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特表2022-524857単一光源光音響リモートセンシング(SS-PARS)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(54)【発明の名称】単一光源光音響リモートセンシング(SS-PARS)
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20220427BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20220427BHJP
   A61B 8/13 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N21/17 610
A61B8/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021555290
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(85)【翻訳文提出日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 IB2020051804
(87)【国際公開番号】W WO2020188386
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】62/818,967
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520277531
【氏名又は名称】イルミソニックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ILLUMISONICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ハジ レザ、パーシン
(72)【発明者】
【氏名】ベル、ケヴァン
【テーマコード(参考)】
2G047
2G059
4C601
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AA12
2G047AC13
2G047CA04
2G047FA02
2G047GD01
2G059AA02
2G059AA05
2G059AA06
2G059BB12
2G059EE09
2G059EE16
2G059FF01
2G059JJ17
2G059KK01
2G059MM01
4C601DE16
4C601EE09
(57)【要約】
サンプル中の励起位置において超音波圧力信号を生成するように構成されたパルス式又は強度変調励起ビームと、サンプルの励起位置に入射するインタロゲーションビームとを生成するように構成された正確に1つのレーザ源と、生成された超音波圧力信号を示すインタロゲーションビームの一部がサンプルから戻り、励起ビームとインタロゲーションビームをサンプルの表面の下に集光させるように構成された光学系と、インタロゲーションビームの戻ってきた一部を検出するように構成された検出器と、サンプルの表面の下からのインタロゲーションビームの戻ってきた一部の検出された強度変調に基づいてサンプルの画像を計算するように構成されたプロセッサと、を備える、サンプル内の表面下構造をイメージングする光音響リモートセンシングシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの表面下構造をイメージングする光音響リモートセンシングシステムであって、
前記サンプル中の励起位置において超音波圧力信号を生成するように構成されたパルス式又は強度変調励起ビームを生成するように構成された正確に1つのレーザ源と、
ここで、前記正確に1つのレーザ源は、前記サンプルの前記励起位置に入射するインタロゲーションビームを生成するようにも構成され、生成された前記超音波圧力信号を示す前記インタロゲーションビームの一部が前記サンプルから戻り、
前記励起ビーム又は前記インタロゲーションビームを前記サンプルの表面の下に集光させるように構成された光学系と、
前記インタロゲーションビームの戻ってきた一部を検出するように構成された検出器と、
前記サンプルの前記表面の下からの前記インタロゲーションビームの戻ってきた一部の検出された強度変調に基づいて前記サンプルの画像を計算するように構成されたプロセッサと、
を備える光音響リモートセンシングシステム。
【請求項2】
前記正確に1つのレーザ源の出力を前記パルス式又は強度変調励起ビームと前記インタロゲーションビームに分割するように構成されたビームスプリッタと、
前記インタロゲーションビームを前記パルス式又は強度変調励起ビームに関して遅延及び減衰させるように構成された光学遅延ラインと、
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記パルス式又は強度変調励起ビームと遅延及び減衰された前記インタロゲーションビームとを結合するように構成されたビームコンバイナをさらに備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ビームスプリッタとビームコンバイナとの間で、遅延及び減衰された前記インタロゲーションビームが前記パルス式又は強度変調励起ビームより長い光路に沿って進行する、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記サンプルへの表面放射を減少させるために前記インタロゲーションビームを光学減衰器へと方向付けるように構成される第二のビームスプリッタをさらに備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記インタロゲーションビームが前記光学減衰器を通過した後に、前記インタロゲーションビームと前記励起ビームが第二のビームコンバイナで結合される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第二のビームコンバイナを通過した後に、結合された前記インタロゲーション及び前記励起ビームは4分の1波長板を通過してそれらの偏光を円形にするように構成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記4分の1波長板を通過した後、結合された前記インタロゲーションビーム及び前記励起ビームは前記光学系へと方向付けられる、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記ビームスプリッタは偏光ビームスプリッタである、請求項2に記載のシステム。
【請求項10】
ビームの特性を生成又は変更するように構成された非線形光学素子をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記ビームの特性は波長及び/又はパルス幅を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムは、
組織学的サンプルのイメージング、
細胞核のイメージング、
たんぱく質のイメージング、
