(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(54)【発明の名称】生体試料分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20220427BHJP
【FI】
G01N35/00 E
G01N35/00 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021554663
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(85)【翻訳文提出日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2020056515
(87)【国際公開番号】W WO2020182890
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500554782
【氏名又は名称】ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】シュバイツ,カスパ
(72)【発明者】
【氏名】ハストロプ,モーデン
(72)【発明者】
【氏名】スクリーバ,ヤコプ
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058AA05
2G058GA11
2G058GB10
2G058GC02
2G058GC04
2G058GD05
2G058GD06
2G058GE02
2G058GE06
2G058GE08
2G058GE09
(57)【要約】
本発明は生体試料分析装置を動作させる方法に関し、生体試料分析装置は、1つまたは複数のセンサおよび書込み可能メモリを備える交換可能なセンサモジュールを収容するためのレセプタクルと、生体試料を、前記レセプタクルに収容されたセンサモジュールの1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも第1のセンサと実効的な相互作用をさせ、少なくとも第1のセンサと生体試料との間の相互作用に応答して測定結果を得、得られた測定結果を出力するように構成された測定ユニットと、測定ユニットの動作を制御するように構成された制御ユニットと、書込み可能メモリからデータを受け取るように、および書込み可能メモリに記憶するためにデータをセンサモジュールに転送するように構成されたデータ交換インターフェースと、遠隔ホストシステムと通信するための通信インターフェースとを備え、この方法は、制御ユニットによって、遠隔ホストシステムから、前記通信インターフェースを通じて、センサモジュールに関連した1つまたは複数の動作パラメータを受け取るステップと、受け取られた1つまたは複数の動作パラメータを、前記データ交換インターフェースを通じて書込み可能メモリに書き込ませるステップと、受け取られた1つまたは複数の動作パラメータに従って測定ユニットの動作を制御するステップとを実行することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料分析装置を動作させる方法であって、前記生体試料分析装置が、
- 1つまたは複数のセンサおよび書込み可能メモリを備える交換可能なセンサモジュールを収容するためのレセプタクルと、
- 生体試料を、前記レセプタクルに収容されたセンサモジュールの前記1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも第1のセンサと実効的な相互作用をさせ、少なくとも前記第1のセンサと前記生体試料との間の前記相互作用に応答して測定結果を得、前記得られた測定結果を出力するように構成された測定ユニットと、
- 前記測定ユニットの動作を制御するように構成された制御ユニットと、
- 前記書込み可能メモリからデータを受け取るように、および前記書込み可能メモリに記憶するためにデータを前記センサモジュールに転送するように構成されたデータ交換インターフェースと、
- 遠隔ホストシステムと通信するための通信インターフェースとを備え、
前記方法が、前記制御ユニットによって、
a)前記遠隔ホストシステムから、前記通信インターフェースを通じて、前記センサモジュールに関連した1つまたは複数の動作パラメータを受け取るステップと、
b)前記受け取られた1つまたは複数の動作パラメータを、前記データ交換インターフェースを通じて前記書込み可能メモリに書き込ませるステップと、
c)前記受け取られた1つまたは複数の動作パラメータに従って前記測定ユニットの動作を制御するステップと
を実行することを含む、方法。
【請求項2】
前記受け取られた1つまたは複数の動作パラメータを前記書込み可能メモリに書き込ませるステップが、前記1つまたは複数の動作パラメータに関連付けられた時間スタンプを前記書込み可能メモリに書き込ませるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の動作パラメータを受け取るステップが、
- 前記レセプタクルに収容された前記センサモジュールの前記書込み可能メモリから、前記データ交換インターフェースを通じてモジュール識別子を受け取るステップと、
- 前記読み取られたモジュール識別子を、前記通信インターフェースを通じて前記遠隔ホストシステムに通信するステップと、
- 前記遠隔ホストシステムから、前記通信インターフェースを通じて、前記通信されたモジュール識別子に関連した1つまたは複数の動作パラメータを受け取るステップと
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記読み取られたモジュール識別子を通信するステップが、前記書込み可能メモリから、前記モジュール識別子を読み取る時間を表す時間スタンプを通信するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数の動作パラメータを受け取るステップが、
- 前記通信インターフェースを通じて、前記生体試料分析装置を識別する分析器識別子を前記遠隔ホストシステムに通信するステップと、
- 前記遠隔ホストシステムから、前記通信インターフェースを通じて、前記通信された分析器識別子に関連した1つまたは複数の動作パラメータを受け取るステップと
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記制御ユニットによって、
- 前記生体試料分析装置の起動時に、前記レセプタクルに収容されたセンサモジュールの前記書込み可能メモリから前記データ交換インターフェースを通じて情報を受け取るステップと、
- 前記受け取られた情報を基に、前記センサモジュールが以前に使用されたことがあるか否かを判定するステップと、
- 前記センサモジュールが以前に使用されたことがないとの判定に応答して、ステップa)~c)を実行し、そうでない場合は、前記書込み可能メモリから前記データ交換インターフェースを通じて読み取られた、以前に記憶された1つまたは複数の動作パラメータに従って前記測定ユニットの動作を制御する、ステップと
を実行することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記制御ユニットによって、
- 前記生体試料分析装置の起動時に、前記通信インターフェースを介して前記遠隔ホストシステムとの通信が確立され得るか否かを判定するステップと、
- 前記遠隔ホストシステムとの通信が確立され得るとの判定に応答して、ステップa)~c)を実行し、そうでない場合には、前記書込み可能メモリから前記データ交換インターフェースを通じて読み取られた、以前に記憶された1つまたは複数の動作パラメータに従って前記測定ユニットの動作を制御する、ステップと
を実行することを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記制御ユニットによって、
- 1つまたは複数の品質管理測定を実行するように前記測定ユニットを制御するステップと、
- 前記1つまたは複数の品質管理測定の結果に応答して、前記レセプタクルに収容された前記センサモジュールに関連した1つまたは複数の修正された動作パラメータを得るステップと、
- 前記1つまたは複数の修正された動作パラメータを、前記データ交換インターフェースを通じて前記書込み可能メモリに書き込ませるステップと、
- 前記1つまたは複数の修正された動作パラメータに従って前記測定ユニットの動作を制御するステップと
を実行することを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記制御ユニットによって、前記測定ユニットの動作に応答して、前記データ交換インターフェースを通じて、前記書込み可能メモリに1つまたは複数の利用状況パラメータを表す利用状況データを書き込ませるステップを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記センサモジュールに関連した前記1つまたは複数の動作パラメータが、
- 前記制御ユニットが、前記センサモジュールを用いる測定の実行を許容するかどうかを表すロック/ロック解除フラグと、
- 前記制御ユニットが、前記レセプタクルに収容された前記センサモジュールを有する前記生体試料分析装置の1つまたは複数の選択された機能をロックするかそれともロック解除するかを表す、1つまたは複数の機能ロック/ロック解除フラグと、
- 1つまたは複数の位置および/または作業者および/または医療施設に対して前記センサモジュールの使用を制限する1つまたは複数の使用制限パラメータと、
- 前記レセプタクルに収容された前記センサモジュールを有する前記生体試料分析装置の必要な起動構成を表す1つまたは複数の起動パラメータと、
- 前記レセプタクルに収容された前記センサモジュールを有する前記生体試料分析装置の必要な測定構成を表す1つまたは複数の測定パラメータと
から選択された1つまたは複数のパラメータを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
- 1つまたは複数のキャッシュされた動作パラメータのローカルキャッシュを、前記生体試料分析装置のデータ記憶装置に維持するステップと、
- 前記センサモジュールが以前に使用されたことがなく、かつ前記遠隔ホストシステムとの通信が確立され得ないとの判定に応答して、前記キャッシュされた動作パラメータを、前記データ交換インターフェースを通じて前記書込み可能メモリに書き込ませるステップと、
- 前記キャッシュされた1つまたは複数の動作パラメータに従って前記測定ユニットの動作を制御するステップと
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記遠隔ホストシステムとの通信が再び確立され得るとの判定に応答して、
- 前記遠隔ホストシステムから、前記通信インターフェースを通じて、前記センサモジュールに関連した1つまたは複数の更新された動作パラメータを受け取るステップと、
- 前記受け取られた1つまたは複数の更新された動作パラメータを、前記データ交換インターフェースを通じて前記書込み可能メモリに書き込ませるステップと、
- 前記受け取られた1つまたは複数の更新された動作パラメータに従って前記測定ユニットの動作を制御するステップと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
生体試料分析装置であって、
- 1つまたは複数のセンサおよび書込み可能メモリを備える交換可能なセンサモジュールを収容するためのレセプタクルと、
- 生体試料を、前記レセプタクルに収容されたセンサモジュールの前記1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも第1のセンサと実効的な相互作用をさせ、少なくとも前記第1のセンサと前記生体試料との間の前記相互作用に応答して測定結果を得、前記得られた測定結果を出力するように構成された測定ユニットと、
- 前記測定ユニットの動作を制御するように構成された制御ユニットと、
- 前記書込み可能メモリからデータを受け取るように、および前記書込み可能メモリに記憶するためにデータを前記センサモジュールに転送するように構成されたデータ交換インターフェースと、
- 遠隔ホストシステムと通信するための通信インターフェースと、を備え、
