(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(54)【発明の名称】非アルコール性脂肪性肝炎の診断
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20220427BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20220427BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20220427BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220427BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220427BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20220427BHJP
A61K 31/625 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z ZNA
G01N33/50 P
G01N33/68
A61K45/00
A61P1/16
A61K31/192
A61K31/625
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021554760
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2020056682
(87)【国際公開番号】W WO2020182952
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506236163
【氏名又は名称】ジェンフィット
【氏名又は名称原語表記】GENFIT
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ブロゼック
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
2G045AA25
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2G045DA36
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4C084ZA751
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4C086ZA75
4C206DA16
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA75
(57)【要約】
本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎に対する処置の受容者候補又は非受容者として、対象を分類するための非侵襲的方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の診断のための、NASHに対する処置の受容者若しくは非受容者としての対象の分類のための、又はNASHに対する処置の有効性のモニタリングのための方法であって、
i)物理的方法を用いて前記対象の肝線維化を測定する工程、及び
ii)前記対象の体液中の、hsa-miR34a、A2M、YKL40及びHb1Acからなる群から選択される少なくとも1つの循環マーカーのレベルを測定する工程、
を含む方法。
【請求項2】
工程i)が、前記対象の肝硬度を測定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硬度測定が、肝臓中の弾性せん断波伝播速度の差を測定することによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
hsa-miR34a、A2M、YKL40及びHb1Acからなる群から選択される少なくとも2つの循環マーカーのレベルの測定を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
hsa-miR34a及びA2Mのレベルの測定を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
hsa-miR34a、A2M、YKL40及びHb1Acからなる群から選択される少なくとも3つの循環マーカーのレベルの測定を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
hsa-miR34a、A2M及びYKL40のレベルの測定を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
hsa-miR34a、A2M、YKL40及びHb1Acのレベルの測定を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
測定i)と測定ii)を組み合わせて、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の診断のための、NASHに対する処置の受容者若しくは非受容者としての対象の分類のための、又はNASHに対する処置の有効性のモニタリングのためのスコアを計算する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、脂肪化スコア≧1、風船様肝細胞スコア≧1、小葉内炎症スコア≧1、NAS≧4及び線維化ステージ≧2を潜在的に有する対象の分類のためのものである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
NASHの処置における使用のための抗NASH化合物であって、処置される対象が、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法に従ってNASHに対する処置の受容者として分類されている、抗NASH化合物。
【請求項12】
前記抗NASH化合物がエラフィブラノール又はその薬学的に許容される塩である、請求項11に記載の使用のための抗NASH化合物。
【請求項13】
前記抗NASH化合物がニタゾキサニド又はその薬学的に許容される塩である、請求項11に記載の使用のための抗NASH化合物。
【請求項14】
前記抗NASH化合物が、ニタゾキサニド又はその薬学的に許容される塩と併用するための、エラフィブラノール又はその薬学的に許容される塩である、請求項11に記載の使用のための抗NASH化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎に対する処置の受容者候補又は非受容者として、対象を分類するための非侵襲的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、アルコール性肝炎と類似する脂肪酸の蓄積、肝細胞障害及び炎症によって組織学的に特徴づけられる肝臓の進行性疾患である。NASHは、肝線維症、肝硬変、肝不全及び/又は肝細胞癌(HCC)につながる恐れがある。世界における肥満及び2型糖尿病率と共に、NASHの発病率は近年増加しており、NASHを発病する患者の肝臓関連死の比率が増加している。これらの疾患の有病率が増加しつつあるため、NASHの有病率も増加すると予想され、それ故NASHは世界的な振興の公衆衛生問題となっている。これらの主な懸念により、NASHの診断のための、より高感度且つ信頼性の高い方法の開発の必要性が明確に示されている。
【0003】
現在のところ、肝生検の組織学的な分析が、依然として初期の脂肪化からNASHを見分けるための最適な方法である。しかし、肝生検にはいくつかの明らかな欠点がある。まず、肝生検において採取された物質は被診断対象の肝臓のほんのごく一部の標本であるため、採取された検体が対象の臓器の全体の状態の標本であるかどうかについての疑いが生じる。更に、肝生検は、患者にとって負担であり心配であり苦痛を伴う可能性のある非常に侵襲的な方法であり、これによって病的状態及び死亡についての懸念が生じている。最後に、前述の点から、一般集団における個人が、若しくはNASHのリスクがある患者でさえも、NASHを患っているかどうか判断するための通常の方法として、及び/又は前記個人におけるNASHの活動性、ステージ若しくは重症度を判定するための通常の方法として、肝生検を合理的に提案することはできない。
【0004】
生検ベースのNASH診断のこれらの欠点により、NASHの検出のための非侵襲的な方法の積極的な開発がもたらされた。例えば、WO2017046181及びWO2017167934により、循環バイオマーカーのレベルの測定をベースとする非侵襲的な診断が提供されている。
【0005】
一般集団におけるNASH有病率は既に、米国において6~15%、欧州において3~16%に達している。毎年実施される肝生検の総数(米国において約53,000)と一般集団におけるNASH患者の推定数との間には明らかな相違がある。この非常に低い診断率は、医学界において疾患の認識が十分でないことを反映しており、その理由の一つはNASHが承認された処置のまだない、静かな、ゆっくりと進行する、無症候性の疾患であることであるが、最も重要な理由は、管理し、場合によってはその状態を処置しなければならない、臨床転帰の進行のリスクが最も高いNASH患者を同定するための簡単な、信頼性の高い、広く利用できる検査がないことである。
【0006】
