(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(54)【発明の名称】低石灰化病変の隠蔽
(51)【国際特許分類】
A61K 8/24 20060101AFI20220427BHJP
A61K 8/21 20060101ALI20220427BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220427BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20220427BHJP
【FI】
A61K8/24 ZNA
A61K8/21
A61Q11/00
C07K14/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555285
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 AU2020050239
(87)【国際公開番号】W WO2020181335
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504348389
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー オブ メルボルン
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MELBOURNE
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ エリック チャールズ
【テーマコード(参考)】
4C083
4H045
【Fターム(参考)】
4C083AB281
4C083AB471
4C083CC41
4C083EE38
4H045AA30
4H045BA63
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA34
4H045FA16
4H045FA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、特に歯のエナメル質中の、低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させるための組成物及び使用に関する。一態様において、本発明は、低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させる方法であって、(i)低石灰化した歯の表面又は表面下に、少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物を接触させるステップと;(ii)(i)に続いて、低石灰化した歯の表面又は表面下に塗布した液体組成物のpHを約9以上に上昇させ、それによって低石灰化した歯の表面又は表面下の中及び/又は上にゲルを形成し、それによって低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させるステップと、を含む方法を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させる方法であって、
前記低石灰化した歯の表面又は表面下に、少なくとも40%w/wのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH5以上であるがpH9以下であるpHの液体組成物を接触させ、
それによって低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させるステップ、
を含む方法。
【請求項2】
象牙質知覚過敏症の処置又は予防を、それを必要とする被験者に対して行う方法であって:
露出した象牙細管に、少なくとも40%w/wのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH5以上であるがpH9以下であるpHの液体組成物を接触させ、
それによって象牙質知覚過敏症の処置又は予防を、それを必要とする前記被験者に対して行うステップ、
を含む方法。
【請求項3】
前記液体組成物のpHが6以上であるが8以下であり、好ましくは、7以上であるが8以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体組成物が遊離のフッ化物イオンをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記遊離のフッ化物イオンが前記液体組成物中に約200ppm~10,000ppmの範囲内の濃度で存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記遊離のフッ化物イオンが前記液体組成物中に約2,600ppm~約8,500ppmの範囲内の濃度で存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記遊離のフッ化物イオンが前記液体組成物中に約7,800ppmの濃度で存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、前記歯の表面若しくは表面下、又は病変を加熱するステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記歯の表面又は表面下が37℃を超える温度に加熱される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記歯の表面又は表面下が40℃以上の温度に加熱される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記歯の表面又は表面下が45℃以上の温度に加熱される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記歯の表面又は表面下が50℃以上の温度に加熱される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記歯の表面又は表面下が55℃以上の温度に加熱される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記歯の表面又は表面下が60℃以上の温度に加熱される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記歯の表面又は表面下が65℃以上の温度に加熱される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記液体組成物が45%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFPを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記液体組成物が50%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFPを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記液体組成物が55%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFPを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記液体組成物が60%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFPを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記液体組成物が約65%w/vの安定化ACP及び/又はACFPを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記液体組成物が約70%w/vの安定化ACP及び/又はACFPを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記液体組成物が約75%w/vの安定化ACP及び/又はACFPを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ホスホペプチドがカゼインホスホペプチドである、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させる方法であって:
(i)前記低石灰化した歯の表面又は表面下に、少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物を接触させるステップと;
(ii)(i)に続いて、前記低石灰化した歯の表面又は表面下に塗布した前記液体組成物のpHを約9以上に上昇させ、それによって前記低石灰化した歯の表面又は表面下の中及び/又は上にゲルを形成し、
それによって、低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させるステップと、
を含む方法。
【請求項25】
歯の表面又は表面下の病変の中及び/又は上にゲルを形成する方法であって:
(i)前記歯の表面又は表面下の病変に、少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物を接触させるステップと;
(ii)(i)に続いて、前記歯の表面又は表面下の病変に塗布した前記液体組成物のpHを約9以上に上昇させ、それによって前記歯の表面又は表面下の病変の中及び/又は上にゲルを形成し、
それによって前記歯の表面又は表面下の病変の中及び/又は上にゲルを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項26】
象牙質知覚過敏症の処置又は予防を、それを必要とする被験者に対して行う方法であって:
(i)露出した象牙細管に、少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物を接触させるステップと;
(ii)(i)に続いて、低石灰化した歯の表面又は表面下に塗布した前記液体組成物のpHを約9以上に上昇させ、それによって前記露出した象牙細管の中及び/又は上にゲルを形成し、
それによって象牙質知覚過敏症の処置又は予防を、それを必要とする前記被験者に対して行うステップと、
を含む方法。
【請求項27】
歯の表面上に保護層を形成する方法であって:
(i)前記歯の表面に、少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物を接触させるステップと;
(ii)(i)に続いて、前記歯の表面に塗布した前記液体組成物のpHを約9以上に上昇させ、
それによって前記歯の表面上に保護層を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項28】
前記歯の表面又は表面下の病変に塗布した前記液体組成物のpHを約10以上に上昇させる、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記歯の表面又は表面下の病変に塗布した前記液体組成物のpHを上昇させるステップが、前記歯の表面又は表面下に塗布した前記液体組成物に、アルカリpHのさらなる組成物を接触させることによって行われる、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記歯の表面が歯のエナメル質である、請求項24~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記歯の表面が、エナメル質中の病変であり、齲蝕、歯の酸蝕症、又はフッ素症によって生じる、請求項24~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記病変が白斑病変である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記歯の表面又は表面下の病変に塗布した前記液体組成物のpHを上昇させるステップが、前記歯の表面又は表面下に塗布した前記液体組成物に、アルカリpHのさらなる組成物を接触させることによって行われる、請求項24~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させる方法であって:
(i)(a)少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物と、(b)アルカリpHのさらなる組成物とを混合し、それによって約9以上のpHを有する混合組成物を形成するステップと;
(ii)前記低石灰化した歯の表面又は表面下に前記混合組成物を接触させ、それによって前記低石灰化した歯の表面又は表面下の中及び/又は上にゲルを形成し、
それによって低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させるステップと、
を含む方法。
【請求項35】
象牙質知覚過敏症の処置又は予防を、それを必要とする被験者に対して行う方法であって:
(i)(a)少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物と、(b)アルカリpHのさらなる組成物とを混合し、それによって約9以上のpHを有する混合組成物を形成するステップと;
(ii)露出した象牙細管に前記混合組成物を接触させ、それによって前記露出した象牙細管の中及び/又は上にゲルを形成し、
それによって象牙質知覚過敏症の処置又は予防を、それを必要とする前記被験者に対して行うステップと、
を含む方法。
【請求項36】
歯の表面上に保護層を形成する方法であって:
(i)(a)少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物と、(b)アルカリpHのさらなる組成物とを混合し、それによって約9以上のpHを有する混合組成物を形成するステップと;
(ii)歯の表面に前記混合組成物を接触させ、
それによって前記歯の表面上に保護層を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項37】
前記さらなる組成物の前記アルカリpHが約8のpHである、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記さらなる組成物の前記アルカリpHが約9のpHである、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記さらなる組成物の前記アルカリpHが約10のpHである、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記さらなる組成物の前記アルカリpHが約11のpHである、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記さらなる組成物の前記アルカリpHが約12のpHである、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記さらなる組成物の前記アルカリpHが約13のpHである、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記さらなる組成物の前記アルカリpHが約14のpHである、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記液体組成物が遊離のフッ化物イオンをさらに含む、請求項24~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記遊離のフッ化物イオンが前記液体組成物中に約200ppm~約10,000ppmの範囲内の濃度で存在する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記遊離のフッ化物イオンが前記液体組成物中に約2,600ppm~約8,500ppmの範囲内の濃度で存在する、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記遊離のフッ化物イオンが前記液体組成物中に約8,200ppmの濃度で存在する、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
ステップ(i)が、前記歯の表面若しくは表面下、又は病変を加熱するステップをさらに含む、請求項24~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
