記飽和液点に変わって放出された潜熱で前記食材を継続して加熱する蒸煮装置。
【請求項2】
前記高圧飽和蒸気の放出量、および前記水蒸気混合体の排出量を制御することにより、前記食材収容室の環境温度を前記常圧の飽和蒸気温度よりも高く/等しくなるように維持する請求項1に記載の蒸煮装置。
【請求項3】
前記飽和蒸気生成装置が、さらに、前記蒸気室内に設置された第1水タンク、および前記第1水タンクを加熱する温度制御ヒータを含むため、前記蒸気室が、高圧圧力に対応する飽和蒸気温度を有する高圧飽和蒸気を含む請求項1に記載の蒸煮装置。
【請求項4】
水を収容した第2水タンク、および前記第2水タンク内に設置された水蒸気混合体排管を有する熱エネルギー回収装置をさらに含み、前記水蒸気混合体排管が、前記水蒸気排出装置に連結され、排出された前記水蒸気混合体の熱エネルギーを前記第2水タンクの水に回収する請求項1に記載の蒸煮装置。
【請求項5】
前記熱エネルギー回収装置が、さらに、前記第2水タンクの水を加圧して、前記飽和蒸気生成装置に提供する加圧ポンプを含む請求項4に記載の蒸煮装置。
【請求項6】
食材を収納するために使用され、且つ常圧の環境圧力を有する食材収容室を提供することと、
前記常圧よりも大きい高圧飽和蒸気を生成して、蒸気室に蓄積する高圧飽和蒸気生成ステップと、
前記高圧飽和蒸気を前記蒸気室から前記食材に向かって放出噴霧し、前記高圧飽和蒸気の放出噴霧された飽和蒸気が前記食材の表面に到達した時、放出噴霧された前記飽和蒸気が、依然として飽和蒸気点にあり、飽和蒸気点から前記食材に向かって潜熱を放出して飽和液点に変わることによって、放出噴霧された前記飽和蒸気が放出した潜熱で前記食材を直接加熱する蒸煮ステップと、
前記飽和蒸気が潜熱の放出により前記飽和蒸気点から前記飽和液点に到達した時に、前記飽和蒸気が水蒸気混合体に変わり、前記水蒸気混合体が水蒸気排出装置に向かって移動して、前記水蒸気排出装置が前記水蒸気混合体を前記食材収容室の外に排出することにより、新たに放出噴霧された前記飽和蒸気を前記食材に供給し続け、前記飽和蒸気点から前記飽和液点に変わって放出された潜熱で前記食材を継続して加熱する水蒸気排出ステップと、
を含む蒸煮方法。
【請求項7】
前記高圧飽和蒸気の放出量、および前記水蒸気混合体の排出量を制御することにより、前記食材収容室の環境温度を前記常圧の飽和蒸気温度よりも高く、または等しくなるように維持する請求項6に記載の蒸煮方法。
【請求項8】
前記高圧飽和蒸気生成ステップが、さらに、前記蒸気室内に設置された第1水タンクを加熱することを含むため、前記蒸気室が、高圧圧力に対応する飽和蒸気温度を有する高圧飽和蒸気を含む請求項6に記載の蒸煮方法。
【請求項9】
前記水蒸気排出ステップが、さらに、水を収容した第2水タンクに前記水蒸気混合体を流通させるが、前記第2水タンクの水と混合しないで、排出された前記水蒸気混合体の熱エネルギーを前記第2水タンクの水に回収する熱エネルギー回収ステップを含む請求項6に記載の蒸煮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の蒸煮装置および方法に関するものであり、特に、蒸気(vapor)の潜熱を有効活用することによって、食品を効率的に蒸煮することのできる高効率蒸煮装置および蒸煮方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、市場には大きく分けて3種類の蒸気調理器がある。1つ目は、常圧蒸気を利用する一般的な電子ポット、電気スチーマー、スチームオーブン等や、例えば、中国特許第CN202681613U号の“省エネ循環式蒸籠”等であり、水蒸気の循環とエネルギー節約に重点を置いて、吸気機を運動エネルギーとして利用する。これらの器具は、いずれも飽和液点を超えるまで水を加熱して、水蒸気(steam)を発生させてから、わずかな圧力差と熱対流を利用して、水蒸気を食品に接触させ、水蒸気中の熱エネルギーを食品に伝達することができる。
【0003】