前記制御ユニットが請求項1から12のいずれか一項において定義された方法のステップを実行するように構成される、生体試料分析装置。
【請求項14】
生体試料分析システムであって、
- 請求項13において定義された生体試料分析装置と、
- 1つまたは複数のセンサおよび書込み可能メモリを備える交換可能なセンサモジュールと、
- 前記センサモジュールに関連した1つまたは複数の動作パラメータを前記生体試料分析装置に送信するように構成された遠隔ホストシステムと
を備える生体試料分析システム。
【請求項15】
ホストシステムであって、
- 1つまたは複数の生体試料分析装置と通信するための通信インターフェースと、
- データ処理ユニットと、
- 1つまたは複数の顧客固有の動作パラメータならびに/あるいは1つまたは複数のモジュール固有の動作パラメータを表すデータを含むデータベースと
を備え、前記データ処理ユニットが、
- 生体試料分析装置から前記通信インターフェースを通じてモジュール識別子および/または分析器識別子を受け取るのに応答して、前記データベースから、前記1つまたは複数の顧客固有の動作パラメータならびに/あるいは前記1つまたは複数のモジュール固有の動作パラメータを取り出し、
- 前記取り出された1つまたは複数の顧客固有の動作パラメータならびに/あるいは前記1つまたは複数のモジュール固有の動作パラメータを、前記通信インターフェースを通じて、前記生体試料分析装置に転送する
ように構成される、ホストシステム。
【請求項16】
前記データ処理ユニットが、
- 前記生体試料分析装置の1つまたは複数の利用状況パラメータを表す利用状況データを前記生体試料分析装置から受け取り、
- 前記受け取った利用状況データを前記データベースに記憶し、
- 前記記憶された利用状況データを基に、前記1つまたは複数の顧客固有の動作パラメータならびに/あるいは前記1つまたは複数のモジュール固有の動作パラメータを判定するようにさらに構成される、請求項15に記載のホストシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下では分析器とも称される生体試料分析装置の態様に関する。詳細には、本発明は血液分析器などの体液分析器に関する。
【背景技術】
【0002】
それぞれの検体センサによって、生体試料、特に液体試料の中の検体の物理的パラメータを測定するための分析器は、食品産業、環境産業、ならびに医療および臨床の産業などの様々な産業で広く使用されている。正確かつ精密な結果を保証するために、そのような分析器および関連するセンサの性能は間断なく綿密に検査される。これは、一般的には、はっきり定められた組成のそれぞれの検体を含む規格化された標準試料を使用する詳細な較正と品質管理施策との両方を含む。全血などの体液の中の検体の物理的パラメータを分析するための臨床分析用途では、分析器システムの正確かつ精密な動作が特に重要である。臨床用途向けのそのような分析器システムには、正確さ、精度、および信頼性の要件に加えて、短時間で測定結果を得ること、非常に小さい試料ボリュームから高信頼性の結果をもたらす能力、ならびに安い運転コスト、短いダウンタイム、使用の容易さなどに関する要求などの、さらに重要な制約がある。
【0003】
これらの制約は、特に血液分析器において関連する。血液分析器は、たとえば対象の生物学的状態を証明し、かつ/または監視するために、対象の哺乳動物の血液を分析するための各種パラメータを測定する。一般的には、対象の哺乳動物はヒト患者である。種々の事例において、たとえば、対象の哺乳動物の全血検体の中の血液ガスの分圧、血液試料の中の電解質および代謝生成物の濃度、ならびに血液試料のヘマトクリット値を測定するのが望ましい。たとえば、pCO2、pO2、pH、Na+、K+、Ca2+、Cl-、Mg2+ブドウ糖、乳酸塩、クレアチニン、尿素、ならびにヘモグロビンおよびヘモグロビン由来の値の測定は、内科患者の体調を評価する際の主要な臨床指標である。現在、上記のパラメータのうちの少なくともいくつかのそのような測定のために、複数の異なる分析器が存在する。そのような分析器は、最も有意義な診断情報をもたらすために精密な測定を実行することができる。
【0004】
多くの医療施設にとって、多数の血液分析を効率的に実行する能力が重要である。たとえば、集中治療中の患者は、血液ガスおよび臨床化学の測定のために1日当たり15~20回の試料採取が必要であり、可能性として多数の血液試料が毎日分析されることになる。さらに、実行されなければならない検査の数を制限するために、各検査の終了に際して、できるだけ多くの情報を蓄積するのが望ましい。さらに、同じ理由から、これらの測定から得られた測定値および対応する分析結果が信頼できるものであることが重要である。したがって、各測定は、一般的には種々の水洗、較正および/または参照液体を使用する較正および/または品質管理施策を条件とし、測定チャンバは、測定後のいかなる汚染も防止するために、各測定の後に徹底的に洗い落とされる。その上に、血液試料に対する様々な測定を実行するために採用されたセンサは、適切かつ継続的に機能することが非常に重要である。
【0005】
一般的にはセンサの寿命は有限であるので、既知の試料分析器は交換可能なセンサモジュールを備え、センサモジュールは1つまたは複数のセンサを備える。したがって、試料分析器の作業者は、現在使用されているセンサモジュールを試料分析器から取り外して新規のセンサモジュールと交換してよく、それにより、センサの新規のセットで試料分析器を引き続き使用することができる。
【0006】
したがって、試料分析器およびセンサモジュールの製造業者は交換用センサモジュールを提供する。交換用センサモジュールは、一旦製造されると、一般的には一定期間にわたって保管されてから、初めて試料分析器に挿入される。たとえば、交換用モジュールは、製造業者、流通経路の様々なステージおよび/または試料分析器が作動される医療施設に保管され得る。異なる試料分析器には異なるタイプのセンサモジュールが必要になり得、異なるセンサモジュールは、たとえば異なる検査回数、異なる稼働寿命といった異なる用途向けでよく、かつ/またはそれぞれの他の動作パラメータを有し得る。したがって、分析器用のセンサモジュールは、通常は、検査の回数、構成、寿命などに関して多くの異なる種別が生成される。結果として、多くの場合、供給業者と顧客の両方が、正確なセンサが常に使用可能であることを保証するためにセンサモジュールの多くの在庫品を維持する。
【0007】
その上に、種々の医療施設が、異なる動作パラメータを有する試料分析器と共にセンサモジュールを用いる必要性があり得るので、製造業者および/または流通経路および/または顧客は、多くの場合、複数の異なるバージョンのセンサモジュールの在庫を維持しなければならず、したがって在庫品費用が増し、いくつかのセンサモジュールは、実用の前に棚寿命がきてしまうリスクが増大する。
【0008】
顧客が、顧客の独特な要求と正確に整合するセンサモジュールの種別を選択することができなければ、無駄の観念もあり得る。たとえば、1か月に検査を450回実行する施設は、600回の検査を実行するように構成された寿命1か月のセンサモジュールを購入するか、または300回の検査用に構成されたセンサモジュールを購入しなければならないことがあり得る。最初の事例では、顧客は150回の検査を「無駄にする」ことになり、2番目の事例では、顧客は追加のセンサ・スタートアップに耐えなければならない可能性がある。標準からの変化によって問題がさらに悪化する可能性があるので、この問題は、所与の分析器によって分析される試料の数にピークまたは最低値があるときにはさらに加速される。
【0009】
交換可能なセンサモジュールに関連した別の問題は、個々のセンサモジュールまたはセンサモジュールのロットに関連した品質問題の可能性に関するリコールまたは顧客警報の可能性を包含する。センサモジュール製造業者が生産センサモジュールのある特定の部分の品質問題を認識したとき、これらのセンサモジュールのさらなる使用を防止するための機構を用意することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、試料分析器を動作させるための、より安全でより費用効率の高い機構を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この背景により、第1の態様によれば、本明細書では生体試料分析装置を動作させる方法の実施形態が開示され、この装置は、
- 1つまたは複数のセンサおよび書込み可能メモリを備える交換可能なセンサモジュールを収容するためのレセプタクルと、
- 生体試料を、前記レセプタクルに収容されたセンサモジュールの1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも第1のセンサと実効的な相互作用をさせ、少なくとも第1のセンサと生体試料との間の相互作用に応答して測定結果を得、得られた測定結果を出力するように構成された測定ユニットと、
- 測定ユニットの動作を制御するように構成された制御ユニットと、
- 書込み可能メモリからデータを受け取るように、および書込み可能メモリに記憶するためにセンサモジュールにデータを転送するように構成されたデータ交換インターフェースと、
- 遠隔ホストシステムと通信するための通信インターフェースとを備え、この方法は、制御ユニットによって、
a)遠隔ホストシステムから、前記通信インターフェースを通じて、センサモジュールに関連した1つまたは複数の動作パラメータを受け取るステップと、
b)受け取られた1つまたは複数の動作パラメータを、前記データ交換インターフェースを通じて書込み可能メモリに書き込ませるステップと、
c)受け取られた1つまたは複数の動作パラメータに従って測定ユニットの動作を制御するステップと
を実行することを含む。
【0012】
したがって、センサモジュールが生体試料分析装置のレセプタクルに収容された後に遠隔ホストシステムから動作パラメータが受け取られるので、測定ユニットの動作を制御するために期限切れの動作パラメータを使用してしまうリスクがかなり低下する。これは、ある特定のセンサモジュールと共に使用される動作パラメータが、センサモジュールを製作したときとセンサモジュールを使用するときとの間で変化したときには特に重要になり得る。たとえば、特定のタイプのセンサモジュールを使用した経験から、動作パラメータのある特定のパラメータ値が、当初指定されたパラメータ値よりも適切であるのが分かることがある。したがって、本明細書で説明された方法の実施形態は、更新された動作パラメータの使用を容易にするための機構を提供するものである。いくつかの状況では、センサモジュールのある特定のタイプまたはロットがリコールされて、測定に使用されるべきではない、またはある特定の制限を伴ってのみ使用されるべきである、と判明することさえあり得る。したがって、受け取られた動作パラメータが、そのようなセンサモジュールのリコールまたは使用制限を指示することさえあり得る。そのために、交換可能なセンサモジュールを使用する、生体試料分析装置の測定結果の信頼性を向上する機構が提供される。
【0013】
本明細書で開示される方法の実施形態は、異なるタイプのセンサモジュールを製造すること、および/または複数のタイプのセンサモジュールを在庫することを必要とせずに、異なるセンサモジュールに関連した顧客固有および/または装置固有の動作パラメータの実装形態をさらに促進するものである。顧客固有および/または装置固有の動作パラメータは、センサモジュールが使用されるときセンサモジュールの書込み可能メモリに簡単に書き込まれ得、すなわち、センサモジュールの使用に先立ってセンサモジュールをカスタム化する必要はない。そのような動作パラメータの例は、センサモジュールを用いて分析され得る試料の残りの最大数または残っている最大の使用期間を含む。センサモジュールは、検査の十分に大きい最大回数向けに製造され得、次いで、分析器によって、供給業者と顧客との間の契約上の合意に対応する、試料の特定の数に構成される。したがって、分析器およびセンサモジュールの顧客は、センサモジュールが必要なだけ正確に長持ちすることを経験し、それによって無駄(未使用の検査を処分すること、またはあまりにも多くのセンサモジュールを交換すること)を低減する。その上に、在庫に維持されるセンサモジュールの必要な種別の数がかなり減少し得るので、在庫品の必要性が低下する。
