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特表2022-524848特定可能な磁気アセンブリおよび通信
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(54)【発明の名称】特定可能な磁気アセンブリおよび通信
(51)【国際特許分類】
   A61N 2/04 20060101AFI20220427BHJP
   A61B 5/291 20210101ALI20220427BHJP
【FI】
A61N2/04
A61B5/291
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021555081
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(85)【翻訳文提出日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 US2020022009
(87)【国際公開番号】W WO2020185845
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】16/351,865
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
2.Linux
3.ANDROID
4.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】521412560
【氏名又は名称】セラヤ・メディカル・システムズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リーアム・ロウィン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・リーソン
【テーマコード(参考)】
4C106
4C127
【Fターム(参考)】
4C106AA04
4C106AA06
4C106CC15
4C106FF15
4C127AA03
4C127LL08
(57)【要約】
一意の識別子を有する1以上の磁気アセンブリ装置を担持するようになされたヘッドマウントを使用して患者に対して経頭蓋磁気刺激を行うことを認可する方法。この方法は、1以上の磁気アセンブリ装置を制御装置に接続するステップであって、各磁気アセンブリ装置がヘッドマウント上の場所に装着される、ステップと、制御装置において、接続された磁気アセンブリ装置の識別子を受信するステップと、装着した磁気アセンブリ装置が、受信した識別子およびデータベース内の治療構成設定情報に基づいて、治療について認可を受けているかどうかを決定するステップと、認可決定に基づいて、接続された磁気アセンブリ装置を励起するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一意の識別子を有する1以上の磁気アセンブリ装置を担持するようになされたヘッドマウントを使用して患者に対して経頭蓋磁気刺激を行うことを認可する方法であって、
1以上の前記磁気アセンブリ装置を制御装置に接続するステップであって、前記磁気アセンブリ装置それぞれが前記ヘッドマウント上の場所に装着される、ステップと、
前記制御装置において、前記接続された磁気アセンブリ装置の前記識別子を受信するステップと、
受信した前記識別子およびデータベース内の治療構成設定情報に基づいて、装着した前記磁気アセンブリ装置が治療について認可を受けているかどうかを決定するステップと、
前記認可決定に基づいて、接続した1以上の前記磁気アセンブリ装置を励起するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記データベースが、前記制御装置においてローカルでホストされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記データベースが、クラウドプラットフォームにおいてホストされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヘッドマウントに装着した前記磁気装置の前記場所を検証するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記決定ステップが、前記検証された場所を前記治療構成設定データと比較するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記制御装置において、前記磁気アセンブリ装置それぞれについて、ライセンス済治療データを受信するステップをさらに含み、
前記決定ステップが、受信した前記ライセンス済治療データを前記治療構成設定情報と比較するステップをさらに含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記制御装置において、前記磁気アセンブリ装置それぞれの認可済の使用についての使用制限数を受信するステップと、
1以上の前記磁気アセンブリ装置の使用をデータストア内に記録するステップと、
1以上の前記磁気アセンブリ装置の後続の使用に際して、1以上の前記磁気アセンブリ装置のうちのいずれかについて使用制限に達したかどうかを前記データストアに問い合わせることによって決定するステップと
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記治療構成設定情報が、以下のもの、すなわち、気分、注意力および集中力、運動機能および認知機能、社会的臆病などの不安、抑鬱、記憶力および学習力、禁煙、アルコール依存症、および他の依存症、ならびにPTSDのうちの1つの向上または他の変調について治療を行うために、接続した1以上の前記磁気アセンブリ装置を励起するためのデータを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記治療構成設定情報が、以下のもの、すなわち、チック障害、トゥレット症候群、パーキンソン病、ジストニア、振戦、運動失調、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、てんかん、偏頭痛、頭痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、ニューロパシー、線維筋痛症、慢性疲労症候群、耳鳴り、脳卒中、大鬱病性障害、治療抵抗性鬱病、不安障害、強迫性障害、拒食症、過食症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、統合失調症、双極性障害、精神障害に二次的に生じる幻視、幻聴、および他の幻覚、ADHD、薬物の乱用および依存症、学習障害、失読症、書字困難、言語障害、記憶障害、認知症、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、自閉症スペクトラム障害、意識障害、ならびに尿失禁のうちの1つについて治療を行うために、接続した1以上の前記磁気アセンブリ装置を励起するためのデータを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記治療構成設定情報が、医療用刺激治療を行うために、1以上の前記磁気アセンブリ装置を励起するためのデータを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
複数の取外可能に取付可能な磁気アセンブリ装置を支持するように構成されたヘッドマウントであって、
人間の頭部に載置されるようにサイズ設定された内部と、
複数の付着点を備えた外部と、
磁気アセンブリ装置と接合されると、一意の回路応答を提供する、各それぞれの付着点に関連付けられた回路構成要素と
を備えるヘッドマウント。
【請求項12】
前記回路応答が、前記回路構成要素によってのみ指図される、請求項11に記載のヘッドマウント。
【請求項13】
前記回路応答が、前記回路構成要素と、前記付着点に接合された前記磁気アセンブリ装置に貼り付けられている第2の回路構成要素との両方の機能である、請求項11に記載のヘッドマウント。
【請求項14】
前記回路応答が、一意の抵抗、インピーダンス、静電容量、およびインダクタンスのうちの1つである、請求項11に記載のヘッドマウント。
【請求項15】
前記付着点に結合された電気リードをさらに含む、請求項11に記載のヘッドマウント。
【請求項16】
コントローラおよび複数の磁気アセンブリ装置を有する経頭蓋磁気刺激(TMS)機器を管理して治療を行うためのコンピュータ実装方法であって、前記磁気アセンブリ装置がそれぞれ、一意の製品IDを有し、治療ごとの許可された使用制限数について規定されており、前記方法が、
前記複数の磁気アセンブリ装置のそれぞれについて、ピアツーピアネットワークに維持されているブロックチェーンの分散型台帳に、前記製品IDおよび治療ごとの前記許可された使用回数を書き込むステップと、
前記コントローラから、個別の治療について前記複数の磁気アセンブリ装置のうちの特定された磁気アセンブリ装置を使用する要求を受信するステップと、
前記個別の治療および前記磁気アセンブリ装置の前記製品IDに基づいて、ブロックチェーンプラットフォームにおいて実装されるスマートコントラクトを使用して、前記装置が前記個別の治療についてライセンス済みであるかどうか、または前記個別の治療について残されている使用がこれ以上ないかどうかを決定するステップと、
前記装置が前記個別の治療についてラインセンス済みではないこと、または前記個別の治療について残されている使用がこれ以上ないことのいずれかが決定された場合、前記コントローラが前記特定された磁気アセンブリ装置を励起するのを妨げることによって、さらなる使用を防止するようにスマートコントラクトを実施するステップと
を含むコンピュータ実装方法。
【請求項17】
前記スマートコントラクトを実施する前記ステップは、ユーザおよびベンダーのうちの少なくとも一方に対して、前記要求された個別の治療について前記磁気アセンブリ装置の許可された使用が1回だけ残されていることを示す通知を送信するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記スマートコントラクトを実施する前記ステップは、前記経頭蓋磁気刺激機器が前記磁気アセンブリ装置をアクティブ化するのを防止するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記装置が、前記個別の治療についてライセンス済みであること、および前記個別の治療についてさらなる使用を残していることが決定されたとき、前記分散型台帳に、新規使用取引を書き込むステップと、
新規使用取引が書き込まれた後、前記装置が残している前記使用回数を差し引くように前記分散型台帳を更新するステップと
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の磁気アセンブリ装置が、個別の治療それぞれについて処方されるプロトコルによって規定される形で、前記経頭蓋磁気刺激機器によって使用される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記プロトコルが、刺激波形のタイプ、刺激の大きさ、および刺激の持続時間、ならびに前記複数の磁気アセンブリ装置のうちの特定の磁気アセンブリ装置に対する処方された頭蓋位置を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記個別の治療が、以下のもの、すなわち、パーキンソン病、吃音、鬱病、筋強直性ジストロフィー、てんかん、失語症、失読症、強迫性障害、および統合失調症のうちの1つのためのものである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記TMS機器が、ブロックチェーン相互作用アプリケーションおよびTMSインターフェースを走らせるためのコードを実行するように動作するプロセッサを有する制御装置によって制御される、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記ブロックチェーン相互作用アプリケーションが、前記TMS機器の動作を制御するためのコマンドを生成するように動作する、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用装置に関し、より詳細には、経頭蓋磁気刺激(TMS:Transcranial Magnetic Stimulation)機器における磁気アセンブリの使用を特定し制御するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「Method and Apparatus for Providing Transcranial Magnetic Stimulation (TMS) to a Patient」と題された共願の特許文献1には、様々なパターンの経頭蓋磁気刺激を生成するのに使用することができる交換式磁気アセンブリを含む経頭蓋磁気刺激機器(「TMS機器」)について記載されている。図1は、例示的なTMS機器5の側面図である。図示のように、TMS機器5は、患者の頭部に位置決めするためのヘッドマウントまたはキャップ10と、ヘッドマウントの表面に対して、特定の付着場所、たとえばA、B、C、D、E、Fに付着させることができる複数の磁気アセンブリ15とを含む(図1には、磁気アセンブリは、場所A、C、およびEに付着され、付着点が隠されている状態で示されている)。磁気アセンブリは、リード25によって、コンピュータ装置に接続されている(図1には示されていない)。コンピュータ装置は、任意のまたはすべての磁気アセンブリをアクティブ化して特定の治療に適した経頭蓋磁気刺激を生成するようにプログラミング可能である。たとえば、コンピュータ装置は、異なる大きさの刺激を送達する、または特定の脳領域における刺激活動に適した個別の刺激波形を(たとえば、周期的バーストまたは振動波で)生成するように、様々な場所で磁石を制御することができる。
