(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(54)【発明の名称】検体を前処理するための検体容器
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20220427BHJP
【FI】
G01N1/10 V
G01N1/10 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021554993
(86)(22)【出願日】2020-03-09
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 GB2020050554
(87)【国際公開番号】W WO2020183141
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517079180
【氏名又は名称】クァンタムディーエックス グループ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUMDX GROUP LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス ベネット
(72)【発明者】
【氏名】ネイル リトン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード スミス
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ブランドン-ジョーンズ
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA30
2G052AA32
2G052AB20
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052BA19
2G052DA04
2G052DA08
2G052DA13
2G052DA15
2G052DA27
2G052FB08
2G052GA29
2G052JA08
(57)【要約】
貯蔵部と検体採取領域を有する筒を備える検体容器が開示されている。当該検体容器は、前記貯蔵部の方向に移動可能で前記貯蔵部内に設けられるスリーブをも備える。前記貯蔵部の方向に前記スリーブが移動することで、前記検体採取領域と前記貯蔵部は互いに流体連通する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器であって、
貯蔵部と検体採取領域を有する筒と、
前記貯蔵部の方向に移動可能で前記貯蔵部内に設けられるスリーブ、
を備え、
前記貯蔵部の方向に前記スリーブが移動することで、前記検体採取領域と前記貯蔵部は互いに流体連通する、
検体容器。
【請求項2】
請求項1に記載の検体容器であって、前記筒と閉塞接触するように適合する蓋をさらに備える、検体容器。
【請求項3】
請求項2に記載の検体容器であって、
前記蓋は、前記筒と閉塞接触する際に機械的な力が印加されるときに前記貯蔵部の方向に前記スリーブを移動させるように前記スリーブと動作可能に相互作用するように適合される、
検体容器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の検体容器であって、前記スリーブは、前記貯蔵部への移動ができない第1構成と、前記貯蔵部への移動が可能な第2構成とを有する、検体容器。
【請求項5】
請求項4に記載の検体容器であって、前記スリーブは、前記第1構成となるように付勢され、かつ、前記蓋が前記筒と閉塞接触する際に相性の良い蓋と動作可能に相互作用するときに、前記第1構成から前記第2構成に移動可能である、検体容器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の検体容器であって、
前記筒は少なくとも1つの接合面を備え、
前記スリーブは、前記少なくとも1つの接合面に接触するように配置された少なくとも1つの脚部を備える、
検体容器。
【請求項7】
請求項6に記載の検体容器であって、前記第1構成において、前記少なくとも1つの脚部は、前記スリーブの前記貯蔵部の方向での移動が起こらないように、前記接合表面に抗するように付勢される、検体容器。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の検体容器であって、前記スリーブは複数の離間した脚部を備える、検体容器。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の検体容器であって、前記スリーブは、前記1つ以上の脚部から前記貯蔵部に向かって延びる少なくとも1つの細長部材を備える、検体容器。