DNAのイメージング、
RNAのイメージング、
脂質のイメージング、
血中酸素飽和度のイメージング、
低酸素腫瘍のイメージング、
創傷治癒、火傷診断、又は手術のイメージング、
微小循環のイメージング、
血液酸素化パラメータのイメージング、
組織のある領域に流入する、及びそこから流出する血管内の血液流の推定、
分子的に特異的な標的のイメージング、
前臨床期腫瘍モデルの血管新生のイメージング、
微小及び大循環並びに色素細胞の臨床イメージング、
眼のイメージング、
蛍光アンギオグラフィの補足又は代用、
皮膚病変のイメージング、
メラノーマのイメージング、
基底細胞癌のイメージング、
血管腫のイメージング、
乾癬のイメージング、
湿疹のイメージング、
皮膚炎のイメージング、
モース術のイメージング、
腫瘍マージン切除を確認するためのイメージング、
抹消血管病変のイメージング、
糖尿病及び/又は褥瘡のイメージング、
火傷のイメージング、
整形外科手術、
顕微鏡下手術、
循環性腫瘍細胞のイメージング、
メラノーマ細胞のイメージング、
リンパ節血管新生のイメージング、
光線力学的療法に対する応答のイメージング、
血管焼灼メカニズムによるものを含む光線力学的療法に対する応答のイメージング、
化学療法に対する応答のイメージング、
抗血管新生薬に対する応答のイメージング、
放射線療法に対する応答のイメージング、
多波長光音響励起を用いた酸素飽和度の推定、
パルスオキシメトリを使用できない場合の静脈酸素飽和度の推定、
脳静脈酸素飽和度及び/又は中心静脈酸素飽和度の推定、
酸素フラックス及び/又は酸素消費量の推定、
血管床及びバレット食道及び/又は結腸直腸癌の深達度のイメージング、
脳手術中の機能イメージング、
内出血の評価及び/又は焼灼の確認、
臓器及び臓器移植の灌流の十分さのイメージング、
膵島移植部周囲の血管新生のイメージング、
皮膚移植片のイメージング、
組織スキャフォルド及び/又は生体材料のイメージングによる血管新生及び/又は免疫拒否反応の評価、
顕微鏡下手術を支援するためのイメージング、
血管及び/又は神経の切断を回避するためのガイダンス、
臨床又は前臨床用途での造影剤のイメージング、
センチネルリンパ節の識別、
リンパ節腫瘍の非侵襲又は低侵襲的識別、
遺伝子工学的に符号化されたレポータであって、前臨床期又は臨床期分子イメージング用途のためのチロシナーゼ、色素たんぱく質、及び/又は蛍光たんぱく質を含む遺伝子工学的に符号化されたレポータのイメージング、
分子イメージングのための能動的又は受動的に標的とされた光吸収ナノ粒子のイメージング、
血栓のイメージング、
血栓の年数のステージ特定、
内因性グルコース吸収ピークの検出によるグルコース濃度のリモート又は非侵襲的腫瘍内評価、
オルガノイド成長の評価、
発生中の胚のモニタリング、
バイオフィルムの組成物の評価、
齲歯の評価、
無生物構造の査定、
真贋の非侵襲的検証を行うための絵の具の組成の評価、
考古学的人工産物の評価、
製造品質管理、
製造品質保証、
カテーテル留置処置の代用、
胃腸病学的用途、
視野全体にわたる単一励起パルスイメージング、
組織のイメージング、
細胞のイメージング、
物体表面からの散乱光のイメージング、
散乱光の吸収誘導変化のイメージング、又は
光吸収の非接触イメージング
の用途の1つ又は複数で使用される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
第一及び第二の焦点は前記サンプルの前記表面から50nm~8mm下の深さにある、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記励起ビームと前記インタロゲーションビームは前記サンプルの前記表面から1mm以内に集光される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記励起ビーム又は前記インタロゲーションビームの少なくとも一方は、前記サンプルの前記表面の下の1μmを超える深さに集光される、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記光学系は、前記励起ビームを第一の焦点に、前記インタロゲーションビームを第二の焦点に集光し、前記第一及び第二の焦点は前記サンプルの前記表面より下にあり、
前記第一又は第二の焦点の少なくとも一方は、前記サンプルの前記表面の下の、前記励起ビーム及び前記インタロゲーションビームのそれぞれの少なくとも一方の集光領域を超える深さにある、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記励起ビームと前記インタロゲーションビームの横方向の分離は前記サンプル内で1mm未満である、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記励起ビームの焦点は横方向に前記インタロゲーションビームの集光領域内にあり、又は前記インタロゲーションビームの焦点は横方向に前記励起ビームの集光領域内にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記検出器は干渉計である、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記検出器は非干渉計検出器である、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記サンプルの構造を、前記サンプルを保持するガラス窓を通じてイメージングするように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
第一の波長板及び第二の波長板と、
第二のビームスプリッタ及び第三のビームスプリッタと、ここで、前記第二のビームスプリッタ及び前記第三のビームスプリッタは、偏光ビームスプリッタであり、
折り返しミラーと、
をさらに備え、
前記第一の波長板、前記第二の波長板、前記第二のビームスプリッタ、前記第三のビームスプリッタ、及び前記折り返しミラーは、主励起経路と前記光学遅延ラインの経路との間にある、請求項2に記載のシステム。
【請求項23】
ハンドヘルドイメージングプローブであって、
請求項1に記載のSS-PARSと、
偏波保持光ファイバと、
連結可能なスキャニングヘッドと、
を備えるハンドヘルドイメージングプローブ。
【請求項24】
内視鏡であって、
請求項1に記載のSS-PARSと、
偏波保持光ファイバと、
を備える内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、光学イメージングの分野、特にin vivo、ex vivo、又はin vitroでの生物組織の非接触イメージングのためのレーザを用いた方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書中に記されている米国特許及び特許公開のすべてを参照によって本願に援用することを明記する。
