(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(54)【発明の名称】ヘルペスウイルス科によって引き起こされるウイルス感染症の予防および/または治療に使用する、ベリー抽出物を含む製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/45 20060101AFI20220427BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220427BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20220427BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220427BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220427BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220427BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220427BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220427BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220427BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220427BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220427BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20220427BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20220427BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20220427BHJP
A61L 29/12 20060101ALI20220427BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20220427BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220427BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20220427BHJP
C12N 5/074 20100101ALN20220427BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20220427BHJP
【FI】
A61K36/45
A61P43/00 121
A61P31/22
A61P35/00
A61P37/02
A61P29/00 101
A61P25/00
A61P19/02
A61P25/28
A61P29/00
A61P17/00 101
A61P27/02
A61K36/185
A61K31/7048
A61L29/08
A61L29/12
A61L29/16
A23L33/105
C12N5/0783
C12N5/074
A61K131:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553311
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2020058651
(87)【国際公開番号】W WO2020201050
(87)【国際公開日】2020-10-08
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン リュック エルボー
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト ヴィントハブ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ブリュッヒャー
(72)【発明者】
【氏名】アンネ ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】マリア シュタインケ
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヒェン ボデム
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C081
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE03
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4B018MD09
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(57)【要約】
本発明は、対象のウイルス感染症の治療または予防に使用され、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物を含む組成物であり、前記ウイルスはヘルペスウイルス科に由来するものである組成物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のウイルス感染症の治療または予防に使用され、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物を含む組成物であり、前記ウイルスはヘルペスウイルス科に由来するものである組成物。
【請求項2】
前記ブラックカラントはクロスグリの果実であり、および/または前記ビルベリーはセイヨウスノキの果実であり、
前記ブラックカラントと前記ビルベリーからの抽出物を0.5:1~1:0.5の重量比で含む、請求項1記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記ブラックカラントと前記ビルベリーからのポマースの抽出物である、請求項1または請求項2記載の使用のための組成物。
【請求項4】
アントシアニンを含み、前記アントシアニンが少なくとも25重量%の濃度で存在する、請求項1~請求項3のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記抽出物は、アルコール抽出物、好ましくはメタノール抽出物である、請求項1~請求項4のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記抽出物は、前記ブラックカラントおよび/または前記ビルベリーからの抽出工程と、クロマトグラフィーによる精製工程と、前記抽出物と水との混合工程と、前記混合物の噴霧乾燥工程とを有する方法によって調製される、請求項1~請求項5のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項7】
以下のアントシアニン:シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ガラクトシド、シアニジン-3-アラビノシド、デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ガラクトシド、デルフィニジン-3-アラビノシド、ペツニジン-3-グルコシド、ペツニジン-3-ガラクトシド、ペツニジン-3-アラビノース、ペオニジン-3-グルコシド、ペオニジン-3-ガラクトシド、ペオニジン-3-アラビノース、マルビジン-3-グルコシド、マルビジン-3-ガラクトシド、マルビジン-3-アラビノース、シアニジン-3-ルチノシド、デルフィニジン-3-ルチノシド、好ましくはシアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ルチノシド、デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ルチノシド、シアニジン-3-ガラクトシド、およびデルフィニジン-3-ガラクトシドのうちの1つまたは複数を含む、請求項1~請求項6のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記ウイルスは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ロゼオロウイルス、またはカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV、HHV-8)、好ましくはHSV-1、EBV、CMVおよびHHV-8、より好ましくはHSV-1、CMVおよびHHV-8である、請求項1~請求項7のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項9】
アントシアニンを含み、1日あたり少なくとも80mgのアントシアニンの1~10回の経口投与、好ましくは1日あたり少なくとも80mgのアントシアニンの3~6回の経口投与で、前記対象に投与されるべき、請求項1~請求項8のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記対象に投与され、目的とするコンパートメント内で少なくとも30μg/mL、好ましくは少なくとも100μg/mLの濃度に達する、請求項1~請求項9のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記対象に挿入予定の医療器具、または前記対象に挿入された医療器具とともに使用する組成物であり、
必要に応じて前記挿入器具は、経皮性または気管内用のものである、請求項1~請求項10のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記対象への前記医療器具の挿入部位に投与されるべき、請求項11記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記医療器具は、気管内挿管または非経口栄養用である、請求項11または請求項12記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記医療器具は、注射針、カテーテル、ポート、挿管装置もしくはチューブ、ネブライザ、インプラント、バスキュラーアクセスカテーテル、脳マイクロカテーテル、末梢静脈挿入式中心静脈カテーテル、慢性中心静脈カテーテル、埋め込み型ポート、急性中心静脈カテーテル、ミッドラインカテーテル、短い抹消静脈カテーテル、または透析カテーテルである、請求項11~請求項13のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記対象内における前記医療器具の滞留時間は、24時間を超え、48時間を超え、72時間を超え、1週間を超え、2週間を超え、3週間を超え、好ましくは1週間を超え、2週間を超え、または3週間を超える、請求項11~請求項14のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項16】
前記対象はヒトであり、好ましくは、前記対象は妊娠しているか、免疫無防備状態であるか、または免疫抑制剤を服用している、請求項1~請求項15のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項17】
前記対象は、ヘルペスウイルス科のウイルスのキャリアであり、好ましくは、前記対象は、単純ヘルペスウイルスのキャリアである、請求項1~請求項16のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項18】
前記対象は、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV、HHV-8)に感染しており、必要に応じて前記対象は、HIV陽性であるか、またはAIDSに罹患している、請求項1~請求項17のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項19】
前記ウイルス感染は肝臓または腎臓に生じている、請求項1~請求項18のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項20】
ヘルペスウイルス科のウイルスに関連する癌の予防または治療のための組成物であり、必要に応じて
(i)前記ウイルスはEBVであり、前記癌は、リンパ腫(ホジキンリンパ腫およびバーキットリンパ腫を含む)、鼻咽頭癌、胃癌または乳癌であるか、あるいは
(ii)前記ウイルスはHHV-8であり、前記癌は、カポジ肉腫、原発性滲出液リンパ腫、HHV-8関連多中心性キャッスルマン病または乳癌である、請求項1~請求項19のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項21】
ヘルペスウイルス科のウイルスに関連する自己免疫疾患の予防または治療のための組成物であり、必要に応じて