【請求項10】
請求項9に記載の検体容器であって、前記スリーブは複数のスリーブ開口部によって分離された複数の細長部材を備える、検体容器。
【請求項11】
請求項9に記載の検体容器であって、前記スリーブの開口部は、前記貯蔵部の方向に前記スリーブを移動させた後に、前記検体採取領域と前記貯蔵部とが前記スリーブの開口部を介して互いに流体連通するように配置される、検体容器。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の検体容器であって、
前記スリーブは前記貯蔵部に最も近い前記少なくとも1つの細長部材の端部に隣接して配置された表面を備え、
前記表面は、前記スリーブが前記貯蔵部の方向に移動する前に、前記検体採取領域と前記貯蔵部との間での流体連通を防止するように配置される、
検体容器。
【請求項13】
請求項9又は10に記載の検体容器であって、
前記スリーブは、前記貯蔵部に最も近い前記少なくとも1つの細長部材の端部に隣接して配置された穿刺部を備え、
前記穿刺部は、前記貯蔵部との接触時に前記貯蔵部の封止部を穿刺するように配置される、
検体容器。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の検体容器であって、当該検体容器の外側表面が当該検体容器に蓋を固定する少なくとも1つの輪郭領域を備える、検体容器。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の検体容器であって、
前記筒は前記貯蔵部と前記検体採取領域との間にくびれ部分を有し、
前記くびれ部分は前記スリーブの下側表面を封止可能に受容する大きさで、
前記スリーブは、前記検体採取領域へ戻る流体連通を防止するように配置される、
検体容器。
【請求項16】
請求項15に記載の検体容器であって、前記くびれ部分は、前記検体採取領域に戻る流体連通を防止するように配置された前記スリーブの表面を防止または制限するように配置されたアンダーカット部を備える、検体容器。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載の検体容器であって、前記貯蔵部は流体を含む、検体容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検体容器に関する。より詳細には本発明は、診断検査に先だって生体検体を採取する容器に関するが、それに限られない。
【背景技術】
【0002】
一般的に、生物学的検体を用いて診断検査を行うには、個人から検体を採取する必要がある。生体検体の種類によっては、血液や尿などの液体を採取して直接吸引したり、ピペットによって採取したり、採血管に流し込んだりする方法や、頬スワブなどのスワブを使って採血管に入れる方法などがある。多くの場合、検体は最初に緩衝剤と混合される。緩衝剤は、検体の溶解や再分散を助け、かつ/あるいは、抗凝固剤や防腐剤などを含んでよい。
【0003】
その後、検体は通常、さらに処理される。このような処理には、細胞の溶解、DNAの抽出と増幅、検査前の検体の化学的安定化などが含まれる。最近では、検体処理の多くを自動化したポイント・オブ・ケア機器が開発されているが、ポイント・オブ・ケア機器に容易に転送できるよう、適切な方法で最初の検体を採取することが必要である。検体を用いて行う診断検査の精度と信頼性を確保するためには、検体の採取と処理が正確かつ確実に行われることが重要である。
【0004】
現在、検体の採取と初期処理の多くは、ユーザーが手作業で行っている。通常、手作業による検体処理では、ピペットなどの手動装置を用いて、所定量の緩衝剤などの液体を検体に添加する。その後、検体は、診断処理などの下流の処理のために手動で移送される。最近では、例えば、ポイント・オブ・ケア検査装置に検体を導入することも含まれる。
【0005】
しかし、現在の検体採取および初期処理技術には、さまざまな欠点がありる。最も重要なのは、時間がかかり、ユーザーエラーが発生しやすいことである。また、これらの技術の多くは、特殊な消耗品や機器、特別な訓練を受けたユーザーを必要とし、たとえ正しく行われたとしても、ユーザーが感染性物質や特定の緩衝液に含まれる潜在的な危険物質に接触する危険性がある。
【0006】