光音響イメージング技術は、光散乱媒質内の光吸収コントラストを可視化することのできるパワフルなモダリティファミリを代表する。一般に、ナノ秒又はピコ秒範囲の短い光パルスがサンプル中に発射され、そこでこれらが特異的な種によって優先的吸収される。このような光エネルギの吸収が今度は、局所熱を発生させ、それが初期圧として知られる局所的圧力上昇を生じさせる。従来の光音響技術は、これらの初期圧から生成された超音波が当初の発生源からある距離だけ伝搬するのを、通常はサンプルの外表面において記録する。
【0003】
光音響モダリティは様々な実施形態をとることができるが、3つのより大きいファミリ、すなわち光音響トモグラフィ(PAT:photoacoustic tomography)、音響解像度光音響顕微鏡法(AR-PAM:acoustic-resolution photoacoustic microscopy)、及び光学解像度光音響顕微鏡法(OR-RAM:optical-resolution photoacoustic microscopy)に分類することができる。PAT装置は、構造的に従来の超音波イメージングシステムに似ている傾向にあり、音響トランスデューサのアレイからなり、それに励起光をサンプルへと向ける光導波路等の光学送達機構が追加される。励起イベントの後、複数の音響信号が音響アレイに沿って記録され、その後処理されて音響源の当初の分布が再構成され、これは局所化された光吸収を示す。PATは、優れた深達距離(>5cm)を提供する傾向にあるが、解像度が限定的である(約500μm)。AR-PAM装置は、単焦点音響トランスデューサと集束されない励起ビームとからなる傾向にある。画像は、トランスデューサの焦点をサンプル全体にわたって移動させることによって点ごとに取得され、1つの画像のために複数の励起捕捉イベントが必要となる。AR-PAMは、PATと比べて浅い深達距離を有する傾向にあるが、音響回折限界を上限として、より改善された解像度特性を有する。OR-PAMは集光励起及び、一般的には集光トランスデューサを利用して、さらに高い解像度特性(<30μm)を提供するが、それと引き換えに深達距離が低下する(約1mm、光拡散を上限とする)。
【0004】
光音響モダリティは、多様な内因性in vivoターゲットのイメージングを行うのに有効であることが実証されている。これらには、幾つかを挙げれば、マクロ血管からミクロ血管の脈管構造、DNAの紫外線吸収を利用した細胞構造、リピドリッチプラークの可視化、血中酸素飽和度分布の可視化を含む機能イメージング、及び酸素代謝の可視化が含まれるが、これらに限定されない。また、光音響モダリティは、本来は内因性コントラストを提供しない所望の標的に選択的に標識できる様々な造影剤のイメージングが可能である。しかしながら、従来の光音響技術ではサンプルとの物理的な連結が必要であるため、これらは火傷の診断、術中イメージング、創傷治癒のモニタリング、及び多くの内視鏡処置等の様々な臨床応用に不向きである。
【0005】
非接触光音響モダリティを生成しようとするこれまでの試みは、有効なin vivo可視化能力を提供できず、理想化されたファントム内での構造的再現を実証しただけである。これらの努力はすべて、光音響音波をサンプルのある外表面で幾つかの干渉計技術を通じて検出することを目指していた。一例が(ガートン(Gurton)他の(特許文献1))において提案されており、これは30μmの横方向解像度を提供する。「生物組織検査法及びシステム(Biological Tissue Inspection Method and System)」と題する他のシステムは(ルソー(Rousseau)他の(特許文献2))に記載されている。
【0006】
より最近では、有効なin vivo非接触光音響モダリティが報告されており、これは光音響リモートセンシング(PARS:photoacoustic remote sensing)顕微鏡法として知られる(ハジ・レザ(Haji Reza)他の(特許文献3)及びハジ・レザ(Haji Reza)他の(特許文献4))。この技術はこれまでの努力が直面した感度の問題の多くを解決した。PARSは、表面振動を通じて音響信号を推測するのではなく、励起スポットに共焦点合わせされる(co-focused)二次的プローブビームの後方反射強度をモニタする。高い光音響初期圧は、光弾性効果を通じて励起領域内の光学特性に自明でない摂動を生じさせる。この検知方法では干渉効果が生じないため、システム内及びサンプル内の小さい摂動に対するトレランスがより高く、サンプルから戻る光子のうちより高いパーセンテージを収集するため感度が高まる、という点で大きな利点を提供する。PARSは、in vivoでの機能イメージング能力を示し、回折により限定される光学解像度を特徴とする。PARS顕微鏡法には、2つの別々の光源の使用が必要であり、それは通常、複数の波長の使用を要する。これは、使用される屈折光学系内及びサンプル自体における色収差による問題の原因となり得る。これらの収差によって、複数の焦点の相互位置合わせが困難となる可能性があり、幾つかのケースでは広い光学スキャンを保持することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0185055号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/0200845号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2016/0113507号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2017/0215738号明細書
【発明の概要】
【0008】
本開示の実施形態は、不所望な色効果(chromatic effects)のない、又は実質的にないPARS顕微鏡に関する。このような構成は、励起と検出との間の理想的な共焦点合わせ(co-focus)を確実にすることと、一時的露光を限定し得るパルス式検出をすることによって、露光を減らすという点で利点を提供し得る。SS-PARSは、二次的検出源が不要であることから、PARSと比較して製造の費用対効果が高くなり得る。また、パルス式検出を使用することによって、SS-PARSはPARSよりさらに改善されたイメージング速度を提供し得、インタロゲーション時間を短縮することによって連続波検出が使用される。幾つかの態様において、SS-PARSは励起及び検出の両プロセスのために1つの(すなわち、1つのみ、すなわち正確に1つの)光源を利用する。しかしながら、後述する理由により、この実施では多くの技術的課題が生じ、これらは本開示において対処される。
【0009】