(i)前記ウイルスはEBVであり、前記自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、シェーグレン症候群または多発性硬化症であるか、あるいは
(ii)前記ウイルスはHSV-1であり、前記自己免疫疾患は多発性硬化症である、請求項1~請求項20のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項22】
アルツハイマー病の予防または治療のための請求項1~請求項21のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項23】
β-アミロイド斑の形成を軽減し、必要に応じて、ウイルス感染症を軽減または予防することによってβ-アミロイド斑の形成を軽減する、請求項22記載の使用のための組成物。
【請求項24】
脳組織の炎症を軽減する、請求項22または請求項23記載の使用のための組成物。
【請求項25】
ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物を含み、皮膚に投与されるべき局所組成物に適した薬学的に許容される賦形剤をさらに含む局所組成物であり、
好ましくは、前記薬学的に許容される賦形剤が、1つまたは複数の等張化剤、緩衝剤、防腐剤、酸化防止剤、安定剤、pH調整剤、浸透促進剤、界面活性剤および保湿剤を含む、局所組成物。
【請求項26】
ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物を含み、眼に投与されるべき組成物に適した薬学的に許容される賦形剤をさらに含む点眼組成物であり、
好ましくは、前記薬学的に許容される賦形剤が、1つまたは複数の等張化剤、緩衝剤、防腐剤、酸化防止剤、安定剤、pH調整剤、浸透促進剤、界面活性剤および保湿剤を含む、点眼組成物。
【請求項27】
鎮痛剤と、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物とを含む局所組成物。
【請求項28】
アントシアニンを含み、前記アントシアニンが少なくとも25重量%の濃度で存在する、請求項25~請求項27のいずれか一項記載の組成物。
【請求項29】
対象への挿入に適した医療器具であり、前記器具の外面にコーティング組成物を有する医療器具であり、
前記コーティング組成物は、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物を含む医療器具。
【請求項30】
注射針、カテーテル、ポート、挿管装置もしくはチューブ、ネブライザ、インプラント、バスキュラーアクセスカテーテル、脳マイクロカテーテル、末梢静脈挿入式中心静脈カテーテル、慢性中心静脈カテーテル、埋め込み型ポート、急性中心静脈カテーテル、ミッドラインカテーテル、短い抹消静脈カテーテル、または透析カテーテルであり、好ましくはその外面がプラスチックである、請求項29記載の医療器具。
【請求項31】
請求項29または請求項30記載の医療器具の製造方法であり、
前記医療器具の外面に前記コーティング組成物を適用する工程を含み、
必要に応じて、前記コーティング組成物は、クリーム、ヒドロゲルクリーム、またはスプレーとして形成される方法。
【請求項32】
抗ウイルス剤と、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物とを含む組成物であり、
前記抗ウイルス剤は、ヘルペスウイルス科抗ウイルス剤、好ましくはDNA複製の阻害剤、必要に応じてDNAポリメラーゼ阻害剤またはDNAターミナーゼ複合体阻害剤である、組成物。
【請求項33】
前記抗ウイルス剤は、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、ファムシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビルまたはレテルモビルである、請求項32記載の組成物。
【請求項34】
局所組成物または点眼薬の形であり、
好ましくは抗ウイルス剤がアシクロビルである、請求項32または請求項33記載の組成物。
【請求項35】
細胞または複数の細胞を、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物を含む組成物と接触させる工程を含み、
必要に応じて、前記細胞または複数の細胞は、幹細胞またはCAR-T細胞であり、
必要に応じて、前記接触は、前記細胞または複数の細胞を前記組成物とともに培養または保存することを含む、エクスビボでの細胞または複数の細胞のウイルス感染リスクを予防または軽減する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象のウイルス感染症の治療または予防に使用され、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物を含む組成物であり、前記ウイルスはヘルペスウイルス科に由来するものである組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アントシアニンは、周囲のpH値に応じて、赤、紫または青に見える場合のある、水溶性の液胞型顔料である。アントシアニンは、フラボノイド群に属し、フェニルプロパノイド経路を介して合成される。それらは、高等植物の全組織、主に花や果物で発生し、糖が添加されたアントシアニジンに由来する。アントシアニンはフラビリウム塩のグリコシドである。したがって、各アントシアニンは、3つの構成要素で構成されている:ヒドロキシル化コア(アグリコン); 糖質ユニット; 対イオン。アントシアニンは、多くの花や果物に存在する天然色素であり、個々のアントシアニンは、塩化物塩として、例えばPolyphenols Laboratories AS社(ノルウェー サンドネス)から市販されている。自然界で最も頻繁に発生するアントシアニンは、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ペオニジンおよびペツニジンのグリコシドである。
【0003】
アントシアニン(特に、果物の摂取に起因するもの)は、抗酸化作用、抗炎症作用、抗菌作用および抗発癌作用、視力の改善、アポトーシスの誘導、そして神経保護作用など、幅広い生物学的活性を持っていることが知られている。アントシアニンの特に適した果物源は、サクランボ、ビルベリー、ブルーベリー、ブラックカラント、レッドカラント、ブドウ、クランベリー、イチゴ、リンゴ、そして赤キャベツなどの野菜である。ビルベリー(特に、セイヨウスノキ)とブラックカラント(特に、クロスグリ)が特に適している。
【0004】
ビルベリーは、デルフィニジンやシアニジンのグリコシドなど、多様なアントシアニンを含み、スノキ属に密接に関連するいくつかの種(例:セイヨウスノキ(ビルベリー)、クロマメノキ(ボグ・ビルベリー、ボグ・ブルーベリー、ボグ・ワートルベリー、ボグ・ハックルベリー、北部ビルベリー、グラウンド・ハート)、Vaccinium caespitosum(ドワーフ・ビルベリー)、Vaccinium deliciosum(カスケード・ビルベリー)、Vaccinium membranaceum(マウンテン・ビルベリー、ブラック・マウンテン・ハックルベリー、ブラック・ハックルベリー、二枚葉ハックルベリー)、Vaccinium ovalifolium(オーバルリーフ・ブルーベリー、オーバルリーフ・ビルベリー、マウンテン・ブルーベリー、ハイブッシュ・ブルーベリー)を含む。
【0005】
セイヨウスノキの乾燥ビルベリー果実には、最大10%のカテキン型タンニン、プロアントシアニジン、およびアントシアニンが含まれている。アントシアニンは主に、デルフィニジン、シアニジン、程度は低いが、マルビジン、ペオニジンおよびペツニジン(シアニジン-3-O-グルコシド(C3G)、デルフィニジン-3-O-グルコシド(D3G)、マルビジン-3-O-グルコシド(M3G)、ペオニジン-3-O-グルコシド、およびペツニジン-3-O-グルコシド)のグルコシド、ガラクトシド、またはアラビノシドである。フラボノールには、ケルセチン-およびケンペロール-グルコシドが含まれる。果実には、他のフェノール化合物(例:クロロゲン酸、コーヒー酸、o-、m-およびp-クマル酸、フェルラ酸)、クエン酸およびリンゴ酸、そして揮発性化合物も含まれている。
【0006】
ブラックカラントの果実(クロスグリ)には、高レベルのポリフェノール、特にアントシアニン、フェノール酸誘導体(ヒドロキシ安息香酸とヒドロキシ桂皮酸の両方)、フラボノール(ミリセチン、ケルセチン、ケンペロールおよびイソラムネチンのグリコシド)、およびプロアントシアニン(120~166mg/100gの新鮮なベリー)が含まれている。主なアントシアニンは、デルフィニジン-3-O-ルチノシド(D3R)とシアニジン-3-O-ルチノシド(C3R)であるが、デルフィニジン-およびシアニジン-3-O-グルコシドも含まれている(ガフネ、ビルベリー-ラボラトリー・ガイダンス・ドキュメント2015年、植物性不純物プログラム)。
【0007】
特許文献1は、ブラックカラントとビルベリーの抽出物からのアントシアニンの混合物を含む栄養補助剤(栄養補助食品)の製造方法に関する。アントシアニンは、セイヨウスノキとクロスグリから搾汁する果汁の廃棄物として生成される果皮のケークから抽出された。単一のアントシアニンの代わりに、異なるアントシアニンの組み合わせ(特に、単糖アントシアニンと二糖アントシアニンの両方を含む組み合わせ)を経口投与すると、個々のアントシアニンの有益な効果が増強されることが示された。前記相乗効果は、少なくとも部分的には、異なるアントシアニンの異なる溶解度と異なる取り込みプロファイルから生じると考えられている。
【0008】
ヘルペスウイルス科は、ヒトに感染症や特定の病気(例:口唇ヘルペス、水痘、伝染性単核球症様症候群)を引き起こすDNAウイルスの大きなファミリーである。さらに、それらはアルツハイマー病、バーキットリンパ腫およびカポジ肉腫などの深刻な病態生理学に関連している可能性がある。潜伏性の再発性感染症も、このウイルス群の典型であり、例えば、世界の人口の50%超が、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)に対して血清学的陽性である。この遍在するヘルペスウイルスは、ヒトの広範な感染症の原因であり、免疫能の正常な宿主では良性であるが、免疫系が未熟または不全な患者(AIDS患者や臓器移植患者など)は生命を脅かす合併症に苦しむ。
【0009】
合計で130を超えるヘルペスウイルスが知られているが、9種類のヘルペスウイルスがヒトに疾患を引き起こすことが知られ、例えば、口唇および/または性器ヘルペスを標的とする単純ヘルペスウイルス1型や単純ヘルペスウイルス2型(HSV-1およびHSV-2、HHV1およびHHV2とも呼ばれる)や、粘膜上皮細胞(神経潜伏)を標的とする他の単純ヘルペス感染症である。水痘帯状疱疹ウイルス(VZV、HHV-3)も粘膜上皮細胞(神経潜伏)を標的としており、水痘や帯状疱疹を引き起こす。エプスタイン・バーウイルス(EBV、HHV-4)は、B細胞(B細胞での潜伏を含む)や上皮細胞を標的としており、伝染性単核球症、バーキットリンパ腫、AIDS患者のCNSリンパ腫、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、鼻咽腔癌、およびHIV関連の毛状白板症の原因である。ヒトサイトメガロウイルス(HCMV、HHV-5)は、単核球や上皮細胞(潜伏部位としての単核球)を標的としており、伝染性単核球症様症候群や網膜炎を引き起こす。ヒトヘルペスウイルス6A型やヒトヘルペスウイルス6B型(HHV-6AおよびHHV-6B)は、T細胞(潜伏部位を含む)を標的としており、第六病(突発性発疹または急性発疹症)を引き起こす。ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)は、同じくT細胞を標的としており、薬剤性過敏症症候群、脳症、片側痙攣片麻痺てんかん症候群、肝炎感染症、感染後脊髄神経根神経障害、バラ色ひこう疹、そしてHHV-4の再活性化の原因であり、「単核球症類似疾患」につながる。カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV、HHV-8)は、リンパ球やその他の細胞を標的としており、カポジ肉腫、原発性滲出液リンパ腫、何種類かの多中心性キャッスルマン病を引き起こす。
【0010】
ヘルペスウイルスは、宿主への終生感染を確立する能力で知られており、それは免疫回避によって達成される。興味深いことに、ヘルペスウイルスは、ヒトインターロイキン-10(hIL-10)の模倣や、感染細胞における主要組織適合遺伝子複合体II(MHC II)のダウンレギュレーションなど、免疫系を回避する様々な方法を持っている。
【0011】