これらの欠点により、初回の検体採取と処理は、専門的な機器や特別な訓練を受けたユーザーの利用が限られているポイント・オブ・ケアの現場には適さない。これらの欠点は、中低所得国の医療現場では特に重要であり、逆に、正確で低コストの診断テストを提供することが特に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの欠点の1つ以上を解決または緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様によると、貯蔵部と検体採取領域を有する筒を備える検体容器が供される。当該検体容器は、前記貯蔵部の方向に移動可能で前記貯蔵部内に設けられるスリーブをも備える。前記貯蔵部の方向に前記スリーブが移動することで、前記検体採取領域と前記貯蔵部は互いに流体連通する。
【0009】
好適には前記貯蔵部内に設けられる前記スリーブは、前記貯蔵部の方向にのみ移動可能である。
【0010】
有利となるように、この装置の意味は、流体-たとえば検体処理流体-が封止された貯蔵部内に貯蔵され得るため、検体-たとえば生物学的検体-が前記検体採取領域(典型的には液体又はスワブ)へ導入され、かつ、前記筒内の可動式スリーブを作動させることによって選択的に前記貯蔵部内の流体と流体連通し得ることである。生物学的検体を処理する有効で、動作が単純で、低コストの装置が供される。前記貯蔵部は当該装置が用いられるまで封止されたままでよい。このことは、当該装置が使用前の長期間貯蔵され得ることを意味する。当該装置は、サイズ、単純さ、及び、前記ユーザーへ供される保護のため、ポイント・オブ・ケア用途に特に適している。
【0011】
好適には前記検体容器は、前記筒と閉塞接触するように適合する蓋をさらに備える。
【0012】
好適には前記蓋は、前記筒と閉塞接触するときに流体を封止する前記筒の表面に相当するような形状の外壁を備える。
【0013】
有利となるようにこの装置の意味は、検体が前記貯蔵部内で封止され得ることである。封止されるとき、前記筒は、前記検体をより安全に及び/又はより長く貯蔵し得る。
【0014】
好適には前記蓋は、前記筒と閉塞接触する際に機械的な力が印加されるときに前記貯蔵部の方向に前記スリーブを移動させるように前記スリーブと動作可能に相互作用するように適合される。
【0015】
有利となるように手動の力が手動の機械的な力であるとき、これは、ユーザーが前記蓋を単純に手動で閉じるポイント・オブ・ケアの状況で特に有用である。
【0016】
好適には前記蓋は、前記スリーブと動作可能に相互作用するような形状の内壁を備える。
【0017】
有利となるようなこの装置の意味は、前記の移動可能なスリーブ部が、ユーザーによって要求されるさらなる段階がなくても相性の良い蓋が用いられるときに作動し得ることである。これにより当該装置の動作はさらに単純になり得る。さらに典型的な動作では、前記蓋が固定されるまで流体は前記貯蔵部内で封止されたままである。よってユーザーが前記貯蔵部内の流体にうっかり接触する危険性は減少する。
【0018】
有利なことに、前記蓋の前記内壁は、ユーザーが前記蓋に触れる又は汚れた表面に前記蓋を置くことによる偶発的な汚染のリスクを最小限にするように構成されている。
【0019】
好適には前記スリーブは、前記貯蔵部への移動ができない第1構成と、前記貯蔵部への移動が可能な第2構成とを有する。
【0020】
好適には前記スリーブは、前記第1構成となるように付勢され、前記蓋が前記筒と閉塞接触する際に相性の良い蓋と動作可能に相互作用するときに、前記第1構成から前記第2構成に移動可能である。
【0021】
有利となるような前記スリーブの意味は、前記スリーブが適切な形状の蓋と相互作用するまで、前記スリーブの作動を防止することができるということである。これにより、ユーザーが誤って前記スリーブを動かしてしまうことで前記検体採取領域と前記貯蔵部が流体連通するリスクを低減することができる。
【0022】
好適には、前記筒は少なくとも1つの接合面を備え、前記スリーブは、前記少なくとも1つの接合面に接触するように配置された少なくとも1つの脚部を備える。
【0023】
有利には、この配置は、機械的な力が前記貯蔵部の方向に前記スリーブへ加わった場合でも、前記スリーブを実効的に第1構成に維持することができる。
【0024】
好適には、前記少なくとも1つの接合面は、前記筒の内側表面の少なくとも一部の周りに延びる棚を備える。
【0025】
好適には、前記第1構成において、前記少なくとも1つの脚部は、前記スリーブの前記貯蔵部の方向での移動が起こらないように、前記接合表面に抗するように付勢される。
【0026】
好適には、前記スリーブは、複数の離間した脚部を備える。
【0027】
有利なことに、この配置により、前記スリーブを前記第1構成でより確実に維持することが保証され得る。
【0028】
好適には、前記スリーブは、前記1つ以上の脚部から前記貯蔵部に向かって延びる少なくとも1つの細長部材を備える。
【0029】
