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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(54)【発明の名称】セリネクソールの共結晶形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/12 20060101AFI20220427BHJP
   A61K 31/497 20060101ALI20220427BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220427BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
C07D403/12 CSP
A61K31/497
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552142
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2020023530
(87)【国際公開番号】W WO2020191140
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】62/821,203
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ハミルトン、クリフトン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB09
4C063CC41
4C063DD34
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC48
4C086BC60
4C086GA07
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、セリネクソール共結晶形態を対象とし、より詳しくは、コハク酸をコフォーマーとして有する2つの共結晶形態及びバニリンをコフォーマーとして有する共結晶形態を対象とする。本開示はまた、セリネクソール共結晶形態の調製のためのプロセスにも関する。更に、本発明はまた、セリネクソール共結晶形態を含む医薬組成物、及びセリネクソール共結晶形態を使用して疾患を治療するための方法にも関する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリネクソール共結晶。
【請求項2】
コハク酸とのセリネクソール共結晶である、請求項1に記載のセリネクソール共結晶。
【請求項3】
コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶である、請求項2に記載のコハク酸とのセリネクソール共結晶。
【請求項4】
示差走査熱量測定によって測定したときに、約121℃、146℃及び161℃で起こる1~3回の熱イベントを有する、請求項3に記載のコハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶。
【請求項5】
約5.2、16.7、17.0、17.6及び19.7°2θから選択される1つ以上のX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、請求項3に記載のコハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶。
【請求項6】
約5.2、16.7、17.0、17.6及び19.7°2θから選択される2つ以上のX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、請求項3に記載のコハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶。
【請求項7】
コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶である、請求項2に記載のコハク酸とのセリネクソール共結晶。
【請求項8】
示差走査熱量測定によって測定したときに、約155℃で起こる熱イベントを有する、請求項7に記載のコハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶。
【請求項9】
約10.4、16.6、18.9及び20.7°2θから選択される1つ以上のX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、請求項7に記載のコハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶。
【請求項10】
約10.4、16.6、18.9及び20.7°2θから選択される2つ以上のX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、請求項7に記載のコハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶。
【請求項11】
バニリンとのセリネクソール共結晶である、請求項1に記載のセリネクソール共結晶。
【請求項12】
バニリン形態Iとのセリネクソール共結晶である、請求項11に記載のバニリンとのセリネクソール共結晶。
【請求項13】
約12.6、15.8及び19.0°2θから選択される1つ以上のX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、請求項12に記載のバニリン形態Iとのセリネクソール共結晶。
【請求項14】
請求項2又は請求項11に記載の医薬的に有効量のセリネクソール共結晶と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項15】
請求項3、請求項7又は請求項12に記載の医薬的に有効量のセリネクソール共結晶と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、前記患者の疾患を治療する方法。
【請求項17】
コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶を調製するためのプロセスであって、
a)ギ酸エチル中の飽和セリネクソール溶液と、ギ酸エチル中の飽和コハク酸溶液を、約1ギ酸エチル中セリネクソール対1ギ酸エチル中コハク酸のmL比で混合して、ギ酸エチル中のセリネクソールとコハク酸との混合溶液を形成することと、