ある態様によれば、単一光源光音響リモートセンシング(SS-PARS:single source photoacoustic remote sensing)顕微鏡法として知られる、サンプル内の表面下構造のイメージングのための光音響リモートセンシングシステムが提供され、これは単一の(例えば、正確に1つ、すなわち1つのみの)光源光路を用いた非接触光吸収コントラストを提供する。これは、パルス光源の使用を通じて実現されてよく、それは2つ又はそれ以上のパルスに分割され、それらが相互に関して遅延及び減衰されて、同じ光源をサンプルの励起と生成されたPARS信号の検出との両方に使用することができる。これは、システムのコスト、色効果の排除又は削減と共に、パルス式検出を利用し得る従来のPARSと比較したサンプル露光の軽減及び信号忠実度の改善といった点での複数の利益を提供する。これは、励起位置においてサンプル経路内に超音波信号を生成するように構成されたパルス励起ビームと、生成された超音波信号を示すサンプルからの励起ビームの戻ってきた一部と、励起経路を分割する光スプリッタと、1つのパルスを他のパルスに関して遅延及び減衰させるための光遅延ラインと、収集された結果を解釈するための処理ユニットと、を含み得る。励起ビームおよびインタロゲーションビームはサンプルの表面の下に集光され得る。ビームが集光される深さは、特に限定されず、例えばサンプルの表面下50nm~8mmであり得る。
【0010】
他の態様によれば、感度と正確さの点で内視鏡PARSより有意に改善された特性を提供し得る内視鏡SS-PARSが提供される。内視鏡SS-PARSは、励起位置においてサンプル経路内に超音波信号を生成するように構成されたパルス励起ビームと、生成された超音波信号を示す、サンプルからの励起ビームの戻ってきた一部と、励起経路を分割する光スプリッタと、1つのパルスを他のパルスに関して遅延及び減衰させるための光遅延ラインと、入射端と検出端を有する光ファイバケーブルと、収集された結果を解釈するための処理ユニットと、を含み得る。
【0011】
SS-PARSの他の実施形態について、励起源は単独又は複数の光源を含んでいてよく、これはパルス式又は変調CWである。励起光源は狭帯域であってもよく、また、個々により広いスペクトルを提供する広い波長範囲すなわち広帯域をカバーしてもよい。この各種の励起スペクトルコンテンツは、サンプル中の様々な標的種の吸収コントラストのスペクトルアンミキシングを実施するための手段/機構を提供する。光ビームスプリッタ及びコンバイナは、バルク光学実装のためのビーム分割キューブ若しくは偏光ビーム分割キューブ又はファイバ型実装のためのファイバカプラ等の光学カプラを含み得る。複数のSS-PARSを組み合わせて、in vivoでの血中酸素濃度等の事項の多重及び機能イメージングのための所望の波長コントラストを提供することができる。複数のSS-PARSを使用するモダリティは、同じ又は複数のイメージングヘッドまでの複数のSS-PARS検出経路を組み合わせることによって実現されてもよい。複数のSS-PARS検出経路の使用は、幾つかを挙げれば、波長、バルス幅、又はパルス繰返し率等の異なるビーム特性の組合せへのアクセスを提供することができる。
【0012】
インタロゲーション位置のスキャニングは、ガルボミラー、MEMSミラー、共鳴スキャナ、ポリゴンスキャナ等の光学スキャニングを通じて、又は単軸若しくは多軸リニア若しくは回転ステージを用いた光学系又はサンプルの何れかの機械的スキャニングを通じて実行され得る。焦点の軸方向スキャニングは焦点距離可変レンズ(ボイスコイル駆動式、MEMS型、圧電型、及び可変音響グリンレンズを含む)を通じて提供され得る。適応型光学系は、眼科イメージング等のある用途における収差を補正するために使用され得る。関係する信号データの抽出は、プログラムのみによる実装において、関係する回路ベースのプロセッサに対して、又はこれら2つの何れかの組合せを通じて実行され得る。
【0013】
前述の光ファイバは、マルチモード、シングルモード、偏波保持、紡糸繊維、又はこれらの何れの組合せであってもよい。
SS-PARSがPARSと異なる点は、それが(1)別の検出光源を必要としないこと、(2)ある励起イベントのために検出経路ごとに1つの(例えば正確に1つ、すなわち1つのみの)光学波長で意図的に実施されること、(3)光学遅延経路又はバーストパルス励起光源の何れかがあればよいこと、及び(4)サンプルの励起とサンプルからの光変調の検出の両方に使用される光学コンポーネントの多くを意図的に共有すること、である。
【0014】
ある態様によれば、サンプルの光学特性をインタロゲートする方法は、光パルスを生成するステップと、光パルスを分離するステップと、1つのパルスを他のパルスに関して遅延させるステップと、1つのパルスを他のパルスに関して減衰させるステップと、パルスを結合するステップと、光をサンプルのある位置へと方向付けるステップと、サンプルのある位置からの光を収集するステップと、を含み得る。
【0015】
ある態様によれば、サンプルの光学特性をインタロゲートする方法は、光パルスを生成するステップと、光パルスを分離するステップと、1つのパルスを他のパルスに関して遅延させるステップと、1つのパルスを他のパルスに関して減衰させるステップと、パルスを結合するステップと、他の光学イメージングモダリティを使用して、光学経路を結合するステップと、光をサンプルのある位置へと方向付けるステップと、サンプルのある位置からの光を収集するステップと、を含み得る。
【0016】
ある態様によれば、光学検出器は複数のパルスを収集し、複数のパルス間の差を抽出するように構成されたプロセッサを含み得る。
その他の態様は、以下の説明と特許請求の範囲から明らかであろう。他の態様において、本明細書に記載の態様は、当業者であればわかるように、何れの合理的組合せでも結合され得る。
【0017】
上記及びその他の特徴は、添付の図面を参照する以下の説明からより明らかとなり、図面は図解を目的としているにすぎず、如何様にも限定することは意図されていない。本特許明細書において、「~を含む(comprising)」という単語は非限定的な意味において使用され、この単語に続く項目が含まれるが、具体的に記述されていない項目は排除されないことを意味する。不定冠詞(a)による要素への言及は、その要素が1つ及び1つのみ存在することを要求していない。
【0018】
後述の特許請求項の範囲は、上述の例及び図面中に示されている好ましい実施形態により限定されるべきではなく、それには説明全体と矛盾しない、最も広い解釈が付与されるべきである。
【0019】
図中の偏光光学系の向きの描き方は必ずしも正しい向きを表しているとはかぎらない。違いは当業者にとっては明らかであるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】SS-PARSの概観図を示す。
図2】フリースペースSS-PARSに関する例示的システムレイアウトの略図を示す。
図3】フリースペースSS-PARSに関する他の例示的システムレイアウトの略図を示す。
図4】フリースペースSS-PARSに関するまた別の例示的システムレイアウトの略図を示す。
図5】ファイバベースのSS-PARSに関する例示的システムレイアウトの略図を示す。
図6】ファイバベースのSS-PARSに関する他の例示的システムレイアウトの略図を示す。
図7】ファイバベースのSS-PARSに関するまた別の例示的システムレイアウトの略図を示す。
図8a-8b】8aは、SS-PARS信号の、励起パルスがインタロゲーションパルスの前にある例示的システムをそれらが通過する際のグラフであり、8bは、SS-PARS信号の、インタロゲーションパルスが励起パルスの前にある例示的システムをそれらが通過する際のグラフである。
図9】SS-PARSが他の光学イメージングモダリティと組み合わせた例示的システムレイアウトの略図を示す。