過去10年間で、ヘルペスウイルスの複製と疾患原因状態についての理解がある程度深まった。これは、これらのウイルスを標的とする強力な抗ウイルス化合物の開発に寄与する。これらの抗ウイルス療法には、安全かつ効果的であると思われるものもあるが(アシクロビル、ペンシクロビル)、毒性を伴うものもある(ガンシクロビル、ホスカルネット)。アシクロビルの最も深刻な副作用は神経毒であり、これは通常、薬物の血清濃度が高い、腎機能が低下している対象に発生する。(レヴァンカールら、1995年)。神経毒は、無気力、錯乱、幻覚、震え、ミオクローヌス、発作、錐体外路症状、そして意識状態の変性として現れ、治療を開始してから最初の数日以内に発症する。これらの兆候や症状は通常、アシクロビルを中止してから数日以内に自然に消失する。アシクロビルに対するHSVの耐性は、特に長期治療を受ける免疫不全患者の間で、重要な臨床的課題になっている(イングルンドら、1990年)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許公開公報第1443948A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これに関連して、驚くべきことに、ブラックカラントとビルベリーの抽出物は、ヘルペスウイルスの感染と複製を強力に阻害し、さらにブラックカラントの抽出物とビルベリーの抽出物との間には驚くべき相乗効果があることがわかった。したがって、本発明は、ヘルペス感染症の治療および予防における抗ウイルス剤としてのブラックカラントとビルベリーの抽出物の使用に基づいている。したがって、ブラックカラントとビルベリーの抽出物は、その抗ウイルス効果と、細胞生存率へのプラス影響および無毒性とを組み合わせることにより、さまざまなヘルペス感染症やそれらに関連する疾患に対する重要な解決策となり得る。
【0014】
本発明は、対象のウイルス感染症の治療または予防に使用され、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物を含む組成物であり、前記ウイルスはヘルペスウイルス科に由来するものである組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一実施形態では、組成物は、ウイルス感染症の治療または予防に使用するためのものであり、前記ウイルスは、アルファヘルペスウイルス亜科またはガンマヘルペスウイルス亜科に由来し、好ましくは、前記対象はヒトである。
【0016】
別の実施形態では、本発明に係る組成物は、特に、ヒト宿主におけるウイルス感染症の治療または予防に使用するためのものであり、前記ウイルスは、以下から選択される。
‐単純ヘルペスウイルス1型および2型(HSV-1およびHSV-2、HHV1およびHHV2)、
‐水痘帯状疱疹ウイルス(VZV、HHV-3)、
‐エプスタイン・バーウイルス(EBV、HHV-4)、
‐ヒトサイトメガロウイルス(HCMV、HHV-5)、
‐ヒトヘルペスウイルス6A型および6B型(HHV-6AおよびHHV-6B)、
‐ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)、および
‐カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV、HHV-8)。
【0017】
前記ウイルスは、好ましくはHSV-1、EBV、CMVまたはHHV-8、より好ましくはHSV-1、mCMVおよびHHV-8であり、前記組成物は好ましくはウイルス感染を抑制する。
【0018】
さらに、ヘルペスウイルスは脳内で最も頻繁に検出される病原体である。一定の獲得免疫下では、これらの感染症は、健康な宿主内においてほとんど無症候性である。ただし、多くの神経向性ヘルペスウイルスは、他のストレス要因や遺伝的危険因子との関連で、中枢神経系の病理と直接関連している。単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)やヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)などの神経向性ヘルペスウイルスは、アルツハイマー病(AD)などの神経変性疾患の病理に関与していることが指摘されている(オーグスティンら、神経再生研究13(2)、211~221頁、2018年)。例えば、単純ヘルペスウイルスHSV-1は、アミロイド斑と同じ領域で発見されている。HSV-1は、アミロイドベータ(Aβ)の神経的生成と蓄積、タウ・タンパク質の過剰リン酸化、カルシウムホメオスタシスの調節不全、そしてオートファジー障害など、AD関連の病態生理学や病理を誘発することが示されている(Harris&Harris、Frontiers in Aging Neuroscience第1巻、10(48)、2018年)。これは、ADを抗ウイルス薬で治療または予防できる可能性を示唆している。
【0019】
アテリンヘルペスウイルス1型(クモザルヘルペスウイルス)、牛ヘルペスウイルス2型(牛乳頭炎や偽ランピースキン病を引き起こす)、オナガザルヘルペスウイルス1型(ヘルペスBウイルスとしても知られ、マカクに単純ヘルペス様疾患を引き起こす。症状があり、ヒトに治療されていない場合、通常は致命的である)、マカシンヘルペスウイルス1型、牛ヘルペスウイルス1型(牛伝染性鼻気管炎、膣炎、亀頭包皮炎、および流産を牛に引き起こす)、牛ヘルペスウイルス5型(牛に脳炎を引き起こす)、スイギュウヘルペスウイルス1型、ヤギヘルペスウイルス1型(ヤギに結膜炎や呼吸器疾患を引き起こす)、イヌヘルペスウイルス1型(子犬に重度の出血性疾患を引き起こす)、馬ヘルペスウイルス1型(馬に呼吸器疾患、神経疾患/麻痺、および自然流産を引き起こす)、馬ヘルペスウイルス3型(馬に媾疹を引き起こす)、馬ヘルペスウイルス4型(馬に鼻肺炎を引き起こす)、馬ヘルペスウイルス8型、馬ヘルペスウイルス9型、猫ヘルペスウイルス1型(猫に猫ウイルス性鼻気管炎や角膜炎を引き起こす)、Suidヘルペスウイルス1型(オーエスキー病を引き起こし、仮性狂犬病とも呼ばれる)、ガンカモ類ヘルペスウイルス1型、ハト科ヘルペスウイルス1型、七面鳥ヘルペスウイルス2型(マレック病を引き起こす)、七面鳥ヘルペスウイルス3型(GaHV-3またはMDV-2)、七面鳥ヘルペスウイルス1型(HVT)、クジャクヘルペスウイルス1型、七面鳥ヘルペスウイルス1型(鳥に鶏伝染性喉頭気管炎を引き起こす)、オウムヘルペスウイルス1型(鳥にパチェコ病を引き起こす)、豚ヘルペスウイルス2型(豚に封入体鼻炎を引き起こす)、オオカモシカヘルペスウイルス1型(牛の悪性カタル熱を引き起こす)、オオカモシカヘルペスウイルス2型(MCFのアンテロープ版やハーテビースト版を引き起こす)、クモザルヘルペスウイルス2型、牛ヘルペスウイルス4型、オナガザルヘルペスウイルス17型、馬ヘルペスウイルス2型(ウマサイトメガロウイルス感染症を引き起こす)、馬ヘルペスウイルス5型、馬ヘルペスウイルス7型、ニホンザルラディノウイルス、ウサギヘルペスウイルス1型、ネズミヘルペスウイルス4型(マウスガンマヘルペスウイルス-68、MHV-68)、コイヘルペスウイルス1型、2型、3型(CyHV1、CyHV2およびCyHV3)(真鯉、金魚、コイに病気を引き起こす)によるウイルス感染症を治療または予防するために、本発明に係る組成物を使用することもさらに好ましい。
【0020】
好ましい実施形態では、ブラックカラントは、クロスグリの果実であり、および/またはビルベリーは、セイヨウスノキの果実である。組成物がブラックカラントとビルベリーからの抽出物を0.5:1~1:0.5の重量比で含む場合がさらに好ましい。本発明の有利な構成では、組成物は、ブラックカラントとビルベリーからのポマースの抽出物である。
【0021】
組成物がアントシアニンを含み、アントシアニンが少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも30重量%、または少なくとも35重量%、または少なくとも40重量%、または少なくとも45重量%、または少なくとも50重量%の濃度で組成物中に存在する場合が特に好ましい。
【0022】
本発明によれば、抽出物がアルコール抽出物、好ましくはメタノール抽出物である場合が好ましい。抽出物は、好ましくは、以下の工程を含む方法によって生成される。
‐ブラックカラントおよび/またはビルベリーの抽出工程、
‐クロマトグラフィーによる精製工程、
‐抽出物と水の混合工程、および
‐混合物の噴霧乾燥工程。
【0023】
このような方法の一例は、欧州特許公報第1443948号に開示されている。
好ましい実施形態では、マルトデキストリンが組成物に添加される。
【0024】
本発明による組成物は、好ましくは、少なくとも3つの単糖アントシアニンを含む。さらに、それは、好ましくは、糖がアラビノースである少なくとも1つの単糖アントシアニン、あるいは二糖がルチノースである少なくとも1つの二糖アントシアニンを含む。組成物は、好ましくは、少なくとも2つの異なるアグリコン、より好ましくは少なくとも4つの異なるアグリコンを持つアントシアニンを含む。特に好ましくは、組成物は、アグリコンユニットがシアニジン、ペオニジン、デルフィニジン、ペツニジン、マルビジン、および必要に応じてペラルゴニジンであるアントシアニンを含む。1つの好ましい実施形態では、組成物はまた、少なくとも1つの三糖アントシアニンを含む。二糖アントシアニンは単糖よりも水溶性が高い;さらに、シアニジンおよびデルフィニジンアントシアニンは、最も水溶性の高いアントシアニンの1つである。
【0025】
本発明の有利な実施形態では、アントシアニンは、シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ガラクトシド、シアニジン-3-アラビノシド、デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ガラクトシド、デルフィニジン-3-アラビノシド、ペツニジン-3-グルコシド、ペツニジン-3-ガラクトシド、ペツニジン-3-アラビノース、ペオニジン-3-グルコシド、ペオニジン-3-ガラクトシド、ペオニジン-3-アラビノース、マルビジン-3-グルコシド、マルビジン-3-ガラクトシド、マルビジン-3-アラビノース、シアニジン-3-ルチノシド、デルフィニジン-3-ルチノシドから選択される。アントシアニンは、好ましくは、シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ルチノシド、デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ルチノシド、シアニジン-3-ガラクトシド、デルフィニジン-3-ガラクトシドから選択される。
【0026】
アントシアニンは、天然資源または合成生成物からのものであってもよい。天然資源は、果実、花、葉、茎、および根、好ましくは紫色の花弁、黒豆の種皮から選択されることが好ましい。好ましくは、アントシアニンは、アサイー、ブラックカラント、アロニア属、ナス、ブラッドオレンジ、マリオンブラックベリー、ブラックラズベリー、ラズベリー、ワイルドブルーベリー、サクランボ、クィーンガーネットプラム、レッドカラント、パープルコーン(Z. mays L.)、コンコードブドウ、ノートンブドウ、マスカディンブドウ、赤キャベツ、沖縄サツマイモ、ウベ、黒米、赤玉ねぎ、黒にんじんから選択される果実から抽出される。アントシアニンに特に適した果物源は、サクランボ、ビルベリー、ブルーベリー、ブラックカラント、レッドカラント、ブドウ、クランベリー、イチゴ、ブラックチョークベリーおよびリンゴ、ならびに赤キャベツなどの野菜である。ビルベリー(特に、セイヨウスノキ)と、ブラックカラント(特に、クロスグリ)が特に適している。天然源として1つまたは複数のアントシアニンを豊富に含む植物、好ましくはデルフィニジン-3-ルチノシドを豊富に含む植物を使用することがさらに好ましい。
【0027】
本発明の組成物のアントシアニン中の対イオンは、生理学的に許容される任意の対アニオン(例:塩化物、コハク酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩)であってよい。ただし、好ましくは、対イオンは、フルーツ酸アニオン、特にクエン酸塩であり、これは、製品に特に心地よい味を持たせるためである。アントシアニンに加えて、組成物は、望ましくは、ビタミン(好ましくはビタミンC)、フラボン、イソフラボン、血液凝固阻止剤(例:マルトデキストリン、シリカ)、乾燥剤などのさらなる有効成分または不活性成分を含んでいてもよい。
【0028】
組成物がアントシアニンを含み、アントシアニン/レジメンの投与において、1日あたり少なくとも80mgのアントシアニンの1~10回の経口投与、好ましくは1日あたり少なくとも80mgのアントシアニンの3~6回の経口投与で、前記対象に投与される場合が好ましい。
【0029】
医療器具を対象に使用すると、ウイルス感染が生じる可能性があることが知られている。これは、カテーテルや栄養チューブなどの器具を、任意の時間、対象内に留めておくべき場合(例えば、対象内での器具の滞留時間が24時間を超える場合)に特に当てはまる。
【0030】
したがって、好ましい実施形態では、組成物は、対象に挿入予定の医療器具、あるいは対象にすでに挿入された医療器具であり、必要に応じて経皮性または気管内用である医療器具と共に使用するためのものである。好ましい実施形態では、組成物は、医療器具の対象への挿入部位に投与されるべきである。医療器具が気管内挿管または非経口栄養のためのものである場合がさらに好ましい。