b)ギ酸エチル中のセリネクソールとコハク酸との前記混合溶液に、約1mLギ酸エチル中のセリネクソールとコハク酸との混合溶液対0.25ミリモル固体セリネクソール対0.375ミリモル固体コハク酸の比で、固体セリネクソール及び固体コハク酸を添加することと、
c)前記混合溶液を、前記添加したセリネクソール及びコハク酸と共にスラリー化することと、
d)前記溶液を冷却して、コハク酸形態Iを用いてセリネクソール共結晶を得ることと、
を含む、プロセス。
【請求項18】
前記スラリー化が、約60℃で約4時間行われる、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記冷却が、約-5℃~10℃で行われる、請求項17に記載のプロセス。
【請求項20】
前記冷却が、約0℃で行われる、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
コハク酸形態Iとの前記セリネクソール共結晶を濾過することによって単離し、約45℃で約2~3時間風乾することを更に含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項22】
コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶を調製するためのプロセスであって、
a)セリネクソール溶液とコハク酸溶液とを混合する工程であって、セリネクソール又はコハク酸の前記溶液の溶媒が、ギ酸エチル、メタノール、1-プロパノール、酢酸エチル、イソプロパノール及びアセトン、又はこれらの混合物からなる群から選択されて、セリネクソールとコハク酸との混合溶液を形成し、セリネクソールのミリモル対コハク酸のミリモル対セリネクソールのための溶媒のmL対コハク酸のための溶媒のmLの比が、約1ミリモルセリネクソール対1~1.5ミリモルコハク酸対3~4mLセリネクソールのための溶媒対3~4mLコハク酸のための溶媒である、混合する工程と、
b)セリネクソールとコハク酸との前記混合溶液に抗溶媒を添加する工程であって、セリネクソールとコハク酸との混合溶液のmL対抗溶媒のmLの比が、約1mLセリネクソールとコハク酸との混合溶液対2~4mL抗溶媒である、添加する工程と、
c)工程b)の混合物を冷却して、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶を得る工程と、
を含む、プロセス。
【請求項23】
単一の溶媒又は溶媒の混合物中に、セリネクソール又はコハク酸を約3:1~9:1の体積比で溶解することによって前記セリネクソール溶液及び前記コハク酸溶液を調製することを更に含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記溶媒が、1-プロパノール、1-プロパノールとメタノールとの混合物、酢酸エチルとメタノールとの混合物、又はギ酸エチルとメタノールとの混合物である、請求項22に記載のプロセス。
【請求項25】
前記セリネクソール溶液が、1-プロパノールとメタノールとの混合物又は酢酸エチルとメタノールとの混合物中に前記セリネクソールを溶解することによって、調製される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項26】
前記コハク酸溶液が、前記コハク酸を、1-プロパノール中、又は1-プロパノールとメタノールとの混合物、又は酢酸エチルとメタノールとの混合物中に溶解することによって、調製される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項27】
前記抗溶媒が、C12~C18のアルカンである、請求項22に記載のプロセス。
【請求項28】
前記アルカンが、C16(ヘプタン)である、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記抗溶媒の添加が、ほぼ室温で行われる、請求項22に記載のプロセス。
【請求項30】
前記冷却工程が、約-5℃~10℃で行われる、請求項22に記載のプロセス。
【請求項31】
前記冷却工程が、約0℃~5℃で行われる、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
コハク酸形態IIとの前記セリネクソール共結晶を濾過により単離し、約45℃で約8~12時間、真空下で、乾燥させることすることを更に含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項33】
バニリン形態Iとのセリネクソール共結晶を調製するためのプロセスであって、
a)テトラヒドロフラン中の溶解したセリネクソール溶液と、テトラヒドロフラン中の溶解したバニリン溶液を、約1テトラヒドロフラン中セリネクソール対1テトラヒドロフラン中バニリンのmL比で混合して、テトラヒドロフラン中のセリネクソール及びバニリンの混合溶液を形成することと、
b)テトラヒドロフランル中のセリネクソールとバニリンとの前記混合溶液に、約1mLテトラヒドロフラン中のセリネクソールとバニリンとの混合溶液対0.25ミリモル固体セリネクソール対0.26ミリモル固体バニリンの比で、固体セリネクソール及び固体バニリンを添加することと、
c)前記混合溶液を、前記添加したセリネクソール及びバニリンと共にスラリー化することと、
d)前記溶液を冷却して、バニリン形態Iを用いてセリネクソール共結晶を得ることと、
を含む、プロセス。
【請求項34】
前記スラリー化が、約60℃で約4時間行われる、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記冷却が、約-5℃~10℃で行われる、請求項33に記載のプロセス。
【請求項36】
前記冷却が、約0℃で行われる、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
バニリン形態Iとの前記セリネクソール共結晶を濾過することによって単離し、約45℃で約2~3時間風乾することを更に含む、請求項33に記載のプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリネクソール(selinexor)の共結晶形態を対象とし、詳しくは、共結晶形成剤(コフォーマー)としてコハク酸又はバニリンを使用するセリネクソールの共結晶形態を対象とする。更に、本開示はまた、コハク酸を使用するセリネクソール共結晶形態及びバニリンを使用するセリネクソール共結晶形態の調製のためのプロセスにも関する。更に、本開示はまた、これらの形態を含む医薬組成物に関し、またその形態を使用して疾患を治療するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