ステップ(i)の後に、前記歯の表面若しくは表面下、又は病変を加熱するステップが行われる、請求項24~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
ステップ(ii)が、前記歯の表面若しくは表面下、又は病変を加熱するステップをさらに含む、請求項24~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
ステップ(ii)の後に、前記歯の表面若しくは表面下、又は病変を加熱するステップが行われる、請求項24~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記歯の表面若しくは表面下、又は病変が37℃を超える温度に加熱される。請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記歯の表面若しくは表面下、又は病変が40℃以上の温度に加熱される、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記歯の表面若しくは表面下、又は病変が45℃以上の温度に加熱される、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記歯の表面若しくは表面下、又は病変が50℃以上の温度に加熱される。請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記歯の表面若しくは表面下、又は病変が55℃以上の温度に加熱される、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記歯の表面若しくは表面下、又は病変が60℃以上の温度に加熱される、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記歯の表面若しくは表面下、又は病変が65℃以上の温度に加熱される、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記歯の表面若しくは表面下、又は病変が65℃未満の温度に加熱される、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
40%w/vを超えるホスホペプチド(PP)安定化ACP及び/又はACFPを含む前記液体組成物が、45%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPを含む、請求項24~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
40%w/vを超えるホスホペプチド(PP)安定化ACP及び/又はACFPを含む前記液体組成物が、50%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPを含む、請求項24~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
40%w/vを超えるホスホペプチド(PP)安定化ACP及び/又はACFPを含む前記液体組成物が、55%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPを含む、請求項24~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
40%w/vを超えるホスホペプチド(PP)安定化ACP及び/又はACFPを含む前記液体組成物が、60%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPを含む、請求項24~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
40%w/vを超えるホスホペプチド(PP)安定化ACP及び/又はACFPを含む前記液体組成物が、約65%w/vの安定化ACP及び/又はACFPを含む、請求項24~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
40%w/vを超えるホスホペプチド(PP)安定化ACP及び/又はACFPを含む前記液体組成物が、約70%w/vの安定化ACP及び/又はACFPを含む、請求項24~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
40%w/vを超えるホスホペプチド(PP)安定化ACP及び/又はACFPを含む前記液体組成物が、約75%w/vの安定化ACP及び/又はACFPを含む、請求項24~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変に、(i)における前記液体組成物を最長20分間接触させた後、前記低石灰化した歯の表面又は表面下に塗布した前記液体組成物のpHを約9以上に上昇させる前記ステップを行う、請求項24~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変に、(i)における前記液体組成物を少なくとも約数秒から約5分間接触させる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変に、(i)における前記液体組成物を少なくとも約5分~約20分接触させる、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記方法が、(i)における前記液体組成物の接触の前に、前記低石灰化した表面、表面下、又は病変の酸エッチングを行うステップをさらに含む、請求項24~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記ホスホペプチドがカゼインホスホペプチドである、請求項24~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記液体、さらなる組成物、及び/又は混合組成物が、歯科医療の専門家によって前記歯の表面、表面下、又は病変に塗布される、請求項1~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記液体、さらなる組成物、及び/又は混合組成物が、マイクロブラシを用いて前記歯の表面、表面下、又は病変に塗布される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記方法が、白斑病変、フッ素症病変、齲蝕病変、又は歯の酸蝕症によって生じる病変を有する被験者を特定するステップをさらに含む。請求項1~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させる美容方法であって:
(i)前記低石灰化した歯の表面又は表面下に、少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの含む液体組成物を接触させるステップと;
(ii)(i)に続いて、前記低石灰化した歯の表面又は表面下に塗布した前記液体組成物のpHを約9以上に上昇させ、それによって前記低石灰化した歯の表面又は表面下の中及び/又は上にゲルを形成し、
それによって、低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させるステップと、
を含む、美容方法。
【請求項76】
低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させる美容方法であって、
前記低石灰化した歯の表面又は表面下に、少なくとも40%w/wのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以上であるがpH8以下のpHの液体組成物を接触させ、
それによって、低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させるステップ、
を含む、美容方法。
【請求項77】
低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させるためのキットであって:(a)少なくとも40重量%のホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物と、(b)アルカリpHのさらなる組成物とを含むか又はそれからなる、キット。
【請求項78】
請求項1~76のいずれか一項に記載の方法に使用するための、書面による説明書をさらに含む、請求項77に記載のキット。
【請求項79】
低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させるためのキットであって:
(a)ホスホペプチド安定化ACP及び/又はACFPの粉末を含む第1の組成物と;
(b)フッ化物の溶液を含むpH6以下のpHの第2の組成物と;
(c)アルカリpHの第3の組成物と、
を含むか又はそれからなる、キット。
【請求項80】
前記第3の組成物の前記アルカリpHが、約9、10、11、12、13、又は14のpHである、請求項77~79のいずれか一項に記載のキット。
【請求項81】
前記第1の組成物が、前記第2の組成物と混合した場合に、少なくとも40%w/vのホスホペプチド安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物が形成される量のホスホペプチド安定化ACP及び/又はACFPを含む、請求項77又は78に記載のキット。
【請求項82】
低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させるためのキットであって:
(a)5gのCPP-ACP及び/又はCPP-ACFPと、
(b)5mlの、1.146MのHCl中の0.73MのNaFと、
(c)1.5MのNaOHと、
を含むか又はそれからなる、キット。
【請求項83】
2つのマイクロブラシをさらに含む、請求項82に記載のキット。
【請求項84】
少なくとも40%w/vのPP安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物を調製するための方法又はプロセスであって:
溶媒と、PP安定化ACP及び/又はACFPを含むか又はそれからなる粉末とを混合するステップと、
pHを7未満に維持するステップと、
を含むか又はそれからなる、方法又はプロセス。
【請求項85】
少なくとも40%w/vのPP安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物を調製するための方法又はプロセスであって:
溶媒を、PP安定化ACP及び/又はACFPを含むか又はそれからなる粉末に混合するステップと、
pHを7未満に低下させ、好ましくは、前記pHを6以下、好ましくは5.5以下に低下させるステップと、
を含むか又はそれからなる、方法又はプロセス。
【請求項86】
前記pHが6以下に維持され、好ましくは前記pHが5.5以下に維持される、請求項84又は85に記載の方法又はプロセス。
【請求項87】
PP安定化ACP及び/又はACFPを含むか又はそれからなる粉末を調製するために:
ホスホペプチド、カルシウムイオン、ホスフェートイオン、水酸化物イオン、及び任意選択によりフッ化物イオンを含む1つ以上の溶液を、約7.0以上、好ましくは約9のpHに維持しながら混合して、安定化ACP及び/又はACFPを含む溶液を形成するステップと、
PP安定化ACP及び/又はACFPを含む前記溶液を乾燥させ、
それによってPP安定化ACP及び/又はACFPを含むか又はそれからなる粉末を形成するステップと、
をさらに含む、請求項84~86のいずれか一項に記載の方法又はプロセス。
【請求項88】
前記乾燥が噴霧乾燥又は凍結乾燥である、請求項87に記載の方法又はプロセス。
【請求項89】
乾燥の前に、PP安定化ACP及び/又はACFPを含む前記溶液を濾過して保持液を形成するステップをさらに含み、続いて前記保持液を乾燥させて、PP安定化ACP及び/又はACFPを含むか又はそれからなる粉末を形成する、請求項87又は88に記載の方法又はプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、オーストラリア国仮出願第2019900833号明細書及びオーストラリア国仮出願第2019903860号明細書(それぞれの内容はその全体が参照により本明細書に援用される)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、低石灰化した歯の表面又は表面下、特に歯のエナメル質の視認性を低下させるための組成物及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
歯の白斑は、齲蝕(白斑病変)、低石灰化(たとえばフッ素症病変及び他の発育障害)、又はその他の脱灰プロセス(例えば酸蝕症病変)によって生じうる歯のエナメル質/象牙質における多孔質病変である。典型的にはこれらは齲蝕形成の初期段階を示しており、この場合罹患した表面は、穏やかな探針では無傷に見える。不十分な石灰化及び関連の白斑病変の他の一般的な原因としては、外傷と、口腔乾燥症と、細菌のシェルターとなるか又は正常な再石灰化を妨害する場合がある固定式矯正装置の周囲で部分的にのみ再石灰化した停止性齲蝕とが挙げられる。
【0004】
エナメル質及び象牙質におけるこの多孔質組織は、半透明のエナメル質及び象牙質とは異なる屈折率を有し、したがって多孔質病変は、半透明の背景に対して乳白色の病変として現れる。これらの病変は美容上の問題となるだけでなく、齲蝕/酸蝕症の悪化及び知覚過敏の危険性も増大させる。
【0005】
これらの病変の窩洞形成の前の現行の処置は、リン酸カルシウムを含む又は含まないフッ化物を用いた再石灰化を伴うが、再石灰化は遅いプロセスであり、病変の外観を変化させるために数か月を要し、この外観は完全にはなくならないことが多い。別の処置は、メタクリレート系樹脂の浸潤を伴う侵襲性又は最善で微小侵襲性の修復を含む。これらの修復方法は、費用が高く、時間がかかり、白斑の自然修復(カルシウム及びホスフェートを用いた再石灰化)が行われないために、修復材料の変色又は不十分な封止による修復下の齲蝕の問題が後に発生しうる。
【0006】
多孔質の白斑の修復及び知覚過敏の軽減のための最良の処置は、フッ化物イオンを用いて又は用いずにCPP-ACP(Recaldent(商標)として市販される)で病変を処置して、ハイドロキシアパタイト又はフルオロハイドロキシアパタイトによる再石灰化を行うことである。しかし、この技術を用いた現行の処置方法は、病変の外観の改善及び知覚過敏の軽減を実現するために、最善でも数週間の処置が依然として必要である。これによって、低い適応性及び不十分な再石灰化に起因して、不満足な患者転帰を生じうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させる、及び/又は低石灰化した歯の表面又は表面下にバリアを形成する、新規で改善された方法の提供が必要とされている。
【0008】
本明細書におけるあらゆる従来技術に対する言及は、この従来技術が、オーストラリア又はあらゆる他の管轄区における周知の一般知識の一部を構成するものであり、この従来技術が当業者によって関連するとして確認され、理解され、見なされるものと予想されることが妥当となりうるとの、承認でもなんらかの形態の示唆でもなく、そのように解釈すべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本発明は、低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させる方法であって、
低石灰化した歯の表面又は表面下に、少なくとも40%w/wのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH5以上であるがpH9以下であるpHの液体組成物を接触させ、
それによって低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させるステップ、
を含む方法を提供する。
【0010】
好ましくは、液体組成物のpHは、pH6以上であるがpH8以下であり、たとえば7以上であるがpH8以下である。
【0011】
さらなる一態様において、本発明は、歯の表面上に保護層を形成する方法であって:
歯の表面に、少なくとも40%w/wのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH5以上であるがpH9以下であるpHの液体組成物を接触させ、
それによって歯の表面上に保護層を形成するステップ、
を含む方法を提供する。
【0012】
好ましくは、液体組成物のpHは、pH6以上であるがpH8以下であり、たとえば7以上であるがpH8以下である。