【0003】
これらの波形を磁気アセンブリに印加して、磁気アセンブリを始動させ、高度な局所刺激を送達するように回転を制御する。磁気アセンブリを制御するための様々なパラメータには、(パケットバーストで印加され得る)波形、デューティサイクル、大きさ、回転率が含まれ、これらのパラメータは、企図される個別の治療または療法に合わせて調整される。したがって、磁気アセンブリに対する要求は、意図される治療に応じて変動することがある。市販の磁気アセンブリは、好ましくは、個別の使用について、および廃棄される前の有限回数について承認されているとしてラベル付けされている。
【0004】
いくつかの医療用用途の場合、TMS機器が、医療上、安全かつ適切な形で確実に使用されるようにするには、ライセンスを有する医療専門家が承認されたやり方で磁気アセンブリを使用することが重要である。また、磁気アセンブリの使用が、その定格数のサイクル(rated number cycle)内で、かつ安全な動作パラメータの拘束内で運用されることが重要であり、それは、アセンブリの性能が、繰返し使用により変わる可能性または低下する可能性があり、修理された装置は品質管理基準を満たさないことがあるので、修理および再梱包には適していないような形で低下する可能性があるからである。
【0005】
医療用目的としての、または限定するものではないが、学習および集中力の向上など、非医療用用途向けの家庭での使用(監督なし)など、TMS機器の他の現在想定されている用途の場合、磁気アセンブリが適切に取り付けられ使用されることが重要である。加えて、そのような監督なしの使用の場合、上記に概説した安全上考慮すべき点は、一層の緊急性をもって講じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第20140276182号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、TMS機器において使用される個別の磁気アセンブリの使用を特定し追跡して、アセンブリが、認可済の手順についてのみ使用されること、およびアセンブリが、それらの定格が許可する以上に使用されないことを確実にするやり方を提供することは有用になる。本発明は、これらおよび他の必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、一意の識別子を有する1以上の磁気アセンブリ装置を担持するようになされたヘッドマウントを使用して患者に対して経頭蓋磁気刺激を行うことを認可する方法を提供する。この方法は、1以上の磁気アセンブリ装置を制御装置に接続するステップであって、各磁気アセンブリ装置がヘッドマウント上の場所に装着される、ステップと、制御装置において、接続された磁気アセンブリ装置の識別子を受信するステップと、装着した磁気アセンブリ装置が、受信した識別子およびデータベース内の治療構成設定情報に基づいて、治療について認可を受けているかどうかを決定するステップと、認可決定に基づいて、接続された1以上の磁気アセンブリ装置を励起するステップとを含む。
【0009】
特定の実装形態においては、データベースは、制御装置においてローカルでホストされる。他の実装形態においては、データベースは、クラウドプラットフォームにおいてホストされ得る。
【0010】
この方法の特定の実施形態は、ヘッドマウントにおいて装着される磁気装置の場所を検証するステップを含む。決定ステップにおいては、検証された場所は、治療構成設定データと比較され得る。
【0011】
さらなる実施形態は、制御装置において、各磁気アセンブリ装置について、ライセンス済治療データを受信するステップを含む。決定ステップにおいては、受信したライセンス済治療データは、治療構成設定データと比較される。
【0012】
加えて、制御装置はまた、各磁気アセンブリ装置の認可済の使用についての使用制限数を受信することもできる。1以上の磁気アセンブリ装置の使用は、データストア内に記録され得、1以上の磁気アセンブリ装置の後続の使用に際して、1以上の磁気アセンブリ装置のうちのいずれかについて使用制限に達したかどうかをデータストアに問い合わせることによって決定することができる。
【0013】
経頭蓋磁気刺激治療は、より詳細に後述するように、本質的には、医療用であっても、または非医療用であってもよい。たとえば、非医療用刺激治療は、集中力、記憶力(短期または長期)、および学習率を向上するように設計され得る。医療用刺激治療は、TMSによる治療を行いやすい他の可能な疾患の中でも特に、パーキンソン病、筋強直性ジストロフィー、吃音、脳卒中、薬物依存症、および強迫性障害などの病気ならびに衰弱性疾患を治療するように設計され得る。TMS機器が可搬式であることを前提として、治療は、施設において行うことも、または家庭において行うこともできる。
【0014】
本発明の実施形態はまた、複数の取外可能に取付可能な磁気アセンブリ装置を支持するように構成されたヘッドマウントも含む。このヘッドマウントは、人間の頭部に載置されるようにサイズ設定された内部と、複数の付着点を備えた外部と、磁気アセンブリ装置と接合されると、一意の回路応答を提供する、各それぞれの付着点に関連付けられた回路構成要素とを備える。
【0015】
特定の実施形態においては、回路応答は、回路構成要素によってのみ指図される。代替の実施形態においては、回路応答は、この回路構成要素と、付着点に接合された磁気アセンブリ装置に貼り付けられている第2の回路構成要素との両方の機能である。
【0016】
回路応答は、一意の抵抗、インピーダンス、静電容量、およびインダクタンスのうちの1つとすることができる。ヘッドマウントは、付着点に結合された電気リードをさらに含むことができる。
【0017】
本発明の実施形態は、複数の磁気アセンブリ装置を有する経頭蓋磁気刺激(TMS)機器を管理して治療を行うためのコンピュータ実装方法をさらに提供し、磁気アセンブリ装置はそれぞれ、一意の製品IDを有し、治療ごとの許可された使用制限数について規定されている。この方法は、複数の磁気アセンブリ装置のそれぞれについて、ピアツーピアネットワークに維持されているブロックチェーンの分散型台帳に、製品IDおよび治療ごとの許可された使用回数を書き込む(posting)ステップと、ある治療について複数の磁気アセンブリ装置のうちの特定された磁気アセンブリ装置を使用する要求を受信するステップと、治療および磁気アセンブリ装置の製品IDに基づいて、ブロックチェーンプラットフォームにおいて実装されるスマートコントラクトを使用して、装置が治療についてライセンス済みであるかどうか、または治療について残されている使用がこれ以上ないかどうかを決定するステップと、装置が治療についてラインセンスを受けていないこと、または治療について残されている使用がこれ以上ないことのいずれかが決定された場合、さらなる使用を防止するようにスマートコントラクトを実施する(enforcing)ステップとを含む。
【0018】
いくつかの実装形態においては、スマートコントラクトを実施するステップは、ユーザおよびベンダーのうちの少なくとも一方に対して、要求された治療について磁気アセンブリ装置の許可された使用が1回だけ残されていることを示す通知を送信するステップを含む。他の実装形態においては、スマートコントラクトを実施するステップは、経頭蓋磁気刺激機器が磁気アセンブリ装置をアクティブ化するのを防止するステップを含む。
【0019】
特定の実施形態においては、方法は、装置が、治療についてライセンス済みであること、および治療についてさらなる使用を残していることが決定されたとき、分散型台帳に、新規使用取引を書き込むステップと、新規使用取引が書き込まれた後、装置が残している使用回数を差し引くように分散型台帳を更新するステップとをさらに含む。
【0020】
複数の磁気アセンブリ装置は、各治療について処方されるプロトコルによって規定される形で、経頭蓋磁気刺激機器によって使用され得る。プロトコルは、刺激波形のタイプ、刺激の大きさ、および刺激の持続時間、ならびに複数の磁気アセンブリ装置のうちの特定の磁気アセンブリ装置に対する処方された頭蓋位置を含むことができる。
【0021】
治療が使用され得る疾患の例には、以下のもの、すなわち、パーキンソン病、吃音、鬱病、筋強直性ジストロフィー、てんかん、失語症、失読症、強迫性障害、および統合失調症が挙げられる。
【0022】
本明細書に開示される方法を実装するために、TMS機器は、ブロックチェーン相互作用アプリケーションおよびTMSインターフェースを走らせるためのコードを実行するように動作するプロセッサを有する制御装置によって制御される。ブロックチェーン相互作用アプリケーションは、TMS機器の動作を直接的または間接的に制御するためのコマンドを生成するように動作することができる。
【0023】
これらならびに他の態様、特徴、および利点は、本発明の特定の実施形態の以下の説明、および添付の図、ならびに特許請求の範囲から理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に関して使用され得る例示的な経頭蓋磁気刺激(TMS)機器の側面図である。
図2】本発明に関して使用され得る例示的な経頭蓋磁気システムの概略平面図である。
図3A】例示的な磁気アセンブリ装置を示すブロック図である。
図3B】本発明の実施形態によるヘッドマウントの付着点の概略ブロック図である。
図4】本発明の実施形態によるブロックチェーン方法を使用して、ライセンス済装置の利用量が追跡され得るシステムを示す概略図である。
図5A】本明細書における表1にリスト化された磁気アセンブリ装置を書き込むための例示的なブロックチェーン取引データブロックの概略図である。
図5B】磁気アセンブリ装置の使用を詳述する後続の取引データブロックの一例を示す図である。
図5C】磁気アセンブリ装置の使用を詳述する後続の取引データブロックの一例を示す図である。
図6】例示的なブロックチェーンの概略図である。
図7】本発明の実施形態による複数の磁気アセンブリ装置を含むTMS機器を管理するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の説明は、経頭蓋磁気システムを管理する方法について開示し、ここでは、磁気刺激を送達するのに使用される各磁気アセンブリ装置が一意に特定され、磁気アセンブリ装置の使用に対するライセンス付き制約が実施される。1つの実装形態においては、ブロックチェーン方法論が利用される。言い換えれば、台帳を使用して、制限使用量を追跡する。ライセンス済治療の適切な使用は、i)装着した磁気アセンブリ装置の構成設定が、適用されることになる治療の処方された構成設定に正確に一致していること、ii)磁気アセンブリがそれぞれ、治療について認可を受けていること、iii)磁気アセンブリ装置を駆動させるのに使用される制御装置が、認可を受けているエンドユーザによって制御されること、およびiv)磁気アセンブリ装置が、処方された制限使用数を超えて使用されないことを確実にすることによって保証される。別の実装形態においては、これらの基準のうちのいくつか、たとえば、i)およびiv)しか利用されない。
【0026】