トランジェントエラストグラフィ(TE)は、肝臓組織の硬度を検査するために使用される非侵襲的な方法である(Friedrich-Rust、2008)。TEは、肝臓全体にわたる弾性せん断波伝播速度の差によって肝硬度を測定する超音波ベースの技術である。TEは、例えば、FIBROSCAN(登録商標)(EchoSens社、Paris、France)という名称で商品化されたエコーグラフを使用することによって実施することができる。しかし、肝炎、肝鬱血及び胆管閉塞を含む、患者に依存する要因によって、TEは影響され得る。FIBROSCAN(登録商標)のような超音波ベースのエラストグラフィ及びせん断波エラストグラフィは、高度線維化又は肝硬変の診断において中程度から高度の精度を有する。TEは、肝硬変を検出し有意な線維化を除くための信頼性の高い方法を提供するが、高度線維化ステージではないF2線維化又は線維化を伴わないNASHは、通常これらの技術を用いて正確に検出することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2017046181
【特許文献2】WO2017167934
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような非侵襲的な方法の改善に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の診断のための、NASHに対する処置の受容者若しくは非受容者としての対象の分類のための、又はNASHに対する処置の有効性のモニタリングのための方法であって、
i)物理的方法を用いて前記対象の肝線維化を測定する工程、及び
ii)前記対象の体液中の、hsa-miR34a、A2M、YKL40及びHb1Acからなる群から選択される少なくとも1つの循環マーカーのレベルを測定する工程、
を含む方法に関する。
【0010】
特定の実施形態では、測定i)は、前記対象の肝硬度を測定する工程を含む。更なる特定の実施形態では、肝硬度は、肝臓中の弾性せん断波伝播速度の差を測定することによって測定される。
【0011】
更に別の実施形態では、測定の工程ii)は、hsa-miR34a、A2M、YKL40及びHb1Acからなる群から選択される少なくとも2つの循環マーカーのレベルの測定を含む。更なる実施形態では、測定ii)は、hsa-miR34a及びA2Mのレベルの測定を含む。
【0012】
特定の実施形態によれば、測定ii)は、hsa-miR34a、A2M、YKL40及びHb1Acからなる群から選択される少なくとも3つの循環マーカーのレベル、例えばhsa-miR34a、A2M及びYKL40のレベルの測定を含む。
【0013】
更なる実施形態では、測定ii)は、hsa-miR34a、A2M、YKL40及びHb1Acのレベルの測定を含む。
【0014】
別の実施形態では、測定i)と測定ii)を組み合わせて、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の診断のための、NASHに対する処置の受容者若しくは非受容者としての対象の分類のための、又はNASHに対する処置の有効性のモニタリングのためのスコアを計算する。
【0015】
更に別の実施形態では、方法は、脂肪化スコア≧1、風船様肝細胞スコア≧1、小葉内炎症スコア≧1、NAS≧4及び線維化ステージ≧2を潜在的に有する対象の分類のためのものである。
【0016】
本発明の別の態様は、NASHの処置における使用のための抗NASH化合物であって、処置される対象が、本明細書に開示された方法に従ってNASHに対する処置の受容者として分類されている、抗NASH化合物に関する。特定の実施形態では、前記抗NASH化合物はエラフィブラノール又はその薬学的に許容される塩である。更に別の実施形態では、前記抗NASH化合物はニタゾキサニド又はその薬学的に許容される塩である。更なる実施形態によれば、抗NASH化合物は、ニタゾキサニド又はその薬学的に許容される塩と併用するための、エラフィブラノール又はその薬学的に許容される塩である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、NASHの診断のための、NASHに対する処置の受容者若しくは非受容者としての対象の分類のための、又はNASHに対する処置の有効性のモニタリングのための方法に関する。本発明の方法は、線維化NASHの診断において、線維化NASHに対する処置の受容者若しくは非受容者としての対象の分類において、又は線維化NASHに対する処置の有効性のモニタリングのために、特に有用である。
【0018】
本発明によれば、用語「非アルコール性脂肪性肝炎」は、過剰なアルコールの摂取がなく、ウイルス性肝炎(HCV、HBV)のような他の肝臓疾患を除いた後に、組織学的検査における肝臓の脂肪化、風船様肝細胞膨化及び肝炎の共存によって特徴づけられる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の状態を意味する。本発明によれば、用語「脂肪化」は、肝臓内の脂質又は脂肪の蓄積の異常な滞留を示すプロセスを意味する。本発明によれば、用語「肝細胞の風船様膨化」は、ヘマトキシリン及びエオジン(H&E)染色に基づく光学顕微鏡レベルで、希薄な細胞質を伴った、正常な肝細胞の直径の1.5~2倍の細胞の増大として一般に定義される。より全般的には、肝細胞の細胞死のプロセスを意味する。本発明によれば、用語「小葉内炎症」は、ヘマトキシリン及びエオジン(H&E)で染色された肝生検の切片の顕微鏡検査における、小葉内の炎症性病巣(炎症性細胞群)の存在を意味する。
【0019】
本発明によれば、「NAFLD活動性スコア」すなわち「NAS」は、脂肪化スコア、肝細胞の風船様スコア、小葉内炎症スコアの合計を意味し、以下の通りである。
S: 脂肪化スコア: 0:<5%、1: 5~33%、2: 34~66%及び3:>66%;
LI: 小葉内炎症スコア(病巣数/×20視野)( foci/x20 field): 0: なし、1: <2、2: 2~4及び3:>4;
HB: 風船様変性スコア(ballooning degeneration score): 0: なし、1: 少数の細胞、2: 多くの細胞/顕著な風船様膨化
【0020】
従って、NASHは、以下の肝生検に由来するグレード:脂肪化スコアにおいて少なくとも1点、小葉内炎症スコアにおいて少なくとも1点、及び風船様肝細胞スコアにおいて少なくとも1点を有するNAS≧3、によって特徴づけられるNAFLDの状態を意味する。
【0021】
NASHのより重症型も、上述のS、LI及びHBのスコアの1つにおけるより高いグレード及び/又は肝線維化の存在によって特徴づけられる。特に、「活動性NASH」は、以下の肝生検に由来するグレード:脂肪化スコアにおいて少なくとも1点、小葉内炎症スコアにおいて少なくとも1点、及び風船様肝細胞スコアにおいて少なくとも1点を有するNAS≧4によって特徴づけられるNASHを意味する。
【0022】
「肝線維化」は、染色(H&E、トリクローム又はピクロシリウスレッド染色)された肝生検の切片の顕微鏡検査における線維状の結合組織の存在を意味する。本発明の文脈においては、用語「線維化ステージ」は、組織学的検査における肝線維化の局在及び広がりを意味し、以下の通りである。
類洞周囲又は門脈周囲の線維化 1
軽度の類洞周囲の線維化(zone 3) 1a
中等度の類洞周囲の線維化(zone 3) 1b
門脈/門脈周囲の線維化 1c
類洞周囲及び門脈/門脈周囲の線維化 2
架橋線維化 3
肝硬変 4
或いは、線維化ステージは、本発明の文脈において以下のように表すことができる。
F=0: 線維化なし
F=1: 微小な線維化
F=2: 有意な線維化
F=3: 中等度の線維化
F=4: 重度の線維化(すなわち肝硬変)
【0023】
特定の実施形態では、本発明は、NASHを診断するため、NASHの処置の受容者若しくは非受容者として対象を分類するため、又はNASHに対する処置の有効性をモニターするために使用される。
【0024】
本発明によれば、用語NASHは、NASH、重度のNASH、活動性NASH、線維化NASH及び有意な線維化を伴う活動性NASH(すなわち、2以上の肝線維化ステージ、例えば2、3又は4に相当する線維化ステージ等、によって特徴づけられる活動性NASH)を含む、NASHの様々なステージを意味するが、これらに限定されない。本発明の方法は、これらのすべての種類のNASHに関して使用することができる。
【0025】
本発明の方法は、
i)物理的方法を用いて前記対象の肝線維化を測定する工程、及び
ii)前記対象の体液検体中の、少なくとも1つの循環マーカーのレベルを測定する工程、
を含む。
【0026】
工程i)は、当技術分野において既知のいくつかの方法によって実施することができる。例示的な方法としては、医用画像及び/又は臨床的測定が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、物理的方法は弾性測定である。弾性測定の方法は、更に具体的には、音響放射力、インパルスイメージング(ARFIイメージング)、トランジェントエラストグラフィ(TE)及びMRI硬度(MRI stiffness)からなる群から選択することができる。本発明の特定の実施形態では、物理的方法はトランジェントエラストグラフィであり、それは肝臓における弾性せん断波伝播速度の差を測定する。好ましい方法によれば、トランジェントエラストグラフィ(FIBROSCAN(登録商標)等)が使用されるが、それは肝臓の硬さすなわち硬度を評価するために使用される、キロパスカル(kPa)において測定される、線維化に相関する、侵襲的な検査が行われない手法である。TEの結果(FIBROSCAN(登録商標)の結果等)は、2.5kPaから75kPaの範囲であり得る。肝臓疾患を伴わない健康な対象の90~95%は、<7.0kPaの肝硬度測定値を有することになる。特定の実施形態では、肝硬度測定は、本出願の実験部分において示されたように実施される。