【0014】
受け取られた1つまたは複数の動作パラメータは、交換可能なセンサモジュールの書込み可能メモリに書き込まれるので、動作パラメータは、たとえば分析器がオンラインでなく、遠隔ホストシステムと通信することができない状況、および/または交換可能なセンサモジュールが分析器から取り外され、別の分析器に挿入される状況、たとえば分析器が一時的または恒久的にオフラインであり、遠隔システムと通信することができない状況を含む種々の動作状況の間、頑健に取り出すことが可能である。
【0015】
したがって、本明細書で開示される方法の実施形態は、交換可能なセンサモジュールを使用する生体試料分析装置を動作させる、確実、安全、頑健、かつ低コストの方法を促進するものである。
【0016】
生体試料分析装置は分析器とも称される。分析器は、体液または他の液体の生体試料などの生体試料における検体の物理的パラメータを測定するための分析器でよい。
生体試料の例は、液体試料および/またはガス試料などの流体試料を含み得る。液体試料は、血液、希釈または不希釈の全血、血清、血漿、唾液、尿、脳脊髄液、胸膜、滑膜液、腹水、腹膜液、羊水、乳液、透析液試料等の群ならびに、これらの流体のうち任意のものを測定するために分析機器において使用される任意の品質管理材料および較正溶液から選択され得る。気体試料は、人工呼吸器ガス、呼気等、ならびに、分析機器においてこれらの流体のうち任意のものを測定するために使用される任意の品質管理および較正の材料を含み得る。試料は、検査により適するように、検査に先立って処理されてよい。前処理方法は、結果を妨げかねない成分の希釈、濾過、濃縮、抽出、除去または不活性化、および試薬の追加を含み得る。他の生体試料の例は、培養液または微生物培養、廃水、食物製品等を含む。
【0017】
さらに、いくつかの実施形態によれば、生体試料は体液すなわち生理液などの液体である。それに応じて、方法を実行する際に用いる試料分析器は、体液すなわち生理液などの液体試料のパラメータを分析するように適合され得る。したがって、医療用試料分析器が含み得る液体取扱いシステムは、測定チャンバを液体試料で満たしたり空にしたりするなど、液体流を好ましくは自動的に制御するための弁、コンジット、および/またはポンピング/移動の手段を備える。
【0018】
さらに、いくつかの実施形態によれば、液体試料は、血液、希釈または不希釈の全血、血清、血漿、唾液、尿、脳脊髄液、胸膜、滑膜液、腹水、腹膜液、羊水、乳液、透析液試料等の群ならびに、これらの流体のうち任意のものを測定するために分析機器において使用される任意の品質管理材料および較正溶液から選択された液体試料である。
【0019】
さらに、いくつかの実施形態によれば、流体試料は、たとえば生理作用を有するガスなどの医療用ガスといったガスである。それに応じて、この方法で使用される試料分析器は、医療用ガス試料のパラメータを分析するように有利に適合される。特に有効な医療用ガス試料の例は、人工呼吸器ガス、呼気等、ならびに、分析機器においてこれらの流体のうち任意のものを測定するために使用される任意の品質管理および較正の材料の群から選択される。したがって、医療用試料分析器が含み得るガス取扱いシステムは、測定チャンバをガス試料で満たしたり空にしたりするなど、ガス流を好ましくは自動的に制御するための弁、コンジット、および/またはポンピング/移動の手段を備える。医療用試料分析器は、液体とガスとの両方に適した流体取扱いシステムをさらに備え得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、分析器は、たとえば対象の生物学的状態を証明し、かつ/または監視するために、対象の哺乳動物の血液を分析するための各種パラメータを測定するように構成された血液分析器である。一般的には、対象の哺乳動物はヒト患者である。分析器は、たとえば対象の哺乳動物の全血検体における1つまたは複数の血液ガスの分圧、血液試料における1つもしくは複数の電解質および/または代謝生成物の濃度、ならびに/あるいは血液試料のヘマトクリット値といった、血液試料の1つまたは複数の物理的パラメータを測定するように構成され得る。たとえばpCO2、pO2、pH、Na+、K+、Ca2+、Cl-、Mg2+ブドウ糖、乳酸塩、クレアチニン、尿素ならびにヘモグロビンおよびヘモグロビン派生物の値といったパラメータは、内科患者の体調を評価する際の重要な臨床兆候であるため、血液分析器は、これらのパラメータのうちの1つまたは複数を測定するように構成され得る。分析器のいくつかの実施形態は上記のパラメータのうちの1つまたはいくつかだけを測定するように構成され得、他の実施形態は上記のパラメータのすべてを測定するように構成され得ることが認識されよう。分析器のいくつかの実施形態は、代替パラメータおよび/または付加パラメータを測定するように構成され得ることがさらに認識されよう。
【0021】
様々なタイプの生体試料の分析に適するセンサ技術および試料取扱いシステムは、当技術において既知であるため、詳細には説明されない。
交換可能なセンサモジュールの実施形態は、センサ・カセットあるいは1つまたは複数のセンサを備える他の交換可能なモジュールでよい。いくつかの実施形態では、センサモジュールは、たとえば電子デバイス、消耗品を伴う容器などのさらなる構成要素を含む。分析器のいくつかの実施形態は、たとえばセンサ・カセット、ならびに、たとえば測定ユニットの清掃、測定ユニットの較正および/または品質管理のために使用する物質および/または同種のものである消耗品を含む1つまたは複数の個別に交換可能な容器といった、2つ以上の個別に交換可能なモジュールを含む。他の実施形態では、センサモジュール自体が、消耗品を入れるための1つまたは複数の容器を備え得る。したがって、本明細書で使用されるセンサモジュールという用語はセンサ・カセットを備えるように意図されており、このセンサ・カセットは、センサのみを含み、追加の消耗品や、センサならびに消耗品および/または他の追加の構成要素を含む組合せモジュールは含まない。センサモジュールという用語に包含されることをやはり意図する、またさらなるタイプの交換可能なセンサモジュールが提供され得ることもさらに認識されよう。このセンサモジュールは、10を超える試料、50を超える試料、100を超える試料などの複数の試料を分析するように構成された多目的のセンサモジュールであり得る。
【0022】
生体試料分析装置の測定ユニットは、生体試料を、前記レセプタクルに収容されたセンサモジュールの1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも第1のセンサと実効的な相互作用をさせ、少なくとも第1のセンサと生体試料との間の相互作用に応答して測定結果を得、得られた測定結果を出力するための任意の適切な機構および構成要素を備え得る。
【0023】
たとえば、測定ユニットは、たとえば試料ホルダ、試料容器などから生体試料を受け入れるための試料入力ポートを含み得る。測定ユニットは、生体試料を、センサモジュールの1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも第1のセンサと実効的な相互作用をさせ、かつ/または、後に、分析された試料を分配するか、もしくは分析された試料を廃液容器に入れるための、たとえばコンジットや可動部品などを含む適切な試料運搬機構を含み得る。この目的のために、分析器は、たとえば上記で説明されたような適切な流体取扱いシステムを含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、測定ユニットはセンサモジュールから分離される。測定ユニットは、分析される生体試料を試料入力ポートで受け入れて、試料をセンサモジュールに運搬するように構成され得る。測定ユニットは、試料と、センサモジュールの1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも第1のセンサとが、実効的な相互作用をしたとき、分析された試料をセンサモジュールから受け取るようにさらに構成され得る。
【0024】
測定ユニットは、1つまたは複数のセンサからセンサ信号を受け取り、センサ信号に対する、たとえばフィルタリング、増幅、変換、および/または同種のものといった、受け取った信号を処理するための適切な信号処理ユニットをさらに備え得る。測定ユニットは、任意選択で処理されたセンサ信号を、測定結果を得るように分析するための適切な信号解析ユニットをさらに備え得る。信号処理ユニットと信号解析ユニットは個別のモジュールでよく、または、たとえば信号およびデータの単一の処理ユニットといった単一のモジュールへと一体化されてもよい。信号処理ユニットおよび/または制御ユニットは、測定ユニットの中または生体試料分析装置の中に配置されてよい。
【0025】
測定ユニットは、ユーザに、たとえば受け取られた動作パラメータの値、動作パラメータによって表される使用制限、測定結果、エラーメッセージなどの運用情報を伝えるように構成された、たとえばディスプレイ、プリンタおよび/または同種のものを含むユーザインターフェースを含み得る。代わりに、またはそれに加えて、生体試料分析装置は、たとえばコンピュータネットワークを通じて、たとえば医療施設情報システムといったデータ処理システムに、たとえばそのような情報を通信するための別のタイプの出力インターフェースを含み得る。
【0026】
制御ユニットは、信号処理および/または信号解析ユニットに、完全にまたは部分的に一体化されてよく、または個別のユニットとして実施されてもよい。制御ユニットは、たとえば1つもしくは複数のマイクロプロセッサ、または生体試料分析装置の動作を制御するための任意のその他の適切な回路もしくはデバイスを含む、プログラム可能な処理ユニットによって実施されてよい。
【0027】
センサモジュールは、たとえば異なるパラメータを判定するために異なる感知技術を使用するセンサといった、1つまたは複数のセンサを含み得る。1つまたは複数のセンサは、生体試料を分析するのに有効な任意の適切な感知技術を使用し得る。たとえば、センサは光センサでよく、または、試料とセンサとの間の物理相互作用および/または化学的相互作用の別の形態に頼るものでもよい。例示のセンサは、たとえばpO2、pCO2、pH;Li+、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、Cl-、HCO3-またはNH3(NH4
+)などの電解質の濃度;ブドウ糖、クレアチニン、尿素(BUN)、尿酸、乳酸、ピルビン酸、アスコルビン酸、リン酸エステルまたはタンパク質などの代謝因子の濃度;乳酸脱水素酵素、リパーゼ、アミラーゼ、コリン、エステラーゼ、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパルテート、アミノトランスフェラーゼ、またはクレアチニンキナーゼなどの酵素の濃度、のうちの1つまたは複数のパラメータといった種々のパラメータのうちの1つまたは複数を判定するように構成され得る。
【0028】
書込み可能メモリは、たとえばEPROM、EEPROM、書込み可能RFIDタグなどの、データを記憶するための任意の適切なタイプのメモリ技術を使用し得る。メモリ技術の選択は、書き込まれるデータ量、メモリが書き換えられる回数に関する要求、および/または単価、エネルギ消費などの他の要因に依拠し得ることが認識されよう。いくつかの実施形態では、書込み可能メモリは1回書込み可能のメモリでよく、他の実施形態では、このメモリは書換え可能、すなわち複数回書換え可能でよい。センサモジュールは、書込み動作および/または読取り動作を実行するように構成されたメモリ制御論理をさらに含み得る。そのために、分析器の制御ユニットによって動作パラメータを書き込ませるステップは、センサモジュールのメモリ制御論理に、書込みステップを実行するように要求するか、または書込みステップを実行するように制御するステップを含み得る。他の実施形態では、分析器の制御ユニットによって動作パラメータを書き込ませるステップは、分析器自体によって書込み動作を実行するステップを含み得る。
【0029】
データ交換インターフェースは、たとえばガルバニック接触または非接触のデータ交換によるデータ交換といった、任意の適切なデータ交換技術を使用し得る。非接触データ交換の例は、容量結合、誘導結合、ニアフィールド通信インターフェース、たとえば無線周波数通信インターフェースといった近距離無線通信インターフェース、近赤外線通信インターフェース、または任意のその他の適切なデータ交換技術によるデータ交換を含む。