【0013】
さらなる一態様において、本発明は象牙質知覚過敏症の処置又は予防を、それを必要とする被験者に対して行う方法であって:
歯の表面に、少なくとも40%w/wのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH5以上であるがpH9以下であるpHの液体組成物を接触させて、露出した象牙細管に接触させ、
それによって象牙質知覚過敏症の処置又は予防を、それを必要とする被験者に対して行うステップ、
を含む方法を提供する。
【0014】
好ましくは、液体組成物のpHは、pH6以上であるがpH8以下であり、たとえば7以上であるがpH8以下である。
【0015】
好ましくは、液体組成物が歯の表面又は表面下に接触した後で、液体組成物に対して熱源が使用される。
【0016】
一態様において、本発明は、低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させる方法であって:
(i)低石灰化した歯の表面又は表面下に、少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物を接触させるステップと;
(ii)(i)に続いて、低石灰化した歯の表面又は表面下に塗布した液体組成物のpHを約9以上に上昇させ、それによって低石灰化した歯の表面又は表面下の中及び/又は上にゲルを形成し、
それによって、低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させるステップと、
を含む方法を提供する。
【0017】
さらなる一態様において、本発明は、歯の表面又は表面下の病変の中及び/又は上にゲルを形成する方法であって:
(i)歯の表面又は表面下の病変に、少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物を接触させるステップと;
(ii)(i)に続いて、歯の表面又は表面下の病変に塗布した液体組成物のpHを約9以上に上昇させ、
それによって歯の表面又は表面下の病変の中及び/又は上にゲルを形成するステップと、
を含む方法を提供する。
【0018】
さらなる一態様において、本発明は、低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させる方法であって:
(i)(a)少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物と、(b)アルカリpHのさらなる組成物とを混合し、それによって約9以上のpHを有する混合組成物を形成するステップと;
(ii)低石灰化した歯の表面又は表面下に上記混合組成物を接触させ、それによって低石灰化した歯の表面又は表面下の中及び/又は上にゲルを形成し、
それによって低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させるステップと、
を含む方法を提供する。
【0019】
さらなる一態様において、本発明は、象牙質知覚過敏症の処置又は予防を、それを必要とする被験者に対して行う方法であって:
(i)露出した象牙細管に、少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物を接触させるステップと;
(ii)(i)に続いて、低石灰化した歯の表面又は表面下に塗布した液体組成物のpHを約9以上に上昇させ、それによって露出した象牙細管の中及び/又は上にゲルを形成し、
それによって象牙質知覚過敏症の処置又は予防を、それを必要とする被験者に対して行うステップと、
を含む方法を提供する。
【0020】
さらなる一態様において、本発明は、象牙質知覚過敏症の処置又は予防を、それを必要とする被験者に対して行う方法であって:
(i)(a)少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物と、(b)アルカリpHのさらなる組成物とを混合し、それによって約9以上のpHを有する混合組成物を形成するステップと;
(ii)露出した象牙細管に上記混合組成物を接触させ、それによって露出した象牙細管の中及び/又は上にゲルを形成し、
それによって象牙質知覚過敏症の処置又は予防を、それを必要とする被験者に対して行うステップと、
を含む方法を提供する。
【0021】
さらなる一態様において、本発明は、歯の表面上に保護層を形成する方法であって:
(i)歯の表面に、少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物を接触させるステップと;
(ii)(i)に続いて、歯の表面に塗布した液体組成物のpHを約9以上に上昇させ、
それによって歯の表面上に保護層を形成するステップと、
を含む方法を提供する。
【0022】
さらなる一態様において、本発明は、歯の表面上に保護層を形成する方法であって:
(i)(a)少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物と、(b)アルカリpHのさらなる組成物とを混合し、それによって約9以上のpHを有する混合組成物を形成するステップと;
(ii)歯の表面に上記混合組成物を接触させ、
それによって歯の表面上に保護層を形成するステップと、
を含む方法を提供する。
【0023】
本発明のいずれかの態様において、歯の表面又は表面下の病変に塗布した液体組成物のpHを約9以上、好ましくは10以上に上昇させる。
【0024】
本発明のいずれかの態様において、歯の表面は好ましくは歯のエナメル質である。一実施形態では、歯の表面は、齲蝕、酸蝕症、又はフッ素症によって生じる病変などのエナメル質中の病変である。典型的には、病変は白斑病変である。
【0025】
本発明のいずれかの態様において、歯の表面は、象牙質、たとえば露出した象牙質である。一実施形態では、露出した象牙質は、たとえば退縮によって生じる歯根である。
【0026】
本発明のいずれかの態様において、混合組成物の形成から20分未満、15分未満、14分未満、13分未満、12分未満、11分未満、10分未満、9分未満、8分未満、7分未満、6分未満、5分未満、4分未満、3分未満、2分未満、又は1分未満に、歯の表面に混合組成物を接触させる。
【0027】
歯の表面又は表面下に塗布した液体組成物のpHの上昇が必要となる本発明のいずれかの態様において、これは、歯の表面又は表面下に塗布された液体組成物にアルカリpHのさらなる組成物を接触させることによって行うことができる。このさらなる組成物も液体形態であってよく、本明細書ではさらなる液体組成物と呼ばれる場合もある。このさらなる組成物のアルカリpHは、約9、10、11、12、13、又は14のpHであってよい。好ましくは、さらなる組成物は約9以上のアルカリpHを有する。
【0028】
本明細書に記載のいずれかの態様において、液体組成物は、フッ化物イオン、好ましくは遊離のフッ化物イオンをさらに含むことができる。フッ化物イオンは液体組成物中に約200ppm~50,000ppmの範囲内の濃度で存在することができる。好ましい一実施形態において、フッ化物イオンは約2,600ppm~約10,000ppmの範囲内の濃度で存在する。さらに好ましい一実施形態では、液体組成物中のフッ化物イオンは約8,200ppm、又は約6,500ppmの濃度で存在する。フッ化物イオンは液体組成物中に、本明細書、特に実施例に記載のいずれかppm以上の濃度で存在することができる。別の一実施形態では、フッ化物イオンは、40%w/vのCPP-ACPの場合約5,200ppm、45%w/vのCPP-ACPの場合約5,850ppm、50%w/vのCPP-ACPの場合約6,500ppm、63%w/vのCPP-ACPの場合約8,200ppm、又は75%のCPP-ACPの場合約9,900ppmの濃度で存在する。別の一実施形態では、フッ化物イオンは、40%w/wのCPP-ACPの場合約5,200ppm、又は60%w/wのCPP-ACPの場合約7,800ppmの濃度で存在する。フッ化物イオンは、あらゆる適切な供給源に由来するものであってよい。フッ化物イオン源としては、遊離のフッ化物イオン又はフッ化物塩を挙げることができる。フッ化物イオン源の例としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ、ケイフッ化ナトリウム、フッ化銀、フッ化ジアンミン銀、及びフッ化アミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは溶液(典型的には水溶液)、又は懸濁液中に供給することができる。
【0029】
本発明のいずれかの態様において、ステップ(i)及び(ii)、又は組成物が歯の表面若しくは表面下に塗布されるいずれかのステップは、歯の表面若しくは表面下、又は病変を加熱するステップを含むことができ、又はそのステップが続くことができる。一実施形態では、この方法は、低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変に、少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化ACP及び/又はACFPを含むpH6以下のpHの液体組成物を接触させるのと同時に、又はそれに続いて、低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変を加熱するステップを含むことができる。別の一実施形態では、この方法は、低石灰化した歯の表面又は表面下に塗布した液体組成物のpHを約9以上に上昇させるのと同時に、又はそれに続いて、低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変を加熱するステップを含むことができる。別の一実施形態では、この方法は、低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変に、少なくとも60%w/wのホスホペプチド(PP)安定化ACP及び/又はACFPを含みpH5以上であるがpH9以下であるpHの液体組成物を接触させるのと同時に、又はそれに続いて、低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変を加熱するステップを含むことができる。
【0030】
本発明のいずれかの態様において、その方法は、歯の表面若しくは表面下、又は病変を、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、又は65℃以上の温度に加熱するステップを含む。
【0031】
本発明のいずれかの態様において、その方法は、歯の表面若しくは表面下、又は病変を、37℃を超えるが65℃以下、40℃を超えるが65℃以下、45℃を超えるが65℃以下、50℃を超えるが65℃以下、55℃を超えるが65℃以下、60℃を超えるが65℃以下の温度に加熱するステップを含む。
【0032】
本発明のいずれかの態様において、液体組成物は、40%w/vを超えるホスホペプチド(PP)安定化ACP及び/又はACFPを含み、45%w/vを超え、50%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFP、55%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFP、60%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFP、約65%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFP、約70%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFP、又は約75%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPを含む。一実施形態では、液体組成物は63%w/vの安定化ACP及び/又はACFPを含む。
【0033】
本発明のいずれかの態様において、液体組成物は、40%w/wを超えるホスホペプチド(PP)安定化ACP及び/又はACFPを含み、45%w/wを超え、50%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFP、55%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFP、60%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFP、約65%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFP、約70%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFP、又は約75%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFPを含む。
【0034】
本発明のいずれかの態様において、液体組成物は、40%w/vを超えるホスホペプチド(PP)安定化ACP及び/又はACFPを含み、40%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFP、45%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFP、50%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFP、55%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFP、60%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFP、65%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFP、70%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFP、又は75%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFPを含む。
【0035】
本発明のいずれかの態様において、液体組成物は、40%w/wを超えるホスホペプチド(PP)安定化ACP及び/又はACFPを含み、40%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/w未満の安定化ACP及び/又はACFP、45%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/w未満の安定化ACP及び/又はACFP、50%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/w未満の安定化ACP及び/又はACFP、55%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/w未満の安定化ACP及び/又はACFP、60%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/w未満の安定化ACP及び/又はACFP、65%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/w未満の安定化ACP及び/又はACFP、70%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/w未満の安定化ACP及び/又はACFP、又は75%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/w未満の安定化ACP及び/又はACFPを含む。
【0036】
本発明のいずれかの態様において、低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変に、(i)における液体組成物を、液体組成物が歯の表面、表面下、又は病変に浸透可能となる時間接触させる。一実施形態では、低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変に、(i)における液体組成物を最長20分間接触させた後、低石灰化した歯の表面又は表面下に塗布した液体組成物のpHを約9以上に上昇させる。一実施形態では、低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変に、(i)における液体組成物を少なくとも約数秒~少なくとも約5分、好ましくは少なくとも約5分~約20分接触させる。