【0027】
工程ii)は、対象の体液検体からの少なくとも1つの循環マーカーの測定を含む。生体液は、血液の検体、血液に由来する体液の検体(例えば血清又は血漿、特に血小板を含まない血漿、例えば無細胞の、クエン酸を用いて得られた(citrate-derived)血小板を含まない血漿検体等)、唾液の検体、脳脊髄液の検体、又は尿の検体であり得る。特定の実施形態では、体液は、血液、血小板を取り除いた又は取り除いていない血漿又は血清である。当分野の技術者であれば、どの体液から特定の循環マーカーを測定するべきか知っているであろう。例えば下記の特定のマーカーのレベルについては、hsa-miR34a、アルファ2マクログロブリン(A2M)及びYKL-40は血清から、糖化ヘモグロビン(HbA1c)は血液から測定することができる。
【0028】
特定の実施形態では、工程ii)は、WO2017046181及びWO2017167934において開示された少なくとも1つの循環マーカーのレベルの測定を含む。
【0029】
特定の実施形態では、工程i)は、hsa-miR193(例えば、hsa-miR193b-3p等)、hsa-miR34a、A2M、YKL-40及びHbA1cからなる群から選択される少なくとも1つの循環マーカーのレベルの測定を含む。この実施形態の変形では、工程i)は、hsa-miR34a又はhsa-miR193、特にfsa-miR34aのレベルの測定を含む。別の特定の実施形態では、工程i)は、hsa-miR193(例えば、hsa-miR193b-3p等)、hsa-miR34a、A2M、YKL-40及びHbA1cからなる群から選択される少なくとも2つの循環マーカーのレベルの測定を含む。この実施形態の変形では、工程i)は、hsa-miR34a及びA2Mのレベルの測定を含む。更に別の実施形態では、工程i)は、hsa-miR193(例えば、hsa-miR193b-3p等)、hsa-miR34a、A2M、YKL-40及びHbA1cからなる群から選択される少なくとも3つの循環マーカーのレベルの測定を含む。この実施形態の変形では、工程i)は、hsa-miR34a、A2M及びYKL-40のレベルの測定を含む。
【0030】
本明細書に開示されたすべての実施形態及び変形において、hsa-miR34aは、より具体的にはhsa-miR34a-5pである得ることが理解されるべきである。
【0031】
別の特定の実施形態では、工程i)は、hsa-miR34a、A2M、YKL-40及びHbA1cのレベルの測定を含む。本出願では、これらの4つのマーカーの組み合わせはNIS4とも称される。これらの測定を工程i)の肝硬度測定と組み合わせることにより、NASHの診断の特異度、NASHの処置の受容者若しくは非受容者としての対象の分類、又はNASHの処置の有効性のモニタリングの予期しない改善がもたらされることが本明細書に示される。
【0032】
特定の実施形態では、例えば出願WO2017167934において示されるように、スコアを計算するためのロジスティック関数中で、循環マーカーのレベルの測定値が使用される。このスコア及び肝硬度の測定値をロジスティック関数中で組み合わせて、更に改善されたスコアを算出することができる。
【0033】
特定の実施形態では、NIS4スコアは、測定された硬度と組み合わせて使用される。NIS4スコアは、より具体的には、WO2017167934において示されるように以下のように計算される。
【0034】
【0035】
式中、
Y1=k+a*A+b*B+c*C+d*D
式中、
S1は、NASHスコア1すなわちNIS4スコアであり、
Aは、Cqにおけるhsa-miR-34a-5pの血清レベルであり、
Bは、g/Lにおけるアルファ2マクログロブリンの血清レベルであり、
Cは、ng/mLにおけるYKL-40の血清レベルであり、
Dは、パーセントにおけるHbA1cのレベル(例えば、測定されたHbA1cのパーセンテージが10%であれば、Dは10に等しい)であり、
kは、ロジスティック関数の定数であり、
aは、hsa-miR-34a-5pの血清レベルに関連付けられた係数であり、
bは、アルファ2マクログロブリンの血清レベルに関連付けられた係数であり、
cは、YKL-40の血清レベルに関連付けられた係数であり、
dは、HbA1cのレベルに関連付けられた係数である。
【0036】
本発明の改善されたスコアは、NIS4スコア及び肝硬度の測定値に基づいて、以下のロジスティック関数により、以下のように計算されてもよい。
【0037】
【0038】
Y2=l+e*S1+f*FS
式中、
S1は、NIS4スコアであり、
FSは、kPaにおける測定された硬度であり、
lは、ロジスティック関数の定数であり、
eは、NIS4スコアに関連付けられた係数であり、
fは、測定された肝硬度に関連付けられた係数である。
S2が閾値以上の場合、対象は、NASHを有する若しくは潜在的に有するとして分類され且つ/又はNASHに対する処置の受容者として分類される。S2が閾値よりも小さい場合、対象は、NASHに対する処置の受容者若しくは非受容者として、特には非受容者として分類されてもよく、且つ/又は対象は、彼/彼女のNASHを管理するための食事及び生活習慣の助言の受容者若しくは受容者候補として分類される。
【0039】
特定の実施形態では、lは-3.6296から-0.2985までの値を有し、eは1.539から5.629までの値を有し、fは0.0107から0.3229までの値を有する。
【0040】
NIS4のマーカーの中の1つのマーカーを除外すること、具体的にはHb1Acを除外することは、本発明の方法の的中度に対して大きな影響を及ぼさず、特に方法の感度及び特異度に対して深刻な影響を及ぼさないことが、本明細書において更に示される。この、測定するマーカーからHb1Acを除外することの更なる利点は、2つの異なる体液検体から測定する代わりに、ただ1つの体液検体、具体的には血清のみから測定することが可能になることである(Hb1Acレベルは血液から測定されるため)。これらすべての要素によって、実施がより容易で、費用効果がより高く、検査間での変動の傾向がより低い方法が、有利なことにはもたらされる。従って、特定の実施形態では、本発明の方法は、肝硬度の測定並びにmiR34a、A2M及びYKL40のレベルの測定を含む。まとめて、miR34aマーカー、A2Mマーカー及びYKL40マーカーをNIS3と称する。
【0041】
特定の実施形態では、改善されたスコアは、NIS3の測定値及び肝硬度の測定値に基づいて、以下のロジスティック関数により、以下のように計算されてもよい。
【0042】
【0043】
Y3=m+g*A+h*B+i*C+j*FS
式中、
Aは、Cqにおけるhsa-miR34aの血清レベルであり、
Bは、g/Lにおけるアルファ2マクログロブリンの血清レベルであり、
Cは、ng/mLにおけるYKL-40の血清レベルであり、
FSは、kPaにおいて測定された硬度であり、
mは、ロジスティック関数の定数であり、
gは、hsa-miR-34a-5pの血清レベルに関連付けられた係数であり、
hは、アルファ2マクログロブリンの血清レベルに関連付けられた係数であり、
iは、YKL-40の血清レベルに関連付けられた係数であり、
jは、測定された硬度に関連付けられた係数である。
【0044】
S3が閾値以上の場合、対象は、NASHを有する、若しくは潜在的に有するとして分類され、且つ/又はNASHに対する処置の受容者として分類される。S3が閾値よりも小さい場合、対象は、NASHに対する処置の受容者若しくは非受容者として、特には非受容者として分類されてもよく、且つ/又は対象は、彼/彼女のNASHを管理するための食事及び生活習慣の助言の受容者若しくは受容者候補として分類される。
【0045】
特定の実施形態では、mは-2.52から35.38までの値を有し、gは-1.2061から-0.0355までの値を有し、hは0.3104から1.7716までの値を有し、iは-0.0015から0.0207までの値を有し、jは-0.0096から0.3465までの値を有する。
【0046】
更に非常に予想外なことに、NIS3のマーカーの中の更に別の1つのマーカーを除外すること、具体的にはYKLを除外することは、本発明の方法の的中度に対して大きな影響を及ぼさない一方で、NIS3の測定値に基づく方法と比較してより良い特異度を示すことが、本明細書において更に示される。これにより、実施が更により容易で(測定するマーカーは2つのみ)、費用効果がより高く、検査間での変動の傾向がより低い方法が、有利なことにはもたらされる。従って、特定の実施形態では、本発明の方法は、肝硬度の測定並びにmiR34a及びA2Mのレベルの測定を含む。まとめて、miR34aマーカー及びA2MマーカーをNIS2と称する。
【0047】
特定の実施形態では、改善されたスコアは、NIS2の測定値及び肝硬度の測定値に基づいて、以下のロジスティック関数により、以下のように計算されてもよい。
【0048】
【0049】
Y4=n+o*A+p*B+q*FS
式中、
Aは、Cqにおけるhsa-miR-34a-5pの血清レベルであり、
Bは、g/Lにおけるアルファ2マクログロブリンの血清レベルであり、
FSは、測定された硬度であり、
nは、ロジスティック関数の定数であり、
oは、hsa-miR-34a-5pの血清レベルに関連付けられた係数であり、
pは、アルファ2マクログロブリンの血清レベルに関連付けられた係数であり、
qは、測定された硬度に関連付けられた係数である。