しかしながら、このような器具は、水が加熱されて水蒸気になった後、大部分が飽和蒸気点に到達する前に、食品に接触してしまうため、水蒸気の潜熱量を最大にすることができない。また、水蒸気中に含まれる極一部の飽和蒸気の熱量が蒸気中の水分子に吸収され、食品に吸収される部分があっても、食品の表面がすぐに飽和液点以下に戻ってしまうため、多くの潜熱を放出することができない。さらに、食品に吸収された後に食品の表面に水膜が形成されるため、後続の熱エネルギーによってその水膜が加熱されて気化し、食品に供給されない。したがって、全体的に熱効率が低く、蒸煮速度が遅いため、凝縮した水膜や潜熱放出後の水蒸気の加熱に全ての熱エネルギーが浪費される。また、大きな食材を蒸煮した時に、時間がかかりすぎて、食材が硬くなり、食感が失われてしまうことがよくある。
【0004】
2つ目の蒸気調理器は、例えば、ウォーターオーブン等の過熱蒸気を使用する蒸▲コウ▼機であり、過熱蒸気(superheated vapor)が有する高温を利用して、食材の表面を加熱し、表面の水分を蒸発乾燥させるものである。例えば、中国特許第CN105078219B号の“超高温蒸気連続な蒸▲コウ▼機”、および米国特許第US20070227364A1号の“Steam Cooker”は、いずれも過熱蒸気を利用して、“蒸し焼き”の目的を達成する。
【0005】
しかしながら、ウォーターオーブンのような器具は、水蒸気を飽和蒸気点以上に加熱して過熱蒸気(例えば、350℃の高温)にするが、過熱蒸気の状態では、蒸気の状態を制御するのが容易ではないため、加熱した空気を食材に用いた時に、表皮が焦げやすい。そのため、焼くのには適しているが、蒸し魚等の蒸煮を必要とする人には適合しない。現有技術には、上述した米国特許のように、過熱蒸気を飽和温度点近くまで冷ますものがあるが、過熱蒸気から変化した飽和蒸気に含まれる水分量はとても少ないため、やはり蒸煮には不利である。これは、熱平衡状態において、過熱蒸気と液体水は、共存が不可能であるからであり、過熱蒸気のエネルギー損失が凝縮点に到達する前(すなわち、飽和蒸気点、point of saturated vapor)は、いずれもガス状態で存在し、潜熱を放出することができないため、過熱蒸気が過熱状態で部分的に熱エネルギーを食材の表面の水分に放出しても、動的平衡状態では、蒸発が凝縮よりも大きくなるだけで、食材の表面の水分は気化してなくなり、乾燥する。
【0006】
3つ目の蒸煮器は、圧力鍋のような調理器であり、高圧で蒸気を発生させて、常圧飽和蒸気温度より高い高温になるため、食材を高い温度で加熱することができる。しかしながら、蒸し器全般と同様に、水を加熱して水蒸気にしてから、高圧で水蒸気の温度をより高くする操作が行われ、この温度上昇過程において、食材は既に加熱されてしまうため、大部分の熱エネルギーは、全て水や水蒸気(水と蒸気の混合体)中の水を加熱するために使用され、飽和液点に到達する前に食材が加熱されてしまうこともある。そのため、飽和蒸気に含まれる潜熱を食材に十分に利用する効果を達成することができず、さらに、調理中に、食材室が高圧状態になるため、食材室を開く時に操作を謝ると、危険である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の欠点を考慮して、本発明の目的は、飽和蒸気(saturated vapor)の潜熱を十分に利用して、食材を蒸煮することのできる装置および方法を提供することであり、特に、常圧状態で飽和蒸気の潜熱効果を発揮することのできる高効率蒸煮装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を達成するため、本発明は、
食材を収納するために使用され、且つ常圧の環境圧力を有する食材収容室と、
蒸気室を有し、且つ前記常圧よりも大きい高圧飽和蒸気を生成して、前記蒸気室に蓄積するために使用される飽和蒸気生成装置と、
前記蒸気室に連結されるとともに、前記食材収容室に連通する出口を有し、前記高圧飽和蒸気を前記食材に向かって放出噴霧するために使用され、且つ前記高圧飽和蒸気の放出噴霧された飽和蒸気が前記食材の表面に到達した時、放出噴霧された前記飽和蒸気が、依然として飽和蒸気点にあり、飽和蒸気点から前記食材に向かって潜熱を放出して飽和液点に変わることによって、放出噴霧された前記飽和蒸気が放出した潜熱で前記食材を直接加熱する飽和蒸気噴霧装置と、
水蒸気排出装置と、
を含み、