【0031】
特定の構成では、医療器具は、注射針、カテーテル、ポート、挿管装置もしくはチューブ、ネブライザ、インプラント、バスキュラーアクセスカテーテル、脳マイクロカテーテル、末梢静脈挿入式中心静脈カテーテル、慢性中心静脈カテーテル、埋め込み型ポート、急性中心静脈カテーテル、ミッドラインカテーテル、短い抹消静脈カテーテル、または透析カテーテルである。
【0032】
対象内における医療器具の滞留時間は、24時間を超え、48時間を超え、72時間を超え、1週間を超え、2週間を超え、3週間を超え、好ましくは1週間を超え、2週間を超え、または3週間を超えることが好ましい。
【0033】
さらに有利な構成では、組成物は、非経口ボーラス注射/注入または非経口栄養液として対象に投与されるべきである。救命治療が効果的でなく、(治療選択肢がないために)最終治療が利用できない重篤患者を安定させるために組成物を使用することも好ましい。
【0034】
本発明に係る組成物は、目的とするコンパートメントにおいて少なくとも30μg/mL、好ましくは少なくとも100μg/mLの濃度に達するように、対象に投与されるべきである。目的コンパートメントは、血液およびリンパ液であり、具体的にはヘルペスウイルスに感染している免疫系細胞を取り巻く媒介物(好ましくは、末梢血単核細胞(PBMC)、特にB細胞、T細胞、樹状細胞)である。
【0035】
好ましい実施形態では、対象はヒトであり、好ましくは、対象は妊娠しているか、免疫不全症であるか、免疫抑制剤を服用しているか、またはヘルペスウイルス科のウイルスのキャリアであり、好ましくは、対象は単純ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、またはヒトサイトメガロウイルスのキャリアである。
【0036】
別の実施形態では、対象は、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV、HHV-8)に感染しており、必要に応じて、対象は、HIV陽性であるか、またはAIDSに罹患している。
【0037】
好ましい実施形態では、ウイルス感染は肝臓または腎臓に生じている。試験ベリー抽出物は、既知の抗ウイルス剤とは対照的に幅広い活性を示す。したがって、肝臓感染症(EBV、CMV、HSV)と診断された場合に使用できる。ベリー抽出物は腎臓に対して毒性がないので、移植後に予防投与として使用することもできる。
【0038】
本発明の別の態様は、ヘルペスウイルス科のウイルスに関連する癌の予防または治療のための組成物であり、ここで、組成物は、ブラックカラントおよびビルベリーの抽出物を含み、必要に応じて
(i)前記ウイルスはEBVであり、前記癌は、リンパ腫(ホジキンリンパ腫およびバーキットリンパ腫を含む)、鼻咽頭癌、胃癌または乳癌であるか、あるいは
(ii)前記ウイルスはHHV-8であり、前記癌は、カポジ肉腫、原発性滲出液リンパ腫、HHV-8関連多中心性キャッスルマン病または乳癌である組成物に関する。
【0039】
本発明の別の態様は、ヘルペスウイルス科のウイルスに関連する自己免疫疾患の予防または治療のための組成物であり、ここで、組成物は、ブラックカラントおよびビルベリーの抽出物を含み、必要に応じて
(i)前記ウイルスはEBVであり、前記自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、シェーグレン症候群または多発性硬化症であるか、あるいは
(ii)前記ウイルスはHSV-1であり、前記自己免疫疾患は多発性硬化症である組成物に関する。
【0040】
これらの態様において、ブラックカラントとビルベリーの抽出物を含む組成物の成分は、上記の通りであってよい。
【0041】
本発明に係る使用のための組成物は、好ましくは、身体的または感情的ストレスにさらされた対象、または潜在性ヘルペスウイルス感染症の再活性化につながり得る倦怠感、鬱病または不安症に苦しんでいる対象に対し有用である。
【0042】
さらに、組成物は、アルツハイマー病の予防または治療に有用である。特に、実施例に示されるように、本発明者らは、ブラックカラントとビルベリーの抽出物を含む組成物が、ウイルス関連のβ-アミロイド沈着を驚くほど減少させることを見出した。
【0043】
したがって、本発明の別の態様は、アルツハイマー病の予防または治療に使用するための組成物であり、ブラックカラントとビルベリーの抽出物を含み、β-アミロイド斑の形成を軽減し、必要に応じて、ウイルス感染症を軽減または予防することによってβ-アミロイド斑の形成を軽減する組成物を包含する。
【0044】
ウイルス感染の軽減は、血液サンプルにPCRを実行してウイルスコピー数の減少を測定することによって評価することができる。ウイルスコピー数は、感染が受動的であるか能動的であるかを測定するために使用することができる。組成物は、ウイルス感染の予防と、ウイルスの再活性化防止との両方に使用することができる。
【0045】
特定の構成では、アルツハイマー病の予防または治療に使用するための組成物は、脳組織の炎症を軽減する。これに関連して、脳炎も予防できる可能性がある。
【0046】
この態様において、ブラックカラントとビルベリーの抽出物を含む組成物の成分は、上記の通りであってよい。
【0047】
本発明のさらなる態様は、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物を含み、皮膚に投与されるべき局所組成物に適した薬学的に許容される賦形剤をさらに含む局所組成物であり、好ましくは、前記薬学的に許容される賦形剤が、1つまたは複数の等張化剤、緩衝剤、防腐剤、酸化防止剤、安定剤、pH調整剤、浸透促進剤、界面活性剤および保湿剤を含む、局所組成物である。局所組成物がリップクリームまたは唇保護製品である場合がさらに好ましい。
【0048】
本発明のさらなる態様は、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物を含み、眼に投与されるべき組成物に適した薬学的に許容される賦形剤をさらに含む点眼組成物であり、好ましくは、前記薬学的に許容される賦形剤が、1つまたは複数の等張化剤、緩衝剤、防腐剤、酸化防止剤、安定剤、pH調整剤、浸透促進剤、界面活性剤および保湿剤を含む、点眼組成物である。
【0049】
本発明はまた、
‐鎮痛剤と、ブラックカラントおよびビルベリーの抽出物とを含む組成物であり、好ましくは、前記鎮痛剤はイブプロフェンまたはパラセタモール/アセトアミノフェンである組成物、
‐対象のウイルス感染に関連する痛みの治療に使用するための組成物であり、前記ウイルスはヘルペスウイルス科に由来するものである組成物、
‐薬物治療において同時、個別または連続使用するための、鎮痛剤と、ブラックカラントおよびビルベリーの抽出物とを含む配合剤、
‐鎮痛剤と、ブラックカラントおよびビルベリーの抽出物とを含む局所組成物、
‐抗ウイルス剤と、ブラックカラントおよびビルベリーとの抽出物を含む組成物であり、必要に応じて、前記抗ウイルス剤は、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、ファムシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビル、またはレテルモビルである組成物、
‐局所組成物または点眼薬の形である組成物、好ましくは前記抗ウイルス剤がアシクロビルである組成物、
‐薬物治療において同時、個別または連続使用するための、抗ウイルス剤と、ブラックカラントおよびビルベリーの抽出物とを含む配合剤。
【0050】
配合剤は、使用時に組み合わされる(すなわち、対象に同時に、別々に、または連続して投与されることによって組み合わされる)個別にパッケージ化された活性成分を含むものである。
【0051】
鎮痛化合物は、好ましくは、アセチルサリチル酸、ジクロフェナク、デキシブプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、フェナゾン、プロピフェナゾン、ロフェコキシブ、セレコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブ、メタミゾール、パラセタモール/アセトアミノフェンから選択される。
【0052】
上記の抗ウイルス剤は、好ましくはヘルペスウイルス科抗ウイルス剤である。ヘルペスウイルス科抗ウイルス剤とは、ヘルペスウイルス科のウイルスによる感染症の治療または予防に使用でき、かつそれ自体がウイルスに対して活性であるか、あるいは体内で代謝されて活性剤となるプロドラッグである薬剤を意味する。後者の例は、ガンシクロビルのプロドラッグであるバルガンシクロビルである。好ましくは、ヘルペスウイルス科抗ウイルス剤は、DNA複製の阻害剤であり、必要に応じて、DNAポリメラーゼ阻害剤またはDNAターミナーゼ複合体阻害剤である。特に、DNAポリメラーゼ阻害剤は、ヌクレオシド類似体またはピロリン酸類似体であってよい。好ましい実施形態では、抗ウイルス剤は、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、ファムシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビル、またはレテルモビルである。
【0053】
上記のすべての組成物に関し、ブラックカラントがクロスグリの果実である場合、および/またはビルベリーがセイヨウスノキの果実である場合が有利である。組成物がブラックカラントとビルベリーからの抽出物を0.5:1~1:0.5の重量比で含む場合がさらに好ましい。本発明の有利な構成では、組成物は、ブラックカラントとビルベリーからのポマースの抽出物である。組成物がアントシアニンを含み、アントシアニンが少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも30重量%、または少なくとも35重量%、または少なくとも40重量%、または少なくとも45重量%、または少なくとも50重量%の濃度で組成物中に存在する場合が特に好ましい。本発明によれば、抽出物がアルコール抽出物、好ましくはメタノール抽出物である場合が好ましい。
【0054】
本発明はまた、対象のウイルス感染症を治療または予防するための抗ウイルス活性を有する薬剤であり、前記ウイルスが、2logレベルの有効性レベルを有するヘルペスウイルス科に由来するものである薬剤と、非毒性の抗ウイルス剤とに関する。
【0055】
本発明はまた、対象のウイルス感染を治療または予防するための抗ウイルス活性を有する薬剤であり、前記ウイルスは、2logレベルの有効性レベルを有するヘルペスウイルス科に由来するものであり、哺乳動物細胞、好ましくはBHK細胞におけるセルベースアッセイ法で30%を超える、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下の細胞を殺さない薬剤に関する。
【0056】
抗ウイルス活性を有するこの薬剤は、好ましくは、シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ガラクトシド、シアニジン-3-アラビノシド、デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ガラクトシド、デルフィニジン-3-アラビノシド、ペツニジン-3-グルコシド、ペツニジン-3-ガラクトシド、ペツニジン-3-アラビノース、ペオニジン-3-グルコシド、ペオニジン-3-ガラクトシド、ペオニジン-3-アラビノース、マルビジン-3-グルコシド、マルビジン-3-ガラクトシド、マルビジン-3-アラビノース、シアニジン-3-ルチノシド、デルフィニジン-3-ルチノシドから選択される1つまたは複数のアントシアニンを含む。アントシアニンは、好ましくは、シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ルチノシド、デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ルチノシド、シアニジン-3-ガラクトシド、デルフィニジン-3-ガラクトシドから選択される。
【0057】
上記のように、本発明はまた、対象に挿入予定の医療器具またはすでに対象に挿入された医療器具であり、必要に応じて鼻または口から挿入される器具とともに使用するための組成物に関する。医療器具が注射針、カテーテル、ポート、挿管装置もしくはチューブ、またはネブライザである場合が好ましい。対象内での医療器具の滞留時間が24時間を超え、48時間を超え、72時間を超え、1週間を超え、2週間を超え、3週間を超え、好ましくは、1週間を超え、2週間を超え、または3週間を超える場合がさらに好ましい。
【0058】
本発明はさらに、対象への挿入に適し、外面にコーティング組成物を有する医療器具であり、前記コーティング組成物が、ブラックカラントとビルベリーの抽出物を含む器具に関する。医療器具が注射針、カテーテル、挿管装置もしくはチューブ、またはネブライザであり、好ましくは、医療装置の外面がプラスチックである場合が好ましい。
【0059】