セリネクソールは、経口投与可能なCRM1の小分子阻害剤(染色体領域維持1タンパク質、エクスポーチン1又はXPO1と呼ばれる)であり、様々な癌細胞タイプで過剰発現されるため、癌などのCRM1に関連する障害を治療するために有用である。セリネクソールは、p53、p21、BRCA1/2、pRB、FOXO、及び他の成長調節タンパク質を含む腫瘍抑制タンパク質(TSP)などのカーゴタンパク質のCRM1媒介核外輸送を不可逆的に不活性化する。したがって、核外輸送(SINE)の選択的阻害であるセリネクソールの活性は、内因性腫瘍抑制プロセスを回復させ、正常細胞を温存しながら腫瘍細胞を選択的に排除する。セリネクソールは、化学名(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-IH-I,2,4-トリアゾール-1-イル)-N’-(ピラジン-2イル)アクリロヒドラジド、及び以下の構造を有する:
【化1】
【0003】
セリネクソールは、XPOVIO(登録商標)の商品名で販売されている。XPOVIO(登録商標)は、少なくとも4回の前治療を受けた再発又は難治性の多発性骨髄腫(RRMM)の成人患者の治療のためのデキサメタゾンとの併用が適応とされており、その疾患は、少なくとも2つのプロテアソーム阻害剤、少なくとも2つの免疫調節剤、及び抗CD38モノクローナル抗体に抵抗性である。
【0004】
セリネクソールはまた、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、子宮内膜癌、肉腫、脂肪肉腫、神経膠腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、脳腫瘍、子宮頸癌、卵巣癌、頭頸部癌、足潰瘍、急性リンパ性白血病、結腸直腸癌、及びリヒタートランスフォーメーション(SIRRT)の治療にも有用であると期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セリネクソールは、米国特許第8,999,996号及び同第9,714,226号に記載されている。セリネクソールの固体形態は、特許第10,519,139号(4つのパターンA~D)及び米国特許公開第2019/0023693号(非晶質及び14のパターンα~ξ)、及び2019/0336499(17のパターンT1~T17)に記載されている。参照文献のいずれも、コハク酸又はバニリンが存在する反応から生じるパターンをなんら説明していない。更に、参照文献のいずれも、セリネクソールの共結晶、より詳しくは、コハク酸又はバニリンとのセリネクソールの共結晶を開示していない。
【0006】
本発明は、セリネクソール共結晶形態を対象とし、より詳しくは、コハク酸をコフォーマーとして用いる2つの共結晶形態及びバニリンをコフォーマーとして用いる共結晶形態を対象とする。本開示はまた、セリネクソール共結晶形態の調製のためのプロセスにも関する。更に、本発明はまた、セリネクソール共結晶形態を含む医薬組成物、及びセリネクソール共結晶形態を使用して疾患を治療するための方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶のXRPDパターンを表している。
図2図2は、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶、コハク酸、及びセリネクソールに関するXRPDパターンの比較を表している。
図3図3は、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶のDSCプロットである。
図4図4は、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶のTGAプロットである。
図5図5は、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶のDVSプロットである。
図6図6は、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶のH NMRスペクトルである。
図7図7は、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶のFT-IRスペクトルを対象としている。
図8図8は、セリネクソールとコハク酸との物理的な非結合混合物のFT-IRスペクトルを対象としている。
図9図9は、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶に関するXRPDパターンを表している。
図10図10は、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶、コハク酸、及びセリネクソールに関するXRPDパターンの比較を表している。
図11図11は、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶に関するDSC及びTGAプロットを示している。
図12図12は、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶のH NMRスペクトルである。
図13図13は、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶のDVSプロットである。
図14図14は、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶のFT-IRスペクトルを対象としている。
図15図15は、バニリン形態Iとのセリネクソール共結晶に関するXRPDパターンを表している。