前記水蒸気排出装置は、前記飽和蒸気が潜熱の放出により飽和液点に到達した時に、前記飽和蒸気が水蒸気混合体に変わり、前記水蒸気混合体が前記水蒸気排出装置に向かって移動して、前記水蒸気混合体を前記食材収容室の外に排出することにより、新たに放出噴霧された前記飽和蒸気を前記食材に供給し続け、飽和蒸気点から飽和液点に変わって放出された潜熱で前記食材を継続して加熱する蒸煮装置を提出する。
【0009】
前記高圧飽和蒸気の放出量、および前記水蒸気混合体の排出量を制御することにより、前記食材収容室の環境温度を前記常圧の飽和蒸気温度よりも高く/等しくなるように維持する。
【0010】
前記飽和蒸気生成装置は、さらに、前記蒸気室内に設置された第1水タンク、および前記第1水タンクを加熱する温度制御ヒータを含むため、前記蒸気室は、高圧圧力に対応する飽和蒸気温度を有する高圧飽和蒸気を含むことができる。
【0011】
さらに、水を収容した第2水タンク、および前記第2水タンク内に設置された水蒸気混合体排管を有する熱エネルギー回収装置を含む。前記水蒸気混合体排管は、前記水蒸気排出装置に連結され、排出された前記水蒸気混合体の熱エネルギーを前記第2水タンクの水に回収する。
【0012】
前記熱エネルギー回収装置は、さらに、前記第2水タンクの水を加圧して、前記飽和蒸気生成装置に提供する加圧ポンプを含む。
【0013】
本発明の目的を達成するため、本発明は、
食材を収納するために使用され、且つ常圧の環境圧力を有する食材収容室を提供することと、
前記常圧よりも大きい高圧飽和蒸気を生成して、蒸気室に蓄積する高圧飽和蒸気生成ステップと、
前記高圧飽和蒸気を前記蒸気室から前記食材に向かって放出噴霧し、且つ前記高圧飽和蒸気の放出噴霧された飽和蒸気が前記食材の表面に到達した時、放出噴霧された前記飽和蒸気が、依然として飽和蒸気点にあり、飽和蒸気点から前記食材に向かって潜熱を放出して飽和液点に変わることによって、放出噴霧された前記飽和蒸気が放出した潜熱で前記食材を直接加熱する蒸煮ステップと、
前記飽和蒸気が潜熱の放出により飽和蒸気点から飽和液点に到達した時に、前記飽和蒸気が水蒸気混合体に変わり、前記水蒸気混合体が水蒸気排出装置に向かって移動して、前記水蒸気排出装置が前記水蒸気混合体を前記食材収容室の外に排出することにより、新たに放出噴霧された前記飽和蒸気を前記食材に供給し続け、飽和蒸気点から飽和液点に変わって放出された潜熱で前記食材を継続して加熱する水蒸気排出ステップと、
を含む。
【0014】
前記高圧飽和蒸気の放出量、および前記水蒸気混合体の排出量を制御することにより、前記食材収容室の環境温度を前記常圧の飽和蒸気温度よりも高く/等しくなるように維持する。
【0015】
前記高圧飽和蒸気生成ステップが、さらに、前記蒸気室内に設置された第1水タンクを加熱することを含むため、前記蒸気室は、高圧圧力に対応する飽和蒸気温度を有する高圧飽和蒸気を含むことができる。
【0016】
前記水蒸気排出ステップが、さらに、水を収容した第2水タンクに前記水蒸気混合体を流通させるが、前記第2水タンクの水と混合しないで、排出された前記水蒸気混合体の熱エネルギーを前記第2水タンクの水に回収する熱エネルギー回収ステップを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明が開示する装置および方法に基づき、飽和蒸気の生成、利用、および回収を精密に計画することにより、最適な蒸煮効率を達成することができるため、過熱蒸気よりもさらに水分の多い高圧飽和蒸気を常圧の食材収容室に導入した時、圧力の降下によりもたらさせる蒸気流により、加圧ファン等の器具を必要としなくても、確実に飽和蒸気を迅速に食材に噴射することができ、食材に噴射する前でも、潜熱を保有する飽和蒸気状態を維持することができる。また、食材に接触した後すぐに潜熱を放出することにより、前記潜熱の熱エネルギーを食材に通過させ、食材中の水分に作用させることができるため、焦がさずに食材を煮込むことができる。また、水蒸気排出装置で潜熱を放出し、食材収容室内に散布された水蒸気混合を効果的に排出して回収する、またはその熱エネルギーを回収するため、新たな飽和蒸気の導入が阻害されるのを防ぐことができ、新たな飽和蒸気を継続して導入し、食材に噴射することにより、飽和蒸気の潜熱で食材を加熱し続けることができる。このようにして、消費エネルギーを下げ、蒸煮時間を短縮し、食材の鮮度ロスを減らした状態で、食材の結合組織を迅速かつ効果的に破壊し、食べ物を柔らかく美味しくすることができるため、一般的な蒸煮とは異なる。