【0037】
本発明のいずれかの態様において、その方法は、たとえば(i)における液体組成物との接触の前に、低石灰化した表面、表面下、又は病変のエッチング、好ましくは酸エッチングを行うステップをさらに含む。酸エッチングは、当技術分野において周知のあらゆる方法によって行うことができる。典型的には、酸エッチングは、低石灰化した表面、表面下、又は病変に、約30%のリン酸又は約15%のHClを含む組成物を接触させることによって行うことができる。好ましくは、酸エッチング前に、軟部組織を保護するために、樹脂バリア、たとえばラバーダム又は液体ラバーダムが取り付けられる。
【0038】
いずれかの態様において、本明細書に記載の加熱及び/又は本明細書に記載のエッチングのさらなるステップによって、保護層の形成を促進することができる。
【0039】
本明細書で使用される安定化ACP及び/又はACFPは、ホスホペプチド安定化される。好ましくは、ホスホペプチドは(以下に規定されるように)カゼインホスホペプチドである。好ましくは、ACP又はACFPは、カゼインホスホペプチド安定化ACP又はACFP複合体の形態である。
【0040】
好ましい一実施形態において、ホスホペプチド安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)複合体は、強く結合したカルシウム及び緩く結合したカルシウムを有し、この複合体中の強く結合したカルシウムは、pH7.0において形成されるACP又はACFP複合体中の強く結合したカルシウムよりも少ない。典型的には、ACP又はACFPは主として塩基形態である。
【0041】
好ましい一実施形態において、安定化ACP又はACFP複合体のカルシウムイオン含有量は、1モルのPP当たり約30~100モルの範囲内のカルシウムである。より好ましくは、カルシウムイオン含有量は、1モルのPP当たり約30~約50モルの範囲内のカルシウムである。
【0042】
本明細書に記載の任意の態様又は実施形態において、安定化ACP及び/又はACFPは、追加のリン酸カルシウムを有する配合物中に存在することができる。典型的には、この配合物は、PP安定化ACP及び/又はACFP複合体とともに、少なくとも同重量のリン酸カルシウムを含む。
【0043】
好ましい一実施形態において、PP安定化ACP及び/又はACFPは、カゼインホスホペプチド安定化ACP及び/又はACFP複合体の形態にある。
【0044】
好ましくは、ACPの相は、主として塩基性相であり、ACPは主としてCa2+、PO4
3-、及びOH-の化学種を含む。ACPの塩基性相は一般式[Ca3(PO4)2]x[Ca2(PO4)(OH)]で表すことができ、式中、x≧1である。好ましくはx=1~5である。より好ましくは、x=1である。好ましくは上式の2つの成分は同じ比率で存在する。したがって、一実施形態において、ACPの塩基性相は式Ca3(PO4)2Ca2(PO4)(OH)で表される。
【0045】
好ましくは、ACFPの相は主として塩基性相であり、ACFPは主としてCa2+、PO4
3-、及びF-の化学種を含む。ACFPの塩基性相は一般式[Ca3(PO4)2]x[Ca2(PO4)F]yで表すことができ、式中、y=1の場合x≧1、又はx=1の場合y≧1である。好ましくは、y=1及びx=1~3である。より好ましくは、y=1及びx=1である。好ましくは、上式中の2つの成分は同じ比率で存在する。したがって、一実施形態において、ACFPの塩基性相は式Ca3(PO4)2Ca2(PO4)Fで表される。
【0046】
一実施形態において、ACP複合体は、ホスホペプチド、カルシウム、ホスフェート、及び水酸化物イオン、並びに水から本質的になる。
【0047】
一実施形態において、ACFP複合体は、ホスホペプチド、カルシウム、ホスフェート、フッ化物、及び水酸化物イオン、並びに水から本質的になる。
【0048】
本発明のさらなる一態様において、歯の病変の再石灰化方法であって:
(i)歯の病変に、少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物を接触させるステップと;
(ii)(i)に続いて、歯の病変に塗布した液体組成物のpHを約9以上に上昇させ、それによって歯の病変の中及び/又は上にゲルを形成し、
それによって歯の病変を再石灰化させるステップと、
を含む方法が提供される。
【0049】
本発明のさらなる一態様において、歯の病変の再石灰化方法であって:
低石灰化した歯の表面又は表面下に、少なくとも40%w/wのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH5以上であるがpH9以下であるpHの液体組成物を接触させ、
それによって歯の病変を再石灰化させるステップ、
を含む方法が提供される。
【0050】
好ましくは、液体組成物のpHは、pH6以上であるがpH8以下であり、たとえば7以上であるがpH8以下である。
【0051】
好ましくは、歯の病変はエナメル質又は象牙質中に存在する。典型的には、歯の病変は、白斑病変、フッ素症病変、齲蝕病変;又は歯の酸蝕症によって生じる病変の1つ以上からなる群から選択される。
【0052】
本明細書に記載の本発明のいずれかの態様又は実施形態において、本明細書に記載の液体組成物及びさらなる組成物、又は混合組成物は、処置を必要とする被験者によって、又は歯科医療の専門家によって、口、歯、又は病変に塗布される。
【0053】
一実施形態において、歯の表面は、そのような処置を必要としている。したがって、別の一態様において、本発明は、本明細書に記載の任意の方法のステップに加えて、フッ素症、齲蝕、象牙質知覚過敏若しくは歯石、白斑病変、フッ素症病変、齲蝕病変、又は歯の酸蝕症によって生じる病変に罹患した被験者を特定するステップを含む。特に、保護層の形成を必要とする歯の表面は、典型的には被験者に象牙質知覚過敏を生じさせる、露出した象牙質であってよい。露出した象牙質は露出した象牙細管であってよい。
【0054】
典型的には、歯の表面は、たとえば脱灰の可能性が高いために、表面層の影響を受けるとして区別された表面であってよい。
【0055】
歯の表面上に保護層を形成する本発明の方法では、露出した象牙質、特に露出した象牙細管を有する露出した象牙質をふさぐことにおける特定の用途が見出される。
【0056】
歯の表面は、窩洞であってもよく、それによって本明細書に記載の本発明の方法は、窩洞に使用され、それによってゲル又は保護層を形成することができる。次に、コンポジット又はグラスアイオノマーセメントなどの歯科修復材をゲル又は保護層の上に加えることができる。
【0057】
さらなる一態様において、本発明は、窩洞の修復方法であって、
(i)本明細書に記載のいずれかの方法によって窩洞中にゲル又は保護層を形成するステップと;
(ii)歯科修復材を取り付け、
それによって窩洞を修復するステップと、
を含む方法を提供する。
【0058】
本発明は、歯の表面又は表面下の石灰化に使用するための、少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物と、アルカリpHのさらなる組成物とを提供し、このさらなる組成物は、第1の組成物の後に歯の表面又は表面下に塗布され、それによってゲルが形成される。
【0059】
本発明は、
歯の表面上への層の形成、
歯の表面若しくは表面下の病変の中及び/又は上へのゲルの形成、
象牙質知覚過敏の処置若しくは予防、
低石灰化した歯の表面若しくは表面下の視認性の低下、又は
歯の表面若しくは表面下の再石灰化、
に使用するための、少なくとも40%w/wのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH5以上であるがpH9以下のpHの液体組成物を提供する。
【0060】
好ましくは、液体組成物のpHは、pH6以上であるがpH8以下であり、たとえば7以上であるがpH8以下である。
【0061】
さらなる一態様において、齲蝕、齲歯、歯の酸蝕症、フッ素症、及び白斑病変のそれぞれの1つ以上の処置又は予防方法であって、
(i)歯の表面又は表面下に、少なくとも40重量%のホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物を接触させるステップと;
(ii)(i)に続いて、歯の病変に塗布した液体組成物のpHを約9以上に上昇させ、それによって第1の組成物からゲルを形成するステップと、
を含む方法が提供される。
【0062】
組成物の局所投与が好ましい。この方法は好ましくは、前述の配合物中の複合体の投与を含む。
【0063】
さらなる一態様において、低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させるための液体組成物を含む製品の製造におけるホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)の使用であって、液体組成物が、少なくとも40%w/vの上記ホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含みpH6以下のpHであり、
上記液体組成物が、低石灰化した歯の表面又は表面下に塗布され、続いて低石灰化した歯の表面又は表面下に塗布された液体組成物のpHを約9以上に上昇させ、それによって低石灰化した歯の表面又は表面下の中及び/又は上にゲルが形成される、使用が提供される。
【0064】
さらなる一態様において、歯の表面又は表面下の病変の中及び/又は上にゲルを形成するための液体組成物を含む製品の製造におけるホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)の使用であって、液体組成物が、少なくとも40%w/vの上記ホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含みpH6以下のpHであり、
上記液体組成物が、歯の表面又は表面下の病変に塗布され、続いて、歯の表面又は表面下の病変に塗布された液体組成物のpHを約9以上に上昇させ、それによって歯の表面又は表面下の病変の中及び/又は上にゲルが形成される、使用が提供される。
【0065】
さらなる一態様において:
歯の表面上への層の形成、
歯の表面若しくは表面下の病変の中及び/又は上へのゲルの形成、
象牙質知覚過敏の処置若しくは予防、
低石灰化した歯の表面若しくは表面下の視認性の低下、又は
歯の表面若しくは表面下の再石灰化、
のための液体組成物を含むか又はそれからなる製品の製造における、ホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)の使用であって、
上記液体組成物が、少なくとも40%w/wの上記ホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含みpH5以上であるがpH9以下である、使用が提供される。一実施形態では、製品は化粧品である。
【0066】
さらなる一態様において、少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物を低石灰化した歯の表面又は表面下に受けた被験者の低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させる組成物の製造における塩基の使用が提供される。
【0067】
さらなる一態様において、少なくとも40%w/vのホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物を歯の表面又は表面下の病変に受けた被験者の歯の表面又は表面下の病変の中及び/又は上にゲルを形成するための組成物の製造における塩基の使用が提供される。
【0068】
さらなる一態様において、液体組成物とさらなる組成物とを含む製品の製造における、ホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)と、塩基との使用であって、液体組成物が、少なくとも40%w/vの上記ホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含みpH6以下のpHであり、さらなる組成物が上記塩基を含み、液体組成物及びさらなる組成物が、低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させるために使用され、さらなる組成物が、液体組成物の後に低石灰化した歯の表面又は表面下に塗布されることで、低石灰化した歯の表面又は表面下に塗布された液体組成物のpHが約9以上に上昇し、それによって低石灰化した歯の表面又は表面下の中及び/又は上にゲルが形成され、それによって低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性が低下する、使用が提供される。一実施形態では、この製品は化粧品である。
【0069】
さらなる一態様において、液体組成物とさらなる組成物とを含む製品の製造における、ホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)と、塩基との使用であって、液体組成物が、少なくとも40%w/vの上記ホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含みpH6以下のpHであり、さらなる組成物が上記塩基を含み、液体組成物及びさらなる組成物が、歯の表面又は表面下の病変の中及び/又は上へのゲルの形成に使用され、さらなる組成物が、液体組成物の後に歯の表面又は表面下の病変に塗布されることで、歯の表面又は表面下の病変に塗布された液体組成物のpHが約9以上に上昇し、それによって歯の表面又は表面下の病変の中及び/又は上にゲルが形成される、使用が提供される。
【0070】
好ましい一実施形態において、組成物中のホスホペプチド安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)複合体は、強く結合したカルシウム及び緩く結合したカルシウムを有し、複合体中の結合したカルシウムは、pH7.0で形成されたACP又はACFP複合体中の強く結合したカルシウムよりも少ない。任意選択により、ACP又はACFPは主として塩基形態にある。
【0071】
好ましい一実施形態において、組成物中の安定化ACP又はACFP複合体のカルシウムイオン含有量は、1モルのPP当たり約30~100モルの範囲内のカルシウムである。より好ましくは、カルシウムイオン含有量は、1モルのPP当たり約30~約50モルの範囲内のカルシウムである。
【0072】
任意の実施形態において、組成物中のACP及び/又はACFPは、カゼインホスホペプチド安定化ACP及び/又はACFP複合体の形態であってよい。
【0073】
別の一態様において、本発明は、少なくとも40%w/vの安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物を提供する。好ましくは、液体組成物は、45%w/vw/v以上の安定化ACP及び/又はACFP、50%w/v以上の安定化ACP及び/又はACFP、55%w/v以上の安定化ACP及び/又はACFP、60%w/v以上の安定化ACP及び/又はACFP、65%w/v以上の安定化ACP及び/又はACFP、70%w/v以上の安定化ACP及び/又はACFP、又は75%w/v以上の安定化ACP及び/又はACFPを含む。一実施形態では液体組成物は63%w/vの安定化ACP及び/又はACFPを含む。好ましくは、液体組成物は本明細書に記載のフッ化物イオンをさらに含む。
【0074】
本発明のこの態様において、液体組成物は、40%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFP、45%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFP、50%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFP、55%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFP、60%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFP、65%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFP、70%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFP、又は75%w/vを超える安定化ACP及び/又はACFPであるが80%w/v未満の安定化ACP及び/又はACFPを含むことができる。好ましくは、液体組成物は本明細書に記載のフッ化物イオンをさらに含む。