図10】複数のSS-PARS検出経路が結合された例示的システムレイアウトの略図を示す。
図11】偏光変動に無依存なフリースペースSS-PARSに関する例示的システムレイアウトの略図を示す。
図12】偏光変動に無依存なファイバベースのSS-PARSに関する例示的システムレイアウトの略図を示す。
図13】励起パルスがインタロゲーションパルスの前にある、平衡検出を用いるフリースペースSS-PARSに関する例示的システムレイアウトの略図を示す。
図14】インタロゲーションパルスが励起バルスの前にある平衡検出を用いるフリースペースSS-PARSに関する例示的システムレイアウトの略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、SS-PARS経路の高レベル概観図を示す。光源(101)で単一パルスが作られ、それが分割される(102)。インタロゲーション成分(I)は遅延ライン(103)を通過して、励起成分(E)と再結合される(104)。すると、信号は再び分割され(106)、それによってインタロゲーション成分が減衰し(108)、サンプルへの表面放射が削減される。すると、2つのパルスがもう一度再結合され(109)、イメージングヘッドへと渡されて、ここでサンプルと相互作用する。励起成分がまずヒットして、サンプル内の圧力変調を生成させ、すると、それによって時間的にその後に続くインタロゲーション成分中のPARS変調が生じる。これら2つの成分がその後、戻って検出される。これが実行され得る1つの方法が図1に示されており、その中で成分は再び分割される(109)。しかしながら、ここで、励起成分は減衰器(108)を通過し、それによってその強度はインタロゲーション成分と同じ量だけ減少する。その後、信号は再結合され(107)、検出フォトダイオード(107)へと方向付けられ(105)、そこでこれらが検出される。この例において、所望のPARS信号を抽出するためには、フォトダイオードの生成された電気信号に対する追加的な計算又はアナログ処理を行う必要があり得る。
【0022】
図2は、SS-PARSの1つの考え得る実施形態をハイライトしたものである。偏光励起源(201)は、パルス式ファイバレーザからなっていてよく、レンズ(204)等のコリメータを使ってフリースペースへと結合され、レンズの偏光軸は、ビームがビームをその偏光成分へと分割する偏光ビームスプリッタ(205)で分割されるような向きとされる。1つの成分はインタロゲーション成分(I)と呼ぶが、単に長い光路であってもよい光遅延経路(207)へと向けられ、光遅延経路(207)によってインタロゲーション成分(I)は、2つの経路が他の偏光ビームスプリッタ(206)で再結合されたときに、励起成分(E)に関して遅延される。後に戻り光に使用され得る偏光無依存ビームスプリッタ(210)を通過した後、2つの成分は他の偏光ビームスプリッタ(211)で再び分割され、インタロゲーション成分は光学減衰器(213)で減衰されて、サンプルへの露光が最小限にされる。2つの成分は、また別の偏光ビームスプリッタ(215)で再結合され、4分の1波長板(216)を通過して、これらの偏光が円形化される。すると、成分はある形態の対物レンズ又は集光アセンブリ(220)を使ってサンプルに集光される。この実施形態において、インタロゲーションスポットを、ガルバノメータミラーセット(219)及び/又は機械的モータステージ(221)等の光学スキャニングシステムを使ってサンプルの周囲でスキャンすることができる。サンプルからの後方反射成分は対物レンズ(220)によって収集されるが、これはサンプルと相互作用する前の大きさと比較して大幅に減衰され、第二のインタロゲーション成分もPARS機構によって変調されており、それがインタロゲーションスポットの光吸収を示す。2つの成分は再び4分の1波長板(216)を通り、そこでそれらの偏光軸は反転されており、それによって、再び偏光ビームスプリッタ(215)と相互作用すると、到着したときとは別の経路に沿って方向付けられる。これによって、励起成分は減衰器(213)を通り、それによって、インタロゲーション成分のPARS変調がなければ、2つのパルスはその強度においてほとんど同じであり得る。2つの成分は、偏光ビームスプリッタ(211)で再結合され、偏光無依存ビームスプリッタ(210)を使ってフォトダイオード(209)へと方向付けられ、検出される。
【0023】
図3は、SS-PARSの別の考え得る実施形態をハイライトしたものである。ここで、偏波保持光ファイバ(318)が光学経路に追加されて、ハンドヘルドイメージングプローブ等の連結可能なスキャニングヘッド(322)の使用が可能となっている。この実施形態は、ハンドヘルドSS-PARSを製造するために使用することができる。図3の中で図2の特徴と同じ名称及び類似した番号を有する特徴は、相互に実質的に同じであり得る(例えば、励起源201と301、アイソレータ202と302等)。
【0024】
図4は、SS-PARSのさらに別の考え得る実施形態をハイライトしたものである。ここで、連結可能なスキャニングヘッドが内視鏡(422)に置き換えられている。このような機器は、きわめて小さいフットプリントを有する(<1mm)顕微内視鏡としても、又はフルサイズ内視鏡プローブとしても使用され得る。コンパクトなプロファイルを保持するために、光学スキャニングミラー(421)は、集光対物レンズ(420)の後に設置されるMEMS装置として実施できる。図4の中で図2及び図3の特徴と同じ名称及び類似した番号を有する特徴は、相互に実質的に同じであり得る(例えば、励起源201と401、アイソレータ202と402等)。
【0025】
図5は、SS-PARSのさらに別の考え得る実施形態をハイライトしたものである。ここで、フリースペース光学系のほとんどがファイバベースのコンポーネントに置き換えられている。偏光励起源(501)からの初期信号はファイバベースの偏光ビームスプリッタ(504)によって均等に分割される。光学遅延経路(505)はここで、単純に光ファイバの長さとして実施され得る。インタロゲーション成分は遅延経路(505)を通過し、ファイバベースの減衰器(510)によって減衰されてから、励起成分との偏光カプラとしての機能を果たす他のファイバベースの偏光ビームスプリッタ(511)内で再結合される。成分はその後、レンズ(513)等のコリメータを使ってフリースペースビームに結合されてから、図2図4のように4分の1波長板(514)によって円形の偏光状態に変換され得る。この特定の例においては、図3(322)について前述したように、連結可能なスキャニングヘッドが使用される。サンプルからの後方反射成分は、4分の1波長板(514)を使って再び線形偏光状態に変換される。次に、2つの成分はファイバベースの偏光ビームスプリッタ(511)を使って再び分割される。インタロゲーション成分は今度は、上の経路へと向けられ、そこでファイバベースのサーキュレータ(506)がそれをバランスフォトダイオード(507)の1つのポートへと方向付ける。励起成分は減衰器(510)を通って方向付けられ、他のファイバベースのサーキュレータ(506)を使って、まず同様の光遅延経路(505)へと向けられて、それによってその全体的遅延がインタロゲーション成分のそれとマッチされ得る。励起成分はすると、バランスフォトダイオード(509)の他のポートに供給される。この構成により提供される平衡検出は、本来的にPARS変調信号のアナログ抽出を提供し得る。図5の中で図2図4の特徴と同じ名称及び類似した番号を有する特徴は、相互に実質的に同じであり得る(例えば、励起源201と501、アイソレータ202と502等)。