【0018】
本発明の上記および他の目的、特徴、および利点をより分かり易くするため、図面と併せた幾つかの実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付図面は、本発明の原理がさらに理解されるために含まれており、本明細書に組み込まれ、且つその一部を構成するものである。図面は、本発明の実施形態を例示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たしている。
【0020】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る蒸煮装置の外観概略図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態に係る蒸煮装置の各構成要素の連結概略図である。
【
図3】本発明の効果を解釈するための潜熱概略図である。
【
図4】本発明の1つの実施形態に係る蒸煮方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面と本発明に係る好ましい実施形態を組み合わせて、本発明が開示する蒸煮装置および方法を構成する構成要素およびステップ、並びに達成される効果について説明する。各図面に示した蒸煮装置の関連構成要素、形状、および設定は、単に本発明の技術特徴を説明するためのものであって、本発明の構成を限定するためのものではない。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係る高効率蒸煮装置の外観概略図である。
図1に示すように、本実施形態が開示する蒸煮装置1は、食材11を収納するために使用され、且つ常圧の環境圧力を有する食材収容室10と、蒸気室21を有し、且つ前記常圧よりも大きい高圧飽和蒸気を生成して、前記蒸気室21に蓄積するために使用される飽和蒸気生成装置20と、前記蒸気室に連結されるとともに(図示せず)、前記食材収容室10に連通する出口(図示せず)を有し、前記高圧飽和蒸気を前記食材11に向かって放出噴霧するために使用され、前記高圧飽和蒸気の放出噴霧された飽和蒸気が前記食材11の表面に到達した時、飽和蒸気が、依然として飽和蒸気点にあり、飽和蒸気点から前記食材11に向かって潜熱を放出して飽和液点に変わることによって、放出噴霧された飽和蒸気が放出した潜熱で前記食材11を直接加熱する飽和蒸気噴霧装置30と、水蒸気排出装置40と、を含む。前記水蒸気排出装置40は、前記飽和蒸気が潜熱の放出により飽和液点に到達した時に、前記飽和蒸気が水蒸気混合体に変わり、前記水蒸気混合体が前記水蒸気排出装置40に向かって移動して、前記水蒸気混合体を前記食材収容室10の外に排出することにより、新たに放出噴霧された前記飽和蒸気を前記食材に供給し続け、飽和蒸気点から飽和液点に変わって放出された潜熱で前記食材を継続して加熱する。また、蒸煮装置1は、コントローラ(図示せず)を有する操作パネル2、および食材11を出し入れするドア3を含む。より好ましい実施形態において、蒸煮装置1は、さらに、
図1には示していないが、
図2に示した熱エネルギー回収装置50を含むが、これについては後で説明する。
【0023】
図2は、本発明の1つの実施形態に係る蒸煮装置の各構成要素の連結概略図である。
図2に示すように、食材収容室10において、食材11を置くための棚(符号を付けない)を有し、その上方に飽和蒸気噴霧装置30があり、下方に水蒸気排出装置40がある。この食材収容室10の環境圧力は、常圧状態であり、一般的に、約1barの大気圧である。飽和蒸気噴霧装置30は、飽和蒸気生成装置20の蒸気室21に連結され、高圧飽和蒸気が食材収容室10に放出される放出量を制御する。さらに、高圧飽和蒸気が出口を介して食材収容室10に放出した後、すぐに食材11に到達できるよう、より好ましい実施形態において、この出口と食材11との距離を調整してもよい。
【0024】