S4が閾値以上の場合、対象は、NASHを有する、若しくは潜在的に有するとして分類され、且つ/又はNASHに対する処置の受容者として分類される。S4が閾値よりも小さい場合、対象は、NASHに対する処置の受容者若しくは非受容者として、特には非受容者として分類されてもよく、且つ/又は対象は、彼/彼女のNASHを管理するための食事及び生活習慣の助言の受容者若しくは受容者候補として分類される。
【0050】
特定の実施形態では、nは-9.607から35.175までの値を有し、oは-1.2012から0.2127までの値を有し、pは0.4424から1.9381までの値を有し、qは0.0258から0.3617までの値を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって、対象に生活習慣の助言を与えるため(例えば、食事療法、又は身体活動の助言の提供等)、対象を医学的に管理するため(例えば、肝臓障害のマーカーを定期的にモニターする等のために医師への定期的な訪問又は定期検査を設定する等よって)、或いは対象に少なくとも1つのNASH若しくは肝線維化の治療を施すために決定がなされてもよい。特定の実施形態では、対象に生活習慣の助言を与えるため、又は少なくとも1つのNASH若しくは肝線維化の治療を施すために決定がなされてもよい。
【0052】
本発明は、従って、更に、本発明による方法によって同定されてきたそれを必要とする対象におけるNASH、線維化を伴うNASH、又は有意な線維化を伴う活動性NASHを処置するための方法における使用のための、抗NASH又は抗線維化化合物に関する。
【0053】
特に、本発明は、本発明による方法によって前記処置の受容者として分類されているそれを必要とする対象におけるNASH、線維化を伴うNASH、又は有意な線維化を伴う活動性NASHを処置するための方法における使用のための、抗NASH化合物に関する。
【0054】
例示的な抗NASH及び抗線維化化合物を以下に列記する。
- 式(I)の化合物:
【0055】
【0056】
式中、
X1はハロゲン、R1又はG1-R1基を表し、
AはCH=CH又はCH2-CH2基を表し、
X2はG2-R2基を表し、
G1及びG2は同一であるか又は異なっており、酸素原子又は硫黄原子を表し、
R1は、水素原子、置換されていないアルキル基、アリール基、或いは1つ又は複数のハロゲン原子、アルコキシ若しくはアルキルチオ基、シクロアルキル基、シクロアルキルチオ基、又は複素環基によって置換されているアルキル基を表し、
R2は、少なくとも1つの-COOR3基によって置換されているアルキル基を表し、ここで、R3は水素原子或いは1つ若しくは複数のハロゲン原子、シクロアルキル基若しくは複素環基によって置換されている又は置換されていないアルキル基を表し、
R4及びR5は、同一であるか又は異なっており、1つ若しくは複数のハロゲン原子、シクロアルキル基、複素環基によって置換されている又は置換されていないアルキル基、或いはその薬学的に許容される塩を表す。
- GS-0976、ND-654、AC-8632、PF05175157、CP640186、ゲムカベン、MK-4074及びPF05175157のようなアセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤。
- 2-(1-ヘキシニル)-N-メチルアデノシン、ピクリデノソンCF101(IB-MECA)、ナモデノソンCF-102、2-Cl-IB-MECA、CP-532,903、イノシン、LUF-6000及びMRS-3558のようなアデノシンA3受容体アゴニスト。
- アパラレノン(MT3995)、アミロライド、スピロノラクトン、エプレレノン、カンレノン及びカンレノ酸カリウム、プロゲステロン、ドロスピレノン、ゲストデン並びにベニジピンのようなアルドステロンアンタゴニスト及びミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト。
- PXL-770、MB-11055 Debio-0930B メトホルミン、CNX-012、O-304、マンギフェリンカルシウム塩、エルトロンボパグ、カロツキシマブ及びイメグリミンのようなAMP活性化タンパク質キナーゼ刺激剤。
- アミリン受容体アゴニスト及びカルシトニン受容体アゴニストとしては、これらに限定されないが、KBP-042及びKBP-089が挙げられる。
- トランスフォーミング成長因子ベータ2を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、これらに限定されないが、ASPH-0047、IMC-TR1及びISTH-0047が挙げられる。
- ARO-ANG3、IONIS-ANGGPTL3-LRx又はAKCEA-ANGPTL3LRx、エビナクマブ及びALN-ANGのようなアンジオポエチン関連タンパク質-3阻害剤。
- IMM-124-Eのような抗LPS抗体。
- A-4250、ボリキシバット、以前はSHP-625であったマラリキシバット、GSK-2330672、エロビキシバット及びCJ-14199のような頂端側ナトリウム共依存性胆汁酸輸送体阻害剤。
- 無水ベタイン又はRM-003。
- オベチコール酸(OCA)及びUDCA、ノルウルソデオキシコール酸並びにウルソジオールのような胆汁酸。
- 5-ヒドロキシエイコサペンタエン酸(15-HEPE、DS-102)、不飽和脂肪酸、例えば25 アラキドン酸、イコサペントエチルエステル、エイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸等、のような生理活性脂質。
- GRC-10801、MRI-1569、MRI-1867、DBPR-211、AM-6527:AM-6545、NESS-11-SM、CXB-029、GCC-2680、TM-38837、Org-50189、PF-514273、BMS-812204、ZYO-1、AZD-2207、AZD-1175、オテナバント、イビピナバント、スリナバント、リモナバント、ドリナバント、SLV-326、V-24343及びO-2093のようなカンナビノイドCB1受容体アンタゴニスト。
- アナバスム(レスナブ、JBT-101)のようなカンナビノイドCB2受容体ミメティクス。
- カンナビノイドCB1受容体/iNOS二重阻害剤。
- エムリカサン、ベルナカサン、ニボカサン、IDN-7314、F-573、VX-166、YJP-60107、MX-1122、IDN-6734、TLC-144、SB-234470、IDN-1965、VX-799、SDZ-220-976及びL-709049のようなカスパーゼ阻害剤。
- VBY-376、VBY-825、VBY-036、VBY-129、VBY-285、Org-219517、LY3000328、RG-7236及びBF/PC-18のようなカテプシン阻害剤。
- セニクリビロック(CCR2/5アンタゴニスト)、PG-092、RAP-310、INCB-10820、RAP-103、PF-04634817及びCCX-872のようなCCRアンタゴニスト。
- CCR3ケモカインモジュレーター及びエオタキシン2リガンド阻害剤。
- 以前はISIS-DGAT2RxであったIONIS-DGAT2Rx、LY-3202328、BH-03004、KR-69530、OT-13540、AZD-7687、ABT-046のようなジアシルグリセロール-O-アシルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤。
- エボグリプチン、ビダグリプチン、フォタグリプチン、アログリプチン、サキサグリプチン、チログリプチン、アナグリプチン、シタグリプチン、レタグリプチン、メログリプチン、ゴソグリプチン、トレラグリプチン、テネリグリプチン、デュトグリプチン、リナグリプチン、ゲミグリプチン、ヨグリプチン、ベタグリプチン、イミグリプチン、オマリグリプチン、ビダグリプチン及びデナグリプチンのようなジペプチジルペプチダーゼIV(DPP4)阻害剤。
- インスリンリガンド及びインスリン受容体アゴニスト。
- インスリン感受性改善薬及びMCH受容体-1アンタゴニスト。
- 以前はGKT137831であったGKT-831(2-(2-クロロフェニル)-4-[3-(ジメチルアミノ)フェニル]-5-メチル-1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン-3,6(2H,5H)-ジオン)及びGKT-901のようなNOX(NADPHオキシダーゼ)1&4二重阻害剤。
- CNX-024、CNX-025及びSB-030のような細胞外マトリックスタンパク質モジュレーター。
- ステアロイルCoA不飽和化酵素-1阻害剤/脂肪酸胆汁酸抱合体(FABAC)。
- オベチコール酸(OCA)、GS-9674、LJN-452、EDP-305、AKN-083、INT-767、GNF-5120、LY2562175、INV-33、NTX-023-1、EP-024297、Px-103及びSR-45023のようなファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト。
- オメガ-3脂肪酸、オマコール又はMF4637、魚油、多価不飽和脂肪酸(efamax、optiEPA)のような脂肪酸。
- TVB-2640、TVB-3199、TVB-3693BZL-101、2-オクタデシン酸、MDX-2、Fasnall、MT-061、G28UCM、MG-28、HS-160、GSK-2194069、KD-023及びシロスタゾールのような脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤。
特定の実施形態では、FAS阻害剤は、以下の化合物のリスト、