【0030】
レセプタクルは、センサモジュールと測定ユニットとの間に、たとえば機械的かつ/または電気的かつ/または別様に動作可能な接続を確立し得る任意の適切なコネクタによってセンサモジュールを動作可能に収容するための任意の適切なデバイスでよい。レセプタクルは、センサモジュールを収容したとき、センサモジュールを完全に、または部分的に囲む隔室を画定し得る。隔室は、センサモジュールを生体試料分析装置に対して機械的かつ/または電気的に接続するための支持機構および/またはコネクタを含み得る。隔室は、隔室を閉鎖するための蓋、カバー、または別の機構をさらに含み得る。あるいは、レセプタクルは、センサモジュールがレセプタクルのいかなる囲壁にも囲まれることなく接続可能な接続機構を単に用意すればよく、またはレセプタクルが、たとえばセノアモジュールの接続部分のみを収容するスロットまたは雌コネクタといった部分的な囲壁を用意して、接続部分がレセプタクルに収容されているとき、センサモジュールの別の部分がレセプタクルの外部に延在してもよい。そのために、レセプタクルは、隔室、凹部、雌コネクタもしくは雄コネクタなどのコネクタ、結合機構、スロット、引出し、および/または同種のものであってよく、またはこれらを含み得る。
【0031】
遠隔ホストシステムと通信するための通信インターフェースは、たとえばネットワークアダプタ、シリアルポート、USBインターフェース、パラレルポート、Wi-Fiインターフェース、Bluetoothインターフェース、ローカルエリアネットワークコネクタ、および/または別の適切なインターフェースといった有線または無線のインターフェースでよい。生体試料分析装置は、たとえばローカルエリアネットワーク、インターネット、コンピュータネットワーク、電気通信ネットワークおよび/または同種のものあるいはその組合せといった適切な通信ネットワークを介して遠隔ホストシステムに接続されてよい。
【0032】
遠隔ホストシステムは、1つまたは複数のコンピュータ、仮想マシンおよび/または同種のものを含む、適切にプログラムされて構成されたデータ処理システムでよい。
遠隔ホストシステムは、単一の中央システムまたは分散システムでよく、分析器管理システム、顧客関係管理システム、製品管理システム、製品保守システム、および/または同種のものを実施するように適切にプログラムされ得る。いくつかの実施形態では、遠隔ホストシステムは、たとえば複数のセンサモジュールに関連した情報を維持するセンサモジュールデータベース、および/または複数の分析器に関連した情報を維持する分析器データベース、および/またはたとえば顧客関係管理システムといった複数の顧客に関連した情報を維持する顧客データベースといった1つまたは複数のデータベースを含むか、またはこれらに対して通信するように接続可能である。遠隔ホストシステムは、顧客関連の情報および/または分析器関連の情報および/またはセンサモジュール関連の情報を互いに関連付けることを可能にする1つまたは複数のデータベースを含み得ることが認識されよう。いくつかの実施形態では、遠隔ホストシステムは、たとえば分析器および/またはセンサモジュールの製造業者といったデバイス製造業者または供給業者によって動作させられる。しかしながら、他の実施形態では、遠隔ホストシステムは、たとえば医療施設、配給業者、供給業者、および/または同種のものといった別のエンティティによって動作させられる。
【0033】
いくつかの実施形態では、受け取られた1つまたは複数の動作パラメータを書込み可能メモリに書き込ませるステップは、1つまたは複数の動作パラメータに関連付けられた時間スタンプを書込み可能メモリに書き込ませるステップを含む。したがって、後にメモリから動作パラメータを取り出すとき、分析器は、動作パラメータが最新のものであるか、それともホストシステムから更新された動作パラメータを受け取ることを試行するべきかを判定し得る。したがって、この方法は、記憶された時間スタンプを基に、遠隔ホストシステムからの更新された動作パラメータを要求するステップを含み得る。分析器は、時間スタンプが最長の有効期間を過ぎていなければ、書込み可能メモリに記憶された1つまたは複数の動作パラメータに従って測定ユニットの動作のみを制御するように構成されてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の動作パラメータを受け取るステップは、
- レセプタクルに収容されたセンサモジュールの書込み可能メモリから、データ交換インターフェースを通じてモジュール識別子を受け取るステップと、
- 読み取られたモジュール識別子を、通信インターフェースを通じて遠隔ホストシステムに通信するステップと、
- 遠隔ホストシステムから通信インターフェースを通じて、通信されたモジュール識別子に関連した1つまたは複数の動作パラメータを受け取るステップと
を含む。
【0035】
詳細には、分析器は、特定のセンサモジュールと共に使用される動作パラメータのいかなる変化についてもホストシステムによって通知され得る。その上に、ホストシステムは、特定のセンサモジュールが使用された時間を記録してよく、したがって在庫管理、請求などが容易になる。この目的のために、読み取られたモジュール識別子を通信するステップは、書込み可能メモリから、モジュール識別子を読み取る時間を表す時間スタンプを通信するステップをさらに含み得る。したがって、たとえば分析器がオフラインであるか、または遠隔ホストシステムにモジュール識別子を直ちに通信することができない状況であっても、初めてセンサモジュールを使用した時刻がより正確に通信され得る。そのような状況では、分析器は、情報をキャッシュして、次に通信が確立されたときホストシステムに通信してよい。モジュール識別子は、センサモジュールを識別する任意の適切な識別子でよく、特定のセンサモジュールを一意的に識別する一意の識別子でよく、たとえばある特定の時点に製造された1ロット分のセンサモジュール、一種のセンサモジュールなどのセンサモジュールのグループを識別する識別子でもよい。いくつかの実施形態では、モジュール識別子は製造番号である。
【0036】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の動作パラメータを受け取るステップは、
- 通信インターフェースを通じて、生体試料分析装置を識別する分析器識別子を遠隔ホストシステムに通信するステップと、
- 遠隔ホストシステムから、通信インターフェースを通じて、通信された分析器識別子に関連した1つまたは複数の動作パラメータを受け取るステップと
を含む。
【0037】
したがって、分析器は、センサモジュールと共に動作するときに特定の分析器によって使用されるべき動作パラメータについて、ホストシステムによって通知されてよい。たとえば、ホストシステムは、分析器識別子に基づいて分析器固有の情報を取り出し得る。代わりに、またはそれに加えて、ホストシステムは、識別された分析器を動作させている顧客に関する情報を取り出し、顧客固有の優先度、顧客固有の使用制限などの顧客固有の動作パラメータを取り出し得る。詳細には、この方法により、供給業者は、たとえば使用時間および/または分析される試料の数といった、センサモジュールの所定の使用形態に関して顧客に請求する顧客固有の請求方式を実施することが可能になる。そこで、ホストシステムは、そのような使用形態または制限を表す1つまたは複数の動作パラメータを分析器に通信し得る。分析器識別子は、分析器を識別する任意の適切な識別子でよく、特定の分析器を一意的に識別する一意の識別子でよく、たとえば特定の組織(組織の特定の部分)のすべての分析器、特定のタイプの分析器などの分析器のグループを識別する識別子でもよい。いくつかの実施形態では、分析器識別子は製造番号である。代わりに、またはそれに加えて、遠隔ホストシステムは、たとえば分析器から受け取られたログデータに基づいて分析器の使用履歴を維持してよい。したがって、遠隔ホストシステムは、記憶された使用履歴に基づいて1つまたは複数の動作パラメータを判定し得る。たとえば、遠隔ホストシステムは、使用パターンの代表的な履歴を基に、センサモジュールによって分析される試料の残りの最大数を設定し得る。この情報は、請求のためにさらに使用され得る。
【0038】
動作パラメータがセンサモジュールのメモリに書き込まれているので、センサモジュールは、後に別の分析器と共に使用されても、センサモジュールの使用形態および/または制限が強制され得る。したがって、通信された分析器識別子に関連する前記1つまたは複数の動作パラメータは、分析器識別子によって識別された生体試料分析装置と共に使用されるとき、センサモジュールに関連した使用制限を表す使用制限パラメータを含み得る。使用制限の例は、センサモジュールと共に使用される1つまたは複数の分析器の特定のセットの制限、センサモジュールを用いて分析される試料の残りの最大数の制限、センサモジュールが使用され得る残りの最長期間の制限、センサモジュールが実行可能な分析のタイプに関する制限、および/または同種のものを含み得る。いくつかの実施形態では、センサモジュールに関連した1つまたは複数の動作パラメータは、センサモジュールに関連した稼働寿命を表すモジュール有効期限切れパラメータおよび/または試料の残りの最大数を含む。詳細には、いくつかの実施形態では、受け取られた1つまたは複数の動作パラメータに応じて測定ユニットの動作を制御するステップは、レセプタクルに収容された現行のセンサモジュールに関連した稼働寿命または試料の残りの最大数を超過したときには、測定ユニットが、レセプタクルに収容された現行のセンサモジュールを用いて測定するのを防止するステップをさらに含む。したがって、センサモジュールが分析器に挿入されたとき、分析器を、使用形態の履歴に関するオンラインデータおよび/または顧客と供給業者との間の契約上の合意に関するオンラインデータと関連付けることによって、試料の残りの最大数が判定され得る。
【0039】
遠隔ホストシステムから動作パラメータを受け取り、これらのパラメータをセンサモジュールの書込み可能メモリに書き込むステップは、生体試料分析装置が測定を実行するとき、またはたとえば電源投入もしくはスタンバイモードからの起動によって始動されるときでさえ、毎回実行する必要があるわけではない。詳細には、いくつかの実施形態では、動作パラメータを受け取り、書き込むステップが必要とされるのは、たとえばセンサモジュールが分析器に初めて動作可能に接続されて初めて使用されるときのみである。
【0040】
したがって、いくつかの実施形態では、この方法は、制御ユニットによって、
- 生体試料分析装置の起動時に、レセプタクルに収容されたセンサモジュールの書込み可能メモリからデータ交換インターフェースを通じて情報を受け取るステップと、
- 受け取られた情報を基に、センサモジュールが以前に使用されたことがあるか否かを判定するステップと、
- センサモジュールが以前に使用されたことがないとの判定に応答して、ステップa)~c)を実行し、そうでない場合は、書込み可能メモリからデータ交換インターフェースを通じて読み取られた、以前に記憶された1つまたは複数の動作パラメータに従って測定ユニットの動作を制御する、ステップと
を実行することを含み得る。
【0041】
書込み可能メモリから受け取られる情報は、たとえば動作パラメータを書き込む時間を表す時間スタンプ、および/または前もってメモリにパラメータが書き込まれているかどうかを指示するフラグ、および/または動作パラメータ自体のうちの1つまたは複数を含み得る。詳細には、センサモジュールを製造するとき、そのような時間スタンプおよび/またはフラグおよび/または1つもしくは複数の動作パラメータの1つもしくは複数のパラメータ値が、場合によっては有効な時間スタンプまたはパラメータ値ではない、たとえばゼロまたは別の値などのデフォルト値に設定されてよい。分析器は、書込み可能メモリに動作パラメータを書き込むとき、時間スタンプを実際の書き込んだ時間に設定してよく、かつ/またはフラグを設定してよく、かつ/またはパラメータ値を実際の値に設定してよい。そのために、分析器は、受け取った情報がデフォルト値を反映していれば、センサモジュールが以前に使用されたことがないと判定し得る。
【0042】