好適には、前記スリーブは、複数のスリーブ開口部によって分離された複数の細長部材を備える。
【0030】
有利には、この配置は、流体を含む当該検体容器がユーザーによって回転させられるとき、前記細長部材がバッフルとして作用して前記流体の混合を増加させることを意味する。
【0031】
好適には、前記スリーブの開口部は、前記貯蔵部の方向に前記スリーブを移動させた後に、前記検体採取領域と前記貯蔵部とが前記スリーブの開口部を介して互いに流体連通するように配置される。
【0032】
有利には、前記スリーブの開口部は、前記検体と前記貯蔵部内の流体との混合を可能にする流体連通経路を供する。
【0033】
好適には、前記スリーブは前記貯蔵部に最も近い前記少なくとも1つの細長部材の端部に隣接して配置された表面を備え、前記表面は、前記スリーブが前記貯蔵部の方向に移動する前に、前記検体採取領域と前記貯蔵部との間での流体連通を防止するように配置される。
【0034】
有利には、この配置により「プランジャー」として機能するスリーブが得られる。前記スリーブは「プランジャー」として機能することで、前記スリーブの表面は前記スリーブの移動前に前記貯蔵部を封止し、一方、前記スリーブの移動後に前記表面は前記貯蔵部内に移動して、前記貯蔵部からの流体が前記スリーブに流入し、その中の前記検体に接触する。
【0035】
好適には、前記スリーブの形状は移動前に前記貯蔵部を封止し、前記貯蔵部の形状は移動後に前記検体採取領域と前記貯蔵部との間の流体連通を可能にするようなものである。
【0036】
好適には、前記貯蔵部と前記検体採取領域との間に前記容器のくびれ部分があり、前記くびれ部分は前記スリーブの下側表面を封止可能に受容する大きさで、前記スリーブは流体連通を防止するように配置される。
【0037】
有利には、前記くびれ部分の円周を前記貯蔵部の円周よりも狭くすることで、前記容器内での前記スリーブの初期配置が支援され得る。また、部品の配置や組み立てを容易にするために、スナップフィットや一時的な機械的固定がなされてもよい。これにより、意図した方向とは反対方向への動きが制限される。
【0038】
好適には、前記くびれ部分は、前記検体採取領域に戻る流体連通を防止するように配置された前記スリーブの表面を防止または制限するように配置されたアンダーカット部を備える。
【0039】
あるいは、前記スリーブは、前記貯蔵部に最も近い前記少なくとも1つの細長部材の端部に隣接して配置された穿刺部を備え、前記穿刺部は、前記貯蔵部との接触時に前記貯蔵部の封止部を穿刺するように配置される。
【0040】
有利なことに、これにより、前記封止部を作動させて前記検体採取領域と前記貯蔵部とを互いに流体連通させる簡単な手段が提供される。
【0041】
任意で、前記貯蔵部は穿刺可能な封止部を備える。前記封止部はフォイル材料を含んでよい。
【0042】
任意で当該検体容器の外側表面は、当該検体容器に蓋を固定する少なくとも1つの輪郭領域を備える。
【0043】
好適には前記輪郭領域は、隆起した領域又は窪んだ領域を備える。
【0044】
この配置は、蓋を当該検体容器にしっかりと保持することを可能にする。さらに、ユーザーが蓋を容易に取り外せないようにすることができる。これにより、ユーザーが前記蓋を外して、誤って当該容器内の液体に触れることを防止できる。
【0045】
好適には、前記貯蔵部は流体を含む。
【0046】
好適には、前記貯蔵部は、所定の体積の流体を含む。
【0047】
任意で、前記貯蔵部は乾燥した試薬を含み得る。
【0048】
有利なことに、前記貯蔵部内の流体の量は、例えば製造中に、精度を向上させて測定することができる。これにより、操作中のユーザーエラーのリスクを低減することができる。また、前記検体に対して行われるその後の診断検査の精度を向上させることができる。
【0049】
任意で前記流体は緩衝液である。前記緩衝液は、生物学的検体を安定させるためのものであってもよい。
【0050】
本発明の様々なさらなる特徴および側面は、特許請求の範囲に定義されている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
以下、本発明の実施形態を添付の図面を参照しながら、例示として説明する。図中、同様の部品は対応する参照番号で提供されている。
【
図1a】蓋が取り付けられる前の検体容器の概略図を示している。
【
図1b】蓋が取り付けられた後の検体容器の概略図を示している。
【
図3】
図2のスリーブのより詳細な図を示している。
【
図5a】蓋が取り付けられる前の検体容器の概略的断面図を示している。
【
図5b】蓋が取り付けられるときの検体容器の概略的断面図を示している。
【