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
及びTVB-2640、において選択される化合物である。
【0061】
別の特定の実施形態では、FAS阻害剤は、
【0062】
【0063】
及びTVB-2640から選択される。
【0064】
特定の実施形態では、FAS阻害剤はTVB-2640である。
【0065】
- 線維芽細胞成長因子19(FGF-19)受容体リガンド又はFGF-19の機能的に操作された変異体。
- NGM-282のような線維芽細胞成長因子19(FGF-19)組換え体。
- 以前はBMS-986036であったPEG-FGF21、YH-25348、BMS-986171、YH-25723、LY-3025876及びNNC-0194-0499のような線維芽細胞成長因子21(FGF-21)アゴニスト。
- GR-MD-02、TD-139、ANG-4021、ガレクチン-3C、LJPC-201、TFD-100、GR-MD-03、GR-MD-04、GM-MD-01、GM-CT-01、GM-CT-02、Gal-100及びGal-200のようなガレクチン3阻害剤。
- セマグルチド、リラグルチド、エキセナチド、アルビグルチド、デュラグルチド、リキシセナチド、ロキセナチド、エフペグレナチド、タスポグルチド、MKC-253、DLP-205、ORMD-0901のようなグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)アナログ。
- LY-3305677及び長時間作用型オキシントモジュリンのようなグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニスト。
- Gタンパク質共役受容体(GPCR)モジュレーター;CNX-023。
- PBI-4050、PBI-4265、PBI-4283及びPBI-4299のようなGタンパク質共役受容体84アンタゴニスト(GPR84アンタゴニスト)、結合組織成長因子リガンド阻害剤及び遊離脂肪酸受容体1アゴニスト(FFAR1アゴニスト)。
- 成長ホルモン。
- ビスモデギブ、TAK-441、IPI-926、サリデギブ、ソニデギブ/エリスモデギブ、BMS-833923/XL139、PF-04449913、タラデギブ/LY2940680、ETS-2400、SHR-1539及びCUR61414のようなヘッジホッグ細胞シグナル伝達経路阻害剤。
- A-4250、GSK-2330672、ボリキシバット、CJ-15 14199及びエロビキシバットのような回腸ナトリウム胆汁酸共輸送体阻害剤。
- PBI-4050、PBI-4265、PBI-4283、PBI-4299及びAIC-649のような免疫調節薬。
- MSDC-0602k、MSDC-0602、CSTI-100及びAMRIのようなインスリン感受性改善薬及びMCH受容体-1アンタゴニスト。
- インテグリン阻害剤;Pliant Therapeutic社のインテグリン阻害剤、Indalo Therapeutics社のインテグリン阻害剤、セントルイス大学のインテグリン阻害剤、ProAgio及びGSK-3008348。
- JNJ-28165722、JNJ-42065426、JNJ-42152981、JNJ-42740815、JNJ-42740828及びPF-06835919のようなケトヘキソキナーゼ阻害剤。
- チペルカスト(以前はMN-001)、トメルカスト、スルカスト、マシルカスト、ザフィルルカスト、プランルカスト、モンテルカスト、ゲミルカスト、ベルルカスト、アクルカスト、ポビリカスト、シナルカスト及びイラルカストのようなロイコトリエン(LT)/ホスホジエステラーゼ(PDE)/リポキシゲナーゼ(LO)阻害剤。
- ラパポート、インターミューン、ファルマキシス、AB-0023、シムツズマブ、PXS-5382A及びPXS-5338のようなリジルオキシダーゼホモログ2阻害剤。
- マクロライド:ソリスロマイシン、アジスロマイシン及びエリスロマイシン。
- AB-0023、MT-1001、[18F]FB18mHSA、Xemys、テクネチウムTc 99mチルマノセプト及びCDX-1307のようなマクロファージマンノース受容体モジュレーター。
- メチルCpG結合タンパク質2モジュレーター及びトランスグルタミナーゼ阻害剤としては、これらに限定されないが、システアミン、ECシステアミン、腸溶性システアミン酒石酸水素塩、システアミン酒石酸水素塩(腸溶性)、Bennu、システアミン酒石酸水素塩(腸溶性)、Raptor、システアミン酒石酸水素塩、DRシステアミン、遅延放出腸溶性システアミン酒石酸水素塩、メルカプタミン、メルカプタミン(腸溶性)、Bennu、メルカプタミン(腸溶性)、Raptor、RP-103、RP-104、PROCYSBI及びメルカプタミン(腸溶性)が挙げられる。
- 以前はAZD4076であったRG-125、RGLS-5040、RG-101、MGN-5804及びMRG-201のようなmiRNAアンタゴニスト。
- Elastomic Ab社のMMP9刺激剤のようなメタロプロテイナーゼ9(MMP9)刺激剤。
- ミトコンドリア担体ファミリー阻害剤及びミトコンドリアリン酸担体タンパク質阻害剤としては、これらに限定されないが、TRO-19622、Trophos、オレソキシム、RG-6083又はRO-7090919が挙げられる。
- ミエロペルオキシダーゼ阻害剤としては、これに限定されないが、PF-06667272が挙げられる。
- モノクローナル抗体:ベルチリムマブ、NGM-313、IL-20標的mAbs、以前はGC1008であったフレソリムマブ(抗TGFβ)、以前はBTT-1023であったチモルマブ、ナマシズマブ、オマリズマブ、ラニビズマブ、ベバシズマブ、レブリキズマブ、エプラツズマブ、フェルビズマブ、マツズマブ、モナリズマブ、レスリズマブ及びイネビリズマブ。
- 抗IL20mAbs、抗TGFβ抗体、抗CD3抗体、抗LOXL2抗体及び抗TNF抗体のようなモノクローナル抗体。
- MSDC-0602、SVPシロリムスと同時投与のAAV遺伝子治療のようなmTORモジュレーター。
- NAD依存性デアセチラーゼサーチュイン刺激剤、NS-0200のようなPDE5阻害剤。
- LC-280126のようなNFカッパB阻害剤。
- ナイアシン又はビタミンB3のようなニコチン酸。
- ARI-3037MO、MMF、LUF 6283、アシフラン、IBC 293、MK-1903、GSK256073、MK-6892、MK-0354、SLx-4090、ロミタピド、レキシブリン、アパベタロン、アシフラン、ラロピプラント、ダポリナド、アナセトラピブ、INCB-19602、ST-07-02、ロメフロキサシン、ナイアシン及び放出制御/ラロピプラントのようなニコチン酸受容体(GPR109)アゴニスト。
- ニタゾキサニド(NTZ)、その活性代謝物チゾキサニド(TZ)又はRM-5061等のTZの他のプロドラッグ。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)としては、これらに限定されないが、F-351、サリチラート(アスピリン)、アセトアミノフェン、プロピオン酸誘導体(イブプロフェン、ナプロキセン)、酢酸誘導体(インドメタシン、ジクロフェナク)、エノール酸誘導体(ピロキシカム、フェニルブタゾン)、アントラニル酸誘導体(メクロフェナム酸、フルフェナム酸)、選択的25 COX-2阻害剤(セレコキシブ、パレコキシブ)及びスルホンアニリド(ニメスリド)が挙げられる。
- 以前はDV928であったDUR-928のような核内受容体リガンド。
- CER-209のようなP2Y13タンパク質アゴニスト。
- BOT-501及びBOT-191のようなPDGFRモジュレーター。
- ペグバリアーゼ、サプロプテリン、AAV-PAH、CDX-6114、セピアプテリン、RMN-168、ALTU-236、ETX-101、HepaStem、ロリプラム及びアルプロスタジルのような、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ刺激剤。
- プロテアーゼ活性化受容体(PAR)-2アンタゴニスト;PZ-235及びNP-003。
- CNX-014、MB-11055、ALF-1、マンギフェリン、アンレキサノクス、GS-444217、REG-101及びバリンのようなタンパク質キナーゼモジュレーター。
- フェノフィブラート、シプロフィブラート、ペマフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、ビニフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブリン酸、ニコフィブラート、ピリフィブラート、プラフィブリド、ロニフィブラート、テオフィブラート、トコフィブラート及びSR10171のようなPPARアルファアゴニスト。
- ピオグリタゾン、重水素化ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、エファツタゾン、ATx08-001、OMS-405、CHS-131、THR-0921、SER-150-DN、KDT-501、GED-0507-34-Levo、CLC-3001及びALL-4のようなPPARガンマアゴニスト。