図16図16は、バニリン形態Iとのセリネクソール共結晶、バニリン、及びセリネクソールに関するXRPDパターンの比較を表している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明は、当業者が様々な実施形態を作製及び使用することを可能にするために提示される。具体的なデバイス、技術、及び用途の説明は、例としてのみ提示される。本明細書に記載の実施例に対する様々な修正は、当業者には明確であり、本明細書に記載の全般的原理は、様々な実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の実施例及び用途に適用することができる。したがって、様々な実施形態は、本明細書に記載及び示される実施例に限定されることを意図するものではないが、特許請求の範囲と一致する範囲が与えられるべきである。
【0009】
本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、「約、ほぼ(about)」及び「およそ(approximately)」という用語は、特定の固体形態を特徴づけるために提供される数値又は値の範囲に関連して使用されるとき、例えば、特定の温度又は温度範囲、例えば、溶融、脱水、脱溶媒和又はガラス転移イベントを含むDSC又はTGA熱イベントを説明する特定の温度又は温度範囲、例えば、温度又は湿度の関数としての質量変化などの質量変化、例えば、質量又は百分率の観点からの溶媒又は水分の含有量、又は、例えば、IR分光法若しくはラマン分光法若しくはXRPDによる分析などのピーク位置、などの特定の固体形態を特徴づけるために提供される数値又は値の範囲に関連して使用されるとき、その値又は値の範囲は、特定の固体形態を依然として説明しながら、当業者に合理的であると見なされる程度まで逸脱し得ることを示している。
【0010】
本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、「共結晶」及び「共結晶系」は、特に、超分子シントンアプローチを利用して設計できる非共有相互作用を介して相互作用する化学量論比において2つ以上の異なるコフォーマー分子化合物から構成される固体材料を指す。成分の少なくとも1つがセリネクソールであり、かつコフォーマーが第2の医薬的に許容される化合物である、共結晶は、コフォーマーとの医薬セリネクソール共結晶と呼ばれる。
【0011】
本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、「医薬組成物」は、医薬的に有効量の本発明の共結晶中のセリネクソールと、医薬的に許容される賦形剤と、を包含することを意図している。本明細書で使用するとき、用語「医薬組成物」は、錠剤、丸剤、粉剤、液剤、懸濁液、エマルション、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、又は注射製剤などの医薬組成物を含む。
【0012】
本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、本明細書で使用される「結晶性」という用語及び関連用語は、化合物、物質、改質物、材料、構成成分又は生成物を記載するために使用される場合、特に明記されていない限り、化合物、物質、改質物、材料、構成成分又は生成物がX線回折によって決定されるように実質的に結晶性であることを意味する。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st edition,Lippincott,Williams and Wilkins,Baltimore,Md.(2005);米国薬局方、第23版、1843-1844(1995)を参照されたい。
【0013】
本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、「賦形剤」という用語は、医薬的に許容される有機又は無機担体物質を指す。賦形剤は、有効な活性成分を含有する製剤を増量する目的で含まれる(したがって、しばしば「増量剤」、「充填剤」又は「希釈剤」と呼ばれる)、又は薬物吸収若しくは溶解性を促進するなど、最終剤形中の活性成分に対して治療強化を付与するために含まれる、薬剤の活性成分と共に配合された天然又は合成物質であり得る。賦形剤はまた、予想される貯蔵寿命にわたる変性の防止などのインビトロ安定性の補助に加えて、粉末流動性又は非付着特性を促進することなどによって、活性物質の取り扱いを補助するために、製造方法において有用であり得る。
【0014】
本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、「患者」という用語は、治療、観察、又は実験の対象である動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトを指す。好ましくは、患者は、治療及び/又は予防される疾患又は障害の少なくとも1つの症状を経験及び/又は呈している。更に、患者は、治療及び/又は予防される障害、疾患又は病状のいずれの症状も呈していない場合があるが、医師、臨床医、又は他の医療専門家により、前述の障害、疾患、又は病状を発症するリスクがあると見なされている。
【0015】
本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」及び「治療(treatment)」という用語は、疾患若しくは障害の根絶若しくは寛解、又は疾患若しくは障害に関連する1つ以上の症状の根絶又は寛解を指す。ある特定の実施形態では、これらの用語は、このような疾患若しくは障害を有する患者に1つ以上の治療剤を投与することに起因する疾患若しくは障害の蔓延又は悪化を最小限に抑えることを指す。いくつかの実施形態では、これらの用語は、疾患の症状の発症後に、他の追加の活性剤の有無にかかわらず、本明細書で提供される化合物を投与することを指す。
【0016】
本発明の特定の実施形態は、コハク酸とのセリネクソール共結晶を対象とし、より詳しくは、それぞれ、コハク酸形態I及びIIとのセリネクソール共結晶を対象としている。本発明の別の特定の実施形態は、バニリンとのセリネクソール共結晶の形態を対象とし、より詳しくは、それぞれ、バニリン形態Iとのセリネクソール共結晶を対象としている。コハク酸形態I及びIIとのセリネクソール共結晶、並びにバニリン形態Iとのセリネクソール共結晶は無水である。
【0017】
本発明はまた、コハク酸とのセリネクソール共結晶の形態I及びIIを調製するためのプロセスにも関する。
【0018】
コハク酸形態Iを用いてセリネクソール共結晶を調製するための本発明による別の実施形態は、
a)ギ酸エチル中の飽和セリネクソール溶液と、ギ酸エチル中の飽和コハク酸溶液を、約1ギ酸エチル中セリネクソール対1ギ酸エチル中コハク酸のmL比で混合して、ギ酸エチル中のセリネクソールとコハク酸との混合溶液を形成することと、