【0075】
いずれかの態様において、液体組成物は脱気される。脱気は、液体組成物の上に陰圧を形成するあらゆる方法によるものであってよい。代表的な方法は、真空ポンプ又はシステム、たとえばベンチュリ真空水システム(venturi vacuum water system)を含む。
【0076】
本明細書に記載のいずれかの組成物は、本明細書に記載の方法のいずれか1つに使用することができる。この組成物は、本明細書に記載の生理学的に許容される組成物である。
【0077】
本明細書に記載の本発明のいずれかの方法又は使用において、その方法又は使用は、低石灰化した表面又は表面下の外観のマスキング又は隠蔽を行う美容目的のためである。
【0078】
別の一態様において、本発明は、少なくとも40%w/vのPP安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物を調製するための方法又はプロセスであって:
溶媒と、PP安定化ACP及び/又はACFPを含むか又はそれからなる粉末とを混合するステップと、
7未満のpHで維持するステップと、
を含むか又はそれからなる方法又はプロセスを提供する。好ましくは、pHは6以下に維持され、好ましくはpHは5.5以下に維持される。
【0079】
別の一態様において、本発明は、少なくとも40%w/vのPP安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物を調製するための方法又はプロセスであって:
溶媒と、PP安定化ACP及び/又はACFPを含むか又はそれからなる粉末とを混合するステップと、
pHを7未満に下げるステップと、
を含むか又はそれからなる方法又はプロセスを提供する。好ましくは、pHは6以下、好ましくは5.5以下に下げられる。典型的には、pHは7未満に維持され、より好ましくはpHは6以下、さらにより好ましくは5.5以下に維持される。
【0080】
いずれかの態様において、溶媒と、PP安定化ACP及び/又はACFPを含むか又はそれからなる粉末とを混合するステップは、溶媒を粉末に加えることを含む。或いは、このステップは、粉末を溶媒に加えることを含む。
【0081】
本明細書に記載の液体組成物を調製するためのいずれかの方法又はプロセスにおいて、その方法又はプロセスは、液体組成物を脱気するステップをさらに含む。脱気は、本明細書に記載の方法などの、液体組成物の上に陰圧を形成するあらゆる方法によって行うことができる。
【0082】
本明細書に記載の液体組成物を調製するためのいずれかの方法又はプロセスにおいて、その方法又はプロセスは、上記液体組成物とフッ化物イオンを含む溶液と混合するステップをさらに含む。
【0083】
別の一態様において、本発明は、少なくとも40%w/vのPP安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物を調製するための方法又はプロセスであって、本明細書の実施例1に記載のステップを含むか又はそれからなる方法又はプロセスを提供する。
【0084】
いずれかの態様において、本発明は、PP安定化ACP及び/又はACFPを含むか又はそれからなる粉末を調製するために:
約7.0以上、好ましくは約9にpHを維持しながら、ホスホペプチド、カルシウムイオン、ホスフェートイオン、水酸化物イオン、及び任意選択によりフッ化物イオンを含む1つ以上の溶液を混合して、安定化ACP及び/又はACFPを含む溶液を形成するステップと、
PP安定化ACP及び/又はACFPを含む溶液を乾燥させ、
それによって、PP安定化ACP及び/又はACFPを含むか又はそれからなる粉末を形成するステップと、
をさらに含む方法又はプロセスを提供する。好ましくは、乾燥は噴霧乾燥又は凍結乾燥である。
【0085】
一実施形態では、その方法又はプロセスは;
乾燥させる前に、PP安定化ACP及び/又はACFPを含む溶液を濾過して保持液を形成するステップをさらに含み、この保持液を次に乾燥させることで、PP安定化ACP及び/又はACFPを含むか又はそれからなる粉末が形成される。
【0086】
別の一態様において、本発明は、少なくとも40%w/wのPP安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物を調製するための方法又はプロセスであって:
溶媒と、PP安定化ACP及び/又はACFPを含むか又はそれからなる粉末とを混合するステップと、
pHを8未満に低下させるステップと、
を含むか又はそれからなる、方法又はプロセスを提供する。好ましくは溶媒はフッ化物を含む。
【0087】
この態様において、この方法は、pHを低下させた後に、液体組成物を撹拌するステップをさらに含む。好ましくは、撹拌は、少なくとも5、10、15、20、25、又は30分間行われる。
【0088】
この態様において、取り込まれた気泡を除去するために、好ましくは溶液を減圧下に置くことによって、最も好ましくは24時間、液体組成物は脱気される。
【0089】
別の一態様において、本発明は、少なくとも40%w/w、好ましくは60%w/wのPP安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物を調製するための方法又はプロセスであって、本明細書の実施例11に記載のステップを含むか又はそれからなる方法又はプロセスを提供する。
【0090】
40%w/v又は40%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物を調製するためのいずれかの方法又はプロセスにおいて、溶媒は水である。
【0091】
40%w/v又は40%w/wを超える安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物を調製するためのいずれかの方法又はプロセスにおいて、1~10MのHCl、又は11MのHClを用いてpHの低下又は維持が行われる。
【0092】
いずれかの態様において、少なくとも40%w/vのPP安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物を調製するための方法又はプロセスは、45%w/v以上、50%w/v以上、55%w/v以上、60%w/v以上、65%w/v以上、70%w/v以上、又は75%w/v以上(又は本明細書に記載のあらゆる別の%w/v)の安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物を調製するためのものであってよい。
【0093】
少なくとも40%w/vのPP安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物を調製するためのいずれかの方法又はプロセスにおいて、PP安定化ACP又はACFPは、本明細書に記載のCPP-ACP又はCPP-ACFPである。
【0094】
少なくとも40%w/vのPP安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物を調製するためのいずれかの方法又はプロセスにおいて、液体組成物は、任意の歯の処置方法、好ましくは本明細書に記載の方法(たとえば低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性の低下)に使用するためのものである。
【0095】
別の一態様において、本発明は、本明細書に記載の方法又はプロセスによって調製される少なくとも40%w/vのPP安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物を提供する。
【0096】
本発明は、齲蝕、フッ素症、歯の酸蝕症、及び白斑病変の1つ以上の処置又は予防のためのキットであって、(a)少なくとも40重量%のホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含むpH6以下のpHの液体組成物と、(b)好ましくは本明細書に記載の、アルカリpHのさらなる組成物とを含み、さらなる組成物が、液体組成物の後に歯の表面又は表面下に塗布され、さらなる(又は第2の)組成物によって液体(又は第1の)組成物からゲルが形成される、キットにも関する。望ましくは、キットは、好ましくは本明細書に記載のいずれかの方法に使用するための、処置を必要とする患者の歯の表面の石灰化のためにそれらを使用するための説明書をさらに含む。説明書には、それぞれ齲蝕、齲歯、歯の酸蝕症、フッ素症、及び白斑病変の1つ以上の処置又は予防のためのキットの使用を記載することができる。一実施形態では、液体(又は第1の)組成物及びさらなる(又は第2の)組成物は、患者の処置に適切な量で存在する。好ましくは、ホスホペプチド(後述)はカゼインホスホペプチドである。好ましくは、PP安定化ACP又はACFPは、カゼインホスホペプチド安定化ACP又はACFP複合体の形態である。
【0097】
一実施形態では、本発明は、低石灰化した表面又は表面下の外観のマスキング又は隠蔽を行う美容方法における使用のため、又は使用される場合の、本明細書に記載のいずれかのキットを提供する。典型的には、キットは、本明細書に記載の美容方法に使用するための、書面による説明書をさらに含むことができる。
【0098】
本発明のキットは、遊離のフッ化物イオン源をさらに含むことができる。遊離のフッ化物イオン源の例としては、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化銀、フッ化アミン、又はあらゆる金属イオンフッ化物塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのフッ化物イオン源は、溶液(典型的には水溶液)、又は懸濁液の中で提供される。
【0099】
一態様において、本発明は:
(a)ホスホペプチド安定化ACP及び/又はACFPの粉末を含む第1の組成物と;
(b)フッ化物の溶液を含むpH6以下のpHの第2の組成物と;
(c)アルカリpHの第3の組成物と、
を含むか又はそれからなるキットも提供する。
【0100】
好ましくは、第3の組成物のアルカリpHは、約9、10、11、12、13、又は14のpHであってよい。好ましくは、第3の組成物は約9以上のアルカリpHを有する。好ましくは、第1の組成物は、第2の組成物と混合したときに少なくとも40%w/vのホスホペプチド安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物が形成される量のホスホペプチド安定化ACP及び/又はACFPを含む。
【0101】
一実施形態では、キットは:
(a)5gのCPP-ACP及び/又はCPP-ACFPと、
(b)5mlの、1.146MのHCl中の0.73MのNaFと、
(c)1.5MのNaOHと、
を含むか又はそれからなる。
【0102】
好ましくは、キットは2つのマイクロブラシをさらに含む。
【0103】
好ましくは、キットは、本明細書に記載のいずれかの方法にキットを使用するための、書面による説明書をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【
図1】45%w/vのCPP-ACPのpH5.5溶液を使用し、続いて1MのNaOH溶液を使用した白斑病変のマスキング。左は処置した病変であり、右は対照である。
【
図2】63%w/vのCPP-ACP及び8,200ppmのNaFとしてのFのpH5.5溶液(脱気せず)を使用し、続いて1MのNaOH溶液を使用した白斑病変のマスキング。左は処置した病変であり、右は対照である。
【
図3】実施例3に記載の歯科用キットを用いて、パート(a)をパート(b)に加えて十分に混合する。次にこの混合物を、1つのマイクロブラシを用いて左の白斑病変に塗布した(塗布前の病変を示す(A)の画像を参照されたい)。37℃において数秒/分後、次に第2のマイクロブラシを用いて溶液(c)を左の白斑病変に塗布した。15分以内に、白斑内で反応が起こってゲルが形成され、白斑が隠蔽される((B)中の画像を参照されたい)。
【
図4】75%w/vのCPP-ACP及び9,880ppmのNaFとしてのFのpH5.5溶液を使用し、続いて2MのNaOH溶液を使用した白斑病変のマスキング。左は処置した病変であり、右は対照である。
【
図5】63%w/vのCPP-ACP及び8,000ppmのFのpH5.5の液体組成物(脱気済み)と、1.5MのNaOHの溶液とから形成された混合組成物を使用した白斑病変のマスキング。左は処置した病変であり、右は対照である。
【
図6】63%w/vのCPP-ACP及び8,000ppmのFのpH5.5の液体組成物と、1.5MのNaOHの溶液とから形成された混合組成物を使用した脱灰象牙質の処置。左は処置した病変であり、右は対照である。
【
図7】(A及びB)63%w/vのCPP-ACP及び8,000ppmのFのpH5.5の液体組成物と、1.5MのNaOHの溶液とから形成された混合組成物を使用した脱灰象牙質上の保護層の形成を示す、代表的な横断マイクロラジオグラフ画像(TMR)の画像。これは混合組成物を塗布してから約20分後に撮影したTMR画像である。
【
図8】63%w/vのCPP-ACP及び8,000ppmのFのpH5.5の液体組成物と、1.5MのNaOHとから形成された混合組成物を使用した(A)における脱灰象牙質上の保護層の形成と、(B)における露出象牙細管を有する対照象牙質とを示す代表的な走査型電子顕微鏡(SEM)画像。
【
図9】(A)における
図8からの保護層の脱水による計画的な亀裂を示す代表的な走査型電子顕微鏡(SEM)画像、及び(B)における保護層のSEM-EDSによる元素分析。
【
図10】あらかじめ混合したCPP-ACFP及び2MのNaOHで処置し、37℃で48時間インキュベートした歯根象牙質上の保護層の形成を示すマイクロラジオグラフ画像。
【
図11】あらかじめ混合したCPP-ACFP及び2MのNaOHで処置し、37℃で48時間インキュベートしたエッチング済みのエナメル質表面上の保護層の形成を示すマイクロラジオグラフ画像。
【
図12】実施例11に記載の7,800ppmのFを含む60%w/wのCPP-ACPのpH7.8(10,000mg/LのFを含む75%w/vのCPP-ACPのpH7.8)の組成物を使用した白斑病変のマスキング。(a)処置前、(b)硬化から40秒後、(c)硬化から15分後、(d)硬化から23時間後。
【発明を実施するための形態】
【0105】
本発明のさらなる態様、及び先行する段落中に記載される態様のさらなる実施形態は、例として示され添付の図面が参照される以下の説明から明らかとなるであろう。本明細書において開示され規定される本発明が、言及される、又は文章若しくは図面から明らかとなる個別の特徴の2つ以上のあらゆる別の組合せにまで拡張されることが理解されよう。これらの異なる組合せのすべてが本発明の種々の別の態様を構成する。
【0106】
これより本発明の特定の実施形態についてより詳細に言及する。本発明は実施形態とともに説明されるが、本発明がそれらの実施形態に限定されることを意図しないことは理解されよう。逆に、本発明は、請求項によって規定される本発明の範囲内に含まれうるあらゆる代替物、修正、及び同等物に及ぶことが意図される。
【0107】
当業者は、本発明の実施に使用できる、本明細書に記載のものと類似又は同等の多くの方法及び材料を認識されるであろう。本発明は、記載の方法及び材料に限定されるものでは決してない。
【0108】
本明細書に引用されるすべての特許及び刊行物は、それら全体が参照により援用される。
【0109】
本明細書を説明する目的で、単数形で使用される用語は複数形も含み、逆の場合も同様となる。
【0110】
本明細書において使用される場合、文脈が別のものを必要とする場合を除けば、用語「含む」(comprise)及びその用語の変形、たとえば「含むこと」(comprising)、「含む」(comprises)、及び「含んだ」(comprised)は、さらなる添加剤、成分、整数、及びステップの排除を意図するものではない。本明細書において使用される場合、文脈が別のものを必要とする場合を除けば、「含む」(comprise)及び「含む」(include)は同義で使用することができる。
【0111】