ブラックカラントがクロスグリの果実である場合、および/またはビルベリーがセイヨウスノキの果実である場合がさらに好ましい。組成物がブラックカラントとビルベリーからの抽出物を0.5:1~1:0.5の重量比で含む場合がさらに好ましい。本発明の有利な構成では、組成物は、ブラックカラントとビルベリーからのポマースの抽出物である。組成物がアントシアニンを含み、アントシアニンが少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも30重量%、または少なくとも35重量%、または少なくとも40重量%、または少なくとも45重量%、または少なくとも50重量%の濃度で組成物中に存在する場合が特に好ましい。本発明によれば、抽出物がアルコール抽出物、好ましくはメタノール抽出物である場合が好ましい。
【0060】
本発明はまた、上記の医療器具の製造方法であり、前記医療器具の外面に前記コーティング組成物を適用する工程を含み、必要に応じて、前記コーティング組成物は、クリーム、ヒドロゲルクリーム、またはスプレーとして形成される方法を包含する。
【0061】
さらに、本発明は、ブラックカラントとビルベリーの抽出物を含む組成物を含み、人間のより深部の呼吸器に投与される深肺粒子と、深肺粒子を人間のより深部の呼吸器に投与するための装置に関する。
【0062】
組成物は、ブラックカラントおよびビルベリーの抽出物と、ナノ粒子(好ましくは、リポソーム)との製剤を含んでいてもよい。そのような製剤は、肺へのナノ粒子の輸送量を最大化するために吸入されてよい。吸入は、経口または経鼻吸入経路を介した肺への組成物の直接的な局所輸送を容易にする。例えば、犬におけるリポソームインターロイキン-2(IL-2)のエアロゾル化輸送は、骨肉腫からの肺転移に対して効果的であることが示されている(カンナ C、アンダーソン PM、ハッツ DE、カツァニス E、ネビル M、クラウスナー JS。インターロイキン-2リポソーム吸入療法は、自然発生的肺転移が生じた犬に対し安全かつ効果的である。Cancer1997年;79:1409~21頁)さらに、ナノ粒子を介した抗がん剤の輸送は、種々の癌に効果的かつ安全であることが示されている。抗がん剤は、薬物負荷が高く、賦形剤の使用を最小限に抑えた薬物ナノ結晶に配合されることもできる。(シャラド M、ウェイ G、トンレイ L、チー Z、レビュー:肺がん治療のためのナノ粒子化学療法の肺送達:課題と機会、Acta Pharmacologica Sinica(2017年)38:782~797頁)。
【0063】
好ましい実施形態では、本発明に係る組成物を含むナノ粒子懸濁液は、現在利用可能な吸入装置を使用して、エアロゾル化され、適切な空気動力学径を有する液滴になる。このような吸入装置は、好ましくは、ネブライザおよび加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)から選択される。
【0064】
したがって、有利な構成では、本発明に係る組成物は、ネブライザで使用するためのナノ粒子懸濁液として配合されてよい。このようなネブライザは、ナノ粒子懸濁液を吸入可能な液滴に転化し、リポソームの完全性を損なうことなく、組成物を肺深部に輸送するために使用されてよい。別の構成は、圧縮推進剤(例:ハイドロフルオロアルカン(HFA))に懸濁された薬物の小さな吸入可能液滴を生成するpMDIに関する。
【0065】
本発明はまた、懸濁液よりも優れた長期安定性を提供する、乾燥粉末としてのナノ粒子製剤に関する。ナノ粒子の大きさの制御は、信頼性が高く効果的な吸入可能乾燥粉末への製剤化の中核である。ナノ粒子を、賦形剤の有無にかかわらず、噴霧乾燥、凍結乾燥、および噴霧凍結乾燥によって乾燥させ、安定した均一な大きさの吸入可能粒子を生成することができる。
【0066】
代替実施形態では、ナノ粒子は賦形剤と同時乾燥させることができ、これにより、賦形剤マトリックス中に吸入可能なナノ粒子凝集体が形成される。粒子工学を利用し、ナノ骨材、巨大多孔質粒子、およびその他の製剤技術を通じた、肺へのナノ粒子の一貫した高効率輸送を確保することが可能である。
【0067】
ヘルペスウイルス科のウイルスに対する本明細書記載のブラックカラントとビルベリーの抽出物を含む組成物の活性はまた、エクスビボでの細胞培養および細胞貯蔵(特に、細胞治療のための細胞調製)に関連して利用されてよい。したがって、本発明はまた、細胞または複数の細胞を、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物を含む組成物と接触させる工程を含み、必要に応じて、前記細胞または複数の細胞は、幹細胞またはCAR-T細胞であり、必要に応じて、前記接触は、前記細胞または複数の細胞を前記組成物とともに培養または保存することを含む、エクスビボでの細胞または複数の細胞のウイルス感染リスクを予防または軽減する方法を提供する。特に、組成物は、細胞に直接添加されるか、あるいは細胞培地もしくは後から細胞に添加される別の組成物に添加されてよい。ブラックカラントとビルベリーの抽出物は、本発明の他の態様に関し、上記の通りであってよい。
【0068】
細目
本発明の好ましい実施形態は、以下の細目に要約される:
1.対象のウイルス感染症の治療または予防に使用され、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物を含む組成物であり、前記ウイルスはヘルペスウイルス科に由来するものである組成物。
2.前記ブラックカラントはクロスグリの果実であり、および/または前記ビルベリーはセイヨウスノキの果実である、1記載の使用のための組成物。
3.前記ブラックカラントと前記ビルベリーからの抽出物を0.5:1~1:0.5の重量比で含む、1または2記載の使用のための組成物。
4.前記ブラックカラントと前記ビルベリーからのポマースの抽出物である、1~3のいずれかに記載の使用のための組成物。
5.アントシアニンを含み、前記アントシアニンが少なくとも25重量%の濃度で存在する、1~4のいずれかに記載の使用のための組成物。
6.前記抽出物は、アルコール抽出物、好ましくはメタノール抽出物である、1~5のいずれかに記載の使用のための組成物。
7.前記抽出物は、前記ブラックカラントおよび/または前記ビルベリーからの抽出工程と、クロマトグラフィーによる精製工程と、前記抽出物と水との混合工程と、前記混合物の噴霧乾燥工程とを有する方法によって調製される、1~6のいずれかに記載の使用のための組成物。
8.以下のアントシアニン:シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ガラクトシド、シアニジン-3-アラビノシド、デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ガラクトシド、デルフィニジン-3-アラビノシド、ペツニジン-3-グルコシド、ペツニジン-3-ガラクトシド、ペツニジン-3-アラビノース、ペオニジン-3-グルコシド、ペオニジン-3-ガラクトシド、ペオニジン-3-アラビノース、マルビジン-3-グルコシド、マルビジン-3-ガラクトシド、マルビジン-3-アラビノース、シアニジン-3-ルチノシド、デルフィニジン-3-ルチノシドのうちの1つまたは複数を含む、1~7のいずれかに記載の使用のための組成物。
9.対象のウイルス感染症の治療または予防に使用され、シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ルチノシド、デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ルチノシド、シアニジン-3-ガラクトシド、およびデルフィニジン-3-ガラクトシドを含む組成物であり、前記ウイルスはヘルペスウイルス科に由来するものである組成物。
10.前記ウイルスは、アルファヘルペスウイルス亜科またはガンマヘルペスウイルス亜科に由来するものである、1~9のいずれかに記載の使用のための組成物。
11.前記ウイルスは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ロゼオロウイルス、またはカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV、HHV-8)である、1~10のいずれかに記載の使用のための組成物。
12.前記ウイルスは、HSV-1、EBV、CMVまたはHHV-8、好ましくはHSV-1、CMVまたはHHV-8である、1~11のいずれかに記載の使用のための組成物。
13.ウイルス感染を抑制する、1~12のいずれかに記載の使用のための組成物。
14.アントシアニンを含み、1日あたり少なくとも80mgのアントシアニンの1~10回の経口投与、好ましくは1日あたり少なくとも80mgのアントシアニンの3~6回の経口投与で、前記対象に投与されるべき、1~13のいずれかに記載の使用のための組成物。
15.非経口ボーラス注射/注入または非経口栄養液として対象に投与され、重篤患者を安定させる、1~14のいずれかに記載の使用のための組成物。
16.前記対象に投与され、目的とするコンパートメント内で少なくとも30μg/mL、好ましくは少なくとも100μg/mLの濃度に達する、1~15のいずれかに記載の使用のための組成物。
17.前記対象に挿入予定の医療器具、または前記対象に挿入された医療器具とともに使用する組成物であり、必要に応じて前記挿入器具は、経皮性または気管内用である、1~16のいずれかに記載の使用のための組成物。
18.前記対象への前記医療器具の挿入部位に投与されるべき、17記載の使用のための組成物。
19.前記医療器具は、気管内挿管または非経口栄養用である、17または18記載の使用のための組成物。
20.前記医療器具は、注射針、カテーテル、ポート、挿管装置もしくはチューブ、ネブライザ、インプラント、バスキュラーアクセスカテーテル、脳マイクロカテーテル、末梢静脈挿入式中心静脈カテーテル、慢性中心静脈カテーテル、埋め込み型ポート、急性中心静脈カテーテル、ミッドラインカテーテル、短い抹消静脈カテーテル、または透析カテーテルである、17~19のいずれかに記載の使用のための組成物。
21.前記対象内における前記医療器具の滞留時間は、24時間を超え、48時間を超え、72時間を超え、1週間を超え、2週間を超え、3週間を超え、好ましくは1週間を超え、2週間を超え、または3週間を超える、17~19のいずれかに記載の使用のための組成物。
22.前記対象はヒトである、1~21のいずれかに記載の使用のための組成物。
23.前記対象は妊婦である、1~22のいずれかに記載の使用のための組成物。
24.前記対象は、ヘルペスウイルス科のウイルスのキャリアであり、好ましくは、前記対象は、単純ヘルペスウイルスのキャリアである、1~23のいずれかに記載の使用のための組成物。
25.前記対象は、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV、HHV-8)に感染しており、必要に応じて前記対象は、HIV陽性であるか、またはAIDSに罹患している、1~24のいずれかに記載の使用のための組成物。
26.前記ウイルス感染は肝臓または腎臓に生じている、1~25のいずれかに記載の使用のための組成物。
27.ヘルペスウイルス科のウイルスに関連する癌の予防または治療のための組成物であり、必要に応じて
(i)前記ウイルスはEBVであり、前記癌は、リンパ腫(ホジキンリンパ腫およびバーキットリンパ腫を含む)、鼻咽頭癌、胃癌または乳癌であるか、あるいは
(ii)前記ウイルスはHHV-8であり、前記癌は、カポジ肉腫、原発性滲出液リンパ腫、HHV-8関連多中心性キャッスルマン病または乳癌である、1~26のいずれかに記載の使用のための組成物。
28.ヘルペスウイルス科のウイルスに関連する自己免疫疾患の予防または治療のための組成物であり、必要に応じて
(i)前記ウイルスはEBVであり、前記自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、シェーグレン症候群または多発性硬化症であるか、あるいは
前記ウイルスはHSV-1であり、前記自己免疫疾患は多発性硬化症である、1~27のいずれかに記載の使用のための組成物。
29.前記対象は、免疫不全症である、1~28のいずれかに記載の使用のための組成物。
30.前記対象は、免疫抑制剤を服用している、1~29のいずれかに記載の使用のための組成物。
31.前記対象は、身体的または感情的ストレスにさらされている、1~30のいずれかに記載の使用のための組成物。
32.前記対象は、倦怠感、鬱病または不安症に苦しんでいる、1~31のいずれかに記載の使用のための組成物。
33.アルツハイマー病の予防または治療のための1~32のいずれかに記載の使用のための組成物。
34.β-アミロイド斑の形成を軽減し、必要に応じて、ウイルス感染症を軽減または予防することによってβ-アミロイド斑の形成を軽減する、場合により、組成物は、ウイルス感染を減少または予防することにより、β-アミロイドプラーク形成を減少させる33記載の使用のための組成物。
35.脳組織の炎症を軽減する、33または34記載の使用のための組成物。