b)ギ酸エチル中のセリネクソールとコハク酸との混合溶液に、約1mLギ酸エチル中のセリネクソールとコハク酸との混合溶液対0.25ミリモル固体セリネクソール対0.375ミリモル固体コハク酸の比で、固体セリネクソール及び固体コハク酸を添加することと、
c)その混合溶液を、その添加したセリネクソール及びコハク酸と共にスラリー化することと、
d)その溶液を冷却して、コハク酸形態Iを用いてセリネクソール共結晶を得ることと、を含む。
【0019】
コハク酸形態Iを用いてセリネクソール共結晶を調製するための進行方法の更なる実施形態では、スラリー化が約60℃で約4時間行われる。別の実施形態は、冷却が、約-5℃~10℃で、より詳しくは約0℃で行われる。更に別の実施形態では、本方法は、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶を濾過することによって単離し、約45℃で約2~3時間風乾することを更に含む。更なる実施形態は、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶においては、セリネクソール対コハク酸のモル比は1:1である。
【0020】
本発明による更なる別の実施形態は、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶を調製するためであり、
a)セリネクソール溶液とコハク酸溶液とを混合する工程であって、セリネクソール又はコハク酸の溶液の溶媒が、ギ酸エチル、メタノール、1-プロパノール、酢酸エチル、イソプロパノール及びアセトン、又はこれらの混合物からなる群から選択されて、セリネクソールとコハク酸との混合溶液を形成し、セリネクソールのミリモル対コハク酸のミリモル対セリネクソールのための溶媒のmL対コハク酸のための溶媒のmLの比が、約1ミリモルセリネクソール対1~1.5ミリモルコハク酸対3~4mLセリネクソールのための溶媒対3~4mLコハク酸のための溶媒である、混合する工程と、
b)セリネクソールとコハク酸との混合溶液に抗溶媒を添加する工程であって、セリネクソールとコハク酸との混合溶液のmL対抗溶媒のmLの比が、約1mLセリネクソールとコハク酸との混合溶液対1~3mL抗溶媒である、添加する工程と、
c)工程b)の混合物を冷却して、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶を得る工程と、を含む。
【0021】
コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶を調製するための進行方法に関する更なる実施形態では、セリネクソール又はコハク酸を溶解するための溶媒は、約3:1~9:1の体積比の単一の溶媒又は溶媒の混合物である。更に別の実施形態では、溶媒は、1-プロパノール、1-プロパノールとメタノールとの混合物、酢酸エチルとメタノールとの混合物、又はギ酸エチルとメタノールとの混合物、より詳しくは、1-プロパノールとメタノールとの混合物、及び酢酸エチルとメタノールとの混合物である。更に別の実施形態では、セリネクソール溶液は、約45~60℃、より詳しくは約50~55℃の溶媒中にセリネクソールを溶解させることによって、調製される。なお更に別の実施形態では、コハク酸溶液は、約45~60℃、より詳しくは約50~55℃の溶媒中にコハク酸を溶解させることによって、調製される。別の実施形態では、抗溶媒は、C12~C18のアルカンであり、より詳しくは、C16(ヘプタン)である。更に、更なる実施形態では、抗溶媒の添加は、ほぼ室温で行われる。更なる実施形態では、冷却工程は、約-5℃~10℃で行われ、より詳しくは約0℃~5℃で行われる。更に別の実施形態では、本方法は、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶を濾過により単離し、約45℃で約8~10時間、真空下で乾燥させることを更に含む。更なる実施形態では、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶は、セリネクソール対コハク酸のモル比2:3である。
【0022】
バニリン形態Iを用いてセリネクソール共結晶を調製するための本発明による別の実施形態は、
a)テトラヒドロフラン中の飽和セリネクソール溶液と、テトラヒドロフラン中の飽和バニリン溶液を、約1テトラヒドロフラン中セリネクソール対1テトラヒドロフラン中バニリンのmL比で混合して、テトラヒドロフラン中のセリネクソール及びバニリンの混合溶液を形成することと、
b)テトラヒドロフランル中のセリネクソールとバニリンとのその混合溶液に、約1mLテトラヒドロフラン中のセリネクソールとバニリンとの混合溶液対0.25ミリモル固体セリネクソール対0.26ミリモル固体バニリンの比で、固体セリネクソール及び固体バニリンを添加することと、
c)その混合溶液を、その添加したセリネクソール及びバニリンと共にスラリー化することと、
d)その溶液を冷却して、バニリン形態Iを用いてセリネクソール共結晶を得ることと、を含む。
【0023】
バニリン形態Iを用いてセリネクソール共結晶を調製するための進行方法の更なる実施形態では、スラリー化が約60℃で約4時間行われる。別の実施形態は、冷却が、約-5℃~10℃で、より詳しくは約0℃で行われる。更に別の実施形態では、本方法は、バニリン形態Iとのセリネクソール共結晶を濾過することによって単離し、約45℃で約2~3時間風乾することを更に含む。
【0024】
更に、本発明はまた、コハク酸形態I若しくはIIとのセリネクソール共結晶、又はバニリン形態Iとのセリネクソール共結晶を含む医薬組成物、コハク酸形態I若しくはIIとのセリネクソール共結晶又はバニリン形態Iとのセリネクソール共結晶を使用して疾患を治療するための方法とにも関する。コハク酸形態I若しくはIIとのセリネクソール共結晶、又はバニリン形態Iとのセリネクソール共結晶を含む医薬組成物は、米国特許第9,714,226号に従って調製することができ、前述の特許は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。XPOVIO(登録商標)(セリネクソール)は、現在、20mg錠剤として入手可能である。XPOVIO(登録商標)の推奨開始用量は、デキサメタゾンとの併用で80mgとし、毎週1日目及び3日目に経口投与する。
【0025】