図6】検体容器の一部の概略的断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1aは、本発明の特定の実施形態による検体容器100を示す。検体容器100は、筒101を含む。また検体容器は、
図1aではまだ筒101に取り付けられていない(ため閉塞接触していない)蓋102を含む。本実施形態では、蓋102は、蓋保持部材103によって筒101に保持されている。蓋保持部材103は、蓋102が筒101に取り付けられることを可能にするが、ユーザーが紛失することを防止する。
【0053】
代替実施形態-大抵は好適実施形態-では、蓋は、蓋保持部材によって筒に保持されず、単に、別個の蓋として-キットの一部として又は別個に-提供される。
【0054】
生物学的検体を含むスワブ104は、筒101の内部に配置されている。スワブ104は、処理のためにユーザーによって筒101に導入されたものである。
【0055】
図1bは、蓋102が筒101に取り付けられた後の、
図1aの検体容器100を示す。
【0056】
図2は、本発明のある実施形態による検体容器200の分解斜視図を示している。検体容器は、蓋201、スリーブ202、筒203、および底部部材204を含む。
【0057】
蓋201は、筒203と閉塞接触するように適合されている。蓋201は、筒203内の流体が第1端部206から出るのを防止するように、筒203の第1端部206に隣接する筒203の外側表面207に対応するように形成された外壁205を含む。また、蓋201は、蓋201が筒203に固定される際に、スリーブ202と動作可能に相互作用する形状の内壁を含む。蓋201の構成および蓋201とスリーブ202との間の動作可能な相互作用については、以下でより詳細に説明する。
【0058】
スリーブ202は、機械的な力が加えられたときに筒203内を移動できるような形状をしている。スリーブ202は、底部部材204の方向への筒203内の移動が阻止される第1構成を有する(一般的に
図5aに描かれている)。スリーブ202が第1端部301および第2端部302を含み、第2端部302が、筒203内にスリーブ202の底面313を保持する大きさであって検体採取領域と貯蔵部との間に位置するスナップフィットアンダーカット315(
図6に示す)によって容器内に保持されているため、反対方向、すなわち底部部材204から離れる方向へのスリーブの移動も制限される。 アンダーカット315は、製造中にスリーブ202の挿入を可能にするが、その後、スリーブ202が筒203から取り外されないように作用する。
【0059】
この第1構成では、スリーブ202は、ユーザーが容易にアクセスできないように筒203内に配置されている。スリーブ202はまた、底部部材204の方向への筒203内での移動が可能な第2構成を有する(一般に、
図5bに描かれている)。スリーブ202は、スワブまたは流体検体をスリーブ202内に導入できるように、スリーブ202の内側を通って延びる内側開口部を含む。スリーブ202の構成については、
図3を参照してより詳細に説明する。
【0060】
筒203は、第1端部206と第2端部209とを含む。また、筒203は、検体採取領域を画定する第1端部206に隣接する内側領域を含む。検体採取領域は、第1端部206を介して生物学的検体-たとえばスワブや流体-を筒203内に導入することができる。
【0061】
筒203は、第1端部206と第2端部209との間に延びる内側表面を含む。内側表面は、スリーブ202と協働するように形成されている。内側表面は、スリーブ202が第1構成にあるときに、スリーブ202の表面と協働するように配置された接合表面を含む。接合表面は、筒203の内側表面の少なくとも一部の周りに円周方向に延びる棚である。
【0062】
筒203は外側表面207を含む。第1端部206に隣接する外側表面207の領域は、蓋201が第1端部206に取り付けられるときに、蓋201の外壁205の内側表面と協働して、内壁の外側表面とともに流体密閉封止を行うように形成されている。筒203の外側表面207は輪郭領域208を含む。輪郭領域208は、本実施形態では、筒203の周方向に延びる隆起部を備える。輪郭領域208は、蓋201と協働して、蓋201が固定された後にユーザーによって筒203から取り外されることを防止するように配置されている。この例では、蓋201の外壁205の内側表面は、蓋が完全に固定されたときに輪郭領域208と係合する1つ以上の表面を含む。
【0063】
底部部材204は第1端部210を含む。底部部材204はまた、貯蔵部を画定する第1端部に隣接する内側領域を含む。貯蔵部は、生物学的検体を処理するために使用される所定の体積の流体を含むように配置される。底部部材204は第2端部211を含む。第2端部211は、流体が第2端部211を介して貯蔵部から出るのを防ぐための封止212(