ブロックチェーンは、非中央集権型プラットフォームを提供し、この非中央集権型プラットフォームにおいては、取引は、分散型台帳に変更できないように記録され、プラットフォームの参加者によって認証され得る。TMSシステムにおいて使用される磁気アセンブリ装置は、一意の識別情報とともにエンドユーザに提供され得、1以上のライセンス済治療プロトコルが、処方された利用量について認可され得る。これらの装置属性が、分散型台帳に記録され、磁気アセンブリ装置の、治療についてのすべての次の使用もまた、台帳内に記録される。それによって、ブロックチェーンプラットフォームは、磁気アセンブリ装置の認可済の使用(たとえば、ライセンス)を監視し実施することができ、装置が確実に医学的に信頼できるやり方で使用されることになる。
【0027】
図2は、例示的な経頭蓋磁気システム200の概略平面図である。ハーネス、ヘッドマウント、またはキャップ205(ヘッドマウント)は、1以上のそれぞれの磁気アセンブリ装置212、214、216、218が着脱可能に接続され得る複数の付着点、たとえば、211、213、215、217とともに構成されている。付着点は、ヘッドマウント上の特定の場所を表し、使用される磁気アセンブリ装置の数とそれらがヘッドマウント上の付着点に設置される位置との両方は、TMSが適用される医学的疾患(治療)によって決まる。いくつかの実施形態においては、付着点は、ヘッドマウント表面上の所定の位置とすることができる。あるいは、ヘッドマウントは、レール、チャネル、または同様の構造を備えていてもよく、これらは、所与の患者の所望の治療場所または頭蓋構造に応じて、所与の磁気アセンブリ装置をチャネルまたはレールに沿って可変点で固定することを可能にする導電性素子を含んでいる。そのような実施形態においては、レオスタットまたは等価回路を使用して、ヘッドマウント205上の所与の磁気アセンブリの可変場所を電子的に特定することができる。付着点はすべて、標準の磁気アセンブリ装置をヘッドマウント205に沿ってどこにでも付着させることを可能にするような設計とすることも、または付着点は、対応する磁気アセンブリ装置とのみ対合する複数の継ぎ手を備えることもできる。磁界が印加される頭蓋上の領域に対応する付着点211、213、215、217は、所与の診断、療法、マッピング、または他の用途についての磁気エネルギーの送達に最適化される。図2に示されている構成は、例示であり、多数の他の構成設定が、意図される用途に応じて使用され得ることが認識されよう。磁気アセンブリ装置は、磁気アセンブリ装置212、214、216、218のそれぞれに電気的に結合されているコントローラインターフェース232(コントローラ)を含む制御装置230によって制御される(すなわち、アクティブ化され、駆動され、非アクティブ化される)。
【0028】
図3は、たとえば、例示的な磁気アセンブリ装置212のより詳細な例示を与える。磁気アセンブリ装置は、可変速度で動作することができるステッピングモータまたはブラシ付きモータなどのモータとして実装され得るアクチュエータ装置302を含む。当業者に知られている他のアクチュエータ装置のタイプが、特定の実施形態によって利用されることもある。アクチュエータ装置302は、コントローラ230に電気的に結合されており、このコントローラ230からアクチュエータ装置を駆動させる電気信号を受信する。アクチュエータ装置302は、たとえばロータ軸によって磁石304に機械的および剛的に結合されており、コントローラ232からの制御信号によって駆動すると、磁石304を回転させるように構成されている。
【0029】
様々な実施形態によれば、磁石304は、様々な異なるタイプとすることができる。たとえば、磁石304は、透過性芯が電流によって磁化される電磁石であっても、あるいは磁石は、永久磁石として実装されてもよい。1以上の永久磁石を利用するシステムによれば、そのような永久磁石は、レアアースであっても、または天然磁石、たとえば、ネオジム磁石であってもよい。代替の構成においては、磁石304は、軟磁性複合(「SMC」soft magnetic composite)磁石として実装されてもよい。
【0030】
磁石304が回転すると、磁気アセンブリ装置212の周りに急速に変化する磁界が生まれる。いくつかの実施形態においては、磁気アセンブリ装置はそれぞれ、少なくとも500~600テスラ/秒の、400ヘルツ以上の磁石移動速度に対応する、急速に変化する磁界を選択的に形成するための永久磁石を備える。TMS分野の当業者によって理解されるように、少なくとも500~600テスラ/秒の、400ヘルツ以上の磁石移動速度に対応する、急速に変化する磁界の印加により、弱電流が患者の脳内のニューロンに誘導される。これらの弱電流は、脳の自然な電気的活動を修正し、様々な用途に使用され得る。たとえば、医療用用途には、患者に標的療法を提供すること、診断の助けとなること、ニューロサイエンスの研究に使用するために脳機能をマッピングすることを含めることができ、非医療用用途には、学習、集中力、および知識を向上させるために脳の部位を刺激することを含めることができる。本明細書において定義するように、医療用用途は、既知のまたは可能性のある病気、疾患、障害、もしくは他の「標準以下の(sub-normal)」属性を伴う患者のための治療と見なすことができ、一方、非医療用用途には、患者が任意のそのような疾患または属性を有する場合であっても、もしくは有しない場合であっても、または診断される場合であっても、もしくは診断されない場合であっても、何らかの形で精神的機能を検査すること、または向上させることが望まれる治療を含めることができる。一部の患者の場合、一部の例では、たとえば、非常にわずかなまたは想像による疾患もしくは障害を有する患者に関しては、この区別は、曖昧な場合があることを理解すべきである。
【0031】
医療用用途には、限定するものではないが、チック障害およびトゥレット症候群、パーキンソン病、およびジストニア、振戦および運動失調などの他の運動障害、筋萎縮性側索硬化症および多発性硬化症などの運動ニューロン病、てんかん、偏頭痛、および他の頭痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS:complex regional pain syndrome)、ニューロパシーおよび線維筋痛症、耳鳴り、脳卒中、大鬱病性障害および治療抵抗性鬱病、不安障害、強迫性障害、拒食症および過食症などの摂食障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD:post-traumatic stress disorder)を含む心理的障害、統合失調症および双極性障害を含む精神障害;精神障害に二次的に生じる幻視、幻聴、および他の幻覚、ADHDなどの注意力障害、薬物の乱用および依存症、失読症および書字困難などの学習障害;吃音などの言語障害、記憶障害、アルツハイマー病を含む認知症、外傷性脳損傷、自閉症スペクトラム障害、意識障害、ならびに尿失禁が挙げられる。
【0032】
非医療用用途には、気分、注意力および集中力、運動機能および認知機能、社会的臆病などの不安、抑鬱、記憶力および学習力、禁煙、アルコール依存症、および他の依存症、ならびにPTSDの向上または他の変調が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
磁気アセンブリ装置の1つの例示的な構成設定においては、アクチュエータ装置302は、磁石を回転させるためのモータと、ソレノイドなど、患者に対して磁石の位置を変更するための横方向の移動装置(図示せず)との両方を備えることができる。この例示的な構成設定においては、磁気アセンブリ装置における横方向の移動装置は、磁石を患者の脳のより近くに、または患者の脳からさらに遠くに位置決めすることができる。横方向の移動があるかどうか、およびいつあるかについては、ユーザが患者に適用している個別の治療パラメータに依存し得る。横方向の移動装置は、任意で、横方向の移動自体に加えてまたはそれ自体として、方位角調整を可能にする。
【0034】
磁気アセンブリ装置212はまた、アセンブリ装置の磁界、温度、脳内に誘導される電流、またはアセンブリもしくは患者に関する他のデータ点を監視するのに使用され得る1以上のセンサ306を含む。そのようなデータは、当業者に知られている生物物理学データを含むことができる。1つの構成においては、センサ306は、脳の電気的活動を測定するように、および測定されたデータを電気信号としてコントローラ232に送り返すように構成されているアレイ状の1以上の電極を含む。集められたデータは、必要に応じてパッケージ化され、制御装置にローカルであってもまたはリモートであってもよい持続性データストアにアップロードされて、たとえば、個別の治療プロトコル単位もしくは治療プロトコルの安全性または有効性に関する支持データとして機能することができる。加えて、磁気アセンブリ装置212は、各装置を一意に特定するRFIDタグもしくはQRタグおよび/またはメモリユニット(チップもしくはカード)などの識別情報素子を含む。メモリユニットは、メモリユニットを外部から読み取ることを可能にする標準ポートに結合されている。いくつかの実施形態においては、タグは、装置の外筐、または他の手の届くことができる場所に配置され得る。他の実施形態においては、メモリユニットは、磁気アセンブリ装置の識別子を決定するためにコントローラ232によって読取り可能である。
【0035】
図2に戻ると、コントローラ232は、有線もしくは無線のリンク、またはそれらの組合せにより、磁気アセンブリ装置212、214、216、218のうちの1以上と通信する。コントローラ232は、各磁気アセンブリ装置、たとえば212、214に1つの別個に制御可能な通信リンクを使用して、磁気アセンブリ装置と通信する。加えて、いくつかの実施形態においては、コントローラ232は、磁気アセンブリ装置が設置されているときはいつでも、付着点、たとえば211、213、215、217から電気信号を受信することができる。ただし、特定の構成設定においては、コントローラ232は、当業者に知られている1以上の電線管、USB、シリアル、または有線もしくは無線の通信リンクの様々な組合せを使用することにより、磁気アセンブリ装置と通信することが可能である。
【0036】
図3Bは、本発明の文脈で使用され得る付着点211の例示的な実施形態を示している。付着点211は、磁気アセンブリ装置の取付け素子を受け入れることができる開口332を含む(例示的な取付け素子の輪郭が示されている)。電気接点335、337は、図示のように、開口332の対向縁部に配設され得る。第1の電気リード341が電気接点335に結合され、第2の電気リード343が電気接点337に結合されている。コントローラ232は、電気リード341、343に結合されている。抵抗器、コンデンサ、または誘導素子とすることができる回路構成要素350が電気リード341に結合され、その回路構成要素を任意の個別の取り付けられた磁気アセンブリ装置と並列または直列のいずれかになるようにする第2の結合部を有する。磁気アセンブリ装置の取付け素子が開口内に取り付けられると、導電性である取付け素子は、接点335、337と電気リード341、343との間のチャネルに電流を流すことを可能にすることによって、回路を効果的に閉じる。加えて、磁気アセンブリ装置が取り付けられ、回路が閉じられると、電流または電圧の信号の流れが、個別の実装形態に応じて、付着点を通ってチャネルと並列または直列のいずれかで構成されている回路構成要素350によって修正される。回路構成要素350のプロパティ(たとえば、抵抗、インピーダンス、静電容量、リアクタンス)は、付着点に一意であるように選択される。したがって、付着点211の構成要素による電流/電圧信号の修正の大きさ、位相、または大きさと位相の両方は、異なる特性を伴う回路構成要素を含む機器内の他の付着点すべての修正の大きさまたは位相とは異なる。このようにして、各付着点は、一意の電流/電圧署名を提供し、それにより、コントローラ232が、各付着点を監視し、付着点のいずれかの中に磁気アセンブリ装置が取り付けられたときを決定することが可能になる。
【0037】
ここで、図2に戻ると、コントローラ232は、制御装置230のプロセッサ234からの命令セットまたはコマンド信号に応答して1以上の磁気アセンブリ装置212、214、216、218を選択的に励起するように、ならびにこれらの磁気アセンブリ装置からおよび付着点211、213、215、217から電気信号を受信するように構成可能なポート、ドライバ、ゲートアレイ、論理スイッチ、または他の装置を備えることができる。1つの実装形態においては、コントローラ232およびプロセッサ234は、単一のコンピューティング装置の一部である。他の実装形態においては、コントローラ232およびプロセッサ234は、電気的に接続されている別個の装置内に収めることもできる。