本開示は、それを必要とする患者に、コハク酸形態I若しくはIIとのセリネクソール共結晶又はバニリン形態Iとのセリネクソール共結晶を含む医薬組成物を投与することを含む、疾患を治療する方法を提供する。XPOVIO(登録商標)(セリネクソール)は、少なくとも4回の前治療を受けた再発又は難治性の多発性骨髄腫(RRMM)の成人患者の治療にデキサメタゾンとの併用が適応とされており、その疾患は、少なくとも2つのプロテアソーム阻害剤、少なくとも2つの免疫調節剤、及び抗CD38モノクローナル抗体に抵抗性である。
【実施例
【0026】
本明細書に従う実施例は、本発明の実施形態を対象とする。実施例は、当業者が様々な実施形態を作製及び使用することを可能にするために提示される。具体的なデバイス、技術、及び用途の説明は、例としてのみ提示される。本明細書に記載の実施例に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかとなり、本明細書に記載の全般的原理は、様々な実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の実施例及び用途に適用することができる。したがって、様々な実施形態は、本開示の例示であり、本開示は、本明細書に記載の、示された実施例に限定されることを意図するものではない。
【0027】
分析技術
XRPDパターンは、Cu Kα放射線源(λ=1.54Å)、9位置試料ホルダー及びLYNXEYE超高速検出器を備えたBruker D8 Advanceを使用して得られる。試料は、分析のために、ドーム付きのバックグラウンドがゼロの空気に敏感なケイ素プレートホルダーに配置する。当業者は、°2θ値及び相対強度値が、測定データに対してピーク検索を実行することによって生成され、d間隔値が、ブラッグの方程式を使用して、°2θ値から計器によって計算されることを認識することになる。当業者であれば、測定されたピークに関する相対強度は、例えば、使用される試料調製、配向、及び計器に起因して変化し得ることを更に認識することになる。
【0028】
TA Instruments Q10 DSCを使用してDSCデータを収集する。およそ、試料(2~8mg)を、密封されていないが被覆された気密性のアロジン処理されたアルミニウム試料パンに入れ、約50mL/分の窒素パージ下で約10℃/分の速度で約30~約300℃でスキャンする。DSCのいくつかは、オートサンプラーとRSC40とを備えたTA Instruments Q2000上で行う。サンプリングは、T4P(又はT3)モードで、Tzero気密性密封アルミニウム試料パンを使用して、20℃~320℃まで約10℃/分のランプ速度で行う。
【0029】
TGA測定値は、TA Q500装置を使用して記録される。約2~5mgの試料を、ピンホールが設けられた密閉気密性アロジン処理されたアルミニウムDSCパンに入れる。アルミニウムパンは事前に風袋を計量しておく。TGA検査は、10.0℃/分の加熱速度で約30~約300℃の温度範囲にわたって、60mL/分の流量において窒素でパージして行う。
【0030】
着等温線は、TA Instruments Q5000 SA DVSを使用して得られる。試料温度は、計器制御によって25℃に維持する。湿度は、乾燥窒素及び湿潤窒素の流れを200mL/分の総流量で混合することによって制御する。相対湿度は、試料付近に位置する較正したプローブ(動作範囲1.0~100%RH)によって測定される。%RHの関数としての試料の重量変化(質量緩和)は、微量天秤(精度±0.0001mg)によって絶えず監視される。
【0031】
典型的には、3~10mgの試料を、周囲条件下で、風袋引きしたメッシュステンレス鋼バスケット中に入れる。試料を、50%RH及び25℃(典型的な室内条件)でロード及びアンロードする。水分収着等温線は、以下に概説するように実施する(完全サイクル当たり2回のスキャン)。標準的な等温線は、0~90%RHの範囲にわたって、10%RHの間隔において25℃で実施する。典型的には、3つのサイクルを行う。TA Instruments Universal Analysis 2000を使用してデータ分析を行う。
【0032】
【表1】
【0033】
H-NMRデータは、TopSpinソフトウェアを備えたBruker Avance 300 MHz NMRを使用して収集する。0.05%(v/v)テトラメチルシラン(TMS)を含む重水素化ジメチルスルホキシド中に化合物を溶解することによって、試料を調製する。スキャン数は、H-NMRでは16である。
【0034】
IR分析は、KBrペレットを使用してFTIRのための固体試料を用いることによって行う。ペレットは、KBrと試料とを1:150の比率で混合することによって調製する(約2~5mgの試料及び350mgのKBr)。分析にはOmnicソフトウェアを使用し、試料を32スキャンして収集する。
【0035】
実験
以下の実施例は、コハク酸とのセリネクソールの共結晶形態及びバニリンとのセリネクソールの共結晶形態の調製に関する実施形態を提供する。
【0036】
実施例1
コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶の調製
2mLのコハク酸飽和ギ酸エチルを、2mLのセリネクソール飽和ギ酸エチルに加え、次いで、その混合物に、450mgのセリネクソール及び180mgのコハク酸を室温で添加して、スラリーを形成する。スラリーを60℃で4時間撹拌し、次いで一晩(約8時間)0℃に冷却する。高粘度スラリーを真空濾過し、次いで、42℃のホットプレート上で数時間(約2~3時間)にわたって空気乾燥させて、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶を得る。
【0037】
図1は、本方法によって得られたコハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶の実験XRPDパターンを表す。図2は、セリネクソール及びコハク酸に関するXRPDパターンと比較した、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶のXRPDパターンを表す。コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶は、そのXRPDパターンピーク及び以下の表Iに列記されているそれらの対応する強度によって特徴付けられる。
【0038】
【表2】
【0039】