任意選択で、分析器は、続いて、たとえば周期的に、かつ/またはユーザ入力もしくは別のタイプの起動イベントに応答して、遠隔ホストシステムからの更新された動作パラメータを要求してよい。
【0043】
起動時、または更新された動作パラメータを要求するように起動されたときに、遠隔ホストシステムに対する通信が確立されることが不可能である場合、装置が通常は(更新された)動作パラメータを受け取るように構成されていたとしても、分析器が動作可能であることが望ましい場合がある。そのような状況は、たとえば分析器がオフラインのとき、たとえばコンピュータネットワーク問題のため、または他の理由のために生じ得る。センサモジュールが以前に書き込まれた動作パラメータを記憶していれば、分析器は、もちろんこれらのパラメータを読み取り、以前に書き込まれたこれらのパラメータを基に測定ユニットの動作を制御し得る。
【0044】
したがって、いくつかの実施形態では、この方法は、制御ユニットによって、
- 生体試料分析装置の起動時に、通信インターフェースを介した遠隔ホストシステムとの通信が確立され得るか否かを判定するステップと、
- 遠隔ホストシステムとの通信が確立され得るとの判定に応答して、ステップa)~c)を実行し、そうでない場合には、書込み可能メモリからデータ交換インターフェースを通じて読み取られた、以前に記憶された1つまたは複数の動作パラメータに従って測定ユニットの動作を制御する、ステップと
を実行することを含む。
【0045】
新規のセンサモジュールが初めて使用されるとき、遠隔ホストシステムに対する通信を確立することができなければ、分析器は、いくつかの実施形態では、新規のセンサモジュールのメモリから、センサモジュールの製造中または後の構成中にメモリに記憶されたデフォルトの動作パラメータを読み取ってよい。あるいは、分析器は、分析器のメモリに記憶されたデフォルトパラメータのセットを使用してもよい。いくつかの実施形態では、分析器は、ある特定の期間および/またはある特定の回数のみ、そのようなデフォルトパラメータに基づく動作を許容してよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、この方法は、
- 1つまたは複数のキャッシュされた動作パラメータのローカルキャッシュを、生体試料分析装置のデータ記憶装置に維持するステップと、
- センサモジュールが以前に使用されたことがなく、かつ遠隔ホストシステムとの通信が確立され得ないとの判定に応答して、キャッシュされた動作パラメータを、前記データ交換インターフェースを通じて書込み可能メモリに書き込ませるステップと、キャッシュされた1つまたは複数の動作パラメータに従って測定ユニットの動作を制御するステップと
を含む。
【0047】
詳細には、いくつかの実施形態では、この方法は、遠隔ホストシステムとの通信が再確立され得るとの判定に応答して、
- 遠隔ホストシステムから、前記通信インターフェースを通じて、センサモジュールに関連した1つまたは複数の更新された動作パラメータを受け取るステップと、
- 受け取られた1つまたは複数の更新された動作パラメータを、前記データ交換インターフェースを通じて書込み可能メモリに書き込ませるステップと、
- 受け取られた1つまたは複数の更新された動作パラメータに従って測定ユニットの動作を制御するステップと
を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、レセプタクルに新規のセンサモジュールが挿入されたのを検知することに応答してステップa)~c)が実行される。代わりに、またはそれに加えて、いくつかの実施形態では、この方法は、制御ユニットによって、
- 1つまたは複数の品質管理測定を実行するように測定ユニットを制御するステップと、
- 1つまたは複数の品質管理測定の結果に応答して、レセプタクルに収容されたセンサモジュールに関連した1つまたは複数の修正された動作パラメータを得るステップと、
- 1つまたは複数の修正された動作パラメータを、前記データ交換インターフェースを通じて書込み可能メモリに書き込ませるステップと、
- 1つまたは複数の修正された動作パラメータに従って測定ユニットの動作を制御するステップと
を行うことを含む。
【0049】
品質管理測定は、測定結果が予期された測定結果と比較され得るように、たとえば1つまたは複数の所定の品質管理または較正試料に対して実行される測定でよい。品質管理測定の結果に依拠して、分析器は、特定のセンサモジュールと共に使用される動作パラメータを修正して、修正された動作パラメータを書込み可能メモリに書き込んでよく、したがって分析器の後続の測定性能を改善する。あるいは、分析器は、1つまたは複数の品質管理測定の結果を遠隔ホストシステムに通信してよく、そこで、遠隔ホストシステムは、センサモジュールに関連した1つまたは複数の修正された動作パラメータを判定してよい。したがって、分析器は、遠隔システムから1つまたは複数の修正された動作パラメータを受け取り、前記データ交換インターフェースを通じて受け取った1つまたは複数の修正された動作パラメータを書込み可能メモリに書き込ませてよく、1つまたは複数の修正された動作パラメータに従って測定ユニットの動作を制御してよい。したがって、動作パラメータ(たとえば分析される試料の最大数)の判定において製造データおよび/または品質データが使用され得、それによって経験されるフィールドエラー率を低下させる。
【0050】
いくつかの実施形態では、この方法は、制御ユニットによって、測定ユニットの動作に応答して、データ交換インターフェースを通じて、書込み可能メモリに、1つまたは複数の利用状況パラメータを表すログデータなどの利用状況データを書き込ませるステップを含む。代わりに、またはそれに加えて、この方法は、制御ユニットによって、測定ユニットの動作に応答して、前記通信インターフェースを通じて遠隔ホストシステムに1つまたは複数の利用状況パラメータを表す利用状況データを通信するステップを含み得る。利用状況データの例は、たとえばセンサモジュールによって分析された試料の数または測定の時間スタンプといったログデータを含み得る。利用状況データは、測定結果、またはログデータと測定結果との組合せをもさらに含み得る。したがって、分析器および/または遠隔ホストシステムは、このように書き込まれた利用状況データを基に、たとえば、使用制限を超過したかどうかを後に判定してよく、請求を起動してよく、在庫管理を制御してよく、かつ/または異なるやり方で反応してもよい。いくつかの実施形態では、遠隔ホストシステムは、利用状況データを使用して、後続のセンサモジュール向けの動作パラメータを判定し得る。いくつかの実施形態では、分析器は、センサモジュールの書込み可能メモリに利用状況データを記録して、記録された利用状況データを、たとえば所定の時間間隔で周期的に、または分析器がオンラインのとき、遠隔ホストシステムに通信し得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の動作パラメータおよび/または利用状況データは、暗号化された形態で書込み可能メモリに書き込まれる。あるいは、1つまたは複数の動作パラメータならびに/あるいは利用状況データは、暗号的に認証される形態で書込み可能メモリに書き込まれてもよい。したがって、記憶されたデータは、不正アクセスを防止され得、かつ/または不正な変更を加えられないことが保証され得るが、さもないと、認定されていないやり方でデータが変更されてしまう。
【0052】
いくつかの実施形態では、センサモジュールに関連した1つまたは複数の動作パラメータは、
- 制御ユニットが、センサモジュールを用いる測定の実行を許容するかどうかを表すロック/ロック解除フラグと、
- 制御ユニットが、レセプタクルに収容されたセンサモジュールを有する生体試料分析装置の1つまたは複数の選択された機能をロックするかそれともロック解除するかを表す、1つまたは複数の機能ロック/ロック解除フラグと、
- 1つまたは複数の位置および/または作業者および/または医療施設に対してセンサモジュールの使用を制限する1つまたは複数の使用制限パラメータと、
- レセプタクルに収容されたセンサモジュールを有する生体試料分析装置の必要な起動構成を表す1つまたは複数の起動パラメータと、
- レセプタクルに収容されたセンサモジュールを有する生体試料分析装置の必要な測定構成を表す1つまたは複数の測定パラメータと
から選択された1つまたは複数のパラメータを含む。
【0053】
本開示は、上記で説明された方法、対応する装置、システム、方法、および/または製品を含む種々の態様に関し、これらは、それぞれが、他の態様のうちの1つまたは複数に関連して説明された利益および利点のうちの1つまたは複数をもたらし、それぞれが、他の態様のうちの1つまたは複数に関連して説明された実施形態および/または添付の特許請求の範囲において開示された実施形態に対応する1つまたは複数の実施形態を有する。
【0054】
詳細には、一態様によれば、生体試料分析装置は、
- 1つまたは複数のセンサおよび書込み可能メモリを備える交換可能なセンサモジュールを収容するためのレセプタクルと、
- 生体試料を、前記レセプタクルに収容されたセンサモジュールの1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも第1のセンサと実効的な相互作用をさせ、少なくとも第1のセンサと生体試料との間の相互作用に応答して測定結果を得、得られた測定結果を出力するように構成された測定ユニットと、
- 測定ユニットの動作を制御するように構成された制御ユニットと、
- 書込み可能メモリからデータを受け取るように、および書込み可能メモリに記憶するためにデータをセンサモジュールに転送するように構成されたデータ交換インターフェースと、
- 遠隔ホストシステムと通信するための通信インターフェースとを備え、
制御ユニットは、上記および下記で開示される方法のステップを実行するように構成される。
【0055】
一般に、ここおよび下記で、制御ユニットという用語は、本明細書で説明された機能を実行するように適切に適合された任意の回路および/またはデバイスおよび/またはシステムを含むように意図される。詳細には、上記の用語は、コンピュータまたは他のデータ処理デバイスまたはシステムの中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、専用電子回路などの、汎用もしくは専用のプログラム可能なマイクロプロセッサまたはその組合せを含む。制御ユニットは複数の処理ユニットとして実施され得る。
【0056】
別の態様によれば、コンピュータプログラム製品は、生体試料分析装置の制御ユニットに、プログラムコードを実行することによって上記および下記で開示される方法のステップを実行させるように構成された実行可能プログラムコードを含む。コンピュータプログラム製品は、CD-ROM、DVD、光ディスク、メモリカード、フラッシュメモリ、磁気記憶デバイス、フロッピディスク、ハードディスクなどのコンピュータ可読媒体として提供され得る。他の実施形態では、コンピュータプログラム製品は、たとえばインターネットまたは他のコンピュータまたは通信ネットワークを通じてダウンロードするためのウェブサーバ上のダウンロード可能なソフトウェアパッケージとして提供され得る。
【0057】
さらに別の態様によれば、生体試料を分析するためのシステムは、
- 本明細書で定義された生体試料分析装置と、
- 1つまたは複数のセンサおよび書込み可能メモリを備える交換可能なセンサモジュールと、
- センサモジュールに関連した1つまたは複数の動作パラメータを生体試料分析装置に送信するように構成された、本明細書で説明した遠隔ホストシステムと
を備える。
【0058】
さらに別の態様によれば、ホストシステムは、
- 1つまたは複数の生体試料分析装置と通信するための通信インターフェースと、
- データ処理ユニットと、
- 1つまたは複数の顧客固有の動作パラメータならびに/あるいは1つまたは複数のモジュール固有の動作パラメータを表すデータを含むデータベースとを備え、データ処理ユニットは、
- 生体試料分析装置から通信インターフェースを通じてモジュール識別子および/または分析器識別子を受け取るのに応答して、データベースから1つまたは複数の顧客固有の動作パラメータならびに/あるいは1つまたは複数のモジュール固有の動作パラメータを取り出し、