【0038】
制御装置230は、市販のオペレーティングシステム、たとえば、MICROSOFTのWINDOWS、APPLEのOSX、UNIX、またはLinuxベースのオペレーティングシステムの実装形態を実行するデスクトップまたはワークステーションクラスのコンピュータとすることができる。さらなる実施形態によれば、制御装置230は、スマートフォン、ウェアラブル、またはタブレットクラスの装置など、ポータブルコンピューティング装置とすることができる。たとえば、制御部230は、APPLEのIPAD/IPHONEモバイル装置、ANDROIDのモバイル装置、または本明細書に記載のプロセッサを実行するように構成されている他の市販のモバイル電子装置であってもよい。他の実施形態においては、制御装置230は、カスタムまたは非標準のハードウェア構成設定を含む。例として、制御装置230は、単独で、または分散されているが協働する形で動作するそのような装置、ネットワークアダプタ、およびインターフェースの集合体の中で協調して動作する1以上のマイクロコンピュータ、あるいはアレイ状の他のマイクロコンピューティング素子、コンピュータオンチップ、プロトタイピング装置、「ホビー(hobby)」コンピューティング素子、家庭用娯楽コンソール、および/または他のハードウェアを備えることができる。
【0039】
制御装置230は、本発明の実施形態による経頭蓋磁気刺激を実装するために本明細書に記載されているものなど、ソフトウェアモジュールのうちの1以上に加えて、オペレーティングシステムを記憶するように動作する持続性メモリ装置236を備えることができる。本発明の一実施形態においては、制御装置230によって利用されるモジュールは、プロセッサ234によって実行される、または別の形でプロセッサ234によって使用されるソフトウェアプログラムコードおよびデータを含み、それによって、制御装置230は、様々なモジュールのソフトウェアコードによって指示される様々なアクションを行うことになる。制御装置はまた、リモートに位置し当業者によく知られている通信フレームワークおよびプロトコルを実装するネットワークインターフェース238によってコンピュータネットワークを介してアクセスすることができる持続性データストアと通じていてもよい。
【0040】
特定の実施形態においては、持続性メモリ装置236は、経頭蓋磁気刺激アプリケーションプログラムコード242、およびブロックチェーン相互作用アプリケーションコード244を含んでいる(さらに後述する)。制御装置はまた、磁気アセンブリ装置の動作パラメータを規定する際にプロセッサ234によって実行される治療プロトコル単位のライブラリ240も含む。治療プロトコル単位(TPU: treatment protocol unit)は、1つの構成においては、磁気アセンブリ装置によって実装可能な個別の動作特性を詳述するデータオブジェクトである。本明細書でより詳細に説明されているように、1以上のTPUを順次組み合わせて、治療プロトコルを形成することができる。TPUは、ローカルで作成することも、またはリモートサイトからインターフェース238を通じてダウンロードすることもできる。
【0041】
所与のTPUの動作パラメータは、ユーザが定義することができ、1以上の磁気アセンブリ装置の動作を制御する一連のキー/値ペア(key-value pair)を含む。より概括的には、治療プロトコル単位は、1以上の(より典型的には、少なくとも2つ以上の)磁気アセンブリ装置が、ある時間窓にわたって患者の脳の様々な部位において電界を生み出すようにアクティブ化される形を定義する。そのような情報は、そのような電界を生み出すためにコントローラを介して磁気アセンブリ装置の組を励起するように、プロセッサに命令するために経頭蓋磁気刺激アプリケーションプログラムコードによって使用される。1以上のTPUは、個々の磁気アセンブリ装置を回転させる信号を生成するためのコントローラへの命令を含む。所与の磁気アセンブリ装置によってコントローラからそのような信号が受信されると、そのアクチュエータが、個別の持続時間の間、個別の周波数で、その関連する磁石を回転させる。設定された周波数で磁石がそのように回転すると、結果的に、所望の電界が脳内に生成され、それは、療法、診断、マッピング、または他の医学的診断治療の一部として使用され得る。
【0042】
有利には、経頭蓋磁気刺激アプリケーションプログラムコードにより、ユーザは、ライブラリ240から治療プロトコル単位(TPU)セットを選定して、1以上の治療プロトコルを形成することが可能になる。TPUは、治療プロトコルと総称される個別の治療を実装するために組み合わせることができる「刺激単位(units of stimulation)」と見なすことができる。ユーザインターフェース、たとえば、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)またはテキストベースのインターフェースが、経頭蓋磁気刺激アプリケーションプログラムコードによって提供され得る。ユーザインターフェースにより、ユーザは、プロセッサが、設定された治療プロトコルとして患者に適用するTPUセットを定義することができ、またはローカルで定義される、もしくは別の形でリモートサイトからコントローラ230に提供されるTPUセットを含むあらかじめ設定されたプロトコルを選定することができる。1つの例として、神経系医療用施設においては、医師または他の医療専門家は、パーキンソン病をもつ患者を、この疾患に合わせて調整されたTPUライブラリ240から治療プロトコルを選定することによって治療することができる。
【0043】
一実施形態によれば、経頭蓋磁気刺激アプリケーションプログラムコードは、(たとえば、スクリプトのような)治療プロトコルを含むTPUを順次適用する。あるいは、経頭蓋磁気刺激アプリケーションプログラムコードは、所与の治療プロトコルを含む治療プロトコル単位を動的に構成し適用することができる。さらには、プロセッサは、いくつかの治療プロトコル単位を並行して、たとえば同時に、実行し適用することができる。ユーザはまた、制御装置がそのネットワークインターフェースを介してアクセスするネットワークによって他の制御装置において他のユーザと治療プロトコルおよびTPUを共有することもでき、それは、受信した治療プロトコルを含む個々の治療プロトコル単位を受信することをさらに含むことができる。
【0044】
1つの個別の構成においては、経頭蓋磁気刺激アプリケーションプログラムコードは、1以上の個別の磁気アセンブリ装置を利用する治療を適用するように制御装置230のプロセッサ234に命令する。経頭蓋磁気刺激アプリケーションプログラムコードは、経頭蓋システム上に位置決めされた磁気アセンブリ装置のすべてまたは一部分の励起を制御するようにプロセッサ234に命令することができる。例示的な治療プロトコルは、特定のパターンのTPUを含むことができ、その用途は、ブローカ野(Broca's Area)などの患者の脳の1以上の部位に近接して位置決めされている磁気アセンブリ装置に向けられている。経頭蓋磁気刺激アプリケーションプログラムコードを実行するプロセッサは、磁気アセンブリのそれぞれについて、所望の回転周波数、持続時間、休止期間、または他の条件を詳述する、コントローラによって配布される単一の制御信号を生成することができる。言い換えれば、ユーザは、治療プロトコルを選定することができ、個別の治療プロトコルの選定にすべて基づいて、治療プロトコル単位のパターンを並行してまたは順次に実装することによって、システムに治療、診断、マッピング、または他の手順などを実装させることができる。
【0045】
TPUは、限定するものではないが、ゼロ以上の磁気アセンブリ装置の個別の組の回転周波数、モータ励起持続時間、休止期間、および特定の励起などの治療プロトコルに関するデータセットに構造を提供するように働くデータオブジェクトとして表すことができる。TPUは、各磁気アセンブリ装置について駆動設定または休止設定を確立するように、TMSアプリケーションコード242によって処理される。TPUは、例示的なプロパティとして、1以上の磁気アセンブリ装置についての回転周波数を表す周波数値、回転持続時間、治療プロトコル単位を適用するための配置部位、および休止期間を含むことができる。TPUはまた、シータバースト刺激(TBS:Theta Burst Stimulation)プロトコルも実装することができる。この場合、TBSプロトコルは、1以上のアクティブTPUとして定義され、この後に第2の休止TPUが続く。1つの個別の例においては、アクティブTPUは、50Hzの周波数で送達される3パルスのパターンを定義し、各パルスは、20ms持続する。160ms持続する休止TPUは、現在のパターンの最後のバーストから、次のパターンの最初のバーストまでのバースト間間隔を定義する。アクティブTPSと休止TPSは、持続時間が200ミリ秒の繰返し治療パターンについて組み合わせられる。単一のTPUが多バーストパターンを定義することがある一方、アクティブTPUが、単一のバーストを定義することも想定される。したがって、単一の休止TPUまたは休止TPUの集合体が後に続く単一のバーストTPU(それぞれ、バーストに続く休止期間がない)の集合体もまた、TBSプロトコルを定義するのに使用され得る。
【0046】
1以上の実装形態においては、治療プロトコルにおける個別のTPUを実行すると、局所部位を治療するための単一の磁気アセンブリ装置へのコマンドの発行が可能になる。同様に、所与の治療プロトコル単位は、制御装置におけるプロセッサが解釈する所与の治療プロトコル単位における命令に基づいて、ある時間期間にわたって回転するように励起する1以上の磁気アセンブリ装置の組をヘッドマウント上のそのような磁気装置アセンブリの場所に基づいて特定することができる。別の構成においては、磁気アセンブリ装置は、ヘッドマウントへのその接続点に基づいてアドレス可能とすることができ、磁気装置アセンブリの場所は、磁気アセンブリ装置が、付着点によってヘッドマウントに接続された結果として定義される。関連事項として、ヘッドマウントおよび付着点に付着されている磁気アセンブリ装置の動作能力/ステータスに関する信号フィードバックは、システムと連携して、治療プロトコルの選定を可能にし、個別の治療プロトコルが開始される前に、追加のまたは異なる磁気アセンブリ装置を付着させなくてはならないこと、およびそれらをどこに付着させなくてはならないかについて、臨床医もしくは他の治療提供者、患者、または他のユーザに伝えることができる。
【0047】
上述したように、所与のTPUは、所与の時点において、磁気アセンブリ装置の動作状況を最終的に命令する1以上の個別のキー/値ペアを特定する。したがって、所与のTPUは、所与の治療プロトコル単位内に含まれている各キー/値ペアを定義する必要がなく、たとえば、いくつかのキーは、ヌルまたは空の値を有する場合がある。たとえば、TPUは、いずれの励起状態情報もない休止期間に関する情報、たとえば、ヌルに設定されている周波数および持続時間の値を提供することがある。そのような構成設定においては、休止のみのTPUは、治療プロトコルのアクティブセッションにおけるブレークまたはスペーサとして動作する。このようにして、休止期間は、休止期間を欠いた治療プロトコル単位に付随するように導入され得る。例として、休止期間を定義するだけの治療プロトコル単位は、0.1ヘルツ~2ヘルツの間の設定された繰返し周波数が確実に存在するようにするために使用することができる。
【0048】
個別の疾患についての治療が、TPUのグループとして実装されてもよい。一実施形態によれば、経頭蓋磁気刺激アプリケーションプログラムコードは、所望の治療長さ全体に従って、TPUセットを構成設定する、または組み立てるようにプロセッサに命令する。たとえば、所望の治療が2分である場合、経頭蓋磁気刺激アプリケーションプログラムコードは、たとえば治療持続時間に達するまで治療プロトコルを含むTPUをループすることによって、TPUを所望の長さの治療プロトコルに組み入れるようにプロセッサに命令する。あるいは、所望の長さの治療プログラムを提供するために、より長い持続時間のTPUが、所与の治療プロトコルにおいて使用されてもよい。結果として生じる治療プロトコルは、患者の脳内に特定の一連の電界を生成するように磁気アセンブリ装置のすべてまたは一部分に命令するのに使用されるデータを含んでいるデータオブジェクトである。同じキャップ205に取り付けられている異なる磁気アセンブリ装置に、異なる治療プロトコル単位が適用される場合、治療プログラムデータセットが生み出され、それは、治療プロトコルのライブラリとして持続性データストアに保存され得る。こうして、治療プロトコルの集合体が生成され得、それによって、異なる個々の治療プロトコルが、任意の所与の時に1以上の特定の磁気アセンブリ装置を制御するのに使用される。