角度測定値は、±0.2°2θである。コハク酸形態Iとの固体セリネクソール共結晶に関する重要な定義ピークとしては、5.2、16.7、17.0、17.6及び19.7°2θが挙げられる。
【0040】
DSCプロット(図3)は、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶に関する約121℃、152℃及び162℃における3つの熱イベントを示している。TGAプロット(図4)は、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶に関する約100℃から135℃までにおける約2.0%のTGA重量損失を示している。図5は、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶に関するDVSを示しており、そしてそれは水を吸着しやすいことを示している。そのような吸着は、水を吸着せず、低い溶解度を有するセリネクソールセルとは対照的に、共結晶の溶解度を助ける。図6は、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶に関するH NMRスペクトルである。図7は、コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶のFT-IRスペクトルを対象としているが、図8は、セリネクソールとコハク酸の非結合物理的混合物のFT-IRスペクトルを対象としている。
【0041】
実施例2
コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶の調製
方法1
セリネクソール(2.59g、5.85ミリモル)を、18mLのギ酸エチル及び2mLのアセトン中に55℃で溶解させる。コハク酸(0.69g、5.84ミリモル)を、15mLのギ酸エチル及び5mLのMeOH中に55℃で、又は20mLの1-プロパノール中に溶解させる。セリネクソール及びコハク酸溶液をフラスコ中で一緒に混合し、次いで、100mLのヘプタンを室温で添加する。得られた混合物を、5℃に冷却し、一晩撹拌して、沈殿物(precipitant)を得る。その沈殿物を、濾過によって単離し、次いで、45℃のオーブンで一晩(8~10時間)乾燥させて、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶を得る。
【0042】
方法2
セリネクソール(2.59g、5.85ミリモル)を、14mLのメタノール及び4mLの1-プロパノール中に50℃で溶解させる。コハク酸(0.69g、5.84ミリモル)を、14mLの1-プロパノール及び4mLのMeOH中に50℃で溶解させる。セリネクソール及びコハク酸溶液を、フラスコにおいて50℃で一緒に混合し、次いで、120mLのヘプタンを添加する。得られた混合物を、5℃に冷却し、2~3時間撹拌して、沈殿物を得る。その沈殿物を、濾過によって単離し、次いで、45℃のオーブンで一晩(8~10時間)乾燥させて、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶を得る。
【0043】
図9は、本方法によって得られたコハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶の実験XRPDパターンを表す。図10は、セリネクソール及びコハク酸に関するXRPDパターンと比較した、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶のXRPDパターンを表す。コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶は、そのXRPDパターンピーク及び以下の表IIに列記されているそれらの対応する強度によって特徴付けられる。
【0044】
【表3】
【0045】
角度測定値は、±0.2°2θである。コハク酸形態IIとの固体セリネクソール共結晶に関する重要な定義ピークとしては、10.4、16.6、18.9及び20.7°2θが挙げられる。
【0046】
図11は、DSC及びTGAプロットの両方を示している。DSCプロットは、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶に関する約156℃における1つの熱イベントを示している。図12は、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶に関するH NMRスペクトルである。図13は、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶に関するDVSを示しており、そしてそれは水を吸着しやすいことを示している。そのような吸着は、水を吸着せず、低い溶解度を有するセリネクソールセルとは対照的に、共結晶の溶解度を助ける。図14は、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶のFT-IRスペクトルを対象としている。
【0047】
実施例3
バニリン形態Iとのセリネクソール共結晶の調製
2mLのバニリン飽和テトラヒドロフランを、2mLのセリネクソール飽和テトラヒドロフランに添加し、次いで、その混合物に、450mgのセリネクソール及び160mgのバニリンを室温で添加して、スラリーを形成する。スラリーを60℃で4時間撹拌し、次いで一晩(約8時間)0℃に冷却する。高粘度スラリーを真空濾過し、次いで、42℃のホットプレート上で数時間(約2~3時間)にわたって空気乾燥させて、バニリン形態Iとのセリネクソール共結晶を得る。
【0048】
図15は、本方法によって得られた、バニリン形態Iとのセリネクソール共結晶の実験XRPDパターンを表している。図16は、セリネクソール及びバニリンに関するXRPDパターンと比較した、バニリン形態Iとのセリネクソール共結晶のXRPDパターンを表す。バニリン形態Iとのセリネクソール共結晶は、そのXRPDパターンピーク及び以下の表IIIに列記されているそれらの対応する強度によって特徴付けられる。
【0049】
【表4】
【0050】
角度測定値は、±0.2°2Θである。バニリン形態Iとの固体セリネクソール共結晶に関する重要な定義ピークとしては、12.6、15.8、及び19.0°2θが挙げられる。
【0051】