- 取り出された1つまたは複数の顧客固有の動作パラメータならびに/あるいは1つまたは複数のモジュール固有の動作パラメータを、通信インターフェースを通じて生体試料分析装置に転送するように構成される。
【0059】
ホストシステムはデータ処理システムとして具現化され得る。ホストシステムは、コンピュータ可読媒体を備えてよく、またはコンピュータ可読媒体に接続することができ、コンピュータ可読媒体からコンピュータプログラムが実行されるように、CPUなどの処理ユニットにロードされ得る。したがって、コンピュータ可読媒体には、データ処理システム上で実行されたとき、データ処理システムに、本明細書で説明された方法のステップを実行させるように適合されたプログラムコード手段が記憶され得る。データ処理システムは、適切にプログラムされたコンピュータ、複数のコンピュータのシステム、仮想マシン、または別のプログラム可能なコンピューティングデバイスを備え得る。ホストシステムは、インターネットなどの適切な通信ネットワークに接続されてよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、データ処理ユニットは、
- 生体試料分析装置の1つまたは複数の利用状況パラメータを表す利用状況データを生体試料分析装置から受け取り、
- 受け取った利用状況データをデータベースに記憶し、
- 記憶された利用状況データを基に、1つまたは複数の顧客固有の動作パラメータならびに/あるいは1つまたは複数のモジュール固有の動作パラメータを判定するようにさらに構成される。
【0061】
さらに別の態様によれば、コンピュータプログラム製品はプログラムコードを含み、プログラムコードは、データ処理ユニットによって実行されたとき、ホストシステムのデータ処理ユニットに、
- 生体試料分析装置からホストシステムの通信インターフェースを通じてモジュール識別子および/または分析器識別子を受け取るのに応答して、ホストシステムに関連したデータベースから、1つまたは複数の顧客固有の動作パラメータならびに/あるいは1つまたは複数のモジュール固有の動作パラメータを取り出すステップと、
- 取り出された1つまたは複数の顧客固有の動作パラメータならびに/あるいは1つまたは複数のモジュール固有の動作パラメータを、通信インターフェースを通じて、生体試料分析装置に転送するステップと
を実行させるように構成される。
【0062】
上記のように、この態様によるコンピュータプログラム製品は、CD-ROM、DVD、光ディスク、メモリカード、フラッシュメモリ、磁気記憶デバイス、フロッピディスク、ハードディスクなどのコンピュータ可読媒体として提供され得る。他の実施形態では、コンピュータプログラム製品は、たとえばインターネットまたは他のコンピュータまたは通信ネットワークを通じてダウンロードするための、ウェブサーバ上のダウンロード可能なソフトウェアパッケージとして提供され得る。
【0063】
本明細書で開示される様々な態様の実施形態が、添付図面に関連してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】遠隔ホストシステムと、交換可能なセンサモジュールを有する血液分析器とを備えるシステムのブロック図である。
【
図2A】交換可能なセンサモジュールの書込み可能メモリのメモリレイアウトの一例を示す図である。
【
図2B】交換可能なセンサモジュールの書込み可能メモリのメモリレイアウトの別の例を示す図である。
【
図3】生体試料を分析するための分析器を動作させるための処理の一実施形態の流れ図である。
【
図4】交換可能なセンサモジュールに関連した動作パラメータを更新するための処理の一実施形態のデータ流れ図である。
【
図5】生体試料を分析するための分析器によって測定を実行するための処理の一実施形態の流れ図である。
【
図6】生体試料を分析するための分析器によって品質管理測定を実行するための処理の一実施形態の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は、試料分析器100と、交換可能なセンサモジュール200と、遠隔ホストシステム300とを備えるシステムのブロック図を示す。この例では、試料分析器100は血液分析器である。しかしながら、他の実施形態では、試料分析器は他のタイプの生体試料を分析するための分析器でもよいことが認識されよう。試料分析器100は、たとえばセンサ・カセットといったセンサモジュール200を収容するためのレセプタクル110を備える。この例では、分析器は、洗浄、較正および/または品質管理ための処理液などの消耗品を入れる1つまたは複数の貯槽および廃棄物貯槽を含む容器モジュール400を収容するための、さらなるレセプタクル170を備える。個別の容器モジュールを必要とすることなく動作可能な、分析器の代替実施形態があり得ることが認識されよう。たとえば、センサモジュールは1つまたは複数の消耗品をも含み得る。またさらなる代替実施形態では、分析器は、センサモジュールならびに容器モジュールを収容するための単一のレセプタクルを含み得る。
【0066】
分析器は、分析される試料を受け入れるための試料入口ポート140を備える。
センサモジュール200は、分析器によって試料入口ポート140を通して受け入れられた試料を分析するための1つまたは複数のセンサ211を備える。たとえば、センサは測定チャンバ210の中に置かれてよい。
【0067】
分析器100、センサモジュール200および容器モジュール400は、受け取られた試料をセンサ211と実効的な相互作用をさせるように運搬するため、容器モジュール400から何らかの消耗品を召集するため、および容器モジュールに何らかの廃棄物を移送するための、試料取扱いインフラストラクチャ180を備える。試料取扱いインフラストラクチャの特定の詳細は、分析される試料の性質に依拠し得る。たとえば、血液試料または類似の液体試料の場合には、試料取扱いインフラストラクチャは、適切なコンジットを備えてよく、これらは、試料入口ポート140をセンサモジュール200に接続して、センサモジュール200を容器モジュール400ならびに1つまたは複数のポンプならびに/あるいはたとえば弁といった他の液体取扱い構成要素に接続するためのものである。コンジットは、分析器とセンサモジュールとの間、および分析器と容器モジュールとの間の流体連通の確立を可能にする適切なコンジット結合機構を備え得る。
【0068】
動作中に、試料は、入口ポート140を通って、センサ211を備える測定チャンバ210に移動される。センサ211は、たとえば全血検体において、試料の検体パラメータを、基本的には同時に測定するように配置される。好ましくは、正確で信頼できるデータを得るために必要な試料の量は、できるだけ少量である。体液、特に全血における複数の異なるパラメータを同時に測定するのに特に適切なセンサ組立体の設計と血液分析器におけるその使用との詳細な例は、たとえばEP2147307B1に見られる。
【0069】
分析器100は、たとえば適切にプログラムされた中央処理装置といった信号およびデータの処理ユニット121を含む制御ユニット120をさらに備える。制御ユニットは、試料取扱いインフラストラクチャの動作を制御することを含めて分析器の動作を制御するように構成される。制御ユニットは、センサからセンサ信号をさらに受け取り、受け取ったセンサ信号を処理して測定結果を計算し、計算された測定結果を出力する。この目的のために、制御ユニットは、ユーザインターフェース160に対して動作可能に結合される。ユーザインターフェース160は、ディスプレイと、たとえばボタンなどの物理的入力要素および/またはタッチスクリーン等によって実施された仮想入力要素といったユーザ入力要素とを含み得る。
【0070】
分析器は、動作中に、あらかじめプログラムして信号およびデータの処理ユニット212にロードされた命令と、任意選択でユーザ入力とに基づき、センサ211を使用して、受け取られた試料に対する測定を実行する。センサ211は、それぞれの検体の物理的パラメータを表すセンサ信号を生成して、信号およびデータの処理ユニット121にセンサ信号を供給する。信号およびデータの処理ユニット121は、センサ211からセンサ信号を受け取って処理し、処理された信号を、出力として、たとえばユーザインターフェース160を通じてユーザに提供し、かつ/または出力を、後続の/さらなるデータ分析に転送するように適合される。測定後に、試料は容器ユニット400の廃棄物貯槽に放出され、測定チャンバ210は次の測定のために準備される。
【0071】
図1に示される分析器の実施形態は、特に血液パラメータの測定用に適合される。したがって、容器ユニット400に供給された消耗品を使用して、流体取扱いインフラストラクチャ180によって行われ得る、測定、較正作業、および品質管理施策を実行するステップは、一般的には、種々の液体の、装荷、除荷、洗浄、掃除および再装荷のステップを包含する。流体の取扱いは、制御ユニット120によって、あらかじめプログラムされた命令および/またはユーザ入力に従って自動的に制御されてよい。容器モジュールは、洗浄/洗い流し、較正および品質管理作業用の処理液で前もって満たされた複数の貯槽を含み得る。処理液は既知の組成を有する。所与の処理ステップ用の処理液は、流体切替え弁によって選択され、供給ラインを通って測定チャンバへと転送され得る。放出された流体は、最後に、流体ラインを通って容器モジュール400の廃棄物貯槽まで移送される。
【0072】
分析器100は、起動時におよび/または動作可能時間中に継続的に、自己制御ルーチンを実行するように構成され得る。何らかの異常が検知されると、分析器100は、ユーザインターフェース160を通じてユーザに異常を指示し、障害状態を克服する方法をさらに指示し得る。他方では、分析器が通常動作を指示したとき、直ちに測定が実行され得る。有利には、いくつかの実施形態によれば、自己制御ルーチンは、アイドル時間中、すなわち、分析器がユーザの試料に対する実際の測定を実行するためには使用されないアイドル状態のとき実行され得る。自己制御ルーチンは、正確に知られている組成を有する較正等級および/または品質管理の処理液に対して実行される継続的な繰返し測定を含み得る。種々の検体センサ211の各々について既知の組成に対して得られた信号が、次いで、それぞれの検体測定用の基準を継続的に更新するため、および/または、現在使用されているセンサモジュールに関連した1つまたは複数の動作パラメータを修正するために使用され得る。
【0073】
センサモジュール200には複数の動作パラメータが関連付けられている。詳細には、センサモジュールには、たとえば、センサの不適当な劣化なしで分析され得る試料の最大数および/またはセンサモジュール供給業者との契約上の合意に基づく試料の最大数といった、センサモジュールによって分析され得る試料の残りの最大数が関連付けられていてよい。いくつかの実施形態では、試料の残りの最大数は、分析器の供給業者と、たとえば医療施設といった、分析器を使用する顧客すなわちエンティティとの間の契約関係によって判定され得る。たとえば、センサモジュールのユニット賞品は、センサモジュールによって分析され得る試料の最大数に依拠し得る。代わりに、またはそれに加えて、センサモジュールには、たとえばセンサモジュールが一旦使用され始めてから動作し続けることができる残りの最長期間といった、関連した稼働寿命があり得る。繰り返しになるが、稼働寿命は、センサの特性および/または供給業者と顧客との間の契約関係に依拠し得るものである。代わりに、またはそれに加えて、試料の残りの最大数または稼働寿命は、分析器の使用形態の履歴についての記憶された情報に基づいて判定され得る。この目的のために、分析器の使用形態の履歴に関する情報が遠隔ホストシステムによって記憶され得る。
【0074】
動作パラメータの別の例は、センサユニットの、たとえば製造されたときからの使用の有無とは無関係のセンサユニットの総寿命である、棚寿命を含み得る。またさらなる動作パラメータは、分析器によって特定のセンサモジュールと共に使用される、たとえば処理流体の選択や洗浄および/または較正の頻度などの動作パラメータを含み得る。
【0075】
センサモジュールは、たとえば書込み可能RFIDタグまたは同種のものといった非接触で読取りや書込みが可能なメモリの形態の書込み可能メモリ220を備える。メモリ220は、センサモジュール200に関連した動作パラメータを記憶するためのデータ記憶装置をもたらす。メモリ220には、センサモジュールを識別するためのモジュール識別子も記憶され得る。