【0026】
図6は、SS-PARSのさらに別の考え得る実施形態をハイライトしたものである。これは、図5において述べた機器と同じであるが、図4(422)において説明したもののような内視鏡イメージングヘッド(617)を有するSS-PARS処理構成を特に示している。図6の中で図2図5の特徴と同じ名称及び類似した番号を有する特徴は、相互に実質的に同じであり得る(例えば、励起源201と601、アイソレータ202と602等)。
【0027】
図7は、SS-PARSのさらに別の考え得る実施形態をハイライトしたものである。図5において説明した機器に関する幾つかの小さい変更点がある。ここで、インタロゲーション成分は光学遅延経路(706)の前に減衰され(705)、それによって望ましくない非線形効果(刺激されたラマン散乱等)が緩和され得る。この変更点により、追加的なファイバベースの減衰器(710)を励起成分経路のその光学遅延経路(711)の前に追加しなければならず、これもこれらの望ましくない効果を緩和するのに役立ち得る。図7の中で図2図6の特徴と同じ名称及び類似した番号を有する特徴は、相互に実質的に同じであり得る(例えば、励起源201と701、アイソレータ202と702等)。
【0028】
図8aは、強度及び励起成分の、それらがSS-PARSを通って進行する際の例を示す。この例においては、インタロゲーションパルスが励起パルスの後に続くことにより、インタロゲーションパルス上のPARS変調の検出が可能である。区間802は、放射源からの初期パルスを示す。区間804は初期パルスが2つのより小さい成分に分割されていることを示し、この図では各々がエネルギの半分を有する。区間806は、インタロゲーション成分が光学遅延経路内で遅延され、励起成分と再結合された後の2つの成分を示している。区間808は、インタロゲーション成分が励起成分に関して減衰されて、表面露光が軽減されていることを示している。区間810は、サンプルと相互作用した後の2つの成分を示す。どちらの成分も反射から減衰されているが、インタロゲーション成分はそれに加えて、励起成分により生じるPARS効果により変調される。区間812は、減衰された励起成分を示し、それによって、インタロゲーション成分のPARS変調がなければ、2つの成分がほぼ同じエネルギを有する。区間814は、再結合された励起成分とインタロゲーション成分を示す。上述の構成の多くについて、これら2つの成分は1つのフォトダイオードで検出されてよく、そこで信号はアナログ又はデジタルプロセッサによって処理され、PARS変調が抽出される。しかしながら、図7及び図13において説明された構成におけるように、バランスフォトダイオードが使用される場合、励起成分は遅延されて、それがインタロゲーション成分に対して提供されるものとマッチするようにされてもよい。これによって、本来的にPARS信号を抽出する平衡光学検出が可能となり得る。
【0029】
図8bは、強度及び励起成分の、それらがSS-PARSを通って進行する際の他の例を示す。この例においては、インタロゲーション成分が励起パルスの前にあり、それによって励起パルス上のPARS変調の検出が可能となる。区間816は、励起源からの初期パルスを示す。区間818は、初期パルスが2つのより小さい成分に分割されていることを示し、この図では各々がエネルギの半分を有する。区間820は、励起成分が光学遅延経路内で遅延され、インタロゲーション成分と再結合された後の2つの成分を示している。区間822は、インタロゲーション成分が励起成分に関して減衰されて、表面露光が軽減されていることを示している。区間824は、サンプルと相互作用した後の2つの成分を示す。どちらの成分も反射から減衰されているが、励起成分はそれに加えて、励起成分により生じるPARS効果により変調される。区間826は、減衰された励起成分を示し、それによって、励起成分のPARS変調がなければ、2つの成分がほぼ同じエネルギを有する。区間828は、再結合された励起成分とインタロゲーション成分を示す。上述の構成の多くについて、これら2つの成分は1つのフォトダイオードで検出されてよく、そこで信号はアナログ又はデジタルプロセッサによって処理され、PARS変調が抽出される。しかしながら、図14において説明される構成におけるように、バランスフォトダイオードが使用される場合、インタロゲーション成分は遅延されて、それが励起成分に対して提供されるものとマッチするようにされてもよい。これによって、本来的にPARS信号を抽出する平衡光学検出が可能となり得る。
【0030】
分類され、又は相互に組み合わされ得る様々なインタロゲーション及び励起パルスを特徴とする他のパルススキームが実施されてもよい。さらに、追加の光源又はSS-PARSが追加されて、コントラスト能力がさらに拡張されてもよい。例えば、2つのSS-PARSインタロゲーション間で中波赤外線源を使用して特定のたんぱく質吸収ピークを励起させて、中波赤外線コントラストを提供してもよく、その解像度はSS-PARS波長により提供されるものにより近い。他の例では、2つのSS-PARSが組み合わされて、複数の光吸収体の多重/機能イメージングを提供してよく、例えばDNAのコントラストのための250nm及びヘモグロビンのコントラストのための532nmである。
【0031】
図9は、光学ビームコンバイナ(903)を、明視野観察法、蛍光顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、光干渉断層法、光干渉顕微鏡法、ラマン分光法、コヒーレントアンチストークスラマン分光法、多光子顕微鏡法、光音響断層法、音響解像度光音響顕微鏡法、光学解像度光音響顕微鏡法、超音波、ホログラフィ、クアドラチャ顕微鏡法等を含むがこれらに限定されない他の光学モダリティ(902)を使って結合されたSS-PARS検出経路(901)の例を示す。これらのモダリティは、同じイメージングヘッド(904)を共有するため、これらは捕捉した情報を相互に整列できる。
【0032】
図10は、光学ビームコンバイナ(1003)を使って結合され、それによって同じイメージングヘッド(1004)を使用する複数のSS-PARS検出経路(1001、1002、1005)の例を示す。これは、種間の色又は強度飽和コントラストを利用した機能及び多重イメージングで相対的濃度を特定することを可能にする。
【0033】