【0049】
全体を通して説明しているように、制御装置におけるプロセッサは、患者の頭蓋の少なくとも一部分にわたる場所において、ヘッドマウント102上の離間された1以上(より典型的には2つ以上)の磁気アセンブリ装置を可変的に励起するように経頭蓋磁気刺激プログラムコードを実行する。制御装置は、プロセッサがディスプレイ装置上に提示するインターフェースとの相互作用により、1以上の治療プロトコルのユーザ選定の機能を提供する。制御装置230は、ローカルストレージからの治療プロトコル、ならびにリモートデータストア上の治療プロトコルへのアクセスを可能にすることができる。一実施形態によれば、制御装置は、ネットワークインターフェース238を使用することにより、ネットワークを介してリモートデータストアにアクセスする。リモートデータストアに接続すると同時に、制御装置は、取引プロトコルを、プロセッサによって実行されるようにローカルストレージにコピーする。あるいは、制御装置は、リモートデータストアにアクセスし、たとえばデータのリモート実行など、必要に応じて、取引プロトコル情報を読み取る。
【0050】
ユーザには、所与の治療プロトコルを構成する個々の治療プロトコル単位のリストも含むことができる利用可能な治療プロトコルのリストが提示され得る。所与の治療プロトコルの選定は、個別の病に向けられた治療の適用に基づいて行うことができる。たとえば、ドロップダウンメニューは、一実施形態においては、i)治療を必要とする例示的な潜在的病の組、たとえば、鬱病、神経障害および精神障害、偏頭痛、失語症、不安、パーキンソン病、耳鳴り、自閉症、統合失調症、アルツハイマー病、ALS、(たとえば、虚血性)脳卒中、筋強直性ジストロフィータイプ1(DM1)、吃音、てんかん、パーキンソン病、疼痛およびジストニア、コカイン、オピオイド、および他の依存性行為、ii)たとえば集中力、短期および長期記憶力、学習、外国語トレーニングなどの向上のための非医療用刺激治療をリスト化することができるグラフィカルユーザインターフェースによって提供され得る。ユーザは、そのような疾患を改善する、またはそのような刺激治療を行うために、別のユーザによって先に設計済みの、可能性として仲間らによってすでに検証済みの(1以上の治療プロトコル単位を含む)治療プロトコルを選定することができる。あるいは、ユーザは、特定の疾患または環境に応じて1以上の治療プロトコル単位を自由に選択でき、たとえば、治療プロトコル単位の1以上の集合体は、依存症または疼痛などの個別の病に対する適用可能性を有すると提示され得る。治療プロトコルおよび/または治療プロトコル単位を維持するデータストアは、所与の治療プロトコル単位または治療プロトコルの適用可能性に関する提案として機能するメタデータに関連付けられ得る。
【0051】
任意で、臨床医または他の治療提供者による処方に対応する治療プロトコルに対して、治療プロトコルの選定を定義する(たとえば、拘束する)ことができる情報が、データベースからネットワークインターフェースを介して受信可能である。任意で、選定に利用可能な治療プロトコルセットは、従来の治療に応じて定義され(たとえば、拘束され)得る。例として、治療プロトコルは、治療レジメンを含むことができ、ここでは、持続時間、エネルギー、または他のパラメータが、患者または他のユーザについて確立されているが、それらは、治療の経過とともに変わる。このようにして、あらかじめ定義された治療レジメンが、あらかじめ定義されたレジメンによる一連の治療プロトコルを提供することによって、正確に実装され得る(同じまたは他の患者により繰り返され得る)。
【0052】
動作中、プロセッサは、経頭蓋磁気刺激プログラムコード242を実行し、TPUをライブラリ240から読み出して順次にまたは並行して実行する。TPUを実行すると同時に、プロセッサは、特定の磁気アセンブリ装置をアクティブ化する(または場合によっては、非アクティブ化する)ようにコントローラに命令を発行し、それにより、所与の磁気アセンブリ装置内のモータもしくは他のアクチュエータが、装着者の脳内で所望の電界を励起し誘導し、または場合によっては、脱励起することになる。
【0053】
上記の治療プロトコルを用いる経頭蓋磁気刺激の議論により、意図される治療を送達するには、作動した磁気アセンブリ装置のそれぞれが適切に機能することが極めて重要であることが認識できる。経頭蓋磁気刺激機器が確実に定期的に適切に働くようにするために、磁気アセンブリ装置の提供者は、ライセンスを受けた使用制約によって装置の使用に対する制限を取り決めることができる。たとえば、磁気アセンブリ装置は、たとえばパーキンソン病を治療するために、個別の治療プロトコルについてライセンスを受けることができ、装置は、そのライセンスの下で、使用回数の閾値についてライセンスを受けることができる。たとえば、パーキンソン病の治療プロトコルについてライセンス済アセンブリは、20回の使用に制限され得る。ライセンスを受けた制約下でのみ磁気アセンブリ装置が使用されることを確実にするために、集中型許可サーバを使用することができるが、この解決策には、治療中、磁気アセンブリが使用されるあらゆる場合に、許可サーバとの接続が必要である。中央権限エンティティとの接続性に対するこの依存性を避けるために、本発明の一実施形態は、磁気アセンブリ装置の利用量を管理し、監視し、制御するのにブロックチェーン方法論を使用して、確実に、ライセンス済装置のみが使用されること、およびライセンス済装置がライセンス済みの許可された数の治療のみに使用されるようにする。
【0054】
磁気アセンブリ装置の特定
上記に付記したように、治療プロトコルを適用する際に使用される磁気アセンブリ装置が、意図される目的に適していることを確実にすることが重要である。適切な磁気装置が確実に使用されるようにするためには、TMSシステムが、以下のもの、すなわち、a)所与の治療プロトコルの場合、所要の数の磁気アセンブリ装置がヘッドマウント上の正確な付着点に位置決めされていること、b)各磁気アセンブリ装置が、特定の治療プロトコルを行うように構築されていること、およびc)エンドユーザ(コントローラ)が、提供された装置を用いてTMS刺激を行うように認可を受けていることについて、検証できることが重要である。表1には、磁気アセンブリ装置(MAD:magnetic assembly device)の数、ヘッドマウント上の頭蓋に対するMADの配置、およびTMSを用いて各疾患を治療するための刺激パラメータのプレースホルダーとともに、3つの医学的疾患がリスト化されている。表1に提示されているデータが単に例示目的にすぎず、磁気装置アセンブリの配置に適している場所、またはリスト化されている疾患についての刺激パラメータもしくは治療プロトコルの任意の個別のセットを示すことを意味するものではないことを付記する。上記に付記したように、この表には、医療用治療プロトコルがリスト化されているが、概して、TMS治療プロトコルは、医療用使用に限定するものではない。この情報は、制御装置にローカルで記憶されても、またはアクセス可能なネットワーク(たとえば、クラウドプラットフォーム)上の1以上の場所に記憶もしくはキャッシュされてもよい。
【0055】
【表1】
【0056】
表1の1行目は、医学的(神経学的)疾患の吃音に関するものである。この疾患を治療するために、治療プロトコルは、場所A、B、C、およびE(図1に示されている)に位置決めされた4つのMADを使用し、この疾患の場合、コントローラは、スピン周波数F1、電流I1、電圧V2、および持続時間T1を含む要件を有する電気信号を使用して、磁気アセンブリ装置をアクティブ化する。周波数は、刺激信号全体についての基本周波数とすることも、またはMADが定格設定されなくてはならない最大周波数などの刺激信号の一部分を特徴とすることもできる。電流および電圧のパラメータは、最大振幅、rms振幅であってもよく、または信号の他の電流もしくは電圧の特性であってもよい。同様に、持続時間は、刺激信号の持続時間全体、信号の振動の一部の持続時間、または多数の刺激事象を含む持続時間を表すことができる。
【0057】
表1の2行目は、パーキンソン病に関するものである。この疾患の治療プロトコルもまた、4つの磁気アセンブリ装置を必要とするが、場所は、A、C、D、およびFである。刺激パラメータは、値F2、I2、V2、およびT2として付記されている。3行目は、強迫性障害(OCD:Obsessive Compulsive Disorder)に関するものである。この疾患についての治療プロトコルは、場所B、C、D、E、およびFに位置決めされた5つの磁気アセンブリ装置の使用を必要とする。刺激パラメータの別の組F3、I3、V3、およびT3が付記されている。
【0058】
図4は、ライセンス済装置の利用量が本発明の方法を使用して追跡され得るシステムを示す概略図である。図4に示されているように、システム400は、経頭蓋磁気刺激機器を収容する医療用治療施設など、「エンドユーザA」について上述したTMS機器および制御装置を有する経頭蓋磁気システム200を含む。エンドユーザAは、TMS機器および制御装置230を含み、制御装置230は、間欠的にVendorシステム410(Vendor)に通信可能なように結合されるとともに、ピアツーピアネットワーク420に通信可能なように結合されている。図示の実施形態においては、Vendor410は、個別の構成および一意の識別子を備える磁気アセンブリ装置をエンドユーザAに供給するエンティティである。Vendor410は、提供する各磁気アセンブリ装置について、一意の製品IDおよび1以上の特定のライセンスを受けた使用条件を割り当てる。一意の製品IDは、光学的に読み取ることができるバーコード、QRコード、またはRFIDコードに埋め込むことができる。加えて、いくつかの実施形態においては、修正済みの製品IDもまた、磁気アセンブリ装置のメモリユニット内に記憶され得る。さらに後述するように、記憶された修正済みの製品IDは、製品IDに基づいて生成された擬似乱数コードとすることができ、ここで、この目的のためにベンダー410によって使用される擬似乱数コード生成は、個別のエンドユーザの観点で選定される。加えて、いくつかの実施形態においては、Vendorは、エンドユーザに、そのエンドユーザについて使用される擬似乱数コードを生成するための同一のアルゴリズムを提供することができ、それは、制御装置の持続性メモリ内に記憶され得る。たとえば、製品IDは、アルゴリズムについてのシードデータとして使用され得る。エンドユーザが擬似乱数コードアルゴリズムを使用すると、TMS治療について、対応する磁気アセンブリ装置の使用が認可を受けているとしてエンドユーザの検証が可能になる。
【0059】
下記表2は、上述した経頭蓋磁気システムにおいて使用され得る4つの例示的な磁気アセンブリ装置についてライセンス済みの使用の例を示している。この表に示されているように、各磁気アセンブリ装置は、製品ID、装置が使用され得る1以上のライセンス済みの治療、および装置が各ライセンスを受けた使用について利用され得る対応する許可された回数を有する。表2にリスト化されている例においては、第1の磁気アセンブリ装置は、パーキンソン病治療プロトコルについてライセンスを受けており、(プロトコルごとに)25回の治療を送達する際に使用され得る。第2の磁気アセンブリ装置は、2つの異なる治療、すなわち、強迫性障害(OCD)および吃音についてライセンスを受けている。装置は、OCD治療を送達するのに15回、もしくは吃音治療を送達するのに15回、またはこれらの治療のそれぞれに15回使用可能である。第3の磁気アセンブリ装置は、パーキンソン病についてやはりライセンス済第1の装置と同様であるが、より堅牢な設計を有し、そのため、より多くの使用回数(30)についてライセンス済みである。第4の磁気アセンブリ装置は、筋強直性ジストロフィー(タイプ1)を治療するために、20回の治療についてライセンス済みである。
【0060】
【表2】
【0061】