- GW501516(エンズロボル若しくは({4-[({4-メチル-2-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,3-チアゾール-5-イル}メチル)スルファニル]-2-メチルフェノキシ}酢酸))又はMBX8025(セラデルパル若しくは{2-メチル-4-[5-メチル-2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-2H-[l,2,3]トリアゾール-4-イルメチルシルファニル]-フェノキシ}-酢酸)又はGW0742([4-[[[2-[3-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-4-メチル-5-チアゾリル]メチル]チオ]-2-メチルフェノキシ]酢酸)又はL165041又はHPP-593又はNCP-1046のような、PPARデルタアゴニスト。
- サログリタザール、アレグリタザール、ムラグリタザール、テサグリタザール及びDSP-8658のようなPPARアルファ/ガンマアゴニスト(グリタザールとも称される)。
- エラフィブラノール及びT913659のようなPPARアルファ/デルタアゴニスト。
- 共役リノール酸(CLA)、T3D-959のようなPPARガンマ/デルタ。
- PPARアルファ/ガンマ/デルタアゴニスト又はPPARパンアゴニスト:IVA337又はTTA(テトラデシルチオ酢酸)又はババキニン又はGW4148又はGW9135又はベザフィブラート又はロベグリタゾン又はCS038。
- プレバイオティクス繊維、プロバイオティクス。
- リファンピシンのようなプレグナンX受容体。
- Rho結合タンパク質キナーゼ2(ROCK2)阻害剤:KD-025、TRX-101、BA-1049、LYC-53976、INS-117548及びRKI-1447。
- シグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤;GS-4997。
- ナトリウム-グルコース輸送体(SGLT)2阻害剤:レモグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、エルツグリフロジン、ソタグリフロジン、イプラグリフロジン、チアナグリフロジン、カナグリフロジン、トホグリフロジン、ジャナグリフロジン、ベキサグリフロジン、ルセオグリフロジン、セルグリフロジン、HEC-44616、AST-1935及びPLD-101。
- ステアロイルCoAデサチュラーゼ-1阻害剤/脂肪酸胆汁酸抱合体:アラムコール、GRC-9332、ステアムコール、TSN-2998、GSK-1940029及びXEN-801。
- 甲状腺受容体β(THRβ)アゴニスト:VK-2809、MGL-3196、MGL-3745、SKL-14763、ソベチロム、BCT-304、ZYT-1、MB-07811及びエプロチローム。
- ナルトレキソン、JKB-121、M-62812、レサトルビド、デンドロフィリン、CS-4771、AyuV-1、AyuV-25、NI-0101、EDA-HPVE7及びエリトランのようなToll様受容体4(TLR-4)アンタゴニスト。
- チロシンキナーゼ受容体(RTK)モジュレーター;CNX-025;KBP-7018。
- レシヌラド、RLBN-1001、ベリヌラド、KUX-1151及びレシヌラド+アロプリノールのような尿酸トランスポーター1阻害剤及びキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
- PXS-4728A、CP-664511、PRX-167700、ASP-8232、RTU-1096、RTU-007及びBTT-1023のような血管接着タンパク質1(VAP-1)阻害剤。
- カルシフェロール、アルファカルシドール、1,25-ジヒドロキシビタミンD3、ビタミンD2、ビタミンD3、カルシトリオール、ビタミンD4、ビタミンD5、ジヒドロタキステロール、カルシポトリオール;タカルシトール1,24-ジヒドロキシビタミンD3及びパリカルシトールのようなビタミンD受容体(VDR)アゴニスト。
- ビタミンE及びアイソフォーム、ビタミンC及びアトルバスタチンと組み合わせたビタミンE。
【0066】
他の抗NASH剤としては、KB-GE-001及びNGM-386及びNGM-395及びNC-10及びTCM-606Fが挙げられる。更なる抗NASH剤としては、イコサブテート、NC-101、NAIA-101 コレセベラム及びPRC-4016が挙げられる。他の抗線維化剤としては、HEC-585、INV-240、RNAi治療剤(Silence Therapeutics社)及びSAMiRNAプログラム(Bioneer Corp社)が挙げられる。他の例示的な抗線維化剤としては、ピルフェニドン、又はニンテダニブ、ソラフェニブ及び他のRTKIs等の受容体チロシンキナーゼ阻害剤(RTKIs)、又はアンジオテンシンII(AT1)受容体遮断薬、又はCTGF阻害剤、又はTGFβ及びBMP活性化経路への妨害性を示す任意の抗線維化化合物が挙げられるが、TGFβ及びBMP活性化経路には、MMP2、MMP9、THBS1若しくは細胞表面インテグリン等の潜在型TGFβ複合体の活性化因子、TGFβ受容体I型(TGFBRI)若しくはII型(TGFBRII)及びそれらのリガンド、例えばTGFβ、アクチビン、インヒビン、Nodal、抗ミュラー管ホルモン、GDF若しくはBMP、補助共受容体(III型受容体としても知られる)等、又は制御性若しくは阻害性SMADタンパク質を含むSMAD依存性古典的経路の構成成分、又はMAPKシグナル伝達の様々な分岐、TAK1、Rho様GTPaseシグナル伝達経路、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ/AKT経路、TGFβ誘導性EMTプロセスを含むSMAD非依存性すなわち非古典的経路のメンバー、又はHhリガンド若しくは標的遺伝子を含む古典的及び非古典的ヘッジホッグシグナル伝達経路、又はWNTの任意のメンバー、又はTGFβへの影響性を示すNotch経路、が包含される。
【0067】
特定の実施形態では、NASH、線維化を伴うNASH、又は有意な線維化すなわち肝線維化を伴う活動性NASHの処置は、1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-イソプロピルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-tertブチルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-tertブチルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルオキシフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-tertブチルオキシカルボニルジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、1-[4-トリフルオロメチルオキシフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン、2-[2,6-ジメチル-4-[3-[4-(メチルチオ)フェニル]-3-オキソ-プロピル]フェノキシ]-2-メチルプロパン酸、及び2-[2,6-ジメチル-4-[3-[4-(メチルチオ)フェニル]-3-オキソ-プロピル]フェノキシ]-2-メチル-プロパン酸イソプロピルエステルからなる群から選択される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与する工程含む。本発明の更なる特定の実施形態では、式(I)の化合物は、1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン又はその薬学的に許容される塩である。
【0068】
特に、本発明は、本発明による方法によって前記処置の受容者として分類されているそれを必要とする対象におけるNASH、線維化を伴うNASH、又は有意な線維化を伴う活動性NASHを処置するための方法における使用のための、少なくとも1つの抗NASH剤及び/又は抗線維化剤を含む併用製品に関する。
【0069】
更に特定の実施形態では、本発明は、抗NASH化合物及び/又は抗線維化化合物の群から選択される少なくとも1つの薬剤或いはその薬学的に許容される塩を含む併用製品を用いた、NASH、線維化を伴うNASH又は有意な線維化を伴う活動性NASHの処置に関する。
【0070】
更に特定の実施形態では、本発明は、エラフィブラノールを用いた、NASH、線維化を伴うNASH又は有意な線維化を伴う活動性NASHの処置に関する。
【0071】
更なる実施形態では、NASH、線維化を伴うNASH又は有意な線維化を伴う活動性NASHの処置は、NTZ、TZ、ビタミンE若しくはピオグリタゾン、オベチコール酸、エラフィブラノール、セロンセルチブ、サログリタザール及び/又はセニクリヴォクを投与する工程を含む。
【0072】
更なる実施形態では、NASH、線維化を伴うNASH又は有意な線維化を伴う活動性NASHの処置は、NTZ又はTZ、特にNTZを投与する工程を含む。
【0073】
更なる特定の実施形態では、併用処置が行われる。別の特定の実施形態では、NASH、線維化を伴うNASH又は有意な線維化を伴う活動性NASHの処置は、1つ又は複数の他のNASH又は抗肝線維化化合物と組み合わせてエラフィブラノールを投与する工程を含む。更に別の実施形態では、NASH、線維化を伴うNASH又は有意な線維化を伴う活動性NASHの処置は、NTZ、TZ、ビタミンE若しくはピオグリタゾン、オベチコール酸、セロンセルチブ、サログリタザール、ベザフィブラート及びセニクリヴォクからなる群から選択される少なくとも1つの化合物と組み合わせてエラフィブラノールを投与する工程を含む。更に別の実施形態では、NASH、線維化を伴うNASH又は有意な線維化を伴う活動性NASHの処置は、NTZと組み合わせてエラフィブラノールを投与する工程を含む。