36.ブラックカラントとビルベリーからの抽出物を含み、皮膚に投与されるべき局所組成物に適した薬学的に許容される賦形剤をさらに含む局所組成物であり、好ましくは、前記薬学的に許容される賦形剤が、1つまたは複数の等張化剤、緩衝剤、防腐剤、酸化防止剤、安定剤、pH調整剤、浸透促進剤、界面活性剤および保湿剤を含む、局所組成物。
37.ブラックカラントとビルベリーからの抽出物を含み、眼に投与されるべき組成物に適した薬学的に許容される賦形剤をさらに含む点眼組成物であり、好ましくは、前記薬学的に許容される賦形剤が、1つまたは複数の等張化剤、緩衝剤、防腐剤、酸化防止剤、安定剤、pH調整剤、浸透促進剤、界面活性剤および保湿剤を含む、点眼組成物。
38.鎮痛剤または抗炎症剤と、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物とを含み、好ましくは、前記鎮痛剤がイブプロフェンまたはパラセタモール/アセトアミノフェンである、組成物。
39.対象のウイルス感染症に関連する痛みの治療に使用する、1~38のいずれかに記載の組成物。
40.薬物治療において同時、個別または連続使用するための、鎮痛剤と、ブラックカラントおよびビルベリーの抽出物とを含む配合剤。
41.鎮痛剤と、ブラックカラントおよびビルベリーの抽出物とを含む局所組成物。
42.アントシアニンを含み、前記アントシアニンが少なくとも25重量%の濃度で存在する、36~41のいずれかに記載の組成物。
43.対象への挿入に適した医療器具であり、前記器具の外面にコーティング組成物を有する医療器具であり、前記コーティング組成物は、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物を含む医療器具。
44.注射針、カテーテル、ポート、挿管装置もしくはチューブ、ネブライザ、インプラント、バスキュラーアクセスカテーテル、脳マイクロカテーテル、末梢静脈挿入式中心静脈カテーテル、慢性中心静脈カテーテル、埋め込み型ポート、急性中心静脈カテーテル、ミッドラインカテーテル、短い抹消静脈カテーテル、または透析カテーテルであり、好ましくはその外面がプラスチックである、43記載の医療器具。
45.43または44記載の医療器具の製造方法であり、前記医療器具の外面に前記コーティング組成物を適用する工程を含み、必要に応じて、前記コーティング組成物は、クリーム、ヒドロゲルクリーム、またはスプレーとして形成される方法。
46.抗ウイルス剤と、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物とを含む組成物であり、前記抗ウイルス剤は、ヘルペスウイルス科抗ウイルス剤、好ましくはDNA複製の阻害剤、必要に応じてDNAポリメラーゼ阻害剤またはDNAターミナーゼ複合体阻害剤である、組成物。
47.前記抗ウイルス剤は、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、ファムシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビルまたはレテルモビルである、46記載の組成物。
48.局所組成物または点眼薬の形であり、好ましくは抗ウイルス剤がアシクロビルである、46または47記載の組成物。
49.薬物治療において同時、個別または連続使用するための、抗ウイルス剤と、ブラックカラントおよびビルベリーの抽出物とを含む配合剤。
50.細胞または複数の細胞を、ブラックカラントおよびビルベリーからの抽出物を含む組成物と接触させる工程を含み、必要に応じて、前記細胞または複数の細胞は、幹細胞またはCAR-T細胞であり、必要に応じて、前記接触は、前記細胞または複数の細胞を前記組成物とともに培養または保存することを含む、エクスビボでの細胞または複数の細胞のウイルス感染リスクを予防または軽減する方法。
51.ブラックカラントとビルベリーの抽出物を含む有効量の組成物を対象に投与する工程を含む、ウイルス感染症の治療または予防を必要とする対象のウイルス感染症の治療方法または予防方法であり、前記ウイルスがヘルペスウイルス科に由来するものである方法。
52.ブラックカラントとビルベリーの抽出物を含む有効量の組成物を対象に投与する工程を含む、ウイルス感染症の抑制またはウイルス再活性化の予防を必要とする対象のウイルス感染症の抑制方法またはウイルス再活性化の予防方法であり、前記ウイルスがヘルペスウイルス科に由来するものである方法。
53.対象の器具関連ウイルス感染症の予防方法であり、(a)前記対象に器具を挿入し、ブラックカラントとビルベリーの抽出物を含む有効量の組成物を前記器具の挿入部位に投与する工程、および/または(b)ブラックカラントとビルベリーの抽出物を含む有効量の組成物を器具の外面に適用し、前記器具を前記対象に挿入する工程を含み、前記ウイルスがヘルペスウイルス科に由来するものである方法。
54.ブラックカラントとビルベリーの抽出物を含む有効量の組成物を対象に投与する工程を含む、ヘルペスウイルス科のウイルスに関連する癌の治療または予防を必要とする対象のヘルペスウイルス科のウイルスに関連する癌の治療方法または予防方法。
55.ブラックカラントとビルベリーの抽出物を含む有効量の組成物を対象に投与する工程を含む、ヘルペスウイルス科のウイルスに関連する自己免疫疾患の治療または予防を必要とする対象のヘルペスウイルス科のウイルスに関連する自己免疫疾患の治療方法または予防方法。
56.ブラックカラントとビルベリーの抽出物を含む有効量の組成物を対象に投与する工程を含む、β-アミロイド斑形成の軽減および/または脳組織炎症の軽減を必要とする対象のβ-アミロイド斑形成の軽減方法および/または脳組織炎症の軽減方法であり、必要に応じて、前記組成物が、ヘルペスウイルス科のウイルスによる感染症を軽減または予防することによって、β-アミロイド斑形成および/または脳組織炎症を軽減する方法。
57.前記抽出物が2~7のいずれかで規定されている通りである、51~56のいずれかに記載の方法。
58.前記ウイルスが8で規定されている通りである、51~57のいずれかに記載の方法。
59.前記組成物が、9または10に規定されているように投与される、51~58のいずれかに記載の方法。
60.前記対象が16~18のいずれかで規定されている通りである、51~59のいずれかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】
図1は、Healthberry(登録商標)865がBHK2細胞の生存率に及ぼす影響を示している。3日後に測定されたルシフェラーゼ活性の上昇は、培地で培養された対照細胞の増加に標準化した。エラーバーは標準偏差である。
【
図2】
図2は、単純ヘルペスウイルス1型が、Healthberry(登録商標)865を介したウイルス感染抑制の主要な標的であることを示している(logスケール)。BHK2細胞は、Healthberry(登録商標)865またはマルトデキストリンを含まないベリー抽出物類似体で処理され、その後、GFPをコードするHSV-1に感染させた。
【
図3】
図3は、インフルエンザウイルスの複製がHealthberry(登録商標)865によって影響を受けないことを示している。MDCK細胞は、Healthberry(登録商標)865で前処理され、インフルエンザウイルス(血清A型)に感染させた。ウイルスRNAを単離し、RTqPCRで定量化した(Cq値;注:Cq値が低いほど、ウイルス量が多くなる)。
【
図4】
図4は、ビルベリーとブラックカラントからのベリー抽出物がウイルス感染の抑制を媒介したことを示している(logスケール)。BHK細胞は、ブラックカラント抽出物またはビルベリー抽出物で処理され、その後、GFPをコードするHSV-1に感染させた。バーは、6つの独立したウェルからの感染細胞の平均を表す。エラーバーは標準偏差を示す。
【
図5】
図5は、C3G、D3Gal、Pet3Gではなく、D3Gがウイルス感染の抑制を媒介したことを示している(logスケール)。BHK細胞は、アントシアニンで処理され、その後、GFPをコードするHSV-1に感染させた。バーは、6つの独立したウェルからの感染細胞の平均を表す。エラーバーは標準偏差を示す。
【
図6】
図6は、Healthberry(登録商標)865がSH-SY5Y細胞内におけるHSV-1関連のβ-アミロイド沈着を減少させることを示している。様々なHealthberry(登録商標)865濃度(500μg/mL、250μg/mL、125μg/mL)またはマルトデキストリンで処理した後のSH-SY5Y細胞の免疫けい光染色。HHV-1の感染は、eGFP蛍光(A)と抗体染色によるβ-アミロイド蓄積(B)によって示される。
【
図7】
図7は、ヘルペスウイルス8型が、Healthberry(登録商標)865を介したウイルス感染抑制の標的であることを示している(logスケール)。BHK2細胞は、Healthberry(登録商標)865、ベリー抽出物類似体、ビルベリー抽出物、ブラックカラント抽出物、単一のアントシアニン、またはマルトデキストリンで処理され、続いてGFPをコードするHHV-8に感染させた。
【
図8】
図8は、マウスサイトメガロウイルスが、Healthberry(登録商標)865を介したウイルス感染抑制の標的であることを示している(logスケール)。3T3細胞は、Healthberry(登録商標)865、またはビルベリー抽出物およびブラックカラント抽出物で処理され、続いてGFPをコードするmCMVに感染させた。
【
図9】
図9は、ヒトヘルペスウイルス(HHV)の系統樹を示している。EBV:エプスタイン・バーウイルス、HSV:単純ヘルペスウイルス、VZV:水痘帯状疱疹ウイルス、CMV:サイトメガロウイルス。(ラファエル ボリー、ジェイクス カドラネル、アメリ ギオ、アン ジュヌビエーブ マルスラン、リオネル ガリシエル、ルイ-ジャン クーデール:HIV感染時のヒトヘルペスウイルス8型の肺症状、欧州呼吸器ジャーナル 2013年 42:1105~1118頁)。
【実施例】
【0070】
本研究で使用したベリー抽出物組成物(Healthberry(登録商標)865;Evonik Nutrition & Care GmbH社、ドイツ ダルムシュタット)は、ブラックカラント(クロスグリ)とビルベリー(セイヨウスノキ)から分離された17種類の精製アントシアニン(シアニジン、ペオニジン、デルフィニジン、ペツニジン、マルビジンのすべてのグリコシド)を含む栄養補助食品である。
Healthberry(登録商標)865製品中の各アントシアニンの相対含有量は次のとおりである:シアニジンの3-O-b-ルチノシド、3-O-b-グルコシド、3-O-b-ガラクトシドおよび3-O-b-アラビノシドが33.0%;デルフィニジンの3-O-b-ルチノシド、3-O-b-グルコシド、3-O-b-ガラクトシドおよび3-O-b-アラビノシドが58.0%;ペツニジンの3-O-b-グルコシド、3-O-b-ガラクトシドおよび3-O-b-アラビノシドが2.5%;ペオニジンの3-O-b-グルコシド、3-O-b-ガラクトシドおよび3-O-b-アラビノシドが2.5%;マルビジンの3-O-b-グルコシド、3-O-b-ガラクトシドおよび3-O-b-アラビノシドが3.0%。
シアニジンとデルフィニジンの3-O-b-グルコシドは、総アントシアニンの少なくとも40~50%を構成していた。
使用されたベリー抽出物に含まれる主要アントシアニンは、シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ルチノシド、デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ルチノシド、シアニジン-3-ガラクトシドおよびデルフィニジン-3-ガラクトシドである。
上記のアントシアニンに加えて、製品には、マルトデキストリン(組成物の約40重量%)と、(アントシアニンの安定性を維持するための)クエン酸も含まれていた。クエン酸アントシアニンの量は、組成物の少なくとも25重量%である。組成物は、ブラックカラントとビルベリーのアルコール抽出工程と、クロマトグラフィーによる精製工程と、抽出物とクエン酸マルトデキストリンおよび水との混合工程と、混合物の噴霧乾燥工程とを含む方法によって、ブラックカラントとビルベリーから調製される。製品組成物には、約1:1の重量で混合されたブラックカラントとビルベリーの抽出物が含まれている。
【0071】
材料
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0072】
方法:
試験化合物の調製
すべての試験化合物は、細胞培養培地に溶解および希釈された。アントシアニンの総量は、(Healthberry(登録商標)865には、アントシアニンの他にマルトデキストリンも含まれていることを考慮して)Healthberry(登録商標)865と単一のアントシアニンまたは単一のベリー抽出物との間で標準化された(例えば、500μg/mLのHealthberry(登録商標)865は、単一の試験化合物について試験されるアントシアニン150μg/mLと対応する)。培地は、ウイルス阻害作用または細胞毒性の対照(コントロール)として機能した。
【0073】
細胞生存率アッセイ