図6に示す)を含む。この実施形態では、封止212は、貯蔵部から流体を引き出すために針を挿入することができ、針を取り外すと再封止される、再穿孔可能な自己封止膜またはセプタムシールである。
【0064】
この実施形態では、底部部材204は、適切な流体密閉固定手段を介して製造中に筒203の第2端部209に取り付けられる別個の部品として提供される。しかし、特定の実施形態では、底部部材204は、筒203と一体的に形成されてよい。
【0065】
次に、スリーブ202について、
図3を参照してより詳細に説明する。
【0066】
スリーブ202は第1端部301および第2端部302を含む。またスリーブ202は、第1端部301と第2端部302との間に延びる複数の細長部材を含む。
図3に描かれた実施形態では、スリーブ202は4つの細長部材を含む。しかし、4とは異なる個数の細長部材が提供され得ることが理解されるであろう。
【0067】
細長部材は、スリーブの開口部によって分離されている。例えば、第1細長部材303と第2細長部材304は、第1スリーブ開口部305によって分離される。スリーブ開口部は、流体がスリーブ202の内部に入ることができるような流体連絡通路を提供するように配置される。
【0068】
典型的には、細長部材の少なくとも1つの長さに沿って一部に輪郭領域306が配置されている。輪郭領域306は、筒203内でのスリーブの移動が所定の位置を超えて阻止されるように、筒203の対応する内側表面に接触するように配置される。
【0069】
スリーブ202は、第1端部301から第2端部302に向かってスリーブ202の内部を通って延びる中央開口部を含む。開口部は、血液、組織などの検体やスワブなどの材料を、開口部を介してスリーブ202の第1端部301に挿入することができるような形状である。
【0070】
スリーブ202は、スリーブ202の第2端部302に隣接する細長部材の端部に固定された、または一体的に形成された底部部材313を含む。底部部材313は、筒314の対応する表面と協働して、筒内でのスリーブ202の移動に先立って、検体採取領域と貯蔵部との間に流体密閉封止を形成するように形成された表面を含む。
【0071】
本実施形態では、表面は実質的に円形の底部表面313であり、筒の内側表面は同様の形状の封止領域314を含む。スリーブの移動の前に、スリーブの表面および筒の封止領域は、流体が貯蔵部と検体採取領域との間を通過できないような流体密閉封止を形成するように配置される。移動後、スリーブの表面は貯蔵部の中へ移動する。貯蔵部は、封止が破壊されるような形状である。典型的には、貯蔵部は、筒の封止領域よりも大きな直径を有する。
【0072】
スリーブ202はまた、第1端部301に隣接し、かつ第1端部301から延出する複数の離間した脚部を含む。
図3に示す実施形態では、スリーブ202は、第1脚部307および第2脚部308を含む6つの脚部を含む。しかし、6つとは異なる個数の脚部が提供され得ることが理解されるであろう。
【0073】
脚部は、スリーブ202が筒203内に位置するときに、脚部とスリーブ202の残りの部分との間に隙間が形成されるように、第1端部301から下向きかつ外向きに延びている。
【0074】
スリーブ202が筒203内に位置するとき、脚部は、スリーブ202の長手方向の軸から離れるように機械的に付勢される。
【0075】
スリーブ202の第1構成では、脚部は、筒203の接合面に抗するように付勢されている。これにより、スリーブ202の貯蔵部に向かう移動が阻止される。第2構成では、脚部は、接合面に抗するようにはもはや付勢されない(もはや接触していない)ように、内側に(すなわち、スリーブに向かって)並進される。これにより、スリーブを貯蔵部に向かって移動させることができる。このようにして、スリーブ202は、第1構成となるように付勢されており、蓋201と動作可能に相互作用するときに第1構成から第2構成に移動可能である。
【0076】
図示された実施形態では、接合面が円周方向に完全に延びていることで、スリーブが貯蔵部に向かって移動できるように、脚部307、308などが蓋201によって半径方向に引き込まれなければならない。ただし接合面をその間に隙間のある部分として設けることも可能であり、この場合、蓋はスリーブを回転させるように作用することで、隙間との軸方向の位置合わせ状態からの移動が許容され、それによりスリーブは接合面との軸方向の位置合わせから移動が阻止され得ることに留意して欲しい。
【0077】