【0076】
分析器は、センサモジュールが分析器のレセプタクル110に挿入されたとき、メモリ220からデータを読み取ったりメモリ220にデータを書き込んだりするように構成された、たとえばRFID読取り装置といったデータ交換インターフェース130を備える。メモリとの間で読み書きするためのメモリ技術およびインターフェース技術は、実施形態ごとに変化し得ることが認識されよう。詳細には、種々の有線または非接触のデータ交換インターフェースが使用され得る。制御ユニット120には、制御ユニットが、メモリ220に記憶されたデータを受け取ったり、データを記憶するようにメモリ220に送ったりすることができるように、データ交換インターフェース130が動作可能に結合される。
【0077】
分析器は、分析器100と遠隔ホストシステム300との間の有線通信および/または無線通信のための、たとえばネットワークアダプタといった通信インターフェース150をさらに備える。通信は、たとえばローカルエリアネットワーク、およびインターネット、電気通信ネットワーク、および/または同種のものを含む適切なコンピュータネットワーク500によって実行され得る。
【0078】
制御ユニット120は、通信インターフェース150およびコンピュータネットワーク500を通じて遠隔ホストシステムとデータを交換するように構成される。詳細には、制御ユニットは、たとえば使用統計、エラーメッセージ、分析器を識別する分析器識別子などを含む運用データを遠隔ホストシステムに通信するように構成され得る。制御ユニットは、たとえばモジュール識別子および/またはメモリ220に記憶された動作パラメータのいくつかまたはすべてといった、センサモジュール200のメモリ220から読み込んだデータを、遠隔ホストシステムに通信するようにさらに構成され得る。制御ユニットは、遠隔ホストシステム300から、たとえば分析器に現在挿入されているセンサモジュールのメモリ220に記憶された運用データといった情報を受け取るようにさらに構成される。データ交換が生じるのは、たとえば分析器が起動される都度、新規のセンサモジュールが挿入される都度、ならびに/あるいは、たとえば定期的に、および/または分析器の動作中にある特定のイベントによって起動されたとき、といった他のときである。いくつかの実施形態では、分析器が動作可能なのは、オンラインのとき、すなわち遠隔ホストシステムとの通信が可能なときのみである。他の実施形態では、分析器のオフライン動作、すなわち遠隔ホストシステムと通信することができないときの分析器の動作も可能である。そのようなオフライン動作は、無限の期間にわたって、または少なくとも制限された期間中可能であり得る。そのような実施形態では、分析器がオフラインの期間の後に再びオンラインになったとき、データ交換が再開され得る。オフラインの期間中、分析器は、通信が再開したとき遠隔ホストシステムに通信されるデータのローカルキャッシュを維持するように構成され得る。キャッシュは、分析器のメモリおよび/またはセンサモジュールのメモリ220によって実施され得る。
【0079】
遠隔ホストシステム300は、分析器100とデータを通信するため、また任意選択で遠隔ホストシステムに接続可能な他の分析器とデータを通信するための、たとえばネットワークアダプタといった通信インターフェース310を備える。遠隔ホストシステムは、たとえばコンピュータの中央処理装置および/または同種のものといった処理ユニット320をさらに備える。遠隔ホストシステムは、たとえば製品管理データベースおよび/または顧客関係管理データベースといったデータベース330をさらに備える。遠隔ホストシステムは2つ以上のデータベースを含み得ることが認識されよう。データベースは、複数のサイトにおいて動作される分析器の使用統計を維持するようにも構成され得る。遠隔ホストシステムは、たとえばサーバコンピュータ、仮想マシンなどの、1つまたは複数の適切にプログラムされたコンピュータによって実施され得る。たとえば、データベース330が、分析器と通信するデータ処理システムとは別のデータ処理システムによって実施されるように、処理ユニット310、通信インターフェース310およびデータベース330は、単一の組込みコンピュータとして、または分散型で実施され得ることが認識されよう。
【0080】
図2Aは、交換可能なセンサモジュールの、たとえば
図1のメモリ220といった書込み可能メモリのメモリレイアウトの一例を示すものである。メモリ220には、特定のセンサモジュールを一意的に識別するモジュールID221が記憶される。代替実施形態では、たとえばセンサモジュールの全体の製造バッチ、特定のタイプのモジュール等を識別する識別子といった非一意の識別子が使用され得る。メモリ220には、
- センサモジュールが初めて使用された時刻と、
- センサモジュールに関連した稼働寿命および/または試料の残りの最大数を表す、モジュールの有効期限切れパラメータであって、稼働寿命が、(たとえばモジュールの製造の時間に基づく)絶対有効期限および/またはセンサモジュールが初めて使用された時間に対する相対的な満了時間を含み得、センサモジュールの動作が推奨されるかまたは許容され得るのは、稼働寿命が満了していない場合のみであり、稼働寿命が絶対寿命および相対寿命を定義する場合には、センサモジュールの動作が推奨されるかまたは許容され得るのは、どちらの寿命も満了していない場合のみである、モジュールの有効期限切れパラメータと、
- 制御ユニットが、センサモジュールを用いる測定の実行を許容するかどうかを表すロック/ロック解除フラグと、
- 制御ユニットが、レセプタクルに収容されたセンサモジュールを有する生体試料分析装置の1つまたは複数の選択された機能をロックするかそれともロック解除するかを表す、1つまたは複数の機能ロック/ロック解除フラグと、
- 1つまたは複数の位置および/または作業者および/または医療施設に対してセンサモジュールの使用を制限する1つまたは複数の使用制限パラメータと、
- レセプタクルに収容されたセンサモジュールを有する生体試料分析装置の必要な起動構成を表す1つまたは複数の起動パラメータと、
- レセプタクルに収容されたセンサモジュールを有する生体試料分析装置の必要な測定構成を表す1つまたは複数の測定パラメータと
のうちの1つまたは複数などの複数の動作パラメータ222がさらに記憶される。
【0081】
モジュールID221および/または動作パラメータのうちの1つまたは複数は、読出し専用として、すなわち分析器が上書きできないように、記憶されてよいことが認識されよう。しかしながら、動作パラメータのうちの少なくともいくつかは、本明細書で説明された分析器によって、少なくとも1回は書込み可能でよく、任意選択で数回再書込み可能でもよい。いくつかの実施形態では、動作パラメータのいくつかまたはすべてのデフォルト値は製造中に記憶され得る。次いで、分析器は、センサモジュールの使用中に、動作パラメータのいくつかまたはすべてのデフォルト値を上書きしてよい。
【0082】
図2Bは、交換可能なセンサモジュールの、たとえば
図1のメモリ220といった書込み可能メモリのメモリレイアウトの別の例を示すものである。メモリ220は、
図2Aに関連して説明されたモジュールID221を記憶している。メモリは、複数の動作パラメータ223~225をさらに記憶している。動作パラメータは、センサモジュールの製造時に記憶された恒久的なパラメータ223を含み、これはセンサモジュールの寿命の間は変更されない。動作パラメータは、複数の動作パラメータのデフォルトパラメータ値224と、これらの動作パラメータの現在値225とをさらに含む。デフォルト値は、製造時に、メモリに記憶される。分析器は、センサモジュールの使用中に、これらのパラメータの更新バージョン225をメモリに記憶し得るが、デフォルト値に上書きすることはない。この目的のために、メモリエリア221、223および224は読取り専用でよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、たとえばデータを読み取る分析器が、データを解読するためには暗号キーを使用する必要があるように、メモリに記憶されたデータのいくらかまたはすべては暗号法で暗号化されていてよい。暗号キーは、特定の分析器向けの、分析器に固有のものでよく、または分析器のセット用の共通キーでもよい。代わりに、またはそれに加えて、記憶されたデータは、たとえばデータを書き込んだエンティティによってデジタル署名され、暗号的に信頼性を保護されてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、各動作パラメータは、メモリの中の対応するパラメータを記憶した時刻を表す時間スタンプに関連付けられる。
メモリ220は、たとえばセンサモジュールに関連付けられた使用統計および/または他の利用状況データといった追加データを記憶するように、さらに構成され得ることが認識されよう。たとえば、メモリは、センサモジュールによって分析された試料の数を指示するカウンタを記憶する。
【0085】
図3は、生体試料を分析するための、たとえば
図1に示された分析器といった分析器を動作させる処理の一実施形態の流れ図を示すものである。詳細には、この処理は、分析器の制御ユニットの制御下で実行され得る。
【0086】
この処理は、最初のステップS31において、分析器のレセプタクルに収容されているセンサモジュールのメモリに記憶された動作パラメータを更新する必要があるかどうか、また、分析器が、使用可能な動作パラメータを更新したかどうかを判定する。
【0087】
たとえば、いくつかの実施形態では、動作パラメータは分析器が始動される都度更新される。代わりに、またはそれに加えて、動作パラメータは、分析器のレセプタクルに新規のセンサモジュールが挿入される都度、更新される。代わりに、またはそれに加えて、動作パラメータは、品質管理測定が実行される都度、更新される。代わりに、またはそれに加えて、動作パラメータは、たとえば一定の時間間隔で周期的に更新される。代わりに、またはそれに加えて、動作パラメータは、ユーザ入力に応答して、遠隔ホストシステムとの通信リンクの確立に応答して、遠隔システムからの要求に応答して、および/または同種のものなどの1つまたは複数の他の起動イベントに応答して更新される。
【0088】
いずれにせよ、処理は、動作パラメータを更新する必要がある場合、または分析器がセンサモジュールの動作パラメータの更新を要求していると判定した場合には、ステップS32に進み、そうでなければステップS36に進む。
【0089】
ステップS32において、処理は、たとえば
図1のホストシステム300といった遠隔ホストシステムとの通信が確立され得るかどうかを判定する。確立され得ると判定した場合、処理はステップS33に進み、そうでなければステップS34に進む。
【0090】
ステップS33において、処理は、センサモジュールのメモリに記憶された動作パラメータを更新する。更新処理の一例が、
図4を参照しながら以下で説明される。次いで、処理はステップS35に進む。
【0091】
ステップS34において、処理は、センサモジュールのメモリから現在記憶されている動作パラメータを読み取る。現在記憶されているパラメータは、たとえばセンサモジュールを製造するときに記憶されたデフォルトパラメータでよく、または以前に記憶された動作パラメータ、たとえば同じ分析器によって以前のパラメータの更新処理中に記憶されたパラメータでもよく、またはこのセンサモジュールが以前に挿入されて別の分析器と共に使用された場合、その分析器によって記憶されたパラメータでもよい。次いで、処理はステップS35に進む。
【0092】
ステップS35において、処理は、ステップS33またはステップS34で得られた動作パラメータを検証する。検証は、1つまたは複数の検証ステップを含み得る。たとえば以下の通りである。
【0093】
- 動作パラメータが試料の残りの最大数を含むときには、処理は、現在のセンサモジュールを用いて既に分析された試料の数を判定してよい。たとえば、この数はセンサモジュールのメモリに記憶されたカウンタ値から得ることができる。
【0094】
- 動作パラメータが、たとえば使用期限またはセンサモジュールが最初に使用されたときからの最大の残存使用期間といった有効期限切れデータを含むときには、処理は、使用期限または期間を超過したかどうかを判定してよい。
【0095】