図11は、SS-PARSのまた別の考え得る実施形態をハイライトしている。ここで、構成は偏光依存素子を取り除くことによって偏光変調無依存とされている。これは、サンプル中の偏光依存挙動を補償し得る。2つの遅延パルスを創出するために使用されるスプリッタ(1105)及びコンバイナ(1106)は、偏光ビームスプリッタ、又は偏光無依存ビームスプリッタとして実施され得る。すると、両方の成分が、後で戻り経路上で使用される偏光無依存ビームスプリッタ(1110)を通る同じ経路に沿って保持され、図3図7(322、718)で使用されるものと同様のファイバベースのスキャニングヘッド(1117)へと結合される。サンプルからの後方反射成分はすると、ビームスプリッタ(1110)によってフォトダイオード(1109)へと方向付けられ、検出される。図11の中の図2図7の特徴と同じ名称及び類似した番号を有する特徴は、相互に実質的に同じであり得る(例えば、励起源201と1101、アイソレータ202と1102等)。
【0034】
図12は、SS-PARSのまた別の考え得る実施形態をハイライトしている。ここで、構成は同じく偏光変調無依存であり、ファイバベースのコンポーネントを特徴とする。2つの成分はファイバベースの偏光無依存ビームスプリッタ(1204)において分割されてよく、ここでインタロゲーション成分(I)はファイバ(1205)の長さ等の光遅延経路を使って遅延される。すると、2つのビームはファイバベースのカプラ(1213)を使って再結合され、ファイバベースのサーキュレータ(1214)を通って図3図7図11(322、718、1117)と同様のイメージングスキャニングヘッドに至る。後方反射成分はその後、検出のためにファイバベースのサーキュレータ(1214)を使ってフォトダイオード(1206)へと方向付けられる。図12の中の図2図7及び図11の特徴と同じ名称及び類似した番号を有する特徴は、相互に実質的に同じであり得る(例えば、励起源201と1201、アイソレータ202と1202等)。
【0035】
図13は、SS-PARSのまた別の考え得る実施形態をハイライトしている。ここで、構成はパルスのフリースペース平衡検出を可能にし得る。主要な励起経路と遅延経路(1315)の間に2つの波長板(1306)、2つの偏光ビームスプリッタ(1305)、及び折り返しミラー(1311)を追加することによって、励起(E)及びインタロゲーション(I)パルスの両方間で同等の総時間遅延及び総減衰を提供しやすくなり得る。その結果、両パルスは各々、PARS変調のアナログ抽出のために平衡検出器(1307)の別々のポートで測定できる。図13の中の図2図7図11、及び図12の特徴と同じ名称及び類似した番号を有する特徴は、相互に実質的に同じであり得る(例えば、励起源201と1301、アイソレータ202と1302等)。
【0036】
図14は、SS-PARSのまた別の考え得る実施形態をハイライトしている。ここで、構成は図13に示される例示的な実施形態のようなパルスのフリースペース平衡検出を可能にし得る。しかしながら、この実施形態では、インタロゲーションパルスを励起パルスの前に置いている。これは、ある標的について、励起パルスがPARS変調をピックアップする場合に必要であり得る。この場合、インタロゲーションは励起の前に行って摂動の生じていないサンプルを捕捉しなければならない。図14の例示的システムと図13のシステムとの間の基本的な違いは、減衰器(1409)の位置の違いである。図14の中の図2図7図11図12、及び図13の特徴と同じ名称及び類似した番号を有する特徴は、相互に実質的に同じであり得る(例えば、励起源201と1401、アイソレータ202と1402等)。
【0037】
同様の結果を実現するために異なるコンポーネントでその他の例が設計され得ることは明らかであろう。その他の代替案は、波長、パルス幅、パルスエネルギ、及びコヒーレンス長の点での光源の様々な組合せを含み得る。パルス源ではなく、連続波源が適正に変調され得る。フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、バランスフォトダイオード、フォトチューブ、光電子倍増管、CMOSセンサ/カメラ、CCDセンサ/カメラ(EM-CCD、強化型CCD、ロックイン増幅器、裏面入射型及び冷却CCDを含む)をはじめとする各種の光学検出器(干渉計による、又は干渉計によらない)が使用され得る。検出信号は、RF増幅器、ロックイン増幅器、トランスインピーダンス増幅器、又はその他の増幅器構成により増幅されてもよい。SS-PARSは検出された光を増幅するための光学増幅器を使用し得る。
【0038】
in vivoイメージング実験中、試薬や超音波結合媒質は不要である。しかしながら、標的は、非接触イメージングセッションの前に水又はオイル等の何れかの液体で調製することができる。イメージングセッション中、標的を保持するための特別なホルダや固定化は必要ない。光学ウィンドウをサンプルとイメージングヘッドとの間に設置して、サンプル表面を平坦化しやすくするか、又はサンプルとシステムとの間の雰囲気の差を生じやすくしてもよい。
【0039】
この構造に固有のその他の利点は、当業者にとって明らかであろう。本明細書に記載の実施形態は例示的であり、明細書全体に照らして解釈されることになる特許請求項の範囲を限定するものではない。
【0040】
励起ビームは、レーザ又はその他の光源を含む、何れのパルス式又は変調電磁放射源であってもよい。1つの例では、ナノ秒パルスレーザが使用された。励起ビームは、サンプルの光(又はその他の電磁)吸収を利用するのに適した何れの波長に設定されてもよい。光源は単色でも多色でもよい。
【0041】
複数のSS-PARS経路は、ダイクロイックミラー、プリズム、ビームスプリッタ、偏光ビームスプリッタ等を使って結合できる。これらはまた、異なる光路を使って集光することもできる。
【0042】
卓上型、ハンドヘルド、内視鏡、手術用顕微鏡、又は眼科SS-PARSシステムは当業界で知られている原理に基づいて構成され得る。SS-PARSは、in vivo、ex vivo、又はファントム試験のためのA-、B-、又はC-スキャン画像に使用され得る。
【0043】
SS-PARSは、2D及び3D OR-CG-PARSイメージングの焦点深度を改善するように多焦点設計を利用するために最適化され得る。コリメート及び対物レンズペアの色収差は、ファイバからの光を物体中に再集光するために抑制されてよく、それによって各波長はわずかに異なる深さ位置に集光される。これらの波長の同時利用は、SS-PARS画像の被写界深度及び信号対ノイズ比(SNR)を改善するために使用され得る。SS-PARSイメージング中、波長チューニングによる深部スキャニングが行われ得る。
【0044】
SS-PARSシステムは、蛍光顕微鏡法、二光子及び共焦点蛍光顕微鏡法、コヒーレンスアンチラマンストークス顕微鏡法、ラマン顕微鏡法、光干渉断層法、その他の光音響及び超音波システム等の他のイメージングモダリティと組み合わされ得る。組合せは、幾つかの方法を挙げれば、主要集光光学系の前のモダリティをビームスプリッタ又はダイクロイックミラーと組み合わせることを通じて実現可能である。これによって、微小循環、血中酸素飽和度パラメータイメージング、他の分子的に特異的な標的の同時イメージング、すなわち蛍光型顕微鏡検査法だけでは実施が難しい、重要である可能性のあるタスクが可能となり得る。多波長可視レーザ源もまた、機能又は構造イメージング用の光音響信号を生成するために実装され得る。
【0045】
偏光アナライザを使って、検出された光をそれぞれの偏光状態に分解してもよい。各偏光状態での検出光は、超音波-組織相互作用に関する情報を提供し得る。