スリーブの異なる構成が提供され得ることに留意して欲しい。例えば、特定の実施形態では、スリーブは、少なくとも1つの細長部材の端部に隣接して配置された穿刺部を備え、貯蔵部は、穿刺可能な封止によって密封される。典型的には、この実施形態では、封止は、フォイル材料で構成される。スリーブの移動時に、穿刺部が封止に接触して破断し、それによって検体採取領域と貯蔵部とが流体連通する。
【0078】
次に
図4を参照して、蓋201についてより詳細に説明する。蓋201は、筒と閉塞接触するように適合されている。蓋201は、容器の第1端部に隣接する筒の外側表面に対応するような形状の外壁205を含む。円筒形の筒が使用される実施形態では、外壁205は、実質的に円筒形状である。
【0079】
蓋201は内壁402をも含む。内壁の外側表面が
図4に示されている。内壁402は、蓋201が筒203に固定される際に、スリーブ202と動作可能に相互作用する形状である。典型的には、内壁402もまた実質的に円筒形であり、外壁205よりも小さい直径を有する。外壁はある程度、内壁がユーザーと接触する可能性を最小限にし、ユーザーが下に置いた場合に汚れる恐れのであるまたは汚染された表面と接触しないようにすることによって、内壁を潜在的な汚染から保護するように作用する。内壁402は、蓋201が筒に固定される際にスリーブ202の脚部に接触するように形成されている。内壁402がスリーブ202の脚部に接触すると、脚部が第1構成から第2構成に移動して、底部部材204の貯蔵部へ向かうスリーブの移動を可能にする。
【0080】
図5aおよび5bは、本発明の特定の実施形態による検体容器500の簡略化された断面図を提供する。
図5aには第1構成の検体容器500が示され、
図5bには第2構成の検体容器500が示されている。
【0081】
本明細書で説明するように、検体容器500は、内壁503および外壁502を含む蓋501を含む。また、接合面505を含む容器504と、複数の脚部507を含むスリーブ506とが示されている。蓋501が容器に挿入される際の移動方向は、破線の矢印508で示されている。
【0082】
使用前に、検体容器500は、すぐに使用できる状態に組み立てられる。スリーブは、
図5aに示されているように、第1構成で筒504に挿入される。その後、貯蔵部に所定の量の流体が充填される。別個の底部部材が使用される場合には、その後、底部部材は筒に固定される。
【0083】
第1構成では、脚部507は、スリーブ506の接合面505に抗するように付勢されている。その結果、スリーブ506は、ユーザーによって機械的な力が加えられても、容器504内で貯蔵部の方向に移動することが防止される。
【0084】
典型的には、検体容器500は、製造プロセス中にすぐに使用できる状態に組み立てられるが、代替的に、組み立て段階の一部または全部を使用時にユーザーが実行することも可能である。
【0085】
ユーザーは、患者から検体を採取する。この例では、スワブを使って検体を採取しる。次に、ユーザーは、容器の第1端部に隣接する検体採取領域にスワブの全部または一部を挿入する。スワブのステムは、検体を有するスワブの端部を除去して容器内に保持できるように破断可能であり得ることが理解されよう。スワブが挿入された検体容器100が
図1に示されている。
【0086】
次に、ユーザーは、蓋501を筒504の上に位置させ、破線矢印508で示される方向に機械的な力を加えることによって、蓋501を筒504に取り付ける。
【0087】
図5bに示されているように、蓋501が挿入されると、蓋501の内壁503は脚部507と接触する。この接触により、脚部507はスリーブ506に向かって内側に移動し、その後、第2構成をとる。第2構成では、脚部507は接合面に接触しない。これは、スリーブ506が容器504内で貯蔵部に向かって移動できることを意味する。
【0088】
ユーザーは、蓋501が筒504に完全に挿入されるまで、蓋501に機械的な力を加え続ける。完全に挿入された位置では、蓋501は、流体密閉封止を介して容器504に固定され、スリーブ506は、検体採取領域と貯蔵部とが流体連通するように筒504内を移動している。上述したように、典型的には、一旦封止されると、蓋501と容器504は、蓋501がユーザーによって機械的に取り外せないように配置される。これは、蓋501が容器にスナップフィットしているためであり、最終的な係合の際には聴取可能なクリック音で作動する。
【0089】