飽和蒸気生成装置20は、蒸気室21の他に、さらに、前記蒸気室21内に設置された第1水タンク22、および前記第1水タンク22を加熱する温度制御ヒータQinを含むため、前記蒸気室21は、高圧圧力に対応する飽和蒸気温度(例えば、2barと120℃)を有する高圧飽和蒸気を含み、蓄積することができる。前記高圧圧力とは、常圧0.1bar~8barよりも高いことを指す。第1水タンク22は、水を収容して、温度制御ヒータQinの加熱を受け取るために使用される。温度制御ヒータQinの形式は、多くの種類があってもよいが、より好ましい実施形態において、電熱ロッドである。前記温度制御ヒータQinの加熱量の大きさは、蒸気室21内の温度に合わせて調整し、蒸気室21内の温度と圧力をそれぞれ120℃と2barに維持することができる。つまり、常圧よりも大きい高圧飽和蒸気状態にある。これは、飽和蒸気表に基づくと、2barの時、120℃の飽和温度を有するからである。また、飽和蒸気状態において、蒸気は、無色透明の状態であり、且つ前記飽和蒸気の蒸気乾き度(vapor quality)は、90%よりも大きいか、それに等しい。
【0025】
図3は、本実施形態が利用する飽和蒸気を解釈するための潜熱概略図である。
図3に示すように、100Kpaにおいて、つまり、約1大気圧と1barの常圧において、飽和温度は、100℃である。100℃の飽和蒸気点Aと飽和液点Bの間は、かなり大きな潜熱を有し、この間は、飽和水と蒸気の混合体であり、これを水蒸気または水蒸気混合体と称す。常圧において、飽和温度を越えると、過熱蒸気になる。したがって、加熱過程において、第1水タンク22の中にまだ水があり、且つ前記蒸気室21が蓄圧していれば、上方の飽和蒸気を加熱し、同時に昇圧することができるが、過熱蒸気に変えてはいけない。より好ましい実施形態において、蒸気室21に連結され、制御される蒸気蓄積室(図示せず)を別途設置して、必要な圧力と温度の高圧飽和蒸気を蓄積してもよい。
【0026】
再度
図2に戻ると、水蒸気排出装置40は、食材収容室10において既に潜熱を放出した水蒸気混合体を排出するために使用され、新たな高圧飽和蒸気または放出噴霧された飽和蒸気を導入し続けても、食材収容室10の内部の環境圧力を常圧に維持することができる。また、上述したコントローラ(図示せず)がその排出量と高圧飽和蒸気の放出量を制御して対応させる。これは、前記放出量と排出量を圧力センサにより適切に制御することができる。1つの変形例において、水蒸気排出装置40以外に、蒸煮装置1は、食材収容室10の底部において、凝縮可能な水を排出または回収して利用するための排水装置(図示せず)を含んでもよい。
【0027】
図2に示すように、排出された水蒸気混合体は、水を収容した第2水タンク51および前記第2水タンク51内の水蒸気混合体排管52を有する熱エネルギー回収装置50に導入される。前記水蒸気混合体排管52は、前記水蒸気排出装置40に連結され、排出された水蒸気混合体を第2水タンク51の水と混合しないで、その熱エネルギーを前記第2水タンク51の水に回収する。回収した熱エネルギーは、Q
Rで示すことができる。より好ましい実施形態において、熱エネルギー回収装置50は、さらに、前記第2水タンク51の水を加圧して、飽和蒸気生成装置20に提供するために使用される加圧ポンプ53を含み、コントローラ(図示せず)の制御によって、加圧後に直接蒸気室21内に噴霧することができ、また、加圧して第1水タンク22に注入し、高圧飽和蒸気の生成に使用することもできる。1つの変形例において、排出された水蒸気混合体を直接第2水タンク51内に流し込んで、第2水タンク51の水にし、直接取り出して飽和蒸気生成装置20への供給に利用してもよい。このように、水蒸気中の熱エネルギーを回収するだけでなく、水蒸気混合体も回収するため、上述した熱エネルギーの回収は、この変形例も含む。
【0028】
図2に示した連結システム全体により、食材収容室10において、高圧飽和蒸気を放出および温度降下により2barから1barに下げ、
図3に示した飽和蒸気点Aに入れることができる。また、高圧飽和蒸気の放出量を制御することにより、放出された飽和蒸気は、前記食材11の表面に到達した時に、依然として飽和蒸気点Aにあるため、飽和蒸気点Aから全ての潜熱を放出し始めた水蒸気(steam)で食材11を加熱することができる。ここで、