- 動作パラメータが信頼性を保護されるとき、処理は、たとえば任意選択で遠隔ホストシステムに対する要求を基に、デジタル証明書を検証して、動作パラメータが、認証されたソースによって書き込まれたものであるかどうかを検証してよい。
【0096】
- 動作パラメータが、たとえばある特定のタイプの分析器と共にのみ使用される制限、1つまたは複数の特定の分析器と共にのみ使用される制限などの他の使用制限を含むときには、処理は、これらの制限を現在の分析器の識別子および/または他の検証情報と比較してよい。
【0097】
- 動作パラメータがリコールフラグを含むときには、処理は、センサモジュールがもはや使用できないと判定してよい。
検証が、代替検証ステップまたはさらなる検証ステップを含み得ることが認識されよう。いずれにせよ、検証することによって、分析器が現在挿入されているセンサモジュールで測定の実行を開始し得るか否か、また任意選択で、分析器が、たとえば準備時間を延長した後、暴露時間を延長すること、および/または同種のものといった、ある特定の制限を加えてのみ、現在挿入されているセンサモジュールで測定の実行を開始し得るか否かが決定される。
【0098】
検証ステップによって、現在挿入されているセンサモジュールを用いて(さらに)測定することが不可能である/望ましくないと判定された場合には、処理は適切なエラーメッセージを伴って終結し得る。そうでなければ、処理は、何らかの適用可能な制限の適切な指示が存在する場合には任意選択で用いて、ステップS36に進み得る。
【0099】
ステップS36において、処理は、1つまたは複数の生体試料の1つまたは複数の測定を実行することによって進行する。
図4は、交換可能なセンサモジュールに関連した動作パラメータを更新するための処理の一実施形態のデータ流れ図を示すものである。詳細には、
図4は、
図3の処理のステップS33の可能な実施形態を示す。
【0100】
最初のステップS41において、分析器100は、分析器に現在挿入されているセンサモジュールのメモリ220からモジュール識別子を読み取る。任意選択で、分析器は、たとえばメモリに記憶された動作パラメータが、以前に書き込まれたかまたは更新されたものであるか否かを指示する時間スタンプまたはフラグといった付加情報をさらに読み取ってよい。
【0101】
ステップS42において、分析器100は、読み取ったモジュール識別子および分析器識別子を遠隔ホストシステム300に通信する。分析器識別子は、特定の分析器100を一意的に識別し得、または、少なくとも、ある特定のタイプの分析器を識別し得る。
【0102】
ステップS43において、遠隔ホストシステムは、分析器に現在挿入されているセンサモジュールに関連付けられる1つまたは複数の動作パラメータを判定する。この目的のために、ホストシステムは、データベース330またはいくつかのデータベースから、対応する動作パラメータを取り出してよい。
【0103】
たとえば、遠隔ホストシステムは、モジュールIDを基に、たとえば個々のセンサモジュールに関連した情報、センサモジュールのある特定の製造バッチに関連した情報、ある特定のタイプのセンサモジュールに関連した情報および/または同種のものといった、複数のセンサモジュールに関する情報を記憶した製品管理データベースまたは生産データベースを検索してよい。たとえば、センサモジュールが製造されてから顧客がモジュールを使用するまでの期間中に、前もって記憶されたある特定の動作パラメータが変更されるべきであると判明すると、これらの更新されたパラメータがデータベース330に記憶され、ホストシステムによってモジュールIDを基に取り出され得る。いくつかの状況では、ある特定のセンサモジュールのリコールが必要とされるかまたは望ましいことがある。これは、たとえば、動作パラメータの1つとしてリコールフラグを実施することにより、またはセンサモジュールによって分析される試料の残りの最大数をゼロに設定することにより、またはセンサモジュールの稼働寿命をゼロに設定することにより、効率的なやり方で実施され得る。遠隔ホストシステムは、ある特定のセンサモジュールを購入した顧客に関する情報を記憶してもよく、次いで、たとえば、試料の残りの顧客固有の最大数、顧客固有の稼働寿命などの1つまたは複数の顧客固有の動作パラメータを判定してもよい。たとえば、そのような顧客固有のパラメータは、センサモジュール供給業者と顧客との間の契約上の合意に基づくものでよい。そのような顧客固有のパラメータは、製品管理データベースまたは顧客関係管理データベースに記憶され得る。
【0104】
代わりに、またはそれに加えて、遠隔ホストシステムは、分析器IDを基に、複数の分析器について、たとえば分析器固有の使用制限、または分析器とセンサモジュールとのある特定の組合せに関する特定の使用制限といった情報を記憶した製品管理データベースを検索してよい。遠隔ホストシステムはまた、ある特定の分析器を動作させている顧客に関する情報を取り出し、顧客固有の使用制限などの顧客固有の動作パラメータを取り出し得る。この目的のために、データベースは、分析器を購入した顧客に関する情報を、あらゆる契約上の合意、課金情報などを含めて記憶し得る。このように、遠隔ホストシステムは、たとえば試料の残りの顧客固有の最大数、顧客固有の稼働寿命などといった1つまたは複数の顧客固有の動作パラメータを判定し得る。たとえば、そのような顧客固有のパラメータは、分析器供給業者と顧客との間の契約上の合意に基づくものでよい。そのような顧客固有のパラメータは、製品管理データベースまたは顧客関係管理データベースに記憶され得る。
【0105】
代わりに、またはそれに加えて、遠隔ホストシステムは、たとえば前記分析器から以前に受け取られて記憶された利用状況データに基づいて分析器の使用履歴を取り出してよい。
【0106】
ステップS44において、遠隔ホストシステムは、取り出された動作パラメータを分析器に戻す。
続くステップS45において、分析器は、受け取った動作パラメータをセンサモジュールのメモリ220に書き込むか、または少なくともメモリ220に記憶するように、データをセンサモジュールに送る。
【0107】
代替実施形態では、分析器は、遠隔システムに、モジュール識別子のみまたは分析器識別子のみを転送すればよいことが認識されよう。次いで、遠隔ホストシステムは、モジュール識別子のみまたは分析器識別子のみを基に、対応する動作パラメータを判定し得る。またさらに、いくつかの実施形態では、分析器は、モジュール識別子および/または分析器識別子に加えて付加情報を転送してよい。次いで、遠隔ホストシステムは、たとえば分析器の現在位置に関する位置情報などといったそのような付加情報にも基づいて、対応する動作パラメータを判定してよい。
【0108】
図5は、生体試料を分析するために、たとえば
図1に示された分析器といった分析器によって測定を実行するための処理の一実施形態の流れ図を示すものである。詳細には、
図5は、
図3の処理のステップS36の可能な実施形態を表し得る。
【0109】
最初のステップS51において、処理は、得られた動作パラメータを使用して測定を実行する。分析器は、測定結果を分析器のディスプレイに表示したり、測定結果を印刷したり、測定結果を医療施設の情報システムに通信したりしてよい。
【0110】
ステップS52において、処理は、分析器に現在挿入されているセンサモジュールのメモリに、ログ情報および/または他の利用状況データを書き込む。ログ情報を書き込むステップは、たとえば、センサモジュールによって分析された試料の数を表す、メモリに記憶されたカウンタ値を更新するステップを含み得る。ログ情報は、測定の時間スタンプおよび/または追加のログ情報を含み得る。
【0111】
分析器が現在オンラインであって遠隔ホストシステムと通信することができる場合には、処理は、任意選択でステップS53に進み、遠隔ホストシステムが分析器および/またはセンサモジュールのアクティビティのログを維持することを可能にするように、メモリに書き込まれた情報および/または他のログ情報もしくは利用状況データを含むログ情報および/または他の利用状況データを、遠隔ホストシステムに送ってよい。いくつかの実施形態では、たとえば分析器がオフラインであって遠隔ホストシステムと通信することができない状況では、処理は、メモリに記憶された情報を遠隔ログと同期させてよい。たとえば、分析器が、オフラインの期間中に、センサモジュールのメモリにログ情報を記憶した場合には、処理は、センサモジュールのメモリに記憶されたログ情報の現状ステータスを通信してよい。代わりに、またはそれに加えて、分析器が再びオンラインになったとき、キャッシュされた情報が遠隔ホストシステムに送信されるように、分析器自体が、オフラインの期間中はログ情報のキャッシュを維持してよい。
【0112】
図6は、生体試料を分析するために、たとえば
図1に示された分析器といった分析器によって品質管理測定を実行するための処理の一実施形態の流れ図を示すものである。
ステップS61において、処理は品質管理測定を実行する。たとえば、分析器は、分析器の起動時にユーザ入力に応答して分析された一定数の試料および/または同種のものの後に、1つまたは複数の品質管理測定を周期的に実行してよい。これらの測定は、正確な測定結果(複数可)が知られている、たとえば品質管理液体といった既知の試料の測定を実行するステップを包含し得る。したがって、そのような測定により、分析器は、そのような品質管理試料に対して実行された実際の測定結果が、既知の目標結果から受入れ可能な乖離の範囲内にあるかどうかを判定することができる。
【0113】
この実施形態では、ステップS62において、処理は、品質管理測定の結果を基に、動作パラメータのうちの1つまたは複数を修正するべきかどうかを判定する。この判定は、所定のルールのセットまたはより複雑なアルゴリズムに基づくものでよい。たとえば、そのような所定のルールのうちの1つが、ある特定の品質管理試料の目標測定結果のまわりの1つまたは複数の安全マージンを定義してよい。実際の測定結果がこれらのマージンの範囲に入るか否かに依拠して、処理は、現行のセンサモジュールに関連した試料の残りの最大数を(たとえば増減して)修正し得る。したがって、センサモジュールの実際の稼働寿命は、品質管理測定におけるモジュールの性能に応答して調節され得る。この目的のために、いくつかの実施形態では、判定ステップは、たとえば傾向を判定するように、現在の品質管理測定ばかりでなく以前の品質管理測定をも考慮に入れてよい。
【0114】
上記の判定は、分析器によって、および/または遠隔ホストシステムによって実行され得ることが認識されよう。後者の場合には、品質管理測定の結果は遠隔ホストシステムに通信されてよく、次いで、遠隔ホストシステムが、場合により修正される動作パラメータの判定を実行し、このように修正された動作パラメータを分析器に返してよい。いずれにせよ、いくつかの実施形態では、修正は、いくつかの実施形態において認証された作業者による承認を必要とすることがある。
【0115】
続くステップS63において、処理は、修正された動作パラメータをセンサモジュールのメモリに書き込み、後の測定に、修正された動作パラメータを使用する。
分析器が現在オンラインである、すなわち遠隔ホストシステムと通信することができる場合には、処理は、任意選択でステップS64に進み、たとえば
図5の処理のログ情報に関連して説明されたように、修正された動作パラメータを遠隔ホストシステムに送ってよい。
【0116】
本明細書で説明された方法の実施形態は、いくつかの別個の要素を備えるハードウェアによって実施され得、かつ/または、適切にプログラムされたマイクロプロセッサによって少なくとも部分的に実施され得る。
【0117】
いくつかの手段を列挙する特許請求の範囲では、これらの手段のうちのいくつかは、ハードウェアの全く同一の要素、構成要素または品目によって具現化され得る。ある特定の方策が、互いに異なる従属請求項において詳述されるか、または異なる実施形態において説明されるという単なる事実は、これらの方策の組合せが有利に使用され得ないことを指示すわけではない。
【0118】
本明細書において「含む(comprises)/含んでいる(comprising)」という用語が使用されたとき、明示された機能、要素、ステップまたは構成要素の存在を指定するように解釈されるが、1つまたは複数の他の機能、要素、ステップ、構成要素またはその群の存在や追加を排除するわけではないことが強調されるべきである。
【国際調査報告】