【実施例】
【0074】
材料と方法
A. 臨床検体
本発明者らは、肝生検を受けた対象からのヒト血液検体、及びRESOLVE-IT試験由来の関連する臨床データ及び生物学的データを利用することができた。RESOLVE-ITは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び線維化を伴う患者におけるエラフィブラノールの有効性及び安全性を評価するための、多施設無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験(NCT02704403)である。無作為化プラセボ対象RESOLVE-IT試験(NCT02704403)の最終目標は、組み入れ訪問前の6カ月未満のスクリーニング期間中に採取された肝生検の一元化されたスコアリングによって判定された活動性NASH(NAS≧4)及び有意な線維化(F-ステージ≧2)を有する約2000の患者における、エラフィブラノールの有効性及び安全性を評価することである。代償性(F-ステージ=4)及び非代償性肝硬変の患者は、治験の有効フェーズに含めなかった。試験は、適切な規制当局によって承認され、すべての患者が参加へのインフォームドコンセントを提出した。包埋肝生検を、組織学的病変の検査及びスコアリングに使用した。患者の特徴及びNAFLDの組織学的スペクトラムの分布を、Table 1(表1)に示す。
【0075】
生物統計解析には321患者が含まれた:生検データによれば、F1(n=69)、F2(n=123)及びF3(n=129)を伴う、21.5%のNTBT及び78.5%のTBT。
【0076】
本試験に使用したRESOLVE-ITコホートの患者の特徴の概要を、Table 1(表1)に示す。
【0077】
【0078】
患者の特徴、カテゴリー変数は%で表し、量的変数は、絶対的な平均、最小及び最大値、中央値、第1及び第3四分位数(Qu)として表す。
【0079】
無作為化の前の6カ月以内に取得された、一元的に読み取られた肝生検によって(NASHの診断のために使用可能な過去の生検がない場合には、肝生検はスクリーニング期間中に実施した)、NASH及び線維化を、
- NASスコアの成分(0~3のスコアが付けられる脂肪化、0~2のスコアが付けられる風船様変性、及び0~3のスコアが付けられる小葉内炎症)のすべてにおいて、少なくとも1のスコア、
- NAS≧4、
- NASH CRN線維化ステージ分類システムによる、1以上4未満の線維化ステージ、
を用いて評価した。
【0080】
線維化ステージ1の患者については、進行のリスクが高い患者のみを含めたが、これはNASスコア≧5、及び次の状態:アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の継続的な上昇、体格指数(BMI)≧30によって定義される肥満、メタボリック症候群(NCEP ATPIII定義)、2型糖尿病又はインスリン抵抗性の恒常性モデル評価(HOMA-IR)>6、のうちの2つを有する患者のみを含めたということである。
【0081】
B. 肝生検及び組織学的スコアリング
RESOLVE-ITコホートについては、肝生検は、RESOLVE-IT試験の治験施設において採取された。NASH-CRNシステムによる組織学的スコアリングは一元化され、ボージョン大学(Paris France)で訓練された病理学者によって実施された。
【0082】
C. 採血及び臨床検査
本試験に使用した血液検体は、処置期間前に患者から得られた。血清分離チューブ(SST)内に採取した血液8.5mLを、15の検体採取の1時間後に、1,300×gから2,000×gの間で10分間遠心分離することにより、血液細胞から無細胞血清を分離することによって処理した。次いで、血清を新規なチューブに移した。チューブは、YKL-40及びhsa-miR-34a-5pのレベルの測定用に-70℃で、又はアルファ2-マクログロブリンA2Mの測定用に室温で保存した。
【0083】
EDTA採取チューブ内に採取した血液は、HbA1c測定の前に室温で保存した。
【0084】
FIBROSCAN
侵襲的な検査なしに肝臓の硬さすなわち硬度を評価するために使用される手法で、トランジェントエラストグラフィとも称されるFIBROSCAN(登録商標)(EchoSens社、Paris)(キロパスカル-kPa-で測定され、線維化に相関する)を用いて、肝硬度を評価した。FIBROSCAN(登録商標)の結果は、2.5kPaから75kPaの範囲である。肝臓疾患のない健康な人の90~95%は、<7.0kPaの肝臓瘢痕測定値を有することになる。
【0085】
トランジェントエラストグラフィは、メーカーの助言に従って実施した:プローブM+E117M011.2に対するユーザーマニュアル-バージョン2-2017年4月、プローブXL+E117M013.3に対するユーザーマニュアル-バージョン3-2018年3月、FIBROSCAN(登録商標) 530 COMPACT E320M001.8に対するユーザーマニュアル-バージョン8-2017年12月(ソフトウェアバージョンG3.2)。M又はXLプローブは、患者の年齢、胸郭周囲長(TP)及び皮膚-肝表距離(SCD)に応じて使用した:
年齢<18、TP>75cm: Mプローブ、
年齢≧18、SCD<2.5cm: Mプローブ、
年齢≧18、3.5cm≧SCD≧2.5cm: XLプローブ。
【0086】
D. 生化学的解析
YKL40(CHI3L1とも称される)は、血清において、ELISA(ヒトキチナーゼ3様1イムノアッセイ Quantikine(登録商標) ELISAカタログ番号DC3L10)によって定量的に測定した。値は、ng/mLとして表した。
【0087】
アルファ2マクログロブリンのレベルは、BN IIシステム(Siemens Healthcare社)上で、比濁分析によって測定した。値は、g/Lとして表した。
【0088】
HbA1cは、イオン交換高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法(Menarini社 HA-8160 HbA1c自動分析装置)によって測定し、全ヘモグロビンのパーセンテージとして報告した。
【0089】
E. 血清中のmiR-34a-5pの定量的RTqPCR
RNAの抽出は、血清検体の追加の遠心分離を行わずに実施した。
【0090】
RNAの抽出:miR-VanaParis抽出キット(AM1556、Ambion、Life Technologies社、Carlsbad、CA)を使用して、メーカーの説明書に従って、100μlの個々の血清から、保存されたmiRNAを含有する全RNAを抽出した。抽出効率をモニターするために且つ検体間の変動を最小にするために、i)RNAの抽出前に、合成線虫(C. elegans)miR-39[3,125fmoles](MSY0000010、Qiagen社、Venlo、The Netherlands)を各検体に添加し、且つii)既知のmiR-34aのCq値を有する標準血清を、試験した検体と同時に処理した。次いで、miR-VanaParis洗浄溶液(8680G&8543G14 Ambion、Life Technologies社、Carlsbad、CA)を使用して洗浄の工程を実施し、エタノールのキャリー・オーバーを防ぐための遠心分離を実施した。miRNAを含む全RNAを、遠心分離によってDNAse/RNAseを含まない水中に溶出し、直ちに-80℃で、使用するまで保管した。
【0091】
逆転写:血清検体からの全RNA、又は3.125fmol/mLに希釈した合成hsa-miRNA-34a(1本鎖の配列=5'Phos-UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGU-3'(配列番号1);Integrated DNA Technologies社)(検量線作成及びmiR-34aのコピー数の計算のために使用)の固定量5μlを、TaqManマイクロRNA逆転写キット(4366597、Applied Biosystems社、Life Technologies社、Carlsbad、CA)を使用して、同時に逆転写した。逆転写反応を、10μlのTaqManマイクロRNAアッセイ5Xを含有する15μlの最終混合物中で実施し、Applied Biosystems社のサーマルサイクラー、GeneAmp(登録商標)PCRシステム9400中でインキュベートした。cDNAは、更に使用するまで、-20℃で低吸着チューブ中に保管した。
【0092】
リアルタイムqPCR:Taqman miRNA RT-qPCRアッセイ20X及びTaqMan Universal Master Mix IIを使用して、ウラシルNグリコシダーゼ(UNG)2X(Applied Biosystems社、Life Technologies社、Carlsbad、CA)を使用せずに、メーカーの説明書に従って、成熟miRNAの発現を定量した。CFX96(商標)リアルタイムシステムを使用したqPCRアッセイのための鋳型として、全RNAの固定量5μLを使用した。hsa-miR-34a-5p TaqManアッセイを使用した。合成miRNAからのRT生成物を連続希釈し、すべての検体(標準及び血清由来RNA)についてPCRを実施した。検量線を2回実行し、Cqデータをcopies/μLに変換するために使用した。Cq決定モードは回帰であった。転写物の存在量はCqで表される。
【0093】
成熟miRNAの配列及びTaq ManアッセイのIDを、以下の表中に報告する:
【0094】
【0095】
アルゴリズムの構築に使用したデータは、Cqフォーマットであった。
【0096】