本発明の一態様は、幾つかの驚くべき発見に基づいており、その第1は、高濃度のホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含む組成物は、液体状態のままであることができる(すなわちゲルを形成しない)。本発明以前は、高濃度のホスホペプチド安定化ACP及び/又はACFPは、ゲル又はペーストを形成する組成物が得られると考えられており、現在までに記載されているすべての液体組成物は、比較的低濃度のホスホペプチド安定化ACP及び/又はACFPを有していた。第2の驚くべき発見は、酸性液体組成物のpHを上昇させると、組成物がゲルの形状に変化し、これを歯の表面、表面下、又は病変の中及び/又は上で発生させることが可能なことである。なんらかの理論又は作用機序によって束縛されるものではないが、pHの上昇によって、PP-ACP及び/又はPP-ACFP複合体が不安定化して、非晶質で未成熟のハイドロキシアパタイト又はフルオロハイドロキシアパタイトのゲルを形成すると考えられる。第3の驚くべき発見は、たとえばアルカリpHを有するさらなる組成物を塗布することによって、組成物のpHを上昇させた後に、このゲルの形成が急速に起こることである。第4の驚くべき発見は、形成されるゲルは、屈折率を変化させ、低石灰化した表面、表面下、又は病変が半透明になることで、低石灰化した表面、表面下、又は病変の視認性が低下することである。本発明の利点の1つは、1回の患者の来診中に口腔外科で数分以内に、目に見える低石灰化病変をマスク又は隠蔽して、外観を実質的に改善し、視認性を低下させ、すなわち表面を半透明に変化させることである。さらに、これは、カルシウム及びホスフェート(フッ化物を含む又は含まない)を用いてこれが行われる。これは、現在の、たとえば白斑病変の外科的な歯の治療における実質的な改善を示している。美容的な利点が得られるのと同時に、ゲルは、表面、表面下、又は病変を再石化させるための、高濃度のカルシウム、ホスフェート、及び任意選択によりフッ化物のリザーバーとなる。
【0112】
高濃度のホスホペプチド安定化ACP及び/又はACFPを含む液体組成物は、典型的には6以下のpHであり、歯の表面に塗布する前にアルカリpHのさらなる液体組成物と組み合わせるか又は混合することができる。さらなる驚くべき発見は、高濃度ホスホペプチド安定化ACP及び/又はACFPを含み、pHが約9以上である、形成された組合せ又は混合による組成物は、歯の表面に塗布できる状態が維持されることである。言い換えると、組み合わせられた又は混合された組成物は、たとえば1~2分の時間は液体形態で存在し、これを歯の表面に塗布することができる。
【0113】
さらに別の驚くべき発見は、高濃度のホスホペプチド(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)を含む組成物は、液体状態(すなわちゲルを形成しない)ままであってよく、中性pH付近でそのようになることである。この組成物は、個人が処置される身体的な位置で専門的な口腔外科において調製する必要がない。次にこの液体組成物は、白斑病変の視認性の低下、象牙質知覚過敏の軽減、及び本明細書に記載のその他の使用に使用することができる。
【0114】
歯の表面下は、典型的には低石灰化病変であり、そのため、歯の表面に接触した第1の組成物及び第2の組成物、又は混合組成物は、あらゆる表面層、すなわちペリクル及び/又はプラークを通過し、多孔質の歯の表面を通過して、石灰化を必要とする領域まで移動する。好ましくは、PP安定化ACP又はACFPは、カゼインホスホペプチド安定化ACP又はACFP複合体の形態である。歯の表面は、好ましくは歯のエナメル質である。歯の表面は、齲蝕、歯の酸蝕症、又はフッ素症によって生じる病変などのエナメル質中の病変であってよい。
【0115】
低石灰化した表面、表面下、又は病変の視認性の低下は、単に人の目による目視検査によって調べることができる。視認性の低下は、低石灰化した表面、表面下、又は病変が見えにくくなるあらゆる低下レベルであってよい。視認性の低下によって、低石灰化した表面、表面下、又は病変は半透明の外観になることができ、そのため、人の目によって調べて、周囲の正常な石灰化した歯の表面との差がほとんど又は全くない。
【0116】
表面、表面下、又は病変の視認性は、以下のように求めることもできる。Chroma Meter(Minolta ChromaMeter CR241、Minolta、日本)を用いて表面反射率を記録することができる。表面反射率測定は、1978年のCommission de L’EclairageによるL*a*b*色空間において確立され、測定値は3つの色次元における人間の色知覚と関連する(Commision Internationale de L’Eclaige(1978).Recommendations on uniform colour spaces,colour difference equations and psychometric colour terms.Paris:Bureau Centrale de la DIE Suppl.2:15.)。L*値は白色から黒色への色の階調度を表し、a*値は緑色から赤色への色の階調度を表し、b*値は青色から黄色への色の階調度を表す(Commision Internationale de L’Eclaige,1978)。L*値の測定値のみを使用することがで、より白い色はより大きな測定値を有し、より暗い色はより小さな測定値を有する。Chroma Meterにおける試験片の再現性のある位置を保障するため、各試料の蝋型を作製し、保管した。すべての試料は、各測定の前に60秒間歯科用トリプレックスシリンジを用いて風乾することができる。個別の試験片は、処置の前及び後の両方で10回再配置することができ、色反射率L*値を記録した。
【0117】
象牙質を覆う保護エナメル質又はセメント質が失われると、象牙質知覚過敏が生じる。典型的にはセメント質はエナメル質よりも破壊されやすく、その理由はセメント質はより薄く、酸によってより容易に腐食されるからである。しかし、セメント質の破壊は、歯肉退縮が存在し、歯根表面が口腔環境に曝露されるまでは起こりえない。セメント質が破壊され象牙質知覚過敏となった個人は、歯の露出領域が冷気、高温及び低温の液体、甘い又はすっぱい食品に接触するとき、又は金属物体に触れるときに痛みを感じることが多い。歯の知覚過敏に罹患した患者は、通常よりも多数の開放象牙細管及び/又はより大きな直径の細管を有する。
【0118】
本発明の一態様の利点の1つは、保護層の形成である。この層は、典型的にはハイドロキシアパタイト又はフルオロアパタイトと同じ又は類似の組成を有する。これは、エナメル質又は象牙質の上に形成することができ、象牙細管の封止又は閉塞に使用することができ、それによって象牙質知覚過敏症を軽減することができる。
【0119】
このような層は、通常のアパタイトと同等のカルシウム:ホスフェート比を有することを特徴とすることができ、好ましくはこの比は約1.5~2:1である。この層は理想的には約20重量%のカルシウム量を含む。
【0120】
好ましくは、この層は、炭素、酸素、ホスフェート、及びカルシウム、並びに任意選択によりフッ化物を含む。
【0121】
露出した象牙質を封止する本発明の方法によって、歯の過敏症が軽減され、齲蝕、たとえば歯根表面の齲蝕の危険性が軽減される。さらに、歯科修復材は収縮して歯の表面と微小な間隙を形成することがあるので、本発明は、グラスアイオノマーセメントを含む組成物などの修復材料を使用する前に特定の用途が見出される。次に、ゲル又は保護層は、空隙封止材として機能し、微小な間隙の形成が減少する。
【0122】
「処置する」又は「処置」という単語は、望ましくない生理学的変化又は疾患を減速させる(減少させる)ことが目的である治療的処置を意味する。本発明の目的では、有益又は望ましい臨床結果としては、検出可能であろうとなかろうと、症状の軽減、病状の程度の減少、病状の安定した(すなわち、悪化していない)状態、病状の進行の遅延又は減速、疾患/症状の回復又は一時的緩和、並びに寛解(部分又は完全)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。処置は、必ずしも病状の検出可能な症状が完全になくなる必要はない場合があるが、病状の合併症及び副作用を減少させるか又は最小限にすることができる。処置の成功などは、個人の身体検査、又は本明細書に記載のあらゆる熱的、触覚的、若しくは化学的処理に対する応答によって監視することができる。本発明の方法が被験者の象牙質知覚過敏症、又は知覚過敏の処置に使用される場合、好ましくは、被験者は痛みの激しさの軽減、又は経時による痛みの発生の減少を経験する。程度の異なる象牙質知覚過敏症を有する被験者の特定方法、及び処置又は予防の成功の測定方法は、本明細書に記載され、そのような方法としては、Med Oral Patol Oral Cir Bucal.2008 Mar1;13(3):E201-6に概略が示されるものも挙げられる。被験者の処置は、処置の前後に本明細書に記載の任意の刺激にさらされた場合に経験する痛みの程度を比較することによって決定することができ、それによる処置後の痛みの軽減は、過敏症の軽減を示している。
【0123】
「予防する」及び「予防」という単語は、一般に、病状又は症状、たとえば過敏症を有しない個人が、その病状又は症状、たとえば過敏症を有するような進行を予防又は防止する防止的又は予防的手段を意味する。予防が必要となりうる個人は、歯科的処置、特に象牙質を暴露する歯科的処置が行われる個人である。
【0124】
本発明のいずれかの態様において、低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変に、(i)における液体組成物を、液体組成物が歯の表面、表面下、又は病変に浸透できる時間の間接触させる。典型的には、液体組成物が低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変の孔に浸透できる時間の間、液体組成物が塗布される。次にこれによって、液体組成物がそれらの孔の中に供給され、孔の中の液体組成物のpHを上昇させ、それによってゲルを形成すると、低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変の視認性を低下させることができる。したがって、このゲルは、表面下若しくは病変の中、又は表面下若しくは病変の中及び上に形成されうる。一実施形態では、低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変に、(i)における液体組成物を最長20分間接触させた後、低石灰化した歯の表面又は表面下に塗布した液体組成物のpHを約9以上に上昇させる。一実施形態では、低石灰化した歯の表面若しくは表面下、又は病変に、(i)における液体組成物を少なくとも約数秒~約5分間、好ましくは少なくとも約5分~約20分間接触させる。
【0125】
典型的には、さらなる組成物を塗布してから約5~20分までのいずれかの時点でゲルが形成される。したがって一実施形態では、第1の組成物のpHを上昇させるためにさらなる組成物が塗布され、及び歯の表面、表面下又は病変にさらなる組成物を塗布されるか又は処置が行われるまでに約5~約20分間が経過してもよい。
【0126】
本明細書において使用される場合、%w/vは、g/100mlと同等であると解釈することができる。
【0127】
いずれかの態様において、歯の表面は、そのような処置を必要としている。したがって、別の一態様において、本発明は、本明細書に記載の任意の方法のステップに加えて、フッ素症、齲蝕、象牙質知覚過敏若しくは歯石、白斑病変、フッ素症病変、齲蝕病変、又は歯の酸蝕症によって生じる病変に罹患した被験者を特定するステップを含む。
【0128】
アルカリpHのさらなる組成物の1つは、塩基又は塩基を生成可能な化合物を含み7を超えるpHを有する組成物である。塩基は、水素カチオン(プロトン)を受容できる、又はより一般的には価電子対を供与することができる化合物として定義される。組成物は、必ずしも通常は塩基と見なされなくてもよいが(たとえば多数の酸性及び塩基性の残基を有するポリペプチド)、それにもかかわらず組成物のpHを、7を超えるまで、好ましくは約9以上のpHに上昇させることができる化合物を含むことができる。本発明における使用に適した塩基の非限定的な例としては、水酸化物、ボレート、リン酸水素塩などのホスフェート、アミン、及びアルカリ金属塩の形態などのそれらのあらゆる塩の形態が挙げられる。特に、適切な薬学的に許容される塩基の非限定的な例としては、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化第一鉄、水酸化亜鉛、次亜塩素酸ナトリウム、水酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、リジン、アルギニン、ヒスチジン、又は尿素が挙げられる。一実施形態では、さらなる組成物は、水酸化ナトリウムを好ましくは1又は2M以上の濃度で含む。
【0129】
塩基として記載されるあらゆる薬学的に許容される化合物が、本発明における使用に好適となる。典型的には、塩基は口腔用途に好適である。好ましくは、この化合物は、塩基として機能し、すなわち酸の存在下で水酸化物イオンの放出又は電子の供与のみを行う。この塩基は、遊離塩基形態、又は薬学的に許容される塩の形態であってよい。本発明における使用に好適な塩基の非限定的な例としては、水酸化物、ボレート、ハイドロジェンホスフェート及びジハイドロジェンホスフェートなどのホスフェート、シトレート、カーボネート、バイカーボネート、ハイポクロライト、アミン、及びアルカリ金属塩の形態などのそれらのあらゆる塩の形態が挙げられる。より詳細には、好適な薬学的に許容される塩基の非限定的な例としては、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化第一鉄、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、リシン、アルギニン、ヒスチジンが挙げられる。本明細書に記載のような塩基として機能可能なハイポフルオライトもpHの上昇又は維持のための物質として本発明において有用である。好適なハイポフルオライトは、in situで反応して、フッ化物イオン及び水酸化物(又は別の塩基の)イオンを生成する。当業者は理解するであろうように、フッ化物イオンはアパタイトの結晶構造中の水酸化物と置換してフルオロアパタイトを形成できる。
【0130】
本発明の方法又は使用においてあらゆる熱源を使用して、歯の表面又は表面下の加熱又は硬化を行うことができる。光又は放射線抄出し、歯科用途における使用に適した熱源は当技術分野において周知である。具体例としては、歯科用硬化光、たとえば、Guilin Woodpecker Medical Instrument Co.Ltd.によるX-Cureなどの10W高出力青色LEDが挙げられる。本発明のいずれかの方法又は使用において、液体組成物を歯の表面又は表面下に接触させた後に液体組成物の加熱又は硬化を行うさらなるステップを行うことができる。加熱又は硬化は、少なくとも30秒、少なくとも40秒、少なくとも50秒、少なくとも60秒、少なくとも2分、又は少なくとも5分の時間行うことができる。加熱又は硬化によって、(患者が快適な状態で)温度を急激に45~50℃に上昇させることができる。ヘッディング又は硬化は、実施例を含めた本明細書に記載のあらゆる時間又はあらゆる温度で行うことができる。
【0131】
当技術分野において周知である又は本明細書に記載されるあらゆる技術を用いて、本明細書に記載のいずれかの組成物を歯の表面、表面下、又は病変に塗布することができる。代表的な塗布技術はマイクロブラシの使用である。
【0132】
さらに、本明細書に記載のいずれかの組成物の塗布から、口腔内の軟部組織を保護するために、ラバーダムなどのあらゆる樹脂バリアを使用することができる。
【0133】
本明細書において使用される場合、「安定化ACP又はACFP」及び「安定化ACP又はACFP複合体」は同義で使用される。
【0134】
本明細書に記載のような安定化ACP又はACFP複合体は、Cross et al.,2007の
図2に示されるような「閉じた」複合体であってよい。
【0135】
本明細書において言及されるような安定化ACP又はACFP複合体としては、その内容が参照により援用される国際公開第2006/056013号パンフレット(PCT/AU2005/001781)に記載されるような安定化ACP又はACFP複合体が挙げられる。
【0136】
好ましい一実施形態において、ホスホペプチド安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)複合体は、強く結合したカルシウム及び緩く結合したカルシウムを有し、この複合体中の結合したカルシウムは、pH7.0において形成されるACP又はACFP複合体中の強く結合したカルシウムよりも少ない。任意選択により、ACP又はACFPは主として塩基形態である。