細胞生存率は、RealTime-Glo(商標)MT細胞生存率アッセイ(カタログ番号G9712、Promega社、ドイツ)で測定した。BHK細胞を、可溶化された化合物の量を減らしながら、DMEMで培養した。DMEMのみを含むウェルは、対照として機能した。製造元の指示に従い、MT Cell Viability SubstrateとNanoLuc(登録商標)ルシフェラーゼを添加した。アッセイは3回行った。3日後、Centro LB 960マイクロプレート用ルミノメーター(Berthold Technologies社、ドイツ)で発光シグナルを測定した。1時間後の発光値を1とし、経時変化を測定した。
【0074】
抗ウイルス性アッセイ
ヘルペスウイルス感染
可溶化された試験化合物の濃度を減らしながら、BHK細胞を約1時間培養した。ブラック96ウェルプレート(PerkinElmer社)上での6回の独立した複製によってすべての濃度を分析した。細胞を、GFPをコードする野生型HSV-1ウイルスに感染させ、2日間培養した。感染から2日後、光学細胞培養プレートを備えたパーキンエルマーエンサイトシステムを使用して、HSV-1感染細胞とGFP発現細胞を直接カウントした。当該機器は手動カウントで制御された。それに応じて、HHV8とmCMVに対する抗ウイルス性アッセイを実施した。
ウイルス侵入と感染におけるウイルス複製の初期段階とを分析するだけでなく、ウイルス複製の後期段階も分析するために、試験アッセイを調整した。BHK細胞を試験化合物で培養し、続いてHSV-1に感染させた。感染上清を回収してから2日後、遠心分離して剥離細胞を除去し、BHK細胞の感染に使用した。さらに2日後、エンサイトシステムを使用して感染細胞を定量した。
最初の同定から現在まで、抗ウイルス化合物は、イン・ビトロあるいは複製アッセイを用いた細胞培養のいずれかにおいて、スクリーニングアッセイを介して最初に同定される。イン・ビトロ酵素スクリーニング試験で同定された化合物の活性でさえ、細胞培養に基づくアッセイで検証する必要がある。これらのアッセイは、ウイルス複製の阻害作用を定量化することを可能にし、化合物の細胞内取込を確実にするので、抗ウイルス活性を同定および確認する最先端の方法である。例えば、HSV-1の代表的治療薬であるアシクロビルは、スポンジ中の抗ウイルス物質のスクリーニングによって同定された(エリオンら、1977年 抗ヘルペス剤、9-(2-ヒドロキシエトキシメチル)グアニンの作用の選択性、PNAS 74.5716)。その後、ヘルペスウイルス科の他のメンバーを阻害するアシクロビルの抗ウイルス活性も、細胞培養に基づくアッセイで示された(オーケソン-ヨハンソンら、1990年 9-[4-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン(2HM-HGB)および他の抗ウイルス化合物によるヒトヘルペスウイルス6型の複製の阻害作用、AAC 34.2417)。さらに、HIV-1に対する臨床薬として使用される化合物(例:3TCやロピナビル(ABT-378))はすべて、最初にイン・ビトロで試験され、その抗ウイルス効果が実証された(コーテスら、1992年 2’-デオキシ-3’-チアシチジンの両鏡像体(BCH 189)は、イン・ビトロでヒト免疫不全ウイルスの複製を阻害する、AAC 36.202;シャムら、1998年 ABT-378、ヒト免疫不全ウイルスプロテアーゼの非常に強力な阻害剤、AAC 42.3218)。
【0075】
インフルエンザゲノム解析
MDCK細胞を48ウェルプレートに播種した。24時間後、試験化合物を添加し、続いて細胞をインフルエンザA型ウイルスに感染させた。感染はすべて3回行った。感染から3日後に細胞培養上清を回収し、2,000rpmで遠心分離して、剥離細胞を除去し、上清に分泌されたウイルスを分析した。製造元のマニュアルに従ってRoche社製ハイピュア ウイルス核酸キットを使用し、200μLの細胞培養上清からウイルス性RNAを単離した。ウイルスゲノムのコピー数は、5μLの溶出RNAとRTqPCR LightMix(登録商標)モジュラインフルエンザA型キット(カタログ番号:07 792 182 001、Roche社)とを、LightCycler(登録商標)マルチプレックスRNAウイルスマスターキット(カタログ番号:07 083 173 001、ロシュ社)と併用して、測定した。PCR反応はすべて、Roche社製LightCycler 96 qPCR 20を使用して、1つのRNAから3回実施した。Cq値は、各サイクラーソフトウェア(Roche社製Lighcylcler 96 アプリケーションソフトウェア バージョン1.1)を用いて測定した。1,000個のゲノムコピーを有するモジュラインフルエンザA型キットの内部標準は、陽性対照(ポジコン)として機能した。MIQEガイドラインに従うことで品質を確保した。
【0076】
β-アミロイドアッセイ:β-アミロイドの細胞内沈着の分析
SH-SY5Y(神経芽腫)細胞(ウェルあたり5,000)を、HHV-1を含む次のサンプルで培養した(多重感染度(MOI)=8~10):Healthberry(登録商標)865のみ(500、250および125μg/mL)、Healthberry(登録商標)865(500、250および125μg/mL)とHHV-1との併用。一方、HHV-1単独とマルトデキストリン単独は、陽性対照と陰性対照(ネガコン)として機能した。
ヒストフィックスを用いてサンプルを固定し、リン酸緩衝生理食塩水中で0.05%のトリトンX-100で5分間透過処理した。3%のウシ血清アルブミンを用いて1時間ブロッキング工程を行い、続いてウサギポリクローナル抗ベータアミロイド1-42およびポリクローナルヤギ抗緑色蛍光タンパク質とともに一次抗体を培養した。抗体を、それぞれ1:100および1:1,000に希釈し、一晩培養した。β-アミロイド抗体を視覚化するために、(1:400に希釈した)ロバ抗ウサギAlexaFluor(登録商標)555二次抗体を使用した;GFP抗体を検出するために、(1:400に希釈した)ロバ抗ヤギAlexaFluor(登録商標)647二次抗体を使用した。次に、サンプルをDAPI含有Fluoromount-G(商標)にマウントし、BZ-9000 BIOREVOシステム(Keyence社)で分析した。
【0077】
エプスタイン・バーウイルスに対する抗ウイルス性ヒト症例
ヒトの場合、単一の人間が発熱、喉の痛み、およびリンパ節の腫れの症状を示した。症状が出てから3日後、1日2~3回の錠剤でイブプロフェン治療を開始し、毎回400mgを投与した。さらに、80mgのHealthberry(登録商標)865(80mgの用量は、Medox(登録商標)カプセル1個の用量に対応する)を2回投与する治療を、朝と夕方の投与で開始した;経口投与を容易にするために、Healthberry(登録商標)865粉末は、水に溶かした。さらに3日後、血液パラメータとEBV抗体レベルを分析した。この血液パラメータの分析は、9日後と25日後にも繰り返した。最初の1週間は、イブプロフェンとHealthberry(登録商標)865とを併用する治療を継続し、次の2週間は、治療をHealthberry8(登録商標)865の投与に縮小した。
【0078】
実験例1:ベリー抽出物が細胞生存率に及ぼす影響
細胞毒性と有害な副作用を排除するために、BHK細胞(96ウェルプレート:650細胞/ウェル)での試験化合物の細胞生存率をRealTime-Glo(商標)MT細胞生存率アッセイキットで測定した。このアッセイは、細胞内ATP含有量を測定するので、細胞生存率と細胞内代謝に関する情報を提供する。3回のアッセイで化合物濃度を減少させながら細胞を培養した。続いて、MT Cell Viability SubstrateとNanoLuc(登録商標)酵素の両方を添加し、1時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。輝度を3日後に測定し、培地対照のウェルの平均で標準化した。これらの補正により、培地対照の値は1となり、1未満の値は、適切な対照と比較して、細胞数が少ないか、または代謝活性が低下していることを示す。
図1は、Healthberry(登録商標)865がBHK2細胞の生存率に及ぼす影響を示している。3日後に測定されたルシフェラーゼ活性の上昇は、培地で培養された対照細胞の増加に標準化した。エラーバーは標準偏差である。
Healthberry(登録商標)865は、分析したどの濃度においても細胞増殖または代謝活性に悪影響を及ぼさなかったので、当該化合物がこれらの濃度では無毒であることを示している。
【0079】
実験例2:単純ヘルペスウイルス1型に対するHealthberry(登録商標)865の抗ウイルス効果
マルトデキストリンを含むHealthberry(登録商標)865、またはマルトデキストリンを含まないHealthberry(登録商標)865のいずれかの濃度を下げながらBHK細胞を予備培養した。マルトデキストリンを含まない材料の濃度は、Healthberry(登録商標)865中の40%のマルトデキストリン含有量を補うために、糖含有製品の0.6倍に調整した。よって、同等の濃度のアントシアニンを使用した。続いて、細胞を多重感染度2.5でGFPをコードするHSVに感染させ、感染から1日後にパーキンエルマーエンサイトシステムを用いて、感染したGFP発現細胞をカウントした。Healthberry(登録商標)865とマルトデキストリンを含まないベリー抽出物類似体はいずれも、Healthberry(登録商標)865の濃度が0.250μg/mLを超えると、ウイルス感染性を約2log段階抑制した。観察された本ウイルス感染阻害作用は、一般的な抗ウイルス医薬品化合物の範囲内であり、単純ヘルペスが、Healthberry(登録商標)865などの、ブラックカラントとビルベリーのベリー抽出物の主要な標的であることを示している。マルトデキストリンを含まないベリー抽出物類似体の分析によって、活性物質の濃度が150μg/mL(250μg/mLのHealthberry(登録商標)865に対応)であれば、HSVを十分に抑制できることが示された。したがって、糖は、薬物摂取の潜在的補助因子としては不要である。
図2は、単純ヘルペスウイルス1型が、Healthberry(登録商標)865を介したウイルス感染抑制の主要な標的であることを示している(logスケール)。BHK2細胞は、Healthberry(登録商標)865またはマルトデキストリンを含まないベリー抽出物類似体で処理され、その後、GFPをコードするHSV-1に感染させた。
【0080】
実験例3:インフルエンザA型ウイルスに対するHealthberry(登録商標)865の抗ウイルス効果(比較例)
Healthberry(登録商標)865と単一のアントシアニンがインフルエンザA型ウイルスの複製に及ぼす影響を分析した。MDCK細胞を試験化合物で培養し、続いてインフルエンザウイルス血清A型の患者由来分離株に感染させた。反応はすべて3回行った。3日後に細胞培養上清を回収し、200μLの細胞培養上清からウイルスゲノムRNAを単離した。ウイルス量を、LightMix(登録商標)モジュラインフルエンザA型キット(Roche社)を使用してRTqPCRによって測定した。RTqPCRには、1,000個のインフルエンザゲノムコピーの陽性対照が含まれていた。RTqPCR反応はすべて3回行った。
Healthberry(登録商標)865などすべての試験材料が、上清中に陰性対照と同量のウイルスを示しており、わずかな違いはあるものの、どの成分もインフルエンザウイルスの複製を阻害しなかったことを示している。
図3は、インフルエンザウイルスの複製がHealthberry(登録商標)865によって影響を受けないことを示している。MDCK細胞は、Healthberry(登録商標)865で前処理され、インフルエンザウイルス(血清A型)に感染させた。ウイルスRNAを単離し、RTqPCRで定量化した(Cq値;注:Cq値が低いほど、ウイルス量が多くなる)。
結果は、インフルエンザA型ウイルスに対するHealthberry(登録商標)865の効果を示しておらず、特定のウイルスまたはウイルス科それぞれに対するブラックカラントとビルベリーのベリー抽出物の抗ウイルス効果の特異性が確認された。単一のアントシアニンとしての他の化合物も、インフルエンザウイルスの複製には何ら影響を与えなかった。
【0081】
実験例4:単純ヘルペスウイルス1型に対するベリー抽出物の抗ウイルス効果
Healthberry(登録商標)865は、ビルベリーとブラックカラントの抽出物からなる組成物であるので、両方の抽出物にHSV-1に対して活性な化合物が含まれているかどうかを分析した。BHK細胞を、500mg/mL、250mg/mL、および125mg/mLのHealthberry(登録商標)865、ビルベリー抽出物、またはブラックカラント抽出物で培養した後、HSV-1に感染させた。感染から2日後、上清を回収し、遠心分離して剥離細胞を除去し、BHK細胞の感染に使用した。さらに2日後、パーキンエルマーエンサイトシステムを使用して感染細胞を定量した。6つの独立したウェルからの感染細胞の平均を計算した。エラーバーは標準偏差を示す。