F. NIS4スコアの計算
NIS4は、上記で示したように、測定した以下のマーカーのレベルから計算した。
- 血清中のhsa-miR-34a-5pのレベル、
- 血清中のアルファ2マクログロブリンのレベル、
- 血清中のYKL-40のレベル、及び
- 血液EDTA中のHbA1cのレベル。
【0097】
NIS4スコアを、出願WO2017167934において提供されたように計算し、Cq単位で表されるhas-miR-34a-5pの血清レベルを有するロジスティック関数として定義した。
【0098】
G. バイオインフォマティクス解析
解析の目的は、処置すべきNASH患者の同定に関連付けることができるバイオマーカーを見出すことである。本解析では、処置すべき(TBT)患者は、以下の生検に由来するパラメータを有するとして定義される。
- 脂肪化スコア≧1、
- 風船様肝細胞スコア≧1、
- 小葉内炎症スコア≧1、
- NAS≧4、及び
- 線維化ステージ≧2。
【0099】
共線性の試験
ピアソン相関を、量的変数間の対で計算した。2つの変数が、血漿miRNAを用いた解析で0.7よりも良い相関、又は血清miRNAを用いた解析で0.6よりも良い相関を示した場合、それらの平均値における差の単変量試験を、患者のTBTを定義する応答変数に関して行った。
【0100】
ブートストラップモデル
ブートストラップモデリングのプロセスにおいては、説明変数(バイオマーカー)に関する応答変数(TBT/NTBT患者を定義する)のロジスティック一般化線形モデルは、全データセットからのすべての患者に対して計算される。減少変数選択が行われ、AICを使用して最適なアルゴリズムが選択される。次いで、この最適なアルゴリズムからの変数係数の有意性が、1000のブートストラップサンプルを使用してアルゴリズムを走らせることによりテストされる。ゼロを含まない95%の信頼区間を示す係数を有意とみなす。次いで、ROC、AUC、最適な閾値、総精度、感度、特異度、陽性的中度及び陰性的中度を計算することによってアルゴリズムを検証する。
【0101】
モデル及びアルゴリズムの比較
個々のバイオマーカー及びマルチパラメトリックスコアの全体的な診断性能を、受診者動作特性(ROC)曲線及び対応する曲線下面積(AUROC)によって評価した。AUROC値には、試験したコホートの1000のブートストラッピングに由来する95%CIが与えられる。ROC間の統計学的有意差は、DeLong検定(DeLong、1988)によって評価した。
【0102】
診断メトリック(総精度、感度、特異度、陽性的中度/PPV、陰性的中度/NPV、陽性尤度比/LR+及び陰性尤度比/LR-)には、二項分布(Fleiss、2003)への正規近似に基づく漸近公式を用いて計算した95%CIが与えられる。
【0103】
すべての統計解析は、R バージョン3.4.1(R Core Team、2017)を使用して実施した。
【0104】
結果
1. 進行型NASHの検出を改善するためのFIBROSCAN(登録商標)及びNIS4スコアの組み合わせ。NIS4スコア(Table 2(表2))。
【0105】
NIS4スコアは、72.46%の特異度及び60.32%の感度を有した。88.9%のTBT予測は妥当である。この特定の母集団におけるこのモデルのAUCは、0.6637(0.6039~0.718の95%信頼区間(C.I.))である。
【0106】
FIBROSCAN(登録商標)のデータは、25%の健康な患者(FIBROSCAN(登録商標)<7pPa)を予測したが、これは、我々が生検データを使用して確認した21.5%NTBTに近い。FIBROSCAN(登録商標)のスコアと生検データを合わせると、FIBROSCAN(登録商標)データは高度線維化を伴う患者の予測には優れた指標であるが、NTBT患者の予測には不十分な指標であると結論づけることができる。FIBROSCAN(登録商標)解析は、49.28%の特異度及び81.75%の感度を有した。85.48%のTBT予測。このモデルのAUCは、0.6551(0.5912~0.7216の95%C.I.)である。
【0107】
記述統計解析を、NIS4スコア値とFIBROSCAN(登録商標)データ間で実施した。相関は見出せなかった。交互作用が検出されなかったため、TBT患者からNTBT患者を区別するための、NIS4スコアとFIBROSCAN(登録商標)データを組み合わせた新規なアルゴリズムのモデリングにおける固定因子として、NIS4スコア及びFIBROSCAN(登録商標)データを使用した。
【0108】
NIS4+FSと称される、この新規なアルゴリズムに対する係数を決定した。
【0109】
【0110】
Y2=l+e*S1+f*FS
式中、
S1は、NIS4スコアであり、
FSは、kPaにおけるFIBROSCAN(登録商標)データであり、
lは、ロジスティック関数の定数であり、
eは、NIS4スコアに関連付けられた係数であり、
fは、FIBROSCAN(登録商標)データに関連付けられた係数である。
これらの定数及び係数の具体的な値は、以下の通りである。
l -3.6296から-0.2985、
e 1.539から5.629、及び
f 0.0107から0.3229。
【0111】
NIS4+FSスコアは、85.5%の特異度及び60.31%の感度を有した。93.82%のTBT予測は妥当である。このモデルのAUCは、0.7772(0.7141~0.8316の95%C.I.)である。
【0112】
従って、このモデルの特異度は、NIS4スコア又はFIBROSCAN(登録商標)データ単独よりも優れている。AUCもまた、個別のNIS4スコア又はFIBROSCAN(登録商標)データよりも有意に良い。
【0113】
2. 進行型NASHの検出を改善するための、FIBROSCAN(登録商標)及びNIS4の個々の変数の組み合わせ(Table 2(表2))。
【0114】
ロジスティック回帰による新規なステップワイズモデリングを、A2M、hsa-miR-34a-5p及びYKL-40/CHI3L1、HbA1c及びFIBROSCAN(登録商標)を使用して実施した。4つのパラメータのみが維持された:A2M、hsa-miR-34a-5p及びYKL-40/CHI3L1並びにFIBROSCAN(登録商標)。HbA1cは、モデルから除いた。
【0115】
HbA1cの除外は興味深い。何故ならHbA1cは血液検体中で定量されるが、A2M、hsa-miR-34a-5p及びYKL-40/CHI3L1は血清中で測定されるからである。加えて、HbA1cの測定にはHPLCが必要である。
【0116】
新規のNIS3+FSスコアに対する係数を決定した。
【0117】
【0118】
Y3=m+g*A+h*B+i*C+j*FS
式中、
Aは、Cqにおけるhsa-miR-34a-5pの血清レベルであり、
Bは、g/Lにおけるアルファ2マクログロブリンの血清レベルであり、
Cは、ng/mLにおけるYKL-40の血清レベルであり、
FSは、FIBROSCAN(登録商標)データであり、
mは、ロジスティック関数の定数であり、
gは、hsa-miR-34a-5pの血清レベルに関連付けられた係数であり、
hは、アルファ2マクログロブリンの血清レベルに関連付けられた係数であり、
iは、YKL-40の血清レベルに関連付けられた係数であり、
jは、FIBROSCAN(登録商標)データに関連付けられた係数である。
これらの定数及び係数の具体的な値は、以下の通りである。
m -2.52から35.38、
g -1.2061から-0.0355、
h 0.3104から1.7716、
i -0.0015から0.0207、及び
j -0.0096から0.3465。
【0119】
NIS3+FSスコアは、85.5%の特異度及び61.11%の感度を有した。93.9%のTBT予測は妥当である。このモデルのAUCは、0.8054(0.7496~0.8514の95%C.I.)である。
【0120】
従って、特異度と感度のいずれも、HbA1cパラメータの除外によって影響されないことが示された。
【0121】
次いで、我々はこのモデルからYKL-40/CHI3L1を除くことを試みた。
【0122】
新規のモデルのNIS2+FSスコアに対する係数を決定した。
【0123】
【0124】
Y4=n+o*A+p*B+q*FS
式中、
Aは、Cqにおけるhsa-miR-34a-5pの血清レベルであり、
Bは、g/Lにおけるアルファ2マクログロブリンの血清レベルであり、
FSは、FIBROSCAN(登録商標)データであり、
nは、ロジスティック関数の定数であり、
oは、hsa-miR-34a-5pの血清レベルに関連付けられた係数であり、
pは、アルファ2マクログロブリンの血清レベルに関連付けられた係数であり、及び
qは、FIBROSCAN(登録商標)データに関連付けられた係数である。
これらの定数及び係数の具体的な値は、以下の通りである:n -9.607から35.175、o -1.2012から0.2127、
p 0.4424から1.9381、及び
q 0.0258から0.3617。
NIS2+FSスコアは、86.95%の特異度及び58.73%の感度を有した。94.27%のTBT予測は妥当であった。このモデルのAUCは、0.801(0.7412~0.855の95%C.I.)である。
【0125】
NIS2+FSモデルの特異度は、モデルNIS3+FSよりも更に優れていたことが本明細書に示される。感度は、YKL-40/CHI3L1パラメータの除外によってわずかに影響されたが、有意には影響されなかった。
【0126】
結論として、NIS3+FSスコアとNIS2+FSスコアは性能の観点で同等である。
【0127】
データの概要:
【0128】
【0129】
【配列表】
【国際調査報告】