蓋501が筒504に固定された後、ユーザーは、検体が貯蔵部に含まれる流体と混合するように、検体容器500を撹拌および/または回転させる。有利なことに、スリーブが高密度ではない、つまり1つ以上のスリーブ開口部305を有しているので、通常、比較的穏やかな回転で十分な混合が得られ、標準的な採血管内で検体と緩衝剤とを混合する際に一般的に指示される、より激しい振盪で発生し得る望ましくない気泡の形成を回避することができる。混合後、検体容器500内の流体は、通常、貯蔵部の底面に隣接するセプタム封止に針を挿入し、貯蔵部から流体を抽出することにより、診断検査に使用することができる。
【0090】
混合後、流体は、密封された検体容器500内に長期間保存することができる。これは、1回の検査に必要な量を超える数ミリリットルの検体を保存できるため、診断検査が失敗した場合や、同じ検体を使用して別の検査(STI検査とHPV検査など)を実施する場合、あるいは品質管理のために、流体を再採取できるという点で有利である。
【0091】
この明細書(添付の請求項、要約書および図面を含む)に開示されているすべての特徴、および/または、そのように開示されている任意の方法またはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)に開示されている各特徴は、明示的に別段の記載がない限り、同じ目的、同等の目的、または類似の目的を果たす代替の特徴で置き換えることができる。したがって、明示的に別段の記載がない限り、開示された各特徴は、同等または類似の特徴の一般的なシリーズの一例に過ぎない。本発明は、上述の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書、および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規な1つ、または任意の新規な組み合わせ、あるいはそのように開示された任意の方法またはプロセスのステップの任意の新規な1つ、または任意の新規な組み合わせにまで及ぶ。
【0092】
本明細書における実質的に任意の複数形および/または単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈および/または用途に応じて、複数形から単数形へ、および/または単数形から複数形へと翻訳することができる。様々な単数/複数の順列は、明確にするために本明細書に明示的に記載されることがある。
【0093】
一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲で使用される用語は、一般に「オープン」な用語として意図されていることが、当業者には理解されるであろう(例えば、「including」という用語は、「~を含むが、これに限定されない」と解釈すべきであり、「having」という用語は、「少なくとも有する」と解釈すべきであり、「includes」という用語は、「~を含むが、これに限定されない」と解釈すべきである、など)。導入された請求項の記載の特定の数が意図されている場合、そのような意図は請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合にはそのような意図は存在しないことが、当業者にはさらに理解されるであろう。例えば、理解を助けるために、以下の添付の請求項には、請求項の記載を導入するために、「少なくとも1つ」および「1つ以上」という導入フレーズの使用が含まれている。しかし、このようなフレーズの使用は、不定冠詞「a」または「an」による請求項の再述の導入が、そのような導入された請求項を含む特定の請求項を、そのような再述を1つだけ含む実施形態に限定することを意味するように解釈されるべきではない。同じ請求項が、導入フレーズ「1つ以上」または「少なくとも1つ」および「a」または「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、(例えば例えば、「a」や「an」は、「少なくとも1つ」や「1つ以上」を意味すると解釈されるべきであり、クレームの再記述の導入に使用される定冠詞の使用についても同様である。さらに、導入された請求項の再述の特定の数が明示的に言及されている場合でも、当業者であれば、そのような言及は、少なくとも言及された数を意味するように解釈されるべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語を伴わない「2つの再述」の素の言及は、少なくとも2つの再述、または2つ以上の再述を意味する)。
【0094】
本開示の様々な実施形態は、説明のために本明細書に記載されており、本開示の範囲から逸脱することなく様々な変更を加えることができることが理解されるであろう。したがって、本明細書に開示された様々な実施形態は、限定することを意図したものではなく、真の範囲は以下の請求項によって示される。
【国際調査報告】