【0137】
本明細書において言及されるような安定化ACP又はACFP複合体としては、7.0未満のpHで形成される安定化ACP又はACFP複合体が挙げられる。好ましくは、複合体は約5.0から7.0未満の範囲内のpHで形成される。より好ましくは、複合体は約5.0~約6.0のpH範囲で形成される。好ましい一実施形態において、複合体は約5.0又は約5.5のpHで形成される。好ましくは、複合体中のACP又はACFPは主として塩基形態である。
【0138】
安定化ACPは:
(i)少なくとも1種類のホスホペプチドを含む溶液を得るステップと;
(ii)pHを約5.5~9に維持しながら、カルシウムイオン、ホスフェートイオン、及び水酸化物イオンを含む溶液を混合するステップと
を含む方法によって製造することができる。
【0139】
一実施形態では、pHは7.0以下に維持される。
【0140】
安定化ACFPは:
(i)少なくとも1種類のホスホペプチドを含む溶液を得るステップと;
(ii)pHを約5.5~9に維持しながら、カルシウムイオン、ホスフェートイオン、水酸化物イオン、及びフッ化物イオンを含む溶液を混合するステップと、
を含む方法によって製造することができる。
【0141】
一実施形態では、pHは7.0以下に維持される。
【0142】
実質的に一定のpHに維持するために、水酸化物イオンを溶液中に滴定することができる。リン酸カルシウム沈殿物の形成が回避される一定の混合及び速度で、カルシウムイオン及びホスフェートイオンを、ホスホペプチド溶液中に滴定することができる。
【0143】
ホスホペプチド安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)複合体は、複合体中のACPが強く結合したカルシウム及び緩く結合したカルシウムを有する場合と、その複合体中の強く結合したカルシウムが、pH7.0で形成されるACP又はACFP複合体中の強く結合したカルシウムよりも少なく、ACP又はACFPが、主として塩基形態であり:
a)カルシウムイオンを含む第1の溶液、ホスフェートイオンを含む第2の溶液、及び任意選択によりフッ化物イオンを含む第3の溶液を、ホスホペプチド及び溶媒を含む溶液と、約5から7未満のpHで混合するステップと;
b)水酸化物イオンを加えることによって、混合中の溶液のpHを約5.0から7.0未満に維持するステップと
によって得ることができるか、又は得られる場合と、を含むことができる。
【0144】
「強く」及び「緩く」結合したカルシウム及びホスフェートは、分析用限外濾過を用いて測定することができる。簡潔に述べると、pHを約7.0以下に維持しながら混合したホスホペプチド、カルシウム、ホスフェート、及び任意選択によりフッ化物の溶液は、最初に0.1ミクロンのフィルターで濾過して、複合体に会合しない遊離のカルシウム及びホスフェートを除去することができる。この遊離のカルシウム及びホスフェートは、濾液中に存在し、廃棄される。複合体とは全く会合しないあらゆる遊離のカルシウム又はホスフェートは、生物学的に利用されない、すなわちホスホペプチドによって歯に送達されることがない。0.1ミクロン濾過で得られる保持液は、3000mwカットオフフィルターを介して1,000gで15分間の遠心分離によってさらに分析することができる。得られた濾液は、複合体に緩く結合又は会合するカルシウム及びホスフェートを含有する。この遠心力において、複合体に強く結合していないカルシウム及びホスフェートは放出されて、濾液中に移動する。複合体中の強く結合するCa及びPiは、保持液中に維持される。次に保持液中の強く結合したCa及びPiの量は、濾液中のCa及びPiの量を、0.1ミクロン濾過の保持液中のCa及びPiの総量から引くことによって求めることができる。
【0145】
本明細書において言及されるような安定化ACP又はACFP複合体としては、その内容が参照により援用される国際公開第2006/135982号パンフレット(PCT/AU2006/000885)に記載されるような安定化ACP又はACFP複合体が挙げられる。
【0146】
「過剰充填された」(superloaded)ホスホペプチド又はリンタンパク質(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)複合体。複合体は、あらゆるpH(例えば3~10)で形成することができる。好ましくはホスホペプチドは-A-B-C-の配列を含み、ここでAはホスホアミノ酸、好ましくはホスホセリンであり、Bはホスホアミノ酸などの任意のアミノ酸であり、Cはグルタミン酸、アスパラギン酸、又はホスホアミノ酸である。ホスホアミノ酸はホスホセリンであってよい。PPにはカルシウム及びホスフェートイオンが過剰充填される。カルシウムイオンは、1モルのPP当たり30~1000モルのCaの範囲内、又は1モルのPP当たり30~100若しくは30~50モルのCaの範囲内であってよい。別の一実施形態では、1モルのPP当たりのCaのモル数は、少なくとも25、30、35、40、45、又は50である。
【0147】
本発明は、1モルのPP当たりのカルシウムイオン含有量が約30モルを超えるカルシウムである、ホスホペプチド又はリンタンパク質(PP)で安定化非晶質リン酸カルシウム又は非晶質フッ化リン酸カルシウム複合体を含む。好ましい一実施形態において、カルシウムイオン含有量は、1モルのPP当たり約30~100モルの範囲内のカルシウムである。より好ましくは、カルシウムイオン含有量は、1モルのPP当たり約30~約50モルの範囲内である。
【0148】
本発明は:
(i)カルシウム、無機ホスフェート、及びフッ化物(任意選択)を含む溶液を得るステップと;
(ii)(i)を、PP-ACPを含む溶液と混合するステップと
を含む方法によって生成されるホスホペプチド又はリンタンパク質(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)複合体も提供する。
【0149】
好ましい一実施形態において、PPはカゼインホスホペプチド(CPP)である。
【0150】
さらなる一態様において、本発明は、PP安定化ACP及び/又はACFP複合体と少なくとも同重量のリン酸カルシウムとの配合物の使用をも含む。好ましくは、リン酸カルシウムは、CaHPO4又は乳酸カルシウム又はあらゆる他の可溶性リン酸カルシウム化合物である。好ましくは、リン酸カルシウム(たとえばCaHPO4)はPP安定化ACP及び/又はACFP複合体と乾式ブレンドされる。好ましい一実施形態において、PP-ACP及び/又はPP-ACFP複合体:リン酸カルシウムの比は約1:1~50であり、より好ましくは約1:1~25であり、より好ましくは約1:5~15である。一実施形態において、PP-ACP及び/又はPP-ACFP複合体:リン酸カルシウムの比は約1:10である。
【0151】
口腔内で使用される場合の、1モルのPP当たりのカルシウムイオン含有量が約30モルを超えるカルシウムであるホスホペプチド又はリンタンパク質(PP)安定化非晶質リン酸カルシウム(ACP)及び/又は非晶質フッ化リン酸カルシウム(ACFP)複合体を含む口腔ケア配合物は:
(i)PP-ACP及び/又はPP-ACFP複合体を含む粉末を得るステップと;
(ii)有効量のリン酸カルシウムと乾式ブレンドするステップと;
(iii)乾式ブレンドしたPP-ACP及び/又はPP-ACFP及びリン酸カルシウム混合物から口腔ケア配合物を配合するステップと
を含む方法によって製造することができる。
【0152】
好ましくは、乾式ブレンドのためのリン酸カルシウムの形態は、限定するものではないがCaHPO4、Ca2HPO4、及び乳酸カルシウムなどのあらゆる可溶性リン酸カルシウムである。
【0153】
本明細書に記載の組成物は、遊離のフッ化物イオンをさらに含むことができる。フッ化物イオンは、あらゆる好適な供給源に由来することができる。フッ化物イオン源としては、遊離のフッ化物イオン又はフッ化物塩を挙げることができる。フッ化物イオン源の例としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ、ケイフッ化ナトリウム、及びフッ化アミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは溶液(典型的には水溶液)、又は懸濁液として提供することができる。
【0154】
フッ化物イオンは好ましくは1ppmを超える量で組成物中に存在する。より好ましくは、その量は3ppmを超える。別の一実施形態においては、好ましくは10ppmを超える。後述の典型的な実施形態においては、その量は数百又は数千ppmとなりうる。フッ化物含有量は典型的には、当技術分野において一般に使用される方法で口腔用組成物中のppmとして測定される。フッ化物が安定化ACPを有する供給源から得られる場合、ppmは、典型的には生物学的に利用可能なフッ化物の溶液又は懸濁液であるその供給源中のフッ化物濃度を意味する。
【0155】
本明細書に記載のスズが会合したACP又はACFP複合体としては、国際公開PCT/AU2014/050447号明細書(その内容はその全体が参照により援用される)に記載のあらゆるものが挙げられる。
【0156】
本発明の使用方法に使用するための本明細書に記載の組成物は、スズが会合したACP又はACFP複合体を含むことができる。組成物は、2%のCPP-ACPと、フッ化第一スズとしての220ppm及びフッ化ナトリウムとしての70ppmのフッ化物を含む290ppmのフッ化物とを含むことができる。
【0157】
本明細書に記載の任意の態様又は実施形態において、安定化ACP及び/又はACFPは、ホスホペプチド(PP)安定化される。好ましくは、ホスホペプチドは(以下に規定されるように)カゼインホスホペプチド。好ましくは、ACP又はACFPは、カゼインホスホペプチド安定化ACP又はACFP複合体の形態である。
【0158】
本発明の説明の文脈における「ホスホペプチド」は、少なくとも1つのアミノ酸がリン酸化されているアミノ酸配列を意味する。好ましくは、ホスホペプチドは、1つ以上のアミノ酸配列-A-B-C-を含み、式中、Aはホスホアミノ残基であり、Bはホスホアミノ残基を含めた任意のアミノアシル残基であり、Cはグルタミル残基、アスパルチル残基、又はホスホアミノ残基から選択される。任意のホスホアミノ残基は、独立して、ホスホセリル残基であってよい。Bは望ましくは、側鎖が比較的大きくなく疎水性でもない残基である。これは、Gly、Ala、Val、Met、Leu、Ile、Ser、Thr、Cys、Asp、Glu、Asn、Gln、又はLysであってよい。好ましくは、この配列中の少なくとも2つのホスホアミノ酸は好ましくは隣接する。好ましくは、ホスホペプチドは、配列A-B-C-D-Eを含み、式中、A、B、C、D、及びEは独立して、ホスホセリン、ホスホトレオニン、ホスホチロシン、ホスホヒスチジン、グルタミン酸、又はアスパラギン酸であり、A、B、C、D、及びEの少なくとも2つ、好ましくは、3つはホスホアミノ酸である。好ましい一実施形態において、ホスホアミノ酸残基はホスホセリンであり、最も好ましくは3つの連続するホスホセリン残基である。D及びEが、独立してグルタミン酸又はアスパラギン酸であることも好ましい。
【0159】
一実施形態において、ACP又はACFPは、無傷のカゼイン又はカゼインのフラグメントの形態であるカゼインホスホペプチド(CPP)によって安定化され、形成される複合体は、好ましくは、式[CPP(ACP)8]n又は[(CPP)(ACFP)8]nで表され、式中のnは1以上であり、たとえば6である。形成される複合体は、コロイド状複合体であってよく、そのコア粒子は凝集して、水中で大型(たとえば100nm)のコロイド粒子を形成する。したがって、PPはカゼインタンパク質又はホスホペプチドであってよい。
【0160】
PPは、あらゆる供給源から得られてよく、全長カゼインポリペプチドを含めたより大きなポリペプチドの文脈で存在することができ、カゼイン、若しくはホスフィチン(phosphitin)などの別のホスホアミノ酸に富むタンパク質のトリプシン消化若しくはその他の酵素消化若しくは化学的消化によって、又は化学合成若しくは組替え合成によって単離されてよく、但し、前述の配列-A-B-C-又はA-B-C-D-Eを含むことが条件である。このコア配列を隣に有する配列は、あらゆる配列であってよい。しかし、αs1(59 79)、β(1-25)、αs2(46-70)、及びαs2(1-21)中の隣接配列が好ましい。隣接配列は、任意選択により、1つ以上の残基の欠失、付加、又は保存的置換によって改変されてよい。隣接領域のアミノ酸組成及び配列は重要ではない。
【0161】
ホスホペプチドは、国際公開第2006/056013号パンフレット、国際公開第2006/135982号パンフレット、又は米国特許第5,015,628号明細書のいずれかに記載のものから選択することができる。
【0162】
保存的置換の例を以下の表1に示す。
【0163】
【0164】
隣接配列は、非天然アミノ酸の残基を含むこともできる。遺伝暗号によってコードされない一般的に遭遇するアミノ酸としては以下のものが挙げられる:
Glu及びAspの場合の2-アミノアジピン酸(Aad);
Glu及びAspの場合の2-アミノピメリン酸(Apm);
Met、Leu、及び別の脂肪族アミノ酸の場合の2-アミノ酪(Abu)酸;
Met、Leu、及び別の脂肪族アミノ酸の場合の2-アミノヘプタン酸(Ahe);
Glyの場合の2-アミノイソ酪酸(Aib);
Val及びLeu及びIleの場合のシクロヘキシルアラニン(Cha);
Arg及びLysの場合のホモアルギニン(Har);
Lys、Arg及びHisの場合の2,3-ジアミノプロピオン酸(Dpr);
Gly、Pro,及びAlaの場合のN-エチルグリシン(EtGly);
Asn、及びGlnの場合のN-エチルアスパリギン(N-ethylasparigine)(EtAsn);
Lysの場合のヒドロキシルリシン(Hyl);
Lysの場合のアロヒドロキシルリシン(AHyl);
Pro、Ser、及びThrの場合の3-(及び4)ヒドロキシプロリン(3Hyp、4Hyp);
Ile、Leu,及びValの場合のアロイソロイシン(Alle);
Alaの場合のρ-アミジノフェニルアラニン;
Gly、Pro、Alaの場合のN-メチルグリシン(MeGly、サルコシン)。
Ileの場合のN-メチルイソロイシン(MeIle);
Met及び別の脂肪族アミノ酸の場合のノルバリン(Nva);
Met及び別の脂肪族アミノ酸の場合のノルロイシン(Nle);
Lys、Arg及びHisの場合のオルニチン(Orn);
Thr、Asn及びGlnの場合のシトルリン(Cit)及びメチオニンスルホキシド(MSO);
Pheの場合のN-メチルフェニルアラニン(MePhe)、トリメチルフェニルアラニン、ハロ(F、Cl、Br及びI)フェニルアラニン、トリフロウリルフェニルアラニン(triflourylphenylalanine)。
【0165】
一実施形態では、PPは、αs1(59-79)[1]、β(1-25)[2]、αs2(46-70)[3]、及びαs2(1-21)[4]からなる群から選択される1つ以上のホスホペプチドである:
[1]Gln59-Met-Glu-Ala-Glu-Ser(P)-Ile-Ser(P)-Ser(P)-Ser(P)-Glu-Glu-Ile-Val-Pro-Asn-Ser(P)-Val-Glu-Gln-Lys79(配列番号1)αs1(59-79)
[2]Arg1-Glu-Leu-Glu-Glu-Leu-Asn-Val-Pro-Gly-Glu-Ile-Val-Glu-Ser(P)-Leu-Ser(P)-Ser(P)-Ser(P)-Glu-Glu-Ser-Ile-Thr-Arg25(配列番号2)β(1-25)
[3]Asn46-Ala-Asn-Glu-Glu-Glu-Tyr-Ser-Ile-Gly-Ser(P)-Ser(P)-Ser(P)-Glu-Glu-Ser(P)-Ala-Glu-Val-Ala-Thr-Glu-Glu-Val-Lys70(配列番号3)αs2(46-70)
[4]Lys1-Asn-Thr-Met-Glu-His-Val-Ser(P)-Ser(P)-Ser(P)-Glu-Glu-Ser-Ile-Ile-Ser(P)-Gln-Glu-Thr-Tyr-Lys21(配列番号4)αs2(1-21)。
【0166】
本発明のある好ましい形態においては、液体組成物は、マウスウォッシュ、リンス、又はスプレーなどであってよい。このような調製物においては、ビヒクルは、典型的には、湿潤剤を望ましくは含む水アルコール混合物である。一般に、水対アルコールの重量比は約1:1~約20:1の範囲内である。この種類の調製物中の水アルコール混合物の総量は、典型的には調製物の約70~約99.9重量%の範囲内である。アルコールは典型的にはエタノール又はイソプロパノールである。エタノールが好ましい。