上記の実施例は、本開示の理解を助けるために提示され、当業者が様々な実施形態を作製及び使用することを可能にし、以下に続く特許請求の範囲に記載されている開示を制限することを意図しておらず、またそのように解釈するべきではない。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2021-09-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリネクソール共結晶。
【請求項2】
コハク酸とのセリネクソール共結晶である、請求項1に記載のセリネクソール共結晶。
【請求項3】
コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶である、請求項2に記載のコハク酸とのセリネクソール共結晶。
【請求項4】
示差走査熱量測定によって測定したときに、約121℃、146℃及び161℃で起こる1~3回の熱イベントを有する、請求項3に記載のコハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶。
【請求項5】
約5.2、16.7、17.0、17.6及び19.7°2θから選択される1つ以上のX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、請求項3に記載のコハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶。
【請求項6】
約5.2、16.7、17.0、17.6及び19.7°2θから選択される2つ以上のX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、請求項3に記載のコハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶。
【請求項7】
コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶である、請求項2に記載のコハク酸とのセリネクソール共結晶。
【請求項8】
示差走査熱量測定によって測定したときに、約155℃で起こる熱イベントを有する、請求項7に記載のコハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶。
【請求項9】
約10.4、16.6、18.9及び20.7°2θから選択される1つ以上のX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、請求項7に記載のコハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶。
【請求項10】
約10.4、16.6、18.9及び20.7°2θから選択される2つ以上のX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、請求項7に記載のコハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶。
【請求項11】
バニリンとのセリネクソール共結晶である、請求項1に記載のセリネクソール共結晶。
【請求項12】
バニリン形態Iとのセリネクソール共結晶である、請求項11に記載のバニリンとのセリネクソール共結晶。
【請求項13】
約12.6、15.8及び19.0°2θから選択される1つ以上のX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、請求項12に記載のバニリン形態Iとのセリネクソール共結晶。
【請求項14】
コハク酸形態Iとのセリネクソール共結晶を調製するためのプロセスであって、
a)ギ酸エチル中の飽和セリネクソール溶液と、ギ酸エチル中の飽和コハク酸溶液を、約1ギ酸エチル中セリネクソール対1ギ酸エチル中コハク酸のmL比で混合して、ギ酸エチル中のセリネクソールとコハク酸との混合溶液を形成することと、
b)ギ酸エチル中のセリネクソールとコハク酸との前記混合溶液に、約1mLギ酸エチル中のセリネクソールとコハク酸との混合溶液対0.25ミリモル固体セリネクソール対0.375ミリモル固体コハク酸の比で、固体セリネクソール及び固体コハク酸を添加することと、
c)前記混合溶液を、前記添加したセリネクソール及びコハク酸と共にスラリー化することと、
d)前記溶液を冷却して、コハク酸形態Iを用いてセリネクソール共結晶を得ることと、
を含む、プロセス。
【請求項15】
コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶を調製するためのプロセスであって、
a)セリネクソール溶液とコハク酸溶液とを混合する工程であって、セリネクソール又はコハク酸の前記溶液の溶媒が、ギ酸エチル、メタノール、1-プロパノール、酢酸エチル、イソプロパノール及びアセトン、又はこれらの混合物からなる群から選択されて、セリネクソールとコハク酸との混合溶液を形成し、セリネクソールのミリモル対コハク酸のミリモル対セリネクソールのための溶媒のmL対コハク酸のための溶媒のmLの比が、約1ミリモルセリネクソール対1~1.5ミリモルコハク酸対3~4mLセリネクソールのための溶媒対3~4mLコハク酸のための溶媒である、混合する工程と、
b)セリネクソールとコハク酸との前記混合溶液に抗溶媒を添加する工程であって、セリネクソールとコハク酸との混合溶液のmL対抗溶媒のmLの比が、約1mLセリネクソールとコハク酸との混合溶液対2~4mL抗溶媒である、添加する工程と、
c)工程b)の混合物を冷却して、コハク酸形態IIとのセリネクソール共結晶を得る工程と、
を含む、プロセス。
【請求項16】
バニリン形態Iとのセリネクソール共結晶を調製するためのプロセスであって、
a)テトラヒドロフラン中の溶解したセリネクソール溶液と、テトラヒドロフラン中の溶解したバニリン溶液を、約1テトラヒドロフラン中セリネクソール対1テトラヒドロフラン中バニリンのmL比で混合して、テトラヒドロフラン中のセリネクソール及びバニリンの混合溶液を形成することと、
b)テトラヒドロフランル中のセリネクソールとバニリンとの前記混合溶液に、約1mLテトラヒドロフラン中のセリネクソールとバニリンとの混合溶液対0.25ミリモル固体セリネクソール対0.26ミリモル固体バニリンの比で、固体セリネクソール及び固体バニリンを添加することと、
c)前記混合溶液を、前記添加したセリネクソール及びバニリンと共にスラリー化することと、
d)前記溶液を冷却して、バニリン形態Iを用いてセリネクソール共結晶を得ることと、
を含む、プロセス。

【国際調査報告】