Healthberry(登録商標)865に加えて、両方の抽出物がウイルス阻害作用を示しており、ビルベリー抽出物とブラックカラント抽出物の両方に活性化合物が存在することを示している。しかし、Healthberry(登録商標)865と直接比較すると、特にビルベリー抽出物には、アントシアニンがHealthberry(登録商標)865よりも約10%多く含まれているにもかかわらず、ビルベリー抽出物とブラックカラント抽出物は、Healthberry(登録商標)865よりもHSV-1ウイルス感染の抑制度合いが低かった。ビルベリーおよびブラックカラント抽出物の濃度が高い(例:500μg/mL)と、約1.5logスケールのウイルス感染の減少が達成されるが、Healthberry(登録商標)865は、驚くべきことに最大2~3logスケールの減少を達成した。感染細胞の絶対値は、当該効果の重大さをさらに強調している。Healthberry(登録商標)865が感染細胞数を約100万個から300個に減らした(約0.3%まで減らした)のに対し、単一の抽出物は、約90,000個の感染細胞を2,200~3,500個までしか減らさなかった(約3%までしか減らさなかった)。
図4は、ビルベリーとブラックカラントからのベリー抽出物がウイルス感染の抑制を媒介したことを示している(logスケール)。BHK細胞は、ブラックカラント抽出物またはビルベリー抽出物で処理され、その後、GFPをコードするHSV-1に感染させた。
【0082】
実験例5:単純ヘルペスウイルス1型に対するアントシアニンの抗ウイルス効果
Healthberry(登録商標)865の活性化合物をさらに特定するために、いくつかの既知のアントシアニンを試験した。C3GもD3GalもPet3GもHSV-1を阻害しなかったが、D3Gは、Healthberry(登録商標)865のようにウイルス感染を軽減しており、D3Gが有効なHSV-1阻害剤であるという証拠を提供した。
図5は、C3G、D3Gal、Pet3Gではなく、D3Gがウイルス感染の抑制を媒介したことを示している(logスケール)。BHK細胞は、アントシアニンで処理され、その後、GFPをコードするHSV-1に感染させた。
【0083】
実験例6:Healthberry(登録商標)865による、HSV-1関連のβ-アミロイド細胞内沈着の減少
ヘルペスウイルス感染症、特にHSV-1感染症は、アルツハイマー病が進行している中枢神経系(CNS)細胞におけるβ-アミロイドおよびタウ・タンパク質の細胞内沈着と相関している。したがって、Healthberry(登録商標)865の重大な抗ウイルス活性のために、本ベリー抽出物がタンパク質沈着(すなわち、アルツハイマー病に関連するプラーク形成)に及ぼす影響を定性的なイン・ビトロ試験システムで評価した。したがって、最初の工程では、SH-SY5Y神経芽腫細胞のHHV-1感染性をテストした。SH-SY5Y培養物をHHV-1で培養(MOI=8)すると、90%を超える感染率が(定性的に)検出され、それは多量のβ-アミロイド細胞内沈着を伴う。陰性対照(二次抗体の省略)は、核染色のみを示した。これらの結果から、SH-SY5YがHHV-1の感染研究に適した細胞株であることが確認された。
SH-SY5Y細胞をHealthberry(登録商標)865で処理し、HHV-1に感染させた後、Healthberry(登録商標)865の濃度(500μg/mL、250μg/mL、125μg/mL)を定性的に増加させると、感染細胞とβ-アミロイド陽性細胞の両方の数が大幅に減少した。
SH-SY5Y細胞をマルトデキストリンで処理した場合、HHV-1感染細胞はほとんどβ-アミロイド陽性であった。
これらの発見は、マルトデキストリンが、Healthberry(登録商標)865による抗ウイルス活性とβ-アミロイドの減少に寄与しないという前のデータを裏付けている。
図6は、Healthberry(登録商標)865が、SH-SY5Y細胞内におけるHSV-1関連のβ-アミロイド沈着を減少させることを示している。SH-SY5Y細胞の免疫けい光染色は、様々なHealthberry(登録商標)865濃度(500μg/mL、250μg/mL、125μg/mL)またはマルトデキストリンで処理した後に実施された。HHV-1感染とβ-アミロイド染色は、Healthberry(登録商標)865で処理された場合、感染細胞とβ-アミロイド陽性細胞の減少を示す。
【0084】
実験例7:ヘルペスウイルス8型/HHV8に対するHealthberry(登録商標)865、ベリー抽出物、およびアントシアニンの抗ウイルス効果
細胞を、様々な濃度のHealthberry(登録商標)865、ベリー抽出物類似体、ビルベリー抽出物、ブラックカラント抽出物、または単一のアントシアニンで前培養した。材料の濃度を、同じレベルのアントシアニンに再度調整した(単一のベリー抽出物を除く)。無処理またはマルトデキストリンのみによる処理を対照として用いた。続いて、細胞を、GFPをコードするHHV-8に感染させ、感染から2日後に、パーキンエルマーエンサイトシステムを使用して、感染したGFP発現細胞をカウントした。Healthberry(登録商標)865(2つの異なるロット)とマルトデキストリンを含まないベリー抽出物類似体との両方が、ウイルス感染性を最大2倍まで大幅に抑制した。このウイルス感染性の阻害作用は、ヘルペスウイルス8型とヘルペスウイルス科がHealthberry(登録商標)865の標的であることを示している。マルトデキストリンを含まないベリー抽出物類似体とマルトデキストリン対照との分析によって、糖部分が薬物摂取の潜在的補助因子としては不要であることが再度確認された。
図7は、ヘルペスウイルス8型が、Healthberry(登録商標)865を介したウイルス感染抑制の標的であることを示している(logスケール)。BHK2細胞は、Healthberry(登録商標)865、マルトデキストリンを含まないベリー抽出物類似体、ビルベリー抽出物、ブラックカラント抽出物、単一のアントシアニン、またはマルトデキストリンで処理され、続いてGFPをコードするHHV-8に感染させた。
Healthberry(登録商標)865に加えて、単一のベリー抽出物であるビルベリーおよびブラックカラントの両方がウイルス阻害作用を示し、ビルベリーとブラックカラントの両抽出物に活性化合物が存在することを示した。しかし、Healthberry(登録商標)865と直接比較すると、(特にビルベリー抽出物には、アントシアニンがHealthberry(登録商標)865よりも約10%多く含まれているにもかかわらず、)ビルベリー抽出物とブラックカラント抽出物は、Healthberry(登録商標)865よりもHHV-8ウイルス感染の抑制度合いが低く、Healthberry(登録商標)865混合物中での抽出物の相乗効果を示している。
感染細胞の絶対値は、当該効果の重大さを再度強調している。Healthberry(登録商標)865が感染細胞数を約250万個から25,000個に減らした(約1%まで減らした)のに対し、単一の抽出物は、感染細胞を60,000~80,000個までしか減らさなかった(約2.8%までしか減らさなかった)。さらに、D3Gは、Healthberry(登録商標)865中の有効成分として再度特定され得る。
【0085】
実験例8:マウスサイトメガロウイルス/mCMVに対するHealthberry(登録商標)865、ベリー抽出物、およびアントシアニンの抗ウイルス効果
細胞を、様々な濃度のHealthberry(登録商標)865、ビルベリー抽出物、およびブラックカラント抽出物で前培養した(無処理の細胞を対照として使用した)。続いて、細胞を、GFPをコードするmCMVに感染させ、感染から2日後に、パーキンエルマーエンサイトシステムを使用して、感染したGFP発現細胞をカウントした。
Healthberry(登録商標)865は、驚くべきことに、ウイルス感染性を最大1.5倍まで大幅に抑制した。このウイルス感染性の阻害作用は、マウスサイトメガロウイルスとヘルペスウイルス科がHealthberry(登録商標)865の標的であることを示している。
図8は、マウスサイトメガロウイルスが、Healthberry(登録商標)865を介したウイルス感染抑制の標的であることを示している(logスケール)。3T3細胞は、Healthberry(登録商標)865、またはビルベリー抽出物およびブラックカラント抽出物で処理され、続いてGFPをコードするmCMVに感染させた。
Healthberry(登録商標)865に加えて、単一のベリー抽出物であるビルベリーおよびブラックカラントの両方がウイルス阻害作用を示し、ビルベリーとブラックカラントの両抽出物に活性化合物が存在することを示した。Healthberry(登録商標)865と直接比較すると、ビルベリーとブラックカラントの抽出物は、mCMVウイルス感染の抑制度合いが低く、Healthberry(登録商標)865混合物中での抽出物の相乗効果を示している。当該相乗効果は、mCMVではhHSV-1とhHHV-8ほど重大ではないため、アッセイでの材料濃度の直接比較では、適切な方法で差異が示されなかった(
図8A)。対照的に、すべての抽出物、Healthberry(登録商標)865、および単一の抽出物をアントシアニン含有量に標準化すると(特にビルベリー抽出物は、Healthberry(登録商標)865よりもアントシアニンを約10%多く含む)、因子2の絶対値の違いにより、Healthberry(登録商標)865混合物中での抽出物の相乗効果がより明白に示される(
図8B)。感染細胞の絶対値は、当該効果の重大さを再度強調している。アントシアニン含有量が150μg/mLである場合、Healthberry(登録商標)865が感染細胞数を約25万個から9,500個に減らしたのに対し、単一の抽出物は、感染細胞を18,500~19000個までしか減らさなかった;75μg/mLの場合、Healthberry(登録商標)865が感染細胞数を約25万個から34,000個に減らしたのに対し、ビルベリー抽出物は、感染細胞を約98,500個までしか減らしておらず、ブラックカラント抽出物に至ってはこの濃度では感染細胞の減少をもたらさなかった。
これらの結果から、ヘルペスウイルス科のヘルペスウイルスに対するHealthberry(登録商標)865の抗ウイルス効果が、ヒトの代替種としてマウスを標的としているmCMVにも伝達され得ることが再度確認された。
【0086】
実験例9:エプスタイン・バーウイルス/EBVに対するHealthberry(登録商標)865の抗ウイルス効果のヒト症例
ヒトの場合、単一の人間が発熱、喉の痛み、およびリンパ節の腫れの症状を示した。症状が出てから3日後、1日2~3回の錠剤でイブプロフェン治療を開始し、毎回400mgを投与した。さらに、80mgのHealthberry(登録商標)865(80mgの用量は、Medox(登録商標)カプセル1個の用量に対応する)を2回投与する治療を、朝と夕方の投与で開始した;経口投与を容易にするために、Healthberry(登録商標)865粉末は、水に溶かした。さらに3日後、血液パラメータとEBV抗体レベルを分析した。この血液パラメータの分析は、9日後と25日後にも繰り返した。最初の1週間は、イブプロフェンとHealthberry(登録商標)865とを併用する治療を継続し、次の2週間は、治療をHealthberry8(登録商標)865の投与に縮小した。
症状が出てから6日後(表6の0日目を表す)、血液分析の結果は、白血球の著しい増加と、血小板および単球の減少と、肝臓値すべての増加を示した。さらに、EBVの抗体レベルは、EBV-IgG抗体では30.5U/mL(20未満:陰性、20超:陽性)、EBV-IgM抗体では78.9U/mL(20未満:陰性、20~40:ボーダーライン、40超:陽性)を示しており、新たなEBV感染症の明白な診断につながる。
【表6】
【0087】
(発熱、痛み、炎症に対する)鎮痛剤イブプロフェンとHealthberry(登録商標)865の併用による感染症の治療は、EBV診断から9日以内に、肝臓パラメータを正常レベルまたはほぼ正常レベルに戻すとともに、白血球を減少させ(表6の9日目を参照)、25日後には、18日後の完全な身体的回復(スポーツへの参加など)がさらに確認された。EBV感染症は通常、最低でも3週間は続き、完全に回復するまでの期間はさらに数週間から数ヶ月かかることを考えると、このヒト症例は、抗ウイルス剤としてのHealthberry(登録商標)865によってEBV感染症を治療し、これらの感染症の治療においてHealthberry(登録商標)865と鎮痛剤を併用する利点を明確に示している。
図9は、ヒトヘルペスウイルス(HHV)の系統樹を示している。EBV:エプスタイン・バーウイルス、HSV:単純ヘルペスウイルス、VZV:水痘帯状疱疹ウイルス、CMV:サイトメガロウイルス。(ラファエル ボリー、ジェイクス カドラネル、アメリ ギオ、アン ジュヌビエーブ マルスラン、リオネル ガリシエル、ルイ-ジャン クーデール:HIV感染時のヒトヘルペスウイルス8型の肺症状、欧州呼吸器ジャーナル 2013年 42:1105~1118頁)。試験されたヒトヘルペスウイルスは、系統樹の様々なアームに位置し、ガンマヘルペスウイルス、アルファヘルペスウイルス、およびベータヘルペスウイルスのメンバーをカバーしていることは、系統樹から明らかである。したがって、ベリー抽出物の抗ウイルス活性は、ヘルペスウイルス科の全ファミリーをカバーすることが予想される
【国際調査報告】