【0167】
従来通り、口腔用調製物は、通常、好適な表示付き包装材料で販売又はその他の方法で配布されることは理解されよう。したがって、マウスリンスの瓶は、実質的にそれがマウスリンス又はマウスウォッシュであることが記載され、その使用法が記載された表示を有する。
【0168】
液体組成物を加える前、歯の表面、表面下、又は病変は、準備用組成物を用いて準備する(たとえば清浄にする)ことができる。このような組成物は以下の成分を含むことができる。予防作用を増加させ、口腔全体への有効物質の徹底的で完全な分散を促進し、組成物をより化粧品的に許容されるようにするために、有機界面活性物質を組成物中に使用することができる。有機界面活性材料は、好ましくはアニオン性、非イオン性、又は両性であり、好ましくは有効物質と相互作用しない。組成物に洗浄性及び発泡性を付与する洗浄材料を界面活性物質として使用することが好ましい。アニオン性界面活性剤の好適な例は、高級脂肪酸モノグリセリドモノサルフェートの水溶性塩、たとえば水素化ヤシ油脂肪酸の一硫酸化モノグリセリドのナトリウム塩、高級アルキルサルフェート、たとえばラウリル硫酸ナトリウム、アルキルアリールサルフェート、たとえばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、高級アルキルスルホアセテート、1,2-ジヒドロキシプロパンスルホネートの高級脂肪酸エステル、並びに脂肪酸、アルキル基、又はアシル基中に12~16個の炭素を有するものなどの低級脂肪族アミノカルボン酸化合物の実質的に飽和した高級脂肪族アシルアミドなどである。最後に記載のアミドの例は、N-ラウロイルサルコシン、並びにN-ラウロイル、N-ミリストイル、又はN-パルミトイルサルコシンのナトリウム、カリウム、及びエタノールアミン塩であり、これらはセッケン及び類似の高級脂肪酸材料を実質的に有するべきではない。本発明の口腔用組成物中でのこれらのサルコナイト(sarconite)化合物の使用は、酸溶液に対する歯のエナメル質の溶解性をある程度低下させることに加えて炭水化物を分解するために、これらの材料が口腔内の酸形成の阻害において長期間顕著な効果を示すので、特に好都合である。使用に好適な水溶性非イオン性界面活性剤の例は、エチレンオキシドと、長い疎水性鎖(たとえば約12~20個の炭素原子の脂肪族鎖)を有しこれと反応性である種々の反応性水素含有化合物との縮合生成物であり、これらの縮合生成物(「エトキサマー」(ethoxamers))は親水性ポリオキシエチレン部分を含有し、たとえば、ポリ(エチレンオキシド)と、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪アミド、多価アルコール(たとえばソルビタンモノステアレート)、及びポリプロピレンオキシド(たとえばPluronic材料)との縮合生成物である。
【0169】
ホワイトニング剤、保存剤、シリコーン類、クロロフィル化合物、及び/又はアンモニア化材料、たとえば尿素、リン酸二アンモニウム、及びそれらの混合物などの種々の他の材料を本発明の口腔用調製物中に混入することができる。これらの補助剤が存在する場合には、望ましい性質及び特性に実質的に悪影響を与えない量で調製物中に混入される。任意の好適な着香又は甘味材料を使用することもできる。好適な着香成分の例は、香味油、たとえばスペアミント油、ペパーミント油、ウインターグリーン油、サッサフラス油、丁子油、セージ油、ユーカリ油、マヨラナ油、桂皮油、レモン油、及びオレンジ油、並びにサリチル酸メチルである。好適な甘味剤としては、スクロース、ラクトース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、シクラミン酸ナトリウム、ペリラルチン、AMP(アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル)、サッカリンなどが挙げられる。好適には、着香剤及び甘味剤は、それぞれ又は合わせたものが、調製物の約0.1%~5%超を構成しうる。
【0170】
アルカリpHのさらなる組成物は、ゲル形成を増強するための追加の成分をさらに含むことができる。たとえば、ゲル化を増強するためにホスホペプチド安定化ACP又はACFPの架橋を促進するための、スズ、亜鉛、マグネシウム、若しくはその他の金属のイオン又はその他の化学物質の添加。
【0171】
本明細書は、特に人間に対する用途に言及しているが、本発明は獣医学的目的にも有用であることは明らかに理解されよう。したがってすべての態様において、本発明は、家畜、たとえばウシ、ヒツジ、ウマ、及び家禽、コンパニオンアニマル、たとえばネコ及びイヌ、並びに動物園の動物に有用である。
【0172】
これより以下の非限定的な例を参照しながら、本発明をさらに説明する。
【0173】
実施例1
高濃度液体CPP-ACFP及びCPP-ACP溶液の調製
沈殿又はゲル化の直前まで(通常は約78mM~124のCa2+及び48~76mMの無機ホスフェートの最終濃度が得られる)、3.25MのCaCl2及び1.25MのNaH2PO4(pH5.5)のストック溶液を約30のアリコートで、10~15%w/vのカゼインのトリプシン消化物に加えた。溶液は、十分に混合しながらゆっくりと(すなわち、1分当たり約1体積%未満の添加)加えた。ホスフェート溶液の1つのアリコートを最初に加え、続いてカルシウム溶液の1つのアリコートを加えた。十分に混合しながら1~10MのNaOHを用いてバルク溶液のpHを9.0に維持した。通常はカルシウムイオンのそれぞれの添加の後に水酸化物イオンを加えることで、pHスタットによって水酸化ナトリウム溶液を自動的に加えた。カルシウムイオン、ホスフェートイオン、及び水酸化物イオンの添加終了後、溶液を0.1ミクロンのフィルターに通して濾過し、1~2倍に濃縮した。次にその保持液を1~2体積の水で洗浄して、塩及び不活性(及び苦味のある)ペプチドを除去した。調製されたCPP-ACP溶液を次に噴霧乾燥又は凍結乾燥して、白色粉末を得た。この乾燥粉末を次に水に加え、1~10MのHClを加えることによってpH5.5の45%w/vのCPP-ACP溶液を形成するか、又は8,200ppmのFを生成するためのNaFを加え、1~10MのHClを加えることによってpH5.5において63%w/vCPP-ACPの溶液を生成した。
【0174】
75gのCPP-ACP粉末を20mlの水に加え、それぞれの添加は少量の粉末で(0.5g/分)行い、同時に10MのHClを加えることでpHを5.5に維持しながら、75%w/v溶液を調製した。各添加後に溶液を十分に混合して確実に分散するようにした。濃厚NaF(0.95M)溶液を10MのHClと供に加えて、最終的に52mmolのFが加えられるようにした。CPP-ACP粉末、NaF、及びHClを2~3時間かけて水とともに加え、最終体積が100mlになるようにした。こうして、75%w/vのCPP-ACP、9,880ppmのF、pH5.5の液体組成物を生成した。
【0175】
実施例2
CPP-ACP及びアルカリ溶液を用いた白斑病変のマスキング
45%w/vのCPP-ACPpH5.5の液体溶液を、白斑病変を有するエナメル質ブロックの表面に、マイクロブラシで塗布した(数秒間)。次にこのエナメル質ブロックを37℃で20分間インキュベートした。次に、1MのNaOH溶液(約pH14)をマイクロブラシで塗布し(数秒間)、次にエナメル質ブロックを37℃でさらに20分間インキュベートした。
【0176】
図1は、同じ病変に由来する(すなわちエナメル質ブロックを2つに切断した)、処置後の白色病変(T)と対照病変(C)との比較を示している。白斑病変が依然としてはっきりと見える対照試料と比較すると、処置試料中の白斑病変は、病変が半透明になることによる処置によって実質的にマスクされた。
【0177】
実施例3
63%w/vのCPP-ACP、遊離のフッ化物、及びアルカリ溶液を用いた白斑病変のマスキング
63%w/vのCPP-ACP及び8,200ppmのNaFとしてのFのpH5.5液体溶液を、白斑病変を有するエナメル質ブロックの表面にマイクロブラシで塗布した(数秒間)。次にエナメル質ブロックを37℃で20分間インキュベートした。次に1MのNaOH溶液をマイクロブラシで塗布し(数秒間)、次にエナメル質ブロックを37℃でさらに20分間インキュベートした。
【0178】
図2は、同じ病変に由来する(すなわちエナメル質ブロックを2つに切断した)、左側の処置後の白斑病変(T)と、右側の対照病変(C)との比較を示している。白斑病変が依然としてはっきりと見える対照試料と比較すると、処置試料中の白斑病変は、病変が半透明になることによる処置によって実質的にマスクされた。
【0179】
実施例4
歯科医院において、歯のエナメル質の低石灰化した歯の表面又は表面下の視認性を低下させることが必要な患者は、以下のステップを用いて処置することができる:
1.ラバーダムを取り付け、白斑の酸エッチングを行う[このステップは任意選択であり、非常に多孔質の(活性)病変の場合は必要ではない]。これは、標準的な液体ラバーダム(軟部組織を保護するための樹脂バリア)及び酸エッチング技術(例えば30%リン酸又は15%HCl)を必要とする場合がある。
2.マイクロブラシを用いて高濃度(>40%w/v)の安定化CPP-ACP又はCPP-ACP/Fの酸性溶液(例えばpH6未満)を白斑に塗布し、次に5~20分間放置する。任意選択により、高強度LED硬化光(例えば10W高出力青色光)を使用することによって熱を加えて、(患者が快適な状態で)温度を急激に45~50℃に上昇させることができる。
3.マイクロブラシを用いて高濃度の塩基(例えば4%w/vのNaOH)を塗布し、次に5~20分間放置する。任意選択により、高強度LED硬化光(例えば10W高出力青色光)を使用することによって熱を加えて、(患者が快適な状態で)温度を急激に45~50℃に上昇させることができる。
【0180】
実施例5
例示的な歯科用キット
3つのパートを含むか又はそれからなる歯科用キット:
(a)好ましくは本明細書に記載のように調製された5gのCPP-ACP粉末、
(b)5mlの、1.146MのHCl中の0.73MのNaF、及び
(c)2つのマイクロブラシを含む、1.5MのNaOH。
【0181】
パート(a)をパート(b)に加え、十分に混合した。次にこの混合物を一方のマイクロブラシで左側の白斑病変に塗布した(塗布前の病変を示す
図3(A)の画像を参照されたい)。37℃において数秒/分後、次に溶液(c)を第2のマイクロブラシで左側の白斑病変に塗布した。15分以内に、白斑中の反応が起こってゲルが形成され、白斑が隠蔽された(
図3(B)の画像を参照されたい)。
【0182】
実施例6
75%w/vのCPP-ACP、遊離のフッ化物、及びアルカリ溶液を用いた白斑病変のマスキング
75%w/vのCPP-ACP及び9,880ppmのNaFとしてのFのpH5.5液体を、白斑病変を有するエナメル質ブロックの表面にマイクロブラシで塗布した(数秒間)。次にエナメル質ブロックを37℃で10分間インキュベートした。次に2MのNaOH溶液をマイクロブラシで塗布し(数秒間)、次にエナメル質ブロックを37℃でさらに20分間インキュベートした。
【0183】
図4は、同じ病変に由来する(すなわちエナメル質ブロックを2つに切断した)、左側の処置後の白斑病変と、右側の対照病変との比較を示している。白斑病変が依然としてはっきりと見える対照試料と比較すると、処置試料中の白斑病変は、病変が半透明になることによる処置によって実質的にマスクされた。
【0184】
実施例7
歯の表面に塗布する前の混合組成物の形成による白斑病変のマスキング
歯の表面に塗布する前に、脱気した63%w/vのCPP-ACP/8,000ppmのFのpH5.5における液体組成物を、1.5MのNaOHの溶液と混合した。次にこの混合組成物を白斑病変上に塗布した。次に設定2の歯科用硬化光を表面上に40秒間使用した。結果として、エナメル質白斑の印象的な被覆が得られる(
図5)。
【0185】
実施例8
象牙質上の保護層の形成
本発明の別の用途は、露出した歯根(象牙質)表面の封止又は閉塞である(高齢者は露出歯根表面を有し、それらは齲蝕/酸蝕症により罹患しやすい)。これらの露出歯根表面をシミュレートするために、歯根象牙質を15%のEDTAで2分間処理し、それによってスメア層を除去して象牙細管を露出させた(
図6、右側のブロック)。実施例7に記載の混合組成物を象牙質に塗布すると、表面上にゲルが形成された(
図6、左側のブロック)。
【0186】
さらに、混合組成物を象牙質表面(健全、又は酸緩衝液で脱灰する前のいずれか)に塗布した場合、溶液はゲルを形成するだけでなく、フルオロアパタイト(FA)層を表面上に形成し始めて象牙質を封止する(
図7、8、及び9に示される)。これによって、歯の過敏症の低下及び歯根齲蝕の危険性の減少においても劇的な効果が得られるであろう。興味深いことに、フルオロアパタイト層は白色であるので、黄色の象牙質を隠蔽し、それによって過敏症及び齲蝕/酸蝕症の危険性を減少させる封止及び保護層が得られるだけでなく、歯の審美性も改善される。
【0187】
象牙質細管(
図8の右側に露出して示されている)を完全に封止した表面上のその均一性を示すために形成された保護層を意図的に脱水させた(
図9に示される)。
【0188】
元素分析によって、形成された保護層が、フルオロハイドロキシアパプタイト(fluorohydroxyapaptite)と類似の組成を有することが分かった(
図9B)。
【0189】
実施例9
象牙質上の保護層の形成
方法:
・ すべての象牙質ブロックを研磨した
・ 象牙質ブロックを15%のEDTAで2分間処理した
・ 15秒間のエッチング(37%リン酸)
・ 脱気した63%(w/v)のCPP-ACP/8,100ppmのF(pH5.5)を同体積の2MのNaOHと混合する
・ あらかじめ混合した63%(w/v)のCPP-ACP/8,100ppmのF(pH5.5)及び2MのNaOHを象牙質表面上にマイクロブラシを用いて局所適用
・ 40秒間の光硬化
・ 37℃で48時間放置する
・ 切断し、ラップ仕上げを行い、及びマイクロラジオグラフィーを行う。
【0190】
図10に示されるように、象牙質表面上に無機層が形成された。
【0191】
実施例10
エナメル質上の保護層の形成
方法:
・ すべてのエナメル質ブロックを研磨した
・ 15秒間のエッチング(37%リン酸)
・ 63%(w/v)のCPP-ACP/8100ppmのF(pH5.5)を同体積の2MのNaOHと混合する
・ あらかじめ混合した63%(w/v)のCPP-ACP/8,100ppmのF(pH5.5)及び2MのNaOHをエナメル質表面上にマイクロブラシを用いて局所適用
・ 40秒間の光硬化
・ 37℃で48時間放置する
・ 切断し、ラップ仕上げを行い、マイクロラジオグラフィーを行う。
【0192】
図11に示されるように、エナメル質表面上に無機層が形成された。
【0193】
実施例11
歯の表面に塗布する前に混合組成物を形成することによる白斑病変のマスキング
30gのCPP-ACP粉末(市販のRecaldent)を19.5gの20,000ppmのF(NaF)溶液に加え、これに0.5gの11MのHCl溶液を加えて、最終50gを得た(したがってこの最終溶液は、pH7.8において7,800ppmのFを有する60%w/wのCPP-ACP、又はpH7.8において10,000mg/LのFを含有する75%w/vのCPP-ACPである)。
【0194】
十分に撹拌すると(約30分間)、均一で非常に粘稠であるが安定な溶液が7.8のpHで調製された。次に、取り込まれた気泡を除去するために、溶液を真空下に24時間置くことによってこの溶液を脱気した。
【0195】
マイクロブラシを用いてこの溶液を白斑病変に塗布し、次に歯科用硬化光(前述)を用いて40秒間光硬化させた。硬化前後の画像(
図12(a)前、
図12(b)硬化の40秒後、
図12(c)硬化から15分後、
図12(d)硬化から24時間後)を示している。硬化した安定化高濃度溶液によって白斑が非常に効果的に隠蔽され、この効果は37℃で少なくとも24時間維持された。
【0196】
この粘稠、安定、及び安全な(中性pH)溶液は、口腔外科における塗布が容易であり、より濃縮すると、さらに長時間にわたって良好な効果が得られる。
【0197】
本明細書において開示され規定される本発明が、記載の特徴、又は文章若しくは図面から明らかな個別の特徴の2つ以上のあらゆる別の組合せまで拡張されることは理解されよう。これらの異なる組合せのすべてが、本発明の種々の別の態様を構成する。
【配列表】
【国際調査報告】