図3に示すように、スチームオーブンが使用する過熱蒸気も、温度降下により飽和蒸気点Aに入ることができるが、上述したように、過熱蒸気の状態に入った後、比容積の関係により、水蒸気含有量は、高圧飽和蒸気よりもかなり低くなるため、この方法で蒸煮をするのは不利である。
【0029】
また、より好ましい実施形態において、前記食材11の表面に到達した時に飽和蒸気点Aにあるよう高圧飽和蒸気の放出量を制御する方法の他に、前記高圧飽和蒸気の噴霧量、および前記水蒸気混合体の排出量を制御して、前記食材収容室10の環境温度を前記常圧の飽和蒸気温度よりも高く、または等しくなるように維持してもよい。放出された蒸気は、前記食材11の表面に噴射された時、依然として飽和蒸気点にあるため、飽和蒸気点Aから潜熱を効果的に放出することができる。放出量が、食材収容室10の環境温度をすぐに飽和温度にできるほど十分に大きい場合(例えば、100℃)、その後に高圧蒸気放出量が下がって、噴射状態で食材の表面に接触していない状態でも、放出された放出蒸気を食材11の表面の拡散させた時に、飽和蒸気点を維持することができ、最大潜熱量で高効率加熱を行う目的を達成することができる。したがって、実務上、この放出量は、状況または段階に応じて変えてもよい。
【0030】
上述した実施形態に基づき、本発明は、
図4に示した蒸煮方法も開示する。すなわち、本発明の1つの実施形態に係る蒸煮方法は、以下のステップを含む。まず、ステップS1において、食材を収納するために使用され、且つ常圧の環境圧力を有する食材収容室を提供する。次に、高圧飽和蒸気生成ステップS2を利用して、前記常圧よりも大きい高圧飽和蒸気を生成し、蒸気室に蓄積する。それから、蒸煮ステップS3に入り、前記高圧飽和蒸気を前記蒸気室から前記食材に向かって放出噴霧し、前記高圧飽和蒸気の放出噴霧された飽和蒸気が前記食材の表面に到達した時、放出噴霧された前記飽和蒸気が、依然として飽和蒸気点にあり、飽和蒸気点から前記食材に向かって潜熱を放出して飽和液点に変わることによって、放出噴霧された前記飽和蒸気が放出した潜熱で前記食材を直接加熱する。そして、適時に水蒸気排出ステップS4を行い、放出噴霧された飽和蒸気が潜熱の放出により飽和蒸気点から飽和液点に到達した時に、前記飽和蒸気が水蒸気混合体に変わり、前記水蒸気混合体が水蒸気排出装置に向かって移動して、前記水蒸気排出装置が前記水蒸気混合体を前記食材収容室の外に排出することにより、新たに放出噴霧された前記飽和蒸気を前記食材に供給し続け、飽和蒸気点から飽和液点に変わって放出された潜熱で前記食材を継続して加熱する。より好ましい実施形態において、この水蒸気排出ステップS4は、蒸煮ステップS3の高圧蒸気放出量と組み合わせて、前記高圧飽和蒸気の放出量、および前記水蒸気混合体の排出量を制御することにより、前記食材収容室の環境温度を前記常圧の飽和蒸気温度よりも高く/等しくなるように維持し、最も経済的な加熱方法を得てもよい。
【0031】
以上のように、本発明が開示する各実施形態の技術思想は、最適な蒸煮効率を有し、飽和蒸気の完全な潜熱で食材を加熱し続けることのできる蒸煮装置および方法を得ることができるとともに、消費エネルギーを下げ、蒸煮時間を短縮し、食材の鮮度ロスを減らした状態で、最適な蒸煮効果の蒸煮装置および方法を迅速かつ効果的に得ることができる。
【0032】
最後に、本発明の上述した実施形態において公開した構成要素は、単なる例であり、本願の範囲を限定するためのものではない。その他の同等の構成要素の代替または変形も、本願の専利請求の範囲に入るものとする。
【0033】
もちろん、本発明は、その他の多種類の実施例を有してもよく、本発明の精神およびその実質から逸脱しない状況で、当業者であれば、本発明に基づいて各種対応する変更および変形を行うことができ、これらの対応する変更および変形は、いずれも本発明の請求項の保護範囲に属するものとする。
【符号の説明】
【0034】
1 蒸煮装置
2 操作パネル
3 ドア
10 食材収容室
11 食材
20 飽和蒸気生成装置
21 蒸気室
22 第1水タンク
30 飽和蒸気噴霧装置
40 水蒸気排出装置
50 熱エネルギー回収装置
51 第2水タンク
52 水蒸気混合体排管
53 加圧ポンプ
A 飽和蒸気点
B 飽和液点
Qin 温度制御ヒータ
QR 回収した熱エネルギー
S1、S2、S3、S4 ステップ
【国際調査報告】