再度、図4に戻ると、Vendor410は、それが供給する各磁気アセンブリ装置の識別情報、ライセンス済みの使用、およびエンドユーザを示す記録を維持する。しかしながら、Vendorが磁気アセンブリ装置を経頭蓋磁気アセンブリのエンドユーザに送達した後、Vendorには、装置の使用を追跡する必要も、ライセンス済みの使用を確実に順守する必要も、または他の継続中の監視活動に関わる必要もない。監視は、エンドユーザにおける現場で行われ、Vendor410または任意の他のエンティティによる中央集権型制御の必要性を取り除くブロックチェーン方法論によって検証され得る。エンドユーザ200が新規に供給された磁気アセンブリ装置を受け取ると、各装置についての製品ID、ライセンス済みの使用情報、および許可された使用回数が、エンドユーザAにおける制御装置230にログインされ記憶され得る。
【0062】
装置のそれぞれについての擬似乱数識別情報コードは、制御装置230において、認可済擬似乱数コードアルゴリズムを実行することによって生成され得る。本明細書との関連で「認可済み(authorized)」という用語は、アルゴリズムがベンダー410によって提供および/または制御されること、ならびにエンドユーザとベンダーとの間の認可済の関連性がアルゴリズムによって生成されたコードにより検証され得ることを意味する。アルゴリズムは、ベンダーから制御装置によってアップロードされ得、または別の形で、エンドユーザに、たとえば、安全なメモリ装置に提供され得、アルゴリズムは、そこから制御装置によってロードされ得る。
【0063】
擬似乱数コードは、文字列xを、乱数のように見える、より長い文字列f(x)に展開する多項式関数とすることができる。コードは、f(x)について、RSA関数などの一方向性関数を使用することによって暗号化を目的として安全にされ得る。RSA関数は、シード値(x)から始まり、次の値は、式x=x-1 mod nから計算することができ、ここで、nは、認可済のアルゴリズムによって設定される大きい素数(p、q)の積である。特定の実装形態においては、磁気アセンブリ装置の製品IDは、シード値(x)として使用することができる。初期出力値は、組x、x、…、xである。最終出力値Yは、y=x mode 2として計算することができる値の組y、y、…、yであり、それはビットストリーム(y…y)である。
【0064】
エンドユーザにおいてTMS治療を準備する際、ヘッドマウントは、患者において配置され、選定された治療プロトコルは、処方された数の磁気アセンブリ装置をプロトコルによって決定された付着点において配置することによって適用される。一旦、装置が装着されると、TMS刺激は、TMSアプリケーションコード242によって実行すべき選定された治療プロトコルごとの磁気刺激を患者に対して開始するように、(たとえば、ユーザインターフェースを介して)制御装置においてプログラムコードを実行することによって開始され得る。磁石を誘導して回転させるための電気信号を送信する前に、制御装置は、例として、以下のもの、すなわち、i)ヘッドマウントに装着した磁石の数およびそれらのそれぞれの位置が治療プロトコルの要件に一致しているかどうか、ii)磁石が、選定された治療プロトコルについてライセンス済みであるかどうか、およびiii)エンドユーザAにおける制御装置が、供給された磁気装置を使用して刺激を行うように認可を受けているかどうか、のうちの1以上について決定する。
【0065】
磁気アセンブリ装置がエンドユーザにおいて装着されると、一実施形態においては、付着点に装着することにより、回路が閉じられ、それにより、電流が、付着点の電気リードから制御装置に伝えられることになる。各付着点は、互いに互いと区別する回路構成要素を有するので、制御装置が受け取る電流は、磁気アセンブリ装置が装着されている付着場所の署名として機能する。TMS刺激プログラムは、電流を受け取った付着点と、メモリ内に記憶されている治療プロトコルによって処方されている付着点とを制御装置プロセッサに比較させるためのコードを含む。付着点の組がヘッドマウント上の装置の数とそれらの位置との両方の観点で一致した場合、TMS刺激プログラムは、次の決定に進む。付着点の組が一致しない場合、TMS刺激プログラムのコードを実行する制御装置は、磁気アセンブリ装置が正しい位置に装着されておらず、装置の刺激が無効にされているという通知(たとえば、ユーザインターフェースを介する視覚的または聴覚的通知)を医師に発行する。他の実施形態においては、システムは、MADが正しい位置に装着されることを手動で合わせることを、インターフェースを介してより単純にユーザに要求するように構成されていてもよい。さらなる別の実施形態においては、MAD位置についての確認は全く行われない。
【0066】
装着した磁気アセンブリ装置が送達すべき治療に適切な位置にあることを検証した後、そのような検証が行われた場合、TMS刺激プログラムは、装着した磁気アセンブリ装置のライセンス済みの使用情報と治療プロトコルとを制御装置に比較させる。装着した磁気アセンブリ装置は、手動または自動のいずれかで特定され得る。TMS刺激プログラムコードは、ユーザ入力をプロンプト指示し、または制御装置の入力ポートからデータをポーリングするための命令を含むことができる。たとえば、エンドユーザは、ヘッドマウントに装着される装置の製品IDをスキャンすることができ、スキャンされたデータは、制御装置に送信され得、または別の形で入力することができる。他の実装形態においては、導電性リードが磁気アセンブリ装置に結合されて、磁気アセンブリ装置に収容されているメモリユニットから製品ID情報を読み取ることができる。制御装置が、装着した装置のライセンス済みの使用が治療プロトコルと一致することを決定した場合には、TMS刺激プログラムは、次の決定ステップに進む。そうでなければ、実行されたTMS刺激プログラムは、装着される磁気装置が選定された治療についてライセンス済みではないという通知を制御装置に発行させ、装置の刺激は、この検査が一致で満たされるまで、無効にされる。
【0067】
最後に、制御装置は、制御装置230が治療刺激を行うように認可を受けていることを制御装置が検証できるようにするTMS刺激プログラムの命令を実行する。制御装置は、装着した磁気アセンブリ装置のメモリユニット内のデータを読み取って、その中に記憶されている修正された製品ID情報を取得する。次いで、制御ユニットは、ベンダーから受信したアルゴリズムによって生成される擬似乱数コードをロードする。次いで、TMSプログラム命令は、修正された製品IDと擬似乱数コードとを制御ユニットに比較させる。修正された製品IDと擬似乱数コードとの間に一致がある場合、同じソースから生じた同じアルゴリズムにより、装置において記憶されている修正された製品IDと制御装置によって生成される擬似乱数コードとの両方が生成されたことを結論付けることができる。このことは、エンドユーザおよびベンダーが同じアルゴリズムを共有しており、そのため、エンドユーザは、ベンダーによって提供される磁気アセンブリ装置の認可済のユーザであることを意味する。この方策の1つの利点は、磁気アセンブリ装置が、そのような認可を有しない施設においては使用できないことである。エンドユーザが認可を受けている場合、TMS刺激プログラムは、プロトコルに従って刺激を有効にし、次いで、先に進む。一致が生じない場合、刺激は無効にされる。
【0068】
上述したTMS刺激プログラムの実行によって行われるステップが、異なる順序で行われてもよいことを付記する。
【0069】
ブロックチェーンプラットフォームを使用する実施
いくつかの実施形態においては、エンドユーザ200における制御装置は、メモリ内に記憶されているコードから(図2の)ブロックチェーン相互作用アプリケーション244を実行するように動作する。ブロックチェーンインターフェースアプリケーションは、Ethereum、Openchain、およびHyperledger Fabricなどのいくつかの異なるブロックチェーンプラットフォームを使用して実装され得る。これらのプラットフォームにより、ブロックチェーンアプリケーションの展開が可能になる。たとえば、Ethereumは、「スマートコントラクト」を支持する非中央集権型プラットフォームであり、ライセンス制約を定義するのに特に有用である。
【0070】
ブロックチェーンは、リンクされた数学的ハッシュ関数の使用により、改竄するまたは遡及的に変更することが事実上不可能である変更不可能な分散型台帳に取引を提示するやり方である。ブロックチェーンは、順序付けられた「ブロック」シーケンスである。各ブロックは、指定された時間期間内に発生する一連の取引をハッシュ値などの他のパラメータとともに含む。取引は、ブロック内に集められ、「マイナー(miner)」と呼ばれる、ピアツーピアネットワーク420内の参加者によって、既存のブロックチェーンに追加される。分散型ブロックチェーン台帳は、複製され、ピアツーピアネットワーク420に維持される。分散型台帳が、取引すべてのトランスペアレントな履歴をブロックチェーンに維持し、その後、それをレビューできることが重要である。ブロックチェーンプラットフォームは、分散型台帳に、取引を書き込むことを可能にし、また参加者が、書き込まれた取引を認証すること、および台帳に記憶されている取引に基づいて計算(合算、減算)を行うことも可能にする。
【0071】
本発明との関連では、取引は、i)ライセンス済みの治療および利用回数を含む、新規磁気アセンブリ装置のベンダーからのレシートの書込み、ii)治療についての磁気アセンブリ装置の利用量、および任意でiii)ライセンス済みの治療を変更するための許可など、ライセンス条件に対する他の変更を含むことができる。
【0072】
図5Aは、表1にリスト化された磁気アセンブリ装置を書き込むための例示的なブロックチェーン取引データブロックの概略図を示している。個別のブロックに含まれているデータは、ブロックチェーンプラットフォームの機能を使用して構成設定可能である。図5Aの場合においては、書き込まれた取引は、新規に受け取った磁気アセンブリ装置のライセンス条件を報告する初期設定である。データブロック500のフィールドは、データブロック番号(この場合は、1である)、ポスターエンティティ(この場合は、エンドユーザA)、各あらゆる取引(新規または使用済みのいずれかとしてリスト化される)を一意に特定する取引数、および取引データを含む。この例においては、取引データは、ブロックチェーンに対するライセンス条件を確立するための関連データを含む。各取引は、磁気アセンブリ装置の製品ID番号、装置がライセンス済みの治療、およびライセンス済みの治療について許可された装置の使用回数を含む。書込タイプは、取引が、新規に受け取った磁気アセンブリ装置の書込みを反映し、エンドユーザAの追加の治療能力を反映しているので、「追加(add)」である。同様に、1~4とラベル付けされた取引は、新規であり、より古くて使用済みの取引に基づくものではない。
【0073】
図5Bおよび図5Cは、後続の取引データブロックの2つの例を示している。図5Bにおいては、単一の取引が示されている。この取引は、新規で、(5)と番号付けされており、データブロック1に含まれている、(4)と番号付けされた最後の取引に続いて起こる。取引(5)は、磁気アセンブリ(AJ287JI02)の製品IDと、取引タイプ「治療(OCD)」、および使用回数(この場合は、2)を含む。この取引は、ブロックチェーン相互作用アプリケーションの構成設定に応じて、エンドユーザAにより、関連する時間期間中、OCDの治療プロトコルにおいてAJ287JI02と特定される磁気アセンブリを2回使用するように要求されているか、あるいは磁気アセンブリ装置AJ287JI02が、関連する期間中、OCDを治療するのにすでに二度使用されたことを示すことができ、この使用は、ブロックチェーンに書き込まれている。図5Bにおいては、「新規」取引(5)の横に、データブロック1からの「使用済みの」取引(2)がある。新規取引(5)では、より早期の取引、すなわち、データブロック1において特定された初期ライセンス済みの使用が必要であり、それを「使用する」ので、取引(2)が、リスト化されている。加えて、特別な「帳簿(bookkeeping)」取引(取引6)が、リスト化されており、ここでは、装置AJ287JI02を用いてOCDを治療するために割り当てられた残りの使用数13(=15-2)がまた追加される。このようにして、分散型台帳は、磁気アセンブリ装置が残している利用回数の現在の記録を維持する。同様の形で、図5Cは、製品IDGG98L61B、治療(MYT)、使用回数1を有する第1の取引(取引7)、および製品ID XM3A46F1、治療(PARK)、および使用回数1を有する第2の取引(取引9)を含む。これらの取引は、GG98L61Bと特定された磁気アセンブリが、筋強直性ジストロフィーの治療プロトコルにおいて要求されているか、またはその治療プロトコルにおいて一度使用されたかのいずれかを示し、XM3A46F1と特定された磁気アセンブリが、パーキンソン病の治療プロトコルにおいて要求されているか、またはエンドユーザAによって、関連する時間期間中、その治療プロトコルに一度使用されたかを示している。上述した形で、取引7は、データブロック1から