トポロジトラッキングはサンプル表面の粗さを説明するために実施されてよく、ユーザによる準備をあまり必要とせずにイメージング一貫性を改善できる。
【0046】
用途
本明細書に記載のシステムは前述の目的等、各種の方法で使用されてよく、また、前述の態様を利用するためにその他の方法で使用されてもよいと理解されたい。用途の非網羅的な例について以下に論じる。
【0047】
システムは、異なる前臨床期腫瘍モデルの血管新生のイメージングに使用され得る。
システムは、(1)組織学的サンプル、(2)細胞核、(3)たんぱく質、(4)シトクロム、(5)DNA、(6)RNA、及び(7)脂質のイメージングに使用され得る。システムはまた、カテーテル留置処置の代用、胃腸病学的応用、視野全体にわたる単一励起パルスイメージング、組織のイメージング、細胞のイメージング、物体表面からの散乱光のイメージング、散乱光の吸収誘導変化のイメージング、又は光吸収の非接触イメージングに使用され得る。
【0048】
システムは、細胞構造の無標識可視化を提供するためにDNA吸収ピークのイメージングに使用され得る。これは、切除術を指揮し、マージンの状態の何れかの早期指標を提供することを目的として、術中に、又はex vivoサンプルについて使用できる。単一波長実装によりイメージングデバイスのフレキシビリティが改善されてよく、それによって焦点を複雑なサンプル全体を通じてより容易にスキャンすることができ、色効果の補正が不要となる。
【0049】
SS-PARSの他の考え得る用途は眼科イメージングへの利用である。再び、システムは単一波長を使用するため、眼の複雑な光学系により導入される色効果は大きく軽減されるか、完全に無効にされる。これには、緑内障、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症、及びあらゆる関連する眼病の検出と特徴付け等、様々な眼科用途に深い影響を与える可能性がある。
【0050】
従来のPARSと同様に、SS-PARSはin vivoの各種の内因性の種の多重及び機能イメージングを提供するために使用できる。1つの一般的な標的は酸素化及び脱酸素化ヘモグロビンであり、その相対的濃度がSS-PARSを用いて測定され得る。これによって、血中酸素濃度及び血液代謝を、臨床医や研究者にきわめて貴重な情報を提供できる毛細レベルまでリアルタイムで可視化することができる。また、グルコース濃度のリモート/非侵襲的腫瘍内評価が内因性グルコース吸収ピークの検出によって実行され得る。その他の一般的な内因性標的としては、DNA、RNA、メラニン、及び脂質が含まれる。
【0051】
システムはまた、微小及び大循環並びに色素細胞の臨床イメージングにも使用されてよく、これは例えば、(1)眼、おそらくは蛍光アンギオグラフィを補足する、又はそれに代わること、(2)メラノーマ、基底細胞癌、血管腫、乾癬、湿疹、皮膚炎のイメージング、モース術のイメージング、腫瘍マージン切除を確認するためのイメージング、(3)末梢血管病変、(4)糖尿病及び褥瘡、(5)火傷のイメージング、(6)整形外科及び顕微鏡下手術、(7)循環性腫瘍細胞、特にメラノーマ細胞のイメージング、(8)リンパ節血管新生のイメージング、(9)血管焼灼メカニズムによるものを含む光線力学的療法に対する応答のイメージング、(10)抗血管新生薬を含む化学療法に対する応答のイメージング、(11)放射線療法に対する応答のイメージング等における用途に使用され得る。
【0052】
システムは、多波長光音響励起及びSS-PARS検出を用いた酸素飽和度の推定と、(1)内頚静脈酸素飽和度及び中心静脈酸素飽和度の推定を含む、パルスオキシメトリを使用できない静脈酸素飽和度の推定を含む用途において有益であり得る。これはおそらく、特に年少の小児や幼児においてリスクが高い可能性のあるカテーテル留置処置の代用となることができる。
【0053】
酸素フラックス及び酸素消費量もまた、酸素飽和度を推定するためのSS-PARSイメージングと、組織のある領域への流入及びそこからの流出血管内の血液流を推定するための補助的方法とを使って推定されてもよい。
【0054】
システムにはまた、血管床及びバレット食道及び結腸直腸癌の深達度のイメージング等、幾つかの胃腸病学的用途もあり得る。深達度は予後及び代謝能の鍵である。胃腸病学的用途は、臨床用内視鏡と組み合わせられても、又はそれを利用してもよく、小型化されたSS-PARSシステムは、独立した内視鏡として設計されても、又は臨床用内視鏡の付属チャネルの中に嵌め込まれてもよい。
【0055】
システムには幾つかの外科的用途もあり得、これは例えば脳手術中の機能イメージング、内出血の評価及び焼灼の確認のための利用、臓器及び臓器移植の灌流の十分さのイメージング、膵島移植部周囲の血管新生のイメージング、皮膚移植片のイメージング、組織スキャフォルド及び生体材料のイメージングによる血管新生と免疫拒否反応の評価、顕微鏡下手術を支援するためのイメージング、重要血管及び神経の切断を回避するためのガイダンス等である。
【0056】
用途の他の例には、臨床又は前臨床用途での造影剤のSS-PARSイメージング、センチネルリンパ節の識別、リンパ節腫瘍の非侵襲又は低侵襲的識別、前臨床期又は臨床期分子イメージング用途のためのチロシナーゼ、色素たんぱく質、蛍光たんぱく質等の遺伝子工学的に符号化されたレポータのイメージング、分子イメージングのための能動的又は受動的に標的とされた光吸収ナノ粒子のイメージング、並びに血栓のイメージング及びおそらく血栓の年数のステージ特定が含まれ得る。
【0057】
SS-PARS構造、多重、及び機能イメージング能力の考え得る用途には、幾つかを挙げれば、オルガノイド成長の評価、発生中の胚のモニタリング、バイオフィルムの組成物の評価、及び齲歯の評価が含まれ得る。また、SS-PARSは生体イメージング以外にも利用可能であり得る点に留意することも重要である。この幾つかの例は、幾つかを挙げれば、真贋の非侵襲的検証を行うための絵の具の組成の評価等の無生物構造の査定、考古学的人工産物の評価、製造品質管理、及び品質保証であり得る。
【0058】
幾つかの実施形態において、SS-PARSでのイメージング前にOCT等の何れかの適当な技術を表面トポロジのために使用できる(光音響リモートセンシング技術のための一定又は可変深度集光のため)。
【0059】
本特許明細書において、「~を含む(comprising)」という単語は非限定的な意味において使用され、この単語に続く項目が含まれるが、具体的に記述されていない項目は排除されないことを意味する。不定冠詞(a)による要素への言及は、その要素が1つ及び1つのみ存在することを要求していない限り、2つ以上の要素が存在する可能性を除外しない。
【0060】
後述の特許請求項の範囲は、上述の例及び図面中に示されている好ましい実施形態により限定されるべきではなく、それには説明全体と矛盾しない、最も広い解釈が付与されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a-8b】
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】