の取引4を使用し、取引9は、データブロック1からの取引1を使用している。両方の取引は、対応する帳簿取引を有し、ここでは、残りの利用回数(装置GG98L61Bの場合には19、および装置XM3A46F1の場合には24)が台帳に記録されている。
【0074】
たとえば図5A図5Cに示されている取引データは、ブロックチェーンに含まれているブロックの実質的な部分を形成するが、各ブロックに含まれている他のいくつかの重要な構成要素が存在する。図6は、例示的なブロックチェーン600の概略図である。チェーンの第1のブロック600は、ブロック番号1を有し、取引データブロック602、タイムスタンプ604、ノンス値606(ランダムな数字)、および現在のハッシュ値608を含む。チェーンにおける第2のブロック610(Block2)は、次の順次ブロック番号(2)を有する。ブロック610は、1つのフィールドとして、Block1のハッシュをそれが含むことを示す「前のハッシュ(1)」として含まれている前のブロック(Block1)の現在のハッシュ611を含む。このようにして、チェーンにおけるブロックすべてのハッシュ値がリンクされる。Block2は、同様に、取引データ612、タイムスタンプ614、ノンス値616、および現在のハッシュ618を含む。図には、N番目のブロック620が示されており、それは、チェーンの、何らかの任意のリンク数下方に位置決めされている。ブロック620は、BlockN-1(図示せず)の前のハッシュ621、ならびに他の取引データ622、タイムスタンプ624、ノンス626、および現在のハッシュ628のフィールドを含む。BlockNの現在のハッシュ628は、チェーンにおける次のブロックを指して示されており、それは、Nがチェーンにおける最後のブロックである場合、まだ作成されていない可能性がある。
【0075】
チェーンにおけるブロックは、ブロックチェーンプラットフォームにエンドユーザ(たとえば、200)によって書き込まれた取引から、ピアツーピアネットワーク420におけるマイナーによって共同で作成される。取引がネットワークのノードに書き込まれると、ノードはそれぞれ、指定されたブロック内に書き込まれる取引を収集する。ノードが、作成するブロックをチェーンに受け入れるようにするために、ノードは、「プルーフオブワーク(proof of work)」問題として知られていることを解決しなくてはならない。ランダムな数字(ノンス)が、提案され、ブロックのデータに付加され、次いで、ノンスを含むブロック全体が、SHA-256などの知られている方法に従ってハッシュされる。結果的に生じたハッシュが所定の数ゼロから開始する場合、新規ブロックが見つかったことが決定される。そうではない場合、ノードは、前の値の代わりに新規ノンス値を使い、反復処理でハッシュを再計算する。一旦、プルーフオブワーク問題が解決されると、解決したノードは、ブロックをネットワークの他のノードにブロードキャストする。ブロックは、ノードの大半がブロックにおける取引を認証することができたときのみ、ブロックチェーンに受け入れられ、付加されることになる。認証は、新規ブロックに至るまでの取引台帳が自由に利用可能でありトランスペアレントであるので、ノードのいずれによっても行われ得る。ノードはいずれも、現在の取引までのすべての取引が妥当であるかどうかを見るために、チェーンをチェックすることができる。たとえば、TMS治療についての目下の関連に戻ると、ピアツーピアネットワークのノードは、磁気アセンブリ装置には使用履歴からこれ以上残っている使用はないかどうか、および装置の追加の使用を失効させることが可能になるかどうかを台帳から容易に決定することができる。その上、ブロックにハッシュ値がリンク付けされているので、チェーンは改変することができない。チェーンにおけるブロックを改変するには、改変されたブロックだけでなく、チェーンにおける後続のブロックすべてについても、プルーフオブワーク問題を解決することが必要になり、それは事実上、不可能である。
【0076】
ブロックチェーン相互作用アプリケーション244およびブロックチェーンプラットフォームはまた、スマートコントラクトを使用して、ライセンス済装置の使用を監視しその使用に対する制約を実施するのに使用される論理部を実装することができる。本明細書におけるスマートコントラクトは、ブロックチェーンまたは分散型台帳と相互作用して、契約上の義務を決定し、検証し、または実施するソフトウェア論理部として定義され得る。概して、ライセンス済みの制限付き使用を含む磁気アセンブリ装置の販売など、ベンダーとエンドユーザとの間に構成されたライセンスは、ブロックチェーン技術を使用して実装および監視され得る。ブロックチェーン技術を使用すると、上述したように正確には非中央集権の形での分散型ネットワーク内のライセンス取引とスマートコントラクトとの組合せにより、ライセンス済製品の利用量を管理して、つまり、選定された治療プロトコルが特定された磁気アセンブリ装置を使用するエンドユーザAにとって適切であるかどうかに合わせることが可能になる。
【0077】
図7は、スマートコントラクトを使用して、本発明の実施形態による複数の磁気アセンブリ装置を含むTMS機器を管理するための方法のフローチャートである。この方法は、ステップ700において開始する。ステップ702においては、制御装置230は、インターフェースを介して、TMSシステムにおける1以上のライセンス済磁気アセンブリ装置を使用して治療を行おうとするエンドユーザからコマンドを受信する。ステップ704においては、制御装置によって実行されるブロックチェーン相互作用アプリケーション244は、製品IDおよび提案された治療プロトコルを含む利用要求を送信する。ステップ706においては、利用取引に対応するスマートコントラクトが、ブロックチェーンプラットフォームによって実行される。ステップ708においては、スマートコントラクトは、分散型台帳に、個別の装置についての利用取引、および治療を追加する。台帳への取引の追加に続いて、ステップ710においては、スマートコントラクトは、台帳を解析して、製品IDおよび治療プロトコルに対応する利用制限に達したかどうかを決定する。制限に達するのは、製品をさらに利用すると、現在効力のあるライセンスによって規定されている許容利用回数を超えることになるときである。制限に達した場合には、関連のスマートコントラクトは、実施アクションを行うことができる。実施アクションは、管理人およびエンドユーザを含む関係パーティーに、たとえば、制限に達したという通知を送信することを含む。スマートコントラクトポリシは、制限に達した後、さらに1回使用を許容するように設定することができる。図7に示されている方法の実施形態においては、ステップ710において、制限に達したことが決定された場合、エンドユーザは、ステップ712において、要求されたライセンス済みの使用について装置製品の使用がさらに1回許可されていることが警告される。ステップ714においては、スマートコントラクトは、別の治療に利用可能なさらなる使用がこの製品にあるかどうかを決定する。ない場合、ステップ716において、装置は利用可能なライセンス済みの使用がこれ以上ないこと、および最新の使用後、装置製品は、ライセンス条件ごとに管理人に返却されなくてはならないという追加の通知が発行される。この通知は、エンドユーザ、管理人、およびピアツーピアネットワークの会員のうちの一人または複数人に送信され得る。また台帳は、通知が送信されたことを反映するように更新され得る。
【0078】
通知アクションに加えて、スマートコントラクトは、ブロックチェーン相互作用アプリケーション244に、(個別のライセンス済みの使用の場合か、または利用可能なさらなる使用が概して全くない場合のいずれかで)磁気アセンブリ装置のさらなる使用をいずれも中断させるコマンドを送信することによって、ライセンス条件をさらに実施することができる。たとえば、スマートコントラクトは、台帳をスキャンし、「最新の使用」通知が以前に送信されていること、およびこれ以上の使用は許容されないことを決定することができる。ブロックチェーン相互作用アプリケーション244は、エンドユーザサイトにおいて制御システムに組み込まれて、スマート制御を実装し、例として、TMSアプリケーションコード242を動作しないように無効にすることによって、(図2の)コントローラを介して磁気アセンブリ装置のライセンス済みではない使用を防止することができる。方法は、ステップ718において終了する。
【0079】
任意で、図7の方法は、エンドユーザAに対する通知または自動補充注文により、ステップ708における利用取引に応答することができる。これにより、エンドユーザAが、継続的な使用について定格設定されるのに十分な量のMADを有することがより良く確実になり得る。好ましくは、エンドユーザによる各再注文の後に、消耗したMADをベンダー410に返却して、試験、再構成、および検査が続き、それにより、MADは、選択的にリサイクルされて、修理されたMADの長期受入れ可能なフィールド条件内にある動作パラメータを有する治療に使用することが可能になる。
【0080】
本明細書は、多くの特定の実施形態の詳細を含んでいるが、これらは、任意の実施形態、または特許請求の範囲に記載され得ることの範囲に対する限定と解釈すべきではなく、むしろ、個別の実施形態に固有とすることができる特徴の説明と解釈すべきである。別個の実施形態との関連で本明細書に説明されているいくつかの特徴はまた、単一の実施形態において組合せで実装することもできる。反対に、単一の実施形態との関連で説明されている様々な特徴もまた、多数の実施形態において、別個でまたは任意の適切な副組合せで実装することもできる。その上、特徴は、いくつかの組合せで機能すると上記に説明される場合や、最初はそのようなものとして特許請求される場合であっても、場合によっては、特許請求される組合せから1以上の特徴が、組合せから削除される場合もあり、特許請求される組合せは、副組合せまたは副組合せの変形形態に向けられる場合もある。
【0081】
同様に、動作は、個別の順序で図面に示されているが、このことは、そのような動作が示されている個別の順序でまたは順次順序で行われることや、または所望の結果を達成するためにすべての例示の動作を行うことが必要であると理解すべきではない。いくつかの状況においては、マルチタスクおよび並列処理が有利であることがある。その上、上述の実施形態における様々なシステム構成要素の分離は、すべての実施形態においてそのような分離が必要であると理解すべきではなく、また記載のプログラムコンポーネントおよびシステムが概して、単一のソフトウェア製品に一緒に組み込まれても、または多数のソフトウェア製品にパッケージ化されてもよいことを理解すべきである。
【0082】
本明細書に使用される専門用語は、個別の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書に使用されるとき、本明細書に特段の明示がない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数形も含むことを意図する。「備える(comprisesおよび/またはcomprising)」という用語が、本明細書に使用されるとき、列挙した特徴、整数、ステップ、動作、素子、および/または構成要素の存在を指定するが、1以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、素子、構成要素、および/もしくはそれらのグループの存在または追加を排除しないことがさらに理解されよう。
【0083】
クレーム要素を修正するために特許請求の範囲における「第1の(first)」、「第2の(second)」、「第3の(third)」などの序数用語の使用は、それ自体、いずれの優先度、選好度、もしくは1つのクレーム要素が別のクレーム要素を上回る順序、または方法の行為が行われる時間的順序を暗示するものではなく、ある名称を有する1つのクレーム要素を同じ名称を有する別の要素と区別するためのラベルとして使用されて(ただし、序数用語を使用する場合)、クレーム要素を区別するにすぎないことに留意されたい。また、本明細書に使用される言い回しおよび専門用語は、説明を目的としており、限定と見なすべきではない。本明細書における「含む(including)」、「備える(comprising)」、または「有する(having)」、「含んでいる(containing)」、「含む(involving)」、およびそれらの変形形態の使用は、その後にリスト化された項目、およびそれらの均等物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。
【0084】
本明細書に記載の主題の個別の実施形態について説明してきた。他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内にある。たとえば、特許請求の範囲に列挙されたアクションは、異なる順序で行うことができ、それでも望ましい結果を達成することができる。1つの例として、添付の図に示した方法は、望ましい結果を達成するために示されている個別の順序または順次順序が必ずしも必要であるわけではない。いくつかの実施形態においては、マルチタスクおよび並列処理が有利なことがある。
【0085】
様々なシステムを表す、知られている登録商標に対する出版物および参考文献は、本出願全体を通して引用され、その開示は、参照によって本明細書に組み込まれている。任意の上記の出版物または文献の列挙は、前述のいずれもが従来技術に関係するものであることを認めるものとして意図するものでも、またはこれらの出版物または文献の内容もしくは日付に関して何らかの認めるものを構成しているわけでない。本明細書に引用されているすべての参考文献は、個々のそれぞれの出版物および参考文献が、参照によって組み込まれていることを具体的に個々に示されている場合と同じ程度まで参照によって組み込まれている。
【0086】
本発明について、好ましいその実施形態を参照して具体的に図示し説明してきたが、形式および細部の様々な変更が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくその中で行うことができることを当業者なら理解するであろう。したがって、本発明は、上記に見られる議論によって定義されるものではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲、それらの時点で列挙されるそれぞれの特徴、およびそのような特徴の均等物によって定義される。
【符号の説明】
【0087】
5 経頭蓋磁気刺激(TMS)機器、10 ヘッドマウント,キャップ、15 磁気アセンブリ、25 リード、200 経頭蓋磁気システム、205 ヘッドマウント,キャップ、212,214,216,218 磁気アセンブリ装置、211,213,215,217 付着点、230 制御装置、232 コントローラインターフェース,コントローラ、234 プロセッサ、236 持続性メモリ装置、238 インターフェース、240 ライブラリ、242 経頭蓋磁気刺激アプリケーションプログラムコード、244 ブロックチェーン相互作用アプリケーションコード、302 アクチュエータ装置、304 磁石、306 センサ、332 開口、335,337 電気接点、341,343 電気リード、350 回路構成要素、400 システム、410 Vendorシステム、420 ピアツーピアネットワーク、600,610,620 ブロック、602 取引データブロック、604,614,624 タイムスタンプ、606,616,626 ノンス値、608 現在のハッシュ値、611,618,628 現在のハッシュ、612,622 取引データ、621 前のハッシュ、A,B,C,D,E,F 場所、A エンドユーザ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一意の識別子を有する1以上の磁気アセンブリ装置を担持するようになされたヘッドマウントを使用して患者に対して経頭蓋磁気刺激を行うことを認可する方法であって、
1以上の前記磁気アセンブリ装置を制御装置に接続するステップであって、前記磁気アセンブリ装置それぞれが前記ヘッドマウント上の場所に装着される、ステップと、
前記制御装置において、前記接続された磁気アセンブリ装置の前記識別子を受信するステップと、
前記ヘッドマウントに装着した前記磁気装置の前記場所を検証するステップと、
受信した前記識別子およびデータベース内の治療構成設定情報に基づいて、装着した前記磁気アセンブリ装置が治療について認可を受けているかどうかを決定するステップと、
前記認可決定に基づいて、接続した1以上の前記磁気アセンブリ装置を励起するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記データベースが、前記制御装置においてローカルでホストされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記データベースが、クラウドプラットフォームにおいてホストされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記決定ステップが、前記検証された場所を前記治療構成設定データと比較するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記制御装置において、前記磁気アセンブリ装置それぞれについて、ライセンス済治療データを受信するステップをさらに含み、
前記決定ステップが、受信した前記ライセンス済治療データを前記治療構成設定情報と比較するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記制御装置において、前記磁気アセンブリ装置それぞれの認可済の使用についての使用制限数を受信するステップと、
1以上の前記磁気アセンブリ装置の使用をデータストア内に記録するステップと、
1以上の前記磁気アセンブリ装置の後続の使用に際して、1以上の前記磁気アセンブリ装置のうちのいずれかについて使用制限に達したかどうかを前記データストアに問い合わせることによって決定するステップと
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記治療構成設定情報が、以下のもの、すなわち、気分、注意力および集中力、運動機能および認知機能、社会的臆病などの不安、抑鬱、記憶力および学習力、禁煙、アルコール依存症、および他の依存症、ならびにPTSDのうちの1つの向上または他の変調について治療を行うために、接続した1以上の前記磁気アセンブリ装置を励起するためのデータを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記治療構成設定情報が、以下のもの、すなわち、チック障害、トゥレット症候群、パーキンソン病、ジストニア、振戦、運動失調、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、てんかん、偏頭痛、頭痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、ニューロパシー、線維筋痛症、慢性疲労症候群、耳鳴り、脳卒中、大鬱病性障害、治療抵抗性鬱病、不安障害、強迫性障害、拒食症、過食症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、統合失調症、双極性障害、精神障害に二次的に生じる幻視、幻聴、および他の幻覚、ADHD、薬物の乱用および依存症、学習障害、失読症、書字困難、言語障害、記憶障害、認知症、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、自閉症スペクトラム障害、意識障害、ならびに尿失禁のうちの1つについて治療を行うために、接続した1以上の前記磁気アセンブリ装置を励起するためのデータを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記治療構成設定情報が、医療用刺激治療を行うために、1以上の前記磁気アセンブリ装置を励起するためのデータを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
複数の取外可能に取付可能な磁気アセンブリ装置を支持するように構成されたヘッドマウントであって、
人間の頭部に載置されるようにサイズ設定された内部と、
複数の付着点を備えた外部と、
磁気アセンブリ装置と接合されると、一意の回路応答を提供する、各それぞれの付着点に関連付けられた回路構成要素と
を備えるヘッドマウント。
【請求項11】
前記回路応答が、前記回路構成要素によってのみ指図される、請求項10に記載のヘッドマウント。
【請求項12】
前記回路応答が、前記回路構成要素と、前記付着点に接合された前記磁気アセンブリ装置に貼り付けられている第2の回路構成要素との両方の機能である、請求項10に記載のヘッドマウント。
【請求項13】
前記回路応答が、一意の抵抗、インピーダンス、静電容量、およびインダクタンスのうちの1つである、請求項10に記載のヘッドマウント。
【請求項14】
前記付着点に結合された電気リードをさらに含む、請求項10に記載のヘッドマウント。
【請求項15】
コントローラおよび複数の磁気アセンブリ装置を有する経頭蓋磁気刺激(TMS)機器を管理して治療を行うためのコンピュータ実装方法であって、前記磁気アセンブリ装置がそれぞれ、一意の製品IDを有し、治療ごとの許可された使用制限数について規定されており、前記方法が、
前記複数の磁気アセンブリ装置のそれぞれについて、ピアツーピアネットワークに維持されているブロックチェーンの分散型台帳に、前記製品IDおよび治療ごとの前記許可された使用回数を書き込むステップと、
前記コントローラから、個別の治療について前記複数の磁気アセンブリ装置のうちの特定された磁気アセンブリ装置を使用する要求を受信するステップと、
前記個別の治療および前記磁気アセンブリ装置の前記製品IDに基づいて、ブロックチェーンプラットフォームにおいて実装されるスマートコントラクトを使用して、前記装置が前記個別の治療についてライセンス済みであるかどうか、または前記個別の治療について残されている使用がこれ以上ないかどうかを決定するステップと、
前記装置が前記個別の治療についてラインセンス済みではないこと、または前記個別の治療について残されている使用がこれ以上ないことのいずれかが決定された場合、前記コントローラが前記特定された磁気アセンブリ装置を励起するのを妨げることによって、さらなる使用を防止するようにスマートコントラクトを実施するステップと
を含むコンピュータ実装方法。
【請求項16】
前記スマートコントラクトを実施する前記ステップは、ユーザおよびベンダーのうちの少なくとも一方に対して、前記要求された個別の治療について前記磁気アセンブリ装置の許可された使用が1回だけ残されていることを示す通知を送信するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記スマートコントラクトを実施する前記ステップは、前記経頭蓋磁気刺激機器が前記磁気アセンブリ装置をアクティブ化するのを防止するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記装置が、前記個別の治療についてライセンス済みであること、および前記個別の治療についてさらなる使用を残していることが決定されたとき、前記分散型台帳に、新規使用取引を書き込むステップと、
新規使用取引が書き込まれた後、前記装置が残している前記使用回数を差し引くように前記分散型台帳を更新するステップと
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の磁気アセンブリ装置が、個別の治療それぞれについて処方されるプロトコルによって規定される形で、前記経頭蓋磁気刺激機器によって使用される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記プロトコルが、刺激波形のタイプ、刺激の大きさ、および刺激の持続時間、ならびに前記複数の磁気アセンブリ装置のうちの特定の磁気アセンブリ装置に対する処方された頭蓋位置を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記個別の治療が、以下のもの、すなわち、パーキンソン病、吃音、鬱病、筋強直性ジストロフィー、てんかん、失語症、失読症、強迫性障害、および統合失調症のうちの1つのためのものである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記TMS機器が、ブロックチェーン相互作用アプリケーションおよびTMSインターフェースを走らせるためのコードを実行するように動作するプロセッサを有する制御装置によって制御される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記ブロックチェーン相互作用アプリケーションが、前記TMS機器の動作を制御するためのコマンドを生成するように動作する、請求項22に記載の方法。
【国際調査報告】